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特許7386847低粘度材料を造粒するための装置および方法
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  • 特許-低粘度材料を造粒するための装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】低粘度材料を造粒するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 9/10 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
B29B9/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021510433
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019048344
(87)【国際公開番号】W WO2020046936
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】62/724,835
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バウィスカル、サントッシュ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ゾグ、ジュニア、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、コアンミン
(72)【発明者】
【氏名】チン、イー
(72)【発明者】
【氏名】シルハブ、ロニー
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-019179(JP,A)
【文献】特開平04-235158(JP,A)
【文献】特開平05-138012(JP,A)
【文献】特開2011-157547(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008636(WO,A1)
【文献】米国特許第03265779(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0272676(US,A1)
【文献】欧州特許第02305372(EP,B1)
【文献】独国特許出願公開第10102334(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第04338212(DE,A1)
【文献】中国実用新案第203437098(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00 - 2/30
B29B 7/00 - 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ポリマー粒子をバッチ式または連続的に形成する装置であって、前記装置が、以下の構成要素、
A)パスチレーションヘッドを備える少なくとも1つのパスチレーションユニットであって、前記ユニットが、ポリマー溶融物から個別の溶融ポリマー粒子を形成するために使用される、パスチレーションユニットと、
B)前記パスチレーションヘッドから前記個別の溶融ポリマー粒子を受けて移送するための移動ベルトと、
C)水が前記移動ベルト上の前記個別の溶融ポリマー粒子と接触して前記固体ポリマー粒子を形成するように、水を前記移動ベルト上に移送する手段と、を備え、
構成要素Cの前記水が、「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比率が≧3.0であるように、前記個別の溶融ポリマー粒子上に噴霧され、
前記個別の溶融ポリマー粒子のベルト滞留時間が、≦50秒であり、
「水噴霧の速度」は、単位時間に噴霧される水の量であり、
「排出速度」は、単位時間にパスチルに転化することができるポリマー溶融物の量である、
装置。
【請求項2】
前記パスチレーションユニットの比容量が、≧12lbs/時/ftであり、
前記比容量は、「排出速度」(bs/時)を前記移動ベルトの冷却面積(ft )で除算することにより計算される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パスチレーションヘッドにおける前記ポリマー溶融物の温度が、80℃~275℃である、請求項1または2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記ポリマー溶融物が、
オレフィン系ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ポリマー溶融物が、前記ポリマー溶融物の重量に基づいて、≧95重量%の前記オレフィン系ポリマーを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記オレフィン系ポリマーが、50cP~20,000cPの溶融粘度(177℃)を有する、請求項4~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記オレフィン系ポリマーが、500g/モル~50,000g/モルの数平均分子量を有する、請求項4~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記オレフィン系ポリマーが、0.860g/cc~0.960g/ccの密度を有する、請求項4~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記オレフィン系ポリマーが、1.8~4.0の分子量分布(MWD)を有する、請求項4~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記オレフィン系ポリマーが、プロピレン系ポリマーである、請求項4~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレン/アルファ-オレフィンインターポリマーである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレン/エチレンインターポリマーである、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記オレフィン系ポリマーが、エチレン系ポリマーである、請求項4~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記エチレン系ポリマーが、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
ポリマー溶融物から固体ポリマー粒子を形成するプロセスであって、前記プロセスが、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置を使用して前記ポリマー溶融物をパスチル化することを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年8月30日に出願された米国特許出願第62/724,835号に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
低粘度ポリマーは溶融強度が低く、その結果、水中ペレット化を介して溶融物から固体粒子に転化することは難しい。低粘度で低溶融強度のポリマーを効率的に固化するための装置およびプロセスが必要である。パスチレーションおよびウォータースライドストランドペレット化などの既存の技術は、設備に大量の空間を必要とし、および/または生産性が低い。
【0003】
水中ペレット化は、効率(冷却速度、空間要件)に優れているが、溶融強度および粘度が低い材料では、ブレードを包み込まずにペレットを切断することが難しくなる。さらに、「ダイの凍結」は、溶融物が過度に冷却される場合に頻繁に発生して、溶融強度を獲得し、ダイの穴を塞ぐ。したがって、低粘度で低溶融強度の材料の水中ペレット化は、困難であり、熱伝達の制御が不十分なため、大規模な設備ではさらにより困難である。
【0004】
パスチレーションは、パラフィンワックスなどの低粘度で低溶融強度の材料に十分適した代替の固化方法である。このプロセスは十分機能するが、生産性(スループット)の観点からは非効率的である。これは主に、形成されたパスチルが、冷水が下から噴霧されるベルトの伝導性冷却を介して冷却されるからである。ペレットが冷水中で直接急冷される水中ペレット化と比較して、熱伝達および冷却速度は、非常に遅い。パスチレーションプロセスの別の欠点は、水中ペレット化と比較して必要な空間が大きいことであり、この技術を既存の重合トレーンに適合させることが難しい。
【0005】
低粘度で低溶融強度の材料を固化するために使用される別のプロセスは、ウォータースライドストランドペレット化である。このプロセスでは、傾斜した水槽上に形成されたストランドが、水流を使用して切断チャンバに搬送される。追加の水噴霧によって乱流が生じ、ストランドの冷却に役立つ。この場合、ストランドが固化(または結晶化)した後に切断が行われる。ウォータースライドストランドペレタイザは、スループットおよび空間の両方の観点からの効率の欠点もあり、このプロセスは、自動化するのがより難しい。さらに、硬化したストランドをカッターで切断することは、材料をその溶融(すなわち液体)形態で切断することと比較してあまり望ましくない。
【0006】
重合および単離プロセスは、US2011/0185631、US2011/0306717、US2009/0121372、US5340509、WO2001047677、US5830982、US5744074、US8203008、EP1397455 A1、DE10122437 A1(要約)、US5510454、US5633018、WO1997025364、WO2015191066、US2790201、US4610615、EP0363975 A1、および2017年7月14日に出願された米国仮特許出願第62/532487号の参考文献にも開示されている。
【0007】
