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  • 特許-ゴム状組成物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】ゴム状組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231117BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20231117BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20231117BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20231117BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231117BHJP
   F16L 11/10 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L1/02
C08L63/00 A
C08L9/00
B60C1/00 Z
F16L11/10 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020557678
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2019045839
(87)【国際公開番号】W WO2020110955
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018221514
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅行
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真之
(72)【発明者】
【氏名】細木 佑美
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕明
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-172823(JP,A)
【文献】特開2016-079370(JP,A)
【文献】特開2019-183123(JP,A)
【文献】特開2019-178195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
B60C
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)とセルロース(B)と9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有するフルオレン化合物(C)とを含むゴム状組成物であって、
前記フルオレン化合物(C)が、下記式(1)で表される化合物であり、かつ
前記フルオレン化合物(C)の割合が、前記セルロース(B)100質量部に対して10~90質量部であるゴム状組成物。
【化1】
{式中、環Zはアレーン環、R およびR は置換基、X は基-[(OA) m1 -Y ](式中、Aはアルキレン基、Y はヒドロキシル基またはグリシジルオキシ基、m1は0以上の整数を示す)、kは0~4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す}
【請求項2】
がヒドロキシル基である請求項記載のゴム状組成物。
【請求項3】
フルオレン化合物(C)が、セルロース(B)の表面の少なくとも一部に付着している請求項1または2記載のゴム状組成物。
【請求項4】
セルロース(B)とフルオレン化合物(C)とが共有結合していない請求項記載のゴム状組成物。
【請求項5】
セルロース(B)が、セルロースナノ繊維である請求項1~のいずれかに記載のゴム状組成物。
【請求項6】
ゴム成分(A)が、加硫または架橋可能なゴムおよび/または熱可塑性エラストマーである請求項1~のいずれかに記載のゴム状組成物。
【請求項7】
ゴム成分(A)が、ジエン系ゴムおよびオレフィン系ゴムからなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1~のいずれかに記載のゴム状組成物。
【請求項8】
ゴム成分(A)が、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む請求項1~のいずれかに記載のゴム状組成物。
【請求項9】
セルロース(B)の割合が、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1~30質量部である請求項1~のいずれかに記載のゴム状組成物。
【請求項10】
ゴム成分(A)とセルロース(B)と9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有するフルオレン化合物(C)とを混合する混合工程を含む請求項1~のいずれかに記載のゴム状組成物の製造方法。
【請求項11】
混合工程において、セルロース(B)と9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有するフルオレン化合物(C)とを予め予備混合して予備混合物を調製した後、この予備混合物とゴム成分(A)とを混合する請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
ゴム成分(A)が加硫または架橋可能なゴムであり、混合工程で得られた未加硫ゴム組成物を加硫して加硫ゴム組成物を得る加硫工程をさらに含む請求項10または11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~のいずれかに記載のゴム状組成物で形成された成形体。
【請求項14】
ホース部材、シール部材、タイヤ、ベルトまたは防振ゴムである請求項13記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物で被覆されたセルロースとゴム成分とを含むゴム状組成物(又はゴム組成物)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来の繊維であるセルロースは、環境負荷が小さく、かつ持続型資源であるとともに、高弾性率、高強度、低線膨張係数などの優れた特性を有する。そのため、幅広い用途、例えば、紙、フィルムやシートなどの材料、樹脂の複合材料(例えば、樹脂の補強剤)などに利用されている。また、ゴム組成物においても、ゴムの機械的特性を向上させるために、補強剤としてセルロースが添加されている。
【0003】
特開2005-75856号公報(特許文献1)には、優れた低発熱性と剛性とを両立できるゴム組成物として、天然植物繊維から調製され、かつ平均粒子径が100μmである微粉末セルロース繊維をジエン系ゴム100重量部に対して2~100重量部含有するタイヤゴム組成物が開示されている。また、特開2005-133025号公報(特許文献2)には、耐摩耗性に優れるゴム組成物として、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、澱粉5~75重量部、繊維直径1μm以下のバクテリアセルロース0.1~40重量部からなるゴム組成物が開示されている。
【0004】
しかし、これらのゴム組成物では、ゴムとセルロースとの相容性が低いため、破断特性などが低下する。
【0005】
そこで、ゴムとセルロースとの相容性を向上させるために、特許第4581116号公報(特許文献3)には、破断特性に優れ、ゴムとセルロースとの界面におけるエネルギーロスの少ない加硫ゴム組成物として、天然ゴム、変性天然ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびポリブタジエンゴムの少なくともいずれかからなるゴム成分100重量部に対して、平均繊維径4nm~1μmの化学変性ミクロフィブリルセルロース1~50重量部(より好ましくは7~15重量部)を含有する加硫ゴム組成物が開示されている。この文献には、ミクロフィブリルセルロースの化学変性方法として、アセチル化、アルキルエステル化、複合エステル化、β-ケトエステル化、アリールカルバメート化が記載されている。
【0006】
しかし、このゴム組成物でも、ゴムと化学変性ミクロフィブリルセルロースとの親和性が低いためか、強度や伸び、硬度などの機械的特性を向上できない。さらに、これらの特性を向上させるためには、多量の化学変性ミクロフィブリルセルロースが必要であり、諸特性の両立が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-75856号公報(請求項1および段落[0007])
【文献】特開2005-133025号公報(特許請求の範囲)
【文献】特許第4581116号公報(特許請求の範囲、段落[0003][0006][0039])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、強度や伸び、硬度などの機械的特性を向上できるゴム状組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、セルロースと9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物とを組み合わせてゴム成分に配合することにより、ゴム状組成物における強度や伸び、硬度などの機械的特性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明のゴム状組成物(又はゴム組成物)は、ゴム成分(A)とセルロース(B)と9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有するフルオレン化合物(C)とを含む。前記フルオレン化合物(C)は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、環Zはアレーン環、RおよびRは置換基、Xはヘテロ原子含有官能基、kは0~4の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数を示す)。
【0013】
前記式(1)において、Xは、基-[(OA)m1-Y](式中、Aはアルキレン基、Yはヒドロキシル基またはグリシジルオキシ基、m1は0以上の整数を示す)であってもよく、特に、Yはヒドロキシル基であってもよい。前記フルオレン化合物(C)は、セルロース(B)の表面の少なくとも一部に付着していてもよい。前記セルロース(B)と前記フルオレン化合物(C)とは共有結合していない。前記セルロース(B)は、セルロースナノ繊維であってもよい。前記ゴム成分(A)は、加硫または架橋可能なゴムおよび/または熱可塑性エラストマーであってもよい。前記ゴム成分(A)は、ジエン系ゴムおよびオレフィン系ゴムからなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。また、前記ゴム成分(A)は、スチレン系熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。前記セルロース(B)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1~30質量部程度である。前記フルオレン化合物(C)の割合は、前記セルロース(B)100質量部に対して1~100質量部程度である。
