(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】熱履歴の影響を受けにくいアルカリ含有ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/083 20060101AFI20231117BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20231117BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C03C3/083
C03C21/00 101
G09F9/00 304A
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2020526453
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(86)【国際出願番号】 US2018061490
(87)【国際公開番号】W WO2019099807
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,アレクサンドラ ライ チン カオ アンドリューズ
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10351885(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/207244(WO,A1)
【文献】特開2010-116276(JP,A)
【文献】特開2008-1590(JP,A)
【文献】国際公開第2008/044694(WO,A1)
【文献】特表2013-502370(JP,A)
【文献】特開2006-290704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
69.0モル%以上のSiO
2と、
7.0モル%以上のAl
2O
3と、
14.0モル%以上のR
2Oと、
0.5モル%以上のLi
2
Oと、
6.5モル%以上のNa
2
Oと、
|0.020|以下の第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値と
を含むガラス組成物であって、
前記第一の端点が、アニール点温度の仮想温度でのヤング率であり、前記第二の端点が、歪点温度の仮想温度でのヤング率であり、
前記傾きが、仮想温度の変化1℃あたりのヤング率(GPa)の変化であり、
R
2Oが、アルカリ金属酸化物の総数であり、少なくともK
2O
、Na
2O
、およびLi
2
Oを含み、K
2O/Na
2Oの比が1.0以上3.0以下である、
ガラス組成物。
【請求項2】
前記傾きの前記絶対値が|0.015|以下である、請求項1記載のガラス組成物。
【請求項3】
SiO
2+Al
2O
3が80.0モル%超である、請求項1または2記載のガラス組成物。
【請求項4】
Na
2O/Li
2Oの比が1.0以上である、請求項1から3までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【請求項5】
K
2O/Li
2Oの比が1.0以上であ
る、
請求項1から4までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【請求項6】
前記K
2O/Li
2Oの比が5.0以上である、請求項5記載のガラス組成物。
【請求項7】
70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO
2と、
8.0モル%以上12.0モル%以下のAl
2O
3と
を含み、
R
2Oが16.0モル%以上である、
請求項1から4までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【請求項8】
第一の表面と、
第二の表面と、
前記第一の表面と前記第二の表面との間に位置する中央領域と、
前記第一の表面および前記第二の表面のうちの少なくとも1つからガラス物品の前記中央領域へと延在する圧縮応力層と
を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載のガラス組成物から成形されたガラス物品。
【請求項9】
前面、背面および側面を含むハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内にある電気部品であって、少なくとも1個のコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面にあるかまたはそれに隣接している、電気部品と、
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基材と
を含む消費者用電子製品であって、
前記ハウジングまたは前記カバー基材の少なくとも一部が、請求項8記載のガラス物品を含む、消費者用電子製品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/587,863号の優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に依拠され、組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、通常、電子デバイスのカバーガラスとしての使用に適したガラス組成物に関する。より具体的には、本明細書は、熱履歴の影響を受けにくく、かつ電子デバイス用のカバーガラスに成形可能なアルカリ含有ガラスを対象とする。
【背景技術】
【0003】
ポータブル電子デバイス、例えば、スマートフォン、タブレットおよびウェアラブルデバイス(例えば、時計およびフィットネストラッカー)は、より小型化および複雑化し続けている。したがって、そのようなポータブル電子デバイスの少なくとも1つの外部の表面で従来的に使用されるディスプレイガラスも、より複雑化している。例えば、消費者の需要を満たすべくポータブル電子デバイスがより小型化および薄型化すると、これらのポータブル電子デバイスにおいて使用されるディスプレイガラスも、より小型化および薄型化し、その結果、ディスプレイガラスの寸法および品質のばらつきに対する許容誤差がより小さくなる。同様に、例えば、強度、密度および弾性などのディスプレイガラスの特性のばらつきに対する許容誤差も、ポータブル電子デバイスのサイズとともに減少する。残念なことに、ディスプレイガラスとして使用されるガラスの寸法および特性は、ガラスが冷却および仕上げされると変化することがあり、これにより、冷却または仕上げの前のポータブル電子デバイスの仕様は満たすものの、冷却または仕上げ後のポータブル電子デバイスの仕様は満たさないガラスが生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、ガラスの熱履歴にかかわらずそれらの寸法および特性を維持するガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の実施形態によると、ガラス組成物は、69.0モル%以上のSiO2と、7.0モル%以上のAl2O3と、14.0モル%以上のR2Oと、|0.020|以下の第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値とを含む。第一の端点は、アニール点温度の仮想温度でのヤング率であり、第二の端点は、歪点温度の仮想温度でのヤング率であり、傾きは、仮想温度の変化1℃あたりのヤング率(GPa)の変化である。R2Oは、アルカリ金属酸化物の総数であり、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含む。
【0006】
第二の実施形態によると、ガラス物品は、第一の表面と、第二の表面と、第一の表面と第二の表面との間に位置する中央領域と、第一の表面および第二の表面のうちの少なくとも1つからガラス物品の中央領域へと延在する圧縮応力層とを含む。ガラス物品は、69.0モル%以上のSiO2と、7.0モル%以上のAl2O3と、14.0モル%以上のR2Oと、|0.020|以下の第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値とを含むガラス組成物から成形される。第一の端点は、アニール点温度の仮想温度でのヤング率であり、第二の端点は、歪点温度の仮想温度でのヤング率であり、傾きは、仮想温度の変化1℃あたりのヤング率(GPa)の変化である。R2Oは、アルカリ金属酸化物の総数であり、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含む。
【0007】
第三の実施形態によると、消費者用電子製品は、前面、背面および側面を含むハウジングと、少なくとも部分的にハウジング内にある電気部品であって、少なくとも1個のコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、ディスプレイがハウジングの前面にあるかまたはそれに隣接している、電気部品と、ディスプレイ上に配置されたカバー基材とを含む。ハウジングまたはカバー基材の少なくとも一部は、第一の表面と、第二の表面と、第一の表面と第二の表面との間に位置する中央領域と、第一の表面および第二の表面のうちの少なくとも1つからガラス物品の中央領域へと延在する圧縮応力層とを含む。ガラス物品は、69.0モル%以上のSiO2と、7.0モル%以上のAl2O3と、14.0モル%以上のR2Oと、|0.020|以下の第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値とを含むガラス組成物から成形される。第一の端点は、アニール点温度の仮想温度でのヤング率であり、第二の端点は、歪点温度の仮想温度でのヤング率であり、傾きは、仮想温度の変化1℃あたりのヤング率(GPa)の変化である。R2Oは、アルカリ金属酸化物の総数であり、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含む。
