(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】トンネル施工装置及びトンネル施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
E21D20/00 M
E21D20/00 X
(21)【出願番号】P 2020104723
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 耕介
(72)【発明者】
【氏名】坪倉 聖一
(72)【発明者】
【氏名】牟田口 茂
(72)【発明者】
【氏名】岩野 圭太
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 隆明
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065536(JP,A)
【文献】特開2013-028923(JP,A)
【文献】特開平10-088568(JP,A)
【文献】特開平08-053833(JP,A)
【文献】特開平05-163717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル施工装置であって、
地山に形成された孔に充填材を注入する注入ロッドと、
前記注入ロッドを前記孔内で移動させる注入ロッド駆動部と、
前記注入ロッドの移動量を検出する注入ロッド移動検出部と、
前記充填材を前記注入ロッドに送出する充填材送出部と、
前記充填材の注入を制御するコントローラと、
前記地山に前記孔を削孔する削孔ロッドと、
前記削孔ロッドを前記孔内で移動させる削孔ロッド駆動部と、
前記削孔ロッドの移動量を検出する削孔ロッド移動検出部と、を備え、
前記コントローラは、
前記地山の削孔時に前記削孔ロッド移動検出部により検出された前記移動量に基づいて、前記充填材送出部による前記充填材の送出を開始する送出開始前進量を決定し、前記注入ロッド駆動部を駆動して前記注入ロッドを前進させ、
前記注入ロッド移動検出部により検出された前記移動量が前記送出開始前進量に達したときに、前記充填材送出部による前記充填材の送出を開始する、
トンネル施工装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記注入ロッド駆動部を駆動して前記注入ロッドを後進させ、前記注入ロッド移動検出部により検出された前記移動量に基づいて、前記充填材送出部による前記充填材の送出を停止する、
請求項1に記載のトンネル施工装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記注入ロッド駆動部による前記注入ロッドの後進速度を制御する、
請求項1又は2に記載のトンネル施工装置。
【請求項4】
地山に形成された孔に充填材を注入する注入ロッドを用いたトンネル施工方法であって、
削孔ロッドを用いた前記地山の削孔時に前記削孔ロッドの移動量を検出し、検出した前記削孔ロッドの移動量に基づいて、前記充填材の送出を開始する送出開始前進量を決定し、
前記注入ロッドを移動させて前記孔に挿入し、前記注入ロッドの移動量を検出し、
検出した前記
注入ロッドの移動量が前記送出開始前進量に達したときに、前記注入ロッドへの前記充填材の送出を開始して前記充填材を前記孔に注入する、
トンネル施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル施工装置、及びトンネル施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事においては、地山を安定させることを目的として、地山に複数のロックボルトが設置される。ロックボルトを設置する際には、地山に孔を削孔し、削孔された孔に充填材を注入すると共にロックボルトを挿入する。特許文献1には、地山に削孔された孔に充填材を注入することが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された方法では、まず、地山に削孔された孔に注入ロッドを挿入する。次に、ポンプを用いて充填材を注入ロッドに送出し、地山に削孔された孔に注入ロッドの先端から充填材の注入を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法では、ロックボルトに所期の性能を発揮させるために、地山の孔内に充填材を適切に注入して孔内における所望の範囲に充填材を行き渡らせることが求められる。充填材を適切に注入するためには、充填材の注入を開始するときの注入ロッドの位置が重要である。
【0006】
