(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】鋼ブランクの成形性改善方法
(51)【国際特許分類】
C21D 9/00 20060101AFI20231117BHJP
C21D 1/34 20060101ALI20231117BHJP
C21D 1/42 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
C21D9/00 A
C21D1/34 H
C21D1/34 R
C21D1/42 P
(21)【出願番号】P 2021512692
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2019057323
(87)【国際公開番号】W WO2020049428
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/056841
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲエド,サドック
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/091038(WO,A1)
【文献】特開2009-149970(JP,A)
【文献】特開2001-323318(JP,A)
【文献】特開2017-186586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/00
C21D 1/34
C21D 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼ブランク(1)の成形性を改善する方法であって、鋼ブランク(1)は面積百分率で少なくとも5%のマルテンサイトを含み、幾分かのフェライト、ベイナイト及び残留オーステナイトを含むことがある微細組織を有し、少なくとも500MPaの極限引張強度を有し、亜鉛をベースとする金属被膜(14)を上面(2)及び/又は下面(4)に有し、鋼ブランク(1)の周辺厚さ(6)の少なくとも一部に少なくとも1つの熱源(16)によって提供される熱エネルギーQを誘導して、周辺の加熱部(18)及び熱処理された塊(22)を形成することにより鋼ブランク(1)に熱処理操作を行い、熱処理操作の間、熱処理された塊(22)は、400℃の等温面(21)で囲まれ、かつ、400℃を超え、1500℃までの領域であり、熱処理操作の間、鋼ブランク(1)の全塊が固体のままであり、いくつかの鋼ブランク(1)がブランクのスタック(12)として積み重ねられ、少なくとも1つの熱源(16)によってバッチとして熱処理され、熱処理された塊(22)を覆う領域の熱処理後の該金属被膜(14)の厚さは、熱処理された塊(22)を覆わない領域の該金属被膜(14)の厚さと比較して30%未満減少する方法。
【請求項2】
熱処理された塊(22)の深さDが0.5mm~50.0mmの範囲に含まれ、ここで、深さDが、400℃の等温面(21)の周辺厚さ(6)に対する最大距離(d)で規定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱処理の持続時間が1ミリ秒~10分の間に含まれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
熱源(16)が移動し、鋼ブランク(1)が静止する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
熱源(16)が静止し、鋼ブランク(1)が熱源(16)の前で移動する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
熱源(16)及び鋼ブランク(1)の両者が静止する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱源(16)が、少なくとも2回、同じ周辺の加熱部(18)に向けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
周辺厚さ(6)を形成する表面全体が、少なくとも1つの熱源(16)によって熱処理される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
熱源(16)が、焦点をぼかしたレーザー光を放出し、産業用ロボット(28)に搭載されたレーザーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
熱源(16)が、鋼ブランク(1)がその前を移動する静止した赤外線チューブのアレイである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度鋼(HSS)の成形性を改善する方法を扱う。
【背景技術】
【0002】
