IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モントレー ブレゲ・エス アーの特許一覧

特許7386907計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント
<>
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図1
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図2
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図3
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図4
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図5
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図6
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図7
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図8
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図9
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図10
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図11
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図12
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図13
  • 特許-計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント及びかかるエスケープメントを備える計時器用ムーブメント
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/08 20060101AFI20231117BHJP
   G04B 15/14 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G04B15/08
G04B15/14 A
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016847
(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公開番号】P2023001000
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】21180088.3
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・マセ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ツァウク
(72)【発明者】
【氏名】カンタン・テリヤ-ボンジュール
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151250(JP,A)
【文献】特開2012-168172(JP,A)
【文献】特開2008-268209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の動作サイクルを経る計時器用ムーブメントのための自然エスケープメント(1)であって、
前記動作サイクルのそれぞれは、バランス車(22)を含むバランス(20)の第1及び第2の交番運動によって構成され、
前記バランス車(22)の軸(24)上にてバランスプレート(26)が調整され、
この自然エスケープ(1)は、第2の車(2)によって駆動されるように構成している第1のエスケープ車(10)を備え、
次に、この第1のエスケープ車(10)は、第2のエスケープ車(16)を駆動し、
前記バランスプレート(26)は、バランスピン(28)を担持し、このバランスピン(28)によって前記第1及び第2の交番運動のそれぞれにおいて前記バランスプレート(26)がアンカー(34)を回転させ、
前記アンカー(34)の第1のアーム(46a)に少なくとも1つのピボットジョイント(53)を介して第1のレバー(48a)が接続され、
前記第1のレバー(48a)は、回転軸(50)のまわりを回転し、
前記アンカー(34)には、第2のレバー(48b)が先にある第2のアーム(46b)があり、
前記第1及び第2のレバー(48a、48b)はそれぞれ、動作サイクルの前記第2及び第1の交番運動の間に一時的に前記第1及び第2のエスケープ車(10、16)をそれぞれロックするように構成しており、
前記第1及び第2のレバー(48a、48b)の回転変位は制限される
ことを特徴とする自然エスケープメント(1)。
【請求項2】
