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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】少なくとも2つの要素の組立て方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20231117BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20231117BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G04B45/00 D
A44C5/00 502A
A44C5/02 E
【請求項の数】 29
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021001074
(22)【出願日】2021-01-06
(62)【分割の表示】P 2019164184の分割
【原出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021051095
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】18194458.8
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ネトゥシル
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-116284(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
G04C 1/00-99/00
A44C 5/00-5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いったん組み立てられると、携帯型デバイス用の外部構成要素を形成するように少なくとも第1の要素および第2の要素を含む複数の要素を所定の形態に組立てる組立て方法であって、
a)前記第1の要素を作製するステップと、
b)前記第2の要素を作製するステップと、
c)前記第1の要素内に前記第2の要素との接合縁部と一致する端部を少なくとも1つ有しかつ自身の表面における前記接合縁部以外の部分に延在する第1の溝を少なくとも配置し、前記第2の要素内に前記第1の要素との接合縁部と一致する端部を少なくとも1つ有しかつ自身の表面における前記接合縁部以外の部分に延在する第2の溝を少なくとも配置するステップと、
d)前記第1の要素および前記第2の要素を前記所定の形態に配置したのち、前記第1の溝および前記第2の溝が連通することによって形成される連続する溝の中の少なくとも一部に挿入され固定される少なくとも1つの接続用の第3の要素のみを用いて前記第1の要素と前記第2の要素とを接合するステップと、を含み、
前記第1の要素および前記第2の要素は導電性材料で作製されるか、または前記第1の溝および前記第2の溝の壁は導電性材料で被覆されており、前記第1の溝および前記第2の溝の中に前記第3の要素を挿入し固定する前記ステップd)は、前記第1の溝および前記第2の溝を電気鋳造工程を介して金属で充填するステップからなることを特徴とする、組立て方法。
【請求項2】
前記第1の溝および前記第2の溝の中に前記第3の要素を挿入し固定する前記ステップd)は、前記第1の溝および前記第2の溝に、非晶質金属材料を嵌め込むことにより充填するステップからなることを特徴とする、請求項1に記載の組立て方法。
【請求項3】
前記第3の要素は少なくとも部分的に非晶質の金属材料であることを特徴とする、請求項2に記載の組立て方法。
【請求項4】
前記第1の要素の材料は前記第2の要素の材料とは異なることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項5】
前記第1の要素は第1の外観を有し、前記第2の要素は前記第1の要素の前記第1の外観とは異なる第2の外観を有することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項6】
前記第1の要素と前記第2の要素とは、二つの接合領域を形成するように、相手要素との接触端部をそれぞれ2つ有し、前記第1の溝と前記第2の溝とは、前記二の接合領域を通じて連通することで環状の前記連続する溝を形成することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項7】
