(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】車載制御装置、制御システム、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 9/50 20060101AFI20231117BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G06F9/50 150C
B60R16/02 650J
(21)【出願番号】P 2020502912
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004834
(87)【国際公開番号】W WO2019167604
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2018037445
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】一丸 智弘
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】吉田 美彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087651(WO,A1)
【文献】特表2014-514660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F9/50
B60R16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、
前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、さらに、前記選択部により選択された1または複数の前記機能部の処理負荷を下げる制御を行い、
前記制御部は、前記処理負荷を下げる制御として、前記機能部の通信頻度を変更する、車載制御装置。
【請求項2】
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、
前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部とを備え、
前記消耗情報は、前記機能部の温度の履歴に関する情報を含み、
前記選択部は、前記温度の履歴に関する情報、および前記温度に関する前記機能部の使用可能時間を示す情報に基づいて、前記消耗度を算出し、算出した前記消耗度に基づいて、前記機能部を選択する、車載制御装置。
【請求項3】
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得し
、かつ前記複数の機能部の各々におけるリソースの使用率に関する複数のリソース状態情報をそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記消耗情報
および各前記リソース状態情報に基づいて
、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部
である第1の機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部
である第2の機能部を前記複数の機能部の中から選択する選択部と、
前記選択部により選択され
た前記
第2の機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部とを備え、
前記選択部は、前記消耗度が所定の第1閾値以上である前記第1の機能部である高消耗度機能部が存在し、前記消耗度が所定の第2閾値以下である前記機能部であって前記リソースの使用率が所定の第3閾値以下である前記機能部が存在せず、かつ前記高消耗度機能部が前記車両の走行に関する制御を行う前記機能部ではない条件を満たす場合、前記第2の機能部を選択しないことを決定し、
前記制御部は、
前記条件を満たして前記選択部が前記第2の機能部を選択しないことを決定した場合
、前記
高消耗度機能部の処理負荷を下げる制御を行う、車載制御装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記対象処理を行わせる1または複数の前記機能部として、前記対象処理を行うべき1または複数の前記機能部とは異なる前記機能部を少なくとも1つ選択する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項5】
前記消耗情報は、前記機能部の熱に関する情報を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項6】
前記消耗情報は、前記機能部が含むメモリの書き換え回数に関する情報を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項7】
前記消耗度は、前記機能部の使用可能時間に対する、所定期間における実際の使用時間の割合、または前記機能部が含むメモリの書き換え可能回数に対する、所定期間における実際の書き換え回数の割合であり、
前記消耗情報は、前記機能部の温度の履歴に関する情報、または前記メモリの書き換え可能回数に関する情報であり、
前記温度は、前記機能部の周囲温度および前記機能部の発熱の両方に影響される温度であり、
前記機能部の発熱には、前記機能部における各種リソースの動作により生じる熱、前記機能部の電源のオン/オフにより生じる熱、およびリップル電流の発生により生じる熱が含まれる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項8】
管理装置と、
車載制御装置とを備え、
前記管理装置は、複数の車両について、前記車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得し、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記車載制御装置の搭載された前記車両における1または複数の前記機能部の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を前記車載制御装置へ送信し、
前記車載制御装置は、前記管理装置から送信された前記推定情報を受信し、受信した前記推定情報に基づいて、自己の搭載された車両における前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択し、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う、制御システム。
【請求項9】
制御システムは、さらに、複数の前記機能部の故障に関する故障情報を保持するディーラ側サーバを備え、
前記ディーラ側サーバは、前記故障情報を前記管理装置へ送信し、
前記管理装置は、取得した各前記消耗情報、および前記ディーラ側サーバから受信した前記故障情報に基づいて、1または複数の前記機能部の消耗度を推定する、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
車載制御方法における制御方法であって、
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得するステップと、
取得した各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択するステップと、
選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含み、
前記対象処理を行わせる制御を行うステップにおいて、さらに、選択した1または複数の前記機能部の処理負荷を下げる制御を行い、
前記対象処理を行わせる制御を行うステップにおいて、前記処理負荷を下げる制御として、前記機能部の通信頻度を変更する、制御方法。
【請求項11】
車載制御装置における制御方法であって、
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得するステップと、
取得した各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択するステップと、
選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含み、
前記消耗情報は、前記機能部の温度の履歴に関する情報を含み、
前記機能部を選択するステップにおいて、前記温度の履歴に関する情報、および前記温度に関する前記機能部の使用可能時間を示す情報に基づいて、前記消耗度を算出し、算出した前記消耗度に基づいて、前記機能部を選択する、制御方法。
【請求項12】
車載制御装置における制御方法であって、
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得
し、かつ前記複数の機能部の各々におけるリソースの使用率に関する複数のリソース状態情報をそれぞれ取得するステップと、
取得した各前記消耗情報
および各前記リソース状態情報に基づいて
、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部
である第1の機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部
である第2の機能部を前記複数の機能部の中から選択するステップと、
選択し
た前記
第2の機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含み、
前記消耗度が所定の第1閾値以上である前記第1の機能部である高消耗度機能部が存在し、前記消耗度が所定の第2閾値以下である前記機能部であって前記リソースの使用率が所定の第3閾値以下である前記機能部が存在せず、かつ前記高消耗度機能部が前記車両の走行に関する制御を行う前記機能部ではない条件を満たす場合、前記第2の機能部を選択するステップにおいて、前記第2の機能部を選択しないことを決定し、
前記条件を満たして前記第2の機能部を前記複数の機能部の中から選択するステップにおいて前記第2の機能部を選択しないことを決定した場合、前記対象処理を行わせる制御を行うステップにおいて
、前記
高消耗度機能部の処理負荷を下げる制御を行う、制御方法。
【請求項13】