前記第1及び第2のレバー(48a、48b)はそれぞれ、対応する回転軸(50、52)のまわりを回転し、前記アンカー(34)の前記第1及び第2のアーム(46a、46b)に少なくとも1つのピボットジョイント(53)を介して接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのピボットジョイント(53)は、オブロング状の開口(58、60)内に入り込む突起(54、56)によって形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのピボットジョイント(53)は、フォーク(72)内にて係合する膨らみ(73)によって形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのピボットジョイント(53)は、フレキシブルブレード(74)によって形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのピボットジョイント(53)は、それぞれがラック(75)を構成している2つのギヤ列部分によって形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項7】
前記第1及び第2のレバー(48a、48b)の回転変位は、第1及び第2の制限用当接体(62、64)によって制限される
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項8】
前記第1及び第2の制限用当接体(62、64)は、ペグである
ことを特徴とする請求項7に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項9】
前記第1及び第2の制限用当接体(62、64)は、前記計時器用ムーブメントの固定要素を機械加工して作られる
ことを特徴とする請求項7に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項10】
前記第1及び第2の制限用当接体(62、64)は、偏心器である
ことを特徴とする請求項7に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項11】
前記第1のレバー(48a)は、一体的な部品として作られ、前記第2の交番運動の間に前記第1のエスケープ車(10)を一時的にロックする第1の停止パレットの機能を行う形状を有し、
前記第2のレバー(48b)は、一体的な部品として作られ、前記第1の交番運動の間に前記第2のエスケープ車(16)を一時的にロックする第2の停止パレットの機能を行う形状を有する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項12】
前記第1のレバー(48a)には、前記第2の交番運動の間に前記第1のエスケープ車(10)を一時的にロックするように取り付けられた第1の停止パレット(80)があり、
前記第2のレバー(48b)には、前記第1の交番運動の間に前記第2のエスケープ車(16)を一時的にロックするように取り付けられた第2の停止パレット(78)がある
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項13】
前記バランスプレート(26)は、第1及び第2のインパルスパレット(30、32)を担持し、
前記バランスプレート(26)は、前記第1及び第2のインパルスパレット(30、32)を通してそれぞれ前記第1のエスケープ車(10)及び前記第2のエスケープ車(16)から直接的なタンジェンシャルな駆動インパルスを受ける
ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項14】
前記第1のエスケープ車(10)には、第1の駆動歯列(12)があり、
前記第1のエスケープ車(10)は、この第1の駆動歯列(12)を通して前記第2のエスケープ車(16)の第2の駆動歯列(14)と噛み合い、
前記第1及び第2のエスケープ車(10、16)にはそれぞれ、インパルス及びレスト用歯列(68、70)があり、
前記第1及び第2のエスケープ車(10、16)は、前記インパルス及びレスト用歯列(68、70)によって、前記バランスプレート(26)に直接的なタンジェンシャルな駆動インパルスを与え、
前記第1及び第2のエスケープ車(10、16)それぞれの前記駆動歯列(12、14)及び前記インパルス及びレスト用歯列(68、70)は、単一平面内又は2つの平行な平面内に延在している
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項15】
前記第1及び第2のエスケープ車(10、16)はそれぞれ、一体的な部品として作られる
ことを特徴とする請求項14に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項16】
前記第1及び第2のエスケープ車(10、16)の前記インパルス及びレスト用歯列(68、70)の歯数は3~14の範囲内である
ことを特徴とする請求項14又は15のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項17】
前記第1及び第2のエスケープ車(10、16)の前記インパルス及びレスト用歯列(68、70)の歯数は10である
ことを特徴とする請求項16に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項18】
前記第1のエスケープ車(10)の前記インパルス及びレスト用歯列(68)の歯数は、前記第2のエスケープ車(16)の前記インパルス及びレスト用歯列(70)の歯数とは異なる
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項19】
前記第1のエスケープ車(10)の前記インパルス及びレスト用歯列(68)の歯数は3であり、
前記第2のエスケープ車(16)の前記インパルス及びレスト用歯列(70)の歯数は10である
ことを特徴とする請求項18に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項20】
前記第1のエスケープ車(10)の前記インパルス及びレスト用歯列(68)の歯数は10であり、
