(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】電子制御装置、作業車両および入力回路
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20231117BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231117BHJP
H03K 19/0175 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H01H9/54 B
B60R16/02 645A
H03K19/0175 240
H01H9/54 C
(21)【出願番号】P 2020214880
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一貴
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-294198(JP,A)
【文献】特開2007-273197(JP,A)
【文献】特開平07-014463(JP,A)
【文献】特開2005-294200(JP,A)
【文献】米国特許第7696637(US,B2)
【文献】特許第3587802(JP,B2)
【文献】特開平09-294341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
B60R 16/02
H03K 19/0175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えるスイッチを備える作業車両に搭載される電子制御装置であって、
導電線を介して前記スイッチの前記第2端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に信号線を介して接続される入力回路と、
前記入力回路から出力される出力信号に基づいて前記スイッチの前記電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するマイクロコントローラと、
を備え、
前記入力回路は、
電源またはグランドと前記信号線とに接続される第1抵抗素子と、
前記電源またはグランドと前記信号線とに接続される過渡電流回路であって、前記スイッチが前記電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときに前記スイッチに過渡電流を流す第2抵抗素子を含む過渡電流回路と、
基準電圧に基づいて、前記信号線の出力端のアナログ電圧信号を論理的にハイレベルまたはローレベルのデジタル信号に変換し、前記デジタル信号を前記出力信号として出力する変換回路と、
を有
し、
前記基準電圧は、前記スイッチが電気的不導通状態にあるときに前記第1抵抗素子に流れ得るリーク電流に起因して発生する前記第1抵抗素子の両端電圧に基づいて決定される、電子制御装置。
【請求項2】
前記第1抵抗素子の抵抗値は前記第2抵抗素子の抵抗値よりも大きい、請求項
1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記第2抵抗素子の抵抗値に対する前記第1抵抗素子の抵抗値の比は3.0以上5.0未満である、請求項
2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えるスイッチを備える作業車両に搭載される電子制御装置であって、
導電線を介して前記スイッチの前記第2端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に信号線を介して接続される入力回路と、
前記入力回路から出力される出力信号に基づいて前記スイッチの前記電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するマイクロコントローラと、
を備え、
前記入力回路は、
電源またはグランドと前記信号線とに接続される第1抵抗素子と、
前記電源またはグランドと前記信号線とに接続される過渡電流回路であって、前記スイッチが前記電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときに前記スイッチに過渡電流を流す第2抵抗素子を含むRC直列回路を有する過渡電流回路と、
を有する、電子制御装置。
【請求項5】
前記過渡電流回路は、ドレインが前記グランドに接続されるPMOSトランジスタを含み、
前記第2抵抗素子は、前記信号線と前記PMOSトランジスタのソースとに接続されている、請求項1から
3のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記入力回路はローパスフィルタ回路を有する、請求項1から
5のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記入力回路は、一端が前記グランドに接続され、他端が前記信号線に接続されるキャパシタを含むRCローパスフィルタ回路を有し、
前記過渡電流回路は、ドレインが前記グランドに接続されるPMOSトランジスタを含み、
前記第2抵抗素子は、前記信号線と前記PMOSトランジスタのソースとに接続され、
前記キャパシタの前記他端は前記PMOSトランジスタのゲートに接続されている、請求項1から
3のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記変換回路は、前記アナログ電圧信号と前記基準電圧との大きさを比較し、比較結果に応じて前記デジタル信号を出力するコンパレータを有する、請求項
1から3のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記変換回路は、
前記信号線の出力端と前記グランドとの間に直列に接続される2つの抵抗素子を含む分圧器と、
エミッタが前記グランドに接続され、かつ、ベースが前記2つの抵抗素子の間のノードに接続されるバイポーラトランジスタと、
を有し、
前記出力信号は前記バイポーラトランジスタのコレクタ電圧に応じて変化する、請求項
1から3のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項10】
それぞれが前記入力回路である複数の入力回路と、それぞれが前記入力端子である複数の入力端子とを備え、
前記複数の入力端子は、それぞれ、複数の導電線を介して複数のスイッチに接続され、
前記複数の入力回路は、それぞれ、複数の信号線を介して前記複数の入力端子に接続されている、請求項1から
9のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項11】
前記複数の入力回路と前記マイクロコントローラとに接続され、前記複数の入力回路から出力される出力信号の中から1つを選択して出力するマルチプレクサを備え、
前記マイクロコントローラは、前記マルチプレクサから出力される前記出力信号に基づいて、前記複数のスイッチのうちの1つの電気的導通状態および電気的不導通状態を検知する、請求項
10に記載の電子制御装置。
【請求項12】
前記スイッチの前記第1端子は前記電源に接続され、
前記第1抵抗素子は、前記信号線と前記グランドとに接続されるプルダウン抵抗であり、
前記過渡電流回路は、前記グランドと前記信号線とに接続される、請求項1から
11のいずれかに記載の電子制御装置。
【請求項13】
ユーザが操作可能な1または複数のスイッチと、
請求項1から
12のいずれかに記載の電子制御装置と、
を備える作業車両。
【請求項14】
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えるスイッチを備える作業車両に搭載される電子制御装置が有する入力端子に信号線を介して接続される入力回路であって、
前記入力端子は前記スイッチの前記第2端子に導電線を介して接続され、
前記電子制御装置は、前記入力回路から出力される出力信号に基づいて前記スイッチの前記電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するマイクロコントローラを有し、
電源またはグランドと前記信号線とに接続される第1抵抗素子と、
前記電源またはグランドと前記信号線とに接続される過渡電流回路であって、前記スイッチが前記電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときに前記スイッチに過渡電流を流す第2抵抗素子を含む過渡電流回路と、
基準電圧に基づいて、前記信号線の出力端のアナログ電圧信号を論理的にハイレベルまたはローレベルのデジタル信号に変換し、前記デジタル信号を前記出力信号として出力する変換回路と、
