(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】超臨界流体媒体中における表面官能化の方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/18 20060101AFI20231117BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231117BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231117BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20231117BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20231117BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231117BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B05D1/18
B05D7/00 K
B05D7/24 302T
B05D3/02 Z
B05D3/10 H
B05D3/00 D
C08G18/80
(21)【出願番号】P 2021561781
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060427
(87)【国際公開番号】W WO2020212328
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-14
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ポンスレ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ブランショ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・デルマ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ルナール
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・ルジョー
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-004169(JP,A)
【文献】特表2002-521541(JP,A)
【文献】特開2007-099607(JP,A)
【文献】特開2000-160479(JP,A)
【文献】国際公開第2018/048329(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0105576(KR,A)
【文献】特表2018-510234(JP,A)
【文献】特開2019-089993(JP,A)
【文献】特表2013-510209(JP,A)
【文献】特表2016-533420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C08G 2/00-85/00
Japio-GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面を官能化する方法であって、超臨界流体媒体中で実施され、少なくとも以下:
(i)表面に不安定水素官能
基を有する基材を提供する工程、
(ii)前記基材を、超臨界流体中で、加熱により活性化可能な少なくとも1つのブロックイソシアネート官能
基を担持し、
エチレン性不飽和を含む1つ以上の基
R
f
をさらに含む、少なくとも1つの有機分子と接触させる工程、及び
(iii)全体を、分子によって担持される前記のブロックイソシアネート官能
基の放出と、前記イソシアネート官能と基材の表面上の不安定水素官能
基との反応による前記分子の共有結合グラフト化とを引き起こすために十分な温度にさらす工程
からなる工程を実施する、方法。
【請求項2】
前記基材に担持される不安定水素官能
基が、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、及びカルボン酸官能から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基材が、
・有機ポリマーマトリックスであって、セルロース繊維から、木材から、ポリメチルメタクリレートから、エチレン-酢酸ビニルから、部分的もしくは完全に加水分解されたポリ酢酸ビニルから、ポリアミドから製造され、シリカ、クレイ、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、及びタルクの1つ以上の無機フィラーが任意に導入されているもの、及び
・ガラス繊維またはシリカから製造された基材
から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記のブロックイソシアネート官能
基が、式-NH-C(=O)-Bを有し、ここで、Bは、1つ以上の不安定水素原子を含む有機化合物から選択されるブロック剤BHから誘導される基を表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブロック剤BHが、アルコール、フェノール、アミド、オキシム、β-ジカルボニル化合物、ピラゾール、ヒドロキシ桂皮酸とC
1-6アルコールとのエステル、並びにトリアゾール、イミダゾリン、テトラヒドロピリミジン、及びイミダゾールから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記のブロックイソシアネート官能
基が、式-NH-C(=O)-Bのウレタン官能であり、ここで、Bは、
-OR基(ここで、Rは直鎖状または分枝状のC
1からC
6アルキル基を表す)、または
-O-N=CR
1R
2基(ここで、R
1及びR
2は、互いに独立して、水素原子または直鎖状もしくは分枝状のC
1からC
6アルキル基を表す)、または
-NR’R”基(ここで、R’及びR”は、これらを担持する窒素原子と共にラクタム環基を形成する)
を表す、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(iii)が、75℃から120℃の間の温度に加熱することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分子が、ブロックイソシアネート官能
基と同様に、エチレン性不飽和を含む少なくとも1つのラジカル重合性基を担持しており、工程(iii)の後に、ラジカル重合性モノマーの、化学的にまたは照射によって活性化されるラジカル重合工程を含むことができる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分子が、少なくとも2つの異なるブロックイソシアネート官能
基を担持している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つのイソシアネート官能を含む前記化合物が、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、並びに、脂肪族、脂環族、及び/または芳香族トリイソシアネートから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)で使用される前記分子が、
・第一ブロックイソシアネート官能
基であって、F1と表記され、活性化温度(T1)と呼称される所与の温度以上の温度に加熱することによって活性化可能である官能、及び
・少なくとも1つのブロックイソシアネート官能
