IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許-航空機用空気入りタイヤ 図1
  • 特許-航空機用空気入りタイヤ 図2
  • 特許-航空機用空気入りタイヤ 図3
  • 特許-航空機用空気入りタイヤ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】航空機用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20231117BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20231117BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20231117BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20231117BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C9/08 D
B60C9/00 A
B60C9/22 G
B60C9/18 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020192349
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081053
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】市原 永司
(72)【発明者】
【氏名】河内 直人
(72)【発明者】
【氏名】田村 純太朗
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-224729(JP,A)
【文献】国際公開第2010/100856(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/035940(WO,A1)
【文献】特開2018-86984(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0005938(KR,A)
【文献】仏国特許出願公開第2187559(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00
B60C 9/08
B60C 9/18
B60C 9/22
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、
前記一対のビード部にトロイダル状に跨る1枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルトと、を備えた航空機用空気入りタイヤであって、
前記航空機用空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填したのちタイヤ空気圧を50kPaまで減圧した状態で、無負荷とした、基準状態において、
タイヤ赤道面におけるタイヤ外表面での半径をRcとし、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向の幅が最大である最幅広ベルト層の端までのタイヤ幅方向の距離をWbとして、
タイヤ赤道面における前記タイヤ外表面と、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側に前記距離Wbの35%離間した位置における前記タイヤ外表面との径差をδ35とし、
タイヤ赤道面における前記タイヤ外表面と、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側に前記距離Wbの90%離間した位置における前記タイヤ外表面との径差をδ90とするとき、
0≦δ35/Rc≦0.004、且つ、0.015≦δ90/Rc≦0.025
を満たすことを特徴とする、航空機用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記基準状態において、
0.014≦(δ90-δ35)/Rc≦0.024
をさらに満たす、請求項1に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ベルト層のうち1層以上において、弾性率が30cN/dtex以上であるベルトコードが、タイヤ赤道面に対して10°以下の傾斜角度で延びている、請求項1又は2に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ベルトコードの弾性率は、100cN/dtex以上である、請求項3に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機用空気入りタイヤとして、一対のビードコアと、両ビードコア間にトロイダルに伸びるカーカスプライ一枚以上からなるラジアルカーカスを備え、トレッド部の、ラジアルカーカスの半径方向外側に、トレッド補強部材としてベルト層を有し、上記ベルト層は、リボン状の有機繊維を略周方向(タイヤ赤道面に対して5°以下)で巻いたスパイラルベルト層と、リボン状の有機繊維を、タイヤ赤道面に対して2~45°程度の角度で傾斜させて巻き付け、ベルトの両端部で折り返しながら巻いた、ジグザグベルト層とを有し、トレッド外表面形状が、中間陸部にて所定の段下がり量δを有するものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-153310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境意識の高まりにより、航空機用空気入りタイヤにもタイヤの長寿命化が強く求められている。タイヤの長寿命化にはタイヤの摩耗性能の改良が有効である。ここで、航空機用空気入りタイヤの摩耗は主に以下の2つのモードで発生することが知られている。一方は、空港内を移動する際に発生する摩耗(いわゆるタクシー摩耗)であり、他方は、航空機が着陸した瞬間に、静止したタイヤが高速でアスファルトに接地した際の滑りによる摩耗(いわゆるタッチダウン摩耗)である。
