(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】フッ化物イオン電池の電極材料のためのナノ構造設計
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0566 20100101AFI20231117BHJP
H01M 6/14 20060101ALI20231117BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231117BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231117BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231117BHJP
【FI】
H01M10/0566
H01M6/14 Z
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
H01M4/58
(21)【出願番号】P 2020568532
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 US2019037994
(87)【国際公開番号】W WO2019246265
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-20
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598128421
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】シュー チンミン
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス クリストファー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マッケニー ライアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ナム ハウン
(72)【発明者】
【氏名】大道 馨
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ サイモン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー サード トーマス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ムノズ ステファン エー.
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-502752(JP,A)
【文献】特表2021-525941(JP,A)
【文献】特開2017-216208(JP,A)
【文献】特開2018-063905(JP,A)
【文献】特表2009-512133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05
H01M 6/14
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/58
H01M 4/42
H01M 4/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物シャトル電池であって:
20nmより小さいかまたはこれに等しい少なくとも1つの寸法を含む金属ナノ構造コアと、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル
層とを含む陰極;
陽極;および
フッ化物イオンを含有する液体電解質
を含む、フッ化物シャトル電池。
【請求項2】
前記金属ナノ構造コアが、20nmより小さいかまたはこれに等しい直径を有するナノ粒子を含む、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項3】
前記金属ナノ構造コアが、20nmより小さいかまたはこれに等しい直径および20nmを超える長さを含む1つ以上の円筒状構造を含む、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項4】
前記円筒状構造は、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノフレーム、およびそれらの組み合わせから選択される構造を含む、請求項3に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項5】
前記金属ナノ構造コアが、20nmより小さいかまたはこれに等しい厚さおよび20nmを超える別の寸法を含む1つ以上のシート状構造を含む、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項6】
前記シート状構造が、フレーク構造、シート構造、フィルム構造、およびそれらの組み合わせから選択される構造を含む、請求項5に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項7】
前記金属ナノ構造コアが、相互接続された金属部分と、各チャネルが25nm未満である少なくとも1つの寸法を含む細孔のネットワークを規定するチャネルとを含む複合形状を含む、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項8】
前記複合形状が、多孔質ナノシート、ナノフレーム、または発泡体を含む、請求項7に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項9】
前記金属ナノ構造コアは、20nm以下の厚さを有する、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項10】
前記金属ナノ構造コアは、6nm以下の厚さを有する、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項11】
前記金属ナノ構造コアがLa
1-xBa
xF
3-xシェル層によって囲まれ、X=0~0.5である、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項12】
前記金属ナノ構造コアがLa
1-xBa
xF
3-xシェル層によって囲まれ、X=0である、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項13】
前記金属ナノ構造コアがLa
1-xBa
xF
3-xシェル層によって囲まれ、X=0.03である、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項14】
前記La
1-xBa
xF
3-xシェル層は、5nm以下の厚さを有する、請求項
11~13のいずれかに記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項15】
前記金属ナノ構造コアと前記シェル層との間の厚さの比が10:1~1:1である、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項16】
前記金属ナノ構造コアと前記シェル層との間の厚さの比が4:1である、請求項
1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項17】
前記金属ナノ構造コアと前記シェル層との間の厚さの比が1:1である、請求項
1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項18】
前記金属が、遷移金属、前記遷移金属の塩、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項19】
前記遷移金属が、ランタニドおよびアクチニド系列を含む、元素の周期律表のdブロックから選択される、請求項18に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項20】
前記遷移金属が、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、およびそれらの混合物から選択される、請求項18に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項21】
前記遷移金属が銅を含む、請求項18に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項22】
前記
金属ナノ構造コアは、銅ナノワイヤを含み、前記銅ナノワイヤは、20nm以下の平均断面直径を有する、請求項
1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項23】
前記銅ナノワイヤは、LaF
3シェル層によって囲まれる、請求項22に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項24】
前記LaF
3シェル
層によって囲まれた前記銅ナノワイヤが、CuF
2の理論的容量の183mAh/gまたは34.7%のエネルギー容量を有する、請求項23に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項25】
前記シェル層は、柔軟シェル層である、請求項1に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項26】
前記柔軟シェル層が界面活性剤を含む、請求項25に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項27】
前記柔軟シェル層がポリマーまたはオリゴマーを含む、請求項25に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項28】
前記界面活性剤が、オレイルアミン、オレイン酸、トリス(トリメチルシリル)シラン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項26に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項29】
前記ポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリ(メチルメタクリレート)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項30】
前記シェル
層は、少なくとも第1の自己集合単分子層を含む、請求項25に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項31】
前記シェル
層は、第2の自己集合単分子層をさらに含み、前記第2の自己集合単分子層は、前記第1の自己集合単分子層の少なくとも一部を覆う、請求項30に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項32】
前記シェル
層は、ポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層は、前記第1の自己集合単分子層の少なくとも一部を覆う、請求項30に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項33】
前記ナノ構造コアは、銅ナノワイヤを含み、前記銅ナノワイヤは、20nm以下の平均断面直径を有する、請求項25に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項34】
前記銅ナノワイヤは、柔軟シェル層によって囲まれ、前記柔軟シェル層は、界面活性剤を含む、請求項33に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項35】
前記柔軟シェル層がF
-イオン透過性である、請求項25に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項36】
前記柔軟シェル
層によって囲まれた前記銅ナノワイヤが、CuF
2の理論的容量の203mAh/gまたは38.4%のエネルギー容量を有する、請求項34に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項37】
フッ化物シャトル電池であって:
25nmより小さいかまたはこれに等しい少なくとも1つの寸法を含む金属ナノ構造コアと、前記コアを少なくとも部分的に取り囲むシェル
層とを含む電極;および
液体電解質
を含む、フッ化物シャトル電池。
【請求項38】
前記金属ナノ構造コアが、25nmより小さいかまたはこれに等しい直径および25nmを超える長さを含む1つ以上の円筒状構造を含む、請求項37に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項39】
