(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】桁架け替え方法及び橋脚撤去方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20231117BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20231117BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20231117BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
E01D21/00 B
E01D24/00
E01D22/00 B
E01D19/12
(21)【出願番号】P 2021024523
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】井出 雄介
(72)【発明者】
【氏名】田島 新一
(72)【発明者】
【氏名】林 宏延
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘之
(72)【発明者】
【氏名】神田 政幸
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
(72)【発明者】
【氏名】佐名川 太亮
(72)【発明者】
【氏名】藤本 達貴
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228300(JP,A)
【文献】特開2002-194704(JP,A)
【文献】特開2000-008304(JP,A)
【文献】特開平08-144205(JP,A)
【文献】特開2002-097608(JP,A)
【文献】特開2009-228301(JP,A)
【文献】特開2020-002670(JP,A)
【文献】特開平09-203011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0016568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E01D 24/00
E01D 22/00
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の河川横断橋の桁架け替え方法であって、
既設の橋脚の上に基礎の嵩上げを行う新設主桁台座を設置する工程と、
前記新設主桁台座の上に新設桁を架設する工程と、
前記新設桁に新設の枕木受桁を設置する工程と、
前記既設の橋脚に取り付けられていた既設桁を撤去する工程と、を備える、
桁架け替え方法。
【請求項2】
前記枕木受桁を設置する工程の前に、前記既設の橋脚から、既設のレール、及び既設の枕木を外す工程を備える、
請求項1に記載の桁架け替え方法。
【請求項3】
前記枕木受桁を設置する工程の後に、前記枕木受桁に前記既設の枕木、及び前記既設のレールを設置する工程を備える、
請求項2に記載の桁架け替え方法。
【請求項4】
前記既設桁は、上路桁であり、
前記新設桁は、下路桁又は中路桁である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の桁架け替え方法。
【請求項5】
既設の河川横断橋から複数の既設の橋脚のいずれかを撤去する橋脚撤去方法であって、
既設の橋脚の上に基礎の嵩上げを行う新設主桁台座を設置する工程と、
前記新設主桁台座の上に前記橋脚を跨ぐように新設桁を架設する工程と、
前記新設桁に新設の枕木受桁を設置する工程と、
前記橋脚に取り付けられていた既設桁を撤去する工程と、
前記新設桁に跨がれている前記橋脚を撤去する工程と、
を備える橋脚撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、河川横断橋の桁架け替え方法及び橋脚撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、河川橋梁の桁下空間拡大工法が記載されている。この河川橋梁は、河床面に設置された複数の橋脚と、複数の橋脚を跨ぐように設けられた橋桁と、橋桁の下方に設けられた堤防とを備える。この桁下空間拡大工法では、堤防及び河床面を掘削すると共に、橋脚の耐震補強を実施する。続いて、四角形に枠組みした鋼製の支柱であるベントの建て込みを行うと共に、橋脚の近傍に枠組足場を設置し、ベントの上部に鋼製サンドルと油圧ジャッキを設置する。
