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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231117BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 F
G08G1/09 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020056380
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157427
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南里 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔太郎
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-253214(JP,A)
【文献】特開2015-185004(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126012(WO,A1)
【文献】特開2008-123443(JP,A)
【文献】特開2008-282097(JP,A)
【文献】特開2006-048494(JP,A)
【文献】特開2012-068754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断歩道に向かって自車両が近づく際に自車両の運転を支援するコントローラによる運転支援方法であって、
前記自車両の前方所定距離内に前記横断歩道が存在するか否かを判断し、
前記横断歩道の存在が判断されると、前記横断歩道に対応して設置された信号機であって、前記自車両が走行している自車線に対応する自車線信号機の現示を認識し、
前記横断歩道に対応して設置された信号機であって、前記自車両に向かって対向車が走行する対向車線に対応する対向車線信号機の現示を認識し、
前記自車線信号機の現示が進行可能を示し、且つ、前記対向車線信号機の現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者が前記横断歩道を横断する可能性有りと予測し、
前記歩行者が前記横断歩道を横断する可能性有りと予測した場合、前記歩行者を回避する前記自車両の回避準備動作を実行する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載された運転支援方法において、
前記横断歩道の近傍に歩行者が存在するか否かを検出し、
前記自車線信号機と前記対向車線信号機の現示条件が成立している場合、前記横断歩道の近傍に前記歩行者の存在が検出されると、前記歩行者が前記横断歩道を横断する可能性有りと予測し、前記回避準備動作を実行する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された運転支援方法において、
前記対向車線信号機の現示を認識する場合、前記対向車線の対向車が車線上で停車もしくは停止線に対して減速していることを検出すると、前記対向車線信号機の現示が進行禁止を示す現示であると認識する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された運転支援方法において、
前記対向車線信号機の現示を認識する場合、路車間通信又は車々間通信により前記自車両が外部から取得した通信情報に基づいて、前記対向車線信号機が進行を示す現示か進行禁止を示す現示かを認識する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項5】
請求項2又は請求項2を引用する請求項3又は請求項2を引用する請求項4に記載された運転支援方法において、
前記自車線信号機と前記対向車線信号機の現示条件と歩行者存在条件が成立している場合、前記歩行者が見切り横断する可能性の高さ判定に用いる横断判定事項を検出し、
前記横断判定事項の検出結果に基づいて設定される歩行者横断尤度が所定値以上であると、前記歩行者が前記横断歩道を横断する可能性有りと予測し、前記回避準備動作を実行する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項6】
請求項5に記載された運転支援方法において、
前記横断歩道の近傍に歩行者の存在が検出された場合、前記横断判定事項として前記歩行者の顔向きを検出し、
前記歩行者の顔向きが前記自車両の方向を見ていないと、前記歩行者横断尤度を、前記自車両の方向を見ているときより高い値に設定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項7】
請求項5に記載された運転支援方法において、
前記横断歩道の近傍に歩行者の存在が検出された場合、前記横断判定事項として前記歩行者の人数を計測し、
前記歩行者の人数が所定人数以上であると、前記歩行者横断尤度を前記歩行者の人数が所定人数未満のときよりも高い値に設定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項8】
請求項5に記載された運転支援方法において、
前記横断判定事項として、前記自車線信号機と前記対向車線信号機が時差式信号機であるか否かを検出し、
前記自車線信号機と前記対向車線信号機が時差式信号機であると、前記歩行者横断尤度を前記時差式信号機でないときよりも高い値に設定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項9】
請求項5に記載された運転支援方法において、
前記横断判定事項として、前記横断歩道を有する場所が交差点であるときに前記交差点のサイズを検出し、
前記交差点のサイズが所定サイズより小さいと、前記歩行者横断尤度を、前記交差点のサイズが所定サイズ以上のときより高い値に設定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記回避準備動作は、前記自車両が走行する道路が複数車線であり、且つ、歩道から最も離れた車線以外の車線を走行している場合、前記自車両の走行車線を前記歩道から離れる側の車線へ車線変更する車線変更動作とする
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項11】
請求項1から9までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記回避準備動作は、前記自車両の車速を予め定めた一定減速度で減速する一定減速動作とする
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項12】
請求項1から9までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記回避準備動作は、前記自車両の液圧ブレーキ装置に対し液圧制動力が発生する直前のブレーキ与圧を付与するブレーキ与圧付与動作とする
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項13】
請求項1から9までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記回避準備動作は、前記自車両が回避準備動作を開始するときの車速が所定車速以上である場合、開始車速から予め定めた横断歩道到達域での目標車速まで減速する減速動作とする
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項14】
横断歩道に向かって自車両が近づく際に自車両の運転を支援するコントローラを備える運転支援装置であって、
前記コントローラは、
前記自車両の前方所定距離内に横断歩道が存在するか否かを判断する横断歩道存在判断部と、
前記横断歩道の存在が判断されると、前記横断歩道に対応して設置された信号機であって、前記自車両が走行している自車線に対応する自車線信号機の現示を認識する自車線信号状態認識部と、
