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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】消化性判定システム及び消化性判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20231117BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G01N21/27 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020054796
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156626
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 理奈
(72)【発明者】
【氏名】冨田 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】宮藤 章
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161399(JP,A)
【文献】特開2016-57278(JP,A)
【文献】特開平4-104780(JP,A)
【文献】山崎彬,高圧処理を施した浸漬米の炊飯後の微細構造と物性,高圧力の科学と技術,高圧力の科学と技術,1996年,Vol.5, No.3,PP.168-178
【文献】冨田 晴雄ほか,米の調理中の構造変化評価技術の開発,日本食品工学会誌,2018年,第19巻,第1号, PP.A.3-A.5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 33/00-G01N 33/46
C12G 1/00-C12G 3/08
C12H 6/00-C12H 6/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定するシステムであって、
前記酒米に偏光光を照射する光学手段と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出手段と、
前記変化率算出手段で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成手段で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断手段と、
前記消化性判定可否判断手段において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定手段とを備え
前記消化性判定可否判断情報は、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値である消化性判定システム。
【請求項2】
水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定するシステムであって、
前記酒米に偏光光を照射する光学手段と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出手段と、
前記変化率算出手段で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成手段で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断手段と、
前記消化性判定可否判断手段において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定手段と、
前記2以上のタイミングで前記酒米の含水率を測定する含水率測定手段とを備え、
前記消化性判定可否判断情報は、前記含水率測定手段で測定された前記酒米の含水率、並びに、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値のいずれか一方である消化性判定システム。
【請求項3】
前記消化性判定情報は、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するもののうちから選択される請求項1又は2に記載の消化性判定システム。
【請求項4】
前記光学手段は、光を照射可能な光源と、偏光軸の交差角が調整可能な2つの偏光体とを備え、前記光源から照射された光が前記2つの偏光体のうちの一方の偏光体を通って偏光光として前記酒米に照射され、前記酒米に照射された偏光光が他方の偏光体を通して前記撮影手段に導かれるように構成されており、
前記交差角は、3°~180°の範囲内で調整される請求項1~のいずれか一項に記載の消化性判定システム。
【請求項5】
水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定する方法であって、
前記酒米に偏光光を照射する偏光光照射工程と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影工程と、
前記撮影工程で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出工程と、
前記変化率算出工程で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成工程で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断工程と、
前記消化性判定可否判断工程において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定工程と、を実行し、
前記消化性判定可否判断情報は、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値である消化性判定方法。
【請求項6】
水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定する方法であって、
前記酒米に偏光光を照射する偏光光照射工程と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影工程と、
前記撮影工程で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出工程と、
前記変化率算出工程で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成工程で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断工程と、
前記消化性判定可否判断工程において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定工程と、
前記2以上のタイミングで前記酒米の含水率を測定する含水率測定工程と、を実行し、