【0003】
鋼製サンドルは、井桁状に組み上げられた仮設の支台である。鋼製サンドルと油圧ジャッキを設置した後には、架線橋梁の交通遮断を行う。交通遮断を行った後には、油圧ジャッキを作動させて鋼製サンドルで盛り替えながら橋桁を徐々にジャッキアップする。すなわち、油圧ジャッキで橋桁をジャッキアップして橋桁が所定の高さまで上昇したときに、鋼製サンドルで受け替える。
【0004】
橋脚の上に設置されていた既設の支承を切断及び撤去し、鋼製枠を橋脚の上部に固定した後に、鋼製枠の上部に新たな支承を設置する。続いて、油圧ジャッキを作動させて橋桁を再度ジャッキアップし、橋桁の荷重を仮設の鋼製サンドルから新たな支承に盛り替える。そして、架線橋梁の両端のそれぞれの道路舗装等を行った後に、交通遮断を解除して一連の工程が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したようにジャッキアップによって橋桁を上げながら鋼製サンドルの受け替え、及び新設の支承への盛り替えを行う場合、ジャッキアップの量が扛上能力によって左右されるので、桁の架け替えの作業性の点において改善の余地がある。また、鋼製サンドルは仮設されるものであるため、橋桁を鋼製サンドルで仮受けするときにおける耐震性に懸念がある。
【0007】
本開示は、架け替えの作業の作業性を向上させることができると共に、耐震性を向上させることができる桁架け替え方法及び橋脚撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る桁架け替え方法は、既設の河川横断橋の桁架け替え方法であって、既設の橋脚の上に基礎の嵩上げを行う新設主桁台座を設置する工程と、新設主桁台座の上に新設桁を架設する工程と、新設桁に新設の枕木受桁を設置する工程と、既設の橋脚に取り付けられていた既設桁を撤去する工程と、を備える。
【0009】
この桁架け替え方法では、既設の河川横断橋が架け替えられ、既設の河川横断橋を構成する既設の橋脚の上に新設主桁台座が設置される。新設主桁台座は、橋脚の上において基礎の嵩上げを行うためのものである。新設主桁台座の上には新設桁が架設され、新設桁には新設の枕木受桁が設置される。その後、既設の橋脚に取り付けられていた既設桁が撤去される。この桁架け替え方法では、ジャッキアップを不要とすることができるので、扛上能力によって作業性が左右されることを回避して作業性を向上させることができる。基礎の嵩上げを行う新設主桁台座は仮設のものではなく、この桁架け替え方法では、仮設構造物を用いずに作業を進めることができるので、作業途中においても高い耐震性を確保することができる。
【0010】
前述した桁架け替え方法では、枕木受桁を設置する工程の前に、既設の橋脚から、既設のレール、及び既設の枕木を外す工程を備えてもよい。この場合、新設桁を設置して新設桁に枕木受桁を設置する前に、既設のレール及び既設の枕木を外すことができる。
【0011】
前述した桁架け替え方法は、枕木受桁を設置する工程の後に、枕木受桁に既設の枕木、及び既設のレールを設置する工程を備えてもよい。この場合、枕木受桁を設置した後に外した既設の枕木、及び既設のレールを再利用することができる。従って、既設の枕木、及び既設のレールを有効活用することができる。
【0012】
既設桁は、上路桁であってもよく、新設桁は、下路桁又は中路桁であってもよい。この場合、既設桁の下面の高さよりも新設桁の下面の高さを高くすることが可能となる。従って、河川の水面に対する新設桁の高さを高くすることができるので、豪雨災害等が生じた場合であっても河川横断橋が流される事態をより確実に抑制できる。このように、災害に対する河川横断橋の耐性を高めることができる。
【0013】
本開示に係る橋脚撤去方法は、既設の河川横断橋から複数の既設の橋脚のいずれかを撤去する橋脚撤去方法であって、既設の橋脚の上に基礎の嵩上げを行う新設主桁台座を設置する工程と、新設主桁台座の上に橋脚を跨ぐように新設桁を架設する工程と、新設桁に新設の枕木受桁を設置する工程と、橋脚に取り付けられていた既設桁を撤去する工程と、新設桁に跨がれている橋脚を撤去する工程と、を備える。
【0014】