前記横断歩道に対応して設置された信号機であって、前記自車両に向かう対向車が走行する対向車線に対応する対向車線信号機の現示を認識する対向車線信号状態認識部と、
前記自車線信号機の現示が進行可能を示し、且つ、前記対向車線信号機の現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者が前記横断歩道を横断する可能性有りと予測する歩行者横断予測部と、
前記歩行者が前記横断歩道を横断する可能性有りと予測した場合、前記歩行者を回避する前記自車両の回避準備動作を実行する車両制御部と、を有する
ことを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、横断歩道に向かって自車両が近づくシーンにおける運転支援方法及び運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横断歩道の歩行者を回避する自動運転車両の経路生成方法として、自車両の周辺情報を取得し、道路上の挙動予測対象者が信号機を視認しているか否かを判定し、視認していると判定した場合に、挙動予測対象者が横断方向に移動することを予測することが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-205965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路上の挙動予測対象者(歩行者)が信号機を視認せずに、例えば、車道上の車両が停止したことを認識して横断歩道を見切り横断してしまう場合がある。この見切り横断の場合は、信号機を視認しているか否かで歩行者が横断方向に移動することを予測することができない、という課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題に着目してなされたもので、横断歩道に向かって自車両が近づくシーンにおいて、見切り横断してしまう歩行者がいても事前に回避準備動作を実行することで、急減速による歩行者回避を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示は、横断歩道に向かって自車両が近づく際に自車両の運転を支援するコントローラによる運転支援方法であって、自車両の前方所定距離内に横断歩道が存在するか否かを判断する。横断歩道の存在が判断されると、横断歩道に対応して設置された信号機であって、自車両が走行している自車線に対応する自車線信号機の現示を認識する。横断歩道に対応して設置された信号機であって、自車両に向かって対向車が走行する対向車線に対応する対向車線信号機の現示を認識する。自車線信号機の現示が進行可能を示し、且つ、対向車線信号機の現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者が横断歩道を横断する可能性有りと予測する。歩行者が横断歩道を横断する可能性有りと予測した場合、歩行者を回避する自車両の回避準備動作を実行する。
【発明の効果】
【0007】
上記課題解決手段を採用したため、横断歩道に向かって自車両が近づくシーンにおいて、見切り横断してしまう歩行者がいても事前に回避準備動作を実行することで、急減速による歩行者回避を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の運転支援方法及び運転支援装置が適用された自動運転車両の自動運転制御システム構成及び行動予測部の詳細構成を示すブロック構成図である。
図2】歩行者の横断予測が必要な自車両の横断歩道接近シーンの一例を示す歩行者横断予測説明図である。
図3】背景技術での歩行者横断予測により横断歩道に向かって自車両が近づく横断歩道接近シーン例において歩行者が見切り横断したときの課題を示す課題説明図である。
図4】本開示での歩行者横断予測により横断歩道に向かって自車両が近づく横断歩道接近シーン例において事前の回避準備動作を示す運転支援作用説明図である。
図5】自動運転制御システムにより実行される行動予測に基づく運転支援処理の流れを示すフローチャートである。
図6】行動予測部により実行される横断歩道に向かって自車両が近づく横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による運転支援方法及び運転支援装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1における運転支援方法及び運転支援装置は、自動運転モードを選択すると、生成された目標経路に沿って走行するように速度及び舵角による車両運動が制御される自動運転車両(運転支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「自動運転制御システム構成」、「行動予測部の詳細構成」に分けて説明する。
【0011】
[自動運転制御システム構成(図1)]
自動運転車両(自車両)は、図1に示すように、物体検出装置1、物体検出統合・追跡部2、自車位置推定装置3、地図記憶装置4、地図内自車位置推定部5、行動予測部6、自車経路生成部7、車両制御部8を自動運転制御システムとして搭載している。
【0012】
物体検出装置1は、レーザレーダ、ミリ波レーダ、ライダー、カメラなどの物体を検出する車載センサを用い、自車両の周囲に存在する物体(例えば、他車両、バイク、自転車、歩行者、障害物など)の位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。検出結果は、例えば、自車両を空中から眺める天頂図において、物体の2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを表現する。
【0013】
物体検出統合・追跡部2は、物体検出装置1から得られた物体検出結果に基づいて、各物体に対して一つの2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを出力する。すなわち、複数の車載センサから得られた複数の物体位置、姿勢、大きさ、速度結果を基に、センサフュージョンなどによって各車載センサの誤差特性なども考慮した上で最も物体位置などの誤差が少なくなるような合理的な一つの2次元位置等を算出する。さらに、異なる時刻に出力された物体位置、姿勢、大きさ、速度などに対して、異なる時刻間における物体の同一性検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体の速度情報を推定する。
【0014】
自車位置推定装置3は、GPS(「Global Positioning System」の略)やオドメトリなど絶対位置を計測するセンサにより自車両の絶対位置、すなわち、ある基準点に対する自車両の位置、姿勢、速度などを計測する。
【0015】
地図記憶装置4は、道路形状や走行車線の情報を含む高精度地図情報を保持しており、高精度地図情報から車線の絶対位置や車線の接続関係、相対位置関係などの自車両や他車両などが走行する道路に関する道路地図情報を取得する。
【0016】
地図内自車位置推定部5は、自車位置推定装置3により得られた自車両の絶対位置と、地図記憶装置4により得られた自車両周辺の道路地図情報とに基づいて、道路地図内における自車両の位置を推定する。すなわち、自車両がどの車線をどちら向きに走行しているかなどの情報を取得する。
【0017】
行動予測部6は、物体検出統合・追跡部2で得られた物体位置情報と、地図内自車位置推定部5で得られた自車両の地図内での位置情報に基づいて、自車両の周囲に存在する物体(例えば、他車両、バイク、自転車、歩行者、など)の行動予測処理を行う。実施例1では、自車両の周囲に存在する物体の様々な行動予測のうち、横断歩道に向かって自車両が近づく際、横断歩道で信号待ちしている歩行者が横断行動に移行する可能性があるかどうかの歩行者横断予測処理を行う。なお、詳しくは後述する「行動予測部の詳細構成」において説明する。
【0018】
自車経路生成部7は、ドライバによる目的地の入力に基づいて目標経路が予め生成されていると共に、目標経路に沿って自車両が走行するときの目標速度を表す目標速度プロファイルが併せて生成されている。よって、行動予測部6において歩行者が横断歩道を横断する可能性有りと予測されると、予め生成されている目標経路と目標速度プロファイルのうち、少なくとも一方を選択される回避準備動作に応じて修正する。
