IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日精樹脂工業株式会社の特許一覧

特許7386910射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法
<>
  • 特許-射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法 図1
  • 特許-射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法 図2
  • 特許-射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法 図3
  • 特許-射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法 図4
  • 特許-射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法 図5
  • 特許-射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20231117BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/76
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022021252
(22)【出願日】2022-02-15
(65)【公開番号】P2023118342
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沢 千春
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136741(JP,A)
【文献】特開2009-230638(JP,A)
【文献】特開2017-119260(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110956227(CN,A)
【文献】特開2021-174085(JP,A)
【文献】特開2005-332129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の稼動状態を管理する射出成形機の稼動管理システムであって、射出成形機の少なくとも稼動状態に係わる、少なくとも、生産に係わる生産情報,及び異常発生に係わる異常発生情報を含む稼動データを取得するとともに、取得した前記稼動データを前記射出成形機に搭載する成形機コントローラに少なくとも一時記憶する稼動データ取込処理機能部と、設定した所定期間における前記稼動データ,この稼動データを識別する識別データ,前記稼動データ及び前記識別データを送信するインターネット上における送信先となるクラウドのURL,を含むユーザーデータを作成し、このユーザーデータを記憶するグラフィックパターンを用いた情報記憶コードを作成するコード化処理機能部と、作成された前記情報記憶コードを前記成形機コントローラに付属するディスプレイに表示するコード表示処理機能部とを備えることを特徴とする射出成形機の稼動管理システム。
【請求項2】
前記情報記憶コードは、二次元コードを含むことを特徴とする請求項1記載の射出成形機の稼動管理システム。
【請求項3】
前記識別データには、少なくとも、成形機番号,及び前記情報記憶コードを作成した日時を含むことを特徴とする請求項1記載の射出成形機の稼動管理システム。
【請求項4】
射出成形機の稼動状態を管理する射出成形機の稼動管理方法であって、射出成形機の少なくとも稼動状態に係わる、少なくとも、生産に係わる生産情報,及び異常発生に係わる異常発生情報を含む稼動データを取得するとともに、取得した前記稼動データを前記射出成形機に搭載する成形機コントローラに少なくとも一時記憶するステップと、設定した所定期間における前記稼動データ,この稼動データを識別する識別データ,前記稼動データ及び前記識別データを送信するインターネット上における送信先となるクラウドのURL,を含むユーザーデータを作成し、このユーザーデータを記憶するグラフィックパターンを用いた情報記憶コードを作成するステップと、作成された前記情報記憶コードを前記成形機コントローラに付属するディスプレイに表示するステップと、表示された前記情報記憶コードを、コード読取機能部により読取るとともに、少なくとも送信機能を有する送信機器により送信先となる前記クラウドのURLに送信するステップとを備えることを特徴とする射出成形機の稼動管理方法。
【請求項5】
前記コード読取機能部は、撮影機能を有するカメラを利用し、このカメラにより撮影した前記情報記憶コードに係わる画像データから前記ユーザーデータを再生し、前記送信機器により前記クラウドのURLに送信することを特徴とする請求項4記載の射出成形機の稼動管理方法。