基であって、F2と表記され、活性化温度T2(T2はT1よりも確実に高温である)以上の温度で任意に活性化可能な官能
を担持し、
工程(iii)において、T1以上であって、適切であれば確実にT2未満である温度に加熱して、前記ブロックイソシアネート官能
基F1の放出と、前記イソシアネート官能と不安定水素官能
基との反応による前記分子の基材の表面への共有結合グラフト化とを引き起こすことを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ブロックイソシアネート官能
基F2が
、目的の特性を有する少なくとも1つの基
R
f
を担持しており、
工程(iii)に続いて、その表面が前記R
f基で官能化された前記基材を回収することからなる工程(iv)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、ブロックイソシアネート官能
基F2が、T1よりも確実に高温である活性化温度T2を有しており、
工程(iii)に続いて、少なくとも以下:
(iv’)工程(iii)の終了時に得られる基材をT2以上の温度にさらして、前記ブロックイソシアネート官能
基F2の放出を引き起こす工程、
(v’)工程(iv’)の終了時に得られる前記基材を、超臨界状態の前記流体中で、少なくとも1つの不安定水素官能
基を担持する少なくとも1つの化合物と、前記化合物によって担持される不安定水素官能
基と基材の表面上のイソシアネート官能との相互作用を助長する条件下で接触させる工程、及び
(vi’)前記基材を回収する工程
からなる工程を含む、方法。
【請求項14】
前記ブロックイソシアネート官能
基F1及びF2のそれぞれの活性化温度の差T2-T1が、少なくとも20℃である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの不安定水素官能
基を担持する前記化合物が、水であり、イソシアネート官能と相互作用して、基材の表面に共有結合グラフトしたアミン官能を形成することができる、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不安定水素官能を有する基材の表面官能化のための新規な技術に関し、これは、例えば、ポリマー有機マトリックスの表面官能化に有用であり、超臨界流体媒体中で、とりわけ超臨界二酸化炭素媒体中で実施される。
【背景技術】
【0002】
数多くの応用のため、特に生体工学及び医療分野における用途のためには、使用する材料、例えば有機ポリマーマトリックスなどの表面性状を制御することは、その特性の調整及び最適化のための手段の一つである。このため、数多くの技術が、基材、例えば有機ポリマーマトリックスなどの、物性、例えばその色、耐引っかき性、衝撃抵抗、または湿潤特性などを改質する目的で、その表面改質を実施するために提案されている。
【0003】
これらの技術の中で特に好まれているのは、目的の基または分子を基材の表面に共有結合グラフトし、基材に経時的に耐久性の官能化を得ることのできる技術である。同様に、生体工学及び医用工学などの応用のための材料の準備のためには、好ましい技術は、得られる材料中の残留物を最小限に抑える技術、あるいは例えば界面活性剤などの除去が困難な関連副生成物を使用せず、また生成させない技術である。
【0004】
このような観点から、超臨界流体、例えば超臨界二酸化炭素(「超臨界CO2」もしくは「sCO2」とも表記される)として既知の流体は、基材を含浸させるためのベクターとして既に提案されている。超臨界CO2は、コスト、使用の容易さ、燃焼性のないこと、無毒性、及びその優れた溶媒特性などの点で特に有利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Delebeck et al., Chemical Reviews, 2013, 113, pp. 80-118[1]
【文献】Rolph et al., Polymer Chemistry, 2016, 7, pp. 7351-7364[2]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の具体的な目的は、超臨界流体媒体中で実施され、前述の様々な期待に応える、基材、例えばポリマー有機マトリックスタイプの基材の表面改質のための、新たな経路を提供することである。
【0007】
より具体的には、本発明は、基材の表面を耐久性官能化するための新規な技術を提供するものであり、これは、超臨界流体媒体中で実施され、基材の表面に、Rfと表記される1つ以上の目的の基を、特にウレタンタイプの共有結合を確立することによって、イソシアネート化合物の使用とは無関係に、共有結合グラフト化させることができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このように、本発明は、基材の表面を官能化する方法であって、超臨界流体媒体中で実施され、少なくとも以下:
(i)表面に不安定水素官能を有する基材を提供する工程、
(ii)前記基材を、超臨界流体中、特に超臨界CO2中で、加熱により活性化可能な少なくとも1つのブロックイソシアネート官能を担持する少なくとも1つの有機分子と接触させる工程、及び
(iii)全体を、分子によって担持される前記のブロックイソシアネート官能の放出と、前記イソシアネート官能と基材の表面上の不安定水素官能との反応による前記分子の共有結合グラフト化とを引き起こすために十分な温度にさらす工程
からなる工程を実施する、方法に関する。
【0009】
本発明による当該基材は、好ましくは、不安定水素官能を表面に有する有機ポリマーマトリックスであり、とりわけ、ヒドロキシル官能を有するものである。
本発明の意味における「超臨界流体」とは、超臨界状態の流体、特に超臨界CO2を指す。
【0010】
有利には、本発明の方法の全工程は、超臨界状態の流体、例えば超臨界CO2中での稼働に適した単一の反応器(オートクレーブ)内で行うことができる。したがって、本明細書中の以下の記載においては、「反応器」なる語は、本発明による方法の工程が実施される反応器またはオートクレーブを示すために使用される。当該反応器は、とりわけ、バッチモードで稼働する反応器(「バッチ反応器」)である。
【0011】
「ブロックイソシアネート官能」とは、本明細書中の以下の記載においてより具体的に説明される通り、ブロック剤の存在によって不活化されるイソシアネート官能を指す。ブロックイソシアネート官能は、熱の影響を受けて放出、換言すれば、脱ブロックまたは活性化が可能であって良い。
【0012】
とりわけ、本明細書中の以下の記載において詳説される通り、ブロックイソシアネート官能は、活性化温度と呼称される所与の温度を超えて加熱されることによって、放出されてイソシアネート官能を生成することに適していてもよい。
ブロックイソシアネート官能は、特に、ウレタンタイプの官能またはウレアタイプの官能であってよい。本発明の意味において、例えば、ウレタンまたはウレアタイプの官能は、加熱によるイソシアネート官能の生成に適している場合には、「可逆的」または「熱不安定性」であると評される。
【0013】
有利には、本発明の方法では、溶媒、特に可燃性及び/または毒性である有機溶媒を使用する必要がない。
実際、有機溶媒とは対照的に、超臨界流体、例えば超臨界CO2は、使用後にリサイクルまたは処理の工程を必要としない。例えば、二酸化炭素は、処理の終了時にガス形態で放出してよい。工業用反応器の場合には、CO2はリサイクルされてもよい。
【0014】
さらにまた、本発明の方法は、本発明の方法を実施する際には、反応性でないブロックイソシアネート官能を担持する分子のみが反応器に仕込まれ、反応性のイソシアネート官能は、反応器内で官能化しようとする基材上に、加熱によって、その場でのみ生成されることから、イソシアネート化合物の取り扱いの必要性を有利に排除することができる。したがって、本発明の方法は、合成中間体とは別に、イソシアネートの使用に対する、ますます厳しくなっている環境規制の制約に対応している。
