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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】燃焼ガス抽気プローブ及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 17/00 20060101AFI20231117BHJP
   C04B 7/60 20060101ALI20231117BHJP
   C04B 7/44 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
F27D17/00 104G
C04B7/60
C04B7/44
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022036926
(22)【出願日】2022-03-10
(65)【公開番号】P2023131914
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 航綺
(72)【発明者】
【氏名】北澤 健資
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-032130(JP,A)
【文献】特許第5411126(JP,B2)
【文献】国際公開第2005/050114(WO,A1)
【文献】特開2011-056434(JP,A)
【文献】特開2013-147401(JP,A)
【文献】中国実用新案第211823871(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 17/00-99/00
B01D 53/34-53/73
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キルンからの燃焼ガスの一部を抽気するガス管と、
前記ガス管に穿設され、前記ガス管が抽気した抽気ガスに対して低温ガスを各々吐出する複数の吐出口と、を備え
記複数の吐出口は、各々の前記吐出口から吐出される前記低温ガスが前記ガス管内で互いに衝突しないように配置されており、
前記吐出口から吐出される前記低温ガスの風速が25~180m/sを満たし、かつ前記抽気ガスの運動量に対する前記吐出口一口当たりの前記低温ガスの運動量の比が1.8~5.3を満たすことを特徴とする燃焼ガス抽気プローブ。
【請求項2】
前記複数の吐出口は、前記ガス管の延伸方向において同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼ガス抽気プローブ。
【請求項3】
前記複数の吐出口は、前記ガス管の延伸方向に見たとき、前記ガス管の中心を対称の中心として点対称に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃焼ガス抽気プローブ。
【請求項4】
前記複数の吐出口は、前記ガス管の周方向に等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の燃焼ガス抽気プローブ。
【請求項5】
前記ガス管を囲む外管と、前記ガス管と前記外管との間に形成された冷風通路と、冷風ファンからの低温ガスを前記冷風通路に供給するために前記外管に設けられた供給口と、を備えることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の燃焼ガス抽気プローブ。
【請求項6】
キルンからの燃焼ガスの一部を抽気するガス管と、
前記ガス管に穿設され、前記ガス管が抽気した抽気ガスに対して低温ガスを各々吐出する複数の吐出口と、を備え、
前記複数の吐出口は、各々の前記吐出口から吐出される前記低温ガスが前記ガス管内で互いに衝突しないように配置されている燃焼ガス抽気プローブの運転方法であって、
前記吐出口から吐出される前記低温ガスの風速が25~180m/sを満たし、かつ前記抽気ガスの運動量に対する前記吐出口一口当たりの前記低温ガスの運動量の比が1.8~5.3を満たすことを特徴とする燃焼ガス抽気プローブの運転方法。
【請求項7】
前記低温ガスは、前記ガス管の内壁面に衝突した後、窯尻に逆流しないことを特徴とする請求項6に記載の燃焼ガス抽気プローブの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガス抽気プローブ及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素バイパスシステムは、セメント製造設備から塩素を含むガスを抽気し系外に排出することで、塩素に起因するキルンやプレヒータ系のコーチングトラブルを防止する。塩素バイパスシステムは、セメント製造設備を構成するキルンの窯尻近傍に設けられた燃焼ガス抽気プローブ(以下、「プローブ」ともいう)によって燃焼ガスの一部を抽気する。抽気された燃焼ガス(以下、「抽気ガス」ともいう)は低温ガス(以下、「冷風」ともいう)と混合され、抽気ガス中に含まれる塩素分は気体状態から固体状態に相転移し、塩化カリウムを主成分とする塩素バイパスダストと呼ばれる形で回収・系外除去される。このとき抽気ガスを急冷することにより、塩素分がバイパスダストの微粉側へ濃縮することが分かっている。
