(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】複数の燃料を利用する内燃機関およびそのようなものを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
F02D 19/08 20060101AFI20231117BHJP
F02M 63/00 20060101ALI20231117BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20231117BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
F02D19/08 D
F02M63/00 P
F02M37/00 341C
F02P5/145 Z
(21)【出願番号】P 2020555390
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 US2018037705
(87)【国際公開番号】W WO2019199343
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-06-15
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】モルガンティ,カイ ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィオレ,ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘッド,ロバート アンドリュー
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0065016(US,A1)
【文献】特開2015-098838(JP,A)
【文献】特開2007-154881(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009028329(DE,A1)
【文献】特開2009-275687(JP,A)
【文献】特開2014-227999(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0083080(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0119391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/08
F02M 63/00
F02M 37/00
F02P 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を作動させる方法であって、
少なくとも1種のアルコールを含む第1の燃料および少なくとも1つの石油系燃料を含む第2の燃料を機関シリンダに入れて、燃料混合物を形成することと、
前記燃料混合物をスパークプラグで燃焼させて、前記機関シリンダ内に収容されたピストンを並進させて、前記ピストンに連結されたクランクシャフトを回転させることと、を含み、
前記第1の燃料は、前記第2の燃料よりも高いオクタン価を有し、
CA50が、前記燃料混合物の50重量%が燃焼したときの前記クランクシャフトの角度位置として定義され、前記CA50が、前記クランクシャフトの上死点位置を通過して測定され、前記CA50が、前記スパークプラグによる前記燃焼のタイミングの関数であり、
上死点を超えて14度から23度である目標CA50が、前記燃料混合物の燃料消費率の最小値に対応し、
前記目標CA50と作動CA50の両方が、最大ブレーキトルクタイミングのCA50を超えて遅延され
、
前記内燃機関が、前記目標CA50の
2度以内の作動CA50で作動するように、前記スパークプラグが、一度に燃焼を開始させる、方法。
【請求項2】
前記第1の燃料が、前記第2の燃料よりも低い早期着火抵抗を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のアルコールが、エタノールおよびメタノールのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記石油系燃料が、ガソリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の燃料が、ポート燃料噴射器によって吸気ポート内に噴射され、前記第2の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射される状態にある、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射され、前記第2の燃料が、ポート燃料噴射器によって吸気ポート内に噴射される状態にある、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射され、前記第2の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射される、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
最大ブレークトルクタイミングで作動する同一の機関に対して、
前記機関が、早期着火を低減させたこと、
前記機関の平均ピーク圧力を低減すること、
前記機関が、ノッキングすることなく、より少ない高オクタンの燃料で作動すること、
前記機関が、空気と燃料との間の混合を増加させたこと、
前記機関が、前記シリンダ内の燃料衝突を低減させたこと、またはおよび