【請求項6】
前記クラウドに、前記ユーザーデータを送信及び登録するとともに、少なくとも管理者サイドのコンピュータ端末により前記クラウドにアクセスすることにより前記ユーザーデータをダウンロード可能にすることを特徴とする請求項4記載の射出成形機の稼動管理方法。
【請求項7】
前記情報記憶コードは、二次元コードを含むことを特徴とする請求項4記載の射出成形機の稼動管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の稼動状態を管理する際に用いて好適な射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機に対する稼動状態の管理は、ユーザー側から、生産情報や異常発生情報等を、対応する管理セクションやテクニカルセンター等の管理者サイドに報告したり必要なサポートを仰ぐことが行われている。この場合、報告やサポートを仰ぐ際の連絡に係わる伝達手段には、通常、インターネット(電子メール)や社内LANシステム等の通信手段を利用して行っているのが実情であり、このような伝達手段に利用する通信手段や通信方法としては、特許文献1に記載される成形機の制御装置及び特許文献2に記載される射出成形機のトラブルシューティング方法が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の制御装置は、知らせる必要がある事象が発生した場合に遠隔地においてもその事象の発生を知ることを可能とする成形機の制御装置の提供を目的としたものであり、具体的には、制御装置は電気通信回線に接続され、かつ電気通信回線を経由して外部端末と通信を行う通信機能部を有し、制御装置は、成形機に所定の事象が発生した場合に電気通信回線を利用した伝達手段により自動的に所定の事象が発生したことを送信する送信先を予め指定する送信先指定手段と、成形機に所定の事象が発生した場合に、電気通信回線を利用した伝達手段により送信先指定手段で指定した送信先に所定の事象の発生通知を、電気通信回線を利用した伝達手段により自動的に配信する自動配信手段を有し、制御装置は、成形機に所定の事象が発生した場合に、送信先指定手段で指定した送信先に自動的に所定の事象の発生通知を、電気通信回線を利用した伝達手段により送信するように構成したものである。
【0004】
また、特許文献2に記載のトラブルシューティング方法は、オペレータが射出成形機のコントローラの操作に不慣れの場合などでもトラブルに対して的確かつ円滑(迅速)に対応できるようにすることを目的としたものであり、具体的には、少なくともトラブルを診断する機能を備えるテクニカルセンターにおけるデータ処理手段により、ユーザーから受け取ったトラブルに係わるトラブル情報に対応する射出成形機の動作信号データを当該射出成形機のコントローラから採取するための条件を含む採取条件データを作成処理するステップと、この採取条件データを、通信手段によリユーザーの通信端末に送信処理するステップと、採取条件データをコントローラに読込処理するステップと、採取条件データに基づいて動作信号データを採取処理するステップと、この動作借号データを、通信手段によリテクニカルセンターの通信端末に送信処理するステップとを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-157780号公報
【文献】特開2014-133378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、射出成形機の分野における上述した従来の稼動管理に係わる手法は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0007】
第一に、社内LANシステム等のように、ある程度の伝達システムが構築されている企業などでは支障なく利用できるとしても、小ロットの生産を行う比較的規模の小さい小規模事業者や工場などのように、十分な伝達システムが構築されていない場合、ユーザーは、成形機コントローラのディスプレイ等に表示される情報やプリントアウトした情報に基づき、ファクシミリやEメール等を使用して個別に伝達処理作業を行っているのが実情である。したがって、このような小規模事業者や工場などでは、伝達処理に時間や手間がかかり、稼動管理を効率的かつ能率的に行なうことができない。
【0008】