前記円筒状構造は、ナノチューブ、ナノワイヤ、およびナノフレームから選択される、請求項38に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項40】
前記金属ナノ構造コアが、25nmより小さいかまたはこれに等しい厚さおよび25nmを超える別の寸法を含むシート状構造を含む、請求項37に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項41】
前記シート状構造が、フレーク構造、シート構造、またはフィルム構造である、請求項40に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項42】
前記細孔のネットワークが、多孔質ナノシート、ナノフレーム、または発泡体である、請求項7に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項43】
前記少なくとも1つの寸法は、1~20nmである、請求項37に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項44】
前記少なくとも1つの寸法は、1~10nmである、請求項37に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項45】
前記シェル
層は、1nm~1マイクロメートルの厚さを有する、請求項37に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項46】
前記シェル
層は、1nm~200nmの厚さを有する、請求項37に記載のフッ化物シャトル電池。
【請求項47】
フッ化物シャトル電池であって、以下:
フッ化物イオンを含有する液体電解質;ならびに
前記液体電解質において理論的容量を有する金属フッ化物を形成することができる金属ナノ構造コアであって、前記金属ナノ構造コアは、少なくとも1つのより小さな寸法を含む金属ナノ構造コア、
前記コアを取り囲むシェル
層であって、前記シェル
層は厚さを含み、前記シェル
層の厚さおよび前記ナノ構造コアの小さい方の寸法は、前記液体電解質中の材料の容量が前記金属フッ化物の理論的容量の少なくとも25%~45%である比率で提供されるシェル
層を含む材料を含む陰極:
を含む、フッ化物シャトル電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年6月20日に出願された「Barium-Doped Composite Electrode Materials For Fluoride-Ion Electrochemical Cells」と題された米国仮出願第62/687,653号および2019年6月18日に出願された「Nanostructural Designs for Electrode Materials of Fluoride Ion Batteries」と題された米国特許出願第16/445,022号の優先権を主張する。
【0002】
参照による組み込み
以下の出願の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる:2018年6月20日に出願された「Barium-Doped Composite Electrode Materials For Fluoride-Ion Electrochemical Cells」と題された米国特許出願第62/687,653号;2018年5月25日に出願された「Composite Electrode Materials for Fluoride-Ion Electrochemical Cells」と題された米国特許出願第62/676,693号の優先権を主張する、2018年6月20日に出願された「Barium-Doped Composite Electrode Materials For Fluoride-Ion Electrochemical Cells」と題された米国特許出願第16/013,739号;2016年12月15日に出願された「Composite Electrode Materials for Fluoride-Ion Electrochemical Cells」と題された米国特許出願第62/434,611号の優先権を主張する、2017年12月15日に出願された「Composite Electrode Materials for Fluoride-Ion Electrochemical Cells」と題された米国特許出願第15/844,079号;2017年2月1日に出願された「Core Shell」と題された米国特許出願第62/453,295号;2018年12月5日に出願された米国仮出願第62/775,748号;2019年6月18日に出願された「Electroactive Materials Modified with Molecular Thin Film Shell」と題された米国特許出願第16/444,854号;および2019年6月18日に出願された「Nanostructural Designs for Electrode Materials of Fluoride Ion Batteries」と題された米国特許出願第16/445,022号。
【0003】
連邦政府が後援する研究または開発に関する記述
この発明は、NASAジェット推進研究所(JPL)から授与された認可番号80NM0018D004の下で政府の支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【0004】
技術分野
本開示は、電気化学的に活性な物質に関し、より詳細には、電池性能を改善するための調整された構造および組成を有する電極材料を含むフッ化物イオン電池系に関する。より具体的には、本開示は、フッ化物シャトル電池および、フッ化物シャトル電池内の銅ベースの陰極材料のナノ構造に関する。
【背景技術】
【0005】
金属ナノ粒子は、触媒として、および電池のための電極材料として含む多くの用途に使用するために高度に望ましい。しかしながら、金属ナノ粒子の使用は、系操作条件または他の要因によって制限され得る。
【0006】
F(フッ化物)シャトル電池は、新規であり未開拓の代替次世代エネルギー貯蔵である。そのエネルギー密度は、リチウムイオン電池に比べてはるかに大きく、体積では約4倍、重量密度では2倍である。Fシャトル電池は、リチウム電池およびリチウムイオン電池と比較して、低コストおよび/または安全性特性の向上をもたらす。フッ化物イオン電池は、フッ化物媒介電極反応を介して作動する電気化学セルである。例えば、F-陰イオンは、陰極と陰極電極との間でシャトルされる。放出の間に、MeFxはMe(金属)または低価数MeFxに還元され、陰極側でF-イオンを放出する。一方、F-イオンは金属と結合してMeFxを形成し、陽極側で電子を放出する。Fシャトル電池は、一次電池または二次電池として製造することができる。
【0007】
遷移金属フッ化物が、通常陰極材料として用いられ、アルカリ土類金属または希土類金属が、陽極材料として用いられる。
【0008】
Fシャトル電池には2種類があり、すなわち全固体型および液体型がある。現在行われている研究の大部分は、ある程度高温で再充電できる可能性のある全固体Fシャトル電池に焦点を当てている。しかしながら、ゆっくりした反応速度論は、全固体Fシャトル電池に重大な課題を課している。フッ化物イオン系は、固体状態で、例えば、Potaninへの特許文献1において実証されており、これは、固体フッ化物伝導性電解質と接触しているこれらの電極を用いて、充放電サイクル中に、フッ化物イオンが陽極電極と陰極電極との間で可逆的に交換される二次電気化学セルの実施形態を記載している。Potaninは、アルカリ土類金属のフッ化物(単数)/フッ化物(複数)(CaF2、SrF2、BaF2)、ならびに/またはアルカリ金属のフッ化物(LiF、KF、NaF)および/もしくはアルカリ金属塩化物(LiCl、KCl、NaCl)などの合金添加剤と共に、La、Ceのフッ化物またはそれらに基づく化合物フッ化物を含有する固体電解質、ならびに広範囲の他の化合物フッ化物を記載する。しかしながら、このような電気化学セルは、固体電解質の導電性が限られているため、室温より高温(例えば、150℃)で有効に動作するに過ぎない。
【0009】
液体型Fシャトル電池では、反応動力学が良好である。しかしながら、このタイプのFシャトル電池は、室温での良好な電解質および可逆的な陰極/陽極材料の欠如など、多くの課題にまだ直面している。
【0010】
最近、重金属で組み立てたFシャトル電池が、室温でイオン液体ベースの電解質中で可逆的であることが報告され、そこでは、Biが陰極として使用され、Pbが陽極として使用された(非特許文献1)。しかし、電池は、低電圧(約0.2V)と低容量(最大0.15mAh)を有していた。さらに、このような電池には、有毒であり、環境に優しくないことが知られているPbが、陽極として使用されている。液体電解質を使用することができるフッ化物イオンベースの電気化学系を提供するための他の試みもなされている。例えば、Weissらによる特許文献2およびDarollesらによる特許文献3は、電解質中に溶解した状態で少なくとも部分的に存在する溶媒媒介フッ化物塩を含むフッ化物リチウムイオン電池構成を開示している。しかしながら、多くの用途のために、液体電解質との電極材料の化学反応性は重要であり、これらの液体電解質系は、十分に信頼できる高い放電および/または高容量動作を提供しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第7,722,993号
【文献】米国特許第2011/0143219 A1号
【文献】米国特許第9,166,249号
【非特許文献】
【0012】
【文献】K Okazaki,et al.,Charge-Discharge Behavior Of Bismuth In A Liquid Electrolyte For Rechargeable Batteries Based On A Fluoride Shuttle,Acs Energy Letters,2017,2 1460-1464
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下は、このような態様の基本的な理解を提供するために、本開示の1つ以上の態様の簡略化された概要を提示する。この概要は、企図されるすべての態様の広範な概観ではなく、すべての態様の重要な、または決定的な要素を特定することも、あらゆるまたはすべての態様の範囲を描写することも意図されていない。その目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、1つ以上の態様のいくつかの概念を簡略化された形態で提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、陰極、陽極、および陰極と陽極との間の電解質を含むフッ化物シャトル電池を対象とし、陰極は、金属ナノ構造コアおよびコアを囲むシェル層を含む陰極材料を含む。
【0015】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明の概観により、より完全に理解されるであろう。
【0016】
この特許または出願ファイルは、色彩を付して作成された少なくとも1の図面を含んでいる。彩色図面(複数可)を伴っているこの特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料の納付によって、特許商標庁が提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは、本開示の態様において、金属ナノ粒子を含むコアと、金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物を含むシェルとを含むコア-シェルナノ粒子の断面を示す。
【
図1B】
図1Bは、種々のタイプの電池のエネルギー密度を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の態様におけるフッ化物イオン電気化学セルの概略図である。
【
図3】
図3Aは、それぞれCu@LaF
3コア-シェルナノ粒子およびCu@La
0.97Ba
0.03F
2.97コア-シェルナノ粒子のTEM画像を示す。Cu@LaF
3ナノ粒子のTEM画像内の差し込み図は、Cu(コア)およびLaF
3(シェル)領域のズームイン画像である。
図3Bは、本開示のいくつかの態様に従った、それぞれCu@LaF
3およびCu@La
0.97Ba
0.03F
2.97ナノ粒子の概略表現を示す。
【
図4】
図4Aは、本開示のいくつかの態様に従った、Ag/Ag
+基準電極と比較した、Cu@LaF
3電極またはCu@La
0.97Ba
0.03F
2.97電極の第1の充放電サイクルの電圧プロフィルを示す。
図4Bは、本開示のいくつかの態様による、Cu@LaF
3(理論的容量の9.5%)、Cu@La
0.97Ba
0.03F
2.97(理論的容量の18%)、およびCuF