前記機関が、摩耗を低減させたこと、のうちの少なくとも1つである、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
内燃機関であって、
機関シリンダと、
前記機関シリンダ内に収容されたピストンと、
前記ピストンに連結されたクランクシャフトと、
少なくとも1種のアルコールを含む第1の燃料を噴射する第1の燃料噴射器と、
石油系燃料を含む第2の燃料を噴射する第2の燃料噴射器であって、前記第1の燃料が、前記第2の燃料よりも高いオクタン価を備え、前記第1の燃料および前記第2の燃料が、前記機関シリンダの燃焼ゾーンにおいて燃料混合物を形成する、第2の燃料噴射器と、
前記燃料混合物を燃焼させて前記ピストンを並進させ、前記クランクシャフトを回転させるスパークプラグと、を備え、
CA50が、前記燃料混合物の50重量%が燃焼したときの前記クランクシャフトの角度位置として定義され、前記CA50が、前記クランクシャフトの上死点位置を通過して測定され、前記CA50が、前記スパークプラグによる前記燃焼のタイミングの関数であり、
上死点を超えて14度から23度である目標CA50が、前記燃料混合物の燃料消費率の最小値に対応し、
前記目標CA50と作動CA50の両方が、最大ブレーキトルクタイミングのCA50を超えて遅延され
、
前記内燃機関が前記目標CA50の
2度以内の作動CA50で作動するように、前記スパークプラグが、一度に燃焼を開始させる、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年4月9日に出願された米国実用特許出願第15/948,516号の利益を主張し、該米国実用特許出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、内燃機関に関し、より具体的には、複数の燃料を利用する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0003】
石油系燃料は、自動車などの軽量輸送車両の大多数に動力を供給するために使用される。例えば、比較的安価でユーザーが広く利用できるガソリンは、世界中で自動車の内燃機関に動力を供給するために利用されている。しかしながら、石油系燃料の燃焼は、二酸化炭素を環境中に放出する場合があり、それは多くの理由で望ましくない場合がある。輸送車両で使用する他のよりクリーンなエネルギー源は、コストがかかりすぎ、かつ開発中である場合があるため、効率が向上するか、燃料消費量が低減されるか、またはその両方を有する石油系燃料で作動可能な機関が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示するように、複数の燃料タイプを同時に利用する内燃機関を利用して、ノッキング、早期着火、またはその両方なしで機関を依然として作動させながら、燃料消費量を減らすことができる。機関のオクタン要件がかなり低い比較的低負荷および中間負荷で低オクタン燃料源を利用し、同時に高オクタン燃料を(低オクタン燃料と混合して)高負荷で付加的に利用して、低オクタン燃料を単独で使用した場合に発生するノッキングを軽減または排除することによって、より少ない燃料消費で内燃機関を運転できることが発見された。この方法により、限られた量の高オクタン燃料を活用して、機関が石油系燃料(メタノールやエタノールなどの一般に入手可能な高オクタン燃料よりもかなり高い比エネルギーを有する場合がある)をより効率的に使用できる場合がある。例えば、本明細書に開示されるのは、異なる耐ノッキング品質および別個の導入方法を有する2つの燃料で作動する内燃機関における早期着火を軽減するために使用することができる方法およびシステムである。1つ以上の実施形態では、石油由来燃料などの低オクタン燃料が、アルコール燃料などの高オクタン燃料と共に使用される。
【0005】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書に開示される機関を作動させる方法は、シリンダ内の空気-燃料混合物のピーク圧力、ピーク温度、またはその両方が(最大ブレーキトルクタイミングでの作動と比較して)低下するように一定の機関負荷で(所定の機関の最大ブレーキトルクタイミングを基準にして)燃焼位相を遅延させることを含み得る。この燃焼位相の遅延は、同時に、全体の混合物中の石油系燃料の画分を増加させながら、ノッキングに遭遇することなく機関が作動するために必要な高オクタン燃料の量を低減することができる燃焼位相の遅延により、燃料消費率と比二酸化炭素排出量が付加的に低減され得る。機関の作動に必要な低減された量のアルコール燃料と組み合わされたより低いシリンダ内圧力は、早期着火のような異常な燃焼現象を軽減し得る。
【0006】
1つ以上の実施形態によれば、内燃機関は、第1の燃料および第2の燃料を機関シリンダ内に噴射して燃料混合物を形成することと、燃料混合物をスパークプラグで燃焼させて、機関シリンダに収容されたピストンを並進させ、ピストンに連結されたクランクシャフトを回転させることと、のうちの1つ以上を含む。第1の燃料は、第2の燃料よりも高いオクタン価を含み得る。CA50は、燃料混合物の50重量%が燃焼したときのクランクシャフトの角度位置として定義され得、CA50は、クランクシャフトの上死点位置を通過して測定され得、CA50は、スパークプラグによる燃焼のタイミングの関数であり得る。目標CA50は、燃料混合物の燃料消費率の最小値に対応し得る。内燃機関が目標CA50の20度以内の作動CA50で作動するように、スパークプラグは、一度に燃焼を開始させ得る。