管理装置と、車載制御装置とを備える制御システムにおける制御方法であって、
前記管理装置が、複数の車両について、前記車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得するステップと、
前記管理装置が、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記車載制御装置の搭載された車両における1または複数の前記機能部の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を前記車載制御装置へ送信するステップと、
前記車載制御装置が、前記管理装置から送信された前記推定情報を受信し、受信した前記推定情報に基づいて、自己の搭載された車両における前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択するステップと、
前記車載制御装置が、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含む、制御方法。
【請求項14】
車載制御装置において用いられる制御プログラムであって、
コンピュータを、
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、
前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部、
として機能させるためのプログラムであり、
前記制御部は、さらに、前記選択部により選択された1または複数の前記機能部の処理負荷を下げる制御を行い、
前記制御部は、前記処理負荷を下げる制御として、前記機能部の通信頻度を変更する、制御プログラム。
【請求項15】
車載制御装置において用いられる制御プログラムであって、
コンピュータを、
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、
前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部、
として機能させるためのプログラムであり、
前記消耗情報は、前記機能部の温度の履歴に関する情報を含み、
前記選択部は、前記温度の履歴に関する情報、および前記温度に関する前記機能部の使用可能時間を示す情報に基づいて、前記消耗度を算出し、算出した前記消耗度に基づいて、前記機能部を選択する、制御プログラム。
【請求項16】
車載制御装置において用いられる制御プログラムであって、
コンピュータを、
車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得
し、かつ前記複数の機能部の各々におけるリソースの使用率に関する複数のリソース状態情報をそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部により取得された各前記消耗情報
および各前記リソース状態情報に基づいて
、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部
である第1の機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部
である第2の機能部を前記複数の機能部の中から選択する選択部と、
前記選択部により選択され
た前記
第2の機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部、
として機能させるためのプログラムであり、
前記選択部は、前記消耗度が所定の第1閾値以上である前記第1の機能部である高消耗度機能部が存在し、前記消耗度が所定の第2閾値以下である前記機能部であって前記リソースの使用率が所定の第3閾値以下である前記機能部が存在せず、かつ前記高消耗度機能部が前記車両の走行に関する制御を行う前記機能部ではない条件を満たす場合、前記第2の機能部を選択しないことを決定し、
前記制御部は、
前記条件を満たして前記選択部が前記第2の機能部を選択しないことを決定した場合
、前記
高消耗度機能部の処理負荷を下げる制御を行う、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載制御装置、制御システム、制御方法および制御プログラムに関する。
この出願は、2018年3月2日に出願された日本出願特願2018-37445号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【背景技術】
【0002】
特開2007-58412号公報(特許文献1)には、車両におけるリソースの状態を管理する技術が開示されている。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の車載システムは、アプリをインストールして起動するタイミングで、その時点でのシステムが機能停止することなく消費可能なリソースの残量を表すシステムリソース残量がインストールを要求したアプリをインストールして起動した後に当該アプリが消費するリソースの消費量を表すアプリリソース消費量未満であると、その時点でリソースを消費しているいずれかのアプリを停止または削除する処理をシステムリソース残量がアプリリソース消費量を越えるまで実施し、システムリソース残量がアプリリソース消費量を越えてから当該アプリをインストールして起動する。
【0004】
また、たとえば、特開2003-157330号公報(特許文献2)には、稼働している機器の部品をネットワーク経由で一括管理する技術が開示されている。
【0005】
すなわち、特許文献2に記載の部品寿命管理システムは、稼動している機器の部品の寿命特性を検出する複数のサイトと、このサイト群とネットワークを介して接続され、上記サイト群の個々の部品の寿命特性を一括管理する部品寿命管理サーバとを有する部品寿命管理システムにおいて、上記部品寿命管理サーバは、上記サイト群から上記ネットワークを介して送信される各サイトの部品の寿命特性データを受信する受信手段と、この寿命特性データを用いて部品の余寿命を予測する余寿命予測手段と、上記各サイト毎及び各部品毎に上記部品の余寿命を整理し余寿命データベースを記憶する記憶手段と、この余寿命データベースに基づき部品の余寿命状況または交換部品の情報を出力する処理手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-58412号公報
【文献】特開2003-157330号公報
【発明の概要】
【0007】
(1)本開示の車載制御装置は、車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部とを備える。
【0008】
(9)本開示の制御システムは、管理装置と、車載制御装置とを備え、前記管理装置は、複数の車両について、前記車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得し、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記車載制御装置の搭載された前記車両における1または複数の前記機能部の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を前記車載制御装置へ送信し、前記車載制御装置は、前記管理装置から送信された前記推定情報を受信し、受信した前記推定情報に基づいて、自己の搭載された車両における前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択し、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う。
【0009】
(11)本開示の制御方法は、車載制御装置における制御方法であって、車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得するステップと、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択するステップと、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含む。
【0010】
(12)本開示の制御方法は、管理装置と、車載制御装置とを備える制御システムにおける制御方法であって、前記管理装置が、複数の車両について、前記車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得するステップと、前記管理装置が、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記車載制御装置の搭載された車両における1または複数の前記機能部の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を前記車載制御装置へ送信するステップと、前記車載制御装置が、前記管理装置から送信された前記推定情報を受信し、受信した前記推定情報に基づいて、自己の搭載された車両における前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択するステップと、前記車載制御装置が、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含む。
【0011】
(13)本開示の制御プログラムは、車載制御装置において用いられる制御プログラムであって、コンピュータを、車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部、として機能させるためのプログラムである。
【0012】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載制御装置として実現され得るだけでなく、車載制御装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0013】