前記第2のエスケープ車(16)の前記インパルス及びレスト用歯列(70)の歯数は3である
ことを特徴とする請求項18に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項21】
前記第1及び第2のレバー(48a、48b)の自由端には、くぼみ(82)があり、前記第1のエスケープ車(10)及び前記第2のエスケープ車(16)の前記インパルス及びレスト用歯列(68、70)の歯を前記くぼみ(82)にてそれぞれ押すことによって、前記くぼみ(82)は前記第1及び第2のレバー(48a、48b)の回転変位を制限することを可能にする
ことを特徴とする請求項14~20のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項22】
前記アンカー(34)には、第1及び第2のホーン(42a、42b)によって形成されるフォーク(40)があり、
前記バランスプレート(26)は、前記バランスプレート(26)のバランスピン(28)によって、前記第1の交番運動の間に、前記フォーク(40)の前記第2のホーン(42b)に当接して、前記アンカー(34)を第1の方向に回転させ、前記第2の交番運動の間に、前記フォーク(40)の前記第1のホーン(42a)に当接して、前記アンカー(34)を前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転させる
ことを特徴とする請求項1~21のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項23】
前記フォーク(40)は、ダート(44)を担持し、このダート(44)は、付加的アークと呼ばれる段階の間に、前記バランスプレート(26)と連係して、前記フォーク(40)が偶発的に変位することを防ぐ
ことを特徴とする請求項22に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項24】
前記第2の車(2)と前記第1のエスケープ車(10)の間に配置されるように構成している減速用可動機構を備える
ことを特徴とする請求項1~23のいずれか一項に記載の自然エスケープメント(1)。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の自然エスケープ(1)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンジェンシャルインパルスエスケープメントという名称でも知られる計時器用ムーブメントのための自然エスケープメントに関する。本発明は、さらに、このようなエスケープメントを備える計時器用ムーブメントに関する。
【背景技術】
【0002】
自然エスケープの原理は、19世紀初頭にアブラハム・ルイ・ブレゲによって考えられた。ブレゲ式自然エスケープには、特に、エスケープの振動のごく一部にわたってのエスケープの動作にしかバランスが影響を受けないという点でフリー(自由)なエスケープであるという利点がある。また、ブレゲ式自然エスケープには、直接的でありバランスに対してタンジェンシャル(接線方向)であるインパルスを各交番運動に与えるという利点もある。すなわち、アンカーを経由せずにエスケープ車からバランスへとエネルギーが直接伝達される。また、エネルギーがタンジェンシャルにのみ伝達され、このために、このエスケープの動作によって発生する摩擦が抑えられる。自然エスケープのバランスには、デテントエスケープのバランスとは異なり、クーペルデュ(coup perdu)がない。自然エスケープのバランスは、各交番運動ごとに、対称的でより均一な形態で、同様のインパルスを受け、そのために、クーペルデュ当たりの機械的エネルギーの損失が抑えられる。これらすべての特質によって、自然エスケープは潜在的に最も効率的なエスケープの1つである。
【0003】
しかし、その後に、ブレゲは、自身が想像した自然エスケープにはいくつかの特定の課題があることを認識した。その最も重要なものは、第1の車がインパルスを与えるとき又は第1の車がレスト(rest)状態であるときに、最後のエスケープ車がギヤ列のテンションの影響下にないことに起因して発生するものである。したがって、ブレゲ式自然エスケープにおけるギヤ列の様々な遊び及び構成における様々なコンポーネントの製造品質に起因して、最後のエスケープ車の位置が正しくなくなり、その結果、寄生ノイズを伴うエスケープの誤動作が発生してしまうことがある。また、エスケープ車がフリーであるため、その位置は不安定となり、このような自然エスケープの動作上の安全性は低い。
【0004】
当然、上記の課題を解決するために、元々のブレゲ式自然エスケープに多くの改良が加えられた。しかし、歴代の腕時計製造者の努力にもかかわらず、依然として困難な点が残っている。このような状況で、一部の腕時計技術者は、2つのエスケープ車を重ね合わせることを提案した。この手法は、当然、ムーブメントの厚みを大きくし、ムーブメントを腕時計ケースに組み込むことを難しくしてしまう。そして、別の腕時計製造者は、2つのエスケープ車の平面内にて2つのエスケープ車の間にアンカーを配置することを提案した。このような手法もかさばる。今回はムーブメントの面内にてである。また、エスケープ車が重なり合っている場合でも、アンカーが2つのエスケープの間に配置されている場合でも、腕時計技術者にとってエスケープの様々なコンポーネントにアクセスすることが難しいことが実際に認識されている。