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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】通気部品
(51)【国際特許分類】
   F16K 24/04 20060101AFI20231117BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20231117BHJP
   H01M 50/325 20210101ALN20231117BHJP
   H05K 5/06 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
F16K24/04 G
F16K17/04 C
H01M50/325
H05K5/06 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020553305
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040955
(87)【国際公開番号】W WO2020085210
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2018201122
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】仲山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 陽三
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 晶
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-158845(JP,U)
【文献】国際公開第2018/183804(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0292020(US,A1)
【文献】実開昭62-126671(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 24/00 - 24/04
F16K 17/02 - 17/10
F16K 15/14 - 15/16
F16K 7/12 - 7/17
H01M 50/317 - 50/333
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気口において筐体に装着される通気部品であって、
通気膜と、
弾性体を含み、前記弾性体の弾性変形により開閉する通気弁と、
前記通気膜及び前記通気弁を支持する構造部材と、を備え、
前記通気膜及び前記通気弁は互いに離れて別々に配置されており、
当該通気部品が前記筐体に装着された装着状態において、前記通気膜によって前記筐体の内部及び外部の通気が行われ、かつ、前記筐体の内部の圧力と前記筐体の外部の圧力との差が所定の圧力以上になったときに前記通気弁が開いて前記筐体の内部の気体が前記筐体の外部に排出され、
前記構造部材は、前記通気膜及び/又は前記通気弁を収容する内部空間と、前記内部空間と当該通気部品の外部空間とを連通させる第一通気路及び第二通気路の少なくとも1つとを有し、
前記第一通気路は、前記内部空間に接した開口である第一内側開口及び前記外部空間に接した開口である第一外側開口を有し、前記第一内側開口の少なくとも一部が前記第一外側開口の少なくとも一部に対向し、かつ、前記装着状態において前記第一内側開口及び前記第一外側開口が前記筐体の当該通気部品が装着される外面に平行な平面に沿って存在し、
前記第二通気路は、前記内部空間に接した開口である第二内側開口及び前記外部空間に接した開口である第二外側開口を有し、前記第二外側開口から前記第二通気路の内部を見たときに前記第二内側開口を視認できない、
通気部品。
【請求項2】
前記通気弁は、傘型の開放弁であり、平面視したときに中央に貫通穴を有する円環状の弁部を有する、請求項1に記載の通気部品。
【請求項3】
前記第一外側開口は、前記装着状態において、前記筐体の前記外面に垂直な方向において前記第一内側開口よりも前記筐体の前記外面の近くに位置する、請求項1又は2に記載の通気部品。
【請求項4】
前記第二外側開口は、前記装着状態において、前記筐体の前記外面に垂直な方向において前記第二内側開口よりも前記筐体の前記外面の近くに位置する、請求項1又は2に記載の通気部品。
【請求項5】
