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特許7386843一回液体換気および/または低体温を誘導するための液体換気装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】一回液体換気および/または低体温を誘導するための液体換気装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20231117BHJP
   A61B 5/087 20060101ALI20231117BHJP
   A61M 16/14 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
A61M16/00 343
A61B5/087
A61M16/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021506017
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 CA2019050450
(87)【国際公開番号】W WO2019200459
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】18020155.0
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18020156.8
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520403750
【氏名又は名称】ユニベルシテ デ シャーブルック
(73)【特許権者】
【識別番号】519300389
【氏名又は名称】ソクプラ サイエンシーズ エ ジェニ エス.イー.シー.
(73)【特許権者】
【識別番号】520404621
【氏名又は名称】エコール ナショナル ヴェテリネール ダルフォール
(73)【特許権者】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】520403761
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ エスト クレテイユ ヴァル デ マルヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミショー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ティシエ,ルノー
(72)【発明者】
【氏名】コールハウアー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ムソー,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ナドー,マテュー
(72)【発明者】
【氏名】バンダム,ジョナサン
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表平8-501969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 16/14
A61B 5/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の液体換気のための換気装置であって、
吸気回路および呼気回路を画定する呼吸回路であって、
呼吸可能な液体に酸素を供給するための酸素供給器、および
前記呼吸回路を介して前記哺乳動物の肺の内外に前記呼吸可能な液体を圧送するために、前記酸素供給器に動作可能に接続されたポンプアセンブリ
を備える、呼吸回路と、
前記呼吸回路に動作可能に接続され、前記呼吸可能な液体の呼吸フローの圧力を測定するように構成された圧力センサと、
前記哺乳動物の肺から送出される呼吸可能な液体の呼気フローを制御しながら、前記酸素供給器と前記肺との間で前記呼吸可能な液体を制御可能に交換するために前記圧力センサおよび前記ポンプアセンブリに動作可能に接続された制御ユニットと、
を備える、換気装置であり、
前記制御ユニットは、
前記測定された圧力から計算された圧力Pをリアルタイムで生じさせること、および
前記圧力Pが前記哺乳動物の気管の虚脱を示す負の閾値に達すると、前記哺乳動物の肺内で目標呼気終末呼吸可能な液体容量を維持するために、所与の呼気期間の間、前記呼吸可能な液体を前記肺から送出しながら、約50%だけ前記呼吸可能な液体の呼気フローをリアルタイムで低減すること
ためのプロセッサを備える、換気装置。
【請求項2】
前記目標呼気終末呼吸可能な液体容量は、2~8rpmの呼吸数および4~10mL/Kgの呼吸可能な液体の一回換気量に対して、10~20ml/Kgである、請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
前記圧力Pの負の閾値は、約-50cmHO以下であり、前記ポンプアセンブリが前記呼吸可能な液体を前記肺から送出する所与の呼気期間は、前記呼吸可能な液体の目標一回呼気量の少なくとも80%を除去することを可能にする、請求項1または2に記載の換気装置。
【請求項4】
前記哺乳動物より下方に位置し、前記ポンプアセンブリに流体接続されたリザーバであって、前記制御ユニットは、前記圧力Pが約-130cmHO未満または約+130cmHOを超える臨界圧力に達したときに、前記呼吸回路をリアルタイムで開放することによって、低い負圧Pを生成して、重力によって前記呼吸可能な液体を前記肺から前記リザーバに向けて排出するようにさらに構成される、リザーバをさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の換気装置。
【請求項5】
前記臨界圧力に達したときにアラームをトリガするために前記制御ユニットに動作可能に接続されたアラームユニットをさらに備える、請求項4に記載の換気装置。
【請求項6】
前記呼吸フローの圧力は、前記哺乳動物の口で測定される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の換気装置。
【請求項7】
前記ポンプアセンブリは、
前記ポンプアセンブリを前記哺乳動物の気管に挿入可能な遠位端を有する気管内チューブの近位端に接続するための接合部を備えるYコネクタと、
前記Yコネクタの接合部および前記酸素供給器の上流側に流体接続された呼気ポンプと、
前記Yコネクタの接合部および前記酸素供給器の下流側に流体接続された吸気ポンプと、
複数の弁であって、各弁は、前記呼気ポンプおよび前記吸気ポンプを通過する呼吸可能な液体を推進させて、前記呼吸可能な液体を前記肺へと案内するために前記制御ユニットによって独立制御される、弁と、
を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の換気装置。
【請求項8】
前記酸素供給器に流体接続された冷却ユニットであって、前記冷却ユニットは、前記哺乳動物の肺へと推進される前に前記酸素供給器を通過する呼吸可能な液体の吸気温度を下げ、および/または維持するために冷却温度の冷却流体を生成する、冷却ユニットをさらに備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の換気装置。
【請求項9】
前記冷却ユニットは、前記冷却流体を前記酸素供給器から受け取るために前記酸素供給器と流体連通し、前記冷却流体は、前記冷却ユニットを通過しながら冷却され、前記換気装置は、前記冷却ユニットから前記酸素供給器へ前記冷却流体を戻すために前記冷却ユニットおよび前記酸素供給器と流体連通するポンプをさらに備え、前記酸素供給器において、前記冷却流体は、前記酸素供給器内を循環する前記換気装置の呼吸可能な液体と熱交換されて、前記呼吸可能な液体を前記哺乳動物の肺の中へ再点滴する前に前記呼吸可能な液体を冷却する、請求項8に記載の換気装置。
【請求項10】
前記哺乳動物の肺から送出される呼吸可能な液体の呼気温度を測定する温度センサであって、前記温度センサは、前記制御ユニットに動作可能に接続され、前記制御ユニットは、測定された呼気温度に応じて呼気された呼吸可能な液体の温度を調節するように、前記ポンプを制御し、ひいては、前記冷却ユニットおよび前記酸素供給器を通過する冷却流体のフローを制御するようにさらに構成される、温度センサをさらに備える、請求項9に記載の換気装置。
【請求項11】
前記ポンプを制御することは、第1の予め設定された期間の間、前記ポンプをオンにし、第2の予め設定された期間の間、前記ポンプをオフにして、前記冷却液のフローを制御することにある、請求項10に記載の換気装置。
【請求項12】
前記呼吸可能な液体は、パーフルオロカーボンすなわちPFCを含む、請求項1乃至11のいずれか一項の記載の換気装置。
【請求項13】
前記哺乳動物は、ヒトである、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の換気装置。
【請求項14】
前記呼吸可能な液体の呼気フローは、リアルタイムで50%だけ低減される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合衆国法典第35編第119条(e)および連邦規則法典第37編1.78条の定めによる優先権の陳述
