(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】電力管理サーバ及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20231117BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20231117BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20231117BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/46
H02J7/35 K
H02J13/00 311R
(21)【出願番号】P 2022046834
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2019558138の分割
【原出願日】2018-11-26
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2017236460
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】沖野 健太
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177623(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207851(WO,A1)
【文献】特開2016-127734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 7/35
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池装置を有する複数の施設の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択する制御部を備え、
前記制御部は、前記制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が前記所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする第2処理を前記第2施設に適用し、
前記制御対象期間は、前記蓄電池装置が放電される期間であり、
前記制御部は、
前記蓄電池装置を有する複数の施設の中から、前記蓄電池装置の放電量を抑制する第1処理を適用する2以上の第1施設を選択し、
前記2以上の第1施設に対して、前記蓄電池装置の放電量の抑制条件として同一の条件を適用する、電力管理サーバ。
【請求項2】
前記蓄電池装置は、負荷追従処理が行われる、請求項1記載の電力管理サーバ。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2処理を前記第2施設に適用しても、前記第2施設の全体の削減可能容量が目標削減容量に達しない場合に、前記第1処理を適用する前記第1施設を選択する、請求項1又は2に記載の電力管理サーバ。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2施設以外の施設を前記第1施設として選択する、請求項1乃至3のいずれかに記載の電力管理サーバ。
【請求項5】
前記制御部は、前記制御対象期間において、前記第1処理及び前記第2処理の少なくともいずれかに係る再演算を一定期間毎に行う、請求項1乃至4のいずれかに記載の電力管理サーバ。
【請求項6】
前記第1処理に係る前記再演算は、前記第1施設の選択及び前記抑制条件の設定の少なくともいずれかを含む、請求項5に記載の電力管理サーバ。
【請求項7】
前記第2処理に係る前記再演算は、前記第2施設の選択及び前記所定タイミングのシフト方法の設定の少なくともいずれかを含む、請求項5又は請求項6に記載の電力管理サーバ。
【請求項8】
蓄電池装置を有する複数の施設の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択する制御部を備え、
前記制御部は、前記制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が前記所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする第2処理を前記第2施設に適用し、
前記制御対象期間は、前記蓄電池装置が放電される期間であり、
前記制御部は、前記第2処理により、前記制御対象期間
の各タイミングにお
いて、前記第2施設における消費電力を前記蓄電池装置の放電電力によって賄える場合であっても、前記消費電力の少なくとも一部に系統からの買電電力
を用いる、電力管理サーバ。
【請求項9】
蓄電池装置を有する複数の施設の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択するステップBと、
前記制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が前記所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする第2処理を前記第2施設に適用するステップCとを備え、
前記制御対象期間は、前記蓄電池装置が放電される期間であり、
前記蓄電池装置を有する複数の施設の中から、前記蓄電池装置の放電量を抑制する第1処理を適用する2以上の第1施設を選択するステップDと、
前記2以上の第1施設に対して、前記蓄電池装置の放電量の抑制条件として同一の条件を適用するステップEと、をさらに備える、電力管理方法。
【請求項10】
蓄電池装置を有する複数の施設の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択するステップBと、