第二に、情報の伝達に際しては、データの出力操作や入力操作など、少なからず人的な操作を伴うとともに、複数の媒体を経由して伝達される虞れがあるため、人為的なミスが発生しやすい。この結果、内容が正確かつ確実に伝達されないトラブルが発生しやすく、特に、稼動中の射出成形機にトラブルが発生した場合には、ユーザー側からテクニカルセンターに十分な内容(情報)を伝達することができず、迅速かつ的確なトラブルシューティングを行うことが容易でない。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の稼動管理システム及び稼動管理方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る射出成形機の稼動管理システム1は、上述した課題を解決するため、射出成形機Mの少なくとも稼動状態を管理するシステムであって、射出成形機Mの稼動状態に係わる、少なくとも、生産に係わる生産情報,及び異常発生に係わる異常発生情報を含む稼動データDmを取得するとともに、取得した稼動データDmを射出成形機Mに搭載する成形機コントローラ2に少なくとも一時記憶する稼動データ取込処理機能部Ftと、設定した所定期間Tmにおける稼動データDmm,この稼動データDmmを識別する識別データDi,稼動データDmm及び識別データDiを送信するインターネットN上における送信先となるクラウド12のURL,を含むユーザーデータDuを作成し、このユーザーデータDuを記憶するグラフィックパターンを用いた情報記憶コードCmを作成するコード化処理機能部Fcと、作成された情報記憶コードCmを成形機コントローラ2に付属するディスプレイ3に表示するコード表示処理機能部Fdとを備えることを特徴とする。
【0011】
一方、本発明に係る射出成形機の稼動管理方法は、上述した課題を解決するため、射出成形機Mの少なくとも稼動状態を管理するに際し、射出成形機Mの稼動状態に係わる、少なくとも、生産に係わる生産情報,及び異常発生に係わる異常発生情報を含む稼動データDmを取得するとともに、取得した稼動データDmを射出成形機Mに搭載する成形機コントローラ2に少なくとも一時記憶するステップと、設定した所定期間Tmにおける稼動データDmm,この稼動データDmmを識別する識別データDi,稼動データDmm及び識別データDiを送信するインターネットN上における送信先となるクラウド12のURL,を含むユーザーデータDuを作成し、このユーザーデータDuを記憶するグラフィックパターンを用いた情報記憶コードCmを作成するステップと、作成された情報記憶コードCmを成形機コントローラ2に付属するディスプレイ3に表示するステップと、表示された情報記憶コードCmを、コード読取機能部Frにより読取るとともに、少なくとも送信機能を有する送信機器4により送信先となるクラウド12のURLに送信するステップとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、発明の好適な態様により、稼動管理システム1を構成するに際し、情報記憶コードCmには、二次元コードCmqを含ませることができる。識別データDiには、少なくとも、成形機番号Inn,及び情報記憶コードCmを作成した日時Indを含ませることができる。他方、稼動管理方法の実施に際しては、コード読取機能部Frとして、撮影機能を有するカメラ11を利用し、このカメラ11により撮影した情報記憶コードCmに係わる画像データからユーザーデータDuを再生し、送信機器4により送信先となるURLに送信することができる。さらに、クラウド12には、ユーザーデータDuを送信及び登録するとともに、少なくとも管理者サイドのコンピュータ端末13により当該クラウド12にアクセスすることによりユーザーデータDuをダウンロード可能にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る稼動管理システム1及び稼動管理方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) ユーザーデータDuを記憶するグラフィックパターンを用いた情報記憶コードCmを作成するコード化処理機能部Fcと、作成された情報記憶コードCmを成形機コントローラ2に付属するディスプレイ3に表示するコード表示処理機能部Fdとを備えるため、ユーザーは、コードリーダー,カメラ付スマートホン,カメラ付携帯電話等の各種モバイル機器に付属するコード読取機能を利用してワンタッチで確実に読取ることができる。これにより、射出成形機Mで得られた各種の稼動データDmを、自己のパソコンやモバイル機器等に容易に転送でき、的確な自己管理処理が可能になるとともに、管理者サイドのコンピュータ端末等に容易に転送可能になるため、小ロットの生産を行う比較的規模の小さい事業所や工場などのように、十分な伝達システムが構築されていないユーザーでも確実かつ迅速に伝達することが可能になり、稼動データDmに係わる稼動管理処理を効率的かつ能率的に行うことができる。
【0015】
(2) 複数の媒体を経由して伝達される虞れのある従来の伝達手法やデータ入出力等に係わる人的な処理操作がほとんど不要になるため、人為的なミスの発生を回避することができるとともに、正確な情報(内容)を伝達することができる。これにより、例えば、成形機にトラブルが発生した場合でも、テクニカルセンターに対して短時間で的確な情報を伝達できるため、迅速かつ適切なトラブルシューティングを行うことができる。
