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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/10 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
A47K13/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021158241
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048751
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208640
【氏名又は名称】第一化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521424080
【氏名又は名称】ヨーコー産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】秦 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕二
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 真央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿彦
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091459(JP,A)
【文献】特開2019-177191(JP,A)
【文献】特開2020-165452(JP,A)
【文献】特開2020-162695(JP,A)
【文献】特開2017-176674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座または便蓋の少なくとも一方を開閉可能な電動開閉ユニットを備え、
前記電動開閉ユニットは、
ケースと、
前記ケースに収容されるモータと、
少なくとも一部が前記ケースから突出し、前記便座及び前記便蓋の一方に前記モータの回転を出力する出力軸と、
前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、
前記ケースに収容され、線材を螺旋状に巻いたコイル部を含み、前記伝達機構と前記出力軸とに接続され、前記出力軸の回転方向に前記出力軸を付勢するばねと、
を備え、
前記伝達機構は、前記ばねと係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記ばねの前記伝達機構側の端部と係合して、前記端部が前記ばねの周方向に移動することを規制するとともに前記ばねの径方向に移動することを規制することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記係合部は、
前記コイル部の内側に位置し、螺旋状の前記線材の一部の前記径方向の移動を規制する第1部分と、
前記コイル部の内側から外側に向かって前記第1部分から延び、前記線材の前記一部の軸方向の移動を規制する第2部分と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記第1部分は、前記コイル部の内周に沿う円弧状部分を有し、
前記第2部分の一部は、前記円弧状部分の前記周方向における一端から、前記円弧状部分の前記周方向における他端まで延びることを特徴とする請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記出力軸は、前記ばねが前記径方向へ移動することを規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記コイル部の内側に位置することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便座および便蓋の少なくともいずれかを電動で開閉するために、電動開閉ユニットが取り付けられたトイレ装置がある。電動開閉ユニットには、便蓋や便座を回転方向に付勢するコイルばねを設けることが知られている。コイルばねの付勢力によって、便座や便蓋の開閉をアシストすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-091459号公報