しかしながら、特許文献1には、充填材の注入を制御する具体的な方法は開示されていない。充填材の注入作業では、作業員の操作により注入ロッドを地山の孔に挿入し、作業員の感覚で、充填材の注入を開始しているのが現状である。そのため、作業員の熟練度によるところが大きく、孔に適切に充填材を注入することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、地山に形成された孔に適切に充填材を注入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトンネル施工装置は、地山に形成された孔に充填材を注入する注入ロッドと、注入ロッドを孔内で移動させる注入ロッド駆動部と、注入ロッドの移動量を検出する注入ロッド移動検出部と、充填材を注入ロッドに送出する充填材送出部と、充填材の注入を制御するコントローラと、地山に孔を削孔する削孔ロッドと、削孔ロッドを孔内で移動させる削孔ロッド駆動部と、削孔ロッドの移動量を検出する削孔ロッド移動検出部と、を備え、コントローラは、地山の削孔時に削孔ロッド移動検出部により検出された移動量に基づいて、充填材送出部による充填材の送出を開始する送出開始前進量を決定し、注入ロッド駆動部を駆動して注入ロッドを前進させ、注入ロッド移動検出部により検出された移動量が送出開始前進量に達したときに、充填材送出部による充填材の送出を開始する。
【0009】
また、本発明は、地山に形成された孔に充填材を注入する注入ロッドを用いたトンネル施工方法であって、削孔ロッドを用いた地山の削孔時に削孔ロッドの移動量を検出し、検出した削孔ロッドの移動量に基づいて、充填材の送出を開始する送出開始前進量を決定し、注入ロッドを移動させて孔に挿入し、注入ロッドの移動量を検出し、検出した注入ロッドの移動量が送出開始前進量に達したときに、注入ロッドへの充填材の送出を開始して充填材を孔に注入する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地山に形成された孔に適切に充填材を注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るトンネル施工装置の側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るトンネル施工装置が備える注入機の斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るトンネル施工装置が備える挿入機の斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るトンネル施工装置のブロック図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るトンネル施工方法のフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るトンネル施工装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るトンネル施工装置及びトンネル施工方法について、図面を参照して説明する。
【0013】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図8を参照して、本発明の第1実施形態に係るトンネル施工装置100及びトンネル施工方法について説明する。
【0014】
山岳トンネルの施工に主に用いられるNATM(New Austrian Tunneling Method)では、
図1に示すように、地山を安定させるためにロックボルト1が地山に設置される。ロックボルト1を設置する工程では、地山に孔2を削孔し、孔2に充填材3を注入すると共にロックボルト1を挿入する。充填材3は、例えば、モルタルである。充填材3が充分に硬化した後、ナット5をロックボルト1に螺合し定着板4を地山の壁面Wに押し当てる。
【0015】
充填材3は、孔2に挿入される注入ロッド41を通じて孔2に注入される。ロックボルト1は、孔2に充填材3を注入した後に挿入されてもよいし、孔2に充填材3を注入する前に挿入されてもよい。
【0016】
本実施形態に係るトンネル施工装置100は、孔2の削孔、充填材3の注入、及びロックボルト1の挿入において用いられる。すなわち、トンネル施工装置100は、地山にロックボルト1を設置する一連の作業を行う。
【0017】
ロックボルト1を地山に設置する際には、ロックボルト1に所期の性能を発揮させるために、孔2の内部に充填材3を適切に注入して孔2の内部における所望の範囲に充填材3を行き渡らせることが求められる。充填材3を適切に注入するためには、充填材3の注入を開始するときの注入ロッド41の位置が重要である。
【0018】