【0014】
本発明には、ゴム成分(A)とセルロース(B)と9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有するフルオレン化合物(C)とを混合する混合工程を含む前記ゴム状組成物(又はゴム組成物)の製造方法も含まれる。前記混合工程において、セルロース(B)と9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有するフルオレン化合物(C)とを予め予備混合して予備混合物を調製した後、この予備混合物とゴム成分(A)とを混合してもよい。前記製造方法は、前記ゴム成分(A)が加硫または架橋可能なゴムである場合、混合工程で得られた未加硫ゴム組成物を加硫して加硫ゴム組成物を得る加硫工程をさらに含んでいてもよい。
【0015】
本発明には、前記ゴム状組成物(又はゴム組成物)で形成された成形体も含まれる。この成形体は、ホース部材、シール部材、タイヤ、ベルトまたは防振ゴムであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、セルロースと9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有する化合物とを組み合わせているため、前記セルロースをゴム成分中に均一に分散でき、ゴム状組成物(又はゴム組成物)の強度や伸び、硬度などの機械的特性を同時に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、参考例2で使用したセルロースナノ繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2図2は、参考例3で使用したセルロースナノ繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3図3は、実施例2で得られたBPEFとセルロースナノ繊維との複合体の解繊が進んだ箇所における走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図4図4は、実施例2で得られたBPEFとセルロースナノ繊維との複合体の解繊が十分に進まなかった箇所における走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のゴム状組成物(又はゴム組成物)は、ゴム成分(A)と、セルロース(B)と、9,9-ビス(アリール)フルオレン骨格を有するフルオレン化合物(C)とを含む。
【0019】
[ゴム成分(A)]
ゴム成分(A)には、加硫または架橋可能なゴム、熱可塑性エラストマーが含まれる。ゴムおよび熱可塑性エラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
ゴムとしては、特に限定されず、慣用のゴムを利用できる。慣用のゴムとしては、例えば、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム(ACM、ANM)、ブチルゴム(IIR)、エピクロロヒドリンゴム(CO)、多硫化ゴム(OT、EOT)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FFKM、FKM)、含イオウゴムなどが挙げられる。これらのゴムは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのゴムのうち、フルオレン化合物(C)によるセルロース(B)の分散性向上効果が大きい点から、ジエン系ゴムおよび/またはオレフィン系ゴムが好ましい。
【0021】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム、ポリブタジエン[例えば、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエン(VBR)など]、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、水添ゴム(例えば、水素化BR、水素化NBR、水素化SBRなど)であってもよい。これらのジエン系ゴムは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
オレフィン系ゴムとしては、例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-ブテンゴム、エチレン-1-ブテン-ジエンゴム、プロピレン-1-ブテン-ジエンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン-酢酸ビニルゴム、マレイン酸変性エチレン-プロピレンゴム(M-EPM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M-CM)などが挙げられる。オレフィン系ゴムに含まれるジエン単位(非共役ジエン単位)としては、例えば、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン由来の単位などが挙げられる。これらのオレフィン系ゴムは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0023】
なお、共重合ゴムは、ランダムまたはブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体には、AB型、ABA型、テーパー型、ラジアルテレブロック型の構造を有する共重合体などが含まれる。
【0024】
これらのうち、SBR、NBRなどのジエン系ゴム、EPDMなどのオレフィン系ゴムが好ましい。
【0025】
熱可塑性エラストマーは、ゴム様性質を有する樹脂であればよい。熱可塑性エラストマーのガラス転移温度は、組成物の用途に応じて適宜-50℃~100℃程度の範囲から選択でき、例えば-20℃~80℃、好ましくは0~50℃(例えば5~40℃)、さらに好ましくは10~30℃(特に15~25℃)程度である。なお、本明細書および特許請求の範囲において、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて慣用の方法で測定できる。
【0026】
熱可塑性エラストマーの硬度は、JIS K6253に準拠したデュロメータ硬さ試験(タイプA)において、95°以下であり、例えば50~90°、好ましくは60~85°、さらに好ましくは65~80°(特に70~78°)程度である。硬度が大きすぎると、伸びなどの組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0027】
熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準じた方法(190℃、2.16kgf)で、0.5g/10分以上であってもよく、例えば0.5~20g/10分、好ましくは1~10g/10分、さらに好ましくは1.5~5g/10分(特に2~3g/10分)程度である。MFRが小さすぎると、組成物の機械的特性や組成物中でのセルロース(B)の分散性が低下する虞がある。
【0028】
具体的な熱可塑性エラストマーとしては、慣用の熱可塑性エラストマーを利用できる。慣用の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、フルオレン化合物(C)によるセルロース(B)の分散性向上効果が大きい点から、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0029】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、硬質部分がスチレン系単位で構成され、軟質部分がジエン系単位で構成されるエラストマー、例えば、スチレン-ジエン系ブロック共重合体またはその水添物であってもよい。スチレン-ジエン系ブロック共重合体またはその水添物としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水添スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体、水添スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水添スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。ブロック共重合体において、末端ブロックは、スチレンブロックまたはジエンブロックのいずれで構成してもよい。これらのうち、SBSやSEBSなどの(水添)スチレン-ブタジエンブロック共重合体が好ましい。
【0030】
[セルロース(B)]
セルロース(B)としては、リグニン、ヘミセルロースなどの非セルロース成分の含有量が少ないパルプ、例えば、植物由来のセルロース原料{例えば、木材[例えば、針葉樹(マツ、モミ、トウヒ、ツガ、スギなど)、広葉樹(ブナ、カバ、ポプラ、カエデなど)など]、草本類[麻類(麻、亜麻、マニラ麻、ラミーなど)、ワラ、バガス、ミツマタなど]、種子毛繊維(コットンリンター、ボンバックス綿、カポックなど)、竹、サトウキビなど}、動物由来のセルロース原料(ホヤセルロースなど)、バクテリア由来のセルロース原料(ナタデココに含まれるセルロースなど)などから製造されたパルプなどが例示できる。これらのセルロースは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースのうち、木材パルプ(例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)、種子毛繊維パルプ(例えば、コットンリンターパルプ)由来のセルロースなどが好ましい。なお、パルプは、パルプ材を機械的に処理した機械パルプであってもよいが、非セルロース成分の含有量が少ない点から、パルプ材を化学的に処理した化学パルプが好ましい。
【0031】
セルロース(B)は、粒状などであってもよいが、通常、繊維状である。セルロース(B)が繊維状セルロース(セルロース繊維)である場合、セルロース(B)の繊維径はミクロンオーダーであってもよいが、ゴム状組成物の機械的特性を向上できる点から、ナノメータサイズであるのが好ましい。セルロース繊維の平均繊維径は、例えば1~1000nm(例えば2~800nm)、好ましくは3~500nm(例えば5~300nm)、さらに好ましくは10~200nm(特に15~100nm)程度であってもよい。平均繊維径が大きすぎると、ゴム状組成物の強度などの特性が低下する虞がある。なお、セルロース繊維の最大繊維径は、例えば3~1000nm(例えば4~900nm)、好ましくは5~700nm(例えば10~500nm)、さらに好ましくは15~400nm(特に20~300nm)程度であってもよい。なお、このようなナノメータサイズのセルロース繊維は、繊維径がマイクロメータサイズのセルロース繊維を実質的に含んでいない場合が多い。