前記方法は、前記ステップd)の後に、前記第1の要素、前記第2の要素、および前記第3の要素の表面が互いに継ぎ目なしに接続されるまで、前記第3の要素をトリミングすることからなるステップを更に含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項8】
前記第1の要素の材料および前記第2の要素の材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化タングステン、窒化ケイ素、窒化シリコン、炭化タングステン、またはサーメットから作製された多結晶または単結晶のセラミック材料であることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項9】
前記第3の要素を形成する材料は、貴金属または半貴金属の群から選択されることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項10】
前記第3の要素を形成する材料は、金、白金、またはパラジウムの合金を含む群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組立て方法。
【請求項11】
前記溝の各々は台形の断面を有するように機械加工され、前記溝の各々の側壁は傾斜し、前記溝の内部から外部の方向に向かうと近づくことを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項12】
前記溝の各々は、前記第1の要素および前記第2の要素の上面または下面の何れかに機械加工されることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項13】
前記溝の各々は、前記第1の要素および前記第2の要素の全長にわたって延びていることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項14】
前記溝の各々は、0.05mmから4mmの間の深さを有することを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項15】
トリミングがミリングまたは旋削によって達成されることを特徴とする、請求項1ないし14のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項16】
前記外部構成要素は、腕時計などの携帯型の計時器デバイス上に配置されることを特徴とする、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の組立て方法。
【請求項17】
第1の要素と第2の要素とを少なくとも含む複数の要素を備えこれら複数の要素が接合することで所定の形態を形成する外部構成要素であって、
前記第1の要素内に、前記第2の要素との接合縁部と一致する端部を少なくとも1つ有しかつ自身の表面における前記接合縁部以外の部分に延在する第1の溝が少なくとも配置され、
前記第2の要素内に、前記第1の要素との接合縁部と一致する端部を少なくとも1つ有しかつ自身の表面における前記接合縁部以外の部分に延在する第2の溝が少なくとも配置され、
前記第1の溝および前記第2の溝は、前記第1の要素と前記第2の要素とが接合する状態にあるとき、連続する溝の少なくとも一部を形成し、
前記第1の要素および前記第2の要素を、前記連続する溝の中の少なくとも一部に挿入され固定される少なくとも1つの接続用の第3の要素のみを用いて前記所定の形態に接合するように構成され、
前記第3の要素は、前記第1の溝および前記第2の溝の中に電気鋳造された金属材料である、外部構成要素。
【請求項18】
前記第1の要素と前記第2の要素とは、二つの接合領域を形成するように、相手要素との接触端部をそれぞれ2つ有し、前記第1の溝と前記第2の溝とは、前記二つの接合領域を通じて連通することで環状の前記連続する溝を形成することを特徴とする、請求項17に記載の外部構成要素。
【請求項19】
前記第3の要素は、前記第1の溝および前記第2の溝の中に嵌め込まれた金属材料であることを特徴とする、請求項17または18に記載の外部構成要素。
【請求項20】
前記第3の要素は、前記第1の溝および前記第2の溝の中に嵌め込まれた少なくとも部分的に非晶質の金属材料であることを特徴とする、請求項17または18に記載の外部構成要素。
【請求項21】
前記第1の要素の材料および前記第2の要素の材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化タングステン、窒化ケイ素、窒化シリコン、炭化タングステン、またはサーメットから作製された多結晶または単結晶のセラミック材料であることを特徴とする、請求項17ないし20のいずれか一項に記載の外部構成要素。