トンネル施工装置100は、後述する構成により、孔2の内部における注入ロッド41の移動と、充填材3の注入と、を制御する。したがって、作業員の感覚によらずに充填材3の注入を開始することができ、孔2に適切に充填材3を注入することができる。
【0019】
図1に示すように、トンネル施工装置100は、孔2の削孔、孔2への注入ロッド41及びロックボルト1の挿入を行うロックボルト施工装置10と、充填材3の供給を行う充填材供給装置20と、を備えている。
【0020】
ロックボルト施工装置10は、自走可能な台車11と、台車11の前部に上下方向及び左右方向にスイング自在に設けられたブーム12と、ブーム12の先端に設けられた作業部30と、を備える。作業部30に、注入ロッド41が設けられている。また、作業部30は、
図2に示す注入機40と、
図3に示す削孔機50と、
図4に示す挿入機60と、を備える。なお、
図1では、削孔機50及び挿入機60の図示を省略している。
【0021】
台車11には不図示の運転席が設けられており、作業員は、運転席からロックボルト施工装置10を操縦する。ブーム12は、不図示の流体圧シリンダの駆動により台車11に対して上下方向及び左右方向にスイングする。また、ブーム12は、伸縮自在に形成されており、不図示の流体圧シリンダの駆動により伸縮する。
【0022】
作業部30は、ブーム12の伸縮方向に沿う第1軸A1を中心に回転自在であり、第1軸A1と直交する第2軸A2を中心に回転自在であり、かつ、第2軸A2と直交する第3軸A3(
図1において紙面と直交する軸)を中心にスイング自在である。作業部30は、不図示のモータの駆動によって、ブーム12に対して回転及びスイングする。
【0023】
注入ロッド41は、開口41aが形成された先端と閉塞された基端とを有する中空の部材である。注入ロッド41の外周面には、側管41bが固定されている。側管41bは、注入ロッド41の基端近傍に配置されている。側管41bには、ホース41cの一端が接続される。ホース41cの他端は充填材供給装置20に接続される。充填材供給装置20から供給される充填材3は、ホース41c及び側管41bを通じて注入ロッド41に導かれ、注入ロッド41の開口41aから流出する。
【0024】
充填材供給装置20は、充填材3の粉状原料(例えばドライモルタル)を貯蔵する原料サイロ21と、水を貯留する水タンク22と、粉状原料と水とを混練して充填材3を生成すると共に充填材3を送出する充填材送出部23と、を備えている。充填材送出部23は、例えばスクリューフィーダである。原料サイロ21、水タンク22及び充填材送出部23は、トラック24に搭載される。
【0025】
原料サイロ21の粉状原料は、スクリューコンベア25を用いて充填材送出部23に供給される。水タンク22の水は、水ポンプ26を用いて充填材送出部23に供給され、粉状原料と水が練り混ぜられる。充填材送出部23の送出口にはホース41cの他端が接続されており、練り混ぜられて生成された充填材3は充填材送出部23によって、ホース41cに送出される。
【0026】
図2に示すように、注入機40は、注入ロッド41と、注入ガイドセル42と、注入ガイドセル42に往復移動自在に支持された注入キャリッジ43と、注入キャリッジ43を往復移動させる注入ロッド駆動部44と、を備える。注入ロッド駆動部44は、例えばモータである。注入キャリッジ43は、注入ロッド41が注入キャリッジ43の移動方向に延在するように注入ロッド41の基端を支持する。そのため、注入キャリッジ43が注入ロッド駆動部44の駆動により移動すると、注入ロッド41がその軸方向に移動する。
【0027】
以下において、注入ロッド41の基端から先端へ向かう方向への移動を「前進」とし、注入ロッド41の先端から後端へ向かう方向への移動を「後進」とする。
【0028】
注入ガイドセル42には、注入ロッド41の移動を案内する注入セントラライザ45が設けられる。注入セントラライザ45には、注入ロッド41が挿通する孔45aが形成されている。
【0029】
図1に示すように、注入セントラライザ45が孔2の開口近傍に位置するように作業部30を移動させ、注入ロッド駆動部44を駆動して注入ロッド41を前進させると、注入ロッド41が孔2に挿入される。注入ロッド駆動部44を駆動して注入ロッド41を後進させると、注入ロッド41が孔2から抜き出される。このように、注入ロッド駆動部44は、注入ロッド41を孔2内で移動させる。
【0030】
図3に示すように、削孔機50は、孔2を削孔する削孔ロッド51と、削孔ガイドセル52と、削孔ガイドセル52に往復移動自在に支持された削孔キャリッジ53と、削孔キャリッジ53を往復移動させる削孔ロッド駆動部54と、を備える。削孔ロッド駆動部54は、注入ロッド駆動部44と同様に、例えばモータである。削孔キャリッジ53は、削孔ロッド51が削孔キャリッジ53の移動方向に延在するように削孔ロッド51の基端を支持する。そのため、削孔キャリッジ53が削孔ロッド駆動部54の駆動により移動すると、削孔ロッド51がその軸方向に移動する。