この橋脚撤去方法では、既設の河川横断橋を構成する既設の橋脚の上に新設主桁台座が設置され、新設主桁台座の上に新設桁が架設される。新設桁には枕木受桁が設置され、その後、既設の橋脚に取り付けられていた既設桁が撤去される。従って、前述した桁架け替え方法と同様、ジャッキアップを不要とすることができるので、作業性を向上させることができると共に、作業途中においても高い耐震性を確保することができる。更に、この橋脚撤去方法では、複数の橋脚のうちのいずれかであって、且つ新設桁が跨いでいる橋脚が撤去される。従って、河川横断橋における橋脚の数を減らすことができるので、豪雨災害等の発生時であっても河川横断橋が流される事態をより確実に抑制できる。よって、災害に対する河川横断橋の耐性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、架け替えの作業の作業性を向上させることができると共に、耐震性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る桁架け替え方法が適用される河川横断橋を示す側面図である。
【
図3】
図1の河川横断橋のレールが短尺化された状態を示す側面図である。
【
図5】
図3の河川横断橋の橋脚に新設主桁台座が載せられた状態を示す側面図である。
【
図7】
図5の河川横断橋の新設主桁台座に新設桁が載せられた状態を示す側面図である。
【
図9】
図7の河川横断橋に枕木受桁が載せられた状態を示す側面図である。
【
図11】
図9の枕木受桁に枕木が設置された状態を示す縦断面図である。
【
図13】
図9の河川横断橋から既設桁が撤去された状態を示す側面図である。
【
図15】第2実施形態に係る桁架け替え方法が適用される河川横断橋において新設桁が設置される状態を示す側面図である。
【
図17】
図15の河川横断橋の新設桁に枕木受桁が設置された状態を示す側面図である。
【
図19】
図17の河川横断橋から既設桁が撤去された状態を示す側面図である。
【
図21】第3実施形態に係る河川横断橋において新設桁が設置された状態を示す縦断面図である。
【
図22】
図21の新設桁に枕木受桁が設置された状態を示す縦断面図である。
【
図23】
図22の河川横断橋から既設桁が撤去された状態を示す縦断面図である。
【
図24】第4実施形態に係る桁架け替え方法及び橋脚撤去方法が適用される河川横断橋を示す側面図である。
【
図26】
図24の河川横断橋の新設桁に枕木受桁が設置された状態を示す側面図である。
【
図28】
図26の河川横断橋から既設桁が撤去された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る桁架け替え方法の種々の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る桁架け替え方法が実行される前の状態の河川横断橋1を示す側面図である。河川横断橋1は、河川Rに設けられた鉄道橋である。
図2は、河川横断橋1の第1方向D1に直交する平面によって河川横断橋1を切断した縦断面図である。第1方向D1は、例えば、河川横断橋1の長手方向であり、又は河川Rの幅方向である。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、河川横断橋1は、第1方向D1に沿って並ぶ複数の橋脚2と、複数の橋脚2の上面2bに固定された既設桁3と、既設桁3の上に載せられた枕木4と、枕木4の上に載せられたレール5とを備える。本実施形態において、既設桁3は、上路桁である。複数の橋脚2は、第1方向D1に沿って一定間隔おきに並んでおり、当該一定間隔は例えば10m程度である。既設桁3の長さは、例えば、10m程度であり、既設桁3の一端3f及び他端3gの位置は橋脚2の鉛直上方に一致する。
【0020】
レール5は、橋脚2を跨ぐように設置されており、例えば、3本の橋脚2の上部に1本のレール5が設けられる。例えばレール5の一端5b及び他端5cの位置は橋脚2の鉛直上方に一致する。既設のレール5の長さは、例えば、20m程度である。第1方向に沿って並ぶ一対のレール5の上において第1方向D1に鉄道車両が走行する。
【0021】
例えば、河川Rには、河川水Wと、河川水Wから見て第1方向D1の両側のそれぞれに設けられた堤防E1,E2とが設けられている。河川水Wの底に対する既設桁3の下端の高さは、例えば、4m程度である。桁架け替えが実行される前の河川横断橋1は、河川Rに対する既設桁3の高さが低いため、河川横断橋1が設けられる部分における堤防E1の高さが抑えられている。
【0022】