2(理論的容量528mAh/g)について達成された容量の比較を示す。
【
図5】
図5は、銅ベースのFシャトル電池によって達成されるエネルギー密度のパーセンテージを示し、これは、CuF
2の理論的容量(528mAh/g)によって正規化される。
【
図6】
図6は、Cuおよびフッ素化Cu(CuF
2)ナノ粒子の構造を示す。
【
図7】
図7は、6nmのCuナノ粒子のXRDスペクトルを示す。
【
図8】
図8は、最初の合成後の6nmのCu@LaF
3のXRDスペクトルを示す。
【
図9】
図9Aは、最初の合成後の6nmのCuコアナノ粒子のTEM像を示す図である。
図9Bは、最初の合成後のLaF
3シェルを有する6nmのCuコアのTEM画像を示す。
【
図10】
図10は、Cu
2Oの還元後のLaF
3シェルを有する6nmのCuコアNPのXRDスペクトルを示す。
【
図11】
図11は、La
1-xBa
xF
3-xまたはLaF
3コーティングを有するCuナノワイヤの構造、およびCuナノワイヤの断面図を示す。
【
図12】
図12は、本開示のいくつかの態様による、約20nmまたはそれ未満の断面直径を有するCuナノワイヤ(La
1-xBa
xF
3-xまたはLaF
3コーティングなし)のXRDスペクトルを示す。
【
図13】
図13Aおよび
図13Bは、約20nmの断面直径を有するCuナノワイヤ(La
1-xBa
xF
3-xまたはLaF
3コーティングなし)のTEM画像を示す。
【
図14】
図14は、本開示のいくつかの態様による、Cuナノワイヤ(直径約20nmまたはそれ未満)、シェル形成後の少量のCu
2O、およびCuナノワイヤのLaF
3シェルのXRDスペクトルを示す。
【
図15】
図15Aは、本開示のいくつかの態様による、初期合成後および二相シェル形成前のCuナノワイヤのSEM画像を示す。
図15Bは、本開示のいくつかの態様による、Cuナノワイヤ上の二相LaF
3シェル形成のSEM画像を示す。
【
図16】
図16A、16B、および16Cは、本開示のいくつかの態様による、種々の倍率/解像度下でのCuナノワイヤ上/周囲のLaF
3形成のTEM画像を示す。
【
図17】
図17は、本開示のいくつかの態様による、LaF
3シェル(CuNW@LaF
3)に囲まれたCuナノワイヤから作製された電極の充放電サイクルの電圧プロフィルを示す。
【
図18】
図18は、本開示のいくつかの態様による、充電(フッ素化、’F’)、およびその後の放電(脱フッ素化、’deF’)後の、初期条件におけるCuNW@LaF
3のXRDスペクトルを示す。
【
図19】
図19は、本開示のいくつかの態様による、柔軟シェル(界面活性剤シェル)中に囲まれたCuナノワイヤ(平均直径約20nmまたはそれ未満)から作製された電極の充放電サイクルの電圧プロフィルを示す。
【
図20】
図20は、本開示のいくつかの態様による、充電(フッ素化)後およびその後の放電(脱フッ素化)後のCuNW@柔軟シェル(界面活性剤シェル)のXRDスペクトルを示す。図中のCuナノワイヤは、約20nm以下の平均直径を有する。
【
図21】
図21は、La
1-xBa
xF
3-xまたはLaF
3コーティングを有するCuナノチューブの構造およびCuナノチューブの断面図を示す。
【
図22】
図22は、La
1-xBa
xF
3-xまたはLaF
3コーティングを有するCuナノフレークおよびCuナノシートの構造を示す。これらの構造の最小厚さは、20nm以下である。
【
図23】
図23は、La
1-xBa
xF
3-xまたはLaF
3コーティングを有するCuナノフレームの構造を示す。Cuナノフレーム内の内部銅壁は、20nm以下の厚さを有する。
【
図24】
図24は、種々の電極の充放電サイクルの電圧プロフィルを示す。図中の電極は、それぞれ約50nmのCuNP@LaF
3、約50nmのCuNP@La
0.97Ba
0.03F
2.97、約20nmのCuNW@LaF
3、および約20nmのCuNW@柔軟シェルから作製される。
【
図25】
図25は、本開示のいくつかの態様による、約50nmのCuNP@LaF
3、約50nmのCuNP@La
0.97Ba
0.03F
2.97、約20nmのCuNW@LaF
3、約20nmのCuNW@柔軟シェル、およびCuF
2の理論的容量について達成された容量の比較を示す。
【
図26】
図26は、CuF
2の理論的容量(528mAh/g)によって正規化された、約50nmのCuNP@LaF
3、約50nmのCuNP@La
0.97Ba
0.03F
2.97、および約20nmのCuNW@LaF
3、約20nmのCuNW@柔軟シェルについて達成された容量のパーセンテージを示す。
【
図28】
図28は、本開示の態様による電気化学的に活性な構造を充電および放電する例示的な模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成の説明として意図されており、本明細書に記載される概念が実施され得る唯一の構成を表すことを意図するものではない。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を提供する目的で、特定の詳細を含む。しかしながら、これらの概念は、これらの特定の詳細なしに実施することができることは、当業者には明らかであろう。いくつかの例において、このような概念を不明瞭にすることを避けるために、周知の構成要素がブロック図の形態で示されている。
【0019】
一般に、本開示は、電気化学的に活性な物質、ならびに電池性能を改善するために調整された構造および組成を有する電極材料を含むフッ化物イオン電池系に関する。いくつかの態様では、本開示は、コア-シェルナノ粒子、コア-シェルナノ粒子を包含する装置、ならびにコア-シェルナノ粒子を作製し、使用する方法、ならびにコア-シェルナノ粒子を含む装置に関する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、コアは、粒子、例えば、球状粒子に限定されず、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、フレーム、フレーク、ナノ多孔質、シート、薄膜、および発泡体を含むが、これらに限定されない構造も包含する。一実施形態では、コア物質の大きさは、電子伝導性またはF-イオン移動度のいずれかによって決定される。例示的な実施例では、20nmは、コア材料中のF-イオン浸透の距離制限であり得る。電子またはF-のいずれかの経路が20nmより大きい場合、これに対する耐性はそれを妨げるであろう。従って、20nmより小さいかまたはこれに等しい直径を有する球状コア粒子は、球状粒子が全方向に20nmより小さいかまたはこれに等しい経路を有するので、適用され得る。したがって、コア材料の全てまたはほぼ全てを利用することができ、それによって、陰極の重量および体積を低減することができる。しかしながら、コアは、球状粒子に限定されない。それが例えば一方向に20nm以下の経路を有する場合、20nmを超える寸法を有する他のコア構造を使用してもよい。したがって、球状粒子は、全方向に20nmより小さいかまたはこれに等しい経路を有する一方、フレーク(例えば、紙の片のような)は、xおよびy方向に非常に大きな距離を有し得るが、拡散/電子輸送が、20nm以下のZ方向にのみ起こる場合、それは、最小抵抗の経路であるので、優勢である。
【0021】
フッ化物イオン電荷担体、活性電極材料、および適切な液体電解質を利用する、電池などの一次および二次電気化学セルは、従来の技術水準のリチウム電池およびリチウムイオン電池に代わるものを提供することができる。このようなフッ化物イオン電池(FIB)系は、液体電解質中に担持されたフッ化物陰イオンを電気化学セル中の電荷担体の少なくともいくつかとして利用しながら、室温で有用に動作することができる。FIB系は、互いに物理的に分離された陽極および陰極を有するが、フッ化物イオン伝導性電解質と共通に接触している。陽極は、典型的には、低電位の元素または化合物であり、金属、金属フッ化物、または挿入組成物であり得る。同様に、陰極は、元素または組成物であり得、陽極よりも高い電位を有する金属、金属フッ化物、または挿入組成物であり得る。フッ化物伝導性電解質中のフッ化物イオン(F
-)は、電池の放電中は陰極から陽極に、充電中は陽極から陰極に向かう(
図2):
放電:
陽極:M’F
x+nF
-→M’F
x+n+ne-(フッ素イオンの収容、酸化)
陰極:MF
y+ne-→MF
y-n+nF
-(フッ化物イオン放出、還元)
遷移金属フッ化物は、好ましくは陰極材料として用いられ、アルカリ土類金属または希土類金属は、好ましくは陽極材料として用いられる。適切な陽極および陰極金属の例を、
図1Cに示す。
【0022】
充電の間、逆反応が起こる。例えば、両方の金属が金属フッ化物を形成することができるCaとCuとの間のフッ化物陰イオン移動に基づくFIB電池反応は、以下であり得る:
放電:
Ca+CuF2→CaF2+Cu
充電:
CaF2+Cu→Ca+CuF2
【0023】
FIB電極の安定であり、信頼性のある長期サイクルを可能にするためには、2つの主要な課題が存在する。第一に、上記の電気化学反応の可逆性は、金属または金属フッ化物活性材料がナノサイズ(すなわち、粒子径寸法の少なくとも1つが1μm未満)である場合に観察される。しかしながら、このような小さな寸法を有する粒子は、高い表面エネルギーを有し、電解質成分(例えば、F-)と反応して、「自己放電」(すなわち、一般的な電流ではないM+nF-→MFnなどの化学反応)を含む望ましくない副反応を与えることが多い。必要とされるのは、所望の場合(すなわち、電気化学的充電または放電の間)、F-イオンの通過を依然として可能にしながら、活性物質粒子を封入するためのコーティング、シェル、層などの形成である。封入物質は、このような副反応から活性物質を保護することもでき、これらの電極物質の長期間の循環安定性を可能にする。
【0024】
第二に、このような電気化学的反応は変換プロセスであり、金属または金属フッ化物の構造は、電気化学的プロセス中に崩壊し、プロセス中にそれぞれ金属フッ化物または金属として改質される。この変換プロセスは、以下の表1に与えられる例によって示されるように、活性物質の充電状態と放電状態との間に有意な体積変化をもたらす:
【0025】
【0026】
このような有意な体積変化は、FIB電極材料粒子を封入する共形保護コーティングの有用性を制限する。なぜなら、1つの特定の電荷状態は、体積変化のために、異なる電荷状態の粒子と必ずしも共形ではないからである。必要とされるのは、電極活性物質を電解質との副反応から保護し、封入剤を通るイオン伝導を可能にし、封入剤および/または封入剤膨張/収縮特性内に十分な空間を有して、活性物質と電解質との間の直接的な接触を可能にすることなく、充電および放電中の活性物質の体積変化に対応する組成物およびプロセスである。一部の実施形態では、十分な空間は空間でなくてもよい。このような組成物およびその調製を、以下に概説する。
【0027】
本明細書で使用される用語「約」は、当業者によって理解されるように近いように定義される。1つの非限定的な実施形態では、用語「約」は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0028】
図1Aに示されるようないくつかの実施形態では、コア-シェルナノ粒子は、金属または金属合金(「Me」)を含むコア、および金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物を含むシェルを含む。コアの金属は、金属ハロゲン化物シェルの金属と同じであってもよい。いくつかの実施形態では、コアの金属および金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物シェルの金属は、異なる金属である。いくつかの実施形態では、金属ハロゲン化物シェルは、それ自体、2つの金属を含んでもよい。本開示のコア-シェルナノ粒子は、
図2に示されるようなフッ化物シャトル電池を含む、電気化学セルに使用するための電極を含むが、これらに限定されない様々な方法および用途に組み込まれ得る。リチウムイオン電池と比較して、Fシャトル電池は、体積において約4倍、重量密度で約2倍という、はるかに高いエネルギー密度を有する。種々のタイプの電池のエネルギー密度を、以下の
図1Bおよび表2に示す:
【0029】
【0030】