を備え
、
前記基準電圧は、前記スイッチが電気的不導通状態にあるときに前記第1抵抗素子に流れ得るリーク電流に起因して発生する前記第1抵抗素子の両端電圧に基づいて決定される、入力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置、作業車両および入力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
農業機械または建設機械などの作業車両は、運転席、多種多様の操作レバーおよび操作スイッチなどが内部に設けられるキャビンを備える。例えば、数十個程度の操作スイッチがキャビンの内部に設けられ得る。操作スイッチのオープン/クローズ状態が、例えば、作業車両に搭載された電子制御装置が備えるマイクロコントローラによって検知され得る。マイクロコントローラは、検知結果に応じて所望の処理を実行する。
【0003】
スイッチを大気中で使用すると、スイッチの接点の表面が自然酸化されて腐食し、その表面に酸化膜が生じ得る。その酸化膜は絶縁膜として振る舞うために、接点における導通確保が困難になる場合がある。特許文献1から3は、スイッチの接点に生じた腐食物を除去または防止するための電気回路を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7696637号明細書
【文献】特許第3587802号
【文献】特開平9-294341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、スイッチの接点に生じた酸化膜などの腐食物を除去するために、例えばスイッチに10mA以上の電流を流す必要があった。その結果、電気回路における電力損失が増大するという課題がある。
【0006】
本開示の実施形態は、比較的に単純な回路構成によって、スイッチの腐食物を除去し、かつ、電力損失を低減することが可能となる入力回路および当該入力回路を備える電子制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的な実施形態による電子制御装置は、第1端子および第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えるスイッチを備える作業車両に搭載される電子制御装置である。前記電子制御装置は、導電線を介して前記スイッチの前記第2端子に接続される入力端子と、前記入力端子に信号線を介して接続される入力回路と、前記入力回路から出力される出力信号に基づいて前記スイッチの前記電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するマイクロコントローラと、を備える。前記入力回路は、電源またはグランドと前記信号線とに接続される第1抵抗素子と、前記電源またはグランドと前記信号線とに接続される過渡電流回路であって、前記スイッチが前記電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときに前記スイッチに過渡電流を流す第2抵抗素子を含む過渡電流回路と、を有する。
【0008】
本開示の例示的な実施形態による作業車両は、ユーザが操作可能な1または複数のスイッチと、上記の電子制御装置とを備える。
【0009】
本開示の例示的な実施形態による入力回路は、第1端子および第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えるスイッチを備える作業車両に搭載される電子制御装置が有する入力端子に信号線を介して接続される回路である。前記入力端子は前記スイッチの前記第2端子に導電線を介して接続される。前記電子制御装置は、前記入力回路から出力される出力信号に基づいて前記スイッチの前記電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するマイクロコントローラを有する。前記入力回路は、電源またはグランドと前記信号線とに接続される第1抵抗素子と、前記電源またはグランドと前記信号線とに接続される過渡電流回路であって、前記スイッチが前記電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときに前記スイッチに過渡電流を流す第2抵抗素子を含む過渡電流回路と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態によれば、比較的に単純な回路構成によって、スイッチの腐食物を除去し、かつ、電力損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】操作スイッチとしてハイサイドスイッチを用いる場合における、本開示の実施形態に係る入力回路を備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】過渡電流回路の他の構成例を示す回路図である。
【
図5】操作スイッチとしてローサイドスイッチを用いる場合における、本開示の実施形態に係る入力回路を備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る、複数の入力回路を備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る、マルチプレクサを備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る、複数のマルチプレクサを備える電子制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図9】トラクタにおける電源系統の例を示すブロック図である。
【
図10】水入りに起因してリーク電流が生じた場合に変換回路から出力される出力信号を検証するために構築した回路モデルを例示する回路図である。
【
図11】水入りに起因してリーク電流が生じた場合に変換回路から出力される出力信号を検証するために構築した他の回路モデルを例示する回路図である。
【
図12】1サイクルの期間における、入力端子T1の電圧変化、スイッチ100に流れる電流変化、変換回路230から出力される出力信号の変化をそれぞれ例示するグラフである。
【
図13】本開示の実施形態に係るトラクタの外観の例を示す斜視図である。
【
図14】本開示の実施形態に係るトラクタと、トラクタに連結された作業機を側面方向から見た模式図である。
【
図15】本開示の実施形態に係るトラクタの構成例を示すブロック図である。
【
図16】キャビンの内部に設けられた操作スイッチ群を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
作業車両のキャビンに設けられる操作スイッチは、種々の操作を行うためのスイッチを含む。操作スイッチは、例えば、クラッチ操作を行うためのスイッチ、主変速または副変速の変速段を選択するためのスイッチ、オートモードおよびマニュアルモードを切り替えるためのスイッチ、または、前進および後進を切り替えるためのスイッチなどである。これらのスイッチとして、一般に、接点を有するスイッチが用いられる。
【0013】
スイッチの接点に用いる材料は、例えば、銀、銀ニッケル、銀酸化錫、銀タングステン、または、銅などである。耐食性および電気伝導性を向上させるために、例えば、接点の表面に、金メッキ処理がなされたり、金を圧延接合して表面を被覆することによって金クラッドが形成されたりする。しかしながら、操作スイッチのシール性は決して高くないために、スイッチを大気中で使用すると、酸化膜または硫化膜などを含む腐食物が接点の表面に付着し得る。また、摩耗により、腐食物が接点の表面に付着し得る。特に、作業車両のユーザは、過酷な環境下で作業を行いながら作業車両を操作するために、操作スイッチに水が混入したり、結露が生じたり、泥などが付着したりし易くなる。このように、スイッチの接点の表面に腐食物が付着し易くなる。この腐食物は、電流を接点に瞬間的に流すことで接点間に発生するアークによって除去することが可能となる。ただし、スイッチに電流を流すと、スイッチに接続される回路で電力が消費されて電力損失が増大するという課題がある。
【0014】
操作スイッチは、入力回路を介してマイクロコントローラに電気的に接続され得る。この入力回路は腐食物を除去するための回路を含む。入力回路およびマイクロコントローラは、電子制御装置に実装される。例えば、100馬力を超える大型のトラクタには、100個程度の操作スイッチがキャビンに設けられ得る。この場合、それぞれの操作スイッチは、入力回路を介してマイクロコントローラに電気的に接続される。腐食物を除去するための電流をそれぞれの操作スイッチに流すと、入力回路における電力損失が一層大きくなる。入力回路に接続される操作スイッチの個数が増えるほど、入力回路を備える電子制御装置における発熱量が増大する。このため、電子制御装置は、放熱性に優れた例えばアルミニウム合金材料などから形成された金属筐体に収納する必要があった。金属筐体に収納することによって、放熱性が向上し、かつ、過酷な環境下において混入し得る粉塵および水から電子制御装置を保護することができる。ただし、金属筐体を採用することは高コストに繋がる。
