(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】光学デバイス
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20231117BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
F21S2/00 434
F21S2/00 433
F21S2/00 435
F21S2/00 438
F21V8/00 330
(21)【出願番号】P 2020507914
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2019012010
(87)【国際公開番号】W WO2019182091
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-22
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】リンコ,カリ
(72)【発明者】
【氏名】宮武 稔
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒三
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-289020(JP,A)
【文献】特開2007-087647(JP,A)
【文献】特開2011-070865(JP,A)
【文献】特開2002-196152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光層と、
前記導光層の第1の主面に設けられた第1光学機能層と、
前記導光層の前記第1の主面と反対側の第2の主面に設けられた第2光学機能層であって、前記第2光学機能層は、前記導光層の屈折率よりも低い屈折率を有する少なくとも1つの第1の材料部分と、屈折率が前記導光層の屈折率
と同じである少なくとも1つの第2の材料部分とを有し、前記少なくとも1つの第1の材料部分および前記少なくとも1つの第2の材料部分は、前記第2の主面に沿って配置されている、第2光学機能層と
前記第2光学機能層の前記導光層と反対側の面に設けられた光学媒体層と、
前記少なくとも1つの第1材料部分と前記光学媒体層とを接着する光学接着層と、
を有し、前記第1光学機能層の屈折率は、前記導光層の屈折率よりも低い
ことを特徴とする光学デバイス。
【請求項2】
前記第1の主面は、前記導光層の光取り出し面であり、
前記第1光学機能層は、低屈折率材料で全面に均一に形成された層である、
請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記第2光学機能層と前記導光層との界面での前記少なくとも1つの第2の材料部分の占有割合は、前記導光層の光軸方向に沿って勾配を有する、
請求項1または2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記界面での前記少なくとも1つの第2の材料部分の占有割合は、前記光軸方向に沿って増加する、
請求項3に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記第2光学機能層または前記導光層は、少なくとも前記光学媒体層を含む層に対して取り外し可能に接着されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記第2光学機能層、前記導光層、及び前記第1光学機能層で第1の積層体を形成し、
前記光学媒体層の前記第1の積層体と反対側の面に、少なくとも第2の導光層を含む第2の積層体を有し、
前記第1の積層体と前記第2の積層体の少なくとも一方は、前記光学媒体層に対して取り外し可能に接着されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記第1光学機能層と前記第2光学機能層の少なくとも一方は、反射、透過、偏光、及び屈折から選択される機能を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記第1光学機能層は、前記導光層を伝搬する光に対する全反射膜である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記第1光学機能層と前記第2光学機能層は異なる屈折率値を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記導光層から光を外部に取り出す第3機能層をさらに有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学デバイス。
【請求項11】
前記第3機能層は、複数の離散的なプロファイルを含む、または少なくとも部分的に連続した複数のプロファイルを含む光学パターンを有する、請求項10に記載の光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイスに関し、特に、ライトガイドを有する光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、約0.5~1m2(平方メートル)以上の大型のライトガイドと、それに関連する配光構造のための生産ツールの製造コストは高く、マスター作製ツールアイテム(約1m2の表面カバレッジ)1個あたりの費用は、許容レベルを超えている。さらに、モールディング等によるライトガイドの全表面へのパターンの形成と大量生産を考慮すると、プロセスの難易度が高い。この理由から、より高い光パワー、消費電力の低減、及び性能の向上を実現する高効率で高度な光学ソリューションは、実現されていない。
【0003】
光がライトガイドにインカップリングするときに起こる基本的な問題のひとつとして、入射角が媒体の臨界角未満のとき、すなわち全反射しない角度(アウトカップリングの角度)で入射するときの光損失がある。ライトガイドと1以上の接着剤層の間の界面に臨界角未満の角度で入射する光は、ライトガイドに設けられている光学的な制御構造によって制御されない。この場合、ライトガイドにインカップリングした光の5~15%が接着層を通過するが、このような光漏れは望ましくない。
【0004】
ライトガイドの適用例として、透明な照明デバイスへの適用がある。透明な照明デバイスは、一般照明、ウィンドウ/ファサードの照明、反射型/透過型ディスプレイの照明、街頭の看板、交通標識など、多様な製品で重要なソリューションとなりつつある。透明ソリューションを実現するための主要な課題は、(1)表面レリーフ光学パターンのオープン構造、(2)配光の管理、(3)迷光の制御、及び、(4)高い透明度、である。このうち、(1)の表面光学パターンを露出するオープン構造は、汚れ、物理的な欠陥等が生じるというリスクがあるので、産業への実際のアプリケーションとしては現実的ではない。(2)について、光学的な要請と仕様に応じて、明度強化フィルム等の追加の光学シートを使わずに配光を制御することが求められる。透明デバイスでは、余分なシートの挿入により透明性が損なわれるおそれがあるので、効率的な光抽出構成が望まれる。
【0005】
(3)について、看板(サイネージ)、ビジュアルパフォーマンスを伴うディスプレイなどに用いられる表面照明では、コントラストの低下を避けるために、視線方向への迷光を最小限にしなければならない。しかし、光学パターン自体が光漏れとフレネル反射による迷光の原因となる。ノンラミネート型のデバイスも、外面でフレネル迷光が生じる。
【0006】
(4)について、光学透明度は常に光学パターンの形状と特性、及び周囲光の有無による視界に依存する。光学パターンが大きいほど見えやすいが、小さなパターンでもデバイスが照明されたときは視認可能になる。特に、パターン密度が小さいときは、視野角で迷光を生じさせる明るいスポットが形成される。
【0007】
上記の4つの課題の一部は、保護カバーの外面に反射防止(AR)膜を設けることによって解決され得るが、すべてが解決されるわけではなく、アプリケーションによっては確実なソリューションとはならない。透明照明のためのキャビティ光学素子も提案されているが、最終的な品質と性能を確保するための光漏れ(または迷光)対策については考慮されていない。
【0008】
光導体と反射性散乱体の間に、低屈折率領域と高屈折率領域を交互に配置した層を挿入する構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2015-534100号(国際公開第2014/031726号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
看板(サイネージ)、ビジュアルパフォーマンスを伴うディスプレイなどに用いられる表面照明では、コントラスト低下の抑制、または、視認性の改善が求められている。
【0011】
光学デバイス一般に関しても、表面カバーに指紋、汚れ等が付着していると、散乱または光損失によって光が導光層の端部まで行き渡らず、観察者の視線方向に十分な光を取り出すことができない。その結果、コントラストが低下し、視認性が低下する。簡単な構成で導光層の全体に光を行き渡らせつつ、効率的に光を取り出して、コントラストまたは視認性を高めることのできる構成が望まれる。
【0012】
本発明は、簡単な構成で、十分なコントラストまたは視認性を実現する光学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のひとつの態様では、光学デバイスは、
導光層と、
前記導光層の第1の主面に設けられた第1光学機能層と、
前記導光層の前記第1の主面と反対側の第2の主面に設けられた第2光学機能層と
前記第2光学機能層の前記導光層と反対側の面に設けられた光学媒体層と、
を有し、前記第1光学機能層の屈折率は、前記導光層の屈折率よりも低い。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成と手法により、視認性の高い光学デバイスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】実施形態の光学デバイスの基本概念を示す図である。
【
図1B】実施形態の光学デバイスの基本概念を示す図である。
【
図2A】第1実施形態の光学デバイスの構成例を示す図である。
【
図2B】第1実施形態の光学デバイスの別の構成例を示す図である。
【
図2C】第1実施形態の光学デバイスの別の構成例を示す図である。
【
図2D】第1実施形態の光学デバイスの効果を示す図である。
【
図2E】第1実施形態の光学デバイスの適用例を示す図である。
【
図2F】
図2Eの適用例のための光学デバイスの構成例を示す図である。
【
図3A】第2実施形態で解決すべき課題を説明する図である。
【
図3B】第2実施形態の光学デバイスの構成例を示す図である。
【
図3C】第2実施形態の光学デバイスの別の構成例を示す図である。
【
図4】ライトガイド表面への低屈折率パターンの形成方法の一例を示す図である。
【
図5】ライトガイド表面への低屈折率パターンの形成方法の一例を示す図である。
【
図6A】レーザアブレーションにより低屈折率クラッドを除去した光学デバイスの画像である。
【
図6B】レーザアブレーションにより低屈折率クラッドを除去した光学デバイスの画像である。
【
図7】光分布フィルタ(Light Directing(Distributing) Filter;LDF)を用いたライトガイド構造のコンセプトと、光分布フィルタによる光制御の主要機能を示す図である。
【
図8A】光分布フィルタを用いたライトガイド構造の構成例を示す図である。
【
図8B】光分布フィルタを用いたライトガイド構造の構成例を示す図である。
【
図9A】2方向の光制御のためのハイブリッドパターンを示す図である。
【
図9B】2方向の光制御のためのハイブリッドパターンを示す図である。
【
図10】2方向光制御のための光学パターンを示す図である。
【
図11】ライトガイドにおけるパターンの例として、ハイブリッドパターンとリニアパターンを示す図である。
【
図12】光分布フィルタフィルムのシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】指センサ、指紋センサ等のセンサ用の信号ライトガイドのコンセプトを示す図である。
【
図14】指センサ、指紋センサ等のセンサ用の信号ライトガイドのコンセプトを示す図である。
【
図15A】9点での指紋シミュレーション結果を示す図である。
【
図15B】9点での指紋シミュレーション結果を示す図である。
【
図16】異なるセットアップでのシミュレーション結果を示す図である。
【
図17A】第3実施形態で解決すべき課題を説明する図である。
【
図17B】第3実施形態のインカップリング素子を有する光学デバイスの構成例を示す。
【
図17C】第3実施形態のインカップリング素子を有する光学デバイスの別の構成例を示す図である。
