(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】レーダー周波数透過性効果顔料混合物、配合物およびその塗膜
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20231117BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20231117BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231117BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20231117BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20231117BHJP
C09D 5/29 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C09C3/06
C09C1/40
C09D201/00
C09D7/62
C09D11/037
C09D5/29
(21)【出願番号】P 2021559991
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2020060140
(87)【国際公開番号】W WO2020208134
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-03
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502099902
【氏名又は名称】エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレンデル カロリン
(72)【発明者】
【氏名】グレイべ クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マウル ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ベドフォルド オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】カープ ギュンター
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030075(JP,A)
【文献】特開2004-358329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0301521(US,A1)
【文献】特開昭62-285956(JP,A)
【文献】特開2016-221473(JP,A)
【文献】特開2004-271467(JP,A)
【文献】特開平05-279604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム基合金のショット材の粉砕によって得られる小板状のアルミニウム効果顔料とシルバーの真珠光沢顔料とを含む効果顔料混合物であって、前記シルバーの真珠光沢顔料が、
a)Fe(II)イオンを有する酸化鉄を含むまたは該酸化鉄からなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含
み、TiイオンおよびFeイオンを含み、主に前記FeイオンがFe(II)イオンである、金属酸化物層を含む被覆を有する真珠光沢顔料、
b)亜酸化チタンを含むもしくは亜酸化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料、またはn>1.8を有する高屈折率層で任意に被覆された亜酸化チタンを含むもしくは該亜酸化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層を有する基材を含み、
亜酸化チタンが、式
Ti
n
O
2n-1
(IV)
(式中、nは、1~10の整数である)によって表される真珠光沢顔料、
e)チタンの酸化物と、鉄の酸化物と、コバルトおよびクロムの少なくとも1つの酸化物との混合物を含むまたは該混合物からなる第1の層と、前記第1の層の上のチタンの酸化物を含む第2の層とで被覆された透明基材、ならびに、
前記真珠光沢顔料a)
、b)、e)の混合物もしくは組合せ物、または前記真珠光沢顔料a)
、b)、e)で述べられた様々な被覆層の混合物もしくは組合せ物を有する真珠光沢顔料、からなる群から選ばれ、
前記真珠光沢顔料と前記アルミニウム効果顔料との重量比が0.4~5.0の範囲内である、効果顔料混合物。
【請求項2】
前記小板状のアルミニウム効果顔料は、9μm~30μmの範囲内のd
50を有する、請求項1に記載の効果顔料混合物。
【請求項3】
前記小板状のアルミニウム効果顔料は、80nm~500nmの範囲内の平均厚さh
mを有する、請求項1または2に記載の効果顔料混合物。
【請求項4】
前記小板状のアルミニウム効果顔料は、ホスホン酸もしくはリン酸エステル、金属酸化物、ポリマー、またはそれらの混合物もしくは組合せ物を基礎とする吸着された添加剤からなる防食被覆で被覆されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の効果顔料混合物。
【請求項5】
前記金属酸化物は、SiO
2、セリウム酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、クロム酸化物、およびそれらの混合物または組合せ物からなる群から選択される、請求項4に記載の効果顔料混合物。
【請求項6】
前記小板状のアルミニウム効果顔料は、より微細なメタリック効果顔料とより粗粒のメタリック効果顔料との混合物を含み、ここで、前記より微細なアルミニウム効果顔料は、9μm~13μmの範囲内のd
50を有し、かつ前記より粗粒のアルミニウム効果顔料は、18μm~26μmの範囲内のd
50を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の効果顔料混合物。
【請求項7】
前記タイプa)の真珠光沢顔料が、イルメナイト(FeTiO
3)層、マグネタイト(Fe
3O
4)層またはそれらの混合物である、請求項
1に記載の効果顔料混合物。
【請求項8】
前記シルバーの真珠光沢顔料は、タイプa)のものであり、かつ以下の構造:
(a)透明な小板形状の合成基材、
(b)酸化チタン層、それに続いて、
(c)TiイオンおよびFeイオンを含み、主に前記FeイオンがFe(II)イオンである金属酸化物層、
を含む
請求項1~
7のいずれか一項に記載の効果顔料混合物。
【請求項9】
前記シルバーの真珠光沢顔料は、式(I):
(鉄含有量(重量%)/チタン含有量(重量%))×被覆の分率(重量%) (III)
(式中、それぞれの場合に顔料において、前記顔料の総重量に対して、「鉄含有量」は、元素鉄として計算される鉄化合物の量を表し、「チタン含有量」は、元素チタンとして計算されるチタン化合物の量を表し、かつ「被覆の分率(重量%)」は、前記顔料の総重量に対する、基材に塗布された被覆の重量分率を表す)による、1~8の範囲内である被覆の関数としての鉄/チタン重量比を有する、請求項
1,7、8のいずれか一項に記載の効果顔料混合物。
【請求項10】
100μmのドクターブレードを使用した、前記真珠光沢顔
料が10重量%である無色のラッカー中に添合された前記シルバーの真珠光沢顔料のドローダウンの、黒色の背景上で測定された彩度C*15゜は、15以下である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の効果顔料混合物。
【請求項11】
それぞれ黒と白の背景上で測定されたL*75°,黒/L*75°,白の値の比によって規定される前記シルバーの真珠光沢顔料の隠蔽力は、70%より高く、ここで、前記ドローダウンは、前記真珠光沢顔
料が10重量%である無色のラッカー中に添合された前記真珠光沢顔料から作製され、100μmのドクターブレードを使用して白/黒のコントラスト漫画(contrast cartoon)上に塗布されたものである、請求項
10に記載の効果顔料混合物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の効果顔料混合物を含む塗料配合物。
【請求項13】
前記塗料配合物はさらに、バインダー、溶剤もしくは溶剤混合物、添加剤を含み、任意の成分として充填剤および/または慣例的な顔料を含む、請求項
12に記載の塗料配合物。
【請求項14】
前記塗料配合物は、透明基材を基礎とし、かつ色に寄与する層がTiO
2、Fe
2O
3またはそれらの混合物からなる1つまたは2つの高屈折率層と、任意に1つ以上のn<1.8を有する低屈折率層とからなることを特徴とする追加の真珠光沢顔料を含む、請求項
12または13に記載の塗料配合物。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の効果顔料混合物の効果顔料および任意に追加の真珠光沢顔料の総量は、前記塗料配合物の総量に対して2重量%~5.5重量%の範囲内である、請求項
12~14のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項16】
前記真珠光沢顔料の総量は、前記塗料配合物の総量に対して2重量%~4重量%の範囲内である、請求項
12~15のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項17】
前記効果顔料混合物の小板状のメタリック効果顔料の量は、前記塗料配合物の総量に対して1.0重量%~2.3重量%の範囲内である、請求項
12~16のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項18】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の効果顔料混合物の効果顔料および任意に追加の真珠光沢顔料対バインダーの重量%比は、0.1~0.8の範囲内である、請求項