【0015】
上述したように、操作スイッチの防水性は決して高くないために、操作スイッチの内部に水が混入し易くなる。以降、水が操作スイッチの内部に混入することを、「水入り」と記載する。「水入り」は「水漏れ」と呼ぶこともできる。水には、無機物質および有機物質が不純物として含まれている。そのため、水入りが生じると、操作スイッチが開放しているときであっても、電気的導通状態になり得る。水入りに起因して操作スイッチを流れる微小なリーク電流が入力回路に流れ込むこととなる。その結果、操作スイッチが開放しているときであっても、入力端子の電圧が持ち上がり、マイクロコントローラは、スイッチの状態を電気的導通状態として誤検知してしまう可能性がある。
【0016】
本明細書において、スイッチに電流が流れる状態を、「電気的導通状態」または「オン状態」と記載する。スイッチに電流が流れない状態を、「電気的不導通状態」または「オフ状態」と記載する。微小なリーク電流がスイッチに流れ得る状態は、「電気的不導通状態」と記載する。
【0017】
特許文献1に開示された入力回路の構成によれば、直列に接続された抵抗素子およびダイオードを介してスイッチに接続されたパワートランジスタのオン/オフの切り替えがマイクロコントローラによって制御される。マイクロコントローラは、スイッチのオン/オフ状態を検出するときにだけ1ミリ秒以下の短い間隔でパワートランジスタをオンする。これにより、入力回路における電力損失が低減されるとされている。しかしながら、要求仕様などにより、入力回路とマイクロコントローラとの間にマルチプレクサのようなデバイスを接続することが求められる場合がある。一般に、マイクロコントローラとマルチプレクサとは非同期で動作する。特許文献1に開示された入力回路は、マイクロコントローラによるパワートランジスタのオン/オフの制御を必要とする。そのために、入力回路とマイクロコントローラとの間にマルチプレクサを接続した場合、パワートランジスタのオン・オフの制御と、マルチプレクサから出力される出力信号との間で同期が取れなくなってしまう問題が生じる。
【0018】
本発明者は上記の課題に鑑み、比較的に単純な回路構成によって、スイッチの腐食物を除去し、かつ、電力損失を低減することが可能となる新規な入力回路の構成を見出し本発明に至った。本開示の実施形態によれば、マイクロコントローラによるスイッチ状態の誤検出を防止すること、および、入力回路とマイクロコントローラとの間に、マイクロコントローラと非同期で動作するマルチプレクサのようなデバイスを接続することが可能となる。さらに、入力回路における電力損失を低減することにより、金属筐体の代わりに、金属筐体よりも軽量で、かつ、安価である樹脂封止を採用することも可能となる。
【0019】
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似の機能を有する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0020】
以下の実施形態は例示であり、本開示による入力回路および当該入力回路を備える電子制御装置は、以下の実施形態に限定されない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。また、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、一の態様と他の態様とを組み合わせることが可能である。
【0021】
[1.入力回路200および電子制御装置500の構成]
図1から
図9を参照して、本実施形態に係る入力回路200および電子制御装置500の構成例を説明する。電子制御装置500は、例えば、センサに接続される入力I/F、アクチュエータに接続される出力I/F、およびCAN(Controller Area Network)バスI/Fを備えていてもよい。
【0022】
図1は、操作スイッチ100としてハイサイドスイッチを用いる場合における、入力回路200を備える電子制御装置500の構成例を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態に係る入力回路200、および、入力回路200を備える電子制御装置500は、例えば、農業機械または建設機械などの作業車両に搭載され得る。以降、電子制御装置500は、農業機械の代表例であるトラクタに搭載される装置として説明する。
【0024】
電子制御装置は、例えばトラクタの走行を、プロセッサなどの電子回路を用いて制御する装置の総称である。電子制御装置は、トラクタなどの作業車両の走行に必要なエンジン制御、トランスミッション制御、パワーステアリング制御、およびブレーキング制御に用いられる機器を制御するための処理だけではなく、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用した測位、自動運転または自動操舵などの運転支援、作業機の制御などに用いられる各種機器の動作に必要な処理を実行し得る。これらの処理を効率的に実行するため、1台の作業車両は、それぞれが異なる処理を実行する複数の電子制御装置を備えることができる。このような電子制御装置は、ECU(Electronic Control Unit)とも称される。本明細書において、電子制御装置を「ECU」と記載する場合がある。
【0025】
電子制御装置500は、入力端子T1と、入力回路200と、マイクロコントローラ300とを備える。これらの構成要素は、例えばプリント基板(PCB)に実装され、ECUとしてパッケージ化され得る。パッケージ化されたECUは、作業車両に搭載される装置として上市され得る。
【0026】
電子制御装置500は、1または複数の操作スイッチを備える作業車両に搭載され得る。本実施形態において、電子制御装置500は、複数の操作スイッチ100を備えるトラクタに搭載される。なお、トラクタの構成については後述する。
【0027】
操作スイッチ100(以降、単に「スイッチ」と記載する。)は、接点、第1端子101および第2端子102を有する。
図1に示される例において、スイッチ100はa接点のスイッチである。スイッチ100は、第1端子101と第2端子102との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えることが可能である。換言すると、スイッチ100は、オン状態とオフ状態とを切り替えることが可能である。スイッチ100が押されていないときは接点が離れ、スイッチ100は電気的不導通状態となる。スイッチ100が押されると接点が接触し、スイッチ100は電気的導通状態となる。
【0028】
スイッチ100は、メカニカルスイッチ、メカニカルリレーなどの接点を有する任意の部品であり得る。スイッチ100は、押しボタンスイッチであってもよい。スイッチ100の例は、クラッチ操作を行うためのスイッチ、主変速または副変速の変速段を選択するためのスイッチ、オートモードおよびマニュアルモードを切り替えるためのスイッチ、前進および後進を切り替えるためのスイッチ、または、作業機を昇降するためのスイッチなどであり得る。ただし、これらのスイッチはあくまで一例に過ぎない。スイッチ100は、トラクタのキャビンにおいてユーザが操作可能な位置に配置される。なお、トラクタのキャビンについては
図16を参照して後述する。
【0029】
図1に示される例において、スイッチ100の第1端子101は電源Vccに接続され、第2端子102は導電線110を介して電子制御装置500の入力端子T1に接続されている。すなわち、スイッチ100はハイサイドスイッチである。例えば、導電線110は、ワイヤーハーネスによって実現され得る。入力端子T1は、ワイヤーハーネスのコネクタに適合するように構成される。本明細書において、「接続」という用語は、主に、部品同士の電気的な接続を意味する。電源Vccは、例えば出力電圧が12Vから14V程度の範囲にあるバッテリ電源である。
【0030】
入力回路200は、抵抗素子201と、過渡電流回路210と、ローパスフィルタ回路220と、変換回路230とを有する。入力回路200は、信号線SLを介して入力端子T1に接続されている。これにより、スイッチ100と入力回路200との電気的な接続がなされる。
【0031】
抵抗素子201は、信号線SLの電圧レベルの論理を固定する。抵抗素子201は、電源Vccまたはグランドと信号線SLとに接続され得る。