【0016】
(3) 稼動データDmに、少なくとも、生産に係わる生産情報Inp,及び異常発生に係わる異常発生情報Ineを含ませたため、必要かつ重要な伝達情報を十分にカバーできる。これにより、射出成形機Mにとっての最適な稼動管理システム1として用いることができる。
【0017】
(4) 送信先のURLとして、クラウド12を適用したため、このクラウド12にユーザーデータDuを送信及び登録するとともに、少なくとも管理者サイドのコンピュータ端末13により当該クラウド12にアクセスすることによりユーザーデータDuをダウンロード可能にすることができる。これにより、インターネットN上の各種クラウド12を利用できるとともに、管理セクションやテクニカルセンター等の様々な管理者がアクセスすることにより広く利用することができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、情報記憶コードCmに、二次元コードCmqを含ませれば、一般に広く利用されているQRコード(登録商標)等を使用できるため、実用化されているコードリーダーやアプリケーションソフトウェアにより容易かつ確実に読取ることができ、安定性及び信頼性の高い稼動管理システム1を構築することができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、識別データDiに、少なくとも、成形機番号Inn,及び情報記憶コードCmを作成した日時Indを含ませれば、伝達する稼動データDmを最小限のデータにより特定できるため、送信処理や登録処理等に係わるデータ量の低減化に寄与できる。
【0020】
(7) 好適な態様により、稼動管理方法を実施するに際し、コード読取機能部Frとして、撮影機能を有するカメラ11を利用し、このカメラ11により撮影した情報記憶コードCmに係わる画像データからユーザーデータDuを再生し、送信機器4により送信URLに送信するようにすれば、一般に広く普及しているスマートホンやノートパソコン等の各種モバイル機器を利用できるため、汎用性に優れた稼動管理方法として実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適実施形態に係る稼動管理方法の処理手順を説明するためのフローチャート、
図2】本発明の好適実施形態に係る稼動管理システムの全体のシステム系統を示すシステム構成図、
図3】同稼動管理システムの要部を構成する機能ブロック図、
図4】同稼動管理システムにおける成形機コントローラのディスプレイに表示されたQRコード(登録商標)の一例を示す図2中一点鎖線円A部の表示画面図、
図5】同稼動管理方法により管理者サイドのコンピュータ端末に表示されたユーザーデータの一例を示す表示画面図、
図6図5中一点鎖線円B部の拡大図、
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係る稼動管理システム1の全体のシステム系統について、図2図6を参照して説明する。
【0024】
図2は、稼動管理システム1の全体のシステム系統図、図3は、同稼動管理システム1の要部を構成する機能ブロック図をそれぞれ示す。
【0025】
図2中、Mは射出成形機であり、この射出成形機Mは、基台Mbと、この基台Mb上に設置された射出装置Mi及び型締装置Mcを備える。射出装置Miは、加熱筒51を備え、この加熱筒51の前端に、図に現れない射出ノズルを有するとともに、加熱筒51の後部には、成形材料を供給するホッパ52を備える。一方、型締装置Mcには可動型と固定型を有する金型53を備える。また、機台Mbには成形機コントローラ2(図3)を内蔵するとともに、機台Mb上に起設された側面パネル54を利用して成形機コントローラ2に付属するディスプレイ3を配設する。
【0026】
図3は、成形機コントローラ2の要部(稼動管理システム1の要部)の構成を示す。成形機コントローラ2は、CPU等のハードウェアにより構成されるコンピュータ機能を有するコントローラ本体21と、このコントローラ本体21に付属するSSD(ソリッドステートドライブ)等を用いた内部メモリ22を備える。上述したディスプレイ3は、例えば、タッチパネルが付属する液晶ディスプレイ等を利用することによりコントローラ本体21のディスプレイポートに接続する。また、データ入出力インターフェース23を備え、コントローラ本体21は、このデータ入出力インターフェース23を通して、アナログデータやデジタルデータを含む各種データの入出力を行う。
【0027】
一方、内部メモリ22は、各種演算処理及びシーケンス制御処理を含む各種制御処理を実行する処理プログラム(ソフトウェア)Psを格納するプログラムエリアを有するとともに、データベースを含む各種データ類を書込み可能なデータエリアを有する。特に、処理プログラムPsには、本発明に係る稼動管理システム1を実現するためのアプリケーションソフトウェアを格納し、コンピュータ機能を有するコントローラ本体21と共に本発明の主要な機能部、即ち、稼動データ取込処理機能部Ft,コード化処理機能部Fc及びコード表示処理機能部Fdを構成する。
