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  • 特許-溶融金属フィルタの電磁プライミング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】溶融金属フィルタの電磁プライミング
(51)【国際特許分類】
   B22D 43/00 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
B22D43/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021515625
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019052162
(87)【国際公開番号】W WO2020061459
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】62/734,704
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515257689
【氏名又は名称】パイロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】フリッチ ロバート
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536808(JP,A)
【文献】特開平06-246403(JP,A)
【文献】特開平06-306499(JP,A)
【文献】特表2020-516462(JP,A)
【文献】特表2005-517290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属から固体介在物を除去するためのフィルタエレメントをプライミングする方法であって、
前記フィルタエレメントは、ボックスまたは樋に収容され、少なくとも2つのインダクタが前記フィルタエレメントの対向する2つの側に対称に配置され、前記少なくとも2つのインダクタにはそれぞれ独立した電力が供給され、
前記方法は、
a)前記少なくとも2つのインダクタに調整可能なAC又はパルスDCの励磁電流を印加するステップと、
b)前記フィルタエレメントの上流側を覆うのに十分な液体金属を添加するステップと、
)磁場を生成する前記インダクタによって前記液体金属内に誘導された電流によって、前記液体金属を撹拌するローレンツ力を生じさせ、前記液体金属をセラミックの前記フィルタエレメントに押し込んで、前記フィルタエレメントをプライミングするステップと、
d)所定のプライミング度が得られた後、前記励磁電流を停止するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記フィルタエレメントの対向する2つの側に配置された2つの別個の前記インダクタのみが用いられる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶融金属は、フィルタエレメントを通って上方または下方に流れるように方向付けられる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つのインダクタは、前記フィルタエレメントの上面の上方または下面の下方のいずれかの面にコイルを形成する少なくとも2回の巻数のワイヤを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタエレメントは、導電性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つのインダクタは、互いに補完するように位相調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フィルタボックスの側は、インダクタを含まない金属入口樋及び金属出口樋を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記インダクタは、プライミングに加えて、プライミング前に誘導加熱を実行するために用いられる、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、溶融金属フィルタの電磁プライミングに関する。しかしながら、本実施形態は、他の同様の用途にも適用可能であることを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
固体介在物を除去して液体金属を精製するためにフィルタが現在使用されている。これらの固体介在物は、凝固前に除去しないと最終金属製品に物理的欠陥をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第4,081,371号明細書
【文献】米国特許第4,872,908号明細書