この非仮特許出願は、2018年4月17日に欧州特許庁に出願された「呼気性虚脱を判断し防止するための方法およびデバイス」と題された(英語による表題なし)欧州特許出願公開第180201550号、および「低体温を判断し防止するための方法およびデバイス」と題された(英語による表題なし)欧州特許出願公開第180201568号の先行特許出願に基づく優先権を主張するものであり、これらの特許出願の内容全体は、参照により本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、人工換気装置の分野に関し、より具体的には、気道圧力および肺温度に関する。
【背景技術】
【0003】
機械的人工換気の概念は、機械的換気装置、高頻度換気装置を含み、体外式膜型人工肺(ECMO)デバイスのような他のデバイスに拡張され得る。完全液体換気(TLV)は、これらの概念から根本的に逸脱したものである。肺の完全液体換気(TLV)は、心停止後の肺洗浄または超高速冷却を必要とする重症患者において、根本的に新しい利益をもたらし得る。完全液体換気(TLV)は、液体、例えばパーフルオロカーボン(PFC)の肺への初期充填、および周期的呼吸量再開をもたらす専用の液体換気装置を用いたその後の一回換気からなる。
【0004】
残念ながら、臨床環境におけるTLV技術の配備および使用は、制限されている。本発明は、そのような配備および使用を制限するものとして考えられる問題に対する少なくとも部分的な解決策を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0005】
この概要は、以下の発明を実施するための形態でさらに詳細に説明される概念の選択を簡略化した形で紹介するために示されている。この発明の概要は、特許請求される主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する際の助けとして使用されること意図するものでもない。
【0006】
本発明の第1の態様は、哺乳動物の液体換気のための換気装置であって、
-吸気回路および呼気回路を画定する呼吸回路であって、
・呼吸可能な液体に酸素を供給するための酸素供給器、および
・呼吸回路を介して哺乳動物の肺の内外に呼吸可能な液体を圧送するために酸素供給器に動作可能に接続されたポンプアセンブリ
を備える、呼吸回路と、
-呼吸回路に動作可能に接続され、呼吸可能な液体の呼吸フローの圧力を測定するように構成された圧力センサと、
-哺乳動物の肺から送出される呼吸可能液体の呼気フローを制御しながら、酸素供給器と肺との間で呼吸可能な液体を制御可能に交換するために圧力センサおよびポンプアセンブリに動作可能に接続された制御ユニットと、
を備える、換気装置であり、
制御ユニットは、
測定された圧力から計算された圧力Pをリアルタイムで生じさせること、および
圧力Pが哺乳動物の気管の虚脱を示す負の閾値に達すると、哺乳動物の肺内で目標呼気終末呼吸可能な液体容量、すなわちEEBLVを維持するために、所与の呼気期間の間、呼吸可能な液体を肺から送出しながら、因子Rに従って呼吸可能な液体の呼気フローをリアルタイムで減少させること、
ためのプロセッサを備える、換気装置を対象とする。
【0007】
好適な実施形態によれば、目標EEBLVは、2~8rpmの呼吸数および4~10mL/Kgの呼吸可能な液体の一回換気量に対して、10~20ml/Kgである。
【0008】
好適な実施形態によれば、圧力Pの負の閾値は、約-50cmHO以下であり、ポンプアセンブリが呼吸可能な液体を肺から送出する所与の呼気期間は、呼吸可能な液体の目標一回呼気量の少なくとも80%を除去することを可能にする。
【0009】
好適な実施形態によれば、換気装置は、哺乳動物より下方に位置し、ポンプアセンブリに流体接続されたリザーバをさらに備え、制御ユニットは、圧力Pが約-130cmHO未満または約+130cmHOを超える臨界圧力に達したときに、呼吸回路をリアルタイムで開放することによって、低い負圧P(例えば、0cmHOに近い負圧P)を生成して、重力によって呼吸可能な液体を肺からリザーバに向けて排出するようにさらに構成される。
【0010】
好適な実施形態によれば、換気装置は、臨界圧力に達したときにアラームをトリガするために制御ユニットに動作可能に接続されたアラームユニットをさらに備える。
【0011】
好適な実施形態によれば、呼吸フローの圧力は、哺乳動物の口で測定される。
【0012】
好適な実施形態によれば、ポンプアセンブリは、
ポンプアセンブリを哺乳動物の気管に挿入可能な遠位端を有する気管内チューブの近位端に接続するための接合部を備えるYコネクタと、
Yコネクタの接合部および酸素供給器の上流側に流体接続された呼気ポンプと、
Yコネクタの接合部および酸素供給器の下流側に流体接続された吸気ポンプと、
複数の弁であって、各弁は、呼気ポンプおよび吸気ポンプを通過する呼吸可能な液体を推進させて、呼吸可能な液体を肺へと案内するために制御ユニットによって独立制御される、弁と、
を備える。
【0013】
好適な実施形態によれば、換気装置は、酸素供給器に流体接続された冷却ユニットであって、前記冷却ユニットは、哺乳動物の肺へと推進される前に酸素供給器を通過する呼吸可能な液体の吸気温度を下げ、および/または維持するために冷却温度の冷却流体を生成する、冷却ユニットをさらに備える。
【0014】
好適な実施形態によれば、冷却ユニットは、冷却流体を酸素供給器から受け取るために酸素供給器と流体連通し、冷却流体は、冷却ユニットを通過しながら冷却され、換気装置は、冷却ユニットから酸素供給器へ冷却流体を戻すために冷却ユニットおよび酸素供給器と流体連通するポンプをさらに備え、酸素供給器において、冷却流体は、酸素供給器内を循環する換気装置の呼吸可能な液体と熱交換されて、呼吸可能な液体を哺乳動物の肺の中へ再点滴する前に呼吸可能な液体を冷却する。
【0015】
好適な実施形態によれば、換気装置は、哺乳動物の肺から送出された呼吸可能な液体の呼気温度を測定する温度センサをさらに備え、温度センサは制御ユニットに動作可能に接続され、制御ユニットは、測定された呼気温度に応じて呼吸可能な液体の温度を調節するように、ポンプを制御し、ひいては、冷却ユニットおよび酸素供給器を通過する冷却流体のフローを制御することによって、冷却流体の冷却温度を調節するようにさらに構成される。好ましくは、ポンプを制御することは、第1の予め設定された期間の間、ポンプをオンにし、第1の予め設定された期間の間、ポンプをオフにして、冷却液のフローを制御することにある。
【0016】
本発明の第2の態様は、哺乳動物の液体換気中の前記哺乳動物の肺に対する悪影響を防止するために、哺乳動物の肺の機能的残気量すなわちFRC未満の呼吸可能な液体の目標呼気終末呼吸可能な液体容量すなわちEEBLVの使用を対象とする。好ましくは、EEBLVは、2~8rpmの呼吸数および4~10mL/Kgの呼吸可能な液体の一回換気量に対して、10~20ml/Kgである。
【0017】
本発明の第3の態様は、哺乳動物の液体換気のための方法であって、
a)呼吸可能な液体の呼吸フローの圧力を測定しながら、呼吸フローに従って哺乳動物の肺の内外に呼吸可能な液体を圧送するステップと、
b)測定された呼気圧力から計算された圧力Pをリアルタイムで生じさせるステップと、
c)圧力Pが哺乳動物の気管の虚脱を示す負の閾値に達すると、哺乳動物の肺内で目標呼気終末呼吸可能な液体容量すなわちEEBLVを維持するために、所与の呼気期間の間、呼吸可能な液体を肺から送出しながら、因子Rに従って呼吸可能な液体の呼気フローをリアルタイムで減少させるステップと、
を含む方法を対象とする。
【0018】
好適な実施形態によれば、本発明の方法のEEBLVは、2~8rpmの呼吸数および4~10mL/Kgの呼吸可能な液体の一回換気量に対して、10~20ml/Kgである。
【0019】
好適な実施形態によれば、圧力Pの負の閾値は、約-50cmHO以下であり、呼吸可能な液体が肺から送出される所与の呼気期間は、呼吸可能な液体の容量の少なくとも80%を除去することを可能にする。
【0020】
好適な実施形態によれば、該方法は、圧力Pが約-130cmHO未満、または約+130cmHOを超える臨界値である場合、哺乳動物の肺から呼吸可能な液体を排出するステップをさらに含む。
【0021】
好適な実施形態によれば、該方法は、臨界値に達したときにアラームをトリガするステップをさらに含む。
【0022】
好適な実施形態によれば、該方法は、呼吸可能な液体を哺乳動物の肺の内外に圧送しながら、呼吸可能な液体の温度を下げ、および/または維持するステップをさらに含む。好ましくは、呼吸可能な液体の温度を下げ、および/または維持するステップは、冷却流体を生成すること、および呼吸可能な液体を哺乳動物の肺に再点滴する前に呼吸可能な液体を冷却するために、冷却流体を呼吸可能な液体と熱交換することを含む。
【0023】
好適な実施形態によれば、該方法は、哺乳動物の肺から送出された呼吸可能な液体の呼気温度を測定するステップと、肺の中へ送り込まれる呼吸可能な液体の温度を調節するために、測定された呼気温度に応じて冷却流体の温度を調節するステップとをさらに含む。
【0024】
好適な実施形態によれば、冷却流体の温度を調節するステップは、冷却流体が呼吸可能な液体と熱交換されるときに、第1の予め設定された期間の間、冷却流体のフローを維持すること、または第2の予め設定された期間の間、前記フローを停止させることにある。
【0025】
本発明の第4の態様は、哺乳動物の液体換気中の低体温の安全な誘導のための機器であって、前記機器は、