コアを形成するために使用される金属または金属合金は、鉄ナノ粒子、コバルトナノ粒子、ニッケルナノ粒子、銅ナノ粒子、鉛ナノ粒子、およびアルカリ土類金属ナノ粒子を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、金属ナノ粒子は、コバルトナノ粒子および銅ナノ粒子からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、金属ナノ粒子は銅ナノ粒子である。コアを形成するために使用される金属は、金属前駆体溶液を還元剤と混合して金属ナノ粒子を形成することによって合成され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、コアを形成するために使用される金属ナノ粒子は、合成中に金属ナノ粒子の酸化を防止するか、または他の方法で阻害する安定剤の存在下で合成されてもよく、その上に金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物シェルを形成する前に金属ナノ粒子から容易に除去可能である。例えば、金属ナノ粒子合成中に使用されるポリビニルピロリドン(55,000g/molの分子量)などの嵩高いポリマーは、金属ナノ粒子の酸化を阻害する。しかしながら、このような安定剤は、合成に続いて金属ナノ粒子から容易に除去可能ではない。いかなる特定の理論にも限定されずに、残留安定剤は、金属ナノ粒子によって形成されるコアと、所望の系におけるコア-シェルナノ粒子の性能を損なう金属ハロゲン化物またはオキシハロゲン化物シェルとの間に追加の層を形成することができる。例えば、F-シャトル電池において電極材料として使用されるコア-シェルナノ粒子の導電性を維持することが望ましい。しかしながら、コアとシェルとの間に残留安定剤の追加の層を含むコア-シェル材料は、電極材料間の空間の増加をもたらす可能性が高く、残留安定剤の追加の層および/またはその結果生じる空間の増加は、コア-シェル材料の導電率を減少させ得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まずに、安定剤の追加の層は、コアとシェルとの間の接触を妨げてフッ化物イオンを伝導することができ、一方、安定剤の不在は、コアからシェルへのフッ化物イオンを伝導する可能性を増加させ得る。
【0032】
したがって、安定剤は、その上に直接金属ハロゲン化物または金属オキシハロゲン化物シェルを形成する前に、コアの表面上の安定剤の量を最小限にするために、そこから容易に除去可能であるコアを形成するために使用される金属ナノ粒子の合成において使用され得る。非限定的な例では、金属ナノ粒子の合成において使用され得る1つ以上の安定剤は、1000g/mol未満、任意に500g/mol未満、任意に375g/mol未満、および任意に350g/mol未満の分子量(個々にまたは加重平均のいずれか)を含む。例示的な例としては、364g/molの分子量を有するヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、192g/molの分子量を有するクエン酸、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、コア-シェルナノ粒子のシェルは、コアを形成するために使用される単離された金属ナノ粒子を、例えば、反応してコア上に金属ハロゲン化物シェルを形成する金属塩溶液およびハロゲン化物塩溶液と混合することによって形成されてもよい。シェルは、金属コア上に直接堆積され、
図1Aに示すように、コアを完全に囲むことができる。いくつかの実施形態では、シェルを形成するために使用される金属塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および遷移金属塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、シェルを形成するために使用される金属塩は、遷移金属塩である。特定の実施形態では、シェルを形成するために使用される金属塩は、ランタン塩、セリウム塩、およびマグネシウム塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、シェルを形成するために使用される金属塩は、ランタン塩およびセリウム塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、金属塩はランタン塩である。好ましい実施形態において、ランタン塩は、硝酸ランタンである。いくつかの実施形態において、ハロゲン化物塩は、フッ化ナトリウムである。非限定的な例では、シェルは、金属フッ化物または金属オキシフッ化物含有材料(すなわち、CeF
3、CeOF、LaOF、LaF
3)を含む。
【0034】
いくつかの実施態様において、金属塩溶液は、2つの金属塩を含む。いくつかのそのような態様において、2つの金属塩のうちの1つは、バリウム塩である。いくつかの実施態様において、金属塩溶液は、バリウム塩およびランタン塩を含む。いくつかの実施形態では、金属塩溶液は、硝酸バリウムおよび硝酸ランタンを含む。いくつかの実施形態では、金属塩溶液は、約1:10の比で硝酸バリウムおよび硝酸ランタンを含む。
【0035】
他の実施形態では、コア(または電極活性物質)は、空間によってシェル(または封入剤)から分離されてもよい。このような実施形態による組成物およびプロセスは、電極活性物質を電解質との副反応から保護し、封入剤を通じたイオン伝導を可能にし、封入剤および/または封入剤膨張/収縮特性内に十分な空間を有して、活性物質と電解質との間の直接的な接触を可能にせずに、充電および放電中の活性物質の体積変化に対応することができる。
【0036】
コアおよび電極活性物質の用語は、本明細書では互換的に使用される。同様に、シェルおよび封入剤の用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0037】
他の実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるコア-シェルナノ粒子を含む電極を対象とする。コア-シェルナノ粒子およびその製造方法に関して記載されたすべての態様および実施形態は、電極に等しい力で適用される。非限定的な例では、電極は、Fシャトル電池系の一部である。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示は、活性物質を含むコアと、活性物質を少なくとも部分的に取り囲むフッ化物含有シェルとを含み、フッ化物含有シェルが第1の金属および第2の金属を含み、第1の金属がバリウムである、電気化学的に活性な構造を対象とする。前述の実施形態に関して説明されたすべての態様は、等しい力で本実施形態に適用され、その逆もまた同様である。
【0039】
いくつかの態様において、活性物質は、銅ナノ粒子を含む。
【0040】
いくつかの態様において、フッ化物含有シェルは、コアに直接結合される。
【0041】
いくつかの態様において、第2の金属はランタンである。
【0042】
いくつかの態様において、バリウムおよびランタンは、x対1-xの比で存在する。
【0043】
いくつかの態様において、xは、約0.03~約0.15である。
【0044】
いくつかの態様において、xは約0.03である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示は、被覆した金属ナノ粒子を製造する方法を対象とし、この方法は、a)水/金属ナノ粒子混合物を提供するステップ;b)水/金属ナノ粒子混合物を不活性雰囲気に曝すステップ;およびc)金属ナノ粒子コアの周りにフッ化物含有シェルを形成するステップを含み、フッ化物含有シェルは、第1の金属および第2の金属を含み、第1の金属はバリウムである。前述の実施形態に関して説明されたすべての態様は、等しい力で本実施形態に適用され、その逆もまた同様である。
【0046】
いくつかの態様において、金属ナノ粒子は、銅ナノ粒子を含む。
【0047】
いくつかの態様において、フッ化物含有シェルは、コアに直接結合される。
【0048】
いくつかの態様において、第2の金属はランタンである。
【0049】
いくつかの態様において、バリウムおよびランタンは、x対1-xの比で存在する。
【0050】
いくつかの態様において、xは、約0.03~約0.15である。
【0051】
いくつかの態様において、フッ化物含有シェルを形成することは、第1の金属塩、第2の金属塩、およびフッ化物含有塩を水/金属ナノ粒子混合物に添加して、金属ナノ粒子コアの周りにフッ化物含有シェルを生成することを含み、第1の金属はバリウム塩である。
【0052】
いくつかの態様において、第2の金属はランタン塩である。
【0053】
いくつかの態様において、第1の金属塩は硝酸バリウムであり、第2の金属塩は硝酸ランタンである。
【0054】
いくつかの態様において、硝酸バリウムおよび硝酸ランタンは、約1:10のモル比で使用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示は、銅ナノ粒子を含むコアと、銅ナノ粒子を少なくとも部分的に取り囲むフッ化物含有シェルとを含む電極を対象とし、フッ化物含有シェルは、x対1-xの比でバリウムおよびランタンを含む。前述の実施形態に関して説明されたすべての態様は、等しい力で本実施形態に適用され、その逆もまた同様である。
【0056】
いくつかの態様において、xは、約0.03~約0.15である。
【0057】
いくつかの態様において、本開示は、電極および液体電解質を含むフッ化物シャトル電池を対象とする。液体電解質の非限定的な例は、米国特許出願第15/228,876号に記載されている。
【0058】
「不活性雰囲気」は、酸素をほとんどまたは全く含有せず、反応する前に高い閾値を有する不活性または非反応性ガスまたは気体を含む気体混合物を指す。不活性雰囲気は、分子状窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガス、またはそれらの混合物であってよいが、これらに限定されない。
【0059】
「還元剤」は、それ自体が酸化される間に別の物質の還元を引き起こす物質である。還元は、化学種による電子(複数可)の獲得を指し、酸化は、化学種による電子(複数可)の喪失を指す。
【0060】
「金属塩」は、陽イオン(複数可)が正に荷電した金属イオン(複数可)であり、陰イオン(複数可)が負に荷電したイオン(複数可)であるイオン性錯体である。「陽イオン」は正に荷電したイオンを指し、「陰イオン」は負に荷電したイオンを指す。本開示による「金属塩」において、陰イオンは、任意の負に荷電した化学種であり得る。本開示による金属塩中の金属は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アルミニウム塩、または遷移後金属(post-transition metal)塩、およびそれらの水和物を含むことができるが、これらに限定されない。
【0061】
「アルカリ金属塩」は、金属イオンがアルカリ金属イオンである金属塩、または元素の周期律表の第I族の金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、またはフランシウムである。
【0062】
「アルカリ土類金属塩」は、金属イオンがアルカリ土類金属イオンである金属塩、または元素の周期律表のII族の金属、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、またはラジウムである。
【0063】
「遷移金属塩」は、金属イオンが遷移金属イオンである金属塩、またはランタニドおよびアクチニド系列を含む元素の周期律表のd-ブロック中の金属である。遷移金属塩としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウムおよびローレンシウムの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
「遷移後金属塩」は、金属イオンが遷移後金属イオンである金属塩であり、例えばガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス、またはポロニウムである。
【0065】
「ハロゲン化物塩」は、陰イオン(複数可)がフッ化物イオン(複数可)、塩化物イオン(複数可)、臭化物イオン(複数可)、およびヨウ化物イオン(複数可)を含むがこれらに限定されないハロゲン化物イオン(複数可)であるイオン性錯体である。「フッ化物塩」は、陰イオン(複数可)がフッ化物イオン(複数可)であるイオン性錯体である。本開示によれば、ハロゲン化物塩またはフッ化物塩の陽イオンは、任意の正に荷電した化学種であってもよい。
【0066】
「金属フッ化物」は、陽イオンが1つ以上の金属イオン(複数可)であり、陰イオン(複数可)がフッ化物イオン(複数可)であるイオン性錯体である。本開示のいくつかの態様によれば、金属塩(複数可)およびフッ化物塩は、反応して、金属ナノ粒子コアの周りに金属フッ化物シェルを生成する。同様に、「金属ハロゲン化物」は、陽イオンが1つ以上の金属イオン(複数可)であり、陰イオン(複数可)がハロゲン化物イオン(複数可)であるイオン性錯体である。
【0067】
「フッ化物含有」塩は、陰イオン(複数可)がフッ化物イオンを含むが、フッ化物イオンのみであることに限定されないイオン性錯体である。代わりに、「フッ化物含有」塩は、陰イオン(複数可)が他のイオンまたは原子と複合してフッ化物自体を含むイオン性錯体を含む。本開示の態様での使用に適した「フッ化物含有」塩は、フッ化物塩、テトラフルオロホウ酸塩およびヘキサフルオロリン酸塩などの非金属フルオロ陰イオン、ならびにオキシフッ化物塩を含むが、これらに限定されない、当業者に公知のものを含む。本開示のいくつかの態様では、フッ化物含有塩は、第四級アンモニウムフッ化物およびフッ素化有機化合物を含み得る。本開示のいくつかの態様によれば、金属塩およびフッ化物含有塩は、反応して、金属ナノ粒子コアの周りにフッ化物含有シェルを生成する。