前記制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が前記所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする第2処理を前記第2施設に適用するステップCとを備え、
前記制御対象期間は、前記蓄電池装置が放電される期間であり、
前記ステップCは、前記第2処理により、前記制御対象期間
の各タイミングにお
いて、前記第2施設における消費電力を前記蓄電池装置の放電電力によって賄える場合であっても、前記消費電力の少なくとも一部に系統からの買電電力
を用いるステップを含む、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理サーバ及び電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統の電力需給バランスを維持するために、電力系統から施設への潮流の量を抑制する技術が知られている。電力系統の電力需給バランスを維持するために、施設に設けられる蓄電池装置を利用する技術も提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/041010A1号パンフレット
【文献】国際公開第2016/084396A1号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
第1の特徴に係る電力管理サーバは、蓄電池装置を有する複数の施設の中から、前記蓄電池装置の放電量を抑制する第1処理を適用する2以上の第1施設を選択する制御部を備える。前記制御部は、前記2以上の第1施設に対して、前記蓄電池装置の放電量の抑制条件として同一の条件を適用する。
【0005】
第2の特徴に係る電力管理サーバは、蓄電池装置を有する複数の施設の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択する制御部を備える。前記制御部は、前記制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が前記所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする第2処理を前記第2施設に適用する。
【0006】
第3の特徴に係る電力管理方法は、蓄電池装置を有する複数の施設の中から、前記蓄電池装置の放電量を抑制する第1処理を適用する2以上の第1施設を選択するステップAを備える。前記ステップAは、前記2以上の第1施設に対して、前記蓄電池装置の放電量の抑制条件として同一の条件を適用するステップを含む。
【0007】
第4の特徴に係る電力管理方法は、蓄電池装置を有する複数の施設の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択するステップBと、前記制御対象期間の満了タイミングよりも前において、前記蓄電池装置の蓄電残量が前記所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする第2処理を前記第2施設に適用するステップCとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源管理システム100を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る施設300を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電力管理サーバ200を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るローカル制御装置360を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る第1処理について説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第1処理について説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電力管理方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0010】
但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれている場合があることは勿論である。
【0011】
[開示の概要]
近年では、電力系統の需給バランスを維持するために蓄電池装置を用いるケースにおいて、施設の需要電力に追従するように蓄電池装置の放電電力を制御することが考えられる(以下、負荷追従処理)。
【0012】
しかしながら、電力系統の全体として電力を抑制する必要があるケースにおいて、以下に示す問題が生じる可能性がある。具体的には、負荷追従処理が行われている施設において、ベースライン電力がゼロであるが故に電力を削減する余地が小さくなる事態が考えられる。一方で、ベースライン電力を確保するために、蓄電池装置の放電を単純に抑制すると、蓄電池装置の導入メリットが損なわれる恐れがある。
【0013】
そこで、開示の概要では、上述した課題を解決するためになされたものであり、電力を削減する余地を適切に確保することを可能とする電力管理サーバ及び電力管理方法について説明する。
【0014】
[実施形態]
(電源管理システム)
以下において、実施形態に係る電源管理システムについて説明する。
【0015】
図1に示すように、電源管理システム100は、電力管理サーバ200と、施設300と、電力会社400とを有する。
図1では、施設300として、施設300A~施設300Cが例示されている。
【0016】