前記装着状態において、前記第一外側開口及び前記第二外側開口の少なくとも1つと、
前記筐体の前記外面とは、向かい合っている、請求項1~4のいずれか1項に記載の通気部品。
【請求項6】
前記構造部材は、前記通気弁が閉じた状態で前記通気弁が接触し、かつ、前記通気弁が開いた状態で前記通気弁が離れる座面を有し、
下記(i)及び(ii)の条件の少なくとも1つを満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の通気部品。
(i)前記第一内側開口又は前記第二内側開口は、前記座面を含む平面上に存在する。
(ii)前記第一内側開口又は前記第二内側開口を含む平面は、前記座面を含む平面と交差する。
【請求項7】
前記構造部材は、前記座面を含むとともに第一内側開口又は前記第二内側開口まで平坦に延びている平坦面を有する、請求項6に記載の通気部品。
【請求項8】
前記装着状態において、前記構造部材は、前記外面に垂直な方向において前記座面よりも前記外面から離れた部分に前記内部空間と前記外部空間とを連通させる通気路を有しない、請求項6又は7に記載の通気部品。
【請求項9】
前記構造部材は、前記筐体の前記通気口に差し込まれる係合部を有し、
前記装着状態において、前記構造部材と前記筐体の前記外面との隙間をシールするシール部材をさらに備えた、
請求項1~8のいずれか1項に記載の通気部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーパック等の筐体における通気のために通気部品が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バッテリーパックの防爆弁に通気孔としての機能を持たせ、通気膜を備えた通気孔を別に設ける必要がない技術が記載されている。この防爆弁は、防爆弁ケースと、Oリングと、通気膜と、プロテクタとを備えている。防爆弁ケースは、円環状をなす合成樹脂製のケースである。Oリングは、防爆弁ケースとパックケースとの間をシールする。通気膜は、防爆弁ケースの中央開口部を閉塞するようにケースに取り付けられる円形のシート状の膜である。プロテクタは、通気膜の外側に重ねて配置される円形板状の合成樹脂製の部材である。プロテクタの周囲に通気孔となる切欠部を有し、通気膜を介して少量の空気の出入りが可能である。バッテリ異常時に内圧が急上昇すると、プロテクタが折れ曲がり、係止突起による係止が外れて脱落するので、瞬時に大きな通路断面積が確保され、内圧を開放できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-168293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の防爆弁は、その内部に水及び油等の液体が侵入することを抑制する観点から改良の余地を有している。そこで、本発明は、急上昇した筐体の内部の圧力を開放するのに適し、かつ、内部に水及び油等の液体が侵入することを抑制する観点から有利な通気部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
通気口において筐体に装着される通気部品であって、
通気膜と、
弾性体を含み、前記弾性体の弾性変形により開閉する通気弁と、
前記通気膜及び前記通気弁を支持する構造部材と、を備え、
当該通気部品が前記筐体に装着された装着状態において、前記通気膜によって前記筐体の内部及び外部の通気が行われ、かつ、前記筐体の内部の圧力と前記筐体の外部の圧力との差が所定の圧力以上になったときに前記通気弁が開いて前記筐体の内部の気体が前記筐体の外部に排出され、
前記構造部材は、前記通気膜及び/又は前記通気弁を収容する内部空間と、前記内部空間と当該通気部品の外部空間とを連通させる第一通気路及び第二通気路の少なくとも1つとを有し、
前記第一通気路は、前記内部空間に接した開口である第一内側開口及び前記外部空間に接した開口である第一外側開口を有し、前記第一内側開口の少なくとも一部が前記第一外側開口の少なくとも一部に対向し、かつ、前記装着状態において前記第一内側開口及び前記第一外側開口が前記筐体の当該通気部品が装着される外面に平行な平面に沿って存在し、
前記第二通気路は、前記内部空間に接した開口である第二内側開口及び前記外部空間に接した開口である第二外側開口を有し、前記第二内側開口が前記第二外側開口に対向していない、
通気部品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