前記消化性判定可否判断情報は、前記含水率測定工程で測定された前記酒米の含水率、並びに、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値のいずれか一方である消化性判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯加工や酒造などといった米を原料とする食品加工分野において、米の老化は製品の品質を決める重要な要因である。例えば、弁当やおにぎりなどの米飯加工食品の製造過程において、炊飯した米(炊飯米)を冷却後に成形するが、炊飯米は冷却過程において老化することで、テクスチャーの悪化(例えば、硬くなる、凝集性が低下するといった変化)が起こり、これにより、成形時の加工性が悪化したり、加工食品の食味が低下したりするという問題があり、また、炊飯米の老化度合を把握することは、加工食品の保管や流通過程における品質を管理する上で重要である。一方、酒造過程においては、原料となる酒米を蒸した米(蒸米)の老化度合が発酵工程での微生物による分解に影響を与えるため、蒸米の老化度合を把握することが酒の品質管理を行う上で重要である。
【0003】
従来から、炊飯米や蒸米の老化度を判定する技術としては、例えば、特許文献1~4に記載された技術が提案されている。
【0004】
具体的に、特許文献1記載の技術では、米の老化性と、米の尿素崩壊性及びアルカリ崩壊性とが相関関係にあることに着目し、尿素水溶液やアルカリ水溶液中に評価対象米を浸して評価対象米のこれらの水溶液中での崩壊性を評価し、これら尿素崩壊性やアルカリ崩壊性を指標として、米の老化性を評価している。
【0005】
また、特許文献2記載の技術では、米類をアルカリ溶液や尿素溶液などの糊化溶液に浸漬し、溶液中の溶出デンプン量をヨウ素デンプン呈色反応によって検出して、検出した溶出デンプン量と米類の老化性との相関関係に基づき米類の老化性を評価している。
【0006】
一方、特許文献3には、米や小麦などのデンプン質含有穀物を水の存在下で加熱調理してある食品にX線を照射して、所定の回折角の回折X線の強度に基づいてデンプン質含有食品の老化度を判定する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献4記載の技術は、穀類試料の糊化特性値(糊化開始温度や粘度など)を測定し、測定した糊化特性値を用いて解析を行い、その解析結果から穀類試料の老化性を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-57278号公報
【文献】特開2017-161399号公報
【文献】特開2016-70860号公報
【文献】特開2005-221344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、酒造分野においては、蒸した酒米を老化させた後、この老化させた酒米を使って醪づくりを行うが、蒸した酒米を老化させる目的は、醪中での酵素による蒸した酒米の分解程度(即ち、消化性)を制御することにある。
【0010】
ここで、蒸した酒米の消化性は、老化後の酒米の結晶化度などに左右されるものであり、同じ酒米を同じ時間だけ老化させたからといって、必ずしも消化性が同等になるわけでなく、老化させている最中の周囲の環境等によって老化後における蒸した酒米の消化性は異なったものとなる。
【0011】
したがって、酒造分野においては、蒸した酒米の消化性を予測評価できる手法が求められている。
【0012】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定できる消化性判定システム及び消化性判定方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る消化性判定システムの特徴構成は、水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定するシステムであって、
前記酒米に偏光光を照射する光学手段と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出手段と、
前記変化率算出手段で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成手段で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断手段と、
前記消化性判定可否判断手段において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定手段とを備え
前記消化性判定可否判断情報は、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値である点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、少なくとも2以上のタイミングで撮影された酒米に関する偏光画像データを取得でき、この取得した偏光画像データを処理して輝度に関するヒストグラムを作成する。
ここで、酒米に含まれるアミロースやアミロペクチンなどのデンプンは、例えば、生米の状態では結晶構造を有しているため、生米の偏光画像には、この結晶構造に由来した特有の偏光十字が輝度の高い部分として現れる。これに対して、蒸し直後の酒米においては、結晶構造中に水が入り込んで結晶構造が崩壊しているため、これらの偏光画像には偏光十字が現れない。しかしながら、蒸した酒米においては、時間の経過によって結晶構造中に入り込んだ水が徐々に外部に放出されて、崩壊していた結晶構造が次々に戻る(所謂老化する)ことで、これらの偏光画像には偏光十字が輝度の高い部分として現れる。
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、偏光画像データを処理して作成した輝度に関するヒストグラムから、酒米の消化性に関係する消化性判定情報を得られることを見出し、この消化性判定情報を基にして酒米の消化性を判定できる場合があるという知見を得るとともに、酒米の撮影と同じタイミングでの酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、この消化性判定可否判断情報の変化率を算出した上で、算出した消化性判定可否判断情報の変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断できるという知見を得て本発明を完成させた。
即ち、上記特徴構成では、変化率算出手段によって、2以上のタイミングでの酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、消化性判定可否判断情報の変化率を算出する。そして、消化性判定可否判断手段によって、消化性判定可否判断情報の変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断する。そして、酒米の消化性を判定できる場合には、消化性判定手段によって、上記消化性判定情報を基に、酒米の消化性を判定できる。
また、本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ヒストグラムから得られる平均値や中央値、最頻値、尖度、歪度などを消化性判定可否判断情報として用いることで、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断できることを見出した。
即ち、上記特徴構成によれば、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値を消化性判定可否判断情報とし、酒米の撮影と同じタイミングでの酒米の状態に関するヒストグラム関連値の変化率を算出して、この算出した変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断できる。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る消化性判定システムの特徴構成は、水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定するシステムであって、