【0068】
用語「電極」は、イオンおよび電子が電解質および外部回路と交換される電気伝導体を指す。「正電極」および「陰極」は、本説明において同義的に使用され、電気化学セルにおいてより高い電極電位(すなわち、(xi)陰極よりも高い)を有する電極を指す。「負電極」および「陽極」は、本説明において同義的に使用され、電気化学セルにおいてより低い電極電位(すなわち、正電極よりも低い)を有する電極を指す。陰極還元は、化学種の電子(複数可)を獲得することを指し、陽極酸化は、化学種の電子(複数可)を失うことを指す。本発明の正電極および負電極は、薄膜電極構成のような薄い電極設計を含む、電気化学および電池科学の分野で公知のような有用な構成および形成因子の範囲で提供することができる。電極は、例えば、米国特許第4,052,539号およびOxtoby et al.,Principles of Modern Chemistry (1999),pp.401-443に開示されている通りを含む、当技術分野で知られているように製造される。
【0069】
用語「電気化学セル」は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する、またはその逆のデバイスおよび/またはデバイス構成要素を指す。電気化学セルは、2つ以上の電極(例えば、正電極および負電極)ならびに電解質を有し、電極表面で起こる電極反応は、電荷移動プロセスをもたらす。電気化学セルには、一次電池、二次電池、および電解系が含まれるが、これらに限定されない。一般的なセルおよび/または電池の構成は、当技術分野で公知である(例えば、Oxtoby et al.,Principles of Modern Chemistry(1999),pp.401-443参照)。
【0070】
「電解質」は、固体状態、液体状態(最も一般的)、またはよりまれに気体(例えば、プラズマ)であり得るイオン伝導体を指す。
【0071】
本開示は、一般に、コアと、該コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルとを含む電気化学的に活性な構造を対象とし、該コアは、電気化学的に活性な物質を含み、該シェルは、シェル材料を含む。本開示はまた、本明細書中に記載される電気化学的に活性な構造を作製する方法、ならびに本明細書中に記載されるような電気化学的に活性な構造を含む電気化学セルを対象とする。
【0072】
本明細書に記載される電気化学的に活性な構造は、コアを含み、コアは、電気化学的に活性な物質を含む。本明細書中で使用される場合、用語「電気化学的に活性な物質」は、一次または二次電気化学セルにおいて、例えば、イオン電池系において電極として作用することができる物質を指す。いくつかの態様によれば、電気化学的に活性な物質は、液体型フッ化物(F)シャトル電池において陰極として作用することができる材料を含むことができる。
【0073】
いくつかの態様によれば、本開示による電気化学的に活性な物質は、高容量および高エネルギー密度を提供する軽量材料であり得る。本開示に従って有用な電気化学的に活性な物質の例としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、リチウムイオン(Li)などの金属、それらの合金、それらの酸化物、フッ化物、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様によれば、電気化学的に活性な物質は、銅、フッ化銅(II)(CuF2)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0074】
いくつかの態様によれば、本開示による電気化学的に活性な物質は、高容量および高エネルギー密度を提供する軽量材料であり得る。本開示に従って有用な電気化学的に活性な物質の例としては、銅(Cu)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)などの金属、それらの合金、それらの酸化物、フッ化物、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様によれば、電気化学的に活性な物質は、銅、フッ化銅(II)(CuF2)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0075】
いくつかの態様によれば、コアは、選択された形状を有してもよい。例えば、コアは、ナノ粒子(例えば、球形ナノ粒子)、ナノチューブ、ナノワイヤ、フレーム、フレーク、ナノ多孔性シート、薄膜、発泡体、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの態様によれば、コアの大きさは、電子伝導性またはF-イオン移動度のいずれかによって決定されてもよい。例示的な実施例では、20nmは、コア物質中のF-イオン浸透の距離限界であり得る。電子またはF-イオンのいずれかの経路がこの距離限界(この例では20nm)よりも大きい場合、電子伝導性および/またはF-イオン移動度は減少するか、または妨げられるであろう。したがって、いくつかの態様によれば、コアは、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい少なくとも1つの寸法を含むことができる。例えば、球形ナノ粒子がすべての方向において約距離限界より小さいかまたはこれに等しい電子またはF-イオンのための経路を提供するであろうように、コアは、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい直径を有する球形ナノ粒子を含み得る。コアは、少なくとも1つの方向において約距離限界以下の経路を有する限り、約距離限界より大きい1つ以上の寸法を有してもよいことが理解されるべきである。例えば、コアは、約距離限界より大きいXおよびY方向の寸法、ならびに約距離限界より小さいかまたはこれに等しいZ方向の寸法を有するフレークを含み得る。いくつかの態様によれば、距離限界は、約20nm、任意に約30nm、任意に約40nm、および任意に約50nmであってもよい。いくつかの態様によれば、距離限界は、約20~80nm、任意に約30~70nm、および任意に約40~60nmであり得る。いくつかの態様によれば、距離限界は、電気化学的に活性な構造の特定の態様、例えば、そのシェルに少なくとも部分的に対応する。特に、比較的低いイオン耐性を有するシェルは、F-イオンがシェルをコアへとより容易に横切ることができるので、より長い距離限界を提供する。
【0076】
本開示に従って有用なコアの例としては、限定されないが、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい直径を有するナノ粒子、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい少なくとも1つの寸法を有するナノワイヤ、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい肉厚を有するナノチューブ、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい厚さを有するフレーク(例えば、三角形、長方形、正方形、円形、または楕円形)、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい厚さを有するフィルム、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい孔肉厚さを有する発泡体、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい厚さを有するシート、約距離限界より小さいかまたはこれに等しい厚さを有するフレーム、約距離限界より小さいかまたはこれに等しいワイヤ厚さを有するメッシュ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
いくつかの態様によれば、コアは、約40nmより小さいかまたはこれに等しい、任意に約35nmより小さいかまたはこれに等しい、任意に約30nmより小さいかまたはこれに等しい、任意に約25nmより小さいかまたはこれに等しい、任意に約20nmより小さいかまたはこれに等しい、任意に約15nmより小さいかまたはこれに等しい、および任意に約10nmより小さいかまたはこれに等しい少なくとも1つの寸法を含むことができる。いくつかの実施形態では、コアは、約1~25nm、任意に約1~20nm、任意に約1~15nm、任意に約1~10nm、任意に約1~10nm、および任意に約1~5nmの少なくとも1つの寸法を含むことができる。
【0078】
電気化学的に活性な構造は、コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルをさらに含む。例えば、シェルは、コアの表面積の少なくとも約50%が、任意に少なくとも約60%、任意に少なくとも約70%、任意に少なくとも約80%、任意に少なくとも約90%、任意に少なくとも約95%、任意に少なくとも約100%、シェルによって覆われるように、コアを取り囲んでもよい。いくつかの態様によれば、コア上のシェルの分子被覆は、約1~100nm-2、任意に約6~60nm-2であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルは、厚さを含み、金属ナノ構造コアの厚さとシェル層の厚さとの間の厚さの比は、約10:1~約1:1、任意に約9:1~約2:1、任意に約8:1~約3:1、任意に約7:1~約4:1、任意に約6:1~約5:1である。
【0080】
いくつかの態様によれば、コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルは、約1nm~約10nm、任意に約2nm~約9nm、任意に約3nm~約8nm、任意に約4nm~約7nm、任意に約5nm~約6nm、および任意に約5nmの厚さを有する。
【0081】
いくつかの態様によれば、コアを少なくとも部分的に取り囲むシェルは、約1nm~1ミクロン、任意に500nm以下、任意に200nm以下、任意に100nm以下、任意に50nm以下、10nm以下、任意に約9nm以下、任意に約8nm以下、任意に約7nm以下、任意に約6nm以下、任意に約5nm以下、任意に約4nm以下、任意に約3nm以下、任意に約2nm以下、任意に約1nm以下の厚さを有する。さらに、全ての範囲は、約1~500nm、1~200nm、1~100nm、1~50nm、1~10nm、1~5nm、および1~2nmとして任意に記載することができる。
【0082】
いくつかの態様によれば、液体電解質中で理論的容量を有する金属フッ化物を形成することができる金属ナノ構造コアが提供され、金属ナノ構造コアは、少なくとも1つのより小さな寸法を含み、シェルは、コアを少なくとも部分的に取り囲み、シェルは、厚さを含み、シェルの厚さおよびナノ構造コアのより小さな寸法は、液体電解質中の材料の容量が金属フッ化物の理論的容量の約5%~90%、任意に約10%~75%、任意に約15%~60%、任意に約20%~50%、任意に約25%~45%、および任意に約30%~40%である比率で提供される。
【0083】
いくつかの態様によれば、金属ナノ構造コアは、30nm以下、任意に25nm以下、任意に20nm以下、任意に20nm以下、任意に15nm以下、任意に10nm以下、任意に8nm以下、任意に6nm以下、および任意に5nm以下の厚さを有する。
【0084】
いくつかの態様によれば、シェルは、液体型Fシャトル電池と適合性であるシェル材料を含むことができる。例えば、シェル材料は、充電および/または放電中の液体タイプFシャトル電池の液体電解質へのコア材料の溶解が減少または排除され得るように選択され得る。シェル材料は、適切な充電時間をさらに提供するように選択され得る。本明細書で使用される場合、「充電時間」という用語は、放電された液体型Fシャトル電池電極が完全に充電するのに必要な時間の長さ、すなわち、フッ化物伝導性電解質中のF-が電池の充電中に陽極から陰極に移動するのに必要な時間の長さを指す。いくつかの態様によれば、充電時間は、約1~20分、任意に約1~10分、任意に約3~5分であってもよい。
【0085】
いくつかの態様によれば、シェル材料は、充電および/または放電中にコアによって構成される電気化学的に活性な物質を許容可能に利用するために選択されてもよい。利用は、充電中にF-イオンを受容する電気化学的に活性な物質の部分、および/または放電中に還元される電気化学的に活性な物質の部分を指すことが理解されるべきである。いくつかの態様によれば、本明細書に記載されるように比較的低いイオン抵抗を有するシェル材料を選択することによって、電気化学的に活性な物質の少なくとも約50%が、充電および/または放電の間に利用されてもよく、任意に少なくとも約60%、任意に少なくとも約70%、任意に少なくとも約80%、任意に少なくとも約90%、および任意に少なくとも約100%利用されてもよい。