【0031】
削孔ガイドセル52には、削孔ロッド51の移動を案内する削孔セントラライザ55が設けられる。削孔セントラライザ55には、削孔ロッド51が挿通する孔55aが形成されている。
【0032】
削孔キャリッジ53には不図示のドリフタが搭載されており、削孔ロッド51は、ドリフタを介して削孔キャリッジ53に支持されている。ドリフタは、削孔ロッド51に回転力及び打撃力を付与可能に形成されている。削孔ロッド51の先端にはビット51aが設けられている。ビット51aを地山に押付けた状態でドリフタによって削孔ロッド51をビット51aと共に回転させ、打撃力を付与することにより、地山に孔2(
図1参照)を削孔する。
【0033】
図4に示すように、挿入機60は、挿入ガイドセル62と、挿入ガイドセル62に往復移動自在に支持された挿入キャリッジ63と、挿入キャリッジ63を往復移動させるロックボルト駆動部64と、を備える。ロックボルト駆動部64は、注入ロッド駆動部44及び削孔ロッド駆動部54と同様に、例えばモータである。挿入キャリッジ63は、ロックボルト1が挿入キャリッジ63の移動方向に延在するようにロックボルト1の基端を支持する。そのため、挿入キャリッジ63がロックボルト駆動部64の駆動により移動すると、ロックボルト1がその軸方向に移動する。
【0034】
ロックボルト1は、定着板4及びナット5が装備された状態で挿入キャリッジ63によって支持される。挿入キャリッジ63に支持されたロックボルト1が地山に設置されると、挿入キャリッジ63によるロックボルト1の支持が解除される。その後、別のロックボルト1が、不図示のボルトマガジンから供給され、挿入キャリッジ63に支持される。
【0035】
挿入ガイドセル62には、ロックボルト1の移動を案内する挿入セントラライザ65が設けられる。挿入セントラライザ65は、定着板4の通過を許容できるように構成されている。具体的には、挿入セントラライザ65は、ロックボルト1の移動方向に沿う軸を中心にスイング自在に挿入ガイドセル62に設けられる一対のライザ部材65a,65bを有する。一対のライザ部材65a,65bは、挿入ガイドセル62に対してスイングすることにより、ロックボルト1に近接した状態(
図4に示す状態)と、ロックボルト1から離間した状態(図示省略)と、に切り換えられる。一対のライザ部材65a,65bがロックボルト1に近接した状態では、一対のライザ部材65a,65bによって、ロックボルト1が挿通する孔65cが形成され、孔65cによって、ロックボルト1の移動が案内される。一対のライザ部材65a,65bがロックボルト1から離間した状態では、定着板4は、一対のライザ部材65a,65bの間を通過する。
【0036】
挿入キャリッジ63は、ロックボルト1の回転を拘束した状態でナット5を回転駆動可能に構成される。そのため、地山の孔2(
図1参照)に挿入されたロックボルト1の後端にナット5を螺合させ、定着板4を地山の壁面Wに押し当てることができる。
【0037】
図5は、作業部30を、注入ロッド41の先端から基端に向かって見た正面図である。
図5に示すように、作業部30は、注入機40の注入ガイドセル42、削孔機50の削孔ガイドセル52及び挿入機60の挿入ガイドセル62を連結する連結部材31と、連結部材31を軸G(
図5において紙面と直交する軸)を中心にスイング自在に支持する支持部材32と、連結部材31をスイングさせる連結部材駆動部34と、を備える。連結部材駆動部34は、例えば、流体圧シリンダである。支持部材32は、ブーム12(
図1参照)の先端に連結される。
【0038】
連結部材31は、注入ロッド41及び削孔ロッド51が軸Gを中心とする円H上に位置するように、かつ、注入ロッド41の移動方向及び削孔ロッド51の移動方向が軸Gと平行になるように、注入ガイドセル42及び削孔ガイドセル52を連結する。そのため、連結部材31が、軸G周りの注入ロッド41と削孔ロッド51との間の角度α、スイングすると、注入ロッド41は、削孔ロッド51があった位置に移動する。したがって、削孔ロッド51により形成された孔2(
図1参照)に対して注入ロッド41の位置及び向きを容易に合わせることができ、孔2に注入ロッド41を容易に挿入することができる。
【0039】