12~17のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項19】
塗料または印刷インキにおける、請求項1~
11のいずれか一項に記載の効果顔料混合物の使用。
【請求項20】
プラスチック基材上に電波透過性塗料被膜を形成するための、請求項1~
11のいずれか一項に記載の効果顔料混合物または請求項
12~18のいずれか一項に記載の塗料配合物の使用。
【請求項21】
請求項
12~18のいずれか一項に記載の塗料配合物から作製された、プラスチック基材上の電波透過性塗工膜。
【請求項22】
請求項
12~18のいずれか一項に記載の塗料配合物から作製された、自動車のバンパー上の電波透過性塗工膜。
【請求項23】
乾燥被膜の厚さが8μm~17μmの範囲内である、請求項21または22に記載の電波透過性塗工膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリックな外観と放射線透過性塗料で使用するのに十分な電波伝送とを保証する効果顔料混合物に関する。本発明はまた、放射線透過性塗料として使用されるこの効果顔料混合物を含む塗料配合物を論じている。
【背景技術】
【0002】
今日、ほとんどの自動車用ベースコートには、メタリック顔料または真珠光沢顔料などの効果顔料を含むことが共通の基準である。これらの小板状顔料は塗工基材に対して平行に配向する。金属製小板の場合に、これらは高いメタリック光沢をもたらす小さなミラーとして働き、フロップ効果(種々の観察入射角で見たときの明度の変化)と優れた隠蔽力とを兼ね備えている。ほとんどの場合に、メタリック顔料は、銀色のメタリック塗料をもたらすアルミニウム顔料である。真珠光沢顔料の場合には、干渉色が生じ、塗膜は光学的深さを示す。
【0003】
少なくとも10年以来、観察者に均一で高級な光学的外観を生み出すために、自動車のバンパーのようなプラスチック部品も本質的に同じ効果顔料で塗装されている。これらの基準が将来的に引き下げられるという見通しはまずあり得ない。現在、このような乾燥塗膜の厚さはほとんどの場合に15μm未満であり、そうでなければコストが高くなりすぎる。さらに、そのような塗膜は、与えられる高い機械的衝撃に耐えなければならない。例えば、EN ISO 6270-2:2005に準拠したクロスカット試験またはケルヒャー試験(Kaercher test)のような接着試験に合格する必要がある。
【0004】
自動車の安全性を向上させるために、距離を測定し、自動車が近くの物体に近づいたらドライバーに警告するレーダー装置が新基準となっている。このようなレーダー装置は、自動車の様々な部分、例えば、ラジエーターグリルの背後、バックパネルなどに設けられ得る。自律運転車の開発により、様々なレーダー感知センサーを有する必要性がさらに高まることとなる。将来の車には、他の物体の距離および速度を全方位で測定する約80個のセンサーが車に取り付けられる可能性がある。レーダーセンサーの需要が高まるにつれ、例えば車の視覚的外観を邪魔しないために、これらのセンサーをバンパーの下に配置してこれらを隠すことが望まれる。
【0005】
しかしながら、アルミニウムなどのメタリック効果顔料を含む塗料は、強すぎるレーダー波の減弱を示すことがよく知られている。センサーに使用されるレーダー波は、典型的には65GHz~85GHzの周波数帯にあり、これは約4mm~5mmの波長範囲に相当する。これらの波長は、効果顔料のサイズまたは塗膜の厚さよりもはるかに大きいとはいえ、内部で非常に高い電気伝導性を示すアルミニウム顔料によって減弱が引き起こされる。アルミニウム顔料は一種のアンテナとして機能し得ることから、反対の電磁波が誘導されて、減衰効果が引き起こされる。減衰が、垂直入射角で測定した場合に初期レーダー強度の3デシベル未満、好ましくは2デシベル未満でなければならないことが望まれる。
【0006】
真珠光沢効果顔料は非伝導性であり、レーダー電磁波を減弱させないことが知られている(特許文献1)。
【0007】
特許文献2では、ガラスフレークのような非伝導性基材を銀と金またはパラジウムなどの貴金属との合金で被覆することが提案された。これらの顔料は、無線電磁波の減衰が少ないはずである。このような顔料は、既存のアルミニウム顔料と置き換えるにはあまりにも高価すぎる。
【0008】
特許文献3は、第1の塗料が微細なメタリック効果顔料を含み、かつ第2の塗料が粗粒のメタリック効果顔料を含む、好ましくは2つのベース塗料を含む車体用のプラスチック部品を開示している。このような二重塗膜構造は高価になりすぎる。
【0009】
特許文献4には、メタリック効果顔料とTiO2被覆されたマイカ基材に基づく真珠光沢顔料との混合物、またはメタリック効果顔料とガラスフレークとの混合物が開示されており、これらはメタリック顔料がそれらの間に或る特定の平均距離を有する場合に許容可能な減衰特徴を示した。しかしながら、得られる塗工膜の光学的特性が純粋なメタリック塗料に近いかどうかは開示されていない。さらに、最新の塗料の要求は満たされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-244516号公報
【文献】特開2009-102626号公報
【文献】独国特許出願公開第102009029763号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0022696号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、既存のメタリック塗料の光沢、フロップおよび隠蔽力に関して実質的に同じ光学的特性を有し、かつ許容可能なレーダー減衰を有する、塗料に使用され得る効果顔料を提供することである。さらに、そのような塗膜の厚さは、機械的安定性における要求を満たす現在の一般的な厚さの10%を超えるべきではない。
【0012】
さらなる課題は、適切な塗料配合物を提供することである。
【0013】
さらに、効果顔料は、好ましくは、水系塗料配合物で使用されるべきである。
【0014】
さらなる課題は、好ましくは上述の特性を有するプラスチック基材上に電波透過性塗工膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、アルミニウムまたはアルミニウム基合金のショット材の粉砕によって得られる小板状のアルミニウム効果顔料とシルバーの真珠光沢顔料とを含む効果顔料混合物であって、シルバーの真珠光沢顔料が、
a)Fe(II)イオンを有する酸化鉄を含むまたは該酸化鉄からなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料、
b)亜酸化チタンを含むもしくは亜酸化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料、またはn>1.8を有する高屈折率層で任意に被覆された亜酸化チタンを含むもしくは該亜酸化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層を有する基材を含む真珠光沢顔料、
c)酸窒化チタンを含むまたは酸窒化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料、
d)炭素を含む層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料であって、炭素が粒状形態で別の金属酸化物層内に封入されているまたは別個の個別の層として形成されている、真珠光沢顔料、
e)チタンの酸化物と、鉄の酸化物と、コバルトおよびクロムの少なくとも1つの酸化物との混合物を含むまたは該混合物からなる第1の層と、該第1の層上のチタンの酸化物を含む第2の層とで被覆された透明基材、ならびに、
真珠光沢顔料a)~e)の混合物もしくは組合せ物、または真珠光沢顔料a)~e)で述べられた様々な被覆層の混合物もしくは組合せ物を有する真珠光沢顔料、
からなる群から選ばれ、真珠光沢顔料対アルミニウム効果顔料の重量比が0.4~5.0の範囲内である、効果顔料混合物を提供することによって解決される。
【0016】
この効果顔料混合物のさらなる好ましい実施形態は、請求項2~請求項12に開示されている。
【0017】
本発明の課題はさらに、効果顔料混合物を含有する塗料配合物(請求項13)によって提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
アルミニウム効果顔料:
小板状のアルミニウム効果顔料は、アルミニウムまたはアルミニウム基合金のショット材を粉砕することによって得られる。粉砕工程は、典型的には、よく知られるホール法に従って、ホワイトスピリット、ソルベントナフサまたはイソプロパノールのような溶剤を使用し、かつ粉砕助剤としてパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸またはそれらの混合物を使用してボールミル内で行われる。
【0019】
粒子サイズ分布は、レーザー散乱粒度分析によってHelos/BR Multirange(Sympatec社)装置を使用して、製造業者の指示に従い、ISO 13320-1に準拠して測定される。アルミニウム効果顔料は、粒子サイズ分布を測定する前に、撹拌しながらイソプロパノール中に溶解される。粒子サイズ関数は、フラウンホーファー近似において等価球の体積加重累積度数分布として計算される。中央値d50は、測定された粒子の50%が(体積平均分布で)この値を下回っていることを意味する。d90の値は、測定された粒子の90%が(体積平均分布で)この値を下回っていることを意味し、サイズ分布における粗粒子の指標である。
【0020】