【0015】
その上、ブロックイソシアネート官能を担持する分子を、超臨界流体によって、特に超臨界CO2によって輸送するという事実は、有利なことに基材の表面に分子をグラフト化する際の多大な柔軟性をもたらす。特に、圧力及び/または温度を上昇させることなく、超臨界流体中におけるグラフト化のために分子の溶解度を増大させることを目的とする場合、本発明による方法においては、1つ以上の共溶媒、例えばメタノールまたはエタノールを加えることができる。当然ながら、こうした共溶媒の添加は、非ブロックイソシアネート官能を担持する化合物を用いる場合には実用的でない。
【0016】
同様に、本発明の方法は、官能化しようとする基材に事前に脱水処理を実施して、残留する遊離水を除去することを必要とせず、制御雰囲気(窒素またはアルゴン)下での操作も必要としない。
【0017】
さらに、本発明の方法は、前記分子の共有結合グラフトの終了時に表面改質された基材を回収するための、洗浄及び/または精製の工程を必要としない。これは、超臨界流体によって、本発明の方法の間に形成されるすべての副生成物、例えば、ブロックイソシアネート官能の活性化の際に放出されるブロック剤、任意の溶媒、または消費されなかった生成物を即座に除去することができるためである。
【0018】
最後に、本明細書中の以下の記載において詳説される通り、複数の異なるブロックイソシアネート官能を担持する分子、例としてはジイソシアネートまたはトリイソシアネート化合物から誘導される分子を用いて、得られるグラフト化の程度(または被覆の程度)を最適化すること、換言すれば、基材の表面上の利用可能な部位(反応性の不安定水素官能)毎にグラフト化される目的の基を最大限とすることが可能である。
【0019】
本発明による官能化方法の他の特徴、変形、及び利点は、本発明を詳説するために提供されたものであって、本発明を制限するためのものではない、以下の説明、実施例、及び図面を参照することによって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例1による、熱不安定性ウレタン官能と熱不安定性ウレア官能(ブロックイソシアネート官能)を有する化合物の調製を図示したものである。
【
図2】
図2は、熱不安定性ウレタン官能と熱不安定性ウレア官能を有する化合物を用いた実施例1による、基材を表面官能化する反応を図示したものである。
【
図3】
図3は、1つのウレタン官能のみが熱不安定性であるトリウレタン化合物を用いた実施例2による、基材を表面官能化する反応を図示したものである。
【
図4】
図4は、2つの熱不安定性ウレア官能と1つの熱不安定性ウレタン官能を有する三官能化合物を用いた実施例3による、基材を表面官能化する反応を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中の以下の記載においては、「~の間」及び「~の範囲」及び「~までの」なる表現は同等であり、特記のない限り、終点が包含される旨を表すことを意図する。
特記のない限り、「~を含む」なる表現は、「少なくとも1つの~を含む」と解されるべきである。
【0022】
超臨界流体媒体
上述したように、本発明の方法は、超臨界状態の流体中で実施される。これは、本明細書の以下の記載中では、より簡単に「超臨界媒体」と呼称される。
この超臨界流体は、少なくとも1つの無水の非プロトン性化合物のガスから生成される。本発明の意味においては、流体は、その温度がその臨界温度を超えた場合、及びその臨界圧力を超えて圧縮された場合に、その超臨界状態で利用される。
本発明に適した超臨界流体は、任意の適切な流体、例えば、水は除外して、二酸化炭素、エタン、プロパン、ブタン、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物であってよい。
【0023】
本発明による官能化方法は、好ましくは、超臨界CO2中で実施される。
超臨界CO2を仕込んだ反応器は、特に、本発明による官能化方法の間、70バールから1000バールの間、とりわけ100バールから350バールの間の圧力条件下、また34℃から170℃の間、特に70℃から120℃の間の温度条件下に維持されてもよい。
温度及び圧力の条件は、特に、官能化しようとする基材の熱安定性に応じて、あるいはグラフト化しようとする分子のイソシアネート官能が放出される温度に応じて、調整される。
【0024】
不安定水素官能を持つ基材
上述の通り、本発明の方法は、表面に不安定水素官能を有する基材の官能化を可能にする。
不安定水素官能は、イソシアネート官能と相互作用して共有結合を形成することができる。
【0025】
本発明によって使用される基材は、様々な種類であってよく、但し、イソシアネート官能と反応する不安定水素官能を、任意に予備処理の最後に有するものであることを条件とする。
不安定水素官能は、特に、ヒドロキシル(-OH)、第一級アミン(-NH2)、第二級アミン(-NHR)、及びカルボン酸(-COOH)官能から選択されてもよい。
好ましくは、後述の実施例に示される通り、基材はヒドロキシル官能を担持しており、これは、イソシアネート官能と相互作用して共有結合ウレタン結合を形成することができる。
【0026】
基材は、有機及び/または無機のものであってよい。
これは、任意に1つ以上の無機フィラーを含む有機ポリマーマトリックス、及び無機基材から選択してもよい。
これは、その形状及び寸法も様々であってよく、例えば、平らな基材の形態、または微粒子形態、例えばミクロ粒子の形態であってよい。
ある特定の実施態様によれば、基材は、有機ポリマーマトリックスを含むか、さらには、有機ポリマーマトリックスから形成される。
【0027】
有機ポリマー基材は、特に、セルロース繊維(非晶質または結晶質セルロース)、例えば、綿及び紙、木材、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、部分的または完全に加水分解されたポリ酢酸ビニル(PVA)、好ましくは88%以上の加水分解度を有するもの、及びポリアミド、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6-6(PA66)、ポリアミド11(PA11)、及びポリアミド12(PA12)を含む群から選択することができる。
【0028】
別の変形実施態様によれば、基材は、無機ものであってよい。
これは、例えば、ガラス繊維、シリカ、チタン、ハイドロキシアパタイト、CaCO3、Al2O3、水酸化マグネシウム、タルク、三水酸化アルミニウム、フィロシリケートクレイ、スメクタイト、ラポナイト、クロイサイト、ヘクトライト、ハロイサイト、イモゴライト、アロフェン、ジブサイト、セピオライトなどからなる基材であってよい。
基材は、好ましくはシリカ基材である。
【0029】
無機基材の表面上の反応性ヒドロキシル基(シラノール単位Si-OH)は、基材に対する事前の表面脱水処理によって得てもよい。
この処理は、有利には、超臨界媒体中、例えば、超臨界CO2媒体中で実施してよい。超臨界CO2と接触した状態で脱水処理が実施される条件を調整することは、当業者の能力の範囲内である。
【0030】
脱水処理の温度は、好ましくは50℃から170℃の間、より好ましくは50℃から100℃の間であってよい。脱水処理時の圧力は、80バールから400バールの間、とりわけ200バールから300バールの間であってよい。
有利には、基材の表面脱水処理と、本明細書中の以下の記載において説明される、本発明の方法によって表面を官能化する工程(工程(ii)及び(iii))とは、単一の反応器内で、前記基材を反応器から取り出すことなく連続的に実施されてよい。
【0031】
