(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】熱交換器コア
(51)【国際特許分類】
F28F 1/30 20060101AFI20231117BHJP
F28F 1/42 20060101ALI20231117BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20231117BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20231117BHJP
F28F 1/12 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
F28F1/30 B
F28F1/42 Z
F28F1/02 A
F28D1/053 A
F28F1/12 Z
(21)【出願番号】P 2020533510
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019029557
(87)【国際公開番号】W WO2020027007
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2018142380
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/075593(WO,A1)
【文献】特開平07-190661(JP,A)
【文献】特開平07-318291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 1/44
F28D 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向する方形の平面部(1)および両平面部(1)の端部間を接続する一対の端面部(2)を有する細長い多数の偏平チューブ(3)と、前記平面部(1)が互いに平行に整列された各偏平チューブ間に、それぞれ介装されるコルゲートフィン(4)と、を具備し、
扁平チューブ(3)の開口端を結ぶ方向が軸方向(S)であり、前記平面部(1)において前記軸方向(S)と直交する方向が幅方向であり、
各コルゲートフィン(4)は、波形に曲折され、その折返しの各頂部(4a)は、偏平チューブ(3)の平面部(1)の表面の
前記幅方向に直線上に延在しており、
各頂部(4a)と平面部(1)とは重ねられ、平面部(1)の表面の
前記幅方向に直線上に延在するろう付接合部によりそれぞれ固定さ
れ、
偏平チューブ(3)の平面部(1)には、表面側から内面側に向かって膨出された多数のディンプル(6)
が前記軸方向(S)及び前記幅方向に互いに離間して千鳥状に配置された各熱交換器コア(5)において、
各ディンプル(6)が存在する位置では、平面部(1)において
前記幅方向にはそれが一つのみ存在し、他のディンプル(6)が存在しないようにし、前記各ろう付接合部には二つ以上のディンプル(6)が存在していないことを特徴とする熱交換器コア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、偏平チューブとコルゲートフィンからなる熱交換器コアのろう付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の発明には、多数の偏平チューブとコルゲートフィンとを交互に配置してコアを構成し、その両端部にタンクを設けた熱交換器が記載されている。各偏平チューブは一対の開口端部を有し、その偏平チューブの表面には、その表面側から内面側に多数のディンプルが、偏平チューブの開口端を結ぶ軸方向及びその軸方向に直交する方向に千鳥状に配置されている。そして、偏平チューブ内に第1の熱媒体を流通させ、偏平チューブ及びコルゲートフィンの外面側に第2の流通媒体を流通させて、熱交換を行うものである。
この偏平チューブの外面に設けた多数のディンプルは、偏平チューブ内の熱媒体を撹拌し、外面側の流通媒体との間の熱交換を促進させている。
このように、千鳥状にチューブの表面にディンプルを設けた偏平チューブは、その基本構造が
図4に示すものとなる。
即ち、
図4において、偏平チューブ3は表面側と裏面側とに一対の平面部1が形成され、その平面部1の両側間が端面部2で接続されてなる。平面部1の各表面には、偏平チューブ3の軸方向及びその軸方向に直交する方向に互いに離間して多数のディンプル6が、千鳥状に配置される。そのような多数の偏平チューブ3が互いに平面部1が平行になるように配置され、各偏平チューブ3間にコルゲートフィンが配置されている。
このとき、コルゲートフィンの波の頂部が偏平チューブ3の幅方向に平行に位置する。そして、コルゲートフィンの頂部と偏平チューブ3の平面部1との間が一体にろう付固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の
図4(A)は、偏平チューブ3の平面部1の表面のディンプル6の配列を示す。また、同図(B)は、その偏平チューブとコルゲートフィンとのろう付部のろうフィレット7の状態を示したものである。即ち、ろうフィレット7は、波形に形成されたコルゲートフィンの各頂部と偏平チューブ外面との接合部を示し、その接合部は偏平チューブの軸方向に直交する方向に平行に直線上に形成される。同図(B)において、軸方向に直交する方向に複数のディンプル6が存在する部位とコルゲートフィンの頂部とが重なった場合は、それらのディンプル6の中間のろうフィレット7に部分的な、ろう切れ部8が生じることがある。
図5(A)は複数のディンプル6が存在する部位とコルゲートフィンの頂部とが重なった箇所における、その偏平チューブ3とコルゲートフィン4との接触状態を示したものである。
図5(B)は、
図5(A)において一点鎖線で囲った部分の拡大図であり、偏平チューブ3とコルゲートフィン4とのろう付部の状態を示したものであり、2つのディンプル6の中間の部分に生じたろう切れ部8が示されている。