【0028】
稼動データ取込処理機能部Ftは、射出成形機Mの稼動状態に係わる稼動データDmを取得するとともに、取得した稼動データDmを内部メモリ22(成形機コントローラ2)に少なくとも一時記憶する機能を備える。この稼動データDmには、少なくとも、生産に係わる生産情報Inp,及び異常発生に係わる異常発生情報Ineを含ませる。
【0029】
この場合、生産情報Inpには、生産に係わる各種情報が含まれ、一例として、図5の中段に示すように、「直」,「生産予定数」,「累計良品数」,「累計不良品数」,「累計ケース数」,「進捗率」,「直間良品数」,「直間不良品数」,「積算ショット数」を含めることができる。なお、「直」は交替制の時間帯を示す。その他、「成形週報」,「成形月報」,「稼働率表示」,「保有機一覧サマリ」等を含めることもできる。
【0030】
また、異常発生情報Ineは、一例として、図5の下段及び一部を拡大した図6に示すように、一日の成形機稼動状況を視覚化したグラフ(タイムチャート)31で表すことができる。特に、異常発生情報Ineは、グラフ31の時間軸上に、「異常停止区間(時間)32c」を、例えば、レッド色エリアにより表示することができる。その他、このグラフ31には、「自動運転区間32a」(グリーン色エリア),「手動運転区間32m」(グレー色エリア),「生産完了区間32e」(ピンク色エリア),「電源OFF区間32s」(ブラック色エリア)等を表示することができる。
【0031】
このように、稼動データDmに、少なくとも、生産に係わる生産情報Inp,及び異常発生に係わる異常発生情報Ineを含ませれば、必要かつ重要な伝達情報を十分にカバーできるため、射出成形機Mにとっての最適な稼動管理システム1として用いることができる。
【0032】
コード化処理機能部Fcは、設定した所定期間Tmにおける稼動データDmm,この稼動データDmmを識別する識別データDi,稼動データDmm及び識別データDiを送信するインターネットN上における送信先となる送信先URL,を含むユーザーデータDuを作成し、このユーザーデータDuを記憶するグラフィックパターンを用いた情報記憶コードCmを作成する機能を備える。
【0033】
この場合、所定期間Tmにおける稼動データDmmとは、一例として、所定期間Tmを「8:00-8:00」を設定することにより、「8:00」以降の24時間分の稼動データDmmが採取される。また、識別データDiには、成形機番号Inn,及び後述する情報記憶コードCmを作成した日時Indを含ませることができる(図5参照)。このように、識別データDiに、少なくとも、成形機番号Inn,及び情報記憶コードCmを作成した日時Indを含ませれば、伝達する稼動データDmを最小限のデータにより特定できるため、送信処理や登録処理等に係わるデータ量の低減化に寄与できる。さらに、稼動データDmm及び識別データDiを送信するインターネットN上における送信先URLには、例示の場合、所定のクラウド12を指定した。
【0034】
さらに、グラフィックパターンを用いた情報記憶コードCmは、図形等の形や位置により情報を記憶し、その形や位置をスキャンすることにより情報を再生するものであり、一般には、一次元コードによるバーコード,二次元コードCmq,特定の利用者のみが使用できる固有のルールで作成されたオリジナルコード等の各種の情報記憶コードCmを利用可能である。
【0035】
本実施形態で使用する情報記憶コードCmでは、記憶できる情報量を確保する観点から二次元コードCmq、より好適には、QRコード(登録商標)を用いることが望ましい。このように、二次元コードCmqを用いれば、一般に広く利用されているQRコード(登録商標)を使用できるため、実用化されているコードリーダーやアプリケーションソフトウェアにより容易かつ確実に読取ることができ、安定性及び信頼性の高い稼動管理システム1を構築することができる。
【0036】
したがって、コード化処理機能部Fcは、上述した、稼動データDmm,識別データDi,送信先URL,を含むユーザーデータDuを作成するとともに、作成したユーザーデータDuを、コード作成プログラム(アプリケーションソフトウェア)により、QRコード(登録商標)Cmqを作成(変換)する処理を行う。これにより、ユーザーデータDuが記憶されたグラフィックパターンによる二次元コードCmqによる情報記憶コードCmを作成することができる。
【0037】
コード表示処理機能部Fdは、作成された二次元コードCmqをディスプレイ3における予め設定した空エリアとなるコード表示部33(図3)を表示する機能を備える。図2図4は、ディスプレイ3の表示画面3vにおける右下位置に設けたコード表示部33に、一例となるQRコード(登録商標)Cmqを表示した状態を示している。