また、本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える制御システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、制御システムの一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECUの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECUにおける選択部により行われる補完処理を説明するためのグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る車載通信システムの動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る制御システムの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る制御システムの動作の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来、車両のEV(Electric Vehicle)化、ならびに車両への安全運転支援システムの導入によるセンサおよびアクチュエータの増加などに伴い、車両に搭載される電子制御ユニット(ECU(Electronic Control Unit))の数が増加し、車載ネットワークも複雑化している。このような複雑化した車載ネットワークにおいて、複数のECUは、データを互いに送受信して車両の制御を行う。
【0016】
また、各ECUのリソースを管理するための技術が開発されている。
【0017】
[本開示が解決しようとする課題]
今後、シェアカーの普及および自動運転技術の発達等により、各ECUの稼働率が増す可能性が高く、各ECUの使用可能時間をより長時間化することができる技術が望まれている。
【0018】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車両に搭載された各機能部の使用可能時間をより長時間化することができる車載制御装置、制御システム、制御方法および制御プログラムを提供することである。
【0019】
[本開示の効果]
本開示によれば、車両に搭載された各機能部の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0020】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0021】
(1)本発明の実施の形態に係る車載制御装置は、車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部とを備える。
【0022】
このような構成により、たとえば消耗度の高い1または複数の機能部が行うべき対象処理を他の1または複数の機能部に分散することができるため、消耗度の高い機能部の消耗度の増加を抑制することができる。したがって、車両に搭載された各機能部の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0023】
(2)好ましくは、前記選択部は、前記対象処理を行わせる1または複数の前記機能部として、前記対象処理を行なうべき1または複数の前記機能部とは異なる前記機能部を少なくとも1つ選択する。
【0024】
このような構成により、たとえば、消耗度の高い機能部が行うべき対象処理を、消耗度のより低い他の機能部に行わせることができる。
【0025】
(3)好ましくは、前記消耗情報は、前記機能部の熱に関する情報を含む。
【0026】
このように、機能部の消耗に大きく影響を与える熱、に関する情報を用いて機能部の選択を行う構成により、各機能部の消耗度をより正確に把握して、より適切な選択を行うことができる。
【0027】
(4)好ましくは、前記消耗情報は、前記機能部が含むメモリの書き換え回数に関する情報を含む。
【0028】
このような構成により、機能部における電子部品の中で消耗しやすいメモリに関する情報を用いて機能部の選択を行う構成により、各機能部の消耗度をより正確に把握して、より適切な選択を行うことができる。
【0029】
(5)好ましくは、前記制御部は、さらに、前記選択部により選択された1または複数の前記機能部の処理負荷を下げる制御を行う。
【0030】
このような構成により、たとえば選択された機能部の処理負荷を下げることができるため、分散先の機能部の消耗度の増加を抑制することができる。
【0031】
(6)好ましくは、前記処理負荷を下げる制御として、前記機能部の通信頻度を変更する。
【0032】
このような構成により、たとえば選択された機能部の通信頻度を少なく設定することにより、当該機能部の処理負荷を下げることができる。
【0033】
(7)好ましくは、前記制御部は、前記選択部によって前記機能部が選択されない場合、前記対象処理を行う前記機能部の処理負荷を下げる制御を行う。
【0034】
このような構成により、対象処理の分散先として適切な機能部が存在しない場合であっても、当該対象処理を行う機能部の消耗度の増加を抑制することができる。
【0035】
(8)好ましくは、前記消耗度は、前記機能部の使用可能時間に対する、所定期間における実際の使用時間の割合、または前記機能部が含むメモリの書き換え可能回数に対する、所定期間における実際の書き換え回数の割合であり、前記消耗情報は、前記機能部の温度の履歴に関する情報、または前記メモリの書き換え可能回数に関する情報であり、前記温度は、前記機能部の周囲温度および前記機能部の発熱の両方に影響される温度であり、前記機能部の発熱には、前記機能部における各種リソースの動作により生じる熱、前記機能部の電源のオン/オフにより生じる熱、およびリップル電流の発生により生じる熱が含まれる。
【0036】
このように、機能部の消耗に大きく影響を与える熱、または機能部における電子部品の中で消耗しやすいメモリ、に関する情報を用いて機能部の選択を行う構成により、各機能部の消耗度をより正確に把握して、より適切な機能部を選択することができる。
【0037】
(9)本発明の実施の形態に係る制御システムは、管理装置と、車載制御装置とを備え、前記管理装置は、複数の車両について、前記車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得し、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記車載制御装置の搭載された前記車両における1または複数の前記機能部の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を前記車載制御装置へ送信し、前記車載制御装置は、前記管理装置から送信された前記推定情報を受信し、受信した前記推定情報に基づいて、自己の搭載された車両における前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択し、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う。
【0038】
このような構成により、たとえば消耗度の高い1または複数の機能部が行うべき対象処理を他の1または複数の機能部に分散することができるため、消耗度の高い機能部の消耗度の増加を抑制することができる。
【0039】
また、管理装置が各機能部の消耗度を推定する構成により、たとえば、管理装置により推定された消耗度、および車両において算出された消耗度の両方を用いることにより、車両においてより正確な消耗度を算出することができる。したがって、車両に搭載された各機能部の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0040】
(10)好ましくは、制御システムは、さらに、複数の前記機能部の故障に関する故障情報を保持するディーラ側サーバを備え、前記ディーラ側サーバは、前記故障情報を前記管理装置へ送信し、前記管理装置は、取得した各前記消耗情報、および前記ディーラ側サーバから受信した前記故障情報に基づいて、1または複数の前記機能部の消耗度を推定する。
【0041】
このように、管理装置が消耗情報および故障情報に基づいて各機能部の消耗度を推定する構成により、より正確な消耗度を算出することができる。
【0042】
(11)本発明の実施の形態に係る制御方法は、車載制御装置における制御方法であって、車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得するステップと、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択するステップと、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含む。
【0043】
このような方法により、たとえば消耗度の高い1または複数の機能部が行うべき対象処理を他の1または複数の機能部に分散することができるため、消耗度の高い機能部の消耗度の増加を抑制することができる。したがって、車両に搭載された各機能部の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0044】
(12)本発明の実施の形態に係る制御方法は、管理装置と、車載制御装置とを備える制御システムにおける制御方法であって、前記管理装置が、複数の車両について、前記車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得するステップと、前記管理装置が、取得した各前記消耗情報に基づいて、前記車載制御装置の搭載された車両における1または複数の前記機能部の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を前記車載制御装置へ送信するステップと、前記車載制御装置が、前記管理装置から送信された前記推定情報を受信し、受信した前記推定情報に基づいて、自己の搭載された車両における前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択するステップと、前記車載制御装置が、選択した1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行うステップとを含む。
【0045】
このような方法により、たとえば消耗度の高い1または複数の機能部が行うべき対象処理を他の1または複数の機能部に分散することができるため、消耗度の高い機能部の消耗度の増加を抑制することができる。
【0046】