【0032】
セルロース繊維の平均繊維長は、例えば0.01~500μm(例えば0.1~400μm)程度の範囲から選択でき、通常1μm以上(例えば5~300μm)、好ましくは10μm以上(例えば20~200μm)、さらに好ましくは30μm以上(特に50~150μm)であってもよい。平均繊維長が短すぎると、ゴム状組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に長すぎると、ゴム状組成物中でのセルロース繊維の分散性が低下する虞がある。
【0033】
セルロース繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、例えば5以上(例えば5~10000程度)、好ましくは10以上(例えば10~5000程度)、さらに好ましくは20以上(例えば20~3000程度)、特に50以上(例えば50~2000程度)であってもよく、100以上(例えば100~1000程度)、さらには200以上(例えば200~800程度)であってもよい。また、アスペクト比が小さすぎると、ゴム成分に対する補強効果が低下し、アスペクト比が大きすぎると、均一な分散が困難となり、繊維が分解(または損傷)し易くなる虞がある。
【0034】
なお、本明細書および特許請求の範囲では、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長およびアスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の画像からランダムに50個の繊維を選択し、加算平均して算出してもよい。
【0035】
セルロースナノ繊維は、慣用の方法、例えば、高圧ホモジナイザー法、水中対抗衝突法、グラインダー法、ボールミル法、二軸混練法などの物理的方法で得られたナノ繊維であってもよく、TEMPO触媒、リン酸、二塩基酸、硫酸、塩酸などを用いた化学的方法で得られたナノ繊維であってもよい。
【0036】
セルロース(B)は、結晶性の高いセルロース(またはセルロース繊維)であってもよく、セルロース(B)の結晶化度は、例えば40~100%(例えば50~100%)、好ましくは60~100%、さらに好ましくは70~100%(特に75~99%)程度であってもよく、通常、結晶化度が60%以上(例えば60~98%)であってもよい。また、セルロース(B)の結晶構造としては、例えば、I型、II型、III型、IV型などが例示でき、線膨張特性や弾性率などに優れたI型結晶構造が好ましい。なお、結晶化度は、粉末X線回折装置((株)リガク製「Ultima IV」)などを用いて測定できる。
【0037】
セルロース(B)は、ヘミセルロースやリグニンなどの非セルロース成分を含んでいてもよく、セルロース繊維(特に、セルロースナノ繊維)の場合、非セルロース成分の割合は繊維状セルロース中30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。セルロース繊維は、非セルロース成分を実質的に含まないセルロース繊維(特に、非セルロース成分を含まないセルロース繊維)であってもよい。
【0038】
セルロース(B)の重合度は、組成物の機械的特性の点から、500以上であってもよく、好ましくは600以上(例えば600~10万程度)であってもよく、ナノ繊維の場合、粘度平均重合度が、例えば100~10000、好ましくは200~5000、より好ましくは300~2000程度であってもよい。
【0039】
粘度平均重合度は、TAPPI T230に記載の粘度法により測定できる。すなわち、修飾セルロースナノ繊維(または原料セルロースナノ繊維)0.04gを精秤し、水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとを加え、5分間程度攪拌して修飾セルロースを溶解する。得られた溶液をウベローデ型粘度管に入れ、25℃下で流下速度を測定する。水10mLと1M銅エチレンジアミン水溶液10mLとの混合液をブランクとして測定する。これらの測定値に基づいて算出した固有粘度[η]を用い、木質科学実験マニュアル(日本木材学会編、文永堂出版)に記載の下記式に従って粘度平均重合度を算出できる。
【0040】
粘度平均重合度=175×[η]。
【0041】
セルロース(B)(特に、セルロースナノ繊維などのセルロース繊維)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1~30質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.2~25質量部、好ましくは0.3~20質量部、さらに好ましくは0.5~15質量部(特に1~10質量部)程度である。さらに、本発明では、後述するフルオレン化合物(C)によって、セルロース(B)(特に、セルロースナノ繊維などのセルロース繊維)が均一に分散できるため、セルロース(B)の割合が少なくても、機械的特性や耐熱性などを向上でき、セルロース(B)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.3~7質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部(特に1~3質量部)程度である。セルロース(B)の割合が少なすぎると、ゴム状組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎると、ゴム状組成物の成形性が低下する虞がある。
【0042】
[フルオレン化合物(C)]
9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物(C)は、セルロース(B)をゴム成分(A)中に均一に分散させるための相容化剤または分散剤として機能し、ゴム成分(A)中にセルロース(B)を均一に分散させることにより、ゴム状組成物の機械的特性を大きく向上できる。
【0043】
このようなフルオレン化合物は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物であればよく、例えば、前記式(1)で表されるフルオレン化合物であってもよい。
【0044】
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
【0045】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
【0046】
環集合アレーン環としては、ビアレーン環[例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(例えば、1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環など]、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環など)が例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6-10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
【0047】
フルオレンの9位に置換する2つの環Zは、異なっていてもよく、同一であってもよいが、通常、同一の環である場合が多い。環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環(特にベンゼン環)などが好ましい。
【0048】
なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1-ナフチル基、2-ナフチル基などであってもよい。
【0049】
で表されるヘテロ原子含有官能基としては、ヘテロ原子として、酸素、イオウおよび窒素原子から選択された少なくとも一種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1~3個、好ましくは1または2個であってもよい。
【0050】
前記官能基としては、例えば、基-[(OA)m1-Y](式中、Yはヒドロキシル基、グリシジルオキシ基、アミノ基、N置換アミノ基またはメルカプト基であり、Aはアルキレン基、m1は0以上の整数である)、基-(CH)m2-COOR(式中、Rは水素原子またはアルキル基であり、m2は0以上の整数である)などが挙げられる。
【0051】
基-[(OA)m1-Y]において、YのN置換アミノ基としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ基などのN-モノアルキルアミノ基(N-モノC1-4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN-モノヒドロキシアルキルアミノ基(N-モノヒドロキシC1-4アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0052】
アルキレン基Aには、直鎖状または分岐鎖状アルキレン基が含まれ、直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などのC2-6アルキレン基(好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基)が例示でき、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの分岐鎖状C3-6アルキレン基(好ましくは分岐鎖状C3-4アルキレン基、特にプロピレン基)などが挙げられる。
【0053】
オキシアルキレン基(OA)の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm1は、0以上(例えば0~15、好ましくは0~10程度)の範囲から選択でき、例えば0~8(例えば1~8)、好ましくは0~5(例えば1~5)、さらに好ましくは0~4(例えば1~4)、特に0~3(例えば1~3)程度であってもよく、通常0~2(例えば0~1)であってもよい。なお、m1が2以上である場合、アルキレン基Aの種類は、同一または異なっていてもよい。また、アルキレン基Aの種類は、同一のまたは異なる環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0054】