冷却流体が循環するときに冷却温度で冷却流体を生成するように構成された冷却ユニットであって、冷却流体を液体換気装置の酸素供給器から受け取るために酸素供給器と流体連通している、冷却ユニットと、
酸素供給器および冷却ユニットと流体連通している制御可能なポンプユニットであって、冷却流体を冷却ユニットから酸素供給器モジュールに戻すように構成され、酸素供給器モジュールにおいて、冷却流体が酸素供給器モジュール内を循環する液体換気装置の呼吸可能な液体と熱交換されて、冷却された含酸素呼吸可能な液体を哺乳動物の肺へ再点滴する前に酸素供給器によって酸素供給された呼吸可能な液体の吸気温度を制御する、制御可能なポンピングユニットと、
を備える、機器であり、
液体換気装置は、哺乳動物の肺から送出された呼吸可能な液体の呼気温度をリアルタイムで測定するための温度センサを備え、温度センサは、制御可能なポンプユニットに動作可能に接続されて、冷却流体のフローを修正し、ひいては、測定された呼気温度に応じて呼吸可能な液体の吸気温度を調節する、機器を対象とする。
【0026】
好適な実施形態によれば、ポンプユニットの制御は、第1の予め設定された期間の間、ポンプユニットをオンにし、第2の予め設定された期間の間、ポンプユニットをオフにして、冷却ユニットおよび酸素供給器を通過する冷却液のフローを制御することにある。
【0027】
好適な実施形態によれば、ポンプユニットは、酸素供給器における熱交換の冷却力を制御するために、制御された質量流量で冷却流体を圧送するように構成される。
【0028】
好適な実施形態によれば、ポンプは、冷却流体の質量流量を制御し、その結果、酸素供給器内の呼吸可能な液体の温度を変化させるように構成された、液体換気装置のプロセッサモジュールに動作可能に接続される。
【0029】
好適な実施形態によれば、冷却流体は水を含み得る。
【0030】
本発明の第4の態様は、哺乳動物における低体温の誘導のための方法であって、
a)冷却ユニットを用いて冷却温度の冷却流体を生成するステップと、
b)液体換気装置の酸素供給器内に冷却流体を制御可能に循環させて、酸素供給器において、冷却流体を液体換気装置の呼吸可能な液体と熱交換して、呼吸可能な液体を哺乳動物の肺へ再点滴する前に酸素供給器によって酸素供給された呼吸可能な液体の吸気温度を制御するステップと、
c)哺乳動物の肺から送出された呼吸可能な液体の呼気温度をリアルタイムで測定するステップと、
d)冷却ユニットおよび酸素供給器内を循環する冷却流体のフローを修正することによって、ステップc)において測定された呼気温度に応じて呼吸可能な液体の吸気温度をリアルタイムで調節するステップと、
を含む方法を対象とする。
【0031】
好適な実施形態によれば、冷却ユニットおよび酸素供給器内を循環する冷却流体フローを修正することは、第1の予め設定された期間の間、冷却流体を循環させ、第2の予め設定された期間の間、冷却液の循環を停止させることにある。
【0032】
好適な実施形態によれば、該方法は、酸素供給器内の熱交換の冷却力を制御するために、酸素供給器内へ循環する冷却液の質量流量を変化させるステップをさらに含む。
【0033】
好適な実施形態によれば、該方法は、冷却ユニット内を循環する冷却液の質量流量を変化させることによって酸素供給器内を循環する呼吸可能な液体の温度を変化させるステップをさらに含む。
【0034】
好適な実施形態によれば、冷却流体は、水を含む。
【0035】
本明細書に開示される本発明の全ての態様に関して、呼吸可能な液体は、好ましくは、パーフルオロカーボンすなわちPFCを含み得、哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0036】
本発明の他のおよびさらなる態様および利点は、説明する例示的な実施形態を読むことによってより良く理解され、または添付の請求項に示され、本明細書内で言及されない様々な利点は、実際に本発明を採用する際に当業者に想起されるであろう。
【0037】
本発明のさらなる特徴および例示的な利点は、添付図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係る液体換気装置の概略図である。
図2】本発明の別の実施形態に係る換気装置を示す図である。
図3】吸気位相の間に患者機能に接続された、本発明の一実施形態に係る液体換気装置の概略図である。
図4】患者機能呼気位相に接続された、本発明の一実施形態に係る液体換気装置の概略図である。
図5】本発明の別の実施形態に係る、アップスケールされた液体換気装置の概略図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る換気装置の3次元図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る換気装置の3次元図である。
図7】本発明の一実施形態に係る、哺乳動物の液体換気中の低体温の安全な誘導のための機器を示す図である。
図8】ポンプユニットの制御による呼気フローの温度制御の(A)アルゴリズムおよび(B)実施例を用いて、図7に示された機器のポンプアセンブリの動作を示す図である。
図9】従来の機械的換気のみを有するシャム(Sham)動物と比較した、異なる一回換気量(8ml/kgまたは16ml/kgのTV)および呼気終末容量(15ml/kgまたは30ml/kgのEEBLV)で30分間のTLVに供された5つの群の子ブタを含む、本発明の一実施形態に係る実験プロトコルを示す図であり、4つの対応する群はそれぞれ、TV-EV15、TV16-EV15、TV-EV30、およびTV16-EV30である。
図10】63kgのブタにおける完全液体換気(TLV)の最初の5分間の典型的なパーフルオロカーボンフロー(上の段)、口の圧力、および肺パーフルオロカーボン量を示す図である。
図11】覚醒前に、30分間の低体温TLV、続いて従来のガス換気および再加温に供された大型ブタにおける実験プロトコルの概略図である。動物を、死後分析のために安楽死させる前に、10日間にわたって追跡した。
図12】TLVエピソード中の異なるコンパートメントの体温を示し、全てのコンパートメントにおいて20分以内の標的温度(32℃~33℃)の急激な低下を示す図である。
図13】血液pH、および二酸化炭素分圧ならびに酸素分圧(それぞれ、pCOおよびpO2)を示す図である。
図14】経過観察の終了時のブタにおける移植肺の胸部コンピュータ断層撮影(CTスキャン)を示す図である。パーフルオロカーボンの肉眼的病巣が観察されず、完全な排除が示唆される。
図15】虚脱現象が発生したときの本発明の一実施形態に係る方法の適用における、呼吸サイクルの測定値を示す図である。(A)圧力(cmHO)、(B)フロー(mL/秒)、(C)呼吸数F(bpm)、(D)EEBLV(mL)。
図16】気道虚脱現象が発生したときに対する、時間の関数としての呼吸可能な液体の正常なフローおよび容量を示す図である。
図17】本発明の一実施形態に係るYコネクタの詳細な斜視図である。
図18】ブタの液体換気中のEEBLV、吸気容量、および呼気容量の測定値を示す図である。
図19】液体換気の1時間の間にブタで測定された信号(A)および液体換気の2.3分の時点から1分間の間に測定された同じ信号(B)を示す図である。
図20】液体換気の1時間の間にブタで測定された図19と同じ信号(A)および液体換気の40.55分の時点から1分間の間に測定された同じ信号(B)を示す図である。
図21】本発明の一実施形態に係る、哺乳動物の液体換気のための例示的な方法の動作を示すシーケンス図である。
図22】本発明の一実施形態に係る、哺乳動物の液体換気のための例示的な方法の動作を示す別のシーケンス図である。
図23】本発明の一実施形態に係る、哺乳動物の液体換気中の低体温の安全な誘導のための例示的な方法の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
新規の換気装置、機器、および方法について後述する。本発明は特定の例示的な実施形態に関して記載されているが、本明細書に記載されている実施形態は単なる例に過ぎず、本発明の範囲はそれらによって限定されることを意図していないことを理解されたい。
【0040】
保護的な機械的換気の開発は、過去数十年にわたって集中治療室の重篤患者にとって重要な前進の一歩であった。次の医療の飛躍的進歩の1つは、パーフルオロカーボンの残留量による肺の完全液体換気(TLV)の使用であり、この残留量を上回ると、液体の一回換気量が各呼吸サイクルで追加され、除去される。ガスに対するPFCの溶解度が高いため、TLVは、呼吸器疾患の動物モデルに示されるように、正常なガス交換を保証し、肺における効果をもたらすことができる。温度制御PFCが提供される場合、TLVはさらに、熱交換器として肺を使用し、心停止蘇生後の超高速冷却および強力な実験的神経保護をもたらすことができる。しかしながら、その臨床解釈は、TLV中の肺のPFCフローを十分に制御することができる液体換気装置がないことおよび適切な呼吸パラメータに関するコンセンサスの欠如のため限定されていた。
【0041】
呼気フロー、さらにPFC容量および圧力を継続的に調整することができる新規の機器が開発され、これは、TLV解釈の主要な基礎となった。この段階では、目標PFC容量、充填圧力およびPFC目標温度に関して、効率的な手順を提供するための詳細な提言が依然として必要である。
【0042】