また、管理装置が各機能部の消耗度を推定する方法により、たとえば、管理装置により推定された消耗度、および車両において算出された消耗度の両方を用いることにより、車両においてより正確な消耗度を算出することができる。したがって、車両に搭載された各機能部の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0047】
(13)本発明の実施の形態に係る制御プログラムは、車載制御装置において用いられる制御プログラムであって、コンピュータを、車両に搭載される複数の機能部の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する取得部と、前記取得部により取得された各前記消耗情報に基づいて、前記複数の機能部の中から、前記複数の機能部のうちの1または複数の前記機能部が行うべき対象処理を行わせる1または複数の前記機能部を選択する選択部と、前記選択部により選択された1または複数の前記機能部に前記対象処理を行わせる制御を行う制御部、として機能させるためのプログラムである。
【0048】
このような構成により、たとえば消耗度の高い1または複数の機能部が行うべき対象処理を他の1または複数の機能部に分散することができるため、消耗度の高い機能部の消耗度の増加を抑制することができる。したがって、車両に搭載された各機能部の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0049】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0050】
<第1の実施の形態>
[構成および基本動作]
(車載通信システム)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【0051】
図1を参照して、車載通信システム301は、車両10に搭載される管理ECU(Electronic Control Unit)(車載制御装置)101と、車両10に搭載される複数のECU(機能部)111とを備える。以下、車両10における複数のECU111を「ECU群」とも称する。また、ECU群(機能部群)を構成する複数のECU111を「各ECU111」とも称する。
【0052】
ECU群は、たとえば、車外通信装置111a、エンターテイメント関連装置111b、走行用制御デバイス111c、カメラ111d、物体検知センサ111e、温度センサ111f、電池状態監視センサ111gおよび自動運転ECU111hなどを含む。
【0053】
各ECU111は、たとえば、CAN(Controller Area Network)(登録商標)の規格に従うCANバス、またはイーサネット(登録商標)ケーブルを介して、管理ECU101と接続されている。なお、ECU群のうちの少なくともいずれか1つのECU111が、管理ECU101と無線通信を行う構成であってもよい。
【0054】
各ECU111は、管理ECU101からの指示に従って各種処理を行い、処理の結果を示す結果情報を管理ECU101へ送信する。
【0055】
車外通信装置111aは、車両10の外部におけるサーバ等と無線基地局装置を介した無線通信を行うことが可能である。
【0056】
エンターテイメント関連装置111bは、エンターテイメントのサービスを提供するための機器、具体的にはディスプレイおよびオーディオなどを制御する。
【0057】
走行用制御デバイス111cは、車両10の走行を制御するためのECUであり、たとえば、エンジン制御デバイス、AT(Automatic Transmission)制御デバイス、HEV(Hybrid Electric Vehicle)制御デバイス、ブレーキ制御デバイス、シャーシ制御デバイス、ステアリング制御デバイスおよび計器表示制御デバイス等である。
【0058】
カメラ111dは、車両10の周囲を撮影する撮像装置である。
【0059】
物体検知センサ111eは、たとえば、ミリ波を用いるレーダ装置であり、車両10の周囲における歩行者および車両等の物体を検知する。物体検知センサ111eには、たとえば自動運転に用いられるLiDAR(Light Detection and Ranging)が含まれる。
【0060】
温度センサ111fは、たとえば、車両10の室内および室外の温度を検知する。
【0061】
電池状態監視センサ111gは、たとえば、車両10に搭載されたバッテリの充電状態(SOC(State Of Charge))および劣化状態(SOH(State Of Health))を監視する。
【0062】
自動運転ECU111hは、たとえば、物体検知センサ111eによる検知結果を管理ECU101経由で取得し、取得した検知結果に基づいて、車両10の自動運転に関する制御を行う。
【0063】
また、各ECU111は、自己の消耗度に関する消耗情報を、設定された送信周期かまたは不定期に管理ECU101へ送信する。消耗情報は、たとえば、ECU111の熱に関する情報、およびECU111が含むフラッシュメモリ等のメモリの書き換え回数Rに関する情報の少なくともいずれか一方を含む。
【0064】
ECU111の熱に関する情報は、ECU111自体の熱に関する情報であってもよいし、ECU111の周辺の熱に関する情報であってもよい。ECU111の周辺の熱に関する情報は、たとえば、ECU111の周辺に設けられた温度センサにより計測された温度を示す情報である。
【0065】
また、各ECU111は、自己のリソースの状態、具体的にはCPU(Central Processing Unit)およびメモリなどのリソースの使用率を示すリソース状態情報を、設定された送信周期かまたは不定期に管理ECU101へ送信する。
【0066】
管理ECU101は、ECU群の管理を行う。より詳細には、管理ECU101は、各ECU111から送信された消耗情報に基づいて、対応のECU111の消耗度を算出する。そして、管理ECU101は、算出した各ECU111の消耗度、および各ECU111から送信されたリソース状態情報に基づいて、複数のECU111間で処理を分散させる。
【0067】
たとえば、管理ECU101は、消耗度が高い1または複数のECU111が行うべき対象処理の少なくとも一部を、消耗度が低い他のECU111に対して割り当てる。これにより、各種リソースを有効に活用し、各ECU111の使用可能時間(以下、「寿命」とも称する。)をより長時間化することができる。
【0068】
なお、管理ECU101は、あるECU111が行うべき対象処理の全部を他のECU111に対して割り当ててもよいし、対象処理の一部たとえば対象処理の50%を他のECU111に対して割り当て、残りの50%を元のECU111に行わせてもよい。
【0069】
また、ECU群における少なくともいずれか1つのECU111が、管理ECU101の代わりに、自己を含むECU群の管理を行う構成であってもよい。
【0070】
(管理ECU)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECUの構成を示す図である。
【0071】
図2を参照して、管理ECU101は、通信部(取得部)21と、選択部22と、記憶部23と、制御部24とを含む。
【0072】
通信部21は、各ECU111との間で情報の送受信を行う。また、通信部21は、各ECU111間における通信を中継する。また、通信部21は、各ECU111から送信された消耗情報、結果情報およびリソース状態情報を選択部22へ出力する。
【0073】
選択部22は、通信部21から受けた消耗情報、結果情報およびリソース状態情報を記憶部23に保存する。また、選択部22は、記憶部23に保存されている対応の消耗情報に基づいて、各ECU111の消耗度を算出し、消耗度の高いECU111が存在するか否かを確認する。
【0074】
消耗度は、たとえば、使用可能時間に対する、所定期間における実際の使用時間の割合である。各ECU111の使用可能時間は、メーカによる信頼性試験の実施等により得られる。
【0075】
選択部22は、消耗度の高い1または複数のECU111が存在する場合、各ECU111の消耗度、および記憶部23に保存されている対応のリソース状態情報に基づいて、消耗度の高い1または複数のECU111が行うべき対象処理の少なくとも一部を行わせる1または複数の他のECU111をECU群の中から選択する選択処理を行う。
【0076】
たとえば、選択部22は、対象処理を行わせる1または複数のECU111として、対象処理を行なうべき1または複数のECU111とは異なる機能部ECU111を少なくとも1つ選択する。
【0077】
なお、対象処理は、1つのECU111が行うべき処理であってもよいし、複数のECU111が共同して行うべき処理であってもよいし、複数のECU111がそれぞれ行うべき複数の処理であってもよい。また、以下、対象処理を代わりに行うECU111を、「代替ECU」とも称する。
【0078】
より詳細には、選択部22は、たとえば1つのECU111iが行うべき対象処理を代わりに行う代替ECUとして、他の1つのECU111jを選択してもよいし、ECU111iおよび他のECU111kを選択してもよい。また、選択部22は、たとえばECU111mおよびECU111nが共同して行うべき対象処理を代わりに行う代替ECUとして、1つのECU111pを選択してもよいし、ECU111qおよびECU111rを選択してもよいし、ECU111mおよびECU111sを選択してもよいし、ECU111m、ECU111nおよびECU111tを選択してもよい。
【0079】
また、選択部22は、選択した1または複数の代替ECU111、および対象処理の内容を示す選択結果情報を制御部24へ出力する。
【0080】
制御部24は、選択部22から選択結果情報を受けて、当該選択結果情報に基づいて、選択部22により選択された1または複数の代替ECU111に対象処理を行わせる代替制御を行う。より詳細には、制御部24は、代替制御として、対象処理を示す処理命令を通信部21経由で各代替ECU111へ送信する。
【0081】
各代替ECU111は、管理ECU101から送信された処理命令を受信し、当該処理命令に従って対象処理を実行し、得られた結果を示す結果情報を管理ECU101へ送信する。
【0082】
