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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】塞栓保護装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/01 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
A61F2/01
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022129177
(22)【出願日】2022-08-15
(62)【分割の表示】P 2019523862の分割
【原出願日】2017-09-18
(65)【公開番号】P2022145961
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】102016012869.0
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516111052
【氏名又は名称】プロテンビス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハ オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ペニング ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ジメネズ ディアズ ビクター アルフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】ラムス コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】フォン マンゴルト カール
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0209634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0302909(US,A1)
【文献】特表2016-533228(JP,A)
【文献】特表2012-501704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/01
A61B 17/3207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大動脈弓内に挿入される塞栓保護装置(1)であって、
フィルタユニット(3)と、
近位端と遠位端とを含むフレーム(5)と、
前記フレーム(5)の近位端に配置されたフィードユニット(7)と、を備え、
前記フィルタユニット(3)が前記フレーム(5)に配置されており、
前記フレーム(5)は、ワイヤで構成されて、近位成形部(11)を備える近位領域(9)と遠位成形部(4)を構成する遠位領域(2)とを提供すると共に、卵形の二次元領域を規定し、
前記近位成形部(11)は、前記フレーム(5)の近位端に配置され、第1部分(13)と、前記第1部分(13)の一端に形成された第2部分(15)と、を備え、
前記第1部分(13)が、前記フレーム(5)が規定する卵形の前記二次元領域に対して第1角度(W1)をなして下向きに延び、前記第2部分(15)が、前記フレーム(5)が規定する卵形の前記二次元領域に対して第2角度(W2)をなして上向きに延びて前記フィードユニット(7)に連結されており、
前記フィルタユニット(3)は、前記フレーム(5)の下側から取り付けられ、
前記遠位成形部(4)は、前記フレーム(5)が規定する卵形の前記二次元領域の内部に向かう前記ワイヤのくびれ(12)を備える塞栓保護装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塞栓保護装置(1)であって、
左鎖骨下動脈又は右鎖骨下動脈を通して前記大動脈弓内に位置決めされた後に、前記フィードユニット(7)を引っ張られると、
前記遠位成形部(4)が大動脈壁に接し、
前記第1部分(13)が卵形の前記二次元領域に対して上方及び前記遠位成形部(4)に向かって斜めに延びるように変形し、
前記第2部分が卵形の前記二次元領域に対して上方及び前記近位成形部(11)に向かって斜めに延びるように変形し、
前記第1部分(13)と前記第2部分(15)が前記遠位成形部(4)を前記大動脈壁に押し付けるバネ機構を形成すること、
を特徴とする塞栓保護装置。
【請求項3】
請求項1又は2に係る塞栓保護装置(1)であって、