このろう切れ部8の発生は、炉中ろう付の際、偏平チューブ3とコルゲートフィン4の頂部との間の溶融ろう材がその2つのディンプル6内に引き込まれ、その結果、偏平チューブ3とコルゲートフィン4との接触部のろう材が不足したことに起因する。このようにして、ろう切れ部8が生じると偏平チューブ3とコルゲートフィン4との間の熱抵抗が増加し熱交換性能が低下する。
そこで本発明は、ディンプルを有するチューブとコルゲートフィンから構成される熱交換器コアにおいて、ろう切れ部の生じない、熱交換性能の高い構造の熱交換器コアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、一対の対向する方形の平面部1および両平面部1の端部間を接続する一対の端面部2を有する細長い多数の偏平チューブ3と、前記平面部1が互いに平行に整列された各偏平チューブ間に、それぞれ介装されるコルゲートフィン4と、を具備し、
各コルゲートフィン4は、波形に曲折され、その折返しの各頂部4aが、偏平チューブ3の平面部1の表面の幅方向に直線的に接合されてなる各熱交換器コア5において、
偏平チューブ3の平面部1には、表面側から内面側に向かって膨出された多数のディンプル6を有して、
各ディンプル6が存在する位置では、平面部1において偏平チューブ3の軸方向に直交する方向にはそれが一つのみ存在し、他のディンプル6が存在しないようにしたことを特徴とする熱交換器コアである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、各ディンプル6が存在する位置では、平面部1において偏平チューブ3の軸方向に直交する方向にはそれが一つのみ存在し、他のディンプルが存在しないようにしたものである。そのため、コルゲートフィン4の波の頂部4aに、複数のディンプル6の凹みが位置することがなくなり、偏平チューブ3とコルゲートフィン4との接合不良が生じるおそれが無くなる。
即ち、コルゲートフィン4の波の頂部4aが、偏平チューブ3の軸方向に直交する方向に直線的に位置し、そこの位置には、ディンプル6が形成する凹みが一つしかないので、複数の凹部が存在する場合のように、二つの凹部がその間のろう材を引張り合うことによる、凹部間の部分的ろう切れを生じることがない。そのため、コルゲートフィン4と偏平チューブ3との接合部に切目のないろうフィレットが形成され、熱交換性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の熱交換器コアに用いられる偏平チューブ3の平面図(A)、及び偏平チューブ3とコルゲートフィン4との接続状態を示す斜視図(B)。
図2は同コアの部分的斜視図。
図3は同偏平チューブ3の平面図(A)、及びB-B断面図(B)。
図4は従来型偏平チューブ3の平面図(A)、及びそのろう付部の平面図(B)。
図5は従来型偏平チューブ3とコルゲートフィン4との接触状態を示す説明図(A)、そのろう付後におけるろうフィレットの状態を示す説明図(B)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1~
図3は本発明の実施の形態を示し、この熱交換器コアは一例として自動車用エンジン冷却水冷却用熱交換器やオイルクーラに適用できるものである。
図1(A)は、そのコアを構成する偏平チューブ3の平面図であり、(B)は同コアの偏平チューブ3とコルゲートフィン4との接合状態を示す斜視説明図である。また、
図2はその熱交換器コア10の斜視図である。
熱交換器コア10は、
図1及び
図2に示す如く、偏平チューブ3とコルゲートフィン4とを交互に並列して、その接触部を互いに一体にろう付したものである。
偏平チューブ3は、
図1(A)(B)に示す如く、対向する一対の平面部1と両平面部1間を接続する一対の端面部2とを有する。そして、その両端が開口している(
図2において一方の開口端のみ記載、他端開口は省略している)。
図1(B)に示すように、一方の端面部2がろう付又は溶接により接合されてチューブの接合部9を形成することができる。
次に、コルゲートフィン4は金属板を波形に曲折したものであり、その波の頂部4aが偏平チューブ3の平面部1に接触して、その接触部がろう付される。コルゲートフィン4の頂部4aは、偏平チューブ3の両開口端を結ぶ軸方向Sに直交する方向に一直線上に配置されている。
(本発明の特徴)
ここにおいて本発明の特徴は、偏平チューブ3の平面部1には、多数のディンプル6がその表面側から内面側に凹陥されている。それと共に、
図3に示す如く、各ディンプル6が存在する位置では、平面部1において偏平チューブ3の軸方向Sに直交する方向にはそれが一つのみ存在し、他のディンプル6が存在しないようにしたものである。
そして一例として、偏平チューブ3の平面部1と、コルゲートフィン4の頂部4aとは、
図1(A)に示すろうフィレット7が偏平チューブ3の軸方向Sに直交する方向に配置される。
(作用)
図1(A)に示す如く、ろうフィレット7が配置されている線上には、ディンプル6が1つのみ存在する。その結果、そこに二つ存在した
図5に示すような、溶融したろうフィレット7の引っ張り合いは生じない。
即ち、
図5においては溶融したろう材が各ディンプル6に流入し、それらの間に位置するろうフィレット7を互いに各ディンプル6内に引っ張り込もうとする作用が働いたが、本発明ではディンプル6が一つのみしか存在しないので、ろう材の引っ張り合いが起こらない。そのため、
図1(A)に示すように、ろうフィレット7上にディンプル6が存在しても、
図4(B)のようなろう切れ部8が生じることがない。
その結果、偏平チューブ3とコルゲートフィン4とのろう付が各部位おいて確実に行われ、熱交換が促進される。
【産業上の利用可能性】
【0009】
偏平チューブとコルゲートフィンとのろう付部を有する熱交換器コアであって、自動車用ラジエータ、空調用熱交換器、オイルクーラその他に利用できる。
【符号の説明】
【0010】
1 平面部
2 端面部
3 偏平チューブ
4 コルゲートフィン
4a 頂部
5 熱交換器コア
6 ディンプル
7 ろうフィレット
8 ろう切れ部
9 接合部
10 熱交換器コア
S 軸方向