【0019】
車両制御部8は、自車経路生成部7において生成(修正を含む)された目標経路と目標速度プロファイルに沿う自車の走行速度及び舵角となるように、駆動アクチュエータや制動アクチュエータや舵角アクチュエータへ制御指令を出力する車両運動制御を行う。よって、歩行者が横断歩道を横断する可能性有りと予測され、且つ、回避準備動作の態様が車線変更動作又は減速動作である場合は、態様に応じて修正された目標経路と目標速度プロファイルに沿う制御出力により回避準備動作が実行されることになる。また、歩行者横断予測に基づく回避準備動作の態様がブレーキ与圧付加である場合は、予め生成されている目標経路と目標速度プロファイルはそのまま維持し、制動アクチュエータに対してブレーキ与圧付加の指令出力により回避準備動作が実行されることになる。
【0020】
ここで、歩行者横断予測に基づく回避準備動作としては、下記の(a)~(d)に述べるような態様があり、何れか一の態様、或いは、二つ以上の組み合わせ態様を回避準備動作として選択する。なお、例えば、ドライバ要求や状況判断などに基づいて、回避準備動作の態様選択を変更するようにしても良い。
(a) 自車両が走行する道路が複数車線であり、且つ、歩道から最も離れた車線以外の車線を走行している場合、自車両の走行車線を歩道から離れる側の車線へ車線変更する車線変更動作とする。
(b) 自車両の車速を予め定めた一定減速度で減速する一定減速動作とする。
(c) 自車両の液圧ブレーキ装置に対し液圧制動力が発生する直前のブレーキ与圧を付与するブレーキ与圧付与動作とする。
(d) 自車両が回避準備動作を開始するときの車速が所定車速以上である場合、開始車速から予め定めた横断歩道到達域での目標車速まで減速する減速動作とする。
また、回避準備動作としては上記(a)~(d)と同時あるいは別に、車両の乗員へ注意喚起のための表示あるいは発音等を行う報知動作を含んでも良い。
【0021】
[行動予測部の詳細構成(図1図2)]
行動予測部6は、図1に示すように、横断歩道存在判断部601、自車線信号状態認識部602、対向車線信号状態認識部603、横断歩道近傍歩行者検出部604、歩行者横断予測部605を有する。そして、歩行者顔向き検出部606、歩行者人数計測部607、時差式信号機検出部608、交差点サイズ検出部609、歩行者横断尤度判断部610を有する。
【0022】
以下、図2に示すように、自車両をA、対向車をB、歩行者をC、自車両Aの目標経路をTL、交差点をCP、自車両Aが走行する自車線をAL、対向車Bが走行する対向車線をBL、自車線信号機をAS、対向車線信号機をBS、横断歩道をWRという。
【0023】
横断歩道存在判断部601は、自車両Aの前方所定距離内に横断歩道WRが存在するか否かを判断する。ここで、「自車両Aの前方所定距離」とは、自車両Aが緩減速により横断歩道WRへ近づき、横断歩道WRの近傍にて歩行者Cの回避動作を取り得る車速まで低下させることができる回避準備余裕距離をいう。よって、「所定距離」は、例えば、50m~100m程度の距離範囲において、自車両Aの車速が高いほど長い距離で車速が低いほど短い距離に設定される。
【0024】
自車線信号状態認識部602は、横断歩道WRの存在が判断されると、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aが走行している自車線ALに対応する自車線信号機ASの現示を認識する。ここで、自車線信号機ASの現示については、自車両Aの車載カメラ映像情報に基づいて認識する。なお、自車線信号機ASから現示情報が車載カメラ映像情報に基づいて認識できない場合は、路車間通信や車々間通信により自車線信号機ASの現示情報を取得することにより、自車両Aにて自車線信号機ASの現示を認識することもできる。
【0025】
対向車線信号状態認識部603は、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aに向かう対向車Bが走行する対向車線BLに対応する対向車線信号機BSの現示を認識する。
【0026】
ここで、対向車線信号機BSの現示については、自車線信号機ASに比べ自車両Aの車載カメラ映像情報では認識できない場合が多くある。よって、対向車線信号機BSの現示を車載カメラ映像情報で認識できない場合には、下記の何れかの認識手法を用いる。
(a) 対向車線BLの対向車Bが車線上で停車(図2を参照)もしくは停止線に対して減速していることを検出すると、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示す現示であると認識する。但し、対向車線BLの対向車Bの前方が渋滞しており、対向車Bが交差点CPを通過して対向車線信号機BSの先に進入できない状況であると、対向車Bの挙動による対向車線信号機BSの現示を認識する処理そのものを禁止することによって、対向車Bが車線上で停車もしくは停止線に対して減速していると検出されないようにする。
(b) 路車間通信又は車々間通信により自車両Aが外部から取得した通信情報に基づいて、対向車線信号機BSが進行を示す現示か進行禁止を示す現示かを認識する。なお、路車間通信においては、例えば、信号機等のインフラに設けられた発信機から発信される対向車線信号機BSの現示を示す信号を自車両Aに設けられた受信機で受信して、受信した信号に基づいて対向車線信号機BSの現示を認識する。このような情報通信システムとしては例えば、自車両Aからは見えないものを可視化するI2V(Invisible-to-Visible)と呼ばれる情報通信システムなどが利用される。車々間通信では、車線上で停車もしくは停止線に対して減速している対向車Bから送信される対向車線信号機BSの現示情報を受信することにより取得する。
【0027】
横断歩道近傍歩行者検出部604は、物体検出統合・追跡部2からの入力情報に基づいて、横断歩道WRの近傍に歩行者Cが存在するか否かを検出する。特に、横断歩道WRの近傍に存在する歩行者Cとしては、図2に示すように、自車線信号機ASの現示に比べて対向車線信号機BSの現示が観察しやすい自車線信号機ASの柱に近くの位置に存在し、見切り横断する可能性の高い歩行者Cを検出する。
【0028】
歩行者横断予測部605は、自車線信号機ASの現示が進行可能を示し、且つ、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者Cが横断歩道WSを横断する可能性有りと予測することを基本予測とする。しかし、自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件が成立している場合であっても、横断歩道WSの近傍に歩行者Cの存在が検出されないと、行動予測の対象である歩行者Cそのものが存在しないため、歩行者Cが横断歩道WSを横断する可能性無しであると予測する。即ち、実施例1では、自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件が成立し、且つ、横断歩道WSの近傍に歩行者Cの存在が検出されると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測することを予測ベースとする。加えて、後述する歩行者横断尤度判断部610において、歩行者横断尤度条件が成立すると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りとの予測を確定する。
【0029】
歩行者顔向き検出部606は、横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出された場合、横断判定事項として歩行者Cの顔向きを検出する。そして、歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ていないと、歩行者横断尤度を、自車両Aの方向を見ているときより高い値に設定する。ここで、「歩行者Cの顔向き検出」としては、例えば、歩行者Cの顔のうち両目と口を結ぶ三角形の形状に基づいて顔の上下方向を認識し、歩行者Cの顔のうち目と眉までの距離に基づいて顔の左右方向を認識する周知の検出手法が用いられる(特開2008-186247号公報などを参照)がこれに限定されず、他の手法を用いて顔向きを検出しても良い。