【
図17D】第3実施形態のインカップリング素子一体型ライトガイドの内部強度分布を示す図である。
【
図17E】比較例の光学デバイスの内部強度分布を示す図である。
【
図17F】別の比較例の光学デバイスの内部強度分布を示す図である。
【
図17G】従来構成と、比較例、及び第3実施形態の光学デバイスの特性を比較する図である。
【
図17H】第3実施形態のインカップリング光学系を用いたときの横方向の輝度の均一性を示す図である。
【
図17I】インカップリングキャビティを組み込んだ構成例を示す図である。
【
図18A】マスター製作プロセスの一例を示す図である。
【
図18B】マスター製作プロセスの一例を示す図である。
【
図18C】マスター製作プロセスの一例を示す図である。
【
図18D】マスター製作プロセスの一例を示す図である。
【
図18E】マスター製作プロセスの一例を示す図である。
【
図19】キャビティ光学系の透明度改善のためのソリューションの一例を示す図である。
【
図20】キャビティ光学系の透明度改善のためのソリューションの一例を示す図である。
【
図21A】空洞ラミネーションの一例を示す図である。
【
図21B】空洞ラミネーションの一例を示す図である。
【
図22A】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22B】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22C】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22D】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22E】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22F】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22G】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22H】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22I】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図22J】迷光抑制のためのエアキャビティの構成例である。
【
図23】反射防止膜による迷光抑制効果を説明する図である。
【
図24】光学接着剤による迷光抑制効果を説明する図である。
【
図25】エアキャビティによる迷光低減効果を示す図である。
【
図26】従来構成における迷光の影響を示す図である。
【
図27】反射防止膜付きのウィンドウ照明のコンセプトを示す図である。
【
図28】反射防止膜付きのウィンドウ照明のコンセプトを示す図である。
【
図29】着脱可能な光学デバイスの構成例を示す図である。
【
図30】着脱可能な光学デバイスの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態では、低コストかつ簡単な構成で、コントラストまたは視認性を高めた光学デバイスを提供する。この光学デバイスは、フロントライト、バックライト、ウィンドウ/ファサードの照明、サイネージ、信号点灯、ソーラーアプリケーション、装飾イルミネーション、ライトシールド、ライトマスク、ルーフライティング等の公共/一般照明等に適用可能である。
【0017】
以下の説明で、「光学フィルタ」という用語は、その上に入射する電磁放射線のスペクトル強度分布又は偏波状態を変化させるために使用されるデバイス又は材料を指す。フィルタは、透過、反射、吸収、屈折、干渉、回折、散乱及び偏光から選択される多様な光学機能を果たすことに関与し得る。
【0018】
「いくつかの」という表現は、1から始まる任意の正整数を指し、「複数の」という表現は2から始まる任意の正整数を指す。
【0019】
「第1の」及び「第2の」という用語は、何らかの順序、数量、又は重要性を表すことを意図するものではなく、むしろ、単に1つの要素を他の要素から区別するために使用される。
【0020】
「光学」及び「光」という用語は、明示的に特段の断りがない限り、大概は同義語として使用され、好ましくは可視光である電磁スペクトルの特定の部分内の電磁放射線を指すが、これに限定されない。
【0021】
「担持基板」又は「担持エレメント」という用語は、概して層状構造を構成する基板材料からなる平坦な平面状部材を指す。
る。
【0022】
ひとつの態様において、光学機能層を用いた光学デバイスが提供される。光学機能層は光を導光層の端部まで行き渡らせるとともに、視線の方向へ効率的に光を取り出す。以下の説明では、光学機能層は適用される場面に応じて、「光分布フィルタ(light distribution filter;LDF)」、「光学フィルタ層」、「配向素子」等と呼ばれる場合もある。光学機能層の光学機能は、反射、透過、偏光、及び屈折の少なくとも一つを含む。
【0023】
光学機能層は、導光層の内部に効率的に光をインカップリングするために用いられ、低屈折率層、エアキャビティ、反射防止膜、マイクロレンズ等、様々な形態で実現される。
【0024】
導光層、すなわちライトガイドは、光学ポリマー、ガラス等で形成される。光学機能層は、ライトガイドの少なくとも片面又はその両面に形成され、透明な低屈折率(Ri)フィルタ、内部全反射(Total internal reflection;TIR)フィルタ等であってもよい。これらの光学フィルタは、a)平坦な表面上に直接的に設けられてもよいし、b)接着剤層によってラミネートされてもよいし、c)例えばVUV(真空UV)、大気プラズマ処理又はマイクロ波ボンディングなどの化学的な表面処理によって接合されてもよい。
【0025】
光学フィルタの厚さ(h)は典型的に、使用波長よりも大きく(h>λ)、たとえば1μ-10μmである。一つの構成例では、光学フィルタ層は、導光層を構成する材料の屈折率(n1)よりも低い屈折率(n2)を持つ材料で形成される。低屈折率(n2)値の範囲は、1.05以上1.45以下、1.14と1.41との間、1.2以下、など、適用に応じて適宜選択される。光学フィルタは、メソポーラス膜内にナノシリカ材料を含有していてもよい。その場合、低Riクラッドの屈折率値を維持するために、低ガス化(低脱ガス)材料でフェーズ間をカバー、ラミネート、又は接合してもよい。
【0026】
光学フィルタは、TiO2、BaSO4、SiO2、Al2O3、Al、Ag、誘電体、高反射(HR)コーティング材料などの入手可能な材料を用いて、内部全反射(TIR)ソリューションとして実現され得る。
【0027】
実施形態の光学機能層(または光学フィルタ)を用いた光学デバイスは、ポスター、反射型ディスプレイ、電子ペーパー、ウィンドウガラス等を含む光学媒体に固定的に取り付けられてもよいし(固定型)、取り外し可能に取り付けられてサイネージ、装飾ディスプレイ等を構成することもできる(非固定型)。
【0028】
<基本概念>
図1Aと
図1Bは、実施形態の光学デバイスの基本概念を示す断面模式図である。この基本概念は、以下で詳細に述べる全ての実施形態に適用され得る。
図1Aの光学デバイス100Aは、光学媒体層11、光学接着層19、光学的な開口が設けられた低屈折率層13、ライトガイド14、全面の低屈折率層15、光学接着層16、及びカバー17が、この順に積層されている。この例では、開口付きの低屈折率層13と、全面の低屈折率層15が光学機能層に該当する。
【0029】
光学媒体層11は、この例では、ポスター、反射型ディスプレイ、電子ペーパー等の画像表示物、あるいは透明窓または透明壁等である。
【0030】
ライトガイド14は導光層であり、光学デバイス100Aの端面に位置するLED等の光源21から出力される光は、ライトガイド14を通って伝搬する。実施形態では、光学機能層13と光学機能層15の少なくとも一方により、光学デバイス100Aの光源21と反対側の端面まで、導光する。ライトガイド14は、たとえば、PMMA、PCRで形成され、この場合の屈折率は1.49前後である。
【0031】
開口付きの低屈折率層13と、全面の低屈折率層15の材料は同じであっても、異なっていてもよいが、これらの層の屈折率n2は、ライトガイド14の屈折率n1よりも小さい。低屈折率層13及び15の屈折率n2は、1.30以下であり、好ましくは1.20以下である。
【0032】
光学接着層19,16、及びカバー17の屈折率はライトガイド14と同程度であるのが望ましいが、多少異なっていてもよい。
【0033】
図1Aの構成で、観察者は、カバー17の方向から光学デバイス100Aを見る。したがって、カバー17から観察者の方向に取出される光が多いほど好ましい。ライトガイド14を伝搬する光は、低屈折率層13の開口131または132を通って、光学媒体層11で反射され、開口131または132、あるいは低屈折率層13を透過して、カバー17から観察者の方向へ出射される。
【0034】
ライトガイド14を伝搬する光のうち、低屈折率層15への入射角が臨界角よりも大きいときに(浅い角度で入射するときに)、全反射条件が満たされ、光学媒体層11に向かって反射される。ここで、臨界角θcはライトガイド14の屈折率n1と、低屈折率層13及び15の屈折率n2を用いて、
θc=θi=arcsin(n2/n1)
で表される。θiは入射角(法線からの角度)である。
【0035】
光学媒体層11で反射された光は、低屈折率層13、ライトガイド14、及び低屈折率層15を透過して、カバー17から出射される。低屈折率層13の開口131または132のパターンは、低屈折率層15で全反射された光を効率良く光学媒体層11へ導き、光学媒体層11からの反射光を、効率的にカバー17側に取り出すように設計されている。
【0036】
開口131は、たとえば、低屈折率層131の一部をクラッド除去法で除去することで形成される。開口132は、たとえば、低屈折率層131の除去された部分に別の光学材料層を埋めた高密度パターンで形成される。開口132を埋める材料は、ライトガイド14、及び光学接着層19の屈折率と同じまたは近似する屈折率を有する。
【0037】
ライトガイド14の光取り出し側の面(この例では積層方向の上面)に低屈折率層15がない場合、光源21から出力されて直接カバー17側に向かう光は、そのまま光学接着層16及びカバー17を透過し、光損失が生じる。
図1Aの構成とすることで、導光途中の光損失を最小にして、ライトガイド14の端部まで効率的に導光し、かつ光学媒体層11で反射された光を効率的にカバー17から出射させる。これにより、観察者の側に十分な量と強さの光が出力され、コントラストと視認性が維持される。
【0038】
開口を有する低屈折率層13と、べた膜の低屈折率層15(全面を低屈折率材料で均一な面を形成する低屈折率層)は、ライトガイド14を伝搬する光の進路を制御する光学フィルタとして機能する。後述するように、屈折率以外に、反射防止構成、光学密度、光学定数などを調整することで、多様な機能を持たせることができる。
【0039】
低屈折率層13の開口131または132によって実現される光の分布は、均一、不均一、又は離散的のいずれであってもよい。これにより、均一、不均一又は離散的な像又は信号を形成することができる。開口131または132の主要な機能は、光をアウトカップリングさせずに(すなわち、全反射条件を利用して)、ライトガイド14から光学媒体層11の方向へ伝搬する入射光の量を制御することである。
【0040】
開口131、132は、その寸法、形状等を調整することで、散乱、屈折、反射、これらに類するものなどの他の機能を発揮するように作製され得る。開口131または132の一部は、光をアウトカップリングさせるように、すなわち、光学媒体層11で反射された光をカバー17側へ透過させるように形成され得る。開口131または132は、円形、楕円形、多角形、矩形等に形成することができ、そのサイズ又は径は、例えば、1μm~100μmであり、好ましくは1μm~30μmの範囲内で調整される。
【0041】
図1Bは、光学デバイス100Bの断面模式図である。光学デバイス100Bの基本原理は
図1Aと同じである。光学デバイス100Bでは、ライトガイド14の全面を覆う低屈折率層として、空気層を利用している。空気は、ライトガイド14の屈折率n1よりも小さく、光源21から出力されてライトガイド14と空気層の界面に入射した光は、全反射条件を満たしてライトガイド14内に反射され、低屈折率層13の開口を通って、光学媒体層11で反射される。光学媒体層11の情報を載せた光は、ライトガイド14の表面から出射される。
【0042】
図1Bの構成によっても、光を無駄なくライトガイド14の光源21と反対側の端部まで光を伝搬させ、かつ、光を効率良く光学媒体層11に進行させて反射光を効率的に取り出すことができる。
【0043】
図1Aは、レイヤ間にライトガイド14が配置(たとえばラミネート)されるフロントライトソリューションを提供する。