小板状のアルミニウム効果顔料は、好ましくは9μm~30μmの範囲内、より好ましくは12μm~27μmの範囲内のd50を有する。9μmのd50を下回ると、メタリックな外観、特にフロップが低くなりすぎる。30μmを上回ると、アルミニウム顔料を含む塗膜層の構造が観察者に視認可能となる。特に自動車用塗料では、これは望ましくない効果である。
【0021】
好ましくは、小板状のアルミニウム効果顔料は、18μm~45μmの範囲内、より好ましくは20μm~42μmの範囲内のd90を有する。45μmのd90を上回ると、塗料企業の篩別の仕様に関して幾らかの制限が生じる可能性がある。
【0022】
さらなる実施形態では、効果顔料混合物の小板状のアルミニウム効果顔料は、より微細なアルミニウム効果顔料とより粗粒のアルミニウム効果顔料との混合物を含む。「より微細な」アルミニウム効果顔料はより良好な隠蔽力を付加するのに対して、「より粗粒の」アルミニウム効果顔料は高いフロップおよびブリリアンスに寄与する。このような混合物のより微細なアルミニウム効果顔料は、典型的には9μm~13μmの範囲内のd50を有し、より粗粒のアルミニウム効果顔料は、典型的には18μm~26μmの範囲内のd50を有する。当然ながら、このような混合物の全サイズ分布のd50またはd90の特性値は、2つの個別のサイズ分布の特徴および2つのアルミニウム効果顔料の割合に応じて変化する。この場合に、二峰性の粒子サイズ分布が可能であり得る。
【0023】
平均厚さは、Sysmex 3000S(FPIA)装置で行われたサイズ測定から算出される。この場合に、分散された顔料粒子の制御された流れを流量測定セルを介して開始する。小板状の粒子は光学的測定に適したウィンドウに平行に配向されている。すべての粒子をCCDカメラを介して「写真撮影」し、すべての粒子の面積を求める。単純なモデルでは、アルミニウム顔料は、秤量された既知の質量mpおよびアルミニウムフレークについての2.5g/cm3の既知の密度ρを有し、粒子のすべての測定された面積を加えて総面積(μm2)とすることができる:
A=ΣiAi (I)。
【0024】
平均厚さhm(nm)は、式:
hm=mp10000/ρA (II)
に従って計算される。
【0025】
この厚さhmは、面積加重厚さである。小板状のアルミニウム効果顔料は、好ましくは80nm~500nmの範囲内、より好ましくは140nm~400nmの範囲内の平均厚さhmを有する。
【0026】
80nmを下回ると、アルミニウム顔料が薄くなりすぎて、効果顔料混合物の真珠光沢顔料または追加の真珠光沢顔料による配向消失が起こる可能性がある。
【0027】
500nmを上回ると、メタリック効果顔料の隠蔽力は低くなりすぎる。
【0028】
好ましい実施形態では、小板状のアルミニウム効果顔料は、ホスホン酸もしくはリン酸エステル、金属酸化物、ポリマー、またはそれらの混合物もしくは組合せ物を基礎とする吸着された添加剤からなる防食被覆で被覆されている。アルミニウムフレークが水の攻撃により水素ガスを形成しつつ分解するのを防ぐために、水性塗料ではこのような不動態化されたアルミニウム顔料が使用される。
【0029】
しかしながら、驚くべきことに、不動態化被覆は電波の不所望な減衰も減らし得ることが判明した。したがって、このような不動態化されたアルミニウム顔料を適切な真珠光沢顔料とともに使用すると、電波の減衰の減少に関して相乗効果が生まれる。
【0030】
不動態化被覆は金属酸化物であることが最も好ましい。この場合の「金属酸化物」は、純粋な金属酸化物を意味し得るが、金属水酸化物もしくは金属酸化物水和物またはそれらの任意の混合物も含む。好ましくは、金属酸化物はSiO2、セリウム酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、クロム酸化物、およびそれらの混合物または組合せ物からなる群から選択される。組合せ物は、金属酸化物がアルミニウム基材上に被覆される順序を意図している。最も好ましいのは、SiO2、モリブデン酸化物、およびそれらの任意の混合物または組合せ物であり、非常に好ましいのは、SiO2である。
【0031】
このような市販のアルミニウム顔料の例は、Hydrolan(登録商標)(Eckart GmbH社)またはEmeral(登録商標)(東洋アルミニウム株式会社、日本)である。
【0032】
不動態化被覆は、アルミニウム効果顔料の光学的特性を変化させないか、またはごくわずかしか変化させない。特に、不動態化被覆は、シルバーのアルミニウム効果顔料に一切色を与えない。
【0033】
不動態化層が金属酸化物被覆によって形成されるすべての実施形態において、最外金属酸化物被覆は、好ましくは、有機官能性シラン、アルミン酸塩、チタン酸塩またはジルコン酸塩によって、最も好ましくは、有機官能性シランによってさらに変性される。これらのいわゆる「カップリング剤」は、ワニスまたはペイントのバインダーへの化学結合を形成する一方で、金属効果顔料の表面に化学的に接続することを可能にする。これらの有機官能基は、カップリング基または官能性結合基とも呼ばれることがあり、好ましくは、ヒドロキシル、アミノ、アクリル、メタクリル、ビニル、エポキシ、イソシアネート、シアノおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
適切な官能基を含む、好ましくはカップリング剤として使用される有機官能性シランは市販されており、例えば、Evonik社によって製造され、商品名「Dynasylan」として販売されている。他の製品を、Momentive社(Silquestシラン)またはWacker社から得ることができ、例えば、GENIOSIL製品群からの標準的なシランを得ることができる。
【0035】
これらの有機官能性シランの例は、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A-174NT)、ビニルトリ(メトキシまたはエトキシ)シラン(Dynasylan VTMOおよびVTEOのそれぞれ、Silquest A-151およびA-171のそれぞれ)、メチルトリ(メトキシまたはエトキシ)シラン(Dynasylan MTMSおよびMTESのそれぞれ)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MTMO;Silquest A-189)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO、Silquest A-187)、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Silquest Y-11597)、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル)]テトラスルフィド(Silquest A-1289)、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピルジスルフィド(Silquest A-1589)、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A-186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y-9805)、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-Link 35、GENIOSIL GF40)、メタクリルオキシメチルトリ(メトキシまたはエトキシ)シラン(GENIOSIL XL 33、XL 36)、(メタクリルオキシメチル)(メチルまたはエチル)ジメトキシシラン(GENIOSIL XL 32、XL 34)、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(GENIOSIL GF 20)、(メタクリルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、2-アクリルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-アクリルオキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリルオキシエチルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL 10)、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF 58)、ビニルトリアセトキシシラン、またはそれらの混合物である。
【0036】
有機官能性シランとして、好ましくは以下のものが使用される:3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A-174NT)、ビニルトリ(メトキシまたはエトキシ)シラン(Dynasylan VTMOおよびVTEOのそれぞれ、Silquest A-151およびA-171のそれぞれ)、メチルトリ(メトキシまたはエトキシ)シラン(Dynasylan MTMSおよびMTESのそれぞれ)、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A-186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y-9805)、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-Link 35、GENIOSIL GF40)、メタクリルオキシメチルトリ(メトキシまたはエトキシ)シラン(GENIOSIL XL 33、XL 36)、(メタクリルオキシメチル)(メチルまたはエチル)ジメトキシシラン(GENIOSIL XL 32、XL 34)、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(GENIOSIL GF 20)、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL 10)および/またはビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF 58)。
