(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】新規の抗IFNAR1抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20231117BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231117BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231117BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231117BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231117BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231117BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231117BHJP
C12N 5/16 20060101ALI20231117BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231117BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20231117BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231117BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231117BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231117BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20231117BHJP
A61P 5/16 20060101ALI20231117BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231117BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20231117BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20231117BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231117BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231117BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231117BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231117BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20231117BHJP
A61K 38/21 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/16
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P31/18
A61P3/10
A61P1/04
A61P1/00
A61P11/00
A61P17/06
A61P5/14
A61P5/16
A61P13/12
A61P25/02
A61P21/04
A61P17/00
A61P37/02
A61P21/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P25/00
A61P37/06
G01N33/53 P
G01N33/53 N
C07K14/715
A61K38/21
(21)【出願番号】P 2021544443
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2020073939
(87)【国際公開番号】W WO2020156474
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/074263
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC CGMCC 16286
【微生物の受託番号】CGMCC CGMCC 16287
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521336093
【氏名又は名称】イミューンセント バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】521336107
【氏名又は名称】インスティテュート オブ バイオフィジックス,チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジンギュン
(72)【発明者】
【氏名】イェ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ザン,シュヤン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,リゴ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ガンシャ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0102072(US,A1)
【文献】特開2006-089494(JP,A)
【文献】特表2008-508864(JP,A)
【文献】国際公開第2018/023976(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体またはその抗原結合断片であって、
a)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号23の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号71の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3;
b)配列番号25の配列を含むHCDR1、配列番号26の配列を含むHCDR2、配列番号27の配列を含むHCDR3、配列番号72の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号28の配列を含むLCDR3;
c)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号65の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号71の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3;
d)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号23の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3;または
e)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号65の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3
を含
み、ヒトインターフェロンアルファ受容体1(ヒトIFNAR1)に特異的に結合することができる、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4のうちの1つもしくは複数、ならびに/または軽鎖LFR1、LFR2、LFR3およびLFR4のうちの1つもしくは複数をさらに含み、
a)HFR1は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号33)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、
b)HFR2は、WVRQX
10PGQGLEWX
11G(配列番号34)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、
c)HFR3配列は、RVTX
12TX
13DX
14STSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号35)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、
d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号36)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、
e)LFR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号37)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、
f)LFR2は、WYQQKPGX
15APKLLIX
16(配列番号38)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、
g)LFR3はGVPSRFSGSGSGX
17DX
18TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号39)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、ならびに
h)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号40)またはその少なくとも
90%配列同一性の相同配列を含み、
X
10はAまたはRであり、X
11はMまたはIであり、X
12はMまたはLであり、X
13はRまたはVであり、X
14はTまたはKであり、X
15はKまたはNであり、X
16はYまたはSであり、X
17はTまたはKであり、X
18はFまたはYである、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
HFR1が、配列番号33の配列を含み、
HFR2が、配列番号41、42および43から選択される配列を含み、
HFR3が、配列番号44および45から選択される配列を含み、
HFR4が、配列番号36の配列を含み、
LFR1が、配列番号37の配列を含み、
LFR2が、配列番号46、47および48から選択される配列を含み、
LFR3が、配列番号49および50から選択される配列を含み、ならびに
LFR4が、配列番号40の配列を含む、
請求項
2に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
配列番号7、9、67、もしくは51~54の配列または配列番号7、9、67、もしくは51~54と少なくとも
90%配列同一性を有するその相同配列を含む重鎖可変領域(V
H)を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号8、10、68、もしくは55~58の配列または配列番号8、10、68、もしくは55~58と少なくとも
90%配列同一性を有するその相同配列を含む軽鎖可変領域(V
L)を含む、請求項1~
4のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
免疫グロブリン定常領域をさらに含む、請求項1~
5のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
ヒト免疫グロブリンの定常領域をさらに含む、請求項1~
5のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
ヒトIgGの定常領域をさらに含む、請求項1~
5のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
ヒト化モノクローナル抗体である、請求項1~
8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
IFNβ媒介抗ウイルス活性を阻害しない、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
IFNα媒介またはIFNω媒介ヒトIFNAR1活性化に対するその阻害効果が、IFNβ媒介ヒトIFNAR1活性化に対する阻害効果の少なくとも4、5、6、または7倍高い、請求項1または
10に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
1つまたは複数のコンジュゲート部分に連結されている、請求項1~
11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
a)アミノ酸残基127~227またはb)アミノ酸残基231~329を欠くトランケート型ヒトIFNAR1には結合しない、請求項
1に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
IGHV1-69遺伝子、IGHD2-4遺伝子、およびIGHJ4遺伝子から選択される1つもしくは複数のマウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子の産物であるか、もしくはこれに由来する重鎖可変領域、ならびに/またはIGKV13-84遺伝子およびIGKJ4遺伝子から選択される1つもしくは複数のマウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子の産物であるか、もしくはこれに由来する軽鎖可変領域を含む、請求項1~
13のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
ヒト化されている、請求項
14に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
CGMCC寄託番号16286もしくはCGMCC寄託番号16287の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞により産生される抗体またはその抗原結合断片。
【請求項17】
二重特異性である、請求項1~
16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項18】
請求項1~
17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項
18に記載
の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項20】
請求項
19に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
請求項1~
15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を産生することができる、請求項
20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
CGMCC寄託番号16286またはCGMCC寄託番号16287の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞。
【請求項23】
請求項
19に記載の発現ベクターが発現される条件下で、請求項
20~
21のいずれかに記載の宿主細胞を培養することを含む、請求項1~
15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を産生する方法。
【請求項24】
宿主細胞により産生された抗体またはその抗原結合断片を精製することをさらに含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~
16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項26】
対象においてI型IFN関連疾患または状態を処置するための医薬組成物であって、治療有効量の、請求項1~
16のいずれかに記載の抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物。
【請求項27】
I型IFNがIFNαおよび/またはIFNωである、請求項
26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
疾患または状態が、I型インターフェロン(IFN)および/またはI型IFNシグネチャー遺伝子を発現または過剰発現することを特徴とする、請求項
26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
疾患が、HIV感染またはAIDS、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫原発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症を伴う破壊性甲状腺炎、糸球体腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、レイノー症候群、掌蹠膿疱症(PPP)、びらん性扁平苔癬、天疱瘡水疱症、表皮水疱症、接触性皮膚炎およびアトピー性皮膚炎、多発性神経根炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、筋肉炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性硬化症、強皮症、多発性硬化症(MS)、特発性炎症性筋疾患(IIM)、関節リウマチ(RA)、移植片拒絶および移植片対宿主病(GVHD)、ならびにエカルディグティエール症候群(AGS)である、請求項
28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
IFNβ媒介ヒトIFNAR1活性化が阻害されない、請求項
26~
29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項31】
治療有効量のIFNβの投与と組み合わせて使用される、請求項
26~
30のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項32】
IFNαおよび/またはIFNωを発現するまたは過剰発現する細胞の生理活性を阻害するインビトロの方法であって、細胞を請求項1~
16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む方法。
【請求項33】
試料中のヒトIFNAR1の存在またはレベルを検出する方法であって、試料を請求項1~
16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む方法。
【請求項34】
請求項1~
16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片および使用説明書を含む検出または治療キット。
【請求項35】
それを必要とする対象においてI型IFN関連疾患または状態を処置するための薬物の製造における請求項1~
15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項36】
請求項1~
16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片およびIFNβを含む治療キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的には新規な抗IFNAR1抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
I型インターフェロン(IFN-I)は、抗ウイルス、免疫調節性および抗増殖活性を有するサイトカインの大きなファミリーを含む。IFN-Iファミリーは、IFNα、IFNβ、IFNε、IFNκおよびIFNωを含む5つの密接な関係があるメンバーからなる。IFNβは、単球分化を阻害する、ウイルス複製を阻害する、およびヒト腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することなどにおいて、IFNαまたはIFNωよりもはるかに大きな効力を示す(Schreiber G,ら、(2015)Trends Immunol 36:139~49頁)。一方、IFNβはあるIFN-I関連疾患病態形成には最小の関与しかしておらず、これによりIFNβはIFNαおよびIFNωとは区別される(Slavikova Mら、(2003)J Interferon Cytokine Res 23:143~147頁、Hua J,ら、(2006)Arthritis Rheum 54:1906~16頁)。
【0003】
すべてのIFN-Iは、IFNAR1およびIFNAR2鎖からなるIFN-α受容体(IFNAR)として知られるヘテロ二量体受容体を通じてシグナルを送る。IFNAR1は、IFNAR複合体の高親和性結合および差示的特異性に不可欠である(Cutrone ECら、(2001)J.Biol.Chem.276:17140頁)。
【0004】
新規な抗IFNAR1抗体の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
本開示全体を通じて、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、冠詞の文法的対象の1つまたは1つよりも多い(すなわち、少なくとも1つ)をさすのに本明細書では使用される。例として、「1つ(an)の抗体」は1つの抗体または1つよりも多い抗体を意味する。
【0006】
本開示は、抗IFNAR1抗体(例えば、抗ヒトIFNAR1)またはその抗原結合断片、それをコードする単離されたポリヌクレオチド、それを含む医薬組成物、およびその使用を提供する。
【0007】
一態様では、本開示は、重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに/または軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む抗体またはその抗原結合断片であって、HCDR1は、SX1WX19N(配列番号1)またはその少なくとも75%(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%)配列同一性の相同配列を含み、HCDR2は、KIDPSDSEX2X20X21NQKFX22D(配列番号2)またはその少なくとも75%(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%)配列同一性の相同配列を含み、HCDR3は、GGX3IX4X5DYDX6AX7DY(配列番号3)またはその少なくとも60%(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%)配列同一性の相同配列を含み、LCDR1は、KX23SEVIYNRLA(配列番号4)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、少なくとも84%)配列同一性の相同配列を含み、LCDR2は、GATX24LEX25(配列番号5)またはその少なくとも65%配列同一性の相同配列を含み、LCDR3は、QQYWX8X9PFT(配列番号6)またはその少なくとも65%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%)配列同一性の相同配列を含み、X1はYまたはFであり、X2はTまたはIであり、X3はRまたはGであり、X4はSまたはYであり、X5はFまたはYであり、X6はAまたはGであり、X7はLまたはMであり、X8はNまたはSであり、X9はKまたはSであり、X19はMまたはLであり、X20はHまたはRであり、X21はFまたはYであり、X22はRまたはKであり、X23はSまたはAであり、X24はTまたはSであり、X25はSまたはTであり、抗体またはその抗原結合断片はIFNAR1、例えば、ヒトIFNAR1に特異的に結合することができる、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0008】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1に3、2、もしくは1以下のアミノ酸置換を有するHCDR1、配列番号2に6、5、4、3、2、もしくは1以下のアミノ酸置換を有するHCDR2、配列番号3に6、5、4、3、2、もしくは1以下のアミノ酸置換を有するHCDR3、配列番号4に2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するLCDR1、配列番号5に3、2、もしくは1以下のアミノ酸置換を有するLCDR2、および/または配列番号6に3、2、もしくは1以下のアミノ酸置換を有するLCDR3を含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号21および25から選択される配列を含む重鎖HCDR1、配列番号22および26から選択される配列を含む重鎖HCDR2、ならびに配列番号23、27および65から選択される配列を含む重鎖HCDR3を含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号70および72から選択される配列を含む軽鎖LCDR1、配列番号71および66から選択される配列を含む軽鎖LCDR2、ならびに配列番号24および28から選択される配列を含む軽鎖LCDR3を含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3は、a)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、および配列番号23の配列を含むHCDR3;b)配列番号25の配列を含むHCDR1、配列番号26の配列を含むHCDR2、および配列番号27の配列を含むHCDR3;ならびにc)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、および配列番号65の配列を含むHCDR3から選択される。
【0012】
ある特定の実施形態では、軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3は、a)配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号71の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3;b)配列番号72の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号28の配列を含むLCDR3;ならびにc)配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3から選択される。