【0008】
さらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、明細書から当業者に容易に明らかとなるか、または以下の詳細な説明を含む本明細書に記載の実施形態、クレーム、および添付の図面を実践することにより認識されるであろう。
【0009】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明のどちらも、様々な実施形態について説明しており、特許請求される対象の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していると理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解をもたらすために含まれており、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を図示しており、その説明とともに、特許請求される対象の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に開示および記載されている実施形態による、圧縮応力層をその表面に有するガラスの断面を概略的に示す。
【
図2A】本明細書に開示されているいずれかのガラス物品を組み込む例示的な電子デバイスの平面図である。
【
図3】本明細書に開示および記載されている実施形態による比較例および実施例の仮想温度に対するヤング率の傾きをグラフで示す。
【
図4】本明細書に開示および記載されている実施形態によるソーダ石灰ケイ酸塩、非アルカリ含有ガラスおよびアルカリ含有ガラスの仮想温度に対するヤング率の傾きをグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これにより、様々な実施形態に記載のアルカリ含有ガラスを詳細に参照する。特に、アルカリ含有アルミノケイ酸塩ガラスは良好なイオン交換性を有しており、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスにおいて高強度および高靭性特性を達成するために、化学強化プロセスが使用されてきた。よって、物理特性、化学的耐久性およびイオン交換性が良好なアルカリ含有アルミノケイ酸塩ガラスは、ディスプレイ用のカバーガラスとしての使用について注目されてきた。
【0012】
しかしながら、ガラスの様々な特性は、ガラスを製造するために使用される製造法に応じて変化し得る。例えば、研究開発の間に少量で作製されたガラスの特性は、生産規模で作製された同じガラスの特性よりも著しくばらつきが出ることがある。同様に、生産規模で使用される製造法であっても大きくばらつきが出ることがあり、これにより、類似した組成を有するガラスの特性は、ガラスの製造に使用される製造法に応じてばらつきが出る可能性がある。特定の理論に縛られるものではないが、ガラスが経る冷却速度(ガラスの最終的な特性および構造に影響を与え得る)は、製造法に応じて、るつぼ溶融物から研究規模のメルター、生産規模のタンクにわたり異なると考えられる。このため、イオン交換スケジュールを設計し、生産規模のガラスの特性を理論的に決定すべく、ガラスが生産中に受ける熱履歴の再現をより小さな程度とするための多大な労力が必要とされる。しかしながら、本明細書に開示および記載されている実施形態による熱履歴の影響を受けにくいガラスにより、異なる製造プラットフォームにわたりそれらの特性が維持され、成形や、例えばイオン交換などの他の後処理が、熱履歴を受けやすいガラスに比べて、より単純かつより予測可能なものになる。
【0013】
ガラスの構造および特性は、ガラスの冷却速度に応じて変化しやすいだけでなく、高温後処理ステップ、例えば、ディスプレイガラス上での薄膜トランジスタの堆積によっても影響を受けることがある。高温プロセスを受けるガラスが少量圧縮されると、後処理の結果に影響が与えられることがある。ディスプレイガラスの場合、電子回路パターンおよびガラス基材が不一致になることがあり、プロセスの調整および修正を行う必要があるが、これは困難であり得るため、問題は完全には解決されないであろう。よって、それが、初期ガラス成形中に特性を維持することであっても、または後処理中に特性の変化をなくすことであっても、熱履歴の影響を受けにくい構造および特性を有するガラスに対する必要性が実証されている。本明細書に開示および記載されている熱履歴の影響を受けにくいアルカリ含有ガラスにより、そのような安定な構造および特性を有するガラスがもたらされる。
【0014】
これより、先に開示されているアルカリ含有ガラス組成物の物理特性について論じる。これらの物理特性は、実施例を参照してより詳細に論じられるように、アルカリ含有ガラス組成物の成分量を変更することにより達成することが可能である。
【0015】
仮想温度は、ガラスの構造および特性の特徴を示すパラメータである。溶融物からの冷却速度は、仮想温度に影響を与える。冷却速度が速いほど、仮想温度が高い。多くのガラスの場合、特性、例えば、ヤング率、せん断弾性係数、屈折率、および密度は、仮想温度が上がるほど、減少する。仮想温度によるこれらの特性の変化率は、ガラス組成に応じる。ガラスの仮想温度は、ガラス転移範囲内の所定の温度にガラスを保つことにより設定することが可能である。仮想温度を再設定するのに必要な最短時間は、30×((熱処理温度でのガラスの粘度)/せん断弾性係数)で概算される。新しい仮想温度への完全な緩和を確実にするために、ガラスは時折、30×((熱処理温度でのガラスの粘度)/せん断弾性係数)をはるかに上回って保たれてもよい。
【0016】
仮想温度が低下すると、特定のガラス(例えば、ソーダ石灰ケイ酸塩)は、密度、硬度、弾性率および屈折率の増加を示す。これらのガラスの場合、ガラスの構造は、高速冷却(高い仮想温度)した際は、開放構造(open structure)の溶融物に類似しているが、低速冷却(低い仮想温度)した際は、固体に近いより稠密な構造に圧縮される。他のタイプのガラス(例えば、SiO2のガラス)は、反対の特性の傾向を示し、密度、硬度、弾性率および屈折率は、仮想温度の低下に応じて低下する。これらの様々なタイプのガラスにより示される反対の傾向は、熱履歴の影響を受けにくい(本明細書では「仮想温度に依存しない」とも称される)特性を有するガラス組成物を定義するために使用される。
【0017】
仮想温度に依存しないガラスは、従来の技術を使用して溶融させることが可能であり、熱履歴に応じて変化しない(またはほとんど変化しない)特性を有する。熱的に安定した特性を有するガラスは、高温に曝されても収縮しないため、高温の後処理を必要とするあらゆる製品にとって価値がある。
【0018】
実施形態によると、ガラスのその熱履歴に対する感度は、アニール点温度(本明細書では「第一の端点」と称される)に設定された仮想温度を有するガラスのヤング率と、歪点温度(本明細書では「第二の端点」と称される)に設定された仮想温度を有するガラスのヤング率とを比較することにより測定され得る。その熱履歴に対する感度がより低いガラスは、第一の端点でのヤング率が、第二の端点でのヤング率に類似していると理解されるべきである。なぜなら、これは、ヤング率がガラスの熱履歴により著しい影響を受けないことを示すからである。したがって、ガラス組成物のその熱履歴に対する感度は、第一の端点と第二の端点との間の線の傾きにより決定することが可能である。そのような実施形態において、傾きは、仮想温度の変化1℃あたりのヤング率(GPa)の変化と定義することが可能である。特に、そのような線の傾きが0.0に近づくほど、ガラスは、その熱履歴に対して感度が低くなる。この関数は絶対値であり、第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きが正であるか負であるかは関係ない。例えば、ガラスのヤング率が、第一の端点および第二の端点で測定され、第一の端点と第二の端点との間に延在する線が、0.02の傾きを有する場合、ガラスのその熱履歴に対する感度は、線が第一の端点と第二の端点との間に延在し、かつ-0.02の傾きを有するガラスの感度とおよそ同じであるだろう。したがって、実施形態において、ガラスの傾きは絶対値であると考えられる。
【0019】