また、基材はまた、複合物であってもよい。複合基材は、一般的に言えば、様々なサイズ及び形状の粒子の形態でフィラーが分散した、ポリマーマトリックスを含む。
基材は、例えば、上述の1つ以上の無機フィラーが分散し、有機ポリマーマトリックスを含んでもよい。
ポリマーマトリックスは、多様な性質のものであってよく、例えば、上述の通りであるか、そうでなければポリオレフィンマトリックスであってよく、例えば、ポリエチレン(PE)及び/またはポリプロピレン(PP)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、またはポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)製のものであってよい。フィラーは、例えば、クレイ、シリカ、またはガラスの繊維もしくはビーズ、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、オキシ水酸化アルミニウム(AlO(OH))、及びタルクであってよい。
【0032】
ブロックイソシアネート官能を担持する分子の共有結合グラフト化
本発明の方法の工程(ii)で使用される1つ以上のブロックイソシアネート官能を担持する分子は、本発明に従って官能化された基材に想定される用途に応じて、むろん様々な種類のものであってよい。
とりわけ、本明細書の以下の記載において詳説される通り、前記分子は、工程(iii)における前記分子のグラフト化を、活性化により、表面不安定水素官能と活性化イソシアネート官能との相互作用によって可能にすることを意図した少なくとも前記ブロックイソシアネート官能のみならず、Rfと表記され、目的の特性を有し、「目的の基」とも呼称される1つ以上の基も含んでよい。
【0033】
本発明の意味における「目的の基」とは、特定の特性を有し、基材の表面へのグラフト化が望まれる基を示す。こうした基は、所望の官能性に応じて、様々な種類のものであってよい。
【0034】
したがって、一変形実施態様によれば、本明細書の以下の記載において詳説される通り、分子は、工程(iii)における活性化により、表面不安定水素官能との相互作用によって前記分子のグラフト化を可能にすることを意図した前記ブロックイソシアネート官能のみならず、エチレン不飽和を含む、少なくとも1つのラジカル重合性基も含んでよい。エチレン性不飽和を含むこの種の基は、基材の表面への分子のグラフト化の後に、化学的にまたは照射により活性化されたラジカル重合に関与することができる
【0035】
別の変形実施態様によれば、分子は、工程(iii)における活性化により、表面不安定水素官能との相互作用によって前記分子のグラフト化を可能にすることを意図した前記ブロックイソシアネート官能のみならず、工程(iii)で用いる加熱条件下では反応性でない、1つ以上の別のブロックイソシアネート官能も含んでよい。
【0036】
本発明の方法の工程(iii)の終了時に、グラフト化された分子上に存在する前記ブロックイソシアネート官能は、目的の基Rfを担持していてよく、あるいは工程(iii)における分子のグラフト化に続いて活性化(放出)されて、目的の基に変換されてもよい。
【0037】
少なくとも1つのブロックイソシアネート官能を担持する分子は、使用される超臨界流体、特に超臨界CO2に可溶性であってよい。これは、特に、分子の疎水性を増大させる基、または水素結合をほとんど形成しない基を担持する分子の場合である。
【0038】
超臨界流体に「可溶性である」とは、実施の条件下で、超臨界流体100gあたりの化合物が少なくとも5gの割合で前記分子を溶解することが可能なことを意味する。当業者であれば、操作条件を調節して、所望の量の分子が導入されてグラフト化が実施できるようにすることができる。特に、反応器内の圧力を調節することによって、使用可能な分子の濃度を増大させることができる。
【0039】
あるいはまた、少なくとも1つのブロックイソシアネート官能を担持する分子は、超臨界流体100gあたりの化合物が5g未満である、超臨界流体中の溶解度を有してよい。この場合は、1つ以上の共溶媒、例えば、アセトン、エタノール、メタノール、またはTHFの添加によって、グラフト化される分子の溶解度を増大させることができる。
【0040】
「ブロックイソシアネート官能」とは、ブロック剤の存在によって不活化され、熱の影響により放出、すなわち活性化されるイソシアネート官能である。イソシアネート官能は、熱的に活性化された化学反応中に解放されることから、ブロックイソシアネート官能の活性化もしくは放出温度と呼称される所与の温度より低温では、イソシアネート官能は利用できない。
【0041】
本発明の方法に従って使用される分子が担持するブロックイソシアネート官能は、特に下式:
[化学式1]
-NH-C(=O)-B (I)
[式中、Bは、1つ以上の、好ましくは単一の、不安定水素原子を含む有機化合物から選択されるブロック剤BHから誘導される基を表す]
に相当してよい。
ブロック剤は、活性化温度より低温では、イソシアネート基と不安定水素原子との反応を妨げるが、前記活性化温度よりも高温では、イソシアネート官能の熱放出の後にこうした反応を許容する。
【0042】
ブロックイソシアネート官能の活性化温度は、当然ながら、特にブロック剤の化学的性質に依存する。
【0043】
好ましくは、前記ブロックイソシアネート官能の活性化温度は、75℃から170℃の間、好ましくは75℃から120℃の間である。特に、官能化しようとする基材の熱変性を防ぐためには、120℃以下、とりわけ100℃以下、または80℃以下である。
【0044】
工程(iii)での加熱の後に生成されるイソシアネート官能は、有利には、優れた反応性を示し、基材の表面上の不安定水素官能との迅速な反応を可能にする。
【0045】
ブロック剤は、様々な種類のものであってよい。当業者であれば、適切なブロック剤、特に、ブロックイソシアネート官能に所望される活性化温度に関して適切なものを使用することができる。
【0046】
ブロック剤は、例えば、以下:
・アルコール、特にモノアルコールであって、好ましくは1から10の炭素原子を含むもの、例えば、ブタノール、エタノール、またはイソプロパノール、
・フェノール、特にモノフェノールであって、特に6から50の炭素原子、好ましくは6から20の炭素原子を含むもの、例えば、オルトクレゾール、パラクレゾール、2,6-ジメチルフェノール、及び2-tert-ブチルフェノール、
・アミド、とりわけ環状アミドであって、特に3から50の炭素原子を含むもの、例えば、カプロラクタム、メチルアセトアミド、イミド、例えば、スクシンイミド及び特に1つまたは2つのC1-6アルキル基で置換されたスクシンイミド、
・オキシム、特にC2-5オキシム、例えば、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム(MEKO)、メチルイソプロピルケトンオキシム、2-ブタノンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、及びジイソプロピルケトンオキシム、
・β-ジカルボニル化合物、特にβ-ジエステル、β-ジケトン、及びβ-エステルケトン、例えば、ジ-C1-6アルキルマロネート、例えばジエチルマロネート、C1-6アルキルアセトアセテート、例えばエチルアセトアセテート、またはtert-ブチルアセトアセテート、あるいは2,4-ペンタンジオン、
・ピラゾール、とりわけ3-メチルピラゾール、及び3,5-ジメチルピラゾール
・ヒドロキシ桂皮酸とC1-6アルコールとのエステル、
・トリアゾール、例えばベンゾトリアゾール
・イミダゾリン、例えば、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、及び4-メチルイミダゾリン、
・テトラヒドロピリミジン、及び