また、連結部材31は、ロックボルト1が円H上に位置するように、かつ、ロックボルト1の移動方向が軸Gと平行になるように、挿入ガイドセル62を連結する。そのため、連結部材31が、角度αに加え、軸G周りの注入ロッド41とロックボルト1との間の角度β、スイングすると、注入ロッド41は、削孔ロッド51があった位置に移動する。したがって、削孔ロッド51により形成された孔2(
図1参照)に対してロックボルト1の位置及び向きを容易に合わせることができ、孔2にロックボルト1を容易に挿入することができる。
【0040】
図6は、作業部30を、軸Gと直交する方向から見た側面図である。なお、
図6では、削孔機50及び挿入機60の図示を省略している。
【0041】
図6に示すように、作業部30は、支持部材32に設けられる突出部35を備えている。突出部35は、軸G上に位置し軸Gに沿って突出しており、注入ロッド41、削孔ロッド51及びロックボルト1が地山に当たらない状態で地山の壁面Wに押付け可能である。そのため、突出部35を地山に押付けて支持部材32を保持した状態で連結部材31をスイングさせることができる。したがって、軸Gの振れを防止しつつ連結部材31をスイングさせることができ、削孔ロッド51により形成された孔2に対して注入ロッド41及びロックボルト1の位置及び向きをより容易に合わせることができる。
【0042】
突出部35の先端は凸状に形成されている。そのため、突出部35を地山の壁面Wに食い込ませることができ、支持部材32をより確実に保持することができる。突出部35の先端にはゴム等の弾性体が装着されていてもよい。突出部35は、支持部材32に出没自在に設けられていてもよい。
【0043】
図7は、トンネル施工装置100のブロック図である。
図7に示すように、トンネル施工装置100は、注入ロッド41の移動量を検出する注入ロッド移動検出部46と、孔2の削孔、充填材3の注入及びロックボルト1の挿入を制御するコントローラ70と、を備えている。
【0044】
注入ロッド移動検出部46は、例えば、注入機40の注入ガイドセル42(
図2参照)に設けられるリニアエンコーダである。注入ロッド移動検出部46は、リニアエンコーダに限られず、注入ロッド41の移動量を検出できる機器であればよい。
【0045】
コントローラ70は、制御プログラム等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラムを記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、を備えるマイクロコンピュータである。コントローラ70は、1つのマイクロコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。コントローラ70は、ロックボルト施工装置10の台車11(
図1参照)に搭載されていてもよいし、充填材供給装置20のトラック24(
図1参照)に搭載されていてもよいし、台車11及びトラック24から分離して設置されていてもよい。
【0046】
コントローラ70は、情報取得部71と、情報取得部71により取得された情報に基づいて制御信号を出力する信号出力部72と、を備える。情報取得部71及び信号出力部72は、コントローラ70の機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0047】
情報取得部71は、注入ロッド移動検出部46により検出された注入ロッド41の移動量の情報を取得する。
【0048】
信号出力部72は、注入ロッド駆動部44、削孔ロッド駆動部54、ロックボルト駆動部64、連結部材駆動部34及び充填材送出部23に制御信号を出力する。注入ロッド駆動部44、削孔ロッド駆動部54、ロックボルト駆動部64、連結部材駆動部34及び充填材送出部23は、制御信号に応じて動作する。
【0049】
信号出力部72は、注入ロッド駆動部44を駆動して注入ロッド41を孔2内で前進させ、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量に基づいて、充填材送出部23による充填材3の送出を開始する。具体的には、信号出力部72は、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が予め定められた送出開始前進量に達するまでは、充填材送出部23による充填材3の送出を停止し、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が送出開始前進量に達したときに、充填材送出部23による充填材3の送出を開始する。そのため、注入ロッド41が地山の孔2内における所定の位置(例えば、孔2の奥付近)まで挿入されると、充填材3は、充填材送出部23から注入ロッド41へ供給され、注入ロッド41から孔2へ注入され始める。したがって、作業員の感覚によらずに充填材3の注入を開始することができ、孔2に適切に充填材3を注入することができる。