このような提言の重要性は、液体換気の他の技術を用いた以前の臨床経験によって支持される。PFC充填肺の従来のガス換気は、部分液体換気としても知られ、実際に、急性呼吸窮迫症候群を示す患者における容量損傷または圧損傷の発生の増加と関連している。これらの結果は、我々が、液体充填に対する肺の反応を十分に理解しておらず、依然として、理想的な肺圧、残留量および一回換気量のための正確なガイドラインが必要であることを示したものであった。TLVは、一回液体換気を可能にするので、PLVとは根本的に異なるが、異なるレベルの肺充填での肺機能の評価および肺回復の遅延効果も依然として欠如している。今重要なのは、この現象を適切に評価することである。なぜなら、TLVは、救急患者における独自の視点を引き出すことができるからである。
【0043】
PFCを肺に不完全に充填した後の肺の一回換気を可能にするTLVのための新規の完全に安全かつ保護的なアプローチが、本明細書に開示されている。完全に充填された肺の膨張ではなく、最初に部分的に充填された肺への液体再分配を通して最良の耐容性を有する処置を決定するために、様々な充填量および一回換気量を有する異なる方策が試験されてきた。これは、TLVが、不完全な初期脱気にもかかわらず、予想される機能的残気量(FRC)未満で充填された場合に、はるかに良好な認容性を有し得ることを示した。本発明は、子ブタで試験された。安全であることに加えて、この手順は、依然として、その超高速冷却特性によって有益であり得る。
【0044】
上述のおよび他の特徴は、添付図面を参照して単なる例として挙げられた、例示的な実施形態の以下の非限定的な説明を読むことによって、より明らかになるであろう。同様の数字は、様々な図面上の同様の特徴を表す。
【0045】
好適な実施形態によれば、本発明は、新規の液体換気装置を使用してFRC未満の液体容量を使用するTLVの概念を統合することにある。全プロセスの自動化に加えて、本技術は、FRC未満の残留量でのTLVが、ヒトまたは成体サイズの動物などの哺乳動物におけるTLVの最大限の可能性を実現しながら、安全な処置を提供し得ることを確認するために、アップスケールされている。このような一回液体換気は、既知のTLVアプローチとは大きく異なり、より安全な臨床解釈のための有望な展望を開くものである。
【0046】
本発明の好適な実施形態に係る液体換気装置は、図1図6に示されている。哺乳動物の液体換気のための換気装置(100)は、ループを形成し、呼吸可能な液体(BL)を収容するように構成されたリザーバ(110)と、呼吸可能な液体に酸素を供給するためにリザーバ(110)に流体接続された酸素供給器(120)とを含む液体回路を備える。図5に示されているように、リザーバ(110)および酸素供給器(120)は、代替的に、リザーバが酸素供給器に組み込まれる特有のアセンブリを形成し得る。別の実施形態では、リザーバが存在しない(図示せず)。
【0047】
図6Aおよび図6Bに示されるような換気装置(100)は、換気プロセスの開始時に換気装置に分配されるBLを収容するための換気装置の上部セクションに吊り下げられた一対のポケットを有し得る。また、換気装置は、複数の車輪(134)により移動可能であるフレーム(112)によって支持される。換気装置はさらに、リザーバ(110)の下に配置された第1のスケール(114)および/または酸素供給器(120)の下に配置された第2のスケール(114)を有し得る。スケールは、リザーバおよび/または酸素供給器内に含まれるBLの量をリアルタイムで決定して、哺乳動物の肺内のBLの容量を計算するために、制御ユニット(180)に動作可能に接続される。
【0048】
酸素供給器は、ガス混合器(126)内で予混合された空気(122)および二酸素Oガス(124)の混合物を受け取るように構成される。換気装置はさらに、呼吸可能な液体(BL)を凝縮し、その損失を制限するために、典型的にはリザーバの上方に配置された、または酸素供給器の上部セクションに隣接して配置されたガス凝縮器(128)を備え得る。換気装置(100)は、酸素供給器に入る前に呼吸可能な液体(BL)を濾過するために、酸素供給器の上流側に濾過ユニット(130)を任意選択的に備え得る。TLVの技術分野で知られているようなリザーバ、酸素供給器、ガス混合器、フィルタ、チューブおよび凝縮器が本発明に関連して使用され得る。
【0049】
換気装置(100)はさらに、呼吸可能な液体(BL)を圧送するためにリザーバ(110)および酸素供給器(120)に動作可能に接続されたポンプアセンブリ(140)を備える。図1図4に示されているように、ポンプアセンブリは、哺乳動物の気管(156)に挿入可能な遠位端(154)を有する気管内チューブ(150)の近位端(152)にポンプを接続するための接合部を備えるYコネクタ(300)を備え得る。好ましくは、ポンプアセンブリ(140)は、呼吸可能な液体を肺(158)からフィルタ(130)に向かって圧送し、その後、予備の含酸素呼吸可能な液体が貯蔵され得る任意選択のリザーバ(110)に到達する前に酸素供給器(120)に向かって圧送するために、Yコネクタ(300)に流体接続された第1の呼気ポンプ(144)を備える。次いで、ポンプアセンブリ(140)は、換気装置のループ回路を閉鎖するYコネクタ(150)を介してリザーバ(110)内に予め貯蔵された含酸素呼吸可能な液体を肺に注入するために、リザーバに流体接続された吸気ポンプ(146)をさらに備える。ポンプアセンブリはさらに、複数の弁(148)、典型的には4つの弁(148a、148b、148c、148d)を備え、これらの弁は、2つのポンプ(144、146)、チューブおよびYコネクタに接続されて、呼気ポンプおよび吸気ポンプを通過する呼吸可能な液体(BL)を推進させて、この呼吸可能な液体を肺へと案内することが可能になる。
【0050】
本発明の好適な実施形態に係る換気装置の機能は、吸気時の図4および呼気時の図5に概略的に示されている。
(158):肺(VL:肺内のパーフルオロカーボン量;TL:肺温度)
(144):呼気ポンプ
(146):吸気ポンプ
(148a~148d):ピンチ弁
(120):酸素供給器(Vres酸素供給器内のパーフルオロカーボン量、Tres酸素供給器内のパーフルオロカーボン温度)
(110):リザーバ(Vresリザーバ内のパーフルオロカーボン量、Tresリザーバ内のパーフルオロカーボン温度)
(300):Yコネクタ
(170): 熱交換器
【0051】
換気装置(100)は、Yコネクタ(300)を介して患者に接続される。4つのピンチ弁(148a、148b、148c、148d)は、液体フロー(BL)を肺(158)へと案内するようにプログラムされる。吸気位相の間、弁(148b)、(148d)は開放され、弁(148a)、(148c)は閉鎖される。吸気ポンプ(146)は、気管内チューブ(150)を通して呼吸PFC(BL)を肺(158)へと導入する。したがって、液体は、制御された温度Tresで、リザーバ(110)から肺(158)に直接到達する。同時に、呼気ポンプ(144)は、(以前に肺(158)から吐き出された)液体の一回換気量を酸素供給器(120)に戻す。呼気位相(B)の間、弁(148b)、(148d)は閉鎖され、弁(148a)、(148c)は開放される。呼気ポンプ(144)は、気管内チューブ(150)を通して液体(例えば、PFC)を肺(158)から回収する。同時に、吸気ポンプ(146)には、リザーバ(110)から送出された液体(BL)の一回換気量が充填される。肺(158)から直接到達する液体温度は、患者コネクタ位置(300)で測定される。2014年12月31日に公開された国際公開第2014/205548(A1)号に詳述され、説明されているように、呼気の終了時に、Yコネクタ(300)におけるこの温度測定値は、肺温度TLの間接測定値を計算するのに使用され得る。この特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
酸素供給器(120)の機能は、液体(BL)に酸素を供給し、その温度を制御することである。PFOB中の二酸素(O)および二酸化炭素(CO)の濃度は、ガス混合器(図1、126を参照)によって監視され、制御される。酸素供給器(120)の二重壁内を流れる水は、肺への再点滴前に酸素供給器内部の液体(例えば、PFC)を冷却するために使用される。冷水を含む流体のような冷却流体(CF)は、ポンプ(210)を用いて制御された質量流量で冷却システム(200)から酸素供給器(120)に圧送される。したがって、ポンプ(210)のコマンドuは、酸素供給器(120)における熱交換の冷却力(CP)を制御するのを可能にする。酸素供給器内にCFの流入がない場合、酸素供給器内に冷却力はなく、u=0である。酸素供給器内にCFの最大流入がある場合、最大冷却力が酸素供給器に印加される。
【0053】
液体換気装置は、制御された病室温度(例えば、約20℃)で呼吸可能な液体(例えば、PFC)を使用し、液体(BL)からの熱抽出が最初の2分間は必要でないような液体の全体量で、液体換気を開始するように設計される。液体の最初の点滴および液体換気の開始の間は、冷却力制御の必要性はない。制御問題の観点から、ポンプシステムの入力変数uは、冷却力を直接操作するものと仮定される。u=-P(W)。出力変数は、肺温度TLである。
【0054】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、平均値が、記載された値のプラスマイナス10%の範囲内で変化し得ることを示す。
【0055】