図1に示される例において、抵抗素子201は、いわゆるプル
ダウン抵抗であり、グランドと信号線SLとに接続されている。
【0032】
過渡電流回路210は、抵抗素子201と同様に、電源Vccまたはグランドと信号線SLとに接続され得る。
図1に示される例において、過渡電流回路210は、グランドと信号線SLとに接続されている。過渡電流回路210は、抵抗素子211およびキャパシタ212を含むRC直列回路を有する。RC直列回路は時定数回路である。抵抗素子211の一端が信号線SLに接続され、抵抗素子211の他端がキャパシタ212の一端に接続され、キャパシタ212の他端がグランドに接続される。過渡電流回路210は、ユーザの操作によってスイッチ100が電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときにスイッチ100に過渡電流を流す。
【0033】
本実施形態において、抵抗素子201の抵抗値は、抵抗素子211の抵抗値よりも大きくなるように設定される。抵抗素子211の抵抗値に対する抵抗素子201の抵抗値の比が例えば3.0以上5.0未満になるように、それぞれの抵抗素子の抵抗値は設定され得る。例えば、抵抗素子201の抵抗値は数kΩ程度であり、抵抗素子211の抵抗値は数百Ω程度である。キャパシタ212の容量は、例えば、RC直列回路の時定数が数十μs程度になるように決定される。
【0034】
ローパスフィルタ回路220は、抵抗素子221およびキャパシタ222を含むRCローパスフィルタ回路である。キャパシタ222の一端がグランドに接続され、キャパシタ222の他端が信号線SLに接続されている。抵抗素子221は、信号線SLに直列に接続されている。本実施形態において、抵抗素子221の抵抗値は、例えば10kΩ程度であり、キャパシタ222の容量は、例えば0.1μF程度である。ただし、ローパスフィルタ回路220は必須ではない。ローパスフィルタ回路220を設けることにより、後述する変換回路230に入力するアナログ電圧信号から高周波のノイズ成分を除去し、直流および低周波の信号成分を取り出すことが可能となる。
【0035】
変換回路230は、基準電圧Vrefに基づいてアナログ信号をデジタル信号に変換する。より詳細には、変換回路230は、基準電圧Vrefに基づいて、信号線SLの出力端T2のアナログ電圧信号を論理的にハイレベルまたはローレベルのデジタル信号に変換し、デジタル信号を出力信号として出力するように構成される。基準電圧Vrefは、論理的にハイレベルとローレベルの境界を規定する閾値に相当する。以下、論理的にハイレベルは、「Hiレベル」と記載し、論理的にローレベルは、「Loレベル」と記載する。変換回路230として、様々な回路構成を採用し得る。
【0036】
図2は、変換回路230Aの構成例を示す回路図である。図示される例において、変換回路230Aは、コンパレータ231と、直列に接続された2つの抵抗素子232、233を含む分圧器とを有する。コンパレータ231は、入力信号であるアナログ電圧信号と基準電圧Vrefとの大きさを比較し、比較結果に応じて、HiレベルまたはLoレベルのデジタル信号を出力する。コンパレータ231の非反転入力端子には、2つの抵抗素子232、233の間のノードの電圧が基準電圧Vrefとして入力され、反転入力端子には、アナログ電圧信号が入力される。コンパレータ231の正電源端子には電源Vccが接続され、負電源端子にはグランドが接続される。
【0037】
本実施形態において、例えば、抵抗素子232の抵抗値は、数kΩ程度であり、抵抗素子233の抵抗値は、例えば十数kΩ程度である。抵抗素子232の抵抗値は、例えば、抵抗素子233の抵抗値よりも5倍程度小さくなるように設定され得る。コンパレータ231を利用することにより、基準電圧Vrefを適切に設定することができる。
【0038】
図3は、変換回路230Bの構成例を示す回路図である。閾値を固定できる限りにおいて、コンパレータを別のデバイスに置き換えることが可能である。例えば、閾値を固定できるデバイスとして、バイポーラトランジスタを採用することができる。図示される例において、変換回路230Bは、バイポーラトランジスタ234と、信号線SLの出力端T2とグランドとの間に直列に接続される2つの抵抗素子235、236を含む分圧器と、を有する。バイポーラトランジスタ234のエミッタがグランドに接続され、かつ、ベースが2つの抵抗素子235、236の間のノードに接続されている。バイポーラトランジスタ234のコレクタが抵抗素子237を介して電源Vccに接続されている。このように、変換回路230は、出力信号がバイポーラトランジスタ234のコレクタ電圧に応じて変化するように構成され得る。
【0039】
本実施形態において、抵抗素子235の抵抗値は、例えば10kΩ程度である。抵抗素子236の抵抗値は、例えば2kΩ程度である。抵抗素子237の抵抗値は、例えば10kΩ程度である。ただし、これらの抵抗値はあくまで一例であり、要求仕様などに基づいて適宜設定され得る。
【0040】
図4は、過渡電流回路210の他の構成例を示す回路図である。図示される例において、過渡電流回路210Aは、ドレインがグランドに接続されるPMOSトランジスタ213を含む。抵抗素子211は、信号線SLとPMOSトランジスタ213のソースとに接続されている。PMOSトランジスタ213のゲートはローパスフィルタ回路220に含まれるキャパシタ222の他端に接続されている。抵抗素子211、221、PMOSトランジスタ213、および、キャパシタ222によって時定数回路とRCフィルタ回路とが構成される。
【0041】
図5は、スイッチ100としてローサイドスイッチを用いる場合における、入力回路200を備える電子制御装置500の構成例を示すブロック図である。図示される例において、スイッチ100の第1端子101はグランドに接続され、第2端子102は導電線110を介して電子制御装置500の入力端子T1に接続されている。すなわち、スイッチ100はローサイドスイッチである。抵抗素子201は、いわゆるプルアップ抵抗であり、電源Vccと信号線SLとに接続されている。過渡電流回路210は、抵抗素子201と同様に、電源Vccと信号線SLとに接続される。他の電気的な接続関係は、スイッチ100としてハイサイドスイッチを用いる場合と同様である。このように、スイッチ100は、ハイサイドスイッチまたはローサイドスイッチであり得る。
【0042】
【0043】
マイクロコントローラ300は、中央演算処理装置(CPU)、キャッシュ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および周辺回路を含む半導体集積回路である。マイクロコントローラは、マイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサユニット(MPU)と称されることがある。マイクロコントローラ300は、入力回路200から出力される出力信号に基づいてスイッチ100の電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するように構成される。CPUが少なくとも1つの処理を実行するための命令群を記述したコンピュータプログラムがROMに格納される。コンピュータプログラムを格納するROMはマイクロコントローラ300に外付けされるメモリであってもよい。CPUはコンピュータプログラムを逐次実行し、所望の処理を実現する。
【0044】
図6は、複数の入力回路200を備える電子制御装置500Aの構成例を示すブロック図である。電子制御装置500Aは、複数の入力回路200と、複数の入力端子T1とを備え得る。
図6に示される例において、電子制御装置500Aは、3つの入力回路200A、200B、200Cと、3つの入力端子T1とを備えている。3つの入力端子T1は、3本の導電線110を介して3つのスイッチ100A、100Bおよび100Cに接続されている。3つの入力回路200A、200Bおよび200Cは、3本の信号線SLを介して3つの入力端子T1に接続されている。このように、スイッチ100Aは、入力回路200Aを介してマイクロコントローラ300に接続され、スイッチ100Bは、入力回路200Bを介してマイクロコントローラ300に接続され、スイッチ100Cは、入力回路200Cを介してマイクロコントローラ300に接続されている。
【0045】
複数の入力回路200のそれぞれは、同じ回路構成を備えることができる。ただし、スイッチ100の種類、スイッチ100と入力回路200とを接続する導電線110の長さなどに応じて、入力回路200が有する抵抗素子の抵抗値および/またはキャパシタの容量などの値が異なり得る。
【0046】