【0050】
また、信号出力部72は、充填材送出部23による充填材3の送出を開始後、注入ロッド駆動部44を駆動して注入ロッド41を孔2内で後進させ、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量に基づいて、充填材送出部23による充填材3の送出を停止する。具体的には、信号出力部72は、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が予め定められた送出停止後進量に達するまでは、充填材送出部23による充填材3の送出を継続し、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が送出停止後進量に達したときに、充填材送出部23による充填材3の送出を停止する。そのため、注入ロッド41が地山の孔2内における所定の位置(例えば、孔2の開口付近)まで抜き出されると、注入ロッド41への充填材3の供給が停止し、注入ロッド41からの充填材3の流出が停止する。したがって、孔2へ充填材3を過注入するのを防止することができ、孔2から充填材3が漏れるのを防止することができる。
【0051】
また、信号出力部72は、注入ロッド駆動部44による注入ロッド41の後進速度を制御する。また、後進速度の制御と併せて充填材送出部23による充填材3の送出流量を制御してもよい。具体的には、信号出力部72は、充填材送出部23から送出される充填材3の送出流量に基づいて注入ロッド41が予め定められた速度で孔2内を後進するように注入ロッド駆動部44を駆動する。充填材3が予め定められた流量で注入ロッド41から孔2に注入されるように充填材送出部23を駆動する。予め定められた流量は、注入ロッド41の後進速度に孔2の断面積を乗じて得られる値である。そのため、充填材3は、孔2の容積に対して過不足なく孔2に注入される。したがって、孔2内における所望の範囲(例えば、孔2の全体)に充填材3を行き渡らせることができ、より適切に孔2に充填材3を注入することができる。
【0052】
信号出力部72は、注入ロッド41の後進速度を制御するのに代えて、注入ロッド41の後進速度を検出し、検出された後進速度に基づいて充填材送出部23による充填材3の送出流量を制御してもよい。この場合においても、充填材3は、孔2の容積に対して過不足なく孔2に注入される。したがって、適切に孔2に充填材3を注入することができる。注入ロッド41の後進速度は、例えば、注入ロッド移動検出部46により検出される移動量の時間変化を算出することにより得られる。
【0053】
次に、トンネル施工装置100を用いてトンネルTを施工する方法について、
図1、
図7及び
図8を参照して説明する。
図8は、トンネル施工方法のフローチャートである。ここでは、不図示の掘削機を用いて地山に形成された掘削坑に、台車11及びトラック24を移動させた後のステップについて説明する。
【0054】
ステップS801では、粉状原料と水とを混練した充填材3を準備する。具体的には、まず、作業員が充填材供給装置20を操作し、スクリューコンベア25、水ポンプ26及び充填材送出部23を駆動し、粉状原料と水とを混練する。このとき、粉状原料に対する水の割合を、最終的に準備される充填材3における割合に対して高くし、充填材3の流動性を高めておく。この状態での充填材送出部23、スクリューコンベア25及び水ポンプ26の駆動を所定時間、継続する。その後、所定時間かけて、粉状原料と水との割合が最終的に準備される充填材3の割合になるまで、水の流量を低下させる。粉状原料と水との割合が所定の割合になってから所定時間、充填材送出部23、スクリューコンベア25及び水ポンプ26の駆動を継続し、粉状原料と水との配合を安定させる。その後、充填材送出部23、スクリューコンベア25及び水ポンプ26の駆動を更に継続し、配合の安定した充填材3を注入ロッド41の先端に到達させる。その後、充填材送出部23、スクリューコンベア25及び水ポンプ26の駆動を停止する。以上により、充填材3の準備が完了する。
【0055】
ステップS802では、作業員がロックボルト施工装置10を操縦し、作業部30を地山の壁面Wの近傍に移動させると共に作業部30の向きを調整する。具体的には、
図6に示すように、作業部30の突出部35を壁面Wに押付け、軸Gが壁面Wに対して所望の角度で交差するように作業部30の向きを調整する。
【0056】
ステップS803~ステップS807は、コントローラ70によって自動で行われる。
【0057】
ステップS803では、地山に孔2を削孔する。具体的には、削孔ロッド駆動部54により削孔ロッド51を前進させ、孔2を掘り進める。孔2が予め定められた深さまで達したところで、削孔ロッド駆動部54により削孔ロッド51を後退させ、削孔ロッド51を孔2から抜き出す。