【0007】
1つ以上の追加の実施形態によれば、内燃機関は、機関シリンダ、機関シリンダ内に収容されたピストン、ピストンに連結されたクランクシャフト、第1の燃料を噴射する第1の燃料噴射器、第2の燃料を噴射する第2の燃料噴射器、および燃料混合物を燃焼させてピストンを並進させ、クランクシャフトを回転させるスパークプラグのうちの1つ以上を含み得る。第2の燃料は、第2の燃料よりも大きいオクタン価を含み得、第1の燃料および第2の燃料は、機関シリンダの燃焼チャンバ内で燃料混合物を形成し得る。CA50は、燃料混合物の50重量%が燃焼したときのクランクシャフトの角度位置として定義され得、CA50は、クランクシャフトの上死点位置を通過して測定され得、CA50は、スパークプラグによる燃焼のタイミングの関数であり得る。目標CA50は、燃料混合物の燃料消費率の最小値に対応し得る。内燃機関が目標CA50の20度以内の作動CA50で作動するように、スパークプラグは、一度に燃焼を開始させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと最もよく理解することができる。
【0009】
【
図1】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、内燃機関のシリンダの一部の断面図を概略的に描写する。
【
図2】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、別の内燃機関のシリンダの一部の断面図を概略的に描写する。
【
図3A】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、別の内燃機関のシリンダの一部の断面図を概略的に描写する。
【
図3B】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、別の内燃機関のシリンダの一部の断面図を概略的に描写する。
【
図4】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、50重量%燃焼(CA50)でのクランク角の関数としてのメタノール画分の実験結果を図式的に描写する。
【
図5】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、ガソリン燃料、メタノール燃料、および燃料混合物の低位発熱量の実験結果を、CA50の関数として図式的に描写する。
【
図6】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、CA50の関数としての正味熱効率の実験結果を図式的に描写する。
【
図7】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、CA50の関数としての燃料混合物の正味燃料消費率の実験結果を図式的に描写する。
【
図8】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、様々な機関負荷のCA50の関数としての平均ピーク圧力の実験結果を図式的に描写する。
【
図9】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、様々な機関負荷のCA50の関数としてのメタノール画分の変化の実験結果を図式的に描写する。
【
図10】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、様々な機関負荷のCA50の関数としてのメタノール画分の実験結果を図式的に描写する。
【
図11】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、様々な機関負荷のCA50の関数としての燃料混合物の正味燃料消費率の実験結果を図式的に描写する
【
図12】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、様々な機関負荷のCA50の関数としてのメタノール画分の実験結果を図式的に描写する。
【
図13】本明細書で説明する1つ以上の実施形態による、様々な機関負荷のCA50の関数としての燃料混合物の正味燃料消費率の実験結果を図式的に描写する。
【0010】
ここで、様々な実施形態をより詳細に参照し、そのいくつかの実施形態が添付の図面に示される。可能な限り、図面全体を通して同じ参照番号を使用して、同じまたは類似の部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載されているのは、すべてまたはいくつかの作動条件で少なくとも2つの燃料の組み合わせを利用する内燃機関およびその作動方法である。機関、およびそのような機関を作動させる方法は、機関の作動条件ならびに燃料特性の両方にプラスの影響を与え得るため、早期着火を軽減または排除することができる。1つ以上の実施形態では、(CA50によって測定されるように)燃焼位相を遅延させることにより、平均ピーク圧力を低減することができ、それにより、早期着火の可能性を低減することができる。燃焼位相の遅延はまた、ノッキングなしで機関を作動させるために必要とされる場合がある高オクタン燃料(例えば、アルコール)の量の低減につながり得、これもまた、早期着火の可能性を低減し得る。高オクタン燃料の量が少ないことはまた、空気-燃料混合物形成の改善をもたらし得る。付加的に、より少量の高オクタン燃料は、燃焼チャンバの表面への燃料の衝突を低減することができる。また、燃料の衝突が低減されると、シリンダボアの摩耗も減少し得る。理論にとらわれることなく、壁の濡れが増加すると、シリンダライニングの油膜が除去されることになり得ると考えられ、これは、ボア内(時にはシリンダ摩耗の最悪の場所)のピストンリング反転点の近くで発生する場合がある。したがって、燃料の衝突が低減されると、壁の濡れが低減され得、その結果、シリンダボアの摩耗が低減され得る。