制御部24は、各代替ECU111から送信された結果情報を通信部21経由で受信し、受信した各結果情報の示す結果を集約する。以下、選択部22による消耗度の算出処理の詳細、ならびに選択部22による選択処理および制御部24による代替制御の詳細について説明する。
【0083】
(消耗度の算出処理の詳細)
(a-1)例1
ここでは、消耗情報は、ECU111自体の熱に関する情報、具体的にはECU111の温度の履歴に関する情報であるとする。たとえば、各ECU111は、自己の温度を計測する温度計を有し、温度計による計測結果を示す消耗情報にタイムスタンプを付して、結果情報およびリソース状態情報とともに管理ECU101へ送信する。
【0084】
消耗情報の示す温度は、たとえば、ECU111の周囲温度および自己の発熱の両方に影響される温度である。ECU111の発熱には、各種リソースの動作により生じる熱、ECU111の電源のオン/オフにより生じる熱、およびリップル電流の発生により生じる熱などが含まれる。
【0085】
記憶部23には、たとえば、各ECU111の寿命を示す寿命情報が保存されている。選択部22は、ECU111ごとに、ECU111から通信部21経由で受信した対応の消耗情報、および記憶部23に保存されている寿命情報に基づいて、寿命に対する実際の使用時間の割合を算出する。
【0086】
具体的には、選択部22は、10℃半減則などの経験則を用いることにより、各ECU111の所定期間における消耗度を算出する。所定期間は、たとえば、1分間、1時間、1日、1週間、1か月間または1年間である。
【0087】
たとえば、寿命情報において、あるECU111について、50℃で使用する場合における寿命が10000時間であるとする。また、所定期間は1年間であるとする。この場合、選択部22は、当該ECU111の1年間の使用時間を算出することにより、当該ECU111の消耗度を算出する。
【0088】
より具体的には、3月~5月の3か月間、当該ECU111が平均50℃で毎月50時間ずつ使用されたとする。この場合、選択部22は、当該ECU111からの複数の消耗情報に基づいて3か月間の当該ECU111の使用状況を把握し、3か月間の当該ECU111の使用時間を、150時間(=50×3)と算出する。
【0089】
また、6月~8月の3か月間、当該ECU111が平均80℃で毎月50時間ずつ使用されたとする。この場合、選択部22は、当該ECU111からの複数の消耗情報に基づいて3か月間の当該ECU111の使用状況を把握し、当該ECU111が50℃で使用されたと仮定した場合における3か月間の当該ECU111の使用時間を、1200時間(=50×2^{(80-50)/10}×3)と算出する。
【0090】
また、9月~11月の3か月間、当該ECU111が平均60℃で毎月50時間ずつ使用されたとする。この場合、選択部22は、当該ECU111からの複数の消耗情報に基づいて3か月間の当該ECU111の使用状況を把握し、当該ECU111が50℃で使用されたと仮定した場合における3か月間の当該ECU111の使用時間を、300時間(=50×2^{(60-50)/10}×3)と算出する。
【0091】
また、12月~2月の3か月間、当該ECU111が平均40℃で毎月50時間ずつ使用されたとする。この場合、選択部22は、当該ECU111からの複数の消耗情報に基づいて3か月間の当該ECU111の使用状況を把握し、当該ECU111が50℃で使用されたと仮定した場合における3か月間の当該ECU111の使用時間を、75時間(=50×2^{(40-50)/10}×3)と算出する。
【0092】
そして、選択部22は、当該ECU111の1年間の使用時間を1725時間(=150+1200+300+75)と算出し、当該ECU111の消耗度を17.25%(=1725/10000)と算出する。
【0093】
なお、車載通信システム301の非通電期間においては、各ECU111から管理ECU101への消耗情報の送信が行われない。このため、選択部22は、通電期間において受信した複数の消耗情報に基づいて、非通電期間におけるECU111の消耗度を補完する。
【0094】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECUにおける選択部により行われる補完処理を説明するためのグラフである。
図3に示すグラフにおいて、縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時刻を示す。
【0095】
図3を参照して、選択部22は、たとえば線形補完により、非通電期間におけるECU111の温度を算出する。
【0096】
ここでは、時刻t1~時刻t2の期間が非通電期間であったとする。この場合、選択部22は、たとえば、時刻t1のタイムスタンプが付された消耗情報の示す温度Tp1と、時刻t2のタイムスタンプが付された消耗情報の示す温度Tp2とを結ぶ直線の式を得る。そして、選択部22は、当該直線の式を用いることにより、非通電期間に含まれる複数のタイミングにおけるECU111の複数の温度をそれぞれ算出する。
【0097】
そして、選択部22は、算出した非通電期間に含まれる複数のタイミングにそれぞれ対応する複数の温度、および通電期間に含まれる複数のタイミングにそれぞれ対応する複数の温度に基づいて、通電期間および非通電期間を含む所定期間におけるECU111の消耗度を算出する。
【0098】
(a-2)例2
選択部22は、各ECU111の仕様として定められている温度(以下、「温度仕様」とも称する。)を用いて、各ECU111の消耗度を算出してもよい。各ECU111の温度仕様は、たとえば記憶部23に保存されている。
【0099】
具体的には、第1のECU111の温度仕様が85℃であって、所定期間における第1のECU111の実際の温度(以下、「使用温度」とも称する。)が60℃であるとする。この場合、選択部22は、所定期間における当該ECU111の消耗度を、70.6%(=60/85)と算出する。
【0100】
また、たとえば、第2のECU111の温度仕様が125℃であって、所定期間における第2のECU111の使用温度が65℃であるとする。この場合、選択部22は、所定期間における当該ECU111の消耗度を、52.0%(=65/125)と算出する。
【0101】
このような算出方法では、所定期間において第1のECU111の温度よりも第2のECU111の温度の方が高いものの、第1のECU111の消耗度よりも第2のECU111の消耗度の方が低い値となる。
【0102】
なお、選択部22は、「(a-1)例1」のように、所定期間を複数の期間に分割して各分割期間におけるECU111の使用時間を算出する場合、各分割期間における使用時間に、温度仕様に対する当該分割期間におけるECU111の使用温度の割合を乗じてもよい。
【0103】
(a-3)例3
ここでは、消耗情報は、対応のECU111が含むメモリの書き換え回数Rに関する情報であるとする。たとえば、各ECU111は、自己のメモリの書き換え回数Rをカウントし、カウント値を示す消耗情報にタイムスタンプを付して、結果情報およびリソース状態情報とともに管理ECU101へ送信する。
【0104】
記憶部23に保存されている寿命情報は、複数のECU111の各々のメモリの書き換え可能回数Rmaxを示す。選択部22は、ECU111ごとに、当該ECU111から所定期間内に通信部21経由で受信した複数の消耗情報に基づいて、所定期間における書き換え回数Rtを算出する。
【0105】
たとえば、選択部22は、所定期間内に受信した複数の消耗情報の各々の示す書き換え回数Rにおける最大値から最小値を差し引くことにより、所定期間における実際の書き換え回数Rtを算出する。
【0106】
そして、選択部22は、記憶部23に保存されている寿命情報の示す書き換え可能回数Rmaxに対する、算出した書き換え回数Rtの割合を消耗度として算出する。
【0107】
(選択処理および代替制御の詳細)
(b-1)例1
再び
図2を参照して、ここでは、ECU群のうち、所定期間における消耗度が閾値Th1以上であるECU111(以下、「高消耗度ECU111」とも称する。)が存在するとする。この場合、選択部22は、記憶部23に保存されている、各ECU111から送信されたリソース状態情報に基づいて、1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を行わせる1または複数の代替ECU111を選択する。
【0108】
より詳細には、選択部22は、たとえば、ECU群のうち、所定期間における消耗度が閾値Th2以下であるECU111(以下、「低消耗度ECU111」とも称する。)であってリソースの使用率が閾値Th3以下である1または複数のECU111を、代替ECU111として選択する。そして、選択部22は、選択した1または複数の代替ECU111、および対象処理の内容を示す選択結果情報を制御部24へ出力する。
【0109】
制御部24は、選択部22から選択結果情報を受けて、当該選択結果情報に基づいて、選択部22により選択された各代替ECU111へ対象処理を行わせるための処理命令を送信する。これにより、1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を、低消耗度ECU111であってリソースの使用率が低い1または複数のECU111へ分散させることができる。
【0110】
また、制御部24は、さらに、各代替ECU111の処理負荷を下げる制御、すなわちCPUおよびメモリ等のリソースの使用率を下げる制御を行ってもよい。これにより、代替ECU111の消耗度の増加を抑制することができる。
【0111】
たとえば、制御部24は、対象処理が管理ECU101との通信処理を含む場合、管理ECU101への通信頻度が少なくなるように代替ECU111の通信処理を変更する。具体的には、制御部24は、代替ECU111の管理ECU101との通信頻度を少なくするための制御として、消耗情報および結果情報を間引いて送信するように設定したり、消耗情報および結果情報の送信周期が長くなるように設定したりする。
【0112】
また、制御部24は、代替ECU111に対して、表示画面等の解像度が低くなるように設定することにより、当該代替ECU111の処理負荷を下げる制御を行ってもよい。
【0113】
(b-2)例2
