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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 648G
H01L21/304 651M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022070994
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2018015253の分割
【原出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2022090061
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博史
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112652(JP,A)
【文献】特開2004-055722(JP,A)
【文献】特開2004-311592(JP,A)
【文献】特開2015-092537(JP,A)
【文献】特開2015-162597(JP,A)
【文献】特開2017-118064(JP,A)
【文献】特開2015-185805(JP,A)
【文献】特開2002-219424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具によって前記基板を保持する基板保持工程と、
前記ベースを回転させることによって鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記基板を回転させながら、前記基板の上面に処理液を供給することによって、前記処理液の液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、
前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットの上面と、前記基板の下面との間の空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、
前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記基板の上面から前記液膜を排除する液膜排除工程と、
前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、
前記熱媒供給停止工程の後で、かつ、前記液膜排除工程の前に、前記基板の上面への処理液の供給を停止し、かつ、処理液の供給開始時よりも前記基板の回転速度が小さくなるように前記基板の回転を減速させることによって、前記液膜が前記基板の上面に支持されたパドル状態を形成するパドル状態形成工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記液膜排除工程が、前記基板上の前記液膜の中央領域に開口を形成する開口形成工程と、前記ベースを回転させることによって前記基板を回転させながら、前記開口を広げる開口拡大工程とを含み、
前記液密加熱工程が、少なくとも前記開口の周縁が前記基板の上面の外周領域に達するまで継続される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記開口形成工程が、前記液膜の中央領域に気体を供給することによって、前記基板上の前記液膜の中央領域に前記開口を形成する工程を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記開口拡大工程が、前記液膜を構成する前記処理液を吸引ノズルで吸引する処理液吸引工程を含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記液膜排除工程の実行中に、前記基板の下面の中央領域と前記ヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程の実行前における前記熱媒の供給流量よりも小さい、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具によって前記基板を保持する基板保持工程と、
前記基板の上面に処理液を供給することによって、前記処理液の液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、
前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットの上面と、前記基板の下面との間の空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、
前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記基板の上面から前記液膜を排除する液膜排除工程と、
前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、
前記液膜排除工程の実行中に、前記基板の下面の中央領域と前記ヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程とを含み、
前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程の実行前における前記熱媒の供給流量よりも小さい、基板処理方法。
【請求項8】
前記液膜排除工程が、前記基板に近接する第1位置に前記ヒータユニットを配置する工程を含み、
前記熱媒入替工程が、前記第1位置よりも前記基板から離間した第2位置に前記ヒータユニットを配置する工程を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記液密加熱工程が、前記基板を回転させながら、前記空間へ前記熱媒を供給する回転供給工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板の上面を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給工程と、
前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を前記処理液として前記基板の上面に供給することによって、前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程とを含み、
前記液膜形成工程が、前記液膜として、前記低表面張力液体の液膜を前記基板の上面に形成する工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具と、
前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給ユニットと、
前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットと、
前記基板の下面と前記ヒータユニットの上面との間の空間に熱媒を供給する熱媒供給ユニットと、
前記基板の上面に形成される前記処理液の液膜を前記基板の上面から排除する液膜排除ユニットと、
前記ベースを回転させることによって鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットと、
前記処理液供給ユニット、前記ヒータユニット、前記熱媒供給ユニット、前記液膜排除ユニットおよび前記基板回転ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記基板回転ユニットによって前記基板を回転させながら、前記基板保持具によって保持された前記基板の上面に前記処理液供給ユニットから処理液を供給することによって、前記処理液の前記液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記熱媒供給ユニットから前記空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記液膜排除ユニットによって前記基板上から前記液膜を排除する液膜排除工程と、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒供給ユニットからの前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、前記熱媒供給停止工程の後で、かつ、前記液膜排除工程の前に、前記処理液供給ユニットからの処理液の供給を停止し、かつ、処理液の供給開始時よりも前記基板の回転速度が小さくなるように前記基板回転ユニットによる前記基板の回転を減速させることによって、前記液膜が前記基板の上面に支持されたパドル状態を形成するパドル状態形成工程とを実行するようにプログラムされている、基板処理装置。
【請求項12】
ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具と、
前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給ユニットと、
前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットと、
前記基板の下面と前記ヒータユニットの上面との間の空間に熱媒を供給する熱媒供給ユニットと、
前記基板の上面に形成される前記処理液の液膜を前記基板の上面から排除する液膜排除ユニットと、
前記処理液供給ユニット、前記ヒータユニット、前記熱媒供給ユニットおよび前記液膜排除ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記基板保持具によって保持された前記基板の上面に前記処理液供給ユニットから処理液を供給することによって、前記処理液の前記液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記熱媒供給ユニットから前記空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記液膜排除ユニットによって前記基板上から前記液膜を排除する液膜排除工程と、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒供給ユニットからの前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、前記液膜排除工程の実行中に前記熱媒で満たされた前記空間における前記基板の中央領域と前記ヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒供給ユニットから前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程とを実行するようにプログラムされており、
前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程の実行前における前記熱媒の供給流量よりも小さい、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等の基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置による基板処理では、たとえば、スピンチャックによってほぼ水平に保持された基板に対して薬液が供給される。その後、リンス液が基板に供給され、それによって、基板上の薬液がリンス液に置換される。その後、基板上のリンス液を排除するためのスピンドライ工程が行われる。
【0003】
図10に示すように、基板の表面にパターンが形成されている場合、スピンドライ工程では、パターンの内部に入り込んだリンス液を除去できないおそれがある。それにより、基板の乾燥不良が生じるおそれがある。パターンの内部に入り込んだリンス液の液面(空気と液体との界面)は、パターンの内部に形成されるので、液面とパターンとの接触位置に、液体の表面張力が働く。この表面張力が大きい場合には、パターンの倒壊が起こりやすくなる。典型的なリンス液である水は、表面張力が大きいために、スピンドライ工程におけるパターンの倒壊が無視できない。
【0004】
そこで、水よりも表面張力が低い有機溶剤であるイソプロピルアルコール(Isopropyl Alcohol: IPA)を供給することが提案されている。基板の上面がIPAで処理されることによって、パターンの内部に入り込んだ水がIPAに置換される。その後にIPAが除去されることで、基板の上面が乾燥される。
【0005】