議論したように、設備を収容するための大きな設置面積の必要性を回避しながら、より高いスループットで動作することができ、低粘度で低溶融強度のポリマーを高速で固化するために使用することができる、単離装置およびプロセスが必要である。これらの必要性は、以下の発明によって満たされている。
【発明の概要】
【0008】
固体ポリマー粒子をバッチ式または連続的に形成する装置であって、装置は、以下の構成要素、
A)パスチレーションヘッド(すなわち、液滴形成器)を備える少なくとも1つのパスチレーションユニットであって、当該ユニットが、ポリマー溶融物から個別の溶融ポリマー粒子を形成するために使用される、パスチレーションユニットと、
B)パスチレーションヘッドから個別の溶融ポリマー粒子を受けて移送する移動ベルトと、
C)水が移動ベルト上の個別の溶融ポリマー粒子と接触して固体ポリマー粒子を形成するように、水を移動ベルト上に移送する手段と、を備え、
構成要素Cの水が、「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比率が≧3.0であるように、個別の溶融ポリマー粒子上に噴霧され、ベルト滞留時間が≦50秒である、装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】低粘度材料の造粒に使用することができる設備構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
低粘度で低溶融強度のポリマーのバッチ式または連続的固化のための装置およびプロセスが開発されており、より良好な生産性(冷却の強化による)、空間要件の削減を提供し、かつ上述の既存の技術の欠点を排除する。本明細書に記載の装置およびプロセスは、ポリマーだけに限定されず、ワックスおよびビチューメンのような他の様々な材料にも適用可能であり得る。
【0011】
固体ポリマー粒子をバッチ式または連続的に形成する装置であって、装置は、以下の構成要素、
A)パスチレーションヘッド(すなわち、液滴形成器)を備える少なくとも1つのパスチレーションユニットであって、当該ユニットが、ポリマー溶融物から個別の溶融ポリマー粒子を形成するために使用される、パスチレーションユニットと、
B)パスチレーションヘッドから個別の溶融ポリマー粒子を受けて移送する移動ベルトと、
C)水が移動ベルト上の個別の溶融ポリマー粒子と接触して固体ポリマー粒子を形成するように、水を移動ベルト上に移送する手段と、を備え、
構成要素Cの水が、「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比率が≧3.0であるように、個別の溶融ポリマー粒子上に噴霧され、ベルト滞留時間が≦50秒である、装置。
【0012】
本発明の装置は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでもよい。
【0013】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比率は、≧4.0である。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比率は、≧4.0、さらに≧5.0、さらに≧6.0、さらに≧7.0、さらに≧8.0、さらに≧9.0、さらに≧10.0である。
【0014】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、パスチレーションユニットの比容量は、≧12lbs/時/ft、さらに≧15lbs/時/ft、さらに≧22lbs/時/ft2、さらに≧29lbs/時/ft、およびさらに≧36lbs/時/ftである。
【0015】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、パスチレーションユニットの比容量は、≦70lbs/時/ft、さらに≦60lbs/時/ft2、およびさらに≦50lbs/時/ft2である。
【0016】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、ベルト滞留時間は、≦40秒、さらに≦30秒、さらに≦20秒、さらに≦10秒、およびさらに≦5秒である。
【0017】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、パスチレーションヘッド(すなわち、液滴形成器)におけるポリマー溶融物の温度は、120℃~275℃、または125℃~250℃、または130℃~230℃である。
【0018】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、構成要素Cの水は、水または水滴の連続的なストリームを提供するノズルを使用して、個別の溶融ポリマー粒子(例えば、溶融パスチル)上に噴霧される。さらなる実施形態では、ノズルの設計は、水のストリームまたは液滴がベルトの幅全体に広がるようになっている。好ましくは、複数のノズルがベルトの長さに沿って配置されて、個別の溶融ポリマー粒子の冷却を強化する。
【0019】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、熱交換器が、パスチレーションユニットの上流に位置する。
【0020】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、2つ以上のパスチレーションユニットが、並行して配置される。
【0021】
一実施形態では、本発明の装置は、遠心乾燥機および/または流動床乾燥機および/またはより低温の分類器と組み合わせて、パスチルからの冷却水の分離およびそれらの乾燥を強化してもよい。好適な遠心乾燥機は、例えば、Gala CorporationまたはCarter Dayによって製造されている。好適な流動床乾燥機および分類器は、例えば、Witte Corporationによって製造されている。そのような機器は、粒子をサイズに基づいて分離しながら同時に乾燥させるため、または単に、粒子をサイズに基づいて分離するために使用される。
【0022】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、ポリマー溶融物は、オレフィン系ポリマーを含む。
【0023】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、ポリマー溶融物は、ポリマー溶融物の重量に基づいて、≧95重量%、または≧98重量%、または99重量%のオレフィン系ポリマーを含む。
【0024】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、50cP~10000cP、または100cP~8000cP、または200cP~6000cPの溶融粘度(177℃)を有する。
【0025】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、50cP~1000cP、または100cP~1000cP、または200cP~1000cP、または500cP~1000cPの溶融粘度(177℃)を有する。
【0026】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、500g/モル~50000g/モル、または500g/モル~20000g/モル、または500g/モル~10000g/モルの数平均分子量を有する。
【0027】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、0.860g/cc~0.960g/cc、または0.860g/cc~0.940g/cc、または0.860g/cc~0.920g/cc、または0.860g/cc~0.900g/cc、または0.865g/cc~0.890g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0028】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、2.0~4.0、または2.2~3.8、または2.4~3.6の分子量分布(MWD)を有する。
【0029】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、プロピレン系ポリマーである。
【0030】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、プロピレン系ポリマーは、プロピレン系インターポリマー、およびさらにプロピレン系コポリマーである。
【0031】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、プロピレン系ポリマーは、プロピレン/アルファ-オレフィンインターポリマー、およびさらにプロピレン/アルファ-オレフィンコポリマー、およびさらにプロピレン/C4-C8アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0032】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、プロピレン系ポリマーは、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびさらにプロピレン/エチレンコポリマーである。
【0033】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、エチレン系ポリマーである。
【0034】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、エチレン系ポリマーは、エチレン系インターポリマー、およびさらにエチレン系コポリマーである。
【0035】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、エチレン系ポリマーは、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー、およびさらにエチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、およびさらにエチレン/C3-C8アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0036】