各施設300は、電力系統110に接続される。以下において、電力系統110から施設300への電力の流れを潮流と称し、施設300から電力系統110への電力の流れを逆潮流と称する。
【0017】
電力管理サーバ200、施設300及び電力会社400は、ネットワーク120に接続されている。ネットワーク120は、電力管理サーバ200と施設300との間の回線及び電力管理サーバ200と電力会社400との間の回線を提供すればよい。例えば、ネットワーク120は、インターネットである。ネットワーク120は、VPN(Virtual Private Network)などの専用回線を提供してもよい。
【0018】
電力管理サーバ200は、発電事業者、送配電事業者或いは小売事業者、リソースアグリゲータなどの電力事業者によって管理されるサーバである。リソースアグリゲータは、VPP(Virtual Power Plant)において発電事業者、送配電事業者及び小売事業者などに逆潮流の電力を提供する電力事業者である。リソースアグリゲータは、リソースアグリゲータによって管理される施設300の消費電力の削減によって余剰電力(ネガワット)を生み出す電力事業者であってもよい。このような余剰電力は発電電力と見做されてもよい。リソースアグリゲータは、リソースアグリゲータによって管理される施設300の消費電力の抑制又は増大(例えば、蓄電池装置の充電電力の抑制又は増大)によって電力系統110の電力需給バランスを維持する電力事業者であってもよい。実施形態において、電力管理サーバ200は、逆潮流の電力の買取エンティティの一例である。電力管理サーバ200は、電源管理サーバの一例である。
【0019】
電力管理サーバ200は、施設300に設けられるローカル制御装置360に対して、施設300に設けられる分散電源(例えば、太陽電池装置310、蓄電池装置320又は燃料電池装置330)に対する制御を指示する制御メッセージを送信する。例えば、電力管理サーバ200は、潮流の制御を要求する潮流制御メッセージ(例えば、DR;Demand Response)を送信してもよく、逆潮流の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信してもよい。さらに、電力管理サーバ200は、分散電源の動作状態を制御する電源制御メッセージを送信してもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、絶対値(例えば、○○kW)で表されてもよく、相対値(例えば、○○%)で表されてもよい。或いは、潮流又は逆潮流の制御度合いは、2以上のレベルで表されてもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、現在の電力需給バランスによって定められる電力料金(RTP;Real Time Pricing)によって表されてもよく、過去の電力需給バランスによって定められる電力料金(TOU;Time Of Use)によって表されてもよい。
【0020】
施設300は、
図2に示すように、太陽電池装置310、蓄電池装置320、燃料電池装置330と、負荷機器340、ローカル制御装置360及び電力計380を有する。
【0021】
太陽電池装置310は、太陽光などの光に応じて発電を行う分散電源である。太陽電池装置310は、所定買取価格が適用される特定分散電源の一例である。例えば、太陽電池装置310は、PCS(Power Conditioning System)及び太陽光パネルによって構成される。
【0022】
蓄電池装置320は、電力の充電及び電力の放電を行う分散電源である。蓄電池装置320は、所定買取価格が適用されない分散電源の一例である。例えば、蓄電池装置320は、PCS及び蓄電池セルによって構成される。
【0023】
燃料電池装置330は、燃料を用いて発電を行う分散電源である。燃料電池装置330は、所定買取価格が適用されない分散電源の一例であり、定格電力を出力する定格運転モードを有する分散電源である。例えば、燃料電池装置330は、PCS及び燃料電池セルによって構成される。
【0024】
例えば、燃料電池装置330は、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)であってもよく、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)であってもよく、リン酸型燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)であってもよく、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)であってもよい。
【0025】
実施形態において、太陽電池装置310、蓄電池装置320及び燃料電池装置330は、VPPに用いられる電源であってもよい。
【0026】
負荷機器340は、電力を消費する機器である。例えば、負荷機器340は、空調機器、照明機器、AV(Audio Visual)機器などである。
【0027】
ローカル制御装置360は、施設300の電力を管理する装置(EMS;Energy Management System)である。ローカル制御装置360は、太陽電池装置310の動作状態を制御してもよく、施設300に設けられる蓄電池装置320の動作状態を制御してもよく、施設300に設けられる燃料電池装置330の動作状態を制御してもよい。ローカル制御装置360の詳細については後述する(
図4を参照)。
【0028】