【文献】特開2020-162696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動開閉ユニットのコイルばねが巻き締めまたは巻き戻りする際に、コイルばねの径方向にコイルばねの少なくとも一部を移動させる力が生じる場合がある。その結果、コイルばねの一部が電動開閉ユニットの一部と接触し、摩擦抵抗が発生し、便蓋または便座を付勢するトルクが減少する恐れがある。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、電動開閉ユニットのばねにおける摩擦抵抗を抑制できるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、便座または便蓋の少なくとも一方を開閉可能な電動開閉ユニットを備え、前記電動開閉ユニットは、ケースと、前記ケースに収容されるモータと、少なくとも一部が前記ケースから突出し、前記便座及び前記便蓋の一方に前記モータの回転を出力する出力軸と、前記ケースに収容され、前記モータの回転を前記出力軸に伝達する伝達機構と、前記ケースに収容され、線材を螺旋状に巻いたコイル部を含み、前記伝達機構と前記出力軸とに接続され、前記出力軸の回転方向に前記出力軸を付勢するばねと、を備え、前記伝達機構は、前記ばねと係合する係合部を有し、前記係合部は、前記ばねの前記伝達機構側の端部と係合して、前記端部が前記ばねの周方向に移動することを規制するとともに前記ばねの径方向に移動することを規制することを特徴とするトイレ装置である。
【0007】
このトイレ装置によれば、伝達機構に設けられた係合部は、ばねの端部の周方向への移動を規制する。これにより、出力軸の回転に伴ってばねをねじることができる。そのため、ばねの巻き締めと巻き戻りとが生じる。その際、伝達機構に設けられた係合部が、ばねの端部の径方向への移動を規制することで、ばねの径方向への移動を抑制できる。これにより、ばねの一部が電動開閉ユニットの一部と接触し、摩擦抵抗が発生することを抑制できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記係合部は、前記コイル部の内側に位置し、螺旋状の前記線材の一部の前記径方向の移動を規制する第1部分と、前記コイル部の内側から外側に向かって前記第1部分から延び、前記線材の前記一部の前記軸方向の移動を規制する第2部分と、を有することを特徴とするトイレ装置である。
【0009】
このトイレ装置によれば、係合部が第2部分を有することで、ばねが軸方向に縮んだ場合でも、ばねが軸方向へ移動することを抑制し、伝達機構と出力軸からばねが外れることを抑制することができる。また、第1部分がコイル部の内側に位置し、第2部分は、コイル部の内側から外側に向かって第1部分から延びる。これにより、ケースの内径が大きくなることを抑制することができ、ばねの内側のスペースを有効活用できる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記第1部分は、前記コイル部の内周に沿う円弧状部分を有し、前記第2部分の一部は、前記円弧状部分の前記周方向における一端から、前記円弧状部分の前記周方向における他端まで延びることを特徴とするトイレ装置である。
【0011】
このトイレ装置によれば、係合部とばねとの接触面積を広くでき、係合部に加えられるばねの径方向へ移動しようとする力と、軸方向方向へ移動しようとする力とを分散させることができる。よって、係合部の耐久性を向上できる。
【0012】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記出力軸は、前記ばねが前記径方向へ移動することを規制する規制部を有し、前記規制部は、前記コイル部の内側に位置することを特徴とするトイレ装置である。
【0013】
このトイレ装置によれば、出力軸が規制部を有することにより、ばねの出力軸側においてもばねの径方向への移動を抑制することができる。これにより、例えば、ばねとケースとが接触し、摩擦抵抗が発生することで、ばねトルクが低下することを抑制し、接触に伴う異音(摺動音)の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、電動開閉ユニットのばねにおける摩擦抵抗を抑制できるトイレ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るトイレ装置を例示する斜視図である。