ところが、近年、基板の表面には、高集積化のために、微細でかつアスペクト比の高い微細パターン(柱状のパターン、ライン状のパターン等)が形成されている。微細で高アスペクト比の微細パターンは倒壊し易い。そのため、IPAの液膜が基板の上面に形成された後、微細パターンに表面張力が働く時間を短縮する必要がある。
【0006】
そこで、下記特許文献1には、ヒータを用いて基板を加熱する基板処理方法が提案されている。ヒータによって基板が加熱されることによって、IPAの液膜と基板の上面との間には、IPAの気相層が形成される。これにより、微細パターンの内部が気相のIPAで満たされる。この状態で、液膜の中央に窒素ガスを吹き付けることによって、液膜の中央に開口が形成され、この開口を広げることによって、基板上からIPAが排除される。この方法では、微細パターンの内部が気相のIPAで満たされるため、微細パターン内部のIPAを上方から徐々に蒸発させる方法と比較して、微細パターンに表面張力が作用する時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-162847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の基板処理方法では、IPAの気相層が形成される温度まで基板を加熱するために、ヒータで基板を持ち上げて基板の下面にヒータを接触させている。この状態では、基板がスピンチャックから離間しているので、基板を回転させることができない。そのため、特許文献1に記載の基板処理方法では、液膜に遠心力を作用させることができないので、窒素ガスの吹き付け力のみで液膜の開口を広げている。しかし、これでは、窒素ガスの吹き付けによって基板が冷却されてしまい、開口を広げる際にIPAが気相層を維持できないおそれがある。
【0009】
そこで、この発明の1つの目的は、処理液の液膜と基板の上面との間に気相層を維持しながら、液膜に形成された開口を拡大することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一実施形態は、ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具によって前記基板を保持する基板保持工程と、前記ベースを回転させることによって鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記基板を回転させながら、前記基板の上面に処理液を供給することによって、前記処理液の液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットの上面と、前記基板の下面との間の空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記基板の上面から前記液膜を排除する液膜排除工程と、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、前記熱媒供給停止工程の後で、かつ、前記液膜排除工程の前に、前記基板の上面への処理液の供給を停止し、かつ、処理液の供給開始時よりも前記基板の回転速度が小さくなるように前記基板の回転を減速させることによって、前記液膜が前記基板の上面に支持されたパドル状態を形成するパドル状態形成工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0011】
この発明の他の実施形態は、ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具によって前記基板を保持する基板保持工程と、前記基板の上面に処理液を供給することによって、前記処理液の液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットの上面と、前記基板の下面との間の空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記基板の上面から前記液膜を排除する液膜排除工程と、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、前記液膜排除工程の実行中に、前記基板の下面の中央領域と前記ヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程とを含み、前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程の実行前における前記熱媒の供給流量よりも小さい、基板処理方法を提供する。
【0012】
一つの実施形態では、前記液密加熱工程が、前記基板を回転させながら、前記空間へ前記熱媒を供給する回転供給工程を含む。
【0013】
一つの実施形態では、前記液膜排除工程が、前記基板上の前記液膜の中央領域に開口を形成する開口形成工程と、前記ベースを回転させることによって前記基板を回転させながら、前記開口を広げる開口拡大工程とを含み、前記液密加熱工程が、少なくとも前記開口の周縁が前記基板の上面の外周領域に達するまで継続される。
【0014】
一つの実施形態では、前記開口形成工程が、前記液膜の中央領域に気体を供給することによって、前記基板上の前記液膜の中央領域に前記開口を形成する工程を含む。
【0015】
一つの実施形態では、前記開口拡大工程が、前記液膜を構成する前記処理液を吸引ノズルで吸引する処理液吸引工程を含む。
【0016】
一つの実施形態では、前記基板処理方法は、前記液膜排除工程の実行中に、前記基板の下面の中央領域と前記ヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程をさらに含む。
【0017】
一つの実施形態では、前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程の実行前における前記熱媒の供給流量よりも小さい。
【0018】
一つの実施形態では、前記液膜排除工程が、前記基板に近接する第1位置に前記ヒータユニットを配置する工程を含み、前記熱媒入替工程が、前記第1位置よりも前記基板から離間した第2位置に前記ヒータユニットを配置する工程を含む。
【0019】
一つの実施形態では、前記基板処理方法は、前記基板の上面を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給工程と、前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を前記処理液として前記基板の上面に供給することによって、前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程とを含み、前記液膜形成工程が、前記液膜として、前記低表面張力液体の液膜を前記基板の上面に形成する工程を含む。
【0020】
この発明の一実施形態は、ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具と、前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給ユニットと、前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットと、前記基板の下面と前記ヒータユニットの上面との間の空間に熱媒を供給する熱媒供給ユニットと、前記基板の上面に形成される前記処理液の液膜を前記基板の上面から排除する液膜排除ユニットと、前記ベースを回転させることによって鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記ヒータユニット、前記熱媒供給ユニット、前記液膜排除ユニットおよび前記基板回転ユニットを制御するコントローラとを含み、前記コントローラが、前記基板回転ユニットによって前記基板を回転させながら、前記基板保持具によって保持された前記基板の上面に前記処理液供給ユニットから処理液を供給することによって、前記処理液の前記液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記熱媒供給ユニットから前記空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記液膜排除ユニットによって前記基板上から前記液膜を排除する液膜排除工程と、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒供給ユニットからの前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、前記熱媒供給停止工程の後で、かつ、前記液膜排除工程の前に、前記処理液供給ユニットからの処理液の供給を停止し、かつ、処理液の供給開始時よりも前記基板の回転速度が小さくなるように前記基板回転ユニットによる前記基板の回転を減速させることによって、前記液膜が前記基板の上面に支持されたパドル状態を形成するパドル状態形成工程とを実行するようにプログラムされている、基板処理装置を提供する。
【0021】
この発明の他の実施形態は、ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具と、前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給ユニットと、前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットと、前記基板の下面と前記ヒータユニットの上面との間の空間に熱媒を供給する熱媒供給ユニットと、前記基板の上面に形成される前記処理液の液膜を前記基板の上面から排除する液膜排除ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記ヒータユニット、前記熱媒供給ユニットおよび前記液膜排除ユニットを制御するコントローラとを含み、前記コントローラが、前記基板保持具によって保持された前記基板の上面に前記処理液供給ユニットから処理液を供給することによって、前記処理液の前記液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記熱媒供給ユニットから前記空間に熱媒を供給することによって、前記基板の下面および前記ヒータユニットの上面の両方に前記熱媒が接触するように前記空間が前記熱媒で満たされる液密状態を形成し、前記液密状態を維持しながら前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記液膜排除ユニットによって前記基板上から前記液膜を排除する液膜排除工程と、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記液膜排除工程の開始前に、前記熱媒供給ユニットからの前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、前記液膜排除工程の実行中に前記熱媒で満たされた前記空間における前記基板の中央領域と前記ヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒供給ユニットから前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程とを実行するようにプログラムされており、前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程の実行前における前記熱媒の供給流量よりも小さい、基板処理装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための模式的な平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの模式図である。
図3図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図4図4は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図5図5は、前記基板処理の低表面張力液体処理(図4のS4)の一例を説明するための流れ図である。
図6A図6Aは、前記低表面張力液体処理を説明するための図解的な断面図である。
図6B図6Bは、前記低表面張力液体処理を説明するための図解的な断面図である。
図6C図6Cは、前記低表面張力液体処理を説明するための図解的な断面図である。
図6D図6Dは、前記低表面張力液体処理を説明するための図解的な断面図である。
図6E図6Eは、前記低表面張力液体処理を説明するための図解的な断面図である。
図6F図6Fは、前記低表面張力液体処理を説明するための図解的な断面図である。