・イミダゾール、例えば2-エチル-4-メチルイミダゾール
から選択してよい。
【0047】
ブロック反応剤の例は、例えば、Rolphらの出版物[1]に示されている。
ブロック剤は、好ましくは、アルコール、とりわけモノアルコール、オキシム、特にメチルエチルケトンオキシム(MEKO)、または2-ブタノンオキシム、及び環状アミド、とりわけカプロラクタムから選択される。
【0048】
したがって、ブロックイソシアネート官能は、特にウレタンまたはウレア官能であってよい。したがって、これは、上記の式(I)に相当してよく、式中、Bは、
-OR基(ここで、Rは、直鎖状または分枝状のC1からC6、特にC2からC4のアルキル基を表す)、または
-O-N=CR1R2基(ここで、R1及びR2は、互いに独立して、水素原子または直鎖状もしくは分枝状のC1からC6アルキル基、好ましくはC1からC4アルキル基を表す)、または
-NR’R”基(ここで、R’及びR”は、これらを担持する窒素原子と共に、ラクタム環基を形成する)
を表す。
【0049】
前記ラクタム基は、下式:
【化1】
[式中、nは、0、1、2、または3を表す]
の基を表す。
【0050】
特定の一実施態様によれば、本発明の方法の工程(ii)で使用される分子は、単一のブロックイソシアネート官能、例えばウレタン官能を担持する。これは、適切なブロック剤を、遊離のイソシアネート官能を含む化合物と反応させることによって得られる。こうした分子の例は、本明細書の以下の記載において示す。
【0051】
別の特定の実施態様によれば、本明細書の以下の記載において説明される通り、本発明の方法の工程(ii)で使用される分子は、少なくとも2つのブロックイソシアネート官能、とりわけ2つまたは3つのブロックイソシアネート官能を担持していてよい。この分子は、好ましくは、少なくとも2つのブロックイソシアネート官能、特にウレタンまたはウレアタイプの、相違するものであって、とりわけ異なる活性化温度を有するものである。
【0052】
少なくとも2つのブロックイソシアネート官能を担持する分子は、1つ以上の適切なブロック剤を、少なくとも2つのイソシアネート官能を含む化合物、とりわけ2つまたは3つのイソシアネート官能を含む化合物と反応させることによって得られる。
少なくとも2つの遊離イソシアネート官能を含む化合物は、既に文献、例えばDelebeckらの出版物[2]に記載されている。
【0053】
これらは、特に、低分子量のジイソシアネートまたはポリイソシアネート、あるいは、重付加、重縮合及び/またはグラフト化によって得られる任意の化学的種類の合成オリゴマーまたはポリマー、あるいは、任意に化学変性された天然由来のポリマーであって、鎖末端または側鎖基上に2つ以上のイソシアネート官能を有するものであってよい。
【0054】
少なくとも2つの遊離イソシアネート官能を担持する化合物は、好ましくはジイソシアネート及びトリイソシアネート化合物から選択される。
【0055】
ジイソシアネート及びトリイソシアネート化合物は、とりわけ以下:
・脂肪族、脂環族及び/または芳香族のジイソシアネートから選択してよい。例えば、挙げてよい脂肪族ジイソシアネート化合物には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(「水添MDI」H
12MDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H
6XDI)、及びm-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が含まれる。
挙げてよい芳香族ジイソシアネート化合物には、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)が含まれる。
・脂肪族、脂環族、及び/または芳香族のトリイソシアネート、例えば、
・トリオールと過剰のジイソシアネートとの反応によって得られるトリイソシアネート、特に下式:
【化2】
のもの、
・下式:
【化3】
のイソシアナトビウレット、
・下式:
【化4】
のイソシアヌレート。
上記式中、R’は、互いに独立して、2から30の炭素原子を含む直鎖状、分枝状、または環状の炭化水素基、とりわけ4から6の炭素原子を含むアルキレン基を表す。
【0056】
工程(ii)で使用される分子は、好ましくは、上述の脂肪族または芳香族ジイソシアネート、例えばHDI、及び上述の式(III)のイソシアナトビウレットから選択される化合物に基づいて得られる。
【0057】
一変形実施態様によれば、工程(ii)で使用される分子は、2つのブロックイソシアネート官能、とりわけ2つのウレタンタイプの官能を担持する。これは、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から得られる。
別の変形実施態様によれば、工程(ii)で使用される分子は、3つのブロックイソシアネート官能、とりわけは3つのウレタン官能を担持する。これは、好ましくは、上述のイソシアナトビウレット、例えば1,3,5-トリス(6-イソシアナトヘキシル)ビウレットから得られる。
【0058】
少なくとも1つのブロックイソシアネート官能、好ましくは2つまたは3つのブロックイソシアネート官能、特にウレタン官能を担持する分子は、商業的に入手してよい。
あるいは、本発明の方法の実施前に、少なくとも1つのイソシアネート官能、とりわけ2つまたは3つのイソシアネート官能を含む化合物を、1つ以上の適切なブロック剤と反応させることによって得てもよい。
【0059】
超臨界流体媒体中、好ましくは超臨界CO2媒体中で実施される本発明の方法は、とりわけ以下の工程:
・基材を反応器(オートクレーブ)中に入れて官能化する工程、
・反応器に超臨界流体を充填する工程
を含んでいてよい。
例えば、反応器に液体二酸化炭素を仕込み、その後、反応の温度を32℃及び圧力を70バールとして超臨界状態の二酸化炭素を発生させてよい。
【0060】
あるいはまた、工業用反応器の場合、超臨界状態のCO2を反応器に直接導入してもよい。
・少なくとも1つのブロックイソシアネート官能を担持する有機分子を、好ましくは、超臨界流体中、特に超臨界CO2中で、前記ブロックイソシアネート官能の活性化温度よりも確実に低い温度で導入する工程、
・反応器の温度を上昇させて、前記ブロックイソシアネート官能の活性化(または放出)温度以上の値を得る工程、
反応器は、これらの工程の間、反応器は、使用する流体の超臨界範囲内、特に二酸化炭素の超臨界範囲内の圧力及び温度条件下に維持される。
【0061】
本発明により使用される分子の量を、特に官能化しようとする基材の表面及び所望のグラフト化の程度に応じて調整することは、むろん当業者の能力の範囲内である。
基材の表面への前記分子のグラフト化の程度は、特に、別の分子のグラフト化を妨げるグラフト化された分子に関連する立体容積に依存する。
典型的には、基材の表面に存在する不安定水素官能、例えばヒドロキシル官能の5%から50%、とりわけ5%から25%、とりわけ6%から20%が、前記分子によってグラフト化され得る。
【0062】
当業者は、分子によって担持される少なくとも1つのブロックイソシアネート官能の活性化を可能にするために十分な温度での加熱を採用する能力を有する。加熱は、工程(iii)において、前記ブロックイソシアネート官能の活性化温度以上の温度で適宜実施される。
工程(iii)における加熱は、75℃から120℃、とりわけ80℃から100℃の温度で行ってよい。
本発明の方法により採用される温度が、基材に劣化を引き起こすものであってはならないことが理解されるであろう。
【0063】
所与のブロックイソシアネート官能の活性化温度を、適切な触媒を添加することによって有利に低下させることができる。