一実施形態では、本開示は、ポリマー溶融物から固体ポリマー粒子を形成するプロセスに関し、当該プロセスは、本明細書に記載の1つ以上の実施形態の装置を使用してポリマー溶融物をパスチル化することを含む。
【0037】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、プロセスは、連続的なプロセスである。
【0038】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、溶液重合は、連続モードで1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、および/または撹拌槽型反応器で、並列、直列、および/またはそれらの任意の組み合わせで行われて、オレフィン系ポリマー、例えば、エチレンポリマーまたはプロピレンポリマーを生成する。
【0039】
一実施形態では、重合温度は、300~1000psig、例えば、400~750psigの範囲の圧力において、100~300℃、例えば、120~190℃の範囲である。
【0040】
単一のポリマー生成プラントから複数のパスチレーションユニットを並行して供給して、パスチレーション速度をポリマー生成速度に一致させてもよい。所与のスループットでパスチルを適切に固化するために必要な熱除去が、単一のパスチレータの冷却容量を超える場合、複数のパスチレータが必要である。
【0041】
本発明のプロセスは、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0042】
オレフィン系ポリマー
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマー溶融物は、177℃で、≦30000cP、または≦20000cP、または≦10000cP、または≦5000cPの粘度を有する。
【0043】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、500~10000cP、または600~9500cP、または700~9000cP、または800~8500cP、または900~8000cPの溶融粘度(177℃)を有する。
【0044】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、0.855~0.900g/cc、または0.860~0.895g/cc、または0.865~0.890g/cc、または0.870~0.885g/ccの密度を有する。
【0045】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、5000~50000g/モル、または5000~30000g/モル、または10000~25000g/モル、または10000~22000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。
【0046】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、1.80~3.20、または1.90~3.15、または2.00~3.10、または2.10~3.05、または2.20~3.00の分子量分布(MWD)を有する。
【0047】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、1000~100000g/モル、または5,000~50000g/モル、または10,000~50000g/モル、または30000~50000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0048】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、プロピレン系ポリマー、およびさらにプロピレン系インターポリマー、およびさらにプロピレン系コポリマーである。
【0049】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、プロピレン/アルファ-オレフィンインターポリマー、およびさらにプロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。好適なアルファ-オレフィンには、C4-C8アルファ-オレフィンが含まれ、
【0050】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、プロピレン/エチレンインターポリマー、およびさらにプロピレン/エチレンコポリマーである。
【0051】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、エチレン系ポリマー、およびさらにエチレン系インターポリマー、およびさらにエチレン系コポリマーである。
【0052】
一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、オレフィン系ポリマーは、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマー、およびさらにエチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。好適なアルファ-オレフィンには、C3-C8アルファ-オレフィンが含まれる。
【0053】
重合
一実施形態では、オレフィン系ポリマー、例えばプロピレンポリマーまたはエチレンポリマーは、単一のループ反応器構成での液相重合プロセスを介して触媒組成物を使用して調製され得る。全ての原料(プロピレン、および任意選択的にエチレンまたは1-オクテンなどの1つ以上のアルファオレフィンコモノマー)ならびにプロセス溶媒(イソパラフィン溶媒、例えば、ISOPAR E(登録商標))は、好ましくは、反応環境に導入する前にモレキュラーシーブで精製される。水素は、高純度グレードとして供給され、さらに精製されない。反応器への新鮮なモノマー供給物(プロピレン)は、機械的容積式ポンプを介して、反応圧力より高い圧力(例えば、650psig)に加圧される。再循環された供給物(溶媒ならびに未反応のモノマー、コモノマー、および水素を含有する)は、機械的容積式ポンプを介して、反応圧力を超える圧力に加圧される。新鮮なコモノマー(エチレン)供給物は、機械的コンプレッサを介して、反応器圧力を超える圧力に加圧される。個々の触媒成分は、精製された溶媒を用いて指定の成分濃度まで手動でバッチ希釈することができ、機械的容積式ポンプを介して、反応圧力を超える圧力に加圧される。全ての反応供給流は、コリオリ質量流量計(MFM)で測定され、コンピュータ自動バルブ制御システムで独立して制御される。
【0054】
モノマー、コモノマー、水素、再循環溶媒、および触媒成分供給物の各々の独立した制御が可能である。溶媒、モノマー、コモノマー、および水素の組み合わせ供給物は、供給物ストリームを熱交換器に通過させることによって、5℃~50℃のどこか、典型的には10℃に温度制御される。ストリームを温度調整した後、全供給物が重合反応器に注入される。触媒成分は、その場での混合、接触、および活性化のために触媒錯体および助触媒を反応器に別々に導入する複数の注入器を通して重合反応器に注入することができる。触媒錯体供給物は、指定の目標(反応液のプロピレンg/リットル)で反応器モノマー(プロピレン)濃度を維持するようにコンピュータ制御される。助触媒成分は、触媒錯体に対する、計算された指定のモル比に基づいて供給される。
【0055】
反応器の内容物は、シェル側面を流れる冷たいユーティリティ流体を有する熱交換器を通して連続的に循環して、反応熱の多くを除去し、指定の温度、例えば、155℃でほぼ等温の反応環境を維持することができる。重合ストリームが反応器を出るときにそれに水を注入して、反応を終了させる。次いで、ポリマー溶液は、熱交換器を通過して、ストリームを235~300℃の範囲の温度に加熱し、脱揮の準備をする。この熱交換器から、自動反応器圧力バルブから排出され、ポリマーが溶媒、水素、ならびに未反応のモノマーおよびコモノマーの大部分から除去される2段階脱揮システムの最初に入ると、ストリームの圧力が低下する。気化した溶媒および未反応モノマーは、冷却され、水などの極性不純物を除去して反応器に再注入する前に部分的に凝縮される。濃縮ポリマー溶液は、容積式ポンプを介して、ストリームが200℃~275℃の範囲の温度に加熱される第2の熱交換器に送られる。この熱交換器からの流出液は、5~50mmHg絶対の範囲で真空下で動作する脱揮装置に排出される。気化した溶媒および未反応モノマーは、冷却され、水などの極性不純物を除去して反応器に再注入する前に部分的に凝縮される。ほぼ純粋なポリマー溶融物(≧99.8重量%のポリマー濃度)は、機械的容積式ポンプを介してパスチレーションシステムに送られる。
【0056】
好ましくは、脱揮ポリマー溶融物は、ASTM D3236を介して測定した場合、177℃で約3000cP未満の値にポリマー粘度を操作するために使用される熱交換器を通してポンプ輸送される。最終ポリマー生成物の粘度が177℃で約3000cP以下の場合、ポリマーは、熱交換器を通過するときに冷却される。最終ポリマー生成物の粘度が177℃で3000cPを超える場合、ポリマーは、熱交換器を通過するときに加熱される。ポリマー温度は、典型的には、300℃未満、例えば、275℃未満、または80~250℃の範囲であり、これにより、超低粘度のポリマー溶融物が生成される。その後、加熱された溶融ポリマー(すなわち、ポリマー溶融物)は、パスチレータに供給されて、液体から個別の溶融ポリマー粒子に転化される。
【0057】
溶融ポリマー(すなわち、ポリマー溶融物)は、パスチレーションユニットの液滴形成部にポンプ輸送される。典型的には、液滴形成器に供給するために使用される技術には、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、および遠心ポンプ、ならびにピストン、プログレッシブキャビティ、および好ましい技術であるギアポンプを含む容積式ポンプが含まれる。単一のポンプ、またはプロセスフロー図に示すように、複数のポンプを利用して、ポリマーを最終フラッシュ容器からパスチレータに供給することができる。また、ポリマー溶融物は、パスチレータに直接ポンプ輸送することができるか、または最初に、80~300℃、最も好ましくは125~250℃の目標範囲内の液滴形成器に入るポリマー温度を制御するために利用される熱交換器を通してポンプ輸送することができる。