【請求項22】
第3の要素を形成する材料は、貴金属または半貴金属の群から選択されることを特徴とする、請求項17ないし21のいずれか一項に記載の外部構成要素。
【請求項23】
前記第3の要素を形成する前記材料は、金、白金、またはパラジウムの合金を含む群から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の外部構成要素。
【請求項24】
前記溝の各々は台形の断面を有し、前記溝の各々の側壁は傾斜し、内部から外側に向かうと近づくことを特徴とする、請求項17ないし23のいずれか一項に記載の外部構成要素。
【請求項25】
前記溝の各々は前記第1の要素および前記第2の要素の全長にわたって延びていることを特徴とする、請求項17ないし24のいずれか一項に記載の外部構成要素。
【請求項26】
前記溝の各々は0.05mmから4mmの間の深さを有することを特徴とする、請求項17ないし25のいずれか一項に記載の外部構成要素。
【請求項27】
前記構成要素は腕時計のベゼル、ブレスレットリンク、ダイヤル、腕時計ケース、またはクラスプ部材を形成することを特徴とする、請求項17ないし26のいずれか一項に記載の外部構成要素。
【請求項28】
前記構成要素は環状の形状を有し、前記要素の各々は環状の弧を形成することを特徴とする、請求項17ないし27のいずれか一項に記載の外部構成要素。
【請求項29】
前記構成要素は腕時計のベゼルを形成することを特徴とする、請求項28に記載の外部構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの要素を組み立てて、特にセラミックで作製された外部構成要素を携帯型デバイス用に形成する方法、および、併せてこの方法によって得られる外部構成要素に関する。各要素は、明瞭な物理的特徴および/または美的特徴を有する材料から形成される。
【0002】
本発明は、好ましくは、しかし排他的ではなく、時計製造の分野を意図した外部構成要素の組み立て製造に適用されることになる。好ましくは、そのような構成要素は、例えば腕時計ケース上に配置されることを意図した腕時計ベゼル、ブレスレットリンク、ダイヤル、腕時計ケース、またはクラスプ要素であってもよい。
【0003】
本発明はまた、網羅的ではないが、携帯電話およびセルラ電話、例えば携帯電話を形成するための携帯型コンピュータ端末、もしくはタブレットケースの分野において、または宝飾品もしくは食卓用食器類の分野において使用される外部構成要素の製造に適用されるであろう。
【0004】
本発明は特に、硬質材料、すなわち衝撃および引っ掻きに対する耐性を有する材料、で作製される要素の組み立てを対象としている。これらの硬質材料は特に工業用セラミックであってもよい。更に、各要素は、二酸化ジルコニウムまたは「ジルコニア」、二酸化アルミニウムまたは「アルミナ」から、またはセラミック支持体と金属マトリックスもしくは「サーメット」を一体化した別の複合材料で作製され得る。本発明による外部構成要素の各要素はまた、合成サファイアまたはルビーで作製され得る。
【背景技術】
【0005】
美的理由のために、構成要素の領域に応じて異なる外観を有する外部構成要素、特に外部計時器構成要素を作製することが時には望ましい。例として、2つの異なる着色領域を有する二色のセラミックで腕時計のベゼルを作製することがよく知られている。
【0006】
既知の手法は、例えば、外観を変更することを望まない、構成要素の領域を部分的にマスクし、化学蒸着または物理蒸着(CVDまたはPVD)技術を用いて異なる外観の塗料または金属層を適用することにより、第1の材料で作製された構成要素を、その後の表面処理にさらすことからなる。これら処理の主たる欠点は、構成要素の処理された表面が、堆積された層よりも硬い異物と接触した場合、引っ掻き傷が付き第1の材料をむき出しにする可能性があり、美的外観が消費者にとって不可欠である製品においては、これは受け入れ難いという事実にある。
【0007】
外部構成要素が工業用セラミックで作製されている場合、二色の構成要素を射出成形し、特に2つの異なる着色セラミック材料を2色射出成形し、焼結することによって、直接作製することが知られている。しかし、2つの材料間の明瞭な境界を得ることは困難であり、それを狙って、この製造技術を実現することは複雑である。実際、一方で、色が最適な構成にあり、他方で、構成要素の異なる着色部分の間の明瞭な境界を得るためには弊害となる、一方の色が他方の色に拡散する現象を避けるように焼結パラメータを適合させることは困難である。
【0008】