【0038】
このように、本実施形態に係る射出成形機の稼動管理システム1は、射出成形機Mの稼動状態に係わる稼動データDmを取得するとともに、取得した稼動データDmを射出成形機Mに搭載する成形機コントローラ2に少なくとも一時記憶する稼動データ取込処理機能部Ftと、設定した所定期間Tmにおける稼動データDmm,この稼動データDmmを識別する識別データDi,稼動データDmm及び識別データDiを送信するインターネットN上における送信先となる送信先URL,を含むユーザーデータDuを作成し、このユーザーデータDuを記憶するグラフィックパターンを用いた二次元コードCmq(情報記憶コードCm)を作成するコード化処理機能部Fcと、作成された二次元コードCmqを成形機コントローラ2に付属するディスプレイ3に表示するコード表示処理機能部Fdとを備えるため、ユーザー(オペレータ)は、コードリーダー,カメラ付スマートホン,カメラ付携帯電話等の各種モバイル機器に付属するコード読取機能を利用してワンタッチで確実に読取ることができる。
【0039】
これにより、射出成形機Mで得られた各種の稼動データDmを、自己のパソコンやモバイル機器等に容易に転送でき、的確な自己管理処理が可能になるとともに、管理者サイドのコンピュータ端末等に容易に転送可能になるため、小ロットの生産を行う比較的規模の小さい事業所や工場などのように、十分な伝達システムが構築されていないユーザーでも確実かつ迅速に伝達することが可能になり、稼動データDmに係わる稼動管理処理を効率的かつ能率的に行うことができる。
【0040】
次に、稼動管理システム1を用いた本実施形態に係る稼動管理方法について、各図を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0041】
今、射出成形機Mは自動運転モードにより稼動し、所定の成形処理により生産が正常に行われている状態を想定する(ステップS1)。成形動作により、射出成形機Mの成形機コントローラ2では、射出成形機Mの稼動状態に係わる稼動データDmを含む各種データがデータ入出力インターフェース23を介してコントローラ本体21により採取される(ステップS2)。この稼動データDmには、少なくとも、前述した生産情報Inpや異常発生情報Ineが含まれる。また、ディスプレイ3にはモニタリング画面が表示され、稼動データDmを含む各種データが表示される。
【0042】
一方、稼動データ取込処理機能部Ftにより、採取された稼動データDmは、内部メモリ22に書込むことにより少なくとも一時記憶される。稼動データDmは、例えば、各ショット毎のタイミングにより取得し、必要な生産情報Inp、即ち、前述した「累計良品数」,「累計不良品数」…等の生産情報Inpが収集される。
【0043】
そして、予め設定した取込タイミングに達したなら上述した生産情報Inpを含む稼動データDmの取込みを行なう(ステップS3)。この取込タイミングは、例えば、各ショット単位で行ってもよいし、2ショット毎に行うなど、任意のタイミングを設定することができる。実施形態は、各ショット単位で稼動データDmの取込みを行った場合を想定する。なお、この時点における稼動データDmの取込みは、前述した所定期間Tmの開始時点(8:00)から今回の取込時点までの中間的な生産情報Inp、即ち、稼動データDmmとなる。
【0044】
稼動データDmの取込みにより、コード化処理機能部Fcは、この稼動データDmmに加え、稼動データDmmを識別する既知の識別データDi及び既知の送信先URLを含むユーザーデータDuを作成する(ステップS4)。さらに、コード化処理機能部Fcでは、この作成したユーザーデータDuから、このユーザーデータDuを記憶する二次元コードCmqである情報記憶コードCm、即ち、QRコード(登録商標)を作成する(ステップS5)。
【0045】
コード化処理機能部Fcにより情報記憶コードCmが作成されたなら、コード表示処理機能部Fdにより、図2図4に示すディスプレイ3のコード表示部33に表示,又は直前に表示した情報記憶コードCmに対してデータの更新を行う(ステップS6)。
【0046】
他方、射出成形機Mの稼動中にトラブルが発生、即ち、異常送信事案が発生し、射出成形機Mが異常停止した場合を想定する(ステップS7)。この場合、ユーザー(オペレータ)は、通常、点検を行ったり成形条件の再設定(再調整)等のエラー対応処理を行う。この状況は、図5及び図6に示すように、異常発生情報Ineとして追加、具体的には、グラフ31上に、異常停止区間(時間)32cとして追加されるとともに、異常停止後に、オペレータが手動運転(手動運転区間32m)により成形条件の変更等を行った場合には、それらの履歴情報も異常発生情報Ineとして追加される。なお、この異常発生情報Ineには、エラーコードやエラー状況の内容も含まれる。
【0047】