基-(CH)m2-COORにおいて、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、C1-4アルキル基、特にC1-2アルキル基である。メチレン基の繰り返し数(平均付加モル数)を示すm2は0または1以上の整数(例えば1~6、好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2程度)であってもよい。m2は、通常、0または1~2であってもよい。
【0055】
これらのうち、基Xは、基-[(OA)m1-Y](式中、Aはアルキレン基、Yはヒドロキシル基またはグリシジルオキシ基、m1は0以上の整数である)が好ましく、セルロース(B)の分散性を向上させる効果が大きい点から、Yがヒドロキシル基である基-[(OA)m1-OH][式中、Aはエチレン基などのC2-6アルキレン基(例えばC2-4アルキレン基、特にC2-3アルキレン基)、m1は0~5の整数(例えば0または1)である]が特に好ましい。
【0056】
前記式(1)において、環Zに置換した基Xの個数を示すnは、1以上であり、好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2(特に1)であってもよい。なお、置換数nは、それぞれの環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0057】
基Xは、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2,3,4位(特に、3位および/または4位、特に4位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5~8位のいずれかに置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9位に対してナフタレン環の1位または2位が置換し(1-ナフチルまたは2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位などの関係(特にnが1である場合、2,6位の関係)で基Xが置換している場合が多い。また、nが2以上である場合、置換位置は、特に限定されない。また、環集合アレーン環Zにおいて、基Xの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に結合したアレーン環および/またはこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3位または4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの3位がフルオレンの9位に結合しているとき、基Xの置換位置は、2,4,5,6,2’,3’,4’位のいずれであってもよく、好ましくは6位に置換していてもよい。
【0058】
前記式(1)において、置換基Rとしては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)、ビフェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロへキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基など)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロへキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基など)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基など)、アシル基(例えば、アセチル基などのC1-6アシル基など)、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。
【0059】
これらの置換基Rのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基(アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基)、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。好ましい置換基Rとしては、アルコキシ基(メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基など)、特に、アルキル基(特に、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基)が好ましい。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一のまたは異なる環Zにおいて、同一または異なっていてもよい。
【0060】
置換基Rの係数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば0~8程度の整数であってもよく、0~4の整数、好ましくは0~3(例えば0~2)の整数、さらに好ましくは0または1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環またはビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
【0061】
置換基Rとしては、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ-カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などのC1-6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6-10アリール基)などが挙げられる。
【0062】
これらの置換基Rのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基(特に、メチル基などのC1-3アルキル基)、カルボキシル基またはC1-2アルコキシ-カルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。置換数kは0~4(例えば0~3)の整数、好ましくは0~2の整数(例えば0または1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一または異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一または異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一または異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位ないし7位(2位、3位および/または7位など)であってもよい。
【0063】
これらのうち、好ましいフルオレン化合物としては、基Xが、基-[(OA)m1-Y](式中、Yがヒドロキシル基を示す)である場合、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3,4-ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ジまたはトリヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-フェニル-3-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-12アリール-ヒドロキシC6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[3-メチル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(C1-4アルキル-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレン;9,9-ビス[3-フェニル-4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-フェニル-3-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(C6-12アリール-ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-12アリール)フルオレンなどが挙げられる。
【0064】
基Xが、基-[(OA)m1-Y](式中、Yがグリシジルオキシ基を示す)である場合の好ましいフルオレン化合物としては、9,9-ビス(グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(3-グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-グリシジルオキシ-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(グリシジルオキシC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(4-(2-グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-グリシジルオキシプロポキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(5-(2-グリシジルオキシエトキシ)-1-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-グリシジルオキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(グリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(アルキル-グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(3-メチル-4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-グリシジルオキシC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(アルキル-グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(3-メチル-4-(2-グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノまたはジC1-4アルキル-グリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(アリール-グリシジルオキシアリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(3-フェニル-4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-グリシジルオキシC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(アリール-グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(3-フェニル-4-(2-グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-グリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシC6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(ジ(グリシジルオキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(3,4-ジ(グリシジルオキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ジ(グリシジルオキシ)C6-10アリール)フルオレン;9,9-ビス(ジ(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシ)アリール)フルオレン、例えば、9,9-ビス(3,4-ジ(2-グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ジ(グリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシ)C6-10アリール)フルオレンなどが例示できる。