純粋に美的には、単一の要素で形成された構成要素を含浸により着色することは可能であり、それにより、構成要素の異なる領域で異なる色を得ることが可能になる。しかし、色は、構成要素を形成する材料の色彩によって、および含浸技術によって制限される。そ
の上、ここでもまた、焼結工程はパラメータの適合を伴い最適な結果を生まない。
【0009】
二色の構成要素を作製するための別の既知の手法は、要素の当接部を接着することにより、異なる色の要素を互いに組み立てることからなる。しかし、この手法により得られる構成要素は、必然的に一体型の構成要素よりも脆弱である。更に、組み立てられる要素の寸法に応じて、接着作業は複雑で時間が掛かる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、構成要素の領域に依存して異なる外観を有する外部構成要素、特に外部計時器構成要素であって、単純で作製が経済的な構成要素を提供することによって、上述の先行技術の欠点を解消することである。
【0011】
構成要素の異なる着色部分の間の境界が明瞭な外部構成要素、特に二色の構成要素を提供することもまた、本発明の目的である。
【0012】
この目的のため、本発明は、いったん組み立てられると、携帯型デバイス用の外部構成要素を形成する少なくとも第1の要素および第2の要素を組み立てる方法に関し、
a)第1の要素を作製するステップと、
b)第2の要素を作製するステップと、
c)第1の要素内に少なくとも第1の溝を配置し、第2の要素内に少なくとも第2の溝を配置するステップと、
d)第1の要素および第2の要素を、第1の溝および第2の溝の中に挿入され固定された少なくとも接続用の第3の要素を用いてエンドツーエンドで配置し保持するステップと、を含む。
【0013】
従って、本発明は、少なくとも2つの先に個別に製造された、異なる性質および/または色を有する要素を組み立てて、機械的および美的な観点で各要素に対して最適な構成を得ることからなる全般的な発明の着想から生じている。
【0014】
有益な実施形態によると、第1の溝および第2の溝の中に第3の要素を挿入し固定するステップは、第1の溝および第2の溝に、少なくとも部分的に非晶質の金属材料を嵌め込むことにより充填することからなる。
【0015】
実際、非晶質材料の粘性は低温で急速に低下し、このことは非晶質材料を低応力の水準で成形できることを意味する。より具体的には、非晶質金属は、そのガラス転移温度とその結晶化温度との間で成形される。例えば、白金ベースの非晶質金属では、嵌め込み工程は、ガラス転移温度における1012Pa.sの粘性ではなく、最大103Pa・s(パスカル秒)の粘性に対して約300℃(摂氏度)、および1MPa(メガパスカル)で実施される。この粘性により、粘着性能を改善することが可能になる。この温度範囲における非晶質金属の低粘性により、非晶質金属は、最初に、低圧の水準で空間を完全に充填し、そこで拘束されることが可能になる。従って、溝を充填する場合には、輪郭に完全に整合するこの能力により、凹部を正確に充填することが可能になる。
【0016】
低温成形は、不十分な熱抵抗(例えば、機械的特性の低下、酸化、または低い融解点)、または不十分な熱衝撃抵抗ゆえに、これまで使用されなかった材料の使用を、今後は可能にする。
【0017】
少なくとも部分的に非晶質の金属材料で作製されたインレーの使用により、低応力かつ低温での成形が、例えば加熱プレスを用いて可能になる。
【0018】
金属インレーは、エンドツーエンドに配置された要素の接触面の少なくとも何れかの側に延びる接合部分上の、外部構成要素の可視のまたは非可視の面上に作製され得る。そのような金属インレーは、特に、要素を互いに接合している各部分に沿って作製された少なくとも1つの凹部の形態で、少なくとも1つの溝の内側に作製される。
【0019】
代替的実施形態によると、第1の要素および第2の要素は導電性材料で作製されるか、または溝の壁は導電性層で被覆されており、第1の溝および第2の溝の中に第3の要素を挿入し固定するステップは、第1の溝および第2の溝を電気鋳造工程によって金属で充填するステップからなることを特徴とする。
【0020】
本発明の有益な変形形態によると、
第1の要素の材料は第2の要素の材料とは異なり、
第1の要素は第1の外観を有し、第2の要素は第1の要素の外観とは異なる第2の外観を有し、
2つの要素をエンドツーエンドに配置したときに、第1の溝は第2の溝と連通しており、
ステップd)の後に、第1の要素、第2の要素、および第3の要素の表面が互いに継ぎ目なしに接続されるまで、第3の要素をトリミングすることからなるステップがあり、