【0013】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、a)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号23の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号71の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3;b)配列番号25の配列を含むHCDR1、配列番号26の配列を含むHCDR2、配列番号27の配列を含むHCDR3、配列番号72の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号28の配列を含むLCDR3;c)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号65の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号71の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3;d)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号23の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3;またはe)配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、配列番号65の配列を含むHCDR3、配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3を含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、重鎖HFR1、HFR2、HFR3およびHFR4のうちの1つもしくは複数、ならびに/または軽鎖LFR1、LFR2、LFR3およびLFR4のうちの1つもしくは複数をさらに含み、a)HFR1は、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号33)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)配列同一性の相同配列を含み、b)HFR2は、WVRQX10PGQGLEWX11G(配列番号34)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%)配列同一性の相同配列を含み、c)HFR3配列は、RVTX12TX13DX14STSTVYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号35)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%)配列同一性の相同配列を含み、d)HFR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号36)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%)配列同一性の相同配列を含み、e)LFR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号37)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%)配列同一性の相同配列を含み、f)LFR2は、WYQQKPGX15APKLLIX16(配列番号38)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%)配列同一性の相同配列を含み、g)LFR3はGVPSRFSGSGSGX17DX18TLTISSLQPEDFATYYC(配列番号39)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%)配列同一性の相同配列を含み、ならびにh)LFR4は、FGQGTKLEIK(配列番号40)またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%)配列同一性の相同配列を含み、X10はAまたはRであり、X11はMまたはIであり、X12はMまたはLであり、X13はRまたはVであり、X14はTまたはKであり、X15はKまたはNであり、X16はYまたはSであり、X17はTまたはKであり、X18はFまたはYである。
【0015】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、配列番号33の配列に3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するHFR1、配列番号34の配列に3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するHFR2、配列番号35の配列に6、5、4、3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するHFR3、配列番号36の配列に4、3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するHFR4、配列番号37の配列に6、5、4、3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するLFR1、配列番号38の配列に4、3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するLFR2、配列番号39の配列に6、5、4、3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するLFR3、および/または配列番号40の配列に3、2もしくは1以下のアミノ酸置換を有するLFR4を含む。
【0016】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号33の配列を含む重鎖HFR1、配列番号41、42および43から選択される配列を含む重鎖HFR2、配列番号44および45から選択される配列を含む重鎖HFR3、ならびに配列番号36の配列を含む重鎖HFR4をさらに含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号37の配列を含む軽鎖LFR1、配列番号46、47および48から選択される配列を含む軽鎖LFR2、配列番号49および50から選択される配列を含む軽鎖LFR3、ならびに配列番号40の配列を含む軽鎖LFR4をさらに含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、a)配列番号33の配列を含むHFR1、配列番号41の配列を含むHFR2、配列番号44の配列を含むHFR3、および配列番号36の配列を含むHFR4;b)配列番号33の配列を含むHFR1、配列番号41の配列を含むHFR2、配列番号45の配列を含むHFR3、および配列番号36の配列を含むHFR4;c)配列番号33の配列を含むHFR1、配列番号42の配列を含むHFR2、配列番号45の配列を含むHFR3、および配列番号36の配列を含むHFR4;ならびにd)配列番号33の配列を含むHFR1、配列番号43の配列を含むHFR2、配列番号45の配列を含むHFR3、および配列番号36の配列を含むHFR4から選択される重鎖HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4の組合せをさらに含む。
【0019】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、a)配列番号37の配列を含むLFR1、配列番号46の配列を含むLFR2、配列番号49の配列を含むLFR3、および配列番号40の配列を含むLFR4;b)配列番号37の配列を含むLFR1、配列番号46の配列を含むLFR2、配列番号50の配列を含むLFR3、および配列番号40の配列を含むLFR4;c)配列番号37の配列を含むLFR1、配列番号47の配列を含むLFR2、配列番号50の配列を含むLFR3、および配列番号40の配列を含むLFR4;ならびにd)配列番号37の配列を含むLFR1、配列番号48の配列を含むLFR2、配列番号50の配列を含むLFR3、および配列番号40の配列を含むLFR4から選択される軽鎖LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4の組合せをさらに含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7、9、67、もしくは51~54の配列またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)配列同一性を有する相同配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0021】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号8、10、68、もしくは55~58の配列またはその少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)配列同一性を有する相同配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、a)配列番号7の配列を含む重鎖可変領域および配列番号8の配列を含む軽鎖可変領域;b)配列番号9の配列を含む重鎖可変領域および配列番号10の配列を含む軽鎖可変領域;c)配列番号51の配列を含む重鎖可変領域および配列番号55の配列を含む軽鎖可変領域;d)配列番号52の配列を含む重鎖可変領域および配列番号55の配列を含む軽鎖可変領域;e)配列番号53の配列を含む重鎖可変領域および配列番号55の配列を含む軽鎖可変領域;f)配列番号54の配列を含む重鎖可変領域および配列番号55の配列を含む軽鎖可変領域;g)配列番号51の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域;h)配列番号52の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域;i)配列番号53の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域;j)配列番号54の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域;k)配列番号51の配列を含む重鎖可変領域および配列番号57の配列を含む軽鎖可変領域;l)配列番号52の配列を含む重鎖可変領域および配列番号57の配列を含む軽鎖可変領域;m)配列番号53の配列を含む重鎖可変領域および配列番号57の配列を含む軽鎖可変領域;n)配列番号54の配列を含む重鎖可変領域および配列番号57の配列を含む軽鎖可変領域;o)配列番号51の配列を含む重鎖可変領域および配列番号58の配列を含む軽鎖可変領域;p)配列番号52の配列を含む重鎖可変領域および配列番号58の配列を含む軽鎖可変領域;q)配列番号53の配列を含む重鎖可変領域および配列番号58の配列を含む軽鎖可変領域;r)配列番号54の配列を含む重鎖可変領域および配列番号58の配列を含む軽鎖可変領域;s)配列番号67の配列を含む重鎖可変領域および配列番号56の配列を含む軽鎖可変領域;t)配列番号52の配列を含む重鎖可変領域および配列番号68の配列を含む軽鎖可変領域;またはu)配列番号67の配列を含む重鎖可変領域および配列番号68の配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0023】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、免疫グロブリン定常領域、任意選択で、ヒト免疫グロブリンの定常領域、または任意選択で、ヒトIgGの(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の)定常領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、定常領域は1つまたは複数の改変を含む。ある特定の実施形態では、改変はグリコシル化部位を導入するまたは取り除く。ある特定の実施形態では、改変は遊離のシステイン残基を導入する。ある特定の実施形態では、改変は、Fc媒介エフェクター機能、例えば、増加したもしくは低減した抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、またはFc受容体結合を変更する。
【0024】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化モノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、キメラ抗体またはその抗原結合断片である。ある特定の実施形態では、その抗原結合断片は、ラクダ化単一ドメイン抗体、ダイアボディ、scFv(一本鎖Fv)、scFv二量体、BsFv(二重特異性Fv)、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、dsダイアボディ、ナノボディ、ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体である。
【0025】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IFNα媒介および/またはIFNω媒介ヒトIFNAR1活性化を阻害する。
【0026】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IFNβ媒介ヒトIFNAR1活性化を阻害しない。
【0027】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IFNβ媒介抗ウイルス活性を阻害しない。
【0028】
ある特定の実施形態では、IFNα媒介もしくはIFNω媒介ヒトIFNAR1活性化に対するまたは抗ウイルス活性に対する抗体またはその抗原結合断片の阻害効果は、IFNβ媒介ヒトIFNAR1活性化または抗ウイルス活性に対する阻害効果の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15倍である。
【0029】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、その天然の供給源から単離される。
【0030】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたは複数のコンジュゲート部分(moieties)に連結されている。
【0031】
別の態様では、本開示は、ヒトIFNAR1への結合を巡って本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片と競合する抗ヒトIFNAR1抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片はIFNβ媒介ヒトIFNAR1活性化を阻害しない。
【0032】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、Biacoreにより測定した場合、8×10-8M以下(例えば、5×10-8M以下、2×10-8M以下、8×10-9M以下、5×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、8×10-10M以下、7×10-10M以下、または6×10-10M以下)のKD値でヒトIFNAR1に特異的に結合することができる。
【0033】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ELISAにより測定した場合、0.1μg/ml以下(例えば、0.09μg/ml以下、0.08μg/ml以下、0.07μg/ml以下、0.06μg/ml以下、0.05μg/ml以下、0.04μg/ml以下、0.03μg/ml以下、0.02μg/ml以下、0.01μg/ml以下、0.009μg/ml以下、0.008μg/ml以下、0.007μg/ml以下、0.006μg/ml以下、または0.005μg/ml以下)のEC50値でヒトIFNAR1に特異的に結合することができる。
【0034】
別の態様では、本開示は、IFNAR1のアミノ酸残基127~227内の第1の断片とIFNAR1のアミノ酸残基231~329内の第2の断片の両方に結合し、IFNβ媒介IFNAR1活性化を阻害しない抗ヒトIFNAR1抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、ヒト/マウスキメラIFNAR1(すなわち、配列番号69)に特異的に結合することができる。
【0035】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、a)アミノ酸残基127~227またはb)アミノ酸残基231~329を欠くトランケート型ヒトIFNAR1には結合しない。
【0036】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、a)アミノ酸残基32~126、b)アミノ酸残基331~432、またはa)とb)の両方を欠くトランケート型ヒトIFNAR1に特異的に結合することができる。
【0037】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長ヒトIFNAR1の結合能力に匹敵する結合能力でトランケート型ヒトIFNAR1に結合する。
【0038】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、マウスIGHV1-69遺伝子、マウスIGHD2-4遺伝子、およびマウスIGHJ4遺伝子の産物であるもしくはこれに由来する重鎖可変領域、ならびに/またはマウスIGKV13-84遺伝子およびマウスIGKJ4遺伝子の産物であるもしくはこれに由来する軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片はヒト化されている。
【0039】
別の態様では、本開示は、CGMCC寄託番号16286もしくはCGMCC寄託番号16287の寄託番号、またはその抗原結合断片を有するハイブリドーマ細胞により産生される抗体を提供する。
【0040】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は二重特異性である。
【0041】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。ある特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号11および13、ならびに配列番号11または13と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)配列同一性を有するその相同配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号12および14、ならびに配列番号12または14と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)配列同一性を有するその相同配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列をさらに含む。ある特定の実施形態では、相同配列は、配列番号11、12、13、または14によりコードされるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードする。
【0042】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供される単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0043】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供される発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片を産生することができる。
【0044】
別の態様では、本開示は、CGMCC寄託番号16286またはCGMCC寄託番号16287の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞を提供する。
【0045】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片を産生する方法であって、本明細書で提供される発現ベクターが発現される条件下で、本明細書で提供される宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、方法は、宿主細胞により産生された抗体またはその抗原結合断片を精製することをさらに含む。
【0046】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0047】
別の態様では、本開示は、対象においてI型IFN関連疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合断片、または本明細書で提供される医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、I型IFNはIFNαおよび/またはIFNωである。ある特定の実施形態では、疾患または状態は、I型インターフェロン(IFN)および/またはI型IFNシグネチャー遺伝子を発現するまたは過剰発現することを特徴とする。ある特定の実施形態では、疾患は、HIV感染またはAIDS、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫原発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症を伴う破壊性甲状腺炎、糸球体腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、重症筋無力症、レイノー症候群、掌蹠膿疱症(PPP)、びらん性扁平苔癬、天疱瘡水疱症(pemphigus bullosa)、表皮水疱症、接触性皮膚炎およびアトピー性皮膚炎、多発性神経根炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、筋肉炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性硬化症、強皮症、多発性硬化症(MS)、特発性炎症性筋疾患(IIM)、関節リウマチ(RA)、移植片拒絶および移植片対宿主病(GVHD)、ならびにエカルディグティエール症候群(AGS)である。ある特定の実施形態では、IFNβ媒介IFNAR1活性化は阻害されない。ある特定の実施形態では、方法は、治療有効量のIFNβを投与することをさらに含む。
【0048】
別の態様では、本開示は、IFNαおよび/またはIFNωを発現するまたは過剰発現する細胞の生物活性を阻害する方法であって、細胞を本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む方法を提供する。
【0049】
別の態様では、本開示は、試料中のヒトIFNAR1の存在またはレベルを検出する方法であって、試料を本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む方法を提供する。
【0050】
別の態様では、本開示は、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片および使用説明書を含む検出または治療キットを提供する。
【0051】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象においてI型IFN関連疾患または状態を処置するための薬物の製造における本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】
図1Aは、ヒトIFNAR1への抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体7G4および10C5の結合を示している。
図1Aは、293T細胞表面に過剰発現されたヒトIFNAR1への7G4および10C5結合の模式的フローサイトメトリー図である(「アイソタイプ」はIFNAR1に結合しないアイソタイプ対照抗体を意味し、「7G4」は7G4抗体を意味し、「10C5」は10C5抗体を意味する)。Y軸は緑色蛍光タンパク質(GFP)の強度であり、ヒトIFNAR1発現を表し、X軸はフィコエリトリン(PE)の強度であり、ヒトIFNAR1へのモノクローナル抗体の結合を示している。
【
図1B】
図1Bは、ヒトIFNAR1への抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体7G4および10C5の結合を示している。
図1Bは、
図1AでのX軸上のGFP陽性細胞の平均蛍光強度(MFI)の統計結果である。
【
図2A】
図2Aは、ヒトIFNAR1の異なる切詰型への抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体7G4および10C5の結合を示している。
図2Aは、ヒトIFNAR1の切詰型の模式図、および7G4および10C5結合結果の要約である。「+」は抗体が切詰型に結合することを示し;「-」は抗体が切詰型に結合しないことを示す。
【
図2B】
図2Bは、ヒトIFNAR1の異なる切詰型への抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体7G4および10C5の結合を示している。
図2Bは、PE陽性細胞の割合の統計棒グラフであり、7G4および10C5は、ヒトIFNAR1の異なる切詰型を過剰発現している293T細胞に結合する。
【
図3】
図3は、抗体7G4および10C5が、フローサイトメトリーにより測定した場合、IFNα2b(
図3A)、12IFNαサブタイプ(
図3B)、およびIFNω(
図3C)により媒介されるヒトIFNAR1の活性化を遮断したが、IFNβ(
図3D)により媒介されるヒトIFNAR1活性化を遮断しなかったことを示している。「10C2」は国際公開第2018/010140号に開示されている抗体10C2を意味する。
【
図4】
図4は、抗体7G4および10C5が、IFNα媒介ウイルス複製阻害を遮断したがIFNβ媒介ウイルス複製阻害には影響を及ぼさなかったことを示している。
図4Aおよび
図4Bは、シンドビスウイルス(SINV)についての結果を表す。
図4Cおよび
図4Dは、インフルエンザウイルス(Flu)についての結果を表す。
図4Eおよび
図4Fは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)についての結果を表す。「
*」は、アイソタイプ対照と比較した場合の、p<0.05を示し、「
**」はp<0.01を示し、および「ns」は有意差なしを表す。
【
図5】
図5は、IFNAR1モノクローナル抗体7G4および10C5が、SLE患者の血清においてIFN-Iにより媒介されるヒトIFNAR1活性化を遮断したことを示している。「
*」はp<0.05を表し、「
**」はp<0.01を表し、および「ns」は有意差なしを表す。
【
図6】
図6は、抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体7G4の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号11)およびアミノ酸配列(配列番号7)を示している。陰影は、それぞれ重鎖のCDR1(配列番号21)、CDR2(配列番号22)およびCDR3(配列番号23)の配列を示している。
【
図7】
図7は、IFNAR1モノクローナル抗体7G4の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配列番号8)を示している。陰影は、それぞれ軽鎖のCDR1(配列番号70)、CDR2(配列番号71)およびCDR3(配列番号24)の配列を示している。
【
図8】
図8は、抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体10C5の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号13)およびアミノ酸配列(配列番号9)を示している。陰影は、それぞれ重鎖のCDR1(配列番号25)、CDR2(配列番号26)およびCDR3(配列番号27)の配列を示している。
【
図9】
図9は、抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体10C5の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号14)およびアミノ酸配列(配列番号10)を示している。陰影は、それぞれ軽鎖のCDR1(配列番号72)、CDR2(配列番号66)およびCDR3(配列番号28)の配列を示している。