【0065】
これらのフルオレン化合物(C)は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基およびポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
【0066】
フルオレン化合物(C)は、組成物中において、前記セルロース(B)と独立または遊離して存在していてもよいが、セルロース(B)の分散性を向上できる点から、少なくとも一部のフルオレン化合物(C)は、組成物中でセルロース(B)と近接または接触して存在するのが好ましく、複合化して複合体を形成しているのが特に好ましい。複合化している場合、フルオレン化合物(C)がセルロース(B)に付着して結合していればよく、複合化の形態は特に限定されない。フルオレン化合物(C)は、セルロース(B)の表面の少なくとも一部を被覆していてもよく、粒状のフルオレン化合物(C)がセルロース(B)に付着していてもよい。
【0067】
セルロース(B)とフルオレン化合物(C)とが複合化している場合、前記セルロース(B)は前記フルオレン化合物(C)で修飾(化学修飾)されることなく、複合化していてもよい。すなわち、本発明において、両者は、エーテル結合やエステル結合などの共有結合では結合しておらず、水素結合などによって比較的緩やかに結合または親和していると推測できる。そのため、セルロース(B)(特にナノ繊維)は、組成物中における自由度が高く、組成物の機械的特性(伸び性など)を向上できるとともに、延伸などの引張応力が付与されると容易に解れて引張方向に配列される。なお、本明細書および特許請求の範囲において、セルロース(B)とフルオレン化合物(C)との間の共有結合の有無は、フルオレン化合物(C)が溶解する溶媒を用いて洗浄を行い、洗浄液中のフルオレン化合物(C)を定量する方法で容易に判別できる。
【0068】
フルオレン化合物(C)がセルロース(B)の表面を被覆している場合、フルオレン化合物(C)で形成された被膜の平均厚みは1nm以上であってもよく、例えば1~1000nm、好ましくは5~800nm、さらに好ましくは10~500nm程度である。被膜の厚みが薄すぎると、組成物中でのセルロース(B)の分散性が低下する虞がある。
【0069】
フルオレン化合物(C)とセルロース(B)との複合体は、ゴム状組成物中で均一に分散されているため、組成物の機械的特性は優れている。組成物中での複合体の分散径は、例えば10~1000nm、好ましくは10~500nm、さらに好ましくは10~200nm程度である。
【0070】
フルオレン化合物(C)の割合は、前記セルロース(B)100質量部に対して1~100質量部程度の範囲から選択でき、例えば10~90質量部、好ましくは20~80質量部、さらに好ましくは30~70質量部(特に40~60質量部)程度である。本発明では、フルオレン化合物(C)の割合が比較的多いため、セルロース(B)の分散性を高度に向上でき、セルロース(B)がナノ繊維であっても効果的に均一に分散できる。フルオレン化合物(C)の割合が少なすぎると、組成物中でのセルロース(B)の分散性が低下して組成物の機械的特性が低下する虞があり、逆に多すぎても、組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0071】
[補強剤(D)]
本発明のゴム状組成物[特に、ゴム成分(A)がゴムである加硫ゴム組成物]は、硬度や強度などの機械的特性を向上させるために、ゴム成分(A)、セルロース(B)およびフルオレン化合物(C)に加えて、補強剤(D)をさらに含んでいてもよい。
【0072】
補強剤(D)としては、慣用の補強剤を利用でき、例えば、粒状補強剤(カーボンブラックやグラファイトなどの炭素質材料;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)などの金属酸化物;ケイ酸カルシウムやケイ酸アルミニウムなどの金属ケイ酸塩;炭化ケイ素や炭化タングステンなどの金属炭化物;窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物;炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウムや硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;ゼオライト、ケイソウ土、焼成ケイソウ土、活性白土、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレーなどの鉱物質材料など)、繊維状補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、ウィスカー、ワラストナイトなどの無機繊維;ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維など)などが挙げられる。これらの補強剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0073】
これらの補強剤のうち、カーボンブラックやシリカなどの粒状補強剤(特に粒状無機補強剤)が汎用され、フルオレン化合物(C)との組み合わせにより、ゴム状組成物の機械的特性を大きく向上できる点から、カーボンブラックが好ましい。本発明では、フルオレン化合物(C)は、ゴム成分中におけるセルロース(B)の分散性だけでなく、粒状補強剤(特にカーボンブラック)との相容性も高く、粒状補強剤の分散性も向上できる。
【0074】
カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、被覆カーボンブラック、グラフトカーボンブラックなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0075】
カーボンブラックの平均粒径(算術平均粒径)は5~200nm程度の範囲から選択でき、例えば10~150nm、好ましくは15~100nm、さらに好ましくは20~80nm(特に30~50nm)程度である。カーボンブラックの平均粒径が小さすぎると、均一な分散が困難となる虞があり、大きすぎると、加硫ゴム組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0076】
補強剤(D)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して3~300質量部程度の範囲から選択でき、例えば5~200質量部、好ましくは8~150質量部、さらに好ましくは10~100質量部(特に15~80質量部)程度である。補強剤の割合が少なすぎると、ゴム状組成物の機械的特性を向上させる効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、加硫ゴム組成物の伸びや強度などが低下する虞がある。
【0077】
[軟化剤(E)]
本発明のゴム状組成物[特に、ゴム成分(A)がゴムである加硫ゴム組成物]は、セルロース(B)の組成物中における分散性や組成物の成形性を向上させるために、ゴム成分(A)、セルロース(B)およびフルオレン化合物(C)に加えて、軟化剤(E)をさらに含んでいてもよい。
【0078】
軟化剤(E)には、ゴム成分(A)に相容してゴム状組成物(特に、未加硫ゴム組成物)の粘度を低減できる軟化剤として、オイル類などが含まれる。オイル類としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、プロセスオイルなどが挙げられる。これらの軟化剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの軟化剤のうち、パラフィン系オイルやナフテン系オイルなどのオイル類が好ましい。
【0079】
本発明では、成形性を向上させるために、軟化剤(E)を配合した場合でも、フルオレン化合物(C)を含むため、軟化剤(E)によりゴム状組成物(特に、EPDMなどのオレフィン系ゴムを含む加硫ゴム組成物)の機械的特性が低下するのを抑制できる。
【0080】
軟化剤(E)の割合は、ゴム成分(A)の種類に応じて適宜選択でき、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1~500質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.5~400質量部(例えば1~300質量部)、好ましくは1~200質量部、さらに好ましくは3~100質量部程度である。ゴム成分(A)がオレフィン系ゴムである場合、軟化剤(E)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば10~200質量部、好ましくは20~150質量部、さらに好ましくは30~100質量部(特に40~60質量部)程度であってもよい。軟化剤(E)の割合が少なすぎると、フルオレン化合物(C)によるセルロース(B)の分散性向上効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、ゴム状組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0081】
[可塑剤(F)]