実施形態において、電力管理サーバ200とローカル制御装置360との間の通信は、第1プロトコルに従って行われる。一方で、ローカル制御装置360と分散電源(太陽電池装置310、蓄電池装置320又は燃料電池装置330)との間の通信は、第1プロトコルとは異なる第2プロトコルに従って行われる。例えば、第1プロトコルとしては、Open ADR(Automated Demand Response)に準拠するプロトコル、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。例えば、第2プロトコルは、ECHONET Lite(登録商標。以下同じ)に準拠するプロトコル、SEP(Smart Energy Profile)2.0、KNX、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。なお、第1プロトコルと第2プロトコルは異なっていればよく、例えば、両方が独自の専用プロトコルであっても異なる規則で作られたプロトコルであればよい。
【0029】
電力計380は、電力系統110から施設300への潮流の量及び施設300から電力系統110への逆潮流の量を計測する第1電力計の一例である。例えば、電力計380は、電力会社400に帰属するスマートメータである。
【0030】
ここで、電力計380は、単位時間(例えば、30分)毎に、単位時間における計測結果(潮流又は逆潮流の量(Wh))を示す情報要素を含むメッセージをローカル制御装置360に送信する。電力計380は、自律的にメッセージを送信してもよく、ローカル制御装置360の要求に応じてメッセージを送信してもよい。
【0031】
電力会社400は、電力系統110などのインフラストラクチャーを提供するエンティティであり、例えば、発電事業者又は送配電事業者などの電力事業者である。電力会社400は、電力管理サーバ200を管理するエンティティに対して、各種の業務を委託してもよい。
【0032】
(電力管理サーバ)
以下において、実施形態に係る電力管理サーバについて説明する。
図3に示すように、電力管理サーバ200は、管理部210と、通信部220と、制御部230とを有する。電力管理サーバ200は、VTN(Virtual Top Node)の一例である。
【0033】
管理部210は、不揮発性メモリ又は/及びHDDなどの記憶媒体によって構成されており、電力管理サーバ200によって管理される施設300に関するデータを管理する。電力管理サーバ200によって管理される施設300は、電力管理サーバ200を管理するエンティティと契約を有する施設300であってもよい。例えば、施設300に関するデータは、電力系統110から施設300に供給される需要電力であってもよく、電力系統110全体の需要電力の削減要請(DR;Demand Response)に応じて各施設300で削減された電力量であってもよい。施設300に関するデータは、施設300に設けられる分散電源(太陽電池装置310、蓄電池装置320又は燃料電池装置330)の種別、施設300に設けられる分散電源(太陽電池装置310、蓄電池装置320又は燃料電池装置330)のスペックなどであってもよい。スペックは、太陽電池装置310の定格発電電力(W)、蓄電池装置320の最大出力電力(W)、燃料電池装置330の最大出力電力(W)であってもよい。
【0034】
通信部220は、通信モジュールによって構成されており、ネットワーク120を介してローカル制御装置360と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUNなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。通信部220は、上述したように、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージをローカル制御装置360に送信する。通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答をローカル制御装置360から受信する。
【0035】
実施形態において、通信部220は、電力系統110から施設300に供給される需要電力を示す情報要素を含むメッセージを施設300(例えば、ローカル制御装置360又は電力計380)から受信する。需要電力は、上述した電力計380によって測定された値でもよい。需要電力は、負荷機器340の消費電力から分散電源(太陽電池装置310、蓄電池装置320、燃料電池装置330)の出力電力を除いた値でもよい。
【0036】
制御部230は、メモリ及びCPUなどによって構成されており、電力管理サーバ200に設けられる各構成を制御する。例えば、制御部230は、制御メッセージの送信によって、施設300に設けられるローカル制御装置360に対して、施設300に設けられる分散電源(太陽電池装置310、蓄電池装置320又は燃料電池装置330)に対する制御を指示する。制御メッセージは、上述したように、潮流制御メッセージであってもよく、逆潮流制御メッセージであってもよく、電源制御メッセージであってもよい。
【0037】
(ローカル制御装置)
以下において、実施形態に係るローカル制御装置について説明する。
図4に示すように、ローカル制御装置360は、第1通信部361と、第2通信部362と、制御部363とを有する。ローカル制御装置360は、VEN(Virtual End Node)の一例である。
【0038】
第1通信部361は、通信モジュールによって構成されており、ネットワーク120を介して電力管理サーバ200と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUNなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。第1通信部361は、上述したように、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージを電力管理サーバ200から受信する。第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答を電力管理サーバ200に送信する。
【0039】