前記フィードユニット(7)をカテーテル(25)の中に引き込むと、前記近位成形部(11)と前記フレーム(5)は、前記フィードユニット(7)に加わる張力により狭窄状態となって前記カテーテル(25)の中に引き込まれること
を特徴とする塞栓保護装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の塞栓保護装置(1)であって、
前記近位成形部(11)が前記フレーム(5)を構成する1本の前記ワイヤの2個の端(17,19)を備え、前記フレーム(5)が規定する卵形の前記二次元領域の上面から見ると、前記2個の端(17、19)は卵形の前記二次元領域で互いに平行に延びていることを特徴とする塞栓保護装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に係る塞栓保護装置(1)であって、
前記フィルタユニット(3)が、前記フレーム(5)が規定する卵形の前記二次元領域の外の外部領域内へと張り出すように上記フレーム(5)に連結されたことを特徴とする塞栓保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、請求項1の前提部分に係る塞栓保護装置(embolic protection device)であり、血流由来の不要巨視粒子が主血管例えば大動脈弓の1本又は複数本の分岐血管に入ることを、防ぐものに関する。
【背景技術】
【0002】
脳塞栓は心臓外科手術及び内視鏡心臓治療にて既知な合併症である。外科又は内視鏡手術では粒子が遊離することがある。それらが血流に入ることがあり、とりわけ脳内にて塞栓の引き金になることがある。脳塞栓が起きると発作が起きること、更には命取りになることがある。
【0003】
塞栓保護装置が知られており、例えば本願出願人の特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第2859864号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、血流由来の不要巨視粒子が主血管の1本又は複数本の分岐血管に入ることを単純な形態で防げるよう、改良された塞栓保護装置を提供することにある。
【0006】
本開示による解決は独立形式請求項の特徴により達成される。従属形式請求項により、その開示の更に有利な発展形態が提示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様によれば、大動脈弓内に挿入される塞栓保護装置であり、フィルタユニット、フレーム及びフィードユニットを備え、そのフィルタユニットがそのフレームに配置されたものが提供される。フレームは、近位成形部(proximal shape)を備える近位領域(proximal area)を提供しその近位成形部がフレームの内部領域内に配置され且つフィードユニットに連結されるものであり、その近位成形部は、第1部分及び第2部分を備えその第2部分が第1部分の一端に形成されたものである。フレームの内部領域は、そのフレームまで広がる平面並びにその平面より下方又は上方の領域の双方で構成される。
【0008】
本開示の塞栓保護装置は、近位成形部とフィードユニットとの連結により生成されたバネ機構を特徴とする装置を、有利な形態にて提供するものであり、それにより、本塞栓保護装置は、概ね遠位領域(distal area)にある弓頭血管(head blood vessel)の方向に沿い、大動脈内血管壁上へと押されることとなる。本塞栓保護装置を用いることで、不要巨視粒子が概ね逸らされる。
【0009】
近位領域は、フィードユニットを引っ込めることで、左鎖骨下動脈の管口(ostium)の面前に位置決めされる。これにより、大動脈弓内で安定位置が勝ち取られる。これとは別の位置決めシナリオに従い、本塞栓保護装置を右鎖骨下動脈内に挿入することもできる。その場合、フィードユニットを引っ込めることで、近位領域が腕頭動脈の管口の面前に位置決めされる。
【0010】
バネ機構は、とりわけ近位成形部の幾何形状により形成される。好ましくは、近位成形部の第1部分がフレーム平面より下、とりわけそのフレームの内部領域内に配置される。第1部分は、より有利には弓形状に形成される。近位成形部の第2部分は、好ましくはフレームより上、とりわけそのフレームの内部領域内に配置される。第2部分は、より有利には真っ直ぐに形成される。好ましくは、それら第1及び第2部分が互いに及び/又はフレーム平面に対し角度をなすようにする。言い換えれば、少なくとも第1及び/第2部分がフレーム平面より上又は下に配置され、第1部分・フレーム平面間角度が第2部分・フレーム平面間角度と異なるようにすることで、それら第1及び第2部分に角度が差し挟まれるようにするとよい。
【0011】