【0012】
本明細書に記載されているように、スパーク点火内燃機関のノッキングは、スパークプラグによる点火に応答してシリンダ内の空気/燃料混合物の燃焼が正しく開始されず、1つ以上の空気/燃料混合物のポケットが、通常の燃焼フロントのエンベロープの外側で爆発するときの出来事を指すことがある。早期着火は、機関のノッキングとは技術的に異なる現象であるスパーク点火機関での発生を指す場合があり、スパークプラグが発火する前にシリンダ内の空気/燃料混合物が着火する事象を説明する。早期着火は、燃焼チャンバ内のホットスポット、アプリケーションに対して熱くなりすぎるスパークプラグ、または以前の機関燃焼によって白熱状態に加熱された燃焼チャンバ内の炭素質堆積物など、スパーク以外の点火源によって開始される。実際の機関では、圧縮ストローク中に起こり得る。これは、スパークタイミングを進めることに似ており、この進みが大きいほど、圧力が高くなり、結果として発生し得るノッキング/スーパーノッキング事象がより深刻になる。これにより、機関に重大な損傷を与え、機関の作動を停止させる可能性がある。したがって、早期着火は、スパーク点火機関の効率を改善する上での制限要因である。これらの現象の各々は、本明細書に記載されている方法および機関構成によって軽減または排除することができる。
【0013】
次に
図1を参照すると、内燃機関100の少なくとも一部の概略図が描写されている。具体的には、
図1は、内燃機関100の単一の機関シリンダ110を描写している。しかしながら、当業者によって理解されるように、内燃機関100は、
図1に示されるクランクシャフト180などの1つ以上のクランクシャフトに取り付けられ得る機関シリンダ110などの多数の機関シリンダを含み得る。
【0014】
内燃機関は、少なくとも機関シリンダ110、吸気ポート171、排気ポート172、およびピストン120を備えることができる。吸気ポート171は、吸気ポート171が機関シリンダ110に接続する場所に位置決めされた吸気弁172によって調整され得る。同様に、排気ポート173は、排気弁174によって調整され得る。吸気弁172および/または排気弁174は、機関作動に合わせて吸気弁174および/または排気弁174を維持する働きをすることができる1つ以上のカムまたはカムシャフト(
図1には描写せず)に接続することができる。ピストン120は、ロッド182を接続することによってクランクシャフト180に連結され得る。
【0015】
機関シリンダ110によって上部および側部に画定され、ピストン120によって下部に画定された容積は、燃焼チャンバ122と呼ばれる。吸気ポート171および排気ポート173は、流体が機関サイクル全体の様々な時間に燃焼チャンバ122に出入りできるように、燃焼チャンバ122と流体的に連結されている。スパークプラグ115は、燃焼チャンバ122に位置決めされ、タイミング式バーストで燃焼を開始する。
【0016】
図1に示す実施形態によれば、高オクタン燃料噴射器132は、最終的に燃焼チャンバ122に入ることになる高オクタン燃料を吸気ポート171内に噴射することができる。本明細書で説明するように、燃料を吸気ポート171内に噴射する燃料噴射器は、「ポート燃料噴射器」と呼ばれる。
図1に示すように、低オクタン燃料噴射器130は、低オクタン燃料を燃焼チャンバ122に直接噴射することができる。本明細書で説明するように、燃料を燃焼チャンバ122に直接噴射する燃料噴射器は、「直接燃料噴射器」と呼ばれる。低オクタン燃料噴射器130および高オクタン燃料噴射器132は、低オクタン燃料供給源161および高オクタン燃料供給源163からそれぞれの燃料を供給され得る。低オクタン燃料供給源161は、接続ライン141を介して低オクタン燃料噴射器130に流体接続され得る。同様に、高オクタン燃料供給源163は、接続ライン143を介して高オクタン燃料噴射器132に流体接続され得る。
【0017】
ここで
図2を参照すると、別の実施形態では、高オクタン燃料噴射器132は、高オクタン燃料を燃焼チャンバ122に供給する直接噴射器である。
図2に示すように、低オクタン燃料噴射器130は、低オクタン燃料を吸気ポート171に供給する間接噴射器であり得る。
【0018】
図3Aおよび
図3Bは、高オクタン燃料噴射器132および低オクタン燃料噴射器130が両方とも直接燃料噴射器である追加の実施形態を示している。そのような実施形態では、高オクタン燃料および低オクタン燃料の噴射の独立した制御が存在し得る。
図3Aは、両方の直接燃料噴射器がシリンダヘッド上に(例えば、スパークプラグ115にまたはその近くに)位置している実施形態を示す。
図3Bの実施形態は、シリンダヘッドに位置決めされた1つの燃料噴射器と、シリンダの側面に位置決めされた1つの燃料噴射器(側面取り付け式直接噴射器と呼ばれることもある)と、を有する。
【0019】
本明細書で説明するように、「低オクタン燃料」は、「高オクタン燃料」よりも低いオクタン価(またはオクタン数)を有する任意の燃料を指す場合があることを理解されたい。したがって、明記しない限り、低オクタン燃料および高オクタン燃料は、2つの間の関係が満たされる限り、任意のオクタン数を有し得る。オクタン価、またはオクタン数は、機関または航空燃料の性能の標準的な尺度である。オクタン数が高いほど、爆発(点火)する前に燃料が耐え得る圧縮力が高くなる。大まかに言えば、より高いオクタン価を有する燃料は、より高い圧縮比を必要とする高性能ガソリン機関で使用され得る。本明細書に記載されるように、「オクタン数」は、リサーチオクタン数(RON)を指す。