【0030】
歩行者人数計測部607は、横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出された場合、横断判定事項として歩行者Cの人数を計測する。そして、歩行者Cの人数が所定人数以上であると、歩行者横断尤度を歩行者Cの人数が所定人数未満のときよりも高い値に設定する。ここで、「歩行者Cの人数」は、物体検出統合・追跡部2からの入力情報に基づいて計測する。「所定人数」は、例えば、歩道と横断歩道WRとの境目付近に2人以上の歩行者Cがいる場合に見切り横断する可能性が高くなるという観点で2人に設定する。
【0031】
時差式信号機検出部608は、横断判定事項として、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機であるか否かを検出する。そして、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機であると、歩行者横断尤度を時差式信号機でないときよりも高い値に設定する。ここで、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機であるか否かの情報は、例えば、高精度地図情報により取得する。
【0032】
交差点サイズ検出部609は、横断判定事項として、横断歩道WRを有する場所が交差点CPであるときに交差点CPのサイズを検出する。そして、交差点CPのサイズが所定サイズより小さいと、歩行者横断尤度を、交差点CPのサイズが所定サイズ以上のときより高い値に設定する。ここで、「交差点CPの所定サイズ」は、許容可能な急減速度と自車両Aが走行する道路の法定最高速度の観点から設定する。
【0033】
歩行者横断尤度判断部610は、自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件と歩行者存在条件が成立している場合、歩行者Cが見切り横断する可能性の高さ判定に用いる横断判定事項(歩行者顔向き、歩行者人数、時差式信号機、交差点サイズ)を検出する。そして、横断判定事項の検出結果に基づいて設定される歩行者横断尤度が所定値以上であると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し、回避準備動作を実行する。
【0034】
ここで、「歩行者横断尤度」は、例えば、歩行者顔向き、歩行者人数、時差式信号機、交差点サイズのそれぞれの検出結果に基づいて設定される各歩行者横断尤度を合計した合計値とする。「歩行者横断尤度の所定値」は、歩行者横断尤度の大きさと見切り横断の発生頻度との関係を実験などにより求め、歩行者Cによる見切り横断が発生する可能性が高くなる歩行者横断尤度の閾値に設定する。
【0035】
次に、横断歩道接近シーンでの運転支援技術について説明する。そして、実施例1の作用を、「行動予測に基づく運転支援処理作用」、「横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理作用」に分けて説明する。
【0036】
[横断歩道接近シーンでの運転支援技術について(図3図4)]
横断歩道接近シーンでの運転支援の背景技術では、横断歩道の歩行者を回避する自動運転車両の経路生成方法として、自車両の周辺情報を取得し、道路上の挙動予測対象者が信号機を視認しているか否かを判定し、視認していると判定した場合に、挙動予測対象者が横断方向に移動することを予測している(特開2018-205965号公報を参照)。
【0037】
しかしながら、背景技術にあっては、道路上の挙動予測対象者が信号機を視認せずに、例えば、歩行者Cが車道上の車両が停止したことを認識して横断歩道を見切り横断してしまう場合がある。この見切り横断の場合は、信号機を視認しているか否かで歩行者が横断方向に移動することを予測することができない、という課題がある。
【0038】
特に、図3に示すように、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機である場合において、自車両Aが横断歩道WRへ近づくシーンを想定する。この横断歩道接近シーンにおいて、自車線信号機ASが青のままで、対向車線信号機BSが青から赤に切り替わったことで対向車線BL上の対向車Bが停止すると、歩行者Cが対向車線BL上の対向車Bが停止したことを認識して見切り横断することが多くみられる。
【0039】
この場合、背景技術では、上記のように、歩行者Cの見切り横断を予測することができないため、自車両Aの走行は、例えば、予め生成された目標速度プロファイルなどに基づいて減速することなく横断歩道WRへ近づいてゆく走行となる。よって、自車両Aにおいて見切り横断している歩行者Cを検出する検出タイミングが、自車両Aが既に横断歩道WRの直前位置まで近づいたタイミングとなってしまう。この結果、自車両Aの減速により歩行者Cを回避するには、図3の矢印Xに示すように、歩行者Cの検出タイミングでの自車両Aの位置と横断歩道WRの位置との短い距離を使っての急減速を余儀なくされることになる。
【0040】
上記背景技術に対してその解決手法を検証した結果、
(A) 横断歩道WRに向かって自車両Aが近づくシーンにおいては、自車線信号機ASの現示が進行可能を示すときに対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示していると、歩行者Cが横断歩道WRを見切り横断する可能性が高い。
(B) 歩行者Cが横断歩道WRを見切り横断すると予測した場合、予測タイミングで歩行者Cを回避する回避準備動作を開始すると、自車両Aの位置と横断歩道WRの位置との間に長い回避準備余裕距離を確保することができる。
という点に着目した。
【0041】
上記着目点に基づいて本開示の運転支援方法は、自車両Aの前方所定距離内に横断歩道WRが存在するか否かを判断する。横断歩道WRの存在が判断されると、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aが走行している自車線ALに対応する自車線信号機ASの現示を認識する。自車線信号機ASの現示が進行可能を示す現示であると認識されると、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aに向かって対向車Bが走行する対向車線BLに対応する対向車線信号機BSの現示を認識する。自車線信号機ASの現示が進行可能を示し、且つ、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測する。歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測した場合、歩行者Cを回避する自車両Aの回避準備動作を実行する、という課題解決手段を採用した。
【0042】
即ち、自車線信号機ASの現示が進行可能を示し、且つ、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測される。この歩行者横断予測の場合、自車線信号機ASと対向車線信号機BSの信号機現示条件を判定しているため、歩行者Cが周囲のオブジェクトを視認しているか否かを判定することを要さない。加えて、信号機現示条件の判定による歩行者横断予測であるため、図4に示すように、歩行者Cによる周囲オブジェクトの視認により判定する場合に比べ、横断歩道WRからより離れた位置を走行している自車両Aにおいて、歩行者Cの見切り横断を予測できることになる。
【0043】
そして、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測した場合、歩行者Cを回避する自車両Aの回避準備動作が実行される。このため、横断歩道WRから離れた位置を走行している自車両Aによって歩行者横断予測がなされると、図4に示すように、歩行者Cの歩行者横断予測タイミングでの自車両Aの位置と横断歩道WRの位置との間に十分に長い回避準備余裕距離Lが確保される。よって、例えば、自車両Aの減速により歩行者Cを回避する場合には、図4の矢印Yに示すように、長い回避準備余裕距離Lを使っての緩減速により歩行者Cを回避することが可能になる。
