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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】改善された硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20231117BHJP
   C08K 5/25 20060101ALI20231117BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20231117BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231117BHJP
   C07C 243/28 20060101ALN20231117BHJP
   C07C 275/04 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08K5/25
C08K5/16
C08J5/24 CFC
C07C243/28
C07C275/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020560441
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019062889
(87)【国際公開番号】W WO2019219953
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】18172983.1
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132032
【氏名又は名称】ヘクセル コンポジッツ、リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513002407
【氏名又は名称】ヘクセル ホールディング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バージ、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ガングルベルガー、トルシュテン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-040317(JP,A)
【文献】特開昭59-174617(JP,A)
【文献】特開昭61-043616(JP,A)
【文献】特開昭58-053916(JP,A)
【文献】特開昭59-091117(JP,A)
【文献】特開昭63-243125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/
C08K 5/
C08J 5/
C07C243/
C07C275/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸ヒドラジドおよびヒドロキシ置換ウロンの混合物を含む少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む硬化性樹脂組成物であって、
前記カルボン酸ヒドラジドがアジピン酸ジヒラジドであり、
前記ヒドロキシ置換ウロンがオルトヒドロキシフェヌロンであり、
アジピン酸ジヒラジドおよびオルトヒドロキシフェヌロンが、アジピン酸ジヒラジドおよびオルトヒドロキシフェヌロンのそれぞれの重量に基づいて0.90~1.20の範囲内の割合で存在し、
前記エポキシフェノール樹脂が、エポキシノボラック樹脂および二官能性エポキシ樹脂を併せて含む、
硬化性樹脂組成物
【請求項2】
少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む樹脂配合物を硬化させるための、カルボン酸ヒドラジドおよびヒドロキシ置換ウロンの混合物の使用であって、
前記カルボン酸ヒドラジドがアジピン酸ジヒラジドであり、
前記ヒドロキシ置換ウロンがオルトヒドロキシフェヌロンであり、
アジピン酸ジヒラジドおよびオルトヒドロキシフェヌロンが、アジピン酸ジヒラジドおよびオルトヒドロキシフェヌロンのそれぞれの重量に基づいて0.90~1.20の範囲内の割合で存在し、
前記エポキシフェノール樹脂が、エポキシノボラック樹脂および二官能性エポキシ樹脂を併せて含む、
使用
【請求項3】