フィードユニットを用い近位成形部を張力下に持ち込むことで、そのバネ効果が、その近位成形部を介し本塞栓保護装置のフレーム全体へと伝わるようにすることができる。この張力伝達により、とりわけそのフレームの遠位領域が畳まれる。
【0012】
本塞栓保護装置のフレームはある二次元平面に亘り拡がり、その近位領域にて近位成形部へと変態するものであり、有利なことにはその近位成形部をその平面から下方又は上方に張り出させることができる。その近位成形部をフレームの内側に配置しフィードユニットと連結することで生じたバネ機構により、1本又は複数本の血管に亘りそれらフレーム及びフィルタユニットがしっかり固定されるので、それら血管を守り又は覆うことができる。フィルタユニットが広がっているときには径方向力が効いてくる。本塞栓保護装置の位置決めはそのバネ機構により、またフィードユニットにより実行される。更に、本塞栓保護装置を位置決めする際に触覚フィードバックが実現されるため、即ちフィード装置を引っ込める際に抵抗が感じられるため、従って、本塞栓保護装置が正しい位置にあることをチェックすることができる。とりわけ、それを通じ本塞栓保護装置が導入された弓頭血管も覆われ守られる。
【0013】
フレーム、とりわけ近位成形部及び/又は遠位成形部(distal shape)がこうした幾何形状であるため、本塞栓保護装置自体がその進入経路如何によらず大動脈弓内解剖学的条件に柔軟に適合し、弓頭血管全ての完全被覆が可能となる。
【0014】
より有利には、近位成形部の第1部分及び第2部分がフレームの内部領域内に配置される。とりわけ、進入血管の被覆が確実に行われるよう近位成形部・フィードユニット間連結点がフレームの内部領域内に配置される。言い換えれば、フレームの近位領域又はフィルタユニットの対応するそれが、その進入血管の管口を覆いそれ越しに遠くまで延ばされる。同時にフレームの近位領域又はフィルタユニットの対応するそれが大動脈壁に接触する。とりわけ、こうすることで、本塞栓保護装置が大動脈弓内に置かれているときに、その進入血管の被覆が確実に行われる。
【0015】
本開示の塞栓保護装置、とりわけそのフレーム及びその上に配置されているフィルタユニットを、完全に狭窄すること及び展開することができる。狭窄状態でその直径が概ね1.4~2.2mm、とりわけ1.7~1.8mmとなるよう、好ましくは本塞栓保護装置を寸法設定する。本塞栓保護装置には三通りの状態がある:狭窄されておらず本塞栓保護装置が自身の基本形態をとる状態(基本状態(basic state))と、狭窄されており例えばカテーテル内にある状態(狭窄状態(folded state))と、狭窄されておらず本塞栓保護装置が想定通り例えば大動脈弓内最終位置にて用いられる際の状態(留置状態(placement state))である。以下、大動脈弓内最終位置のことを留置位置とも呼ぶ。
【0016】
それら三状態の幾何形態は異なっている。運搬及び埋込準備の間は、本塞栓保護装置は例えば図面に示す如く自身の基本状態をとる。機械的再成形によりその基本状態が狭窄状態へと転化される。可逆変形素材のフレーム例えば超弾性ニチノールワイヤなら、本塞栓保護装置をカテーテル内に押し込めうるよう再成形することができる。そうする際には、本塞栓保護装置がその方向に沿い伸長され、それに伴い遠位成形部及び近位成形部がフレームの外側領域内へと曲げ出され、それによりそれが真っ直ぐな、即ち伸長した形状へと変化する。その帰結たる長さ変化は幅の減少に依存する。この場合狭窄フレーム、即ちフレームのうち遠位成形部及び/又は近位成形部外にある二辺が、そのフレームの先端から端部に至るまで、即ち遠位成形部から近位成形部に至るまで、そのカテーテル内で互いに平行に所在することになる。格別に装着されたフィルタユニットをこの機械的変形に追従させることができ、それがカテーテル・ワイヤ間介在空間内に所在することとなる。ニチノール製フレームによりいわゆる形状記憶効果が提供される。
【0017】
大動脈弓内留置位置では、本塞栓保護装置のフレームの幾何形状が大動脈壁に対し柔軟に適合し、弓頭血管流出物の面前にて大動脈の湾曲に倣い軽微な弧状となる。カテーテルを脱する際に、遠位成形部及び近位成形部が共に自身の原形へと元通り畳まれるので、大動脈壁におけるフレームの非侵襲的位置決めが可能である。畳まれた遠位成形部及び近位成形部が特殊な形状であるため、鋭い縁がついた継ぎ目や隅部が生じない。フレームの形状記憶効果により径方向力が生じ、それがフィルタ表面全体に作用する。そのフィルタの表面抵抗により、血流によって本塞栓保護装置のフレームがその留置位置の方へと更に押されることから、更なるフレーム安定性が大動脈内生理学的条件により達成される。
【0018】