【0058】
溶融ポリマー(ポリマー溶融物)は、液滴形成器内のフィードバー部を通してパスチレーションユニットに入る。ポンプは、溶融ポリマー(ポリマー溶融物)を、フィードバーを通して、穴を含有する回転シェルに押し込む。溶融ポリマーは、シェルの穴を通して排出され、鉄鋼の搬送ベルト上に個別の溶融ポリマー粒子(すなわち、個別の溶融パスチル)の形態で堆積する。パスチルは、半球形で、平らな面がベルトに接触している。ベルトは、液滴形成器の反対方向に回転することによって、回転シェルから個別の溶融ポリマー粒子(すなわち、個別の溶融パスチル)を取り除く。ベルトの下側に冷水を噴霧して、搬送システムに排出する前に、ベルトの長さを進行しながら、個別の溶融ポリマー粒子(すなわち、個別の溶融パスチル)を伝導的に冷却する。本開示の装置では、冷水が上からも搬送ベルトの上部に噴霧されて、搬送システムに排出される前に、ベルトの長さを進行しながら、個別の溶融ポリマー粒子(すなわち、個別の溶融パスチル)を連続的に冷却する。個別の溶融ポリマー粒子(すなわち、個別の溶融パスチル)がベルトの長さを進行すると、それらは冷却されて固体ポリマー粒子を形成する。
【0059】
定義
反対の記載がないか、文脈から含意されるか、または当該技術分野において慣例的でない限り、全ての部分およびパーセントは重量に基づき、全ての試験方法は本出願の出願日現在で最新のものである。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ポリマー溶融物」または「溶融ポリマー」という用語は、その融点を超えるポリマー流体を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「個別の溶融ポリマー粒子」という用語および同様の用語は、パスチレーションヘッドから移動ベルト上に排出するポリマー溶融物の液滴を指す。
【0062】
「移動ベルト」、「搬送ベルト」という用語、および同様の用語は、本明細書において交換可能である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「水を移送する手段」という句は、好適なポンプ、配管、噴霧ノズル、および任意選択的に水温を維持するための熱交換器、ならびに水を回収して水をポンプに輸送する排水システムから構成される水のポンプ輸送および循環システムを指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、所与の機械サイズ(ベルトの長さおよび幅)についての「排出速度」または「パスチレーション速度」または「供給速度」という用語、ならびにパスチレータの冷却速度は、単位時間内にパスチルに転化することができるポリマーの量(重量)を指す。1つ以上のパスチレーションユニットを並行して使用して、重合速度およびパスチレーション速度を確実に一致させてもよい。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、「排出速度」という用語および同様の用語は、1時間当たりにパスチルに転化することができるポンド単位のポリマーの量を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ベルト滞留時間」という用語は、ポリマー粒子が、パスチレーションヘッド(すなわち、液滴形成器)からの液滴点の位置からベルトからの排出位置まで、移動ベルト上で費やす時間を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「脱揮装置」という用語は、ストリームの揮発性成分(すなわち、溶媒、未反応モノマー、コモノマー、および水素)を気化させ、揮発性の低い成分(すなわち、ポリマー)から分離することができるように動作する機械機器を指す。標準的な脱揮ユニットは、部分的に充填され、流入するストリーム(例えば、ポリマー溶液)の圧力よりも低い圧力で動作することにより、低沸点成分を気化させることができる圧力容器である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「熱交換器」という用語は、2つの異なるストリームを処理し、2つのストリームに物理的に接触することなくストリーム間でエネルギーを伝達する圧力容器を指す。この機器は、必要な表面積をコンパクトに提供するとともに、ユーティリティ流体の流れおよび入口温度の操作および制御を提供し、熱エネルギーを適切に伝達してプロセス流体を目標温度に制御するように設計されている。シェルアンドチューブ設計は、業界で使用される技術の一般的な形式である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「パスチレーションユニット」という用語は、液体供給物(すなわち、溶融ポリマー)を固体パスチルに転化するために使用される機械機器を指す。装置の主要な構成要素には、液滴形成器、加熱フード、搬送ベルト、および冷水噴霧器が含まれる。ポリマーは、液滴形成器を通して、溶融パスチルの形態で搬送ベルト上に放出される。液滴形成器および搬送ベルトは、反対方向に回転する。溶融パスチルを伝導的に冷却して固化するために、それらがベルトの長さに沿って移動する際に、搬送ベルトの下側に冷水が噴霧される。
【0069】
本明細書で使用される場合、「パスチレーションヘッド」または「液滴形成器」という用語は、固定フィードバーおよびフィードバーを囲む回転外側シェルを備える2つの構成要素部分を指し、これは、溶融形態のオレフィン系ポリマーから溶融ポリマーの個別の液滴を作成するために使用される。典型的には、オレフィン系ポリマー溶融物は、固定フィードバーのチャネルを通してポンプ輸送され、ポリマー溶融物は、フィードバー上の1つ以上のオリフィスを通して、回転外側シェルを通る1つ以上のチャネルに排出される。ポリマー溶融物は、シェル上の1つ以上の穴を通して排出され、搬送ベルト上に堆積される。外側シェルの回転、典型的には、反時計回りの回転は、搬送ベルトとは反対の回転方向である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「加熱フード」という用語は、液滴形成器の長さを横切り、液滴形成器に近接して位置付けられる加熱器(例えば、電気加熱器)を指す。加熱フードは、液滴形成器の周囲の空気温度を上げて、冷却を防ぎ、ポリマーが回転シェル上の穴を通過する際のポリマーの粘度/溶融強度の増加を防ぐ。このユニット動作は、糸を形成する傾向を減らすことを目的としている。
【0071】
本明細書で使用される場合、「固体ポリマー粒子」という用語は、様々な形状(例えば、顆粒、パスチル、またはペレット)の粒子を指し、ポリマー溶融物がその結晶化温度未満に冷却されて固化し、その形状を保持するときに形成される。伝統的に、水中ペレット化を介して作製された顆粒は、ペレットと呼ばれる。この技術を介して造粒された低密度ポリマーは、典型的には、より球形の形状であり、高密度ポリマーは、典型的には、円筒形である。パスチレーションを介して作製された顆粒は、パスチルと呼ばれる。溶融ポリマーは、パスチレーション中に固体表面上に排出されるため、パスチルは、上部が丸い(半球形の)平らな側面を有する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「溶液重合」という用語は、形成されたポリマーが重合溶媒中に溶解する重合プロセスを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ポリマー溶液」という用語は、均一な液体を形成するための1つ以上の溶媒(典型的には、ポリマーよりも分子量がはるかに低い)中でのポリマーの完全な溶解を指す。溶液は、ポリマーおよび溶媒を含み、未反応モノマーおよび重合反応の他の残留物も含み得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「溶媒」という用語は、モノマーおよび/またはポリマーのような目的の種を溶解し、液相をもたらす物質(例えば、炭化水素または2つ以上の炭化水素の混合物(モノマーおよびコモノマーを除く))を指す。
【0075】
「水噴霧の速度」という句、および本明細書で使用される同様の用語は、指定の時間間隔で噴霧される水の量を指す。この速度は、指定の体積の容器に水を回収し、指定の時間間隔当たりの水の重量を測定することによって測定することができる。また、給水ポンプに関連するポンプ曲線を使用して推定することもできる。また、業界で一般的ないくつかの質量および体積流量測定技術のうちのいずれかを使用して測定することもできる。一実施形態、または本明細書に記載の実施形態の組み合わせでは、「水噴霧の速度」という句および本明細書で使用される同様の用語は、ポンド/分で噴霧される水の量を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、その組成物、ならびにその組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む材料の混合物を含む。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、混和性であってもよいか、またはなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。ブレンドは、相分離していてもよいか、またはしていなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野において既知である他の方法から決定して、1つ以上のドメイン構成を含有してもよいか、または含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、溶融ブレンド樹脂もしくは配合)またはミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時成形)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって達成され得る。