河川横断橋1は、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って並ぶ一対の既設桁3を備える。第2方向D2は、例えば、河川横断橋1の幅方向であり、又は河川Rが流れる方向である。例えば、既設桁3は、H形鋼である。なお、本開示において、「H形鋼」は、H形とは若干異なる形状の形鋼も含んでおり、例えば、I形鋼も含まれる。既設桁3は、橋脚2の上面2bに固定される下フランジ3bと、枕木4及びレール5に連結される上フランジ3cと、下フランジ3b及び上フランジ3cの間で鉛直方向D3に延在するウェブ3dとを有する。
【0023】
枕木4は、第1方向D1に沿って一定間隔おきに並ぶように配置されており、各枕木4は、第2方向D2に延在している。当該一定間隔は、例えば、0.6m程度である。河川横断橋1は、既設桁3の上フランジ3cに枕木4を連結する連結部材6を更に備える。例えば、第2方向D2に沿って並ぶ一対の連結部材6が設けられる。
【0024】
連結部材6は、枕木4に挿通されるフックボルト6bを備える。フックボルト6bの下端には、既設桁3の上フランジ3cに掛けられるフック部6cが設けられる。河川横断橋1は、第2方向D2に沿って並ぶ一対のレール5を備える。レール5は、例えば、タイプレート7を介して枕木4の上に固定されており、タイプレート7は枕木4の上面に犬釘8によって固定されている。
【0025】
以上のように構成された河川横断橋1の桁架け替え方法について説明する。まず、
図3及び
図4に示されるよう、レールを短尺化する(レールを短尺化する工程)。レールの短尺化では、例えば、既設の約20mの長さのレール5を、既設桁3及び枕木4に対する作業を一日で行うことが可能な長さのレール15に交換する。レール15への交換、及び以降の作業は、例えば、橋脚2の周囲に足場を設置して行われる。
【0026】
上記のレールの短尺化は、鉄道車両が通っていない夜間に行われ、例えば、1日で1本のレール5を撤去して2本のレール15を設置する。レール15は、2本の橋脚2の上に設置され、レール15の一端15b及び他端15cの位置は橋脚2の鉛直上方に一致する。例えば、レール15の長さは10m程度である。しかしながら、レール15の長さは、例えば5m程度であってもよく、特に限定されない。
【0027】
レール15の設置によるレールの短尺化が行われた後には、
図5及び
図6に示されるように、橋脚2に新設主桁台座10を設置する(新設主桁台座を設置する工程)。新設主桁台座10は、既設の橋脚2において基礎の嵩上げを行うために設けられる。新設主桁台座10は、例えば、コンクリート構造体であり、ロウソク基礎とも称される。
【0028】
このとき、橋脚2の上面2bにおける既設桁3の両側のそれぞれに新設主桁台座10を構築する。すなわち、既設桁3の第2方向D2の両側のそれぞれに新設主桁台座10を構築する。新設主桁台座10の高さは、例えば、1m程度である。新設主桁台座10の構築では、例えば、橋脚2の上面2bにおいて型枠を設置し、設置した型枠にコンクリートを打設することによって新設主桁台座10が構築される。例えば、新設主桁台座10の構築は、鉄道車両が通る日中も行える作業である。一例として、全ての橋脚2に対して新設主桁台座10の構築が完了する期間は1月半程度である。
【0029】
橋脚2に対して新設主桁台座10の構築が完了した後には、
図7及び
図8に示されるように、新設桁13を架設する(新設桁を架設する工程)。このとき、構築した新設主桁台座10の上面に新設桁13を設置する。本実施形態において、新設桁13は下路桁である。新設桁13は、既設桁3と同様、例えば、H形鋼であり、下フランジ13b、上フランジ13c及びウェブ13dを有する。
【0030】
新設桁13の長さは、例えば、10m程度である。新設桁13の架設は、例えば、鉄道車両が通っていない夜間に行われ、一例として、1日1スパン(本実施形態では10m)の2本の新設桁13が架設される。新設桁13の一端13f及び他端13gは橋脚2(新設主桁台座10)の鉛直上方に一致する。
【0031】
新設桁13の設置が完了した後には、
図9及び
図10に示されるように、新設桁13に新設の枕木受桁11を設置する(枕木受桁を設置する工程)。具体的には、既設桁3から連結部材6、枕木4及びレール15を外し(既設のレール、及び既設の枕木を外す工程)、その後、新設桁13に枕木受桁11を設置する。
【0032】
枕木受桁11の設置は、例えば、鉄道車両が通っていない夜間において、第1方向D1に沿って徐々に行われる。例えば、河川Rの状況によっては、吊り足場を設置して枕木受桁11の設置を行う。また、河川水Wの上方における枕木受桁11の設置を行うときに吊り足場を設置してもよい。枕木受桁11の設置は、例えば、1日1スパンで(第1方向D1に沿って並ぶ一対の新設主桁台座20の間の部分が)行われる。枕木受桁11を設置した後には、枕木受桁11に既設の枕木4、及び既設のレール15を設置する(既設の枕木、及び既設のレールを設置する工程)。