ECU群において、低消耗度ECU111であってリソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在しないとする。また、1または複数の高消耗度ECU111がいずれも車両10の走行に関する制御を行うECU111(以下、「走行制御系ECU111」とも称する。)ではないとする。走行制御系ECU111は、たとえば、走行用制御デバイス111cまたは自動運転ECU111hである。
【0114】
この場合、選択部22は、代替ECU111を選択しないことを決定する。すなわち、選択部22は、1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を他のECU111に分散させないことを決定する。そして、選択部22は、決定した内容を示す選択結果情報を制御部24へ出力する。
【0115】
制御部24は、選択部22から選択結果情報を受けて、当該選択結果情報に従い、対象処理の代替制御を行わないことを決定する。
【0116】
また、選択部22は、対象処理を他のECU111に分散させないことを決定した場合、各高消耗度ECU111の処理負荷を下げることを指示する指示情報を制御部24へ出力してもよい。
【0117】
この場合、制御部24は、選択部22から指示情報を受けて、当該指示情報に基づいて、各高消耗度ECU111の処理負荷を下げる制御を行う。たとえば、制御部24は、高消耗度ECU111に対して、管理ECU101との通信頻度が少なくなるように変更したり、表示画面等の解像度が低くなるように設定したりすることにより、対象処理の内容を制限する。
【0118】
これにより、各高消耗度ECU111において、自己が行うべき対象処理を実行しつつ、リソースの使用率を下げることにより消耗度の増加を抑制することができる。
【0119】
(b-3)例3
ここでは、ECU群のうち、低消耗度ECU111であってリソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在しないとする。また、1または複数の高消耗度ECU111のうちの少なくともいずれか1つが走行制御系ECU111であるとする。
【0120】
この場合、選択部22は、たとえば、ECU群のうち、高消耗度ECU111である走行制御系ECU111以外のECU111であってリソースの使用率が閾値Th3以下である1または複数のECU111を代替ECU111として選択する。
【0121】
そして、選択部22は、選択した1または複数の代替ECU111、および対象処理の内容を示す選択結果情報を制御部24へ出力する。
【0122】
制御部24は、選択部22から選択結果情報を受けて、当該選択結果情報に基づいて、選択部22により選択された各代替ECU111に対して、対象処理を行わせるための処理命令を送信する。
【0123】
これにより、1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を、走行制御系ECU111以外のECU111であってリソースの使用率が低い1または複数のECU111へ分散させることができる。
【0124】
また、制御部24は、さらに、(b-1)で説明したように、各代替ECU111の処理負荷を下げる制御を行ってもよい。
【0125】
(b-4)例4
ここでは、ECU群のうち、リソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在しない場合であって、1または複数の高消耗度ECU111のうちの少なくともいずれか1つが走行制御系ECU111であるとする。
【0126】
この場合、選択部22は、ECU群のうち、走行制御系ECU111以外のECU111、たとえばエンターテイメント関連装置111bを代替ECU111として選択する。そして、選択部22は、たとえば、選択した1または複数の代替ECU111および対象処理の内容を示す選択結果情報、ならびに各代替ECU111の処理負荷を下げることを指示する指示情報を制御部24へ出力する。
【0127】
制御部24は、選択部22から選択結果情報および指示情報を受けて、当該選択結果情報に基づいて、選択部22により選択された各代替ECU111へ、対象処理を行わせるための処理命令を送信する。また、制御部24は、当該指示情報に基づいて、各代替ECU111の処理負荷を下げる制御を行う。
【0128】
これにより、リソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在しない場合であっても、1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を、リソースの使用率を下げたとしても車両10の走行に影響を与えない1または複数のECU111へ分散させることができる。
【0129】
[動作の流れ]
車載通信システム301における各装置は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートまたはシーケンス図の各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリからそれぞれ読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0130】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る車載通信システムの動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【0131】
図2および
図4を参照して、まず、各ECU111は、たとえば設定された送信周期で、消耗情報、結果情報およびリソース状態情報を管理ECU101へ送信する(ステップS11)。
【0132】
次に、管理ECU101における選択部22は、各ECU111から送信された消耗情報、結果情報およびリソース状態情報を通信部21経由で受信して記憶部23に保存する。そして、選択部22は、たとえば上記送信周期を複数含む所定期間が経過すると、記憶部23に保存されている複数の消耗情報に基づいて、当該所定期間における各ECU111の消耗度を算出する(ステップS12)。
【0133】
次に、管理ECU101における選択部22は、ECU群のうち、高消耗度ECU111が存在するか否かを確認する(ステップS13)。
【0134】
そして、選択部22は、高消耗度ECU111が存在しない場合(ステップS13において「NO」)、代替ECU111を選択しないことを決定する(ステップS14)。そして、選択部22は、次の所定期間が経過するまでの間、消耗情報、結果情報およびリソース状態情報の受信、ならびにこれらの情報の記憶部23への保存を繰り返し、所定期間が経過すると、当該所定期間における各ECU111の消耗度を算出する(ステップS12)。
【0135】
一方、選択部22は、高消耗度ECU111が存在する場合(ステップS13において「YES」)、記憶部23に保存されている各ECU111からのリソース状態情報に基づいて、ECU群のうち、低消耗度ECU111であり、かつリソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在するか否かを確認する(ステップS15)。
【0136】
そして、選択部22は、低消耗度ECU111であってリソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在する場合(ステップS15において「YES」)、これら1または複数のECU111を代替ECU111として選択する。そして、選択部22は、選択結果、および対象処理の内容を示す選択結果情報を制御部24へ出力する(ステップS16)。
【0137】
次に、制御部24は、選択部22から選択結果情報を受けて、当該選択結果情報に基づいて、たとえば、選択部22により選択された各代替ECU111に対象処理を行わせる代替制御、および各代替ECU111の処理負荷を下げる制御を行う(ステップS17)。
【0138】
一方、選択部22は、低消耗度ECU111であってリソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在しない場合(ステップS15において「NO」)、高消耗度ECU111が走行制御系ECU111であるか否かを確認する(ステップS18)。
【0139】
そして、選択部22は、1または複数の高消耗度ECU111がいずれも走行制御系ECU111ではない場合(ステップS18において「NO」)、代替ECU111を選択しないことを決定する。そして、選択部22は、決定した内容を示す選択結果情報、および各高消耗度ECU111の処理負荷を下げることを指示する指示情報を制御部24へ出力する(ステップS19)。
【0140】
次に、制御部24は、選択部22から選択結果情報および指示情報を受けて、当該選択結果情報および当該指示情報に基づいて、各高消耗度ECU111の処理負荷を下げる制御を行う(ステップS20)。
【0141】
一方、選択部22は、1または複数の高消耗度ECU111のうちの少なくともいずれか1つが走行制御系ECU111である場合(ステップS18において「YES」)、ECU群のうち、高消耗度ECU111である走行制御系ECU111以外のECU111であってリソースの使用率が閾値Th3以下である1または複数のECU111を、代替ECU111として選択する。そして、選択部22は、選択結果、および対象処理の内容を示す選択結果情報を制御部24へ出力する(ステップS21)。
【0142】
次に、制御部24は、選択部22から選択結果情報を受けて、当該選択結果情報に基づいて、選択部22により選択された各代替ECU111に対象処理を行わせる代替制御、および各代替ECU111の処理負荷を下げる制御を行う(ステップS22)。
【0143】
なお、選択部22は、ステップS21において、たとえば、リソースの使用率が閾値Th3以下であるECU111が存在しない場合、エンターテイメント関連装置111b等を代替ECU111として選択してもよい。この場合、選択部22は、たとえば、選択結果を示す選択結果情報、および1または複数の代替ECU111の処理負荷を下げることを指示する指示情報を制御部24へ出力する。
【0144】