前記酒米に偏光光を照射する光学手段と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影手段と、
前記撮影手段で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出手段と、
前記変化率算出手段で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成手段で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断手段と、
前記消化性判定可否判断手段において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定手段と、
前記2以上のタイミングで前記酒米の含水率を測定する含水率測定手段とを備え、
前記消化性判定可否判断情報は、前記含水率測定手段で測定された前記酒米の含水率、並びに、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値のいずれか一方である点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、少なくとも2以上のタイミングで撮影された酒米に関する偏光画像データを取得でき、この取得した偏光画像データを処理して輝度に関するヒストグラムを作成する。
ここで、酒米に含まれるアミロースやアミロペクチンなどのデンプンは、例えば、生米の状態では結晶構造を有しているため、生米の偏光画像には、この結晶構造に由来した特有の偏光十字が輝度の高い部分として現れる。これに対して、蒸し直後の酒米においては、結晶構造中に水が入り込んで結晶構造が崩壊しているため、これらの偏光画像には偏光十字が現れない。しかしながら、蒸した酒米においては、時間の経過によって結晶構造中に入り込んだ水が徐々に外部に放出されて、崩壊していた結晶構造が次々に戻る(所謂老化する)ことで、これらの偏光画像には偏光十字が輝度の高い部分として現れる。
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、偏光画像データを処理して作成した輝度に関するヒストグラムから、酒米の消化性に関係する消化性判定情報を得られることを見出し、この消化性判定情報を基にして酒米の消化性を判定できる場合があるという知見を得るとともに、酒米の撮影と同じタイミングでの酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、この消化性判定可否判断情報の変化率を算出した上で、算出した消化性判定可否判断情報の変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断できるという知見を得て本発明を完成させた。
即ち、上記特徴構成では、変化率算出手段によって、2以上のタイミングでの酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、消化性判定可否判断情報の変化率を算出する。そして、消化性判定可否判断手段によって、消化性判定可否判断情報の変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断する。そして、酒米の消化性を判定できる場合には、消化性判定手段によって、上記消化性判定情報を基に、酒米の消化性を判定できる。
また、本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断する際の指標として、上記ヒストグラム関連値の変化率の他に、2以上のタイミングで測定された含水率の変化率を用いることができることを見出した。
即ち、上記特徴構成によれば、含水率測定手段で測定された含水率と、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値とのいずれか一方を消化性判定可否判断情報とし、酒米の撮影と同じタイミングでの酒米の状態に関する含水率又はヒストグラム関連値の変化率を算出して、この算出した変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断できる。
【0018】
尚、本願において、「消化性を判定する」とは、「消化性の変化率(変化速度)を決定すること」及び「消化性の絶対値を決定すること」を含む概念である。
【0019】
このように、本発明においては、薬剤や高価な機器を必要とせず、酒米に対して煩雑な処理を行う必要もなく、比較的簡便且つ容易に酒米の消化性を判定できる。
【0020】
また、本発明に係る消化性判定システムの更なる特徴構成は、前記消化性判定情報は、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するもののうちから選択される点にある。
【0021】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、上記ヒストグラムから得られる消化性判定情報として、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するものが有用であり、これらのうちの1つを消化性判定情報として利用することで、酒米の消化性を判定できることを見出した。
【0022】
即ち、上記特徴構成によれば、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するもののうちから選択される1つを消化性判定情報とし、この消化性判定情報を基にして、酒米の消化性を判定できる。
【0023】
尚、本願において、「平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するもの」とは、これらの変化速度やこれらの絶対値を含む概念である。
【0028】
また、本発明に係る消化性判定システムの更なる特徴構成は、前記光学手段は、光を照射可能な光源と、偏光軸の交差角が調整可能な2つの偏光体とを備え、前記光源から照射された光が前記2つの偏光体のうちの一方の偏光体を通って偏光光として前記酒米に照射され、前記酒米に照射された偏光光が他方の偏光体を通して前記撮影手段に導かれるように構成されており、
前記交差角は、3°~180°の範囲内で調整される点にある。
【0029】
上記特徴構成によれば、2つの偏光体の交差角を3°~180°の範囲内に調整することで、偏光画像データを処理して作成したヒストグラムから消化性の判定に利用可能な有意な消化性判定情報を得ることができる。尚、本願発明者は、交差角を3°~180°の範囲内に調整した場合に、酒米の偏光画像データを基にして作成したヒストグラムから得られる消化性判定情報を基に、酒米の消化性を判定できることを実験的に確認している。
【0030】
また、上記目的を達成するための本発明に係る消化性判定方法の特徴構成は、水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定する方法であって、
前記酒米に偏光光を照射する偏光光照射工程と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影工程と、