【0033】
枕木受桁11は、第2方向D2に延在する鋼材であり、例えば、枕木受桁11の一端部及び他端部のそれぞれが新設桁13の下フランジ13bの上面に載せられて新設桁13に固定(一例としてボルト固定)される。
図11及び
図12に示されるように、枕木受桁11は、枕木4が鉛直上方から挿入されて、挿入された枕木4を保持する鋼材である。枕木受桁11からは設置された枕木4の上部が露出している。
【0034】
第1方向D1及び鉛直方向D3に延在する平面で切断した枕木受桁11の断面は、上方を向く開口11gを有するコの字状とされている。開口11gには上方から枕木4が嵌め込まれ、枕木受桁11は嵌め込まれた枕木4を保持する。枕木受桁11は、嵌め込まれた枕木4の下面が対向する下板部11dと、嵌め込まれた枕木4の側面が対向すると共に第1方向D1に沿って並ぶ一対の側板部11fとを有する。
【0035】
以上のように、枕木受桁11に枕木4を設置した後には、
図13及び
図14に示されるように、既設桁3を撤去する(既設桁を撤去する工程)。このとき、既設桁3を切断し、切断した既設桁3を下方から抜くことによって橋脚2から既設桁3を撤去する。以上の工程を経て、河川横断橋1に対する桁架け替え方法の一連の工程が完了する。
【0036】
次に、本実施形態に係る桁架け替え方法から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る桁架け替え方法では、既設の河川横断橋1が架け替えられ、既設の河川横断橋1を構成する既設の橋脚2の上に新設主桁台座10が設置される。新設主桁台座10は、橋脚2の上において基礎の嵩上げを行うためのものである。新設主桁台座10の上には新設桁13が架設され、新設桁13には新設の枕木受桁11が設置される。その後、既設の橋脚2に取り付けられていた既設桁3が撤去される。
【0037】
この桁架け替え方法では、ジャッキアップを不要とすることができるので、扛上能力によって作業性が左右されることを回避して作業性を向上させることができる。基礎の嵩上げを行う新設主桁台座10は仮設のものではなく、この桁架け替え方法では、仮設構造物を用いずに作業を進めることができるので、作業途中においても高い耐震性を確保することができる。
【0038】
更に、本実施形態に係る桁架け替え方法では、レール15の短尺化を行ってレール15の長さを一日(一晩)で作業可能な長さに変更するので、作業を一層効率よく行うことができる。また、レール15の短尺化、新設桁13の架設、及び枕木受桁11の設置を夜間に行うことが可能であるため、鉄道車両の既存の営業に影響を与えずに短期間で工事を完了させることができ、工期の短縮に寄与する。例えば、交通制限が不可能で架け替えを行う場合に比べて、短期間で工事を完了させることができる。
【0039】
本実施形態に係る桁架け替え方法では、枕木受桁11を設置する工程の前に、既設の橋脚2から、既設のレール15、及び既設の枕木4を外す工程を備えてもよい。この場合、新設桁13に枕木受桁11を設置する前に、既設のレール15及び既設の枕木4を外すことができる。
【0040】
本実施形態に係る桁架け替え方法は、枕木受桁11を設置する工程の後に、枕木受桁11に既設の枕木4、及び既設のレール15を設置する工程を備えてもよい。この場合、枕木受桁11を設置した後に外した既設の枕木4、及び既設のレール15を再利用することができる。従って、既設の枕木4、及び既設のレール15を有効活用することができる。 本実施形態に係る桁架け替え方法では、新設主桁台座10、枕木受桁11及び新設桁13は新設のものを用いる一方で、橋脚2、枕木4及びレール15については既設のものを用いることができる。従って、既設の部材を有効活用することができる。
【0041】
本実施形態において、既設桁3は上路桁であり、新設桁13は下路桁である。この場合、既設桁3の下面の高さよりも新設桁13の下面の高さを高くすることが可能となる。従って、河川Rの水面に対する新設桁13の高さを高くすることができるので、豪雨災害等が生じた場合であっても河川横断橋1が流される事態をより確実に抑制できる。このように、災害に対する河川横断橋1の耐性を高めることができる。
【0042】