【0086】
いくつかの態様によれば、シェル材料は、「柔軟シェル」材料を含むことができる。本明細書で使用される場合、「柔軟」は、本明細書に記載されるような材料、および特に、本明細書に記載されるような自己集合可能な少なくとも1つの材料を含む材料を指す。柔軟シェル材料の例としては、界面活性剤、特定のポリマー、1つ以上の特定の官能基を有する非界面活性剤分子、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様によれば、シェル材料は、有機材料、および特に、本明細書に記載されるように自己集合可能な少なくとも1つの材料を含む有機材料を含み得る。有機シェル材料の例としては、有機界面活性剤、有機または有機分子含有ポリマー、1つ以上の特定の官能基を有する非界面活性有機分子、およびそれらの組み合わせなどの有機柔軟シェル材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
いくつかの態様によれば、本明細書に記載する特定の官能基は、-COOH、-NH
2、-COH、-OH、-SH、-PO
3H、-SO
3H、-CN、-NC、-R
2P、-COO
-、-COO-OOCR、エン-ジオール、-C≡N、-N≡N
+(BF
4
-)、-Sac、-SR、-SSR、-CSSH、-S
2O
3
-Na
+、-SeH、-SeSeR、-R
2P=O、-PO
3
2-/-P(O)(OH)
2、-PO
4
2-、-N≡C、-HC=CH
2、-C≡CH、-SiH
3、-SiCl
3、-OCH
2CH
3、式(I)、式(II)、式(III)、およびそれらの組合せからなる群から選択することができ、式(I)は:
【化1】
であり、式(II)は:
【化2】
であり、式(III)は:
【化3】
であり、
式中、R’およびR’は、各々独立して、有機鎖、特に部分的に、もしくは完全にフッ素化することができる有機鎖、あるいは単独の、または別のR’もしくはR’と組み合わせた芳香族基、特に1つ以上のフッ素親和性基で置換された芳香族基である。R’およびR”に有用な有機鎖の例には、-(CF
2)
nCF
3、(CH
2CF
2)nCF
3および(CF
2CH
2O)
nCF
3が含まれるが、これらに限定されない。少なくとも1つの芳香族基を有する式(III)による官能基の例を、式(IV):
【化4】
として、および式(V):
【化5】
として以下に示す。
【0088】
各R’およびR’’は、別のR’もしくはR’’と同じであってもよく、または異なっていてもよいことが理解されるべきである。いくつかの態様によれば、各R’は、許容可能なフッ素化特性を示してもよく、および/または各R’’は、許容可能な安定化特性を示してもよい。式(III)に示されるカルベン中に共有されていない価電子を有する炭素原子は、本明細書に記載されるように、コアによって含まれる1つ以上の分子への付着のために構成され得ることが、さらに理解されるべきである。式(III)を有する官能基を含む材料の例としては、Smith et al.,“N-Heterocyclic Carbenes in Materials Chemistry.” Chem.Rev.,2019,119,4986-5056に記載されているものが挙げられ、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
いくつかの態様によれば、界面活性剤は、本明細書に記載されるようなコアを調製するのに有用な界面活性剤、例えば、極性頭部(例えば、本明細書に記載されるような特定の官能基の1つ以上を含む極性頭部)、炭素含有尾部(例えば、アルカン、アルキン、アルケン、および芳香環)、フルオロカーボン含有尾部(例えば、脂肪族鎖、例えば(CF2)n、(CHF)n、(CH2CF2)n、および(CH2OCH2CF2)n、ならびに/または芳香族基、例えば(C6-xFx-)n)、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される1つ以上の官能基を有する界面活性剤を含み得る。本開示に従って有用な界面活性剤の例は、オレイルアミン、オレイン酸、トリス(トリメチルシリル)シラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデカンチオール、2-(トリフルオロメトキシ)-ベンゼンチオール、P-[12-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)ドデシル]-ホスホン酸、P-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシル)-ホスホン酸、ペンタフルオロベンジルホスホン酸、ペルフルオロドデカン酸およびそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの態様によれば、界面活性剤は、コアの製造に有用な1つ以上の界面活性剤を含み得る。
【0090】
いくつかの態様によれば、特定のポリマーは、その場重合を介して形成され得るポリマー、特に、それらのモノマーから、またはより短いオリゴマー種からのその場重合を介して形成され得るポリマーを含み得る。さらに、または代わりに、特定のポリマーは、水素結合を介して自己修復することができる場合がある。例えば、特定のポリマーは、
図28に関して以下でより詳細に議論されるように、充電および放電中のコアの体積膨張および/または収縮から少なくとも部分的にもたらされ得る亀裂および/またはギャップなどの、シェルにおける自律的かつ反復的に「自己修復」不完全性をもたらすように、水素結合可能であり得る。このようなポリマーの例には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、アミノ末端、C=O結合含有架橋ポリマー(P.Cordier,F.Tournilhac,C.Soulie-Ziakovic,L.Leibler,Nature 451,977,(2008);B.C.Tee,C.Wang,R.Allen,Z.Bao,Nat Nanotechnol 7,825,(2012))、およびこれらの組合せが含まれるが、これらには限定されない。
【0091】
いくつかの態様によれば、シェルは、1つ以上の単分子層を含み得る。いくつかの態様によれば、シェルは、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の単分子層を含み得る。いくつかの態様によれば、単分子層の各々は、同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0092】
本開示のいくつかの態様によれば、シェル材料は、金属塩などの無機物質を含むことができる。シェルを形成するために使用される金属塩の例は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および遷移金属塩を含む。特定の実施形態では、シェルを形成するために使用される金属塩は、ランタン塩、セリウム塩、およびマグネシウム塩を含む。特定の実施形態では、シェルを形成するために使用される金属塩は、ランタン塩およびセリウム塩からなる群から選択される。特定の実施形態では、金属塩はランタン塩である。好ましい実施形態において、ランタン塩は、硝酸ランタンである。いくつかの実施形態において、ハロゲン化物塩は、フッ化ナトリウムである。非限定的な例では、シェルは、金属フッ化物または金属オキシフッ化物含有物質(すなわち、CeF3、CeOF、LaOF、LaF3)を含む。いくつかの実施形態では、コア-シェルナノ粒子のシェルは、コアを形成するために使用される単離された金属ナノ粒子を、例えば、反応してコア上に金属ハロゲン化物シェルを形成する金属塩溶液およびハロゲン化物塩溶液と混合することによって形成されてもよい。
【0093】
いくつかの態様において、金属塩溶液は、2つの金属塩を含む。いくつかのそのような態様において、2つの金属塩のうちの1つは、バリウム塩である。いくつかの態様において、金属塩溶液は、バリウム塩およびランタン塩を含む。いくつかの形態では、金属塩溶液は、硝酸バリウムおよび硝酸ランタンを含む。いくつかの形態では、金属塩溶液は、約1:10の比で硝酸バリウムおよび硝酸ランタンを含む。
【0094】
I.LaF3およびバリウムをドープしたLaF3シェルに封入されたCuナノ粒子
LaF3またはバリウムをドープしたLaF3シェルに封入されたCuナノ粒子を作製する方法は、米国特許出願第16/013,739号(米国特許出願公開第2018/0301764号として公開されている)に開示されており、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
図3Aは、それぞれCu@LaF
3コア-シェルナノ粒子およびCu@La
0.97Ba
0.03F
2.97コア-シェルナノ粒子のTEM画像を示す。
図3Aでは、中心の黒色領域が銅コアに対応し、周辺の黒色の、および白色の領域がLaF
3またはLa
0.97Ba
0.03F
2.97シェルに対応している。この図は、LaF
3またはLa
0.97Ba
0.03F
2.97シェルで直接コーティングされた銅コアの均一な被覆を示している。
【0096】
式Cu@La
0.97Ba
0.03F
2.97のシェルを持つコア-シェルナノ粒子を、
図3Bに概略的に示し、比較のためにCu@LaF
3を含む。最初に、銅ナノ粒子コアは、使用前に直径約50nmまでであってよく、LaF
3またはLa
0.97Ba
0.03F
2.97コーティングは、約5nmの厚さであってもよい。電池充電中にCuコアの周りに形成されるCuF
2層は、Cu@LaF
3ナノ粒子において約3nmの厚さまで成長することができる。しかし、BaをLaF
3シェルにドーピングすることにより、CuF
2層は、より大きな厚さ、例えば、
図3Bでは10nm程度まで成長することができる。
【0097】
図4Aおよび4Bは、Baドーピングによって達成される容量改善を示す図である。
図4Aは、Ag/Ag
+基準電極と比較した、Cu@LaF
3電極またはCu@La
0.97Ba
0.03F
2.97電極の最初の充放電サイクルの電圧プロフィルを示している。Baドープ電極(Cu@La
0.97Ba
0.03F
2.97)の容量送達は、Cu@LaF
3のわずか50.2mAh/gと比較して95.2mAh/gに達する(
図4B)。従って、LaF
3シェルのBaドーピングは、陰極電極の容量をほぼ2倍にする。Baドーピングにより、LaF
3シェルのイオン伝導性は、約100倍に改善される;例えば、M.Anji ReddyおよびM.Fichtner,Batteries based on fluoride shuttle,J.Mater.Chem.2011,21,17059-17062参照。その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。フッ化物イオンは、Cuと反応してCuF
2を形成するためにシェルを通ってより容易に移動することができ、CuF
2形成の量は、電池の容量を直接決定する。形成されるCuF
2が多いほど、電池の容量は高くなる。したがって、Cuの利用は、LaF
3シェルのBaドーピングによってほぼ2倍にすることができる。
【0098】
CuまたはCuF
2は、液体型Fシャトル電池のための陰極材料として有用である。これらの材料は、比較的安価であり、軽量であり、高容量および高エネルギー密度を提供する。CuF
2の理論的容量は、528mAh/gである。しかしながら、純粋なCuまたはCuF
2は、充電および放電中に液体電解質に容易に溶解する。この問題を解決するために、Cuコアは、LaF
3またはBaドープLaF
3シェル構造でコーティングされ、これは、充放電サイクル中にCuが溶解するのを効果的に防止する。たとえば、Cu@LaF
3の場合、LaF
3シェルは、充放電中にCuが溶解するのを効果的に防止する。その結果、充電中にCuをCuF
2に変換することができ、放電中にCuF
2をCuに還元することができる。Baドープシェル(例えば、La
0.97Ba
0.03F
2.97)を用いると、シェルのイオン伝導性を、LaF
3シェルのそれに比べて100倍改善でき、すなわち、シェルは抵抗が低い。F
-イオンは、より容易にシェルを通過し、その結果、より多くのCuが充電中にCuF
2にフッ素化され得る。容量は、ドープされていないLaF
3シェルに比べて2倍になる。(
図4A、4B、
図5参照)。
【0099】
II.Cuナノ構造の設計
多くの金属フッ化物の乏しい電気伝導性およびイオン伝導性のために、金属フッ化物の構造を設計して、活性物質を完全に利用し、それらの比容量およびエネルギー密度を達成することが必要である。
【0100】