【0020】
1つ以上の実施形態によれば、低オクタン燃料は、ガソリンを含み得る。例えば、低オクタン燃料は、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、またはさらには少なくとも約99.9重量%のガソリンを含み得る。低オクタン燃料は、98以下、90以下、またはさらには80以下のオクタン数を有し得る。追加の実施形態では、低オクタン燃料は、91~95のような、60~98のオクタン数を有し得る。
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、高オクタン燃料は、メタノールまたはエタノールなどの1つ以上のアルコールを含み得る。例えば、低オクタン燃料は、全アルコールの少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、またはさらに少なくとも約99.9重量%のメタノール、エタノール、水、または水、メタノール、もしくはエタノールのいずれか2つ以上の組み合わせを含み得る。高オクタン燃料は、少なくとも91、少なくとも95、またはさらには少なくとも98のオクタン数を有し得る。追加の実施形態では、高オクタン燃料は、91~130、例えば105~115、例えば110のオクタン数を有することができる。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、高オクタン燃料は、メタノールであり得、燃料混合物中のメタノールの重量パーセント(すなわち、メタノールの量をメタノールとガソリンの合計で割った量)は、0重量%~40重量%であり得る。別の実施形態では、高オクタン燃料は、エタノールであり得、燃料混合物中のエタノールの重量パーセントは、10重量%~50重量%であり得る。燃料混合物のリマインダーは、ガソリンであり得る。低および高オクタン燃料のオクタン数または機関の圧縮比に基づいて、メタノールまたはエタノールの他の重量パーセント範囲を利用することができると考えられる。例えば、圧縮比が増加すると、メタノールまたはエタノールの重量パーセントが大きくなり得る。理論にとらわれることなく、いくつかの実施形態では、アルコールのパーセンテージは、50重量%を超え、75重量%を超え、95重量%を超え、またはさらに100重量%であってもよい。
【0023】
内燃機関100は、高オクタン燃料と低オクタン燃料とを含む燃料混合物の繰り返し燃焼によって作動することができる。スパークプラグ155によって開始される燃料混合物の燃焼は、ピストン120を最上位置と最下位置との間で並進させることができる。ピストン120の動きは、クランクシャフト180を回転させ得る。クランクシャフト180は、(ピストン120の最上位置に対応する)上死点位置および(ピストン120の最下位置に対応する)下死点位置を介して回転し得る。1つ以上の実施形態では、他の機関構成が企図されるが、内燃機関は、4ストローク機関として作動することができる。そのような実施形態では、吸気、圧縮、動力、および排気のストロークが循環し得る。吸気ストロークでは、ピストンは、下方に移動することができ、空気および/または燃料は、吸気ポート171を通って燃焼チャンバ122に入ることができる。圧縮ストロークでは、ピストン120が上方に移動するにつれて、空気および燃料が圧縮される。動力ストロークでは、ピストンは、スパークプラグ115からのスパークによって引き起こされる燃焼によって押し下げられる。所定の機関の最大熱効率の利用に基づく(スパークプラグの点火による)最適な燃焼タイミングは、最大ブレーキトルクタイミングと呼ばれる。排気ストロークでは、ピストンは上方に移動して、排気ガス(燃焼反応の生成物)を排気ポート173を通して燃焼チャンバ122から押し出す。
【0024】
1つ以上の実施形態によれば、内燃機関100は、比較的低負荷で運転しながら低オクタン燃料のみを利用することによって作動することができる。内燃機関100は、より大きい負荷で高オクタン燃料と低オクタン燃料の混合物を利用することができる。例えば、機関負荷が低い場合は、作動のためにガソリンで十分であり得るが、機関負荷が高い場合は、燃焼する燃料のオクタン価を増加させるための添加剤としてアルコールが必要である。高オクタン燃料および低オクタン燃料用の別個の燃料噴射器130、132は、他の作動条件で低オクタン燃料のみを利用しながら、いくつかの作動条件では高オクタン燃料のオンデマンド噴射を可能にし得る。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、CA50は、燃料質量の50重量%が燃焼されたクランク角度として定義され得、特に指定されない限り、ピストンの上死点(TDC)位置に対して定義される。CA50は、機関の燃焼のスパーク点火のタイミングを表す場合がある。つまり、スパークのタイミングは、CA50を決定し得る。各機関構成と作動条件について、最大ブレーキトルクCA50を決定ですることができ、これは、機関の最大熱効率が利用されるCA50である。
【0026】