繊維強化複合材の製造における、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物の使用。
【請求項4】
注入プロセスによる繊維強化複合材の製造における、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物から製造された繊維強化複合材。
【請求項6】
140~150℃のTgを有する硬化繊維強化複合材の製造方法であって、少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含み、カルボン酸ヒドラジドおよびヒドロキシ置換ウロンを含む硬化性樹脂組成物のマトリックスに封入された繊維材料を含む材料を、140℃~180℃の温度で、5分以内で成形することを含み、
前記カルボン酸ヒドラジドがアジピン酸ジヒラジドであり、
前記ヒドロキシ置換ウロンがオルトヒドロキシフェヌロンであり、
アジピン酸ジヒラジドおよびオルトヒドロキシフェヌロンが、アジピン酸ジヒラジドおよびオルトヒドロキシフェヌロンのそれぞれの重量に基づいて0.90~1.20の範囲内の割合で存在し、
前記エポキシフェノール樹脂が、エポキシノボラック樹脂および二官能性エポキシ樹脂を併せて含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性配合物、特に、熱硬化性樹脂配合物、特にはエポキシフェノールノボラック樹脂を含む配合物の硬化に有用な硬化性配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は様々な形態で製造される。硬化性樹脂マトリックス配合物を含浸させた繊維層は、本明細書ではプリプレグとして知られる。成形コンパウンドは、一般に、樹脂マトリックス配合物と組み合わせた、細断された等方性または準等方性形態の繊維状材料を含む。これらの材料における樹脂マトリックス配合物は、未硬化または部分的に硬化されていてよいエポキシノボラック樹脂であってもよい。
【0003】
樹脂マトリックス配合物は、広範な重合性成分および添加剤から選択され得る。一般的な重合性成分は、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリイソシアナート、およびフェノール樹脂を含む。これらの成分を含む配合物は、一般に、それぞれエポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリイソシアナート、およびフェノール配合物と呼ばれる。本発明は、樹脂内容物が少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂、特にエポキシノボラック樹脂を含む配合物を含む熱硬化性樹脂に関する。
【0004】
フェノール樹脂は典型的に、フェノールおよびホルムアルデヒドの反応によって作製される。触媒(酸性対アルカリ性)、およびホルムアルデヒド対フェノールのモル比に応じて、フェノールノボラックまたはフェノールレゾール樹脂が反応から形成され得る。これらの樹脂をさらにエピクロロヒドリンと反応させて、エポキシフェノールノボラック樹脂(一般に「エポキシノボラック樹脂」とも呼ばれる)およびエポキシフェノールレゾール樹脂(一般に「エポキシレゾール」と呼ばれる)の形態のエポキシフェノール樹脂をそれぞれ形成することができる。
【0005】
本発明は、少なくとも50重量%のいずれかのタイプの樹脂を含む樹脂系に適用可能であるが、少なくとも50重量%のエポキシノボラック樹脂を含む樹脂系に特に適用可能である。
【0006】
複合材料に必要な特性は、それが供される使途に応じて、硬化したときに必要なガラス転移温度(Tg)を有し、また必要な機械的特性を有することである。ある特定の用途では、Tgが湿ったまたは湿気のある条件下で保持されることが重要である。熱硬化性材料は、熱可塑性樹脂と比較して優れた機械的性能および耐クリープ性を有するため、構造部品には熱硬化性材料を使用することが望ましい。これらの用途では、熱硬化性マトリックスは、硬化温度での離型を可能にするのに十分な高さの初期硬化Tgを有さなければならない。より高い硬化Tg能力は、より高い硬化温度での硬化を可能にし、より高い硬化温度は、反応性が温度とともに増加するため、より速い硬化サイクルを可能にする。
【0007】