【0078】
「ポリマー」という用語は、同じ種類であるか、または異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製される化合物を指す。したがって、ポリマーという一般名称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、唯一の種類のモノマーから調製されるポリマーを指す)、および以下に定義される「インターポリマー」という用語を包含する。微量の不純物が、ポリマーにおよび/またはポリマー内に組み込まれ得る。
【0079】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。インターポリマーという一般名称は、コポリマー(2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指す)、および2つを超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0080】
「オレフィン系ポリマー」という用語は、ポリマーの重量に基づいて、50重量%または過半量の重合オレフィン(例えば、エチレンまたはプロピレン)を含み、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」または「溶融形態のオレフィン系ポリマー」という用語は、オレフィン系ポリマーの重量に基づいて、≧99.0重量%、好ましくは≧99.5重量%、より好ましくは≧99.8重量%のオレフィン系ポリマーを含有するポリマーを指す。
【0081】
「プロピレン系ポリマー」という用語は、ポリマーの重量に基づいて、50重量%または過半量の重合プロピレンを含み、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0082】
「プロピレン系インターポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づいて、50重量%または過半量の重合プロピレンを含み、少なくとも1つのコモノマー(例えば、エチレンまたはC4以上のα-オレフィン)を含むインターポリマーを指す。
【0083】
「プロピレン系コポリマー」という用語は、コポリマーの重量に基づいて、50重量%または過半量の重合プロピレン、および唯一のモノマー型としてコモノマー(例えば、エチレンまたはC4以上のα-オレフィン)を含むコポリマーを指す。
【0084】
「エチレン系ポリマー」という用語は、ポリマーの重量に基づいて、過半量の重合エチレンを含み、任意選択的に、少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0085】
「エチレン系インターポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づいて、過半量の重合エチレンを含み、少なくとも1つのコモノマーを含むインターポリマーを指す。
【0086】
「エチレン系コポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づいて、過半量の重合エチレン、および唯一のモノマー型としてコモノマーを含むコポリマーを指す。
【0087】
「反応器構成」という用語は、ポリマーを重合するために使用される、1つ以上の反応器、および任意選択的に、1つ以上の反応器予熱器を指す。そのような反応器には、管状反応器(複数可)、オートクレーブ反応器(複数可)、ループ反応器(複数可)、および連続撹拌槽型反応器(複数可)、ならびに任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
動作のユニットに関して本明細書で使用される場合、「下流」という用語は、該当する現在のユニットの後に位置するユニット動作を指す。プロセスを通るストリームの流れの方向に関して、ストリームは、あるユニット動作から下流に位置する次のユニット動作に流れる。
【0089】
動作のユニットに関して本明細書で使用される場合、「上流」という用語は、該当する現在のユニットの前に位置するユニット動作を指す。プロセスを通るストリームの流れの方向に関して、ストリームは、例えば、第1段階脱揮装置の直前に反応器内で処理され、したがって、反応器は、第1段階脱揮装置の上流にある。
【0090】
本明細書で使用される場合、オレフィン系ポリマーの融点(T)は、以下に記載されるように測定される示差走査熱量測定(DSC)プロファイルの最高強度ピークを指す。
【0091】
「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の構成要素、ステップ、または手順の存在を除外することを意図するものではない。いかなる疑義も避けるために、用語「含む」の使用を通じて主張される全ての組成物は、矛盾する記載がない限り、任意の追加の添加剤、補助剤、またはポリマー化合物であるかにかかわらず化合物を含み得る。対照的に、「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、任意の後続の引用の範囲から、任意の他の構成要素、ステップ、または手順を除外する。「~からなる」という用語は、具体的に記述または列挙されていない任意の構成要素、工程、または手順を除外する。
【0092】
本開示の特定の実施形態としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
1.固体ポリマー粒子をバッチ式または連続的に形成する装置であって、装置は、以下の構成要素、
A)パスチレーションヘッドを備える少なくとも1つのパスチレーションユニットであって、当該ユニットが、ポリマー溶融物から個別の溶融ポリマー粒子を形成するために使用される、パスチレーションユニットと、
B)パスチレーションヘッドから個別の溶融ポリマー粒子を受けて移送する移動ベルトと、
C)水が移動ベルト上の個別の溶融ポリマー粒子と接触して固体ポリマー粒子を形成するように、水を移動ベルト上に移送する手段と、を備え、
構成要素Cの水が、「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比率が≧3.0であるように、個別の溶融ポリマー粒子上に噴霧され、
ベルト滞留時間が、≦50秒である、装置。
2.パスチレーションユニットの比容量が、≧ 12 lbs/時/ftである、実施形態1に記載の装置。
3.「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比が、≧4.0である、実施形態1または実施形態2に記載の装置。
4.ベルト滞留時間が、≦40秒である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の装置。
5.パスチレーションヘッドにおけるポリマー溶融物の温度が、80℃~275℃である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の装置。
6.熱交換器が、パスチレーションユニットの上流に位置する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の装置。
7.2つ以上のパスチルユニットが、並列に配置されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載の装置。
8.ポリマー溶融物が、オレフィン系ポリマーを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の装置。
9.ポリマー溶融物が、ポリマー溶融物の重量に基づいて、≧95重量%のオレフィン系ポリマーを含む、実施形態8に記載の装置。
10.オレフィン系ポリマーが、50cP~20,000cPの溶融粘度(177℃)を有する、実施形態8~9のいずれか1つに記載の装置。
11.オレフィン系ポリマーが、500g/モル~50,000g/モルの数平均分子量を有する、実施形態8~10のいずれか1つに記載の装置。
12.オレフィン系ポリマーが、0.860g/cc~0.960g/ccの密度を有する、実施形態8~11のいずれか1つに記載の装置。
13.オレフィン系ポリマーが、1.8~4.0の分子量分布(MWD)を有する、実施形態8~12のいずれか1つに記載の装置。
14.オレフィン系ポリマーが、プロピレン系ポリマーである、実施形態8~13のいずれか1つに記載の装置。
15.プロピレン系ポリマーが、プロピレン系インターポリマー、およびさらにプロピレン系コポリマーである、実施形態14に記載の装置。
16.プロピレン系ポリマーが、プロピレン/アルファ-オレフィンインターポリマーである、実施形態14または実施形態15のいずれか1つに記載の装置。
17.プロピレン系ポリマーが、プロピレン/エチレンインターポリマーである、実施形態14または実施形態15のいずれか1つに記載の装置。
18.オレフィン系ポリマーが、エチレン系ポリマーである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の装置。
19.エチレン系ポリマーが、エチレン系インターポリマーである、実施形態18に記載の装置。
20.エチレン系ポリマーが、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーである、実施形態18または実施形態19に記載の装置。
21.ポリマー溶融物から固体ポリマー粒子を形成するプロセスであって、当該プロセスが、実施形態1~20のいずれか1つに記載の装置を使用して、ポリマー溶融物をパスチル化することを含む、プロセス。
22.装置が、遠心乾燥機、流動床乾燥機、または分類器と組み合わされる、実施形態21に記載のプロセス。
【0093】
試験方法
密度
密度は、ASTM D-792に従って測定する。結果は、1立方センチメートル当たりのグラム(g)、またはg/ccで報告する。
【0094】
メルトインデックス