これは、特に、アンカーの出口パレットと入口パレットによって第1及び第2のエスケープ車の歯の入り込みの深さを調整するときに顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に、動作を正確に調整することができるような、計時器用ムーブメントのための自然エスケープを提供することによって、上記の問題及び他の問題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、一連の動作サイクルを経る計時器用ムーブメントのための自然エスケープに関し、前記動作サイクルのそれぞれは、バランス車を含むバランスの第1及び第2の交番運動によって構成され、前記バランス車の軸上にてバランスプレートが調整され、この自然エスケープは、第2の車によって駆動されるように構成している第1のエスケープ車を備え、次に、この第1のエスケープ車は、第2のエスケープ車を駆動し、前記バランスプレートは、バランスピンを担持し、このバランスピンによって前記第1及び第2の交番運動のそれぞれにおいて前記バランスプレートがアンカーを回転させ、前記アンカーの第1のアームに少なくとも1つのピボットジョイントを介して少なくとも第1のレバーが接続され、前記第1のレバーは、回転軸のまわりを回転し、前記アンカーには、第2のレバーが先にある第2のアームがあり、前記第1及び第2のレバーはそれぞれ、動作サイクルの前記第2及び第1の交番運動の間に一時的に前記第1及び第2のエスケープ車をそれぞれロックするように構成しており、前記第1及び第2のレバーの回転変位は制限される。
【0007】
本発明の特別な実施形態において、以下の特徴がある。
- 前記第1及び第2のレバーはそれぞれ、対応する回転軸のまわりを回転し、前記アンカーの前記第1及び第2のアームに少なくとも1つのピボットジョイントを介して接続される。
- 前記ピボットジョイントはそれぞれ、オブロング状(特定の方向にて長い形)の開口内に入り込む膨らみによって形成される。
- 前記ピボットジョイントはそれぞれ、フォーク内にて係合する突起によって形成される。
- 前記ピボットジョイントはそれぞれ、フレキシブルブレードによって形成される。
- 前記第1及び第2の制限用当接体は、ペグである。
- 前記第1及び第2の制限用当接体は、前記計時器用ムーブメントの固定要素を機械加工して作られる。
- 前記第1及び第2の制限用当接体は、偏心器である。
- 前記第1のレバーは、一体的な部品として作られ、前記第2の交番運動の間に前記第1のエスケープ車を一時的にロックする第1の停止パレットの機能を行う形状を有し、前記第2のレバーは、一体的な部品として作られ、前記第1の交番運動の間に前記第2のエスケープ車を一時的にロックする第2の停止パレットの機能を行う形状を有する。
- 前記第1のレバーには、前記第2の交番運動の間に前記第1のエスケープ車を一時的にロックするように取り付けられた第1の停止パレットがあり、前記第2のレバーには、前記第1の交番運動の間に前記第2のエスケープ車を一時的にロックするように取り付けられた第2の停止パレットがある。
- 前記バランスプレートは、第1及び第2のインパルスパレットを担持し、前記バランスプレートは、前記第1及び第2のインパルスパレットを通してそれぞれ前記第1のエスケープ車及び前記第2のエスケープ車から直接的なタンジェンシャルな駆動インパルスを受ける。
- 前記第1のエスケープ車には、駆動歯列と、インパルス及びレスト歯列があり、これらの歯列は、単一平面内又は2つの平行な平面内にて延在し、これらの歯列を通して、前記第1のエスケープ車が第2のエスケープ車と噛み合い、前記バランスプレートに直接的なタンジェンシャルな駆動インパルスを与える。
- 前記第2のエスケープ車には、駆動歯列とインパルス及びレスト歯列があり、これらの歯列は、単一平面内又は2つの平行な平面内にて延在し、これらの歯列を通して、この第2のエスケープ車が第1のエスケープ車と噛み合い、前記バランスプレートに直接的なタンジェンシャルな駆動インパルスを与える。
- 前記第1及び第2のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数は3~14の範囲内である。
- 前記第1及び第2のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数は10である。
- 前記第1のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数は、前記第2のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数とは異なる。
- 前記第1のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数は3であり、前記第2のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数は10である。
- 前記第1のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数は10であり、前記第2のエスケープ車の前記インパルス及びレスト用歯列の歯数は3である。
- 前記アンカーには、第1及び第2のホーンによって形成されるフォークがあり、前記バランスプレートは、前記バランスプレートのバランスピンによって、前記第1の交番運動の間に、前記フォークの前記第2のホーンに当接して、前記アンカーを第1の方向に回転させ、前記第2の交番運動の間に、前記フォークの前記第1のホーンに当接して、前記アンカーを前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転させる。
- 前記フォークは、ダートを担持し、このダートは、付加的アークと呼ばれる段階の間に、前記バランスプレートと連係して、前記フォークが偶発的に変位することを防ぐ。