本発明のゴム状組成物[特に、ゴム成分(A)がゴムである加硫ゴム組成物]は、成形性などを向上させるために、ゴム成分(A)、セルロース(B)およびフルオレン化合物(C)に加えて、可塑剤(F)をさらに含んでいてもよい。可塑剤(F)としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなどが挙げられる。これらの可塑剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ステアリン酸などの高級脂肪酸が好ましい。可塑剤(F)の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部程度である。可塑剤(F)の割合が少なすぎると、ゴム状組成物の成形性を向上する効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、ゴム状組成物の機械的特性が低下する虞がある。
【0082】
[加硫剤(G)]
本発明のゴム状組成物は、ゴム成分(A)がゴムである場合、通常、加硫剤(G)を含んでいる。加硫剤(G)としては、ゴムの種類に応じて、慣用の加硫剤を利用できる。加硫剤(G)には、硫黄系加硫剤、有機過酸化物が含まれる。
【0083】
硫黄系加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降性硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなどが挙げられる。
【0084】
有機過酸化物としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド;ジt-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、1,1-ジ-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-イソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキシド;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシドなどのハイドロパーオキシド;n-ブチル-4,4-ジ-t-ブチルパーオキシバレレート、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジ(パーオキシルベンゾエート)などのパーオキシエステルなどが挙げられる。
【0085】
これらの加硫剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、硫黄やジクミルパーオキシドなどのジアルキルパーオキシドなどが汎用される。
【0086】
加硫剤(G)の割合は、ゴム100質量部に対して、0.1~30質量部程度の範囲から選択でき、硫黄系加硫剤の場合、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは0.6~5質量部程度であり、有機過酸化物の場合、例えば1~25質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部程度である。
【0087】
[加硫助剤(H)]
本発明のゴム状組成物は、ゴム成分(A)がゴムである場合、加硫を促進するために、加硫助剤(H)をさらに含んでいてもよい。加硫助剤(または共架橋剤)(H)には、例えば、有機系加硫促進剤[例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)などのスルフェンアミド系促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)などのチウラム系促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、MBTの亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)などのチアゾール系促進剤;トリメチルチオ尿素(TMU)、ジエチルチオ尿素(EDE)などのチオウレア系促進剤;ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン(DOTG)などのグアニジン系促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどのジチオカルバミン酸系促進剤;イソプロピルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸塩系促進剤;ヘキサンメチレンテトラミンなどのアルデヒド-アミン系またはアルデヒド-アンモニア系促進剤など]、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2-ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛などの(メタ)アクリル酸多価金属塩]、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート]、芳香族マレイミド(N,N’-m-フェニレンジマレイミドなどのアレーンビスマレイミドなど)、無機系助剤[酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムなど]などが挙げられる。
【0088】
これらの加硫助剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、CBSなどのスルフェンアミド系促進剤、TMTDなどのチウラム系促進剤、酸化亜鉛などの無機系助剤が汎用される。
【0089】
加硫助剤(H)の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば4~30質量部、好ましくは5~25質量部、さらに好ましくは10~20質量部程度であってもよい。有機系加硫促進剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば1~10質量部、好ましくは3~8質量部、さらに好ましくは5~7質量部程度であってもよい。無機系助剤(特に亜鉛華)の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば3~20質量部、好ましくは5~15質量部、さらに好ましくは7~10質量部程度であってもよい。
【0090】
[他の添加剤(I)]
本発明のゴム状組成物は、ゴム成分(A)の種類に応じて、慣用の添加剤を含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、樹脂成分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)、溶剤、加硫遅延剤、分散剤、老化または酸化防止剤(芳香族アミン系、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、着色剤(例えば、染顔料など)、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定剤など)、離型剤、潤滑剤、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など)、制振付与剤、難燃助剤、帯電防止剤、導電剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、核剤、結晶化促進剤、抗菌剤、防腐剤などが挙げられる。
【0091】
これら他の添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。他の添加剤の割合は、ゴム成分(A)100質量部に対して、例えば0.1~50質量部、好ましくは0.5~30質量部、さらに好ましくは1~10質量部程度であってもよい。
【0092】
[ゴム状組成物の製造方法]
本発明のゴム状組成物は、ゴム成分(A)とセルロース(B)と9,9位にアリール基を有するフルオレン化合物(C)とを混合する混合工程を経て得られる。
【0093】
前記混合工程では、ゴム成分(A)とセルロース(B)と前記フルオレン化合物(C)とを一括して添加し、同時に混合してもよいが、組成物中において、セルロース(B)の表面が前記フルオレン化合物(C)で被覆された複合体の生成を促進でき、組成物中でのセルロース(B)(特にナノ繊維)の分散性を向上できる点から、ゴム成分(A)と混合する前に、セルロース(B)と前記フルオレン化合物(C)とを予め予備混合して予備混合物を調製するのが好ましい。予備混合することにより、ゴム成分(A)と混合する前に、セルロース(B)の表面の少なくとも一部が前記フルオレン化合物(C)で被覆された複合体を効率的に形成できるためか、ゴム成分と混合した組成物においても複合体の割合を向上できる。
【0094】
予備混合物は、セルロース(B)の少なくとも一部の表面がフルオレン化合物(C)で被覆された複合体のみであってもよく、この複合体と、セルロース(B)および/またはフルオレン化合物(C)との混合物であってもよい。予備混合物中の複合体の割合は、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0095】
予備混合において、セルロース(B)がナノ繊維である場合、セルロースナノ繊維(特に、ミクロフィブリル化した繊維、平均繊維径がナノメーターサイズのナノ繊維)を乾燥すると、繊維が絡み合って再分散できなくなる場合がある。そのため、通常、セルロース(B)(特に、セルロースナノ繊維)は、水との混合物、例えば、水含浸体(水湿潤体)または水分散液としてフルオレン化合物(C)と予備混合するのが好ましい。セルロースナノ繊維および水の混合物は市販品であってもよい。
【0096】
セルロース(B)および水の混合物中のセルロース濃度(特に、セルロースナノ繊維の固形分濃度)は、例えば1~80質量%、好ましくは3~50質量%、さらに好ましくは5~30質量%(特に10~25質量%)程度である。固形分濃度が低すぎると、複合化の効率が低下する虞があり、逆に高すぎると、取扱性が低下する虞がある。
【0097】
セルロース(B)および水の混合物と、フルオレン化合物(C)との予備混合は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、セルロース(B)とフルオレン化合物(C)とを効率良く複合化できる点から、溶媒の存在下で行うのが好ましい。
【0098】
溶媒としては、水およびフルオレン化合物の双方に対して親和性を有する両親媒性溶媒が好ましい。両親媒性溶媒としては、例えば、アルコール類(ブタノール、シクロヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノールなど)、セロソルブ類やカルビトール類(エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ラクトン(ブチロラクトン、カプロラクトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ラクタム(ブチロラクタム、カプロラクタムなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、留去し易い点から、両末端がアルキル基でエーテル化されたセロソルブ類やカルビトール類、ケトン類、ラクトン類、ラクタム類、アミド類、スルホキシド類などが汎用され、シクロヘキサノンなどの脂環族ケトン類、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのセロソルブ類などを好ましく利用できる。これらの両親媒性溶媒を用いると、留去し易い上に、溶媒を含んだ状態で複合体をゴム成分(A)と混合しても、溶媒が組成物中に残存しにくい。