図1Bは、ライトガイド14がトップ層となるフロントライトソリューションを提供する。ライトガイド14の外面の汚染又は欠陥による光リークを防止するために、ライトガイド14の最表面に、低屈折率値のハードコーティングを施してもよい。
【0044】
図1A及び
図1Bのライトガイド14は、光アウトカップリングパターンなどの光学パターンを有していない。この新規な非パターンのライトガイド14は、光学機能層との界面/表面ラミネーションによって、表示面などのターゲット上に照明を提供する。界面ラミネーションは照明又は光表示の目的で、光を表示面などのターゲット面に当てることができる。また、光の通過とその方向を制御するために、両側の界面をラミネートして屈折率マッチングにより制御することができる。
【0045】
表1は、光学的な開口131又は132が設けられたライトガイド構造の光取り出し効率の改善結果を示す。
【0046】
【表1】
表1の上段は、取り出された光の光束(ルーメンス)、下段は照度(ルクス)を示す。アクリルでラミネートされた低屈折率開口付きのPMMAライトガイドと、シリコーンでラミネートされた表面パターン化されたPMMAライトガイドを比較すると、ライトガイド14に開口付き低屈折率層13をラミネートすることで、フロントライトソリューションで23.5%も光取り出し効率が改善されている。
【0047】
光取り出し効率は、ライトガイド14の屈折率と、接合、ラミネートされる層、クラッド、コーティング材の屈折率等に依存する。実施形態フロントライトソリューションは、ライトガイドの表面に光学パターンが形成されていないので、迷光を最小にし、かつ透明度を高めてコントラスト及び光取り出し効率を向上する。
【0048】
<第1実施形態>
図2A~
図2Fは、第1実施形態の光学デバイスとその適用例を示す。第1実施形態では、
図1A及び
図1Bの構成と性能を基礎にしつつ、必要に応じてキャビティ光学素子を利用して、透明度を向上する。特に、照明がオン/オフモードのときのライトガイドの透明度を向上し、迷光を抑制して所望の角度で光を出射(またはアウトカップリング)させる。カバー表面に指紋、埃等の汚が付着しているときでも、ライトガイドの透明度の向上と、迷光の抑制の少なくとも一方を実現することで、観察者の方向に十分な光を取り出して視認性を良くすることができる。
【0049】
図2Aは、第1実施形態の光学デバイス10Aの断面模式図である。光学デバイス10Aは、光学媒体層11と、エアキャビティ134を有する光学機能層13Aと、ライトガイド14と、全面に設けられる低屈折率層15と、光学接着層16と、カバー17がこの順に積層されている。
【0050】
カバー17は、光学デバイス10Aを保護するためのものであり、透明性が高いほうが好ましい。ガラス、プラスチック等で形成され、UV吸収効果を持ってもよい。保護層としての観点からは強度が高い方がよいが、薄くフレキシブルな層にしてもよい。
【0051】
全面の低屈折率層15と、エアキャビティ134を有する光学機能層13Aは、
図1A及び
図1Bを参照して説明した光学機能層13の別の例である。低屈折率層15は、光源21から出射されライトガイド14の端面からライトガイド14の内部に入射する光を、光源21と反対型の端面まで十分に導光させる。
【0052】
光学機能層13Aは、低屈折率層15で全反射された光、または光源21から直接入射する光を、効率的に光学媒体層11の方向へ導き、光学媒体層11で反射された光を、カバー17側へアウトカップリングさせる。
【0053】
光学機能層13Aは、たとえば、マイクロレンズ型、レンティキュラーレンズ型、三角柱または山形のレンズ等の光学的な凸部を有する。パターン(a)では、光学機能層13A1は、積層方向でみたときに、ライトガイド14の下面に設けられており、光学媒体層11に向かって凸のマイクロレンズ型の光学突起133を有する。光学突起133と光学媒体層11の間は、エアキャビティ134である。
【0054】
パターン(b)では、光学機能層13A2は、積層方向でみたときに、ライトガイド14の下面に設けられており、光学媒体層11に向かって突き出た三角柱または山形の光学突起135を有する。光学突起135と光学媒体層11の間は、エアキャビティ134である。
【0055】
光学突起133及び135の屈折率は、ライトガイド14の屈折率n1と同じか近接している。エアキャビティ134の屈折率n2は空気の屈折率であり、屈折率n1よりも小さい(n2<n1)。
【0056】
凸型レンズに替えて、溝、ドット等の凹型のパターンが形成された光学層をライトガイドの底面に接合してもよい。この場合は溝または窪みによるエアキャビティが低屈折率パターンとなり、凸型レンズにする場合と同様に、入射光を効率的に光学媒体層11の方向へ屈折させる。
【0057】
エアキャビティ134を有する光学機能層13Aは、例えば、アクリル系の平板の第1部分に所望の形状が形成された金型を用い、真空プレスにて形状を転写する。平板の第2部分に低屈折率の液を塗布し、転写されたパターンで加工することで形成される。
【0058】
光学機能層13Aを、ライトガイド14と屈折率が同じまたは近接する光学接着剤と用いてライトガイド14の底面に接着してもよい。
【0059】
低屈折率層15は、上述した光学デバイス100Aと同様に、光源21から直接入射する光を、光学層13の方向へと屈折させる。低屈折率層15で反射された光、または光源21から直接入射する光は、光学突起133または135とエアキャビティの界面で屈折されて、光学媒体層11へと導かれる。光学媒体層11の表面で、光はカバー17の方向に反射される。この反射光は、低屈折率層15との界面で全反射条件を満たさず、そのままカバー17から出射される。
【0060】
この構成により、光源21から出射された光は、ライトガイド14の反対側の端面まで十分に伝搬し、かつ、光学媒体層11で反射された光を十分に取り出して出力することができる。
【0061】
スマートフォン等の携帯端末では、表示画面の特に外周領域に指紋、汗等の汚れが付着しやすい。低屈折率層15が無い場合に、光源21からカバー17方向に出射された光は汚れで散乱し、光損失が大きくなる。低屈折率層15と、エアキャビティ134を有する光学機能層13Aを組み合わせることで、導光途中の光損失を抑制し、かつ光学デバイス10Aから効率的に光を取り出すことができる。
【0062】
図2Bは、第1実施形態の別の光学デバイス10Bの断面模式図である。光学デバイス10Bは、光学媒体層11と、光学接着層19と、低屈折率層13Bと、ライトガイド14Bと、低屈折率層14と、光学接着層16と、カバー17がこの順に積層されている。
【0063】
低屈折率層13Bは、この例ではべた膜(全面を低屈折率材料で均一な面を形成する低屈折率層)である。低屈折率層13Bと低屈折率層15n屈折率n2は、ライトガイド14の屈折率n1よりも低い。低屈折率層13Bは、低屈折率層15とともに、光源21から出射され光学デバイス10Bの端面から入射された光をライトガイド14の反対側の端面まで十分に伝搬させる。
【0064】
ライトガイド14Bは、内部に光学キャビティを有する。光学キャビティの内部は空気等の気体で満たされていてもよい。光学キャビティの形状は、ライトガイド14Bを伝搬する光を効率的に光学媒体層11の方向へ向ける形状を有する。また、光学キャビティの界面での屈折によって迷光または漏れ光が生じないように設計されている。
【0065】
光学キャビティは、迷光または漏れ光を抑制できる限り、断面形状が矩形型の光学キャビティ141a、三角型の光学キャビティ141bなど、適切な形状に設計される。光学キャビティの具体的な形状については、
図22A~
図22Jを参照して、後述する。
【0066】
図2Bの構成では、低屈折率層13B,ライトガイド14B、及び低屈折率層15が光学機能層として、光学フィルタが形成される。この光学フィルタにより、光をライトガイド14Bの端部まで十分に導光させつつ、必要な量の光を光学媒体層11の方向に導き、光学媒体層11からの反射光をカバー17の外側に効率的に取り出すことができる。
【0067】
図2Cは、第1実施形態の別の光学デバイス10Cの断面模式図である。光学デバイス10Cは、
図1Aと同様の構成を有し、ライトガイド14の光取り出し側の面(積層方向で上面)にべた膜の低屈折率層15(全面を低屈折率材料で均一な面を形成する低屈折率層)を有し、ライトガイド14の底面に、光学的な開口パターンを有する低屈折率層13Cを有する。低屈折率層13C及び低屈折率層15は、光学機能層となる。
【0068】
低屈折率層13Cの開口パターンは、ライトガイド14の光伝搬方向にいくにつれて、開口率が大きくなるように形成されている。
【0069】
ライトガイド14のうち、光源21の近傍の領域では、光量が多く、開口率を小さくしても、十分な量の光を光学媒体層11に導くことができる。ライトガイド14中を伝搬するにつれて光量は減少するが、光源21の近傍と同程度の光を光学媒体層11に供給して光学媒体層11からの反射光の強度を均一にする。
【0070】
光学デバイス10A及び10Bと同様に、低屈折率層15によりライトガイド14の端部まで十分に光を行き渡らせるとともに、開口パターンによって効率的に光を光学媒体層11に入射させて反射光を取り出す。
図2Cの構成では、光学デバイス10Cからの光取り出しが効率的かつ均一になり、視認性がさらに向上する。
【0071】
図2A~
図2Cの構成の少なくとも一部を、相互に組み合わせてもよい。たとえば、
図2Bのライトガイド14Bに、
図2Aのエアキャビティ付きの光学層13、または
図2Cの開口付きの低屈折率層13Cを組み合わせてもよい。
【0072】
図2Dは、ライトガイド14の光取り出し側の面に低屈折率層15を設けることの効果を説明する図である。比較例として、ライトガイド14の光取り出し側の面に低屈折率層15を設けない構成を(b)に示す。
【0073】
図2Dの(b)のように、ライトガイド14の光取り出し側に低屈折率層15がない場合、カバー17の表面に指紋、汗、埃等の汚れが付着していると、光源21からライトガイド14に入射した光のうち、直接カバー17側に向かう光は、光学媒体層11に導かれずに散乱し、光損失が生じる。
【0074】
これに対し、
図2Dの(a)のように、ライトガイド14の光取り出し側に低屈折率層15を配置することで、光が光学媒体層11に入射せずに散乱することを防止することができる。さらに、低屈折率層15の内部全反射を利用して、光をライトガイド14の端部まで伝搬させながら、エアキャビティ134またはその他の低屈折部材によって光を光学媒体層11に入射させる。光学媒体層11からの反射光を効率的に取り出すことで、高いコントラストと視認性を実現できる。
【0075】
図2Eは、光学デバイス10A~10Cのサイネージ190への適用例を示す。標識、看板、ファサード照明、マーケティング照明、表示照明等で、二次元平面を効率的に照明するために、上述した開口パターンとエアキャビティの少なくとも一方を用いて、ライトガイド内を導光させて、十分な量の光を取り出す。
【0076】
公共、標識、マーケティング用ディスプレイ等は、ディスプレイやポスターのタイプに応じて、パッシブ型又はアクティブ型とし得る。一般的には、バックライトソリューションが利用されるが、近年は、フロントライトを利用すること、及び反射型ディスプレイを必要時にのみ照明することが、トレンドとなっている。
【0077】
図2Eの例では、サイネージ190は、片面又は両面に上述した光学デバイス10を適用することができる。サイネージ190を両面ソリューションとする場合は、両面タイプの光学デバイス10Dを用いてもよい。
【0078】
図2Fは、光学デバイス10Dの断面模式図である。光学デバイス10Dは、一対の光学デバイス10-1と10-2を、光学媒体層11の側で背中合わせに貼り合わせたものである。この例では
図2Cの光学デバイス10Cを貼り合わせているが、光学デバイス10Aまたは光学デバイス10Bを貼り合わせてもよい。十分に光を導光させ光学媒体層11から光を十分に取り出すことができるなら、両面で必ずしも同一構成の光学デバイス10を用いなくてもよい。
【0079】
光学デバイス10-1と10-2のそれぞれの端面に、光源21-1と光源21-2が配置され、端面からライトガイドに光が入射して、導光する。開口パターンまたはエアキャビティの光学機能によって、光は光学媒体層11に導かれて両面から出射する。
【0080】
広告スタンド、特に、ポスター等を差し替える場合に、光学デバイス10から光学媒体層11を取り外し可能に構成することが好ましい。これについては、
図29と
図30を参照して後述する。
【0081】
固体ディスプレイの場合、恒久的なラミネーションが適切である。好ましくは、剛性又は弾性を有する光学材料によって、ライトガイド14と光学媒体層11(ディスプレイ/標識/ポスター等)との間の光学コンタクトを確保してもよい。
【0082】