【0044】
このように、横断歩道WRに向かって自車両Aが近づくシーンにおいて、信号機現示条件の判定により歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し、歩行者横断が予測されると予測タイミングで回避準備動作を開始している。この結果、横断歩道WRに向かって自車両Aが近づくシーンにおいて、見切り横断してしまう歩行者Cがいても事前に回避準備動作を実行することで、急減速による歩行者回避を防止することができる。
【0045】
ちなみに、発明者実験によると、背景技術においては、歩行者が見切り横断していることを交差点の20m手前で検出し、10mを使って10km/hまで減速すると、減速度=0.59Gによる急減速が発生した。これに対し、本開示においては、交差点の50m手前で歩行者が見切り横断する可能性があることを予測し、40mを使って10km/hまで減速すると、減速度=0.15Gによる緩減速となった。つまり、自車両の減速度が、(0.59G)→(0.15G)まで低下し、75%の減速度改善効果が確認された。
【0046】
[行動予測に基づく運転支援処理作用(図5)]
図5は、自動運転制御システム(図1)により実行される行動予測に基づく運転支援処理の流れを示すフローチャートである。以下、図5に基づいて行動予測に基づく運転支援処理作用を説明する。
【0047】
ステップS1では、処理開始すると、物体検出装置1において、物体を検出する車載センサを用い、自車両の周囲に存在する物体(対向車B、歩行者C)の位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する物体検出処理が行われる。
【0048】
次のステップS2では、物体検出統合・追跡部2において、物体検出処理により得られた物体検出結果に基づいて、各物体に対して一つの2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを出力する物体検出統合・追跡処理が行われる。
【0049】
次のステップS3では、自車位置推定装置3において、GPSやオドメトリなど絶対位置を計測するセンサにより自車両Aの絶対位置、すなわち、ある基準点に対する自車両Aの位置、姿勢、速度などを計測する自車位置情報取得処理が行われる。
【0050】
次のステップS4では、地図記憶装置4において、高精度地図情報に基づいて、自車両Aや対向車Bなどが走行する道路に関する道路地図情報を取得する地図情報取得処理が行われる。
【0051】
次のステップS5では、地図内自車位置推定部5において、自車両Aの絶対位置と自車両周辺の道路地図情報とに基づいて、道路地図内における自車両Aの位置を推定する地図内自車位置推定処理が行われる。
【0052】
次のステップS6では、行動予測部6において、地図内自車位置推定処理までに得られた情報に応じて自車両Aの周囲に存在する物体の行動予測をする行動予測処理を行う。具体的には、行動予測処理のうち、横断歩道WRに向かって自車両Aが近づく際、横断歩道WRで信号待ちしている歩行者Cが横断行動に移行する可能性があるかどうかの歩行者横断予測処理(図6)を行う。
【0053】
次のステップS7では、自車経路生成部7において、行動予測処理の結果に応じて自車経路を生成する自車経路生成処理を行う。具体的には、自車経路生成処理のうち、歩行者横断予測処理により歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りとの予測情報を入力すると、予め生成されている目標経路と目標速度プロファイルのうち少なくとも一方を回避準備動作の態様に応じて修正する。
【0054】
次のステップS8では、車両制御部8において、自車経路生成処理において生成された目標経路と目標速度プロファイルに沿う自車の走行速度及び舵角となるように、各アクチュエータへ制御指令を出力する運動制御処理を行い、処理終了へ進む。具体的には、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測した場合、歩行者Cを回避する自車両Aの回避準備動作を実行する。
【0055】
即ち、歩行者横断予測に基づく回避準備動作の態様が車線変更動作又は減速動作である場合、態様に応じて修正された目標経路と目標速度プロファイルに沿う制御出力により回避準備動作を実行する。また、歩行者横断予測に基づく回避準備動作の態様がブレーキ与圧付加である場合、予め生成されている目標経路と目標速度プロファイルはそのまま維持し、制動アクチュエータに対してブレーキ与圧付加の指令出力により回避準備動作を実行する。以下、歩行者横断予測に基づく回避準備動作の態様毎の特徴を説明する。
【0056】
(a) 自車両Aが走行する道路(自車線AL)が複数車線であり、且つ、歩道から最も離れた車線以外の車線を走行している場合、回避準備動作を、自車両Aの走行車線を歩道から離れる側の車線へ車線変更する車線変更動作とする。このため、歩道から見切り横断している歩行者Cが歩道側の車線を横断してしまった場合にも自車両Aの進路と交差することを回避することができる。
【0057】
(b) 回避準備動作を、自車両Aの車速を予め定めた一定減速度で減速する一定減速動作とする。このため、自車両Aの減速度を変動させずに減速することで、乗員の乗り心地が低下することなく回避準備動作を実行することができる。
【0058】
(c) 回避準備動作を、自車両Aの液圧ブレーキ装置に対し液圧制動力が発生する直前のブレーキ与圧を付与するブレーキ与圧付与動作とする。このため、見切り横断する歩行者Cがいた場合にも、見切り横断したことを観測した瞬間に減速を開始できることで、自車両Aにおいて液圧制動力が発生までの空走区間が減少し、急減速の程度を抑えることができる。
【0059】
(d) 自車両Aが回避準備動作を開始するときの車速が所定車速以上である場合、回避準備動作を、開始車速から予め定めた横断歩道到達域での目標車速まで減速する減速動作とする。このため、見切り横断する歩行者Cがいた場合に急減速にならない程度の減速度になることで、乗員の乗り心地が低下することなく、見切り横断した歩行者Cを回避することができる。
【0060】
[横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理作用(図6)]
図6は、行動予測部6により実行される横断歩道WRに向かって自車両Aが近づく横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理の流れを示すフローチャートである。以下、図6に基づいて横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理作用を説明する。
【0061】
ステップS601では、行動予測開始に続き、横断歩道存在判断部601において、自車両Aの前方所定距離内に横断歩道WRが存在するか否かを判断する。YES(横断歩道WRが存在する)の場合はステップS602へ進み、NO(横断歩道WRが存在しない)の場合はステップS601の判断を繰り返す。
【0062】
ステップS602では、S601でのYESの判断に続き、自車線信号状態認識部602において、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aが走行している自車線ALに対応する自車線信号機ASの現示を認識する。
【0063】
次のステップS603では、S602に続き、自車線信号機ASの現示が進行可能を示す現示であるか否かを判断する。YES(自車線信号機ASの現示が進行可能)の場合はステップS604へ進み、NO(自車線信号機ASの現示が進行禁止)の場合はステップS611へ進む。
【0064】
ステップS604では、S603でのYESとの判断に続き、対向車線信号状態認識部603において、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aに向かう対向車Bが走行する対向車線BLに対応する対向車線信号機BSの現示を認識する。
【0065】