【
図10】
図10は、抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体7G4(配列番号7)および10C5(配列番号9)の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、マウスV領域(配列番号15)の最初のVDJ遺伝子によりコードされるアミノ酸配列のアライメント結果を示している。マウス種の重鎖可変領域のコンセンサス配列もアライメントに示されている。
【
図11】
図11は、抗ヒトIFNAR1モノクローナル抗体7G4(配列番号8)および10C5(配列番号10)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と、マウスV領域(配列番号16)の最初のVJ遺伝子によりコードされるアミノ酸配列のアライメント結果を示している。マウス種の軽鎖可変領域のコンセンサス配列もアライメントに示されている。
【
図12】
図12は、ヒト化7G4バリアント(すなわち、Hu4-6、Hu4-13~Hu4-16)のELISA結合アッセイの結果を示している。
【
図13】
図13は、IFNα(
図13A)により媒介されるがIFNβ(
図13B)により媒介されないヒトIFNAR1活性化に対するHu7G4バリアント(すなわち、Hu4-5~Hu4-16)の遮断活性を示している。横軸は、試験抗体またはMockまたはアイソタイプの対照を示している。「5」はHu4-5を意味する、その他。
【
図14】
図14A~
図14Dは、フローサイトメトリーにより測定した場合、抗体7G4および10C5が、既存の抗体10C2および10C9が結合する部位とは異なる部位でヒトIFNAR1に結合することを示している。IFNAR1-WT:野生型ヒトIFNAR1;IFNAR1-m149-214:アミノ酸残基149~214がマウスIFNAR1ホモグラフィック配列により置き換えられたヒトIFNAR1。ヒトIFNAR1のアミノ酸残基149~214は、抗体10C2および10C9の結合に必要である(
図14Aおよび14B)が、抗体7G4および10C5の結合に異なる役割を果たしていることが明らかにされており、したがって、抗体7G4および10C5と抗体10C2および10C9を区別する。
【
図15A】
図15Aは、1つ、2つまたは3つの突然変異を有するヒト化7G4抗体がそれでもヒトIFNAR1への類似する結合特性を見せたことを示している。
図15Aは、ヒトIFNAR1への類似する結合効率を有する2つの7G4ヒト化抗体Hu4-6およびHu4-13を示している。
【
図15B】
図15Bは、1つ、2つまたは3つの突然変異を有するヒト化7G4抗体がそれでもヒトIFNAR1への類似する結合特性を見せたことを示している。
図15Bは、Hu4-6変異体の3つ全てが類似する結合効率でヒトIFNAR1に結合することを示している。Hu4-6-mut-1:VHにおいてA108G;Hu4-6-mut-2:VLにおいてT53SおよびS56T;Hu4-6-mut-3:VHにおいてA108GならびにVLにおいてT53SおよびS56T。
【
図16】
図16は、本明細書で言及される配列番号1~配列番号72の配列を示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本開示の以下の説明は、本開示の種々の実施形態を例示することだけが意図されている。したがって、考察されている特定の改変は、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本開示の範囲から逸脱することなく種々の均等物、変更、および改変を加えうることは当業者には明らかになり、そのような均等な実施形態が本明細書に含まれることになると理解される。刊行物、特許および特許出願を含む、本明細書に引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0054】
定義
本明細書で使用される用語「抗体」は、特定の抗原に結合する任意の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、二価抗体、一価抗体、多重特異性抗体、または二重特異性抗体を含む。天然の無傷の抗体は、2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む。哺乳動物重鎖は、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューに分類され、それぞれの重鎖は可変領域(VH)ならびに第1の、第2の、第3の、および任意選択で第4の定常領域(ぞれぞれCH1、CH2、CH3、CH4)からなり;哺乳動物軽鎖はλまたはκに分類され、それぞれの軽鎖は可変領域(VL)および定常領域からなる。抗体は「Y」形を有し、Yの茎はジスルフィド結合を経て結び付けられた2本の重鎖の第2と第3の定常領域からなる。Yのそれぞれのアームは1本の軽鎖の可変および定常領域に結合した1本の重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽および重鎖の可変領域は抗原結合を担当している。両方の鎖の可変領域は一般に3つの高度に可変なループを含有し相補性決定領域(CDR)と呼ばれる(軽鎖CDRはLCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、重鎖CDRはHCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含む)。本明細書で開示される抗体と抗原結合断片についてのCDR境界は、Kabat、IMGT、Chothia、またはAl-Lazikaniの慣習により定義されるまたは同定されてもよい(Al-Lazikani,B.、Chothia,C.、Lesk,A.M.、J.Mol.Biol.、273(4)、927頁(1997);Chothia,C.ら、J Mol Biol.Dec 5;186(3):651~63頁(1985);Chothia,C.およびLesk,A.M.、J.Mol.Biol.、196、901頁(1987);Chothia,C.ら、Nature.Dec 21-28;342(6252):877~83頁(1989);Kabat E.A.ら、Sequences of Proteins of immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991);Marie-Paule Lefrancら、Developmental and Comparative Immunology、27:55~77頁(2003);Marie-Paule Lefrancら、Immunome Research、1(3)、(2005);Marie-Paule Lefranc、Molecular Biology of B cells(第2版)、chapter 26、481~514頁(2015))。3つのCDRは、フレームワーク領域(FR)として知られる隣接するストレッチの間に挿入されており、フレームワーク領域はCDRよりも高度に保存されており高頻度可変ループを支える足場を形成する。重および軽鎖の定常領域は抗原結合に関与していないが、種々のエフェクター機能を見せる。抗体は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り当てられる。抗体の5つの主要なクラスまたはアイソタイプはIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、これらのクラスはそれぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミュー重鎖の存在を特徴とする。主要な抗体クラスのうちのいくつかは、IgG1(ガンマ1重鎖)、IgG2(ガンマ2重鎖)、IgG3(ガンマ3重鎖)、IgG4(ガンマ4重鎖)、IgA1(アルファ1重鎖)、IgA2(アルファ2重鎖)などのサブクラスに分割される。
【0055】
本明細書で使用される用語「二価」とは、2つの抗原結合部位を有する抗体または抗原結合断片のことであり、用語「一価」とは、単一の抗原結合部位のみを有する抗体または抗原結合断片のことであり、用語「多価」とは、複数の抗原結合部位を有する抗体または抗原結合断片のことである。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は二価である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「二重特異性」抗体とは、2つの異なるモノクローナル抗体由来の断片を有し、2つの異なるエピトープに結合することができる人工抗体のことである。2つのエピトープは同じ抗原上に存在していてもよく、または2つの異なる抗原上に存在していてもよい。
【0057】
本明細書で使用される用語「抗原結合断片」とは、1つもしくは複数のCDRを含む抗体の一部から形成される抗体断片、または抗原に結合するが無傷の天然の抗体構造を含まない任意の他の抗体断片のことである。抗原結合断片の例は、限定せずに、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、および二価ドメイン抗体を含む。抗原結合断片は、親抗体が結合する同じ抗原に結合することができる。
【0058】
抗体に関して「Fab」とは、抗体のうち、ジスルフィド結合により単一重鎖の可変領域と第1の定常領域に結合している単一軽鎖(可変と定常領域の両方)からなる部分のことである。
【0059】
「Fab’」とは、ヒンジ領域の一部を含むFab断片のことである。
【0060】
「F(ab’)2」とは、Fab’のダイマーのことである。抗体に関して「Fv」とは、抗体のうち完全な抗原結合部位を保有する最小の断片のことである。Fv断片は、単一重鎖の可変領域に結合している単一軽鎖の可変領域からなる。
【0061】
「dsFv」とは、単一軽鎖の可変領域と単一重鎖の可変領域の間の連鎖がジスルフィド結合であるジスルフィド安定化Fv断片のことである。一部の実施形態では、「(dsFv)2」または「(dsFv-dsFv’)」は3つのペプチド鎖を含み:2つのVH部分がペプチドリンカー(例えば、長い柔軟なリンカー)により連結され、ジスルフィド架橋を経てそれぞれ2つのVL部分に結合されている。一部の実施形態では、dsFv-dsFv’は、それぞれのジスルフィド対合した重と軽鎖が異なる抗原特異性を有する二重特異性である。
【0062】
「一本鎖Fv抗体」または「scFv」とは、互いに直接またはペプチドリンカー配列を経て接続された軽鎖可変領域と重鎖可変領域からなる操作された抗体のことである(Huston JSら、Proc Natl Acad Sci USA、85:5879頁(1988))。
【0063】
抗体(例えば、IgG、IgA、またはIgDアイソタイプ)に関する「Fc」とは、抗体のうち、ジスルフィド結合を経て第2の重鎖の第2および第3の定常ドメインに結合している第1の重鎖の第2および第3の定常ドメインからなる部分のことである。IgMおよびIgEアイソタイプという抗体に関するFcは、第4の定常ドメインをさらに含む。抗体のFc部分は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、および補体依存性細胞傷害(CDC)などの種々のエフェクター機能を担当するが、抗原結合には機能しない。
【0064】
「一本鎖Fv-Fc抗体」または「scFv-Fc」とは、抗体のFc領域に接続されたscFvからなる操作された抗体のことである。
【0065】
「ラクダ化単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体」、または「HCAb」とは、2つのVHドメインを含有し軽鎖は含まない抗体のことである(Riechmann L.およびMuyldermans S.、J Immunol Methods.12月10日;231(1-2):25~38頁(1999);Muyldermans S.、J Biotechnol.6月;74(4):277~302頁(2001);国際公開第94/04678号;国際公開第94/25591号;米国特許第6,005,079号)。重鎖抗体ははじめラクダ科(Camelidae)(ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマ)に由来していた。軽鎖を欠くが、ラクダ化抗体は信頼できる抗原結合レパートリーを有する(Hamers-Casterman C.ら、Nature.6月 3;363(6428):446~8頁(1993);Nguyen VK.ら、Immunogenetics.4月;54(1):39~47頁(2002);Nguyen VK.ら、Immunology.5月;109(1):93~101頁(2003))。重鎖抗体の可変ドメイン(VHHドメイン)は、適応免疫応答により生み出される知られる中で最も小さな抗原結合単位を表す(Koch-Nolte F.ら、FASEB J.11月;21(13):3490~8頁.Epub 2007年 6月15日(2007))。
【0066】
「ナノボディ」とは、重鎖抗体由来のVHHドメインならびに2つの定常ドメイン、CH2およびCH3からなる抗体断片のことである。
【0067】
「ダイアボディ」または「dAb」は2つの抗原結合部位のある小抗体断片を含み、断片は同じポリペプチド鎖でVLドメインに接続されたVHドメインを含む(VH-VLまたはVL-VH)(例えば、Holliger P.ら、Proc Natl Acad Sci USA.7月15日;90(14):6444~8頁(1993);欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号参照)。同じ鎖上の2つのドメイン間で対合させるには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインを別の鎖の相補的なドメインと対合させ、それによって2つの抗原結合部位を作り出す。抗原結合部位は同じまたは異なる抗原(またはエピトープ)を標的にしてもよい。ある特定の実施形態では、「二重特異性dsダイアボディ」は、2つの異なる抗原(またはエピトープ)を標的にするダイアボディである。ある特定の実施形態では、「scFvダイマー」は、1つの部分のVHがもう一方の部分のVLと連携して、同じ抗原(またはエピトープ)または異なる抗原(またはエピトープ)を標的にすることができる2つの結合部位を形成するように、別のVH-VL部分と二量体化したVH-VL(ペプチドリンカーにより連結されている)を含む二価ダイアボディまたは二価ScFv(BsFv)である。他の実施形態では、「scFvダイマー」は、VH1とVL1が連携しVH2とVL2が連携し、それぞれの連携した対が異なる抗原特異性を有するように、VL1-VH2(これもペプチドリンカーにより連結されている)と会合しているVH1-VL2(ペプチドリンカーにより連結されている)を含む二重特異性ダイアボディである。
【0068】
「ドメイン抗体」とは、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含有する抗体断片のことである。ある特定の例では、2つまたはそれよりも多いVHドメインが、ペプチドリンカーと共有結合して二価または多価ドメイン抗体を作り出す。二価ドメイン抗体の2つのVHドメインは同じまたは異なる抗原を標的にしてもよい。
【0069】
本明細書で使用される用語「キメラ」とは、1つの種に由来する重および/または軽鎖の一部、ならびに異なる種に由来する重および/または軽鎖の残りを有する抗体または抗原結合断片を意味する。実例では、キメラ抗体は、ヒト由来の定常領域およびマウスなどの非ヒト動物由来の可変領域を含む場合がある。一部の実施形態では、非ヒト動物は哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、またはハムスターである。
【0070】
本明細書で使用される用語「ヒト化」とは、抗体または抗原結合断片が、非ヒト動物由来のCDR、ヒト由来のFR領域、および適用できる場合、ヒト由来の定常領域を含むことを意味する。
【0071】
本明細書で使用される「IFNAR1」とは、霊長類(例えば、ヒト、サル)などの哺乳動物由来のインターフェロンアルファ受容体1のことである。ある特定の実施形態では、IFNAR1はヒトIFNAR1である。ヒトIFNAR1の例示的配列は、ヒトIFNAR1タンパク質(NCBI Ref Seq No.NP_000620.2)を含む。IFNAR1の例示的配列は、アカゲザル(リーサスザル)IFNAR1タンパク質(NCBI Ref Seq No.NP_001253442.1)、カニクイザルIFNAR1タンパク質(NCBI Ref Seq No.XP_005548866.2、またはNo.XP_015302385.1、またはNo.XP_005548864.1、またはNo.XP_005548865.1)を含む。
【0072】
IFNAR1は、I型インターフェロン(IFN-I)がそれを通してシグナル伝達する2つの膜貫通タンパク質のうちの1つである。IFN-IによるIFNAR1の活性化は、抗ウイルス活性、ならびに、抗菌、抗原虫、免疫調節、抗増殖活性および細胞成長調節機能をもたらすことが知られている。
【0073】
IFN-Iは、多種多様な細胞型に対して多面的効果を有する構造的に関連するサイトカインの大きなファミリーである。ある特定の実施形態では、IFN-IはヒトIFN-Iである。IFN-Iファミリーは、IFNα、IFNβ、IFNε、IFNκおよびIFNωを含む5つの密接な関係のあるメンバーからなる。IFNαは、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNA8、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA16、IFNA17およびIFNA21を含む全部で13のサブタイプを有し、IFNA1とIFNA13は同一のアミノ酸配列を有する。本明細書で使用される「IFNα」はIFNαのすべてのサブタイプを包含する。
【0074】
「IFNω」は、少なくとも5つの偽遺伝子およびIFNα遺伝子に70%相同性を見せる1つの機能的遺伝子によりコードされるもう1つのIFN-Iである。
【0075】
「IFNβ」は、IFNα遺伝子におおよそ50%相同性を有する単一コピー遺伝子によりコードされる。IFNβは、IFNαまたはIFNωと比べると細胞表面受容体に対してかなり高い総体的(integral)親和性を有する。したがって、IFNβはIFNAR1にIFNAR2非依存性で結合するが、IFNαもIFNωもIFNAR1に結合せず、IFNAR1-IFNβ複合体はもっと効率的な方法でシグナルを伝達する。IFNβは、単球分化を阻害する、ウイルス複製を阻害する、およびヒト腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することなどにおいてIFNαまたはIFNωよりはるかに大きな効力を見せる。
【0076】
用語「抗IFNAR1抗体」とは、IFNAR1(例えば、ヒトまたはサルIFNAR1)に特異的に結合することができる抗体のことである。用語「抗ヒトIFNAR1抗体」とは、ヒトIFNAR1に特異的に結合することができる抗体のことである。
【0077】
本明細書で使用される用語「特異的な結合」または「特異的に結合する」とは、例えば、抗体と抗原の間などの、2つの分子間の非ランダム結合反応のことである。特異的な結合は、例えば、KD値、すなわち、抗原と抗原結合分子の間の結合が平衡に到達するときの解離速度の会合速度に対する比率(koff/kon)により表される結合親和性で特徴付けることができる。KDは、表面プラズモン共鳴法、マイクロスケール熱泳動法、HPLC-MS法およびフローサイトメトリー(FACSなどの)法を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の従来法を使用することにより決定してもよい。≦10-6M(例えば、≦5×10-7M、≦2×10-7M、≦10-7M、≦5×10-8M、≦2×10-8M、≦10-8M、≦5×10-9M、≦4×10-9M、≦3×10-9M、≦3×10-9M、または≦10-9M)のKD値は、抗体またはその抗原結合断片とIFNAR1(例えば、ヒトIFNAR1)の間の特異的結合を示すことができる。
【0078】
本明細書で使用される「同じエピトープを巡って競合する」能力とは、2つの分子(例えば、ヒトIFNAR1と抗IFNAR1抗体)間の結合相互作用を検出可能な程度に阻害する抗体またはその抗原結合断片の能力のことである。ある特定の実施形態では、2つの分子間の結合を遮断する抗体またはその抗原結合断片は、2つの分子間の結合相互作用を少なくとも85%、または少なくとも90%阻害する。ある特定の実施形態では、この阻害は、95%よりも大きい、または99%よりも大きくてもよい。
【0079】
本明細書で使用される用語「エピトープ」とは、抗体が結合する抗原上の特定の原子団またはアミノ酸のことである。2つの抗体は、抗原を巡って競合的結合を見せる場合、抗原内の同じまたは密接な関係のあるエピトープに結合してもよい。エピトープは、線形または立体構造(すなわち、間隔が開けられたアミノ酸残基を含む)であることが可能である。例えば、抗体または抗原結合断片が、抗原への参照抗体の結合を少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%遮断する場合、抗体または抗原結合断片は、参照抗体と同じ/密接な関係のあるエピトープに結合すると見なされてもよい。
【0080】
当業者であれば、必要以上の実験をせずに、所与の抗体が本開示の抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体7G4および10C5、ならびにヒト化抗体Hu4-1、Hu4-2、Hu4-3、Hu4-4、Hu4-5、Hu4-6、Hu4-6-mut-1、Hu4-6-mut-2、Hu4-6-mut-3、Hu4-7、Hu4-8、Hu4-9、Hu4-10、Hu4-11、Hu4-12、Hu4-13、Hu4-14、Hu4-15、Hu4-16)と同じまたは密接な関係のあるエピトープに結合するかどうかを、後者がIFNAR1抗原ポリペプチドに結合するのを前者が妨げるかどうかを確かめることにより判定できることを認識する。IFNAR1抗原ポリペプチドへの本開示の抗体による結合の減少により示されるように、所与の抗体が本開示の抗体と競合する場合、2つの抗体は同じまたは密接な関係のあるエピトープに結合する。または、IFNAR1抗原ポリペプチドへの所与の抗体の結合が本開示の抗体により阻害された場合、2つの抗体は同じもしくは密接な関係のあるエピトープに結合する。
【0081】
アミノ酸配列に関する「保存的置換」とは、アミノ酸残基を類似の物理化学的特性のある側鎖を有する異なるアミノ酸残基で置き換えることである。例えば、保存的置換は、疎水性側鎖(例えば、Met、Ala、Val、Leu、およびIle)を有するアミノ酸残基の間で、中性の親水性側鎖(例えば、Cys、Ser、Thr、AsnおよびGln)を有する残基の間で、酸性の側鎖(例えば、Asp、Glu)を有する残基の間で、塩基性の側鎖(例えば、His、Lys、およびArg)を有するアミノ酸の間で、または芳香族側鎖(例えば、Trp、Tyr、およびPhe)を有する残基の間で行うことができる。当技術分野では公知であるように、保存的置換は、通常、タンパク質立体構造に著しい変化を引き起こさず、したがって、タンパク質の生物活性を保持することができると考えられる。
【0082】
本明細書で使用される用語「相同性の」とは、最適に整列された場合、別の配列と少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有する核酸配列(またはその相補鎖)またはアミノ酸配列のことである。
【0083】
アミノ酸配列(または核酸配列)に関する「パーセント(%)配列同一性」は、配列を整列させ、必要な場合には、最大数の同一アミノ酸(または核酸)を達成するためにギャップを導入した後、参照配列中のアミノ酸(または核酸)残基と同一である候補配列中のアミノ酸(または核酸)残基の百分率と定義される。アミノ酸残基の保存的置換は、同一残基と見なしてもよいし見なさなくてもよい。パーセントアミノ酸(または核酸)配列同一性を決定するための整列は、例えば、BLASTN、BLASTp(available on the website of U.S. National Center for Biotechnology Information(NCBI)、Altschul S.F.ら、J.Mol.Biol.、215:403~410頁(1990)も参照;Stephen F.ら、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402頁(1997))、ClustalW2(available on the website of European Bioinformatics Institute、Higgins D.G.ら、Methods in Enzymology、266:383~402頁(1996)も参照;Larkin M.A.ら、Bioinformatics(Oxford, England)、23(21):2947~8頁(2007))、およびALIGN or Megalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公表されているツールを使用して達成することができる。当業者であれば、ツールにより提供されるデフォルトパラメータを使用してもよく、または、例えば、適切なアルゴリズムを選択することによりなどの、パラメータを整列に適するようにカスタマイズしてもよい。
【0084】
本明細書で使用される「エフェクター機能」とは、C1複合体およびFc受容体などのそのエフェクターへの抗体のFc領域の結合に帰せられる生物活性のことである。例示的エフェクター機能は、抗体とC1複合体上のC1qの相互作用により媒介される補体依存性細胞傷害(CDC);エフェクター細胞上のFc受容体への抗体のFc領域の結合により媒介される抗体依存性細胞傷害(ADCC);および食作用を含む。エフェクター機能は、Fc受容体結合アッセイ、C1q結合アッセイ、および細胞溶解アッセイなどの種々のアッセイを使用して評価することができる。
【0085】
「単離された」物質は、天然の状態から人の手により変更されている。「単離された」組成物または物質が天然に存在する場合には、その組成物または物質は、変更されたもしくはその元の環境から取り除かれた、またはその両方である。例えば、生存動物に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、実質的に純粋な状態で存在するように、その天然の状態の共存している物質から十分に分離されている場合には、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いる。「単離された核酸配列」とは、単離された核酸分子の配列のことである。ある特定の実施形態では、「単離された抗体またはその抗原結合断片」とは、電気泳動的方法(SDS-PAGE、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動などの)、またはクロマトグラフ法(イオン交換クロマトグラフィーまたは逆相HPLCなどの)により決定された場合、少なくとも60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の純度を有する抗体またはその抗原結合断片のことである。
【0086】