図1に示されているように、換気装置(100)はさらに、呼吸回路に動作可能に接続され、呼吸可能な液体の呼吸フローの圧力を測定するように構成された圧力センサ(160)を備える。例えば、圧力センサは、患者の口の圧力を測定することができる。例えば、圧力センサは、温度センサと一緒に、Yコネクタ(300)の内部に配置され得る。
【0056】
例えば、図17は、本発明の好適な実施形態に係るYコネクタの詳細な斜視図である。Yコネクタ(300)は、リザーバ(110)および/または酸素供給器(120)から呼吸可能な液体(BL)(例えば、PFC)を受け取るための吸気液体ポート(310)、BLを酸素供給器(120)に戻すための呼気液体ポート(320)、気管内チューブETT(150)の接続のための気管内チューブポート(330)(ETTポート)、BL温度センサ(340)、および液体ポート(310)、(320)をETTポート(330)に接続することによってユーザがTLVを選択するのを可能にする回転弁のような弁(350)を備える。回転弁(350)は、回転弁(350)の状態を測定するために、回転センサ(360)に機械的に接続される。ETTポート(330)は、ETTポート内のフローの頭頂圧力Pを測定するための第1の頭頂圧力センサ(370)を備える。頭頂圧力の第2の測定値は、第1の頭頂圧力センサ(370)の前に位置する第2の圧力センサ(372)によって得られる。温度センサ(340)は、呼気回路内に位置する接続ポート(380a)、吸気回路内に位置する接続ポート(図17に示されているような380b)、または吸気回路および呼気回路の両方に接続された接続ポート(380c)の異なる接続ポートを介してYコネクタに接続される。BL温度センサ(340)および頭頂圧力センサ370、372)は、換気装置制御ユニットVCU(180)に動作可能に接続される。
【0057】
図3および図6Bに示されているように、換気装置は、肺から送出される呼吸可能な液体の呼気フローを制御しながら、呼吸可能な液体を酸素供給器と哺乳動物の肺との間で制御可能に交換するために、圧力センサ(160)およびポンプアセンブリ(140)の異なる要素に動作可能に接続された制御ユニット(180)をさらに備える。制御ユニット(180)は、測定された圧力(例えば、哺乳動物または患者の口で)から計算された圧力Pをリアルタイムで生じさせるためのプロセッサ(182)を含む。圧力Pが哺乳動物の気管の虚脱を示す負の閾値に達すると、プロセッサ(182)は、哺乳動物の肺内で目標呼気終末呼吸可能な液体容量またはEEBLVを維持するために、所与の呼気期間の間、呼吸可能な液体を肺から送出しながら、因子Rに従って呼吸可能な液体の呼気フローをリアルタイムで減少させることができる。例えば、圧力Pの負の閾値は、約-50cmHO以下であり、ポンプアセンブリが呼吸可能な液体を肺から送出する所与の呼気期間は、呼吸可能な液体の目標一回呼気量の少なくとも80%を除去することを可能にする。好ましくは、EEBLVは、2~8bpm(1分当たりの呼吸数)、好ましくは4~6bpmの呼吸数、および4~10mL/Kgの呼吸可能な液体の一回換気量に対して、10~20ml/Kgである。さらなる詳細は、本明細書の実施例の中で示されている。
【0058】
好適な実施形態によれば、制御ユニット(180)は、プロセッサ(182)、データを入力し、測定値、トレースおよび結果を表示するためのグラフィック・ユーザ・インターフェースすなわちGUI(184)、およびリアルタイムでの換気装置制御ユニットすなわちVCU(186)を備えるコンピュータである。換気装置のポンプ、弁およびセンサは、プロセッサに動作可能に接続される。
【0059】
任意選択的に、図6Aに示されているような換気装置のリザーバ(110)は、ポンプアセンブリに流体接続され、好ましくは、重力を利用するために哺乳動物または患者より下方に配置される。換気手順の間に哺乳動物またはヒトが横たわるテーブルまたは表面を参照することができる。次いで、制御ユニット(180)は、圧力Pが約-130cmHO未満または約+130cmHOを超える臨界圧力に達したときに、呼吸回路のポンピングをリアルタイムで開放するようにさらに構成され得る。回路が開放されると、呼吸可能な液体は、重力によって肺からリザーバ(110)に向かって排出され得る。任意選択的に、換気装置は、臨界圧力が制御ユニットのプロセッサによって計算されたときにアラームをトリガするために制御ユニットに動作可能に接続されたアラームユニット(190)をさらに備え得る。
【0060】
図1または図6Bに示されているように、換気装置(100)はさらに、リザーバへと推進されてポンプアセンブリおよび哺乳動物の肺を通過する前に酸素供給器を通過する呼吸可能な液体の温度を下げ、および/または維持するために、酸素供給器(120)に動作可能に接続された冷却ユニット(200)を備え得る。液体換気の技術分野で周知の任意の種類の冷却ユニットが換気装置(100)と共に使用され得る。図6Bに示されているように、冷却ユニット(200)は、容器内への注水を可能にするための上部アクセスドア212を有する容器またはバス210であり得る。冷却ユニットは、本明細書内でより詳細に後述されているように、好ましくは、換気装置の制御ユニットに動作可能に接続されたバス制御システム214によって制御され得る。
【0061】
TLVのような液体換気の技術分野で周知の任意の種類の呼吸可能な液体が換気装置(100)と共に使用され得る。好ましくは、液体(BL)は、パーフルオロカーボンすなわちPFCである。
【0062】
図21に示されているように、本発明は、哺乳動物の液体換気の方法(1000)であって、
(a)呼吸可能な液体の呼吸フローの圧力を測定しながら、呼吸フローに従って哺乳動物の肺の内外に呼吸可能な液体を圧送するステップ(1100)と、
(b)測定された呼気圧力から計算された圧力Pをリアルタイムで生じさせるステップ(1200)と、
(c)圧力Pが哺乳動物の気管の虚脱を示す負の閾値に達すると(1300)、哺乳動物の肺内で目標呼気終末呼吸可能な液体容量すなわちEEBLVを維持するために、所与の呼気期間の間、呼吸可能な液体を肺から送出しながら、因子Rに従って呼吸可能な液体の呼気フローをリアルタイムで減少させるステップ(1400)と
を含む方法を対象とする。
【0063】
好適な実施形態によれば、EEBLVは、2~8rpmの呼吸数および4~10mL/Kgの呼吸可能な液体の一回換気量に対して、10~20ml/Kgである。
【0064】
図22に示されている好適な実施形態によれば、圧力Pの負の閾値は、約-50cmHO以下であり(1350)、呼吸可能な液体が肺から送出される所与の呼気期間は、呼吸可能な液体の一回換気量の少なくとも80%を除去することを可能にする。
【0065】
図22に示されている好適な実施形態によれば、方法(1000)は、圧力Pが約-130cmHO未満(1360)、または約+130cmHOを超える(1370))臨界値である場合、哺乳動物の肺から呼吸可能な液体を排出するステップ(1500)をさらに含む。その場合、該方法は、臨界値に達したときにアラームをトリガするステップをさらに含み得る。
【0066】
好適な実施形態によれば、方法(1000)は、呼吸可能な液体を哺乳動物の肺の内外に圧送しながら、呼吸可能な液体の温度を下げ、および/または維持するステップをさらに含む。好ましくは、呼吸可能な液体の温度を下げ、および/または維持するステップは、
冷却流体を生成すること、および
呼吸可能な液体を哺乳動物の肺に再点滴する前に呼吸可能な液体を冷却するために、冷却流体を呼吸可能な液体と熱交換すること
を含む。
【0067】
好適な実施形態によれば、方法(1000)はさらに、
哺乳動物の肺から送出された呼吸可能な液体の呼気温度を測定するステップと、
肺の中へ送り込まれる呼吸可能な液体の温度を調節するために、測定された呼気温度に応じて冷却流体の温度を調節するステップと
を含む。
【0068】
好適な実施形態によれば、冷却流体(例えば、PFC)の温度を調節するステップは、冷却流体が呼吸可能な液体と熱交換されるときに、第1の予め設定された期間の間、冷却流体のフローを維持すること、または第2の予め設定された期間の間、前記フローを停止させることにある。
【0069】
図2は、本発明の好適な実施形態に係る、冷却ユニットを備えた換気装置の以下の異なる構成要素を概略的に示している。
(1)GUI: データを入力し、測定値、トレースおよび結果を表示するためのグラフィック・ユーザ・インターフェース
(2)VCU:リアルタイムでの換気装置制御ユニット
(3)温度センサ、VCU用の2つの圧力センサ、および回転弁用の位置センサを有する患者に対するYコネクタ、任意選択的に、映像切替器(VSU)およびインジケータライト用の大きなダイナミクスを有する温度センサおよび圧力センサ
(4~7)4つのバイナリ弁、好ましくはバイナリ常開型で電解弁であって、状態フィードバック(オン/オフ)を有するバイナリ弁
(8)呼気:ピストンヘッド位置の絶対測定による動力化
(9)吸気:ピストンヘッド位置の絶対測定による動力化
(10)シリンダおよびポンプヘッド、弁と同じ高さでの吸気
(11)シリンダおよびポンプヘッド、弁と同じレベルでの呼気
(12)(13)内のPFCの容量を測定するためのスケール
(13)(3)より下方に配置されたバッファリザーバ
(14)(15)内のPFCの容量を測定するためのスケール
(15)温度センサを備えた酸素供給器(16)PFC排出を保持することができる粒子フィルタ