図示される例に限定されず、4個以上のスイッチ100にそれぞれ接続されたこれと同数の入力回路200が1つのマイクロコントローラ300に接続され得る。例えば、30個から40個以上のスイッチ100がトラクタに設けられ、大型のトラクタにおいては、100個以上の3桁に及ぶスイッチ100がトラクタに設けられ得る。多数のスイッチ100のそれぞれに接続された入力回路200は、1つのマイクロコントローラ300に接続され得る。
【0047】
図7は、マルチプレクサ400を備える電子制御装置500Bの構成例を示すブロック図である。電子制御装置500Bはマルチプレクサ400を備えていてもよい。マルチプレクサ400は、複数の入力回路200とマイクロコントローラ300とに接続される。マルチプレクサ400は、複数の入力回路200から出力される出力信号をマイクロコントローラ300へ出力する。マイクロコントローラ300は、マルチプレクサ400から出力される出力信号に基づいて、スイッチ100の電気的導通状態および電気的不導通状態を検知する。
【0048】
図示される例において、2つの入力回路200A、200Bからそれぞれ出力される出力信号がマルチプレクサ400に入力される。2つの入力回路200A、200Bは、同じ回路構成を備えることができる。ただし、スイッチ100の種類、スイッチ100と入力回路200とを接続する導電線110の長さなどに応じて、2つの入力回路200A、200Bの間で抵抗素子の抵抗値および/またはキャパシタの容量などの値は異なり得る。マイクロコントローラ300は、マルチプレクサ400から出力される出力信号に基づいて、2つのスイッチ100A、100Bの電気的導通状態および電気的不導通状態を検知する。図示される例に限定されず、マルチプレクサ400には3つ以上の入力回路200が接続され得る。例えば、トラクタに搭載される電子制御装置において、主変速または副変速の変速段を選択するための2つ以上のスイッチにそれぞれ接続される2つ以上の入力回路200が1つのマルチプレクサ400に接続され得る。
【0049】
図8は、複数のマルチプレクサ400を備える電子制御装置500Cの構成例を示すブロック図である。電子制御装置500Cは複数のマルチプレクサ400を備え得る。図示される例において、複数のマルチプレクサ400は、2つの入力回路200A、200Bに接続されたマルチプレクサ400Aと、3つの入力回路200C、200Dおよび200Eに接続されたマルチプレクサ400Bとを含む。図示される例に限定されず、例えば要求仕様などに応じて、電子制御装置500は3つ以上のマルチプレクサ400を備え得る。
【0050】
複数のマルチプレクサ400に接続される複数の入力回路200のそれぞれは、同じ回路構成を備えることができる。ただし、スイッチ100の種類、スイッチ100と入力回路200とを接続する導電線110の長さなどに応じて、入力回路200が有する抵抗素子の抵抗値および/またはキャパシタの容量などの値は異なり得る。
【0051】
図9は、トラクタにおける電源系統の例を示すブロック図である。図示される例において、バッテリ電源が、ツェナーダイオード、ダイオードおよびヒューズなどの保護素子を介して自己保持/遮断回路700に接続される。バッテリ電源の電圧は例えば12Vまたは14Vである。内部電源生成回路701が、自己保持/遮断回路700の後段に接続される。バッテリ電源は、例えば、スイッチ100の第1端子101、および、エンジンなどの負荷を駆動するための駆動回路に接続され得る。自己保持/遮断回路700は、自己保持回路および電流遮断回路などを有する。内部電源生成回路701は、例えば、バッテリ電源の電圧(例えば12V)を降圧して、マイクロコントローラ300、マルチプレクサ400などの5V系の論理回路に供給するための駆動電圧を生成する。
【0052】
バッテリ電源の起動時に、例えばマイクロコントローラなどの電子部品の入力側に接続されるバイパスコンデンサを充電するために突入電流が流れ得る。例えば、十数A程度の突入電流が流れ得る。自己保持/遮断回路700は、突入電流から電子部品を保護するための電流遮断回路として機能する。自己保持/遮断回路700によって、突入電流が生じるブロックと、12V系および5V系の論理回路を含む論理回路のブロックとを分離することにより、論理回路のブロックを突入電流から保護することが可能となる。
【0053】
本実施形態に係る入力回路200は、電子制御ユニットに搭載される部品として製造および販売され得る。入力回路200は、例えば、モジュール化され、入力回路モジュールとして上市され得る。
【0054】
[2.入力回路200の動作]
図10から
図12を参照して、入力回路200の機能および動作を説明する。
【0055】
図10および
図11は、それぞれ、水入りに起因してリーク電流が生じた場合に変換回路230から出力される出力信号を検証するために構築した回路モデルを例示する回路図である。
図10には、
図1に示す入力回路200の構成例に対応した回路モデルが示され、
図11には、
図4に示す入力回路200の構成例に対応した回路モデルが示されている。
図12は、スイッチ100がオフ状態からオン状態に遷移して再びオフ状態に戻るまでの1サイクルの期間における、入力端子T1の電圧変化、スイッチ100に流れる電流変化、変換回路230から出力される出力信号の変化をそれぞれ例示するグラフである。入力端子T1の電圧変化は、信号線SLの電圧変化を表している。1サイクルの期間の例は1秒である。
【0056】
図示される回路モデルにおいて、スイッチ100はトランジスタQ1によってモデル化されている。電源線VLと信号線SLとに接続された抵抗素子R3によって水入りによるリーク電流がモデル化されている。2つの抵抗素子201、R3の分圧比によって、リーク電流の大きさ、および、リーク電流により生じる抵抗素子201の両端電圧が調整される。
【0057】
図示される回路モデルにおいて、抵抗素子201、211、221、232、233、R1、R2、R3およびR4の抵抗値は、それぞれ、2.2kΩ程度、470Ω程度、10kΩ程度、2kΩ程度、10kΩ程度、10kΩ程度、10kΩ程度、500Ω程度、および10kΩ程度である。キャパシタ212、222の容量は、それぞれ、0.1μF程度である。電源V1の電源電圧は14Vである。電源V2はパルス電圧を生成するパルスジェネレータである。パルス電圧の周期、パルス幅および振幅は、それぞれ、2s、1sおよび14Vである。
【0058】
図示される回路モデルにおいて、トランジスタQ1のオン/オフ状態に関係なく、抵抗素子R3によって水入りに起因したリーク電流が定常的に流れる。トランジスタQ1がオフ状態であっても、抵抗素子R3によって5mA程度のリーク電流が流れる。
【0059】
水入りが生じていない理想状態においては、スイッチ100が開放しているとき、つまり、トランジスタQ1がオフ状態にあるとき、信号線SLの電位は0Vである。しかし、実際は、水入りに起因したリーク電流が抵抗素子201を流れ得るために、信号線SLの電位は、抵抗素子201の両端電圧だけ電圧降下によって上昇することとなる。例えば、5mA程度のリーク電流が抵抗素子201を流れる場合、信号線SLの電位は、0Vから10V程度だけ上昇し、10V程度に到達し得る。以降、この電圧を、「バイアス電圧」と呼ぶこととする。後段のマイクロコントローラ300は、スイッチ100が開放しているにもかかわらず、信号線SLの電位の上昇に起因して、スイッチ100の状態を電気的導通状態であると誤検出してしまう可能性がある。本実施形態において、入力回路200に変換回路230を設けることによって、後述するようにこの問題を解決している。
【0060】
RC直列回路は、上述したように、直列に接続された抵抗素子211およびキャパシタ212を含む。トランジスタQ1がオンすると、RC直列回路によって、トランジスタQ1に過渡電流が流れる。入力端子T1の電位レベル、つまり、信号線SLの電位が電源電圧である14Vに変化する。例えば、十数mA程度の過渡電流が0.1ms程度の短時間に流れ得る。過渡電流は過渡電流回路210に流れ込むため、入力回路における電力損失を抑制することができる。上述した突入電流のオーダは、例えば、過渡電流の電流オーダよりも2桁程大きい。過渡電流の大きさは、突入電流の大きさよりも遥かに小さい。このため、過渡電流による電流破壊を防止するための保護回路を入力回路に設ける必要がない。数十mA程度の過渡電流は、スイッチの腐食物を除去するために十分な電流量であり、その結果、過渡電流がスイッチに流れることにより、スイッチの腐食物を除去することが可能となる。このように、RC直列回路のような比較的に単純な回路を用いて、スイッチの腐食物を除去することが可能となる。
【0061】