図2】実施形態に係るトイレ装置の一部を例示する平面図である。
図3】実施形態に係る電動開閉ユニットを例示する断面図である。
図4】実施形態に係る電動開閉ユニットのばねを例示する斜視図である。
図5】実施形態に係る電動開閉ユニットの伝達機構の一部を例示する斜視図である。
図6】実施形態に係る電動開閉ユニットの伝達機構の一部を例示する平面図である。
図7】実施形態に係る電動開閉ユニットの出力軸を例示する斜視図である。
図8】実施形態に係る電動開閉ユニットの一部を例示する平面図である。
図9】実施形態に係る電動開閉ユニットの一部を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係るトイレ装置を例示する斜視図である。
図1に表したように、実施形態に係るトイレ装置100(便座装置)は、ケーシング10と、使用者が着座する便座30と、便座30を覆う便蓋50と、を有する。便座30及び便蓋50のそれぞれは、ケーシング10に対して回動可能に支持されている。言い換えれば、便座30及び便蓋50のそれぞれは、開閉自在に軸支されている。図1の状態は、便座30が閉じた状態(下げられた状態)であり、便蓋50が開いた状態(上げられた状態)である。便蓋50は、閉じた状態において、ケーシング10及び便座30の上面を上方から覆う。
【0017】
ケーシング10の内部には、便座30に座った使用者の人体局部(「おしり」など)の洗浄を実現する身体洗浄機能部などが内蔵されている。例えば、ケーシング10の内部には、洗浄ノズル70や、洗浄ノズル70の動作を制御する制御回路などが設けられる。洗浄ノズル70は、使用者が便座30に座っているときに、ケーシング10の内部から前方へ進出した状態で、使用者の局部に向けて洗浄水を吐出する。また、ケーシング10には、便座30に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。
【0018】
図1に表したように、ケーシング10は、上面15を有する。上面15の前方には、左右方向において並ぶ一対の段差部(第1段差部19a及び第2段差部19b)が設けられている。
【0019】
便蓋50は、左右方向において並ぶ一対の便蓋ヒンジ部(第1便蓋ヒンジ部61及び第2便蓋ヒンジ部62)を有する。便蓋ヒンジ部は、便蓋の内側に位置する。第1便蓋ヒンジ部61は、第1段差部19aに配置されている。第2便蓋ヒンジ部62は、第2段差部19bに配置されている。便蓋50は、第1便蓋ヒンジ部61及び第2便蓋ヒンジ部62において、回動可能に軸支される。便蓋50は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0020】
便座30は、左右方向において並ぶ一対の便座ヒンジ部(第1便座ヒンジ部31及び第2便座ヒンジ部32)を有する。第1便座ヒンジ部31は、第1段差部19aに配置されている。第2便座ヒンジ部32は、第2段差部19bに配置されている。便座30は、第1便座ヒンジ部31及び第2便座ヒンジ部32において、回動可能に軸支される。
【0021】
図2は、実施形態に係るトイレ装置の一部を例示する平面図である。
図2は、便座30が閉じた状態で、ケーシング10を上方から見た様子を示す。なお、見易さのため便蓋50の図示を省略している。
図2に表したように、トイレ装置100は、電動開閉ユニット80(電動開閉装置)を有する。電動開閉ユニット80は、便座30及び便蓋50の少なくとも一方を開閉可能である。この例では、電動開閉ユニット80として、便座30を開閉可能な便座開閉ユニット80aと、便蓋50を開閉可能な便蓋開閉ユニット80bと、が設けられている。各電動開閉ユニット80の少なくとも一部は、ケーシング10の内部に設けられている。電動開閉ユニット80は、モータなどの駆動部を有し、駆動部の駆動力によって便座30または便蓋50を開閉する。電動開閉ユニット80は、便座開閉ユニット80a及び便蓋開閉ユニット80bの少なくとも一方を含んでいればよい。つまり、便座開閉ユニット80a及び便蓋開閉ユニット80bの一方は、省略されてもよい。
【0022】