HSSは500MPaを超える最大抗張力を有し、少なくとも5%のマルテンサイトを含み、残りの部分はフェライト、ベイナイト又は残留オーステナイトのような他の相の組合せからなる。それらは自動車の燃料効率及び耐衝撃性を改善する可能性を提供するので、特に自動車産業でのそれらの使用は着実に増加している。
【0003】
HSSは、例えば、鋼ブランクを形成すること、例えば、該鋼ブランクをスタンピング又は屈曲又は圧延成形することによって部品に成形される。それらが含む異なる相間に非常に高い硬さの勾配があるため、HSSは、特に成形中の亀裂の形成に敏感である。さらに特に、HSSは、ブランクのエッジで開始され、次いで最終部品の内部で伝播する(これによりその部品は使用不適になる)可能性がある亀裂の形成に非常に敏感である。実際、ブランクのカットエッジは2つの重要な機械的状態を組み合わせており、これらの条件によりブランクは変形中の亀裂形成に特に敏感になる。第1の状態は、平面の歪分布であるカットエッジ上の歪分布であり、成形に最も重要であり、したがって、亀裂形成に最も影響されやすいと考えられる。第2の状態は、部品を成形する前にブランクを切断する過程によって誘起されるエッジの硬化である。例えば、機械的切断を使用する場合、切断の作用は、実際には鋼材の剪断及び引き裂きの組み合わせであり、これは、かなりの量の内部応力を誘起し、したがって、ブランクのエッジ及び周辺における材料のかなりの量の加工硬化を誘起する。このように、この領域の鋼材は、その延性の一部及び貫通亀裂形成の代わりに、変形を通して成形ステップによって誘起される応力に適応する能力の一部を、既に失っている。これらの理由により、鋼ブランクのエッジ及び周辺上の材料は、特に、成形ステップ中に亀裂の形成を起こしやすい。
【0004】
成形中のエッジ上の亀裂の形成に対する鋼ブランクの感度は、ISO 16630:2017規格試験方法によって定義される穴広げ試験によって測定することができる。該試験は、変形中に穴のエッジにおける亀裂の開始時にポンチによって変形した穴の直径と変形前の該穴の初期直径との比である穴広げ率を測定する。
【0005】
部品上のエッジ亀裂の問題に直面した場合、部品の製造業者は、切断ブランクのエッジの品質を改善すること、切断工具の隙間を調整すること、部品設計を修正すること、ブランク形状を修正すること、又は成形方法を変更することを選択することができる。しかし、これらの変化を行うことは必ずしも工業的に実行可能ではなく、いずれの場合においてもエッジの亀裂問題はこれらの選択が検討された後も残る可能性がある。残された唯一の可能性は、亀裂形成が起こる領域のブランクの側面に機械的にブラシをかけることである。ブランクの切断工程によって誘起される部品のエッジ及び周辺の張力を緩和することによって、機械的ブラッシングは、実際にエッジの亀裂の問題を解決することができる。しかし、それはブランキング操作後に費用のかかる後処理ステップを導入することになる。
【0006】
代案として、成形後に亀裂が生じるブランクの領域の鋼の性質を局所的に改変する方法がある。熱源を用いて鋼の特性を局所的に改変する方法を提供するいくつかの発明が公表されている。例えば、US2015075678号は、表面にレーザー光を照射することにより、鋼ブランクの成形性を改善する方法を記載している。JP0987737号は、アーク又はレーザー光を用いて鋼の表面を加熱することにより、高強度鋼ブランクを局所的に軟化させる方法を記載している。
【0007】
しかし、鋼ブランクの表面を熱処理することに関連するいくつかの限界がある。第一に、この方法は一度に1つのブランクしか行えないため、生産性が低い。さらに、金属被覆鋼ブランクを処理する場合、ブランクの表面で到達する高温は、被膜の大幅な、又は完全な蒸発をもたらす。処理されたブランクには、被膜によって通常保証される機能、例えば防食又は塗装性の恩恵を受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2015/075678号明細書
【文献】特開平09-87737号公報
【発明の概要】
【0009】
これらの問題を解決するために、本発明の第1の目的が請求項1に開示される。それは、ブランクの厚さに適用される少なくとも1つの熱源を用いて、その厚さの少なくとも一部のブランクを熱処理することを含み、該ブランクのいかなる点も溶融させずに、400℃~1500℃の間の温度で鋼を加熱する。
【0010】
その厚さの少なくとも一部のブランクを加熱すると、鋼ブランクのエッジ及び周辺の少なくとも一部に熱処理ゾーンが生じる。熱処理ゾーンで適用される熱エネルギーは、切断工程から生じる内部応力を緩和する効果を有し、したがって、熱処理ゾーンにおける鋼の延性を増加させ、それによって亀裂形成に対するその感度を低下させる効果を有する。さらに、熱エネルギーの影響により、熱処理ゾーンにおける鋼の微細組織も熱処理ゾーンにおける鋼を軟化させるように好ましく修正することができ、それによって熱処理ゾーンにおける鋼の延性の増加にさらに寄与し、亀裂形成に対するその感度をさらに低下させることができる。