本明細書で使用される用語「ベクター」とは、遺伝要素によりコードされたタンパク質、RNAもしくはDNAを作製するため、または遺伝要素を複製するためなどの、その遺伝要素の発現を引き起こすように、遺伝要素が作動可能に挿入されている媒体のことである。ベクターを使用して、宿主細胞内でベクターが保有する遺伝要素の発現を引き起こすように宿主細胞を形質転換する、形質導入する、またはトランスフェクトしてもよい。ベクターの例は、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、バクテリア人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、ラムダファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスを含む。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能エレメント、およびリポーター遺伝子を含む発現を制御するための種々のエレメントを含有していてもよい。さらに、ベクターは複製起点を含有していてもよい。ベクターは、ウイルス粒子、リポソーム、またはタンパク質コーティングを含むがこれらに限定されない細胞内への進入を支援する物質を含んでいてもよい。ベクターは、発現ベクターまたはクローニングベクターが可能である。本開示は、抗体またはその抗原結合断片をコードする本明細書で提供される核酸配列、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーを含有するベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。
【0087】
本明細書で使用される語句「宿主細胞」とは、外因性ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを導入することができるまたは導入されている細胞のことである。
【0088】
本明細書で使用される状態を「処置する」またはこれの「処置」は、状態を予防するもしくは軽減する、状態の発病または発生速度を遅くする、状態を発症するリスクを低減する、状態に関連する症状の発症を予防するもしくは遅らせる、状態に関連する症状を低減するもしくは終わらせる、状態の完全なもしくは部分的後退を生じる、状態を治癒する、またはこれらのある組合せを含む。
【0089】
本明細書で使用される「I型IFN関連」疾患または状態とは、I型IFNの増加したまたは減少した発現または活性により引き起こされる、悪化される、または他の点で関連している任意の疾患または状態のことである。一部の実施形態では、I型IFN関連疾患または状態は、例えば、自己免疫疾患などの免疫関連障害である。ある特定の実施形態では、I型IFN関連疾患または状態は、I型インターフェロン(IFN-I)および/またはI型IFNシグネチャー遺伝子を発現するまたは過剰発現することで特徴付けられる。
【0090】
用語「薬学的に許容される」とは、指定された担体、媒体、希釈剤、賦形剤(複数可)、および/または塩が、製剤を構成するその他の成分と一般に化学的におよび/または物理的に適合性であり、そのレシピエントと生理的に適合性であることを示している。
【0091】
抗IFNAR1抗体
本開示は、抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片を提供する。本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片はIFNAR1に特異的に結合することができる。
【0092】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその断片は、Biacoreアッセイによる8×10-8M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、8×10-9M以下、5×10-9M以下、2×10-9M以下、10-9M以下、8×10-10M以下、7×10-10M以下、または6×10-10M以下のKD値でヒトIFNAR1に特異的に結合する。Biacoreアッセイは表面プラズモン共鳴技術に基づいており、例えば、Murphy、M.ら、Current protocols in protein science、Chapter 19、unit 19.14、2006年を参照されたい。
【0093】
ヒトIFNAR1への抗体の結合は、「半数効果濃度」(EC50)値によっても表すことができ、これはその最大結合の50%が観察される抗体の濃度のことである。EC50値は、当技術分野で公知の結合アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのサンドイッチアッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、および他の結合アッセイにより測定することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその断片は、ELISAによる、0.1μg/ml以下、0.09μg/ml以下、0.08μg/ml以下、0.07μg/ml以下、0.06μg/ml以下、0.05μg/ml以下、0.04μg/ml以下、0.03μg/ml以下、0.02μg/ml以下、0.01μg/ml以下、0.009μg/ml以下、0.008μg/ml以下、0.007μg/ml以下、0.006μg/ml以下、または0.005μg/ml以下のEC50(50%結合濃度)でヒトIFNAR1に特異的に結合する。
【0094】
本明細書で提供される抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は、ヒトIFNAR1に、IFNAR1のアミノ酸残基127~227内の第1の断片とIFNAR1のアミノ酸残基231~329内の第2の断片の両方を包含するエピトープで結合する。
【0095】
非プロセス型のヒトIFNAR1発現産物は、409残基の細胞外ドメイン(ECD)、21残基の膜貫通ドメイン、および100残基の細胞内ドメインを含む557アミノ酸で構成されている。IFNAR1のECDは、2つのドメイン、ドメイン1とドメイン2で構成されており、これらのドメインは3プロリンモチーフで分離されている。それぞれのドメインはおおよそ200残基で構成されており、おおよそ100アミノ酸の2つの相同なサブドメインにさらに細分することができる。したがって、IFNAR1のECDは、4つのサブドメイン:サブドメイン1(野生型ヒトIFNAR1のアミノ酸残基32~126、すなわち、配列番号17にまたがっている)、サブドメイン2(すなわち、野生型ヒトIFNAR1のアミノ酸残基127~227、すなわち、配列番号18)、サブドメイン3(野生型ヒトIFNAR1のアミノ酸残基231~329、すなわち、配列番号19)、およびサブドメイン4(野生型ヒトIFNAR1のアミノ酸残基331~432、すなわち、配列番号20)に分割することができる。
【0096】
IFNAR1のアミノ酸残基127~227(サブドメイン2)内の第1の断片は、抗体結合のためのエピトープの部分を構成するのに十分ないかなる適切な長さ(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、25、40、50、60、70、80、または90アミノ酸残基)であってもよく、IFNAR1のサブドメイン2内のいかなる適切な位置(例えば、アミノ酸残基127もしくは227の近くに、またはアミノ酸残基127と227の間のどこか)であってもよい。
【0097】
同様に、IFNAR1のアミノ酸残基231~329(サブドメイン3)内の第2の断片は、抗体結合のためのエピトープの部分を構成するのに十分ないかなる適切な長さ(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、25、または40アミノ酸残基)であってもよく、IFNAR1のサブドメイン3内のいかなる適切な位置(例えば、アミノ酸残基231もしくは329の近くに、またはアミノ酸残基231と329の間のどこか)であってもよい。
【0098】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および抗原結合断片は、サブドメイン2とサブドメイン3の間の交差を通じてまたがるエピトープに特異的に結合することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および抗原結合断片は、アミノ酸残基227~231のセグメント、またはアミノ酸残基226~232のセグメントを包含するエピトープに特異的に結合することができる。一方、本明細書で提供される抗体および抗原結合断片は、サブドメイン2またはサブドメイン3の全長にわたるありとあらゆる残基に結合する必要はない。サブドメイン2内の少なくとも1つの結合部位およびサブドメイン3内の少なくとも1つの追加の結合部位を有し、したがって、サブドメイン2とサブドメイン3の両方への結合を見せるので十分である。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および抗原結合断片は、アミノ酸残基149~214がマウスIFNAR1対応物で置き換えられていることを除いて、ヒト野生型IFNAR1配列を含むヒト/マウスキメラIFNAR1(すなわち、配列番号69)に特異的に結合することができる。
【0099】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、a)アミノ酸残基127~227(サブドメイン2)またはb)アミノ酸残基231~329(サブドメイン3)を欠くトランケート型IFNAR1に結合しない。本明細書で使用される「トランケート型IFNAR1」とは、1つまたは複数の断片を欠くまたはアラニンもしくはポリアラニンなどの著しく異なる断片で置き換えられていることを除いて、他の点では野生型IFNAR1と同一である改変されたIFNAR1のことである。本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、サブドメイン2を欠く、またはサブドメイン3を欠く、または両方を欠くトランケート型IFNAR1に結合することができない。これは、IFNAR1のサブドメイン2内の結合部位とサブドメイン3内の結合部位の両方が、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片がIFNAR1に特異的に結合するのに必要不可欠であることを示している。サブドメイン2またはサブドメイン3または両方の欠如は、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片のIFNAR1特異的結合を損なうまたは除去するのに十分である。一方、これは、サブドメイン2とサブドメイン3の間の交差が、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片がIFNAR1に特異的に結合するのに潜在的に必要であることをさらにまたは代わりに示している可能性がある。
【0100】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、a)アミノ酸残基32~126(サブドメイン1)、b)アミノ酸残基331~432(サブドメイン4)、またはa)とb)の両方を欠くトランケート型IFNAR1に特異的に結合することができる。サブドメイン1、サブドメイン4、または両方は、抗体およびその抗原結合断片のIFBAR1特異的結合に必要ではない(不可欠でさえない)。
【0101】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長IFNAR1の結合能力に匹敵する結合能力で、サブドメイン1、サブドメイン4または両方を欠くトランケート型IFNAR1に結合する。
【0102】
本明細書で使用される「結合能力」とは、別の分子(抗原などの)に結合する分子(抗体などの)の能力のことである。能力は、例えば、当技術分野で公知である任意の適切な結合アッセイを使用して目的の抗原への結合活性により測定することができる。例えば、目的の抗体を標識化すれば、抗原への結合活性の直接定量化を可能にすることができる。別の例では、その抗原への目的の抗体(すなわち、一次抗体)の結合活性も標識化二次抗体(例えば、抗種抗体)を使用することにより検出することができ、この二次抗体は複合体中の一次抗体に結合することによりその抗原に結合している一次抗体の複合体を検出し、したがって、結合活性を間接的に定量化する。標識化抗体は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA、例えば、標識が酵素である場合)、フローサイトメトリー(例えば、標識が蛍光である場合)、ウェスタンブロット(例えば、標識が蛍光または放射性リガンドである場合)、比色法、化学発光ベースの方法、等により検出することができる。
【0103】
等価なアッセイ条件下で検出される場合、異なる抗原への結合活性の違いが20%以下(例えば、15%、10%、8%、5%以下)である場合、異なる抗原への結合能力は匹敵すると見なされる。本明細書で使用される「等価なアッセイ条件」とは、同じまたは等価な条件、等で検出される同じまたは等価な対照と比べて、抗体または抗原の同じまたは等価な濃度で試験される同じアッセイタイプのことである。
【0104】
本明細書で提供される抗体および抗原結合断片は、IFNβ媒介IFNAR1活性化を阻害しない。IFNβは、IFNαおよびIFNωなどの他のIFN-I同様に、IFNAR1に結合しIFNAR1活性化を誘導することができる。本明細書で使用される「IFNβ媒介IFNAR1活性化」とは、IFNβに媒介されたまたはIFNβの存在へ応答したIFNAR1活性化を意味する。IFNAR1活性化を判定するには多くのアッセイを使用することができる。非限定的例は、関係のあるIFN-Iの存在下で、または1つもしくは複数のIFN-Iを含有する生体試料(SLE患者由来の血漿試料などの)の存在下で判定される、ダウディ細胞増殖、インターフェロン活性化応答エレメント(Interferon Stimulated Response Element(ISRE))連結レポーター遺伝子発現の活性化、IFN-Iエフェクター遺伝子(例えば、mx2およびisg15)発現、末梢血単核球(PBMC)によるIP-10発現、樹状細胞発生、および抗ウイルス活性を含む。したがって、IFNβ媒介IFNAR1活性化は、IFNβの存在下対その非存在下での、IFNAR1活性化に適した任意のアッセイを使用して判定することができる。
【0105】
「IFNβ媒介IFNAR1活性化を阻害しない」抗体または抗原結合断片は、等価なアッセイ条件下、抗体の非存在下でまたは等価濃度の対照抗体(IFNβに結合しないアイソタイプ対照抗体などの)の存在下で測定したIFNβ媒介IFNAR1活性化のレベルに対して見せる阻害が20%未満である抗体または抗原結合断片である。対照抗体はIFNβ媒介IFNAR1活性化を妨害しないことが分かっているいかなる抗体であってもよい。これは、例えば、IFNAR1およびIFNβに結合しない抗体を含むことができる。
【0106】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、等価なアッセイ設定下、抗体の非存在下でまたは等価濃度の対照抗体(IFNAR1に結合しないアイソタイプ対照抗体などの)の存在下で測定したベースラインIFNβ媒介IFNAR1活性化と比べた場合、適切なIFNAR1活性化アッセイにおいてIFNβ媒介IFBAR1活性化に対する阻害が20%以下、15%以下、10%以下、8%以下、5%以下、2%以下、または1%以下である。
【0107】
ある特定の実施形態では、IFNAR1活性化アッセイは、例えば、国際公開第2018/010140号に記載される、IFN-Iレポーターアッセイである。手短に言えば、レポーター細胞株は、mx2およびisg15などのIFNエフェクター遺伝子のプロモーターの制御下でレポーター遺伝子(緑色蛍光タンパク質、GFPなどの)を作製することにより構築される。IFN-I(例えば、INFβ)の存在下で、IFNAR1は活性化され、これが続いてmx2またはisg15プロモーターの活性化をもたらし、次に、レポーター遺伝子の発現を開始する。レポーター遺伝子シグナルは、フローサイトメトリーなどの従来の方法により分析することができる。レポーター遺伝子シグナルの強度またはレポーター遺伝子シグナルについて陽性の細胞の数は、IFNAR1活性化のレベルを示すことができる。IFN-Iにより媒介されるIFNAR1活性化またはIFNAR1へのIFN-Iの結合を阻害する抗体またはその抗原結合断片は、等価なアッセイ条件下、抗体の非存在下でまたは等価濃度の対照抗体(アイソタイプ対照抗体などの)の存在下で測定した活性化シグナル阻害のベースラインレベルと比べて、IFN-Iにより媒介されるより多くのIFNAR1活性化シグナルを阻害する。
【0108】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、IFNα媒介および/またはIFNω媒介IFNAR1活性化を阻害する。本明細書で使用される「IFNα媒介IFNAR1活性化」および「IFNω媒介IFNAR1活性化」は、それぞれIFNαまたはIFNωに媒介されたまたはこの存在に応答したIFNAR1活性化を意味する。同様に、IFNα媒介および/またはIFNω媒介IFNAR1活性化は、それぞれIFNαおよびIFNωの存在下で対その非存在下で、上記のIFNAR1活性化を判定するのに適した任意のアッセイにより判定することができる。
【0109】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、等価なアッセイ条件下、抗体の非存在下でまたは等価濃度の対照抗体(IFNAR1に結合しないアイソタイプ対照抗体などの)の存在下で測定した、それぞれベースラインIFNα媒介および/またはIFNω媒介IFNAR1活性化と比べた場合の、適切なIFNAR1活性化アッセイにおけるIFNα媒介および/またはIFNω媒介IFNAR1活性化の少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約99%、または約100%阻害する。そのような対照抗体は、IFNα媒介および/またはIFNω媒介IFNAR1活性化を妨げないことが分かっているいかなる抗体であってもよい。これは、例えば、IFNAR1、IFNαおよびIFNωに結合しない抗体を含むことができる。
【0110】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、IFNβ媒介抗ウイルス活性を阻害しない。
【0111】
本明細書で使用されるインターフェロンにより媒介される用語「抗ウイルス活性」とは、ウイルス活性、例えば、ウイルスの感染力、複製、または生存能を低減するインターフェロンの能力のことである。抗ウイルス活性の阻害は、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して判定してもよい。例示的な方法は、一般に、前播種されたIFNAR1発現細胞を試験抗体またはその抗原結合断片の存在下で目的のインターフェロン(例えば、IFNβ)と一緒に例えば1日インキュベートし、その後もう1日ウイルス曝露し、次に、培養物中の残存生存細胞の量を定量化する、細胞を溶解後培養物においてウイルス力価を定量化する、または感染細胞上で形成されたプラークを定量化することにより抗ウイルス活性を決定することを含む。別の例示的方法は、細胞がウイルスに感染した場合にレポーター遺伝子発現が誘導されるように、SINV-Luc(J Virol.2016年10月28日;90(22):10247~10258頁)およびFlu-Luc(J Thorac Dis.2018年7月10日(Suppl 19):S2230~S2237頁)などのレポーター遺伝子構築物を含有する細胞をインキュベートすることを含む。
【0112】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、等価なアッセイ条件下、同じタイプのウイルス活性アッセイにおいて、抗体の非存在下でまたは等価濃度の対照抗体(IFNAR1に結合しないアイソタイプ対照抗体などの)の存在下で測定されたレベルと類似するまたはおおよそ同じレベルのIFNβ媒介抗ウイルス活性を見せる。
【0113】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、等価なアッセイ条件下、等価濃度の対照抗体の存在下で測定されたベースラインIFNβ媒介抗ウイルス活性と比べた場合、適切な抗ウイルスアッセイにおいてIFNβ媒介抗ウイルス活性に対する阻害が20%以下、15%以下、10%以下、8%以下、5%以下、2%以下、または1%以下である。
【0114】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、IFNα媒介および/またはIFNω媒介抗ウイルス活性を阻害する。
【0115】
ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、等価なアッセイ条件下、等価濃度の対照抗体の存在下で測定された、それぞれベースラインIFNα媒介および/またはIFNω媒介抗ウイルス活性と比べた場合、適切な抗ウイルスアッセイにおいてIFNα媒介および/またはIFNω媒介抗ウイルス活性の少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約99%、または約100%を阻害する。
【0116】
ある特定の実施形態では、IFNα媒介IFNAR1活性化に対するもしくはIFNω媒介IFNAR1活性化に対するまたはIFNα媒介抗ウイルス活性に対するもしくはIFNω媒介抗ウイルス活性に対する本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片の阻害効果は、それぞれIFNβ媒介IFNAR1活性化に対するまたはIFNβ媒介抗ウイルス活性に対する阻害効果の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または20倍である。IFNα媒介、IFNω媒介、およびIFNβ媒介IFNAR1活性化または抗ウイルス活性に対する本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片の阻害効果は、同じタイプのアッセイを使用して、等価なアッセイパラメータを使用して、同じまたは等価濃度の試験抗体を使用して、および同じまたは等価な量のIFNAR1発現細胞を使用してなどのしかしこれらに限定されない、等価なアッセイ条件下で測定される。ある特定の実施形態では、IFNα媒介、IFNω媒介、もしくはIFNβ媒介IFNAR1活性化または抗ウイルス活性に対する阻害効果は、それぞれ1ng/mLのIFNα、50pg/mlのIFNω、または50pg/mlのIFNβの存在下で測定される。
【0117】
いかなる理論にも縛られたくはないが、抗体およびその抗原結合断片は、IFNα媒介IFNAR1活性化とIFNω媒介IFNAR1活性化の両方を優先的に阻害し、およびIFNβ媒介IFNAR1活性化に対する阻害を最小限に抑えるのに特に有利であると考えられる。
【0118】
IFNαとIFNωの両方は、全身性エリテマトーデス(SLE)などのI型IFN関連疾患の病態において誘導されることが報告されている。SLE患者ではIFNω発現がRNAレベルで上方調節されている(Yao Yら、Hum Genomics Proteomics 2009年)。IFNωは、SLEにおいてIFNシグネチャーを誘導する活性I型IFN環境の一部である。IFNωとIFNαの両方の共抑制により、SLE患者の血液中において永続化されたIFNシグネチャーはIFNαまたはIFNωインヒビター単独よりも明白に抑制されたことが報告されている(米国特許第9902770号において詳細を参照)。同様に、IFNα媒介IFNAR1活性化とIFNω媒介IFNAR1活性化の両方を阻害することにより、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片は、IFNω抗体またはIFNα抗体単独よりも優れた治療効果も提供すると予想される。
【0119】
IFNβは、初期転写応答を活性化するのにIFNαまたはIFNωと等しく強力である(Coelho LFら、Proc Natl Acad Sci U S A.2005年8月16日;102(33):11917~22頁)が、IFNβは、一部のI型IFN関連疾患の病態形成に最小限にしか関与していない。これは、IFNβを阻害してもこれらのIFN関連疾患に対して極めて限られた治療効果しかもてないことを示唆している。
【0120】
一方、IFNβは、単球分化を阻害する、ウイルス複製を阻害する、およびヒト腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することなどにおいて、IFNαまたはIFNωよりもはるかに大きな効力を見せる。これらのIFNβ媒介効果は実際、対象の健康にとって多くの状況において有益であり、したがって、阻害されないほうがよいと考えられる。それ故に、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片は、IFNβ媒介IFNAR1活性化を阻害しないことによって追加の利点を提供する。
【0121】
IFNβのはっきり異なった機能は、少なくとも部分的には、IFNαまたはIFNωと比べてIFNβの細胞表面受容体への実質的に高い「総体的」親和性に起因する。3,300Å2に達するIFNAR1-IFNβ複合体の全埋もれた表面積は、合計で2,030Å2(IFNωでは2,200Å2)になるIFNAR1-IFNα2境界面の面積よりもはるかに広い。したがって、この増加した結合境界面は、IFNαまたはIFNωと比べて、IFNβに対するIFNAR1の結合親和性のおおよそ100倍の増加を説明する(de Weerd NAら、Nat Immunol 14:901~7頁(2013))。IFNβの全く異なる機能も、IFNβは、IFNαやIFNωと違って、IFNAR1にIFNAR2非依存的に結合するという事実、およびIFNAR1-IFNβ複合体のほうがより効率的にシグナルを伝達するという事実に寄与できる。したがって、本明細書で提供される抗体の独特の機能的特徴は、本明細書で提供される抗体のほうが当技術分野で公知である抗体よりも有利である独特の結合部位および結合特徴を有することも意味する。
【0122】
特定の抗IFNAR1抗体
ある特定の実施形態では、本開示は、SX1WX19N(配列番号1)、KIDPSDSEX2X20X21NQKFX22D(配列番号2)、GGX3IX4X5DYDX6AX7DY(配列番号3)、KX23SEVIYNRLA(配列番号4)、GATX24LEX25(配列番号5)、およびQQYWX8X9PFT(配列番号6)からなる群から選択され、X1はYまたはFであり、X2はTまたはIであり、X3はRまたはGであり、X4はSまたはYであり、X5はFまたはYであり、X6はAまたはGであり、X7はLまたはMであり、X8はNまたはSであり、X9はKまたはSであり、X19はMまたはLであり、X20はHまたはRであり、X21はFまたはYであり、X22はRまたはKであり、X23はSまたはAであり、X24はTまたはSであり、X25はSまたはTである配列を含む1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、または6)のCDRを含む抗IFNAR1抗体(例えば、抗ヒトIFNAR1抗体)およびその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号1~6のいずれかへの1つ、2つまたは3つ以下のアミノ酸残基置換を有し、X1はYまたはFであり、X2はTまたはIであり、X3はRまたはGであり、X4はSまたはYであり、X5はFまたはYであり、X6はAまたはGであり、X7はLまたはMであり、X8はNまたはSであり、X9はKまたはSであり、X19はMまたはLであり、X20はHまたはRであり、X21はFまたはYであり、X22はRまたはKであり、X23はSまたはAであり、X24はTまたはSであり、X25はSまたはTである抗体および抗原結合断片をさらに包含する。
【0123】
本明細書で使用される「7G4」とは、配列番号7の配列を有する重鎖可変領域、および配列番号8の配列を有する軽鎖可変領域を有するモノクローナル抗体のことである。
【0124】
本明細書で使用される「10C5」とは、配列番号9の配列を有する重鎖可変領域、および配列番号10の配列を有する軽鎖可変領域を有するモノクローナル抗体のことである。
【0125】