ヤング率は、ガラスのその熱履歴に対する感度を決定するために、第一の端点および第二の端点として使用される。なぜなら、ヤング率は、例えばヤング率を測定するための以下に記載される方法を使用することにより、良好な精度で測定可能であるためである。実施形態において、第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値は、|0.020|以下、例えば、|0.019|以下、|0.018|以下、|0.017|以下、|0.016|以下、|0.015|以下、|0.014|以下、|0.013|以下、|0.012|以下、|0.011|以下、|0.010|以下、|0.009|以下、|0.008|以下、|0.007|以下、|0.006|以下、|0.005|以下、|0.004|以下、|0.003|以下、|0.002|以下、または|0.001|以下である。上記の値それぞれについて、第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値は、|0.000|以上であると理解されるべきである。特定の理論に縛られるものではないが、第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値が|0.020|以下であるガラスが特に有用であると考えられる。なぜなら、そのようなガラスの体積は、ガラスを製造するために使用される製造法および条件にかかわらず変化しないからである。また、特定の理論に縛られるものではないが、多量のシリカと、おそらく他の四面体単位と、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物とを含むガラスは、それらの熱履歴に対して影響を受けにくく、したがって、第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値が|0.020|以下である可能性がより高いと考えられる。これらの要件を満たすガラス組成物は、以下に記載される。本明細書で使用されているように、傾きの数値の範囲が、縦棒により絶対値であると示されている場合、この範囲は、傾きの絶対値を指す。例えば、傾きが「|0.020|以下」と示されている場合、この表現は、-0.020~0.020の範囲の傾きが含まれるような傾きの絶対値を指す。
【0020】
実施形態によるガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、2.20g/cm3以上2.60g/cm3以下、例えば、2.25g/cm3以上2.60g/cm3以下、または2.30g/cm3以上2.60g/cm3以下、2.35g/cm3以上2.60g/cm3以下、2.40g/cm3以上2.60g/cm3以下、または2.45g/cm3以上2.60g/cm3以下の密度を有し得る。他の実施形態において、ガラス組成物は、2.20g/cm3以上2.45g/cm3以下、2.20g/cm3以上2.40g/cm3以下、2.20g/cm3以上2.35g/cm3以下、2.20g/cm3以上2.30g/cm3以下、または2.20g/cm3以上2.25g/cm3以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の密度を有し得る。本開示に挙げられる密度の値は、ASTM C693-93(2013)の浮力法により測定される値を指す。
【0021】
実施形態によるガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、65×10-7/℃以上105×10-7/℃以下、例えば、70×10-7/℃以上100×10-7/℃以下、75×10-7/℃以上95×10-7/℃以下、または80×10-7/℃以上90×10-7/℃以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の熱膨張係数(CTE)を有し得る。CTEは、0℃~300℃の温度範囲にわたり測定し、ppm/℃で表し、ASTM E228-11に準拠してプッシュロッド膨張計を使用して測定した。
【0022】
実施形態によるガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、60.0GPa以上80.0GPa以下、例えば、62.0GPa以上78.0GPa以下、64.0GPa以上76.0GPa以下、66.0GPa以上74.0GPa以下、または68.0GPa以上72.0GPa以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲のヤング率を有し得る。本開示に挙げられるヤング率の値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」という表題のASTM E2001-13に記載の一般的なタイプの共鳴超音波分光法により測定される値を指す。
【0023】
1つ以上の実施形態によると、ガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、0.185以上0.220以下、例えば、0.190以上0.215以下、0.195以上0.210以下、または0.200以上0.205以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲のポアソン比を有し得る。本開示に挙げられるポアソン比の値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」という表題のASTM E2001-13に記載の一般的なタイプの共鳴超音波分光法により測定される値を指す。
【0024】
実施形態において、ガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、27.0GPa以上33.0GPa以下、例えば、27.5GPa以上32.5GPa以下、28.0GPa以上32.0GPa以下、28.5GPa以上31.5GPa以下、29.0GPa以上31.0GPa以下、または29.5GPa以上30.5GPa以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲のせん断弾性係数を有し得る。本開示に挙げられたせん断弾性係数の値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」という表題のASTM E2001-13に記載の一般的なタイプの共鳴超音波分光法により測定される値を指す。
【0025】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、440℃以上535℃以下、例えば、445℃以上530℃以下、450℃以上525℃以下、455℃以上520℃以下、460℃以上515℃以下、465℃以上510℃以下、470℃以上505℃以下、475℃以上500℃以下、480℃以上495℃以下、または485℃以上490℃以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の歪点を有し得る。歪点は、ASTM C598-93(2013)のビーム曲げ粘度法を使用して決定した。
【0026】
実施形態において、ガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、480℃以上590℃以下、例えば、485℃以上585℃以下、490℃以上580℃以下、495℃以上575℃以下、500℃以上570℃以下、505℃以上565℃以下、510℃以上560℃以下、515℃以上555℃以下、520℃以上550℃以下、525℃以上545℃以下、または530℃以上540℃以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲のアニール点を有し得る。アニール点は、ASTM C598-93(2013)のビーム曲げ粘度法を使用して決定した。
【0027】
実施形態によると、ガラス組成物は、仮想温度にかかわらず、700℃以上870℃以下、例えば、705℃以上865℃以下、710℃以上860℃以下、715℃以上855℃以下、720℃以上850℃以下、725℃以上845℃以下、730℃以上840℃以下、735℃以上835℃以下、740℃以上830℃以下、745℃以上825℃以下、750℃以上820℃以下、755℃以上815℃以下、760℃以上810℃以下、765℃以上805℃以下、770℃以上800℃以下、775℃以上795℃以下、または780℃以上790℃以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の軟化点を有し得る。軟化点は、ASTM C1351M-96(2012)の平行板粘度法を使用して決定した。
【0028】
これより、熱履歴の影響を受けにくいアルカリ含有ガラス組成物について説明する。本明細書に記載のガラス組成物の実施形態において、構成成分(例えば、SiO2、Al2O3、Li2O、Na2Oなど)の濃度は、特に記載のない限り、酸化物を基準としてモルパーセント(モル%)で示される。実施形態による熱履歴の影響を受けにくいアルカリ含有ガラス組成物の成分については、以下に個別に論じる。1つの成分の様々に記載された範囲は、他の成分について様々に記載された範囲のいずれかと個別に組み合わせることが可能であると理解されるべきである。
【0029】
本明細書に開示されている熱履歴の影響を受けにくいアルカリ含有ガラス組成物の実施形態において、SiO2は、最大の構成要素であり、したがって、SiO2は、ガラス組成物から形成されるガラス網目構造の主要な構成要素である。純粋なSiO2は、比較的低いCTEを有し、アルカリを含まない。しかしながら、純粋なSiO2は、高い融点を有する。よって、ガラス組成物におけるSiO2の濃度が高過ぎる場合、より高い濃度のSiO2によってガラスの溶融がより難しくなり、これによりガラスの成形性に不利な影響が与えられるため、ガラス組成物の成形性が低下することがある。実施形態において、ガラス組成物は、通常、SiO2を、69.0モル%以上、例えば、70.0モル%以上、71.0モル%以上、72.0モル%以上、73.0モル%以上、74.0モル%以上、75.0モル%以上、76.0モル%以上、77.0モル%以上、78.0モル%以上、79.0モル%以上、または80.0モル%以上の量で含む。実施形態において、ガラス組成物は、SiO2を、82.0モル%以下、81.0モル%以下、80.0モル%以下、79.0モル%以下、78.0モル%以下、77.0モル%以下、76.0モル%以下、75.0モル%以下、74.0モル%以下、73.0モル%以下、72.0モル%以下、71.0モル%以下、または70.0モル%以下の量で含む。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、他の実施形態において、ガラス組成物は、SiO2を、69.0モル%以上82.0モル%以下、70.0モル%以上81.0モル%以下、71.0モル%以上80.0モル%以下、72.0モル%以上79.0モル%以下、73.0モル%以上78.0モル%以下、または74.0モル%以上77.0モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、SiO2を、70.0モル%以上75.0モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で含む。