【0037】
さらに、例えば、Evonik社から市販されている水性予備加水分解物を使用することができる。これらには、とりわけ、アミノシロキサン(Dynasylan Hydrosil 1151)、水性アミノ/アルキル官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2627または2909)、水性ジアミノ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2776)、水性エポキシ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2926)、アミノ/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 1146)、ビニル/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 6598)、オリゴマー型ビニルシラン(Dynasylan 6490)またはオリゴマー型短鎖アルキル官能性シラン(Dynasylan 9896)が含まれる。
【0038】
好ましい一実施形態では、有機官能性シラン混合物は、官能性結合基を有しない少なくとも1種のシランに加えて、少なくとも1種のアミノ官能性シランを含む。アミノ官能基は、バインダーに存在するほとんどの基と1つ以上の化学的相互作用を起こすことができる官能基である。これには、例えばバインダーのイソシアネート官能基もしくはカルボキシレート官能基との共有結合、または例えばOH官能基もしくはCOOR官能基との水素架橋結合、またはさらにイオン性相互作用が含まれ得る。したがって、アミノ官能基は、顔料を様々なバインダーに化学的に結合させる目的に非常によく適している。
【0039】
このためには、好ましくは以下の化合物が使用される:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO;Silquest A-1110)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)、[3-(2-アミノエチル)-アミノプロピル]トリメトキシシラン(Dynasylan DAMO、Silquest A-1120)、[3-(2-アミノエチル)-アミノプロピル]トリエトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン(Silquest A-1130)、ビス-(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A-1170)、N-エチル-γ-アミノイソブチルトリメトキシシラン(Silquest A-Link 15)、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest Y-9669)、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest A-1637)、N-シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン(GENIOSIL XL 924)、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン(GENIOSIL XL 926)、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL 973)またはそれらの混合物。
【0040】
さらなる好ましい実施形態では、官能性結合基を有しないシランは、アルキルシランである。アルキルシランは、好ましくは、式R(4-z)Si(X)2を有する。この式中、zは1~3の整数であり、Rは10個~22個のC原子の置換または非置換の非分岐または分岐アルキル鎖であり、Xはハロゲンおよび/またはアルコキシ基である。好ましいアルキルシランは、少なくとも12個のC原子のアルキル鎖を有するアルキルシランである。
【0041】
そのような種類の後続の被覆で処理されたアルミニウム効果顔料は、欧州特許第1084198号明細書および欧州特許第3080209号明細書に記載されている。
【0042】
効果顔料混合物の真珠光沢顔料:
効果顔料混合物において使用される真珠光沢顔料は、メタリックの見た目を反映する光学的特性を有するシルバーの真珠光沢顔料である。真珠光沢顔料は通常、反射で得られる色が本質的に無彩色のシルバー調またはわずかに着色された色調であり、吸収で得られる色がグレーからアントラシートの色合いであるような光学的特性を有する。真珠光沢顔料に関して、「アントラシート」という色調は、しばしば「黒」とも呼ばれる。本発明では、「シルバーの真珠光沢顔料」という用語は、無彩色のシルバーまたはわずかに着色された反射色と、メタリック様の特徴を与えるグレーからアントラシートの吸収色との組み合わせを有する真珠光沢顔料に使用される。
【0043】
効果顔料混合物に使用可能なシルバーの真珠光沢顔料の光学的特性は、100μmのドクターブレードを使用して黒/白の漫画用紙(cartoon paper)上に、真珠光沢顔料の10重量%の顔料化高さを有する無色のラッカー(好ましくは、BASF farblos ZM 26-3025)のドローダウンを作製することによって評価され得る。ラッカー中の不揮発性成分の総含有量は30重量%であるべきである。乾燥されたドローダウンの光学的特性は、BYK-Mac機器で測定される。
【0044】
好ましくは、黒色の背景上で測定されたシルバーの真珠光沢顔料のそのようなドローダウンの彩度C*
15゜は、15以下、より好ましくは14以下、最も好ましくは10以下である。
【0045】
このようなドローダウンにおけるシルバーの真珠光沢顔料の隠蔽力は、それぞれ黒と白の背景上で測定されたL*
75゜,黒/L*
75゜,白の値の比率として規定され得る。この比率は、好ましくは70%より高い。
【0046】
この高い隠蔽力は、主に真珠光沢顔料の吸収層によって達成される。
【0047】
明度は、反射角に近いL*
15゜値によって表され、好ましくは、黒色の背景上のドローダウンで測定されたこの値は、効果顔料混合物の真珠光沢顔料について90を上回り、より好ましくは100を上回る。
【0048】
第1の好ましい実施形態a)では、効果顔料混合物において使用されるシルバーの真珠光沢顔料は、Fe(II)イオンを有する酸化鉄を含むまたは該酸化鉄からなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料である。
【0049】
好ましい実施形態では、シルバーの真珠光沢顔料a)は、TiおよびFeを含み、主に鉄がFe(II)イオンである金属酸化物層であって、好ましくはイルメナイト(FeTiO3)層もしくはマグネタイト(Fe3O4)層またはそれらの混合物である、金属酸化物層を含む被覆を有する。
【0050】
さらなる好ましい実施形態では、真珠光沢顔料は、TiO2の第1の層に続いて、好ましくはイルメナイトからなるFe(II)イオンを含む金属酸化物層を含む被覆を有する。均質に分布したイルメナイト(FeTiO3)を含む被覆を有する真珠光沢顔料は、欧州特許出願公開第1620511号明細書に記載されている。第1のTiO2層に続いて不均質に分布したイルメナイト層を含む被覆を有する真珠光沢顔料は、国際公開第2012/130776号パンフレットに記載されている。
【0051】
このような真珠光沢顔料のさらなる例は、欧州特許出願公開第246523号明細書、欧州特許出願公開第3119840号明細書(Al2O3基材を有する)または欧州特許出願公開第681009号明細書(さらなる高屈折率被覆を有する)に開示されている。TiO2小板基材上にイルメナイトの単一層を有する真珠光沢顔料は、国際公開第1997/043348号パンフレットに記載されている。これらの文献に開示される層の厚さは、効果顔料混合物で要求される反射においてシルバーからグレーの色合いの真珠光沢顔料を実現するために減少させる必要がある。
【0052】
さらなる好ましい実施形態では、シルバーの真珠光沢顔料は、以下の構造:
(a)透明な小板形状の合成基材、
(b)酸化チタン層、それに続いて、
(c)TiイオンおよびFeイオンを含み、主にFeイオンがFe(II)イオンである金属酸化物層、
を含む。
【0053】
さらなる好ましい実施形態では、シルバーの真珠光沢顔料は、イルメナイト(FeTiO3)の層を有する。
【0054】
さらなる好ましい実施形態では、真珠光沢顔料は、顔料の総重量に対して0.5重量%未満の酸化鉄(III)含有量を有する。酸化鉄中のすべての他の量のFeイオンは、還元されたFe(II)酸化状態にある。
【0055】
残りのFe(III)イオンの量が多いほど、望ましくない帯褐色の吸収色がもたらされることとなる。
【0056】
Fe(II)またはFe(III)の量は、メスバウアー分光法またはXPS分析を用いて、あるいはスパッタプロファイルと組み合わせて求めることができる。
【0057】
さらなる実施形態では、本発明によるシルバーの真珠光沢顔料中の元素鉄として計算される鉄化合物の総量は、それぞれの場合に真珠光沢顔料の総重量に対して、5.0重量%未満であり、好ましくは1重量%~4.3重量%の範囲内、特に好ましくは1.4重量%~2.9重量%の範囲内、非常に特に好ましくは1.5重量%~2.3重量%の範囲内である。
【0058】
このような少量のFeを用いると、シルバーの色をうまく発色させることができる。5重量%より多量になると、吸収色が強すぎる真珠光沢顔料がもたらされる。
【0059】
さらなる好ましい実施形態では、タイプa)の真珠光沢顔料は、式(III):
(鉄含有量(重量%)/チタン含有量(重量%))×被覆の分率(重量%) (III)