少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂配合物は、触媒および/または硬化剤を含み、これらは、樹脂の性質、製造される製品、および必要とされる樹脂の硬化サイクルに従って選択される。大量生産率を支援するための複合材料の硬化には、短い硬化サイクルが必要である。2.5分の硬化サイクルは、金型あたり年間約166000部品の製造率を提供することができる(30秒の金型からの取り外し-再装入時間および95%の使用率を想定)。
【0008】
イミダゾールベースの硬化剤は、樹脂の硬化に広く使用されている。残念ながら、これらの硬化剤は非常に反応性が高いため、樹脂およびこれらの硬化剤の混合溶液は、硬化の早期開始を示し、製造されてから使用場所に出荷される単一成分エポキシ樹脂組成物として使用できないという問題があるが、これは、それらの組成物が輸送中または保管中に増粘、ゲル化および硬化すると考えられるためである。
【0009】
アジピン酸ジヒドラジドおよびイソフタル酸ジヒドラジドは、エポキシ樹脂配合物の硬化剤として知られている。それらは、米国特許第4404356号および第4507445号に開示されているように、尿素ベースの材料等の促進剤と一緒に使用され得ることが示唆されている。しかしながら、急速に(硬化した組成物の少なくとも95重量%に達するのに3分未満、好ましくは2分未満またはより速く)硬化する樹脂組成物を提供し、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃の高いガラス転移温度(Tg)を有し、特には高められた温度で特に湿気に曝露されたときに、ある期間にわたってTgを保持する組成物をもたらすエポキシフェノール樹脂の硬化剤が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決すること、および/または一般的に改善を提供することを目的とする。
【0011】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲のいずれか一項に記載の硬化性樹脂、使用、組成物、複合材および方法が提供される。
【0012】
少なくとも50重量%(wt%)のエポキシフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化剤として、アジピン酸ジヒドラジドおよび/またはイソフタル酸ジヒドラジドがヒドロキシルウロンと一緒に使用されると、速硬化特性、良好なガラス転移温度(Tg)保持と共に、高いTgを有する配合物が達成され得ることが分かった。
【0013】
オルトヒドロキシフェヌロンは、エポキシ樹脂の樹脂硬化剤として提案されており、ジヒドラジド硬化剤であるジシアンジアミドと組み合わせて使用することが提案されている。しかしながら、エポキシフェノール樹脂を硬化させるためにヒドラジドと組み合わせて使用すると、エポキシフェノール樹脂で予想外に速い硬化およびより高いガラス転移温度を得ることができることが分かった。
【0014】
したがって、本発明は、アジピン酸ジヒドラジドおよび/またはイソフタル酸ジヒドラジドならびにヒドロキシルウロンの組み合わせを含む硬化系を提供する。
【0015】
ウロンは、下記式の置換または非置換の尿素塩基化合物を含む化合物である。
【化1】

式中、Rは、C1~C5アルキル基であり、xおよびyは、それぞれゼロまたは1を示し、xおよびyの合計は1である。
【0016】
本発明はさらに、少なくとも50重量%の熱硬化性エポキシフェノール樹脂およびそのような硬化系を含む樹脂組成物または配合物を提供する。好ましい実施形態において、エポキシフェノール樹脂は、エポキシノボラック樹脂である。本発明はまた、硬化した樹脂を提供する。
【0017】
さらなる実施形態において、本発明は、プリプレグであってもよい、または型に積み重ねられた(レイアップされた)乾燥繊維材料の樹脂注入によって得られてもよい繊維強化複合材におけるマトリックスとしてのそのような樹脂組成物または配合物の使用を提供する。本発明はさらに、そのような樹脂マトリックスの硬化によって得られる繊維強化複合材を提供する。
【0018】
ジヒドラジドおよびヒドロキシルウロンは、任意の特定の割合、ならびにジヒドラジドおよびヒドロキシルウロンのそれぞれの重量に基づいて0.50~2.00、好ましくは0.90~1.20、さらにより好ましくは1.00~1.15、最も好ましくは1.08~1.12の範囲内の割合で使用され得る。