前記撮影工程で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出工程と、
前記変化率算出工程で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成工程で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断工程と、
前記消化性判定可否判断工程において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定工程と、を実行し、
前記消化性判定可否判断情報は、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値である点にある。
【0031】
上記特徴構成によれば、少なくとも2以上のタイミングで撮影された酒米に関する偏光画像データを取得し、この取得した偏光画像データを処理して輝度に関するヒストグラムを作成するとともに、2以上のタイミングでの酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得して、この消化性判定可否判断情報の変化率を算出する。そして、消化性判定可否判断情報を基に、ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判定して、酒米の消化性を判定できる場合には、消化性判定情報を基に酒米の消化性を判定できる。
上記特徴構成によれば、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値を消化性判定可否判断情報とし、酒米の撮影と同じタイミングでの酒米の状態に関するヒストグラム関連値の変化率を算出して、この算出した変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断できる。
【0032】
また、上記目的を達成するための本発明に係る消化性判定方法の特徴構成は、水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定する方法であって、
前記酒米に偏光光を照射する偏光光照射工程と、
前記偏光光が照射された前記酒米の偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影工程と、
前記撮影工程で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成工程と、
前記2以上のタイミングでの前記酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、当該消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出工程と、
前記変化率算出工程で算出された前記消化性判定可否判断情報の変化率を基に、前記ヒストグラム作成工程で作成した前記ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて前記酒米の消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断工程と、
前記消化性判定可否判断工程において判定できると判断された場合に、前記消化性判定情報を基に、前記酒米の消化性を判定する消化性判定工程と、
前記2以上のタイミングで前記酒米の含水率を測定する含水率測定工程と、を実行し、
前記消化性判定可否判断情報は、前記含水率測定工程で測定された前記酒米の含水率、並びに、前記ヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値のいずれか一方である点にある。
【0033】
上記特徴構成によれば、少なくとも2以上のタイミングで撮影された酒米に関する偏光画像データを取得し、この取得した偏光画像データを処理して輝度に関するヒストグラムを作成するとともに、2以上のタイミングでの酒米の状態に関する消化性判定可否判断情報を取得して、この消化性判定可否判断情報の変化率を算出する。そして、消化性判定可否判断情報を基に、ヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判定して、酒米の消化性を判定できる場合には、消化性判定情報を基に酒米の消化性を判定できる。
また、上記特徴構成によれば、含水率測定工程で測定された含水率と、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値とのいずれか一方を消化性判定可否判断情報とし、酒米の撮影と同じタイミングでの酒米の状態に関する含水率又はヒストグラム関連値の変化率を算出して、この算出した変化率を基に、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断できる。
【0034】
このように、本発明に係る消化性判定方法においては、薬剤や高価な機器を必要とせず、酒米に対して煩雑な処理を行う必要もなく、比較的簡便且つ容易に酒米の消化性を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態に係る消化性判定システムの概略構成を示す図である。
図2】制御装置を示す機能ブロック図である。
図3】サンプル1に関する酒米の含水率をまとめたグラフである。
図4】サンプル2に関する酒米の含水率をまとめたグラフである。
図5】サンプル3に関する酒米の含水率をまとめたグラフである。
図6】サンプル1に関する酒米のBrix値をまとめたグラフである。
図7】サンプル2に関する酒米のBrix値をまとめたグラフである。
図8】サンプル3に関する酒米のBrix値をまとめたグラフである。
図9】サンプル1に関する酒米の尖度の絶対値をまとめたグラフである。
図10】サンプル2に関する酒米の尖度の絶対値をまとめたグラフである。
図11】サンプル3に関する酒米の尖度の絶対値をまとめたグラフである。
図12】サンプル1及び2に関する酒米の尖度の変化速度とBrix値の変化速度との関係を示すグラフである。
図13】サンプル1に関する尖度の絶対値とBrix値との関係を示すグラフである。
図14】サンプル2に関する尖度の絶対値とBrix値との関係を示すグラフである。
図15】サンプル3に関する尖度の絶対値とBrix値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る消化性判定システム及び消化性判定方法について説明する。
【0037】
図1及び図2は、本実施形態に係る消化性判定システム1の概略構成を示す図である。図1に示すように、消化性判定システム1は、水の存在下で加熱された酒米Rに偏光光を照射する光学装置2(光学手段)と、偏光光が照射された酒米Rの偏光画像を少なくとも2以上のタイミングで撮影する撮影装置6(撮影手段)と、後述する各種機能部で構成される制御装置10とを備えている。
【0038】