図6G図6Gは、前記低表面張力液体処理を説明するための図解的な断面図である。
図7A図7Aは、前記低表面張力液体処理において基板上から液膜が排除される際の基板の上面の周辺の模式的な断面図である。
図7B図7Bは、前記低表面張力液体処理において基板上から液膜が排除される際の基板の上面の周辺の模式的な断面図である。
図7C図7Cは、前記低表面張力液体処理において基板上から液膜が排除される際の基板の上面の周辺の模式的な断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの模式図である。
図9図9は、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理における低表面張力液体処理(図4のS4)を説明するための図解的な断面図である。
図10図10は、表面張力によるパターン倒壊の原理を説明するための図解的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための模式的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。図1を参照して、基板処理装置1は、処理流体で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。
【0025】
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。処理流体には、後述する、薬液、リンス液、処理液(低表面張力液体)、熱媒等の液体や、不活性ガス等の気体が含まれる。
【0026】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、スピンチャック5と、処理カップ8と、第1移動ノズル15と、第2移動ノズル18と、固定ノズル17と、下面ノズル19と、ヒータユニット6とを含む。
【0027】
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させる。スピンチャック5は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットに含まれる。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。スピンチャック5は、複数のチャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、電動モータ23とを含む。
【0028】
スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン20は、ベース(スピンベース21)の上面に設けられ、ベースの上面から上方に間隔を空けて基板Wを水平に保持する基板保持具に含まれる。
【0029】
複数のチャックピン20は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。また、開状態において、複数のチャックピン20は、基板Wの周端から離間して把持を解除する一方で、基板Wの周縁部の下面に接触して、基板Wを下方から支持する。
【0030】
処理ユニット2は、複数のチャックピン20を開閉駆動するチャックピン駆動ユニット25をさらに含む。チャックピン駆動ユニット25は、たとえば、スピンベース21に内蔵されたリンク機構27と、スピンベース21外に配置された駆動源28とを含む。駆動源28は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。
【0031】
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。平面視におけるスピンベース21の中央領域には、スピンベース21を上下に貫通する貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aは、回転軸22の内部空間22aと連通している。
【0032】
電動モータ23は、回転軸22に回転力を与える。電動モータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。以下では、回転軸線A1を中心とした径方向の内方を単に「径方向内方」といい、回転軸線A1を中心とした径方向の外方を単に「径方向外方」という。電動モータ23は、ベース(スピンベース21)を回転させることによって、基板Wを回転軸線A1のまわりに回転させる基板回転ユニットに含まれる。
【0033】
処理カップ8は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード11と、複数のガード11によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ12と、複数のガード11と複数のカップ12とを取り囲む円筒状の外壁部材13とを含む。この実施形態では、2つのガード11(第1ガード11Aおよび第2ガード11B)と、2つのカップ12(第1カップ12Aおよび第2カップ12B)とが設けられている例を示している。
【0034】
第1カップ12Aおよび第2カップ12Bのそれぞれは、上向きに開放された溝状の形態を有している。第1ガード11Aは、スピンベース21を取り囲む。第2ガード11Bは、第1ガード11Aよりも径方向外方でスピンベース21を取り囲む。第1カップ12Aは、第1ガード11Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ12Bは、第1ガード11Aと一体に形成されており、第2ガード11Bによって下方に案内された液体を受け止める。
【0035】
図1を再び参照して、処理カップ8は、チャンバ4内に収容されている。チャンバ4には、チャンバ4内に基板Wを搬入したり、チャンバ4内から基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
図2を再び参照して、第1移動ノズル15は、基板Wの上面に向けて薬液を供給(吐出)する薬液供給ユニットに含まれる。第1移動ノズル15から吐出される薬液は、たとえば、フッ酸である。第1移動ノズル15から吐出される薬液は、フッ酸には限られない。
【0036】
すなわち、第1移動ノズル15から吐出される薬液は、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえば、クエン酸、蓚酸等)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。これらを混合した薬液の例としては、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、SC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)等が挙げられる。
【0037】
第1移動ノズル15は、薬液を案内する薬液配管40に接続されている。薬液配管40に介装された薬液バルブ50が開かれると、薬液が、第1移動ノズル15から下方に連続的に吐出される。
【0038】
第1移動ノズル15は、第1ノズル移動ユニット31によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル15は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第1移動ノズル15は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。第1移動ノズル15は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ8の外方に位置する。第1移動ノズル15は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0039】
第1ノズル移動ユニット31は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニットとを含む。回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第1移動ノズル15はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル15が水平方向および鉛直方向に移動する。
【0040】
固定ノズル17は、基板Wの上面に向けてリンス液を供給(吐出)するリンス液供給ユニットに含まれる。リンス液は、たとえば、DIWである。リンス液としては、DIW以外にも、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水等が挙げられる。
【0041】
この実施形態では、固定ノズル17は、DIWを案内するDIW配管42に接続されている。DIW配管42に介装されたDIWバルブ52が開かれると、DIWが、固定ノズル17の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0042】
第2移動ノズル18は、基板Wの上面に向けてIPA等の低表面張力液体(処理液)を供給(吐出)する低表面張力液体供給ユニット(処理液供給ユニット)としての機能と、基板Wの上面に向けて窒素ガス(Nガス)等の気体を供給(吐出)する気体供給ユニットとしての機能とを有する。
【0043】
低表面張力液体は、水等のリンス液よりも表面張力の低い液体である。低表面張力液体としては、基板Wの上面および基板Wに形成されたパターンと化学反応しない(反応性が乏しい)有機溶剤を用いることができる。
【0044】
より具体的には、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2-ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液を低表面張力液体として用いることができる。また、低表面張力液体は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。たとえば、IPA液と純水との混合液であってもよいし、IPA液とHFE液との混合液であってもよい。
【0045】
第2移動ノズル18から吐出される気体は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスは、基板Wの上面およびパターンに対して不活性なガスのことであり、たとえばアルゴン等の希ガス類であってもよい。第2移動ノズル18から吐出される気体は、空気であってもよい。
【0046】
第2移動ノズル18は、鉛直方向に沿って第2処理液を吐出する中心吐出口70を有している。第2移動ノズル18は、鉛直方向に沿って直線状の気体を吐出する線状流吐出口71を有している。さらに、第2移動ノズル18は、水平方向に沿って第2移動ノズル18の周囲に放射状に気体を吐出する水平流吐出口72を有している。また、第2移動ノズル18は、斜め下方向に沿って、第2移動ノズル18の周囲に放射状に気体を吐出する傾斜流吐出口73を有している。
【0047】
線状流吐出口71から吐出された気体は、基板Wの上面に垂直に入射する線状気流を形成する。水平流吐出口72から吐出された気体は、基板Wの上面に平行で、かつ基板Wの上面を覆う水平気流を形成する。傾斜流吐出口73から吐出された気体は、基板Wの上面に対して斜めに入射する円錐状プロファイルの傾斜気流を形成する。
【0048】
第2移動ノズル18には、IPA配管44および複数の窒素ガス配管45A,45B,45Cが接続されている。IPA配管44に介装されたIPAバルブ54が開かれると、IPAが、第2移動ノズル18の中心吐出口70から下方に連続的に吐出される。
【0049】
第1窒素ガス配管45Aに介装された第1窒素ガスバルブ55Aが開かれると、第2移動ノズル18の線状流吐出口71から下方に窒素ガスが連続的に吐出される。第2窒素ガス配管45Bに介装された第2窒素ガスバルブ55Bが開かれると、第2移動ノズル18の水平流吐出口72から水平方向に窒素ガスが連続的に吐出される。第3窒素ガス配管45Cに介装された第3窒素ガスバルブ55Cが開かれると、第2移動ノズル18の傾斜流吐出口73から斜め下方向に窒素ガスが連続的に吐出される。
【0050】
第1窒素ガス配管45Aには、第1窒素ガス配管45A内を流れる窒素ガスの流量を正確に調節するためのマスフローコントローラ56が介装されている。マスフローコントローラ56は、流量制御バルブを有している。また、第2窒素ガス配管45Bには、第2窒素ガス配管45B内を流れる窒素ガスの流量を調節するための流量可変バルブ57Bが介装されている。また、第3窒素ガス配管45Cには、第3窒素ガス配管45C内を流れる窒素ガスの流量を調節するための流量可変バルブ57Cが介装されている。さらに、窒素ガス配管45A,45B,45Cには、それぞれ、異物を除去するためのフィルタ58A,58B,58Cが介装されている。