【0011】
被覆鋼ブランクの場合、鋼ブランクの厚さに熱処理が適用されるという事実のおかげで、鋼ブランクの被覆層に及ぼす熱処理の影響は、鋼ブランクの表面に直接適用されるであろう熱処理の影響に比べて、著しく減少する。さらに、鋼は、一般に、非常に明るく、そのためそれらが受け取る多量のエネルギーを反射する金属被膜よりも効率的な方法でエネルギーを吸収するため、金属被膜のみで構成される表面に施すよりも、鋼を主成分とする鋼板の厚さに施す方が、熱処理の熱効率は向上する。
【0012】
説明に続く実施例において明らかになるように、本発明は、金属被覆ブランクの場合、部品の全体的な構造的機能を損なわず、被膜の30%を超えて蒸発させることなく、かつ、形成後の下流工程にさらに影響を及ぼすことなく、エッジ亀裂の改善の点で非常に良好な結果をもたらすことが実証された。
【0013】
また、本発明は、例えば、積み重ねられた多数のブランクを同時に処理する可能性を提供することにより、生産性の点で特に産業上の利益を持つ。また、異なる種類の熱源の使用を可能にし、異なる工業的装置に統合することができ、このことは本発明をユーザの特定のニーズに応じて非常に汎用性が高く柔軟性があるものにする。
【0014】
本発明による方法は、単独で、又は任意の可能な技術的組合せで選ばれる、請求項2~13の特徴を含むこともできる。
【0015】
本発明の他の目的は、請求項14~16に開示されているように、本発明による方法を用いることによって得ることができる鋼ブランクである。
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、図を参照しながら、単なる例として与えられた、以下の詳細な記述を通して現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】単一の静的熱源を用いて前記方法が適用される単一のブランクの斜視図である。
【
図3】産業用ロボットに搭載されたレーザーヘッドが発する移動する焦点がぼやけたレーザー光を用いて、この方法を適用するブランクのスタックの斜視図である。
【
図4】いくつかの移動する熱源を用いてこの方法を適用するブランクのスタックの斜視図である。
【
図5】ブランクの静止したスタックに適用される静止した赤外線チューブのアレイを用いて、この方法を適用するブランクのスタックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
方法の第1のステップでは、鋼ブランク1が提供される。
【0019】
鋼ブランク1は、本発明の方法の前に行われるブランキングステップを経て得られるので、本発明には含まれない。ブランキングステップの間、鋼材は、例えば、鋼のコイルとして提供され、ブランキングラインで鋼ブランク1に切断される。この産業界で現在使用されている最も一般的で経済的な技術は機械的切断である。その他の技術には、レーザー切断又は高圧水切断がある。
【0020】
図1を参照すると、鋼ブランク1の塊(ボリューム)は、上面2と、該上面2とは反対側に位置する下面4との2つの主面の間に含まれる。以下の説明において、鋼ブランクの周辺厚さ6は、鋼ブランク1の輪郭の周りに伸び、該上面2の上方外側エッジ8と該下面4の下方外側エッジ10によって形成される線を結びつける表面を指す。鋼材ブランク1のブランク厚さtは、上面2と下面4が隔たっている距離を指す。
【0021】
ブランク厚さtは、鋼ブランク1全体にわたって一定にすることができ、又は、例えば、注文して作られた溶接ブランク(このブランクは、例えば、異なるブランク厚さtのいくつかの鋼ブランク1を含み、これらは、それぞれの周辺厚さ6の一部に沿って互いに溶接されている)の場合、又は、例えば、注文して作られた圧延ブランクの場合(同じ鋼ブランク1内にそれぞれ異なるブランク厚さtを有するいくつかの部分を含む)には変化させることができる。
【0022】
特定の実施形態において、鋼ブランク1は、例えば、
図1に描かれているように、平行六面体形状及び一定のブランク厚さtを有する。この場合、上方の外側エッジ8及び下方の外側エッジ10は、両方とも長方形を形成する。該鋼ブランク1の周辺厚さ6は、各々がその短辺(ブランク厚さtと等しい長さを有する)に沿って次のエッジに当接し、各々が上方の外側エッジ8の辺のうちの1つによって形成される1つの長辺及び下方の外側エッジ10の辺のうちの1つによって形成される残りの長辺を有する4つの長方形からなる。
【0023】