したがって、一変形実施態様によれば、本発明の方法は、少なくとも1つのブロックイソシアネート官能を担持する少なくとも前記分子の添加に加えて、1つ以上の触媒の添加をさらに含んでよい。
これらの触媒は、特に第二級アミン及びヒドロキシルタイプの官能の反応性を活性化することができる。
【0064】
こうした触媒は、特に、第三級アミン、例えば1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU,CAS:6674-22-2)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN,CAS:3001-72-7)、3,3,6,9,9-ペンタメチル-2,10-ジアザビシクロ[4.4.0]デク-1-エン、塩化スズ、有機金属化合物、例えば金属アセトニルアセテート、スズの有機金属化合物、ヘキサン酸カルシウム、2-エチルヘキサン酸カルシウム、オクタン酸カルシウム、及びリノール酸カルシウム、ジブチルスズジラウレート(DBTDL,CAS:75-58-7)、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)、及び、亜鉛ビス(2-エチルヘキサノエート)、スルホンイミド、例えばビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(TFMI,CAS: 82113-65-3)、スルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸(トリフリン酸)、p-トルエンスルホン酸(PTSA,CAS:104-15-4)、及びメタンスルホン酸(MSA、CAS:75-75-2)、ホスフェート誘導体、例えばジフェニルホスフェート(DPP,CAS:838-85-7)から選択してよい。
【0065】
触媒は、好ましくは、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ビス(トリフルオロメタン)、トリフリン酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、メタンスルホン酸(MSA)、及びリン酸ジフェニル(DPP)から選択される。
前記触媒は、少なくとも1つのブロックイソシアネート官能を担持する前記分子の質量に対して、0.1から5質量%、好ましくは0.5から1質量%で使用してよい。
【0066】
超臨界流体は、有利には、副生成物及び未反応生成物の容易な除去を可能にする。触媒は、実質的な量で、有利には、少なくとも1つのブロックイソシアネート官能を担持する前記分子の質量に対して、0.5質量%以上の量で添加することができる。
【0067】
工程(iii)において前記イソシアネート官能の活性化で放出されたブロック剤BHは、反応器から除去してよい。これは、例えば、本発明による方法で使用されるブロックイソシアネート官能を含む分子の調製のためのブロック剤として使用するために、有利にリサイクルすることができる。
【0068】
本発明の方法の工程(iii)の終了時、基材には、その表面に前記分子が提供され、特に基材の不安定水素官能がヒドロキシル官能である場合には、ウレタンタイプ(-NH-C(O)O-)の共有結合を介して、基材の表面に共有結合グラフト化される。
【0069】
かくして表面官能化された基材は、工程(iii)の終了時に、適宜、超臨界流体中、とりわけ超臨界CO2中での1つ以上の洗浄工程、これに続く反応器のレットダウン後に、回収してよい。
【0070】
洗浄は、例えば、反応器内に超臨界流体を循環させることによって実施してよい。
反応器のレットダウン工程は、より具体的には、圧力を大気圧まで低下させること及び二酸化炭素を、好ましくはガス形態で排出することからなる。この工程は、有利には、超臨界CO2相からCO2ガスへの状態変化を、CO2の液相を回避して確実にする温度で実施される。したがって、この工程は、有利には、45から85℃の温度で実施される。
【0071】
あるいはまた、本明細書中の以下の記載に詳説される通り、本発明の方法は、1つ以上の後続の工程を、基材の表面に前記分子をグラフト化した後に含んでいてよく、これらの工程は、グラフト化された分子上に任意に存在する別のブロックイソシアネート官能の変性を企図する。
【0072】
官能化のバリエーション
上述の通り、本発明の方法の工程(ii)で使用される分子は、1つ以上のブロックイソシアネート官能を担持するのみならず、少なくとも1つの目的の基をも担持してよく、これは基材の表面に前記分子がグラフト化された後に利用される。
【0073】
一変形実施態様によれば、前記分子は、1つ以上のブロックイソシアネート官能、好ましくは単一のブロックイソシアネート官能、及びエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのラジカル重合性基、好ましくはエチレン性不飽和を含む単一のラジカル重合性基を担持していてよい。
【0074】
「エチレン性不飽和を含む基」なる語は、少なくとも1つの重合性エチレン性不飽和官能を含む基を意味する。
エチレン性不飽和を含む基は、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、アリル基、及びビニル基から、好ましくは(メタ)アクリレート基から選択することができる。
【0075】
ブロックイソシアネート官能及びエチレン性不飽和を含む基を担持するこの種の分子は、イソシアネート官能とエチレン性不飽和、好ましくは(メタ)アクリレート官能とを担持する化合物を、例えばオキシムタイプの適切なブロック剤と反応させることによって得られる。挙げることのできる例には、オキシム、例えば2ブタノンオキシムと、2-イソシアナトエチルメタクリレートまたは3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートとの反応から得られるウレタンが含まれる。
【0076】
したがって、工程(iii)における前記分子のグラフト化の終了時には、基材の官能化された表面は、基材の表面に共有結合グラフト化され、ラジカル重合に利用可能な、エチレン性不飽和を含む基を有する。
したがって、この変形実施態様の意味においては、この方法は、前記分子の基材の表面へのグラフト化に次いで、ラジカル重合工程を含んでよく、この工程は、ラジカル重合性モノマー、とりわけエチレン性不飽和を含むモノマー、例えばジ(メタ)アクリレートモノマーに基づいて、化学的にまたは照射によって活性化される。
【0077】
ラジカル重合は、有利には、超臨界CO2媒体中で、とりわけ基材の官能化に使用された反応器内で、官能化された基材を反応器から除去することなく実施してよい。
ラジカル重合は、アゾ系またはペルオキソ系のフリーラジカル開始剤、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などの存在下で活性化してよい。
【0078】
別の変形実施態様によれば、本発明によって使用される分子は、少なくとも2つのブロックイソシアネート官能、好ましくは2つまたは3つのブロックイソシアネート官能を担持していてよく、前記分子は特に上述のジイソシアネートまたはトリイソシアネート化合物から誘導される。
【0079】
前記分子は、有利には、少なくとも2つの異なるブロックイソシアネート官能、好ましくはウレタン及び/またはウレアタイプのものを担持していてよい。本発明に従って使用される分子は、とりわけ、例えば工程(iii)における加熱によって活性化可能な、ウレタンまたはウレアタイプの第1のブロックイソシアネート官能のみならず、例えば前記第1のブロックイソシアネート官能とは別個の、工程(iii)において採用される加熱条件下では活性化されない、ウレタンまたはウレアタイプの1つ以上のブロックイソシアネート官能をも担持していてよい。
【0080】