本明細書で開示される実施形態では、機関は、最大ブレーキトルクに対応するCA50より遅いCA50タイミングで作動することができる。このスパーク点火の遅延したタイミングは、本明細書では、燃焼位相の遅延またはスパークタイミングと呼ばれることがある。燃焼位相の遅延により、点火中の機関圧力および温度が低下することになり得る。付加的に、燃焼位相の遅延(すなわち、最大ブレーキトルクCA50よりも大きいCA50を利用する)により、機関をより低いCA50値よりも低いオクタン燃料で作動させることが可能になり得る。例えば、最大ブレーキトルクに対応するCA50で機関を作動させるには、最大ブレーキトルクに対応するものを超えるCA50で機関を作動させるよりも高いオクタン燃料混合物が必要になる場合がある。
【0027】
1つ以上の実施形態では、機関は、機関作動に利用されるCA50でのノッキングを防止するのに必要な最小オクタン価またはその近くの混合燃料で作動させることができる。すなわち、所与のCA50機関タイミングに対して、適切な量の高オクタン燃料を残りの低オクタン燃料と組み合わせて、ノッキングが発生しないように十分なオクタン数を有する混合燃料を提供することができる。作動CA50(機関が作動するCA50)の場合、燃料混合物の最小オクタン価は、実験に基づいて決定することができる。使用される高オクタン燃料および低オクタン燃料のオクタン数に基づいて、作動CA50でのノッキングを防止するために必要な高オクタン燃料の最小重量パーセントを決定することができる。1つ以上実施形態では、機関は、機関のノッキングを防止するために必要なこの最小重量パーセンテージの20重量%以内、15重量%以内、10重量%以内、5重量%以内、2重量%以内、さらには1重量%以内の重量パーセントの高オクタン燃料で作動させることができる。
【0028】
1つ以上の実施形態では、低オクタン燃料は、高オクタン燃料を超える低位発熱量を有する。したがって、CA50が増加すると、混合燃料の低位発熱量が増加することがある(CA50が大きいほど、低オクタン燃料をより多く利用できるため)。ここで使用されるように、燃料の「低位発熱量」は、反応生成物中の水の蒸発潜熱が回収されないことを前提として、指定された量(最初は25℃で)を燃焼させ、燃焼生成物の温度を150℃に戻すことによって放出される熱量として定義される。低位発熱量は、正味カロリー値と呼ばれる場合がある。
【0029】
実施形態によれば、燃料混合物の低位発熱量は、作動CA50が増加するにつれて増加し得るが、機関効率は、作動CA50が増加するにつれて減少し得る。したがって、機関の最小燃料消費量は、機関効率と利用される燃料混合物の両方の関数(例えば、利用される高オクタン燃料の重量パーセンテージ)であり得るため、燃料消費率は本明細書で「目標CA50」と呼ばれる、特定のCA50で最小化され得る。目標CA50では、最小燃料消費量が最小化され、CA50の増加に伴う機関の熱効率の低下は、CA50の値が高くなると混合燃料の低位発熱量が増加することで最大限に相殺される。
【0030】
1つ以上の実施形態によれば、内燃機関100は、目標CA50の20度以内にある作動CA50で作動することができる。例えば、作動CA50は、目標CA50の15度以内、10度以内、8度以内、6度以内、4度以内、または2度以内でさえあり得る。そのような作動は、高オクタン燃料添加剤を利用して作動CA50での機関のノッキングを防止する内燃機関の燃料消費率を十分に最小化することができる。
【0031】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書で開示される機関は、6度または8度~35度、例えば14度~23度のCA50で作動することができる。例えば、作動CA50は、8度~14度、14度~17度、17度~20度、または20度~23度、23度~30度、30度~35度、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。作動CA50は、機関作動の負荷および/または使用される低オクタンおよび高オクタン燃料に依存し得る。例えば、表1は、高オクタン燃料がエタノール、メタノール、または水を含むかもしくは水を含まないそれらの組み合わせであり得る様々な機関条件に考えられるCA50値を示す。
【表1】
【0032】
理論にとらわれることなく、本明細書に記載の作動方法を利用する機関は、最大のブレークトルクタイミングで運転する同一の機関よりも1つ以上の利点を有し得ると考えられている。例えば、機関は、早期着火を低下させている場合があり、機関の平均ピーク圧力が低下する場合があり、機関は、低オクタン燃料でノッキングすることなく作動する場合があり、機関は、空気と燃料間の混合を増加させる場合があり、機関は、シリンダ内の燃料の衝突を低下させる場合があり、または機関は、摩耗を低下させる場合がある。
【実施例】
【0033】
内燃機関の様々な実施形態およびその作動は、以下の実施例によってさらに明らかにされるであろう。これらの実施例は本質的に例示的なものであり、本開示の主題を限定するものと理解されるべきではない。
【0034】
本開示の内燃機関がどのように異常燃焼現象を軽減できるかを示すために、2つの燃料機関システムが実験的に分析された。
【0035】
実施例1
2500rpmおよび13バールで作動する機関システムを、それぞれ高オクタン燃料および低オクタン燃料として利用したエタノールとガソリンにより、様々なCA50で分析した。実施例で利用されているガソリンは、RONが90の酸素化ブレンド(BOB)用サウジアラビアガソリンブレンドストックであった。実施例1の機関について、最大ブレーキトルクは、約8度aTDC(上死点後)と測定された。
【0036】
8度を超えるCA50で機関を分析し、所定のCA50でのノッキングを防止するために必要な高オクタン燃料の必要量を決定した。