プロピレン系ポリマーの場合、メルトフローレート(MFR)は、ASTM-D1238、条件230℃/2.16kgに従って測定され、10分当たりに溶出されるグラムで報告する。エチレン系ポリマーの場合、メルトインデックス(I)は、ASTM-D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分当たりに溶出されるグラムで報告する。
【0095】
溶融粘度-177℃でのポリマー
溶融粘度は、使い捨てアルミニウム試料チャンバを備えたBrookfield Laboratories DVII+粘度計を使用して、参照により本明細書に組み込まれるASTM D3236によって決定される。一般に、30~100,000センチポアズ(cP)の範囲の粘度の測定に好適なSC-31スピンドルが使用される。粘度がこの範囲外の場合、ポリマーの粘度に好適な代替のスピンドルを使用する必要がある。切断ブレードを採用して、試料を幅1インチ(25.4mm)、長さ5インチ(127mm)の試料チャンバに適合するのに十分に小さい断片に切断する。使い捨てチューブには、8~9グラムのポリマーが装入される。この試料をチャンバに入れ、これをBrookfield Thermoselに挿入し、折り曲げた針先ペンチで固定する。試料チャンバは、Brookfield Thermoselの底部に適合するノッチを底部に有することにより、スピンドルが挿入され、回転しているときに、チャンバが回転しないことを確実にする。試料を所望の温度(177℃/350°F)に加熱する。粘度計装置を下降させ、スピンドルを試料チャンバに浸す。粘度計上のブラケットがThermosel上に整列するまで、下降を続ける。粘度計をオンにしてせん断速度に設定すると、40~70%の範囲でトルクが読み取られる。読み取り値は、約15分間に対して毎分、または値が安定するまで取られ、次いで、最後の読み取り値が記録される。結果を、センチポアズ(cP)で報告する。
【0096】
Tでの計算されたポリマーの溶融粘度
ASTM D3236を使用して177℃で測定された粘度は、経験的関係
【数1】

を使用して、液滴形成器における溶融温度での粘度に転化することができ、
式中、ηは、液滴形成器におけるポリマーの温度Tでの溶融粘度であり、ηは、177℃である参照温度Tでのポリマーの粘度である。係数bはポリマーの粘度の温度感度を示し、その値はオレフィン系ポリマーについて0.02~0.03℃-1である(Chris Rauwendaal,Polymer Extrusion,Chapter 6,Hanser Publishers,1996を参照)。b値は、異なる温度でのポリマーの粘度を測定し、(T-T)に対するln(η)をプロットし、プロファイルのその勾配を計算することによって決定することができる。この作業で使用されたオレフィン系ポリマーの場合、b係数は、0.026℃-であると決定された。
【0097】
示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定(「DSC」)は、ポリマー(例えば、エチレン系(PE)ポリマーおよびプロピレン系(PP)ポリマー)中の結晶化度を測定するために使用される。ポリマー試料の約5~8mgが秤量され、DSCパン内に配置される。蓋は、密閉雰囲気を確保するためにパン上で圧着されて閉られる。試料パンは、DSCセルに配置され、次いで、約10℃/分の速度で、PEについては180℃(PPについては230℃)の温度に加熱される。試料は、この温度で3分間保持される。次いで、試料は、10℃/分の速度で、PEについては-60℃(PPについては-40℃)に冷却し、その温度で3分間等温に保持する。次いで、試料は、完全に溶融するまで10℃/分の速度で加熱される(第2の熱)。第2の熱曲線から決定した融解熱(Hf)を、PPについては165J/gの理論融解熱で除算し、この量に100を乗算することによって、結晶化度パーセントを計算する(例えば、結晶化度%=(Hf/165J/g)×100(PPについては))。別段言及されない限り、各ポリマーの融点(複数可)(T)は第2の熱曲線(ピークT)から決定し、結晶化温度(Tc)は第1の冷却曲線(ピークTc)から決定する。
【0098】
分子量のためのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
ロボット支援送達(RAD)システムを装備した高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システムが、試料調製および試料注入に使用される。濃度検出器は、Polymer Char Inc.(Valencia,Spain)からの赤外線検出器(IR-5)である。データ収集は、Polymer Char DM100データ取得ボックスを使用して実施する。担体溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)である。システムには、Agilentからのオンライン溶媒脱気デバイスが装備されている。カラム区画は、150℃で動作する。カラムは、4つのMixed A LS 30cm、20ミクロンカラムである。溶媒は、約200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する窒素パージした1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)である。流量は、1.0mL/分であり、注入体積は、200μLである。穏やかに撹拌しながら、N2パージし、予熱した(200ppmのBHTを含有する)TCB中、試料を160℃で2.5時間溶解させることによって、「2mg/mL」の試料濃度を調製する。
【0099】
GPCカラムセットは、狭い分子量分布20のポリスチレン標準物で実験することにより較正する。標準物の分子量(「MW」)は、580g/モル~8,400,000g/モルの範囲であり、標準物は、6つの「カクテル」混合物に含有されている。各標準物混合物は、個々の分子量間で少なくとも10離れている。各PS標準物の同等のポリプロピレン分子量は、以下の式を使用して計算し、ポリプロピレン(Th.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,&A.M.G.Brands,J.Appl.Polym.Sci.,29,3763-3782(1984))およびポリスチレン(E.P.Otocka,R.J.Roe,N.Y.Hellman,&P.M.Muglia,Macromolecules,4,507(1971))について報告されたMark-Houwink係数を含み、
【数2】

式中、Mppは、PP等価MW、MPSは、PS等価MWであり、
log KならびにPPおよびPSのMark-Houwink係数の値は、以下に列挙する。
【表1】
【0100】
四次多項式当て嵌めを溶出体積の関数として使用して、対数分子量較正を生成する。数平均および重量平均分子量は、以下の式
【数3】
に従って計算され、式中、WfiおよびMiは、それぞれ溶出成分iの重量分率および分子量である。
質量検出器定数、レーザー光散乱検出器定数、および粘度計検出器定数は、重量平均分子量(Mw=120,000g/mol、dn/dc=-0.104mL/g、MWD=2.9)および固有粘度(1.873dL/g)の即知の値を有する標準参照(参照ポリマーは、直鎖状ポリエチレンホモポリマーである)を使用して決定する。クロマトグラフィー濃度は、第2のビリアル係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと仮定する。
【0101】
ベルト滞留時間:ベルト滞留時間は、ベルトの冷却長さ(1.98m)とベルト速さ(cm/秒)との比率を使用し、100を乗算して計算した。
比容量:比容量は、供給速度または排出速度とベルトの冷却面積との比率を使用して計算した。6.50ftの冷却長さおよび0.23ftの冷却幅のベルトの冷却面積は、1.50ftであった。
【0102】
実験
材料
この研究で使用する材料を表1に列挙する。
【表2】
【0103】
PE重合
重合の概要
重合プロセスは、1つ以上の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、栓流反応器、および/または撹拌槽型反応器を使用する溶液重合プロセスである。そのような反応器は、オレフィン系ポリマー(例えば、プロピレン系ポリマーもしくはエチレン系ポリマー)を生成するために、連続モードもしくはバッチモードで並列、直列、および/またはそれらの任意の組み合わせで使用され得る。溶液重合および単離プロセスの概略については、図1を参照されたい。
【0104】
溶液相重合は、1つ以上のループ反応器または1つ以上の等温反応器などの1つ以上の十分撹拌された反応器において、100℃~300℃(例えば、120℃~190℃)の範囲の温度で、300psig~1000psig(例えば、500psig~750psig)の範囲の圧力で発生し得る。溶液重合プロセスにおける滞留時間は、典型的には、2~30分(例えば5~20分)の範囲である。1つ以上のα-オレフィン(例えば、プロピレンまたはエチレン)、溶媒、水素、1つ以上の触媒系、および任意選択的に、1つ以上のコモノマーが反応器に連続的に供給される。例示的な溶媒には、イソパラフィンおよびナフテン酸が含まれるが、これらに限定されない。例えば、そのような溶媒は、E ExxonMobil Chemical Co.(Houston,Texas)からISOPAR E(登録商標)の名称で、またはShell Chemicals EuropeからSBP100/140の名称で市販されている。反応供給物の温度は、典型的には、供給物を熱交換器システムに通過させることによって5℃~50℃に制御される。典型的には、反応器への供給物は、10℃に制御される。
【0105】
触媒成分は、例えば、反応器内の入口注入機器を通して重合反応器に注入され、重合反応溶液と組み合わされる。触媒錯体および助触媒成分を組み合わせて、注入機器を通して単一のストリームとして反応器に供給することもできる。触媒錯体は、反応器に連続的に注入されて、反応器のモノマー濃度を指定の目標に維持する。触媒錯体に対する計算されたモル比に基づいて、助触媒成分が供給される。
【0106】