フレームの素材は好ましくはニチノールとする。そのフレームをワイヤとすることや、その中空空間内にプラチナ-/プラチナ-イリジウム-/タンタルワイヤが置かれその中空空間がほぼ完全に満たされた中空ワイヤとすることができる。或いは、そのフレームを例えばFort Wayne Metals(商号)製のDFTワイヤから作成することや、きっちりと装着されたプラチナ/タンタルコアを有するワイヤとすることができる。これらのフレーム素材例には、そのフレームが放射線不透過性になるという長所がある。
【0019】
フィルタユニットを選択浸透性なフィルタ素材で構成することで、例えば、血流由来の不要巨視粒子が、主血管例えば大動脈弓の1本又は複数本の分岐血管内に入り得ないようにすることができる。例えば、そのフィルタ素材を複数素材、例えばプラスチック又は金属素材例えばニチノールを含むものにする。使用素材によっては、そのフィルタ素材を織ること、鋳ること、レーザカットすること或いは押印することができる。好ましくはそのフィルタ素材をポリアミド製の織膜とする。そのフィルタ素材を、好ましくは、その孔サイズが40~150μm、開放気孔率が35~60%のものとすることで、一方では不要粒子に対する良好な保護を実現し、他方では血液向けの良好な気孔率を実現することができる。そのフィルタ素材の開放面を正方形や長方形の開放面にすることができる。そのフィルタ素材の厚みは、好ましくは20~120μmとする。
【0020】
フィードユニットはステンレス鋼ワイヤ巻線製のチューブであるが、別の素材を選ぶこともできる。フィードユニットは抗捩れ性を有していて、本塞栓保護装置を位置決めする際にトルク及び力を伝えるよう働く。より有利には、フィードユニットの長さを120~250cm、直径を1.5mmとし、その外面にプラスチック被覆を具備させる(Pebax(登録商標)被覆、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA))。
【0021】
本塞栓保護装置の長さは、より有利には50~100mmとする。本塞栓保護装置の幅は、より有利には15~45mmとする。
【0022】
更なる発展形態に係る塞栓保護装置では、近位成形部の第1部分がフレームの平面に対し第1角度をなし、第2部分が近位成形部の第1部分に対し第2角度をなす。有利なことに、その近位成形部の第1及び第2部分を第1・第2部分間連結点にて同軸整列させ、フィードユニットの働きでそれら角度の大きさを変えてバネ機構を形成することにより、本塞栓保護装置を大動脈弓内留置位置にてしっかり固定することができる。近位成形部の第1部分は、その平面を基準として第1部分から測り、フレームの二次元平面に対し下方に約25~50°、好ましくは30°なる角度をなす。第1部分は直線又は弧状形状とし、好ましくはその長さを0.5~2.5cmとする。第2部分、好ましくは直線形状のそれが、第1部分の端に形成される。第2部分は、第1部分を基準として第2部分から測り、第1部分との協働で好ましくは80~115°なる第2角度を挟むようにする。第2角度がそのフレームの二次元平面を基準として測定されている場合、それは、その平面を基準として第2部分から測り概ね110~145°となる。好ましくは第2部分概ね1~5cm長とする。こうした幾何形状の近位成形部であるため、確実に、位置決め状態における近位成形部の幾何形状が、解剖学的組織に適合するものとなる。
【0023】
他の有利な更なる発展形態では、近位成形部がフレームの2個の端を備え、それらがそのフレームの内部領域内にて互いに平行に延設される。これにより、そのフレームが、長手方向にも横方向にもより安定となる。本塞栓保護装置の更なる発展諸形態では、それら2個の端が接着ボンドによってフィードユニットに装着される。ワイヤの端に対してはこれにより自在アクセスが不可能となる。更なる発展諸形態、即ち近位成形部がフレームの端のうち1個のみを有しフレームのもう1個の端が例えばフィード装置に装着されるそれも、可能である。
【0024】
有利な更なる発展諸形態では、フレームが遠位領域を有し、その遠位領域が遠位成形部を備え、その遠位成形部がそのフレームの内部領域内に配置されるものが、提供される。有利なことに、その遠位成形部の先端を非侵襲性素材(例えば膜素材、ポリマ、ラバー又は樹脂接着剤)で以て覆うことで、非侵襲的保護が提供される。有利なことに、その素材を小滴形状のノーズとして形成することができる。
【0025】