第2通信部362は、通信モジュールによって構成されており、分散電源(太陽電池装置310、蓄電池装置320又は燃料電池装置330)と通信を行う。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUNなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。第2通信部362は、上述したように、第2プロトコルに従って通信を行う。例えば、第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージを分散電源に送信する。第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージ応答を分散電源から受信する。
【0040】
制御部363は、メモリ及びCPUなどによって構成されており、ローカル制御装置360に設けられる各構成を制御する。具体的には、制御部363は、施設300の電力を制御するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって、分散電源の動作状態の設定を機器に指示する。制御部363は、施設300の電力を管理するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって分散電源の情報の報告を分散電源に指示してもよい。
【0041】
(適用シーン)
以下において、実施形態の適用シーンについて説明する。電力管理サーバ200の上位ノードである電力会社400から電力系統110の需要電力の削減要請を電力管理サーバ200が受信するケースが想定されている。このようなケースにおいて、電力管理サーバ200は、電力管理サーバ200によって管理される施設300の全体として契約電力量に相当する電力量をベースライン電力から削減すればよい。
【0042】
契約電力量は、ネガワット取引において、電力管理サーバ200と電力会社400との間で定められた電力量であればよい。ベースライン電力は、削減要請が行われなかった場合に想定される需要電力である。ベースライン電力は、削減要請の発動予告よりも前の一定期間の需要電力の平均値であってもよい。一定期間は、ネガワット取引の実体に応じて定められてもよく、電力管理サーバ200と電力会社400との間で定められてもよい。
【0043】
このようなケースにおいて、蓄電池装置320が負荷追従処理を行っていると、ベースライン電力がゼロになる可能性があり、ベースライン電力がゼロである場合には、削減要請に応じることができない。従って、電力管理サーバ200は、契約電力量に相当する電力量が施設300に供給される状態を維持することが好ましい。例えば、
図1に示すケースにおいて、施設300A~施設300Cに供給される電力量の合計量が契約電力量に相当する電力量に維持されることが好ましい。
【0044】
このような背景下において、電力管理サーバ200は、蓄電池装置320を有する複数の施設300の中から、蓄電池装置320の放電量を抑制する第1処理を適用する2以上の第1施設を選択する制御部230を備える。このようなケースにおいて、制御部230は、2以上の第1施設に対して、蓄電池装置320の放電量の抑制条件として同一の条件を適用する。
【0045】
例えば、抑制条件は、2以上の第1施設の間で公平性が担保される条件であればよい。例えば、抑制条件は、放電電力の抑制比率によって定められてもよい。抑制比率は、「1-(下げDR不足容量/総放電計画量)」によって算出することができる。
【0046】
下げDR不足容量は、下げDR所要容量から下げDR確保容量を除いた値である。下げDR所要容量は、電力系統110から第1施設の全体に供給されるべき電力量である。すなわち、下げDR所要容量は、第1施設の全体として削減要請に応じるべき容量(以下、目標削減容量とも称する)である。下げDR確保容量は、第1施設の全体として既に確保されている容量であり、総需要電力量から総放電計画量を除いた値である。総需要電力量は、第1施設の全体の需要電力量である。総放電計画量は、第1施設の全体として蓄電池装置320から放電するように計画された電力量である。各第1施設の放電計画量は、蓄電池装置320の蓄電容量又は蓄電残量に基づいて定められる。
【0047】
さらに、制御部230は、複数の施設300の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、蓄電池装置320の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択してもよい。このようなケースにおいて、制御部230は、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、蓄電池装置320の蓄電残量が所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする第2処理を第2施設に適用する。例えば、所定閾値はゼロである。上述したように、制御対象期間は、蓄電池装置320の放電が想定される期間である。
【0048】
このような第2処理によれば、制御対象期間の全体としては蓄電池装置320の放電量が維持されるため、蓄電池装置320の導入メリットが損なわれる事態を抑制することができる。ここで、制御対象期間の満了タイミングまで第2施設の削減可能容量(すなわち、買電電力量)を維持する観点から、制御対象期間の満了まで所定タイミングをシフトしてもよい。
【0049】
上述した第1施設及び第2施設の選択が行われるケースにおいて、制御部230は、第2処理を第2施設に適用しても、第2施設の全体の削減可能容量が目標削減容量に達しない場合に、第1処理を適用する第1施設を選択してもよい。制御部230は、第2施設以外の施設300を第1施設として選択してもよい。これによって、第1処理及び第2処理が重複して適用される不公正を回避することができる。