重合反応器からの流出液(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶融ポリマーを含有する)を触媒失活剤(典型的には、水)と接触させて反応を停止する。加えて、酸化防止剤などの様々な添加剤を、この時点で添加することができる。次いで、反応器流出液(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶融ポリマーを含有する)は、熱交換器を通過して、低沸点反応成分からのポリマーの分離に備えてストリーム温度を上昇させる。次いで、ストリームは、圧力降下制御バルブを通過し、このバルブは、反応器の圧力を指定の目標に維持するために使用され、次いで多段階脱揮システムに送られ、そこで溶媒、水素、ならびに未反応のモノマーおよびコモノマーからポリマーが除去される。不純物は、反応器に再び入る前に、再循環されたより低い沸点の反応成分から除去される。
【0107】
脱揮ステップで除去された揮発性成分は、再循環させても、または処分してもよい。例えば、溶媒の大部分は、精製床を通過した後に、凝縮され、再び反応器に再循環される。この再循環された溶媒は、未反応コモノマーを含有してもよく、反応器に再入する前に、新鮮なコモノマーで強化することができる。この再循環溶媒はまた、水素を含有していてもよく、新鮮な水素で強化することができる。
【0108】
最終の脱揮装置の出口にあるポンプは、低粘度のポリマー溶融物をパスチルシステムに直接ポンプ輸送し得る。また、最初に低粘度のポリマー溶融物を最終の脱揮装置ポンプから熱交換器を通して、次にパスチレーションシステムにポンプ輸送する選択肢もある。最後に、最初に低粘度のポリマー溶融物を最終の脱揮装置ポンプから最初にブースターポンプにポンプ輸送する選択肢があり、ブースターポンプは、ポリマーを直接パスチレーションシステムにポンプ輸送するか、または任意選択的に熱交換器を通して、次にパスチレーションシステムにポンプ輸送する。ポリマーが熱交換器を通過すると、パスチレーションの前に、熱エネルギーが、ポリマー溶融物に加えられるか、またはポリマー溶融物から除去される。生成物粘度が177℃で3000cP以下(ASTM D3236)のポリマーの場合、熱交換器は、ポリマー溶融物を冷却するために使用され、生成物粘度が177℃で3000cP超のポリマーの場合、熱交換器は、ポリマー溶融物を加熱するために使用される。溶融物熱交換器および/またはパスチレーションシステムの詰まりを防ぐため、パスチレーションステップ中の最小ポリマー溶融物温度は、「Tm+20℃」であり、式中、「Tm」は、ポリマー生成物の融点温度である(DSCによって決定される)。ポリマーの劣化を防ぐため、典型的には、最高温度は300℃に制限される。
【0109】
ポリマー溶融物は、液滴形成器を通してパスチレーションシステムに入る(図1を参照)。ここで、「液滴形成器」は、固定フィードバーからなり、回転する円筒形の鋼鉄シェルで覆われ、その周囲に穴を備える。液滴形成器のフィードバー部からの溶融ポリマーは、鋼鉄シェルの穴から鋼鉄搬送ベルト上に排出される前に、回転シェルを通して半径方向に流れる。実質的に均一なポリマー液滴、またはパスチルが搬送ベルト上に堆積する。所与のスループットに対して、液滴形成器のシェル上の穴の数および/または穴の直径を操作することにより、パスチルの直径を変えることができ、典型的なパスチルの直径は、1mm~4mmである。液滴形成器は、移動ベルトの反対方向に反時計回りに回転する。ベルトの下側に大量の冷水を直接噴霧する。ベルトの温度が降下すると、溶融パスチルが伝導的に冷却され、ベルトから排出される前に必要な熱をパスチルから除去する。パスチルがベルトから排出されると、パスチルは(周囲温度で)貯蔵ホッパーに空気搬送される。水は回収され、冷却され、ベルトの下側に水を排出するために使用される噴霧ノズルに再循環される。冷水は、1℃~40℃の温度であり得、好ましい温度は1℃~5℃である。
【0110】
ポリマーパスチルは、典型的には、パスチレーション直後に測定した1,500ppm(百万分率/重量基準)未満、さらに1,000ppm未満、さらに500ppm未満の揮発性不純物を有する。ポリマー生成物は、典型的には、ASTM D3236に従って測定した場合、30000cP(177℃)未満、例えば、1000~10000cP(177℃)の範囲の粘度を有する。
【0111】
実際の重合およびパスチレーション
以下に記載の試料の生成は、反応液を2つのシェルアンドチューブ熱交換器を通して連続的に循環させる容積式ポンプを備えるループ反応器を使用して実行した。SYLTHERM800は、反応熱の一部を除去し、155℃の目標温度に反応液を保持するために、熱交換器のシェル側を横切って流れた。反応器は十分な油圧で動作したため、反応器流出液は、以下に記載の個々に制御される成分供給流量の合計に等しかった。これらの試料の生成は、反応液が単一の液相であることを保証するために、550psigに等しい反応圧力で完了した。
【0112】
ISOPAR E(溶媒)およびプロピレン(モノマー)を各々、反応器に個々にポンプ輸送した。ISOPAR E流を操作して、2.3に等しい溶媒対モノマー比率を維持した。コンプレッサを使用してエチレン(コモノマー)供給物を加圧し、15に等しいモノマー対コモノマー比率を維持するように流れを操作した。(高圧ガスボンベからの)高純度水素の流れを、ポリマー粘度を1,000cPの目標に保持するのに十分な速度でエチレンストリームに計量した。ポリマーPE-1を生成するために使用された反応条件について、供給速度は、28.0グラム/時であった。PE-2を生成するための水素供給速度は、19.9グラム/時であった。全ての3つの供給物を混合し、その後10℃にストリーム温度を制御するために熱交換器システムを通過させた。この冷供給ストリームは、155℃および550psigで動作する重合反応器に注入した。
【0113】
触媒パッケージは、3成分系であった。ハフニウム、[[rel-2’,2’’’-[(1R,2R)-1,2-シクロヘキサンジイルビス(メチレンオキシ-κO)]ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)-5-メチル[1,1’-ビフェニル]-2-オラト-κO]](2-)]ジメチル触媒錯体を使用して、コポリマー試料を生成した。助触媒活性剤は、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル-アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであった。アルミニウムスカベンジャーは、アルミノキサン、イソ-Bu-Me、分岐鎖状、環状、および直鎖状の変性メチルアルミノキサンからなった。
【0114】
触媒流を操作して、プロピレン転化率を91重量%に制御した。エチレン転化率は、反応条件および触媒の反応速度によって規定され、直接制御されなかった。エチレンの流れを操作して、ポリマー密度を0.8830g/ccの目標に保持した。ポリマーについてのバルク溶融温度(Tm)は、103℃であった。助触媒活性剤流を操作して(触媒流に基づいて)、助触媒の触媒金属に対するモル比を2.4に維持した。アルミニウムスカベンジャー流を操作して(触媒流に基づいて)、30~50の範囲の値に等しいアルミニウムの触媒金属に対するモル比を維持した。触媒パッケージ中の3つの成分の各々は、容積式ポンプ技術を使用して反応器に別々に直接ポンプ輸送した。
【0115】
反応器を出ると、ポリマーを化学量論量の脱イオン水(触媒成分に対して)と接触させて重合を終了させた。続いて、熱交換器を通過したポリマー溶液は、ポリマーから溶媒および未反応モノマーを除去するための準備として、ストリーム温度を255℃に上昇させた。加熱後、ストリームは、圧力降下バルブを通過して、200℃および12psigで動作する脱揮装置容器に送った。ポリマーストリームは、軽質成分の蒸発の結果として、約200℃に冷却した。ポリマーリッチ溶融物は、ギアポンプを使用して容器の底部からポンプ輸送し、気化した成分は容器の上部から出た。ポリマーリッチ相は、第2および最終の脱揮のために、ストリームを225℃に加熱するために別の熱交換器を通してポンプ輸送した。高温ストリームは、200℃および20mmHg絶対で動作する第2の脱揮装置容器に入った。揮発性成分が2,000ppm未満のポリマー溶融物は、ギアポンプを使用して容器の底部からポンプ輸送し、気化した成分は容器の上部から出た。
【0116】
ポリマー溶融物は、第2段階のギアポンプからブースターポンプにポンプ輸送した。ブースターポンプは、下流の熱交換器およびパスチレータシステムにポリマーを押し込むのに必要な圧力を生成した。ポリマー溶融物の温度を約140℃に制御して、繊維形成せずにポリマーを適切にパスチル化した。液滴形成器は、毎分28~40フィートの速さで反時計回りに回転し、搬送ベルトは、毎分28~40フィートの意図的に同等の速さで時計回りに回転した。6,000lbs/時に等しい流量および5および10℃に等しい範囲内の温度の水を、ベルトの下側に噴霧して、パスチルを冷却および固化させた後、それらをベルトから外し、ホッパーに移送するための空気搬送システムに入れた。
【表3】
【0117】
装置
Kaiser Process&Belt Technology GmbHによって製造されたモジュラーパスチレーションラインを使用した。これは、調整可能な速さのギアポンプ、パスチレーションヘッド、および冷却ベルトを備えた、攪拌溶融ケトル(40リットル)からなる。パスチレーションヘッドは、405個のノズル(1列当たり15個x27列)を有し、各々の直径は「1.5mm」で、ピッチが8mmの千鳥状配列で構成されている。ノズルは穴とも呼ばれる。パスチレータヘッドは、油加熱式であった。冷却ベルトの全幅は100mm、有効冷却幅は70mm、冷却ベルトの長さは1.98mであった。冷却水は、ベルトの下から所定の速度で噴霧することができた。水温は、全ての実験について7℃に維持した。
【0118】
上記の設定をさらに修正して、パスチルをより効率的に冷却するために、ベルトの上から水を噴霧できるようにした。ベルト上に等距離に合計7つの噴霧ノズルを設置し、ノズルの先端をベルトの幅全体を被覆するように配列した。この設定には、噴霧された水を回収するために、パスチレータベルトの下の排水パンが含まれていた。さらに、冷却ベルトを完全に取り外し、水浴に交換することによって、一部の運転を実施した。