【0003】
塩素バイパスシステムにおいて、ガス中に含まれる原料分(粗粉)と塩素分(微粉)はサイクロンで分離され、原料分はキルン側へと戻され、塩素分は系外に排出される。しかし、冷却速度が遅いと塩素分濃縮が低い粗粉と共にキルン側に戻る塩素分量が多くなり、塩素除去効率は低下する。
【0004】
下記特許文献1には、冷風が導入される冷却管の旋回部が、抽気管を取り囲む円環状に形成された塩素バイパス装置が記載されている。冷風は、旋回部で旋回しつつ抽気管内へ流入することで、抽気ガスと冷風が攪拌、混合されるため、抽気ガスを冷風によって急速に冷却することができる。しかしながら、冷風を旋回させながら流入させており、抽気ガスと冷風が混合するまでに冷風の持つ運動量が減衰してしまい、十分に冷却ができないおそれがある。
【0005】
ところで、近年、脱炭素や原燃料コスト低減を目的に廃プラスチックを始めとする廃棄物の活用が推進されており、セメント製造設備に持ち込まれる塩素量(インプット塩素量)が増加している。そのため、塩素バイパスシステムの能力増強、つまり抽気風量の増量(=抽気率の増強)が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5051325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抽気風量を増量するとそのガス温度を一定以下に冷却するため、冷風量(低温ガス量)もそれに応じて増量させる必要がある。一方、それによりプローブ内のガス速度が増加するため、プローブ内の混合冷却域の形成が悪化し、短時間かつ均一な冷却が難しい。それに対応するため、例えばプローブの大型化や冷風の吹込みの調整が必要となる。他方、冷風の吹込み方法や条件によって、窯尻に冷風がリーク(逆流や吹き抜け)し、コーチング付着の助長(キルン運転への悪影響)や熱ロス(燃料の増し焚き)が発生する。
【0008】
よって、本発明の目的は、抽気率を増強した場合にも抽気ガスを十分に冷却でき、かつ窯尻への冷風の逆流を抑制できる燃焼ガス抽気プローブ及びその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃焼ガス抽気プローブは、キルンからの燃焼ガスの一部を抽気するガス管と、
前記ガス管に穿設され、前記ガス管が抽気した抽気ガスに対して低温ガスを各々吐出する複数の吐出口と、を備え、
前記複数の吐出口は、各々の前記吐出口から吐出される前記低温ガスが前記ガス管内で互いに衝突しないように配置されている。
【0010】
また、本発明の燃焼ガス抽気プローブの運転方法は、上記の燃焼ガス抽気プローブの運転方法であって、
前記吐出口から吐出される前記低温ガスの風速が25~180m/sを満たし、かつ前記抽気ガスの運動量に対する前記吐出口一口当たりの前記低温ガスの運動量の比が1.8~5.3を満たす。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抽気率を増強した場合にも抽気ガスを十分に冷却でき、かつ窯尻への冷風の逆流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る燃焼ガス抽気プローブを含む塩素バイパスシステムの一実施形態を表わす全体構成図
図2】プローブを模式的に示す断面図
図3図2のIII-III断面図
図4A】シミュレーション解析に用いたプローブの断面図
図4B】シミュレーション解析に用いたプローブの断面図
図5】冷風-抽気ガス運動量比とプローブの出口断面における温度偏差の関係を示すグラフ
図6A】他の実施形態に係るプローブの断面図
図6B】他の実施形態に係るプローブの断面図
図6C】他の実施形態に係るプローブの断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る燃焼ガス抽気プローブ及びその運転方法における一実施形態について、図1図3を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