【0050】
制御部230は、制御対象期間において、第1処理及び第2処理の少なくともいずれかに係る再演算を一定期間毎に行ってもよい。再演算を行う一定期間は、放電計画量を算出する一定期間と同じであってもよい。例えば、再演算を行う一定期間は、30分である。ここで、第1処理に係る再演算は、第1施設の選択及び抑制条件の設定の少なくともいずれかを含む。第2処理に係る再演算は、第2施設の選択及び所定タイミングのシフト方法の設定の少なくともいずれかを含む。
【0051】
(第1処理)
以下において、実施形態に係る第1処理の一例について説明する。上述したように、第1処理は、抑制条件に従って蓄電池装置320の放電量を抑制する処理である。ここでは、抑制条件として抑制比率が用いられるケースについて説明する。
【0052】
図5に示すように、第1処理が適用されるケースでは、第1処理が適用されないケース(例えば、負荷追従処理)と比べて、蓄電池装置320の放電電力が抑制比率に基づいて抑制される。従って、第1処理が適用されるケースでは、第1処理が適用されないケースと比べて、削減可能電力が増大する。すなわち、放電電力の抑制によって削減可能電力が増大する。例えば、削減可能電力は、電力系統110から施設300に供給される電力(買電電力)である。
【0053】
(第2処理)
以下において、上述した第2処理の一例について説明する。上述したように、第2処理は、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、蓄電池装置320の蓄電残量が所定閾値以下となる所定タイミングを時間軸上において後のタイミングにシフトする処理である。ここでは、所定閾値がゼロであるケースについて説明する。
【0054】
図6に示すように、第2処理が適用されないケース(例えば、負荷追従処理)では、所定タイミングがT1であり、7:00のタイミング又は17:00以降の期間において、施設300の消費電力の全てが蓄電池装置320の放電電力によって賄われる。従って、7:00のタイミング又は17:00以降の期間において削減可能電力がゼロである。これに対して、第2処理が適用されるケースでは、所定タイミングがT2にシフトしており、7:00のタイミング又は17:00以降の期間であっても、施設300の消費電力の全てが蓄電池装置320の放電電力によって賄われずに、電力系統110から施設300に対して電力が供給される。従って、7:00のタイミング又は17:00以降の期間であっても削減可能電力が確保される。すなわち、制御対象期間における蓄電池装置320の放電量が減少しないため、蓄電池装置320の導入メリット(例えば、電気代削減効果)を損なうことなく、削減可能電力がゼロになる可能性を軽減することができる。
【0055】
ここで、第2処理が適用されない場合には、8:00~17:00まで蓄電池装置320の放電が行われているため、17:00以降において、蓄電池装置320の蓄電残量が枯渇するため、削減可能容量がゼロとなっている。第2処理が適用される場合には、23:00以降(制御対象期間外)において、蓄電池装置320の蓄電残量が枯渇するため、削減可能容量がゼロとなっている。なお、第2処理が適用される場合において、電力管理サーバ200は、23:00以降に蓄電池装置320の充電を開始することによって削減可能容量を増大させてもよい。同様に、第2処理が適用されない場合において、電力管理サーバ200は、23:00以降に蓄電池装置320の充電を開始することによって削減可能容量を増大させてもよい。
【0056】
(第1処理及び第2処理の適用例)
以下において、第1処理及び第2処理の適用例について例示する。ここでは、制御対象期間に含まれる一定期間を単位として蓄電池装置320の放電計画が策定されるケースを例示する。制御対象期間は、蓄電池装置320の放電が想定される期間である。制御対象期間は、ネガワット取引に係る契約によって定められる期間であってもよく、電力系統110から供給される電力の価格が閾値以上である期間であってもよい。
【0057】
第1ステップにおいて、制御部230は、施設の需要電力量の予測値に基づいて、制御対象期間における施設の需要電力量を算出する。
【0058】
第2ステップにおいて、制御部230は、蓄電池装置320の蓄電容量又は蓄電残量に基づいて、制御対象期間における施設の放電可能量を算出する。
【0059】
第3ステップにおいて、制御部230は、2以上の一定期間で蓄電池装置320の放電量を平準化するための平準化係数を算出する。平準化係数は、可能放電量/需要電力量で表される。
【0060】
第4ステップにおいて、制御部230は、施設の放電計画量を一定期間毎に算出する。具体的には、制御部230は、一定期間毎の需要電力量に対して平準化係数を乗算した値を一定期間毎の放電計画量として算出する。
【0061】
第5ステップにおいて、制御部230は、総需要電力量から総放電計画量を減算することによって下げDR確保容量を算出する。総需要電力量は、施設の全体の需要電力量である。総放電計画量は、施設の全体の放電計画量である。
【0062】
第6ステップにおいて、制御部230は、{1-(下げDR所要量-下げDR確保容量)/総放電計画量}の式に従って抑制比率を算出する。
【0063】
第7に、制御部230は、各施設の放電計画量を一定期間毎に修正する。具体的には、制御部230は、一定期間毎の放電計画量に抑制比率を乗算することによって放電計画量を修正する。
【0064】
上述した処理において、第3ステップ~第5ステップは、上述した第2処理に関するステップである。上述した処理において、第6ステップは、上述した第1処理に関するステップである。従って、第5ステップまでの処理において下げDR確保容量が下げDR所要量よりも多ければ、第6ステップは省略されてもよい。
【0065】