ある特定の実施形態では、本開示は、抗体7G4または抗体10C5の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、または6)のCDR配列を含む抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片を提供する。
【0126】
ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号21の配列を含むHCDR1、配列番号22の配列を含むHCDR2、および配列番号23もしくは配列番号65の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号70の配列を含むLCDR1、配列番号71もしくは配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号24の配列を含むLCDR3を含む抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片を提供する。
【0127】
ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号25の配列を含むHCDR1、配列番号26の配列を含むHCDR2、および配列番号27の配列を含むHCDR3、ならびに/または配列番号72の配列を含むLCDR1、配列番号66の配列を含むLCDR2、および配列番号28の配列を含むLCDR3を含む抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片を提供する。
【0128】
下の表1は、抗体7G4および10C5のCDR配列を示している。下の表2は、7G4および10C5の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列を示しており、下の表3は、可変領域をコードする核酸配列を示している。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
本開示は、それぞれ7G4および10C5を発現するハイブリドーマ細胞も提供し、これらの細胞は中国科学院微生物研究所(CGMCC)に寄託されている。
【0133】
7G4を産生するハイブリドーマの詳細な寄託情報は以下の通りである:微生物寄託番号:CGMCC番号16286;分類学的名称:ハイブリドーマ細胞株;寄託住所:Building 1、No.1 Beichen West Road、Chaoyang District、北京;寄託部署:中国科学院微生物研究所;および寄託日:2018年8月27日。
【0134】
10C5を産生するハイブリドーマの詳細な寄託情報は以下の通りである:微生物寄託番号:CGMCC番号16287;分類学的名称:ハイブリドーマ細胞株;寄託住所:Building 1、No.1 Beichen West Road、Chaoyang District、北京;寄託部署:中国科学院微生物研究所;および寄託日:2018年8月27日。
【0135】
本開示は、CGMCC寄託番号16286の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞から、または寄託番号16287を有するハイブリドーマ細胞から発現される抗体、およびそれらの抗原結合断片も提供する。
【0136】
7G4および10C5のそれぞれがIFNAR1に結合できることならびに抗原結合特異性が主にCDR1、CDR2およびCDR3領域により与えられることを考慮すると、7G4および10C5のHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列ならびにLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列は「混合し適合させ」て(すなわち、異なる抗体由来のCDRを混合し適合させることが可能であるが、それぞれの抗体はHCDR1、HCDR2およびHCDR3ならびにLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含有しなければならない)、本開示の抗IFNAR1結合分子を作り出すことが可能である。そのような「混合され適合された」抗体のIFNAR1結合は、上におよび実施例に記載される結合アッセイを使用して検出することができる。好ましくは、VH CDR配列が混合され適合される場合、特定のVH配列由来のHCDR1、HCDR2および/またはHCDR3配列は構造的に類似するCDR配列(複数可)で置き換えられる。同様に、VL CDR配列が混合され適合される場合、特定のVL配列由来のLCDR1、LCDR2および/またはLCDR3配列は、好ましくは、構造的に類似するCDR配列(複数可)で置き換えられる。例えば、7G4および10C5のVH HCDR1はある構造的類似性を共有しており、したがって、混合および適合を受け入れられる。新規のVHおよびVL配列が、1つまたは複数のVHおよび/またはVL CDR領域配列を、モノクローナル抗体7G4および10C5について本明細書で開示されるCDR配列由来の構造的に類似する配列で置換することにより作り出せることは当業者には容易に明らかになる。
【0137】
CDRは抗原結合を担当することが知られている。しかし、6つのCDRすべてが不可欠であるまたは変わることができないわけではないことが見出されている。言い換えると、抗IFNAR1抗体7G4または10C5の1つまたは複数のCDRを取り替えるまたは交換するまたは改変するが、IFNAR1に対する特異的結合親和性は実質的に保持することは可能である。
【0138】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、抗体7G4または10C5の重鎖CDR3配列を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、配列番号23、65および27からなる群から選択される重鎖CDR3配列を含む。
【0139】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片は、抗体およびその抗原結合断片がIFNAR1に特異的に結合できる限り、適切なフレームワーク領域(FR)配列を含む。表1に提供されるCDR配列はマウス抗体から得られるが、これらのCDR配列は、とりわけ、組換え技法などの当技術分野で公知の適切な方法を使用して、マウス、ヒト、ラット、ウサギなどの任意の適切な種の任意の適切なFR配列に移植することができる。
【0140】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片はヒト化される。ヒト化抗体または抗原結合断片は、ヒトにおけるその低減した免疫原性の点で望ましい。ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列がヒトまたは実質的にヒトFR配列に移植されているので、その可変領域においてキメラである。抗体または抗原結合断片のヒト化は、本質的に、非ヒト(マウスなどの)CDR遺伝子をヒト免疫グロブリン遺伝子中の対応するヒトCDR遺伝子の代わりに使うことにより実施することができる(例えば、Jonesら、(1986)Nature 321:522~525頁;Riechmannら、(1988)Nature 332:323~327頁;Verhoeyenら、(1988)Science 239:1534~1536頁参照)。
【0141】
当技術分野で公知の方法を使用してこの目的を達成するように、適切なヒト重鎖および軽鎖可変ドメインを選択することができる。説明的な例では、「最適適合」アプローチを使用することができ、その場合、非ヒト(例えば、齧歯類)抗体可変ドメイン配列はスクリーニングされるまたは既知のヒト可変ドメイン配列のデータベースに対してBLASTされ、非ヒト問い合わせ配列に最も近いヒト配列が同定され非ヒトCDR配列を移植するためのヒトスキャホールドとして使用される(例えば、Simsら、(1993)J.Immunol.151:2296頁;Chothiaら、(1987)J.Mot.Biol.196:901頁参照)。代わりに、すべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来のフレームワークを、非ヒトCDR配列を移植するために使用してもよい(例えば、Carterら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285頁;Prestaら、(1993)J.Immunol.、151:2623頁参照)。
【0142】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗体またはその抗原結合断片は、非ヒトであるCDR配列を除いて実質的にすべてのヒト配列で構成されている。一部の実施形態では、可変領域FR、および定常領域は、存在するとすれば、完全にまたは実質的にヒト免疫グロブリン配列由来である。ヒトFR配列およびヒト定常領域配列は、異なるヒト免疫グロブリン遺伝子由来でもよく、例えば、FR配列は1つのヒト抗体由来であり定常領域は別のヒト抗体由来である。一部の実施形態では、ヒト化抗体または抗原結合断片は、ヒト重鎖HFR1~4、および/または軽鎖LFR1~4を含む。
【0143】
一部の実施形態では、ヒト由来のFR領域は、それが由来するヒト免疫グロブリンと同じアミノ酸配列を含みうる。一部の実施形態では、ヒトFRの1つまたは複数のアミノ酸残基は、親非ヒト抗体由来の対応する残基で置き替えられる。これは、ヒト化抗体またはその断片を非ヒト親抗体構造に密に近似させるのにある特定の実施形態では望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗体または抗原結合断片は、ヒトFR配列のそれぞれにおいて10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸残基置換を、または重もしくは軽鎖可変ドメインのすべてのFRにおいて10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸残基置換を含む。一部の実施形態では、アミノ酸残基のそのような変化は、重鎖FR領域のみに、軽鎖FR領域のみに、または両方の鎖において存在することができると考えられる。
【0144】
ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号33の配列を含む重鎖HFR1、配列番号41、42および43から選択される配列を含む重鎖HFR2、配列番号44および45から選択される配列を含む重鎖HFR3、ならびに配列番号36の配列を含む重鎖HFR4を含むヒト化抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片も提供する。
【0145】
ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号37の配列を含む軽鎖LFR1、配列番号46、47および48から選択される配列を含む軽鎖LFR2、配列番号49および50から選択される配列を含む軽鎖LFR3、ならびに配列番号40の配列を含む軽鎖LFR4を含むヒト化抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片も提供する。
【0146】
ある特定の実施形態では、本開示は、7G4-g0-VH(配列番号51)、7G4-g1-VH(配列番号52)、7G4-g2-VH(配列番号53)、および7G4-g3-VH(配列番号54)からなる群から選択される重鎖可変領域に含有されるHFR1、HFR2、HFR3、および/またはHFR4配列を含むヒト化抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片も提供する。
【0147】
ある特定の実施形態では、本開示は、7G4-g0-VL(配列番号55)、7G4-g1-VL(配列番号56)、7G4-g1-VL-mut-1(配列番号68)、7G4-g2-VL(配列番号57)、および7G4-g3-VL(配列番号58)からなる群から選択される軽鎖可変領域に含有されるLFR1、LFR2、LFR3、および/またはLFR4配列を含むヒト化抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片も提供する。
【0148】
ある特定の実施形態では、本開示で提供されるヒト化抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は、配列番号51、配列番号52、配列番号53、および配列番号54からなる群から選択される重鎖可変ドメイン配列、ならびに/または配列番号55、配列番号56、配列番号57、および配列番号58からなる群から選択される軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0149】
本開示は、
1)7G4-g0-VH(配列番号51)の重鎖可変領域および7G4-g0-VL(配列番号55)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-1」;
2)7G4-g1-VH(配列番号52)の重鎖可変領域および7G4-g0-VL(配列番号55)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-2」;
3)7G4-g2-VH(配列番号53)の重鎖可変領域および7G4-g0-VL(配列番号55)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-3」;
4)7G4-g3-VH(配列番号54)の重鎖可変領域および7G4-g0-VL(配列番号55)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-4」;
5)7G4-g0-VH(配列番号51)の重鎖可変領域および7G4-g1-VL(配列番号56)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-5」;
6)7G4-g1-VH(配列番号52)の重鎖可変領域および7G4-g1-VL(配列番号56)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-6」;
7)7G4-g1-VH-mut-1(配列番号67)の重鎖可変領域および7G4-g1-VL(配列番号56)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-6-mut-1」;
8)7G4-g1-VH(配列番号52)の重鎖可変領域および7G4-g1-VL-mut-1(配列番号68)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-6-mut-2」;
9)7G4-g1-VH-mut-1(配列番号67)の重鎖可変領域および7G4-g1-VL-mut-1(配列番号68)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-6-mut-3」;
10)7G4-g2-VH(配列番号53)の重鎖可変領域および7G4-g1-VL(配列番号56)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-7」;
11)7G4-g3-VH(配列番号54)の重鎖可変領域および7G4-g1-VL(配列番号56)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-8」;
12)7G4-g0-VH(配列番号51)の重鎖可変領域および7G4-g2-VL(配列番号57)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-9」;
13)7G4-g1-VH(配列番号52)の重鎖可変領域および7G4-g2-VL(配列番号57)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-10」;
14)7G4-g2-VH(配列番号53)の重鎖可変領域および7G4-g2-VL(配列番号57)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-11」;
15)7G4-g3-VH(配列番号54)の重鎖可変領域および7G4-g2-VL(配列番号57)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-12」;
16)7G4-g0-VH(配列番号51)の重鎖可変領域および7G4-g3-VL(配列番号58)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-13」;
17)7G4-g1-VH(配列番号52)の重鎖可変領域および7G4-g3-VL(配列番号58)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-14」;
18)7G4-g2-VH(配列番号53)の重鎖可変領域および7G4-g3-VL(配列番号58)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-15」;
19)7G4-g3-VH(配列番号54)の重鎖可変領域および7G4-g3-VL(配列番号58)の軽鎖可変領域を含む「Hu4-16」
を含む、7G4の例示的ヒト化抗体も提供する。
【0150】
これらの例示的ヒト化抗IFNAR1抗体はIFNAR1に対する特異的結合能力または親和性を保持し、その面では親マウス抗体7G4に少なくとも匹敵する、または親マウス抗体7G4よりはるかに優れている。例えば、データは実施例9に提供されている。
【0151】
遺伝子セグメントの再配列由来の抗体
ある特定の実施形態では、本開示で提供される抗体またはその抗原結合断片は、マウスIGHV1-69遺伝子の産物であるもしくはこの遺伝子に由来するV遺伝子、マウスIGHD2-4遺伝子の産物であるもしくはこの遺伝子に由来するD遺伝子、およびマウスIGHJ4遺伝子の産物であるもしくはこの遺伝子に由来するJ遺伝子を含む特定のマウス生殖系列重鎖Ig遺伝子由来の重鎖可変領域、ならびに/またはマウスIGKV13-84遺伝子の産物であるもしくはこの遺伝子に由来するV遺伝子、およびマウスIGKJ4遺伝子の産物であるもしくはこの遺伝子に由来するJ遺伝子を含む特定のマウス生殖系列軽鎖Ig遺伝子由来の軽鎖可変領域を含む。
【0152】
特定のマウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列「の産物」であるまたはこの遺伝子配列「に由来する」抗体またはその抗原結合断片は、例えば、天然に存在する体細胞突然変異または部位特異的突然変異の意図的な導入のせいで、生殖系列免疫グロブリン配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸残基の違いを含有する場合がある。しかし、本開示で提供される選択された抗体またはその抗原結合断片は、典型的には、マウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされているアミノ酸配列に少なくとも75%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%)アミノ酸配列が同一であり、他の種の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、ラット生殖系列配列)と比べた場合、抗体またはその抗原結合断片をマウスであるまたはヒトであると確認するアミノ酸残基を含有しうる。
【0153】
例示的マウス抗体7G4および10C5は両方とも、重鎖可変領域ではIGHV1-69遺伝子、IGHD2-4遺伝子、およびIGHJ4遺伝子を含むマウス生殖系列Ig遺伝子に、ならびに軽鎖可変領域ではIGKV13-84遺伝子およびIGKJ4遺伝子に由来している。いかなる理論にも縛られたくはないが、マウス遺伝子のこの組合せは、再配列されると、本明細書に開示される7G4および10C5に類似する結合能力、結合特徴および/または生物活性を有する抗IFNAR1抗体に集合することができるVHとVLの組合せを生じるのに有利になるように偏っていると考えられる。
【0154】
当業者であれば、例えば、ファージディスプレイライブラリーを使用することにより、遺伝子配列の人工的突然変異によりなどの当技術分野で公知の方法を使用して、またはトランスジェニック動物を使用して、IGHV1-69遺伝子、IGHD2-4遺伝子、IGHJ4遺伝子、IGKV13-84遺伝子、およびIGKJ4遺伝子を含むマウス生殖系列Ig遺伝子に由来する抗IFNAR1抗体を得ることができる。一実施形態では、マウス遺伝子をクローニングしてファージディスプレイライブラリー中に組換えにより導入し、続いて目的の抗原(例えば、IFNAR1)に結合することができるファージクローンをパニングまたはスクリーニングすることができる(例えば、Winterら、Ann.Rev Immunol.、12:433~455頁(1994)に記載されている)。別の実施形態では、IGHV1-69、IGHD2-4、IGHJ4、IGKV13-84、およびIGKJ4遺伝子の遺伝子配列は、コードされた重または軽鎖可変領域配列が配列番号15(重鎖)にまたは配列番号16(軽鎖)に少なくとも75%(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%)アミノ酸配列が同一であるように、1つまたは複数の突然変異を導入するよう操作することができる。別の実施形態では、内在性抗体産生遺伝子を欠くトランスジェニック動物は、マウスIGHV1-69遺伝子、IGHD2-4遺伝子、IGHJ4遺伝子、IGKV13-84遺伝子およびIGKJ4遺伝子の特定の組合せを保有するように操作することができ、そこでは、目的の抗原(例えば、IFNAR1)に対して免疫化されると、トランスジェニック動物は、抗IFNAR1抗体を生じる可能性があるこれらの操作されたマウス遺伝子から抗IFNAR1抗体を産生しやすくなる。
【0155】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部および/または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部を含む。一実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、本明細書で提供される重鎖可変ドメインのすべてまたは一部からなる単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体のさらに多くの情報は当技術分野で入手可能である(例えば、米国特許第6,248,516号参照)。
【0156】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体およびその断片は、免疫グロブリン(Ig)定常領域をさらに含み、この定常領域は任意選択で、重鎖および/または軽鎖定常領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ、および/またはCH2-CH3領域(または任意選択で、CH2-CH3-CH4領域)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体およびその断片は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の重鎖定常領域を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖定常領域はCκまたはCλを含む。本明細書で提供される抗IFNAR1抗体およびその断片の定常領域は、野生型定常領域配列と同一であるまたは1つもしくは複数の突然変異が異なっていてもよい。
【0157】
ある特定の実施形態では、重鎖定常領域はFc領域を含む。Fc領域は、抗体のADCCおよびCDCなどのエフェクター機能を媒介することが知られている。Igアイソタイプが異なればそのFc領域が持つエフェクター機能を誘導する能力も異なる。例えば、IgG1およびIgG3のFc領域は、IgG2およびIgG4のFc領域よりも効果的にADCCとCDCの両方を誘導することが認識されていた。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は、ADCCもしくはCDCを誘導することができたIgG1もしくはIgG3アイソタイプのFc領域を含む;または代わりに、エフェクター機能を低減したもしくは枯渇させたIgG2もしくはIgG4アイソタイプの定常領域を含む。ある特定の実施形態では、抗IFNAR1抗体またはその抗原結合断片は、配列番号61の配列を含む野生型ヒトIgG1 Fc領域または他の野生型ヒトIgG1対立遺伝子を含む。
【0158】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその断片は、診断および/または治療用途を提供するのに十分であるヒトIFNAR1に対する特異的結合親和性を有する。
【0159】
本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、標識抗体、二価抗体、または抗イディオタイプ抗体が可能である。組換え抗体は、動物においてではなく組換え法を使用してin vitroで調製される抗体である。
【0160】
ある特定の実施形態では、本出願は抗IFNAR1抗体またはその抗原結合断片を提供し、これは本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片とIFNAR1への結合を巡って競合し、IFNβ媒介IFNAR1活性化を阻害しない。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IFNα媒介および/またはIFNω媒介IFNAR1活性化を阻害する。そのような抗体またはその抗原結合断片は、ウイルス複製の阻害などのIFNβの望ましい生物活性を保持したままでIFNAR1活性化を十分に阻害することができる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、IFNα媒介IFNAR1活性化に対してもしくはIFNω媒介IFNAR1活性化に対して阻害効果を有する、または抗ウイルス活性は、IFNβ媒介IFNAR1活性化に対する阻害効果の少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または20倍である。
【0161】
抗体バリアント
本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、その種々のバリアントも包含する。
【0162】
ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、上の表1に提供される1つもしくは複数のCDR配列、上の表2に提供される1つもしくは複数の可変領域配列(しかし、CDR配列のいずれにでもない)、および/または定常領域(例えば、Fc領域)に1つまたは複数の改変または置換を含む。そのようなバリアントは、その親抗体のIFNAR1に対する結合特異性を保持するが、改変(複数可)または置換(複数可)により与えられる1つまたは複数の望ましい特性を有する。例えば、抗体バリアントは、改善された抗原結合親和性、改善されたグリコシル化パターン、グリコシル化の減少したリスク、減少した脱アミノ化、減少したもしくは枯渇したエフェクター機能(複数可)、改善されたFcRn受容体結合、増加した薬物動態半減期、pH感受性、および/またはコンジュゲーションへの適合性(例えば、1つまたは複数の導入されたシステイン残基)を有することができる。
【0163】