第1の材料および第2の材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化タングステン、窒化ケイ素、窒化シリコン、炭化タングステン、またはサーメットから作製された多結晶または単結晶のセラミック材料であり、
第3の要素を形成する材料は、貴金属または半貴金属の群から選択され、
第3の要素を形成する材料は、金、白金、またはパラジウムの合金を含む群から選択され、
各溝は台形の断面を有し、各溝の側壁は傾斜し、溝の内部から外部の方向で近づき、
各溝は第1の要素および第2の要素の上面または下面の何れかに機械加工され、
各溝は第1の要素および第2の要素の全長にわたって延びており、
各溝は0.05mmから4mmの間の深さを有し、
外部構成要素は、腕時計などの携帯型の計時器デバイス上にある。
【0021】
本発明はまた、そのような組み立て方法を実現することによって得られる外部構成要素に関する。
【0022】
本発明はまた、
少なくとも1つの接合領域で組み立てられた第1の要素および第2の要素と、
第1の要素内に配置された第1の溝、および第2の要素内に配置された第2の溝であって、第1の溝および第2の溝は少なくとも各接合領域の中に延びている、第1の溝および第2の溝と、
第1の要素および第2の要素の各接合領域内の第1の溝および第2の溝を少なくとも部分的に充填する第3の要素と、を少なくとも含む、外部構成要素に関する。
【0023】
本発明の外部構成要素の有益な第1の実施形態によると、第3の要素は、第1の溝および第2の溝の中に嵌め込まれた少なくとも部分的に非晶質の金属材料である。
【0024】
本発明の外部構成要素の第2の実施形態によると、第3の要素は、第1の溝および第2の溝の中に電気鋳造された金属材料である。
【0025】
有益には、外部構成要素は腕時計のベゼル、ブレスレットリンク、ダイヤル、腕時計ケース、またはクラスプ要素を形成する。従って、この構成要素は、特に腕時計のベゼルを形成するための、各要素が環状の弧の部分からなる環状の形状を有してもよい。
【0026】
外部構成要素を得るための、いくつかの要素を組み立てするための異なるステップを表す非限定的な例として与えられる、添付の図面を参照して、以下に本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】異なる材料を強調した半環状の2つの別個の要素の正面図を概略的に表す。
図2】2つの当接する要素が互いに固定される前の正面図を概略的に表す。
図3図2の要素のうちの1つの垂直断面図を概略的に表し、要素のうちの1つに溝が配置されていることを示す。
図4】金属嵌め込み工程後の、2つの要素の正面図を概略的に表す。
図5図4の要素のうちの1つの垂直断面図を概略的に表し、金属インレーの過剰な厚さを示す。
図6】金属インレーの過剰な厚さの除去後に得られた環状の外部構成要素の正面図を概略的に表す。
図7図6の構成要素の垂直断面図を概略的に表す。
図8】3つの別個の要素から形成された携帯電話の保護ケース型の外部構成要素の斜視図を概略的に表す。
図9】3つの要素のうちの1つの断面図を概略的に表し、底面に配置された溝を示す。
図10】3つの要素がいったん組み立てられた外部構成要素の底面図を概略的に表し、様々な溝の形状および長さを有する例を示し、この金属インレーに美的外観をもたらしている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図は、一方では、携帯型の計時器デバイス上に配置することを意図したリングを形成することができる2つの半環状要素から、平坦な環状の外部構成要素を得るための、本発明の組み立て方法の特定の実現ステップの一例を示す。他方では、図は3つの要素から作製される携帯電話ケースの一例を示す。
【0029】
より広範には、本発明は金属インレーによって互いに組み立てられたより多くの要素から外部構成要素を得ることを可能にする。得られた構成要素はいかなる形状をも、すなわち円形、環状、楕円形または多角形をも有することができ、組み立てられた要素は補完的な形状を有し、その構成は外部構成要素の全体的な形状をもたらす。そのような構成要素は、多角形、平行六面体、先細のもしくはより複雑な形状を有することができ、または凸状のもしくは凹状の測縁部を有することができる。
【0030】
本発明はいくつかの要素、少なくとも第1の要素2および第2の要素3を組み立てることにより外部構成要素1を作製する方法に関する。そのような構成要素1を得るための、そのような組み立ては、図8図9、および図10で表す例に示すように、より多くの要素、例えば第3の要素4を用いて実現することができる。