【文献】米国特許第9,605,332号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶融金属の効果的なフィルタリング(濾過)を行う前に、フィルタ材料を液体金属で濡らす(プライミングする)べきである。アルミニウムのような金属は高い表面張力と高い濡れ角(接触角)を有するので、濡れは困難である。濡れていないフィルタの表面は、フィルタリング中に活性化されにくく、フィルタ効率を低下させる。より具体的には、不完全な濡れは、フィルタの活性部分における局所的な高い液体速度、高い動作圧力の降下、または、低い総液体金属処理量、および固体介在物に対するより低い収集効率をもたらし得る。フィルタリングにおけるプライミングの重要性は、特許文献1及び特許文献2などの多数の特許文献に開示されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
フィルタは、フィルタ媒体への金属の流れを改善するためにバーナーによって予熱することができ、それにより、フィルタ上の固定された金属高さに対するプライミング効率を改善することができる。しかし、フィルタ媒体の熱損傷をもたらす可能性のある局所的な過熱なしに均一な加熱を得ることは困難である。
【0006】
特許文献3(なお、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、非導電性フィルタをプライミングするための装置および方法を教示している。一実施形態では、セラミックフィルタ媒体は、低周波誘導コイルによって取り囲まれている。そのコイルは、加熱された金属をフィルタエレメントの上面に衝突させるように作用するローレンツ力を生成するように配置される。しかしながら、この構造は、セラミックの破壊や高振動などの欠点を有する。
【0007】
本開示は、これらの欠点を最小化するセラミックフィルタのプライミングのためのシステムおよび方法を提供する。
【0008】
以下、本開示の様々な詳細を要約して、基本的な理解を提供する。本要約は、本開示の広範な概要ではなく、本開示の特定の要素を特定することも、その範囲を説明することも意図していない。むしろ、本要約の主な目的は、以下に提示されるより詳細な説明の前に、本開示のいくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によれば、液体金属から固体介在物を除去するためにフィルタエレメントをプライミングする方法が提供される。フィルタエレメントは、ボックスまたは樋(とい)に収容され、インダクタが、フィルタエレメントの側(側面)に配置される。この方法は、a)インダクタに励磁電流を印加するステップ、b)フィルタエレメントの上流側を覆うのに十分な液体金属を添加するステップ、c)インダクタによって液体金属に誘導された電流によって、液体金属を攪拌するローレンツ力を生じさせ、液体金属をフィルタエレメントに押し込んでフィルタエレメントをプライミングするステップ、およびd)所定のプライミング度が得られた後に励磁電流を停止するステップを含む。電磁力はまた、プライミングサイクルの終了時に使用して、フィルタ中の残留金属を除去し、総重量収率を改善するのを助けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
発明は、新規な部分、構造、配置、組合せ及び改良から成り、図示し、かつ、説明する。本明細書に組み込まれ、明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の一実施形態を示し、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0011】
図1】従来技術のフィルタボックスの概略図である。
図2】本開示に係るフィルタボックスの概略図(端面及び側面のそれぞれの断面図)および上面図である。
図3】第1の垂直多重フィルタのプレート構成および第2の傾斜した垂直多重フィルタのプレート構成の概略図(上面図と側面の断面図)である。
図4】上昇した出口樋を有する第1の構成と、インラインの出口樋を有する第2の構成とを含む、傾斜した複数のフィルタプレート構成の概略図(上面図と側面の断面図)である。
図5】本開示のフィルタを含む樋の概略図(端面の断面図、上面図、側面図)である。
図6】第1のインライン構成および第2の降下構成を含む、本開示に係る代替のフィルタを含む樋システム、の断面概略図(端面及び側面のそれぞれの断面図)である。