による、1~8の範囲内である被覆の関数としての鉄/チタン重量比を有する。式中、それぞれの場合に真珠光沢顔料において、真珠光沢顔料の総重量に対して、「鉄含有量」は、元素鉄として計算される鉄化合物の量を表し、「チタン含有量」は、元素チタンとして計算されるチタン化合物の量を表し、「被覆の分率(重量%)」は、真珠光沢顔料の総重量に対する、基材に適用された被覆全体の重量分率を表す。好ましくは、このパラメーターは、2~7.5の範囲内、特に好ましくは2.5~7の範囲内、非常に特に好ましくは3~6の範囲内である。
【0060】
このパラメータは、特に、真珠光沢顔料が、効果顔料混合物で要求されるシルバーの色を有することを保証する。
【0061】
別の実施形態b)では、シルバーの真珠光沢顔料は、亜酸化チタンを含むもしくは亜酸化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材、またはn>1.8を有する高屈折率層で任意に被覆された亜酸化チタンを含むもしくは該亜酸化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層を有する基材を含む。
【0062】
2つ目の種類の顔料のn>1.8を有する高屈折率被覆層は、基材の亜酸化チタンとは異なる材料から作製され、好ましくはTiO2である。
【0063】
被覆された亜酸化チタン層または亜酸化チタン基材は、チタンの形式酸化数が4未満である酸化チタンを示す。これらは、式:
TinO2n-1 (IV)
(式中、nは1~100の整数であり、好ましくはn=1~10)によって表され得る。そのような化合物の典型的な例は、TiO、Ti2O3、Ti3O5、Ti4O7である。任意のそのような種の混合物も含まれ得る。
【0064】
さらなる実施形態では、亜酸化チタン含有量は、顔料全体に対して5%未満であり得て、上記亜酸化チタンの主成分はTi2O3である。
【0065】
亜酸化チタンを含む市販の真珠光沢顔料の例は、Iriodin(登録商標)9605(Merck社)である。
【0066】
別の実施形態c)では、シルバーの真珠光沢顔料は、酸窒化チタンを含むまたは酸窒化チタンからなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む。
【0067】
酸窒化チタンは、一酸化チタン中の窒素の固溶体を含む、一般式:
TixNyOz (V)
(式中、xは、0.2~0.6であり、yは、0.05~0.6であり、かつzは、0.1~0.9である)によって表現され得る。
【0068】
そのような真珠光沢顔料は、米国特許第4,623,396号明細書に記載されている。濃い青色または帯青色の色合いを有する真珠光沢顔料は、欧州特許出願公開第332071号明細書または欧州特許出願公開第735115号明細書に記載されている。この場合に、第1のTiO2層は、750℃~850℃の範囲内の温度でアンモニアにより還元されている。最初の工程で堆積されたTiO2層の光学的厚さが50nm~100nmの範囲内にあると、シルバーの効果顔料が得られる。
【0069】
欧州特許第842229号明細書には、真珠光沢顔料が記載されており、そこでは、チタン化合物の加水分解性水溶液をエンドレスベルト上で固化させることによって小板状のTiO2基材が最初に形成される。これらの基材は、さらなるTiO2または他の金属酸化物で被覆されて、還元条件下で焼成され得る。
【0070】
このような真珠光沢顔料の例は、BASF Colors and Effects GmbH社によって以前に製造されたPaliocrom Blausilber L6000およびL6001である。
【0071】
さらなる実施形態d)では、効果顔料混合物の真珠光沢顔料は、炭素を含む層で被覆された透明基材を含み、ここで、炭素は粒状形態で別の金属酸化物層内に封入されているまたは別個の個別の層として少なくとも1つの高屈折率層上に形成されている。
【0072】
独国特許出願公開第4227082号明細書には、真珠光沢顔料が開示されており、そこでは、真珠光沢基材またはTiO2被覆された真珠光沢顔料が有機官能性シランで被覆され、不活性ガス雰囲気下で焼成または熱分解されて、シリカマトリックス中に炭素を含み、より暗い色を有する真珠光沢顔料が得られた。独国特許出願公開第4227082号明細書に同様の真珠光沢顔料が開示された。
【0073】
欧州特許出願公開第32303812号明細書では、メタリックのシルバーの見た目を有する真珠光沢顔料が開示されており、そこでは、TiO2のような高屈折率被覆上に非常に薄い純粋な炭素層が流動床装置を介して被覆されている。
【0074】
さらなる実施形態e)では、効果顔料混合物の真珠光沢顔料は、チタンの酸化物と、鉄の酸化物と、コバルトおよびクロムの少なくとも1つの酸化物との混合物を含むまたは該混合物からなる第1の層と、該第1の層上のチタンの酸化物を含む第2の層とで被覆された透明基材の小板を含む。
【0075】
このような真珠光沢顔料は、黒色の吸収色を有し、米国特許第6,361,593号明細書および米国特許第6,290,766号明細書に記載されている。
【0076】
市販製品は、Vegetable Black Olive(BASF Colors and Effects社)である。
【0077】
さらなる実施形態では、真珠光沢顔料a)~e)の混合物もしくは組合せ物自体、または真珠光沢顔料a)~e)で述べられた様々な被覆層の混合物もしくは組合せ物を有する真珠光沢顔料が使用され得る。
【0078】
例えば、亜酸化チタンと酸窒化チタンとの混合物または組合せ物の被覆を含む真珠光沢顔料が使用され得る。
【0079】
好ましい実施形態では、シルバーの真珠光沢顔料は、以下の群:
a)TiイオンおよびFeイオンを含み、主にFeイオンがFe(II)イオンである、好ましくはイルメナイト(FeTiO3)層、マグネタイト(Fe3O4)層またはそれらの混合物である、金属酸化物層を含む被覆を有する、タイプa)の真珠光沢顔料、または、
b)亜酸化チタンが、式
TinO2n-1 (IV)
(式中、nは、1~10の整数である)によって表され得る、タイプb)の真珠光沢顔料、または、
c)酸窒化チタンが、一酸化チタン中の窒素の固溶体を含む、式:
TixNyOz (V)
(式中、xは、0.2~0.6であり、yは、0.05~0.6であり、かつzは、0.1~0.9である)によって表され得る、タイプc)の真珠光沢顔料、ならびに、
真珠光沢顔料a)~c)の混合物もしくは組合せ物、または真珠光沢顔料a)~c)で述べられた様々な被覆層の混合物もしくは組合せ物を有する真珠光沢顔料、
から選ばれる。
【0080】
あらゆる種類の真珠光沢顔料に使用される透明基材は、典型的には、天然マイカまたは合成マイカ、ガラスフレーク、SiO2フレーク、Al2O3フレーク、またはそれらの混合物である。好ましい基材は、ガラスフレークまたは合成マイカである。それというのも、これらの基材は、純粋なシルバーの色調および高い光沢を有する真珠光沢顔料をもたらすからである。
【0081】
タイプa)、b)またはc)のシルバーの真珠光沢顔料の高屈折率層は、好ましくは2.0より大きい屈折率nを有し、より好ましくはn>2.3を有する。
【0082】
好ましい実施形態では、本発明によるシルバーの真珠光沢顔料は、少なくとも1つの外部保護層を備え得る。この保護層は、真珠光沢顔料の光安定性、耐候安定性、および/または化学的安定性をさらに高める。特に、任意のTiO2層の光活性と、それに伴う被覆中の有機樹脂の破壊とは、これらの保護層によって効果的に軽減され得る。
【0083】
本発明による銀色の顔料の外部保護層は、元素Si、Al、ZrまたはCeの1つもしくは2つの金属酸化物層および/または金属水酸化物層および/または金属酸化物水和物層を含み得る、または好ましくはそれらからなり得る。1つの変形形態では、酸化ケイ素層、好ましくはSiO2層が最外金属酸化物層として適用される。これらの保護層の後に、アルミニウム効果顔料を論じる節で上記したように、有機官能性カップリング剤を最外保護層上に被覆することができる。原則として、シルバーの真珠光沢顔料の場合と同様に、同じ種類の有機官能性カップリング剤を使用することができる。
【0084】
このような耐候安定性の外部保護層は、例えば、欧州特許第0888410号明細書、欧州特許出願公開第0632109号明細書、欧州特許第1727864号明細書、欧州特許第1682622号明細書、欧州特許第2691478号明細書、または欧州特許第2904052号明細書に記載されている。
【0085】
効果顔料混合物:
シルバーの真珠光沢顔料対アルミニウム効果顔料の重量比は、0.4~5.0の範囲内、好ましくは0.5~4.2の範囲内、より好ましくは1.0~4.0の範囲内、最も好ましくは2.5~3.5の範囲内である。
【0086】
0.4の比率を下回ると、レーダー波の減衰はなおさら強くなりすぎる。5.0の比率を上回ると、効果顔料混合物は十分な隠蔽力を有しなくなり、その塗料のメタリックの性質が低下する。
【0087】
効果顔料混合物は、アルミニウム効果顔料とシルバーの真珠光沢顔料との混合物それ自体を含み得るか、または2種の効果顔料がそれらの各重量比で含まれる任意の配合物を含み得る。
【0088】
好ましい実施形態では、効果顔料混合物は、アルミニウムまたはアルミニウム基合金のショット材の粉砕によって得られ、SiO2で被覆され、任意にモリブデン酸化物で被覆された小板状のアルミニウム効果顔料とシルバーの真珠光沢顔料とを含み、ここで、シルバーの真珠光沢顔料は、
a)Fe(II)イオンを有する酸化鉄を含むまたは該酸化鉄からなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料、
からなる群から選ばれ、真珠光沢顔料対アルミニウム効果顔料の重量比は、0.4~5.0の範囲内、好ましくは1.0~4.0の範囲内である。SiO2でコーディングされ、任意にモリブデン酸化物で被覆されたアルミニウム効果顔料およびシルバーの真珠光沢顔料の両方が、有機官能性カップリング剤、好ましくは有機官能性シランによってさらに変性されていることが好ましい。モリブデン酸化物被覆を使用する場合に、アルミニウム基材上にモリブデン酸化物の最初の被覆に続いてSiO2被覆が行われることが好ましい。