上記の通気部品は、急上昇した筐体の内部の圧力を開放するのに適し、かつ、内部に水及び油等の液体が侵入することを抑制する観点から有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の通気部品の一例を示す底面図である。
図2A図2Aは、図1のA-A線に沿った通気部品の断面図である。
図2B図2Bは、図1のB-B線に沿った通気部品の断面図である。
図3図3は、筐体の通気口を示す斜視図である。
図4図4は、筐体に通気部品が装着された状態を示す断面図である。
図5図5は、通気弁が開いた状態を示す断面図である。
図6図6は、図4の一部を拡大した断面図である。
図7図7は、参考例に係る通気部品の一部を拡大した断面図である。
図8図8は、本発明の通気部品の別の一例の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例えば、車両の電装部品の筐体は、温度変化によりその内部に発生する差圧が解消されるように通気性を有する必要がある。一方、筐体において必要な通気性のレベルは、筐体の内部の事象により変動しうる。例えば、バッテリーパックの防爆のように、筐体の内部から多量のガスを短時間に排出できることが必要な場合がある。そこで、通気膜及び通気弁を備えた通気部品を筐体の通気口に装着することが考えられる。この場合、例えば、通気弁を閉じた状態で通気膜を用いて通常の通気が行われ、筐体の内部の圧力と筐体の外部の圧力との差が所定の圧力以上に高まると、通気弁が開いて多量のガスが短時間に排出される。通気弁として弾性体の弾性変形により開閉する通気弁を使用すれば、通気弁の再使用が可能である。なお、特許文献1に記載の防爆弁において、パックケースの内圧が急上昇した場合にはプロテクタに直接的に内圧が作用し、プロテクタがスリットに沿って折れ曲がるように撓み変形する。このため、特許文献1には、弾性体の弾性変形により開閉する通気弁を使用することは記載されていない。
【0010】
雨天時の車両の走行又は車両の洗浄作業により、通気部品が多量の水と接触することが想定される。この場合、通気部品の内部に水が侵入すると、通気部品に含まれる通気膜及び通気弁等の部材が劣化してしまい、通気が適切になされなくなる可能性がある。そこで、本発明者らは、通気膜及び通気弁を備えた通気部品において、その内部に水及び油等の液体が侵入することを抑制する観点から日夜検討を重ねた。その結果、通気膜及び通気弁を支持する構造部材を所定の通気路を有するように構成することを新たに思いつき、本発明に係る通気部品を案出した。なお、本発明に係る通気部品が装着される筐体は、車両の電装部品の筐体に限られない。
【0011】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。以下の説明は、本発明の例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0012】
図1図2A、及び図2Bに示す通り、通気部品1aは、通気膜10と、通気弁20と、構造部材30とを備えている。通気部品1aは、図3に示すような、通気口5を有する筐体2に装着される部品である。図4に示す通り、通気部品1aは、通気口5において筐体2に装着される。図4及び図5に示す通り、通気弁20は、弾性体を含み、弾性体の弾性変形により開閉する。構造部材30は、通気膜10及び通気弁20を支持する。通気部品1aが筐体2に装着された装着状態において、通気膜10によって筐体2の内部及び外部の通気が行われる。加えて、装着状態において、筐体2の内部の圧力と筐体2の外部の圧力との差が所定の圧力以上になったときに通気弁20が開いて筐体2の内部の気体が筐体2の外部に排出される。換言すると、筐体2の内部の圧力と筐体2の外部の圧力との差が所定の圧力未満である場合には、通気弁20は閉じている。構造部材30は、内部空間40と、第一通気路51を有する。内部空間40は、通気膜10及び/又は通気弁20を収容する空間である。通気部品1aにおいて、内部空間40は、通気膜10及び通気弁20を収容している。第一通気路51は、内部空間40と通気部品1aの外部空間とを連通させている。第一通気路51は、第一内側開口51i及び第一外側開口51eを有する。第一内側開口51iは、第一通気路51において内部空間40に接した開口である。第一外側開口51eは、第一通気路51において通気部品1aの外部空間に接した開口である。図6に示す通り、第一内側開口51iの少なくとも一部は、第一外側開口51eの少なくとも一部に対向している。換言すると、第一外側開口51eから第一通気路51の内部を見たときに第一内側開口51iの少なくとも一部を視認できる。図6に示す通り、装着状態において第一内側開口51i及び第一外側開口51eが筐体2の通気部品1aが装着される外面2sに平行な平面に沿って存在する。この場合、水等の液体は、外面2sに垂直な方向に向かって移動しなければ内部空間40に到達できない。このため、液体が内部空間40に導かれにくく、液体が通気膜10又は通気弁20と接触することを抑制できる。