過渡電流がスイッチ100に過渡的に流れた後は、定常電流が流れる。この定常電流にはリーク電流が含まれる。RC直列回路の作用から、RC直列回路には定常電流は流れない。一方で、プルダウン抵抗である抵抗素子201には定常電流は流れ得る。ただし、本実施形態において、抵抗素子201の抵抗値は、RC直列回路に含まれる抵抗素子211の抵抗値よりも例えば5倍程度大きい。そのため、抵抗素子201に流れる定常電流による電流損失を低減することが可能となる。
【0062】
図11に示すように、キャパシタ212の代わりに、PMOSトランジスタ213を用いても、RC直列回路を用いる場合と同様な効果が得られる。トランジスタQ1をオンした瞬間は過渡電流が流れる。キャパシタ222が過渡電流によって充電され、PMOSトランジスタ213のゲートの電位がPMOSトランジスタ213のソースの電位よりも高くなると、PMOSトランジスタ213はオフする。
【0063】
図12において、負論理の場合における、変換回路230のコンパレータ231から出力される出力信号の波形が例示されている。コンパレータ231は、信号線SLの電位、つまり、反転入力端子に入力するアナログ電圧信号の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも高ければ、Loレベルのデジタル信号を出力し、反転入力端子に入力するアナログ電圧信号の電圧レベルが基準電圧Vref以下であれば、Hiレベルのデジタル信号を出力する。正論理の場合には、コンパレータ231は、反転入力端子に入力するアナログ電圧信号の電圧レベルが基準電圧Vrefよりも高ければ、Hiレベルのデジタル信号を出力し、反転入力端子に入力するアナログ電圧信号の電圧レベルが基準電圧Vref以下であれば、Loレベルのデジタル信号を出力する。
【0064】
基準電圧Vrefは、スイッチ100が電気的不導通状態にあるときに抵抗素子201に流れ得るリーク電流に起因して発生する抵抗素子201の両端電圧に基づいて決定される。図示される回路モデルにおいて、コンパレータ231の非反転入力端子に入力する基準電圧Vrefは、抵抗素子201の両端電圧に基づいて決定される。本実施形態において、基準電圧Vrefは、例えば12V程度に設定され得る。これにより、信号線SLの電位がリーク電流に起因して上昇しても、マイクロコントローラ300によるスイッチ100の状態の誤検出を防止することが可能となる。また、基準電圧Vrefは、バッテリ電源を基準(+B基準)として2つの抵抗素子232、233の分圧比に基づいて生成される。これにより、電源変動に対するコンパレータ231のロバスト性を向上させることができる。
【0065】
図12に示すように、スイッチ100の状態はオフ状態からオン状態に遷移してから1サイクル後にオフ状態に戻る。これに同期して、入力端子T1の電圧、つまり、信号線SLの電位は電源電圧のレベルからバイアス電圧のレベルに変化する。この変化に応答して、変換回路230から出力されるデジタル信号レベルはLoレベルからHiレベルに変化する。
【0066】
再び、
図3を参照する。上述したように、変換回路230は、コンパレータ231の代わりに、
図3に示すバイポーラトランジスタ234を有し得る。この例において、基準電圧Vrefに対応する閾値は、バイポーラトランジスタ234のベース-エミッタ間電圧V
BEによって規定される。バイポーラトランジスタ234への入力電圧Vinが適切になるように2つの抵抗素子235、236の分圧比が設定される。具体的には、数1の数式に基づいて、閾値であるベース-エミッタ間電圧V
BEに対して入力電圧Vinを任意に調整することが可能である。ここで、r1は抵抗素子235の抵抗値であり、r2は抵抗素子236の抵抗値である。
[数1]
V
BE=Vin*r2/(r1+r2)
【0067】
2つの抵抗素子235、236の間のノードの電位が電圧VBE以下であれば、バイポーラトランジスタ234はオフ状態であり、Hiレベルのデジタル信号が出力される。2つの抵抗素子235、236の間のノードの電位が電圧VBEよりも高くなれば、バイポーラトランジスタ234がオンしてLoレベルのデジタル信号が出力される。コンパレータ231の代わりに、バイポーラトランジスタ234を用いても上述した変換回路230の効果と同様な効果が得られる。
【0068】
本発明者は、
図10および
図11に示す回路モデルを用いて、水入りに起因してリーク電流が生じている場合に変換回路230から出力される出力信号を検証した。リーク電流が抵抗素子201を流れ、信号線SLの電位が電圧降下によって上昇したとしても、変換回路230に適切な閾値を設定することによって、
図12に例示するような所望の出力信号が変換回路230から出力されることが確認された。
【0069】
上述したように、例えば、30個から40個以上のスイッチがトラクタに設けられ、大型のトラクタにおいては、例えば100個以上の3桁に及ぶスイッチがトラクタに設けられ得る。スイッチの個数が増えるほど、従来技術によれば入力回路における発熱量が多くなる。これに対して、本実施形態に係る入力回路200の構成によれば、スイッチ100に瞬間的に流れる過渡電流は、主として過渡電流回路210に流れ込んで消費される。また、過渡電流回路210を流れる電流は、例えば、数十mA程度であり、従来例と比較して一桁程小さい。このため、従来例よりも過渡電流による電力損失を抑制することができる。これは、電子制御装置500に接続するスイッチ100の個数が増えるほど有利に働く。
【0070】
入力回路200における電力損失を低減することは、電子制御装置500の全体における電力損失を低減することに繋がる。これは、金属筐体を、金属筐体よりも軽量で、かつ、安価である樹脂封止に置換することを可能にし得る。例えば、放熱性が比較的に高いエポキシ樹脂などで電子制御装置を封止することにより、放熱性、防塵性および防水性に優れた電子制御装置が実現される。また、基準電圧Vrefを変換回路230に適切に設定することで、水入りによるリーク電流が生じ得る場合であっても、マイクロコントローラ300によるスイッチ100の状態の誤検出を防止することが可能となる。さらに、入力回路200とマイクロコントローラ300との間に、マイクロコントローラ300と非同期で動作するマルチプレクサのようなデバイスを接続することが可能となる。スイッチの個数が増えればマイクロコントローラに必要とされるポート数が増える。ポート数を最小限に減らす観点から、マルチプレクサを介して一部のスイッチ群をマイクロコントローラに接続できることは非常に有利である。
【0071】
[3.作業車両の構成]
本実施形態における作業車両の例は、農業機械であるトラクタである。以下、トラクタの構成例を説明する。
【0072】
図13は、本実施形態に係るトラクタ800の外観の例を示す斜視図である。
図14は、トラクタ800と、トラクタ800に連結された作業機900を側面方向から見た模式図である。
図15は、トラクタ800の構成例を示すブロック図である。
図16は、キャビン805の内部に設けられた操作スイッチ群100を例示する模式図である。
【0073】
図示される例において、トラクタ800は、車両本体801と、原動機(エンジン)802と、変速装置(トランスミッション)803と、測位装置810と、1つ以上のECU820とを備える。車両本体801には、タイヤ804(車輪)と、キャビン805とが設けられている。タイヤ804は、一対の前輪804Fと一対の後輪804Rとを含む。キャビン805の内部にステアリングホイール806、運転席807、および操作端末808が設けられている。一対の前輪804Fおよび一対の後輪804Rの一方が、タイヤではなくクローラであってもよい。
【0074】
原動機802は、例えばディーゼルエンジンである。ディーゼルエンジンに代えて電動モータが使用されてもよい。変速装置803は、変速によってトラクタ800の推進力および速度を変化させることができる。変速装置803は、トラクタ800の前進と後進とを切り換えることもできる。
【0075】
測位装置810は、例えば、GNSSユニットである。測位装置810は、GNSS衛星からの信号を受信するアンテナと、処理回路とを備えるGNSS受信機である。測位装置810は、例えばGPS(Global Positioning System)、Galileo、または準天頂衛星(Quasi-Zenith Satellite System:QZSS、例えばみちびき)などのGNSS衛星から送信されるGNSS信号を受信し、当該信号に基づいて測位を行う。本実施形態における測位装置810は、キャビン805の上部に設けられているが、他の位置に設けられていてもよい。測位装置810による測位によって、地理座標系におけるトラクタ800の地理情報が得られる。
【0076】