また、制御装置10は、図2に示すように、撮影装置6で撮影した偏光画像データを取得する画像データ取得部11(画像データ取得手段)と、偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成するヒストグラム作成部13(ヒストグラム作成手段)と、2以上のタイミングでの酒米Rの状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、消化性判定可否判断情報の変化率を算出する変化率算出部15(変化率算出手段)と、変化率算出部15で算出された消化性判定可否判断情報の変化率を基に、ヒストグラム作成部13で作成したヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できるか否かを判断する消化性判定可否判断部16(消化性判定可否判断手段)と、消化性判定情報を基に、酒米の消化性を判定する消化性判定部18(消化性判定手段)とを備える。また、制御装置10は、2以上のタイミングでの酒米の含水率を測定する含水率測定部14(含水率測定手段)を備える。
【0039】
更に、制御装置10は、画像データ取得部11で取得した偏光画像データを処理する画像処理部12や、ヒストグラム作成部13で作成したヒストグラムを基に消化性判定情報を取得する消化性判定情報取得部17、取り扱う各種情報等が記憶される記憶部19を備える。
【0040】
本実施形態において、光学装置2は、遮光ボックスB内の下部に配置されたライト3(光源)と、ライト3の上方に配置された第一偏光板4(一方の偏光体)と、遮光ボックスBの上方に配置された第二偏光板5(他方の偏光体)とからなる。また、第一偏光板4及び第二偏光板5は、各偏光軸の角度が調整可能に構成されており、本実施形態においては、第一偏光板4の偏光軸と第二偏光板5の偏光軸との交差角が3°~180°の範囲内となるように、第一偏光板4及び/又は第二偏光板5の偏光軸の角度を調整する。
【0041】
撮影装置6は、第二偏光板5の上方且つ遮光ボックスBの上部に形成された開口部B1と対向する位置に配置されている。
【0042】
したがって、本実施形態においては、消化性の判定対象である酒米Rが開口部B1の下方に位置するように第一偏光板4上に配置した状態で、ライト3から上方に向けて光を照射することにより、照射した光が第一偏光板4を通って偏光光として酒米Rに照射され、酒米Rに照射された偏光光が開口部B1及び第二偏光板5を通って撮影装置6に導かれ、酒米Rの偏光画像が撮影される。即ち、本実施形態においては、偏光光を酒米Rに照射し、その透過光を観察している。尚、撮影装置6が酒米の偏光画像を撮影するタイミングは、例えば、加熱終了直後(老化開始)のタイミング及び加熱終了から一定時間経過するまでの一時間おきのタイミング(加熱後1時間、加熱後2時間、・・・)である。
【0043】
図2に示すように、制御装置10は、画像データ取得部11、画像処理部12、ヒストグラム作成部13、含水率測定部14、変化率算出部15、消化性判定可否判断部16、消化性判定情報取得部17、消化性判定部18及び記憶部19を備える。
【0044】
画像データ取得部11は、撮影装置6によって撮影された酒米Rの偏光画像データを取得する機能部である。具体的に、本実施形態においては、撮影装置6から送信される偏光画像データに係る信号を受信して、酒米Rの偏光画像データを取得する。尚、画像データ取得部11が取得した偏光画像データは、記憶部19に適宜記憶される。
【0045】
画像処理部12は、画像データ取得部11で取得した偏光画像データを処理する機能部である。具体的に、本実施形態における画像処理部12は、ヒストグラム作成部13でのヒストグラムの作成に先立って、画像データ取得部11が取得した偏光画像データにおいて、酒米Rのみを含む領域の偏光酒米画像データを抽出する処理と、抽出した偏光酒米画像データを、明領域を255、暗領域を0とする256階調の画像データ(グレースケール化画像データ)に変換する処理とを行う。尚、画像処理部12における上記各処理は、一粒の酒米のみを含む領域のグレースケール化画像データを得られるように行われたり、二粒以上(例えば、四粒)の酒米のみを含む領域のグレースケール化画像データを得られるように行われたりするものである。
【0046】
ヒストグラム作成部13は、偏光画像データを基に輝度に関するヒストグラムを作成する機能部である。具体的に、本実施形態におけるヒストグラム作成部13は、画像処理部12において偏光画像データを基に得られたグレースケール化画像データ中の階調値の分布を輝度に関するヒストグラムとして作成する。
【0047】
含水率測定部14は、2以上のタイミングで酒米Rの含水率を測定する機能部である。具体的に、本実施形態における含水率測定部14は、画像処理部12において偏光画像データを基に得られたグレースケール化画像データを基に、撮影された時点での酒米Rの形状(2次元形状や3次元形状)と加熱される前の酒米の形状とを比較することにより、撮影された時点での酒米Rの含水率を推定し、これを測定された含水率とする。
【0048】
変化率算出部15は、2以上のタイミングでの酒米Rの状態に関する消化性判定可否判断情報を取得し、消化性判定可否判断情報の変化率を算出する機能部である。本実施形態において、消化性判定可否判断情報は、上記含水率測定部14で測定された酒米Rの含水率、或いは、ヒストグラム作成部13で作成されたヒストグラムから得られる平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度のうちから選択されるヒストグラム関連値である。具体的に、本実施形態における変化率算出部15は、異なる2以上のタイミングでの酒米Rの含水率、並びに、異なる2以上のタイミングでのヒストグラムから得られるヒストグラム関連値を消化性判定可否判断情報として取得し、含水率の変化率及びヒストグラム関連値の変化率をそれぞれ算出する。
【0049】
より具体的に、本実施形態における変化率算出部15では、加熱終了直後(老化開始直後)のタイミング(加熱直後の酒米Rを遮光ボックスB内に配置したタイミング)での含水率(或いはヒストグラム関連値)と、加熱終了(老化開始)から所定時間経過したタイミング(酒米Rを遮光ボックスB内に配置してから所定時間経過したタイミング)での含水率(或いはヒストグラム関連値)とを基に、以下のようにして、含水率(或いはヒストグラム関連値)の一時間あたりの変化率を算出する。即ち、加熱終了直後のタイミングでの含水率(或いはヒストグラム関連値)をX、加熱終了からn時間経過したタイミングでの含水率(或いはヒストグラム関連値)をXとしたとき、1時間当たりの含水率(或いはヒストグラム関連値)の変化率Yは、数式1によって算出される。
(数式1)
Y=(100×(X-X))/(n×X
【0050】
尚、加熱終了からn時間経過した時点での消化性を判定したい場合であって、n時間経過するまでの間の複数のタイミング(老化開始からn、n、n時間経過したタイミング)での含水率(或いはヒストグラム関連値)を取得しているような場合には、n、n、n、nについてそれぞれ上記数式1によって加熱終了直後からn、n、n時間経過したタイミングでの1時間当たりの含水率(或いはヒストグラム関連値)の変化率をそれぞれ算出し、これらを平均したものを消化性判定可否判断情報の変化率としてもよい。
【0051】