例えば、便座開閉ユニット80aの出力軸85は、第1段差部19aにおいて、ケーシング10の側面から突出しており、直接的または間接的に便座30と接続される。この例では、便座開閉ユニット80aの出力軸85は、第1便座ヒンジ部31と係合している。便座開閉ユニット80aは、モータのトルクによって、出力軸85を回転させることで、第1便座ヒンジ部31を回転させ、便座30を回動させる。なお、便座開閉ユニット80aは、第2便座ヒンジ部32側に設けられてもよい。
【0023】
同様に、便蓋開閉ユニット80bの出力軸85は、第1段差部19aにおいて、ケーシング10の側面から突出しており、直接的または間接的に便蓋50と接続される。この例では、便蓋開閉ユニット80bの出力軸85は、第1便蓋ヒンジ部61と係合している。便蓋開閉ユニット80bは、モータのトルクによって、出力軸85を回転させることで、第1便蓋ヒンジ部61を回転させ、便蓋50を回動させる。なお、便蓋開閉ユニット80bは、第2便蓋ヒンジ部62側に設けられてもよい。
【0024】
図3は、実施形態に係る電動開閉ユニットを例示する断面図である。
図3に表したように、電動開閉ユニット80は、ケース81と、モータ82と、伝達機構83と、シャフト部84と、出力軸85と、ばね86と、を有する。
【0025】
この例では、ケース81は、第1ケース部材81aと、第2ケース部材81bと、を有する。第1ケース部材81aと第2ケース部材81bとが組み合わされて、筒状のケース81が形成されている。このようにケース81は、複数の部材が組み合わされたものでもよいし、1つの部材から形成されたものでもよい。ケース81は、ネジやボルトなどの任意の固定手段によって、ケーシング10に固定される。
【0026】
モータ82は、ケース81に収容されている。より具体的には、モータ82の少なくとも一部は、第1ケース部材81aに収容されており、モータ82の回転軸82aは、第2ケース部材81b側へ突出している。
【0027】
伝達機構83は、ケース81の第2ケース部材81bに収容されている。伝達機構83は、モータ82の回転軸82aと接続されており、モータ82の回転を、直接的または間接的に出力軸85に伝達する。この例では、モータ82の回転は、シャフト部84を介して出力軸85に伝達される。
【0028】
伝達機構83は、例えば減速機構であり、この例では遊星歯車機構である。より具体的には、この例において、伝達機構83は、太陽歯車83aと、遊星歯車83bと、遊星キャリア83c(太陽歯車)と、遊星歯車83dと、遊星キャリア83e(太陽歯車)と、遊星歯車83fと、遊星キャリア83gと、内歯車83hと、を有する。
【0029】
内歯車83hは、筒状であり、その内周面には、遊星歯車83b、83d、83fと係合する歯が設けられている。この例では、内歯車83hは、ケース81に対して相対的に固定されており、モータ82の回転軸82aによって出力軸85が回転しても、回転しない部材である。太陽歯車83a、遊星歯車83b、遊星キャリア83c、遊星歯車83d、遊星キャリア83e、遊星歯車83f、および遊星キャリア83gは、内歯車83h内に収容されている。
【0030】
太陽歯車83aは、モータ82の回転軸82aに接続されており、回転軸82aを中心に自転する。
遊星歯車83bは、太陽歯車83aと係合しており、太陽歯車83aの回転に伴って、太陽歯車83aの周囲を公転及び自転する。
遊星キャリア83cは、遊星歯車83bと係合しており、遊星歯車83bの回転に伴って自転する。
遊星キャリア83cは、遊星歯車83dと係合する太陽歯車となっている。遊星歯車83dは、遊星キャリア83cの回転に伴って、遊星キャリア83cの周囲を公転及び自転する。
遊星キャリア83eは、遊星歯車83dと係合しており、遊星歯車83dの回転に伴って自転する。
遊星キャリア83eは、遊星歯車83fと係合する太陽歯車となっている。遊星歯車83fは、遊星キャリア83eの回転に伴って、遊星キャリア83eの周囲を公転及び自転する。
遊星キャリア83gは、遊星歯車83fと係合しており、遊星歯車83fの回転に伴って自転する。
【0031】
シャフト部84は、ケース81の第2ケース部材81bに収容されており、遊星キャリア83gと直接的または間接的に接続されている。遊星キャリア83gの回転に伴って、シャフト部84は回転する。シャフト部84には、例えばトルクリミッタが設けられてもよい。
【0032】