測位装置810は、RTK(Real Time Kinematic GPS)などの干渉測位を行ってもよい。RTK測位を行う場合、測位装置810は、RTK受信機を備える。測位装置810は、GNSS衛星から送信されるGNSS信号および基準局から送信される補正信号を受信し、これらの信号に基づいて測位を行う。RTK測位などの干渉測位を用いることで、誤差数cmの精度で測位を行うことが可能である。緯度、経度および高度の情報を含む位置情報が、高精度の測位により生成される。
【0077】
トラクタ800は、1つ以上のECU820を備え得る。1つ以上のECU820は、例えば、トラクタ800の走行を制御するためのECU、および、測位装置810によって取得された地理情報に基づいて自動操舵の制御を行うためのECUを含み得る。1つ以上のECU820のうちの少なくとも1つは、キャビン805の内部に配置された操作スイッチ100に電気的に接続され、操作スイッチ100の電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するように構成される。
【0078】
ECU820が実行する少なくとも1つの処理は、例えば、作業車両が備えるアクチュエータの動作を制御するための処理、および/または、自動走行もしくは自動操舵を行うための処理を含み得る。アクチュエータの例は、原動機、変速装置、油圧装置または電動モータである。既に説明したように、キャビン805の内部に配置されるスイッチには、例えば、主変速または副変速の変速段を選択するためのスイッチ、前進および後進を切り替えるためのスイッチ、作業機900を昇降するためのスイッチなどが含まれる。一例として、ECU820は、ユーザによる、変速段の切り替え操作、または、前進および後進の切り替え操作に応答して、変速装置803の動作を制御する処理を実行することができる。他の一例として、ECU820は、ユーザによる作業機900の昇降の切り替え操作に応答して、後述する連結装置809が有する油圧装置の動作を制御する処理を実行することができる。
【0079】
キャビン805の内部に配置されるスイッチには、例えば、操舵のオートモードおよびマニュアルモードを切り替えるためのスイッチが含まれ得る。例えば、ECU820は、ユーザによるオートモードの選択に応答して、測位装置810から出力される位置情報、および、後述する慣性計測装置(IMU)811から出力される姿勢情報を含む自動操舵に必要な情報の取得を開始する。
【0080】
ECU820として、本実施形態における電子制御装置500、500A、500Bおよび500Cを利用することができる。これにより、過酷な環境下において、泥が付着したり、粉塵が付着したり、雨風に晒されたりすることから電子制御装置を適切に保護することができる。また、例えば100個以上のスイッチ100が設けられ得る大型のトラクタに本実施形態における電子制御装置500、500A、500Bおよび500Cを搭載することにより、従来技術では解決することが困難であった発熱の問題を解消することができる。金属筐体に代えて、例えば、エポキシ樹脂などで電子制御装置を封止することにより、放熱性、防塵性および防水性に優れた電子制御装置が実現される。このような電子制御装置は、過酷な環境下で使用されるトラクタなどの作業車両に有益である。
【0081】
操舵装置814は、ステアリングホイール806と、ステアリングホイール806に接続された操舵軸と、ステアリングホイールによる操舵を補助するパワーステアリング装置とを含む。前輪804Fは操舵輪であり、その操舵角を変化させることにより、トラクタ800の走行方向を変化させることができる。前輪804Fの操舵角は、ステアリングホイールを操作することによって変化させることができる。パワーステアリング装置は、前輪804Fの操舵角を変化させるための補助力を供給する油圧装置または電動モータを含む。自動走行または自動操舵が行われるときには、トラクタ800内に配置されたECUからの制御により、油圧装置または電動モータの力によって操舵角が自動で調整され得る。
【0082】
車両本体801の後部には、連結装置809が設けられている。連結装置809は、例えば3点支持装置(「3点リンク」または「3点ヒッチ」とも称する。)、PTO(Power Take Off)軸、およびユニバーサルジョイントを含む。連結装置809によって作業機900をトラクタ800に着脱することができる。連結装置809は、例えば油圧装置によって3点リンク装置を昇降させ、作業機900の位置または姿勢を制御することができる。また、ユニバーサルジョイントを介してトラクタ800から作業機900に動力を伝達することができる。連結装置809は、車両本体801の前方に設けられていてもよい。その場合、トラクタ800の前方に作業機を接続することができる。
【0083】
作業機900が3点ヒッチに装着されている場合、例えば油圧装置によって3点ヒッチを昇降させ、作業機900の位置または姿勢を制御することができる。作業機900は、トラクタ800に引かれて移動し、所定の作業を行うことができる。
【0084】
操作端末808は、トラクタ800の自動走行または自動操舵に関する操作をユーザが実行するための端末であり、バーチャルターミナル(VT)と称することもある。自動走行は、自動操舵に加えて例えば速度制御も行われる点で自動操舵とは異なる。操作端末808は、タッチスクリーンなどの表示装置、および/または1つ以上のボタンを備え得る。ユーザは、操作端末808を操作することにより、例えば自動走行モードまたは自動操舵モードのオン/オフの切り替え、トラクタ800の初期位置の設定、経路の設定などの種々の操作を実行することができる。
【0085】
トラクタ800は、測位装置810によって取得された地理情報に基づくECUによる制御を受けて自動走行または自動操舵で走行することが可能である。自動走行または自動操舵が行われるときには、ECU820により制御される操舵装置によって操舵角が自動で調整され得る。
【0086】
トラクタ800は、IMU811を備えることができ、さらに、1つ以上の障害物センサ812および1つ以上のカメラ813を備えることができる。測位装置810とIMU811とが一体化されて、1つのユニットとしてトラクタ800に搭載され得る。
【0087】
IMU811は、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロスコープを備える。IMU811は、モーションセンサとして機能し、トラクタ800の加速度、速度、変位、および姿勢などの諸量を示す信号を出力することができる。障害物センサ812は、トラクタ800の比較的近くに存在する物体を検出する。障害物センサ812は、例えばレーザスキャナまたは超音波ソナーを備え得る。例えば、複数のレーザスキャナと、複数の超音波ソナーとが、車体の異なる位置に配置され得る。複数のカメラ813が車体の異なる位置に配置され得る。例えば、1つ以上のECUが協働して、自動走行または自動操舵に必要とされる高度な、エンジン制御、トランスミッション制御、パワーステアリング制御、およびブレーキング制御を、測位装置810によって取得される地理情報と共に、IMU811からの出力信号、障害物センサ812から出力される出力データ、および、1つ以上のカメラ813によって取得される画像データを利用して実現することが可能となる。
【0088】
トラクタ800は、さらに、通信IF815を備え得る。通信IF815は、例えば、ラップトップPCまたはタブレットコンピュータなどのユーザ端末装置と通信するための通信モジュールである。通信IF815は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格および/またはWi-Fi(登録商標)規格に準拠した無線通信を行うことができる。通信IF815は、BLE(Bluetooth Low Energy)またはLPWA(Low Power Wide Area)の通信方式に準拠した無線通信を行うことが可能な通信モジュールであってもよい。通信IF815は、携帯電話回線または人工衛星を経由する回線を利用した無線通信を行ってもよい。
【0089】
図15に示される例において、測位装置810、IMU811、障害物センサ812、カメラ813、操舵装置814、通信IF815、操作端末808、および、ECU820は、例えばCANなどのビークルバス規格に従って、相互に通信することができる。
【0090】
キャビン805の内部には、ユーザが操作可能な1また複数のスイッチ100が配置され得る。
図16に示される例において、キャビン805の内部に複数のスイッチ100が配置されている。複数のスイッチ100は、例えば、主変速または副変速の変速段を選択するためのスイッチ、オートモードおよびマニュアルモードを切り替えるためのスイッチ、前進および後進を切り替えるためのスイッチ、作業機900を昇降するためのスイッチ、および、一定速度を維持して走行する機能のオン/オフを切り替えるためのスイッチなどを含み得る。例えば、前進および後進を切り替えるためのスイッチ、および、作業機900を昇降するためのスイッチなどは、変速レバーを有するアームレスト890に集約されて配置され得る。