固定型でも取り替え可能型でも、迷光を最小化し、高いコントラスト比を保つために、照明される表面との(光学的)接触を確実にすることが重要である。
【0083】
ライトガイド14または14Bが照明以外の目的で使用されるときは、パッシブモードにあり、デバイス全体を通して視覚的に透明性が要求される。太陽光などの自然光の下では、反射ディスプレイは照明が不要であるが、フロントライト型のように、ディスプレイの最上層にライトガイドがある場合、十分な透明度を確保してディスプレイのビジュアル特性を低下させないようにする。
【0084】
アクティブモードでは、透明ライトガイドは、一方または両方の面から照明光が出射される。照明光の用途に応じて、ディスプレイ用の照明の場合は特に、視野角の範囲で適切な配光がなされ、迷光を最小にする。
(A)パッシブモード(照明以外の目的)のときのクリテリアは、a)曇りの最小化、及び散乱と色ずれの抑制、b)フレネル反射の最小化、c)光学パターン/造作の不可視化、及びd)パターン密度の変化の不可視化、である。
(B)アクティブモードのときのクリテリアは、a)パターンによる迷光、b)界面(外部反射)によるフレネル反射、c)パターン自体によるフレネル反射、及びd)散乱が抑制された光取り出しの質、である。
【0085】
実施形態の光学デバイスは、製品と用途に応じていずれのモードにも対応可能にする。特に、表面での光漏れと内部フレネル反射による迷光は、内部キャビティと反射防止の少なくとも一方によって対処可能である。
【0086】
図22A~
図22Jは、光学パターンの構成例を示す。光学パターンは、屈折率n1の媒質の中に、低屈折率n2の材料(n2<n1)で形成されるパターンである。屈折率n2の材料が空気のときは、エアキャビティとなる。
【0087】
図22Aでは、矢印の入射光は、光学パターンの界面で全反射(TIA)されて、光が外部に取り出される。
【0088】
図22Bでは、光は光学パターンを透過し、フレネル反射による迷光L
strayは、光学パターンの出射側の第2の面で反射され、入射側の第1の面で再度反射されて、光学パターンを透過する。
【0089】
図22Cでは、光は光学パターンを透過し、第2の面でのフレネル反射の方向制御により、迷光L
strayは最小化される。
【0090】
図22Dでは、光学パターンの第1の面にAR膜145が設けられている。光は光学パターンを透過し、第1の面に設けたAR膜145により、迷光L
strayは最小化される。
【0091】
図22Eでは、光は光学パターンの第2の面での屈折により、迷光L
strayとともに光学パターンを透過する。
【0092】
図22Fでは、光学パターンの第1の面への入射角を制限することで、迷光L
strayを最小にして光学パターンを透過する。
【0093】
図22Gでは、光学パターンは凸レンズ型の断面形状を周する。光は光学パターンの表面で全反射(TIR)されて外部に取出される。
【0094】
図22Hでは、光は光学パターンの第1の面から入射して第2の面を透過する。迷光L
strayは、第2の面と第1の面で反射され、その後第2の面を透過する。
【0095】
図22Iでは、光学パターンの第2の面にAR膜145が形成されている。光は、第1の面から入射し、第2の面を透過する。破線の矢印で示す迷光は、AR膜により最小化される。
【0096】
図22Jでは、光学パターンはライトガイド14に設けられている。光学パターンは、パターンが形成されたライトガイドに光学材料を貼り合わせることで(貼り合わせの界面I/Fは点線で示されている)形成される。界面I/FにAR膜を設けることで、光学パターンの底面にAR膜が設けられる。
【0097】
図23は、反射防止膜による迷光抑制効果を説明する図である。領域Aのように、片面照射の場合、ライトガイド14の光取り出し面にAR膜145を設ける。ライトガイド14を伝搬する光は、ライトガイド14よりも屈折率の低い光学キャビティ141により、光取り出し面の側に屈折される。
【0098】
領域Bでは、光学キャビティ141で屈折された光の一部は光取り出し面で反射され、迷光Lstrayとなってライトガイド14の反対側の面から出射する。両面照射の場合はAR膜145を設けずに、迷光Lstrayを利用してもよい。
【0099】
図24は、光学接着剤191による迷光抑制効果を説明する図である。タブレット端末のように、ディスプレイ110をバックライトで照らす場合、ライトガイド14とディスプレイユニット(ディスプレイ110と光学接着層19が一体化されている)の間に光学接着剤191を充填することで、迷光L
strayを抑制することができる(領域A)。領域Bのように、界面に空気層が存在すると、光学キャビティ141でディスプレイ110側に屈折された光の一部が空気層で反射され、迷光L
strayとなって外部に漏れ出る。界面に光学接着剤191を充填することで、迷光L
strayを抑制することができる。
【0100】
上述したいずれの光学手段(開口、エアキャビティ等の光学パターン、AR膜、光学接着剤など)も、迷光を抑制するように設計されている。特に、以下で述べる特徴のうちの2つ以上を組み合わせることで、最適なソリューションが得られる。
1)光学キャビティパターンを用いて、内部全反射(TIR)または屈折により、ほぼすべての光を光学デバイスの表面から取り出し(アウトカップリングし)、キャビティ内部へ散乱させないことで(
図22A、及び
図22G参照)、迷光とフレネル反射を最小にする。光源、もしくは少なくとも垂直方向への光インカップリングコリメーションにより、ライトガイドへの入射角を制限してもよい。
2)光学キャビティパターンの第1の面でほとんどの光を光取り出し面にアウトカップリングし、一部透過した光をキャビティの界面からキャビティ内部へリダイレクトして、第2の面に導くことで、漏れ光または迷光を抑制する(
図22E、
図22Fを参照)。この構成は、複合的なソリューションであり、パターンプロファイルの第1の面を、限られた入射角(漏れ光または迷光を回避できる臨界角)に設計する。入射角は光学コリメーション素子を用いて(角度が大きいときは光吸収層を用いて)制限可能である。
3)非対称の光学キャビティパターンを用いるときは、第1の面を光取り出し/アウトカップリング面とし、第2の面をアウトカップリングさせずに透過またはリダイレクトのための面とする。これにより、ライトガイドから好ましくないフレネル反射が直接外部にアウトカップリングすることを防止する。周期的なパターンが用いられる場合は、第2の面は、次のパターン面と協働して、光の方向付け、光取り出し/アウトカップリング性能等を向上する。
4)対象形の光学キャビティパターンを用いるときは、第1の面を光取り出し/アウトカップリング面とし、第2の面をアウトカップリングさせずに透過またはリダイレクトさせて、望ましくない方向へのフレネル反射を最小にする(
図22C参照)。
5)光学キャビティパターンを用いるときは、第1の面、及び/又は第2の面に、反射防止コーティングまたは反射防止構成を適用しる。フレネル反射を最小にするために、ARパターンまたは多層コーティング、または低屈折率コーティングを用いて広帯域ARを設けてもよい(
図22D、
図22I参照)。光学キャビティパターンとAR構造/コーティングで多機能ハイブリッド構成としてもよい。
6)光学キャビティパターンのプロファイルを形成するときは、フラットな表面をもつ第2の面に、ARコーティングまたはARパターンを設けてもよい。このような光学キャビティは、一方の表面にキャビティ形状を形成した第1のフィルムと、一方の面にARコーティングを施した第2のフィルムを貼り合わせることで形成できる。光学キャビティに貼り合わせの界面は存在せず、能動的なAR面が得られる。
7)片面照射でライトガイドに光学キャビティパターンを形成する場合、光取り出し面にAR層(ARコーティングまたはARパターン)を設けることで、望ましくないフレネル反射を最小にすることができる。両面光取り出しの場合、AR層はなくてもよい(
図23参照)。
8)一方の面が表示面への光取り出し面となるライトガイドに光学キャビティパターンを形成する場合、表示ユニットとの接触面に光学接着剤を注入して望ましくないフレネル反射を最小にする(
図24参照)。
9)光学パターンを形成せずに片面を光フィルタリング面とする場合、光学的な開口で光を通過させ、光学接合により表示面に所望の照明光を与える。光フィルタリング面は光透過面を有する低屈折率クラッドで実現されてもよい(
図1A、
図1B、
図2C参照)。
【0101】
透明ライトガイドと透明キャビティ光学系には多様な用途があり、光学パターン自体は用途、適用形態等に応じて適宜設計され最適化される。たとえば、光学機能層に設けられる少なくとも1つの光学パターンは、溝、凹部、ドット、ピクセル等から選択されるレリーフとして形成されてもよい。レリーフは、たとえば、局所的な(膜厚方向の)凹面または凸面を有するパターンであり、バイナリ、ブレーズ、傾斜、プリズム、台形、半球などの形状から選択されてもよい。あるいは、レリーフは、直線、曲線、波状、正弦波などの長い形状であってもよい。
【0102】
透明照明の場合、光学機能層のために色ずれと散乱の少ない高性能な光学材料を用いるのが望ましい。特に、ライトガイド、OCA(光学透明接着剤)、低屈折率層において、良好な光学材料を用いるのが望ましい。光学開口を持つ低屈折率層は、散乱と迷光が抑制されていることが望ましい。他の屈折率材料とともにラミネートされた積層内に物理的な開口があると光散乱、曇り、コントラスト比の低下の原因となるので、
図1A,
図1B、
図2Cのように、局所的な屈折率の変化による光学的開口を有する低屈折率層は一つの有効な構成である。光学開口を有する低屈折率層は、インクジェット印刷、反転オフセット印刷、レーザ、電子ビーム処理などにより形成され得る。
【0103】
図1A及び
図2A~
図2Cの構成は、フロントライトソリューションとして効果的である。ライトガイドの少なくとも光取り出し面に低屈折率層15が設けられ、光源21と反対側の端部まで導光させることができる。
図1Bのように、ライトガイド14の光取り出しめんが最上層となるフロントライトソリューションも有効であるが、最表面の汚れまたは欠陥による光漏れを防ぐために、好ましくは低屈折率値の硬質コーティングを堆積してもよい。
【0104】
光学機能層が光学パターンを有する場合、光学パターン密度は一定であってもよいし、
図2Cのようにパターン密度に勾配を持たせてもよい。光学パターンを有する光学機能層は、透明バックライト、フロントライト、照明パネル等の用途に応じて設計され得る。光取り出しのパターンとして、狭い範囲での光分布、広範囲の光分布、楕円形、対称、非対称などの光分布に設計することができる。光取り出し効率は、連続的な周期的プロファイル、またはピクセルなどの局所的プロファイルによって最大化できる。透明ソリューションの場合、曇り度及び迷光を最小化することで、光取り出し効率を最大にできる。連続的で効率的な3D光学パターンを設けてもよい。この場合、複数のアプリケーションに利用可能であり、マスター製作と製品コストが削減され、製品サイズを大型化できる。
【0105】
光学機能層に設けられる基本的な光学プロファイルとして、表面レリーフパターンまたはキャビティ光学パターンのいずれを用いてもよい。キャビティ光学パターンの場合、光学キャビティ内に気体、流体または固体材料、好ましくは空気を充填して、光学面に内部全反射効果を与えてもよい。光学パターンに、回折または屈折光学系に基づいて、バイナリ、傾斜、ブレーズ、プリズム、マイクロレンズなどの異なるプロファイルを与えることができる。
【0106】
ライトガイドは、塗布層、基材上のフィルム、導光体等を用いて形成される。パターンのない基材のフラットな表面に、光フィルタリング開口を有する光分配/取り出しフィルムを適用してもよい。機能性フィルムを用いることで、PMMA、ガラス等のように異なる材料を用いて、ライトガイドを薄くも厚くも設計できる。すべての光学機能が、「オールインワン」フィルム上に一体化されてもよい。主要な光学機能として、フィルタ開口による均一性の制御、光学キャビティパターンで決まる光分布でのアウトカップリングである。これら2つの主要機能は、2つの異なるフェーズとして個別に実現されてもよい。ディフューザなどの追加の機能層を組み込んでもしてもよい。
【0107】
低屈折率層による光学フィルタを基材の表面に直接適用して開口を形成し、光学フィルタの上に、光取り出し用の光学パターンを有する機能性フィルムを適用してもよい。この構成は、積層または組み立ての工程数を減らすことができる。光学フィルタと機能性フィルムの積層構造は、ライトガイドの片面または両面に適用することができる。
【0108】
光の分配と取り出しは、少なくとも1つの光学パターン層、表面レリーフ、キャビティパターン等といったフィルムのコンセプトに基づいている。複数の光学パターンを適用して単一のフィルムを形成することができ、その中に少なくとも1つのキャビティ光学層が一体化されていてもよい。エアキャビティなどのキャビティ光学素子を利用することによって、複数の層を互いに接合することができる。凹凸パターン等の表面レリーフを用いない場合は、フィルムは完全に一体化され、界面同士が接着され得る。一体化された光フィルタクラッディングを、光学パターンを有する単一のフィルム内に集積してもよい。