【0031】
上述のように、本発明は、各要素の美的特性および/または物理的特性を維持しながら、要素2、3、4から組み立て品を得ることを提案する。これを実現するために、第1の段階では第1の要素2が作製される。第2の要素3もまた作製される。別の要素4もまた、ならびに任意の他の追加の要素も作製される。
【0032】
有益には、第1の要素2と第2の要素3とが同一形状の場合は、それらを同じ金型で、異なる材料および/または処理を用いて、連続的に作製することができる。
【0033】
別の実施形態によると、いくつかの要素2、3、4を、同じ金型で、異なる材料および/または処理を用いて、単一部品として同時に作製することができる。作製された部品は次いで、特に切断工程を介して分離されて複数の要素2、3、4になり、成形され引き続いて組み立てられて構成要素1が形成される。
【0034】
第1の要素2と第2の要素3とは類似のまたは同一の材料から作製され得るが、好ましくは第1の要素2の材料は第2の要素3の材料とは異なる。他の要素4に関しては、材料は他の2つの要素2、3とは異なり得るか、または要素4に対して組み立てることが意図される要素2、3の材料とは異なるだけであり得る(すなわち、他の要素4は、それに隣接しない要素2、3と同一の材料で作製することができる)。
【0035】
材料の違いは、構造および審美性の両方を含む。実際、同じベース材料が、実質上は同一の特性を維持しながら異なる外観を有し得る。それゆえ、第1の要素2の材料の外観は、第2の要素3、または他の要素4の材料の外観とは異なり得る。
【0036】
好ましくは、第1の材料および第2の材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭化タングステン、窒化ケイ素、窒化シリコン、炭化タングステン、またはサーメットから作製された多結晶または単結晶のセラミック材料である。
【0037】
要素2、3、4の形状は、作製される構成要素1の全体的な形状の1つの部分に対応する。図1から図7に示す例示的実施形態では、第1の要素2および第2の要素3は半円形、特に環状の弧を有し、それにより、いったん組み立てられると構成要素1は円形または環状の形状を有する。
【0038】
図8から図10に表す別の実施形態によると、構成要素1は、略直方体形状の、特に丸められた角を有する携帯電話型の携帯型デバイス用のケース5である。ケース5のこの構成要素1は、長手方向端部上に縁部を有する、3つの要素2、3、4から作製され、これらを組み立てると構成要素1の全体的な形状が得られる。
【0039】
他の形状、例えば多角形の構成要素1を想定することができ、その時は各要素2、3、4は構成要素の面のうちの1つ以上を表す。要約すると、一体として組み立てられた外部構成要素1の形状を得るために、要素2、3、4の形状は補完的である。
【0040】
これを実現するために、本発明は、第1の要素2内に少なくとも第1の溝6を、および第2の要素3内に少なくとも第2の溝7を配置することを提案する。少なくとも、要素2、3、4と同じくらい多くの溝6、7が存在する。同じ要素2、3、4がいくつかの溝6、7を含むことができ、図9および図10の例におけるように、同じ要素2、3、4が4つの溝6、7を含むことができる。更に、図10の例で分かるように、同じ要素2、3、4の溝6、7が、その長さの一部において一致、交差、または共有することができる。
【0041】
溝6、7は、この目的のために提供された工具を用いて、研磨もしくはレーザ切断、または任意の他の好適な手法により機械的に機械加工され得る。
【0042】
好ましくは、各溝6、7は台形の断面を有するように、すなわち各溝の側壁は傾斜し、内部から、すなわち溝の底部から、外側に向かうと近づくように、機械加工される。有益には、各溝6、7の幅は、その深さよりも大きい。
【0043】
更に、各溝6、7は0.05mmから4mmの間の深さを有し得る。更に、構成要素1が弱くなることを防ぐために、各溝6、7の深さは各要素2、3、4の厚さの90%を超えることはできない。
【0044】
実施される機械加工作業に依存して、溝6、7の深さと幅は、その長さにわたって変動し得ることに留意されたい。特に、図10の例に示すように、溝6、7の端部の幅は、要素2、3、4の間の接合領域9における幅よりも小さく、接合領域9では溝6、7は、より広くてもよい。
【0045】
各溝6、7は、溝の内部から外部の方向に向かうと近づく傾斜したフランクまたは壁8を有し得る。換言すると、側壁8は負の角度を有し、それにより組み立て材料を留めておくことが可能になる。要約すると、各溝6、7は要素2、3、4の面のうちの1面上に開いたテーパ形状を有する。