出力軸85は、少なくとも一部がケース81から突出している。この例では、出力軸85の一端は、第2ケース部材81bから突出しており、出力軸85の他端は、第2ケース部材81bに収容されて、シャフト部84と接続されている。出力軸85は、モータ82の回転軸82aの回転に伴って、ケース81に対して回転可能である。これにより、出力軸85は、伝達機構83を介して伝達されたモータ82の回転力を便座30または便蓋50に出力する。すなわち、電動開閉ユニット80は、出力軸85に伝達されたモータ82の回転によって、便座30または便蓋50を開閉する。
【0033】
ばね86は、ケース81の第2ケース部材81bに収容されている。ばね86は、例えば、ねじりコイルばねである。ばね86の一端部は、伝達機構83に接続され、ばね86の他端部は、出力軸85に接続されている。ばね86は、出力軸85の回転方向に、出力軸85を付勢する。つまり、ばね86の弾性力は、出力軸85を介して、便座30または便蓋50に伝達される。例えば、ばね86は、便座30または便蓋50を開方向に付勢する。ばね86を設けることにより、便座30や便蓋50の開閉をアシストすることができる。
【0034】
ばね86の内側に、シャフト部84が配置されている。例えば、モータ82の回転軸82a、伝達機構83の各遊星キャリア(各太陽歯車)、シャフト部84、出力軸85、ばね86の各中心軸(回転軸)は、互いに一致するように配置されている。なお、中心軸(回転軸)が一致することは、中心軸が厳密に直線上に位置する場合のみならず、例えば製造ばらつきや設計上の遊びなどの範囲で、僅かにずれている場合を含んでもよい。ばね86は、例えば、ばね86の外側の部材(ケース81)や、ばね86の内側の部材(シャフト部84)と接しないように配置されている。
【0035】
なお、実施形態の説明において、回転軸の延びる方向を軸方向という。また、回転(力)を伝達するとは、部材が直接接することで直接的に力を伝える場合だけではなく、間に設けられた別の部材を介して間接的に力を伝える場合を含んでもよい。
【0036】
図4は、実施形態に係る電動開閉ユニットのばねを例示する斜視図である。
ばね86は、第1フック部86aと、第2フック部86bと、コイル部86cと、を有する。ばね86は、線材から形成されている。線材には、鉄などの金属を含む材料(例えば鋼、ステンレス等)が用いられる。
【0037】
コイル部86cは、線材を螺旋状に巻いた部分である。第1フック部86aは、コイル部86cの一端から伝達機構83側に軸方向に沿って延びる部分である。第2フック部86bは、コイル部86cの他端から出力軸85側に軸方向に沿って延びる部分である。
【0038】
ばね86は、ばね86の端部86Eにおいて伝達機構83と接続される。端部86Eは、第1フック部86aを含む。端部86Eは、コイル部86cの伝達機構83側の端部87aを含んでもよい。例えば、端部87aは、第1フック部86aから、コイル部86cの螺旋の1巻き分以下の範囲である。端部87aは、第1フック部86aから、コイル部86cの螺旋の1/2巻き分、または1/4巻き分以下の範囲でもよい。
【0039】
ばね86は、ばね86の端部86Fにおいて出力軸85と接続される。端部86Fは、第2フック部86bを含む。端部86Fは、コイル部86cの出力軸85側の端部87bを含んでもよい。例えば、端部87bは、第2フック部86bから、コイル部86cの螺旋の1巻き分以下の範囲である。端部87bは、第2フック部86bから、コイル部86cの螺旋の1/2巻き分、または1/4巻き分以下の範囲でもよい。
【0040】
図5は、実施形態に係る電動開閉ユニットの伝達機構の一部を例示する斜視図である。 図6は、実施形態に係る電動開閉ユニットの伝達機構の一部を例示する平面図である。 図5は、伝達機構83の内歯車83hを表し、図6は、内歯車83hを軸方向に沿って見た様子を表す。
【0041】
伝達機構83は、例えば内歯車83hにおいて、ばね86の端部を係止する。例えば、図5及び図6に表したように、伝達機構は83は、ばね86と係合する係合部90(係止部)を有する。係合部90は、内歯車83hの出力軸85側の端部に設けられる。
【0042】
係合部90は、ばね86の端部86Eと係合して、端部86Eがばね86の周方向に移動することを規制する。また、係合部90は、ばね86の端部86Eと係合して、螺旋状の線材の一部がばね86の径方向に移動することを規制する。なお、周方向は、軸方向を中心とした回転方向であり、コイル部86cの螺旋の円周に沿った方向である。径方向は、軸方向に垂直な方向であり、コイル部86cの螺旋の円の半径が延びる方向である。