次のステップS605では、S604に続き、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示す現示であるか否かを判断する。YES(対向車線信号機BSの現示が進行禁止)の場合はステップS606へ進み、NO(対向車線信号機BSの現示が進行可能)の場合はステップS611へ進む。
【0066】
ステップS606では、S605でのYESの判断に続き、横断歩道近傍歩行者検出部604において、横断歩道WRの近傍に存在する歩行者Cを検出し、ステップS607へ進む。
【0067】
次のステップS607では、S606に続き、横断歩道WRの近傍に歩行者Cが存在するか否かを判断する。YES(歩行者Cあり)の場合はステップS608へ進み、NO(歩行者Cなし)の場合はステップS611へ進む。
【0068】
ステップS608では、S607でのYESの判断に続き、歩行者Cが見切り横断する可能性の高さ判定に用いる横断判定事項(歩行者顔向き、歩行者人数、時差式信号機、交差点サイズ)を検出し、ステップS609へ進む。
【0069】
次のステップS609では、S608に続き、歩行者顔向き、歩行者人数、時差式信号機、交差点サイズのそれぞれの検出結果に基づいて設定される各歩行者横断尤度を合計した値による歩行者横断尤度が所定値以上であるか否かを判断する。YES(歩行者横断尤度≧所定値)の場合はステップS610へ進み、NO(歩行者横断尤度<所定値)の場合はステップS611へ進む。
【0070】
ステップS610では、S609でのYESの判断に続き、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し、行動予測終了へ進む。
【0071】
ステップS611では、S603,S605,S607,S609の何れかでのNOとの判断に続き、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性無しと予測し、行動予測終了へ進む。
【0072】
このように、横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理では、自車両Aの前方所定距離内に横断歩道WRが存在する場合、S603,S605,S607,S609での各条件が全て成立であると、ステップS610へ進み、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測される。一方、横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理では、自車両Aの前方所定距離内に横断歩道WRが存在する場合、S603,S605,S607,S609での各条件の少なくとも一つの条件が不成立であると、ステップS611へ進み、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性無しと予測される。以下、実施例1における横断歩道接近シーンでの歩行者横断予測処理による特徴を説明する。
【0073】
実施例1では、横断歩道WRの近傍に歩行者Cが存在するか否かを検出する(S606)。自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件が成立している場合、横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出されると(S607でYES)、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し(S610)、回避準備動作を実行する。
【0074】
即ち、横断歩道WRの近傍に歩行者Cが存在する歩行者存在条件を、信号機現示条件に加えている。これによって、自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件が成立している場合であっても、横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出されないと(S607でNO)、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性無しと予測され(S611)、回避準備動作が実行されない。このため、見切り横断する可能性のある歩行者Cがいる場合にのみ回避準備動作が実行されることで、歩行者Cがいない場合に回避準備動作が実行されることを回避することができる。
【0075】
例えば、自車線信号機ASの柱に近くに信号待ちしている歩行者Cが存在する場合、自車線信号機ASの現示は観測できない、もしくは、観測しにくいが、対向車線信号機BSの現示は観測しやすい。このような場所にいる歩行者Cは、対向車線BL上の対向車Bが停止したことを認識することによって横断歩道WRを見切り横断する可能性が高くなる。なぜならば、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機として認識している歩行者Cは少なく、自分の見えている範囲の対向車線信号機BSの現示が進行可能から進行禁止に変化し、対向車Bが停止した場合、自車線信号機ASも進行禁止になったと誤って判断しやすいためである。
【0076】
実施例1では、対向車線信号機BSの現示を認識する場合、対向車線BLの対向車Bが車線上で停車もしくは停止線に対して減速していることを検出すると、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示す現示であると認識する。
【0077】
即ち、対向車線BLの対向車Bは、対向車線信号機BSの現示が進行禁止であるために停車、もしくは、停止線に対して減速していることが推測できる。よって、対向車線信号機BSの現示を自車両A側から見ることのできない場合、対向車線BLに対応する対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示していることを間接的に検出することが可能となる。このため、対向車線信号機BSの現示を車載センサにより直接検出できない場合、対向車Bの挙動を検出する車載センサのみで、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示していることを検出することができる。
【0078】
実施例1では、対向車線信号機BSの現示を認識する場合、路車間通信又は車々間通信により自車両Aが外部から取得した通信情報に基づいて、対向車線信号機BSが進行を示す現示か進行禁止を示す現示かを認識する。
【0079】
即ち、路車間通信や車々間通信のシステムが確立していると、自車両Aからのリクエストにより現在の対向車線BLに対応する対向車線信号機BSの現示情報をクラウドや他車両から取得することが可能である。このため、対向車線信号機BSの現示を車載センサにより直接検出できない場合、自車両Aが外部から受信により取得した情報に基づいて、対向車線信号機BSの現示が進行可能を示すか進行禁止を示すかを検出することができる。
【0080】
実施例1では、自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件と歩行者存在条件が成立している場合、歩行者Cが見切り横断する可能性の高さ判定に用いる横断判定事項を検出する。横断判定事項の検出結果に基づいて設定される歩行者横断尤度が所定値以上であると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し、回避準備動作を実行する。
【0081】
即ち、自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件と歩行者存在条件が成立している場合であっても、歩行者Cが見切り横断する可能性が低いと判定できる状況がある。よって、歩行者Cが見切り横断する可能性の高さ判定に用いる横断判定事項を検出し、横断判定事項の検出結果に基づいて設定される歩行者横断尤度が所定値以上である場合に限って歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測している。このため、歩行者Cが見切り横断する可能性が低い状況の場合に回避準備動作の実行を抑えながら、歩行者Cが見切り横断する可能性が高い状況の場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0082】