本実施形態では、橋脚2の上面に載せられていた既設桁3を、橋脚2の上面の新設主桁台座10の上面に載せられる新設桁13に架け替えるので、新設主桁台座10の高さ分だけ桁の下端の高さを高くすることができる。本実施形態では、新設主桁台座10の高さが1m程度であって、河川水Wの底に対する既設桁3の下端の高さが4m程度であったため、新設桁13の下端の高さを1m程度高くして河川水Wの底に対する新設桁13の下端の高さを5m程度とすることができる。その結果、例えば、堤防E1の最も高い部分よりも新設桁13の下端を高くすることができるので、堤防E1の高さを抑える必要性を無くすことができる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る桁架け替え方法について説明する。第2実施形態に係る桁架け替え方法の一部は、第1実施形態の桁架け替え方法の一部と重複するため、以降では、第1実施形態の内容と重複する説明を適宜省略する。
図15及び
図16に示されるように、第2実施形態では、第1実施形態の橋脚2よりも幅(第2方向D2の長さ)が狭い橋脚22における桁の架け替えを行う。
【0044】
まず、第1実施形態の場合と同様、短尺化されたレール15の設置を終えた後に新設主桁台座20を設置する(新設主桁台座を設置する工程)。新設主桁台座20は、橋脚22の上面22bにおける一対の既設桁3の両側のそれぞれに構築される。新設主桁台座20の第2方向D2の長さは、前述した新設主桁台座10の第2方向D2の長さよりも短い。
【0045】
橋脚22に対する新設主桁台座20の構築が完了した後には新設桁23を架設する(新設桁を架設する工程)。このとき、新設主桁台座20の上面に新設桁23を設置する。新設桁23の形状は、前述した新設桁13の形状とは異なっている。新設桁23は、例えば、高さの制約を受けていて新設桁13の高さよりも低い。本実施形態において、新設桁23は中路桁である。新設桁23は、下フランジ23b、上フランジ23c及びウェブ23dを有する。
【0046】
新設桁23の設置と共に、又は新設桁23の設置後には、新設桁23に受け台24を設置する(受け台を設置する工程)。受け台24は、新設桁23の下フランジ23bの上面に固定される。具体的には、一対の新設桁23の下フランジ23bにおける第2方向D2の内側に固定される。
【0047】
受け台24の設置が完了した後には、
図17及び
図18に示されるように、受け台24に枕木受桁11を設置する(枕木受桁を設置する工程)。具体的には、既設桁3から枕木4及びレール15を外し(既設のレール、及び既設の枕木を外す工程)。その後、一対の受け台24の上に一対の受け台24を跨ぐように枕木受桁11を設置する。そして、枕木受桁11に既設の枕木4、及び既設のレール15を設置する(既設の枕木、及び既設のレールを設置する工程)。
【0048】
枕木受桁11に枕木4を設置した後には、
図19及び
図20に示されるように、既設桁3を撤去する(既設桁を撤去する工程)。具体的には、既設桁3を切断し、切断した既設桁3を下方から抜くことによって橋脚22から既設桁3を撤去する。以上の工程を経て、桁架け替え方法の一連の工程が完了する。
【0049】
以上、第2実施形態に係る桁架け替え方法では、新設主桁台座20の上に新設桁23が架設され、新設桁23に新設の枕木受桁11が設置され、その後、既設桁3が撤去される。この一連の工程において、ジャッキアップを不要とできるので、作業性を向上させることができ、作業途中においても高い耐震性を確保することができる。
【0050】
本実施形態において、新設桁23は中路桁である。よって、既設桁3の下面の高さよりも新設桁23の下面の高さを高くすることができ、河川Rの水面に対する新設桁23の高さを高くすることができる。従って、豪雨災害等が生じた場合であっても河川横断橋が流される事態をより確実に抑制でき、災害に対する河川横断橋の耐性を高めることができる。従って、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0051】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る桁架け替え方法について説明する。
図21に示されるように、第3実施形態に係る桁架け替え方法では、既設桁3よりも高い新設桁33を設置する点、及び既設桁3を完全に撤去せずに、既設桁3の一部を残置する点が前述した各実施形態とは異なる。第3実施形態では、短尺化されたレール15の設置を終えた後に橋脚32の上面32bに新設主桁台座30を構築する(新設主桁台座を構築する工程)。
【0052】