【0058】
ステップS804では、孔2に対して注入ロッド41の位置を合わせる。具体的には、
図5に示される角度α、連結部材31を連結部材駆動部34によりスイングさせる。
【0059】
ステップS805では、孔2に充填材3を注入する。
【0060】
具体的には、まず、注入ロッド駆動部44により注入ロッド41を孔2の内部で前進させる。注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が予め定められた送出開始前進量に達したところで、充填材送出部23による充填材3の送出を開始する。これにより、充填材3が注入ロッド41から孔2へ注入され始める。
【0061】
充填材送出部23による充填材3の送出を開始後、注入ロッド駆動部44を駆動して注入ロッド41を孔2内で後進させる。このとき、注入ロッド駆動部44による注入ロッド41の後進速度を制御すると共に、充填材送出部23による充填材3の送出流量を制御する。これにより、充填材3は、注入ロッド41の後進に合わせて孔2に注入される。
【0062】
その後、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が予め定められた送出停止後進量に達したときに、充填材送出部23による充填材3の送出を停止する。これにより、注入ロッド41への充填材3の供給が停止し、注入ロッド41からの充填材3の流出が停止する。
【0063】
以上により、孔2への充填材3の注入が完了する。なお、孔2への充填材3の注入の開始及び停止に合わせて、充填材送出部23及び水ポンプ26の駆動を開始及び停止する。
【0064】
ステップS806では、孔2に対してロックボルト1の位置を合わせる。具体的には、
図5に示される角度β、連結部材31を連結部材駆動部34によりスイングさせる。
【0065】
ステップS807では、孔2にロックボルト1を挿入する。具体的には、ロックボルト駆動部64によりロックボルト1を前進させ、孔2にロックボルト1を挿入する。充填材3が充分に硬化した後、ナット5をロックボルト1に螺合し定着板4を地山の壁面Wに押し当てる。
【0066】
以上により、ロックボルト1の設置が完了する。別のロックボルト1を地山に設置する場合には、不図示のボルトマガジンからロックボルト1を挿入機60に供給して支持すると共に、ステップS802~ステップS807を繰り返す。
【0067】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0068】
トンネル施工装置100及びトンネル施工方法では、注入ロッド駆動部44を駆動して注入ロッド41を孔2内で前進させ、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量に基づいて、充填材送出部23による充填材3の送出を開始する。そのため、注入ロッド41が地山の孔2内における所定の位置まで挿入されると、充填材3は、充填材送出部23から注入ロッド41へ供給され、注入ロッド41から孔2へ注入され始める。したがって、孔2内における所望の位置に充填材3を注入することができ、孔2に適切に充填材3を注入することができる。
【0069】
また、充填材送出部23による充填材3の送出を開始後、注入ロッド駆動部44を駆動して注入ロッド41を孔2内で後進させ、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量に基づいて、充填材送出部23による充填材3の送出を停止する。そのため、注入ロッド41が地山の孔2内における所定の位置まで抜き出されると、注入ロッド41への充填材3の供給が停止し、注入ロッド41からの充填材3の流出が停止する。したがって、孔2へ充填材3を過注入するのを防止することができ、孔2から充填材3が漏れるのを防止することができる。
【0070】
また、注入ロッド駆動部44による注入ロッド41の後進速度を制御すると共に、充填材送出部23による充填材3の送出流量を制御する。そのため、充填材3は、孔2の容積に対して過不足なく孔2に注入される。したがって、孔2内における所望の範囲に充填材3を行き渡らせることができ、より適切に孔2に充填材3を注入することができる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、
図9を参照して本発明の第2実施形態に係るトンネル施工装置200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。また、トンネル施工装置200の側面図、及び第2実施形態に係るトンネル施工方法のフローチャートは、