他の有利な更なる発展形態は、遠位成形部が、フレームの内側を向いたくびれがそれにより提供されることを特徴とする。このくびれはフィルタユニット向けの連結場所として働く。これは大動脈内位置決めに対する支援としても働くのであり、なぜかと言えば、放射線不透過性マーカが併設されていて、有利なことにそのくびれをカテーテル内フレーム整列表示手段として用いうるからである。遠位形成部はフレームの内部領域内に配置され、更に、形成装置を通じカテーテル内に本塞栓保護装置を押し込む際に、位置決めに対する支援として有利な形態で働く。その過程で、遠位成形部を形成装置上に、或いはその内部に引っかけ、原方向の遠位形成部とは逆の方向に曲げ出すことができる。言い換えれば、遠位成形部を外向きに、即ちフレームの内部領域の外にある領域内へと曲げ出すことができる。その利点は、カテーテルを通じ押し込む際に、例えば、空間を節約しつつそのカテーテル内にフレームを配置できることにある。遠位成形部を曲げることで、捩り力がフレームに伝わるので、本塞栓保護装置を大動脈弓内で展開する際には、その遠位成形部がフレームの内部領域内に曲げ戻ることになる。
【0026】
より有利には、フレーム・フィルタユニット間ジョイントが接着剤トンネル連結とされる。その接着剤トンネル連結は、フレームを巡る包絡的なポリマ成形体(polymer shape)として作成される。言い換えれば、その接着剤でそのフレームを管又は円筒の形状をなし包絡する。そのポリマ成形体によりいわゆる接着剤トンネルが形成され、その内にフレームが配置され、そのフレームがそのトンネルに対し可動とされる。有利なことに、接着剤トンネル・フィルタユニット間ジョイントも、機械的に安定なものとすることができる。フィルタユニットをフレームとは別体にすることで可撓性が遠位及び近位領域にて生じるので、本塞栓保護装置を狭窄又は展開する際のそれら領域の曲げが可能となり、或いは少なくとも容易になる。
【0027】
他の有利な更なる発展形態では、フィルタユニットが近位及び/又は遠位領域外でフレームに連結されたものが、提供される。この連結は機械的に安定であるので、接着剤・フレーム間相対運動を伴わない。より有利にはその連結が可撓ジョイントとして形成される。例えば、そのジョイントをグルージョイント(接着ジョイント)、フォームフィット(形嵌め)、熔接又は縫合ジョイントとすることができる。接着剤トンネルにより、本塞栓保護装置の狭窄又は展開中にも、或いはその際に特に、安定且つ柔軟な連結を作成することが可能となる。
【0028】
更に有利な更なる発展形態では、遠位領域内のフィルタユニットが概ねくびれの辺りまでフレームと連結される。これにより、フィルタユニットが不意にフレームの下側で下方に曲がることが防止される。この連結はくびれの始点に至るまで形成することができる。
【0029】
他の有利な更なる発展形態では、近位領域内のフィルタユニットが概ね近位成形部の第1部分に至るまでフレームに連結される。この連結は第1部分の始点に至るまで作り上げることができる。
【0030】
他の有利な更なる発展形態では、遠位及び近位領域内のフィルタユニットがフレームに可撓連結される。従って、これによりフレーム・フィルタユニット間で相対運動をなすことが可能になる。これにより、近位及び遠位領域内のフレームをフィルタユニットと可動連結することができる。これに対し、残りの領域内のフレームはフィルタユニットに不動連結される。
【0031】
より有利には、この連結を、フレームを巡る包絡的なポリマ成形体として作成された接着剤トンネル連結とする。接着剤トンネル連結のため、フレームが接着剤に浸漬される。その接着剤が乾燥されている間に、その接着剤が動かされてフィルタユニット上に(チューブ様)ポリマ成形体を形成する。本塞栓保護装置、とりわけそのフレームの幾何変化、例えばそのフレーム又はそれに対応するフィルタユニットを狭窄又は展開する際のそれを、容易に実行することができるので、遅延や、最も極端な場合には本塞栓保護装置への損傷を、なくすことができる。
【0032】
好ましくは、フレームがフィルタユニットに予応力付きで連結される。例えば、僅かに押圧されているフレームをフィルタユニットに連結することで、予応力を維持することができる。フレームへのフィルタ素材の連結は、好ましくは、基本状態及び位置決め状態の双方にてフレームがフィルタユニットに予応力を加えるように工夫される。
【0033】
より有利には、フィルタユニットがフレームに下側から糊付けされる。その結果、血流に適する滑らかな表面が生成される。
【0034】
有利な更なる発展形態によれば、フィルタユニットの縁がフレームへの取付に先立ち封止(シーリング)され、それにより、使用中における形状変化が妨げられると共に、大動脈壁との相互作用が極力非侵襲的なものとされる。
【0035】