図1は、本発明に係る燃焼ガス抽気プローブを含む塩素バイパスシステムの一実施形態を模式的に示す全体構成図である。塩素バイパスシステム100は、窯尻1aから最下段サイクロン(不図示)に至るまでのキルン排ガス流路から燃焼ガスG1の一部を抽気するプローブ2と、プローブ2に冷風C(低温ガスに相当)を供給する冷風ファン3と、抽気ガスG2と冷風Cが混合された混合ガスG3に含まれる粗紛A1を分離する分級機としてのサイクロン5と、サイクロン5から排出された微粉A2を含む混合ガスG4を冷却する冷却器6と、冷却器6から排出された排ガスG5から微粉A2を回収する集塵装置7と、集塵装置7の排ガスG6を誘引する排気ファン8と、を備える。
【0015】
図2は、プローブ2を模式的に示す断面図である。プローブ2は、窯尻1aからキルン排ガス流路の一部として上方へ向かう立上がり部1bに突設されている。プローブ2の入口2aは、立上がり部1b内のキルン排ガス流路に開口する。プローブ2による抽気率は、10%以上であり、好ましくは12%以上であり、より好ましくは15%以上である。なお、抽気率は、窯尻1aを単位時間に通過する燃焼ガスG1のガス風量(Nm3/単位時間)に対する、単位時間に抽気される抽気ガスG2のガス風量(Nm3/単位時間)の割合(比率)をいう。
【0016】
また、抽気ガスG2の抽気量は、2,500Nm3/h以上が好ましく、10,000Nm3/h以上がより好ましい。
【0017】
プローブ2は、円筒状の内管21(ガス管に相当)と、内管21を囲む円筒状の外管22と、内管21と外管22との間に形成された冷風通路23と、冷風ファン3からの冷風を冷風通路23に供給する供給口24とを備える。抽気ガスG2は、内管21内を矢印の方向に流れる。
【0018】
プローブ2は、内管21に穿設され、冷風通路23に供給された冷風Cを抽気ガスG2に向かって吐出する複数の吐出口25を備える。吐出口25は、円状に形成されている。
【0019】
図3は、図2のIII-III矢視図である。複数の吐出口25は、内管21の延伸方向において略同じ位置に配置され、好ましくは同じ位置に配置されている。言い換えると、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向に対して垂直な面内に配置されていることが好ましい。ただし、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向において完全に同じ位置に配置される必要はない。
【0020】
本実施形態において、2つの吐出口25は、内管21の中心Oを対称の中心として点対称に配置されている。2つの吐出口25は、内管21の周方向に互いに180度ずれて配置されている。
【0021】
吐出口25は、中心25cが水平線Hと平行となるように配置されている。2つの吐出口25は、内管21内の抽気ガスG2に対してそれぞれ冷風Cを吐出する。すなわち、2つの吐出口25は、互い違いに配置されており、各々の吐出口25から吐出される冷風Cは、内管21内で互いに衝突しない。これにより、各々の吐出口25から吐出される冷風Cは、互いに衝突して拡散することがなく、窯尻1a側へ向かう方向の流れが生じにくい。その結果、窯尻1aへの冷風Cの逆流を抑えて、熱ロスを抑制できる。
【0022】
内管21は、吐出口25の周囲を取り囲むノズル26を有することが好ましい。円筒状のノズル26は、吐出口25の中心25cと同軸上に配置される。吐出口25の周囲にノズル26を設けることで、冷風Cは吐出口25の中心25cに沿った方向に吐出される。なお、内管21の肉厚が十分に大きい等の場合、ノズル26は必ずしも必要ではない。
【0023】
塩素バイパスシステム100は、不図示の制御部を備える。制御部は、冷風ファン3の出力を調整できる。
【0024】
制御部は、プローブ2の入口2aにおける抽気ガスG2の風速、風量、温度から算出される抽気ガスG2の運動量MGに対する、吐出口25一口当たりの冷風Cの風速、風量、温度から算出される冷風Cの運動量MCの比(MC/MG)が1.8~5.3の範囲となるように、冷風ファン3の出力を調整する。これにより、抽気率が増加した場合にも抽気ガスG2を十分に冷却でき、所定の塩素除去効率を維持した運転を可能とする(詳しくは後述の実施例を参照)。
【0025】
なお、本明細書において、ガスの(単位時間当たりの)運動量は以下のように定義される。
ガスの運動量[kg・m/s2]=密度[kg/m3]×風速[m/s]×風量[m3/s]
【0026】
運動量の比(MC/MG)を下げ過ぎると、冷風Cの運動量MCが抽気ガスG2の運動量MGに対して小さいため、抽気ガスG2との十分な混合が得られにくくなる。そのため、運動量の比(MC/MG)は、1.8以上であり、好ましくは3.0以上である。
【0027】
一方、運動量の比(MC/MG)を上げ過ぎると圧損が増加し、冷風ファン3の大型化も必要となる。また、運動量の比(MC/MG)の増加に伴う、プローブ2の出口断面2bにおける温度偏差(詳しくは後述する)の低減割合が縮小する一方で、プローブ2内を逆流して窯尻1aに到達する冷風量が増加する。そのため、運動量の比(MC/MG)は、5.3以下であり、好ましくは4.0以下である。