【0013】
図7に示す通り、参考例に係る通気部品100では、構造部材30が第一通気路51の代わりに通気路55を有する。なお、通気部品100は、特に説明する部分を除き、通気部品1aと同様に構成されている。通気路55は、内部空間40と通気部品100の外部空間とを連通させている。通気路55は、内側開口55i及び外側開口55eを有する。内側開口55iの少なくとも一部は、外側開口55eの少なくとも一部に対向している。一方、通気部品100が筐体2に装着された装着状態において、内側開口55i及び外側開口55eのなす開口面は、筐体2の外面2sに平行な平面に対し垂直である。通気部品100では、液体が筐体2の外面2sに平行な方向に沿って移動してくると、液体が通気路55を通過して、内部空間40に導かれやすい。このため、通気部品100では、通気膜10及び通気弁20が液体によって劣化しやすい。
【0014】
図6に示す通り、第一外側開口51eは、例えば、装着状態において、筐体2の外面2sに垂直な方向において第一内側開口51iよりも筐体2の外面2sの近くに位置する。この場合、例えば、筐体2の外面2sに向かって液体が移動する場合に、液体が第一通気路51を通過して内部空間40に液体が導かれにくい。
【0015】
図6に示す通り、例えば、装着状態において、第一外側開口51eと、筐体2の外面2sとは向かい合っている。この場合、水等の液体は、外面2sに垂直な方向に向かって移動しなければ内部空間40に到達できない。このため、液体が内部空間40に導かれにくい。
【0016】
図4及び図5に示す通り、構造部材30は、例えば、座面32sを有する。座面32sは、通気弁20が閉じた状態で通気弁20が接触し、かつ、通気弁20が開いた状態で通気弁20が離れる面である。通気部品1aにおいて、例えば、第一内側開口51iは、座面32sを含む平面上に存在している。仮に、第一通気路51を液体が通過して座面32sの近傍に到達しても、その後液体が第一通気路51を通って内部空間40から排出されやすく、液体が内部空間40に留まりにくい。その結果、通気膜10及び通気弁20の劣化を抑制できる。
【0017】
図4及び図5に示す通り、構造部材30は、例えば、平坦面32mを有する。平坦面32mは、座面32sを含むとともに第一内側開口51iまで平坦に延びている。この場合、仮に、第一通気路51を液体が通過して座面32sの近傍に到達しても、その後液体が平坦面32m及び第一通気路51を通って内部空間40から排出されやすい。このため、液体が内部空間40に留まりにくい。その結果、通気膜10及び通気弁20の劣化を抑制できる。
【0018】
図4に示す通り、装着状態において、構造部材30は、筐体2の外面2sに垂直な方向において座面32sよりも外面2sから離れた部分に内部空間40と通気部品100の外部空間とを連通させる通気路を有しない。この場合、外面2sに垂直な方向において座面32sよりも外面2sから離れた外部空間からは内部空間40に直接液体が導かれない。
【0019】
図2A及び図2Bに示す通り、構造部材30は、例えば、係合部32cを有する。係合部32cは、筐体2の通気口5に差し込まれる。通気部品1aは、例えば、シール部材60をさらに備えている。図4に示す通り、シール部材60は、装着状態において構造部材30と筐体2の外面2sとの隙間をシールする。これにより、筐体2が液体と接触して筐体2の外面2sを伝って液体が流れても、筐体2の内部に液体が導かれることを防止できる。シール部材60は、例えば、O-リング又はパッキンである。シール部材60の材料は、例えば、弾性変形可能な材料である。
【0020】
図2A及び図2Bに示す通り、構造部材30は、例えば外方突出部32jを有する。外方突出部32jは、装着状態において、筐体2の外面2sに垂直な方向において第一内側開口51iと第一外側開口51eとの間に位置し、かつ、筐体2の外面2sに平行な方向に沿って第一外側開口51eよりも外周側に突出している。外方突出部32jは、例えば、筐体2の外面2sと向かい合っている。この場合、液体は、外方突出部32jと筐体2の外面2sと間の空間を通過しなければ、第一外側開口51eに到達できない。このため、液体が内部空間40により導かれにくい。外方突出部32jの筐体2の外面2sと向かい合っている面は、例えば、第一外側開口51eの開口面を含む平面上に含まれる。