他の有利な更なる発展形態では、フィルタユニットがフレームを越えて張り出したものが、提供される。好ましくは、近位及び/又は遠位領域外にてフィルタユニットを張り出させる。遠位又は近位領域外でのフィルタユニットのフレーム越え張り出しを、より有利には0.5~2.0mm幅とすることで、そのフレームが大動脈弓内にて留置状態で位置決めされる際に、その血管壁に対するシーリングリップを形成することができる。このシーリングリップは、フレームの非侵襲的留置並びにその形状の安定性を支えるものである。加えて、留置状態ではこのシーリングリップが向かい側の大動脈壁によって閉止されるので、本塞栓保護装置の側面周辺での漏れ例えば弁を介したそれが防止される。
【0036】
より有利には、その張り出しを封止することで、フィルタ素材の円滑な閉止が実現される。これもまたフレームの非侵襲的留置を支えるものである。
【0037】
他の有利な更なる発展形態では、フレームの近位及び/又は遠位領域内のフィルタユニットが、そのフレームを越え下側から上側へと反転されるものが、提供される。即ち、フィルタユニットをフレームの外部領域内へと張り出させる。フレームの近位及び/又は遠位領域を越えそのフィルタユニットが反転し又は裏返っている/折り重なっているので、そのフレーム上におけるフィルタユニットの取付が改善され、本塞栓保護装置が大動脈弓内にて位置決めされる際に弓頭血管全ての完全被覆が確実に行われることとなる。フィルタユニットを近位及び/又は遠位領域内に二重層として所在させることで、そのフィルタの有効性が高まる。
【0038】
他の有利な更なる発展形態では、遠位及び/又は近位領域内のフィルタユニットがスレッド(糸)、ヤーン(編み糸)又はワイヤにより遠位成形部又は近位成形部にしっかり固定される。加えて、この連結を封止して安定形状を実現することができる。更に、そのシーリングにより、この領域における連結が非侵襲的なものとされる。
【0039】
有利な更なる発展形態では、フィルタユニットが糊付けにより遠位成形部にしっかり固定される。この糊付けは樹脂接着剤により果たすことができる。この糊付けにより、フレームが遠位領域内に非侵襲的な先端を有することとなるので、遠位領域が例えば大動脈壁と接触した場合でも、それが守られ傷が生じない。
【0040】
より有利には、フィルタユニットがコイルによって近位領域内に装着される。そのコイルはステンレス鋼ワイヤ製であり、好ましくは螺旋形状をなしてフレームの端を外包する。そのコイルの働きで、フィルタユニット・フィードユニット間連結が安定化される。加えて、そのコイル形状が、本塞栓保護装置の狭窄及び展開中における形状変更の支えとなる。
【0041】
本塞栓保護装置を更に改善するため、ある有利な更なる発展形態では、フレームの長軸に対し概ね45°の角度をなすよう繊維が整列された繊維素材により、フィルタユニットが作成されたものが、提供される。繊維素材を織膜で構成することで、それは、確実に、フレームの長手方向及び横方向に沿い高い可撓性を有するものとなる。フレームの長手方向とは近位領域から遠位領域に向かう、好ましくはそのフレームの中心線をなすそれのことである。好ましくは、それら繊維の斜行により、フレームの長軸に対し45±10°なる角度を発現させる。
【0042】
他の有利な更なる発展形態では、近位成形部がフィードユニットに連結され、フレームの2個の端がワイヤにより外包され、そのワイヤの端がフレームの端に対し平行に配置されたものが、提供される。フィードユニットに対するフレームの近位成形部の接合は、好ましくは接着剤ジョイントにより行われる。そのフレームの端がフィードユニットの開口通路(open lumen)内に挿入され、そこにそれらが糊付けされる。フレームの端を外包しひいてはそれをしっかり保持するワイヤ、好ましくはステンレス鋼ワイヤの働きで、そのフレームの端が更に安定化される。その外包ステンレス鋼ワイヤの端はフレームのワイヤの端に対し平行とされ、好ましくはフィードユニット内に一緒に糊付けされる。そのフレームワイヤからフィードユニット並びに外包ステンレス鋼ワイヤへの継ぎ目は、好ましくは、例えばポリマ混合物で以て可撓封止され、それにより滑らかな表面及び均一な継ぎ目が提供される。
【0043】
好ましくは、本塞栓保護装置のフレームを、基本状態にて卵形の形態を呈するものとする。卵形は大動脈弓の頂部の生来形状とマッチしているので、3本の弓頭血管全てを信頼性よく覆うことができる。この時点で、大動脈弓の上部領域は、例えば、裏返された卵形の鉢の内側のような形状を有している。従って、卵形を挿入することでポジティブフィット(しっかりとした嵌めあわせ)が達成される。好ましくは、その卵形に、近位成形部に向かうテーパが付される。言い換えれば、本塞栓保護装置が置かれる点にて大動脈を過ぎる断面を卵形にすることで、フレームの卵形の形状を、有利なことに、その点における生理学的形状に適合させることができる。
【0044】