- 前記第1及び第2のエスケープ車はそれぞれ、一体的な部品として作られ、それぞれが単一のレベルの歯列を含む。
- 減速用可動機構が、前記第2の車と前記第1のエスケープ車の間に配置される。
【0008】
本発明は、さらに、上記のタイプの自然エスケープを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0009】
これらの特徴のおかげで、本発明は、アンカーのアームとレバーの間の様々なレバーアームの寸法構成/てこの作用に応じて、この自然エスケープの動作の様々な段階、すなわち、第1及び第2のエスケープ車のトリガーと停止のシーケンス、第1及び第2のエスケープ車がバランスプレートに与えるインパルスシーケンス、及び第1及び第2のエスケープ車が第1及び第2のレバーから解放される速さ、を非常に正確に調整することが可能な自然エスケープを提供する。第1及び第2の回転レバーの変位を制限する制限用当接体が偏心器である場合にも、本発明に係る自然エスケープの動作の正確な調整が可能である。同様に、第1のレバーが第2のレバーから分離されており、これによって、第1のエスケープ車の動作段階を第2のエスケープ車の動作段階とは独立にセットアップし調整することができ、必要に応じて、本発明に係る自然エスケープの非対称的動作を得ることができることによって、当該自然エスケープの動作の微調整も可能になる。アンカーは、第1及び第2のエスケープ車が占める体積の外に配置されているため、2つのエスケープ車の間に配置されている場合よりも、作ることが容易であり、はるかにかさばらず、計時器用ムーブメント内に収容しやすい。また、本発明に係る自然エスケープは、腕時計技術者によるアクセスを容易にし、腕時計技術者が便利に測定及び調整を行うことを可能にする。また、第1及び第2のエスケープ車がそれぞれ一体的な部品として作られ、それぞれに単一のレベルの歯列がある場合、これらの第1及び第2のエスケープ車は、2つの別個の段があるレベルにおいてアクティブではなく、そのために、かさばらず、機械加工しやすい。また、2つの重なり合ったエスケープ車を用いるときに、駆動インパルスをバランスプレートに伝達するために用いられる歯のインデクシングが必要なくなる。実際に、本発明の場合、2つの駆動車どうしの係合及びバランスプレートへの駆動インパルスの伝達の両方を確実にする第1及び第2のエスケープ車の単一の歯列のインデクシングが、この歯列の形状そのものによって実現される。
【0010】
添付の図面を参照しながら本発明に係る自然エスケープの実施形態についての下記の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。この例は、純粋に例として与えられるものであり、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る自然エスケープの上面図であり、第2のエスケープ車が第2のレバーに支えられているレスト位置にある。
図2】本発明に係る自然エスケープの上面図であり、バランスピンがフォークの第2のホーンに接触している位置にあり、これによって、第2のエスケープ車が第2のレバーとの係合から解放され始める。
図3】本発明に係る自然エスケープの上面図であり、バランスプレートがアンカーとレバーを駆動し、これによって、第2のレバーとの係合から第2のエスケープ車が解放されて第1のドロップが始まる位置にある。
図4】本発明に係る自然エスケープの上面図であり、第1のエスケープ車が第1のインパルスパレットに支えられ、バランスプレートにインパルスを与え始める位置にある。これは、第1のドロップの終わりを表す。
図5】本発明に係る自然エスケープの上面図であり、第1のエスケープ車がバランスプレートにインパルスを与え、第2のレバーが第2の制限用当接体に支えられる位置にある。
図6】本発明に係る自然エスケープの上面図であり、第2のレバーが第2の制限用当接体に支えられている間に、第1のエスケープ車がバランスプレートにインパルスを与えることを終える位置にある。これは、第2のドロップの始まりを表す。
図7】本発明に係る自然エスケープの上面図であり、バランスプレートがそのフリーな交番運動を終える間に、第1のエスケープ車が第1のレバーに支えられる位置にある。これは、第2のドロップの終わりを表す。
図8】ピボットジョイントがそれぞれフォーク内にて係合する膨らみによって形成され、これらのピボットジョイントによってレバーがアンカーのアームに接続される場合について概略的に示している上面図である。
図9】レバーがフレキシブルブレードを用いてアンカーのアームに接続される場合について概略的に示している上面図である。
図10】ピボットジョイントがそれぞれ2ラックタイプのギヤ列部分によって構成しており、これらのピボットジョイントによってレバーがアンカーのアームに接続される場合について概略的に示している上面図である。
図11】第1及び第2の制限用当接体が偏心器である場合について概略的に示している上面図である。
図12】レバーが停止パレットを担持している場合について概略的に示している上面図である。
図13】第1及び第2のレバーの自由端にくぼみがある場合について示している底面図である。このくぼみによって、第1及び第2のレバーが制限用当接体の機能を実行することが可能になる。これは、第1のエスケープ車及び第2のエスケープ車のインパルス及びレスト用歯列の歯が前記くぼみに対して押されることによって行われる。