【0091】
図14に示す作業機900は、作物に薬剤を噴霧するスプレイヤであるが、作業機900はスプレイヤに限定されない。例えば、モーア(草刈機)、シーダ(播種機)、スプレッダ(施肥機)、レーキ、ベーラ(集草機)、ハーベスタ(収穫機)、プラウ、ハロー、またはロータリなどの、任意の作業機をトラクタ800に接続して使用することができる。
【0092】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の電子制御装置、入力回路および作業車両を含む。
【0093】
[項目1]
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えるスイッチを備える作業車両に搭載される電子制御装置であって、
導電線を介して前記スイッチの前記第2端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に信号線を介して接続される入力回路と、
前記入力回路から出力される出力信号に基づいて前記スイッチの前記電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するマイクロコントローラと、
を備え、
前記入力回路は、
電源またはグランドと前記信号線とに接続される第1抵抗素子と、
前記電源またはグランドと前記信号線とに接続される過渡電流回路であって、前記スイッチが前記電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときに前記スイッチに過渡電流を流す第2抵抗素子を含む過渡電流回路と、
を有する電子制御装置。
[項目2]
前記入力回路は、基準電圧に基づいて、前記信号線の出力端のアナログ電圧信号を論理的にハイレベルまたはローレベルのデジタル信号に変換し、前記デジタル信号を前記出力信号として出力する変換回路を有する、項目1に記載の電子制御装置。
[項目3]
前記第1抵抗素子の抵抗値は前記第2抵抗素子の抵抗値よりも大きい、項目2に記載の電子制御装置。
[項目4]
前記第2抵抗素子の抵抗値に対する前記第1抵抗素子の抵抗値の比は3.0以上5.0未満である、項目3に記載の電子制御装置。
[項目5]
前記基準電圧は、前記スイッチが電気的不導通状態にあるときに前記第1抵抗素子に流れ得るリーク電流に起因して発生する前記第1抵抗素子の両端電圧に基づいて決定される、項目2から4のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目6]
前記過渡電流回路は、前記第2抵抗素子を含むRC直列回路を有する、項目1から5のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目7]
前記過渡電流回路は、ドレインが前記グランドに接続されるPMOSトランジスタを含み、
前記第2抵抗素子は、前記信号線と前記PMOSトランジスタのソースとに接続されている、項目1から5のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目8]
前記入力回路はローパスフィルタ回路を有する、項目1から7のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目9]
前記入力回路は、一端が前記グランドに接続され、他端が前記信号線に接続されるキャパシタを含むRCローパスフィルタ回路を有し、
前記過渡電流回路は、ドレインが前記グランドに接続されるPMOSトランジスタを含み、
前記第2抵抗素子は、前記信号線と前記PMOSトランジスタのソースとに接続され、
前記キャパシタの前記他端は前記PMOSトランジスタのゲートに接続されている、項目1から5のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目10]
前記変換回路は、前記アナログ電圧信号と前記基準電圧との大きさを比較し、比較結果に応じて前記デジタル信号を出力するコンパレータを有する、項目2から5のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目11]
前記変換回路は、
前記信号線の出力端と前記グランドとの間に直列に接続される2つの抵抗素子を含む分圧器と、
エミッタが前記グランドに接続され、かつ、ベースが前記2つの抵抗素子の間のノードに接続されるバイポーラトランジスタと、
を有し、
前記出力信号は前記バイポーラトランジスタのコレクタ電圧に応じて変化する、項目2から5のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目12]
それぞれが前記入力回路である複数の入力回路と、それぞれが前記入力端子である複数の入力端子とを備え、
前記複数の入力端子は、それぞれ、複数の導電線を介して複数のスイッチに接続され、
前記複数の入力回路は、それぞれ、複数の信号線を介して前記複数の入力端子に接続されている、項目1から11のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目13]
前記複数の入力回路と前記マイクロコントローラとに接続され、前記複数の入力回路から出力される出力信号の中から1つを選択して出力するマルチプレクサを備え、
前記マイクロコントローラは、前記マルチプレクサから出力される前記出力信号に基づいて、前記複数のスイッチのうちの1つの電気的導通状態および電気的不導通状態を検知する、項目12に記載の電子制御装置。
[項目14]
前記スイッチの前記第1端子は前記電源に接続され、
前記第1抵抗素子は、前記信号線と前記グランドとに接続されるプルダウン抵抗であり、
前記過渡電流回路は、前記グランドと前記信号線とに接続される、項目1から13のいずれかに記載の電子制御装置。
[項目15]
ユーザが操作可能な1または複数のスイッチと、
項目1から14のいずれかに記載の電子制御装置と、
を備える作業車両。
[項目16]
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子と前記第2端子との間における電気的導通状態と電気的不導通状態とを切り替えるスイッチを備える作業車両に搭載される電子制御装置が有する入力端子に信号線を介して接続される入力回路であって、
前記入力端子は前記スイッチの前記第2端子に導電線を介して接続され、
前記電子制御装置は、前記入力回路から出力される出力信号に基づいて前記スイッチの前記電気的導通状態および電気的不導通状態を検知して、検知結果に応じた少なくとも1つの処理を実行するマイクロコントローラを有し、
電源またはグランドと前記信号線とに接続される第1抵抗素子と、
前記電源またはグランドと前記信号線とに接続される過渡電流回路であって、前記スイッチが前記電気的不導通状態から電気的導通状態に遷移するときに前記スイッチに過渡電流を流す第2抵抗素子を含む過渡電流回路と、
を備える入力回路。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示の実施形態は、電子制御装置を必要とする農業機械または建設機械などの作業車両に利用され得る。
【符号の説明】
【0095】
100、100A、100B、100C:操作スイッチ(スイッチ)
101 :第1端子
102 :第2端子
110 :導電線
200、200A、200B、200C、200D、200E :入力回路
201、211、221、232、233、235、236、237 :抵抗素子
210、210A :過渡電流回路
212、222 :キャパシタ
213 :PMOSトランジスタ
220 :ローパスフィルタ回路
230、230A、230B :変換回路
231 :コンパレータ
234 :バイポーラトランジスタ
300 :マイクロコントローラ
400、400A、400B :マルチプレクサ
500、500A、500B、500C :電子制御装置
700 :遮断回路
701 :内部電源生成回路
800 :トラクタ
801 :車両本体
802 :原動機
803 :変速装置
804 :タイヤ
804F :前輪
804R :後輪
805 :キャビン
806 :ステアリングホイール
807 :運転席
808 :操作端末
809 :連結装置
810 :測位装置
811 :慣性計測装置(IMU)
812 :障害物センサ
813 :カメラ
814 :操舵装置
815 :通信IF
820 :ECU
890 :アームレスト
900 :作業機