図4は、ノッキング防止のために様々なCA50で機関に必要とされるメタノールの重量比を描写している。メタノール画分は、所定の燃焼位相での機関の最小オクタン要件に基づいて間接的に確立された。すなわち、
図4に示される所定のCA50で、より少ないメタノールでノッキングが発生したであろう。この作動条件では、最も遅延された燃焼位相(aTDC約28度のCA50)でのオクタン要件は、機関がガソリン燃料のみで作動されるように十分に低くなっている。予想したように、機関は、最大ブレーキトルクCA50に近づくCA50でノッキングすることなく作動するために、より高いオクタンの燃料混合物を必要とした。
【0037】
付加的に、
図5は、
図4に示されるメタノール対ガソリン比の要件を説明する、メタノールおよびガソリンの様々な位相角度における低位発熱量を描写している。
図5は付加的に、燃料混合物の組み合わされた低位発熱量を示している。
図5に描写されるように、より低いオクタン数を有する燃料混合物(大きなCA50位相で利用できる)は、より高いオクタン数燃料混合物よりも高いエネルギー含有量を有する。
【0038】
図6は、様々なCA50タイミングでの機関の測定された正味熱効率を描写している。最大の機関効率は最大のブレーキトルクで発生し、正味の熱効率は、CA50位相の増加(最大のブレーキトルクタイミングから離れて移動する)とともに減少する。
【0039】
図7は、様々なCA50タイミングでの正味燃料消費率(NSFC)を描写している。熱効率と低位発熱量の競合効果により、熱効率の段階的な改善が燃料の結合エネルギー密度の段階的な減少を相殺する以上の場合、最終的には、燃焼位相をさらに進めると、組み合わされた燃料消費率にのみ有益であると判断される。このトレードオフは、
図7の組み合わされた燃料消費率曲線内の極小を生成する。これは、燃焼位相がMBTスパークタイミングに向かって進むにつれて、熱効率の漸進的な改善が下降し続けることに起因する。熱効率と燃料エネルギー密度の間のこのトレードオフを最大化することで、ピーク効率の作動条件(CA50が約8度aTDC)に関して、組み合わされた燃料消費率を9%低減する。ノッキングを抑制するために必要なメタノールの量も60%以上低減される。
【0040】
例えば、約28度のCA50の作動(すべてのガソリンを燃料として)は、オクタン品質が最も低いがエネルギー密度が最も高い燃料を表す。燃焼位相を進めるには、化学量論的燃焼を維持するためにガソリンブレンドストックの量を同時に低減しながら、メタノールの量を増加させる必要がある。これは、さらに最適化された燃焼位相を介して機関の熱効率を増加させるが、組み合わされた燃料のエネルギー密度を低減する。
【0041】
実施例2
実施例1の機関および条件でさらなる試験を行ったが、機関負荷を18バール、16バール、13バール、11バール、および8バールに変化させ、機関は常に1500rpmで運転させた。約8度のCA50でのMBTは、このレベルを下回るすべての負荷で、ガソリンのみで機関を作動させて(すなわち、高オクタン燃料によるオクタン濃縮なしで)維持することができた。
図8は、最大ブレークトルクまたはシリンダ圧力制限(該当する場合)を超えたCA50の関数として平均ピーク圧力を示している。付加的に、
図9は、CA50の関数としてのメタノール画分の変化を示しており、これも、最大ブレークトルクまたはシリンダ圧力制限(該当する場合)を超えた度に標準化されている。熱効率と燃料エネルギー密度の間のトレードオフは、燃焼位相とピークシリンダ圧力の間の関係によって可能になる。燃焼位相が遅延されると、ピークシリンダ圧力が低減され、機関のオクタン要件が効果的に下がる。これにより、ノッキングを抑制するために必要なメタノールの量を低減する。例えば、2つの最低機関負荷(11バールおよび8バール)で、6クランク角度(CAD)だけ燃焼位相を遅延させることにより、メタノール画分を100%および50%低減することができる。これらの利点は、機関負荷の増加に伴って減るが、この実験で考慮した最高負荷ではなお25%を超えている。
【0042】
実施例3
メタノールとガソリンを利用し、様々な機関負荷(18バール、16バール、13バール、11バール、および8バール)の下で1500rpmで作動する機関は、様々なCA50値で実験的に分析され、燃料混合物中のメタノール含有量は、ノッキングを防ぐために必要な量に最小化された。
図10は、様々な機関負荷に対するCA50の関数としてのメタノール画分を示し、
図11は、様々な機関負荷に対するCA50の関数としての燃料混合物の正味燃料消費率を示している。
【0043】
実施例4
エタノールとガソリンを利用し、様々な機関負荷(18バール、16バール、13バール、および11バール)の下で2500rpmで作動する機関は、様々なCA50値で実験的に分析され、燃料混合物中のエタノール含有量は、ノッキングを防ぐために必要な量に最小化された。
図12は、様々な機関負荷に対するCA50の関数としてのエタノール画分を示し、
図13は、様々な機関負荷に対するCA50の関数としての燃料混合物の正味燃料消費率を示している。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
内燃機関を作動させる方法であって、
第1の燃料および第2の燃料を機関シリンダに入れて、燃料混合物を形成することと、
前記燃料混合物をスパークプラグで燃焼させて、前記機関シリンダ内に収容されたピストンを並進させて、前記ピストンに連結されたクランクシャフトを回転させることと、を含み、