【0109】
光学パターンは、様々な形態で光学機能層に形成され得る。例えば、層内に埋め込まれたエアキャビティオプティクス(層内に光学的空洞を有する光学機能層)でもよいし、透明ラミネート層、反射ラミネート層、着色ラミネート層等との界面に配置される光学体とキャビティの交互パターンとして形成されてもよい。
【0110】
開口を用いずに、
図2Bのように、内部に光屈折/取り出し用の光学パターン(例えばエアキャビティ)を有するライトガイド14Bを光フィルタとしてもよい。ライトガイド14Bの両面に均一な低屈折率材料の連続膜が設けられる。光学パターンはライトガイド14Bの内部に一体化されている。光学パターンとして、マイクロレンズ、ブレーズ、傾斜、離散パターン、ピクセルパター等を周期的あるいは回折格子状に配置してもよい。両面に均一な低屈折率層が形成されたライトガイドを、光学透明接着剤(OCA)で他の層と接着してもよい。OCAは、低屈折率層よりも高い屈折率を有し、好ましくはライトガイドと同じ屈折率を有する。
【0111】
光学機能パターンが母体層に埋め込まれたキャビティとして形成される場合、母体と機能性キャビティが交互に配置される。この場合、光学機能は光学機能キャビティの寸法、形状、周期、断面配置の少なくとも1つによって設定される。上述のように、キャビティは空気で満たされていてもよいし、他の気体、流体、液体または固体で充填してもよい。
【0112】
実施形態のライトガイドを、ワイヤグリッド偏光子等の一般的な偏光子と組み合わせてもよい。偏光子は、光学機能層の平坦面上に直接接着または積層することができる。光学機能層に設けられた光学パターンがワイヤグリッド偏光子と機能的に協働するように構成されている場合、輝度を高めることができる。
【0113】
実施形態の光学デバイスは、上述のとおり、サイネージ、看板、ファサード、マーケティングおよび表示灯等に適用され得る。この用途の場合、開口あるいはキャビティパターンの有無にかかわらず、低屈折率層を利用して、全領域、離散的な領域、任意の二次元形状等を照らすことができる。一例として、カップリングパターンの有無にかかわらず、カラーフィルムまたはフィギュアフィルムに開口層を一体化して、積層膜とすることができる。この積層膜を所望の形状に切断して、導光シート上にラミネートすることで、
図2A~
図2Cの構成が得られる。光学機能層とライトガイドを含む積層体は、ポスター、ディスプレイ等の光学媒体層11に対して、固定(永久)的、または取り外し可能に接着することができる。
【0114】
図2Aのように、光学媒体層11との接触面に凸状の光学パターンを有するときは、弾性を有する透明な光学材料で光学パターンを形成してもよい。特に、取り外し可能に光学媒体層11と接着されるときは、弾性パターンであるのが好ましい。光学媒体層11が交換可能なポスター等の場合、光学パターンは、複数回の取り外しと再接着に耐え得るだけの耐久性と信頼性を有する弾性材料で形成されるのが望ましい。
【0115】
第1実施形態では、ライトガイド14の光取り出し側の表面に、開口のない均一な低屈折率膜15を設け、ライトガイド14の光取り出し面と反対側の面に、光学パターンを有する光学機能層13を配置する。光学パターンは、ライトガイド14からの入射光を負の角度にアウトカップリングし、光学媒体層11からの反射光を正の角度にアウトカップリングするように設計されてもよい。光学パターンは、臨界角よりも小さい角度で光が入射するように設計されている。これにより、低屈折率層15で全反射された光をライトガイド14の端部まで分配しながら、光を底部リフレクタとなる光学媒体層11の方向に効率的に導いて(カップリングして)、効率的に光を取り出す(アウトカップリングする)ことができる。
【0116】
<第2実施形態>
図3Aは、第2実施形態で解決すべき課題を説明する図、
図3Bと
図3Cは、第2実施形態の光学デバイスの断面模式図である。構成例を示す図である。
【0117】
ライトガイド14の少なくとも一方の面に低屈折率層が設けられている場合でも、光源21の近傍では、破線の矢印で示すように、臨界角未満の入射角で低屈折率層23また15に入射する光線(破線で示す)が存在する。臨界角に達せずに全反射されない光線は、開口パターン等の光学機能によっては制御されず、そのまま低屈折率層23または15を透過して光損失となる。
【0118】
また、LED等の光源21に対して正しくアラインされていない場合も、出射光のすべてをライトガイド14に結合させることができず、光学接着層16または19、あるいはその他の層の内部に不要な光を透過させる。界面に対して臨界角未満の角度で入射する光を回避すべきである。
【0119】
図3Bは、上記の光漏れを解決する光学デバイス30Aの構成例を示す。光学デバイス30Aは、ライトガイド14を有し、ライトガイド14の両面に、光学機能層としての低屈折率層15及び23が設けられている。
【0120】
光学デバイス30は、その光源21側の端部領域に、光吸収層31及び光吸収層32を有する。光吸収層31及び32は、例えば、ブラックテープ等の光吸収性の薄い層である。光吸収層31及び32は、光源21側の端部領域の表面に直接接着されてもよいし、化学的表面処理によって接着されてもよい。
【0121】
図3Bのライトガイド14の光取り出し側で例示するように、端部の最表面に光学接着層18等の別の層がある場合、その別の層(光学接着層18)の表面にテープ等の層形態で光吸収層31を設けてもよい。または、ライトガイド14の底面側で例示するように、低屈折率層23等の光学機能層が光吸収機能を有して一体化されていてもよい。
【0122】
低屈折率層15及び23への入射光が全反射の臨界角よりも小さい入射角を有するときに(破線の矢印で示す)、低屈折率層15及び23によって制御されない光は、光吸収層31及び32によって吸収される。
【0123】
図3Cは、光損失防止の別の構成例である。光学デバイス30Bは、光吸収層31及び32に替えて、リダイレクト層33及び34を用いる。リダイレクト層33及び34として、例えば、光指向性のフィルム又はテープを利用することができる。リダイレクト層33及び34は、光源21から出力された光の入射角を、臨界角を超えて全反射条件を満たすように変化させて、光をライトガイド14の内部に保つ。
【0124】
図3Cのライトガイド14の光取り出し側で例示するように、端部の最表面に光学接着層18等の別の層がある場合、その別の層(光学接着層18)の表面にテープ等の層形態でリダイレクト層33を設けてもよい。または、ライトガイド14の底面側で例示するように、低屈折率層23等の光学機能層がリダイレクト機能を有して一体化されていてもよい。
【0125】
リダイレクト層33及び34は、埋め込み型の開口またはキャビティ光学素子で実現されてもよく、それぞれ低屈折率層15及び23と協働して光に指向性を与える。埋め込み型の開口またはキャビティ光学素子を有するリダイレクト層は、たとえば開口またはキャビティのパターンが形成された透明な第1フィルムに、第2フィルムをラミネートすることで作製可能である。第2フィルムは、透明でも非透明でもよく、ランバート反射、鏡面反射、異なる二色間(白黒など)の反射特性を有していてもよい。
【0126】
導光方向への光源21のアライメントずれは、上部(光取り出し側)の光学接着層18がライトガイド14の端部まで覆っていない場合は、それほど問題にならない。光学接着層18は、ライトガイド14のエッジからいくらか離れて設けられてもよく、リダイレクト層33でライトガイド14内への光の伝搬をサポートする。通常は、低屈折率層15及び23は非常に薄く、ライトガイド14での光の結合と伝播に、曇り、カラーシフト等の問題を生じさせずに、ほぼすべての光線は高屈折率側(ライトガイド側)に反射される。
【0127】
第2実施形態の構成で、光源21側の端部での光損失を抑制し、ライトガイドの反対側の端部まで導光させつつ、光取り出し面から十分な量の光を取り出すことができる。
【0128】
<第3実施形態>
図17Aは、第3実施形態で解決すべき課題を説明する図、
図17B及び
図17Cは、課題を解決するための構成例を示す。
【0129】
図17Aにおいて、光源21により、対応するライトガイド1001の光入射側の端面に光を入射するときに、入射側端面に何も処理が施されていないと、入射光が光の線となって視認されてしまう。通常は、入射端面にギザギザを形成するなどの加工が施されているが、光の方向性を十分に制御できず、好ましくない方向への散乱、アライメントずれ等により、輝度が低下する。そこで、光源21とライトガイド1001の入射端面の間に、反射シート1003を有するリフレクタ1002を配置して、光をライトガイド1001の端面にコリメートすることが考えられる。
【0130】
しかし、部品数が増え、組み立てコストと時間がかかる。低コストで組み立てが容易、かつライトガイドへのインカップリング効率が高い新しい構成が望まれる。
【0131】
図17Bは、一つの解決策を示す。光学デバイス40Aは、ライトガイド174の入射側の端面175に設けられるインカップリング光学系170を有する。
図17Bは、ライトガイド174の導光方向をy、厚さ方向をz、幅方向をxとしたときのxy面内の形状を示している。
【0132】
インカップリング光学系170は、半球形、プリズム型、ロッド型等の形状を有する光学素子171、及び光学素子171とライトガイド174の端面175との間に形成されるエアキャビティ173を含む。光学素子171は、光源21から出射された光を効率的にライトガイド174の端面175に向けて出力する。エアキャビティ173は、光学素子171から出力されて光を、ライトガイド174の端面175に効率良く入力するインカップリング素子として機能する。光学素子171とエアキャビティ173によって、光源21からの光をコリメートし、かつ効率的にライトガイド174の端面175に結合させる。
【0133】
図17Bの例では、光源21と同じ数の光学素子171が横方向(x方向)に配列されたインカップリング光学系170が、光学接着層176によってライトガイド174の端面175(導光層174の一様な平面となっている入射エッジ面175)に接着されている。複数の凸状の光学素子171の頂点は、一様な平面となっているライトガイド174のエッジまたは反面175に接触して配置される。これらの凸状の光学素子171は、その頂点が、一様な平面となっているライトガイド174の端面175に接触する形で端面175とアライメントして、エアキャビティ173のパターン(光学キャビティパターン)を形成している。各光学素子171とエアキャビティ173は光源21から出力された光を、対応するライトガイド領域に結合させる。
【0134】
好ましい構成例として、図示はしないが、複数の光学素子171が一列に配置された光学シートを用いてもよい。光学素子171の形状は半球形に限定されず、エアキャビティ173が形成され得る限り、レンティキュラ型、ロッド型等であってもよい。光学シートにおいて、各光学素子171の底面に、あらかじめLED等の光源21が固定されていてもよい。光学シートは、押出し成形、打ち抜き、成形インサート等により、低コストで簡単に作ることができる。この構成によると、光学シートをライトガイド174の平坦な端面175に貼りつけるだけで、光源21と対応するライトガイド領域の端面175が、セルフアラインされる。
【0135】
光学シートを貼り付けた後は、光学素子171とエアキャビティ173の界面で光が屈折して、ライトガイド174の端面175に効率的に光結合する。光源21からの出射光のほぼすべてが利用される。
【0136】
図17Cは、他の構成例の光学デバイス40Bを示す。光学デバイス40Bでは、光学接着層176を用いる替わりに、インカップリング光学系170とライトガイド174を一体的に形成する。一体型の光学デバイス40Bは、モールディング、ダイカット法等によって、容易に作製できる。
【0137】
図17Bと
図17Cにおいて、光学素子171は、たとえば、横方向(x軸方向)に±10°の角度で光をコリメートする平坦なボールレンズとして成形されてもよい。この構成は、LEDストリップのように複数の光源21を使用する場合に適している。光学素子171を含む光学系の設計は、ライトガイド174の内部でx方向(横方向)の光分布の均一性を70%以上にして、「点光源」の影響を正規化するように最適化されている。
【0138】
図17Bと
図17Cにおいて、複数の光源21は、光学素子171の非凸部側(光学素子の凸部と反対側)の連続的な平面に配置されている。光学素子171の凸部と反対側の平面側に光源21を配置することで、複数の凸部に対応した複数の光源のアライメントが容易である。
【0139】
図17Dは、横方向にコリメートされている第3実施形態のライトガイド174の内部の光強度分布を示す。