図14】第1のエスケープ車のインパルス及びレスト用歯列の歯数が10であり、第2のエスケープ車のインパルス及びレスト用歯列の歯数が3である場合について示している底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、概して、タンジェンシャルインパルスエスケープとも呼ばれる自然エスケープのアンカーのアームの少なくとも1つに、回転軸のまわりを回転し少なくとも1つのピボットジョイントを介してアンカーのアームに接続されるレバーを設けることを伴う創造性のある思想から発展したものである。この特徴のおかげで、アンカーのアームとこのアームに接続されているレバーとの間のレバーアーム/てこの作用を調整することによって、本発明に係る自然エスケープの様々な動作段階を非常に細かく調整することが可能となる。同様に、第1及び第2のエスケープは、単一のレベルにおいてのみアクティブであるために、薄く、かさばらず、機械加工が容易である。また、第1及び第2のエスケープのインパルス歯のインデクシングが、それらの歯の形状そのものによって実現され、2つの重なり合ったエスケープ車の面倒な組み付けによって実現されるものではない。
【0013】
本発明に係る自然エスケープについて、全体的に参照符号1によって示しており、図1においてはレスト位置にある。この自然エスケープ1は、第2の車2によって駆動されるように構成しており、この第2の車2は、好ましい実施形態において、第1のエスケープ車10の軸6上に固定取り付けされたピニオン4と噛み合う。なお、これに限定されない。次に、この第1のエスケープ車10は、第1の駆動歯列12を介して、軸18のまわりを回転する第2のエスケープ車16の第2の駆動歯列14と噛み合う。
【0014】
また、自然エスケープ1は、バランス車22を含むバランス20を備え、このバランス車22の軸24上にてバランスプレート26が調整される。このバランスプレート26は、バランスピン28、そして、第1及び第2のインパルスパレット30及び32を担持しており、それらの役割をそれぞれ下にて説明する。
【0015】
また、本発明に係る自然エスケープ1には、アンカーロッド36のまわりを回転するアンカー34がある。このアンカー34には、アンカーボディ38があり、このアンカーボディ38は、第1及び第2のホーン42a及び42b、そして、ダート44によって形成されるフォーク40を担持している。このダート44は、バランスプレート26がリフト角と呼ばれる中間的レスト位置に近い段階である、一般的に付加的アークと呼ばれる段階、ではない段階におけるフォーク40の偶発的な変位を防ぐようにバランスプレート26と連係する。
【0016】
本発明によると、図1を検討するとわかるように、アンカーボディ38には、第1及び第2のアーム46a及び46bがあり、これらは、好ましくは(これに限定されない)、フォーク40の両側にて対称的に構成している。第1及び第2のレバー48a、48bは、対応する回転軸50及び52のまわりを回転し、ピボットジョイント53を介してアンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bに接続される。この本発明の単純化された実施形態において、第1のレバー48aは、一体的な部品として作られ、自然エスケープ1の特定の動作サイクルの間に第1のエスケープ車10を一時的にロックする第1の停止パレットの機能を行う形状を有し、第2のレバー48bは、自然エスケープ1の同じ動作サイクルの間に第2のエスケープ車16を一時的にロックする第2の停止パレットの機能を行う形状を有する。
【0017】
本発明の第1の実施形態において、第1及び第2のレバー48a、48bはそれぞれ、突起54、56を担持し、この突起54、56はそれぞれ、アンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bにおいて形成されたオブロング状の開口58、60内へと入り込む。当然、突起54及び56を第1及び第2のアーム46a、46bによって担持することができ、オブロング状の開口58、60を第1及び第2のレバー48a、48bにて形成することができる。したがって、オブロング状の開口58、60内に突起54、56を係合させることによって、第1及び第2のレバー48a、48bは、アンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bに対して回転することができる。
【0018】
図8に示している本発明の別の実施形態において、オブロング状の開口58、60をフォーク72で置き換えることができ、このフォーク72内にて、第1及び第2のレバー48a、48bの反対側の端に設けられた膨らみ73が入り込んで係合する。
【0019】
図9に示している本発明のさらに別の実施形態において、第1及び第2のレバー48a、48bは、フレキシブルブレード74を利用してアンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bに接続される。この実施形態は、アンカーボディ38と第1及び第2のレバー48a、48bを一体的な部品として作ることを可能にする。
【0020】
図10に示している本発明のさらに別の実施形態において、ピボットジョイント53によって第1及び第2のレバー48a、48bがアンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bに接続され、これらのピボットジョイント53はそれぞれ、それぞれがラック75を構成している2つのギヤ列部分によって形成される。最後に、自然エスケープ1は、第1及び第2のレバー48a、48bの回転変位を制限するペグタイプの第1及び第2の制限用当接体62及び64によって完成される。
【0021】
図示している本発明に係る自然エスケープ1の実施形態においては、自然エスケープ1にその動作に必要なエネルギーを供給する第2の車2が時計回りに回転するものと想定している。第1のエスケープ車10の軸6にピニオン4が固定されており、この結果、第2の車2は、ピニオン4と第1のエスケープ車10を反時計回りに回転させる傾向があり、第2のエスケープ車16を時計回りに回転させる傾向がある。