【0030】
実施形態のガラス組成物は、Al2O3をさらに含み得る。Al2O3は、SiO2と同様に、ガラス網目構造形成剤として機能し得る。Al2O3は、ガラス組成物から形成されるガラス溶融物におけるその四面体配位を理由に、ガラス組成物の粘度を増加させることができ、Al2O3の量が多過ぎる場合、ガラス組成物の成形性を低下させる。しかしながら、Al2O3の濃度が、ガラス組成物におけるSiO2の濃度およびアルカリ酸化物の濃度に対してバランスが取れている場合、Al2O3は、ガラス溶融物の液相温度を低下させることができ、それにより、液相線粘度が向上し、ガラス組成物と、特定の成形法、例えばフュージョン成形法との適合性が改善される。実施形態において、ガラス組成物は、通常、Al2O3を、7.0モル%以上、例えば、8.0モル%以上、9.0モル%以上、10.0モル%以上、11.0モル%以上、12.0モル%以上、13.0モル%以上、14.0モル%以上、15.0モル%以上、16.0モル%、または17.0モル%以上の濃度で含む。実施形態において、ガラス組成物は、Al2O3を、18.0モル%以下、17.0モル%以下、16.0モル%以下、15.0モル%以下、14.0モル%以下、13.0モル%以下、12.0モル%以下、11.0モル%以下、10.0モル%以下、9.0モル%以下、または8.0モル%以下の量で含む。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、他の実施形態において、ガラス組成物は、Al2O3を、7.0モル%以上18.0モル%以下、例えば、8.0モル%以上17.0モル%以下、9.0モル%以上16.0モル%以下、10.0モル%以上15.0モル%以下、または11.0モル%以上14.0モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、8.0モル%以上12.0モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量のAl2O3を含む。
【0031】
SiO2およびAl2O3は、ガラス網目構造形成成分であり、実施形態において、これらのガラス網目構造形成成分は、ガラス組成物のかなりの部分を占める。例えば、実施形態において、ガラス組成物におけるSiO2およびAl2O3の合計は、80.0モル%以上、例えば、81.0モル%以上、82.0モル%以上、83.0モル%以上、84.0モル%以上、または85.0モル%以上である。実施形態において、ガラス組成物におけるSiO2およびAl2O3の合計は、86.0モル%以下、85.0モル%以下、84.0モル%以下、83.0モル%以下、82.0モル%以下、または81.0モル%以下である。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、他の実施形態において、ガラス組成物におけるSiO2およびAl2O3の合計は、80.0モル%以上86.0モル%以下、例えば、81.0モル%以上85.0モル%以下、または82.0モル%以上84.0モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲である。
【0032】
リチウムをガラスに添加することにより、イオン交換プロセスが可能になり、ガラスの軟化点がさらに低下する。実施形態において、ガラス組成物は、通常、Li2Oを、0.0モル%以上、例えば、0.5モル%以上、1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、7.5モル%以上、8.0モル%以上、8.5モル%以上、9.0モル%以上、または9.5モル%以上の量で含む。幾つかの実施形態において、ガラス組成物は、Li2Oを、10.0モル%以下、例えば、9.5モル%以下、9.0モル%以下、8.5モル%以下、8.0モル%以下、7.5モル%以下、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、または0.5モル%以下の量で含む。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、さらなる他の実施形態において、ガラス組成物は、Li2Oを、0.0モル%以上10.0モル%以下、例えば、0.5モル%以上9.5モル%以下、1.0モル%以上9.0モル%以下、1.5モル%以上8.5モル%以下、2.0モル%以上8.0モル%以下、2.5モル%以上7.5モル%以下、3.0モル%以上7.0モル%以下、3.5モル%以上6.5モル%以下、または4.0モル%以上6.0モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で含む。
【0033】
Li2Oと同様に、Na2Oは、ガラス組成物のイオン交換性を補助し、また、ガラス組成物の融点を低下させ、ガラス組成物の成形性を改善する。しかしながら、Na2Oがガラス組成物にあまりに多く添加されると、CTEが高くなり過ぎることがある。実施形態において、ガラス組成物は、通常、Na2Oを、3.0モル%以上、例えば、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、7.5モル%以上、8.0モル%以上、8.5モル%以上、9.0モル%以上、9.5モル%以上、10.0モル%以上、10.5モル%以上、11.0モル%以上、または11.5モル%以上の量で含む。幾つかの実施形態において、ガラス組成物は、Na2Oを、12.0モル%以下、11.5モル%以下、11.0モル%以下、10.5モル%以下、10.0モル%以下、9.5モル%以下、9.0モル%以下、8.5モル%以下、8.0モル%以下、7.5モル%以下、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、または3.5モル%以下の量で含む。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、さらなる他の実施形態において、ガラス組成物は、Na2Oを、3.0モル%以上12.0モル%以下、例えば、3.5モル%以上11.5モル%以下、4.0モル%以上11.0モル%以下、4.5モル%以上10.5モル%以下、5.0モル%以上10.0モル%以下、5.5モル%以上9.5モル%以下、6.0モル%以上9.0モル%以下、または6.5モル%以上8.5モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で含む。
【0034】
Na2Oと同様に、K2Oも、イオン交換を促進し、圧縮応力層のDOCを増加させる。しかしながら、K2Oを添加すると、CTEの増加がもたらされ得る。実施形態において、ガラス組成物は、通常、K2Oを、0.0モル%以上、例えば、0.5モル%以上、1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、7.5モル%以上、8.0モル%以上、8.5モル%以上、9.0モル%以上、9.5モル%以上、10.0モル%以上、10.5モル%以上、11.0モル%以上、または11.5モル%以上の量で含む。幾つかの実施形態において、ガラス組成物は、K2Oを、12.0モル%以下、11.5モル%以下、11.0モル%以下、10.5モル%以下、10.0モル%以下、9.5モル%以下、9.0モル%以下、8.5モル%以下、8.0モル%以下、7.5モル%以下、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、または0.5モル%以下の量で含む。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、さらなる他の実施形態において、ガラス組成物は、K2Oを、0.0モル%以上12.0モル%以下、例えば、3.5モル%以上11.5モル%以下、4.0モル%以上11.0モル%以下、4.5モル%以上10.5モル%以下、5.0モル%以上10.0モル%以下、5.5モル%以上9.5モル%以下、6.0モル%以上9.0モル%以下、または6.5モル%以上8.5モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で含む。幾つかの実施形態において、ガラス組成物は、K2Oを、7.0モル%以上11.0モル%以下の量で含む。
【0035】