図17Dのモデルでは、コリメート機能を持つインカップリング光学系170と、リニアブレーズの型グレーティング35の組み合わせにより、入射端面(図の底面)で均一な光分布が得られている。グレーティング35は、突起をライトガイド側に向けて配置されている。インカップリング光学系170により横方向の光束が正規化されているので、ライトガイドでのグレーティング35の充填率の最適化が容易になっている。このモデルの縦方向の輝度分布のFWHMは30°、横方向の輝度分布のFWHMは50°である。よくコリメートされていることが示されている。
【0140】
図17Eは、比較例1の強度分布を示す。比較例1は、
図17Dと同じ光源21、同じサイズのライトガイド174を用い、インカップリング光学系170を用いない構成である。アウトカップリングには、
図17Dと同様に、リニアブレーズ型のグレーティング36を用いるが、突起が光源21側に向けて配置されている。ライトガイドの入射端に光源からの多数の光縞が観察され、ライトガイド底部での光分布の均一性が良くない。縦方向の輝度分布のFWHMは30°であるが、横方向へのコリメートが不十分で、横方向の輝度分布のFWHMは82°と広い。
【0141】
図17Fは、比較例2の強度分布を示す。比較例2では、
図17Dと同じ光源21、同じサイズのライトガイド174を用い、湾曲形状のクレーティング37を用いる。インカップリング光学系170は設けられていない。ライトガイドの底面での光分布はほぼ均一である。縦方向の輝度分布のFWHMは29°であるが、横方向へのコリメートが不十分で、横方向の輝度分布のFWHMは78°と広い。
【0142】
図17Gは、
図17D~
図17Fのモデルと従来モデルを比較する表である。従来モデルは、輝度強化フィルム(Brightness Enhancement Film)付きのマイクロレンズ型バックライトユニット(BLU)である。比較例1は、
図17Eのリニアグレーティング構成のエアキャビティ型BLUである。比較例2は、
図17Fの湾曲グレーティン構成のエアキャビティ型BLUである。比較例1と比較例2では、インカップリング光学系170が用いられていない。実施形態の構成は、
図17Dのモデルに基づき、インカップリング光学系170と、リニアグレーティング構成を用い、かつ、クレーティングの突起をライトガイド側に向けている。
【0143】
比較のパラメータは、輝度(ルミナンス)、従来構成の輝度を100%としたときの相対値、FWHM、入射端面(底面)の強度分布の均一性、インカップリングの有無である。
【0144】
実施形態のモデルは、インカップリング光学系とリニアグレーティングを用いて、従来のライトガイド構成と比較して、90%を超える効率向上が達成されている。底面の強度分布の均一性、輝度分布などの他のすべての性能も向上している。上記の性能パラメータの全ては調整可能であり、最終的なターゲット値を最適化することができる。たとえば、インカップリング光学系をアウトカップリング光学系とともに最適化することで、光分布角を狭くも広くもできる。
【0145】
インカップリング光学系170によって横方向にコリメートされた光の場合、リニア構造のグレーティング35を、アウトカップリングパターンとして利用することができる。リニアグレーティング35のマスターおよび製造ツールは、ドラム切断法や、その他の直接ツール法によって製造できるため、全構造の製造とマスターの作製が安価かつ容易になる。
【0146】
薄膜の場合、インカップリング光学系170のエアキャビティ173または光学素子171は、ダイ切断法、特に加熱ブレード法等により作製可能である。インカップリング光学系170の形状は、ライトガイドを大型のベースフィルムから切り取るのと同じプロセスで形成され、プロセスが安価かつ容易になる。インカップリング光学系170の光学素子171またはエアキャビティ173を拡散反射、鏡面反射等のリフレクタフィルム、またはリダイレクトフィルムで覆って、全光を利用する構成にしてもよい。インカップリング光学系170のキャビティの両面にリフレクタフィルムを設けてもよい。この場合、リフレクタフィルムをライトガイドの表面に透明な低屈折率接着剤で直接接着してもよい。ライトガイドの表面に低屈折率値の透明コーティングがなされている場合は、そのような表面層にリフレクタを接着してもよい。
【0147】
厚いシートの場合、レーザ切断により、フラットボールレンズ型のキャビティを形成することができる。あるいは、
図17Bの(b)に示したように、ライトガイドのエッジに接触点を有する光学素子171を有する光学シート178またはストリップを用いてもよい。光学シート178と透明な光学接着剤で、比較的厚い(たとえば1~5mm)ライトガイドのエッジにラミネートすることができる。これは簡単な方法であり、ライトガイドの厚さが厚さので、アライメントが容易である。この場合も、エアキャビティ173または光学キャビティを片面または両面でリフレクタ、ディフューザ、リダイレクトフィルム等で覆って、効率を最大化してもよい。
【0148】
垂直方向のコリメーションの場合、ライトガイドの一体化に、ラウンドエッジ又はボールレンズを利用することができる。インカップリング光学系170は、
図17Cのように一体化されていてもよい。なお、インカップリング光学系170でのエアキャビティ173または光学素子171の形状は、上記の例示に限定されず、光源21からの光をライトガイド174の入射側エッジに効率的に結合できる任意の形状に設計される。
【0149】
この構成により、ライトガイドへの光入射効率と輝度を高め、強度分布を均一にすることができる。
【0150】
図17Hは、第3実施形態のインカップリング光学系170を用いたときの横方向の輝度の均一性を示す図である。インカップリング光学系170と3つのLEDを用いたモデルでシミュレーションしている。上述のように、インカップリング光学系170は横方向へのコリメート機能を有し、ライトガイド内での横方向での輝度分布の均一性が80%に達している。最終的な所望の照明性能、特に光源側のエッジ近傍で均一な照度を達成するために、横方向への輝度または光束は、ライトガイドのアウトカップリング設計を考えるうえで重要な要素である。第3実施形態の構成により、横方向への均一な輝度分布が実現される。
【0151】
図17Iは、ライトガイドの入射端にインカップリングキャビティを組み込んだ構成例を示す。構成(a)は、表面レリーフパターンを有する一般的なライトガイド構成に、インカップリング光学系170として、一体化されたインカップリングキャビティを組み込んだ例である。この場合、LEDからの光がインカップリングキャビティによって効率的にライトガイドに結合されたとしても、レリーフパターンの斜面に臨界角未満の角度で入射する光によって光が屈折し、ライトガイドの反対側の端面まで十分に導光することができない。
【0152】
構成(b)は、
図2Bのような埋め込み型のキャビティ172を有するライトガイド174bに、インカップリングキャビティを組み込んだだ例である。この構成では、ライトガイドの底面に向かう光は全反射条件を満たし、ライトガイド174bの反対側まで十分に伝搬するとともに、キャビティ172によって、光取り出し側に反射される。
【0153】
構成(c)は、パターンのないライトガイド174の光取り出し側に、開口を有する低屈折率層13が設けられ、低屈折率層13の上に、埋め込みキャビティ179を有するパターン層177が配置されている。この構成では、インカップリング光学系170によって効率的にライトガイド174に結合した光は、ライトガイド174の底面と、低屈折率層13の間を全反射しながら伝搬し、かつ、開口を透過した光が、埋め込みキャビティ179によって光取り出し側に屈折される。これにより、均一な輝度分布で、光取り出し効率を向上することができる。
<その他の実施形態>
以下で述べる実施形態は、基本概念(
図1A、及び
図1B)、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態のいずれにも適用可能である。また、基本概念、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態は、互いに組み合わせ可能である。
【0154】
実施形態の光学パターン(光学開口、エアキャビティ等を含む)は、多様な方法によって製造される。たとえば、レーザパターニング、ダイレクトレーザイメージング、レーザドリル、マスクによる、またはマスクレスのレーザ又は電子ビーム照射が用いられる。印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等によって個別の特性を付与して、光学材料や屈折率値を変更してもよい。マイクロ/ナノディスペンス、ドージング、ダイレクト「書込み」、離散的レーザ焼結、マイクロ放電加工(マイクロEDM)、マイクロマシニング、マイクロ成形、インプリンティング、エンボス加工、及びこれらに類するものによっても製造できる。低屈折率層又は内部全反射(TIR)層を直接貼り合わせる直接コンタクト法で光学開口の形成を完了してもよい。
【0155】
開口の形成は、例えばレーザアブレーションにより、キャリア基板、ライトガイド等の媒体を介して処理するなど、間接的コンタクトで完了してもよい。アブレーションによってクラッドが除去されることで、直接コンタクトと同じように、所望のサイズ、形状の開口が形成される。好ましくは、レーザビームスポットプロファイルは、平坦なシルクハットのように整形される。このスポットプロファイルは過剰な熱を生成せず、キャリア基板やライトガイドを損傷しない。レーザ波長は、クラッド吸収カーブ、ホールエッジ品質、ビーム整形光学系、厚さ/高さ、処理コスト、またはこれらに類する観点から、適宜選定される。
【0156】
図4及び
図5は、開口281の作製にレーザ140を利用する例を示す。
図4で、ロール・ツー・ロール法により、低屈折率コーティング28が形成された基材41が、ロールR1からロールR2に巻き取られる。このとき、低屈折率コーティング28は、レーザ140によって1m~20m/分の速さでアブレート/除去され、約5~20μmのサイズの開口281が連続して形成される。基材41は、光学プラスチックまたは光学ガラスのフィルムであり、シート法にも適用可能である。開口281が形成された後に、ロールR3によってOCA42が供給され、基材41、開口281付きの低屈折率コーティング28、及びOCA42の積層が形成される。この手法は、連続式又はストップ・アンド・リピート式のロール・ツー・ロール法又はロール・ツー・シート法として実行され得る。また、フィルム・バイ・シート法又はシート・バイ・シート法を用いて、不連続のフィルムも製造可能である。
図5のように、複数の走査ヘッドを使用することで、1.5mまでの幅を持つ幅広のウェブを製造することができる。
【0157】
図5は、複数のスキャナ/レーザ241~243を有するマルチヘッド240を用いた開口形成を示す。この例では、1.0m~1.5mのライン幅を実現することができる。ライトガイドでの均一な光分布のために、基材41上の低屈折率コーティング28に開口281が形成される。徐々に変化する開口、または一定の開口を形成することで、あらゆる種類のサイズに対して均一なライトガイド設計を可能にする。したがって、製品ごとにカスタマイズした3D製造プロセスが不要になる。開口281の形成の終了後に、積層体フィルムを特定サイズのシートに切断することができる。
【0158】
図6Aと
図6Bは、レーザアブレーションにより形成された開口の画像である。
図6Aでは、シルクハット型プロファイルのレーザビームが用いられ、
図6Bでは、ガウシアン型プロファイルのレーザビームが用いられている。
【0159】
大型のライトガイドは非常に高価であり、成形により表面全体にパターン形成することが難しく、大量生産が困難である。上述した各実施形態の光学デバイスは、フィルムラミネーションを基本としており、様々なサイズで、特に、大型のライトガイドを生産するためのフレキシブルでコスト効率の良い構成である。実施形態の構成とコンセプトは、ロール・ツー・ロール法、ロール・ツー・シート法、又はシート・ツー・シート法による大量生産への適用を可能にする。最終的な生産速度は、選択された製造方法に依存するが、0.5m~30m/分の間で、適宜設定することができる。また、連続式、又はストップ・アンド・リピート式のいずれにも適用可能である。光学デバイスの製造は薄膜プロセスに基づく。ライトガイドとなる薄膜に形成された膜に開口が形成される。あるいは、薄膜が光学パターンを持たないソリッドなライトガイドを形成するように、ライトガイド上に開口光学パターン膜を直接ラミネート又は接合してもよい。後者のタイプは、生産をフレキシブルかつコスト効率的なものとする。基礎となるクラッドフィルム又はコーティングフィルムを大量に生産してロールの状態で保管できる。その後に、反復的及び連続的な方法で開口を製造して、最終的に、再度ロールにて保管してもよいし、シートに切断することもできる。