そして、制御部24は、ステップS22において、選択部22から選択結果情報および指示情報を受けて、当該選択結果情報および当該指示情報に基づいて、選択部22により選択された各代替ECU111に対象処理を行わせる代替制御、および各代替ECU111の処理負荷を下げる制御を行う。
【0145】
また、選択部22は、ステップS12において次の所定期間における各ECU111の消耗度を新たに算出し、前の所定期間において高消耗度ECU111であったECU111の消耗度が閾値Th1未満に変化した場合、当該ECU111が行うべき対象処理の分散を終了させることを指示する終了指示情報を制御部24へ出力する。
【0146】
制御部24は、選択部22から終了指示情報を受けて、当該終了指示情報に基づいて、選択部22により選択された1または複数の代替ECU111に行わせていた対象処理を、当該対象処理を行うべきである1または複数のECU111に行わせる制御を行う。
【0147】
ところで、今後、シェアカーの普及および自動運転技術の発達等により、各ECUの稼働率が増す可能性が高く、各ECUの使用可能時間をより長時間化することができる技術が望まれている。
【0148】
そこで、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101では、通信部21が、車両10に搭載される複数のECU111の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する。選択部22が、通信部21により取得された各消耗情報に基づいて、複数のECU111の中から、複数のECU111のうちの1または複数のECU111が行うべき対象処理を行わせる1または複数の代替ECU111を選択する。そして、制御部24が、選択部22により選択された1または複数の代替ECU111に対象処理を行わせる制御を行う。
【0149】
このような構成により、たとえば1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を他の1または複数のECU111に分散することができるため、高消耗度ECU111の消耗度の増加を抑制することができる。
【0150】
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101では、車両10に搭載された各ECU111の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0151】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101では、選択部22が、対象処理を行わせる1または複数のECU111として、対象処理を行なうべき1または複数のECU111とは異なるECU111を少なくとも1つ選択する。
【0152】
このような構成により、たとえば、高消耗度ECU111が行うべき対象処理を、低消耗度ECU111に行わせることができる。
【0153】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101における通信部21が取得する消耗情報は、ECU111の熱に関する情報を含む。
【0154】
このように、ECU111の消耗に大きく影響を与える熱、に関する情報を用いて代替ECU111の選択を行う構成により、各ECU111の消耗度をより正確に把握して、より適切な選択を行うことができる。
【0155】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101における通信部21が取得する消耗情報は、ECU111が含むメモリの書き換え回数Rに関する情報を含む。
【0156】
このような構成により、ECU111における電子部品の中で消耗しやすいメモリに関する情報を用いて代替ECU111の選択を行う構成により、各ECU111の消耗度をより正確に把握して、より適切な選択を行うことができる。
【0157】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101では、制御部24が、さらに、選択部22により選択された1または複数の代替ECU111の処理負荷を下げる制御を行う。
【0158】
このような構成により、たとえば代替ECU111の処理負荷を下げることができるため、分散先の代替ECU111の消耗度の増加を抑制することができる。
【0159】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101では、制御部24が、処理負荷を下げる制御として、代替ECU111の通信頻度を変更する。
【0160】
このような構成により、たとえば代替ECU111の通信頻度を少なく設定することにより、当該代替ECU111の処理負荷を下げることができる。
【0161】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101では、制御部24が、選択部22によって代替ECU111が選択されない場合、対象処理を行う高消耗度ECU111の処理負荷を下げる制御を行う。
【0162】
このような構成により、対象処理の分散先として適切なECU111が存在しない場合であっても、当該対象処理を行う高消耗度ECU111の消耗度の増加を抑制することができる。
【0163】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101では、消耗度は、ECU111の使用可能時間に対する、所定期間における実際の使用時間の割合、またはECU111が含むメモリの書き換え可能回数に対する、所定期間における実際の書き換え回数の割合である。消耗情報は、ECU111の温度の履歴に関する情報、またはメモリの書き換え可能回数に関する情報である。温度は、ECU111の周囲温度およびECU111の発熱の両方に影響される温度である。ECU111の発熱には、ECU111における各種リソースの動作により生じる熱、ECU111の電源のオン/オフにより生じる熱、およびリップル電流の発生により生じる熱が含まれる。
【0164】
このような構成により、ECU111の消耗に大きく影響を与える熱、またはECU111における電子部品の中で消耗しやすいメモリ、に関する情報を用いて代替ECU111の選択を行う構成により、各ECU111の消耗度をより正確に把握して、より適切な代替ECU111を選択することができる。
【0165】
また、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101における制御方法では、まず、通信部21が、車両10に搭載される複数のECU111の各々の消耗度に関する消耗情報をそれぞれ取得する。次に、選択部22が、通信部21により取得された各消耗情報に基づいて、複数のECU111からなるECU群の中から、ECU群における少なくともいずれか1つのECU111が行うべき対象処理を行わせる1または複数の代替ECU111を選択する。そして、制御部24が、選択部22により選択された1または複数の代替ECU111に上記対象処理を行わせる代替制御を行う。
【0166】
このような方法により、たとえば1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を他の1または複数のECU111に分散することができるため、高消耗度ECU111の消耗度の増加を抑制することができる。
【0167】
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る管理ECU101における制御方法では、車両10に搭載された各ECU111の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0168】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0169】
<第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、車両10に搭載された管理ECU101が、各ECU111の消耗度を算出し、算出した各ECU111の消耗度に基づいて代替ECU111の選択処理を行う。これに対して、第2の実施の形態では、管理サーバ(管理装置)121が、車両11に搭載された各ECU111の消耗度を推定し、車両11における管理ECU101が、管理サーバ121による推定結果に基づいて代替ECU111の選択処理を行う。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る車載通信システム301と同様である。
【0170】
[構成および基本動作]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る制御システムの構成を示す図である。
【0171】
図5を参照して、制御システム302は、1または複数の車両11と、管理サーバ121と、ディーラ側サーバ131と、無線基地局装置161とを備える。
図5では、一例として、2つの車両11を示している。
【0172】
第2の実施の形態に係る車両11は、
図1に示す車両10と同様に、管理ECU101と、複数のECU111とを含む。管理ECU101は、
図2に示すように、通信部21と、選択部22と、記憶部23と、制御部24とを有する。
【0173】
選択部22は、複数のECU111からそれぞれ受信した複数の消耗情報を、通信部21、
図1に示す車外通信装置111aおよび無線基地局装置161経由で管理サーバ121へ送信する。
【0174】
ディーラ側サーバ131は、複数のECU111の故障に関する故障情報を保持する。故障情報は、たとえば、ECU111の種類と、ECU111の製造年月日と、ECU111の使用期間と、当該製造年月日に製造された複数のECU111のうち故障したECU111の個数との対応関係を示す。
【0175】
ディーラ側サーバ131は、たとえば定期的または不定期に故障情報を更新し、更新後の故障情報を無線基地局装置161経由で管理サーバ121へ送信する。
【0176】
管理サーバ121は、各車両11から無線基地局装置161経由で受信した複数の消耗情報、およびディーラ側サーバ131から無線基地局装置161経由で受信した故障情報に基づいて、各車両11における複数のECU111の各々の消耗度を推定する。
【0177】