【0019】
本発明によるエポキシフェノール樹脂系における硬化剤の組み合わせの使用は、(本出願において定義されているように少なくとも95%の硬化に至るまで)150℃で5分間の硬化に供されたときに140~150℃の範囲内、特に150℃で3分または2分の硬化に供されたときに145~150℃のE’Tgを提供する材料を生成した。一方、オルトヒドロキシフェヌロンおよびジシアナミドの混合物で硬化された同等の樹脂は、135℃のTgを提供する。
【0020】
本発明によるエポキシノボラック系の代わりにビスフェノールAエポキシ樹脂とともに本発明の硬化系を使用すると、Tgが再び低下し、場合によっては115~120℃まで低下する。さらに、速硬化性および高E’Tgの組み合わせについては、ヒドロキシルを含まないウロンよりもヒドロキシル置換ウロンによる方が優れている。
【0021】
本発明の組成物は、構造用途で使用するための所望の機械的特性を有する硬化樹脂を提供しながら、170℃で2分未満に少なくとも95%の硬化を提供し、130℃を超える硬化Tgおよび100℃を超える保持Tgを提供する。
【0022】
硬化したTgは、ASTM D7028(動的機械分析(DMA)によるポリマーマトリックス複合材のガラス転移温度(DMA Tg)の標準試験方法)に従って、170℃で2分間組成物を硬化した後に測定され、また、保持または湿潤Tgは、未処理の樹脂配合物(組成物)を170℃で2分間等温硬化し、硬化した配合物を70℃の水に14日間曝露し、次いで同じ測定基準ASTM D7028を使用して試料のTgを測定することにより測定される。
【0023】
損失弾性率E”は、動的機械分析(DMA)を使用して5℃/分の昇温速度でASTM E1640に従って測定される。高温湿潤損失弾性率E”wは、硬化した組成物を70℃の温度で14日間水に浸漬した後に、同じ基準を使用して5℃/分の昇温速度で測定される。
【0024】
貯蔵弾性率E’は、動的機械分析(DMA)を使用して5℃/分の昇温速度でASTM E1640に従って測定される。高温湿潤損失弾性率E’wは、同じ基準を使用して5℃/分の昇温速度で、硬化した組成物を70℃の温度で14日間水に浸漬した後に測定される。対応するTg値は、ASTM E1640に概説され、本明細書で明らかにされているように、乾燥試料および高温湿潤処理試料の両方の貯蔵および損失弾性率から導出され得る。
【0025】
動的機械分析(DMA)では、プローブされる樹脂組成試料が経時変化変形に供され、試料の応答が測定される。DMA実験では、正弦波の経時変化ひずみ(制御された変形)が試料に適用される。
γ=γsin(ωt)(I)
式中、γは適用されたひずみ、γοはひずみの振幅、tは時間、ωは周波数である。
【0026】
DMA機器は、結果として生じる応力を測定する:σ=σsin(ωt+δ)(II)
式中、σは結果として生じる応力、σοは応力振幅、δは位相角である。
【0027】
ほとんどの樹脂組成物では、粘弾性の性質(粘性成分および弾性成分の両方)に起因して、位相角と呼ばれる粘性成分の寄与による位相遅れがある。位相角は動的弾性率の計算に使用されるため、重要である。
【0028】
小さなひずみ振幅および時間に依存しないポリマー(線形粘弾性レジーム)の場合、結果として生じる応力は、(動的)貯蔵弾性率(Ε’)および(動的)損失弾性率(E”)で記述することができる:σ=γ[E’sin(ωt)+E”cos(ωt)](III)
【0029】
したがって、貯蔵弾性率(Ε’)および損失弾性率(E”)は、(III)から導出された次の式を使用して計算され得る:
E’=σ/γcosδおよびE”=σ/γsinδ(IV)
したがって、位相角は、tanδ=E”/E’(V)として定義される。
【0030】
DMAによってガラス転移温度Tgを割り当てるための標準試験は、ASTM E1640に見出され、貯蔵弾性率、損失弾性率、およびtanδから導出される。DMAによって導出されたそれぞれの弾性率とtanδの図から、貯蔵弾性率(E’Tg)、損失弾性率(E”Tg)、およびtanδ(tanδ Tg)に関連する様々なガラス転移温度が容易に特定され得る。
【0031】
ASTM基準E1640において定義および図示されているように、次のパラメータを使用して、DMA樹脂組成試料のTgをラベル付けすることができる。
【0032】