消化性判定可否判断部16は、変化率算出部15で算出された消化性判定可否判断情報の変化率を基に、ヒストグラム作成部13で作成したヒストグラムから得られる消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できるか否かを判断する機能部である。具体的に、本実施形態における消化性判定可否判断部16は、変化率算出部15で算出された1時間当たりの含水率の変化率並びに1時間当たりのヒストグラム関連値の変化率のうち少なくともいずれか一方が所定の閾値未満である場合に、消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できると判断する。尚、1時間当たりの含水率の変化率及び1時間当たりのヒストグラム関連値の変化率に関する閾値は、含水率やヒストグラム関連値を取得する際の元になった偏光画像データの交差角ごとに設定される値であり、例えば、交差角が90°である場合には、予め記憶部19に記憶された交差角が90°である場合の閾値が設定される。また、ヒストグラム関連値の変化率に関する閾値については、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度ごとに設定される値であり、ヒストグラム関連値が尖度である場合には、予め記憶部19に記憶された尖度の閾値が設定される。1時間当たりの含水率の変化率の閾値としては、好ましくは12%/h、より好ましくは15%/hであり、1時間当たりのヒストグラム関連値の変化率の閾値としては、好ましく25%/h、より好ましくは30%/hである。尚、これらの閾値は、老化開始から6時間経過するまでの1時間おきのタイミングで含水率(或いはヒストグラム関連値)を取得して、各タイミングでの1時間当たりの含水率(或いはヒストグラム関連値)の変化率を算出し、これらを平均した変化率を基に決定した閾値であるが、老化開始から任意の時間経過した時点での変化率の閾値として適用可能である。
【0052】
消化性判定情報取得部17は、ヒストグラム作成部13で作成したヒストグラムを基に消化性判定情報を取得する機能部である。消化性判定情報は、ヒストグラムの平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するもののうちから選択される少なくとも1つである。具体的に、本実施形態においては、ヒストグラムの尖度の変化速度及び尖度の絶対値を算出し、これを消化性判定情報として取得する。
【0053】
消化性判定部18は、ヒストグラム作成部13で作成したヒストグラムから得られる消化性判定情報を基に、酒米Rの消化性を判定する機能部である。具体的に、本実施形態の消化性判定部18は、消化性判定情報取得部17が取得した尖度に関する値(尖度の変化速度や尖度の絶対値)に対応する、予め定めた消化性判定情報と消化性との相関関係や重み付け係数などを基に、酒米Rの消化性を判定する。より具体的にいうと、例えば、ヒストグラムを作成する際の元になった偏光画像データが交差角を90°に調整した状態で撮影したものであり、ヒストグラムから得られる尖度と加熱終了直後の偏光画像データから作成したヒストグラムから得られる尖度とを基に算出した尖度の変化速度を消化性判定情報とした場合には、この尖度の変化速度及び交差角が90°である場合の予め定めた尖度の変化速度と消化性の変化速度との相関関係を基に、酒米Rの消化性の変化速度を判定する。また、ヒストグラムから得られる尖度の絶対値を消化性判定情報とした場合、この尖度の絶対値と交差角が90°である場合の予め定めた尖度の絶対値と消化性の絶対値との相関関係を基に、酒米Rの消化性の絶対値を判定する。尚、必要に応じて、相関関係と、この相関関係に関する重み付け係数とを基に酒米Rの消化性(消化性の変化速度や消化性の絶対値)を判定するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態における消化性判定部18は、消化性判定可否判断部16において消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できないと判断された場合には、酒米Rの消化性が加熱終了直後から変化していない(即ち、変化速度がゼロ)或いは消化性の絶対値が加熱終了直後と同等であると判定する。尚、加熱終了直後の酒米Rの消化性の絶対値については、以下のような手法により得ることができる。例えば、加熱終了直後の酒米Rを撮影した偏光画像から得られる輝度情報(例えば、交差角を3°に調整した状態で撮影した偏光画像の平均輝度)から類推することができる。より具体的に言えば、加熱終了直後の酒米Rの偏光画像から平均輝度を取得し、この平均度と、予め定めた平均輝度と消化性との相関関係を基に、加熱終了直後の酒米Rの消化性の絶対値を類推する。また、加熱終了直後の酒米を酵素と反応させ、分解した糖の量(Brix値)を測定し、このBrix値を消化性の絶対値としてもよい。
【0055】
記憶部19は、取り扱う各種情報等を記憶する機能部であり、本実施形態においては、含水率の変化率の閾値やヒストグラム関連値の変化率の閾値、予め定めた消化性判定情報と消化性との相関関係(尖度の変化速度と消化性の変化速度との相関関係や尖度の絶対値と消化性の絶対値との相関関係)、重み付け係数の他、作成したヒストグラムや各機能部で取得、算出した情報(含水率やヒストグラム関連値、これらの変化率、消化性判定情報など)を記憶できるようになっている。
【0056】
次に、以上のような構成を備えた消化性判定システム1を用いて、酒米Rの消化性を判定する方法について説明する。
【0057】
まず、遮光ボックスB内の第一偏光板4上に載置したシャーレの中に加熱終了直後の酒米Rを入れ、ついで、第一偏光板4の偏光軸と第二偏光板5の偏光軸との交差角が3°~180°の任意の角度となるように各偏光板4,5の位置を調整する。尚、以下においては、交差角が90°となるように各偏光板4,5の位置を調整した場合を一例として説明する。
【0058】
次に、ライト3からの光の照射を開始して、第一偏光板4を通った偏光光を酒米Rに照射し(偏光光照射工程)、酒米Rに偏光光を照射した状態で、加熱終了直後の酒米Rの偏光画像や加熱終了から所定時間経過したタイミングでの酒米Rの偏光画像を撮影装置6により撮影する(撮影工程)。
【0059】
ついで、撮影装置6により撮影された酒米Rの偏光画像が画像データ取得部11により取得され(画像データ取得工程)、画像処理部12において、取得された偏光画像データから酒米Rのみを含む領域の偏光酒米画像データが抽出され、抽出された偏光酒米画像データがグレースケール化画像データに変換される(画像変換工程)。その後、ヒストグラム作成部13において、偏光画像データの処理により得られたグレースケール化画像データ中の階調値の分布図(輝度に関するヒストグラム)が作成される(ヒストグラム作成工程)。
【0060】
次に、含水率測定部14において、グレースケール化画像データを基に、加熱される前の酒米の形状と、加熱終了直後の酒米Rの形状及び加熱終了から所定時間経過した時点での酒米Rの形状とを比較して、加熱終了直後の酒米Rの含水率及び加熱終了から所定時間経過した時点での酒米Rの含水率を推定し、これを測定された含水率とする(含水率測定工程)。
【0061】
その後、変化率算出部15において、含水率測定工程で測定された加熱終了直後及び加熱終了から所定時間経過したタイミングでの酒米Rの含水率、並びに、加熱終了直後に撮影した偏光画像データ及び加熱終了から所定時間経過したタイミングで撮影した偏光画像データのそれぞれを基に作成したヒストグラムから得られるヒストグラム関連値を消化性判定可否判断情報として取得する。そして、変化率算出部15において、上記数式1を基に、1時間当たりの含水率の変化率及び1時間当たりのヒストグラム関連値の変化率を算出する(変化率算出工程)。
【0062】