【0043】
より具体的には、この例において、係合部90は、ばね86の周方向の移動を規制する第1規制部91と、ばね86の径方向及び軸方向の移動を規制する第2規制部92と、を有する。
【0044】
第1規制部91は、内歯車83hの筒状体83pの内周に設けられている。第1規制部91は、ばね86の周方向の移動を規制する規制面91fを有する。規制面91fは、軸方向及び径方向に沿って延び、周方向に対して略垂直である。図8に関して後述するように、規制面91fは、第1フック部86aと係合して、ばね86の周方向の移動を規制する。
【0045】
第2規制部92は、内歯車83hの筒状体83pの端部から突出した凸部である。より具体的には、第2規制部92は、第1部分92aと、第2部分92bと、を有する。第1部分92aは、筒状体83pから軸方向に延びている。図8及び図9に関して後述するように、第1部分92aは、ばね86の端部87aと係合して、ばね86の径方向の移動を規制する。第2部分92bは、第1部分92aの出力軸85側の端部に設けられている。第2部分92bは、第1部分92aから見て径方向の外側に向けて延びている。図8及び図9に関して後述するように、第2部分92bは、ばね86の端部87aと係合して、ばね86の軸方向の移動を規制する。例えば、図6に表したように、第1部分92a及び第2部分92bは、筒状体83pの外周側面83pfよりも径方向の内側に位置する。
【0046】
図7は、実施形態に係る電動開閉ユニットの出力軸を例示する斜視図である。
図7に表したように、出力軸85の一端は、例えば筒状部85aである。筒状部85aの開口85pにシャフト部84が挿入される。これにより、出力軸85は、シャフト部84と接続される。出力軸85の他端は、例えば角柱状部85bとなっている。角柱状部85bは、例えば便座30または便蓋50に挿入される。これにより、出力軸85は、便座30または便蓋50と接続される。
【0047】
出力軸85は、フランジ部85fを有する。フランジ部85fは、例えば筒状部85aの側面から外側に向かって延びる。また、フランジ部85fは、軸方向に延びる穴85q(開口)を有する。穴85qには、ばね86の第2フック部86bが挿入される。これにより、ばね86は、出力軸85と接続される。第2フック部86bと穴85qとが係合することによって、ばね86の弾性力は、フランジ部85f及び角柱状部85bを介して、便座30または便蓋50を付勢することができる。
【0048】
出力軸85は、規制部85cをさらに有する。規制部85c(第3規制部)は、フランジ部85fよりも伝達機構83側に突出した部分である。規制部85cは、穴85qよりも内側に位置する。この例では、規制部85cは、筒状部85aのうち、フランジ部85fよりも伝達機構83側の部分である。図9に関して後述するように、規制部85cは、ばね86の径方向の移動を規制する。
【0049】
図8は、実施形態に係る電動開閉ユニットの一部を例示する平面図である。
図9は、実施形態に係る電動開閉ユニットの一部を例示する断面図である。
図8では、伝達機構83と、ばね86と、出力軸85と、が接続された様子を表している。図9は、図8に表したA-A線における断面を表している。
【0050】
図8に表したように、ばね端部の第1フック部86aは、内歯車83hの筒状体83pの内周に挿入される。これにより、係合部90の第1規制部91は、第1フック部86aと係合して、ばね86の周方向の移動を規制する。例えば、第1フック部86aは、規制面91fと周方向において接する。これにより、第1フック部86aの周方向への移動が止められ、ばね86の周方向への移動が制限される。
【0051】
また、例えば、図8及び図9に表したように、第2規制部92は、コイル部86cの端部87a(螺旋状の線材の一部)と係合して、ばね86の軸方向及び径方向の移動を規制する。例えば、コイル部86cの端部87aは、径方向(及び軸方向)において、第2規制部92と接する。これにより、端部87aの径方向(及び軸方向)への移動が止められ、ばね86の径方向(及び軸方向)への移動が制限される。
【0052】