(17)重力フィラーまたはバッグ
(18)手動ガス混合器
(19)温度センサを備えた熱伝導流体を循環させるための循環ポンプ
(20)熱交換器
【0070】
冷却機器
上述したように、本発明の別の態様は、哺乳動物(例えば、ヒト)の液体換気中の低体温の安全な誘導のための機器を対象とする。
【0071】
図7に示されているように、機器(200)は、冷却流体が循環するときに冷却温度の冷却流体(CF)を生成するように構成された冷却ユニット(210)を備える。冷却流体は、好ましくは-10℃~+20℃、およびこの範囲の全ての値の温度の水、好ましくは冷水を含み得る。冷却ユニットは、冷却流体を受け取る(216)ために液体換気装置(100)の酸素供給器(120)と流体連通している(216)。該機器はさらに、酸素供給器(120)および冷却ユニット(210)と流体連通する制御可能なポンプユニット(230)を備える。制御可能なポンプユニット(230)は、冷却流体(CF)を冷却ユニットから酸素供給器モジュール(120)に戻すように構成され、酸素供給器モジュールにおいて、冷却流体(CF)が酸素供給器モジュール内を循環する液体換気装置(100)の呼吸可能な液体(BL)と熱交換されて(240)、冷却された含酸素呼吸可能な液体を哺乳動物の肺へ再点滴する前に酸素供給器によって酸素供給された呼吸可能な液体の吸気温度を制御する。呼吸可能な液体は、典型的には、パーフルオロカーボンすなわちPFCを含む。液体換気装置(100)は、哺乳動物の肺から送出された呼吸可能な液体の呼気温度をリアルタイムで測定するための温度センサ(260)を備え、温度センサは、制御可能なポンプユニット(230)に動作可能に接続されて、冷却流体のフローを修正し、ひいては、測定された呼気温度に応じて呼吸可能な液体の吸気温度を調節する。
【0072】
図8(A)は、ポンプユニット(230)の制御のアルゴリズムの一例であり、ポンプユニットの制御は、第1の予め設定された期間(例えば、20秒)の間、ポンプユニットをオンにし、第2の予め設定された期間(30秒)の間、ポンプユニットをオフにして、冷却ユニットおよび酸素供給器を通過する冷却液のフローを制御することにある。図8(B)は、制御ユニットが約31℃の呼気フローの目標温度に到達させて維持するようにポンプアセンブリを制御する方法の一例である。
【0073】
代替的に、ポンプユニットは、酸素供給器における熱交換の冷却力を制御するために、制御された質量流量で冷却流体を圧送するように構成され得る。次に、ポンプは、冷却流体の質量流量を制御し、その結果、酸素供給器内の呼吸可能な液体の温度を変化させるように構成された、液体換気装置のプロセッサモジュールに動作可能に接続される。
【0074】
哺乳動物(例えば、ヒト)における低体温の誘導方法が図23に示されている。方法(2000)は、
(a)冷却ユニットを用いて冷却温度の冷却流体を生成するステップ(2100)と、
(b)液体換気装置の酸素供給器内に冷却流体を制御可能に循環させて、酸素供給器において、冷却流体を液体換気装置の呼吸可能な液体(例えば、PFC)と熱交換して、呼吸可能な液体を哺乳動物の肺へ再点滴する前に酸素供給器によって酸素供給された呼吸可能な液体の吸気温度を制御するステップと(2200)と、
(c)哺乳動物の肺から送出された呼吸可能な液体の呼気温度をリアルタイムで測定するステップ(2300)と、
(d)冷却ユニットおよび酸素供給器内を循環する冷却流体のフローを修正することによって、ステップ(c)(2300)において測定された呼気温度に応じて呼吸可能な液体の吸気温度をリアルタイムで調節するステップ(2400)と
を含む。
【0075】
好ましくは、冷却ユニットおよび酸素供給器内を循環する冷却流体のフローを修正するステップ(2400)は、図8に示されているように、第1の予め設定された期間(例えば、20秒)の間、冷却流体を循環させ、第2の予め設定された期間(例えば、30秒)の間、冷却液の循環を停止させることにある。
【0076】
代替的に、該方法は、酸素供給器内の熱交換の冷却力を制御するために、酸素供給器内へ循環する冷却液の質量流量を変化させるステップをさらに含み得る。好ましくは、方法(2000)は、次に、冷却ユニット内を循環する冷却液の質量流量を変化させることによって酸素供給器内を循環する呼吸可能な液体の温度を変化させるステップをさらに含む。
【実施例
【0077】
肺充填の異なる条件での完全液体換気の急性効果
予備実験では、4匹の麻酔された子ブタにおける胸部コンピュータ断層撮影(CTスキャン)によって、肺容量を評価した。呼気終末肺気量は、PEEP=0cmHO、5cmHOで、それぞれ13.8±1.8ml/kg、37.7±8.8ml/kgを達成した。これは、この範囲の中央の生理学的FRC(およそ乳児の25~30ml/kg)を示す以前の所見と一致する。したがって、本発明者らは、これらの「極端な」生理学的容量に近い、すなわち、それぞれ15ml/kgまたは30ml/kgのいずれかの推定FRC未満または推定FRCに近い、呼気終末PFC容量(EEBLV)でTLVの効果を評価することを決めた。図1に示されているような小動物用の専用装置を使用した。TLVは、パーフルオロオクチルブロミド(PFOB)TLVで誘導された。図9に示されているように、2つの選択されたEEBLVレベルの評価は、8ml/kgまたは16ml/kgのいずれかで設定された2つの異なるレベルの一回換気量(TV)と組み合わされた(TV-EV15群、TV16-EV15群、TV-EV30群、TV16-EV30群)。全ての群において、動物は、30分間のTLV(各群nにおいてn=5)に供され、呼吸速度は、全ての群において同様の毎分換気量を維持するように固定された(すなわち、TV=8ml/kgまたは16ml/kgの群では、それぞれ9サイクル対4.5サイクル)。追加の群のシャム動物を、TVL(n=5)を用いない従来のガス換気に供した。
【0078】
以下の表1Aおよび表1Bに示されているように、15ml/kgおよび30ml/kgの目標EEBLVは、対応する群のTLV全体を通して維持された。驚くべきことに、呼気終末静圧は、30ml/kgのEEBLVが充填された群における+6~8cmHOと比較して、15ml/kgで設定されたEEBLVを有する2つの群においては負であった。この特有の所見は、TLV中にピストンポンプによって推進される能動的な呼気で説明され得る。TV-EV15群およびTV-EV30群では、これはわずかな凹みをもたらし、実際のEEBLVが依然としてFRC未満であることを示唆し得る。さらに吸気終末肺胞休止圧力は、異なる群において、TVおよびEEBLVと共に増加し、TV-EV30において最大値約20cmHOを達成した。血液酸素化およびpHは、シャム動物に対する異なる群において、TLV中に大きく修正されなかった。
【0079】
表1A:呼気終末圧(cmHO)および液体の容量(ml/kg)
【0080】
表1B:血液分圧(mmHg)
【0081】
完全液体換気後の動物回復
図9に示されているように30分間のTLVのエピソード後、子ブタを、5時間の従来の機械的換気に供し、その後、子ブタを換気から離して、覚醒させた。酸素富化は、半密閉ケージを使用して24時間の間、許可された。自発呼吸に戻った後、ガス交換および血行動態パラメータは、シャムに対して、以前にTLVに供された動物において、大きく修正されなかった。他の群と比較して、TV16-EV30において、pOの有意でない減少が観察された。さらに、まさにこの群の2匹の動物は、覚醒後、深刻な急性呼吸不全を急速に示した。それらの動物は安楽死させられ、グロス死後分析は、肉眼的肺鬱血および肺出血を示した。
【0082】
TLV後数日は、TV-EV15群、TV16-EV15群、TV-EV30群からの動物は、シャムと比較して呼吸機能障害の徴候を示さなかった。これらの動物は、急性呼吸苦の徴候の無い状態で3日間、追跡された。一方、TV16-EV30群からの3匹の生存動物において、呼吸苦および呼吸困難が観察された。呼吸速度は、24時間後に、シャム動物(p<0.05)における41±8呼吸/分と比較して、145±9呼吸/分を達成した。TV16-EV30群で24時間後に2匹の動物、およびTLV後の48時間後に最後の1匹をそれぞれ、持続的多呼吸のために安楽死させた。
【0083】
肺の組織学的検査は、他の全ての群と比較して、TV16-EV30群において、深刻な肺変化を確認した。実際に、本発明者らは、シャム、TV-EV15群、TV16-EV15群、TV-EV30群において正常外見を観察した。本発明者らは、いくつかの領域において、感染の非特異的な病巣のみを観察した。TV16-EV30では、本発明者らは、深刻な肺胞炎、肺胞出血、および硝子膜を含む、びまん性肺胞障害の典型的な変化を観察した。いくつかの領域は、TV16-EV30群において過拡張に対応する典型的な「バルーン状」パターンを有する肺胞または気管支の拡張を示した。
【0084】
大型動物における自動化TLVのための技術的アップスケール