【0160】
上述の光学デバイスに好適な光源は、単一又は複数のLED(発光ダイオード)、1つ以上のレーザダイオード、1つ以上のLEDバー、1つ以上の有機LEDストリップ、1つ以上のマイクロチップLEDストリップ、1つ以上の冷陰極管、及びこれらに類するものとして構成され得る。透明ライトガイドソリューションの場合、光源による光分布の制御が重要である。典型的に、LED光はガウシアン分布を持つ。低屈折率クラッドの場合、ライトガイド内で全反射が起きる臨界角をスネルの法則によって規定する。界面への入射角が臨界角よりも大きい光は、低屈折率クラッドに形成された開口の寸法及び形状によりその屈折の方向が制御される。臨界角よりも小さい入射角の光については、第2実施形態で説明したように、低屈折率クラッドを透過することを防止する対策が必要である。
図3B及び
図3Cを参照して説明したように、LED側のエッジ近傍で、ライトガイドのクラッドの上に、望ましくない入射範囲の光を吸収する例えばテープ(特に、黒色テープ)などの薄いアブソーバを配置するのが望ましい。アブソーバに替えて、光学パターンテープなど、開口パターンを有する光屈折層を用いて、望ましくない入射範囲内の光を、臨界角よりも大きい角度が得られる方向へリダイレクトし、さらにリダイレクトした光を有用な光入射範囲に戻す構成としてもよい。
【0161】
図3B及び
図3Cで例示されるように、低屈折率膜がライトガイドの両面に設けられている場合は、両面でアブソーバまたはリダイレクト法により臨界角未満の光入射に対処しなければならない。
【0162】
さらに、上述した第3実施形態のように、インカップリング光学系を用いて、光入射を高臨界角と低臨界角の間に制限してもよい。これにより、光源から放射された全ての光を効率的に利用できる。インカップリング光学系は、ライトガイドと一体形成されていてもよいし(
図17C)、ライトガイドとは別個の素子として形成された後にライトガイドに接着されてもよい(
図17B)。後者の構成として、光源の放射開口の直径に等しい直径を持つ光学ロッドを用いることができる。プラスチック又はガラスのロッドが、2次元での光コリメーションを提供し得る。同様の光制御が、ボールレンズ、バレルレンズ、半球型またはプリズム型のレンズ等によるエッジプロファイルによって達成され得る。
【0163】
一体化された開口を持つライトガイドは、独立したエレメントとして使用することができる。あるいは、片面又は両面で基板にラミネートされてもよい。フロントライトエレメントの場合、一般に両面でラミネートされる。バックライトコンセプトでは、ラミネートされた2つ以上のライトガイドを用いる。バックライト型でもフロントライト型でも、開口を有する複数の層が各層又は各媒体内の光を制御する。
【0164】
光学的に透明なクラッド、コーティング又はフィルムの場合、実施形態のライトガイド構成は、フロントライト、バックライト、窓やファサードの照明、サイネージ及び信号のライティング、ソーラーアプリケーション、装飾照明、ライトシールド、マスキング、屋ルーフライティングなどの公共または一般の照明などに利用される。
【0165】
他の実施形態において、光分配エレメント/ライトガイドエレメントは、少なくとも光アウトカップリング機能を持つ、少なくとも1つの光学機能パターンを有する光学機能層を備える。ライトガイドは、光学フィルタ開口と、例えばアウトカップリングパターンなどの光学パターンを備えて実装される。このようなライトガイドは、インカップリングされた光の伝搬のための基本媒体と、均一性が制御された開口の光学フィルタソリューションと、光アウトカップリング及びその分布制御のための光学パターン層とを有していてもよい。光学パターン層は、光学プロファイルを持つ薄い媒体であり、その機能性は、媒体内で臨界角以上(≧θC)となる入射角に基づく。光学パターンは、好ましくは均一であり、一定の密度で形成されてもよいし、全領域または離散的に形成されてもよい。光学パターンは、所望の照明又は信号表示の目的で、配置密度が変化するように設計されてもよい。光学パターン層は、光学フィルタ及び開口に応じて、ライトガイドのアウトカップリング面の片面又は両面に適用され得る。光学パターン層は、典型的には、全体又は部分的な表面領域で平坦面上に設けられる。また、光学パターン層が複数の層を含んで、各層が拡散、光カップリング、偏光(ワイヤグリッド)、信号表示などの異なる光学機能を形成してもよい。
【0166】
光学パターンを持つ光学機能層は、アプリケーション固有の設計がなされてもよい。たとえば、不透明バックライト、高充填率(一般には一定の充填率)と最大カップリング効率を持つ照明及びインジケータパネル、より低い充填率と最適化された効率を持つ透明なバックライト、フロントライト及び照明パネル等である。光分布は、狭分布、広分布、楕円形、対称、非対称等、様々に設計され得る。最大効率は、連続的な周期的プロファイルによって達成され得る。透明ソリューションでは、透明さ、曇り、及び迷光に関して、最大充填率を最適化することができる。複数の用途に利用可能な、連続的で効率的な3次元の光学パターンを備えることは、大きな利益である。そのような3次元光学パターンは、マスター製作コストと製品コストを低減し、大型サイズの素子を生産することを可能にする。
【0167】
2方向への光制御のために、ハイブリッドパターンを用いてもよい。この場合、光分布/ライトガイド素子に、複数の離散的または連続的なプロファイルを有するハイブリッドパターンとして構成される光学機能パターンが設けられる。
【0168】
ハイブリッドパターンは、2方向配光制御のための3次元光学形状をもち、多様な照明目的に適用可能である。ハイブリッドパターンは、離散的なピクセル、プロファイル、連続的または部分的に連続的なプロファイルに基づく。パターンプロファイルは、少なくとも部分的にリニアな配置、カーブもしくは正弦波状の配置、ジグザグ配置、ランダムまたは準ランダムな配置、などによって形成される。高さの変化を含め、異なるプロファイルの組み合わせてもよい。パターン壁の角度プロファイルは、領域全体で一定角度、あるいは角度変化を持つ対称又は非対称な角度で形成される。正弦波の配向を有するハイブリッドパターンは、パターン壁の最適化された角度及び周期、振幅及び周波数によって、x-y軸の光分布に影響を及ぼす。
【0169】
パターンプロファイルは様々に設計され、例えば縦方向の光分布制御のために異なるブレーズプロファイル角度にするなど、様々な形状やプロファイルを有することができる。パターンプロファイルは、異なる目的及び狙いに合わせて最適化され、故に、複合パターンは、数多くの異なるパターンバリエーションに基づくことができる。
【0170】
フィルムとして実現されるハイブリッドソリューションは、リニアパターンが通常生じさせる光ストレークを回避することによって、均一性能を向上させる。また、非リニアパターンソリューションによって、モアレ効果も回避することができる。また、高い充填率により、ライトガイド上の光学的な欠陥を覆うことができる。
【0171】
単一フィルムでのハイブリッドパターンは、従来の2枚の輝度強化プリズムフィルム、さらには2枚のラミネートされたプリズムシートに置き換わることができる。ここで提供されるハイブリッドフィルムは、ラミネーションのための平坦な表面をトップ面と底面に有しながら、エアキャビティパターンを有していてもよい。
【0172】
ハイブリッドパターンフィルムの機能は、典型的に、媒体の臨界角よりも大きい入射光角度での全反射に基づく。これは、媒体の臨界角よりも小さい入射光でアウトカップリングされた光に基づく従来のプリズムシートとは異なる。
【0173】
ハイブリッドパターンは、リソグラフィ法、微細加工、又はこれらの組み合わせを含む多様な方法によって製造される。マスターツールは、典型的には、大量生産用のロール・ツー・ロール生産で使用されるドラムツールである。
【0174】
光学機能層に設けられる少なくとも1つの光学パターンは、溝、リセス、ドット、ピクセル等から選択される凹凸によって形成されてもよい。これらの凹凸は、矩形波、ブレーズド回折格子、傾斜、プリズム、台形、半球、及びこれらに類するものから選択される断面凹凸プロファイルを有する。長さ方向の形状としては、直線、曲線、波状、正弦波、及びこれらに類するものから選択される。
【0175】
図7は、光分布フィルタ(Light Directing(Distributing) Filter;LDF)を用いたライトガイドスタック(A)と、開口131を有する低屈折率層(B)と、光学キャビティ141のパターン(C)を示す。ライトガイドスタック(A)では、ライトガイド14に光学キャビティ141が形成されている。ライトガイド14の光取り出し面に低屈折率層15が設けられ、反対側の面に、開口パターンを有する低屈折率層13Cが設けられている。これはハイブリッド構成の一例である。
【0176】
図8Aは、光分布フィルタを用いたライトガイド構造の構成例を示す図である。
図8Aの(a)は、内部にエアキャビティ83が形成されたハイブリッドプリズムを用いたときの強度分布を示し、
図8Aの(b)は、表面パターンを有するハイブリッドプリズムを用いたときの強度分布である。
【0177】
構成(a)では、パターンが形成されていないライトガイド14の裏面にリフレクタ81が設けられている。ライトガイド14の光取り出し側には、分布密度に勾配を有する低屈折率88と、均一なエアキャビティパターンを有するハイブリッドプリズムフィルム85と、ディフューザ82が、この順で積層されている。ハイブリッドプリズムフィルム85の内部に形成されたエアキャビティ83によってX-Y面内の光分布が制御される。
【0178】
構成(b)では、パターンが形成されていないライトガイド14の裏面にリフレクタ81が設けられている。ライトガイド14の光取り出し側には、分布密度に勾配を有する低屈折率88と、均一なパターンのハイブリッドプリズムフィルム86と、ディフューザ82がこの順で積層されている。ハイブリッドプリズムフィルム86のパターンは、X-Y面内の光分布を制御する。
【0179】
図8Bは、光分布フィルタを用いたライトガイド構造の構成例を示す図である。
図8Bの(a)は、内部にエアキャビティを有するハイブリッドプリズムを最上層に用いたときの強度分布を示し、
図8Aの(b)は、表面にパターンを有するハイブリッドプリズムを最上層に用いたときの強度分布である。
【0180】
構成(a)では、ライトガイドの底面側に光学機能層13Aとリフレクタ81が設けられ、上面に光学機能層15、ディフューザ82、キャビティ付きのハイブリッドプリズムフィルム85がこの順で設けられている。光学機能層13Aは、第1実施形態で説明したように、図面の下側に凸の光学素子によって形成されるエアキャビティを有する。ハイブリッドプリズムフィルム85の内部に形成されたエアキャビティ83によって、X-Y面内の光分布が制御される。
【0181】
構成(b)では、ライトガイドの底面側に光学機能層13Aとリフレクタ81が設けられ、上面に光学機能層15、ディフューザ82、表面パターンを有するハイブリッドプリズムフィルム86がこの順で設けられている。光学機能層13Aは、第1実施形態で説明したように、図面の下側に凸の光学素子によって形成されるエアキャビティを有する。ハイブリッドプリズムフィルム86の表面に形成された光学パターンによって、X-Y面内の光分布が制御される。
【0182】
図9Aは、2方向の光制御のためのハイブリッドパターン90Aを示す。ハイブリッドパターン90Aは、個々のハイブリッドパターンピクセル91Aが連続的につながったハイブリッドパターンプロファイルを有する。
【0183】
図9Bは、2方向の光制御のためのハイブリッドパターン90Bを示す。ハイブリッドパターン90Bは、連続ハイブリッドパターンフィルムで形成され、個々のハイブリッドパターン91Bのグレーティングは、
図9Aよりも密である。
【0184】
図10は、2方向光制御のための光学パターンの別の例を示す。
図10の(A)は、ハイブリッドパターン90の3D形状の一般式を示す。
図10の(B)は、ハイブリッドパターン90の断面プロファイルである。
図10の(C)は、ハイブリッドパターン90の断面形状と寸法を示す。
図10の(D)は、ハイブリッドパターン90の周期を示す側面図である。
【0185】
図11は、ライトガイドにおけるパターンの例として、ハイブリッドパターンとリニアパターンを示す。リニアパターン(B)では光の筋が観察されるが、ハイブリッドパターン(A)では光の筋は観察されない。
【0186】
図12は、光分布フィルタフィルムのシミュレーション結果を示す。いずれも、2方向の光制御のためのハイブリッドパターンのコンセプト内で、20個のLEDとディフューザを用いた小型のPMMAライトガイドと、低屈折率開口を有するバックライトモデルを用いている。ただし、異なるプリズムを用いるて、エアキャビティパターンプロファイルを変えている。
【0187】