一実施形態では、その理論的容量に近いエネルギー密度(すなわち、Cuについて843.5mAh/gおよびCuF2について528mAh/g)を達成するために、Cu/CuF2電極材料をより良好に利用するために、Cuナノ構造の少なくとも1つの方向または1つの軸に沿った20nm以下のCuナノ物質の厚さの要件を満たすように調整された構造設計が、好ましい。これらの構造の中で、Cuは、約5~20nmの範囲のLaF3またはBaxLa1-xF3-xコーティング/被覆を有する活性材料であってもよい。
【0101】
そのようなCuナノ構造の例としては、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノフレーム、ナノフレーク、ナノ多孔質、シート、薄膜などが挙げられる。いくつかの態様によれば、そのようなCuナノ構造は、厚さが20nm以下のCu薄膜を含むことができる。いくつかの実施形態では、そのようなCuナノ構造は、20nmを超えない厚さを有する多孔質壁を有するCuナノフォームを含むことができる。いくつかの実施形態では、そのようなCuナノ構造は、20nm以下の厚さを有するワイヤを有するCuメッシュを含むことができる。
【0102】
(i)Cuナノ粒子(「NP」)。
Cuコアナノ粒子の構造的設計を、
図6に示し、Cuコアナノ粒子は、20nm以下の直径およびLaF
3またはBa
xLa
1-xF
3-xコーティング/シェルを有する。
図6において、任意の方向において、Cuコアナノ粒子の厚さ/直径は、それらの球形のために20nm以下である。
【実施例】
【0103】
実施例1。6nmのCuナノ粒子(「NP」)の合成
NH
4OH(0.5mL、14.5M)を、アルゴン雰囲気中で23℃でCuCl
2・2H
2O(0.24g、1.4mmol)および臭化セトリモニウム(CTAB、0.68g、1.87mmol)の水(93mL、DI)中の撹拌溶液に添加した。ヒドラジン水和物(50~60%、3mL、17.66M)を、水(57mL、DI)中のCTAB(0.68g、1.87mmol)およびクエン酸一水和物(0.036g、0.18mmol)の溶液に添加した。ヒドラジン溶液を直ちに60mLシリンジに移し、シリンジポンプを介して5分間かけてCu前駆体溶液に添加した。ヒドラジン溶液の添加が完了したら、アルゴンラインを除去し、反応物を空気に開放して撹拌した。空気に曝露したら、クエン酸一水和物(0.21g、1.0mmol)の水(5mL)溶液を、一度にすべて注入した。次いで、混合物を1時間撹拌し、空気に開放した。CuNPを、遠心分離機(12,000rpm、5分間)によって単離し、上清を廃棄し、CuNPをEtOH(10mL)で2回洗浄した。生成物はXRDにより小さく、幅広いCuピークを示した。
図7参照。
【0104】
実施例2。6nmのCuナノ粒子シェルの合成
実施例1で得られたCuNP(6nm)を単離し、水(20mL)で1回洗浄した。CuNPを水(300mL)中に再分散し、水(60mL)中のLa(NO
3)
36H
2O(0.43g、1.0mmol)の溶液を添加し、混合物をアルゴン雰囲気中で撹拌した(60分)。試料を単離し(12,000rpmで10分間)、水(300mL)中に再分散した。撹拌溶液に、水(60mL)中のNaF(0.042g、1.0mmol)を、6mL/分で注入し、次いでアルゴン雰囲気中で撹拌した(60分)。試料を遠心分離機(12,000rpm、10分間)によって単離し、EtOH(20mL)で2回洗浄した。XRDは、Cuコア試料をLaF
3シェルでCu
2Oに完全に酸化したことを示した。
図8参照。6nmのCuコアNPおよびLaF
3シェルを有する6nmのCuコアNPのTEM画像を、それぞれ
図9Aおよび9Bに示す。
【0105】
実施例3。LaF
3シェルを用いた6nmのCuコアNPにおけるCu
2OのCuへの還元。
実施例2で得られたコアナノ粒子中のCu
2Oは、6時間の300℃の熱処理の下でH
2およびN
2ガスの混合物により効果的にCuに還元された。CuNPの粒径は、還元反応中に増加した。還元反応後のLaF
3シェルを有する6nmのCuコアNPのXRDスペクトルを、
図10に示す。
【0106】
(ii)LaF
3またはBaドープLaF
3シェル(「硬質シェル」)に封入されたCuナノワイヤ(「NW」)。
Cuコアナノワイヤの構造的設計は、
図11に示されており、Cuナノワイヤは、20nm以下の断面直径およびLaF
3またはBa
xLa
1-xF
3-xコーティングを有する。
図11において、ナノワイヤにおけるCuコアの断面直径は20nm以下であり、La
1-xBaxF
3-x/LaF
3シェル/コーティングの厚さは約5nmである。
【0107】
実施例4。Cuナノワイヤ上の二相シェル形成
約20mgのCuナノワイヤを、50mlのトルエン中に再分散した。臭化テトラブチルアンモニウムの第1の部分(0.322g、1.0mmol)を、Cuナノワイヤトルエン懸濁液中に添加した。La(NO3)36H2O(0.866g、2.0mmol)の水(50ml)中の溶液を、5ml/分でトルエン懸濁液に注入した。この混合物を、2時間非常に急速に撹拌した。水層を、分離漏斗を介して除去し、臭化テトラブチルアンモニウムの第2の部分(0.322g、1.0mmol)を、トルエン層に添加した。水(50mL)中のNaF(0.084g、2.0mmol)の溶液を、撹拌トルエン懸濁液に5mL/分で注入した。この混合物を、さらに2時間、非常に急速に撹拌した。水層を、分液漏斗を介して除去し、エタノール(20mL)を添加して、生成物を分配した。生成物を遠心分離(12,000rpm、10分間)によって単離し、次いでEtOH(20mL)で2回洗浄した。
【0108】
上述のように、二相シェル形成方法は、ナノワイヤに適用することができる。しかしながら、同じコーティング方法の適用は、ナノワイヤまたは関連する適用に限定されない。さらに、コア材料は銅に限定されない。一例では、コーティングされた構造は、フッ化物シャトル電池の陰極材料として使用されてもよい。別の例では、フッ化物シャトル電池は、液体電解質を含む。
【0109】
Cuナノワイヤ、シェル形成後の少量のCu
2O、およびCuナノワイヤのLaF
3シェルのXRDスペクトルを、
図14に示す。
図15Aおよび15Bは、それぞれ二相LaF
3シェル形成前後のCuナノワイヤのSEM像を描写する。
図16A、16B、および16Cのさまざまな倍率のTEM画像は、Cuナノワイヤの周りのLaF
3シェルの形成を示す。画像では、Cuナノワイヤを囲む灰色領域は、LaF
3シェルである。
【0110】
図17は、LaF
3シェルに囲まれたCuナノワイヤ(CuNW@LaF
3)から作製された電極の充放電サイクルの、Ag/Ag
+基準電極と比較した電圧プロフィルを示す。LaF
3シェルに封入されたCuNWで作られた電極の容量供給は、それぞれCu@Ba
xLa
1-xF
3-xの95.2mAh/gおよびCu@LaF
3の50.2mAh/gと比較して183mAh/gに達する。このように、LaF
3シェルに封入されたCuナノワイヤで作られた電極は、Cu@Ba
xLa
1-xF
3-xの容量をほぼ2倍にし、Cu@LaF
3の容量をほぼ4倍にした。いかなる特定の理論に拘束されることも望まずに、CuF
2形成の量は、電池の容量を直接決定すると考えられる。形成されるCuF
2が多くなればなるほど、電池の容量を高くすることができる。したがって、Cuの利用は、LaF
3封入と結合したCuナノワイヤによって著しく増加させることができる。一実施形態では、CuNW@LaF
3は、CuF
2の理論的容量の約35%に達し得、一方、Cu@Ba
xLa
1-xF
3-xおよびCu@LaF
3は、それぞれCuF
2の理論的容量の約18%および9.5%に達し得る。
【0111】
さらに、
図18は、初期条件、すなわち、使用前の電極におけるCuNW@LaF
3のXRDスペクトルを示し、その後、それぞれ、電荷(フッ素化)およびその後の放電(脱フッ素化)の後である。CuF
2は、充電後に形成し、その後、放電後にCuに還元することができる。
図18は、LaF
3シェルと結合したナノワイヤの形態のCuが、液体電解質中で循環され得ることを示す。
【0112】
(iii)Cuナノチューブ。
Cuナノチューブの構造設計を
図21に示し、Cuナノチューブは、断面厚が20nm以下のCu内壁部と、LaF
3またはBa
xLa
1-xF
3-xコーティング層とを有する。
図21において、ナノチューブのCu内壁の断面厚さは、20nm以下である。
【0113】
(iv)Cuナノフレーク。
Cuフレークは、三角形、長方形、正方形、円形、楕円形など多くの形状をとることができる。Cuナノフレークの構造を
図22に示し、Cuナノフレークの最小厚さは20nm以下であり、LaF
3またはBa
xLa
1-xF
3-xコーティングである。
図22において、少なくとも1つの方向または1つの軸に沿って、Cuナノフレークの厚さは20nm以下である。
【0114】
(v)Cuナノフレーム。
Cuナノフレークの構造設計を
図23に示し、Cuナノフレームは、厚さが20nm以下のCuの内層を有する。
図23において、Cuナノフレーム内の内部銅壁は、20nm以下の厚さを有する。
【0115】
(vi)20nm以上の厚さのCuナノシート。
Cuナノシートの構造設計を
図22に示し、Cuナノシートの最短方向の厚さは20nm以下である。
図22において、Cuナノシートの最短方向の厚さは20nm以下である。
【0116】
III.ナノ構造体を作製するのに適した他の金属材料。
本開示では、陰極電極を作製するのに好適な金属ナノ構造体は、銅に限定されない。
図1Cに示されるように、遷移金属およびその任意の塩を使用して、前の章に開示されるように、種々のコーティング層に封入されたナノ構造体を調製することができる。適切な遷移金属は、ランタニドおよびアクチニド系列を含む、元素の周期律表のd-ブロック中の金属を含む。遷移金属塩としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウムの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
IV.自己集合シェル(「柔軟シェル」)に封入された電気化学的に活性な構造
図27Aは、本開示の態様による電気化学的に活性な構造11の例を示す。
図27Aに示されるように、電気化学的に活性な構造11は、本明細書に記載されるようなコア12と、本明細書に記載されるようなシェル材料を含む単分子層13とを含み得る。いくつかの態様によれば、単分子層13は、例えば、本明細書に記載されるような界面活性剤を含む自己集合単分子層(SAM)であり得る。この実施例では、単分子層13は、本明細書に記載されるようなシェルに対応することが理解されるべきである。
【0118】
図27Bは、本明細書に記載されるようなコア12と、本明細書に記載されるようなシェル材料を含む単分子層13とを含む電気化学的に活性な構造11の例を示す。
図27Bはまた、第1の単分子層13の少なくとも一部を覆う第2の単分子層14を示す。また、第2の単分子層14は、第1の単分子層13と同一または異なるSAMであってもよい。この例では、第1の単分子層13および第2の単分子層14は、一緒になって、本明細書に記載されるようなシェルに対応し得ることが理解されるべきである。さらに、第1および第2の単分子層は、自己集合であり得る。
【0119】
図27Cは、本明細書に記載されるようなコア12と、本明細書に記載されるようなシェル材料を含む単分子層13とを含む、電気化学的に活性な構造11の例を示す。
図27Cはまた、単分子層13の少なくとも一部を被覆するポリマー層15を示す。ポリマー層15は、本明細書に記載されるようなポリマーのいずれかを含むことができる。この例では、単分子層13およびポリマー層15は、一緒になって、本明細書に記載されるようなシェルに対応し得ることが理解されるべきである。
【0120】
図27A~Cは、一定の例のシェル形態を示す一方、電気化学的に活性な構造は、種々の形態を有するシェルを含み得ることを理解すべきである。例えば、シェルは、2つより多いSAMおよび/または1つより多いポリマー層を含むことができ、SAMおよび/またはポリマー層の位置は、互いに対して任意の配置にある。
【0121】
いくつかの態様によれば、シェルは、充電状態と放電状態との間の電気化学的に活性な物質の体積変化に適応するように構成されてもよい。例えば、
図28は、本明細書に記載されるような電気化学的に活性な構造21を充電および放電する例示的な模式図を示す。
図28に示されるように、電気化学的に活性な構造21は、コア22と、本明細書に記載されるようなSAM23およびポリマー層24を含むシェルとを含み得る。コアは、本明細書に記載されるような任意のコア、例えば、Cuコアを含むことができる。
図28は、例えば、F
-イオンが電気化学的に活性な構造21を含む陰極に移動するときに、電気化学的に活性な構造21を充電する概略図を示す。
図28に示すように、F
-イオンは、Cuコア22の少なくとも一部がCuF
225に変換されるように、シェルをコア22へ横断することができる。Cuコア22中のCuがCuF