【0089】
塗料配合物:
本発明の別の実施形態は、上記の効果顔料混合物のいずれかを含む塗料配合物である。
【0090】
そのような塗料配合物はさらに、バインダー、溶剤もしくは溶剤混合物、添加剤を含み、任意の成分として充填剤および/または慣例的な顔料を含む。
【0091】
バインダー材料の例は、油系材料(亜麻仁油またはポリウレタン油に基づく)、セルロース系材料(NC、CAB、CAP)、塩素化ゴムに基づく材料、ビニル材料(PVC、PVDF、VCコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエステル分散液、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリスチレン、スチレンコポリマーに基づく)、アクリル材料、アルキド材料、飽和ポリエステル材料、不飽和ポリエステル材料、ポリウレタン材料(1パック、2パック)、エポキシ材料またはシリコーン材料である。
【0092】
水性系で使用可能なバインダーの好ましい例は、ポリウレタン材料、エポキシ材料、アクリル材料、ポリビニルアルコール、飽和ポリエステル材料、不飽和ポリエステル材料である。好ましくは、これらのバインダーは、10mgKOH/g~50mgKOH/gの範囲内の酸価を有する。
【0093】
塗料配合物は水系配合物であることが好ましい。それというのも、これらの配合物は、生態学的理由のために世界中のあらゆる塗料配合物のますます増える部分を占めるからである。この場合、ほとんどの溶剤は水であるが、それでも少量の追加の有機溶剤が望ましい。
【0094】
添加剤として、典型的には、湿潤添加剤および分散添加剤、脱泡剤または脱気添加剤またはレオロジー添加剤が使用される。すべての添加剤の総量は、通常、塗料配合物全体に対して3重量%未満、好ましくは2重量%未満である。
【0095】
市販の添加剤の例は、Disperbyk 190、Disperbyk 190 N、Disperbyk 184、Disperbyk 198、Disperbyk 2010、Disperbyk 2012、Disperbyk 2015、Byk 015、Byk 024、Byk 011、Byk 028、Byk 310、Byk 346、Byk 347、Byk 378、またはByk 1770(すべては、Byk Additives&Instruments社製)である。
【0096】
充填剤として、典型的には、シリカ粒子またはアルミナ粒子が使用される。例はLaponite-RD(Byk Additives&Instruments社)である。
【0097】
慣例的な顔料として、無機顔料または有機顔料が使用され得る。慣例的な顔料とは、これらの顔料が、効果顔料とは正反対にそれらの光学特性に角度依存性(入射角または観察角のいずれか)を有しないことを意味する。これらの慣例的な顔料は、必要に応じて塗料被膜に色を与えるために使用される。
【0098】
慣例的な顔料は、有機顔料、無機顔料、またはそれらの混合物であり得る。したがって、好ましい態様では、慣例的な顔料は、特に有機顔料、無機顔料、およびそれらの混合物からなる群から選択される透明顔料である。
【0099】
本塗料配合物に適した有機有色吸収顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、ジスアゾ縮合顔料、アンサントロン顔料、アントラキノン顔料、アントラピリミジン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、フラバントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、イソビオラントロン顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ピラントロン顔料、ピラゾロキナゾロン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、トリアリールカルボニル顔料およびそれらの混合物(それらの固溶体または混晶を含む)からなる群から選択される顔料が挙げられる。
【0100】
適切な市販の例としては、以下:
- モノアゾ顔料:C.I.ピグメントイエロー1、3、62、65、73、74、97、183および191;C.I.ピグメントオレンジ5、38および64;C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、23、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、51、51:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、58:2、58:4、63、112、146、148、170、184、187、191:1、210、245、247および251;
- ジスアゾ顔料:C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、170、174、176および188;C.I.ピグメントオレンジ16、34および44;
- ジスアゾ縮合顔料:C.I.ピグメントイエロー93、95および128;C.I.ピグメントレッド144、166、214、220、221、242および262;
- アンサントロン顔料:C.I.ピグメントレッド168;
- アントラキノン顔料:C.I.ピグメントイエロー147および199;C.I.ピグメントレッド177;
- アントラピリミジン顔料:C.I.ピグメントイエロー108;
- ベンズイミダゾロン顔料:C.I.ピグメントイエロー120、151、154、180、181;C.I.ピグメントオレンジ36および72、C.I.ピグメントレッド175、185、208;C.I.ピグメントバイオレット32;C.I.ピグメントブラウン25;
- キナクリドン顔料:C.I.ピグメントオレンジ48および49;C.I.ピグメントレッド122、202、206および209;C.I.ピグメントバイオレット19;
- キノフタロン顔料:C.I.ピグメントイエロー138;
- ジケトピロロピロール顔料:C.I.ピグメントオレンジ71、73および81;C.I.ピグメントレッド254、255、264、270および272;
- ジオキサジン顔料:C.I.ピグメントバイオレット23および37;
- フラバントロン顔料:C.I.ピグメントイエロー24;
- イソインドリン顔料:C.I.ピグメントイエロー139および185;C.I.ピグメントオレンジ61および69、C.I.ピグメントレッド260;
- イソインドリノン顔料:C.I.ピグメントイエロー109、110および173;
- イソビオラントロン顔料:C.I.ピグメントバイオレット31;
- 金属錯体顔料:C.I.ピグメントレッド257;C.I.ピグメントイエロー117、129、150、153および177;
- ペリノン顔料:C.I.ピグメントオレンジ43;C.I.ピグメントレッド194;
- ペリレン顔料:C.I.ピグメントレッド123、149、178、179および224;C.I.ピグメントバイオレット29;
- ピラントロン顔料:C.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド216;
- ピラゾロキナゾロン顔料:C.I.ピグメントオレンジ67およびC.I.ピグメントレッド216;
- インジゴ顔料:C.I.ピグメントレッド282;
- チオインジゴ顔料:C.I.ピグメントレッド88および181;C.I.ピグメントバイオレット38;
- トリアリールカルボニウム顔料:C.I.ピグメントレッド81、81:1および169;C.I.ピグメントバイオレット1、2、3および27;
- C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー)、
が挙げられる。
【0101】
さらなる実施形態では、塗料配合物は追加の真珠光沢顔料を含有する。追加の真珠光沢顔料は、上記の効果顔料混合物中で使用されるどれでもない。追加の真珠光沢顔料は、これらが透明基材を基礎としていることと、色に寄与する層がTiO2、Fe2O3またはそれらの混合物からなる1つまたは2つの高屈折率層と、任意に1つ以上のn<1.8を有する低屈折率層とからなることとを特徴とする。
【0102】
好ましくは、これらの追加の真珠光沢顔料は、TiO2またはFe2O3からなる1つの層、最も好ましくはTiO2からなる1つの層を有する。「TiO2からなる」とは、この場合に、よく知られるようにTiO2をルチル化するために使用されている場合がある少量のSnO2が存在し得ることを意味する。
【0103】
これらの追加の真珠光沢顔料は、主に色彩特性を有している。これらを使用して、色調を調整することができ、またはフロップを改善することができる。通常、これらは、効果顔料混合物に使用される真珠光沢顔料の不透明度およびメタリックな外観を有していない。
【0104】
好ましい実施形態では、効果顔料混合物の効果顔料および任意に追加の真珠光沢顔料の総量は、塗料配合物の総量に対して2重量%~5.5重量%の範囲内である。より好ましくは、効果顔料混合物の効果顔料および任意に追加の真珠光沢顔料の総量は、それぞれ塗料配合物の総量に対して3重量%~5.2重量%の範囲内、最も好ましくは3.5重量%~5.0重量%の範囲内である。
【0105】
5.5重量%の量を上回ると、効果顔料の不整によりフロップ特性が減少し、塗膜間の接着のような塗料被膜の機械的特性が不十分になる場合もある。2重量%の量を下回ると、隠蔽力が低くなりすぎる。
【0106】
塗料配合物のさらなる実施形態では、すべての真珠光沢顔料の総量、すなわち効果顔料混合物の真珠光沢顔料および追加の真珠光沢顔料の量は、塗料配合物の総量に対して2重量%~4重量%の範囲内である。それぞれ塗料配合物の総量に対して、より好ましくは、すべての真珠光沢顔料の総量は2.5重量%~3.8重量%の範囲内であり、最も好ましくは、すべての真珠光沢顔料の総量は2.75重量%~3.5重量%の範囲内である。