親抗体配列は、当技術分野で公知の方法、例えば、「アラニンスキャニング変異誘発」を使用して、改変されるまたは置換されるのに適切なまたは好ましい残基を特定するためにスクリーニングしてもよい(例えば、Cunningham and Wells (1989)Science、244:1081~1085頁参照)。手短に言えば、標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)は特定して、中性または負電荷アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置き換えることができ、改変された抗体が産生され関心のある特性を求めてスクリーニングされる。特定のアミノ酸位置での置換が興味のある機能上の変化を示す場合、その位置は改変または置換の可能性のある残基として特定することができる。可能性のある残基は、異なるタイプの残基(例えば、システイン残基、正電荷残基、等)で置換することによりさらに評価してもよい。
【0164】
親和性バリアント
親和性バリアントは、上の表1に提供される1つもしくは複数のCDR配列、本明細書で提供される1つもしくは複数のFR配列、または上の表2に提供される重もしくは軽鎖可変領域配列に改変または置換を含有していてもよい。FR配列は、当業者であれば上の表1のCDR配列および上の表2の可変領域配列に基づいて容易に特定することができる。なぜならば、CDR領域は可変領域では2つのFR領域と隣接していることは当技術分野では周知であるからである。親和性バリアントは、親抗体のIFNAR1に対する特異的結合親和性を保持している、または親抗体よりも改善されたIFNAR1特異的結合親和性さえ有する。ある特定の実施形態では、CDR配列、FR配列、または可変領域配列における置換(複数可)の少なくとも1つ(またはすべて)が保存的置換を含む。
【0165】
当業者であれば、上の表1および上の表2に提供されるCDR配列および可変領域配列では、1つまたは複数のアミノ酸残基を置換しうるが、それでも得られた抗体または抗原結合断片はまだIFNAR1に対する結合親和性もしくは結合能力を保持しており、または改善された結合親和性もしくは能力さえ有する。当技術分野で公知の種々の方法を使用すればこの目的を達成することができる。例えば、抗体バリアント(FabまたはscFvバリアント)のライブラリーを、ファージディスプレイ技術を用いて作製し発現させ、次に、ヒトIFNAR1に対する結合親和性についてスクリーニングすることができる。別の例として、コンピュータソフトウェアを使用すれば、ヒトIFNAR1への抗体の結合のシミュレーションを実質的に行い、結合面を形成する抗体上のアミノ酸残基を特定することができる。そのような残基は、結合親和性の低減を予防するように置換において避ける、またはもっと強い結合を提供するように置換の標的にしてもよい。
【0166】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるヒト化抗体または抗原結合断片は、1つもしくは複数のCDR配列、および/または1つもしくは複数のFR配列に1つまたは複数のアミノ酸残基置換を含む。ある特定の実施形態では、親和性バリアントは、CDR配列および/またはFR配列に合計で20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下の置換を含む。
【0167】
ある特定の実施形態では、抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は、上の表1に収載される配列(単数または複数)と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)配列同一性を有する1、2、または3つのCDR配列を含み、その一方で、その親抗体に類似するレベルでまたはそれよりもはるかに高いレベルでIFNAR1に対する結合親和性を保持する。
【0168】
ある特定の実施形態では、抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は、上の表2に収載される配列(単数または複数)と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)配列同一性を有する1つまたは複数の可変領域配列を含み、その一方で、その親抗体に類似するレベルでまたはそれよりもはるかに高いレベルでIFNAR1に対する結合親和性を保持する。一部の実施形態では、上の表2に収載される可変領域配列に全部で1~10アミノ酸が置換されている、挿入されている、または欠失している。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域で(例えば、FRで)生じる。
【0169】
グリコシル化バリアント
本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、グリコシル化バリアントも包含しており、このバリアントは抗体または抗原結合断片のグリコシル化の程度を増やすまたは減らすために得ることができる。
【0170】
抗体またはその抗原結合断片は、グリコシル化部位を導入するまたは取り除く1つまたは複数の改変を含んでいてもよい。グリコシル化部位は、炭水化物部分(例えば、オリゴ糖構造体)を結合させることができる側鎖を有するアミノ酸残基である。抗体のグリコシル化は典型的には、N結合型またはO結合型である。N結合型とは、アスパラギン残基、例えば、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であるアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニンなどのトリペプチド配列のアスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合のことである。O結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸への、もっとも一般的にはセリンまたはスレオニンへの糖N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの結合のことである。天然のグルコシル化部位の除去は、例えば、上記のトリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位では)または配列中に存在するセリンもしくはスレオニン残基(O結合型グリコシル化部位では)のうちの1つが置換されるように、アミノ酸配列を変更することにより都合よく達成することができる。新しいグリコシル化部位は、そのようなトリペプチド配列またはセリンもしくはスレオニン残基を導入することにより同様のやり方で作り出すことができる。
【0171】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、グリコシル化部位を取り除くためN297(例えば、N297A、N297Q、またはN297G)に突然変異を含む。
【0172】
システイン操作バリアント
本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、システイン操作バリアントも包含しており、このバリアントは1つまたは複数の導入された遊離のシステインアミノ酸残基を含む。
【0173】
遊離のシステイン残基は、ジスルフィド架橋の一部ではない残基である。システイン操作バリアントは、操作されたシステインの部位で、例えば、マレイミドまたはハロアセチルを通じて、例えば、細胞傷害性および/もしくは撮像化合物、標識、または、とりわけ、放射性アイソトープとのコンジュゲーションに有用である。抗体またはその抗原結合断片を操作して遊離のシステイン残基を導入するための方法は当技術分野では公知であり、例えば、国際公開第2006/034488号を参照されたい。
【0174】
Fcバリアント
本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、Fcバリアントも包含しており、このバリアントは、例えば、ADCCおよびCDCなどの変更されたエフェクター機能を提供するために、そのFc領域および/またはヒンジ領域に1つまたは複数のアミノ酸残基改変または置換を含む。抗体操作によりADCC活性を変更する方法は、当技術分野に記載されており、例えば、Shields RL.ら、J Biol Chem.2001年.276(9):6591~604頁;Idusogie EE.ら、J Immunol.2000年.164(8):4178~84頁;Steurer W.ら、J Immunol.1995年、155(3):1165~74頁;Idusogie EE.ら、Immunol.2001年、166(4):2571~5頁;Lazar GA.ら、PNAS、2006年、103(11):4005~4010頁;Ryan MC.ら、Mol.Cancer Ther.、2007年、6:3009~3018年;Richards JO,ら、Mol Cancer Ther.2008年、7(8):2517~27年;Shields R. L.ら、J.Biol.Chem、2002年、277:26733~26740頁;Shinkawa T.ら、J.Biol.Chem、2003年、278:3466~3473頁を参照されたい。
【0175】
本明細書で提供される抗体のCDC活性は、例えば、C1q結合および/またはCDCを改善するまたは減少することにより変更することもできる(例えば、国際公開第99/51642号;Duncan & Winter Nature 322:738~40頁(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびFc領域バリアントの他の例に関しては国際公開第94/29351号参照)。Fc領域のアミノ酸残基329、331および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸は、異なるアミノ酸残基で置き替えれば、C1q結合および/または低減したもしくは消失した補体依存性細胞傷害(CDC)を変更することができる(Idusogieらによる米国特許第6,194,551号参照)。1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を導入して、補体を固定する抗体の能力を変更することもできる(Bodmerらによる国際公開第94/29351号参照)。
【0176】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は低減したエフェクター機能を有し、IgG1での234、235、237、および238、268、297、309、330、および331からなる群から選択される位置に1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片はIgG1アイソタイプであり、N297A、N297Q、N297G、L235E、L234A、L235A、L234F、L235E、P331S、およびその任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片はIgG2アイソタイプであり、H268Q、V309L、A330S、P331S、V234A、G237A、P238S、H268A、およびその任意の組合せ(例えば、H268Q/V309L/A330S/P331S、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S)からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片はIgG4アイソタイプであり、N297A、N297Q、N297G、L235E、L234A、L235A、およびその任意の組合せからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片はIgG2/IgG4クロスアイソタイプである。IgG2/IgG4クロスアイソタイプの例は、Rother RPら、Nat Biotechnol 25:1256~1264頁(2007)に記載されている。
【0177】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片はIgG1アイソタイプであり、234、235および331のうちの1つまたは複数の地点に1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片はIgG1アイソタイプであり、Fc領域に三重突然変異L234F/L235E/P331Sを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、配列番号62の配列を含む変異Fc領域を含む。
【0178】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体および抗原結合断片は、増加したADCCおよび/またはFcγ受容体に対する増加した親和性を有し、以下の位置:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439のうちの1つまたは複数に1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む(Prestaによる国際公開第00/42072号参照)。位置256、290、298、333、334および339での特定の突然変異は、FcγRIIIへの結合を改善することが明らかにされた。さらに、以下の組合せ変異体:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334Aは、FcγRIII結合を改善することが明らかにされた。
【0179】
ある特定の実施形態では、抗IFNAR1抗体またはその抗原結合断片は、新生児Fc受容体(FcRn)へのpH依存性結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。そのようなバリアントは長い薬物動態半減期を持つことができる。なぜならば、リソソームでの分解から免れることを可能にする酸性pHでFcRnに結合し、次に、移動されて細胞外に放出されるからである。抗体およびその抗原結合断片を操作してFcRnとの結合親和性を改善する方法は当技術分野では周知であり、例えば、Vaughn,D.ら、Structure、6(1):63~73頁、1998年;Kontermann、R.ら、Antibody Engineering、Volume 1、Chapter 27:Engineering of the Fc region for improved PK、published by Springer、2010年;Yeung、Y.ら、Cancer Research、70:3269~3277年(2010);およびHinton,P.ら、J.Immunology、176:346~356頁(2006)を参照されたい。
【0180】
ある特定の実施形態では、抗IFNAR1抗体またはその抗原結合断片は、Fc領域の境界にヘテロ二量体化を推進するおよび/または促進する1つまたは複数のアミノ酸置換(複数可)を含む。これらの改変は、第1のFcポリペプチド中に突起を、第2のFcポリペプチド中に空洞を導入することを含み、第1と第2のFcポリペプチドの相互作用を促進してヘテロ二量体または複合体を形成するように、突起を空洞中に配置することができる。これらの改変を有する抗体を産生する方法は当技術分野では公知であり、例えば、米国特許第5,731,168号に記載されている。
【0181】
抗原結合断片
抗IFNAR1抗原結合断片も本明細書で提供される。種々のタイプの抗原結合断片が当技術分野では公知であり、例えば、そのCDRおよび可変配列が表1および2に示されている例示的抗体、ならびにその異なるバリアント(親和性バリアント、グリコシル化バリアント、Fcバリアント、システイン操作バリアント等々などの)を含む、本明細書で提供される抗IFNAR1抗体に基づいて開発することが可能である。
【0182】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗IFNAR1抗原結合断片は、ラクダ化単一ドメイン抗体、ダイアボディ、一本鎖Fv断片(scFv)、scFv二量体、BsFv、dsFv、(dsFv)2、dsFv-dsFv’、Fv断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、二重特異性抗体、dsダイアボディ、ナノボディ、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、または二価ドメイン抗体である。
【0183】
そのような抗原結合断片の産生のために種々の技法を使用することができる。実例となる方法は、無傷の抗体の酵素的消化(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107~117頁(1992);およびBrennanら、Science、229:81頁(1985)参照)、大腸菌(E.Coli)などの宿主細胞による組換え発現(例えば、Fab、FvおよびScFv抗体断片では)、上で考察されたファージディスプレイライブラリーからのスクリーニング(例えば、ScFvでは)、およびF(ab’)2断片を形成するための2つのFab’-SH断片の化学的連結(Carterら、Bio/Technology 10:163~167頁(1992))を含む。抗体断片の産生のための他の技法は当業者には明らかである。
【0184】
ある特定の実施形態では、抗原結合断片はscFvである。scFvの作製は、例えば、国際公開第93/16185号、米国特許第5,571,894号、および米国特許第5,587,458号に記載されている。scFvは、アミノ末端またはカルボキシル末端でエフェクタータンパク質に融合させて融合タンパク質を提供してもよい(例えば、Antibody Engineering、ed.Borrebaeck参照)。
【0185】
ある特定の実施形態では、抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は二重特異性である。ある特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、前記IFNAR1抗体、またはその抗原結合断片から、異なる結合特異性を有する第2の機能的部分にさらに連結される。
【0186】
コンジュゲート
一部の実施形態では、抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は、コンジュゲート部分をさらに含む。コンジュゲート部分は、抗体およびその抗原結合断片に連結することができる。コンジュゲート部分は、抗体またはその抗原結合断片に結合することができる部分である。様々なコンジュゲート部分を、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片に連結しうることが想定されている(例えば、「Conjugate Vaccines」、Contributions to Microbiology and Immunology、J.M.CruseおよびR.E.Lewis,Jr.(編)、Carger Press、New York、(1989)参照)。これらのコンジュゲート部分は、数ある方法の中でも、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、複合体形成、会合、混合、または付加により抗体またはその抗原結合断片に連結してもよい。
【0187】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体および抗原結合断片は、エピトープ結合部分の外側に、1つまたは複数のコンジュゲート部分に結合するために利用しうる特定の部位を含有するように操作してもよい。例えば、そのような部位は、コンジュゲート部分への共有結合を促進するために、例えば、システインまたはヒスチジン残基などの1つまたは複数の反応性アミノ酸残基を含んでもよい。
【0188】
ある特定の実施形態では、抗体はコンジュゲート部分に間接的に、または別のコンジュゲート部分を通じて連結してもよい。例えば、抗体またはその抗原結合部分は、ビオチンにコンジュゲートする、次に、アビジンにコンジュゲートされている第2のコンジュゲートに間接的にコンジュゲートしてもよい。コンジュゲートは、クリアランス改変剤、毒素(例えば、化学療法薬)、検出可能な標識(例えば、放射性同位元素、ランタニド、発光標識、蛍光標識、または酵素基質標識)、または精製部分が可能である。
【0189】
「毒素」は、細胞にとって有害であるまたは細胞を損傷するもしくは殺傷することができるいかなる薬剤でありうる。毒素の例は、限定せずに、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、MMAE、MMAF、DM1、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびその類似体、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、トポイソメラーゼ阻害剤、ならびにチューブリン結合剤を含む。
【0190】
検出可能な標識の例は、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、またはテキサスレッド)、酵素基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、グリコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼまたはβ-D-ガラクトシダーゼ)、放射性同位元素(例えば、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Bi、および32P、他のランタニド)、発光標識、発色団部分、ジゴキシゲニン、ビオチン/アビジン、DNA分子または検出用の金を含みうる。
【0191】
ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、抗体の半減期を増やす一助となるクリアランス改変剤が可能である。実例は、PEG、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびエチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体などの水溶性ポリマーを含む。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、分岐状でも分岐していなくてもよい。抗体に結合しているポリマーの数は変動してもよく、1つよりも多いポリマーが結合している場合、同じまたは異なる分子であることが可能である。
【0192】
ある特定の実施形態では、コンジュゲート部分は、磁気ビーズなどの精製部分が可能である。
【0193】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体およびその抗原結合断片は、コンジュゲートのためのベースとして使用される。
【0194】
ポリヌクレオチドおよび組換え方法
本開示は、抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本明細書で使用される用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)および一本鎖型または二本鎖型のそのポリマーのことである。ある特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号11、12、13、および14に示される1つまたは複数のヌクレオチド配列、ならびに/または少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)配列同一性を有するその相同配列、ならびに/または縮重した置換のみを有するそのバリアントを含み、本明細書で提供される見本となる抗体の可変領域をコードする。別段指示されなければ、特定のポリヌクレオチド配列は、その保存的に改変されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補的配列ならびに明白に指示される配列も暗黙の裡に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製することにより達成しうる(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081頁(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605~2608頁(1985);およびRossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91~98頁(1994)参照)。
【0195】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離され塩基配列決定される。コードDNAは合成法により得てもよい。
【0196】
抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片をコードする単離されたポリヌクレオチド(例えば、表3に示される配列を含む)は、当技術分野で公知の組換え技法を使用して、さらなるクローニング(DNAの増幅)のためにまたは発現のためにベクター中に挿入することができる。利用可能なベクターの数は多い。ベクター成分は、一般に、以下の:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、および転写終結配列のうちの1つまたは複数を含むがこれらに限定されない。
【0197】
本開示は、本明細書で提供される単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、抗体またはその抗原結合断片、核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、および少なくとも1つの選択マーカーをコードする。ベクターの例は、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)、ラムダファージ、およびM13ファージ、プラスミドpcDNA3.3、pMD18-T、pOptivec、pCMV、pEGFP、pIRES、pQD-Hyg-GSeu、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS10、pLexA、pACT2.2、pCMV-SCRIPT.RTM.、pCDM8、pCDNA1.1/amp、pcDNA3.1、pRc/RSV、PCR 2.1、pEF-1、pFB、pSG5、pXT1、pCDEF3、pSVSPORT、pEF-Bos等を含むがこれらに限定されない。
【0198】
抗体またはその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターは、クローニングまたは遺伝子発現のために宿主細胞に導入することができる。本明細書のベクターにおいてDNAをクローニングするまたは発現するのに適した宿主細胞は、上記の原核生物、酵母、または高等真核細胞である。この目的に適した原核生物は、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例えば、大腸菌類(Escherichia)などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えば、大腸菌(E.coli)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ菌(Salmonella)、例えば、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア菌(Serratia)、例えば、霊菌(Serratia marcescans)および赤痢菌(Shigella)、ならびに枯草菌(B.subtilis)およびバシラス・リケニフォルミス(B.licheniformis)などの桿菌(Bacilli)、緑膿菌(P.aeruginosa)などのシュードモナス(Pseudomonas)、およびストレプトマイセス(Streptomyces)を含む。