ガラス組成物におけるアルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、およびK2O、ならびにCs2OおよびRb2Oを含む他のアルカリ金属酸化物)の合計は、「R2O」と称されることがあり、R2Oは、モル%で表され得る。しかしながら、本明細書で使用されているように、R2Oは、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含み、幾つかの実施形態においては、2種のアルカリ金属酸化物を含むか、3種のアルカリ金属酸化物を含むか、4種のアルカリ金属酸化物を含む。幾つかの実施形態において、R2Oは、Li2OとNa2Oとの組み合わせであり得る。他の実施形態において、R2Oは、Na2OとK2Oとの組み合わせであり得る。さらなる他の実施形態において、R2Oは、Li2OとK2Oとの組み合わせであり得る。1つ以上の実施形態において、R2Oは、Li2Oと、Na2Oと、K2Oとの組み合わせであり得る。実施形態において、R2Oを含むアルカリ金属酸化物はそれぞれ、0.5モル%以上の量で存在する。例えば、R2Oが、Li2OおよびNa2Oを含む場合、Li2OおよびNa2Oの双方は、0.5モル%以上の量で存在し、またR2Oが、Li2O、Na2OおよびK2Oを含む場合、Li2O、Na2OおよびK2Oはすべて、0.5モル%以上の量で存在する。
【0036】
1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、R2Oを、14.0モル%以上、例えば、14.5モル%以上、15.0モル%以上、15.5モル%以上、16.0モル%以上、16.5モル%以上、17.0モル%以上、17.5モル%以上、18.0モル%以上、18.5モル%以上、19.0モル%以上、19.5モル%以上、20.0モル%以上、20.5モル%以上、21.0モル%以上、21.5モル%以上、22.0モル%以上、22.5モル%以上、23.0モル%以上、23.5モル%以上、24.0モル%以上、または24.5モル%以上の量で含む。1つ以上の実施形態において、ガラス組成物は、R2Oを、25.0モル%以下、例えば、24.5モル%以下、24.0モル%以下、23.5モル%以下、23.0モル%以下、22.5モル%以下、22.0モル%以下、21.5モル%以下、21.0モル%以下、20.5モル%以下、20.0モル%以下、19.5モル%以下、19.0モル%以下、18.5モル%以下、18.0モル%以下、17.5モル%以下、17.0モル%以下、16.5モル%以下、16.0モル%以下、15.5モル%以下、15.0モル%以下、または14.5モル%以下の量で含む。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、さらなる他の実施形態において、ガラス組成物は、R2Oを、14.0モル%以上25.0モル%以下、例えば、14.5モル%以上24.5モル%以下、15.0モル%以上24.0モル%以下、15.5モル%以上23.5モル%以下、16.0モル%以上23.0モル%以下、16.5モル%以上22.5モル%以下、17.0モル%以上22.0モル%以下、17.5モル%以上21.5モル%以下、または18.0モル%以上21.0モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で含む。
【0037】
実施形態において、R2Oは、Na2OおよびLi2Oを含む。R2OがNa2OおよびLi2Oを含む1つ以上の実施形態において、Na2O/Li2Oの比は、モル%で、1.0以上、例えば、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.6以上、または2.8以上である。R2OがNa2OおよびLi2Oを含む幾つかの実施形態において、Na2O/Li2Oの比は、モル%で、3.0以下、例えば、2.8以下、2.6以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、または1.2以下である。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、R2OがNa2OおよびLi2Oを含むさらなる他の実施形態において、Na2O/Li2Oの比は、モル%で、1.0以上3.0以下、例えば、1.2以上2.8以下、1.4以上2.6以下、1.6以上2.4以下、または1.8以上2.2以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲である。
【0038】
実施形態において、R2Oは、K2OおよびNa2Oを含み、K2OおよびNa2Oの合計は、15.0モル%以上21.0モル%以下、例えば、15.5モル%以上20.5モル%以下、16.0モル%以上20.0モル%以下、16.5モル%以上19.5モル%以下、または17.0モル%以上19.0モル%以下である。R2OがK2OおよびNa2Oを含む1つ以上の実施形態において、K2O/Na2Oの比は、モル%で、1.0以上、例えば、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.6以上、または2.8以上である。R2OがK2OおよびNa2Oを含む幾つかの実施形態において、K2O/Na2Oの比は、モル%で、3.0以下、例えば、2.8以下、2.6以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、または1.2以下である。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、R2OがK2OおよびNa2Oを含むさらなる他の実施形態において、K2O/Na2Oの比は、モル%で、1.0以上3.0以下、例えば、1.2以上2.8以下、1.4以上2.6以下、1.6以上2.4以下、または1.8以上2.2以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲である。
【0039】
実施形態において、R2Oは、Li2O、Na2OおよびK2Oを含み、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計は、15.0モル%以上21.0モル%以下、例えば、15.5モル%以上20.5モル%以下、16.0モル%以上20.0モル%以下、16.5モル%以上19.5モル%以下、または17.0モル%以上19.0モル%以下である。R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含む1つ以上の実施形態において、K2O/Li2Oの比は、モル%で、1.0以上、例えば、1.5以上、2.0以上、2.5以上、3.0以上、3.5以上、4.0以上、4.5以上、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、または7.0以上である。R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含む幾つかの実施形態において、K2O/Li2Oの比は、モル%で、7.5以下、例えば、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.8以下、2.6以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、または1.2以下である。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含むさらなる他の実施形態において、K2O/Li2Oの比は、モル%で、1.0以上7.5以下、例えば、1.5以上7.0以下、2.0以上6.5以下、2.5以上6.0以下、3.0以上5.5以下、または3.5以上5.0以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲である。R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含む幾つかの実施形態において、K2O/Na2Oの比は、モル%で、1.0以上、例えば、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、2.6以上、または2.8以上である。R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含む幾つかの実施形態において、K2O/Na2Oの比は、モル%で、3.0以下、例えば、2.8以下、2.6以下、2.4以下、2.2以下、2.0以下、1.8以下、1.6以下、1.4以下、または1.2以下である。実施形態において、上記の範囲のいずれかは、他のいずれかの範囲と組み合わせることが可能であると理解されるべきである。しかしながら、R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含むさらなる他の実施形態において、K2O/Na2Oの比は、モル%で、1.0以上3.0以下、例えば、1.2以上2.8以下、1.4以上2.6以下、1.6以上2.4以下、または1.8以上2.2以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲である。
【0040】
実施形態において、ガラス組成物は、任意で、1種以上の清澄剤を含み得る。幾つかの実施形態において、清澄剤は、例えばSnO2を含み得る。そのような実施形態において、SnO2は、ガラス組成物中に、0.2モル%以下、例えば、0.0モル%以上0.1モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で存在し得る。他の実施形態において、SnO2は、ガラス組成物中に、0.0モル%以上0.2モル%以下、または0.1モル%以上0.2モル%以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の量で存在し得る。幾つかの実施形態において、ガラス組成物は、SnO2を含んでいなくてもよい。
【0041】
実施形態において、ガラス物品は、ヒ素およびアンチモンの一方または双方を実質的に含んでいなくてもよい。他の実施形態において、ガラス物品は、ヒ素およびアンチモンの一方または双方を含んでいなくてもよい。
【0042】