【0028】
冷風Cの風速は、25~180m/sが好ましく、50~150m/sがより好ましい。
【0029】
なお、吐出口25の開口面積を変動させる不図示の可変ノズルを設け、冷風Cの風量を維持したまま風速のみを増加させることで運動量の比(MC/MG)を増加してもよい。
【実施例
【0030】
以下、本発明についてさらに詳細に説明するために具体的な実施例等を示すが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0031】
本発明者らは、抽気ガスG2と冷風Cの混合状態のシミュレーション解析を通じ、複数の吐出口25の配置による効果確認を実施した。シミュレーション解析に用いたソフトウェアは、ANSYS社製のFluent 2020 R2である。
【0032】
シミュレーション解析に用いたプローブの断面形状を図4A及び図4Bに示す(なお、外管22は図示していない)。図4Aは、内管21が抽気した抽気ガスG2の流れ方向に対して直角方向に冷風Cを各々吐出し、かつ各々吐出される冷風Cが内管21内で互いに衝突しないように、一対の吐出口25を配置した例を示す。図4Bは、内管21が抽気した抽気ガスG2の流れ方向に対して直角方向に、かつ抽気ガスG2の流れの中心方向に冷風Cを各々吐出するように、一対の吐出口250を配置した例を示す。
【0033】
解析条件を表1に示す。塩素バイパスシステム100での抽気率は10~15%とした。また、冷風Cは20℃であり、プローブ2の出口断面2b(図2を参照)における平均温度が400℃となるように冷風Cを導入した。各条件では吐出口25,250の面積を調整することで、所定の風量を維持したまま冷風Cの速度を変化させている。
【0034】
冷風Cの風速は、プローブ2の入口2aにおける抽気ガスG2の風速、風量、温度から算出される抽気ガスG2の運動量に対する、吐出口25,250一口当たりの冷風Cの風速、風量、温度から算出される冷風Cの運動量の比を鑑みて設定し、解析した。
【0035】
表1において、「冷風速度」は、冷風Cの風速を意味し、「冷風-抽気ガス運動量比」は、抽気ガスG2の運動量MGに対する、吐出口25,250一口当たりの冷風Cの運動量MCの比(MC/MG)を意味する(後述の表2についても同様)。また、表1において、「互い違い型」は、吐出口が図4Aに示す配置であることを意味し、「衝突型」は、吐出口が図4Bに示す配置であることを意味する。
【0036】
【表1】
【0037】
プローブ2の出口断面2bにおける平均温度を400℃となるように冷風Cを導入させ、抽気ガスG2の温度を塩素化合物の融点である600~700℃以下(特許第4294871号公報参照)に下げる観点から、ガス冷却の程度の判断は、プローブ2の出口断面2bにおける温度偏差が200℃以下の達成可否を評価基準とした。ここで、プローブ2の出口断面2bにおける温度偏差とは、出口断面2b内における平均温度からのバラツキである。
【0038】
また、併せてプローブ2の入口2aに達した冷風Cの割合を、プローブ2と窯尻1aの接合部(入口2a)での温度低下(窯尻1aの温度との差分)から算定し、導入した冷風Cの逆流率として評価した。プローブ2の出口断面2bにおける温度偏差、および窯尻1aへの逆流率を表2に示す。表2において、「○」は逆流率が0であることを示し、「△」は逆流率が10%以下であることを示し、「×」は逆流率が10%を超えることを示す。
【0039】
【表2】
【0040】
解析例1-1~2-2の「互い違い型」では、同条件であれば、解析例3-1~4-2の「衝突型」と比べて温度偏差がやや高いが、温度偏差が200℃以下であり、十分な冷却がなされている。
【0041】
また、解析例1-1~2-2の「互い違い型」では、窯尻1aへの逆流が生じていない。これは、「衝突型」では、複数の吐出口250から各々吐出される冷風Cは、互いに衝突した後に窯尻1a側への速度ベクトルが発生するが、「互い違い型」では、冷風C同士の直接衝突がないため、窯尻1a側への速度ベクトルの発生量が少ないためである。
【0042】
冷風-抽気ガス運動量比とプローブ2の出口断面2bにおける温度偏差の関係を図5に示す。図5に示されるように、冷風-抽気ガス運動量比は、1.8~5.3の範囲であり、3.0~4.0の範囲ではより早期にプローブ2内の抽気ガスG2の温度の均一化が図れる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係るプローブ2は、キルン1からの燃焼ガスG1の一部を抽気する内管21と、内管21に穿設され、内管21が抽気した抽気ガスG2に対して冷風Cを各々吐出する複数の吐出口25と、を備え、複数の吐出口25は、各々の吐出口25から吐出される冷風Cが内管21内で互いに衝突しないように配置されている。