【0022】
本発明に係る自然エスケープ1の1回の動作サイクルは、2回の交番運動を伴い、その間に、バランスプレート26が第1の極限位置から中間的レスト位置を通過して第2の極限位置へと移行し、そして、第2の極限位置から中間的レスト位置を再び通過して第1の極限位置へと移行する。したがって、サイクルの開始時に(図1を参照)、第2のエスケープ車16が第2のレバー48bに支えられている間に、バランスプレート26は時計回りに回転することによって中間的レスト位置の方へと回転する。
【0023】
図2に示しているバランスプレート26の変位の所与の瞬間において、バランスプレート26は、そのバランスピン28によってフォーク40の第2のホーン42bに当接する位置に到達し、アンカー34を反時計回りの方向に回転し始める。アンカー34が反時計回りに回転すると、第2のエスケープ車16が第2のレバー48bとの係合から解放され始めることとなり、このことによって、第2の車2が第1のエスケープ車10を介して第2のエスケープ車16を時計回りの方向に駆動することが可能になる。
【0024】
図3において、自然エスケープ1は、バランスプレート26がアンカー34を駆動し、このことによって、第2のエスケープ車16が第2のレバー48bとの係合から解放されて第1のドロップが始まる位置にある。「ドロップ」とは、第1及び第2のエスケープ車10及び16が、第1及び第2のレバー48a、48bのいずれとも接触しておらず、かつ、第1及び第2のインパルスパレットの30、32のいずれとも接触していないような、本発明に係る自然エスケープ1の動作の段階を意味する。
【0025】
なお、第1のエスケープ車10が第2のエスケープ車16を時計回りに回転させると同時に、第1のエスケープ車10が、第1のインパルスパレット30を駆動するインパルス及びレスト用歯列68の歯66を介してバランスプレート26に駆動インパルスを与え始めることも行うことを理解することができる(図4を参照)。この駆動インパルスは、第1のエスケープ車10によってバランスプレート26に直接与えられ、また、歯66の経路がバランスプレート26の第1のインパルスパレット30の経路をタンジェンシャル(接線方向)に捕捉するために、直接的でありタンジェンシャルであるとされ、このことによって、ほぼ精密な接触と摩擦がないことが可能になる。また、第1のエスケープ車10の歯66と、バランスプレート26の第1のインパルスパレット30との接触が第1のドロップの終わりを表す。
【0026】
図5は、本発明に係る自然エスケープ1の上面図であり、第2のレバー48bがその回転軸52のまわりを回転して第2の制限用当接体64に支えられている間に、第1のエスケープ車10がバランスプレート26にインパルスを与えている位置にある。この運動は、アンカー34によって制御され、このアンカー34は、バランスピン28によって駆動されて、アンカーロッド36のまわりを反時計回りに回転するる。
【0027】
図6において、第1のエスケープ車10は、バランスプレート26にインパルスを与えることを終える。これは、第2のドロップが始まることを表す。実際に、第1のエスケープ車10の歯66がバランスプレート26の第1のインパルスパレット30と接触しなくなることがわかる。また、第2のレバー48bは、第2の制限用当接体64に支えられている。
【0028】
最後に、図7は、本発明に係る自然エスケープ1の上面図であり、バランスプレート26が時計回りに回転することによってフリーな交番運動を終える間に、第1のエスケープ車10が第1のレバー48aに支えられているような、別のレスト位置にある。これは、第2のドロップの終わりを表す 。バランスプレート26が反時計回りに回転する次の交番運動は、図2~7に示している機能と同じ機能を逆の順序で対称的に再現するものである。
【0029】
図8は、ピボットジョイント53それぞれが、フォーク72内にて係合する膨らみ73によって形成される場合について概略的に示している。これらのピボットジョイント53によって、第1及び第2のレバー48a、48bがそれぞれ、アンカー34の第1及び第2のアーム46a、46bに接続される。
【0030】
図9は、ピボットジョイント53がそれぞれフレキシブルブレード74によって形成される場合について概略的に示している。これらのピボットジョイント53によって、第1及び第2のレバー48a、48bがそれぞれ、アンカー34の第1及び第2のアーム46a、46bに接続される。
【0031】
図11は、第1及び第2の制限用当接体62、64が偏心器76である場合について概略的に示している。第1及び第2の制限用当接体は、プラテンや計時器用ムーブメントのブリッジのような固定要素を機械加工して作ることもできる。
【0032】
図12は、第1の交番運動の間に第2のエスケープ車16を一時的にロックするための第2の停止パレット17が第2のレバー48bに取り付けられ、第2の交番運動の間に第1のエスケープ車10を一時的にロックするための第1の停止パレット80が第1のレバー48aに取り付けられている場合について概略的に示している。これらの第1及び第2の停止パレット80及び78は、例えば、ルビーによって作られる。
【0033】