E’Tg:最低温度で発生し、転移温度より下の貯蔵弾性率曲線の接線、および転移に関連する正弦波変化のほぼ中間の変曲点での貯蔵弾性率曲線の接線に対応する交差する接線によって特定される。
【0033】
E”Tg:中間温度で発生し、E”曲線の最大値として特定される。
【0034】
Tanδ Tg:最高温度で発生し、tanδ曲線の最大値として特定される。
【0035】
デジタル走査熱量測定を使用すると、硬化反応中に放出される熱は、完全に硬化するための全熱に関連する。これは、次のように測定され得る。
【0036】
参照樹脂試料を10℃/分の速度で10℃から250℃に加熱して完全に硬化(100%)し、発生した熱ΔHiを記録する。次いで、試料を所望の温度および所望の速度で所望の時間加熱することにより試料をこれらの条件下で硬化させ、この硬化反応によって発生する熱ΔHeを測定することによって、参照樹脂試料と同じ組成の特定の樹脂試料の硬化度を測定することができる。このとき、硬化の程度(硬化%)は、以下の(VI)によって定義される。
硬化%=[(ΔHi-ΔHe)/ΔHi]×100[%](VI)
式中、ΔHiは、10℃から250℃で完全に硬化するまで加熱された未硬化樹脂によって生成された熱であり、ΔHeは、所望の温度に所望の速度で加熱されたある程度硬化した樹脂によって生成された熱である。
【0037】
本発明のエポキシフェノール樹脂成分は、フェノールおよびフェノール誘導体とホルムアルデヒドとの既知の縮合生成物を含み得る。適切なフェノール誘導体は、置換フェノール、特にアルキル置換フェノール、例えばクレゾール、キシレノールおよび他のアルキルフェノール、例えばp-tert-ブチルフェノール、オクチルフェノールおよびノニルフェノール、ならびにアリールフェノール、例えばフェニルフェノール、ナフトールおよび2-水素化フェノール、例えばレゾルシノールおよびビスフェノールA、ならびに上述のフェノールおよびフェノール誘導体とホルムアルデヒドとの混合物の縮合生成物である。特定の特性を最適化するために、言及されたエポキシフェノール樹脂は、不飽和の天然または合成化合物、例えば、桐油、ロジンまたはスチレンで変性され得る。エポキシフェノール樹脂はまた、HuntsmanからTactix 556(登録商標)として入手可能なジシクロペンタジエンノボラック樹脂等の炭化水素エポキシノボラック樹脂であってもよい。
【0038】
本発明において使用される硬化性樹脂材料は、少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む。樹脂材料は、100%エポキシフェノール樹脂であってもよく、またはエポキシフェノール樹脂と、エポキシ樹脂もしくはポリエステル樹脂等の他の硬化性樹脂とのブレンドであってもよい。樹脂材料がエポキシ樹脂を含む場合、それは複合材料で広く使用されているエポキシ樹脂のいずれかであり得る。エポキシ樹脂は、固体、液体、または半固体であってもよく、その官能性とエポキシ当量によって特徴付けられる。エポキシ樹脂の官能性は、反応および硬化して硬化構造を形成するために利用され得る、分子当たりの反応性エポキシ部位の数である。樹脂材料は、少なくとも1種の二官能性エポキシ樹脂を含み得る。好ましくは、組成物は、樹脂の総重量に基づいて、20~45重量%、好ましくは25~32重量%、より好ましくは28~41重量%の範囲内の1種または複数種の二官能性エポキシ樹脂成分を含む。
【0039】
ジヒドラジド硬化剤、ヒドロキシルウロンベースの硬化剤、および少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む樹脂系の組み合わせにより、170℃を超える温度で硬化したときに130℃を超える硬化Tgを有し、また100℃を超える保持Tg(または湿潤Tg)を有する一方で、その硬化損失係数E”が130℃を超える値にて存在し、その高温湿潤損失弾性率E”wが120℃を超える値にて存在する速硬化組成物が得られることを発見した。
【0040】
好ましい実施形態において、イミダゾール硬化剤は、組成物中に存在しない。
【0041】
本発明の別の実施形態において、繊維強化材料と組み合わせた前述のような樹脂組成物を含む成形材料が提供される。繊維強化材料は、プリプレグを形成するための織布または多軸布として、または樹脂組成物を含浸させてトウプレグを形成するための個々の繊維トウとして、または成形コンパウンドを形成するための細断繊維、短繊維もしくはフィラメントとして提供され得る。好ましい繊維材料は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミドおよびそれらの混合物から選択される。