以前の実験は、TLVの肺保存的アプローチが、子ブタの生理学的状態および病態生理学的状態の両方において完全な利益を有する安全なTLVを提供し得ることを示した。大型動物では、より重い体重、より大きい胸部サイズおよびより高い肺の成熟度から、これらの所見は推定され得ないと言える。したがって、液体換気装置は、アップスケールされ、技術は、100kgまでの大型動物用に設計されている。全ての構成要素を、医療用の特定の材料を使用して適合させた(図5図6A、および図6B)。また、TLVプロセスは自動化されている。肺へ送り込まれる液体容量を推定し、重要なパラメータであることが実証されているので所与の目標のEEBLVを維持するための特定のアルゴリズムが開発されている。このことにより、呼気TVは、治験責任医師によって設定されたEEBLVを正確に維持するために、換気装置によって連続的かつ自動的に修正された(図10)。同様に、本発明者らの主な目標が、ここでは、急速な低体温の誘導のためにTLVを使用することであるので、PFC初期温度および再加温速度が計算された。
【0085】
完全(または一回)液体換気(TLV)は、呼吸可能な液体(BL)の一回換気量が完全に充填された肺を換気するために、専用の機械システムを必要とする。液体換気装置は、呼気位相の終了時の肺内の呼吸可能な液体の量(EEBLV)が臨床医によって指定された目標EEBLVに確実に近い量になるように、肺に対してBLの一回換気量Vを導入し、回収する。EEBLVの測定値は、患者の体重、呼気終末圧または換気装置内の液体容量を監視することによって得られる。この目的のために、酸素供給器(120)の重量を測定するために酸素供給器の下に配置されたスケール(114)(図6Aを参照)を使用して、酸素供給器内のBLの容量が測定され得る。別の方法は、圧力センサ、または酸素供給器内のBLのレベルを測定するための液体フロートセンサなどを酸素供給器に設けて、換気装置内のBLの容量を計算することである。指数kが付けられた各呼吸サイクルについて、呼気終末呼吸可能な液体容量、EEBLV[k]は、酸素供給器内に位置するBLの測定値(Voxygenator)、BLの一次容量(Vprim)(TLV前の液体換気装置内のBLの初期容量)の知識、および2つのポンプ内のBLの容量を使用して、換気装置制御ユニット(VCU)によって計算される。換気装置(100)がリザーバ(110)を備える場合、第2のスケール(112)が、同じ目的のために使用され得るリザーバの下に配置され得る。
【0086】
制御ユニットモジュールは、測定されたEEBLV(EEBLV[k])および目標EEBLV(EEBLVref[k])に従って、EEBLV補正値、ΔV[k]を計算する。
ΔV[k]=(EEBLVref[k]-EEBLV[k])
ここで、kはサイクルの指数である。EEBLVの要求補正値、ΔV[k]は、1サイクル中に(負の場合)肺から回収する、または(正の場合)肺に追加するBLの容量である。目標吸気量および目標呼気量は、目標換気量V[k]および要求補正値ΔV[k]を用いて計算される。
EEBLVを減少させる必要がある場合(ΔV[k]<0)、次に吸入される液体は、V[k+1]=V[k]-|ΔV[k]|となる。EEBLVを増加させる必要がある場合(ΔV[k]>0)、次に吐き出される液体は、V[k+1]=V[k]-|ΔV[k]|となる。本発明者らのTLVプロトタイプの明確な利点は、独立したポンプのシステムを使用してEEBLVを制御する能力、およびリザーバ内のBL容量の測定値および2つのポンプ内のBLの測定値を使用して、EEBLVを推定する能力である。
【0087】
上記によれば、図18は、17分(1050秒)の時点からの14.5分間のブタ(80kg)の換気中のEEBLV(mL)、吸気量Vinspi(mL)、および呼気量Vexpi(mL)の測定値を例として示している。
目標一回換気量:VT=6mL/Kg(80Kgに対して、VT=480mL)
目標呼吸数:F=6bpm
EEBLVは、リザーバ内の液体の量から推定される。ユーザによるEEBLVrefの修正:ユーザは、10mL/Kgから15mL/Kgまで(800mLから1200mLまで)EEBLVを増加させるためにEEBLVrefの値を修正し、その後、ユーザは、EEBLVrefを15mL/Kgから10mL/Kgに減少させる。吸入される液体容量および吐き出される液体容量は、目標EEBLVに達するように調節される(目標一回換気量=480mL未満)。
【0088】
図15および図16は、気管の虚脱が生じたときの呼吸サイクルデータを示している。特に、図15は、1450秒の時点からの60秒間のアップスケールされた換気装置(図5および図6)を使用した、73Kgのブタでの実験を示している。圧力の破線(図15A)は、-250cmHOでの虚脱の限界に対応し、呼吸数の破線(図15C)は、6bpmの目標呼吸数を示し、EEBLVの破線(図15D)は、800mLの目標EELVを示している。約15秒の前に、目標に達する。EEBLV=800mL/Kg(10.9mL/Kg)(図15D)、V=585mL(8mL/Kg)(図15Cのフロー)、F=6bpm(図15C) 、呼気時間は6秒である。15秒の時点では、圧力が-250cmHOの閾値に達し、呼気フローが-120mL/秒から-60mL/秒までリアルタイムで自動的に低減されて気道虚脱が止まる。残りの呼気時間は、延長された呼気時間が約11秒になるように延長される。したがって、呼吸数は、延長された呼気時間のために、6bpmから4bpmに(25秒の時点で計算された)、時間通りに低下する。EEBLVは、(800mLではなく)785mLまで時間通りに低下する。この「アクシデント」に関係なく、EEBLVは、800mLの目標値辺りに調整された状態で維持される。25秒以降、図15Aでは虚脱はもはや見られない。
【0089】
ここで図16を参照すると、気道虚脱現象が発生している間、圧力降下は、Yコネクタの位置で測定され、気道虚脱は、圧力が気道虚脱圧力限界に達すると、換気装置によって検出される。気道虚脱が換気装置によって検出されると、呼気フローは自動的に低減されて気道虚脱が止まり、ひいてはて、完全気道虚脱が防止される。フロー減少は、ユーザによって設定された気道虚脱制御の減少率RatioCCに比例する。呼気の指数的成長位相の間に気道虚脱が生じている場合、残りの呼気時間は、RatioCCの逆数に等しい比だけ延長される。次に、呼気フロープロファイルは、一回換気量の呼気を完了するための立ち下がりプロファイルとして再計算される。指数的成長位相の前に気道虚脱が生じている場合、呼気時間は修正されず、呼気フロープロファイルは、RatioCCに等しい比だけ減少する。さらに、気道虚脱が検出されると、次の呼気での気道虚脱現象を防止するために換気パラメータを適合させる必要があることをオペレータに警告するアラームが作動される。
【0090】
図19および図20は、アップスケールされた換気装置(図5および図6)を使用した、ブタ(60~80kg)における1時間の液体換気中に測定された信号、および液体換気の138秒(すなわち2.3分)の時点からの1分間(図19B)および液体換気の2433秒(すなわち40.55分)の時点からの1分間の同じ信号を示す。ポンプシステムを用いてYコネクタにおいて推定されたフロー(mL/秒): 正の値:吸気フロー、負の値:呼気フロー(図19Aおよび図20A)。圧力cmHO(図19Bおよび図20B):細線:Yコネクタにおいて測定された圧力、破線:異なる値で設定された限界虚脱。瞬時呼吸数F(1分当たりの呼吸すなわちbpm)(図19Cおよび図20C):細線:液体換気装置によって実現されたF、破線: ユーザによって設定された望ましい呼吸数F。
【0091】
図19Bは、液体換気の2.3分の時点から1分間の同じ信号を示す。圧力の破線は、-250cmHOに設定された虚脱限界に対応し、破線は、所望の呼吸数が6bpmに設定されていることを示している。0秒~24秒:通常の液体換気3サイクルは虚脱なし。測定された呼吸数(F)は、6bpm(10秒のサイクル)で設定された所望の呼吸数に等しい。呼気プロファイルは、Yコネクタにおいて測定された圧力が-250cmHO未満であるので、虚脱の回避を可能にする。呼気時間は7秒である。吸気時間は3秒である。24秒~60秒:3回の虚脱が検出されている。これらの瞬間において、Yコネクタにおいて測定された圧力は、-250cmHO(オペレータによって設定された値)未満である。24秒の時点では、呼気フローは、-140mL/秒から-70mL/秒まで自動的に減少し、呼気時間は11秒に増加される。そのため、推定瞬時呼吸数は、6bpmから4bpmに(34秒の時点で)減少する。
【0092】
図20は、液体換気の40.55分の時点から1分間測定された信号を示している。0秒~30秒:虚脱が検出されている。これらの瞬間において、Yコネクタにおいて測定された圧力は、-250cmHO(オペレータによって設定された値)未満である。4.2秒の時点では、呼気フローは、-120mL/秒から-60mL/秒まで自動的に減少し、呼気時間は11秒に増加される。そのため、推定瞬時呼吸数は、目標6bpmではなく4bpmである。30秒以降:Yコネクタで測定された圧力が-250cmHO未満であるので、虚脱の無い正常な液体換気。呼気時間は7秒である。吸気時間は3秒である。したがって、測定された呼吸数(F)は、6bpm(10秒のサイクル)で設定された所望の呼吸数に等しい。
【0093】
同じアプローチを使用した完全液体換気は、大型ブタにおける超高速冷却および安全性を提供し得る。