次に、消化性判定可否判断部16において、変化率算出工程で算出された含水率の変化率及びヒストグラム関連値の変化率のうちいずれか一方が所定の閾値未満である場合には、消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できると判断され、閾値以上である場合には、消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できないと判断される(消化性判定可否判断工程)。
【0063】
また、消化性判定情報取得部17において、ヒストグラム作成工程において作成されたヒストグラムを基に、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関する値が算出される(消化性判定情報取得工程)。
【0064】
しかる後、消化性判定可否判断工程で消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できると判断された場合には、消化性判定部18において、消化性判定情報取得工程で取得された消化性判定情報(尖度の変化速度や尖度の絶対値)と、交差角が90°である場合の予め定めた消化性判定情報と消化性との相関関係(尖度の変化速度と消化性の変化速度との相関関係や尖度の絶対値と消化性の絶対値との相関関係)やこの相関関係に関する重み付け係数とを基にして酒米Rの消化性(消化性の変化速度や消化性の絶対値)を判定する(消化性判定工程)。尚、消化性判定可否判断部16において、消化性判定情報を用いて酒米Rの消化性を判定できないと判断された場合には、酒米Rの消化性が加熱終了直後から変化していない(変化速度がゼロ)或いは消化性の絶対値が加熱終了直後と同等であると判定する。
【0065】
以上のように、本実施形態に係る消化性判定システム及び消化性判定方法によれば、酒米Rの偏光画像を撮影し、偏光画像データを基に酒米Rの含水率の変化率や偏光画像データを基に作成したヒストグラムからヒストグラム関連値の変化率を算出し、この算出した含水率の変化率やヒストグラム関連値の変化率を基にして、ヒストグラムから得られる消化性判定情報を基に消化性を判定できるか否かを判断する。そして、消化性を判定できると判断した場合には、消化性判定情報(尖度の変化速度や尖度の絶対値)を基に消化性(消化性の変化速度や消化性の絶対値)を判定することができる。そのため、薬剤や高価な機器、酒米Rに対する煩雑な処理等を必要とすることなく、比較的簡便且つ容易に酒米Rの消化性を判定できる。
【0066】
尚、本実施形態に係る消化性判定システム及び消化性判定方法により酒米Rの消化性として、消化性の変化速度を判定した場合には、この判定した消化性の変化速度を基に、加熱終了から所定時間老化させた場合に酒米Rの消化性の絶対値がどの程度になるかを推測することも可能である。
【0067】
以下、本発明に係る消化性判定システム及び消化性判定方法によって消化性を判定できることを確認するために行った実験について説明する。
【0068】
〔サンプルの調製〕
複数の酒米を水に浸漬させて60分間吸水させた後、これを45分間蒸したものをサンプルとして3つ用意した。
これら3つのサンプルを表1に示すように条件を変えて、蒸しあがり直後から6時間経過するまで老化させた。サンプル1については、温度15℃、湿度60%の下で、風速0.5~1m/sの風を当てながら老化させた。また、サンプル2については、温度15℃、湿度100%の下で、風を当てずに老化させた。また、サンプル3については、温度15℃、湿度60%の下で、風速2m/sの風を当てながら老化させた。
これらサンプル1~3について、蒸しあがり直後を基準として6時間経過するまで1時間経過するごとに酒米を取り出して、含水率の測定及び消化性試験を行った。尚、以下の説明では、蒸しあがり直後のタイミングを「老化0h」、蒸しあがり直後を基準として6時間経過するまでの1時間ごとのタイミングを「老化1h」~「老化6h」と称する。
また、各サンプルについて老化0h~老化6hでの偏光画像を撮影し、偏光画像データを基に作成したヒストグラムから尖度の変化速度や尖度の絶対値を算出し、算出した尖度に関する情報(尖度の変化速度や尖度の絶対値)と消化性試験の結果(消化性の変化速度や消化性の絶対値)との関係を検証した。
更に、尖度に関する情報と消化性(消化性の変化速度や消化性の絶対値)との相関関係を基に消化性(消化性の変化速度や消化性の絶対値)を判定できる場合の条件を検証した。
【0069】
【表1】
【0070】
〔含水率測定〕
各サンプルから複数の酒米を取り出し、これらを温度135℃に調節した恒温槽に1時間入れて焼成した。焼成前後の酒米の重量を測定し、重量変化から各サンプルにおける酒米の含水率を算出した。試験は2回行い、その平均値を算出した。図3図5は、老化0h~老化6hでの酒米の含水率をまとめたグラフであり、図3はサンプル1、図4はサンプル2、図5はサンプル3に関するものである。
【0071】
図3図5に示すように、酒米を老化させる際の環境によって含水率の変化の仕方が大きく異なっている。サンプル1及び3とサンプル2とを比較すると、湿度の高い環境下で老化させたサンプル2は、含水率がほぼ変化していないのに対し、相対的に湿度の低い環境下で老化させたサンプル1及び3では時間の経過とともに含水率が低下している。
【0072】
〔消化性試験〕
消化性とは酒米の酵素による分解され易さを表す指標であるから、酒米を酵素と反応させ、分解した糖の量(Brix値)を測定することで、このBrix値を消化性の指標とすることができる。
まず、0.1Mコハク酸溶液と0.1Mコハク酸ナトリウム溶液を混合し、pH4.3の0.1Mコハク酸緩衝液を調製した。次に、このコハク酸緩衝液にα-アミラーゼを60u/mL、プロテアーゼを3000u/mL含むように混合することで、酵素緩衝液を得た。
ついで、各サンプルから10gの酒米を取り出し、この取り出した酒米に酵素緩衝液50mLを加え、10秒間激しく振とうした後、15℃で24時間静置して消化を行った。尚、必要に応じて防腐剤として0.5mLのトルエンを加えた。
消化後、消化液を遠心分離にかけてろ液を得て、このろ液のBrix値を測定した。尚、Brix値の測定は3回行い、その平均値を算出した。また、老化0hでの酒米のBrix値と老化後所定時間経過時(老化1h、老化3h、老化6h)でのBrix値とを基にBrix値の変化速度(消化性の変化速度)を算出した。
図6図8は、老化0h、老化3h、老化6hでの酒米のBrix値をまとめたグラフであり、図6はサンプル1、図7はサンプル2、図8はサンプル3に関するものである。
【0073】
図6図8に示すように、Brix値の変化の仕方についてはサンプル1及び2とサンプル3との間で大きな違いが見られた。即ち、サンプル1及び2では、時間の経過とともに徐々にBrix値が低下しており、老化が進むにつれて徐々に消化性が低下している。これに対して、サンプル3では、時間の経過によるBrix値の変化がほとんど見られず、老化が進んでも消化性に大きな変化が見られない。これは、風速の速い風を当てながら老化させたことで、蒸しあがり直後の結晶構造が維持されながら水が蒸発したためだと考えられる。
【0074】
〔消化性判定情報の算出〕
上記実施形態に係る消化性判定システムを使用して、2つの偏光板の偏光軸の交差角が90°である場合、135°である場合のそれぞれについて、老化0h~老化6hのタイミングで各サンプルから取り出した酒米の偏光画像を撮影し、得られた偏光画像データを処理してヒストグラムを作成し、尖度の絶対値を算出した。図9図11は、老化0h~老化6hでの酒米の尖度の絶対値をまとめたグラフであり、図9はサンプル1、図10はサンプル2、図11はサンプル3に関するものである。