一方、所定のエラー対応処理を行っても異常状態から正常に復帰できない場合、オペレータは管理者サイドとなるテクニカルセンターに連絡することにより必要なサポートを仰ぐことができる。
【0048】
この場合、オペレータは、送信機器4により、ディスプレイ3に表示された情報記憶コードCm(QRコード(登録商標))を読取ればよい。具体的には、図2に示すように、送信機器4となるスマートホン4sのカメラ11により、ディスプレイ3のコード表示部33に表示されている情報記憶コードCmを撮影する(ステップS9)。なお、スマートホン4sは、カメラ11を搭載するとともに、QRコード(登録商標)Cmqを読取るコード読取機能部Fr及び送受信機能を行うアプリケーションソフトウェアがインストールされているものとする。
【0049】
これにより、スマートホン4sにおけるアプリケーションソフトウェアにより、情報記憶コードCmの画像データからユーザーデータDuが再生される。さらに、スマートホン4sの送信キーをクリックすることにより、ユーザーデータDuは、このユーザーデータDuに含まれる送信先URL、即ち、インターネットNを経由してクラウド12に送信され、このクラウド12に、ユーザーデータDuが登録される(ステップS10)。なお、図2中、14はスマートホン4sの中継局を示している。
【0050】
このように、コード読取機能部Frとして、撮影機能を有するカメラ11を利用し、このカメラ11により撮影した情報記憶コードCmに係わる画像データからユーザーデータDuを再生し、送信機器4により送信URLに送信するようにすれば、一般に広く普及しているスマートホンやノートパソコン等の各種モバイル機器を利用できるため、汎用性に優れた稼動管理方法として実施することができる。
【0051】
他方、例示の場合、管理者サイド(テクニカルセンター)には、コンピュータ端末13を備えるため、テクニカルセンターは、コンピュータ端末13からクラウド12に対して一定時間毎にアクセスし、ユーザーデータDuをダウンロードすることができる(ステップS11)。
【0052】
この場合、コンピュータ端末13に、ユーザーデータDuを表示するための表示プログラムを予めインストールしておけば、ユーザーデータDuは、図5に示すように表示することができる。即ち、モニター画面30の、中段に、生産に係わる生産情報Inpを表示し、下段に、異常発生に係わる異常発生情報Ineを表示することができる。また、モニター画面30の上段に、識別データDiに基づく成形機番号Inn,及び情報記憶コードCmを作成した日時Indを表示することができる(ステップS12)。
【0053】
テクニカルセンターでは、モニター画面30に表示されたユーザーデータDu、特に、異常発生情報Ineの内容を確認することができる(ステップS13)。そして、この異常発生情報Ineに基づき、必要なサポート処理、例えば、サービスマンを派遣したり、必要な対処方法を電子メールや電話等により連絡するなど、必要なサポート処理(管理処理)を行うことができる(ステップS14)。
【0054】
一方、これに対し、上述したテクニカルセンターのサポートを仰ぐことなく、射出成形機Mの稼動が正常に継続した場合には、管理者サイドに必要な稼動データDmを定期的に伝達する。この場合、予め設定した定期データ送信タイミングになったなら、クラウド12に対して同様の送信処理を行う(ステップS8)。定期データ送信タイミングは、通常、一日の稼動時間(例示は、8:00-8:00)が終了した時点で行うことができる。即ち、オペレータは、一日の稼動時間が終了した際に、スマートホン4sのカメラ11により、ディスプレイ3の情報記憶コードCmを撮影する(ステップS9)。この場合、この時点の情報記憶コードCmには、設定された所定期間Tm、即ち、一日分(8:00-8:00)の稼動データDmmに、前述した識別データDi及び送信先URLが付加されたユーザーデータDuが記憶される。
【0055】
これにより、情報記憶コードCmは、スマートホン4sにおけるアプリケーションソフトウェアにより、情報記憶コードCmの画像データからユーザーデータDuが再生される。さらに、スマートホン4sの送信キーをクリックすることにより、ユーザーデータDuは、このユーザーデータDuに含まれる送信先URL、即ち、インターネットNを経由してクラウド12に送信され、このクラウド12に、ユーザーデータDuが登録される(ステップS10)。なお、実施形態では、所定期間Tmとして、一日分(8:00-8:00)の期間を設定した場合を示したが、その他、工場のシフト勤務の時間帯など、任意の所定期間Tmを設定することができる。
【0056】
なお、この場合の管理者サイドは、生産情報Inpを管理する企業などの管理セクションを想定することができる。したがって、図2に示すコンピュータ端末13は、同管理セクションに設置されたコンピュータ端末となる。
【0057】