【0044】
この構成によれば、各々の吐出口25から吐出される冷風Cは、互いに衝突して拡散することがなく、窯尻1a側へ向かう方向の流れが生じにくい。これにより、抽気率を増強した場合にも抽気ガスG2を十分に冷却でき、かつ窯尻1aへの冷風Cの逆流を抑制できる。
【0045】
また、本実施形態に係るプローブ2においては、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向において同じ位置に配置されていることが好ましい。
【0046】
この構成によれば、良好な冷却性能を達成することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るプローブ2においては、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向に見たとき、内管21の中心Oを対称の中心として点対称に配置されていることが好ましい。
【0048】
この構成によれば、良好な冷却性能を達成することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るプローブ2においては、複数の吐出口25は、内管21の周方向に等間隔に配置されていることが好ましい。
【0050】
この構成によれば、良好な冷却性能を達成することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るプローブ2の運転方法は、吐出口25から吐出される冷風Cの風速が25~180m/sを満たし、かつ抽気ガスG2の運動量MGに対する吐出口25一口当たりの冷風Cの運動量MCの比(MC/MG)が1.8~5.3を満たす。
【0052】
この構成によれば、抽気率を増強した場合にも抽気ガスG2を十分に冷却でき、かつ窯尻1aへの冷風Cの逆流を抑制できる。
【0053】
また、本実施形態に係るプローブ2の運転方法においては、冷風Cは、内管21の内壁面に衝突した後、窯尻1aに逆流しないことが好ましい。
【0054】
この構成によれば、逆流率を低く抑えることができる。
【0055】
なお、燃焼ガス抽気プローブ及びその運転方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、燃焼ガス抽気プローブは、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変形例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0056】
(1)上記実施形態に係るプローブ2においては、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向において同じ位置に配置されている、という構成である。しかしながら、プローブ2は、かかる構成に限られない。例えば、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向において異なる位置に配置されてもよい。
【0057】
(2)本実施形態に係るプローブ2においては、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向に見たとき、内管21の中心Oを対称の中心として点対称に配置されている、という構成である。しかしながら、プローブ2は、かかる構成に限られない。例えば、図6A及び図6Bに示すように、複数の吐出口25は、内管21の延伸方向に見たとき、内管21の中心Oを対称の中心として点対称に配置されていなくともよい。
【0058】
(3)本実施形態に係るプローブ2においては、2つの吐出口25は、内管21の周方向に等間隔に配置されている、という構成である。しかしながら、プローブ2は、かかる構成に限られない。例えば、図6Cに示すように、3つの吐出口25が、内管21の周方向に等間隔に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 :キルン
1a :窯尻
1b :立上がり部
2 :プローブ
2a :プローブの入口
2b :プローブの出口断面
3 :冷風ファン
5 :サイクロン
6 :冷却器
7 :集塵装置
8 :排気ファン
21 :内管
22 :外管
23 :冷風通路
24 :供給口
25 :吐出口
25c :吐出口の中心
100 :塩素バイパスシステム
A1 :粗紛
A2 :微粉
C :冷風
G1 :燃焼ガス
G2 :抽気ガス
G3 :混合ガス
G4 :混合ガス
G5 :排ガス
G6 :排ガス
H :水平線
MC :冷風の運動量
MG :抽気ガスの運動量
O :内管の中心


図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C