【0119】
実験
表3の実験1-1~1-4は、従来のパスチレーション(ベルトの下から水を噴霧)を使用して実行した。速度およびベルト速さが増加すると、排出温度が上昇した。約「15lbs/時、」の排出速度で、排出温度は、40℃を超え、パスチルは、粘着性があり、クラスター化した。PE-1の場合、パスチルの排出温度は、凝集を回避するために、35℃未満でなければならなかった。排出速度およびベルト速さをさらに上げると、排出温度がさらに上昇し、凝集がもたらされた。パスチルを完全に冷却し、搬送ベルトから排出される際の凝集(すなわちクラスター化)を防ぐためには、40秒を超える滞留時間が必要であった。これらの比較事例では、ベルト上の水噴霧の速度の供給速度に対する比率は、ゼロであった。13.9lbs/時/ftの比容量を超えると、良好なパスチルを得ることができなかった。
【表4】
【0120】
表4の実験1-5~1-9では、ベルトの下から水を噴霧することに加えて、ベルトの上からも水を噴霧した。パスチル温度は、40lbs/時でも、20℃未満であり、パスチルは凝集しなかった。ギアポンプが最大容量で動作していたため、さらなる速度の増加は不可能であった。20秒に等しい搬送ベルト滞留時間で良好なパスチルを得ることができた(実験1-9)。これらの事例では、ベルトの上からの水噴霧の速度の供給速度に対する比率が、9.7~21.5であった。>15lbs/時/ftの比容量が可能であった。
【表5】
【0121】
代表的な計算
1)生成物温度で計算された粘度、cP-比較実施例について。
例えば、比較実施例1-1では、177C(T)での材料粘度は、1000cP(η)である。測定された生成物タンク温度(T)は、155℃であった。粘度の温度感度(b)は、0.026℃-であった。次いで、生成物温度で計算された粘度(η)は、
【数4】
を使用して1772cPと推定される。
2)生成物温度で計算された粘度、cP-本発明の実施例について。
例えば、本発明の実施例1-6では、177C(T)での材料粘度は、1000cP(η)である。測定された生成物タンク温度(T)は、154Cであった。粘度の温度感度(b)は、0.026℃-であった。次いで、生成物温度で計算された粘度(η)は、
【数5】
を使用して1818cPと推定される。
3)ベルト滞留時間、秒-比較実施例について。
例えば、比較実施例1-1では、ベルトの冷却長さ(1.98m、水噴霧を受けるベルトの長さ)のベルト速さ(3.6cm/秒)に対する比率を使用し、100を乗算することによって、ベルト滞留時間を55秒と計算した。
4)ベルト滞留時間、秒-本発明の実施例について。
例えば、本発明の実施例1-6では、ベルトの冷却長さ(1.98m)のベルト速さ(5.1cm/秒)に対する比率を使用し、100を乗算することによって、ベルト滞留時間を39秒と計算した。
5)パスチレーションユニットの比容量、lbs/時/ft-比較実施例について。
例えば、比較実施例1-1では、排出速度(13.9lbs/時)をベルトの冷却面積(1.50ft)で除算することによって、比容量を9.28lbs/時/ftと計算した。
6)パスチレーションユニットの比容量、lbs/時/ft-本発明の実施例について。
例えば、本発明の実施例1-6では、排出速度(23lbs/時)をベルトの冷却面積(1.50ft)で除算することによって、比容量を15.31lbs/時/ftと計算した。
7)実施例の水噴霧の速度は、lbs/分と測定される。
8)実施例の排出速度は、lbs/時と測定される。
【0122】
表5の1-10~1-13の実験では、排出速度は再び「45lbs/時」に増加したが、全ての水冷は、ベルトの上からの噴霧を介して適用された(ベルトの下からの冷却水は遮断された)。これらの実験では、パスチルは、凝集しなかったが、ギアポンプの容量制限により、さらなる速度は禁止された。15秒という短い搬送ベルト滞留時間で良好なパスチルを得ることができた(実験1-13)。これらの事例では、ベルトの上からの水噴霧の速度の供給速度に対する比率は、9.7~21.5であった。>15lb/時/ftの比容量が、可能であった。
【0123】
別の重要な観察結果は、ベルトの上から噴霧した水は5~7lbs/分だけだったが、ベルトの下からの水は(従来のパスチレーションのように)24lbs/分であったことである。これはさらに、パスチル上に直接水を噴霧することによる熱伝達効率の改善を実証している。表6の実験2-1~2-4は、PE-2を用いて実施した。前の節で記載したPE-1と同様に、PE-2をパスチル化した。185℃(PE-1での155℃に対比)のより高いパスチレーション温度を使用して、糸引き(繊維形成)を回避した。表6の実験2-3および2-4は、ベルトの上から水を噴霧すると、40lbs/時を超えるパスチレーション速度が可能であり、良好なパスチル品質が得られたことを示す。これらの事例では、ベルトの上からの水噴霧の速度の供給速度に対する比率は、12.9~28.5であった。>15lbs/時/ftの比容量が可能であった。
【0124】
表7は、市販のエチレンオクテンコポリマー(AFFINITY GA1875、EO1)を用いて実施した実験3-1~3-4を示す。粘度が比較的高いため、210℃の動作温度を使用した。ハイブリッドパスチレーションを使用すると、40lbs/時を超える速度で良好なパスチルを形成することができた。15秒という短い搬送ベルト滞留時間で良好なパスチルを得ることができた。これらの事例では、ベルトの上からの水噴霧の速度の供給速度に対する比率は、12.9~28.5であった。>15lbs/時/ftの比容量が可能であった。表8は、本発明のプロセスの結果を比較プロセスと比較する。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0125】
パスチル上に直接水を噴霧することにより、冷却効率が大幅に改善され、従来のパスチレーションの2.5倍を超えるパスチレーション速度の増加が促進されたことが実証された。ギアポンプの容量制限により、より高い供給速度または排出速度での実験は、不可能であった。高速結晶化材料の場合、滞留時間が8秒という短い滞留時間でオレフィン系ポリマーをパスチル化することが可能であり得る。
【0126】
ベルトの上からの水の直接噴霧の実験は、1,000cPおよび3,000cP、0.88D、プロピレン-エチレンコポリマー、ならびにAFFINITY(商標)GA 1875(6,700cP、0.87D、エチレン-オクテン共重合体)の3つの材料に使用して成功した。
【0127】
パスチレーション実験はまた、ベルトの下からの水噴霧が必要でないことも実証した。ベルトの上からの直接の水噴霧は、パスチルを冷却するための最も効率的な方式である。この発見により、冷却ベルトの設計が大幅に簡素化され得る。ベルト上の水噴霧の速度の供給速度(または排出速度)に対する好適な比率は、>3である。この比率の範囲を下回ると、冷却の効率が低下する。本発明のプロセスは、この比率が40を超える場合に機能するが、冷却水の使用量は、必要とされる量を超えている。観察されたさらなる利点は、ベルトの下から水を噴霧する従来のパスチレーションプロセスと比較して、ベルトの上から水を噴霧するのに必要な冷却水が大幅に少ないことであった。
なお、本発明には以下の態様が含まれることを付記する。
[態様1]
固体ポリマー粒子をバッチ式または連続的に形成する装置であって、前記装置が、以下の構成要素、
A)パスチレーションヘッドを備える少なくとも1つのパスチレーションユニットであって、前記ユニットが、ポリマー溶融物から個別の溶融ポリマー粒子を形成するために使用される、パスチレーションユニットと、
B)前記パスチレーションヘッドから前記個別の溶融ポリマー粒子を受けて移送するための移動ベルトと、
C)水が前記移動ベルト上の前記個別の溶融ポリマー粒子と接触して前記固体ポリマー粒子を形成するように、水を前記移動ベルト上に移送する手段と、を備え、
構成要素Cの前記水が、「水噴霧の速度」の「排出速度」に対する比率が≧3.0であるように、前記個別の溶融ポリマー粒子上に噴霧され、
ベルト滞留時間が、≦50秒である、装置。
[態様2]
前記パスチレーションユニットの比容量が、≧12lbs/時/ft である、態様1に記載の装置。
[態様3]
前記パスチレーションヘッドにおける前記ポリマー溶融物の温度が、80℃~275℃である、態様1または2のいずれか一項に記載の装置。
[態様4]
前記ポリマー溶融物が、
オレフィン系ポリマーを含む、態様1~3のいずれか一項に記載の装置。
[態様5]
前記ポリマー溶融物が、前記ポリマー溶融物の重量に基づいて、≧95重量%の前記オレフィン系ポリマーを含む、態様4に記載の装置。
[態様6]
前記オレフィン系ポリマーが、50cP~20,000cPの溶融粘度(177℃)を有する、態様4~5のいずれか一項に記載の装置。
[態様7]
前記オレフィン系ポリマーが、500g/モル~50,000g/モルの数平均分子量を有する、態様4~6のいずれか一項に記載の装置。
[態様8]
前記オレフィン系ポリマーが、0.860g/cc~0.960g/ccの密度を有する、態様4~7のいずれか一項に記載の装置。
[態様9]
前記オレフィン系ポリマーが、1.8~4.0の分子量分布(MWD)を有する、態様4~8のいずれか一項に記載の装置。
[態様10]
前記オレフィン系ポリマーが、プロピレン系ポリマーである、態様4~9のいずれか一項に記載の装置。
[態様11]
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレン/アルファ-オレフィンインターポリマーである、態様10に記載の装置。
[態様12]
前記プロピレン系ポリマーが、プロピレン/エチレンインターポリマーである、態様10に記載の装置。
[態様13]
前記オレフィン系ポリマーが、エチレン系ポリマーである、態様1~9のいずれか一項に記載の装置。
[態様14]
前記エチレン系ポリマーが、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーである、態様13に記載の装置。
[態様15]
ポリマー溶融物から固体ポリマー粒子を形成するプロセスであって、前記プロセスが、態様1~14のいずれか一項に記載の装置を使用して前記ポリマー溶融物をパスチル化することを含む、プロセス。
図1