実施例1では、横断判定事項として歩行者Cの顔向きを検出する。歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ていないと、歩行者横断尤度を、自車両Aの方向を見ているときより高い値に設定する。
【0083】
即ち、歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ていない場合には、歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ている場合に比べ、自車両Aが走行して近づいていることを認識できないことで見切り横断する可能性が高まる。このため、歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ている場合に回避準備動作の実行を抑えながら、歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ていない場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0084】
実施例1では、横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出された場合、横断判定事項として歩行者Cの人数を計測する。歩行者Cの人数が所定人数以上であると、歩行者横断尤度を歩行者Cの人数が所定人数未満のときよりも高い値に設定する。
【0085】
即ち、歩行者Cの人数が所定の人数以上である場合には、歩行者Cの人数が所定人数未満である場合に比べ、見切り横断の確率が歩行者Cの人数に比例することで見切り横断する可能性が高まる。このため、歩行者Cの人数が所定人数未満である場合に回避準備動作の実行を抑えながら、歩行者Cの人数が所定人数以上である場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0086】
実施例1では、横断判定事項として、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機であるか否かを検出する。自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機であると、歩行者横断尤度を時差式信号機でないときよりも高い値に設定する。
【0087】
即ち、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機でない場合には、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機の場合に比べ、自車線信号機ASの現示と対向車線信号機BSの現示に時間差があることで見切り横断する可能性が高まる。このため、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機でない場合に回避準備動作の実行を抑えながら、時差式信号機である場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0088】
実施例1では、横断判定事項として、横断歩道WRを有する場所が交差点CPであるときに交差点CPのサイズを検出する。交差点CPのサイズが所定サイズより小さいと、歩行者横断尤度を、交差点CPのサイズが所定サイズ以上のときより高い値に設定する。
【0089】
即ち、横断歩道WRを有する交差点CPのサイズが所定サイズより小さい場合には、交差点CPのサイズが所定サイズ以上の場合に比べ、歩行者Cによる横断距離が短くなることで見切り横断する可能性が高まる。このため、横断歩道WRを有する交差点CPのサイズが所定サイズ以上の場合に回避準備動作の実行を抑えながら、交差点CPのサイズが所定サイズより小さい場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0090】
以上説明したように、実施例1の自動運転車両における運転支援方法及び運転支援装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0091】
(1) 横断歩道WRに向かって自車両Aが近づく際に自車両Aの運転を支援するコントローラ(自動運転制御システム)による運転支援方法であって、
自車両Aの前方所定距離内に横断歩道WRが存在するか否かを判断し(S601)、
横断歩道WRの存在が判断されると、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aが走行している自車線ALに対応する自車線信号機ASの現示を認識し(S602)、
横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aに向かって対向車Bが走行する対向車線BLに対応する対向車線信号機BSの現示を認識し(S603、S604)、
自車線信号機ASの現示が進行可能を示し、且つ、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し(S610)、
歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測した場合、歩行者Cを回避する自車両Aの回避準備動作を実行する(図6)。
このため、横断歩道WRに向かって自車両Aが近づくシーンにおいて、見切り横断してしまう歩行者Cがいても事前に回避準備動作を実行することで、急減速による歩行者回避を防止する運転支援方法を提供することができる。
【0092】
(2) 横断歩道WRの近傍に歩行者Cが存在するか否かを検出し(S606)、
自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件が成立している場合、横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出されると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し、回避準備動作を実行する(図6)。
このため、見切り横断する可能性のある歩行者Cがいる場合にのみ回避準備動作が実行されることで、歩行者Cがいない場合に回避準備動作が実行されることを回避することができる。
【0093】
(3) 対向車線信号機BSの現示を認識する場合、対向車線BLの対向車Bが車線上で停車もしくは停止線に対して減速していることを検出すると、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示す現示であると認識する(図6)。
このため、対向車線信号機BSの現示を車載センサにより直接検出できない場合、対向車Bの挙動を検出する車載センサのみで、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示していることを検出することができる。
【0094】
(4) 対向車線信号機BSの現示を認識する場合、路車間通信又は車々間通信により自車両Aが外部から取得した通信情報に基づいて、対向車線信号機BSが進行を示す現示か進行禁止を示す現示かを認識する(図6)。
このため、対向車線信号機BSの現示を車載センサにより直接検出できない場合、自車両Aが外部から受信により取得した情報に基づいて、対向車線信号機BSの現示が進行可能を示すか進行禁止を示すかを検出することができる。
【0095】
(5) 自車線信号機ASと対向車線信号機BSの現示条件と歩行者存在条件が成立している場合、歩行者Cが見切り横断する可能性の高さ判定に用いる横断判定事項を検出し(S608)、
横断判定事項の検出結果に基づいて設定される歩行者横断尤度が所定値以上であると(S609でYES)、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測し(S610)、回避準備動作を実行する(図6)。
このため、歩行者Cが見切り横断する可能性が低い状況の場合に回避準備動作の実行を抑えながら、歩行者Cが見切り横断する可能性が高い状況の場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0096】