225に変換されるにつれて、コアの体積は膨張し得る。理論に束縛されることを望まずに、コアの体積が膨張するにつれて、SAM23は、欠陥または亀裂を生じ、それによって体積の変化に適応し得る。
図28に示されるように、電気化学的に活性な構造21が放電されるにつれて、CuF
225は、Cu22に還元されて戻され得、コアの体積は収縮し得る。体積が収縮するにつれて、SAM23は、その元の構成に自己集合または「自己修復」し得る。
【0122】
図16A~16Cは、本開示の態様による電気化学的に活性な構造の透過型電子顕微鏡(TEM)画像の例を示す。特に、
図16Aは、本明細書に記載されるようなシェルを有するナノワイヤを示す。
【0123】
V.界面活性剤シェル(「柔軟シェル」)に封入されたCuナノワイヤ(CuNW)
Cuナノワイヤは、界面活性剤柔軟シェルに封入することができる。柔軟シェルは、少なくとも1つの有機界面活性剤を含む。適切な有機界面活性剤は、1つ以上の特定の官能基を含み、それは、-COOH、-NH
2、-COH、-OH、-SH、-PO
3H、-SO
3H、-CN、-NC、-R
2P、-COO
-、-COO-OOCR、エン-ジオール、-C≡N、-N≡N
+(BF
4
-)、-Sac、-SR、-SSR、-CSSH、-S
2O
3
-Na
+、-SeH、-SeSeR、-R
2P=O、-PO
3
2-/-P(O)(OH)
2、-PO
4
2-、-N≡C、-HC=CH
2、-C≡CH、-SiH
3、-SiCl
3、-OCH
2CH
3、式(I)、式(II)、式(III)、アルカン、アルキン、アルケン、芳香環、およびそれらの組合せからなる群から選択することができ、
式(I)は:
【化6】
であり、式(II)は:
【化7】
であり、式(III)は:
【化8】
であり、
式中、R’およびR’’は、各々独立して、単独で、または別のR’もしくはR’’と組み合わせて有機鎖または芳香族基である。適切な界面活性剤の例は、オレイルアミン、オレイン酸、トリス(トリメチルシリル)シラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-
ヘプタデカフルオロデカンチオール、2-(トリフルオロメトキシ)-ベンゼンチオール、P-[12-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェノキシ)ドデシル]-ホスホン酸、P-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシル)-ホスホン酸、ペンタフルオロベンジルホスホン酸、ペルフルオロドデカン酸およびそれらの組み合わせを含む。より具体的には、適切な界面活性剤は、オレイルアミン、オレイン酸、トリス(トリメチルシリル)シラン、またはそれらの組み合わせから選択される。CuNW@柔軟シェルの構造は、シェル層が界面活性剤でできていることを除いて、
図11のものと同様である。
【0124】
いくつかの態様によれば、界面活性剤柔軟シェルは、ポリマーシェルを形成する有機または有機分子含有ポリマーを含むことができ;ポリマーを含むCuNW@柔軟シェルの構造は、界面活性剤柔軟シェル13がポリマーを含むことを除いて、
図27Aのものと同様である。いくつかの態様によれば、界面活性剤柔軟シェルは、上記「IV.自己集合シェルに封入された電気化学的に活性な構造」について記載されるようなポリマーシェルを含むことができる。ポリマーシェルを有するCuNW@柔軟シェルの構造は、CuNWがコアにあり、シェル層が界面活性剤から作製され、一方ポリマー層は、本明細書に記載されるポリマーのいずれかを含み得ることを除いて、
図27B、27C、および28の構造と同様である。いくつかの態様によれば、
図27Cは、CuNWの断面を表すことができ、単分子層13およびポリマー層15は、一緒になって、本明細書に記載されるようなシェルに対応し得る。
図27Cのいくつかの態様によれば、単分子層13およびポリマー層15は、それぞれ、界面活性剤シェルおよびポリマーシェルに対応し得る。
図27Cは、CuNWについて記載されるような特定の例示的シェル構成を示す一方、シェルは、種々の構成を含み得ることが理解されるべきである。例えば、シェルは、種々の配置で界面活性剤シェルおよびポリマーシェルを含み得る。例えば、シェルは、1つより多い界面活性剤シェルおよび1つより多いポリマーシェルを含むことができ、界面活性剤シェルおよびポリマーシェルの位置は、互いに対して任意の配置にある。
【0125】
実施例5。界面活性剤シェルに封入したCuNWの調製
Cuナノワイヤを合成する方法は、F Cui et al.,Synthesis of Ultrathin Copper Nanowires Using Tris(trimethylsilyl)silane for High-Performance and Low-Haze Transparent Conductors,Nano Letters 2015,15,7610-7615に報告されており、その全体は、参照により本明細書に組み込まれている。この実施例では、オレイルアミン(5g、18.7mmol)およびオレイン酸(0.1g、0.354mmol)中のCuCl
22H
2O(85mg、0.5mmol)の溶液を、完全に溶解するまでガラスバイアルで超音波処理した。トリス(トリメチルシリル)シラン(0.5g、2.0mmol)を加え、暗青色溶液が透明な黄色に変化するまで混合物を120℃まで加熱した。混合物を、さらに165℃に18時間加熱した。Cuナノワイヤを、遠心分離(12,000rpm、10分間)によって単離し、トルエン(10mL)で3回洗浄した。この例で生成されたCuナノワイヤのXRDスペクトルおよびTEM像を、それぞれ
図12および
図13に示す。
【0126】
実施例6。CuNW@柔軟シェルから作製した陰極の充放電サイクルおよびXRD特徴づけの電圧プロフィル
実施例5のCuNW@柔軟シェルナノ材料を用いて陰極電極を調製した。CuNWコアの平均断面直径は、約20nmである。CuNW@柔軟シェル電極の充放電サイクルの電圧プロフィルを、
図19に示す。Ag/Ag
+電極を、本実施例において基準として用いた。
図19によれば、20nmのCuNW@柔軟シェル陰極の容量は、200mAh/g超に達し得る。
【0127】
CuNW@柔軟シェル電極を、XRDによりさらに特徴づけし、実験結果を
図20に示す。
図20は、それぞれ、充電(フッ素化)後およびその後の放電(脱フッ素化)後のCuNW@柔軟シェルのXRDスペクトルを示す。CuF
2は、充電後に形成し、その後、放電後にCuに還元され得る。
図20は、界面活性剤柔軟シェルと結合したナノワイヤの形態のCuが、液体電解質中で循環され得ることを示す。
【0128】
実施例7。Cuナノ構造で作られた陰極の比較。
Fシャトル電池用のCuナノ構造を有する一連の陰極を調製した。陰極の調製に使用されるCuナノ構造は、平均直径約50nmのコアを持つCuNP@LaF3、平均直径約50nmのコアを持つCuNP@La0.97Ba0.03F2.97、平均断面直径約20nmのコアを持つCuNW@LaF3、および平均断面直径約20nmのコアを持つCuNW@柔軟シェルである。
【0129】
図24は、約50nmのCuNP@LaF
3、約50nmのCuNP@La
0.97Ba
0.03F
2.97、約20nmのCuNW@LaF
3、および約20nmのCuNW@柔軟シェルをそれぞれ含む、様々な電極の充放電サイクルの電圧プロフィルを示す。Ag/Ag
+電極を、本実験において基準として用いた。
図24において、LaF
3シェルまたは界面活性剤柔軟シェルのいずれか中に封入された20nmのCuナノワイヤの容量は、LaF
3またはLa
0.97Ba
0.03F
2.97シェルのいずれか中に封入された50nmのCuナノ粒子より明らかに高い。
【0130】
図25に示すように、50nmのCuNP@LaF
3、50nmのCuNP@La
0.97Ba
0.03F
2.97、20nmのCuNW@LaF
3、20nmのCuNW@柔軟シェルから作製される電極の容量は、それぞれ50.2、95.2、183および203mAh/gである。したがって、LaF
3シェルまたは柔軟シェルに封入されたCuナノワイヤで作られた電極は、CuNP@La
0.97Ba
0.03F
2.97のほぼ2倍の容量を持ち、CuNP@LaF
3のほぼ4倍の容量を持つ。比較として、CuF
2から作製される電極の理論的容量は、約528mAh/gである。
【0131】
さらに、
図25の陰極の容量送達は、各電極のパーセンタイル容量を得るために、CuF
2の理論的容量に対して正規化される。試験したすべての電極のパーセンタイル容量を、
図26に示す。
図26は、LaF
3シェルおよび界面活性剤柔軟シェル中に封入された20nmのCuナノワイヤから作製された電極の容量が、CuF
2の理論的容量のそれぞれ34.7%および38.4%に達し得ることを示す。
【0132】
本明細書に記載された態様は、上記に概説された例の態様と併せて記載されている一方、様々な代替、修正、変更、改良、および/または実質的に等価なものは、既知であるかまたは現在予期されないかもしくは予期されない場合があるかにかかわらず、少なくとも当業者に明らかになり得る。したがって、上記の例示的態様は、限定するものではなく、例示的であることが意図される。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができる。したがって、本開示は、全ての既知のまたは後に開発された代替物、修正、変形、改良、および/または実質的に等価なものを包含することが意図される。
【0133】
したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示された態様に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲が与えられるべきであり、単数形の要素への言及は、特にそのように記載されない限り、「1つおよび1つのみ」を意味することを意図するものではなく、むしろ「1つ以上」を意味することを意図する。当業者に公知であるかまたは後に公知であるようになる、本開示全体にわたって記載された様々な態様の要素に対する全ての構造的および機能的等価物は、参照により本明細書に明確に組み込まれ、特許請求の範囲によって包含されることを意図する。さらに、本明細書に開示されているものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆専用であることを意図するものではない。特許請求の範囲要素は、その要素が「ことを意味する」という語句を使用して明示的に列挙されない限り、手段プラス機能として解釈されるべきではない。
【0134】
さらに、「例」という用語は、本明細書では、「例(example)、例(instance)、または例示(illustration)として役立つ」ことを意味するために使用される。本明細書で「例」と記載されるあらゆる態様は、必ずしも他の態様よりも好ましいかまたは有利であると解釈されるべきではない。他に特定的に述べない限り、「いくつか」という用語は、1つ以上を指す。「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの組み合わせには、A、B、および/またはCの任意の組み合わせが含まれ、複数のA、複数のB、または複数のCを含み得る。具体的には、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの組み合わせは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはAおよびBおよびCであり得、あらゆるこのような組み合わせは、A、B、またはCの1つ以上の要素(単数)または要素(複数)を含んでもよい。本明細書に開示されるいかなるものも、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆専用であることを意図するものではない。
【0135】
実施例は、本発明の製造方法および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するように記載されており、本発明者らがそれらの発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験がすべてまたは実行される唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用される数値(例えば、量、寸法など)に関して正確性を確保する努力がなされてきたが、いくつかの実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。
【0136】
さらに、例えば、刊行されたまたは付与された特許または同等物を含む特許文献;特許出願公開;および非特許文献文書または他の源材料など、本出願全体にわたるすべての参照は、参照により個々に組み込まれるように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。