上記から、実施形態によるガラス組成物は、任意の適切な方法、例えば、スロット成形、フロート成形、圧延プロセス、フュージョン成形法などにより成形することが可能である。
【0043】
ガラス物品は、それが成形される手法により特徴付けられていてもよい。例えば、ガラス物品が、フロート成形可能であること(すなわち、フロート法により成形される)、ダウンドロー可能であること、特に、フュージョン成形可能であることまたはスロットドロー可能であること(すなわち、ダウンドロー法、例えば、フュージョンドロー法またはスロットドロー法により成形される)を特徴とする場合がある。
【0044】
本明細書に記載のガラス物品の幾つかの実施形態は、ダウンドロー法により実施され得る。ダウンドロー法により、比較的きれいな状態の表面を有する均質な厚さのガラス物品が製造される。ガラス物品の平均曲げ強度は、表面の傷の量およびサイズにより制御されるため、最小限の接触しかなかったきれいな状態の表面は、初期強度がより高い。さらに、ダウンドローガラス物品は、非常に平らで平滑な表面を有し、これは、コストのかかる研削および研磨なしで、その最終用途に使用することが可能である。
【0045】
ガラス物品の幾つかの実施形態は、フュージョン成形可能(すなわち、フュージョンドロー法を使用して成形可能)と説明され得る。フュージョン法では、溶融したガラス原材料を受け入れるための流路を有する延伸タンクが使用される。この流路は、流路の両側に流路の長さに沿って上部が開口した堰を有する。流路が溶融した材料で満たされると、溶融したガラスが堰からあふれ出る。重力により、溶融したガラス流は、2つの流動ガラスフィルムとして、延伸タンクの外面を流れ落ちる。延伸タンクのこれらの外面は、下方および内側に延在するため、延伸タンクの下のエッジで合わさる。2つの流動ガラスフィルムは、このエッジで合わさって融着し、単一の流動ガラス物品を形成する。フュージョンドロー法には、流路を流れる2つのガラスフィルムが一緒に融着することから、得られるガラス物品の外面のどちらも、装置のどの部分にも接触しないという利点がある。したがって、フュージョンドローされたガラス物品の表面特性は、そのような接触により影響を受けない。
【0046】
本明細書に記載のガラス物品の幾つかの実施形態は、スロットドロー法により成形されてもよい。スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法では、溶融した原材料ガラスが、延伸タンクに供給される。延伸タンクの底部には、スロットの長さを伸ばすノズルを有する開口したスロットがある。溶融したガラス流は、スロット/ノズルを通って流れ、連続的なガラス物品として下向きにアニーリング領域へと延伸させられる。
【0047】
実施形態では、アルカリ含有ガラス組成物を、例えばイオン交換により強化して、例えばディスプレイカバー用のガラスであるがこれに限定されない用途に対して損傷抵抗のあるガラスを作製することができる。
図1を参照すると、ガラスは、ガラスの表面から圧縮深さ(DOC)に延在する圧縮応力下の第一の領域(例えば、
図1の第一の圧縮層および第二の圧縮層120、122)と、ガラスのDOCから中央領域または内部領域に延在する引張応力または中央張力(CT)下の第二の領域(例えば、
図1の中央領域130)とを有する。本明細書で使用されているように、DOCは、ガラス物品内の応力が圧縮から引張に変化する深さを指す。DOCでは、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力になるため、ゼロの応力値を示す。
【0048】
当技術分野において通常使用される慣例によると、圧縮力または圧縮応力は、負の(0未満の)応力として表され、張力または引張応力は、正の(0超の)応力として表される。しかしながら、この説明全体にわたり、CSは、正または絶対値の値として、すなわち、本明細書に記載されるように、CS=|CS|として表される。圧縮応力(CS)は、ガラスの表面で最大値をとることがあり、CSは、関数に応じて表面からの距離dとともに変化し得る。再び
図1を参照すると、第一の圧縮層120は、第一の表面110から深さd
1に延在し、第二の圧縮層122は、第二の表面112から深さd
2に延在する。これらの区分をあわせると、ガラス100の圧縮力またはCSが定められる。圧縮応力(表面CSを含む)は、市販で入手可能な機器、例えば、Orihara Industrial Co.,Ltd.(日本)製のFSM-6000を使用して、表面応力計(FSM)により測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)を正確に測定することによる。またSOCは、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」という表題のASTM規格C770-16に記載の手順C(ガラスディスク法)により測定され、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
双方の圧縮応力領域(
図1の120、122)の圧縮応力は、ガラスの中央領域(130)における蓄積された張力によりバランスが保たれる。最大中央張力(CT)およびDOC値は、当技術分野において公知の散乱光偏光器(SCALP)技術を使用して測定される。応力プロファイルを測定するために、屈折近接場(RNF)法またはSCALPが使用されてもよい。RNF法を用いて応力プロファイルが測定される場合、SCALPによりもたらされる最大CT値が、RNF法において用いられる。特に、RNFにより測定された応力プロファイルは、力のバランスが取れており、SCALP測定によりもたらされる最大CT値に較正される。RNF法は、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」という表題の米国特許第8,854,623号明細書に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、RNF法は、ガラス物品を参照ブロックに隣接して配置するステップと、1Hz~50Hzの速度で直交偏光の間で切り替えられる偏光切り替え光線を生成するステップと、偏光切り替え光線の出力量を測定するステップと、偏光切り替え参照信号を生成するステップとを含み、ここで、測定された各直交偏光の出力量は、互いの50%内である。この方法はさらに、偏光切り替えされた光線をガラス試料および参照ブロックに通して異なる深さにわたりガラス試料内に送信し、その後、送信された偏光切り替え光線を、リレー光学系を使用して、偏光切り替えされた検出器信号を生成する信号光検出器に中継するステップを含む。この方法はまた、検出器信号を参照信号で割って、正規化された検出器信号を形成するステップと、正規化された検出器信号からガラス試料のプロファイル特性を決定するステップとを含む。
【0050】
圧縮応力層は、ガラスをイオン交換溶液に曝すことにより、ガラス中に形成することが可能である。実施形態において、イオン交換溶液は、溶融した硝酸塩であり得る。幾つかの実施形態において、イオン交換溶液は、溶融したKNO3、溶融したNaNO3、またはそれらの組み合わせであり得る。特定の実施形態において、イオン交換溶液は、約80%の溶融したKNO3、約75%の溶融したKNO3、約70%の溶融したKNO3、約65%の溶融したKNO3、または約60%の溶融したKNO3を含み得る。特定の実施形態において、イオン交換溶液は、約20%の溶融したNaNO3、約25%の溶融したNaNO3、約30%の溶融したNaNO3、約35%の溶融したNaNO3、または約40%の溶融したNaNO3を含み得る。他の実施形態において、イオン交換溶液は、約80%の溶融したKNO3および約20%の溶融したNaNO3、約75%の溶融したKNO3および約25%の溶融したNaNO3、約70%の溶融したKNO3および約30%の溶融したNaNO3、約65%の溶融したKNO3および約35%の溶融したNaNO3、または約60%の溶融したKNO3および約40%の溶融したNaNO3、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲を含み得る。実施形態では、他のナトリウムおよびカリウム塩、例えば、亜硝酸ナトリウムもしくは亜硝酸カリウム、リン酸塩、または硫酸塩が、イオン交換溶液において使用されてもよい。
【0051】
ガラス組成物は、ガラス組成物製のガラス物品をイオン交換溶液浴に浸漬することにより、イオン交換溶液をガラス組成物製のガラス物品に噴霧することにより、またはそうでなければ、イオン交換溶液をガラス組成物製のガラス物品に物理的に塗布することにより、イオン交換溶液に曝されてもよい。実施形態によると、イオン交換溶液は、ガラス組成物に曝されたら、400℃以上500℃以下、例えば、410℃以上490℃以下、420℃以上480℃以下、430℃以上470℃以下、または440℃以上460℃以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の温度にあり得る。実施形態において、ガラス組成物は、4時間以上48時間以下、例えば、8時間以上44時間以下、12時間以上40時間以下、16時間以上36時間以下、20時間以上32時間以下、または24時間以上28時間以下、ならびに前述の値の間の全範囲および部分範囲の時間にわたり、イオン交換溶液に曝され得る。
【0052】
イオン交換プロセスは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0102011号明細書に開示されているように、改善された圧縮応力プロファイルをもたらす処理条件のもと、イオン交換溶液中で実施することが可能である。