以上、説明したように、伝達機構83に設けられた係合部90は、ばね86の端部86Eの周方向への移動を規制する。これにより、出力軸85の回転に伴ってばね86をねじることができる。そのため、ばね86の巻き締めと巻き戻りとが生じる。ばね86の巻き締めまたは巻き戻りに伴って、ばね86の少なくとも一部を、ばね86の径方向に移動させる力が生じることがある。例えば、出力軸85に対してばねを偏心させる力、ばね86の軸方向に対してばね86を変形させる(曲げる)力、または、出力軸85に対してばね86を斜めに傾ける力が生じる恐れがある。ばね86の少なくとも一部が径方向に移動すると、ばね86の一部と電動開閉ユニットの一部とが接触し、摩擦抵抗(摺動抵抗)が発生する恐れがある。例えば、ばね86を覆うケース81とばね86との接触による摩擦抵抗、ばね86の線間の摩擦抵抗(螺旋状のばねの隣り合う一部同士の接触による摩擦抵抗)、または、ばね86の内周に位置するシャフト部84とばね86との接触による摩擦抵抗などが発生する恐れがある。これに対して、実施形態によれば、伝達機構83に設けられた係合部90が、ばね86の線材の一部の径方向への移動を規制することで、ばね86の径方向への移動を抑制できる。これにより、ばねの86一部が電動開閉ユニットの一部と接触し、摩擦抵抗が発生することを抑制できる。
【0053】
また、ばね86の一部が他の部分と接触した状態において、ばね86が巻き締めまたは巻き戻りをすることで、異音が発生する。これに対して、実施形態によれば、ばね86の一部が他の部分と接触することを抑制できるため、異音(摺動音)が発生することを抑制できる。
【0054】
例えば、摩擦抵抗により減少する分を見越してトルクがアップするように線材を太くしたり、コイル径を大きくしたり、初期ねじりを増やしたりする方法も考えられる。また、線間に十分な隙間を設け、接触部にグリースなどの潤滑油を塗布することで異音を防止する方法も考えられる。しかし、これらの方法においては、ばねが大型化する場合があり、トイレ装置のデザイン上の制約が生じる恐れがある。これに対して、実施形態によれば、伝達機構83が係合部90を有することで、上述したように、摩擦抵抗や異音を抑制することができるため、ばねの大型化を抑制することができる。
【0055】
図9に表したように、第2規制部92の第1部分92aは、コイル部86cの内側に位置し、ばね86の線材の一部の径方向の移動を規制する。例えば、第1部分92aは、ばね86の径方向において、ばね86の端部87aと接触することで、端部87aの内側への移動を制限する。
【0056】
また、図9に表したように、第2規制部92の第2部分92bは、コイル部86cの内側から外側に向かって第1部分92aから延び、ばね86の線材の一部の軸方向の移動を規制する。例えば、第2部分92bは、ばねの軸方向において、ばね86の端部87aと接触する。第2部分92bは、ばね86の隣り合う線材の一部(端部87a)と別の一部87cとに挟まれている。
【0057】
ばね86の回転に伴って、巻き締めと巻き戻りとが起こり、ばね86は軸方向に伸び縮みする。そのため、ばね86が縮むことにより、ばね86が伝達機構83や出力軸85から外れてしまう可能性がある。これに対して、実施形態によれば、係合部90が第2部分92bを有することで、ばね86が軸方向に縮んだ場合でも、ばね86が軸方向へ移動することを抑制し、伝達機構と出力軸からばねが外れることを抑制することができる。
【0058】
なお、係合部90の形態は、上記に限らず、ばね86の端部86Eと係合して、端部86Eの周方向及び径方向への移動を規制可能な任意の形状や位置でよい。また、第2規制部92の形態は、上記に限らず、ばね86の端部86Eと係合して、端部86Eの少なくとも径方向への移動を規制可能な任意の形状や位置でよい。
【0059】
例えば、ばね86の径方向の移動を規制する第1部分をコイル部の外側に設け、軸方向の移動を規制する第2部分がコイル部の外側から内側に延びる構成でもよい。ただし、この場合には、係止部の少なくとも一部がばねの外側に配置されるため、その分、ケースの内径が大きくなり、電動開閉ユニットの大型化に繋がる場合がある。これに対して、図9の例では、第1部分92aがコイル部86cの内側に位置し、第2部分92bは、コイル部86cの内側から外側に向かって第1部分92aから延びる。これにより、ケース81の内径が大きくなることを抑制することができ、ばね86の内側のスペースを有効活用できる。また、ばね86の巻き締めによって、ばね86の径が小さくなった場合に、ばね86の内側に設けられる部品にばね86が接触することを抑制できる。