【0099】
溶媒の割合は、セルロース(B)および水の混合物ならびにフルオレン化合物(C)の合計100質量部に対して100質量部以上であってもよく、例えば100~10000質量部、好ましくは300~5000質量部、さらに好ましくは500~3000質量部(特に1000~2000質量部)程度である。
【0100】
予備混合における混合方法は、溶融混練であってもよく、化学反応で汎用されているマグネティックスターラまたは攪拌翼を用いた攪拌を用いてもよい。攪拌する場合、攪拌の回転速度は大きい方が好ましく、例えば10rpm以上(例えば10~10000rpm)、好ましくは50rpm以上(例えば50~7000rpm)、さらに好ましくは100rpm以上(例えば100~5000rpm)、特に200rpm以上(例えば200~3000rpm)程度の回転速度による攪拌であってもよい。
【0101】
なお、セルロース(B)としてナノ繊維を用いる場合、セルロース(B)は、市販品のナノ繊維であってもよく、セルロースを解繊して得られたナノ繊維であってもよい。セルロースの解繊において、フルオレン化合物(C)および前記溶媒を解繊前のセルロースに配合して解繊してもよい。
【0102】
セルロース(B)およびフルオレン化合物(C)を含む分散液は、ゴム成分(A)と混合するために、乾燥処理によって水および溶媒の大部分を留去して水および溶媒の含浸体として調製されるのが好ましい。水および溶媒の留去方法としては、慣用の方法、例えば、加熱および/または減圧する方法を利用でき、生産性の点から、加熱および減圧する方法が好ましい。
【0103】
加熱する方法としては、慣用の方法、例えば、静置型の熱風乾燥機、真空乾燥機、回転式のエバポレーター、混合式の乾燥機(コニカルドライヤー、ナウタードライヤーなど)などを用いた方法を利用できる。加熱温度は、例えば40~200℃、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは70~100℃程度である。
【0104】
減圧する方法としては、慣用の方法、例えば、オイルポンプ、オイルレスポンプ、アスピレータなどを用いた方法を利用できる。減圧方法における圧力としては、例えば0.00001~0.05MPa、好ましくは0.00001~0.03MPa程度である。
【0105】
乾燥処理によって得られたセルロース(B)とフルオレン化合物(C)との複合体は、ゴム成分(A)中でセルロース(B)を均一に分散させる点などから、所定量の水および溶媒を含んでいてもよい。水および溶媒の合計割合は、乾燥処理後のセルロース(B)およびフルオレン化合物(C)の合計100質量部に対して10~2000質量部、好ましくは50~1000質量部、さらに好ましくは100~500質量部(特に150~400質量部)程度である。また、前記複合体は、混練性を向上できる点などから、溶媒のみを含んでいてもよく、溶媒の割合は、乾燥処理後のセルロース(B)およびフルオレン化合物(C)の合計100質量部に対して10~1000質量部、好ましくは20~700質量部、さらに好ましくは30~500質量部程度である。
【0106】
混合工程において、予備混合工程で得られたセルロース(B)とフルオレン化合物(C)との複合体と、ゴム成分(A)との混合方法は、ゴム成分(A)の種類に応じて適宜選択できる。
【0107】
ゴム成分(A)がゴムである場合、ゴムを前記複合体と混合する前に、予めゴムと加硫剤などの添加剤とを慣用の方法、例えば、ミキシングローラ、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機(一軸または二軸押出機など)などを用いた方法などにより混練して前記複合体と混合するための組成物を調製するのが好ましい。これらのうち、加圧式ニーダーなどのニーダーが好ましい。前記複合体は、これらの方法で混練された組成物に対して、ロールを用いて添加して混錬してもよい。混練は、非加熱下、加熱下のいずれで行ってもよい。加熱する場合、混練温度は、例えば、例えば30~250℃、好ましくは40~200℃、さらに好ましくは50~180℃(特に80~160℃)程度である。
【0108】
ゴム成分(A)がゴムである場合、前記混合工程で得られた未加硫ゴム組成物を所定の形状に成形した状態で加硫する加硫工程を経て加硫ゴム組成物が得られる。加硫工程において、加硫温度は、ゴムの種類に応じて選択でき、例えば100~250℃、好ましくは150~200℃、さらに好ましくは160~190℃程度である。
【0109】
ゴム成分(A)が熱可塑性エラストマーである場合、熱可塑性エラストマーと前記複合体とを慣用の方法、例えば、ミキシングローラ、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機(一軸または二軸押出機など)などを用いた方法などにより溶融混練してゴム状組成物を調製してもよく、射出成型などの慣用の成形方法によって成形してもよい。これらのうち、二軸押出機などの押出機が好ましい。混練温度は、例えば60~270℃、好ましくは80~250℃、さらに好ましくは100~230℃程度である。
【実施例
【0110】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、用いた原料および評価方法は以下の通りである。
【0111】
(使用原料)
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BCF:9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
BPFG:9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン、大阪ガスケミカル(株)製
EPDM:JSR(株)製「JSR EP21」
SBR:JSR(株)製「JSR 1502」
SBS:旭化成(旧・旭化成ケミカルズ)(株)製「タフプレンA」
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:三菱ケミカル(株)製「jER 828」
CB HAF:東海カーボン(株)製「シースト3」
CB N234:東海カーボン(株)製「シースト7HM」
ナフテン油:出光興産(株)製「ダイアナプロセスNS-100」
プロセスオイル:H&R(株)製「Vivatec500(TDAE)」
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1号」
ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸つばき」
硫黄:鶴見化学(株)製「粉末硫黄」
促進剤TT:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT-P」
促進剤M:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーM-P」
促進剤CBS:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ-G」。
【0112】
(引張試験)
JIS K6251に準拠し、25~300%引張応力、引張強さ、伸び率を測定した。
【0113】
(デュロメータ硬さ)
JIS K6253タイプAに準拠し、デュロメータ硬さを測定した。
【0114】
(密度)
JIS K6268に準拠し、密度を測定した。
【0115】
参考例1(EPDM/ブランク)
表1に示す割合の各成分を加圧式ニーダー(モリヤマ(株)製、容量10リットル)を用いて、温度150℃で混練し、未加硫ゴム組成物を調製した。得られた組成物を加硫温度170℃でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0116】
【表1】
【0117】
参考例2(EPDM/B-CNF)
(修飾セルロースナノ繊維の合成)
セルロースナノ繊維の水分散液(固形分濃度15質量%)100gをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)500gに分散して遠心分離した後、沈降した固形分をさらに500gのDMAcに分散して再び遠心分離することにより、溶媒置換し、セルロースナノ繊維とDMAcとの混合物(セルロース含量約10質量%)を得た。この混合物を1000mLの三口フラスコに移し、さらにDMAc350g、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン(BPFG)15g、ジアザビシクロウンデセン(DBU)10gを加え、120℃で3時間攪拌した。得られた混合液を遠心分離で回収し、1200mLのDMAcで洗浄する工程を3回繰り返し、修飾セルロースナノ繊維(B-CNF)を得た。フルオレン化合物の修飾率を、以下の方法で測定したところ、12質量%であった。なお、使用した原料であるセルロースナノ繊維をSEM(日本電子(株)製「JSM-6510」)で観察したSEM写真を図1に示す。
【0118】
(修飾セルロースナノ繊維に結合したフルオレン化合物の修飾率)
フルオレン化合物の修飾率(以下フルオレン修飾率)は、ラマン顕微鏡(HORIBA JOBIN YVON社製、XploRA)を使用してラマン分析を行い、芳香族環(1604cm-1)とセルロースの環内CH(1375cm-1)との吸収バンドの強度比(I1604/I1375)により算出した。なお、算出にあたっては、含有するジアセチルセルロース((株)ダイセル製)にフルオレン化合物を所定量添加して溶液キャスト法によりフィルムを作製し、これらの強度比(I1604/I1375)から作成した検量線を用いた。すべてのサンプルは3回測定し、その結果から算出される値の平均値をフルオレン修飾率とした。
【0119】
(加硫ゴム組成物の調製)
参考例1で得られた未加硫ゴム組成物に対して、6インチロールを用いて、修飾セルロースナノ繊維(B-CNF)を参考例1の組成物100質量部に対して固形分量換算で3質量部添加し、修飾セルロースナノ繊維を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例1と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0120】
参考例3(EPDM/エポキシ樹脂-CNF複合体)