【0021】
通気膜10は、所望の通気性を有する限り特定の通気膜に限定されない。通気膜10は、単層膜であってよいし、多層膜であってもよい。通気膜10が多層膜である場合、各層は、多孔質膜、不織布、クロス、及びメッシュからなる群より選ばれる1つでありうる。通気膜10は、多孔質膜及び不織布を含んでいてよく、クロス及びメッシュの少なくとも1つと多孔質膜とを含んでいてもよく、複数の不織布を含んでいてもよい。通気膜10は、典型的には、有機高分子材料(樹脂)によって構成されている。多孔質膜の材料は、例えば、フッ素樹脂である。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体を使用できる。不織布、クロス、及びメッシュの材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、アラミド、又はエチレン酢酸ビニル共重合体である。
【0022】
通気膜10は、必要に応じて撥液処理されていてもよい。撥液処理は、例えば、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面修飾剤を含む撥液性の被膜を通気膜10に形成することによってなされる。撥液性の被膜の形成は、特に制限されないが、例えば、エアスプレイ法、静電スプレイ法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンフローコーティング法、又は含浸法等の方法により、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面修飾剤の溶液又はディスパージョンで樹脂多孔質膜をコーティングすることによりなされる。また、電着塗装法又はプラズマ重合法によって、撥液性の被膜を形成してもよい。
【0023】
通気弁20は、弾性変形によって開き、変形前の形状に戻ることによって閉じる。このため、通気弁20は、開閉を繰り返すことができ、繰り返し使用できる。このことは、通気部品1aが筐体2に取り付けられた製品において通気弁20が正常に作動するかどうかを検査した後に、検査後の製品を出荷可能にするという利点をもたらす。
【0024】
通気弁20に含まれる弾性体は、弾性変形可能な材料である限り特に制限されないが、例えば、天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー等のエラストマーである。この場合、合成ゴムは、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、又は水素化ニトリルゴムである。通気弁20は、望ましくは、シリコーンゴムを弾性体として含んでいる。これらの弾性体は、シール部材60の材料としても使用可能である。
【0025】
通気弁20は、例えば、いわゆるアンブレラバルブ(傘型の開放弁)の一種であり、弁部を平面視したときに、その中央に貫通穴を有する円環状の部材である。アンブレラバルブは、通常、開閉を担う弁部と弁部を支持する軸部とを含んでいる。弁部をなす部材と、軸部をなす他の部材とを別々に有するアンブレラバルブもある。通気弁20は、例えば、弁部のみをなしており、弁部を平面視したときに円環状の形状を有する。一方、構造部材30は、弁部である通気弁20を支持する軸部の役割を果たしている。通気弁20の貫通穴は、構造部材30によって通気弁20を支持するために利用される。また、通気部品1aを平面視したときに、例えば、通気弁20の貫通穴の中の空間と通気膜10の全体とが重なるように通気膜10が配置されている。このように、通気弁20の貫通穴は、通気膜10の収容のために十分な大きさを有している。
【0026】
通気弁20は、弾性変形によって開き、変形前の形状に戻ることによって閉じるものである限り、その形状は特定のものに限定されない。通気弁20は、いわゆるダックビルバルブ型のものであってもよいし、アンブレラバルブ型のものであってもよい。通気弁20がアンブレラバルブである場合、通気弁20は、弁部と軸部とを含んでなるものであってもよく、弁部のみからなるものであってもよい。また、通気弁20が弁部のみからなるアンブレラバルブである場合、通気弁20は、貫通穴を有するものであってもよく、貫通穴を有しないものであってもよい。通気弁20が貫通穴を有するアンブレラバルブである場合、その貫通穴の形状は特定の形状に限定されず、貫通穴の寸法は特定の値に限定されない。