図13は、第1及び第2のレバー48a、48bの自由端にくぼみ82があり、第1のエスケープ車10及び第2のエスケープ車16のインパルス及びレスト用歯列68、70の歯を前記くぼみ82にて支えることによって、前記くぼみ82が制限用当接体62、64の機能を行うような場合についての底面図を示している。したがって、この実施形態は、図1~7と関連して上で説明した動作モードと同様の動作モードを維持しつつ、制限用当接体62、64を省くことを可能にする。実際に、例えば、第2のエスケープ車16が反時計回りに回転しそのインパルス及びレスト用歯列70の歯の1つによって第2のレバー48bのくぼみ82に支えられるときに、この第2のエスケープ車16は、第2のレバー48bを、図13における時計回りの方向に第2のレバー48bの回転軸52のまわりに戻すことによって、回転させる傾向がある。しかし、制限用当接体62がなく、したがって、第1のレバー48aの回転に抗することができないにもかかわらず、第2のエスケープ車16のインパルス及びレスト用歯列70の歯の1つを前記第2のレバー48bの自由端に形成されたくぼみ82に対して押すことによって、前記第2のレバー48bの回転が防がれる。この支えは戻す力に抗する。第2のレバー48bは、アンカー34が時計回りの方向に回転するとロック位置を離脱し、これによって、この第2のレバー48bが反時計回りの方向に回転し、かつ、第1のレバー48aも反時計回りの方向に回転して第1のエスケープ車10に近づく。なお、第1及び第2のレバー48a、48bは、それらの対応する回転軸50、52のまわりを回転し、図示している例においてアンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bによって担持される突起55によって形成されるピボットジョイント53を介してアンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bに接続され、この突起55は、第1及び第2のレバー48a、48bに形成される対応する円形開口57に入り込む。
【0034】
図14は、第1のエスケープ車10のインパルス及びレスト用歯列68の歯数が10であり、第2のエスケープ車16のインパルス及びレスト用歯列70の歯数が3である場合について示している。本発明に係る自然エスケープ1のこの特定の実施形態の原理は同じままである。すなわち、第1及び第2のレバー48a、48bは、それらの対応する回転軸50、52のまわりを回転し、第1及び第2のレバーに接続される。図示している例においてアンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bによって担持される突起55によって形成されるピボットジョイント53を介してアンカーボディ38の第1及び第2のアーム46a、46bに接続され、この突起55は、第1及び第2のレバー48a、48bに形成される対応する円形開口57内に入り込む。
【0035】
当然、本発明は、ここで説明した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改変及び単純な変異形態を考えることができる。特に、本発明に係る自然エスケープ1について、第1及び第2のレバー48a、48bが接続されているアーム46a、46bへと延在するアンカー34に関連して説明したが、本発明の単純化された実施形態において、1つのレバーのみをアンカーのアームの1つに回転可能に接続し、他のレバーをアンカー34の第2のアームと一体的な1つの部品として作ることを考えることが大いに可能である。また、第2の車2と第1のエスケープ車10の間に減速用可動機構を配置することができる。第1のエスケープ車10には第1の駆動歯列12があり、この第1の駆動歯列12を通して第1のエスケープ車10が第2のエスケープ車16の第2の駆動歯列14と噛み合う。同様に、第1及び第2のエスケープ車10、16にはそれぞれ、インパルス及びレスト用歯列68、70があり、これによって、第1及び第2のエスケープ車10、16は、バランスプレート26に直接的なタンジェンシャルな駆動インパルスを与える。第1及び第2のエスケープ車10、16の各駆動歯列12、14及びインパルス及びレスト用歯列68、70は、単一の平面内又は2つの平行な平面内に延在している。好ましくは、第1及び第2のエスケープ車10、16はそれぞれ、一体的な部品として作られる。第1のエスケープ車10のインパルス及びレスト用歯列68の歯数は、第2のエスケープ車16のインパルス及びレスト用歯列70の歯数とは異なることができる。この数は、3~14の範囲内であることができ、例えば、10である。特定の例において、第1のエスケープ車10のインパルス及びレスト用歯列68の歯数は10であり、第2のエスケープ車16のインパルス及びレスト用歯列70の歯数は3である。本発明は、さらに、上記のタイプの自然エスケープ1を備える計時器用ムーブメントに関する。
【符号の説明】
【0036】
1 自然エスケープ
2 第2の車
4 ピニオン
6 軸
10 第1のエスケープ車
12 第1の駆動歯列
14 第2の駆動歯列
16 第2のエスケープ車
18 軸
20 バランス
22 バランス車
24 軸
26 バランスプレート
28 バランスピン
30 第1のインパルスパレット
32 第2のインパルスパレット
34 アンカー
36 アンカーロッド
38 アンカーボディ
40 フォーク
42a 第1のホーン
42b 第2のホーン
44 ダート
46a 第1のアーム
46b 第2のアーム
48a 第1のレバー
48b 第2のレバー
50 回転軸
52 回転軸
53 ピボットジョイント
54 突起
55 突起
56 突起
57 円形開口
58 オブロング状の開口
60 オブロング状の開口
62 第1の制限用当接体
64 第2の制限用当接体
66 歯
68 インパルス及びレスト用歯列
70 インパルス及びレスト用歯列
72 フォーク
73 膨らみ
74 フレキシブルブレード
75 ラック
76 偏心器
78 第2の停止パレット
80 第1の停止パレット
82 くぼみ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14