また、老化0hのタイミングでの尖度の絶対値と老化後所定時間経過時(老化1h、老化3h、老化6h)での尖度の絶対値とを基に尖度の変化速度を算出した。
【0075】
〔消化性判定情報と消化性との関係の検証〕
図12は、サンプル1及び2について、上記算出した尖度の変化速度と消化性試験の結果を基に算出したBrix値の変化速度との関係を示すグラフである。また、図13~15は、各サンプルについて、2つの偏光板の偏光軸の交差角を90°に調整して撮影した偏光画像を基に作成したヒストグラムから算出した尖度の絶対値と、消化性試験の結果(消化性の絶対値としてのBrix値)との関係を示すグラフであり、図13はサンプル1、図14はサンプル2、図15はサンプル3に関するものである。また、表2には、図13図15に示すグラフから得られた相関係数と、相関係数を基に判断した相関の有無とをまとめた表である。更に、表3は、2つの偏光板の偏光軸の交差角を135°に調整して撮影した偏光画像を基に作成したヒストグラムから算出した尖度の絶対値と消化性試験の結果との関係から得られた相関係数、及びこの相関係数を基に判断した相関の有無をまとめた表である。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
図12から分かるように、サンプル1及び2について、交差角を90°に調整した場合のヒストグラムから得られる尖度の絶対値を基に算出した尖度の変化速度と消化性の変化速度との間に高い相関(相関係数0.86)がある。このことから、尖度の変化速度を消化性判定情報として用いて酒米の消化性の変化速度を判定できることが確認できた。
また、図13図15及び表2から分かるように、サンプル1及び2については、交差角を90°に調整した場合のヒストグラムから得られた尖度の絶対値と消化性(Brix値)との間に高い相関がある。また、表3から分かるように、サンプル1及び2については、交差角を135°に調整した場合のヒストグラムから得られた尖度の絶対値と消化性(Brix値)との間に高い相関がある。このことから、サンプル3のように蒸しあがり直後の結晶構造が維持されながら水が蒸発したような場合でなければ、尖度の絶対値を消化性判定情報として用いて酒米の消化性の絶対値を判定できることが確認できた。
【0079】
〔消化性判定可否の判断条件の検証〕
消化性判定情報を用いた酒米の消化性判定可否の判断条件について検証した。表4には、図3図5で示した各サンプルにおける老化1h~老化6hでの酒米の含水率を基に、老化1h~老化6hでの酒米の1時間当たりの含水率の変化率をそれぞれ数式1により算出し、平均した値を示した。また、同じく表4には、図9図11で示した各サンプルにおける老化1h~老化6hでの酒米の尖度を基に、老化1h~老化6hでの酒米の1時間当たりの尖度の変化率をそれぞれ数式1により算出し、平均した値を示した。
【0080】
【表4】
【0081】
表4から各サンプルごとに含水率の変化率及び尖度の変化率に違いが見られ、蒸しあがり直後の結晶構造が維持されながら水が蒸発したと考えられるサンプル3では特に変化率が大きくなっている。そして、上記各サンプル間での含水率の変化率及び尖度の変化率の違いは、老化の過程で酒米中の水分が急速に減少したことにより生じていると考えられる。したがって、含水率の変化率や尖度の変化率を基にすることで、サンプル1及び2のように含水率と消化性との間の相関や尖度と消化性との間に相関を示す場合と、サンプル3のようにこれらの相関を示さない場合とを峻別できる。よって、含水率と消化性との間の相関や尖度と消化性との間に相関を示すような酒米について、消化性判定情報を用いた酒米の消化性の判定を行うことができると判断することができる。
【0082】
以上のように、測定した含水率の変化率やヒストグラムから得られるヒストグラム関連値の変化率を基に、消化性判定情報を用いて消化性を判定できるか否かを判断し、消化性が判定できると判断される場合には、消化性判定情報を基に消化性を判定できることが確認できた。
【0083】
〔別実施形態〕
〔1〕上記実施形態においては、含水率測定部14を設け、消化性判定可否判断情報として含水率の変化率及びヒストグラム関連値の変化率のいずれか一方を採用し、消化性判定情報を用いて酒米の消化性を判定できるか否かを判断する態様としたがこれに限られるものではない。消化性判定システム1を含水率測定部14を設けていない構成とし、消化性判定可否判断情報として、ヒストグラム関連値の変化率のみを使用するようにしてもよい。
【0084】
〔2〕上記実施形態では、含水率測定部14において、グレースケール化画像データを基に酒米の含水率を推定し、これを測定された含水率とする態様としたがこれに限られるものではない。例えば、既知の手法を用いて酒米の含水率を測定するようにしても良い。
【0085】
〔3〕上記実施形態においては、2つの偏光板の偏光軸の交差角を3°~180°の範囲内で調整するものとしたが、これに限られるものではなく、有意な消化性判定情報を得るという観点からすれば、2つの偏光板の偏光軸の交差角を50°~150°の範囲内で調整することが好ましい。
【0086】
〔4〕上記実施形態では、偏光光を酒米に照射し、その透過光を観察するようにしているが、これに限られるものではなく、偏光光を酒米に照射し、偏光光が照射された酒米からの反射光が撮影装置に導かれるように構成し、酒米の偏光画像を撮影する、即ち、反射光を観察するようにしても良い。
【0087】
〔5〕上記実施形態では、撮影装置で撮影した偏光画像データから偏光酒米画像データを抽出し、抽出した偏光酒米画像データをグレースケール化画像データに変換するようにしているが、これに限られるものではない。偏光画像データをグレースケール化した後に、酒米のみを含む領域の画像データを抽出するようにしても良く、輝度に関するヒストグラムの作成が可能となるように、必要に応じて、偏光画像データに対して適宜処理を行えばよい。
【0088】
〔6〕上記実施形態において、消化性判定情報は、平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するもののうちから選択される態様を示したが、消化性判定情報は、輝度に関するヒストグラムから得られる情報であれば、特に限定されるものではなく、上記平均値、中央値、最頻値、尖度及び歪度に関するもの以外の情報であっても良い。
【0089】
上記実施形態(別実施形態を含む)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、水の存在下で加熱された酒米の消化性を判定できる消化性判定システム及び消化性判定方法に利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1 消化性判定システム
2 光学装置(光学手段)
3 ライト(光源)
4 第一偏光板(一方の偏光体)
5 第二偏光板(他方の偏光体)
6 撮影装置(撮影手段)
11 画像データ取得部(画像データ取得手段)
13 ヒストグラム作成部(ヒストグラム作成手段)
14 含水率測定部(含水率測定手段)
15 変化率算出部(変化率算出手段)
16 消化性判定可否判断部(消化性判定可否判断手段)
18 消化性判定部(消化性判定手段)
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