【0051】
第2移動ノズル18は、第2ノズル移動ユニット33によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第2移動ノズル18は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第2移動ノズル18は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。第2移動ノズル18は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ8の外方に位置する。第2移動ノズル18は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0052】
第2ノズル移動ユニット33は、第1ノズル移動ユニット31と同様の構成を有している。すなわち、第2ノズル移動ユニット33は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸および第2移動ノズル18に結合されて水平に延びるアームと、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニットとを含む。
【0053】
ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット6は、基板Wの下面に下方から対向する対向面6aを有する。
【0054】
ヒータユニット6は、プレート本体60と、複数の支持ピン61と、ヒータ62とを含む。プレート本体60は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。複数の支持ピン61は、プレート本体60の上面から突出している。プレート本体60の上面と、複数の支持ピン61の表面とによって対向面6aが構成されている。ヒータ62は、プレート本体60に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ62に通電することによって、対向面6aが加熱される。そして、ヒータ62には、給電線63を介して、ヒータ通電ユニット64から電力が供給される。
【0055】
ヒータユニット6は、チャックピン20に保持された基板Wの下面とスピンベース21の上面との間に配置されている。処理ユニット2は、ヒータユニット6をスピンベース21に対して相対的に昇降させるヒータ昇降ユニット65を含む。ヒータ昇降ユニット65は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。
【0056】
ヒータユニット6の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸30が結合されている。昇降軸30は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔21aと、中空の回転軸22とを挿通している。昇降軸30内には、給電線63が通されている。ヒータ昇降ユニット65は、昇降軸30を介してヒータユニット6を昇降させることによって、下位置および上位置の間の任意の中間位置にヒータユニット6を配置できる。ヒータユニット6が下位置に位置するとき、対向面6aと基板Wの下面との間の距離は、たとえば、15mmである。ヒータユニット6が上位置に位置するとき、対向面6aは、基板Wと接触している。ヒータユニット6が上位置に位置するとき、基板Wは、チャックピン20から対向面6aに基板Wが渡され、対向面6aによって支持されていてもよい。
【0057】
下面ノズル19は、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の空間100に熱媒を供給する熱媒供給ユニットに含まれる。下面ノズル19は、中空の昇降軸30を挿通し、さらに、ヒータユニット6を貫通している。下面ノズル19は、基板Wの下面の回転中心に対向する吐出口19aを上端に有している。基板Wの下面の回転中心とは、基板Wの下面における回転軸線A1との交差位置である。
【0058】
熱媒は、基板Wに熱を伝達するための液体である。熱媒としては、たとえば、温水が挙げられる。熱媒として用いられる温水は、たとえば、温度が常温(5℃~35℃)よりも高くされたDIWである。熱媒として用いられる温水の温度は、たとえば、75℃~80℃である。下面ノズル19には温水配管43が接続されている。温水配管43に介装された温水バルブ53が開かれると、基板Wの下面の中央領域に向けて温水が下面ノズル19の吐出口19aから連続的に吐出される。基板Wの下面の中央領域とは、基板Wの下面の回転中心を含む所定の領域である。
【0059】
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備えており、所定のプログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。より具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aがプログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0060】
特に、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、電動モータ23、ノズル移動ユニット31,33、ヒータ通電ユニット64、ヒータ昇降ユニット65、チャックピン駆動ユニット25およびバルブ類50,52,53,54,55A,55B,55C,56,57B,57Cの動作を制御する。バルブ類50,52,53,54,55A,55B,55C,56,57B,57Cが制御されることによって、対応するノズルからの処理流体の吐出が制御される。
【0061】
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図であり、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
【0062】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、図4に示すように、基板搬入(S1)、薬液処理(S2)、リンス処理(S3)、低表面張力液体処理(S4)、乾燥処理(S5)および基板搬出(S6)がこの順番で実行される。
【0063】
基板処理では、まず、基板搬入(S1)が行われる。基板搬入(S1)の間、ヒータユニット6は下位置に位置し、各ノズル15,18は、退避位置に位置している。未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、チャックピン20に受け渡される(S1)。この後、基板Wは、搬送ロボットCRによって搬出されるまで、スピンチャック5のチャックピン20によって水平に保持される(基板保持工程)。
【0064】
次に、搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、薬液処理(S2)が開始される。電動モータ23は、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wが回転する(基板回転工程)。その一方で、第1ノズル移動ユニット31は、第1移動ノズル15を基板Wの上方の薬液処理位置に配置する。薬液処理位置は、第1移動ノズル15から吐出される薬液が基板Wの上面の回転中心に着液する位置であってもよい。そして、薬液バルブ50が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第1移動ノズル15から薬液が供給される(薬液供給工程)。供給された薬液は遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。
【0065】
次に、一定時間の薬液処理(S2)の後、基板W上の薬液をDIW(リンス液)で置換することにより、基板W上から薬液を排除するリンス処理(S3)が実行される。
【0066】
具体的には、薬液バルブ50が閉じられ、DIWバルブ52が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて固定ノズル17からDIWが供給される(リンス液供給工程)。供給されたDIWは遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。このDIWによって基板W上の薬液が洗い流される。この間に、第1ノズル移動ユニット31は、第1移動ノズル15を基板Wの上方から退避位置へと退避させる。
【0067】
次に、詳しくは後述するが、一定時間のリンス処理(S3)の後、低表面張力液体処理(S4)が実行される。低表面張力液体処理(S4)では、基板W上のDIW(リンス液)がIPA(低表面張力液体)で置換され、その後、基板W上から低表面張力液体が除去される。図5は、低表面張力液体処理(S4)を説明するための流れ図である。
【0068】
低表面張力液体処理(S4)では、まず、第2移動ノズル18から基板Wの上面にIPAを供給することによって、基板W上のDIWがIPAで置換される(置換工程T1)。そして、第2移動ノズル18からのIPAの供給を継続することによって、基板W上にIPAの液膜が形成される(液膜形成工程T2)。そして、第2移動ノズル18からの窒素ガスの吹き付けによって、IPAの液膜の中央領域に開口が形成される(開口形成工程T3)。その後、基板Wの回転に起因する遠心力が作用して、開口が広げられる(開口拡大工程T4)。開口拡大工程T4では、基板W上のIPAが最終的に基板W外に排除される。
【0069】
その後、基板Wの上面および下面を乾燥させる乾燥処理(S5)が実行される。具体的には、電動モータ23が、スピンベース21を高速回転(たとえば、800rpm)で回転させる。それによって、大きな遠心力が基板W上のIPAに作用し、基板W上のIPAが基板Wの周囲に振り切られる。
【0070】
その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5のチャックピン20から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(S6)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0071】
次に、図6A図6Gを用いて低表面張力液体処理(S4)を詳細に説明する。図6A図6Gは、低表面張力液体処理(S4)を説明するための図解的な断面図である。
【0072】
図6Aを参照して、まず、置換工程T1が実行される。第2ノズル移動ユニット33が、第2移動ノズル18をIPA供給位置に配置する。第2移動ノズル18がIPA供給位置に位置するとき、第2移動ノズル18の中心吐出口70が、基板Wの上面の回転中心に対向する。そして、DIWバルブ52が閉じられて基板Wの上面へのDIWの供給が停止される。その後、第2移動ノズル18がIPA供給位置に達した状態で、IPAバルブ54が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて第2移動ノズル18からIPAが供給される。供給されたIPAは遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板W上のDIWがIPAによって置換される。
【0073】
置換工程T1では、電動モータ23が、スピンベース21の回転速度を、所定の置換速度に変更する。置換速度は、たとえば、300rpmである。置換工程T1では、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を、基板Wに非接触で基板Wに近接する第1位置に配置する。ヒータユニット6が第1位置に位置するとき、ヒータユニット6の対向面6aは、基板Wの下面から、たとえば、2mmだけ下方に離間している。ヒータ通電ユニット64は、基板処理の実行中、ヒータユニット6が一定の温度(たとえば、180℃~220℃)になるように、ヒータユニット6に電力を供給している。
【0074】
図6Bおよび図6Cを参照して、次に、液膜形成工程T2が実行される。
【0075】