別の実施形態では、鋼ブランク1は、鋼ブランク1を形成した後に得られる最終部品の輪郭と同様の輪郭をたどる上方の外側エッジ8及び下方の外側エッジ10を有する上面2及び下面3から構成される。このような鋼ブランク1は、形状ブランクとして知られている。形状ブランクを使用すると、部品の製造業者は最終部品に行われるサイドトリミングの量を減らすか、なくすことができる。鋼ブランク1が形状ブランクの場合、上面2及び下面3は、真っ直ぐな線及び/又は湾曲した線を含むことができる上方及び下方の外側エッジ8及び10を有する。この場合、周辺厚さ6は、上方の外側エッジ8及び下方の外側エッジ10の対応する部分が直線である場合には平らな長方形であり、上方の外側エッジ8及び下方の外側エッジ10の対応する部分が曲線である場合には2つの湾曲した長辺を有する長方形である一連の形状を含み、各々の形状は、その短辺に沿って次のものと当接する周辺厚さ6を含み、各長方形は、ブランク厚さtと同じ長さの短辺を有する。
【0024】
鋼ブランク1の少なくとも一部は、高強度鋼(HSS)で作られる。HSSとは、引張強さが500MPaを超える鋼を意味する。このようなレベルの機械的性質に到達するために、HSSは面積パーセントにおいて少なくとも5%のマルテンサイトを含む微細組織を有する。HSSは、例えば、マルテンサイト及びフェライトを含む二相鋼、又はフェライト、マルテンサイト、ベイナイト及び場合により幾分かの残留オーステナイトを含む複合相鋼又はフェライト、マルテンサイト、残留オーステナイト及び場合により幾分かのベイナイトを含む変態誘起塑性(TRIP)鋼である。
【0025】
鋼ブランク1は、例えば、0.2mm~10.0mmの間に含まれるブランク厚さtを有する。
【0026】
特定の実施形態では、
図1に示すように、鋼ブランク1は、その上面2の少なくとも一部又はその下面4の一部上において金属被膜14によって覆われる。
図1は、その上面2及び下面4の両方が金属被膜14によって覆われている鋼ブランクを示す。金属被膜14は、例えば、最終部品に防食を提供するために適用される。金属被膜14は、例えば、純亜鉛、又は亜鉛と鉄を含む合金、又は亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムを含む合金のような亜鉛をベースとする被膜である。別の実施形態では、金属被膜14は、純アルミニウム、又はアルミニウムケイ素合金、又はアルミニウム亜鉛合金のようなアルミニウムをベースとする被膜である。金属被膜は、例えば、溶融めっきによって、又は電着によって、又はジェット蒸着によって施される。金属被膜層の厚さは、例えば、面当たり5ミクロン~50ミクロンの間に含まれる。
【0027】
この方法はさらに、鋼ブランク1の周辺厚さ6の少なくとも一部について熱処理操作を行うステップを含む。
【0028】
熱処理操作は、少なくとも1つの熱源16の熱エネルギーQを、
図1~
図5に示すように、鋼ブランク1の周辺厚さ6の少なくとも一部の方に向けることによって行われる。熱源16の熱エネルギーQは、該熱源16が向けられる該周辺厚さ6の領域である周辺の加熱された部分18内の周辺厚さ6の温度を上昇させる効果を有する。鋼ブランク1の所定の点における温度とは、熱処理作業中に鋼ブランク1の該所定の点において達した最高温度を意味する。熱の拡散の結果、周辺の加熱された部分18の温度の上昇は、鋼ブランク1の周囲の塊の温度の上昇を引き起こす。熱処理作業中、鋼材ブランク1の最高温度は、周辺の加熱された部分18内で到達されるが、これは、ここが熱源16からの熱エネルギーQがまず鋼材ブランク1に伝達されるところであるからである。鋼ブランク1の内側に向けた垂直方向において周辺の加熱された部分18から伸びる線に沿って、鋼ブランク1の温度を測定すると、該線に沿って周辺の加熱された部分18までの距離が長くなると、該温度は低下する。換言すれば、周辺の加熱された部分18から離れて鋼ブランク1の内部を進む場合、鋼ブランク1の温度は低下する。したがって、熱処理操作は、鋼ブランク1内に、周辺の加熱された部分18上に最高温度値を有し、該周辺の加熱された部分18から離れると減少していく値を有する温度場を作り出す効果を有する。該温度場は、
図1及び
図2に示すように、それに沿って温度が一定である鋼ブランク1内に延びる平面である等温面20を含む。熱処理された塊22は、400℃を超える温度を有する全ての等温面20を含む、鋼ブランク1内に含まれる塊である。換言すれば、熱処理された塊22の内部に含まれる鋼ブランク1の全点の温度は400℃を超え、一方、熱処理された塊22の外側にある鋼ブランク1の全点の温度は400℃未満である。400℃等温面21の周辺厚さ6までの距離dは、
図1に示すように、周辺厚さ6から400℃等温面21まで垂直方向に延びる線の長さで定義される。加熱された塊22の深さDは、
図1及び
図2に示すように、400℃等温面21の周辺厚さ6までの最大距離dで定義される。
【0029】
特定の実施形態では、熱処理操作は、鋼ブランク1の成形中に亀裂形成のリスクを示す既知の臨界領域に対応する周縁厚さ6の一部のみに対して行われる。有利には、これは、該周辺厚さ6の焦点領域のみに実施されるため、熱処理操作の高い生産性を確保しながら、該臨界領域における亀裂形成のリスクを低下させることにより、該鋼ブランク1の成形性を改善する効果を有するであろう。