図7】代替のフィルタを含む樋システムの概略図(端面及び側面のそれぞれの断面図、上面図、側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の種々の態様は、(1)1つまたは複数のフィルタエレメントをプライミングするために1つまたは複数の別個のインダクタを使用することによって、外部から印加される機械的または超音波の振動、真空、又は、ガス、を使用せずに、溶融金属フィルタをプライミングする方法、(2)より高い効率で動作し、より少ない介在物を含有する金属製品を製造するための、小さな“窓”サイズを有するセラミック発泡体フィルタ、例えば15~80PPIの市販セラミック発泡体フィルタなどのフィルタの改善されたプライミングの方法、(3)従来のフィルタよりも厚いフィルタ又は積層されたフィルタのプライミングを可能にするプライミング方法、及び、(4)以前に使用したフィルタ媒体を再加熱し、その後再使用することができる装置、に関する。
【0013】
図1は、セラミック発泡体フィルタ(特許文献3を参照)と共に典型的に使用される従来のフィルタボウル1と、誘導コイル2と、を示す。2層の誘導コイル2が図1に示されている。誘導コイル2の内側にセラミック発泡体のフィルタエレメント3が設置されている。ガスケット材4は、フィルタ3の周囲の液体金属の漏れを防ぐ。耐火材5により断熱を行う。ボウルの上部6またはボウルの排出部7における溶銑と、コイル2またはコイルリード8と、の接触を避けるために、十分な耐火性材料が存在し得る。適切な冷却媒体(有機媒体または水)は、コイルリード8およびコイル2と組み合わせて使用することにより、電気的または熱的な過熱、および、導電体への損傷を防止することができる。
【0014】
図1の従来技術の構造は、実験室規模の環境において効果的であることが証明されている。本開示は、適切な業界規模の構成を対象とする。特に、従来技術のコイル構造は、コイルがフィルタエレメントを包囲しなければならないので、フィルタサイズが制限されてしまう可能性がある。また、これは、1ターン当たり非常に長いインダクタを必要とし、高い抵抗熱損失を生成する高い電流密度を必要とし、それにより大量の熱をコイルから除去することを必要とする。また、コイルが長いので、コイルを冷却するために非常に高い圧力かつ強力なポンプが必要である。より大きなシステムはまた、非常に高い誘導率を有する非常に非効率的なインダクタに遭遇する可能性がある。
【0015】
本開示の一実施形態では、フィルタをプライミングするための装置は、液体金属の流れを受け取るように構成されたフィルタエレメントと、前記フィルタエレメントの少なくとも1つの側(側面)にあり、磁場を生成するように構成されたコイルと、コイルの外側を囲む電磁シールドと、を備える。セラミックフィルタ、結合粒子フィルタ、深層フィルタおよび他の適切なフィルタ媒体が採用されても良い。
【0016】
以下の図を通じて、単純なコイル構成が示されているが、本開示は、誘導コイル、パンケーキコイル、およびバスバーなども意図していることに留意されたい。
【0017】
耐火物の寿命を延長し、フィルタの安全な取り扱いを確保するために、フィルタケースの耐火物およびフィルタは、ガスバーナーまたは電気ヒーターなどの従来の手段によって、強制対流または自然対流の両方で予熱されてもよい。これにより、熱衝撃および摩耗が回避され、スワンネックやリターンレッグ内の金属が凍結するリスクが低減される。
【0018】
本開示は、プライミング中にコイルに印加される電流として、連続電流(ACまたはパルスDC)の使用を意図している。フィルタ媒体が実質的に金属で満たされると、コイルの励磁が停止される。その後、従来の鋳造手順を使用することができる。
【0019】
本開示の別の実施形態では、適切に使用されたフィルタエレメントは、介在物を除去する能力が完全になくなるまで再使用することができる。適切に使用されたフィルタエレメントは、液体金属でプライミングする前に誘導加熱の期間を適用することによって、プライミングコイルを用いて介在物を金属から完全に排出することによって、または、連続的な誘導加熱によって鋳造の間に液体金属で充填されたフィルタを維持することによって、再使用することができる。一態様では、60Hzより高い励磁電流が有利に使用される。本実施形態は、溶融操作のために特別に設計された第2のコイルと任意に組み合わせることができる二重周波数電源を利用する。
【0020】
本開示は、アルミナ、ジルコニア、ムライト、スピネルまたは他の鉱物といったような非導電性フィルタ、または炭化ケイ素のような導電性フィルタを使用することができる。さらに、フィルタは、プレートまたはチューブ状のフィルタ、結合粒子フィルタ(BPF)または深層フィルタ(大きな濾過長)であってもよい。
【0021】
電源は調整可能なソリューションであって、誘導電磁流体力学(MHD)速度場に加えて、フィルタ内とその近傍に十分に強い磁場を生成する特定のコイルを帯電させて、フィルタ表面の溶融金属に電磁振動を発生させることができる。
【0022】
ここで、図2の実施形態に移ると、フィルタボックス構成は、フィルタボックスの対向する2つの側(側面)のそれぞれに配置された2つの別個のコイルを備える。本明細書で使用される場合、別個とは、各コイルが他のコイルとは独立して電力を受けることを意味する。これには、独立した電源の概念、および/または、個別の位相を提供するシステムと組み合わせた共通の電源の使用が含まれる。制御可能なスイッチングを有する電源整流器もまた、調整可能な周波数のDC電流を異なるインダクタに提供し、回転磁場を生成することが企図される。