【0042】
本発明のさらなる実施形態において、少なくとも1種の充填剤と組み合わせた上記の樹脂組成物を含む接着剤が提供される。
【0043】
本発明の組成物は、迅速な硬化を可能にする一方で、Tg、保持Tgおよび機械的特性が、工業構造用途、特に自動車および航空宇宙構造用途、ならびにスポーツ用品および風力タービン部品における硬化樹脂組成物の使用を可能にする。
【0044】
本発明の組成物は、衝撃改質剤、充填剤、酸化防止剤等の熱硬化性樹脂に使用される他の典型的な添加剤を含み得るが、本発明による組成物中に存在するエポキシフェノール樹脂の量は、他の添加剤の量を除いた組成物の総樹脂含有量に基づく量である。
【0045】
衝撃改質剤
組成物は、衝撃改質剤を含み得る。衝撃改質剤は、固有の脆性および亀裂伝播を補償する目的で、硬化樹脂組成物の衝撃強度を改善するために広く使用されている。衝撃改質剤は、CTBNゴム(カルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル)等のゴム粒子、またはポリマーシェルに包まれたゴムまたは他のエラストマー化合物を含むコアシェル粒子を含み得る。ゴム粒子に勝るコアシェル粒子の利点は、効果的な強化のためにゴムコアの粒子サイズが制御されており、グラフトポリマーシェルがエポキシ樹脂組成物との接着および適合性を確実にしている点である。そのようなコアシェルゴムの例は、EP0985692およびWO2014062531に開示されている。
【0046】
代替の衝撃改質剤は、メチルアクリラート系ポリマー、ポリアミド、アクリル系化合物、ポリアクリラート、アクリラートコポリマー、フェノキシ系ポリマー、およびポリエーテルスルホンを含み得る。
【0047】
充填剤
さらに、組成物は、組成物の流動特性を高めるために1種または複数種の充填剤を含み得る。適切な充填剤は、タルク、マイクロバルーン、フロック、ガラスビーズ、シリカ、ヒュームドシリカ、カーボンブラック、繊維、フィラメントおよびリサイクル誘導体、ならびに二酸化チタンを含み得る。
【0048】
本発明は、以下の材料が使用される以下の例を参照することによって説明される。
【0049】
アジピン酸ジヒドラジド(ADH/ADH-J)AC触媒
オルトヒドロキシフェヌロン(OHFU)-ウロン硬化剤
YDPN638(エポキシフェノールノボラック)-Kukdo
SCT150トリスフェニルメタンエポキシノボラック-ShinA T&C
Epikote828-ジグリシジルエーテルビスフェノールA、平均EEW187
MY721-トリグリシジルエーテルベースのエポキシ、平均EEW113
GT6071-ジグリシジルエーテルビスフェノールA-エポキシ平均EEW457
DICY-ジシアンジアミド
2,4トルエンビスジメチル尿素および2,6トルエンビスジメチル尿素のU52ブレンド
ビスフェノールAに分散したMX153コアシェルゴム-カネカ
TODI 3,3ジメチル-4-4ビフェニルワンビス(ジメチル尿素)
DIPPI 3-(2,6ジイソプロピルフェニル)1,1ジメチル尿素
PDI N,N11-1,4フェニレンビス(N,N1ジメチル尿素)
NDI N,N11-1,5-ナフタレンジイルビス(N,Nジメチル尿素)
UR500-3,3’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(1,1-ジメチル尿素)
XD1000-DCPD(ジシクロペンタジエン)ノボラック樹脂、EEW=245~260
DLS1840-半固体ビスフェノールA
フェノキシ-熱可塑性強化剤
Aerosil R202-親水性シリカ充填剤
Pat 656/B3R-離型剤(Wurtz)
【0050】
以下の測定を行った。
硬化速度 ASTM D2471-誘電分析(DEA)を使用したピークまでの時間および95%硬化までの時間。
Tg(℃)硬化樹脂マトリックス組成物のガラス転移温度、基準ASTM D7028に従いDMAから測定
湿潤Tg(℃)硬化樹脂組成物を70℃の水に2週間浸漬、ASTM D7028に従いDMAから測定
E’Tg(℃)乾燥および高温湿潤処理試料のTg、ASTM E1640に従って5℃/分の昇温速度で測定、貯蔵弾性率E’から導出