【0030】
特定の実施形態において、熱処理操作は、周辺厚さ6の全表面で行われる。換言すれば、加熱された周辺部18の表面積は、周辺厚さ6の表面積に等しい。これは該鋼ブランク1の全エッジにおいて亀裂形成のリスクを低下させることにより、該鋼ブランク1の成形性を向上させる効果を有する。有利には、これは、次の成形工程が、エッジ亀裂が形成されるリスクに対して非常に強いことを確実にする。例えば、スタンピングパラメータの変動又は成形工具の劣化の場合にエッジ亀裂が形成されるリスクは低減される。
【0031】
実施形態では、熱処理操作は、同じ加熱された周辺部18の上で2つ以上の熱処理操作を含む。そうすることにより、熱処理ゾーン22は、加熱相、冷却相、次いで1つ以上の再加熱相及び冷却相を含む熱サイクルに供される。このような熱サイクルは、有利には、機械的応力の緩和を高め、また熱処理ゾーン22内のミクロ組織変態の増加につながることができ、その結果、該熱処理ゾーン22内の鋼ブランク1の成形性がさらに改善される。
【0032】
特定の実施形態において、熱処理操作は、熱処理ゾーン22の外側の鋼ブランク1で測定された穴広げ割合と比較して、熱処理ゾーン22で測定された穴広げ割合の少なくとも50%の上昇をもたらす。残留応力の緩和の結果、及び鋼中の可能な微細組織変態の結果、熱処理された塊22内の材料は、穴広げ率によって測定される、エッジ上の亀裂の発生に対してより低い感度を有する。
【0033】
熱処理された塊22は、使用する熱源16の種類に応じて、また熱処理工程のパラメータに応じて、様々な形状を取ることができることに留意しなければならない。例えば、単一の静止した熱源16によって行われる熱処理の場合、
図1に示すように、等温面20は、実質的に円の円弧を画定する線に沿って上面2及び下面4と交差し、したがって、熱処理された塊22の外面は、一辺が周辺厚さ6の一部によって形成される表面により、他方の辺が、外周が400℃等温面21と該上面2との交点である円の一部からなる上面2の一部によって形成される表面により、他方の辺が、外周が400℃等温面21と該下面4との交点である円の一部からなる下面4の一部によって形成される表面により、及び最後の辺が該400℃等温面21からなる表面により形成される。
【0034】
熱源16と向かい合う領域において鋼ブランク1の上側エッジ8及び外側エッジ10と略平行な方向を有する列に沿って一定速度で移動する該熱源16によって行われる熱処理の場合、等温面20は、上面エッジ8及び下面エッジ10と直交する方向に延びる短軸と、該上面エッジ8及び下面エッジ10と略平行な方向に延びる長軸とを有する楕円の弧を実質的に画定する線に沿って、上面2及び下面4と交差する。したがって、熱処理された塊22の外面の後続の形状は、一辺が周辺厚さ6の一部により、他方の辺が、外周が400℃等温面21と該上面2との上記交点である楕円の一部からなる上面2の一部により、他方の辺が、外周が400℃等温面21と該下面4との交点である楕円の一部からなる下面4の一部により、及び最後の辺が該400℃等温面21からなる表面により形成される。
【0035】
さらなる例では、熱処理操作が、熱源16と向かい合う領域において鋼ブランク1の上側エッジ8及び外側エッジ10に実質的に平行な方向を有する線に沿って可変速度で進む移動熱源16によって実施される場合、熱処理された塊22は、該熱源16がより低い速度を有する周辺加熱部18の領域に向かい合う熱処理された塊22の領域において鋼ブランク1内に膨らみを含む形状を有する。換言すれば、該膨らみにおける周辺厚さ6までの400℃等温面の距離dは該膨らみの外側よりも大きい。結果として、熱処理された塊22の深さDは、必然的に該膨らみの1つで測定される距離dの1つとなる。
【0036】
熱処理された塊22の最低温度は400℃に設定される。何故ならば400℃未満では、熱処理の機械的及び冶金学的効果は、工業的に適用できるほど十分に高い反応速度を有していないからである。換言すれば、400℃未満では、残留応力を効率的に緩和し、鋼内で可能な微細組織変態を誘発するために必要な時間が長すぎて、工業的方法(生産性が高く、コスト効率が良いと期待される)での使用を保証することができない。
【0037】
本発明の1つの特徴は、熱処理された塊22の最高温度が1500℃を超えないことである。実際、1500℃を超えると、鋼ブランク1が局所的に溶融するリスクがあり、これは鋼ブランクを使用に適さないものにする。
【0038】
本発明の別の特徴は、鋼ブランク1の全塊が熱処理操作を通して固体のままであることである。換言すれば、熱処理操作時には、熱処理された塊22の全ての点が、該鋼ブランク1の融点を下回る温度となる。より具体的には、先に説明したように、最も温度が高い熱処理された塊22の領域である周辺の加熱部分18の全ての点が、鋼ブランク1の融点未満にとどまる。
【0039】