【0005】
特許文献1に記載の技術は、上記タクシー摩耗を改善するのに有効である。しかしながら、特許文献1に記載のようなトレッド外表面形状を適用した場合、航空機が着陸した瞬間の極荷重時の接地幅が狭くなるため、タイヤ中央部の摩耗が早く進み、タッチダウン摩耗については十分な性能が得られない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、空港内を移動する際に発生する摩耗を抑制しつつも、航空機が着陸した瞬間の極低荷重時の摩耗も抑制し得る、航空機用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)一対のビード部と、前記一対のビード部にトロイダル状に跨る1枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルトと、を備えた航空機用空気入りタイヤであって、
前記航空機用空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填したのちタイヤ空気圧を50kPaまで減圧した状態で、無負荷とした、基準状態において、
タイヤ赤道面におけるタイヤ外表面での半径をRcとし、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向の幅が最大である最幅広ベルト層の端までのタイヤ幅方向の距離をWbとして、
タイヤ赤道面における前記タイヤ外表面と、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側に前記距離Wbの35%離間した位置における前記タイヤ外表面との径差をδ35とし、
タイヤ赤道面における前記タイヤ外表面と、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向外側に前記距離Wbの90%離間した位置における前記タイヤ外表面との径差をδ90とするとき、
0≦δ35/Rc≦0.004、且つ、0.015≦δ90/Rc≦0.025
を満たすことを特徴とする、航空機用空気入りタイヤ。
【0008】
本明細書において、「適用リム」とは、米国のTRA(The Tire and Rim Association, Inc.)が発行する、最新版のAIRCRAFT YEAR BOOKまたは最新版のEDI(Engineering Design Information for Aircraft Tires)(本明細書における数値の記載は、2017年度版を使用)に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(Design Rim)を指すが、上記規格に記載のないサイズの場合は、タイヤに適用されるリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
なお、トレッド部に溝を有する場合においては、上記タイヤ外表面は、溝がないと仮定したときの仮想線を意味するものとする。
【0009】
(2)前記基準状態において、
0.014≦(δ90-δ35)/Rc≦0.024
をさらに満たす、上記(1)に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【0010】
(3)前記ベルト層のうち1層以上において、弾性率が30cN/dtex以上であるベルトコードが、タイヤ赤道面に対して10°以下の傾斜角度で延びている、上記(1)又は(2)に記載の航空機用空気入りタイヤ。
ここで、本明細書における、ベルトコードの弾性率は、規格番号 JIS L 1017:2002(化学繊維タイヤコード試験方法)に準拠して、コード単線が1.5%伸びた時の傾き(s-s曲線)から算出したコード単線の弾性率(cN/dtex)を指す。
【0011】
(4)前記ベルトコードの弾性率は、100cN/dtex以上である、上記(3)に記載の航空機用空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空港内を移動する際に発生する摩耗を抑制しつつも、航空機が着陸した瞬間の極低荷重時の摩耗も抑制し得る、航空機用空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態にかかる航空機用空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2図1の要部の拡大図である。
図3】スパイラルベルト層について説明するための図である。
図4】ジグザグベルト層について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の航空機用空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかる航空機用空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。図2は、図1の要部の拡大図である。図1図2は、タイヤ1を適用リムRに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態でのタイヤ幅方向断面を示している。
【0016】
図1に示すように、このタイヤ1は、一対のビード部2と、一対のビード部2間にトロイダル状に跨る1枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、カーカス4のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルト5と、を備えている。ベルトのタイヤ径方向外側にはトレッドゴムからなるトレッド部12が配置されており、トレッド部には、一対のサイドウォール部が連なっている。