【0199】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、抗IFNAR1抗体コードベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、または一般的パン酵母は、下等真核宿主微生物の中では最も一般的に使用されている微生物である。しかし、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe);例えば、K・ラクチス(K.lactis)、K・フラジリス(K.fragilis)(ATCC 12,424)、K・ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC 16,045)、K・ウィッカーラミイ(K.wickeramii)(ATCC 24,178)、K・ウォルティ(K.waltii)(ATCC 56,500)、K・ドロソフィララム(K.drosophilarum)(ATCC 36,906)、K・サーモトレランス(K.thermotolerans)、およびK・マルキシアナス(K.marxianus)などのクリベロマイセス宿主;ヤロウイア属(yarrowia)(EP 402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070);カンジダ菌(Candida);トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesia)(EP 244,234);アカパンカビ(Neurospora crassa);シュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)などのシュワニオミセス(Schwanniomyces);および例えば、パンカビ(Neurospora)、アオカビ類(Penicillium)、トリポクラディウム(Tolypocladium)などの糸状菌、ならびに偽巣性コウジ菌(A.nidulans)およびA・ニガー(A.niger)などのアスペルギルス(Aspergillus)宿主などの多くの他の属、種、および株が一般に利用可能であり本明細書で有用である。
【0200】
本明細書で提供されるグリコシル化抗体または抗原断片の発現に適した宿主細胞は多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例は植物および昆虫細胞を含む。数多くのバキュロウイルス株およびバリアントならびにヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)、およびカイコ(Bombyx mori)などの宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための種々のウイルス株、例えば、キンウワバ科(Autographa californica)NPVのL-1バリアントおよびカイコNPVのBm-5株が公開されており、そのようなウイルスは、特に、ヨウトガ細胞のトランスフェクションのための、本明細書の本発明に従ったウイルスとして使用してもよい。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養物も宿主として利用することができる。
【0201】
しかし、脊椎動物細胞への関心が最大であり、培養(組織培養)での脊椎動物細胞の増殖がこれまで常法であった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293 or 293 cells subcloned for growth in suspension culture、Grahamら、J.Gen Virol.36:59頁(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216頁(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.23:243~251頁(1980))、サル腎培養細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎培養細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44~68頁(1982));MRC 5細胞:FS4細胞;およびヒト肝癌株(Hep G2)である。一部の好ましい実施形態では、宿主細胞はCHO、BHK、NS0、293およびこれらの誘導体などの哺乳動物培養細胞株である。
【0202】
宿主細胞は、抗IFNAR1抗体産生のために上記の発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導する、形質転換体を選択する、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために必要に応じて改変された従来の栄養培地で培養される。別の実施形態では、抗体は当技術分野で公知の相同組換えにより産生してもよい。ある特定の実施形態では、宿主細胞は本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片を産生することができる。
【0203】
本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片を産生するのに使用される宿主細胞は、種々の培地で培養しうる。ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Sigma)などの市販の培地は宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Hamら、Meth.Enz.58:44頁(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.102:255頁(1980)、米国特許第4,767,704号;米国特許第4,657,866号;米国特許第4,927,762号;米国特許第4,560,655号;または米国特許第5,122,469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号、または米国特許第Re.30,985号に記載されている培地のいずれでも宿主細胞用の培養培地として使用しうる。これらの培地のいずれも、必要次第で、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子などの)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩などの)、バッファー(HEPESなどの)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなどの)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬などの)、微量元素(最終濃度ではマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物と定義される)、およびグルコースまたは等価なエネルギー源を補充してもよい。いかなる他の必要な栄養補助剤も、当業者には知られていると考えられる適切な濃度で含まれてもよい。温度およびpHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞を用いて以前使用された培養条件であり、当業者には明らかである。
【0204】
組換え技法を使用する場合、抗体は、細胞内に、細胞膜周辺腔に、産生される、または直接培地中に分泌させることができる。抗体が細胞内に産生される場合、第1段階として、微粒子のデブリ、宿主細胞または溶解した断片は、例えば、遠心分離または限外濾過により除去される。Carterら、Bio/Technology 10:163~167頁(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載している。手短に言えば、細胞ペーストは、約30分間にわたり酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で解凍される。細胞デブリスは遠心分離により除去することができる。抗体が培地中に分泌される場合、そのような発現系からの上澄みは、一般に先ず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を使用して濃縮される。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が、タンパク質分解を阻害するために前述のステップのいずれに含まれていてもよく、抗生物質は偶然の汚染物質の成長を予防するために含まれていてもよい。
【0205】
細胞から調製される抗IFNAR1抗体およびその抗原結合断片は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAEセルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモノウム沈澱、塩析、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技法である。
【0206】
ある特定の実施形態では、固相上に固定されたプロテインAは、抗体およびその抗原結合断片の免疫親和性精製に使用される。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依拠する。プロテインAを使用すれば、ヒトガンマ1、ガンマ2、またはガンマ4重鎖を基盤とする抗体を精製することができる(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1~13頁(1983))。プロテインGはあらゆるマウスアイソタイプにおよびヒトガンマ3に推奨される(Gussら、EMBO J.5:1567~1575頁(1986))。親和性リガンドが結合しているマトリックスはほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスが利用可能である。細孔性ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定しているマトリックスは、アガロースにより達成することができるよりも速い流速および短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製には有用である。イオン交換カラム上での分画、エタノール沈澱、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィーのアニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなどの)上でのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈澱などのタンパク質精製のための他の技法も回収される抗体に応じて利用可能である。
【0207】
任意の予備精製ステップ(複数可)に続いて、目的の抗体と夾雑物の混合物は、溶出バッファーを約2.5~4.5の間のpHで使用して低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけ、好ましくは低塩濃度(例えば、約0~0.25M塩)で実施してもよい。
【0208】
医薬組成物
本開示は、抗IFNAR1抗体またはその抗原結合断片および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0209】
本明細書で開示される医薬組成物において使用するための薬学的に許容される担体は、例えば、薬学的に許容される液体、ゲル、もしくは固体担体、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張剤、バッファー、抗酸化剤、麻酔剤、懸濁/分散剤、封鎖もしくはキレート剤、希釈剤、アジュバンド、賦形剤、または非毒性補助物質、当技術分野で公知の他の成分、またはこれらの種々の組合せを含んでいてもよい。
【0210】
適切な成分は、例えば、抗酸化剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、バッファー、保存剤、潤滑剤、香味剤、濃厚剤、着色剤、乳化剤または糖およびシクロデキストリンなどの安定化剤を含んでいてもよい。適切な抗酸化剤は、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、および/または没食子酸プロピルを含んでいてもよい。本明細書に開示される場合、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片およびコンジュゲートを含む組成物中へのメチオニンなどの1つまたは複数の抗酸化剤の包含は抗体または抗原結合断片の酸化を減少させる。この酸化の低減は、結合親和性の消失を予防するまたは低減し、それによって抗体安定性を改善し半減期を最大にする。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で開示される1つまたは複数の抗体またはその抗原結合断片およびメチオニンなどの1つまたは複数の抗酸化剤を含む組成物が提供される。抗体または抗原結合断片をメチオニンなどの1つまたは複数の抗酸化剤と混合することにより、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片の酸化を予防し、半減期を延ばし、および/または効力を改善するための方法がさらに提供される。
【0211】
さらに説明すると、薬学的に許容される担体は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張ブドウ糖注射液、減菌水注射液、またはブドウ糖および乳酸加リンゲル液、などの水性媒体、植物性起源の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、またはピーナッツ油などの非水性媒体、静菌性または静真菌性濃度での抗菌剤、塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの等張剤、リン酸またはクエン酸バッファーなどのバッファー、硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、塩酸プロカインなどの局所麻酔剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンなどの懸濁および分散剤、ポリソルベート80(TWEEN-80)などの乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸などの封鎖またはキレート剤を含んでいてもよい。フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムならびに塩化ベンゼトニウムを含む、担体として利用される抗菌剤は複数用量容器中において医薬組成物に添加してもよい。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、またはエタノールを含んでいてもよい。適切な非毒性補助物質は、例えば、湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、可溶性エンハンサー、または酢酸ナトリウム、ソルビタンモノウラレート、オレイン酸トリエタノールアミン、もしくはシクロデキストリンなどの薬剤を含んでいてもよい。
【0212】
医薬組成物は、液体溶液、懸濁液、乳濁液、ピル、カプセル、錠剤、徐放製剤、または粉末が可能である。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、等などの標準担体を含むことができる。
【0213】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、注射用組成物に処方される。注射用医薬組成物は、例えば、液体溶液、懸濁液、乳濁液、または液体溶液、懸濁液、もしくは乳濁液を作製するのに適した固体形態などの任意の従来の形態で調製してもよい。注射用の製剤は、注射の準備ができている無菌および/または非発熱性溶液、植込錠を含む、使用直前に溶媒と組み合わせる準備ができている凍結乾燥粉末などの無菌乾燥可溶性製品、注射の準備ができている無菌懸濁液、使用直前に媒体と組み合わせる準備ができている無菌乾燥不溶性製品、ならびに無菌および/または非発熱性乳濁液を含んでいてもよい。溶液は水性または非水性でもよい。
【0214】
ある特定の実施形態では、単位服用量非経口製剤は、アンプル、バイアルまたは針付きの注射器に詰め込まれる。非経口投与用のすべての製剤は、当技術分野で公知であり実践されているように、無菌で非発熱性であるべきである。
【0215】
ある特定の実施形態では、無菌凍結乾燥粉末は、本明細書で開示される抗体または抗原結合断片を適切な溶媒に溶解することにより調製される。溶媒は、粉末または粉末から調製された復元溶液の安定性または他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含有していてもよい。使用してもよい賦形剤は、水、ブドウ糖、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、サクロースまたは他の適切な薬剤を含むがこれらに限定されない。溶媒は、一実施形態では、約中性のpHで、クエン酸、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウムなどのバッファーまたは当業者には公知である他のそのようなバッファーを含有していてもよい。溶液のその後の無菌濾過、続いて当業者には公知である標準条件下での凍結乾燥により望ましい製剤が提供される。一実施形態では、こうして得られた溶液は凍結乾燥のためにバイアル中に配分される。それぞれのバイアルは、抗IFNAR1抗体またはその抗原結合断片またはその組成物の単回投薬量または複数回投薬量を含有することができる。用量または用量のセットに必要な量よりも少量多い(例えば、約10%)過剰充填バイアルは、正確なサンプル引き出しおよび正確な投与を促進するために容認可能である。凍結乾燥粉末は、約4℃から室温までなどの適切な条件下で保存することができる。
【0216】
注射のための凍結乾燥粉末の水での復元は、非経口投与において使用するための製剤を提供する。一実施形態では、復元では、無菌および/もしくは非発熱性水または他の液体の適切な担体が凍結乾燥粉末に添加される。正確な量は、与えられている選択された療法に依拠しており、経験的に決めることができる。
【0217】
使用方法
本開示は、対象においてI型IFN関連疾患または状態を処置する方法であって、治療有効量の、本明細書で提供される抗体もしくはその抗原結合断片、または本明細書で提供される医薬組成物を対象に投与することを含む方法も提供する。ある特定の実施形態では、I型IFN関連疾患または状態は、IFNαおよび/またはIFNω関連疾患または状態である。
【0218】
一部の実施形態では、I型IFN関連疾患または状態は、I型インターフェロン(IFN)および/またはI型IFNシグネチャー遺伝子を発現しているまたは過剰発現していることを特徴とする。
【0219】
本明細書で使用される用語「シグネチャー遺伝子」または「遺伝子シグネチャー」または「遺伝子発現シグネチャー」とは、変更されたもしくは変更のない生物学的過程または自己免疫疾患などの病原性の病状の結果として起こる遺伝子発現の独特の特徴的パターンを有する細胞の単一の遺伝子または組合せ群の遺伝子のことである。遺伝子発現シグネチャーにより理論的に定義されうる表現型は、疾患を持つ個人の生存または予後を予測する表現型、疾患の異なるサブタイプを区別するのに使用される表現型から、特定の経路の活性化を予測する表現型までの範囲に及ぶ。遺伝子シグネチャーを使用すれば、理想的には、特定の処置が効果的になる患者の群を選択することができる。
【0220】
ある特定の実施形態では、特定の疾患でのI型インターフェロンシグネチャー遺伝子は、マイクロアレイなどの、当技術分野で公知の方法を使用して得ることができる(例えば、Liら、Clin Exp Immunol.2010年3月;159(3):281~291頁;およびHarmanら、Blood 2011年 118:298~308頁参照)。
【0221】
IFN-IまたはI型IFNシグネチャー遺伝子の過剰発現は、全身性エリテマトーデス(SLE)、筋肉炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性硬化症、強皮症、多発性硬化症(MS)、特発性炎症性筋疾患(IIM)および関節リウマチ(RA)を含むいくつかの自己免疫疾患で記述されてきた(Psarras A,ら、Rheumatology(Oxford)56:1662~1675頁(2017).、Lee-Kirsch MAら、Annu Rev Med 68:297~315頁(2017))。IFN-I(Khamashta Metら、Ann Rheum Dis.;75(11):1909~1916頁(2016))またはIFNAR1(Furie Retら、Arthritis Rheumatol 69:376~386頁(2017))に対する遮断抗体は、活発な中等度から重度のSLEを抱えた処置患者において効果的であることが実証された。
【0222】
ある特定の実施形態では、I型IFN関連疾患または状態は、HIV感染または後天性免疫不全症候群(AIDS、これは自己免疫成分を有するウイルス疾患である)、炎症性腸疾患(IBD)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアックスプルー疱疹状皮膚炎、慢性疲労免疫性機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、若年性皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、乾癬、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性原発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、甲状腺機能低下症を伴う破壊性甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、特発性炎症性筋疾患(IIM)、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、若年性関節リウマチ(スチル病)、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、レイノー症候群、掌蹠膿疱症(PPP)、びらん性扁平苔癬、天疱瘡水疱症、表皮水疱症、接触性皮膚炎およびアトピー性皮膚炎、多発神経根炎、悪性貧血(pemacious anemia)、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ(RA)、若年性関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても知られる)、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、筋肉炎、シェーグレン症候群、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、セリアック病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ブドウ膜炎、白斑ならびにウェゲナー肉芽腫症を含むがこれらに限定されない。
【0223】
ある特定の実施形態では、IFNβ媒介IFNAR1活性化は本明細書で提供される処置方法では阻害されない。本明細書で使用される「阻害されない」とは、IFNβ媒介IFNAR1活性化のレベルに対する阻害が20%未満であることを意味する。ある特定の実施形態では、処置方法は、治療有効量のIFNβを投与することをさらに含む。IFNβ投与は、IFNβ媒介IFNAR1活性化の少なくとも一部をさらに回復させると考えられている。
【0224】
本明細書で提供される抗体または抗原結合断片の治療有効量は、例えば、体重、年齢、既往歴、現在の薬物、対象の健康状態と交差反応の可能性、アレルギー、感受性および有害な副作用ならびに投与経路および発症の程度などの、当技術分野で公知の種々の要因に依拠する。投薬量は、これらのおよび他の状況または要件により指示を受ける当業者(例えば、医師または獣医)が、比例関係で減らすまたは増やしてもよい。
【0225】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、約0.01mg/kg~約100mg/kgの治療有効量で投与してもよい。ある特定の実施形態では、投与量は、処置の間に変化してもよい。例えば、ある特定の実施形態では、開始投与量はその後の投与量よりも多い場合がある。ある特定の実施形態では、投与量は、対象の反応に応じて処置の間に変更してもよい。
【0226】
投与計画は最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整してもよい。例えば、単回用量が投与されてもよく、または数回に分けられた用量が時間をかけて投与されてもよい。
【0227】
本明細書で開示される抗体および抗原結合断片は、例えば、非経口(例えば、皮下、腹腔内、静脈内注入を含む静脈内、筋肉内、または皮内注射)または非経口ではない(例えば、経口、鼻腔内、眼球内、舌下、直腸、または局所)経路などの、当技術分野で公知のいかなる経路で投与してもよい。
【0228】
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片は、単独でまたは1つもしくは複数の追加の治療手段もしくは治療薬と組み合わせて投与してもよい。例えば、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片は、別の治療薬、例えば、IFN-β、抗IFNα抗体、抗IFNβ抗体、抗TNF抗体、抗TNF受容体抗体、または可溶性TNF受容体と組み合わせて投与してもよい。
【0229】
これらの実施形態のうちのある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療薬と組み合わせて投与される本明細書で開示される抗体または抗原結合断片は、1つまたは複数の追加の治療薬と同時に投与してもよく、これらの実施形態のうちのある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片および追加の治療薬(複数可)は同じ医薬組成物の一部として投与してもよい。しかし、別の治療薬と「組み合わせて」投与される抗体または抗原結合断片は、薬剤と同時にまたは薬剤と同じ組成物で投与される必要はない。別の薬剤に先立ってまたはその後で投与される抗体または抗原結合断片は、たとえ抗体または抗原結合断片および第2の薬剤が異なる経路を経て投与されようと、本明細書で使用されるその語句通りにその薬剤と「組み合わせて」投与されると見なされる。可能な場合には、本明細書で開示される抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて投与される追加の治療薬は、追加の治療薬の製品情報シートに収載されるスケジュールに従って、または医師用添付文書集(Physicians’ Desk Reference、第57版、;Medical Economics Company;ISBN:1563634457;第57版(2002年11月))もしくは当技術分野で周知のプロトコールに従って投与される。
【0230】
本開示は、IFNαおよび/またはIFNωを発現しているまたは過剰発現している細胞の生物活性を阻害する方法であって、細胞を本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む方法をさらに提供する。
【0231】
一部の実施形態では、本開示は、試料中でIFNAR1の存在またはレベルを検出する方法であって、試料を明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む方法を提供する。
【0232】
一部の実施形態では、本開示は、明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片および使用説明書を含み、任意選択で検出可能な部分にコンジュゲートされた検出または治療キットを提供する。キットは、IFNAR1の検出またはI型IFN関連疾患もしくは状態のための治療用途に有用でもよい。