(電力管理方法)
以下において、実施形態に係る電力管理方法について説明する。ここでは、制御対象期間における電力管理サーバ200の動作について説明する。
【0066】
図7に示すように、ステップS10において、電力管理サーバ200は、複数の施設300の中から、制御対象期間の満了タイミングよりも前において、蓄電池装置320の蓄電残量が所定閾値以下となる第2施設を選択する。
【0067】
ステップS11において、電力管理サーバ200は、第2処理を第2施設に適用した場合に、第2施設の全体の削減可能容量が目標削減容量よりも小さいか否かを判定する。判定結果がYESである場合に、電力管理サーバ200はステップS12の処理を行う。判定結果がNOである場合に、電力管理サーバ200はステップS13の処理を行う。
【0068】
ステップS12において、電力管理サーバ200は、複数の施設300の中から、蓄電池装置320の放電量を抑制する第1処理を適用する第1施設を選択する。
【0069】
ステップS13において、電力管理サーバ200は、第2施設に対して第2処理を適用する。電力管理サーバ200は、第1施設が選択されている場合に、第1施設に対して第1処理を適用する。
【0070】
ステップS14において、電力管理サーバ200は、一定期間が経過したか否かを判定する。判定結果がYESである場合に、電力管理サーバ200はステップS15の処理を行う。判定結果がNOである場合に、電力管理サーバ200は待機する。
【0071】
ステップS15において、電力管理サーバ200は、制御対象期間が満了したか否かを判定する。判定結果がYESである場合に、電力管理サーバ200は一連の処理を終了する。判定結果がNOである場合に、電力管理サーバ200はステップS10の処理に戻る。
【0072】
図7に示す例では、制御対象期間における電力管理サーバ200の動作について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。第1施設及び第2施設の選択は、制御対象期間の前に行われてもよい。
【0073】
(作用及び効果)
実施形態では、電力管理サーバ200は、第1施設に第1処理を適用する。このような構成によれば、2以上の第1施設の間で公平性を担保しながら、削減可能容量を確保することができる。
【0074】
実施形態では、電力管理サーバ200は、第2施設に第2処理を適用する。このような構成によれば、蓄電池装置320の導入メリットが損なわれる事態を抑制しながらも、削減可能容量を確保することができる。
【0075】
実施形態では、電力管理サーバ200は、第2処理を第2施設に適用した場合に、第2施設の全体の削減可能容量が目標削減容量よりも小さい場合に、第1処理を適用する第1施設を選択する。従って、蓄電池装置320の導入メリットが損なわれる事態をできるだけ抑制しながら、削減可能容量の確保に伴うデメリットを施設300の間で公平に負担することができる。
【0076】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0077】
実施形態では、太陽電池装置310及び燃料電池装置330が設けられている。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。分散電源として、太陽電池装置310及び燃料電池装置330が設けられておらず、蓄電池装置320が設けられていてもよい。
【0078】
実施形態では、電力管理サーバ200は、第2施設以外の施設300を第1施設として選択する。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。電力管理サーバ200は、第2施設として選択された施設300を第1施設として選択してもよい。制御対象期間の全体としては第2施設の蓄電池装置320の放電量が維持されるため、施設300の間の公平性が著しく損なわれることはない。
【0079】
実施形態では、下げDR確保容量の演算において、施設300の需要電力が蓄電池装置320の定格出力を超えないケースについて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。施設300の需要電力が蓄電池装置320の定格出力を超える場合には、蓄電池装置320の定格出力を超えない範囲で下げDR確保容量が演算されてもよい。
【0080】
実施形態では特に触れていないが、蓄電池装置320は、施設300に設けられる電力線に固定的に接続される蓄電池装置であってもよく、施設300に設けられる電力線に着脱可能に接続される蓄電池装置であってもよい。施設300に設けられる電力線に着脱可能に接続される蓄電池装置としては、電動車両に設けられる蓄電池装置が考えられる。
【0081】
実施形態では特に触れていないが、施設300に設けられるローカル制御装置360は、必ずしも施設300内に設けられていなくてもよい。例えば、ローカル制御装置360の機能の一部は、インターネット上に設けられるクラウドサーバによって提供されてもよい。すなわち、ローカル制御装置360がクラウドサーバを含むと考えてもよい。
【0082】
実施形態では、第1プロトコルがOpen ADR2.0に準拠するプロトコルであり、第2プロトコルがECHONET Liteに準拠するプロトコルであるケースについて例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。第1プロトコルは、電力管理サーバ200とローカル制御装置360との間の通信で用いるプロトコルとして規格化されたプロトコルであればよい。第2プロトコルは、施設300で用いるプロトコルとして規格化されたプロトコルであればよい。
【0083】
なお、日本国特許出願第2017-236460号(2017年12月8日出願)の全内容が、参照により本願明細書に組み込まれている。