【0046】
この目的のため、溝6、7は、第1の要素2および第2の要素3、ならびに任意の他の要素4の上面または下面の何れかに機械加工され得る。要約すると、溝は上からまたは下から作製することができ、その結果、構成要素1が外部部品としてどのように使用されるかに依存して、溝は可視または非可視である。構成要素がいったん装着されたとき、溝が構成要素の見える面に、例えば腕時計ケースに形成される場合は、充填剤材料を装飾要素として使用することができる。ベゼルの場合は、例えば、数字、文字または任意の他のモチーフなどの、形象的要素および/または装飾的要素の範囲を定める縁部を溝が有すると考えることができる。
【0047】
更に、各溝6、7は、第1の要素2および第2の要素3、ならびに任意の他の要素4の全長にわたって延びることができる。これは、図1から図7の例示的実施形態の場合であり、溝6、7が中央に、かつ第1の要素2および第2の要素3の各々の長さに沿って配置されており、それにより、溝内に挿入されるであろう組み立て材料の連続性が改善される。
【0048】
図8から図10に示す例示的実施形態では、溝6、7は要素2、3、4の表面の1つの部分にわたって延びている。
【0049】
いずれにせよ、2つの要素2、3がエンドツーエンドに配置された場合に、第1の要素2の第1の溝6は、第2の要素3の第2の溝7と連通する。要約すると、溝6、7は、その対応する端部のうちの少なくとも1つが、それら要素2、3、4を接合する縁部と一致して、要素2、3、4の間の溝6、7の連続性をもたらすように作製される。
【0050】
本発明の組み立ての間に、第1の要素2および第2の要素3はエンドツーエンドに配置される。従って、それら要素は構成要素1の所望の形状構成を得るために、ある特定の位置合わせで互いに向かい合って配置される。
【0051】
要素2、3、4は、それらの対応する接合縁部のうちの1つにおいて、このようにしてエンドツーエンドに配置される。それらの対応する縁部は次いで一緒に接合され、しっかりと接触するように配置される。その結果、要素2、3、4が作製されたとき、少なくとも接合領域9において、それら要素間に完全な接触線を得るために、要素2、3、4の接合縁部を機械加工する調整ステップがあってもよい。
【0052】
更に、要素2、3、4は、前述の構成において、特にこの目的のために設けられた支持体上で、任意の適切な手段、特に機械的手段によって、一時的結合などによって、一時的に互いに固定されるかまたは接合されてもよい。
【0053】
有益には、本発明による組み立ては、第1の溝6および第2の溝7の中に挿入され固定された、少なくとも接続用の第3の要素10を用いて維持することを必要とする。要約す
ると、溝6、7は第3の要素10により充填され、それにより、要素2、3、4間の継ぎ目のない組み立てが確保され、少なくとも接合領域9において連続的な機械的接続が形成される。
【0054】
上述のように、溝6、7の各々の開口部に向かうと近づくように傾斜した側壁を有する部分を溝が有するので、従って、第3の要素10を挿入することにより、第3の要素を溝内に留めておくダブテール型の機械的接続が形成される。
【0055】
第3の要素10が有する材料は、要素2、3、4の他の材料とは組成および外観の両方において異なる。特に、第1の実施形態では、第3の要素10は、少なくとも部分的に非晶質の金属材料、すなわち、展性特性を有する非晶質の、または部分的に非晶質の金属材料であって、亀裂または破壊なくホットプレスして形状を変化させることができ、溝6、7の内側に嵌め込むことができる、金属材料を含む。そのようなインレーは、特に、部分的に非晶質の第3の材料10の変形を介して溝6、7の各々の内容積を完全に充填する。
【0056】
典型的には、しかし網羅的ではないが、本発明の方法で実現できる、そのような非晶質金属合金は、例えば、原子パーセントが、Zr67.5Ti8.65Ni9.65Cu10.44Be3.76である化学組成を有するジルコニウム合金であってもよい。有益には、第3の要素10を形成する材料は、貴金属または半貴金属の群から選択される。より正確には、第3の要素10を形成する材料は、金、白金、またはパラジウムの合金を含む群から選択され得る。例えば、網羅的ではないが、実現できる、そのような非晶質の貴金属合金は、以下の原子パーセントを有してもよい。すなわち、「Pt852」白金 Pt57.5Cu14.7Ni5.3P22.5、「Au18K」金、「Pd600」パラジウム Pd43Cu27Ni10P20、または「Pd900」パラジウム Pd77.5Cu6Si16.5、である化学組成を有する。
【0057】