【0017】
ビード部2にはビードコア3が埋設されている。図示例では、ビードコア3は、環状のケーブルビードからなる。図示例では、ビードコア3は、断面円形状である。ビードワイヤは、例えば、高炭素の鋼線を用いることができる。また、本例では、ビードコア3のタイヤ径方向外側に、ビードフィラ31が配置されている。ビードフィラ31は、タイヤ径方向内側から外側に向かって、タイヤ幅方向の幅が先細りする、断面略三角形状をなしているが、ビードフィラ31は、様々な断面形状とすることができる。ビードフィラ31には、例えば、1種類以上の任意の既知の硬ゴムを用いることができる。
【0018】
カーカス4は、1枚以上(例えば4~7枚)のカーカスプライからなる。本例では、カーカス4は、ラジアルカーカスである。
【0019】
カーカス4は、1枚以上のカーカスプライが重ねられたものであって、例えば4~7枚のカーカスプライが重ねられてその両端部が、ビードコア3の周囲にタイヤ径方向内側から外側に巻き上げられて固定されている。本実施形態のタイヤ1では、ナイロンコードからなるカーカスプライが7層重ねられている。
【0020】
図1図2に示すように、ベルト5は、本例では8層のベルト層5a~5hからなる。本例では、ベルト5は、6層のスパイラルベルト層5a~5fと、該スパイラスベルト層のタイヤ径方向外側に配置された2層のジグザグベルト層5g、5hと、を有している。ただし、ベルト層の層数は、上記に限定されるものではなく、例えば、スパイラルベルト層の層数を1~8層とし、ジグザグベルト層の層数を2~4層とすることができる。軽量化の観点からはベルト層の総層数は、10層以下であることが好ましい。また、ベルト構造も、上記のものには限定されず、例えば、ベルトコードが層間で互いに交差して(タイヤ周方向に対して例えば30°~60°の傾斜角度で)延びる、傾斜ベルト層を用いることもできる。
【0021】
図示例では、上記基準状態における、ベルト層のタイヤ幅方向の幅は、幅が大きい方から順に、ベルト層5a、5b、5c、5d、5g=5h、5e、5fとなっている。図示例では、ベルト層5aがタイヤ幅方向の幅が最大である最幅広ベルト層である。そして、タイヤ赤道面CLから最幅広ベルト層5aの端までのタイヤ幅方向の距離をWbとしている。なお、ベルト層の幅の大小は、上記の例には限定されず、いずれのベルト層がタイヤ幅方向の最大幅を有していても良いし、最幅広ベルト層以外のベルト層のタイヤ幅方向の幅の大小関係についても特に限定されない。
【0022】
ここで、スパイラルベルト層について説明する。図3は、スパイラルベルト層について説明するための図である。図3に示すように、スパイラルベルト層51は、第1のベルトコード51bがゴム被覆されたリボン状の第1のストリップ部材51aがタイヤ周方向にらせん状に巻回された状態のものである。
【0023】
第1のベルトコード51bとしては、アラミドのような芳香族ポリアミドによる有機繊維コードが用いることができ、または、ナイロンのような脂肪族ポリアミド、または、アラミドのような芳香族ポリアミドとナイロンのような脂肪族ポリアミドとの組み合わせで作製されるハイブリッド繊維コードを用いることもできる。
【0024】
脂肪族ポリアミド繊維と芳香族ポリアミド繊維とのハイブリッドコードとしては、脂肪族ポリアミド繊維からなるヤーンと芳香族ポリアミド繊維からなるヤーンとを撚り合わせたものでもよく、予め脂肪族ポリアミド繊維と芳香族ポリアミド繊維を複合化したヤーンに撚りを加えたものでもよい。
【0025】
スパイラルベルト層51は、生タイヤのカーカス4のクラウン部に、ストリップ部材51aが、隣接するストリップ部材51aとの間に隙間が生じないように、タイヤ幅方向に所定量ずれながら、タイヤ周方向にらせん巻きされて形成される。第1のベルトコード51bのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、例えば5°以下となる。
【0026】
スパイラルベルト層51が複数層からなる場合、ストリップ部材51aは、スパイラルベルト層51の幅方向端縁51cまで巻かれると折り返されて、外周面に次の層として巻き始められ、他方の幅方向端縁51cに向かって巻き付けられ、これにより積層されていく。
【0027】
次に、ジグザグベルト層について説明する。図4は、ジグザグベルト層について説明するための図である。ジグザグベルト層52は、第2のベルトコード52bがゴム被覆されたリボン状の第2のストリップ部材52aが、一方のタイヤ幅方向端52cから他方のタイヤ幅方向端52cに向かって延在し、他方のタイヤ幅方向端52cで折り返されて、他方のタイヤ幅方向端52cから一方のタイヤ幅方向端52cに向かって延在し、一方のタイヤ幅方向端52cで折り返されて、一方のタイヤ幅方向端52cから他方のタイヤ幅方向52cに向かって延在することが繰り返されるように、タイヤ周方向にらせん状に巻回された状態のものである。
【0028】
第2のベルトコード52bとしては、アラミドのような芳香族ポリアミドによる有機繊維コードが用いることができ、または、ナイロンのような脂肪族ポリアミド、または、アラミドのような芳香族ポリアミドとナイロンのような脂肪族ポリアミドとの組み合わせで作製されるハイブリッド繊維コードを用いることもできる。
【0029】
脂肪族ポリアミド繊維と芳香族ポリアミド繊維とのハイブリッドコードとしては、脂肪族ポリアミド繊維からなるヤーンと芳香族ポリアミド繊維からなるヤーンとを撚り合わせたものでもよく、予め脂肪族ポリアミド繊維と芳香族ポリアミド繊維を複合化したヤーンに撚りを加えたものでもよい。
【0030】