(6) 横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出された場合、横断判定事項として歩行者Cの顔向きを検出し、
歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ていないと、歩行者横断尤度を、自車両Aの方向を見ているときより高い値に設定する(図6)。
このため、歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ている場合に回避準備動作の実行を抑えながら、歩行者Cの顔向きが自車両Aの方向を見ていない場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0097】
(7) 横断歩道WRの近傍に歩行者Cの存在が検出された場合、横断判定事項として歩行者Cの人数を計測し、
歩行者Cの人数が所定人数以上であると、歩行者横断尤度を歩行者の人数が所定人数未満のときよりも高い値に設定する(図6)。
このため、歩行者Cの人数が所定人数未満である場合に回避準備動作の実行を抑えながら、歩行者Cの人数が所定人数以上である場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0098】
(8) 横断判定事項として、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機であるか否かを検出し、
自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機であると、歩行者横断尤度を時差式信号機でないときよりも高い値に設定する(図6)。
このため、自車線信号機ASと対向車線信号機BSが時差式信号機でない場合に回避準備動作の実行を抑えながら、時差式信号機である場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0099】
(9) 横断判定事項として、横断歩道WRを有する場所が交差点CPであるときに交差点CPのサイズを検出し、
交差点CPのサイズが所定サイズより小さいと、歩行者横断尤度を、交差点CPのサイズが所定サイズ以上のときより高い値に設定する(図6)。
このため、横断歩道WRを有する交差点CPのサイズが所定サイズ以上の場合に回避準備動作の実行を抑えながら、交差点CPのサイズが所定サイズより小さい場合、歩行者Cの見切り横断有りとの予測に基づいて回避準備動作を実行させることができる。
【0100】
(10) 回避準備動作は、自車両Aが走行する道路が複数車線であり、且つ、歩道から最も離れた車線以外の車線を走行している場合、自車両Aの走行車線を歩道から離れる側の車線へ車線変更する車線変更動作とする(図5)。
このため、歩道から見切り横断している歩行者Cが歩道側の車線を横断してしまった場合にも自車両Aの進路と交差することを回避することができる。
【0101】
(11) 回避準備動作は、自車両Aの車速を予め定めた一定減速度で減速する一定減速動作とする(図5)。
このため、自車両Aの減速度を変動させずに減速することで、乗員の乗り心地が低下することなく回避準備動作を実行することができる。
【0102】
(12) 回避準備動作は、自車両Aの液圧ブレーキ装置に対し液圧制動力が発生する直前のブレーキ与圧を付与するブレーキ与圧付与動作とする(図5)。
このため、見切り横断する歩行者Cがいた場合にも、見切り横断したことを観測した瞬間に減速を開始できることで、自車両Aにおいて液圧制動力が発生までの空走区間が減少し、急減速の程度を抑えることができる。
【0103】
(13) 回避準備動作は、自車両Aが回避準備動作を開始するときの車速が所定車速以上である場合、開始車速から予め定めた横断歩道到達域での目標車速まで減速する減速動作とする(図5)。
このため、見切り横断する歩行者Cがいた場合に急減速にならない程度の減速度になることで、乗員の乗り心地が低下することなく、見切り横断した歩行者Cを回避することができる。
【0104】
(14) 横断歩道WRに向かって自車両Aが近づく際に自車両Aの運転を支援するコントローラ(自動運転制御システム)を備える運転支援装置であって、
コントローラ(自動運転制御システム)は、
自車両Aの前方所定距離内に横断歩道WRが存在するか否かを判断する横断歩道存在判断部601と、
横断歩道WRの存在が判断されると、横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aが走行している自車線ALに対応する自車線信号機ASの現示を認識する自車線信号状態認識部602と、
横断歩道WRに対応して設置された信号機であって、自車両Aに向かう対向車Bが走行する対向車線BLに対応する対向車線信号機BSの現示を認識する対向車線信号状態認識部603と、
自車線信号機ASの現示が進行可能を示し、且つ、対向車線信号機BSの現示が進行禁止を示すことを認識すると、歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測する歩行者横断予測部605と、
歩行者Cが横断歩道WRを横断する可能性有りと予測した場合、歩行者Cを回避する自車両の回避準備動作を実行する車両制御部8と、を有する(図1)。
このため、横断歩道WRに向かって自車両Aが近づくシーンにおいて、見切り横断してしまう歩行者Cがいても事前に回避準備動作を実行することで、急減速による歩行者回避を防止する運転支援装置を提供することができる。
【0105】
以上、本開示の運転支援方法及び運転支援装置を、実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0106】
実施例1では、自車経路生成部7として、ドライバが目的地を入力すると、自車の現在地から目的地までを結ぶ走行予定経路としての目標経路TLや目標速度プロファイルを予め生成する例を示した。しかし、自車経路としては、目標経路を予め生成しない場合においても、自車の現在地から目的地までを結ぶ道路単位の走行ルートを決めると、周囲物体の行動予測などに基づいて、車線単位の走行予定経路を算出により求めるようにしても良い。さらに、運転支援車両の場合、目標経路と目標速度プロファイルを生成する自車経路生成部7を有さない場合がある。しかし、例えば、先行車追従制御による運転支援車両の場合、走行車線の変更動作や減速動作などを指示する制御により、歩行者横断予測に基づく回避準備動作に対応することができる。
【0107】
実施例1では、本開示の運転支援方法及び運転支援装置を、目標経路に沿って走行するように車両運動が制御される自動運転車両に適用する例を示した。しかし、本開示の運転支援方法及び運転支援装置は、自動運転車両に限らず、オートクルーズ機能やレーンキープ機能などを備え、少なくともステアリング操作/アクセル操作/ブレーキ操作の何れか一つの運転操作を支援する運転支援車両に対しても適用することができる。また、運転者がステアリング操作/アクセル操作/ブレーキ操作を実施する手動運転車においても、歩行者横断予測に基づいて運転者に注意喚起の報知をすることで、回避準備動作を実施することができる。また、本開示の運転支援方法及び運転支援装置を適用する車両としては、エンジン車、ハイブリッド車、電気自動車、等のあらゆる種類の車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 物体検出装置
2 物体検出統合・追跡部
3 自車位置推定装置
4 地図記憶装置
5 地図内自車位置推定部
6 行動予測部
601 横断歩道存在判断部
602 自車線信号状態認識部
603 対向車線信号状態認識部
604 横断歩道近傍歩行者検出部
605 歩行者横断予測部
606 歩行者顔向き検出部
607 歩行者人数計測部
608 時差式信号機検出部
609 交差点サイズ検出部
610 歩行者横断尤度判断部
7 自車経路生成部
8 車両制御部
A 自車両
B 対向車
C 歩行者
TL 目標経路(自車両Aの走行予定経路)
CP 交差点
AL 自車線
BL 対向車線
AS 自車線信号機
BS 対向車線信号機
WR 横断歩道
図1
図2
図3
図4
図5
図6