図6Bに示すように、液膜形成工程T2では、基板W上のDIWがIPAで置換された後も第2移動ノズル18から基板W上へのIPAの供給を継続することによって、基板W上にIPAの液膜150が形成される。
【0076】
液膜形成工程T2では、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を、第1位置に維持する。液膜形成工程T2では、温水バルブ53が開かれる。これにより、下面ノズル19の吐出口19aから空間100への熱媒としての温水の吐出(供給)が開始される(熱媒供給開始工程)。温水は、空間100において基板Wの下面の中央領域とヒータユニット6の対向面6aとの間の位置に供給されるので、下面ノズル19の吐出口19aから吐出された温水は、空間100において基板Wの下面の中央領域とヒータユニット6の間の部分(空間100の中央部分101)から径方向外方へと徐々に広がる。温水の供給を継続することによって、最終的に、空間100が温水で満たされる(液密工程)。
【0077】
液膜形成工程T2では、電動モータ23が、スピンベース21の回転を減速させて、回転速度を所定の液膜保持速度に変更する。液膜保持速度は、たとえば、10~50rpmである。液膜形成工程T2では、スピンベース21の回転を段階的に減速してもよい。詳しくは、スピンベース21の回転が、50rpmまで減速して状態で所定時間維持され、その後、10rpmまで減速される。空間100への温水の供給は、基板Wを回転させながら行われる(回転供給工程)。
【0078】
温水の供給開始から空間100が温水によって満たされるまでの間、下面ノズル19は、第1供給流量で温水を空間100に供給する。第1供給流量は、たとえば、500cc/minである。空間100に供給された温水(空間100を満たす温水)は、ヒータユニット6によって加熱される(液密加熱工程)。液密加熱工程は、少なくとも開口拡大工程T4の途中まで継続される。
【0079】
図6Cを参照して、液膜形成工程T2では、空間100が温水で満たされた後、温水バルブ53が閉じられる。これにより、空間100が温水で満たされた後で、かつ、開口形成工程T3の開始前に、空間100への温水の供給が停止される(熱媒供給停止工程)。熱媒の供給が停止されるので、空間100に位置する温水の入れ替わりが行われなくなる。そのため、空間100への温水の供給が停止されると、ヒータユニット6から伝達される熱によって、空間100を満たす温水の温度が上昇する。
【0080】
そして、IPAバルブ54が閉じられる。これにより、第2移動ノズル18から基板Wの上面へのIPAの供給が停止される。これにより、基板W上にIPAの液膜150が支持されたパドル状態となる。
【0081】
基板Wは、空間100を満たす温水を介してヒータユニット6から熱を受けることによって、IPAの沸点(82.4℃)以上の温度に加熱される。基板W上の液膜150は、基板Wによって加熱される。それによって、液膜150では、基板Wの上面との界面においてIPAが蒸発する。それによって、基板Wの上面と液膜150との間に、IPAの気体からなる気相層が生じる。したがって、基板Wの上面の全域において、液膜150が気相層上に支持された状態となる。
【0082】
次に、開口形成工程T3と、開口拡大工程T4とが実行される。
【0083】
図6Dを参照して、液密加熱工程により基板Wの温度がIPAの沸点以上になるように基板Wが加熱されている状態で、開口形成工程T3が実行される。具体的には、第2ノズル移動ユニット33が、第2移動ノズル18を気体供給位置に配置する。第2移動ノズル18が気体供給位置に位置するとき、第2移動ノズル18の線状流吐出口71が、基板Wの上面の回転中心に対向する。第2移動ノズル18が気体供給位置に達すると、第1窒素ガスバルブ55Aが開かれる。これにより、第2移動ノズル18の線状流吐出口71から気体が吐出(供給)される。
【0084】
線状流吐出口71から吐出される気体が形成する線状気流によって、液膜150の中央領域におけるIPAが径方向外方へ押し退けられる。これにより、液膜150に開口151が速やかに形成される。このように、第2移動ノズル18は、液膜150の中央領域に開口151を形成する開口形成ユニットとして機能する。開口形成工程T3では、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を、第1位置に維持する。
【0085】
図6Eおよび図6Fを参照して、開口151を基板Wの外周に向かって広げ、気相層上で液膜150を移動させることによって開口拡大工程T4が実行される。
【0086】
図6Eに示すように、開口拡大工程T4では、電動モータ23が、スピンベース21の回転を減速させて、回転速度を所定の第1拡大速度に変更する。第1拡大速度は、たとえば、10rpm~50rpmである。基板Wの回転に起因する遠心力が作用するため、開口が拡大するように基板W上のIPAが基板W外に排除される。
【0087】
開口拡大工程T4では、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を、第1位置から第2位置まで下降させる。第2位置は、第1位置よりも基板Wから離間した位置である。ヒータユニット6が第2位置に位置するとき、ヒータユニット6の対向面6aは、基板Wの下面から、たとえば、4mm離間している。
【0088】
そして、温水バルブ53が開かれる。これにより、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の空間100に熱媒としての温水が供給される。空間100において基板Wの下面の中央領域とヒータユニット6の対向面6aとの間の部分(中央部分101)へ向けて、下面ノズル19の吐出口19aの温水の吐出(供給)が再開される。中央部分101に新たに温水が供給されることによって、空間100において基板Wの下面の周縁領域とヒータユニット6の対向面6aとの間の部分(周縁部分102)に位置する温水が空間100外へ押し出される。このように、中央部分101に新たに温水が供給され続けることによって、空間100に位置する温水が新たな温水に入れ替えられる(熱媒入替工程)。基板Wの下面の周縁領域とは、基板Wの下面における基板Wの周縁部を含む領域である。熱媒入替工程が行われている間、ヒータユニット6は、第2位置に配置されている。
【0089】
熱媒入替工程では、下面ノズル19は、第1供給流量より小流量である第2供給流量で空間100に温水を供給する。第2供給流量は、たとえば、100cc/minである。そのため、熱媒入替工程における温水の供給流量は、熱媒供給停止工程前における温水の供給流量よりも小さい。空間100への温水の供給は、基板Wを回転させながら行われる。
【0090】
遠心力によって液膜150を基板W外へ押し出す基板処理では、開口151の周縁151aが基板Wの上面の周縁領域に近づくと、基板Wの上面の周縁領域よりも径方向内方に位置するIPAが基板Wの上面の周縁領域に位置するIPAを押し出す力が小さくなる。これにより、基板Wの上面の周縁領域のIPAが基板W外へ押し出されにくくなる。基板Wの上面の周縁領域とは、基板Wの上面における基板Wの周縁部付近の領域である。
【0091】
そこで、図6Fに示すように、開口151の拡大によって開口151の周縁151aが基板Wの上面の周縁領域に達すると、電動モータ23は、スピンベース21の回転を加速させて、回転速度を所定の第2拡大速度に変更する。第2拡大速度は、たとえば、50rpm~100rpmである。これにより、基板W上からIPAを排除することができる。
【0092】
図6Gに示すように、基板W上から液膜150が排除された後、温水バルブ53が閉じられる。そして、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を第2位置から下位置に下降させる。これにより、空間100の液密状態が解消される。言い換えると、この基板処理では、液膜形成工程T2の途中から、開口拡大工程T4が終了するまでの間、液密加熱工程が継続される。ヒータユニット6が下位置に達した後も基板Wの回転は継続されているため、基板Wの下面に付着した温水は、遠心力によって排除される。
【0093】
このとき、第1窒素ガスバルブ55Aおよび第3窒素ガスバルブ55Cが開かれて、第2移動ノズル18から窒素ガスを吐出させてもよい。具体的には、第2移動ノズル18の線状流吐出口71から吐出される窒素ガスが線状気流を形成し、第2移動ノズル18の傾斜流吐出口73から吐出される窒素ガスが傾斜気流を形成する。線状気流および傾斜気流は、基板Wの上面に吹き付けられて、基板W上に僅かに残った液成分を蒸発させる。
【0094】
次に、前述したように、乾燥処理(S5)が行われ、その後、基板Wが処理ユニット2から搬出される。これにより、基板処理装置1による基板処理が終了する。
【0095】
図7Aおよび図7Bは、基板Wの表面における気相層152の形成を説明するための図解的な断面図である。基板Wの表面には、微細なパターン161が形成されている。パターン161は、基板Wの表面に形成された微細な凸状の構造体162を含む。構造体162は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体162は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。ライン状の構造体162が隣接する場合には、それらの間に溝が形成される。この場合、構造体162の幅W1は10nm~45nm程度、構造体162同士の間隔W2は10nm~数μm程度であってもよい。構造体162の高さTは、たとえば50nm~5μm程度であってもよい。構造体162が筒状である場合には、その内方に孔が形成されることになる。
【0096】
液膜形成工程T2では、図7Aに示すように、基板Wの表面に形成された液膜150は、パターン161の内部(隣接する構造体162の間の空間または筒状の構造体162の内部空間)を満たしている。
【0097】
液密加熱工程によって温水の温度がIPAの沸点以上になると、基板Wの表面に接しているIPAが蒸発し、IPAの気体が発生して、図7Bに示すように、気相層152が形成される。気相層152は、パターン161の内部を満たし、さらに、パターン161の外側に至り、構造体162の上面162Aよりも上方に液膜150との界面155を形成している。この界面155上に液膜150が支持されている。この状態では、IPAの液面がパターン161に接していないので、液膜150の表面張力に起因するパターン倒壊が起こらない。
【0098】
基板Wの加熱によってIPAが蒸発するとき、液相のIPAはパターン161内から瞬時に排出される。そして、形成された気相層152上に液相のIPAが支持され、パターン161から離隔させられる。こうして、IPAの気相層152は、パターン161の上面(構造体162の上面162A)と液膜150との間に介在して、液膜150を支持する。
【0099】
図7Cに示すように、基板Wの上面から浮上している液膜150に亀裂153が生じると、乾燥後にウォータマーク等の欠陥の原因となる。そこで、この実施形態では、基板Wの回転を減速した後にIPAの供給を停止して、基板W上に厚い液膜150を形成して、亀裂153の発生を回避している。
【0100】
気相層152上に液膜150が支持されている状態では、液膜150に働く摩擦抵抗は、零とみなせるほど小さい。そのため、基板Wの上面に平行な方向の力が液膜150に加わると、液膜150は簡単に移動する。この実施形態では、液膜150の中央に開口151を形成し、それによって開口151の周縁101aでの温度差によってIPAの流れを生じさせて、気相層152上に支持された液膜150を移動させることによって開口151の拡大が補助されてもよい。
【0101】
第1実施形態では、ヒータユニット6と基板Wとの間の空間100に温水(熱媒)を供給することによって、空間100を温水で満たし、ヒータユニット6によって温水が加熱される(液密加熱工程)。そして、液密加熱工程により基板Wの温度がIPA(処理液、低表面張力液体)の沸点以上になるように基板Wが加熱されている状態で、基板W上のIPAの液膜150の中央領域に開口151が形成される(開口形成工程)。その後、基板Wを回転させながら開口151が拡大される(開口拡大工程)。そして、液密加熱工程が、開口拡大工程と並行して実行される。
【0102】
この実施形態によれば、液密加熱工程において、ヒータユニット6と基板Wとの間の空間100を満たす温水がヒータユニット6によって加熱され、空間100を満たす温水によって基板Wが加熱される。そのため、スピンベース21に設けられた複数のチャックピン20に基板Wを保持させた状態で、ヒータユニット6によって温水を介して基板Wを加熱することができる。したがって、スピンベース21を回転させて基板Wを回転させながら基板Wを充分に加熱することができる。