【0027】
図2A及び図2Bに示す通り、構造部材30は、例えば、第一部材31と、第二部材32と、第三部材33とを備えている。第一部材31は、通気膜10を支持している。第一部材31は、基部31bと、軸部31sとを備えている。基部31bは、円板状であり、通気膜10を支持している。基部31bは、その中央に通気のための貫通穴31hを有する。基部31bは、基部31bの軸線に垂直な方向において貫通穴31hの外側で通気膜10の周縁部を支持している。通気膜10は、例えば、熱溶着、超音波溶着、又は接着剤による接着等の方法によって、基部31bに固定されている。軸部31sは、基部31bの中央から基部31bの軸線方向に突出している。軸部31sは、筒状であり、基部31bの軸線方向において基部31bから離れた位置に複数(例えば3つ)の脚部31gを有する。複数の脚部31gは、例えば、基部31bの軸線周りに等角で離れて配置されている。複数の脚部31gのそれぞれは、その先端に、基部31bの軸線に垂直な方向に向かって突出する係合部31cを有する。軸部31sの内部又は脚部31g同士の間及び貫通穴31hを空気が出入りして通気が行われる。
【0028】
第二部材32は、構造部材30の底部及び側部をなしており、通気弁20を支持している。通気弁20は、例えば、その中央に貫通穴を有する円環状のアンブレラバルブであり、第二部材32は、アンブレラバルブの軸部をなしている。第二部材32は、環状の部材であり、内周部32i、外周部32e、及び連結部32kを備えている。内周部32iは、第二部材32の中央に位置しており、筒状である。外周部32eは、内周部32iの軸線に垂直な方向に内周部32iから離れて内周部32iを取り囲んでおり、筒状である。外周部32eは、構造部材30の側部をなしている。連結部32kは、内周部32iの軸線に垂直な方向において外周部32eと内周部32iとの間に位置し、外周部32eと内周部32iとを連結している。内周部32i及び連結部32kが構造部材30の底部をなしている。内周部32iは、その中央に貫通孔である取付孔32hを有する。第一部材31は、軸線方向における内周部32iの一方の端部において第二部材32に取り付けられている。内周部32iの一方の端部において取付孔32hはテーパー孔をなしている。加えて、内周部32iは、テーパー孔に隣接しており、内周部32iの軸線に垂直な方向に延びている環状の係合面32fを有する。取付孔32hのテーパー孔に軸部31sが差し込まれ、係合部31cが係合面32fと向かい合うことによって、第一部材31が取付孔32hから外れることが防止されている。加えて、内周部32iの軸線方向におけるテーパー孔に隣接した内周部32iの端面は、第一部材31の基部31bの底面と向かい合っている。
【0029】
内周部32iの内周面は、係合面32fから内周部32iの他方の端部に向かって複数(例えば、3つ)の段をなすように形成されている。例えば、内周部32iの内周面は、第一側面32p、第二側面32q、第三側面32r、第一接続面32t、及び第二接続面32uを有する。第一側面32p、第二側面32q、及び第三側面32rは、内周部32iの軸線方向に延びている。加えて、第一側面32p、第二側面32q、及び第三側面32rは、それぞれ、第一内径、第二内径、及び第三内径を有する。第一内径は第二内径より小さく、かつ、第二内径は第三内径より小さい。第一接続面32t及び第二接続面32uは、内周部32iの軸線に垂直な方向に延びている。第一接続面32tは、第一側面32pと第二側面32qとを接続している。第二接続面32uは、第二側面32qと第三側面32rとを接続している。
【0030】
図1に示す通り、内周部32iは、例えば、複数(例えば、3つ)の係合部32cを備える。係合部32cは、例えば、内周部32iの軸線方向における内周部32iの他方の端部において、内周部32iの軸線に垂直な方向に外側に突出している。係合部32cは、円弧状に湾曲した板状の部分である。複数の係合部32cは、例えば、内周部32iの軸線周りに等角で離れて配置されている。筐体2において、通気口5の一部は、複数(例えば、3つ)の突出部5pによって形成されている。複数の突出部5pは、通気口5の軸線周りに等角で離れて配置されており、突出部5p同士の間に、通気口5の一部をなす複数の溝5rが存在する。通気部品1aを筐体2に装着するとき、係合部32cが溝5rを通過するように通気部品1aが通気口5に差し込まれる。その後、筐体2の内部で係合部32cが突出部5pと向かい合うように、通気部品1aが内周部32iの軸線周りに所定の角度で回転させられて通気部品1aが筐体2に装着される。突出部5pと係合部32cとの協働により通気部品1aが筐体2から外れることが防止される。