特定の実施形態において、熱処理された塊22の深さDは、0.5mm~50.0mmの範囲内に含まれる。例えば、前述したように鋼ブランク1を機械的切断により得る場合、機械的切断により誘起される加工硬化効果の鋼ブランク1におけるおおよその侵入深さは、鋼ブランク1の厚さtのおよそ半分であることが知られている。したがって、0.5mmの熱処理ゾーン22の深さDは、加工硬化効果の最も深刻な領域が熱処理ゾーン22に含まれることを保証する。一方、熱処理の目的は、該鋼ブランク1の大半ではなく、鋼ブランク1のエッジの成形性を向上させることであるため、50.0mmを超える深さDを有する熱処理された塊22の形成をもたらす熱処理操作を行う必要がない。さらに、深さDを制限することにより、熱源16が消費する電力が制限され、したがって、製造コストを制限し、生産性を高めるという点で深さDを50.0mmに制限することは有利である。
【0040】
特定の実施形態では、熱処理の持続時間は1ミリ秒から10分の間の範囲に含まれる。加熱された周辺部18の任意の所与の点における熱処理の持続時間とは、熱源16の熱エネルギーQが加熱された周辺部18の該所定の点に向かう時間の長さを意味する。熱処理による成形性の改善に関与する機械的及び冶金学的反応は瞬時には発生しないため、反応の動力学が確実に行われるように、1ミリ秒間の最小限の量を許容することが推奨される。一方で、熱源16が消費する電力を制限し、それにより生産性を高め、処理コストを制限するためには、熱処理の持続時間を最大10分に制限することが推奨される。
【0041】
特定の実施形態において、鋼ブランク1が、その上面2及び/又は下面4の少なくとも一部に金属被膜14を有する場合、熱源16の熱エネルギーQも、
図1及び2に描かれるように、周辺の加熱部18に含まれる上面8の部分の真上に位置する上面2の金属被膜14の加熱された上部被膜部分24と、周辺の加熱部18に含まれる下面10の部分の真下に位置する下面4の金属被膜14の加熱された下部被膜部分26によって、必然的に直接吸収される。好ましい実施形態では、金属被膜の厚さは、周辺の加熱部18の領域における鋼ブランク1の厚さtの、例えば10分の1より小さい。例えば、被膜の厚さは、加熱された上部及び下部被膜部分24及び26のそれぞれにおいて20ミクロンであるのに対して、周辺の加熱部18における鋼ブランク1の厚さtは、1.0mmであり、この場合、鋼ブランク1の厚さtは、該加熱された上部及び下部被膜部分24、26の厚さよりも25倍厚い。その結果、上部及び下部被膜部分24及び26で表される表面積は、周辺の加熱部18で表される表面積よりも有意に少なく、例えば少なくとも10分の1少ない。したがって、熱源16の熱エネルギーQは、主に周辺の加熱部18に吸収される。これは、周辺の加熱部18が、防食のために使用される金属被膜よりも低い反射率を有する鋼製であるため、生産性の観点から有利である。一方、熱エネルギーが、表面、すなわち、鋼ブランクの上面及び/又は下面によって、該鋼ブランクの一部に伝達される先行技術に記載された熱処理方法を使用する場合、熱エネルギーの全量が金属被膜によって吸収され、それによってこの方法の熱効率が著しく損なわれ、このため生産性の損失及びコストの増加が生じる。
【0042】
また、熱処理された塊22の内側で到達した最高温度より低い蒸発点又は融点を有する金属被膜14を使用する場合、熱エネルギーを鋼ブランクの表面に向けることからなる先行技術に記載された熱処理方法は、熱処理ゾーンの最高温度にこの面の金属被膜が必然的に曝露されるため、熱エネルギーが向けられる鋼ブランクの表面上の熱処理ゾーンにおいて、かなりの量の金属被膜を蒸発又は溶融させる。一方、熱エネルギーQは主に鋼を含む表面領域に向けられるため、本発明の適用により、金属被膜14によって直接吸収される熱エネルギーQの量はあまり重要ではなく、このため融点及び/又は蒸発点よりも高い温度に到達する金属被膜14の表面領域はあまり重要ではない。したがって、蒸発及び/又は溶融した金属被膜14の量はあまり重要ではなく、このことは最終部品の品質及び防食の点で有利である。
【0043】
特定の実施形態において、本方法の説明に続く実施例で示されるように、熱処理ゾーン22を覆う領域における熱処理後の金属被膜14の厚さは、熱処理ゾーン22を覆わない領域における金属被膜14の厚さと比較して、30%未満しか減少しない。
【0044】
特定の実施形態において、
図3~