CA50が、前記燃料混合物の50重量%が燃焼したときの前記クランクシャフトの角度位置として定義され、前記CA50が、前記クランクシャフトの上死点位置を通過して測定され、前記CA50が、前記スパークプラグによる前記燃焼のタイミングの関数であり、
目標CA50が、前記燃料混合物の燃料消費率の最小値に対応し、
前記内燃機関が、前記目標CA50の20度以内の作動CA50で作動するように、前記スパークプラグが、一度に燃焼を開始させる、方法。
実施形態2
前記第1の燃料が、前記第2の燃料よりも高いオクタン価を有する、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記第1の燃料が、前記第2の燃料よりも低い早期着火抵抗を有する、実施形態2に記載の方法。
実施形態4
前記第1の燃料が、少なくとも1種のアルコールを含む、実施形態3に記載の方法。
実施形態5
前記少なくとも1種のアルコールが、エタノールおよびメタノールのうちの少なくとも1つを含む、実施形態4に記載の方法。
実施形態6
前記第2の燃料が、石油系燃料を含む、実施形態3に記載の方法。
実施形態7
前記石油系燃料が、ガソリンである、実施形態6に記載の方法。
実施形態8
前記第1の燃料が、ポート燃料噴射器によって吸気ポート内に噴射され、前記第2の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射される状態にある、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
実施形態9
前記第1の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射され、前記第2の燃料が、ポート燃料噴射器によって吸気ポート内に噴射される状態にある、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
実施形態10
前記第1の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射され、前記第2の燃料が、直接燃料噴射器によって前記機関シリンダ内に噴射される、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
実施形態11
前記燃料混合物中の前記第1の燃料の量が、前記作動CA50でノッキングを防止するのに必要な第1の燃料の最小量の20重量%以内である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
実施形態12
前記作動CA50が、8度~35度aTDCである、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
実施形態13
前記スパークプラグによる前記燃焼のタイミングが、最大ブレーキトルクタイミングに対して遅延される、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
実施形態14
最大ブレークトルクタイミングで作動する同一の機関に対して、
前記機関が、早期着火を低減させたこと、
前記機関の平均ピーク圧力を低減すること、
前記機関が、ノッキングすることなく、より少ない高オクタンの燃料で作動すること、
前記機関が、空気と燃料との間の混合を増加させたこと、
前記機関が、前記シリンダ内の燃料衝突を低減させたこと、またはおよび
前記機関が、摩耗を低減させたこと、のうちの少なくとも1つである、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
実施形態15
内燃機関であって、
機関シリンダと、
前記機関シリンダ内に収容されたピストンと、
前記ピストンに連結されたクランクシャフトと、
第1の燃料を噴射する第1の燃料噴射器と、
第2の燃料を噴射する第2の燃料噴射器であって、前記第2の燃料が、前記第2の燃料よりも高いオクタン価を備え、前記第1の燃料および前記第2の燃料が、前記機関シリンダの燃焼ゾーンにおいて燃料混合物を形成する、第2の燃料噴射器と、
前記燃料混合物を燃焼させて前記ピストンを並進させ、前記クランクシャフトを回転させるスパークプラグと、を備え、
CA50が、前記燃料混合物の50重量%が燃焼したときの前記クランクシャフトの角度位置として定義され、前記CA50が、前記クランクシャフトの上死点位置を通過して測定され、前記CA50が、前記スパークプラグによる前記燃焼のタイミングの関数であり、
目標CA50が、前記燃料混合物の燃料消費率の最小値に対応し、
前記内燃機関が前記目標CA50の20度以内の作動CA50で作動するように、前記スパークプラグが、一度に燃焼を開始させる、内燃機関。
実施形態16
耐ノッキング性と早期着火特性が異なる複数の燃料で作動する内燃機関のためのシステムであって、
第1の燃料を前記機関内の燃焼チャンバに導入する第1の燃料噴射器と、
第2の燃料を前記燃焼チャンバに導入する第2の燃料噴射器と、
前記燃焼チャンバ内で前記第1および第2の燃料によって形成される燃料混合物を燃焼させるスパークプラグと、を備え、前記第1の燃料噴射器、前記第2の燃料噴射器、および前記スパークプラグが、前記システムによって生成された燃焼位相により、前記内燃機関の作動中の早期着火とノッキングの両方を実質的に回避しながら、最大のブレーキトルクをもたらすために必要なスパークタイミングと最小燃料消費率をもたらすために必要なスパークタイミングとの間の時間中に、前記スパークプラグが前記混合物を点火させるように協働する、内燃機関のためのシステム。
【図 】