【0103】
液膜150に開口151が形成される際には、基板WがIPAの沸点以上に加熱されるので、液膜150において基板Wの上面付近の部分は、IPAの沸点まで加熱される。そのため、液膜150と基板Wの上面との間に気相層152が生じる。そして、開口151が拡大される際には、液密加熱工程が実行される。したがって、基板Wの温度低下を抑制しつつ、開口151を拡大させることができる。よって、気相層152が形成された状態を維持しながら、開口151を拡大させることができる。
【0104】
第1実施形態では、液密加熱工程において、基板Wを回転させながら空間100に温水が供給される(回転供給工程)。そのため、温水を空間100に供給された温水に遠心力が作用する。これにより、空間100の全体に万遍なく温水を行き渡らせることができる。
【0105】
第1実施形態では、液密加熱工程が、開口拡大工程T4が終了するまで継続される。したがって、開口拡大工程T4において、気相層152を一層確実に維持できる。
【0106】
第1実施形態では、空間100が温水で満たされた後で、かつ、開口形成工程の開始前に、温水の供給が停止される(熱媒供給停止工程)。そのため、ヒータユニット6と基板Wとの間の空間100が温水で満たされた後で、かつ、開口形成工程の開始前には、空間100に位置する熱媒の入れ替わりが行われなくなる。そのため、空間100への温水の供給が停止されてから開口形成工程が開始されるまでの間に、ヒータユニット6から伝達される熱によって、空間100に位置する熱媒の温度が充分に上昇する。したがって、開口形成工程において、気相層152が一層維持されやすい。
【0107】
基板Wの周縁とヒータユニット6との間に位置する温水は、空間100外の影響を受けて温度が低下しやすい。第1実施形態では、開口拡大工程T4の実行中に、基板Wの下面の中央領域とヒータユニット6との間の位置(空間100の中央部分101)へ向けて温水が供給されることによって、空間100に位置する温水が入れ替えられる(熱媒入替工程)。
【0108】
そのため、開口拡大工程T4の実行中に基板Wの下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて温水を供給すれば、空間100の周縁部分102に位置する温水を、空間100において周縁部分102よりも内側に位置する温水によって空間100外に押し出すことができる。したがって、空間100の周縁部分102に位置する熱媒が、空間100外の影響を受けにくい、空間100において周縁部分102よりも内側に位置する温水に入れ替えられる。したがって、開口拡大工程T4が終了するまで、基板Wの周縁部付近の温度が処理液の沸点以上に維持されやすくなる。
【0109】
また、熱媒供給停止工程前の熱媒の流量が比較的大きい。そのため、液密加熱工程により基板Wの温度がIPAの沸点以上になるまでに必要な時間を短縮できる。
【0110】
一方、基板Wとヒータユニット6との間に位置する温水を入れ替えるときの温水の流量が比較的小さい。そのため、空間100の中央部分101に供給された温水が、空間100の周縁部分102に移動するまでに要する時間を長くできる。そのため、空間100の中央部分101に供給された温水が、空間100の周縁部分102に移動するまでにヒータユニット6によって一層充分に加熱される。
【0111】
第1実施形態では、開口形成工程において、基板Wに近接する第1位置にヒータユニット6が配置される。そして、熱媒入替工程において、第1位置よりも基板Wから離間した第2位置にヒータユニットが配置される。
【0112】
この方法によれば、開口形成工程T3においてヒータユニット6が第1位置に配置される。そのため、空間100が比較的狭くされている。したがって、空間100を液密状態にするまでに必要な時間を短縮できる。一方、熱媒入替工程においてヒータユニット6が第1位置よりも基板Wから離間した第2位置に配置される。そのため、空間100が比較的広くされている。したがって、温水の供給によって単位時間当たりに入れ替えられる温水の量を比較的小さくできる。よって、温水の供給によって、空間100に位置する温水の温度が急激に低下するのを抑制できる。
【0113】
第1実施形態では、リンス液供給工程および置換工程が実行され、液膜形成工程において、低表面張力液体であるIPAの液膜150が形成される。そして、DIW(リンス液)よりも表面張力の低いIPA(低表面張力液体)の液膜150を基板W上から排除することで、基板Wの上面を乾燥させることができる。したがって、基板W上から液膜150を排除させる際に基板Wの上面に作用する表面張力を一層低減することができる。
【0114】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pに備えられた処理ユニット2Pの模式図である。図9は、基板処理装置1Pによる基板処理における低表面張力液体処理(S4)を説明するための図解的な断面図である。図8および図9では、今まで説明した部材と同じ部材には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
第2実施形態に係る処理ユニット2Pが、第1実施形態に係る処理ユニット2と主に異なる点は、吸引ノズル90が設けられている点である。
【0115】
吸引ノズル90は、基板W上のIPA(処理液)を吸引する吸引ユニットに含まれている。吸引ノズル90には、IPAを案内する吸引管91の一端が接続されている。吸引管91には、その流路を開閉する吸引バルブ92が介装されている。吸引管91の他端には、真空ポンプなどの吸引装置93が接続されている。吸引ノズル90の下端に設けられた吸引口90aが基板W上のIPAに接した状態で、吸引バルブ92が開かれることによって、吸引装置93によるIPAの吸引が開始される。
【0116】
吸引ノズル90は、吸引ノズル移動ユニット95によって、水平方向および鉛直方向に移動される。吸引ノズル90は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。吸引ノズル90は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。吸引ノズル90は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ8の外方に位置する。より具体的には、吸引ノズル90は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0117】
吸引ノズル移動ユニット95は、第1ノズル移動ユニット31と同様の構成を有している。すなわち、吸引ノズル移動ユニット95は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸および吸引ノズル90に結合されて水平に延びるアームと、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニットとを含む。
【0118】
吸引バルブ92、吸引装置93および吸引ノズル移動ユニット95は、コントローラ3によって制御される(図3参照)。
【0119】
基板処理装置1Pを用いることによって、基板処理装置1による基板処理と同様の基板処理を実行することができる。
【0120】
基板処理装置1Pによる基板処理では、開口拡大工程T4が開始される前に、吸引ノズル移動ユニット95が、吸引ノズル90を基板Wの周縁に対向する位置に配置する。そして、開口拡大工程T4において、図9に示すように、吸引バルブ92が開かれ、吸引装置93が吸引を開始する。すると、吸引ノズル90が、基板W上の液膜150を構成するIPAを吸引し始める。これにより、基板W上の開口151の拡大(液膜150の排除)が補助される。したがって、開口拡大工程T4の実行に要する時間を短縮できる。ひいては、基板処理に要する時間の短縮が図れる。
【0121】
第2実施形態では、吸引ノズル90が基板Wの周縁に対向する位置に配置された状態で、開口拡大工程T4を開始した。しかし、開口拡大工程T4では、開口151の拡大に伴って、吸引ノズル90が基板Wの外側へ向かって移動してもよい。このとき、吸引ノズル90は、開口151の周縁151aと基板Wの周縁との間の位置を維持しながら移動する。
【0122】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0123】
たとえば、上述の実施形態では、開口拡大工程T4の実行中に、空間100に温水が供給されるとした。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、開口拡大工程T4の実行中には、空間100への温水の供給が停止されていてもよい。
【0124】
また、上述の実施形態では、開口拡大工程T4において、液膜150が基板W上から排除されるとした。しかしながら、開口拡大工程T4の終了時において液膜150が完全に排除されていなくてもよい。すなわち、基板Wを回転させながら開口151を広げることによって開口151の周縁151aが基板Wの上面の外周領域に達した後は、開口151の拡大以外の方法を用いて液膜150を基板Wの上面から排除してもよい。開口151の拡大以外の方法としては、たとえば、第2移動ノズル18からの気体の吹き付け等が挙げられる(周縁液膜排除工程)。この場合、周縁液膜排除工程においても液膜加熱工程が実行される。すなわち、開口拡大工程T4の終了後にも、液密加熱工程が実行される。
【0125】
また、上述の実施形態では、少なくとも開口拡大工程T4が終了するまで液密加熱工程が継続された。しかしながら、液膜150に開口151が形成されてから液膜150が基板W上から排除されるまでの間において気相層152を維持することができれば、液密加熱工程は、必要に応じて、開口拡大工程T4の途中で終了してもよい。すなわち、液密加熱工程は、開口拡大工程T4の少なくとも一部の期間において開口拡大工程T4と並行して実行されればよい。
【0126】
液密加熱工程は、少なくとも開口151の周縁151aが基板Wの上面の外周領域に達するまで継続されることが好ましい。基板Wの上面の外周領域は、基板Wの上面の中央領域と周縁領域との間の領域である。開口151の周縁151aが基板Wの上面の外周領域に達したときに空間100の液密状態を解除することにより、液膜150の排除(基板Wの上面の乾燥)と並行して基板Wの下面の乾燥を実行することができる。したがって、基板処理に要する時間の短縮が図れる。
【0127】
また、上述の実施形態では、基板W上に低表面張力液体の液膜150を形成し、液膜150と基板Wの上面との間に気相層152を維持しながら基板W上から液膜150を排除する基板処理の例について説明した。
【0128】
上述の実施形態とは異なり、低表面張力液体以外の処理液(たとえば、DIW等のリンス液)の液膜を基板W上に形成し、当該液膜と基板Wの上面との間に気相層を維持しながら基板W上から当該処理液の液膜を排除する基板処理にも適用できる。処理液がDIWである場合、図4の低表面張力液体処理(S4)が省略される。その代わりに、図5の置換工程T1、液膜形成工程T2、開口形成工程T3および開口拡大工程T4が、リンス処理(S3)において実行される。
【0129】
また、上述の実施形態では、下面ノズル19は、基板Wの下面の回転中心と対向する吐出口19aを有するとした。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、下面ノズル19は、回転径方向に並ぶ複数の吐出口を有していてもよい。
【0130】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【0131】
この明細書および添付図面から抽出される特徴の例を以下に付記する。
【0132】
付記1.ベースの上面に設けられ前記ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具によって前記基板を保持する基板保持工程と、
前記基板の上面に処理液を供給することによって、前記処理液の液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、
前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットと、前記基板との間の空間に熱媒を供給することによって、前記空間を前記熱媒で満たし、前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、