図5に示されるように、鋼ブランク1は、熱処理操作が実施される前に、互いに積み重ねられてブランク12のスタックを形成する。例えば、熱源16は、鋼ブランク1によって規定される平面に垂直な線に沿って進んでいる。換言すれば、熱源16は、ブランク12のスタックを上から下、又は下から上に走査する。その結果、ブランク12のスタックを構成する各鋼ブランク1の周辺の加熱部18は、ブランク12のスタックを結ぶ線に沿って上から下へ、かつ鋼ブランク1の平面に対して垂直に並ぶ。有利には、この実施形態は、個々の鋼ブランク1を操作することなく、1バッチ中に数個の鋼ブランク1を処理することを可能にし、これは大幅な生産性の増加、ひいてはかなりのコスト削減を示す。この実施形態は、幾つかの熱源16を用いて、同じ鋼ブランク1上の周辺厚さ6の幾つかの領域を同時に処理するために適用することも可能であり、各熱源16は、ブランク12のスタックの全ての鋼ブランク1の周辺厚さ6のいくつかの領域を1バッチで処理するために、ブランク12の該スタックを走査することにも留意すべきである。鋼ブランクの表面に熱源を向かわせることからなる先行技術に記載された熱処理方法を使用する場合、熱源は鋼ブランクの表面に向かい合う必要があり、熱源は素ブランクのスタックの一番上のブランクに接近するだけであるため、個々の鋼ブランクを操作することなく、素材のスタック上で該熱処理操作を1つのバッチで行うことはできないことに留意すべきである。
【0045】
最高温度1500℃を超えることなく、400℃の最低温度を有する熱処理された塊22を鋼ブランク1内に作ることができるならば、熱源16は、例えば、レーザー又はインダクタ又は赤外線チューブ又は任意の他の種類の熱源である。
【0046】
特定の実施形態において、レーザーが熱源16として使用される。該レーザーの出力は、例えば、500W~20kWの範囲内にある。周辺の加熱部18による熱エネルギーQの吸収を支配する主要なパラメータは、該レーザーの波長である。鋼の場合、熱吸収効率は、該レーザーの波長が減少するにつれて増加する。例えば、1ミクロン以下の波長が推奨され、これは例えば、YAG、ディスク、ファイバ、又はダイオードレーザーに対応する。特定の実施形態において、レーザーヘッドは、レーザー光が周辺の加熱部18に影響を与えて焦点がぼやけたスポットを形成するように配置される。すなわち、周辺の加熱部18までのレーザーヘッドの距離は、該レーザーの焦点距離よりも短いか長い。有利には、これは、大きな周辺の加熱部18を作り出すことを可能にし、したがって生産性を増加させ、製造コストを削減する。
【0047】
別の実施形態において、インダクタが熱源16として使用される。該インダクタの出力は、例えば、1kW~250kWの範囲に含まれる。インダクタの周波数は、熱処理ゾーン22の深さDを管理するために使用される主要なパラメータである。周波数が増加すると、熱処理ゾーン22の深さDは減少する。例えば、鋼の場合、1000Hzの周波数では、熱処理ゾーン22の深さは約1.0mmである。
【0048】
さらなる実施形態において、赤外線加熱が熱源16として使用される。個々の発熱体の出力は、例えば、1kW~100kWの範囲である。周辺の加熱部18による熱エネルギーQの吸収を支配する主要なパラメータは、該赤外線発熱体の波長である。鋼の場合、より低い波長に向かうとエネルギー吸収が増大する。推奨される波長は、例えば、2ミクロン~10ミクロンの範囲に含まれる。
【0049】
加熱技術は、目的の用途に応じて、また利用可能な空間及び産業機器に応じて選択される。
【0050】
例えば、熱処理されるべき鋼ブランク1のエッジの領域が極めて局所的である場合、例えば必要とされる周辺の加熱部18の大きさが上方の外側エッジ8及び下方の外側エッジ10に平行な方向において周辺の熱処理部18に延びる線に沿って測定したときに50mm未満であるならば、例えば、レーザー光を非常に正確なゾーンに集光できるため、レーザー処理がよく適合する。一方、大きな面積を処理する必要がある場合、例えば、必要な周辺の加熱部18の大きさが、上方の外側エッジ8及び下方の外側エッジ10に平行な方向において周辺の熱処理部18に延びる線に沿って測定したときに50mmを超える場合、赤外線チューブの放射加熱が広い面積を覆い、いくつかのチューブを直列に組み合わせて必要な量のエネルギーを提供することができるので、赤外線加熱がよく適合する。しかし、これは、生産現場で大きな空間を占める。最終的に、熱処理操作のために利用可能な空間の大きさが非常に限定される場合、ブランクを互いの上に積み重ねてブランク12のスタックを形成する前の、ブランキングラインの出口における個々の鋼ブランク1上の小さな誘導加熱がよく適合する。
【0051】
熱処理は静止モードで行うことができ、この場合、熱処理操作の間、熱源16及び鋼ブランク1の両方が静止している。また、熱処理は動的モードで実施することができ、この場合、鋼ブランク1の移動若しくは熱源16の移動、又は両者の複合的な移動のいずれかにより、鋼ブランク1と熱源16との間に相対速度がある。鋼ブランク1と熱源16との間の相対速度は、例えば、0.1mm/秒~100mm/秒の範囲に含まれる。熱源16は、例えば、
図3及び
図4に描かれているように、作動されるために、産業用ロボット28に搭載される。
【0052】