図13は、指センサまたは指紋センサ用の信号ライトガイドのコンセプトを示す図である。上述した光学パターンを持たないLDF構成は、センサ用の単一のライトガイドとして用いることができる。指、指紋等からのセンサ信号を処理する際に、狭い信号分布角度を実現することができる。信号分布角度は、屈折率値の異なる低屈折率層の組み合わせによってトップガラス上でチューニング可能である。たとえば、ライトガイドの上部クラッドの屈折率(Ri:1.18)と下部クラッドの屈折率(Ri:1.25)を異ならせることで、干渉縞などの模様がライトガイド上で視認または観察されない。光散乱が抑制され、コントラストが高く維持される
図14は、信号ライトガイドの構成例を示す。屈折率(Ri)が1.18から1.25の範囲で組み合わされているが、この例に限定されず、他の組み合わせも可能である。この構成は、シングルLED構成にもマルチLED構成にも適用可能である。厚いガラスプレート(G)を用いた場合でも、多方向クロストークは低い。ガラスの屈折率を1.51としたときに、全LED光のうち2.7%だけがトップガラスに入り込む。
【0188】
図15Aと
図15Bは、9点での指紋シミュレーション結果を示す。
図15Aで、一般に、ライトガイドからの光取り出しにより、光パワーは、ライトガイドパスに沿って徐々に減少する。
図15Bのように、多方向クロストークがない場合、ゴースト像は形成されず、鮮明で空間的に正確な信号を取得できる。
【0189】
図16は、異なる指紋とLEDを用いた別のセットアップでのシミュレーション結果を示す。
図16の(A)は、3つのLEDを用い、中心から離れたコーナーに指紋がついたモデルで計算している。信号の強さは20Nits以下である。ビームがわずかにスキューしている。
【0190】
図16の(B)は、3つのLEDを用い、サイドエッジに指紋がついたモデルで計算している。信号の強さは40Nits以下である。非常にわずかではあるが、ゴーストが観察される。これは光線トレースの影響とも考えられる。
【0191】
図16の(C)は、1つのLEDを用い、中心に指紋がついたモデルで計算している。信号の強さは30Nits以下である。鮮明な信号が観察される。
【0192】
図15と同様に、
図16でも、多方向クロストークがなく、実質的なゴースト像は形成されていない。
【0193】
指その他のアイテムで反射されずにセンサ又はディスプレイ上に入射する光がほぼゼロ(0)%となるように、信号の指向性が正確に制御される。信号分布を狭くすることで、厚いガラスプレートであっても多方向クロストークは小さい。また、ゴーストの発生は最小限である。信号源は、単一のLED、複数のLED、又はレーザコンポーネントを用いてもよい。
【0194】
光学パターンの場合、必要に応じて、信号を2方向(X-Y)にコリメートすることができる。必要に応じて90%を超える均一性を達成することができる。
【0195】
上述の信号ライトガイドは、500mm~1000mのサイズに設計可能であり、一般にロール・ツー・ロールの生産ラインでサイズ調整される。この場合、均一で連続した構造体を、それぞれ必要なサイズに切断することができる。
【0196】
<マスターの製作>
光学マスターの製作は、特に大きいサイズでは、コストが高く難しい。高度なライトガイド光学系のマスター及びルールの製作は、そのサイズの大小を問わず極めて難しく、費用がかかる。
【0197】
そこで、本発明は、ダイアモンド切断又はリソグラフィ法によって大型のマスターロールを製造し、ロール・ツー・ロール法によって基本パターンフィルムを大量生産することを提案する。基本パターンフィルムは、パターン上にレジストを塗布し、マスクリソグラフィ露光と現像により作製することができる。形成された開口内に電気めっきで金属膜を形成することで、マスクパターンが複製される。たとえばニッケルシムを、光学フィルム及びシートを製造するツールとして使用することができる。
【0198】
図18A~
図18Eは、マスター製作プロセスの一例を示す。
図8Aで、ダイアモンドシャイパによるカッティングで表面パターンが形状されたサブマスター189を用い、インプリント法によりベースプラスチック基板181にパターンを転写する。サブマスター189の幅は1m以上のサイズに大型化可能である。
【0199】
図8Bで、転写パターン182を有するベースプラスチック基板181にフォトレジスト185を塗布する。
図8Cで、マスクを介した露光または直接露光を行い、現像することで、フォトレジスト185の所望の箇所が除去されて、部分的に転写パターン182が露出する。
【0200】
図8Dで、たとえばニッケルめっきを行い、ベースプラスチック基板181を取り外すことで、
図8Eのように、ライトガイド複製用のニッケルスタンパ180が得られる。このニッケルスタンパ180は、一例として、周期的なブレーズプロファイルのためのランダムなドットパターンを有している。
【0201】
図19は、実施形態の構造体のウィンドウ照明への適用例を示す。窓200に、光学機能層202を含む積層体201Aを貼り付ける(ラミネートする)することで、太陽光、照明光を入射側と反対側(たとえば室内)に効果的に取り込むことができる。積層体201Aは、エアキャビティ203Aを有する光学機能層202と、透明な光学接着層204を有する。光学機能層202は、ポリマー、ガラスフィルム等で形成可能である。光学機能層202を、光学接着層204で窓200のいずれかの面に貼ることで、光の取り込み量を増大することができる。
【0202】
図20は、異なるパターンのエアキャビティ203Bを有する光学機能層202を含む積層体201Bを示す。このようなキャビティパターンも有効に使用できる。
【0203】
図21Aは、
図19の光学機能層202の作製方法を示す。
図21は、接着剤フリーのラミネーション法である。パターンのない第1フィルム211と、表面に所望のパターン214が形成された第2フィルムと212を、接着剤フリーで(たとえばマイクロ波表面処理により)貼り合わせる。第1フィルム211と第2フィルムは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)などで形成される。貼り合わせにより、エアキャビティ213が形成される。
【0204】
図21Bは、
図19の光学機能層201Aの別の作製方法を示す。
図22では2つのフィルムを接着層216で接着する。接着層の厚さは1~3μm程度である。第2フィルム212と接着層216により、エアキャビティ213が形成される。貼り合わせの際に、プレキュアされた接着剤がキャビティパターン内に入らないようにする。
【0205】
貼り合わせ法は、エアギャビティの形状に影響しないどのような方法を用いてもよい。たとえば、ラミネート表面に、VUV光(真空紫外線)源又はAPP(大気プラズマ)による前処理を施し、その後、一定圧力の下でラミネートすることで、化学的な結合が得られる。この方法は、良好な機械的強度を達成できる。
【0206】
図25は、光学キャビティ141aが形成された実施形態のライトガイド14を用いることによる迷光抑制効果を示す図である。モデルとして、マイクロレンズ型の光学キャビティ141aを内部に有するライトガイド14を含む第1部分251と、マイクロレンズ型の光学キャビティ141bを内部に有するライトガイド14を含む第2部分252を用いる。光学キャビティ141aと光学キャビティ141bの凸部は、同じ光取り出し方向(紙面の上側)を向いている。光学キャビティ141aと光学キャビティ141bの底面側が、迷光を逃がす側である。
【0207】
第1部分251の底面に、光学接着剤253で低屈折率の光吸収層254を接着し、第2部分252の上面に、光学接着剤253で低屈折率の光吸収層254を接着する。光球種層254同士を向い合せて、第1部分251の上面からの光取り出し強度と、第2部分252の底面からの迷光の強度を計算する。
【0208】
迷光の強度に対する取り出し光の強度(Iext/Istray)の比をコントラストとすると、コントラスト比は44と非常に高い。
【0209】
図26は、比較例として、表面にパターンが形成された従来のライトガイド340を用いたときのコントラスト比のシミュレーション結果である。
図25と同様に、それぞれの部分に光学接着剤253で低屈折率の光吸収層254が接着されているが、光吸収層254を最外層として、2つの光吸収層254の間に目的光と迷光が出射する。
【0210】
この構成でコントラスト比は3であり、
図25の構成と比較して視認性が非常に悪い。実施形態で、内部にエアキャビティが形成されたライトガイドを用いることで、コントラストまたは視認性を大きく向上できることがわかる。
【0211】
図27と
図28は、反射防止膜付きのウィンドウ照明のコンセプトを示す。いずれの図でも、光取り出し面に、AR膜145が設けられている。
図27では、ポリマーで形成されたライトガイド271の光取り出し面にAR膜145が設けられ、反対側の面に、光学接着層272によって光学機能層273が設けられている。光学機能層273は、光源21から出力され、ライトガイド271のエッジから入射する光を、効率的にAR膜145の方向へリダイレクトする。迷光はAR膜で抑制され、一方、目的の光は矢印の方向に十分に取り出される。光学機能層273が持つ光学パターンは、コンスタントなパターンであってもよいし、密度または占有率に勾配を有するパターンであってもよい。
【0212】
図28では、
図27のライトガイド271の光取り出し面側に、ガラスのカバー17が積層され、カバー17の表面にAR膜145が設けられている。この構成でも、光学機能層273がライトガイド271への入射光を、効率的にAR膜145の方向にリダイレクトする。
図27と
図28のいずれの構成も、両面照明に拡張可能である。
【0213】
図29と
図30は、着脱可能な光学デバイスの構成例を示す。
図29では、
図27の構成の積層体を、剥離可能な光学接着層276で、ディスプレイ等の光学媒体層11に取り外し可能に接着する。ライトガイド271と光学接着層276の間に、低屈折率層275が挿入される。
【0214】
図30では、
図28の構成の積層体を、剥離可能な剥離可能な光学接着層276で、ディスプレイ等の光学媒体層11に取り外し可能に接着する。
図29と
図30の構成は、ポスター、広告等、交換が想定されている表示物の表示に最適である。
【0215】
以上、特定の構成例に基づいて実施形態を説明してきたが、多様な変形例、適用例が可能である。埋め込み型キャビティを有するライトガイドを用いた透明ソリューションは、サイネージ、透明な携帯電端末またはタブレット、透明なVRディスプレイ、マーケティングウィンドウなど、さまざまなアプリケーションがある。
【0216】
実施形態の光学デバイスで、第1の表面で光を取り出し/アウトカップリングし、第2の表面は、アウトカップリングなしに光を伝搬または指向させて、望ましくないフレネル反射または迷光をライトガイドから漏らさない。光学機能層に周期的パターンが使用される場合、子の光学機能層と第2の表面は、互いに協働して光のリダイレクトと取り出し(アウトカップリング)を改善する。
【0217】
あるいは、第1つの表面から光を取り出し/アウトカップリングし、第2の表面は、アウトカップリングなしに光を伝搬または指向させ、望ましくない方向へのフレネル反射を最小にする。
【0218】
第1の表面と第2の表面の少なくとも一方に、フレネル反射を最小化するために、ARパターン、多層コーティング、低屈折率コーティングによる広帯域反射防止効果を有するARコーティング、又は反射防止構造が設けられてもよい。
【0219】
光学パターンのプロファイルまたはパターン形状は、矩形波、ブレーズド回折格子、傾斜、マイクロレンズ、台形など、適切に設計される。光学パターンをエアキャビティとする場合に、エアキャビティの界面にARコーティング、ARパターン等を設けてもよい。エアキャビティを2つのフィルムのラミネーションで形成する場合は、パターンのない方のフィルムにあらかじめARコーティング又はARパターンを形成しておいてもよい。
【0220】
光学パターンのサイズは、人間の眼で視認されない程度に小さい(たとえば積層方向へのサイズが20μm以下)ことが望ましい。これよりも大きいサイズにするときは、ARコーティング又はARパターンと併用して、視認されないようにしてもよい。
【0221】
この出願は、2018年3月22日に米国特許商標庁に出願された米国仮出願第62/646461号の全内容を含むものである。
【符号の説明】
【0222】
10、10A~10D、30A、30B、40A、40B、100A、100B 光学デバイス
11 光学媒体層
13、23 低屈折率層(第2光学機能層)
131、132 開口
13A 光学層(第2光学機能層)
133、135 光学突起
134 エアキャビティ
14、174、274 ライトガイド
141 光学キャビティ
15 低屈折率層(第1光学機能層)
21 光源
31、32 光吸収層
33、34 リダイレクト層
170 インカップリング光学系
171 光学素子
173 エアキャビティ