【0060】
また、例えば、第1部分92aは、コイル部86cの内周に沿う円弧状部分88(図5図6及び図9参照)を有する。具体的には、第1部分92aの少なくとも外側側面88fは、軸方向に沿って見たときに円弧状であり、螺旋状のコイル部86cの内周面に沿う形状である。これにより、例えば、第1部分92aは、コイル部86cと面で接触することができる。なお、この例では、第1部分92aの全体が軸方向に沿ってみたときに円弧状に形成されている。
【0061】
また、図6に表したように、第2部分92bの一部は、第1部分92aの円弧状部分88の周方向における一端88aから、円弧状部分88の周方向における他端88bまで、周方向に沿って延びている。これにより、係合部90とばね86との接触面積を広くでき、係合部90に加えられるばね86の径方向へ移動しようとする力と、軸方向へ移動しようとする力とを分散させることができる。よって、係合部90の耐久性を向上しつつ、例えば、ばね86とケース81とが接触し、摩擦抵抗が発生することで、ばねトルクが低下することを抑制し、接触に伴う異音(摺動音)の発生を抑制することができる。
【0062】
また、図9に表したように、ばね86の出力軸85側において、出力軸85の規制部85cは、コイル部86cの内側に位置する。規制部85cは、コイル部86cの端部87bと径方向において並び、例えば、端部87bと接する。これにより、端部87bの径方向(内側)への移動が止められ、ばね86の径方向への移動が制限される。
【0063】
上述したように、実施形態においては、ばね86の伝達機構83側の端部と係合する係合部90が設けられることで、ばね86の径方向へ移動を抑制することができる。一方で、ばね86を径方向に移動させる力は、ばねを伝達して、出力軸85側において、ばね86を径方向へ移動させてしまう場合がある。これに対して、出力軸85が規制部85cを有することにより、ばね86の出力軸85側においてもばね86の径方向への移動を抑制することができる。これにより、例えば、ばね86とケース81とが接触し、摩擦抵抗が発生することで、ばねトルクが低下することを抑制し、接触に伴う異音(摺動音)の発生を抑制することができる。
【0064】
なお、規制部85cの形態は、上記に限らず、ばね86の端部86Fと係合して、端部86Fの径方向への移動を規制可能な任意の形状や位置でよい。規制部85cは、例えばフック形状としてもよいし、コイル部86cの外側に設ける構成でもよい。ただし、図9等の例では、規制部85cがコイル部86cの内側に位置することにより、規制部をコイル部86cの外側に設けた場合に比べて、ばね86の内側のスペースを有効活用できるため、ケース81が大型化することを抑制できる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ装置が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
10 ケーシング
15 上面
19a 第1段差部
19b 第2段差部
30 便座
31 第1便座ヒンジ部
32 第2便座ヒンジ部
50 便蓋
61 第1便蓋ヒンジ部
62 第2便蓋ヒンジ部
70 洗浄ノズル
80 電動開閉ユニット
80a 便座開閉ユニット
80b 便蓋開閉ユニット
81 ケース
81a 第1ケース部材
81b 第2ケース部材
82 モータ
82a 回転軸
83 伝達機構
83a 太陽歯車
83b 遊星歯車
83c 遊星キャリア
83d 遊星歯車
83e 遊星キャリア
83f 遊星歯車
83g 遊星キャリア
83h 内歯車
83p 筒状体
83pf 外周側面
84 シャフト部
85 出力軸
85a 筒状部
85b 角柱状部
85c 規制部
85f フランジ部
85p 開口
85q 穴
86 ばね
86E、86F 端部
86a 第1フック部
86b 第2フック部
86c コイル部
87a、87b 端部
87c 一部
88 円弧状部分
88a 一端
88b 他端
88f 外側側面
90 係合部
91 第1規制部
91f 規制面
92 第2規制部
92a 第1部分
92b 第2部分
100 トイレ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9