換言すれば、本発明の方法の工程(ii)で使用される分子は、以下:
・第1のブロックイソシアネート官能、好ましくはウレアまたはウレタン官能であって、F1と表記され、所与の活性化温度T1を有するもの、及び
・少なくとも1つ、とりわけ1つまたは2つのブロックイソシアネート官能であり、前記第1のブロックイソシアネート官能とは異なり、好ましくはウレタンまたはウレアタイプであって、F2と表記され、前記官能F1を放出するために工程(iii)で採用される加熱条件下では活性化されず、とりわけ温度T1では活性化不可能であるもの、
を担持していてよい。
【0081】
前記ブロックイソシアネート官能F2は、熱不安定性であってもなくてもよい。前記ブロックイソシアネート官能F2が熱不安定性である場合、活性化温度T2以上の温度で加熱することによって活性化することができ、T2はT1よりも確実に高温である。
【0082】
ブロックイソシアネート官能の反応性、換言すれば言い換えれば活性化温度の相違は、様々n’種類のブロック剤の使用によって制御することができる。
したがって、少なくとも2つの異なるブロックイソシアネート官能F1及びF2を含む分子は、少なくとも2つのイソシアネート官能、好ましくは2つまたは3つのイソシアネート官能を含む化合物、とりわけ上述のジイソシアネートまたはトリイソシアネート化合物を、以上に定義される少なくとも2つの異なるブロック剤BHと反応させることによって得ることができる。
【0083】
工程(iii)における加熱は、有利には、前記ブロックイソシアネート官能F1の放出と、前記イソシアネート官能基と基材の表面上の不安定性水素官能との反応による前記分子の共有結合グラフト化とを引き起こすために、官能F2が熱不安定性である場合にはT2より確実に低温の、T1以上の温度で実施される。
【0084】
有利には、工程(iii)終了時の基材は、かくして、ウレタンタイプの1つ以上のブロックイソシアネート官能によって表面官能化されていてよく、これは例えばウレタンタイプの共有結合によって基材に共有結合しており、前記結合は、ブロックイソシアネート官能F1から得られるイソシアネート官能の、基材によって担持される不安定水素官能との反応終了時に、前記ブロックイソシアネート官能F2の放出なく形成される。
【0085】
工程(iii)の最後に得られた基材の表面上に存在するブロックイソシアネート官能は、目的の基を含んでいるか、あるいは、その後活性化され、不安定水素官能を担持する化合物との相互作用によって目的の基に変換されて、基材の表面に所望の官能化を得てもよい。有利には、基材の表面での工程(iii)における分子のグラフト化の終了時に活性化されていない、少なくとも2つの、好ましくはウレタンまたはウレアタイプのブロックイソシアネート官能F2を含む前記分子の使用により、基材の表面のグラフト化の程度(被覆の程度)を、換言すれば基材の表面上で利用可能な部位ごとの目的の基でのグラフト化の量を、増加させることが可能になる。
【0086】
第一変形実施態様によれば、実施例2に図示される通り、工程(iii)で採用された加熱条件下で活性化されない、例えばウレタンまたはウレアタイプの前記ブロックイソシアネート官能F2は、少なくとも1つの目的の基Rfを含む。ブロックイソシアネート官能は、例えば、式-NH-C(=O)-Bのものであってよく、ここで、Bは以上に定義される通りであり、Bは、少なくとも1つの目的の基Rfを担持する。
【0087】
この変形実施態様の意味においては、前記ブロックイソシアネート官能F2は、好ましくは非熱不安定性官能であり、換言すれば、官能化しようとする基材の熱安定性の範囲内での加熱によってはイソシアネート官能を生成することができない。
前記ブロックイソシアネート官能F2が熱不安定性である場合、これはT1よりも確実に高温である活性化温度T2を有する。
【0088】
好ましくは、前記ブロックイソシアネート官能F1及びF2のそれぞれの活性化温度の差T2-T1は、少なくとも20℃であり、好ましくは30℃から60℃である。この種の差異は、工程(iii)における分子のグラフト化の間に、前記ブロックイソシアネート官能F2が活性化される危険性を回避する。
したがって、工程(iii)の終了時には、基材の表面は、有利には、分子を介して基材の表面に共有結合グラフト化された目的の基を有する。
【0089】
目的の基Rfによって表面が官能化された基材は、工程(iii)に続く工程(iv)において、上述の通り、適宜超臨界流体中での1以上の洗浄工程の後に、回収することができる。
【0090】
一変形実施態様によれば、本発明の方法の工程(ii)で使用される前記分子は、T1と表示され、活性化温度と呼称される所与の温度以上で加熱することによって活性化可能な、好ましくはウレタン官能であり、F1と表記される、第1ブロックイソシアネート官能のみならず、T1より確実に高温である活性化温度T2以上の温度で加熱することによって活性化可能な、好ましくはウレタンタイプであり、F2と表記される、少なくとも1つ、とりわけ1つまたは2つのブロックイソシアネート官能をも担持する。上述の通り、前記ブロックイソシアネート官能F1及びF2のそれぞれの活性化温度の差T2-T1は、好ましくは少なくとも30℃、好ましくは40℃から60℃である。特にウレタンタイプである、ブロックイソシアネート官能F2は、目的の所望の基によるグラフト化を得るために、その後活性化されてもよい。
【0091】
この変形の文脈では、本発明の方法は、少なくとも以下:
(i)表面に不安定水素官能を有する基材を提供する工程、
(ii)前記基材を、超臨界流体中、特に超臨界CO2中で、T1以上の温度で加熱することによって活性化可能なブロックイソシアネート官能F1と、T1より確実に高温であるT2以上の温度T2に加熱することによって活性化可能な少なくとも1つのイソシアネート官能F2とを担持する、少なくとも1つの有機分子と接触させる工程、
(iii)全体を、T1以上であって、確実にT2よりも低い温度にさらして、前記ブロックイソシアネート官能F1の放出と、前記イソシアネート官能と基材の表面上の不安定水素官能との反応による、前記分子の共有結合グラフト化とを引き起こす工程、
(iv’)工程(iii)の終了時に得られた基材を、T2以上の温度にさらして、前記ブロックイソシアネート官能F2の放出を引き起こす工程、
(v’)工程(iv’)の終了時に得られた前記基材を、超臨界状態の前記流体中、とりわけ超臨界CO2中で、少なくとも1つの不安定水素官能を担持する少なくとも1つの化合物と、前記化合物に担持される不安定水素官能と基材の表面上のイソシアネート官能との相互作用を助長する条件下で接触させる工程;及び
(vi’)前記基材を回収する工程
を含んでいてよい。
【0092】
本方法の工程(i)から(v’)の全体を、有利には、超臨界流体中、とりわけ超臨界CO2中において、同一反応器内で実施してよい。
この種の変形は、例えば、以下の実施例1及び3に示される。
【0093】
少なくとも1つの不安定水素官能を担持する化合物は、遊離の表面イソシアネート官能と相互作用できる不安定水素官能を有することを条件に、様々な種類のものであってよい。これは、例えば、第一級及び第二級アミン、アルコール、シラノール(脂肪族、芳香族の、フッ素化、ペルフルオロ化されたもの)、カルボン酸、及びこれらの官能を担持する小オリゴマー、ならびに水の分子から選択してよい。
少なくとも1つの不安定水素官能を担持する化合物は、とりわけ水であり、イソシアネート官能と相互作用して、基材の表面に共有結合グラフト化したアミン官能を形成することができる。
【0094】
ある特定の実施態様によれば、少なくとも1つの不安定水素官能を担持する化合物は、少なくとも1つの目的の基Rfをさらに担持していてよい。かくして、前記化合物と、工程(iv’)の終了時に基材の表面上にグラフト化された前記遊離イソシアネート官能との、工程(v’)における反応により、有利に、基材の表面に目的の基Rfの共有結合グラフト化がもたらされる。