【0023】
ACまたはパルスDC電界では、ローレンツ力は、フィルタ内およびフィルタの近くに提供される。0~60ヘルツのパルス幅/位相シフトを使用して、適切で望ましい浸透深さを実現することができる。
【0024】
金属入口樋及び金属出口樋を含むフィルタボックスの側面は、コイルを含まない。この構成は、単一の誘導コイルがフィルタの4つの側面すべてを取り囲む図1の構造と対照的である。フィルタの1つの側面に単一のコイルを使用するか、またはフィルタの対向する2つの側面に別個のコイルを使用することにより、本構成は、交番磁界を誘導してフィルタをプライミングすることができる。フィルタボックスは、プレキャスト耐火物から形成され、システムの物理的保護および完全性を提供する。フィルタボックスは、通常は溶融シリカまたはアルミナから作られるが、場合によっては炭化ケイ素からも作られる。特定の環境では、繊維強化溶融シリカ(ステンレス鋼/炭素繊維)を使用することができる。キャスタブルウール、断熱ボードまたは微細孔システムなどの断熱材が耐火物を囲むことができる。鋼シェルのような凍結面がシステム全体を取り囲み、電磁場が強度領域に向かって磁束を放出することを可能にする絶縁窓がコイルの前の鋼ボディに切り込まれることができる。その窓は、金属バリアとして非導電性耐火物で充填されることができる。コイルは、振動および摩耗を回避し、コイルを物理的に安定させるために、ソリッドゴムおよび/またはキャスタブルゴムによって保護されることができる。コイルの周囲には、軟鋼板から成る装置のEMC認証を保証する磁束ガイドシステムを設けることができる。コイル及び磁束ガイドの全体の周りの最終的なレイヤは、鋳造収容環境のための物理的な保護を提供する軟鋼シェルとすることができる。
【0025】
二つの異なるコイルの磁場は、フィルタ上の金属に渦電流を誘起し、それが誘起磁場と相互作用して強力なローレンツ力を発生させる。ローレンツ力は、金属の電磁流体力学的力および起電力振動を引き起こし、フィルタエレメントの表面上に衝突を確立し、衝突する金属の運動量が、プライミングのためにフィルタに金属を押し込む。
【0026】
1mT~70mTの大きさの磁束が考えられる。フィルタの表面または角部における0.5Tのピーク電力が望ましい。コイルから離れたフィルタ領域では、より小さい電力が期待される。これは、コイル上で、DC電流をパルス化するか、AC電流を同期させることによって達成され得る。本開示の一態様では、コイル励磁電流の周波数は、0Hz以上65Hz以下、例えば45Hz以上60Hz以下である。
【0027】
コイルの導電体は、多くの異なる形状を有することができる。たとえば、フラット、円形、チューブ状、長方形、正方形などである。伝統的なの誘導炉コイルとは異なり、本開示のコイルは、低電気抵抗のために構築される必要はない。より高い電流密度を有利に使用することができ(例えば50A/mm^2超)、その結果、所定のコイル高さにおいてより多くの巻線を提供することができるような、且つ、それに対応して磁場強度を増加させることができるような、比例的により小さい直径の導体が得られる。
【0028】
あるいは、銅断面の厚さを厚くすれば、電流を流す面積を大きくしてコイルの抵抗を小さくすると同時に、侵入深さを調整するための周波数を小さくすることができる。これにより、冷却要件を低減しながら電流密度を増加させることができる。したがって、特定の実施形態では、フィルタの中心における磁場を増加させるために、調整された巻数および電流密度比を持った、より大きな断面の、より低い抵抗コイルの使用が望ましい場合がある。単一、二重またはそれ以上の層のコイルが有利に使用される。
【0029】
フィルタ装置は、本開示の目的から逸脱することのない、断面が円形、正方形または長方形であり得る。長方形状は、磁場が貫通しなければならない幅を最小化しながら、フィルタ領域全体を最大化できるという利点を有する。長方形状は、プライミング段階において金属への第3の浸透深さに達するのに十分な浸透深さがあり、実質的なプライミング効果を発生させるので、ライン周波数(45~60Hz)より低い周波数を使用する必要をなくすことができる。
【0030】
プライミング中にガスを逃がすための経路がある場合、コイルおよびフィルタエレメントの向きは、垂直または水平のいずれかにすることができる。但し、電磁場は、プライミング動作中に空気がフィルタを通過し、フィルタから出るのを助ける。これにより、プライミング中に電磁場を使用することによるフローティングフィルタの一般的な問題が抑制される。従って、対象コイルを追加することにより、フィルタの位置決めが容易になり、有害性が低減される。
【0031】
本開示は、例えば150mmよりも厚い深層フィルタ媒体のために、より長いコイルまたは複数のコイルを使用することをさらに意図している。これにより、より大きなフィルタ厚さを使用することができ、フィルタ面積が増加する。