このように、送信先URLとして、クラウド12を適用し、このクラウド12にユーザーデータDuを送信及び登録するとともに、少なくとも管理者サイドのコンピュータ端末13により当該クラウド12にアクセスすることによりユーザーデータDuをダウンロード可能にすれば、インターネットN上の各種クラウド12を利用できるため、管理セクションやテクニカルセンター等の様々な管理者がアクセスすることにより広く利用することができる。なお、クラウド12へのアクセスは、必要なID/パスワードを入力することにより関係者はいつでもアクセスすることができる。
【0058】
よって、このような本実施形態に係る稼動管理方法(稼動管理システム1)によれば、射出成形機Mの稼動状態に係わる稼動データDmを取得するとともに、取得した稼動データDmを射出成形機Mに搭載する成形機コントローラ2に少なくとも一時記憶するステップと、設定した所定期間Tmにおける稼動データDmm,この稼動データDmmを識別する識別データDi,稼動データDmm及び識別データDiを送信するインターネットN上における送信先となる送信先URL,を含むユーザーデータDuを作成し、このユーザーデータDuを記憶するグラフィックパターンを用いた情報記憶コードCmを作成するステップと、作成された情報記憶コードCmを成形機コントローラ2に付属するディスプレイ3に表示するステップと、表示された情報記憶コードCmを、コード読取機能部Frにより読取るとともに、少なくとも送信機能を有する送信機器4により送信先URLに送信するステップとを備えるため、ユーザーは、コードリーダー,カメラ付スマートホン,カメラ付携帯電話等の各種モバイル機器に付属するコード読取機能を利用してワンタッチで確実に読取ることができる。
【0059】
これにより、射出成形機Mで得られた各種の稼動データDmを、自己のパソコンやモバイル機器等に容易に転送でき、的確な自己管理処理が可能になるとともに、管理者サイドのコンピュータ端末等に容易に転送可能になるため、小ロットの生産を行う比較的規模の小さい事業所や工場などのように、十分な伝達システムが構築されていないユーザーでも確実かつ迅速に伝達することが可能になり、稼動データDmに係わる稼動管理処理を効率的かつ能率的に行うことができる。
【0060】
しかも、複数の媒体を経由して伝達される虞れのある従来の伝達手法やデータ入出力等に係わる人的な処理操作がほとんど不要になるため、人為的なミスの発生を回避することができるとともに、正確な情報(内容)を伝達することができる。これにより、例えば、成形機にトラブルが発生した場合でも、テクニカルセンターに対して短時間で的確な情報を伝達できるため、迅速かつ適切なトラブルシューティングを行うことができる。
【0061】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0062】
例えば、稼動データ取込処理機能部Ftは、稼動データDmを、成形機コントローラ2に少なくとも一時記憶する機能を有すればよく、ユーザーが消去処理を行うまでそのまま継続して記憶してもよい。さらに、識別データDiは、成形機番号Inn,及び情報記憶コードCmを作成した日時Indを含ませた場合を例示したが、稼動データDmmを識別することができるデータであれば、他の各種識別データDiを利用することができる。一方、情報記憶コードCmとして、二次元コードCmqが望ましいが、一次元コード(バーコード)を排除するものではい。また、二次元コードCmqとして、QRコード(登録商標)を利用する場合を例示したが、ユーザーデータDuを記憶するグラフィックパターンにより作成できる各種コード(オリジナルコード)を利用することができる。他方、コード読取機能部Frとして、撮影機能を有するカメラ11を例示したが、コードを読取る機能を有するコードリーダー等の各種読取機器を利用可能である。また、送信機器4は、少なくとも送信機能を有すれば足り、送受信機器であってももちろん可能である。その他、ユーザーデータDuには、稼動データDmm,識別データDi,送信先となるURLを含めた場合を示したが、必要により、他の各種データを追加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る稼動管理システム及び稼動管理方法は、各種射出成形機の稼動状態を管理する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1:稼動管理システム,2:成形機コントローラ,3:ディスプレイ,4:送信機器,11:カメラ,12:クラウド,13:コンピュータ端末,M:射出成形機,Dm:稼動データ,Dmm:設定した所定期間における稼動データ,Du:ユーザーデータ,Di:識別データ,Cm:情報記憶コード,Ft:稼動データ取込処理機能部,Fc:コード化処理機能部,Fd:コード表示処理機能部,Fr:コード読取機能部,N:インターネット,Cmq:二次元コード,Inp:生産情報,Ine:異常発生情報,Inn:成形機番号,Ind:作成した日時
図1
図2
図3
図4
図5
図6