大型動物におけるTLV用の関連するセッティングは、予備実験によって決定されている。図11に示されているように、体重67±3kgの4匹のブタが、TVおよびEEBLVが8ml/kgおよび10ml/kgでそれぞれ設定された30分間のTLVに供された。FRC未満のEEBLVを維持することが可能であった。31~33℃の目標温度範囲は、全身において20分未満で達成された(図12を参照)。ガス交換は、基準換気と比較して、30分間のTLVの後、正常であった。30分間のTLVの後、動物は従来のガス換気を再開し、ゆっくりと再加温された。動物は、4~6時間以内に換気から離され、その後、酸素補給なしに動物の部屋に戻された。全ての動物は、呼吸苦の徴候なしに優れた回復を示した。肺ガス交換は、動脈血pHおよびOおよびCOの分圧で示されるように、従来の機械的換気と比較して、TLV中に修正されなかった(図13)。さらに、血中酸素飽和度は、TLV後の初日から経過観察の終わりまで、全ての動物において、97~98%を上回った状態で維持され、処置の長期的な肺耐容性を示した。10日後、動物を肺採取のために安楽死させた。図14に示されているように、移植肺のCTスキャン撮像は、肺実質全体がびまん性に低吸収を誘発しているので、PFC残留の肉眼的病巣を示さなかった。
【0094】
FRC未満のPFCでの不完全な肺充填およびその後の一回液体換気による、TLVの新規のアプローチを開示する。これは、本来、充填位相以後は肺がPFCで完全に満たされるべきであり、完全に脱気されるべきであるという以前の考えと比較して、根本的なパラダイムシフトを表している。TLVのこの肺保存的アプローチは、FRC範囲未満のEEBLVを継続的に制御する、大型動物用のアップスケールされた装置を用いてさらに自動化された。部分液体換気は、ヒトで試験されたが、最大規模の試みが、この処置の実際の安全性に関する疑念を高めた。これらの否定的な結果は、経験的に十分に解明されず、その正確な誘導方法にもかかわらず、液体換気のあらゆる方法が、それ自体外傷リスクを高めると誇張されることが多かった。したがって、TLV中に、肺機能を正確に評価し、自発呼吸の再開後のその遅延結果を評価することが重要であった。ここで、予想FRC未満のEEBLVを制御するときに、TLVが安全に誘導され得ることを示す。この手順は、子ブタおよび大型ブタにおける超高速冷却を依然として提供でき、小動物における以前の結果を強化した。これは、肺洗浄、薬剤送達、または肺撮像のための液体換気の他の用途に加えて、心停止患者における目標温度管理のための有望な展望を開く。
【0095】
ここまで、TLVに関するほとんどの報告は、平均して20~30ml/kgおよび15~30ml/kgのEEBLVおよびTVを用いて、小児呼吸器疾患の動物モデルにおいて行われたものである。主な理論的根拠は、TLVが気液界面を完全に消滅させ、肺リクルートメントを最適化することができるということであった。しかしながら、長期の肺回復が自発呼吸の再開後に評価されたことは稀であり、このことは、結果の解釈を制限することが多いことが明らかであった。ここで、このようなアプローチは実際には有害であることがあり、気液界面が初期位相において完全に消滅していない場合でも、低EEBLVの不完全な充填が好ましいことが示されている。例えば、本発明者らはさらに、圧力-容量曲線分析を行っており、これは、変曲点が約40ml/kgの液体容量および15cmHOの肺胞圧で起こることを示しており、この点を超えると、過膨張および肺胞過拡張が起こり得ることを示唆している。これはまた、急性呼吸窮迫症候群を有する患者の部分液体換気の失敗についての考えられる説明を提示することができる。実際に、上述のピボタル試験では、PEEP=13cmHOおよびTV=8~10ml/kgでの従来のガス換気中に、10ml/kgまたは20ml/kgのパーフルブロンの静的気管内投与を試験した。結果として、本研究で観察された肺胞圧をはるかに上回る、平均30cmHOの高い吸気終末肺胞圧となった。これは、部分液体換気の推定される利点を完全に損なう非常に高い肺容量につながる可能性がある。全体として、本発明者らの所見は、TLVの最良の耐容性を示す条件が、FRC未満の肺充填に関連しており、これは、上部肺領域のある特定のレベルのディリクルートメント肺胞の原因となり得ることを示唆している。この肺胞リザーブは、液体換気中の液体の一回換気量の後続の安全な追加を可能にし得る。したがって、呼気時の液体分布の特定のレベルの不均一性は、逆説的に言えば、より保存的であり得る。
【0096】
さらに、重要な所見は、肺保存的TLVが子ブタおよび成体ブタの両方において非常に速い冷却を発揮するということである。これは、80kgまでの体重の動物におけるこの所見を確認するための最初の研究であり、TLVの体重独立冷却速度をさらに強調するものである。このような冷却は、成体ウサギにおいて心停止後の強い神経学的利益をもたらすことが示された。さらなる実験では、本発明者らはさらに、低酸素虚血性脳症後の心停止の新生児モデルにおいても、利益が観察され得ることを示した。このことは、虚血性傷害後の低体温の非常に狭い治療域の仮説を支持する。治療的低体温によって治療されるヒトにおいて、目標温度は通常、少なくとも3~4時間の冷却後に達成されるが、TLVは、30分未満で全身冷却をもたらす。いくつかの技術は、急速な局所冷却をもたらすことが示されたが、TLVは、身体全体を急速に冷却することができ、ヘルメットまたは静脈洞内冷却による脳のように単一の身体区画を冷却するのではない。
【0097】
最後に、技術的課題が克服された。最初に、80kgまでの大型動物においてTLVを実行することができる自動化液体換気装置が開発され、使用された。本発明者の知る限りでは、これは、自発呼吸の再開後の大型動物におけるTLVの肺予後の最初の実証でもある。これにより、TLVは、ヒトにおけるさらなる応用のための現実的な戦略となる。
【0098】
結論として、FRC未満のパーフルオロカーボンの肺容量の正確かつ信頼性のある制御を有するTLVは、不完全な初期脱気にもかかわらず、新規かつ安全な方法でTLVの最大の可能性を提供し得ることが実証された。これは、部分的に充填された肺の「一回」液体換気によるパラダイムシフトを構成し、既知のTLVアプローチとは大きく異なり、安全な臨床解釈のための有望な展望を開くものである。
【0099】
当業者であれば、方法、換気装置および低体温を誘導するための機器の説明は例示的なものに過ぎず、決して限定することを意図していないことを理解するであろう。他の実施形態は、本開示の利益を有する当業者であれば容易に思い付くであろう。
【0100】
さらに、開示されている方法、換気装置および低体温を誘導するための機器は、現在の液体換気技術の成熟度の欠如に関連する既存のニーズおよび問題に対する有益な解決策を提供するようにカスタマイズされ得る。
【0101】
明確にするために、方法、換気装置、および低体温を誘導するための機器の実施態様の所定の特徴の全てが示され、記載されているわけではない。当然のことながら、方法、換気装置、および低体温を誘導するための機器の任意のこのような実際の実施態様の開発において、アプリケーション関連、システム関連およびビジネス関連の制約の順守のような開発者の特定の目標を達成するために、多くの実施態様に固有の決定が行われなければならず、これらの特定の目標は、実施態様ごとに、また開発者ごとに異なることは理解されるであろう。さらに、開発努力は複雑で時間がかかるものかもしれないが、本開示の利益を有する人工換気装置の分野の当業者にとっては日常的な業務であることが理解されるであろう。
【0102】
様々なネットワークリンクが、本発明の文脈において暗黙的または明示的に使用され得る。リンクは、無線リンクとして描写され得るが、同軸ケーブル、光ファイバ、カテゴリ5ケーブルなどを使用して有線リンクとして具現化されてもよい。有線または無線アクセスポイント(図示せず)が、間のリンク上に存在し得る。同様に、任意の数のルータ(図示せず)が存在し、リンクの一部が、インターネットを通過し得る。
【0103】
本発明は、異なるモジュールがそれらの間で情報を交換する方法によって影響を受けない。例えば、制御ユニットのメモリモジュールおよびプロセッサモジュールは、並列バスによって接続され得るが、本発明の教示に影響を与えることなく、直列接続で接続されてもよく、または中間モジュール(図示せず)を備えてもよい。
【0104】
方法は、一般に、所望の結果をもたらす、首尾一貫した一連のステップであると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的操作を必要とする。通常、必ずしもそうではないが、これらの量は、記憶され、転送され、組み合わされ、比較され、および他の方法で操作され得る電気信号または磁気信号/電磁信号の形をとる。主に、一般的な使用の理由から、これらの信号をビット、値、パラメータ、アイテム、要素、オブジェクト、シンボル、文字、用語、数字などと称することは、時には便利である。しかしながら、これらの用語および同様の用語の全ては、適切な物理量に関連付けられるべきであり、これらの量に適用される便利な標識にすぎないことに留意されたい。
【0105】
本発明の説明は、例示目的で提示されたものであり、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図したものではない。多くの修正および変形が、当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用例を説明するために、また他の当業者が他の企図された用途に適し得る様々な修正を有する様々な実施形態を実施するために本発明を理解することができるように選択されたものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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