図1及び
図8に示される側面図及びフローチャートと略同じであるため、それらの図示を省略する。
【0072】
図9は、トンネル施工装置200のブロック図である。
図9に示すように、トンネル施工装置200は、削孔ロッド51の移動量を検出する削孔ロッド移動検出部256を更に備えている。削孔ロッド移動検出部256は、例えば、削孔機50の削孔ガイドセル52(
図3参照)に設けられるリニアエンコーダである。削孔ロッド移動検出部256は、リニアエンコーダに限られず、削孔ロッド51の移動量を検出できる機器であればよい。
【0073】
トンネル施工装置200のコントローラ270は、情報取得部271と、信号出力部272と、情報取得部271により取得された情報に基づいて送出開始前進量を決定する送出開始前進量決定部273と、を備える。送出開始前進量は、充填材送出部23による充填材3の送出を開始するときの注入ロッド41の前進量である。情報取得部271、信号出力部272及び送出開始前進量決定部273は、コントローラ270の機能を仮想的なユニットとしたものである。
【0074】
情報取得部271は、注入ロッド移動検出部46により検出された注入ロッド41の移動量の情報と、削孔ロッド移動検出部256により検出された削孔ロッド51の移動量の情報と、を取得する。
【0075】
送出開始前進量決定部273は、地山に孔2を削孔するときに削孔ロッド移動検出部256により検出された移動量に基づいて、送出開始前進量を決定する。例えば、送出開始前進量決定部273は、地山に孔2を削孔したときに削孔ロッド移動検出部256により検出された最大の移動量を送出開始前進量として決定する。
【0076】
信号出力部272は、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が、送出開始前進量決定部273により決定された送出開始前進量に達したときに、充填材送出部23による充填材3の送出を開始する。そのため、削孔ロッド51により形成された孔2の深さに合わせて注入ロッド41が地山の孔2内に挿入されたときに、充填材3は、注入ロッド41から孔2へ注入され始める。したがって、孔2により適切に充填材3を注入することができる。
【0077】
トンネル施工装置200を用いたトンネル施工方法は、
図8に示すステップS805において、注入ロッド駆動部44により注入ロッド41を孔2の内部で前進させるときに、注入ロッド移動検出部46により検出された移動量が送出開始前進量決定部273により決定された送出開始前進量に達したところで充填材送出部23による充填材3の送出を開始する。これにより、充填材3が注入ロッド41から孔2へ注入され始める。
【0078】
トンネル施工装置200を用いたトンネル施工方法において、ステップS801~ステップS804、ステップS806及びステップS807は、第1実施形態に係るトンネル施工方法と同じであるため、それらの説明を省略する。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0080】
トンネル施工装置100は、注入機40、削孔機50及び挿入機60を備えているが、本発明は、削孔機50及び挿入機60を備えていなくてもよい。つまり、本発明は、地山に予め削孔された孔2への充填材3の注入のみを行う形態であってもよい。
【0081】
上記実施形態では、注入ロッド41は、注入ロッド駆動部44の駆動により孔2に挿入されるが、注入ロッド駆動部44に代えて、作業員の手作業により注入ロッド41を孔2に挿入してもよい。この場合においても、コントローラ70,270は、注入ロッド移動検出部46により検出された注入ロッド41の移動量に基づいて、充填材送出部23による充填材3の送出を開始する。そのため、作業員の感覚によらずに充填材3の注入を開始することができ、孔2に適切に充填材3を注入することができる。
【0082】
作業員の手作業により孔2に注入ロッド41を挿入する場合には、作業員は、充填材送出部23による充填材3の送出の開始を、例えば注入ロッド41の振動等により感知することができる。したがって、作業員は、充填材送出部23による充填材3の送出の開始を感知したときに注入ロッド41が孔2内における所定の位置まで挿入されたと判断し、注入ロッド41を孔2から抜き出し始めればよい。
【符号の説明】
【0083】
100,200・・・トンネル施工装置
2・・・孔
3・・・充填材
23・・・充填材送出部
41・・・注入ロッド
44・・・注入ロッド駆動部
46・・・注入ロッド移動検出部
51・・・削孔ロッド
54・・・削孔ロッド駆動部
256・・・削孔ロッド移動検出部
70,270・・・コントローラ