【0233】
一部の実施形態では、本開示は、対象においてI型IFN関連疾患または状態を処置するための薬物の製造における、I型IFN関連疾患または状態を診断するための診断試薬の製造における明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片の使用も提供する。
【0234】
以下の実施例は、請求する発明をもっとよく説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。下に記載されるすべての特定の組成物、材料、および方法は、全体においてまたは一部において、本発明の範囲内に収まる。これらの特定の組成物、材料、および方法は、本発明を限定することを意図しておらず、本発明の範囲に収まる特定の実施形態を説明することが意図されているだけである。当業者であれば、発明の能力を発揮しなくても、本発明の範囲から逸脱せずに、等価な組成物、材料、および方法を開発しうる。本発明の範囲内にまだ留まりながら記載される本明細書の手順で多くの変動を加えることができることは理解されるであろう。そのような変動が本発明の範囲内に含まれることは本発明者たちが意図することである。
【実施例】
【0235】
材料
リポフェクタミン2000はInvitrogen社から購入した。アイソタイプ対照はBiolegend社から購入した。HEK293T細胞株はATCCから購入した製品であった。ヒトIFNα2bはCedarlane社から購入した製品であった。12の異なるIFNαサブタイプはPBL Assay Scienceから購入した。ヒトIFNωはR&D社から購入した製品であった。ヒトIFNβはPeproTechから購入した。
【0236】
PBS溶液は以下の通り調製した。0.27gのKH2PO4、1.42gのNa2HPO4、8gのNaCl、および0.2gのKClを適量の水に溶解し、pHは7.2~7.4に調整した。最終容積は水で1Lに合わせた。
【0237】
FACSバッファーは2%(v/v)ウシ胎仔血清および2mMのEDTAを含有するPBS溶液であった。
【0238】
IFNAR1モノクローナル抗体10C2および10C9は、国際公開第2018/010140号の開示に従って調製した。
【0239】
IFNAR1モノクローナル抗体を作製する方法は、Current Protocol in Immunology、1995年 by John Wiley&Sons、Inc.を参照した。
【実施例1】
【0240】
IFNAR1モノクローナル抗体7G4および10C5の産生
抗体7G4および10C5は、従来のハイブリドーマアプローチを使用して産生した。一般には、マウスをヒトIFNAR1抗原で免疫化し、脾臓細胞を採取し不死化細胞株と融合させてハイブリドーマ細胞株を作製した。ハイブリドーマ細胞から分泌される抗体は、ヒトIFNAR1との結合親和性についてスクリーニングし、7G4および10C5抗体を発現するハイブリドーマ細胞株を特定した。
【0241】
ハイブリドーマ細胞株7G4および10C5は、Trizol(Invitrogen)を使用して溶解し、製造業者の説明書に従ってハイブリドーマ細胞株のRNAを抽出した。得られたRNA溶液は、オリゴdT(Invitrogen)を使用してcDNAに逆転写した。得られたcDNAを鋳型として使用して、PCR増幅を重鎖プライマー対(重鎖プライマーFおよび重鎖プライマーRを含む)および軽鎖プライマー対(軽鎖プライマーFおよび軽鎖プライマーRを含む)を使用して実行した。下の表5を参照されたい。
【0242】
【0243】
重鎖をコードする断片および軽鎖をコードする断片は順次得られ、塩基配列決定される。
【0244】
抗体7G4の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は
図6に示されており、CDR1(アミノ酸残基31~35)、CDR2(アミノ酸残基50~66)、およびCDR3(アミノ酸残基99~112)の配列は、それに応じて印をつけられている。
【0245】
抗体7G4の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は
図7に示されており、CDR1(アミノ酸残基24~34)、CDR2(アミノ酸残基50~56)、およびCDR3(アミノ酸残基89~97)の配列は、それに応じて印をつけられている。
【0246】
抗体10C5の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は
図8に示されており、CDR1(アミノ酸残基31~35)、CDR2(アミノ酸残基50~66)、およびCDR3(アミノ酸残基99~112)の配列は、それに応じて印をつけられている。
【0247】
抗体10C5の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は
図9に示されており、CDR1(アミノ酸残基24~34)、CDR2(アミノ酸残基50~56)、およびCDR3(アミノ酸残基89~97)の配列は、それに応じて印をつけられている。
【0248】
4.抗体配列の分析
抗体7G4および10C5の核酸断片は、igblastツール(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を使用して分析した。VドメインはKabat番号付け方式を使用して描写される。結果は以下の通りであった。
【0249】
両抗体7G4および10C5の重鎖をコードするV遺伝子、D遺伝子およびJ遺伝子は、それぞれマウスIGHV1-69遺伝子、IGHD2-4遺伝子およびIGHJ4遺伝子に対応している。マウスV領域(配列番号15)の抗体7G4(配列番号7)および抗体10C5(配列番号9)の重鎖可変領域のアミノ酸配列間のアライメント結果は
図10に示されている。両抗体7G4および10C5の軽鎖をコードするV遺伝子およびJ遺伝子は、それぞれマウスIGKV13-84遺伝子およびIGKJ4遺伝子に対応している。マウスV領域(配列番号16)の抗体7G4(配列番号8)および抗体10C5(配列番号10)の軽鎖可変領域のアミノ酸配列間のアライメント結果は
図11に示されている。
【実施例2】
【0250】
7G4および10C5はヒトIFN-I受容体IFNAR1に結合する
7G4および10C5抗体の結合は下に簡潔に記載されている手順に従って、フローサイトメトリー(FACS)を使用して試験した。
【0251】
完全長ヒトIFNAR1の発現ベクターを構築した。ヒトIFNAR1完全長CDS配列(NM_000629)を、「Molecular Cloning」、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、U.S.;第4版、2012年に記載されている一般手順に従って、制限部位NheIおよびEcoRIによってベクターpIRES2-EGFP(Addgeneから購入)中に挿入した。構築物プラスミドpIRES2-EGFP-IFNAR1はこのようにして入手した。
【0252】
プラスミドpIRES2-EGFP-IFNAR1を、リポフェクタミン2000を使用してHEK293T細胞中にトランスフェクトした。24時間後、細胞はPBS中2mMのEDTAで希釈して単細胞浮遊液を作製し、これをその後10,000細胞/200μL/ウェルの密度で96ウェルU字形底プレートに添加した。2200rpmで3分間の遠心分離後上澄みは破棄し、細胞ペレットを収集して再懸濁した。
【0253】
試験抗体(7G4または10C5またはアイソタイプ抗体)をFACSバッファーで濃度10μg/mlまで希釈し、4℃で30分間再懸濁細胞ペレットと一緒にインキュベートした。インキュベーション後、細胞は、次の遠心分離および再懸濁前に、遠心分離し200μLのFACSバッファーで再懸濁した。
【0254】
1対400でFACSバッファーに希釈したPE標識化ヤギ抗マウスIgG抗体(Biolegend)をそれぞれのウェルに添加した。細胞は再懸濁し、暗所で4℃、30分間インキュベートした。インキュベーション後、プレートは遠心分離し、上澄みは破棄し、細胞は上記の通りに1回洗浄し、200μLのFACSバッファーを添加することにより再懸濁した。最後に、再懸濁細胞を、フローサイトメトリーGuava(Millipore)を使用して細胞GFPおよびPEシグナルについて分析した。
【0255】
結果は
図1Aおよび1Bに示されている。プロット中のGFP陽性細胞が右に移動したので、7G4と10C5の両方の抗体がヒトIFNAR1を過剰発現している細胞に特異的に結合することが明らかにされた。
【実施例3】
【0256】
ヒトIFNAR1の異なる切詰型への7G4と10C5の結合
異なる長さと切詰型を有するヒトIFNAR1バリアントを構築し、293T細胞上で発現させた。バリアントは、IFNAR1-aa1-557(すなわち、完全長)、IFNAR1-Δaa32-126(すなわち、アミノ酸残基32~126にまたがるサブドメインを欠く)、IFNAR1-Δaa127-227(すなわち、アミノ酸残基127~227にまたがるサブドメインを欠く)、IFNAR1-Δaa231-329(すなわち、アミノ酸残基231~329にまたがるサブドメインを欠く)、IFNAR1-Δaa331-432(すなわち、アミノ酸残基331~432にまたがるサブドメインを欠く)、IFNAR1-Δaa32-126、Δaa331-432(すなわち、アミノ酸残基32~126にまたがるサブドメインとアミノ酸残基331~432にまたがるサブドメインの両方を欠く)、IFNAR1-Δaa231-432(すなわち、アミノ酸残基231~432にまたがるサブドメインを欠く)、およびIFNAR1-Δaa32-227(すなわち、アミノ酸残基32~227にまたがるサブドメインを欠く)を含む。
【0257】
それぞれ8つのヒトIFNAR1バリアントを過剰発現している293T細胞への7G4および10C5抗体の結合は、実施例1の手順に従ってフローサイトメトリーにより検出した。
【0258】
図2Aおよび
図2Bに示されているように、両抗体7G4および10C5は、8つの試験されたヒトIFNAR1バリアントへの類似する結合特徴を示した。具体的には、7G4および10C5は両方が、完全長IFNAR1(すなわち、IFNAR1-aa1-557)、IFNAR1-Δaa32-126、IFNAR1-Δaa331-432およびFNAR1-Δaa32-126、Δaa331-432に結合し、これら4つのバリアントへの結合活性は類似しているようであった。結果は、両抗体がヒトIFNAR1のアミノ酸残基32~126、またはアミノ酸残基331~432にまたがる断片に結合しないことも示していた。なぜならば、いずれか1つのまたは両断片の非存在が、ヒトIFNAR1トランケート型バリアントへの両抗体の結合に影響を与えていないようだったからである。両抗体はIFNAR1-Δaa32-126、Δaa331-432によく結合し、ヒトIFNAR1の127-330aa断片がヒトIFNAR1への7G4および10C5の結合にとって十分であったことを示している。
【0259】
しかし、ヒトIFNAR1への両抗体7G4および10C5の結合は、アミノ酸残基127~227およびアミノ酸残基231~239にまたがる断片のいずれかまたは両方が欠損していると消失した。これにより、両抗体が、ヒトIFNAR1のアミノ酸残基127~227内の第1の結合断片とアミノ酸残基231~239内の第2の結合断片の両方に結合することが明らかにされた。
【0260】
これは、7G4および10C5の結合エピトープがヒトIFNAR1の127~329aa断片内にある可能性があることを証明している。
【実施例4】
【0261】
7G4および10C5は10C2および10C9のエピトープとは異なるエピトープでヒトIFNAR1に結合する
7G4および10C5の結合エピトープをさらに調べ、10C2および10C9のエピトープと比較するため、ヒト/マウスキメラIFNAR1バリアント(すなわち、IFNAR1-m149-214)を構築し、293T上で発現させた。IFNAR1-m149-214は配列番号69のアミノ酸配列を有し、すなわち、野生型ヒトIFNAR1中のアミノ酸残基149~214にまたがる断片(配列番号63)がマウスIFNAR1ホモグラフィック配列(配列番号64)で置き換えた。それぞれIFNAR1-WTおよびIFNAR1-m149-214を過剰発現する293Tへの10C2、10C9、7G4および10C5抗体への結合は、実施例1の手順に従ってフローサイトメトリーにより検出した。抗体は
図14A~14Dでの指示濃度に希釈された。
【0262】
図14Aおよび
図14Bに示されているように、10C2および10C9は、IFNAR1-m149-214への結合を全く示さないまたは著しく減少した結合を示したが、10C2と10C9の両方は野生型IFNAR1には濃度依存的結合を示した。これとは対照的に、7G4と10C5の両方は、野生型IFNAR1およびIFNAR1-m149-214には匹敵する結合を示した(
図14Cおよび
図14D)。
【0263】
これにより、7G4と10C5が10C2と10C9とはヒトIFNAR1上の結合部位が異なることがはっきり示された。具体的には、ヒトIFNAR1のアミノ酸残基149~214にまたがる断片が、10C2および10C9がヒトIFNAR1に結合するのに必要であることが明らかにされた。しかし、7G4および10C5については結果は異なっており、この断片への7G4および10C5の結合が10C2および10C9の結合とは異なっていることを示している。
【実施例5】
【0264】
レポーター細胞株におけるヒトIFN-Iの生物活性を遮断することに対する抗体7G4および10C5の効果
IFN-Iレポーター細胞株を、国際公開第2018/010140号に記載される通りに構築した。レポーター細胞を96ウェルプレートに添加し(30,000細胞/200μL/ウェル)、24時間培養した。細胞培養の上澄みは取り除き、細胞は、抗体濃度10μg/mLで10%(v/v)FBSを補充したDMEMで希釈したそれぞれの試験抗体(7G4または10C5)で処理した。次に、細胞は、100μLのDMEM中1ng/mLのIFNα2b、または50pg/mlのヒトIFNβで処理する前に、37℃で1時間インキュベートした。異なるヒトIFNα因子、すなわち、IFNα2a、IFNα8、IFNα10、IFNα1、IFNα21、IFNα5、IFNα14、IFNα17、IFNα7、IFNα6、IFNα4、およびIFNα16も、その因子それぞれを、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、3000ユニット/mLの段階希釈で試験したこと以外、別々に試験した。IFNωも、濃度が50pg/mlであったこと以外別々に試験した。処理した細胞は、細胞をフローサイトメトリーにより分析してレポーター細胞でのIFN誘導GFP発現に対する抗体の遮断効果を判定する前に、37℃、5%CO2で24時間さらに培養した。
【0265】
遮断効果は、(対照抗体のGFP陽性率-遮断抗体のGFP陽性率)/(対照抗体のGFP陽性率-ブランク対照のGFP陽性率)*100%として計算することができる。
【0266】
【0267】
【0268】
表6に示されるように、両抗体7G4および10C5は、13の異なるIFNα因子すべてによりおよびIFNωにより誘導されるGFP発現を遮断し、すべてが80%よりも大きな阻止率であった。これは、抗ヒトIFNAR1抗体として知られた対照抗体10C2および10C9で観察された結果に匹敵していた。しかし、10C2および10C9とは対照的に、両抗体7G4および10C5が示したのは、IFNβにより誘導されるGFP発現の遮断の10%未満であり、これは、10C2および10C9で観察された結果よりはるかに低く、10C2および10C9ではIFNβにより誘導されるGFP発現に対して40%~80%の間の阻止率であった。
【0269】
図3でも類似する結果が示されている。GFP陽性細胞の割合は、IFNα、IFNωおよびIFNβを含む、IFN-Iの活性化シグナルを反映していた。全くインターフェロンを添加しなければ(Mock対照)、バックグラウンド割合は約5%であった。1ng/mLのヒトIFNα2b、50pg/mlのIFNω、および50pg/mlのIFNβの添加はすべて、GFP陽性細胞の割合の5倍を超える増加(すなわち、30%、40%を超えるまで、または50%を超えるまで)を誘導した。これは、ヒトIFNAR1の活性化を示す。
図3Bに示される12の他のIFNαサブタイプは、Mock対照と比べて5倍を超える活性化を与える閾値濃度で添加された。
【0270】
7G4と10C5の両方は、ヒトIFNα2bおよびIFNωの生物活性を有意に遮断し、シグナルを10%を下回るまで、またはMock対照に匹敵するまで抑制した(
図3A、3C)。12の異なるヒトIFNαサブタイプに対しても類似する遮断効果が観察された(
図3B)。
【0271】
IFNαおよびIFNωに対する遮断に反して、7G4と10C5の両方が示すヒトIFNβに対する遮断効果は最小の検出または非検出であり(
図3D)、7G4および10C5の存在下でのシグナルはアイソタイプ対照のシグナルに匹敵していた(例えば、40%を超える)。これは、両抗体7G4および10C5を既存の抗体10C2と区別し、10C2はヒトIFNβ媒介活性化をまだ遮断し、約20%のシグナル、すなわち、7G4および10C5について観察されるシグナルの半分しか示さなかった。ヒトIFNβを遮断する効果では7G4と10C5の間で有意差は観察されなかった。
【0272】
結論として、IFNAR1モノクローナル抗体7G4および10C5は、すべてのIFNαサブタイプおよびIFNωを遮断することができるが、IFNβは遮断しなかった。
【実施例6】
【0273】
IFNα2bおよびIFNβによるウイルス複製の阻害を遮断する際の抗体7G4および10C5の効果
手短に言えば、IFNα2bまたはIFNβの存在下でまたはヌルで(Mock対照として)ウイルス複製アッセイにおいて抗体を試験した。1日目、試験細胞は12ウェルプレートにおいてポリ-L-リジン処理を用いて調製した。2日目、それぞれの抗IFNAR1試験抗体(すなわち、アイソタイプ、10C2、7G4、または10C5)を10μg/mlで細胞中に添加して1時間インキュベートし、その後IFNαまたはIFNβを添加し、続いてインキュベートした(例えば、1時間または8時間)。次に、ウェルを洗浄し、細胞に適切な試験ウイルスを適切な感染多重度(MOI)で感染させた。24または48時間後、ルシフェラーゼ活性を試験した(Promega)。異なる試験ウイルスについてのアッセイ設定は下の表7に収載された。
【0274】
【0275】
図4A、4C、および4Eに示されるように、IFNαが存在する場合、ウイルス複製レベルは有意に阻害され(アイソタイプについての結果参照)、両抗体7G4および10C5が存在するとウイルス複製はMock対照(すなわち、IFNαの非存在)のレベルに匹敵するレベルにまで回復した。そのような結果は10C2の場合も示され、IFNα媒介IFNAR1活性化の阻害に起因していた。
【0276】
アイソタイプについての結果では、
図4B、4D、および4Fで示すように、IFNβもウイルス複製レベルを有意に阻害した。しかし、IFNαを用いた結果に反して、両抗体7G4および10C5が存在してもウイルス複製レベルを変化させず、そのレベルはアイソタイプ対照を用いて観察されたレベルと同じくらい低いままであった。これとは対照的に、抗体10C2は、アイソタイプ対照のレベルよりも有意に上のレベルまでのウイルス複製の回復を示した。これは、両抗体7G4および10C5がIFNβ媒介ウイルス複製阻害を遮断しないことをさらに実証し、これにより、両抗体と10C2などの既存の抗体が区別された。
【実施例7】
【0277】
SLE患者由来の血清においてIFN-Iを遮断する際の抗体7G4および10C5の効果
アッセイは、1ng/mLのヒトIFNα2bをSLE患者由来の血清で置き換えたことを除いて、実施例5による同じ手順に従って実施した。他のステップは変えないでおいた。すなわち、IFN-Iレポーター細胞株をそれぞれの抗体で処理し、続いてSLE患者由来の血清と一緒にインキュベートし、GFP陽性細胞の比率を決定した。
【0278】
結果は
図5に示されている。アイソタイプ抗体は、約15%のGFP陽性細胞の割合を示しており、IFNAR1がSLE患者由来の血清中のIFN-Iにより活性化されたことを示している。比較すると、3つの試験抗体、10C2、7G4、および10C5すべてが、Mock対照のレベル、すなわち、SLE患者血清の非存在下に匹敵するレベルにまで、その割合をほぼ3倍阻害した。これは、抗体7G4および10C5が、SLE患者血清中のIFN-Iにより媒介されるIFNAR1活性化を阻害するのに比較できるほどに効果的であることを示していた。
【実施例8】
【0279】
抗体ヒト化
1.親抗体の配列分析
VH/VL CDR残基はKabat番号付け方式を用いて注釈をつけた(
図6~9参照)。配列分析では、CDR内の不対システイン残基、N-グリコシル化部位、および脱アミノ化部位を含む大きく危険なホットスポットは明らかにならなかった。
【0280】
2.ヒト生殖系列アクセプターファミリーサブセットの選択
マウス抗体とヒト生殖系列フレームワーク領域の間の配列相同性に基づいて、最良のヒト生殖系列フレームワークアクセプター、IGHV1-46*01およびIGKV1D-39*01をCDR移植のために選択した。IGHV1-46*01およびIGKV1D-39*01のコードされたアミノ酸配列は、配列番号59および60に提供されている。ヒトJ-領域は、最良の配列相同性に基づいて選択した。
【0281】
3.逆突然変異設計
相同性モデルの3D構造に従って、CDRの5Å距離内の残基を潜在的逆突然変異部位として選択した。なぜならば、露出した残基は抗原結合に直接関与している可能性があり、埋もれた残基はCDR立体構造を維持するのに重要である可能性があるからである。VH/VL境界面を分析し、逆突然変異は立体衝突などの問題が特定されたところに導入された。個々の逆突然変異の重要性は、in silico分析により判定され、単一逆突然変異の異なる組合せを含有する操作された抗体のパネルが設計された。
【0282】
4.操作された抗体の作製
組換えDNA構築物は遺伝子合成され、抗体発現のために選択されたヒトIg骨格にサブクローニングされた。それぞれ4つの異なるヒト化VHおよび4つの異なるヒト化VLを得た。全部で16の操作されたLC/HC構築物をハイスループットフォーマットで同時発現させ、これからHEK293細胞株から一過性に発現される抗体のパネルを得た。次に、これらの抗体をプロテインAカラムを使用して精製し、1×PBS pH7.4に処方した。結合、機能的および生物物理的特徴付けために約1mgのそれぞれのタンパク質を産生した。
【0283】
ヒト化7G4の16のクローンは表8に収載されている。
【0284】
【実施例9】
【0285】
ヒト化7G4抗体の特徴付け
1.ヒト化抗体はELISAを使用して結合親和性について試験した
96ウェルプレートに、1×PBS中5μg/mlのヒトIFNAR1 ECDを100μl用いて表面を覆い、4℃で一晩インキュベートした。次に、プレートをPBST(1×PBS+0.05%のTween20)で3回洗浄して、RTで2時間遮断バッファー(1×PBS+0.05%のTween20+1%のBSA)で遮断した。プレートをPBSTで3回洗浄後、精製したヒト化7G4抗体(Hu7G4)を100μl/ウェルで添加し、RTで1時間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、続いて100μl/ウェルで抗体(ヤギで産生された抗ヒトIgG(Fc特異的)-ペルオキシダーゼ抗体、ZSGB-BIO)を添加し、次に、RTで1時間インキュベートした。プレートをPBSTで5回洗浄し、次に100μl/ウェルのTMBを添加して、15分後、プレートは50μl/ウェルの2N H2SO4でクエンチした。プレートは、Molecular device spectra maxを用いて450nmで読み取った。
【0286】
結果は
図12に示した。試験したバリアント全てが、IFNAR1への匹敵する結合活性を示し、EC
50は約0.002~0.004μg/mlであった。
【0287】
2.ヒトIFNAR1へのHu7G4バリアントの結合はBiacoreを使用して試験した
材料および試薬
【0288】
【0289】
CM5チップ表面の調製:ランニングバッファーとしてHBS-EP(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%の界面活性剤P20)を使用して、CM5センサーチップ(GE Healthcare、BR-1000-30)の両チャネル1&2を、50mMのNHSと200mMのEDCの新鮮な混合物(1対1)で活性化した。次に、抗ヒトIgG Fc、10mMのNaOAcバッファー(pH5.0)中20μg/mlを、2つのフローセルの活性化された表面上をそれぞれのチャネルに10μl/分で通過させた(標的約10000RU)。残りの活性な結合部位は、1Mのエタノールアミンの10分間注入で遮断した。低い流速は、固定化したタンパク質の平衡のために2時間にわたり維持された。
【0290】
2.結合速度論の測定:それぞれの抗体は、参照細胞としてFC1を使用して、フローセルFC2のそれぞれ約250RUのチャネル1&2において捕捉し、続いて抗原試料を様々な濃度で注入した。捕捉された抗体のないシグナルから差し引かれた捕捉された抗体を持つシグナルは、Biacore 8K評価ソフトウェアで計算した。ランニングバッファーは、HBS-EP+(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%の界面活性剤P20)であった。
【0291】
抗体-抗原相互作用の結果は下の表9に示された。
【0292】
【0293】
3.Hu7G4バリアントの遮断活性
レポーター細胞株でのヒトIFN-Iの生物活性を遮断することに対するHu7G4バリアントの効果は、実施例5での方法に類似する方法を使用して試験した。試験したHu7G4バリアント(Hu4-5~Hu4-16)はIFNαに対する遮断活性を維持する(
図13A)が、IFNβを阻害しない(
図13B参照)。
【実施例10】
【0294】
ヒト化7G4抗体は、ヒトIFNAR1への結合能力は変化しないで、CDR配列でのアミノ酸残基置換を許容した
1.ヒトIFNAR1に対するヒト化モノクローナル抗体の産生
ヒト化抗体Hu4-6は変異の基盤として選択された。3つの変異体:Mut-1(A108G、HCDR3中)、Mut-2(T53SおよびS56T、LCDR2中)、およびMut-3(A108G HCDR3中、T53SおよびS56T LCDR2中)が作製された。3つの変異体の配列は表10に示された。
【0295】
【0296】
重鎖および軽鎖の完全長コード領域を、抗体発現のために選択されたヒトIg骨格中にクローニングした。100mm皿のHEK293T細胞に、重鎖遺伝子を含有するプラスミドと軽鎖遺伝子を含有するプラスミドを1対1の比で、リポフェクタミン2000(Thermo Fisher Scientific)により同時トランスフェクトした。培養上澄みはトランスフェクション後24時間、48時間および72時間で収穫した。モノクローナル抗体(mAb)は、プロテインA親和性樹脂(REPLIGEN)を使用して培養上澄みから精製した。
【0297】
2.ヒトIFNAR1への突然変異抗体の結合能力
ヒトIFNAR1への抗ヒトIFNAR1抗体の結合を試験するため、抗ヒトIFNAR1抗体およびアイソタイプ対照mAbを、
図15A~15Bに指示された濃度でFACSバッファーに希釈した。フローサイトメトリーは実施例1の手順に従った。
【0298】
それぞれの試料についてのPEの中央値蛍光強度(MFI)を使用して、ヒトIFNAR1への抗体の結合能力を決定した。
【0299】
図15Bに示されているように、CDR領域での1つまたは複数のアミノ酸残基の置換はすべて、ヒトIFNAR1への本明細書で開示される抗体の結合効率に影響を与えなかった。
【0300】
本開示は特定の実施形態(その一部は好ましい実施形態である)を参照して具体的に示され記載されてきたが、本明細書に開示される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変化をその中に加えてもよいことは当業者であれば理解するはずである。
【配列表】