【0031】
通気弁20は内周部32iの外周面と密着するように内周部32iに取り付けられている。例えば、通気弁20の貫通穴の穴径は、内周部32iの外周面と密着できるように定められている。
【0032】
連結部32kは、例えば、通気弁20に対する弁座としての役割を担う。換言すると、連結部32kは、座面32sを有する。座面32sは、連結部32kの周縁部に位置している。連結部32kは、ガスを流すための流路32dを有する。流路32dは、座面32sと内周部32iとの間において、内周部32iの軸線方向に連なるように形成されている。通気弁20は、流路32dによって、筐体2の内部の圧力を受ける。
【0033】
連結部32kは、例えば、環状溝32gをさらに有する。環状溝32gには、シール部材60が収容されている。環状溝32gは、例えば、内周部32iの軸線に垂直な方向において、座面32sと重なるように連結部32kの底面に形成されている。
【0034】
外周部32eは、連結部32kの外側において、内周部32iの軸線方向に沿って延びている。第一通気路51は、例えば、連結部32kと外周部32eの内面との間に形成されている。
【0035】
外周部32eは、内周部32iの軸線に垂直な方向に外側に突出した外方突出部32jを有する。外方突出部32jには、通気路53が形成されている。通気路53は、内周部32iの軸線方向に外方突出部32jを貫通している。第一通気路51を通過したガスの一部は、通気路53を通過して排出される。
【0036】
外周部32eは、例えば、複数の内方突出部32vを有する。内方突出部32vは、内周部32iの軸線方向における外周部32eの一方の端部において、内周部32iの軸線に垂直な方向に内側に突出している。複数の内方突出部32vは、内周部32iの軸線周りに所定の間隔で離れて配置されている。
【0037】
第三部材33は、円板状の部材である。第三部材33は、第二部材32と協働して内部空間40を形成し、通気膜10及び通気弁20を覆うための部材である。第三部材33は、円板状の蓋部33cと、係合爪33eを有する。係合爪33eは、蓋部33cの一方の主面の周縁部から蓋部33cの軸線方向に突出している。係合爪33eの先端部は、蓋部33cの軸線に垂直な方向に外側に突出している。係合爪33eが内方突出部32v同士の隙間を通過するように第三部材33が外周部32eの内部に差し込まれる。その後、係合爪33eの先端部が内方突出部32vと向かい合うように、第三部材33が蓋部33cの軸線周りに所定の角度で回転させられる。このようにして、第三部材33が第二部材32に取り付けられる。係合爪33eの先端部が内方突出部32vと向かい合っていることによって、第三部材33が第二部材32から外れることが防止される。
【0038】
構造部材30の材料は、例えば、合成樹脂又は金属である。合成樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、又はABS樹脂である。構造部材30の材料は、熱可塑性樹脂を母材とする複合材料であってもよい。この場合、複合材料に添加される強化剤は、ガラス繊維、炭素繊維、金属、又は無機フィラーでありうる。
【0039】
図4に示す通り、筐体2の内部の圧力と筐体2の外部の圧力との差が所定の圧力未満である場合、通気弁20は閉じており、筐体2の内部のガスは、流路32dを通って筐体2の外部に移動できない。このため、ガスは、内周部32iの取付孔32h、第一部材31の貫通穴31h、通気膜10、内部空間40、及び第一通気路51を含む流路を通って筐体2の内部及び外部を出入りする。一方、図5に示す通り、筐体2の内部の圧力と筐体2の外部の圧力との差が所定の圧力以上である場合、通気弁20が開き、筐体2の内部のガスは、流路32d、内部空間40、及び第一通気路51を含む流路を通って筐体2の外部に排出される。なお、筐体内部の圧力が急上昇することによって、通気弁を備えていても通気膜等が破損してしまうことがある。しかし、通気部品1aは、そのような現象を抑制できる構造を有する。通気膜等の破損を防止する手段として、通気弁を利用して筐体内部のガスを速やかに筐体外部に排出できる構造を提供することが考えらえる。