続いて、新設主桁台座30に新設桁33を設置する(新設桁を架設する工程)。新設桁33の高さは、前述した新設桁13の高さよりも高い。新設桁33は、中路桁であり、下フランジ33b、上フランジ33c及びウェブ33dを有する。
図22に示されるように、新設桁33に鋼材34b,34c,34dを設置する(鋼材を設置する工程)。鋼材34b,34c,34dは、新設桁33(下フランジ33b)と既設桁3(既設桁の上フランジ)との間に挟み込まれる台座である。
【0053】
具体的には、一対の新設桁33の一方の下フランジ33b、及び一方の既設桁3の上フランジの下面に鋼材34cをボルトナット又は溶接によって固定し、一対の新設桁33の他方の下フランジ33b、及び他方の既設桁3の上フランジの下面に鋼材34dをボルトナット又は溶接によって固定する。そして、一対の既設桁3の上フランジの下面に鋼材34bを固定して、既設桁3及び新設桁33に対する鋼材34b,34c,34d(3つの鋼材)の設置を行う。
【0054】
鋼材34b,34c,34dを設置した後には、既設桁3及び鋼材34b,34c,34dに枕木受桁11を設置し(枕木受桁を設置する工程)、枕木受桁11に既設の枕木4及びレール15を設置する(既設の枕木、及び既設のレールを設置する工程)。そして、
図23に示されるように、既設桁3を撤去する(既設桁を撤去する工程)。
【0055】
このとき、既設桁3の一部を撤去する。具体的には、既設桁3の鋼材34b,34c,34dから下方に突出する部分を切断して、当該切断した部分を撤去する。鋼材34b,34c,34dの間に位置する既設桁3の部分は残置しておく。以上のように既設桁3の一部を撤去した後に、桁架け替え方法の一連の工程が完了する。
【0056】
以上、第3実施形態に係る桁架け替え方法では、新設主桁台座30の上に新設桁33が架設され、新設桁33に枕木受桁11が設置され、その後、既設桁3の下部が撤去される。従って、ジャッキアップを不要とできるので、作業性を向上させることができ、作業途中においても高い耐震性を確保することができる。本実施形態において、既設桁3は、完全に撤去されることなく、既設桁3の上部が残置される。従って、鋼材34b,34c,34dを用いて既設桁3の一部を枕木受桁11及び枕木4の設置に活かすことができる。
【0057】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る桁架け替え方法及び橋脚撤去方法について説明する。
図24及び
図25に示されるように、第4実施形態に係る桁架け替え方法では、第3実施形態の新設桁33よりも更に高く且つ長い新設桁43を設置する点、複数の橋脚42の一部を補強する点、及び複数の橋脚42を撤去する点、が前述した各実施形態とは異なる。
【0058】
まず、前述した各実施形態と同様、レール15の短尺化、及び、橋脚42の上面42bにおける新設主桁台座40の構築を行う(新設主桁台座を構築する工程)。そして、新設主桁台座40の上面に新設桁43を架設する(新設桁を架設する工程)。新設桁43の高さ及び強度は、前述した新設桁33の高さ及び強度よりも大きい。
【0059】
新設桁43は、下路桁であり、下フランジ43b、上フランジ43c及びウェブ43dを有する。新設桁43は、橋脚42を第1方向D1に跨ぐように設置され、3本の橋脚42の上部に1本の新設桁43が設けられる。新設桁43の一端43f及び他端43gの位置は橋脚42の鉛直上方に一致する。新設桁43の長さは、例えば、20m程度である。
【0060】
新設桁43の設置と共に、又は新設桁43の設置の前までに、橋脚42を補強する(橋脚を補強する工程)。この補強は、全ての橋脚42に対して行うのではなく、例えば、撤去対象外の橋脚42に対して行う。本実施形態では、第1方向D1に沿って並ぶ複数の橋脚42のうち、新設桁43の一端43f及び他端43gが上方に位置する橋脚42を補強する。
【0061】
橋脚42の補強は、例えば、補強部材50を橋脚42の外周面に構築する巻き立て補強によって行われる。巻き立て補強は、鋼板巻き立て補強であってもよいし、RC(Reinforced Concrete)巻き立て補強であってもよい。また、橋脚42の補強は、巻き立て補強以外の方法によって行われてもよい。
【0062】
一例として、鉛直上方から橋脚42に掘削孔を形成して当該掘削孔に鋼棒を挿入する鋼棒挿入によって橋脚42を補強してもよい。この場合、橋脚42の外周面の肥大化を抑制できる。しかしながら、コストの増大を抑えて早く且つ一層確実に橋脚42を補強する観点では、巻き立て補強によって橋脚42を補強することが好ましい。