図1図2に戻って、本実施形態のタイヤでは、上記基準状態において、タイヤ赤道面CLにおけるタイヤ外表面8での半径をRcとし、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向の幅が最大である最幅広ベルト層5aの端までのタイヤ幅方向の距離をWbとして、タイヤ赤道面CLにおけるタイヤ外表面8と、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側に距離Wbの35%離間した位置におけるタイヤ外表面8との径差(半径の差)をδ35とし、タイヤ赤道面CLにおけるタイヤ外表面8と、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向外側に距離Wbの90%離間した位置におけるタイヤ外表面8との径差をδ90とするとき、
0≦δ35/Rc≦0.004、且つ、0.015≦δ90/Rc≦0.025
を満たす。
以下、本実施形態の航空機用空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0031】
本実施形態の航空機用空気入りタイヤによれば、まず、δ35/Rc≦0.004と(比較的小さく)しているため、タッチダウン直後の極低荷重での接地幅を確保することができ、タッチダウン摩耗を抑制することができる。また、δ90/Rc≦0.025と(比較的小さく)することで、タクシー走行時のタイヤショルダー部の径差による引きずりを小さくすることができ、タクシー摩耗も抑制することができる。さらに、δ90/Rc≧0.015とすることで、ショルダー部でのベルト張力を増大させて、スタンディングウェーブ性能を向上させることもできる。なお、0≦δ35/Rcとしているため、タイヤ赤道面を中心とした接地が可能となる。
以上のように、本実施形態の航空機用空気入りタイヤによれば、空港内を移動する際に発生する摩耗を抑制しつつも、航空機が着陸した瞬間の極低荷重時の摩耗も抑制することができ、さらにスタンディングウェーブ性能を向上させることもできる。
【0032】
上記と同様の理由により、上記基準状態において、
0≦δ35/Rc≦0.002、且つ、0.018≦δ90/Rc≦0.023
を満たすことがより好ましい。
【0033】
また、上記基準状態において、
0.014≦(δ90-δ35)/Rc≦0.024
をさらに満たすことが好ましい。
(δ90-δ35)/Rc≦0.024とすることにより、より一層タクシー摩耗を抑制することができ、一方で、0.014≦(δ90-δ35)/Rcとすることにより、より一層スタンディングウェーブ性能を向上させることができるからである。
同様の理由により、上記基準状態において、
0.016≦(δ90-δ35)/Rc≦0.022
を満たすことがより好ましい。
【0034】
ここで、ベルト層のうち1層以上において、弾性率が30cN/dtex以上であるベルトコードが、タイヤ赤道面に対して10°以下の傾斜角度で延びていることが好ましい。ベルト層の周方向剛性を高めて、規定内圧を充填した状態におけるタイヤ形状の維持をより確実なものとして、上記の各効果をより確実に得ることができるからである。例えば、ベルト層のうち1層以上を上記のスパイラルベルト層とすることができる。この場合、当該ベルト層においては、上記の弾性率を達成するために、特には限定されないものの、ナイロンとアラミドとのハイブリッドコードを用いることが好ましい。
【0035】
同様の理由により、上記の場合において、ベルトコードの弾性率は、100cN/dtex以上であることがさらに好ましい、この場合、当該ベルト層においては、上記の弾性率を達成するために、特には限定されないものの、アラミドコードを用いることが好ましい。
【0036】
ここで、上記距離Wbは、タイヤ最大幅(上記基準状態におけるタイヤのタイヤ幅方向の最大幅)の70~90%であることが好ましい。70%以上とすることによりスタンディングウェーブをより抑制することができ、一方で、90%以下とすることにより軽量化を図ることができるからである。
【実施例
【0037】
本発明の効果を確かめるため、タイヤサイズH44.5×16.5×R21である発明例タイヤ及び比較例タイヤを試作した。発明例タイヤ及び比較例タイヤは、ナイロンからなる5枚のカーカスプライからなるカーカスを有する。発明例タイヤ及び比較例タイヤは、タイヤ径方向内側から、6層のスパイラルベルト層、2層のジグザグベルト層を有するベルト構造とした。発明例タイヤ及び比較例タイヤにおいて、ジグザグベルト層のベルトコードは、ナイロンコードとし、スパイラルベルト層のベルトコードはアラミドコードとした。発明例タイヤ及び比較例タイヤにおいて、距離Wbは、150mmとし、Rcは573mmとした。比較例タイヤでは、δ35/Rc=0.0080、δ90/Rc=0.031、(δ90-δ35)/Rc=0.023、とし、発明例タイヤでは、δ35/Rc=0.0016、δ90/Rc=0.021、(δ90-δ35)/Rc=0.020とした。
【0038】
発明例タイヤ及び比較例タイヤに対し、以下の試験を行った。
<タクシー摩耗>
有限要素法にて、摩耗エネルギーの予測計算を実施し、比較例を100とした指数で表した。指数が小さいほど摩耗速度が遅く、摩耗性能が良いと言える。
<タッチダウン摩耗性能>
タッチダウン現象のシミュレーションを実施し、タイヤ赤道面での、タッチダウン1回あたりの摩耗量を計算し、比較例を100とした指数で表した。指数が小さいほど、摩耗性能が良いと言える。
<スタンディングウェーブ性能>
離陸時のタイヤ入力を模擬したドラム試験を実施した。タイヤサイド部をビデオカメラで撮影し、スタンディングウェーブが発生した速度を計測した。比較例を100とした指数で表した。指数が大きいほどスタンディングウェーブ発生速度が大きく、スタンディングウェーブ性能が良いと言える。
【0039】
発明例の評価結果は、旋回時の摩耗性能:94、タッチダウン摩耗性能:78、スタンディングウェーブ:100であった。
【符号の説明】
【0040】
1:航空機用空気入りタイヤ、
2:ビード部、
3:ビードコア、
4:カーカス、
5:ベルト、
8:タイヤ外表面、
12:トレッド部、
R:適用リム
図1
図2
図3
図4