E”Tg(℃)乾燥および高温湿潤処理試料のTg、ASTM E1640に従って5℃/分の昇温速度で測定、損失弾性率E”から導出
E”保持(%)=E”湿潤Tg/E”Tg×100
E’保持(%)=E’湿潤Tg/E’Tg×100
【0051】
例1~5
以下の配合物を調製した。
【表1】
【0052】
例1~5の配合物を150℃の温度に曝露し、95%硬化に達するまでの時間およびE’Tgを測定し、以下のとおりであることが分かった。
【表2】
【0053】
以下の例は、95%硬化に達するまでの時間およびE’Tgに対する硬化剤の組み合わせの効果を示す。
【0054】
例3および6~10
以下の配合物を調製した。
【表3】
【0055】
例3および6~10の配合物を150℃の温度に曝露し、95%硬化に達するまでの時間およびE’Tgを測定し、以下のとおりであることが分かった(表6)。
【表4】
【0056】
例11~13
最後に、例11~13の以下の配合物を調製した。
【表5】
【0057】
例11、12および13の配合物を150℃の温度に曝露し、95%硬化に達するまでの時間およびE’Tgを測定し、以下のとおりであることが分かった。
【表6】
【0058】
これらの例は、カルボン酸ヒドラジドおよびヒドロキシ置換ウロンの、特にオルトドロキシフェヌロンおよびヒドラジドの硬化剤の組み合わせにおいて、95%硬化までの時間の短縮およびE’Tgの増加の有利な組み合わせが達成されることを示している。
本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のとおり要約される。
[1].
カルボン酸ヒドラジドおよびヒドロキシ置換ウロンの混合物を含む少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む硬化性樹脂。
[2].
前記カルボン酸ヒドラジドが、アジピン酸ジヒラジドである、上記項目1に記載の硬化性樹脂。
[3].
前記ウロンが、オルトヒドロキシフェヌロンである、上記項目1または上記項目2に記載の硬化性樹脂。
[4].
少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む樹脂配合物を硬化させるための、カルボン酸ヒドラジドおよびウロンの混合物の使用。
[5].
前記カルボン酸ヒドラジドが、アシピン酸(acipic acid)ジヒドラジドである、上記項目4に記載の使用。
[6].
前記ウロンが、オルトドロキシ(ortho-droxy)フェヌロンである、上記項目4または上記項目5に記載の使用。
[7].
カルボン酸ヒドラジドおよびウロンの混合物を含むフェノール樹脂が少なくとも50重量%である樹脂を含む硬化性樹脂組成物。
[8].
前記カルボン酸ヒドラジドが、アジピン酸ジヒドラジドである、上記項目7に記載の硬化性樹脂。
[9].
前記ウロンが、オルトヒドロキシフェヌロンである、上記項目7または上記項目8に記載の硬化性樹脂。
[10].
繊維強化複合材の製造における、上記項目7から9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂の使用。
[11].
注入プロセスによる繊維強化複合材の製造における、上記項目10に記載の使用。
[12].
カルボン酸ヒドラジドおよびヒドロキシル置換ウロンの混合物を含む少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含む樹脂組成物から製造された繊維強化複合材。
[13].
前記カルボン酸ヒドラジドが、アジピン酸ジヒドラジドである、上記項目12に記載の組成物。
[14].
前記ウロンが、オルトヒドロキシフェヌロンである、上記項目12または上記項目13に記載の組成物。
[15].
140~150℃、好ましくは145~150℃のTgを有する硬化繊維強化複合材の製造方法であって、少なくとも50重量%のエポキシフェノール樹脂を含み、カルボン酸ヒドラジドおよびヒドロキシル置換ウロンを含む樹脂組成物のマトリックスに封入された繊維材料を含む材料を、140℃~180℃の温度で、5分以内、好ましくは3分または2分以内で成形することを含む方法。
[16].
前記カルボン酸ヒドラジドが、アジピン酸ジヒドラジドである、上記項目15に記載の方法。
[17].
前記ウロンが、オルトヒドロキシフェヌロンである、上記項目15または上記項目16に記載の方法。