【0053】
イオン交換プロセスが実施された後、ガラス物品の表面の組成は、成形直後のガラス物品(すなわち、イオン交換を受ける前のガラス物品)の組成とは異なることがあると理解されるべきである。これは、成形直後のガラス中の1種のアルカリ金属イオン、例えば、Li+またはNa+が、より大きなアルカリ金属イオン、例えば、それぞれNa+またはK+と置き換えられることにより生じる。しかしながら、実施形態において、ガラス物品の深さの中央におけるまたはその付近のガラス組成は、成形直後のガラス物品の組成をなおも有するだろう。
【0054】
本明細書に開示されているガラス物品は、別の物品、例えば、ディスプレイを有する物品(またはディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む消費者用電子機器)、建築物、輸送物品(例えば、自動車、電車、航空機、船舶など)、電化製品、または透明性、耐引掻性、耐摩耗性もしくはそれらの組み合わせを幾らか必要とする物品に組み込むことが可能である。本明細書に開示されているガラス物品のいずれかを組み込む例示的な物品は、
図2Aおよび2Bに示されている。具体的には、
図2Aおよび2Bは、前面204、背面206および側面208を有するハウジング202と、少なくとも部分的にハウジング内部にまたは完全にハウジング内にあり、かつハウジングの前面にあるまたはそれに隣接した少なくとも1個のコントローラ、メモリおよびディスプレイ210を含む電気部品(図示せず)と、ハウジングの前面にあるかその上方にあり、そのためディスプレイの上方にあるカバー基材212とを含む消費者用電子デバイスを示す。幾つかの実施形態において、カバー基材212および/またはハウジング202の少なくとも一部は、本明細書に開示されているガラス物品のいずれかを含み得る。
【0055】
第一の項目は、69.0モル%以上のSiO2と、7.0モル%以上のAl2O3と、14.0モル%以上のR2Oと、|0.020|以下の第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値とを含むガラス組成物であって、第一の端点が、アニール点温度の仮想温度でのヤング率であり、第二の端点が、歪点温度の仮想温度でのヤング率であり、傾きが、仮想温度の変化1℃あたりのヤング率(GPa)の変化であり、かつR2Oが、アルカリ金属酸化物の総数であり、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含む、ガラス組成物を含む。
【0056】
第二の項目は、傾きの絶対値が|0.015|以下である、第一の項目記載のガラス組成物を含む。
【0057】
第三の項目は、傾きの絶対値が|0.010|以下である、第一の項目および第二の項目記載のガラス組成物を含む。
【0058】
第四の項目は、SiO2+Al2O3が80.0モル%超である、第一の項目から第三の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0059】
第五の項目は、R2Oが18.0モル%以上である、第一の項目から第四の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0060】
第六の項目は、R2Oが、K2Oを7.0モル%以上11.0モル%以下の量で含む、第一の項目から第五の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0061】
第七の項目は、72.0モル%以上のSiO2を含む、第一の項目から第六の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0062】
第八の項目は、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物がそれぞれ、ガラス組成物中に0.5モル%以上の量で存在する、第一の項目から第七の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0063】
第九の項目は、R2OがNa2OおよびLi2Oを含み、Na2O/Li2Oの比が1.0以上である、第一の項目から第八の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0064】
第十の項目は、R2OがK2OおよびNa2Oを含み、K2O/Na2Oの比が1.0以上である、第一の項目から第九の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0065】
第十一の項目は、R2Oが少なくとも3種のアルカリ金属酸化物を含む、第一の項目から第十の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0066】
第十二の項目は、少なくとも3種のアルカリ金属酸化物がそれぞれ、ガラス組成物中に0.5モル%以上の量で存在する、第一の項目から第十一の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0067】
第十三の項目は、R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含み、K2O/Li2Oの比が1.0以上であり、K2O/Na2Oの比が1.0以上である、第一の項目から第十二の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0068】
第十四の項目は、K2O/Li2Oの比が5.0以上である、第十三の項目記載のガラス組成物を含む。
【0069】
第十五の項目は、70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3とを含み、R2Oが16.0モル%以上である、第一の項目から第十四の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0070】
第十六の項目は、70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3とを含み、R2OがLi2OおよびNa2Oを含み、Li2O+Na2Oが14.0モル%以上15.0モル%以下である、第一の項目から第十五の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0071】
第十七の項目は、70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3とを含み、R2OがNa2OおよびK2Oを含み、Na2O+K2Oが15.0モル%以上21.0モル%以下である、第一の項目から第十六の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0072】
第十八の項目は、70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3とを含み、R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含み、Li2O+Na2O+K2Oが15.0モル%以上21.0モル%以下である、第一の項目から第十七の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物を含む。
【0073】
第十九の項目は、第一の表面と、第二の表面と、第一の表面と第二の表面との間に位置する中央領域と、第一の表面および第二の表面のうちの少なくとも1つからガラス物品の中央領域へと延在する圧縮応力層とを含む、第一の項目から第十八の項目までのいずれか1つ記載のガラス組成物から成形されたガラス物品を含む。
【0074】
第二十の項目は、前面、背面および側面を含むハウジングと、少なくとも部分的にハウジング内にある電気部品であって、少なくとも1個のコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、ディスプレイがハウジングの前面にあるかまたはそれに隣接している、電気部品と、ディスプレイ上に配置されたカバー基材とを含む消費者用電子製品であって、ハウジングまたはカバー基材の少なくとも一部が第十九の項目記載のガラス物品を含む、消費者用電子製品を含む。
【実施例】
【0075】
実施形態について、以下の実施例によりさらに明確にする。これらの実施例は、上記の実施形態に限定されることはないと理解されるべきである。
【0076】
以下の表1に一覧にされた成分を有するガラス組成物を、従来のガラス成形法により製造した。表1では、すべての成分がモル%であり、ガラス組成物の様々な特性は、本明細書に開示されている方法により測定された。表1の各試料により、第一の端点から第二の端点に延在する線の傾き(先に説明されており、表1に「傾きdE/dT(GPa/℃)として一覧にされている)が|0.020|以下であるガラスが得られた。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
以下の表2に一覧にされた成分を有するガラス組成物を、従来のガラス成形法により製造した。表2では、すべての成分がモル%であり、ガラス組成物の様々な特性は、本明細書に開示されている方法により測定された。液相温度でのガラスの粘度は、「Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point」という表題のASTM C965-96(2012)に準拠して測定される。表2の各試料は比較例であり、これらにより、第一の端点から第二の端点に延在する線の傾き(先に説明されており、表2に「傾きdE/dT(GPa/℃)として一覧にされている)が|0.020|超であるガラスが得られた。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