【0063】
新設桁43の架設、及び橋脚42の補強の後には、
図26及び
図27に示されるように、新設桁43に枕木受桁11を設置する(枕木受桁を設置する工程)。このとき、前述と同様、既設桁3から連結部材6、枕木4及びレール15を外し、(既設のレール、及び既設の枕木を外す工程)、その後、一対の新設桁43のそれぞれの下フランジ43b上に枕木受桁11を設置する(枕木受桁を設置する工程)。新設桁43に枕木受桁11を設置した後には、枕木受桁11に既設の枕木4、及び既設のレール15を設置する(既設の枕木、及び既設のレールを設置する工程)。
【0064】
その後、
図28及び
図29に示されるように、既設桁3を撤去する(既設桁を撤去する工程)。既設桁3の撤去と共に、又は既設桁3の撤去の後に、橋脚42を撤去する(橋脚を撤去する工程)。このとき、補強されていない橋脚42を新設桁43から撤去する。具体的には、第1方向D1に沿って並ぶ一対の補強された(補強部材50が設けられた)橋脚42の間に位置する補強されていない橋脚42を撤去する。以上の工程を経て、桁架け替え方法及び橋脚撤去方法の一連の工程が完了する。
【0065】
以上、第4実施形態に係る桁架け替え方法では、新設主桁台座40の上に新設桁43が架設され、新設桁43に枕木受桁11が設置され、その後、既設桁3が撤去される。従って、前述した各実施形態と同様、作業性を向上させることができ、作業途中においても高い耐震性を確保することができる。また、本実施形態では、既設桁3よりも大きく且つ剛性が高い新設桁43を架設する。従って、複数の橋脚42のうちの一部の補強、及び残部の撤去を行うことによって、橋脚42の数を減らすことができる。
【0066】
すなわち、本実施形態に係る橋脚撤去方法では、既設の河川横断橋を構成する既設の橋脚42の上に新設主桁台座40が設置され、新設主桁台座40の上に新設桁43が架設される。新設桁43には枕木受桁11が設置され、その後、既設の橋脚42に取り付けられれていた既設桁3が撤去される。そして、複数の橋脚42のうちのいずれかであって、且つ新設桁43が跨いでいる橋脚42(新設桁43の一端及び他端が鉛直上方に位置しない橋脚42)が撤去される。
【0067】
従って、河川横断橋における橋脚42の数を減らすことができるので、豪雨災害の発生時であっても河川横断橋が流される事態をより確実に抑制できる。すなわち、桁架け替えの前と比較して橋脚42のスパンを広げることができ、河川横断橋が受ける河川Rの流れの抵抗を低減させることができるので、豪雨災害等に対する河川横断橋の耐性をより強くすることができる。
【0068】
以上、本開示に係る桁架け替え方法及び橋脚撤去方法の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、桁架け替え方法及び橋脚撤去方法の工程の内容及び順序は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0069】
例えば、前述では、第4実施形態の桁架け替え方法において複数の橋脚42の一部を撤去する橋脚撤去方法について説明した。しかしながら、本開示に係る橋脚撤去方法は、前述した第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態の桁架け替え方法において行われるものであってもよい。この場合、第1~第3実施形態の場合でも、橋脚のスパンを広げて豪雨災害に強い河川横断橋を構築できる。
【符号の説明】
【0070】
1…河川横断橋、2,22,32,42…橋脚、2b,22b,32b,42b…上面、3…既設桁、3b…下フランジ、3c…上フランジ、3d…ウェブ、3f…一端、3g…他端、4…枕木、5…レール、5b…一端、5c…他端、6…連結部材、6b…フックボルト、6c…フック部、7…タイプレート、8…犬釘、10,20,30,40…新設主桁台座、11…枕木受桁、11d…下板部、11f…側板部、11g…開口、13,23,33,43…新設桁、13b,23b,33b,43b…下フランジ、13c,23c,33c,43c…上フランジ、13d,23d,33d,43d…ウェブ、13f,43f…一端、13g,43g…他端、15…レール、15b…一端、15c…他端、24…受け台、34b,34c,34d…鋼材、50…補強部材、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…鉛直方向、E1…堤防、E2…堤防、R…河川、W…河川水。