そのためには、ガスが通過する流路の断面積の広さと、それを塞ぐ通気弁の弁部の大きさとを調整することが重要である。通気部品1aは、平面視したときに、通気弁20が中央に貫通穴を有する円環状の形状を有している。さらに、通気部品1aは、平面視したときに通気弁20の貫通穴を形成する内周面より内側に通気膜10が位置するように通気膜10が収容される構造を有している。このため、通気部品1aにおける限られた空間で、ガスが通過する流路の断面積及び通気弁20の弁部が可能な限り大きく確保されている。このため、筐体2の内部の圧力が急上昇したときに、通気弁20が開いて速やかに流路32d、内部空間40、及び第一通気路51を含む流路を通って筐体2の外部に排出される。
【0040】
通気部品1aは、様々な観点から変更可能である。通気部品1aは、例えば、図8に示す、通気部品1bのように変更されてもよい。通気部品1bは、特に説明する部分を除き、通気部品1aと同様に構成されている。通気部品1aの構成要素と同一又は対応する通気部品1bの構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。通気部品1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り通気部品1bにも当てはまる。図8において通気弁20は説明の便宜のため省略されている。
【0041】
図8に示す通り、通気部品1bにおいて、構造部材30は、第二通気路52を有する。第二通気路52は、内部空間40と、通気部品1bの外部空間とを連通させている。第二通気路52は、第二内側開口52i及び第二外側開口52eを有する。第二内側開口52iは、内部空間40に接した開口である。第二外側開口52eは、通気部品1bの外部空間に接した開口である。第二内側開口52iは、第二外側開口52eに対向していない。換言すると、第二外側開口52eから第二通気路52の内部を見たときに第二内側開口52iを視認できない。この場合、水等の液体は、第二通気路52において移動方向が変わらなければ内部空間40に到達できない。このため、液体が内部空間40に導かれにくく、液体が通気膜10又は通気弁20と接触することを抑制できる。
【0042】
図8に示す通り、第二外側開口52eは、例えば、装着状態において、筐体2の外面2sに垂直な方向において第二内側開口52iよりも筐体2の外面2sの近くに位置する。この場合、例えば、筐体2の外面2sに向かって液体が移動する場合に、液体が第二通気路52を通過して内部空間40に液体が導かれにくい。
【0043】
図8に示す通り、例えば、装着状態において、第二外側開口52eと、筐体2の外面2sとは向かい合っている。この場合、水等の液体は、外面2sに垂直な方向に向かって移動しなければ内部空間40に到達できない。このため、液体が内部空間40に導かれにくい。
【0044】
図8に示す通り、通気部品1bにおいて、例えば、第二内側開口52iを含む平面は、座面32sを含む平面と交差している。仮に、第二通気路52を液体が通過して座面32sの近傍に到達しても、その後液体が第二通気路52を通って内部空間40から排出されやすく、液体が内部空間40に留まりにくい。その結果、通気膜10及び通気弁20の劣化を抑制できる。
【0045】
図8に示す通り、平坦面32mは、座面32sを含むとともに第二内側開口52iまで平坦に延びている。仮に、第二通気路52を液体が通過して座面32sの近傍に到達しても、その後液体が平坦面32m及び第二通気路52を通って内部空間40から排出されやすい。このため、液体が内部空間40に留まりにくい。その結果、通気膜10及び通気弁20の劣化を抑制できる。
【0046】
図8に示す通り、通気部品1bにおいて、構造部材30は、例えば外方突出部32jを有する。外方突出部32jは、装着状態において、筐体2の外面2sに垂直な方向において第二内側開口52iと第二外側開口52eとの間に位置し、かつ、筐体2の外面2sに平行な方向に沿って第二外側開口52eよりも外周側に突出している。外方突出部32jは、例えば、筐体2の外面2sと向かい合っている。この場合、液体は、外方突出部32jと筐体2の外面2sと間の空間を通過しなければ、第二外側開口52eに到達できない。このため、液体が内部空間40により導かれにくい。外方突出部32jの筐体2の外面2sと向かい合っている面は、例えば、第二外側開口52eの開口面を含む平面上に含まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8