前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記基板上の前記液膜の中央領域に開口を形成する開口形成工程と、
前記ベースを回転させることによって鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記基板を回転させながら前記開口を広げる開口拡大工程とを含み、
前記液密加熱工程が、前記開口拡大工程の少なくとも一部の期間において前記開口拡大工程と並行して実行される、基板処理方法。
【0133】
この方法によれば、液密加熱工程において、ヒータユニットと基板との間の空間を満たす熱媒がヒータユニットによって加熱され、当該空間を満たす熱媒によって基板が加熱される。そのため、ベースに設けられた基板保持具に基板を保持させた状態で、ヒータユニットによって熱媒を介して基板を加熱することができる。したがって、ベースを回転させて基板を回転させながら、基板を充分に加熱することができる。
【0134】
液膜に開口が形成される際には、基板が処理液の沸点以上に加熱されるので、液膜において基板の上面付近の部分が気化し、液膜と基板の上面との間に気相層が生じる。そして、開口が拡大される際には、その少なくとも一部の期間において、液密加熱工程が実行される。したがって、基板の温度低下を抑制しつつ、開口を拡大させることができる。よって、気相層が形成された状態を維持しながら、開口を拡大させることができる。
【0135】
なお、液密加熱工程が、開口拡大工程の少なくとも一部の期間において並行して実行されるとしたが、このことは、開口拡大工程において、気相層を維持することができれば、開口拡大工程において液密加熱工程が行われていない期間があってもよいことを意味する。
【0136】
付記2.前記液密加熱工程が、前記基板を回転させながら前記空間に前記熱媒を供給する回転供給工程を含む、付記1に記載の基板処理方法。
この方法では、基板とヒータユニットとの間の空間に供給された熱媒に遠心力が作用する。これにより、当該空間の全体に万遍なく熱媒を行き渡らせることができる。
【0137】
付記3.前記液密加熱工程が、少なくとも前記開口の周縁が前記基板の上面の周縁領域に達するまで継続される、付記1または2に記載の基板処理方法。
【0138】
この方法では、開口拡大工程において、気相層が一層維持されやすい。
開口の周縁が基板の上面の外周領域に達した後は、必要に応じて、基板とヒータユニットとの間の空間の液密状態を解除することができる。これにより、基板の上面の乾燥と並行して基板の下面の乾燥を実行することができる。したがって、基板処理に要する時間の短縮が図れる。
【0139】
付記4.前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記開口形成工程の開始前に、前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程をさらに含む、付記1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0140】
この方法によれば、ヒータユニットと基板との間の空間が熱媒で満たされた後で、かつ、開口形成工程の開始前には、当該空間に位置する熱媒の入れ替わりが行われなくなる。そのため、当該空間への熱媒の供給が停止されてから開口形成工程が開始されるまでの間に、ヒータユニットから伝達される熱によって、当該空間に位置する熱媒の温度が充分に上昇する。したがって、開口形成工程において、気相層が一層維持されやすい。
【0141】
付記5.前記開口拡大工程の実行中に、前記基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程をさらに含む、付記1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0142】
基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間に位置する熱媒は、基板とヒータユニットとの間の空間外の影響を受けて温度低下しやすい。
【0143】
そこで、開口拡大工程の実行中に基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて熱媒を供給すれば、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒を、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分よりも内側の熱媒によって空間外に押し出すことができる。したがって、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒が、空間外の影響を受けにくい内側の熱媒に入れ替えられる。したがって、開口拡大工程が終了するまで、基板の周縁部付近の温度が処理液の沸点以上に維持されやすくなる。
【0144】
付記6.前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記開口形成工程の開始前に、前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、
前記開口拡大工程の実行中に、前記基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程とをさらに含み、
前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程前における前記熱媒の供給流量よりも小さい、付記1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0145】
この方法によれば、ヒータユニットと基板との間の空間が熱媒で満たされた後で、かつ、開口形成工程の開始前には、当該空間に位置する熱媒の入れ替えが行われなくなる。そのため、当該空間への熱媒の供給が停止されてから開口形成工程が開始されるまでの間に、ヒータユニットから伝達される熱によって、当該空間に位置する熱媒の温度が充分に上昇する。したがって、開口形成工程において、気相層が一層維持されやすい。
【0146】
また、開口拡大工程の実行中に基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて熱媒を供給すれば、空間における基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒を、空間における基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分よりも内側の熱媒によって空間外に押し出すことができる。したがって、空間における基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒が、空間外の影響を受けにくい内側の熱媒に入れ替えられる。したがって、開口拡大工程が終了するまで、基板の周縁領域の温度が処理液の沸点以上に維持されやすくなる。
【0147】
さらに、熱媒供給停止工程前の熱媒の流量が比較的大きい。そのため、液密加熱工程により基板の温度が処理液の沸点以上になるまでに必要な時間を短縮できる。
【0148】
一方、基板とヒータユニットとの間に位置する熱媒を入れ替えるときの熱媒の流量が比較的小さい。そのため、空間において基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の部分に供給された熱媒が、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に移動するまでに要する時間を長くできる。そのため、空間において基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の部分に供給された熱媒が、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に移動するまでにヒータユニットによって一層充分に加熱される。
【0149】
付記7.前記開口形成工程が、前記基板に近接する第1位置に前記ヒータユニットを配置する工程を含み、
前記熱媒入替工程が、前記第1位置よりも前記基板から離間した第2位置に前記ヒータユニットを配置する工程を含む、付記6に記載の基板処理方法。
【0150】
この方法によれば、開口形成工程においてヒータユニットが第1位置に配置される。そのため、基板とヒータユニットとの間の空間が比較的狭くされている。したがって、当該空間を液密状態にするまでに必要な時間を短縮できる。一方、熱媒入替工程においてヒータユニットが第1位置よりも基板から離間した第2位置に配置される。そのため、基板とヒータユニットとの間の空間が比較的広くされている。したがって、熱媒の供給によって単位時間当たりに入れ替えられる熱媒の量を比較的小さくできる。よって、熱媒の供給によって、空間に位置する熱媒の温度が急激に低下するのを抑制できる。
【0151】
付記8.前記開口形成工程が、前記液膜の中央領域に気体を供給することによって前記開口を形成する工程を含む、付記1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0152】
この方法により、液膜の中央領域に開口を速やかに形成することができる。
【0153】
付記9.前記開口拡大工程が、前記液膜を構成する前記処理液を吸引ノズルで吸引する処理液吸引工程を含む、付記1~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0154】
この方法によれば、処理液が吸引ノズルに吸引されることによって、開口の拡大が補助される。したがって、開口拡大工程の実行に要する時間を短縮できる。ひいては、基板処理に要する時間の短縮が図れる。
【0155】
付記10.前記基板の上面を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給工程と、
前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を前記処理液として前記基板の上面に供給することによって、前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程とを含み、
前記液膜形成工程が、前記液膜として、前記低表面張力液体の液膜を前記基板の上面に形成する工程を含む、付記1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【0156】
この方法では、リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体の液膜を基板上から排除することで、基板の上面を乾燥させることができる。したがって、基板上から液膜を排除させる際に基板の上面に作用する表面張力を一層低減することができる。
【0157】
付記11.ベースの上面から上方に間隔を空けて基板を水平に保持する基板保持具と、
前記基板の上面に処理液を供給する処理液供給ユニットと、
前記基板と前記ベースとの間に設けられたヒータユニットと、
前記基板と前記ヒータユニットの間の空間に熱媒を供給する熱媒供給ユニットと、
前記基板の上面に形成される前記処理液の液膜の中央領域に開口を形成する開口形成ユニットと、
前記ベースを回転させることによって鉛直方向に沿う回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットと、
前記処理液供給ユニット、前記ヒータユニット、前記熱媒供給ユニット、前記開口形成ユニットおよび前記基板回転ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記基板保持具によって保持された前記基板の上面に前記処理液供給ユニットから処理液を供給することによって、前記処理液の前記液膜を前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記熱媒供給ユニットから前記空間に熱媒を供給することによって前記空間を前記熱媒で満たし、前記ヒータユニットによって前記熱媒を加熱する液密加熱工程と、前記液密加熱工程により前記基板の温度が前記処理液の沸点以上になるように前記基板が加熱されている状態で、前記開口形成ユニットによって前記液膜に前記開口を形成する開口形成工程と、前記基板回転ユニットに前記基板を回転させながら前記開口を広げる開口拡大工程とを実行し、前記液密加熱工程が、前記開口拡大工程の少なくとも一部の期間において前記開口拡大工程と並行して実行されるようにプログラムされている、基板処理装置。