具体的には、車両11からの消耗情報は、たとえば各ECU111の種類および製造年月日等を示す。管理サーバ121は、車両11から受信した複数の消耗情報がそれぞれ示す複数のECU111の各々の種類および製造年月日、ならびに故障情報の示す上記対応関係を参照して、故障する確率が所定値以上となるまでの時間を使用可能時間として推定する。
【0178】
また、管理サーバ121は、対応の消耗情報に基づいて、各ECU111の使用時間を算出し、ECU111ごとに、推定した使用可能時間に対する使用時間の割合を算出することにより、各ECU111の消耗度を推定する。
【0179】
そして、管理サーバ121は、推定した各ECU111の消耗度、ならびに各ECU111の種類および製造年月日等を示す推定情報を、無線基地局装置161経由で1または複数の車両11、およびディーラ側サーバ131へ送信する。
【0180】
車両11における選択部22は、管理サーバ121から送信された推定情報を無線基地局装置161、車外通信装置111aおよび通信部21経由で受信し、受信した推定情報に基づいて、自己の車両11におけるECU群の中から、対象処理を行わせる1または複数の代替ECU111を選択する。
【0181】
より詳細には、選択部22は、受信した推定情報に基づいて、自己の車両11における各ECU111の消耗度を算出する。たとえば、選択部22は、ECU111ごとに、(a-1)で説明した方法または(a-2)で説明した方法を用いて算出した消耗度、および受信した推定情報の示す消耗度に対してそれぞれ重み付けを行って加算することにより、推定情報の内容を反映した各ECU111の消耗度を算出する。
【0182】
そして、選択部22は、算出した各ECU111の消耗度、および記憶部23に保存されている対応のリソース状態情報に基づいて、代替ECU111の選択処理を行う。
【0183】
なお、選択部22は、各ECU111の消耗度の算出を行わない構成であってもよい。この場合、選択部22は、たとえば、管理サーバ121から受信した推定情報を用いて各ECU111の消耗度の高低を判断し、代替ECU111の選択処理を行う。
【0184】
ディーラ側サーバ131は、管理サーバ121から送信された推定情報を無線基地局装置161経由で受信し、受信した推定情報に基づいて、管理サーバ121により推定された各ECU111の消耗度の妥当性を判断する。
【0185】
たとえば、ディーラ側サーバ131は、自己の保持する故障情報、ならびに管理サーバ121から受信した推定情報の示す各ECU111の種類および製造年月日等に基づいて、故障する可能性の高い1または複数のECU111を特定する。また、ディーラ側サーバ131は、推定情報の示す対応の消耗度を確認することにより、管理サーバ121において推定された各ECU111の消耗度の妥当性を判断する。
【0186】
そして、ディーラ側サーバ131は、たとえば、妥当性の判断結果を示す判断結果情報を、無線基地局装置161経由で管理サーバ121へ送信する。
【0187】
また、ディーラ側サーバ131は、車両11が故障した場合、管理サーバ121から受信した推定情報および妥当性の判断結果を、当該車両11の故障原因の推定に用いることができる。
【0188】
[動作の流れ]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る制御システムの動作の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0189】
図5および
図6を参照して、まず、車両11における管理ECU101は、定期的または不定期に、各ECU111の消耗情報を車外通信装置111aおよび無線基地局装置161経由で管理サーバ121へ送信する(ステップS31)。
【0190】
次に、ディーラ側サーバ131は、たとえば、自己の保持する故障情報を更新するたびに、更新後の故障情報を無線基地局装置161経由で管理サーバ121へ送信する(ステップS32)。
【0191】
次に、管理サーバ121は、車両11から受信した複数の消耗情報、およびディーラ側サーバ131から受信した故障情報に基づいて、車両11における各ECU111の消耗度を推定する(ステップS33)。
【0192】
次に、管理サーバ121は、推定した各ECU111の消耗度を示す推定情報を、無線基地局装置161経由で車両11およびディーラ側サーバ131へ送信する(ステップS34)。
【0193】
次に、ディーラ側サーバ131は、管理サーバ121から受信した推定情報に基づいて、管理サーバ121により推定された各ECU111の消耗度の妥当性を判断する(ステップS35)。そして、ディーラ側サーバ131は、判断結果を示す判断結果情報を、無線基地局装置161経由で管理サーバ121へ送信する(ステップS36)。
【0194】
また、車両11における選択部22は、管理サーバ121から受信した推定情報に基づいて、
図4に示すステップS12と同様に、自己の車両11における各ECU111の消耗度を算出し(ステップ
S37)、以後、
図4に示す動作と同様の動作を行う。
【0195】
その他の構成および動作は、本発明の第1の実施の形態に係る車載通信システム301と同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0196】
上記のように、本発明の第2の実施の形態に係る制御システム302では、管理サーバ121が、複数の車両11について、車両11に搭載される複数のECU111の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得し、取得した各消耗情報に基づいて、管理ECU101の搭載された当該車両11における1または複数のECU111の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を管理ECU101へ送信する。そして、管理ECU101が、管理サーバ121から送信された推定情報を受信し、受信した推定情報に基づいて、自己の搭載された車両11における複数のECU111の中から、複数のECU111のうちの1または複数のECU111が行うべき対象処理を行わせる1または複数の代替ECU111を選択し、選択した1または複数の代替ECU111に対象処理を行わせる代替制御を行う。
【0197】
このような構成により、たとえば1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を他の1または複数の代替ECU111に分散することができるため、高消耗度ECU111の消耗度の増加を抑制することができる。
【0198】
また、管理サーバ121が各ECU111の消耗度を推定する構成により、たとえば、管理サーバ121により推定された消耗度、および車両11において算出された消耗度の両方を用いることにより、車両11においてより正確な消耗度を算出することができる。
【0199】
したがって、本発明の第2の実施の形態に係る制御システム302では、車両11に搭載された各ECU111の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0200】
また、本発明の第2の実施の形態に係る制御システム302では、ディーラ側サーバ131が、複数のECU111の故障に関する故障情報を保持する。ディーラ側サーバ131が、故障情報を管理サーバ121へ送信する。管理サーバ121が、取得した各消耗情報、およびディーラ側サーバ131から受信した故障情報に基づいて、1または複数のECU111の消耗度を推定する。
【0201】
このように、管理サーバ121が消耗情報および故障情報に基づいて各ECU111の消耗度を推定する構成により、より正確な消耗度を算出することができる。
【0202】
また、本発明の第2の実施の形態に係る制御システム302における制御方法では、まず、管理サーバ121が、複数の車両11について、車両11に搭載される複数のECU111の各々の消耗度に関する複数の消耗情報をそれぞれ取得する。次に、管理サーバ121が、取得した各消耗情報に基づいて、管理ECU101の搭載された車両11における1または複数のECU111の消耗度を推定し、推定結果を示す推定情報を管理ECU101へ送信する。次に、管理ECU101が、管理サーバ121から送信された推定情報を受信し、受信した推定情報に基づいて、自己の搭載された車両11における複数のECU111の中から、複数のECU111のうちの1または複数のECU111が行うべき対象処理を行わせる1または複数の代替ECU111を選択する。そして、管理ECU101が、選択した1または複数の代替ECU111に対象処理を行わせる代替制御を行う。
【0203】
このような方法により、たとえば1または複数の高消耗度ECU111が行うべき対象処理を他の1または複数の代替ECU111に分散することができるため、高消耗度ECU111の消耗度の増加を抑制することができる。
【0204】
また、管理サーバ121が各ECU111の消耗度を推定する方法により、たとえば、管理サーバ121により推定された消耗度、および車両11において算出された消耗度の両方を用いることにより、車両11においてより正確な消耗度を算出することができる。
【0205】
したがって、本発明の第2の実施の形態に係る制御システム302における制御方法では、車両11に搭載された各ECU111の使用可能時間をより長時間化することができる。
【0206】
なお、本発明の第1の実施の形態に係る車載通信システム301および第2の実施の形態に係る制御システム302の各々の特徴を適宜組み合わせることも可能である。
【0207】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0208】
10,11 車両
21 通信部(取得部)
22 選択部
23 記憶部
24 制御部
101 管理ECU(車載制御装置)
111 ECU(機能部)
111a 車外通信装置
111b エンターテイメント関連装置
111c 走行用制御デバイス
111d カメラ
111e 物体検知センサ
111f 温度センサ
111g 電池状態監視センサ
111h 自動運転ECU
121 管理サーバ(管理装置)
131 ディーラ側サーバ
161 無線基地局装置
301 車載通信システム
302 制御システム