(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とセルロースナノ繊維との複合体の調製)
グラインダー法で解繊された直径100nmの以下の繊維を50質量%以上含む植物由来のセルロースナノ繊維を含む水湿潤体150g(固形分20質量%、セルロースナノ繊維30g含有)に、シクロヘキサノン1800gとビスフェノールA型エポキシ樹脂15g(セルロースナノ繊維100質量部に対し、エポキシ樹脂50質量部)を加え、撹拌機(新東科学(株)製「スリーワンモータ」)を用いて、600rpmで10分間攪拌した後、ロータリーエバポレータを用いて、80℃で減圧して湿潤した150gのエポキシ樹脂-CNF複合体を得た。なお、使用した原料であるセルロースナノ繊維のSEM写真を図2に示す。セルロースナノ繊維は、平均繊維径114nmの連続繊維(長繊維)であった。
【0121】
(加硫ゴム組成物の調製)
参考例1で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、エポキシ樹脂-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、エポキシ樹脂-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例1と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0122】
実施例1(EPDM/BPFG-CNF複合体)
(BPFGとセルロースナノ繊維との複合体の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにBPFGを用いる以外は参考例3と同様にしてBPFG-CNF複合体(セルロースナノ繊維100質量部に対し、BPFG50質量部)を得た。
【0123】
(加硫ゴム組成物の調製)
参考例1で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、BPFG-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、BPFG-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例1と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0124】
実施例2(EPDM/BPEF-CNF複合体)
(BPEFとセルロースナノ繊維との複合体の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにBPEFを用いる以外は参考例3と同様にしてBPEF-CNF複合体(セルロースナノ繊維100質量部に対し、BPEF50質量部)を得た。複合体をSEMで観察したところ、図3に示すように、解繊が進んだ箇所でのセルロースナノ繊維の表面に粒状のBPEFが付着しており、図4に示すように、解繊が十分に進まなかった箇所では、セルロース繊維の表面がBPEFで被覆されていた。
【0125】
(加硫ゴム組成物の調製)
参考例1で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、BPEF-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、BPEF-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例1と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0126】
実施例3(EPDM/BCF-CNF複合体)
(BCFとセルロースナノ繊維との複合体の調製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにBCFを用いる以外は参考例3と同様にしてBCF-CNF複合体(セルロースナノ繊維100質量部に対し、BCF50質量部)を得た。
【0127】
(加硫ゴム組成物の調製)
参考例1で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、BCF-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、BCF-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例1と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0128】
参考例1~3および実施例1~3で得られた加硫ゴム組成物の評価結果を表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
表2の結果から明らかなように、実施例で得られた加硫ゴム組成物は、参考例で得られた加硫ゴム組成物に比べて、引張特性と剛性とのバランスが優れている。特に、フルオレン化合物で修飾されたセルロースナノ繊維を含む参考例2と比べても、実施例1~3(特に、実施例2および3)では、フルオレン化合物を含む点では共通するにも拘わらず、縦方向でのモジュラス(引張応力)が向上している。この結果は、参考例2に比べて、実施例1~3では、フルオレン化合物がセルロースナノ繊維と共有結合しておらず、自由度が高いためであると推測できる。
【0131】
参考例4(SBR/ブランク)
表3に示す割合の各成分を加圧式ニーダー(モリヤマ(株)製、容量10リットル)を用いて、温度150℃で混練し、未加硫ゴム組成物を調製した。得られた組成物を、加硫温度180℃でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0132】
【表3】
【0133】
参考例5(SBR/エポキシ樹脂-CNF複合体)
参考例4で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、参考例3で得られたエポキシ樹脂-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、エポキシ樹脂-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例4と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0134】
実施例4(SBR/BPFG-CNF複合体)
参考例4で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、実施例1で得られたBPFG-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、BPFG-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例4と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0135】
実施例5(SBR/BPEF-CNF複合体)
参考例4で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、実施例2で得られたBPEF-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、BPEF-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例4と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0136】
実施例6(SBR/BCF-CNF複合体)
参考例4で得られた未加硫ゴム組成物100質量部に対して、6インチロールを用いて、実施例3で得られたBCF-CNF複合体を固形分量換算で3質量部添加し、BCF-CNF複合体を含む未加硫ゴム組成物を調製し、参考例4と同一の方法で加硫ゴム組成物を得た。
【0137】
参考例4~5および実施例4~6で得られた加硫ゴム組成物の評価結果を表4に示す。
【0138】
【表4】
【0139】
表4の結果から明らかなように、実施例で得られた加硫ゴム組成物は、参考例で得られた加硫ゴム組成物に比べて、引張特性と剛性とのバランスが優れている。
【0140】
参考例6(SBS/ブランク)
SBSを射出成形機((株)新興セルビック製「C,MOBILE-0813」)を用いて、長さ75mm×平行部幅5mm×平行部長さ35mm×厚さ2mmのダンベル試験片を作製した。
【0141】
参考例7(SBS/B-CNF)
参考例2で得られた修飾セルロースナノ繊維(B-CNF)をSBS100質量部に対して固形分量換算で3質量部添加し、二軸押出機((株)テクノベル製15mmφ,L/D=30)を用いて200℃で溶融混練してコンパウンドを得た。得られたコンパウンドは80℃で24時間乾燥を行った後、射出成形機((株)新興セルビック製「C,MOBILE-0813」)を用いて、試験片を作製した。
【0142】
実施例7(SBS/BPEF-CNF複合体)
実施例2で得られたBPEF-CNF複合体をSBS100質量部に対して固形分量換算で4.5質量部添加し、二軸押出機((株)テクノベル製15mmφ,L/D=30)を用いて200℃で溶融混練してコンパウンドを得た。得られたコンパウンドは80℃で24時間乾燥を行った後、射出成形機((株)新興セルビック製「C,MOBILE-0813」)を用いて、試験片を作製した。
【0143】
実施例8(SBS/BCF-CNF複合体)
実施例3で得られたBCF-CNF複合体をSBS100質量部に対して固形分量換算で4.5質量部添加し、二軸押出機((株)テクノベル製15mmφ,L/D=30)を用いて220℃で溶融混練してコンパウンドを得た。得られたコンパウンドは80℃で24時間乾燥を行った後、射出成形機((株)新興セルビック製「C,MOBILE-0813」)を用いて、試験片を作製した。
【0144】
参考例6~7および実施例7~8で得られた熱可塑性エラストマー組成物の評価結果を表5に示す。
【0145】
【表5】
【0146】
表5の結果から明らかなように、実施例で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、参考例で得られた熱可塑性エラストマー組成物に比べて、強度、伸びのいずれも高い。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明のゴム状組成物は、各種の工業用部材(コンベアベルト、ゴムカバーロール、ガスケット、印刷ロール、コンベアベルトなどのベルト、オイルシールなどのシール部材、パッキン、耐油ホースなどのホース部材など)、建築部材(窓枠ゴム、防振ゴムなどの制振材、カーペットバッギング材など)、輸送機部材(自動車用部材、タイヤ、動力伝達ベルトなどのベルトなど)、電気・電子機器部材(電線被覆など)に利用でき、なかでも、シール部材、ホース部材、タイヤ、コンベアベルトや動力伝達ベルトなどのベルト、防振ゴムなどに好適である。
図1
図2
図3
図4