【0158】
この構成によれば、液密加熱工程において、ヒータユニットと基板との間の空間を満たす熱媒がヒータユニットによって加熱され、当該空間を満たす熱媒によって基板が加熱される。そのため、ベースに設けられた基板保持具に基板を保持させた状態で、ヒータユニットによって熱媒を介して基板を加熱することができる。したがって、ベースを回転させて基板を回転させながら、基板を充分に加熱することができる。
【0159】
液膜に開口が形成される際には、基板が処理液の沸点以上に加熱されるので、液膜において基板の上面付近の部分が気化し、液膜と基板の上面との間に気相層が生じる。そして、開口が拡大される際には、その少なくとも一部の期間において、液密加熱工程が実行される。したがって、基板の温度低下を抑制しつつ、開口を拡大させることができる。よって、気相層が形成された状態を維持しながら、開口を拡大させることができる。
【0160】
なお、液密加熱工程が、開口拡大工程の少なくとも一部の期間において並行して実行されるとしたが、このことは、開口工程において、気相層を維持することができれば、開口拡大工程において液密加熱工程が行われていない期間があってもよいことを意味する。
【0161】
付記12.前記コントローラが、前記液密加熱工程において、前記基板回転ユニットに前記基板を回転させながら、前記熱媒供給ユニットから前記空間へ前記熱媒を供給する回転供給工程を実行するようにプログラムされている、付記11に記載の基板処理装置。
【0162】
この構成によれば、基板とヒータユニットとの間の空間に供給された熱媒に遠心力が作用する。これにより、当該空間の全体に万遍なく熱媒を行き渡らせることができる。
【0163】
付記13.前記コントローラが、前記液密加熱工程を、少なくとも前記開口の周縁が前記基板の上面の外周領域に達するまで継続するようにプログラムされている、付記11または12に記載の基板処理装置。
【0164】
この構成では、開口拡大工程において、気相層が一層維持されやすい。また、開口の周縁が基板の上面の外周領域に達した後は、必要に応じて、基板とヒータユニットとの間の空間の液密状態を解除することができる。これにより、基板の上面の乾燥と並行して基板の下面の乾燥を実行することができる。したがって、基板処理に要する時間の短縮が図れる。
【0165】
付記14.前記コントローラが、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記開口形成工程の開始前に、前記熱媒供給ユニットからの前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程を実行するようにプログラムされている、付記11~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0166】
この構成によれば、ヒータユニットと基板との間の空間が熱媒で満たされた後で、かつ、開口形成工程の開始前には、当該空間に位置する熱媒の入れ替わりが行われなくなる。そのため、当該空間への熱媒の供給が停止されてから開口形成工程が開始されるまでの間に、ヒータユニットから伝達される熱によって、当該空間に位置する熱媒の温度が充分に上昇する。したがって、開口形成工程において、気相層が一層維持されやすい。
【0167】
付記15.前記コントローラが、前記開口拡大工程の実行中に前記基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒供給ユニットから前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程を実行するようにプログラムされている、付記11~14のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0168】
基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間に位置する熱媒は、基板とヒータユニットとの間の空間外の影響を受けて温度低下しやすい。
【0169】
そこで、開口拡大工程の実行中に基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて熱媒を供給すれば、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒を、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分よりも内側の熱媒によって空間外に押し出すことができる。したがって、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒が、空間外の影響を受けにくい内側の熱媒に入れ替えられる。したがって、開口拡大工程が終了するまで、基板の周縁部付近の温度が処理液の沸点以上に維持されやすくなる。
【0170】
付記16.前記コントローラが、前記空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、前記開口形成工程の開始前に、前記熱媒供給ユニットからの前記熱媒の供給を停止する熱媒供給停止工程と、前記開口拡大工程の実行中に前記熱媒で満たされた前記空間における前記基板の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて前記熱媒供給ユニットから前記熱媒を供給することによって、前記空間に位置する前記熱媒を入れ替える熱媒入替工程とを実行するようにプログラムされており、
前記熱媒入替工程における前記熱媒の供給流量が、前記熱媒供給停止工程前における前記熱媒の供給流量よりも小さい、付記11~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0171】
この構成によれば、ヒータユニットと基板との間の空間が前記熱媒で満たされた後で、かつ、開口形成工程の開始前には、当該空間に位置する熱媒の入れ替わりが行われなくなる。そのため、当該空間への熱媒の供給が停止されてから開口形成工程が開始されるまでの間に、ヒータユニットから伝達される熱によって、当該空間に位置する熱媒の温度が充分に上昇する。したがって、開口形成工程において、気相層が一層維持されやすい。
【0172】
また、開口拡大工程の実行中に基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の位置へ向けて熱媒を供給すれば、空間における基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒を、空間における基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分よりも内側の熱媒によって空間外に押し出すことができる。したがって、空間における基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に位置する熱媒が、空間外の影響を受けにくい内側の熱媒に入れ替えられる。したがって、開口拡大工程が終了するまで、基板の周縁領域の温度が処理液の沸点以上に維持されやすくなる。
【0173】
さらに、熱媒供給停止工程前の熱媒の流量が比較的大きい。そのため、液密加熱工程により基板の温度が処理液の沸点以上になるまでに必要な時間を短縮できる。
【0174】
一方、基板とヒータユニットとの間に位置する熱媒を入れ替えるときの熱媒の流量が比較的小さい。そのため、空間において基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の部分に供給された熱媒が、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に移動するまでに要する時間を長くできる。そのため、空間において基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の部分に供給された熱媒が、空間において基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分に移動するまでにヒータユニットによって一層充分に加熱される。
【0175】
付記17.前記ヒータユニットを昇降させるヒータ昇降ユニットをさらに含み、
前記コントローラが、前記開口形成工程において前記ヒータ昇降ユニットが前記基板に近接する第1位置に前記ヒータユニットを配置し、前記熱媒入替工程において前記ヒータ昇降ユニットが前記第1位置よりも前記基板から離間した第2位置に前記ヒータユニットを配置するようにプログラムされている、付記16に記載の基板処理装置。
【0176】
この構成によれば、開口形成工程においてヒータユニットが第1位置に配置される。そのため、基板とヒータユニットとの間の空間が比較的狭くされている。したがって、当該空間を液密状態にするまでに必要な時間を短縮できる。一方、熱媒入替工程においてヒータユニットが第1位置よりも基板から離間した第2位置に配置される。そのため、基板とヒータユニットとの間の空間が比較的広くされている。したがって、熱媒の供給によって単位時間当たりに入れ替えられる熱媒の量を比較的小さくできる。よって、熱媒の供給によって、空間に位置する熱媒の温度が急激に低下するのを抑制できる。
【0177】
付記18.前記開口形成ユニットが、前記基板の上面の中央領域に向けて気体を供給する気体供給ユニットを含み、
前記コントローラが、前記開口形成工程において、前記気体供給ユニットから前記液膜の中央領域へ気体を供給することによって前記開口を形成する工程を実行するようにプログラムされている、付記11~17のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0178】
この構成により、液膜の中央領域に開口を速やかに形成することができる。
【0179】
付記19.前記基板上の前記処理液を吸引する吸引ノズルをさらに含み、
前記コントローラが、前記開口拡大工程において、前記液膜を構成する前記処理液を前記吸引ノズルで吸引する処理液吸引工程を実行するようにプログラムされている、付記11~18のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0180】
この構成によれば、処理液が吸引ノズルに吸引されることによって、開口の拡大が補助される。したがって、開口拡大工程の実行に要する時間を短縮できる。ひいては、基板処理に要する時間の短縮が図れる。
【0181】
付記20.前記基板の上面を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給ユニットをさらに含み、
前記処理液供給ユニットが、前記リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体を前記基板の上面に供給する低表面張力液体供給ユニットを含み、
前記コントローラが、前記基板の上面に前記リンス液を供給するリンス液供給工程と、前記低表面張力液体を前記基板の上面に供給することによって、前記リンス液を前記低表面張力液体で置換する置換工程とを実行し、前記液膜形成工程において、前記低表面張力液体の液膜を前記基板の上面に形成するようにプログラムされている、付記11~19のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【0182】
この構成により、リンス液よりも表面張力の低い低表面張力液体の液膜を基板上から排除することで、基板の上面を乾燥させることができる。したがって、基板上から液膜を排除させる際に基板の上面に作用する表面張力を一層低減することができる。
【符号の説明】
【0183】
1 :基板処理装置
1P :基板処理装置
3 :コントローラ
6 :ヒータユニット
17 :固定ノズル(リンス液供給ユニット)
18 :第2移動ノズル(処理液供給ユニット、低表面張力液体供給ユニット、気体供給ユニット、開口形成ユニット)
19 :下面ノズル(熱媒供給ユニット)
20 :チャックピン(基板保持具)
21 :スピンベース(ベース)
23 :電動モータ(基板回転ユニット)
65 :ヒータ昇降ユニット
90 :吸引ノズル(吸引ユニット)
100 :空間(基板とヒータユニットとの間の空間)
101 :中央部分(空間における基板の下面の中央領域とヒータユニットとの間の部分)
102 :周縁部分(空間における基板の下面の周縁領域とヒータユニットとの間の部分)
150 :液膜
151 :開口
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10