【0032】
大きなコイルは、単一の大きなインダクタの小さなサブセクションに電力を接続することによって、フィルタエレメント内に誘導加熱を生成するのに使用することもできる。それ以外の場合では、フィルタをプライミングするための電磁場生成に、または別個の誘導コイルとして使用することもできる。これは、フィルタボックス内の残留金属を鋳造の間に加熱すること、フィルタリング段階の前後におけるフィルタ内の金属を再溶融すること、導電性の未使用のフィルタ部分を予熱すること、および/または鋳造中に金属に連続的な熱を加えることを可能にし、フィルタボックス内の金属が液体のままであるのを助ける。
【0033】
本電磁プライミング法を用いることにより、フィルタを介して一方向または両方向に溶融金属を駆動することも可能である。設計されたシステムの初期の金属の流れは、十分なプライミング圧力を発生させるために、上述の方法で配置されたコイルを必要とする。プライミング後、流れ方向を反転させることができる。
【0034】
本発明の実施形態は、プライミングのためにフィルタの予熱を必要としないので有利である。それにもかかわらず、長い屈折寿命、機械的に強いフィルタを保証し、熱衝撃を回避するためには、加熱が依然として推奨され得ることが経験によって示されている。
【0035】
フィルタプライミングコイルによって生成された電磁場を使用することによって、各鋳造操作の後にフィルタを排出することができる。これは、フィルタから残留金属の大部分を除去し、金属収率をさらに増加させ、使用済みのフィルタエレメントの取り扱いを改善し、鋳造プロセスにより生じる全体の廃棄物と損失を低減し、健康、安全および環境(HSE)の側面に直接積極的に貢献することができる。
【0036】
図3には、垂直方向に配向されたフィルタプレートを含むフィルタボックスの2つの実施形態が示されている。第一の実施形態では、プレートは垂直であるが、第二の実施形態では、プレートは約30度傾斜している。これらの実施形態では、コイル、又は、フィルタの対向する側面は、同様に垂直に配向される。
【0037】
ここで図4を参照すると、傾斜したフィルタプレート及び垂直に配向されたコイルが、上昇した下流樋を有する第1の実施形態及び一列に並んだ下流樋を有する第2の実施形態に示されている。図4の実施形態は、さらに、溶融金属をフィルタボックスに導入するインダクタを含む。
【0038】
図5の実施形態によれば、樋の底部にフィルタが挿入され、樋がフィルタボウルとして機能する。樋の周囲には、鉄骨と断熱材が設けられる。特定の実施形態では、コイルは、絶縁体および鋼によってフィルタから分離され得る。樋要素は典型的な設計スタイルのものであってもよいが、入口樋は少なくとも1つの重なり合う位置で出口樋の上に配置される。重なった位置には、レイザー/つなぎを設けることができる。フィルタエレメントは、樋の流路に一致するように長方形の形状とすることができる。たとえば、フィルタは、幅の2倍以上または4倍以上の長さを持つことができる。フィルタ長さに概ね対応する長さを有するインダクタは、入口樋ベース内のフィルタの対向する長辺に配置される。
【0039】
次に、図6の実施形態を参照すると、別の樋のフィルタシステムが示されており、ここでは、フィルタの底面と出口樋との間の距離が最小化されている。これにより、不要な乱気流を回避することができる。バージョン1の実施形態では、出口樋に段差も含まれている。この段差は、溶融金属がフィルタの下の洗浄領域を充填し、フィルタの底面に隣接して上昇し、乱流を引き起こす可能性のある滝効果をさらに低減するように促すことができる。
【0040】
ここで、図7を参照すると、細長いフィルタは破損する傾向があるので、いくつかの標準化された矩形フィルタが利用される。いくつかのフィルタセグメントを使用することによって、より大きなフィルタリング面積を達成することができる。図の***は、樋/コイルの配置が所望のスループットを提供するのに適した任意の長さであり得ることを意味する。コイルは、各フィルタに対して1対の独立したコイルとすることができる。
【0041】
運転中、入口樋は、例として、ポンプまたはラドルを介して溶融金属を炉から受け入れる。インダクタは、フィルタのプライミングを改善するために活性化される。その後、溶融金属は、入口樋を通って、フィルタを通過し、放電のために出口樋に受け入れられ、例えば鋳造装置に流れる。
【0042】
以上、好ましい実施形態を参照して本実施形態を説明した。明らかに、前述の詳細な説明を読んで理解すると、他に修正や変更が生じる。例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲またはその等価物の範囲内に入る限り、そのようなすべての修正および変更を含むものと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7