【0095】
活性化されたイソシアネート官能F2は、あるいは、目的の基に変換してもよい。例えば、活性化イソシアネート官能と水の分子との反応により、前記グラフト化分子を介して基材の表面に共有結合グラフト化されたアミン官能の形成がもたらされる。
アミン官能によって表面官能化されたこの種の基材には、例えば、アルデヒドタイプ、例えばホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの揮発性有機化合物(VOC)の捕捉のための、有利な用途が見いだされる。
【0096】
当業者は、工程(v’)における、基材の表面上の遊離イソシアネート官能と不安定水素官能との反応を実施するための操作条件を調整する能力を有する。とりわけ、前記反応は、ヒドロキシル官能とイソシアネート官能との反応のための1つ以上の触媒、例えばDABCOの存在下において実施してよい。
この反応は、当然ながら本発明の詳説を企図したものであって、本発明を限定するものではない、以下の実施例によって、ここに詳説される。
【実施例】
【0097】
実施例1
異なる活性化温度を有する2つの官能を担持する脂肪族ジイソシアネート化合物による官能化
2つのブロックイソシアネート官能を担持する化合物の調製
2つのブロックイソシアネート官能を担持する化合物は、2つの遊離イソシアネート官能を担持するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を、2つの異なるブロック剤、2-ブタノンオキシム(R
1OHと表示)及びカプロラクタム(R’R”N-Hと表示)と反応させることによって得られる。
イソシアネート官能とブロック剤との反応は、触媒、例えばDABCOの存在下で実施される。
HDIの2つのイソシアネート官能をブロックするための反応は、
図1に図示される。
ブロックイソシアネート官能-NH-C(=O)NR’R”及びNH-C(=O)O-R
1は、それぞれ90℃(T1)及び120℃(T2)の活性化(放出)温度を有する。
【0098】
表面官能化
基材を官能化するために採用した様々な工程を
図2に図示する。
工程1
その表面に不安定水素官能を有する基材(例えば、セルロース繊維及び/またはガラス繊維を含むもの)を、超臨界状態のCO
2を扱うために適した、容積1リットルの反応器に導入する。
反応器を密閉し、液体CO
2を充填し、その後80℃で加熱してCO
2の超臨界領域(80℃;300バール)に入るようにする。
反応器は、あるいはまた、超臨界状態のCO
2を直接仕込んだ工業用反応器であってもよい。
【0099】
上述の通り調製した、HDIから誘導され、2つのブロックイソシアネート官能を担持する化合物を、反応器に導入する。
温度を100℃に上昇させることにより、ブロックイソシアネート官能-NH-C(=O)NR’R”の活性化と、得られたイソシアネート官能と表面ヒドロキシル官能との相互作用が可能になる。
【0100】
工業用反応器では、未反応分子及び反応の副生成物(カプロラクタム)を超臨界CO2中で輸送し、任意に、例えば分離器において回収し、リサイクルして、例えば、ブロックイソシアネート官能を有する化合物を調製するためのブロック剤として使用してよい。
この処理の終了時には、基材は、その表面上にブロックイソシアネート官能-NH-C(=O)O-R1を有し、これらの官能は活性化されておらず、基材の表面に、表面ヒドロキシルとNH-C(=O)NR’R”官能の放出から得られた活性化イソシアネート官能との反応によって形成されたウレタン官能を介して共有結合グラフト化されている。
【0101】
工程2
次に、反応器の温度を120℃にして、ブロックイソシアネート官能-NH-C(=O)O-R1を活性化させる。
【0102】
工程3
活性化イソシアネート官能は、
図2に表示される通り、R
3-OH、R
3-NH
2、及びR
3-COOHの混合物と触媒(DABCO)とを、超臨界CO
2中で反応器に導入することによって、R
3基のグラフト化のために使用可能であり、ここでR
3は目的の基(例えば、高付加価値分子)を表す。
【0103】
実施例2
単一の不安定ウレタン官能を担持する脂肪族トリウレタン化合物による官能化
単一の不安定ウレタン官能を担持するトリウレタン化合物の調製
3つのブロックイソシアネート官能(ウレタン官能)を担持する化合物は、
図3に図示される通り、1,3,5-トリス-(6-イソシアナトヘキシル)ビウレット、R
f-OH(R
fは目的の官能基)とMEKO(メチルエチルケトンオキシム、C
2H
5C(NOH)CH
3)とを、2つの非不安定ウレタン官能-NHC(O)OR
fと1つの不安定ウレタン官能-NHC(O)O-N=C(CH
3)CH
2CH
3を担持する化合物が得られるように調整した割合で反応させることによって得られる。
【0104】
基材の表面官能化
トリウレタン化合物による基材の官能化は、実施例1と同様の条件下で、超臨界状態のCO
2を充填した反応器において実施する。
単一の不安定ウレタン官能を担持する化合物を、反応器に導入する。温度を100℃のT1値に上昇させ、ブロックイソシアネート官能-NHC(O)O-N=C(CH
3)CH
2CH
3の活性化と、かくして遊離したイソシアネート官能と表面ヒドロキシル官能との相互作用を可能にし、
図3に図示される通り、共有結合ウレタン結合を形成させる。
【0105】
グラフト化の終了時には、前記トリウレタン化合物と反応した基材の表面上の各部位(不安定な水素)は、目的の2つの官能基Rfを担持する。
少なくとも3つ、あるいはそれ以上のブロックイソシアネート官能を担持し、そのうち一つのみがグラフト化条件の下で不安定である化合物の使用により、基材の表面上の目的の基でのグラフト化の程度を有利に増大させることができる。
【0106】
実施例3
三官能脂肪族化合物の官能化
異なる不安定ウレア及びウレタン官能を担持する三官能化合物の調製
3つのブロックイソシアネート官能(ウレア及びウレタン官能)を担持する化合物が、
図4に図示される通り、1,3,5-トリス-(6-イソシアナトヘキシル)ビウレット、MEKO(メチルエチルケトンオキシム、C
2H
5C(NOH)CH
3)、及びカプロラクタム(C
6H
11NO)を、-NHC(O)O-N=C(CH
3)CH
2CH
3タイプのブロックイソシアネート官能1つと-NHC(O)-NC
6H
10タイプのブロックイソシアネート官能2つを担持する三官能化合物が得られるように調整した割合で反応させることによって得られる。
【0107】
基材の表面官能化
工程1
三官能化合物による基材の官能化は、実施例1と同様の条件下で、超臨界状態のCO
2を充填した反応器において実施する。
三官能化合物を、反応器に導入する。
温度を100℃(T1)に上昇させて、ブロックイソシアネート官能-NHC(O)O-N=C(CH
3)CH
2CH
3の活性化と、かくして解放されたイソシアネート官能と表面ヒドロキシル官能との相互作用を可能にし、
図4に図示される通り、共有結合ウレタン結合を形成させる。別のブロックイソシアネート官能(ウレア官能-NHC(O)-NC
6H
10)は、100℃の温度では活性ではない。
【0108】
工程2
次に、反応器の温度を120℃(T2)にして、残りのイソシアネート官能の活性化を可能にする(カプロラクタムでブロックされた官能の解放)。
これらの官能は、少なくとも1つの不安定水素官能を担持する別の分子との反応に、適宜使用してよい。
【0109】
参考文献リスト
[1] Delebeck et al., Chemical Reviews, 2013, 113, pp. 80-118.
[2] Rolph et al., Polymer Chemistry, 2016, 7, pp. 7351-7364.