【0107】
塗料配合物のさらなる実施形態では、効果顔料混合物の小板状のアルミニウム効果顔料の量は、塗料配合物の総量に対して1.0重量%~2.3重量%の範囲内である。より好ましくは、効果顔料混合物の小板状のメタリック効果顔料の量は、それぞれ塗料配合物の総量に対して1.3重量%~2.0重量%の範囲内、最も好ましくは1.5重量%~1.9重量%の範囲内である。
【0108】
驚くべきことに、そのような少量しか使用されないにもかかわらず、非常に良好なメタリックな外観を有する塗料が得られる。
【0109】
アルミニウム効果顔料の濃度が2.3重量%を超えると、レーダー波の透過性が低くなりすぎて、さらには配向消失となり得るため、フロップおよび光沢の喪失が起こる場合がある。1.0重量%の濃度を下回ると、メタリック効果(特にフロップ)が減少し、塗工膜の隠蔽力が低くなりすぎる。
【0110】
塗料配合物のさらなる実施形態では、効果顔料混合物の効果顔料と、任意に追加の真珠光沢顔料との重量%比は、0.1~0.8の範囲内である。好ましくは、効果顔料混合物の効果顔料と、任意に追加の真珠光沢顔料との重量%比は、0.1~0.7の範囲内、より好ましくは0.2~0.6の範囲内、最も好ましくは0.18~0.4の範囲内である。
【0111】
0.1を下回ると、効果顔料の量が少なすぎて、所望の光学的特性を実現することができない。0.8を上回ると、塗膜間の接着の低下または効果顔料のチョーキングのような、得られる塗料被膜の技術的特性が生じ得る。
【0112】
非常に好ましい実施形態では、塗料配合物は、アルミニウムまたはアルミニウム基合金のショット材の粉砕によって得られ、SiO2で被覆され、任意にモリブデン酸化物で被覆された小板状のアルミニウム効果顔料とシルバーの真珠光沢顔料とを含む効果顔料混合物であって、シルバーの真珠光沢顔料が、
a)Fe(II)イオンを有する酸化鉄を含むまたは該酸化鉄からなるn>1.8を有する高屈折率層で被覆された透明基材を含む真珠光沢顔料、
からなる群から選ばれ、真珠光沢顔料対アルミニウム効果顔料の重量比が0.4~5.0の範囲内、好ましくは1.0~4.0の範囲内である、効果顔料混合物を含む。SiO2で被覆され、任意にモリブデン酸化物で被覆されたアルミニウム効果顔料およびシルバーの真珠光沢顔料の両方が、有機官能性カップリング剤、好ましくは有機官能性シランによってさらに変性されていることが好ましい。モリブデン酸化物被覆を使用する場合に、アルミニウム基材上にモリブデン酸化物の最初の被覆に続いてSiO2被覆が行われることが好ましい。SiO2で被覆されたアルミニウム顔料の濃度は、塗料配合物の総量に対して1.3重量%~2.0重量%の範囲内である。好ましくは、すべての真珠光沢顔料の総量、すなわち効果顔料混合物の真珠光沢顔料および追加の真珠光沢顔料の量は、塗料配合物の総量に対して2重量%~4重量%の範囲内である。
【0113】
本発明のさらなる実施形態は、塗料または印刷インキにおける効果顔料混合物の使用である。好ましい実施形態では、塗料は、水系OEM自動車用塗料または再仕上げ自動車用塗料である。
【0114】
本発明のさらなる実施形態は、プラスチック基材上に電波透過性塗料被膜を形成するための、効果顔料混合物または効果顔料混合物を含む塗料配合物の使用である。無線周波数波で動作するセンサーを隠すために、好ましくはプラスチック基材が使用される。好ましい実施形態では、プラスチック基材は、自動車のバンパー、ラジエーターグリル、自動車のバックパネル、ドアトリムストリップ、バックミラーケーシングまたは携帯電話のケーシングである。
【0115】
プラスチック基材は、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、アクリロニトリル-エチレン-スチレン(AES)コポリマー、およびポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂であり得る。
【0116】
本発明のさらなる実施形態は、効果顔料混合物を含む上記の塗料配合物から作製されたプラスチック基材上、好ましくは自動車のバンパー上の電波透過性塗工膜である。
【0117】
プラスチック基材上のこの塗工膜は、8μm~17μmの範囲内、より好ましくは10μm~16μmの範囲内、さらにより好ましくは12μm~15μmの範囲内の乾燥被膜の厚さを有することが好ましい。
【0118】
17μmを上回る厚さは、コスト上の理由からペイント業界ではほとんど受け入れられいない。現在、自動車の塗膜または車のバンパーのようなプラスチック部品上の塗膜は、典型的には15μm以下の厚さを有する。17μmを超える厚さを有する塗膜はほとんど受け入れられない。
【実施例】
【0119】
実施例1:
アルミニウム基材がd50=約18μmおよび約285nmのhmを有する市販のシリカ被覆されたアルミニウム効果顔料(Stapa IL Hydrolan 2156、Eckart GmbH社)を、合成マイカを基礎とし、TiO2層に続いて本質的にFe(II)イオンのみを有するTi-Fe混合金属酸化物を含む市販のシルバーの真珠光沢顔料(Symic OEM medium opaque silver;Eckart GmbH社)と混合した。量は表1に開示されている。これらの効果顔料を、ポリアクリレートを基礎とするWoerwag社の水性ベースコートフィニッシュへと添合した。
【0120】
Oerter&Koehne GmbH社の自動吹き付け装置を使用して、15μmの乾燥被膜の厚さで黒色のアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)パネル基材上に塗料を塗布した。塗料が完全に隠蔽するように、効果顔料対バインダーの重量比を変動させた。
【0121】
これらの2つの効果顔料を、表1に示される様々な比率で混合した。
【0122】
よく知られている式(VI):
フロップ=2.69×((L*
15゜-L*
110゜)1.11/L*
45゜
0.86) (VI)
によって、フロップを求めた。
【0123】
無線周波数減衰の測定:
レーダー信号の伝送を、ベクトルネットワークアナライザーおよび2つのホーンアンテナを用いて75GHz~80GHzの周波数範囲内で測定した。電磁波が垂直入射するように、試料を送信アンテナと受信アンテナとの間に配置する。アンテナの半値幅は、電波ベクトルの平面で9°であり、電磁波ベクトルの平面で12°であった。試料とアンテナとの距離を調整することにより、アンテナによって照らされる平面を試料よりも明らかに小さくして、縁部の影響が減るようにした。
【0124】
最初に、試料を用いずに測定を行うことで、システムを較正した。次に、ラッカーが塗工されていないプラスチックパネルを使用して測定を行った。さらなる測定はすべて、ケーブル、アンテナなどの影響を除いてこの測定を参照した。測定の精度は0.5dBであった。測定された減衰は、測定された周波数領域において非常に一定していた。
【0125】
【0126】
真珠光沢顔料を加えると、電波の減衰が許容可能に減少することがよく分かる。フロップの変化は2.0未満であるため、許容範囲内である。
【0127】
実施例2の系列:
アルミニウム基材が20μmのd50および約280nmのアルミニウム基材のhmを有する、コーンフレークの形態を有するシリカ被覆されたメタリック効果顔料(IL Hydrolan 8154、Eckart GmbH社)を含む系列を、市販のイルメナイト含有真珠光沢顔料(Symic OEM medium opaque silver;Eckart GmbH社)と表3-1に示される様々な比率で混合した。比較例として、純粋なメタリック効果顔料を利用した。
【0128】
これらの混合物を、ポリアクリレートを基礎とするWoerwag社の水性ベースコートフィニッシュおよびOerter&Koehne GmbH社の自動吹き付け装置を使用して、0.25の一定の効果顔料対バインダーの比率で塗布して、15μmの厚さの乾燥被膜とした。比較例を含むすべての試料(probe)において、着色剤として黒色顔料のHostafine Black TS 30を、ラッカーの総重量に対して0.07重量%の総濃度で添加した。
【0129】
実施例3の系列:
実施例2の系列と同様の系列を、アルミニウム基材が13μmのd50および約95nmのhmを有する、シルバーダラーの形態のシリカ被覆されたメタリック効果顔料(IL Hydrolan 412、Eckart GmbH社)を使用して作製し、市販のイルメナイト含有真珠光沢顔料(Symic OEM medium opaque silver;Eckart GmbH社)と表3-1に示される様々な比率で混合した。比較例として、純粋なメタリック効果顔料を利用した。
【0130】
実施例2の系列と同様にして試料を塗布した。
【0131】
実施例4の系列:
アルミニウム基材が21μmのd50および約310nmのhmを有する、シルバーダラーの形態のシリカ被覆されたメタリック効果顔料(IL Hydrolan 418、Eckart GmbH社)を使用して、実施例2の系列と同様の系列を作製し、市販のイルメナイト含有真珠光沢顔料(Symic OEM medium opaque silver;Eckart GmbH社)と表3-2に示される様々な比率で混合した。比較例として、純粋なメタリック効果顔料を利用した。
【0132】
さらなる比較例として、IL Hydrolan 418とTiO2被覆された合成マイカから構成される真珠光沢顔料(Symic OEM medium silver、Eckart GmbH社)との混合物を、特許文献4と同様に2種の効果顔料の2つの異なる比率で利用した。
【0133】
実施例2の系列と同様にして試料を塗布した。
【0134】
実施例5の系列:
アルミニウム基材が24μmのd50および約390nmのhmを有する、シルバーダラーの形態のシリカ被覆されたメタリック効果顔料(IL Hydrolan 422、Eckart GmbH社)を使用して、実施例2の系列と同様の系列を作製し、市販のイルメナイト含有真珠光沢顔料(Symic OEM medium opaque silver;Eckart GmbH社)と表3-2に示される様々な比率で混合した。比較例として、純粋なメタリック効果顔料を利用した。
【0135】
比較例6:
電波透過性に対するシリカ被覆の影響を探るために、シリカ被覆を有しない比較例(比較例6.1;MEX 2156、Eckart社)およびシリカ被覆を有する比較例(比較例6.2;Hydrolan 2165)の2つの比較例を、実施例1に記載されるのと同様に利用した。
【0136】
【0137】
両方の比較例は減衰試験に合格しないものの、シリカ被覆がすでに減衰を約1dB減少させていることがよく分かる。したがって、メタリック効果顔料のシリカ被覆は、水性系ベース塗料における効果顔料の耐ガス発生性(gassing stability)を保証するだけでなく、レーダー電磁放射の減衰も改善する。
【0138】
したがって、シリカ被覆された金属効果顔料などの金属酸化物被覆された金属効果顔料を使用すると、レーダー電磁放射の減衰における相乗効果がある。
【0139】
実施例7:
欧州特許第246523号明細書により開示される、SiO2被覆された金属顔料(IL Hydrolan 418、Eckart GmbH社)とイルメナイト含有真珠光沢顔料(Merck社製のIriodin 9602 SW)の混合物。
【0140】
【0141】
表3-1、3-2から、Symic OEM medium opaque silverとシリカ被覆されたアルミニウム顔料との混合物を指すすべての本発明の実施例のブリリアンスの尺度であるL*
15°値は、純粋なアルミニウム顔料を有する塗料(比較例)と比較して減少することが分かる。典型的なメタリック効果は、式(VI)により規定されるフロップ値(DuPont社)によって最もよく説明されている。Δフロップは、効果顔料混合物のフロップ値からそれぞれの純粋なメタリック塗料(比較例)についてのフロップ値を引いたものから計算された。一般的に高いフロップ値を有する塗料系列に関しては、差Δフロップは比較的低い場合があるため、Δフロップ/フロップ(%)というパラメーターをさらに計算した。2、3および4の系列の実施例のすべてについて、Δフロップの絶対値は2.0以下である。このような小さな差は許容可能である。幾つかの実施例はフロップの増加(正のΔフロップ)さえも有していた。Hydrolan 418と単純なTiO2被覆を有する真珠光沢顔料との混合物である比較例4.5および比較例4.6は、それぞれ-2.61および-2.4のより高いΔフロップ値を有する。
【0142】
実施例5の系列についてのみ、Δフロップは2.0よりわずかに大きい。この場合に、アルミニウム顔料についてのd50値は24μmであり、絶対フロップ値はかなり高い。このような比較的大きな効果顔料の場合に、これらのより大きなアルミニウム顔料は-10%を上回る相対Δフロップを有するため、より高いΔフロップ値が許容可能である。-10.5より大きなΔフロップ/フロップは、一般的に許容可能である。比較例4.5および比較例4.6は-12.1%および-11.0%の最大値を有し、許容可能ではなかった。
【0143】
既存のメタリック水性配合物の一致性に関する実施例8、実施例9および実施例10ならびに比較例7、比較例8、比較例9および比較例11:
純粋なシリカ被覆されたメタリック顔料を基礎とする商業的に使用されるメタリックな色調の3つの既存のアルミニウム水性配合物を、シリカ被覆されたメタリック顔料、イルメナイト含有真珠光沢顔料およびさらなる真珠光沢顔料の効果顔料混合物を含む再仕上げ配合物によって一致させるよう試みた。3つの既存のアルミニウム水性配合物は、
- 比較例7:「Reflex Silver」(Volkswagen社)、
- 比較例8:「Iridium Silver」(Daimler社)、および、
- 比較例9:「Glacier Silver」(BMW社)、
であった。
【0144】
自動車用の水性系として、SPIES HECKER社(ドイツ)の系を使用した(Permahyd(登録商標)HI-TEC)。すべての成分は市販されている。表4に、すべての成分がそれぞれの量(重量%)で列挙されている。
【0145】
Oerter&Koehne GmbH社の自動吹き付け装置を使用して、15μmの乾燥被膜の厚さで黒色のアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー(ABS)パネル基材上に塗料を塗布した。
【0146】
真珠光沢顔料Luxan CFX C001(Eckart GmbH社)は、ガラスフレーク基材を基礎とし、TiO2で被覆されたシルバーの真珠光沢顔料である。Luxan CFX C261は、ガラスフレーク基材を基礎とし、TiO2で被覆された帯青色の真珠光沢顔料である。これらの真珠光沢顔料は、高い隠蔽力を有しないが、配合物に輝きを与える。Symic OEM Superfine SilverおよびSymic OEM Fine Blueは、TiO2被覆を有する合成マイカを基礎とする真珠光沢顔料である。これらを添加して、symic opaque顔料によって激しく高められすぎたフロップを低下させ、さらに色調を調整した。
【0147】
シリカ被覆されたアルミニウムフレークの2つのスラリー(Stapa IL Hydrolan S408およびStapa IL Hydrolan S418)を最初に適切な量のブチルグリコールと混合して、アルミニウム顔料のスラリーを形成した。Stapa IL Hydrolan S408のアルミニウム基材は、約11μmのd50および約82nmのhmを有していた。すべての真珠光沢顔料を混合し、ブチルグリコール/脱塩水1:4混合物中に分散させた。ジメタノールメチルアミン(DMEA)を添加して、水を添加することによりスラリーを完成させた。両方のスラリーを、撹拌しながらバインダー分散液に添加した。引き続き、すべての他の成分を添加した。すべての成分のすべての量は、表4に重量%として示されている。塗布する前に、20重量%の添加剤混合物を添加した。
【0148】
比較例11:「Glacier Silver」(BMW社)の色調について、追加の一致用配合物を作製した。ここでは、Symic OEM Medium Opaque Silverを使用しなかった。代わりに、Symic OEM Superfine Silverの量を調整した。Luxanの量を一定に保ったのは、この量を増やすと、確実に輝きが大幅に高まりすぎることとなるからである。
【0149】
光学的測定および効果測定
顔料の光輝効果を決定する効果測定を、BYK-mac(Byk-Gardner社)を使用して、表4に上記されている吹き付け塗布に基づいて行った。
【0150】
直接照明による効果の変化をシミュレートするために、光輝効果を高解像度CCDカメラを使用してBYK-macで調査する。個々の効果顔料の反射能によって引き起こされる光輝効果は直達日射時にのみ認められ、照明の角度に応じて変化する。このため、Byk-mac内の試料を、非常に明るいLEDを用いて3つの異なる角度(15°/45°/75°)で照らす。CCDカメラを使用して、それぞれの場合に表面に対して垂直に画像を記録する。画像処理アルゴリズムを使用して画像を解析し、その際、光輝パラメーターを計算するための基礎として、明度段階のヒストグラムを使用する。判別の向上を保証するために、光輝面積S_aおよび光輝強度S_iといった2次元系を使用して、光輝効果を記述した。あるいは、名前付きデータを1次元値である光輝等級S_Gにまとめた。
【0151】
視覚的印象に重要なのは1次元の光輝等級S_Gである。S_Gの数値が大きいほど、視認可能な光輝効果が高くなる。2次元的表現では、光輝等級S_Gは、光輝強度S_iおよび光輝面積S_aの成分に分解され得る。両方の成分は光輝等級S_Gに重大な影響を与えるので、考慮される測定ジオメトリーでのS_aおよびS_Gの数値が大幅に増加または減少するという事実にもかかわらず、効果顔料は、15°、45゜および75°の測定ジオメトリーで実質的に同じ光輝等級S_Gを有することが起こり得る。
【0152】
光学的測定を、Byk-MAC(D65、10°)を用いて行った。
【0153】
表5-1、5-2に、すべての測定結果が示されている。ここで、セル中の最初の数字は、当初の色調で測定された絶対値を示す(比較例7、比較例8、および比較例9)。2つ目の数字は、一致用配合物で測定されたこの最初の値との差を示す。
【0154】
無線周波数減衰試験に関して、比較例7(「Reflex Silver」)は-3.5の値を示したのに対して、実施例8は-1.4の値しか有しなかった。
【0155】
【0156】
【0157】
考察:
実施例10および比較例11についての結果を比較すると、比較例の明度(ΔL*
-15°値およびΔL*
15°値およびΔL*
25°値)の強い増加が示されている。この原因は慣例的な真珠光沢顔料(Symic OEM Superfine Silver)の量の増加である。この真珠光沢顔料は、イルメナイト層がより強い吸収を引き起こすSymic OEM Medium Opaque Silverよりも明度が高い。この明度の違いが、比較例11の非常に高いΔE*値およびΔE*平均値についての主な理由である。イルメナイト含有真珠光沢顔料を使用するすべての実施例は、はるかに低いΔE*値およびΔE*平均値を有していた。
【0158】
実施例7~実施例9のすべてで、明度(ΔL*
-15°値およびΔL*
15°値およびΔL*
25°値)、ΔE*値、Δフロップ値、およびΔG値の差において非常に小さい許容可能な違いしか有しない一致性が得られた。メタリックの性質を有するが吸収特性(ここでは、イルメナイト層)を有する真珠光沢顔料を使用した場合にのみ、そのような小さな違いを得ることができる。