具体的な産業用途ごとに、特定の処理ウインドウは、以下の主要なパラメータ、すなわち、熱源16の主要なパラメータ(例えば、熱源の種類、出力、波長又は周波数)、周辺の加熱部18の大きさ及び形状並びに動的処理の場合の熱源16と鋼ブランク1との相対速度、又は静止処理の場合の熱処理期間を用いて定義することができる。分析モデルは、これらのパラメータ間の関係を計算し、手元にある特定の産業状況のための作業処理ウインドウを決定するために設計することができる。これらの処理パラメータは、周辺の加熱部18において到達する温度、及び熱処理された塊22の深さDを決定する。
【0053】
図3に描かれる特定の実施形態において、熱源16は、鋼ブランク1の周辺の加熱部18に命中するレーザー光を通して熱エネルギーQを誘導するレーザーであり、該鋼ブランク1は互いに積み重なってブランク12のスタックを形成し、該熱源16は、ブランク12のスタックを下から上まで走査するために産業用ロボット28に搭載される。
【0054】
図4に描かれる別の実施形態において、いくつかの熱源16を用いて、ブランク12のスタックを形成するために積み重ねられた鋼ブランク1のいくつかの周辺の加熱部18を同時に加熱する。該熱源16は、ブランク12のスタックを下から上まで走査するために、産業用ロボット28に搭載される。
【0055】
図5に描かれるさらなる実施形態において、熱源16は静止した赤外線チューブのアレイである。熱処理操作は静止モードで行われる。処理されるべき鋼ブランク1はブランク12のスタック中に配置され、ブランク12の該スタックは該熱源16の前に配置される。この実施形態では、各熱源16は、鋼ブランク1の上面2の平面に垂直な線に沿って測定されるように、熱源16の大きさがブランク12のスタックの高さに実質的に等しい結果、ブランク12のスタックの中の全ての鋼ブランク1の周辺の加熱部18を同時に処理する。
【実施例】
【0056】
上述の方法は、以下の実施例によって実証されるように複数の利点を提示し、中でも被覆鋼ブランクの場合、その金属被膜を著しく蒸発させることなく、そのエッジに近い鋼ブランクの成形性を大幅に改善する可能性がある。
【0057】
表1を参照すると、熱源16としてレーザー光を用いて単一の鋼ブランク1に対して熱処理を行い、熱源は周辺厚さ6に影響を与えて、加熱された周辺部18に焦点がぼやけたレーザースポットを形成する第1の実施例が与えられている。熱処理は静止モードで行う。鋼ブランク1の2つの異なるレベルの引張強さを試験した。規格ISO 16630:2017によって定義されているように、熱処理操作の前後における穴広げ率の進展によって熱処理の性能を測定する。
【0058】
表1は、鋼ブランク1の特性、及び熱源16を規定する重要なパラメータと共にその結果を報告する。鋼ブランク1の表面に取り付けられた一連の熱電対を用いて、鋼ブランク1内の温度場を評価した。熱処理された塊22の深さDを、周辺の加熱部18で到達した温度と同様に報告する。温度を±20℃の温度範囲として示し、この温度範囲は測定装置として使用された熱電対の精度に対応する。
【0059】
表1から分かるように、鋼ブランク1の熱処理は、熱処理された塊22における穴広げ率の著しい増加をもたらした。穴広げ率は、成形中のエッジ上の亀裂の形成に対する鋼ブランク1の感度に直接関係する。実際、試験自体の原理は、鋼ブランク1に打ち抜かれた穴のカットエッジを変形させ、この変形中のエッジにおける亀裂の形成を監視することである。
【0060】
さらに、熱処理された塊22における金属被膜14の蒸発速度を報告する。該蒸発速度は0~20%の間に含まれ、熱処理された塊22を覆う金属被膜14の部分上で、材料が部分的に被覆されたまま残り、したがって少なくとも部分的に腐食から保護されていることを保証する。表1の参照I1及びI2の蒸発速度の大きな差は、鋼ブランク1の金属被膜14の組成の差による。実際、I1の場合の金属被膜14は純亜鉛であり、これは約10%の鉄を含む、鉄と亜鉛との合金であるI4の場合の金属被膜14よりも低い融点及び蒸発温度を有する。
【0061】
表2を参照して、本発明の方法の適用の第2の実施例を挙げる。この場合、鋼ブランク1は、自動車部品のスタンピングに用いられる形状ブランクである。該自動車部品は、臨界領域と呼ばれる、所定の領域におけるスタンピング中の亀裂の形成に影響されやすい。熱処理操作は、自動車部品における該臨界領域に対応する鋼板ブランク1の周辺の加熱部18に対して行った。熱源16は加熱された周辺部18に焦点のぼやけたレーザースポットを形成し、ブランク12のスタックを走査するレーザーである。鋼ブランク1は純亜鉛製の金属被膜14を担持する。熱処理操作を受けなかった鋼ブランク1のスタンピング後の臨界領域におけるエッジ亀裂の発生と、本方法による熱処理を受けた鋼ブランク1のスタンピング後のエッジ亀裂の発生を比較することにより、エッジ亀裂の形成を低減する方法の効率を評価した。
【0062】
表2に見られるように、臨界領域に向かい合うエッジ亀裂の問題は、本発明の実施により解決される。さらに、熱処理された領域における金属被膜の蒸発速度は20%未満のままである。
【0063】
【0064】