表1および2は、アニール点および歪点での仮想温度に応じた、注型直後のガラスおよび熱処理されたガラスの分析された組成および特性を示す。アニール点および歪点を、ASTM C598-93(2013)のビーム曲げ粘度法により測定した。仮想温度を、アニール点および歪点の温度で最初の注型およびアニールの後にガラスを熱処理することにより固定した。ガラスの構造緩和を起こすのに必要な時間よりもかなり長く熱処理を行った。最短熱処理時間は、30×熱処理温度でのガラスの粘度/せん断弾性係数である。
図3は、ヤング率対仮想温度の傾きの低下に対して混合アルカリ効果を示すR
2O-Al
2O
3-SiO
2ガラスについてのヤング率対仮想温度を示す。比較例1、比較例2および比較例3のガラスは、それぞれ-0.0324、-0.0301および-0.0227の傾きを有するのに対して、比較例4は、-0.0249の傾き(すなわち、17~23%低い傾き)を有し、実施例7は、-0.018の傾き(すなわち、約19~44%低い傾き)を有し、実施例11は、0.0128の傾き(すなわち、約44~60%低い傾き)を有する。以下の表3は、
図3に示されるR
2O-Al
2O
3-SiO
2ガラスについてのヤング率対仮想温度の傾きのパーセントでの改善率を示し、ヤング率対仮想温度の傾きの低減に対する混合アルカリ効果を示す。
【0090】
【0091】
上記の表3に示されるように、ガラス組成物においてアルカリ金属酸化物を使用することによって、dE/dTの傾きが0.000により近くなり、Li2Oに比べて大きなアルカリ金属酸化物、例えばNa2OおよびK2Oをガラス中に含むことによっても、dE/dTの傾きが0.000により近くなる。
【0092】
さらに、ソーダ石灰ガラスおよび非アルカリ含有液晶ディスプレイガラスは、それぞれ-0.0200および-0.0259の傾きを有するのに対して、実施例3のガラスは、-0.0040の傾き(すなわち、80~85%低い傾き)を有する。
図4は、ソーダ石灰ケイ酸塩、非アルカリ含有ガラス、および実施例3のガラスのヤング率対温度の比較をグラフで表す。
【0093】
本明細書に記載の組成成分、関係および比はすべて、特に記載のない限り、モル%で記載される。本明細書に開示されている範囲はすべて、範囲が開示される前または後に明示的に述べられているか否かにかかわらず、幅広く開示されている範囲に包含される全範囲および部分範囲を含む。
【0094】
当業者にとって、特許請求される対象の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。したがって、本明細書は、そのような修正および変更が添付のクレームおよびそれらの等価物の範囲内にある限り、本明細書に記載の様々な実施形態の修正および変更を包含することが意図される。
【0095】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0096】
実施形態1
69.0モル%以上のSiO2と、
7.0モル%以上のAl2O3と、
14.0モル%以上のR2Oと、
|0.020|以下の第一の端点と第二の端点との間に延在する線の傾きの絶対値と
を含むガラス組成物において、
前記第一の端点が、アニール点温度の仮想温度でのヤング率であり、前記第二の端点が、歪点温度の仮想温度でのヤング率であり、
前記傾きが、仮想温度の変化1℃あたりのヤング率(GPa)の変化であり、
R2Oが、アルカリ金属酸化物の総数であり、少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含む、
ガラス組成物。
【0097】
実施形態2
前記傾きの前記絶対値が|0.015|以下である、実施形態1記載のガラス組成物。
【0098】
実施形態3
前記傾きの前記絶対値が|0.010|以下である、実施形態1または2記載のガラス組成物。
【0099】
実施形態4
SiO2+Al2O3が80.0モル%超である、実施形態1から3までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0100】
実施形態5
R2Oが18.0モル%以上である、実施形態1から4までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0101】
実施形態6
R2Oが、K2Oを7.0モル%以上11.0モル%以下の量で含む、実施形態1から5までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0102】
実施形態7
72.0モル%以上のSiO2を含む、実施形態1から6までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0103】
実施形態8
少なくとも2種のアルカリ金属酸化物がそれぞれ、前記ガラス組成物中に0.5モル%以上の量で存在する、実施形態1から7までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0104】
実施形態9
R2OがNa2OおよびLi2Oを含み、Na2O/Li2Oの比が1.0以上である、実施形態1から8までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0105】
実施形態10
R2OがK2OおよびNa2Oを含み、K2O/Na2Oの比が1.0以上である、実施形態1から9までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0106】
実施形態11
R2Oが少なくとも3種のアルカリ金属酸化物を含む、実施形態1から10までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0107】
実施形態12
少なくとも3種のアルカリ金属酸化物がそれぞれ、前記ガラス組成物中に0.5モル%以上の量で存在する、実施形態11記載のガラス組成物。
【0108】
実施形態13
R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含み、
K2O/Li2Oの比が1.0以上であり、
K2O/Na2Oの比が1.0以上である、
実施形態1から12までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0109】
実施形態14
前記K2O/Li2Oの比が5.0以上である、実施形態13記載のガラス組成物。
【0110】
実施形態15
70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、
8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3と
を含み、
R2Oが16.0モル%以上である、
実施形態1から14までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0111】
実施形態16
70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、
8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3と
を含み、
R2OがLi2OおよびNa2Oを含み、
Li2O+Na2Oが14.0モル%以上15.0モル%以下である、
実施形態1から15までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0112】
実施形態17
70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、
8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3と
を含み、
R2OがNa2OおよびK2Oを含み、
Na2O+K2Oが15.0モル%以上21.0モル%以下である、
実施形態1から16までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0113】
実施形態18
70.0モル%以上75.0モル%以下のSiO2と、
8.0モル%以上12.0モル%以下のAl2O3と
を含み、
R2OがLi2O、Na2OおよびK2Oを含み、
Li2O+Na2O+K2Oが15.0モル%以上21.0モル%以下である、
実施形態1から17までのいずれか1項記載のガラス組成物。
【0114】
実施形態19
第一の表面と、
第二の表面と、
前記第一の表面と前記第二の表面との間に位置する中央領域と、
前記第一の表面および前記第二の表面のうちの少なくとも1つからガラス物品の前記中央領域へと延在する圧縮応力層と
を含む、実施形態1から18までのいずれか1項記載のガラス組成物から成形されたガラス物品。
【0115】
実施形態20
前面、背面および側面を含むハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内にある電気部品であって、少なくとも1個のコントローラ、メモリおよびディスプレイを含み、前記ディスプレイが、前記ハウジングの前記前面にあるかまたはそれに隣接している、電気部品と、
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基材と
を含む消費者用電子製品であって、
前記ハウジングまたは前記カバー基材の少なくとも一部が、実施形態19記載のガラス物品を含む、消費者用電子製品。