有益には、第3の要素10を形成する材料は結晶性の種類である。そのような材料は、例えばアルミニウムまたはアルミニウムを含有する合金など、金属性であってもよい。アルミニウムで作製された第3の要素10は、加熱工程を用いて容易に嵌め込むことができる。
【0058】
本発明の組み立て方法の第2の実施形態によると、第1の要素2および第2の要素3は導電性材料で作製されるか、または溝6、7の壁は導電性材料で被覆されている。従って、第3の要素10を第1の溝6および第2の溝7の中に挿入し固定するステップは、電気鋳造(または電気メッキ)工程による金属の充填からなり得る。
【0059】
接合領域9の各溝6、7、および好ましくは溝6、7の残りの長さ部分の全てを完全に充填するために、十分な量の第3の要素10が嵌め込み段階の間に提供されることに留意されたい。しかし、明瞭な外観をもたらすために、接合領域9の外側部分において、第3の要素10による充填部に凹部を想定することができる。
【0060】
嵌め込み工程または電気鋳造充填工程の間に、溝6、7の開口部の外側に第3の要素10の余剰分が形成される。その結果、いったん第3の要素10が挿入されると、本発明の方法は、第1の要素2、第2の要素3、および第3の要素10の表面が互いに継ぎ目なしに接続されるまで、第3の要素10をトリミングすることからなる、その後のステップを提供する。好ましくは、トリミングはミリングまたは旋削によって達成される。このステップは、第3の要素10が要素2、3、4の表面と同一平面をなすまで、第3の要素10の過剰な材料を除去する。従って、第3の要素10は他の要素2、3、4内に完全に組み込まれる。
【0061】
表面を平滑にするために、および部分的に可視の組み立て品の場合は平滑で傷のない美的外観をもたらすために、要素2、3、4、10を研磨する任意選択の追加ステップ。
【0062】
従って、本発明による組み立て方法は、上述の組み立て方法によって組み立てられた少なくとも第1の要素2および第2の要素3を含む外部構成要素1を得ることを可能にしている。
【0063】
何れの方法においても、本発明はまた、少なくとも1つの接合領域9において組み立てられた少なくとも第1の要素2および第2の要素3を含む外部構成要素1に関する。第1の要素2内に第1の溝6が配置され、第2の要素3内に第2の溝7が配置され、第1の溝6および第2の溝7は少なくとも各接合領域9の中に延びている。そのような構成要素1はまた、第1の要素2および第2の要素3の各接合領域9内の第1の溝6および第2の溝7を少なくとも部分的に充填する、少なくとも部分的に非晶質の金属材料のインレーを含む。
【0064】
先に示唆したように、そのような構成要素1は、1つ以上の他の要素4と、および対応する溝6、7の中に挿入された1つ以上の第3の要素10と共に、3つ以上の要素2、3で形成することができる。
【0065】
外部構成要素1は、腕時計などの携帯型の計時器デバイス上に配置されることを意図している。特に、外部構成要素1は、非限定的に、腕時計のベゼルを形成し得る。構成要素1は任意の固定手段、特にスナップ嵌めによって、固定的にまたは移動可能に腕時計上に取り付けられ得る。
【0066】
従って、計時器構成要素1は、例えば、腕時計のベゼル、ブレスレットリンク、ダイヤル、腕時計ケース、またはクラスプ部材などの外部構成要素の全てまたは一部を形成してもよく、または計時器ムーブメントの部材の全てまたは一部を形成してもよいと理解される。例として、バランス、ペレット、ブリッジもしくはバー、回転錘、または更にはエスケープホイールなどのホイールセットを、完全にまたは部分的にセラミックから作製することを想定することが可能である。ケース、ダイヤル、ディスプレイ、装飾、インデックス、アップリケ、フランジ、ベゼル、プッシャ、クラウン、裏蓋、針、またはブレスレットを、本発明に従って、全体的にまたは部分的にセラミックから作製することを想定することもまた可能である。
【0067】
もちろん、本発明は図示した例に限定されず、当業者にとって明らかな様々な変形形態および修正形態が可能である。特に、本発明は外部構成要素、または更には時計製作法の分野に限定されない。従って、例として、セラミック構成要素1の本発明の組み立て品を、食卓用食器類または宝飾品の分野の用途に使用することを除外するものではない。
【符号の説明】
【0068】
1 外部構成要素
2 第1の要素
3 第2の要素
4 他の要素
5 ケース
6 第1の溝
7 第2の溝
8 (第1の溝の、および第2の溝の)側壁
9 接合領域
10 第3の要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10