本開示の第2態様によれば、本開示の塞栓保護装置を成形する形成装置が提供される。その塞栓保護装置は上述した特徴を全て又は少なくとも一部有しているので、その記述をこの時点で再び繰り返すことはしない。成形を実行するのは塞栓保護装置をカテーテル内に送り込めるようにするためであり、その成形では、その塞栓保護装置のフレーム及びそこに配置されているフィルタユニットが、拡張状態から伸長状態へと転換される。本形成装置は、最狭断面部にて会合する2個の小部分を有する。それら小部分は、それぞれ好ましくは漏斗状とされる。遠位小部分、好ましくは平又は丸漏斗として形成されたそれは、本開示の塞栓保護装置用の入口として働く。近位小部分、好ましくは円形の漏斗として形成されたそれの役目は、概ね円形のチューブ、例えば市販のイントロデューサシース(鞘)又は市販のカテーテルを受け入れることである。本形成装置たるツールの幾何形状により、塞栓保護装置特にそのフレームの形状を、狭窄状態における直径が好ましくは概ね1.4~2.0mm、とりわけ1.7~1.8mmとなる要領にて、変化させることができる。本形成装置により、概ね円形のチューブ、例えば市販のイントロデューサシースや市販のカテーテルの中に塞栓保護装置を容易に入れることが可能となる。
【0045】
更なる発展形態では、本形成装置の上記好ましくは平又は丸開口が、塞栓保護装置のフレームの近位成形部及び/又は遠位成形部を外向きに曲げうるよう成形される。就中、このことにより、例えばカテーテル内への、塞栓保護装置の正確で無損傷な導入が、確実に行えるようになる。言い換えれば、基本状態の塞栓保護装置ではフレームの内側へと延びる近位及び/又は遠位成形部が、その平又は丸開口によりその逆方向即ち外方向へと曲げられる。
【0046】
本開示の第3態様によれば、形成装置により本開示の塞栓保護装置を狭窄する方法が提供される。その塞栓保護装置は上述した特徴を全て又は少なくとも一部有するものであるので、ここでそれらを再び繰り返すことはしない。本方法は、形成装置の平又は丸開口の面前にて塞栓保護装置のフレームを動かし、フィードユニットをその形成装置内で案内するステップと、近位成形部をその形成装置内に導入し又は引き込み、その近位成形部を外向きに曲げるステップと、遠位成形部をその形成装置の遠位小部分の外縁上に引っかけ、更に挿入することでその遠位成形部を外向きに曲げその形成装置内に挿入するステップと、を有する。
【0047】
本方法の更なる発展形態では、有利なことに、形成装置内にフレームを挿入することで、そのフレームが一緒に押され長手方向に沿い伸長されるものが、提供される。形成装置の遠位小部分がテーパ付きの形状であるため、そのフレームが両側から一緒に押されるので、そのフレームが脱し形成装置の最狭断面部に入る際に、そのフレームが長手方向に伸長された形状を呈することとなる。
【0048】
本方法の更なる発展形態では、有利なことに、狭窄された塞栓保護装置が入っている上述のチューブ、例えば市販のイントロデューサシースたりうるそれから、前もって大動脈弓内に置かれているカテーテル内へと、塞栓保護装置が押し出されるものが、提供される。そのカテーテルの近位端上にある止血弁が、ここでは、そのチューブを受け入れしっかり固定するよう働くと同時に、その配置が実行される際の血液損失を最小限化するよう働く。フィードユニットに対する前押しで以て、塞栓保護装置が今やそのチューブからカテーテル内へと押し出されていく。フレームがそのカテーテル内に完全に配置された直後から、そのチューブを取り除くこと及びフィードユニットを介し引き出すことができる。塞栓保護装置を、この時点でフィードユニットを前押ししてカテーテルの遠位端を通じ大動脈弓内へと押し出すことで、押すことができる。
【0049】
本方法の他の更なる発展形態では、有利なことに、塞栓保護装置が、上述のチューブ、例えば市販のカテーテルたりうるそれから、前もって大動脈弓内に置かれているシース内へと押し出されるものが、提供される。シースを介したチューブに対する押しで以て、そのチューブ内の塞栓保護装置を、大動脈弓内のシースの遠位端の方に押すことができる。
【0050】
本開示の塞栓保護装置の全ての更なる発展形態にて、曲げ上げられた近位形成部からフレームに伝わる予応力が、曲がった近位成形部を真っ直ぐにすることで起きる張力と実質的に等しいものが、提供される。
【0051】
更に、塞栓保護装置をその収容元カテーテルから出して展開する方法が提供される。本開示は、例えば上記塞栓保護装置狭窄方法により細長く若しくは円筒状とされ又はカテーテル様とされたデバイス内に、その塞栓保護装置を受け入れることができる、という要件をも有する。塞栓保護装置をカテーテル外で展開する際には、まず、フレームの遠位領域がそのカテーテルを脱し終えるまでその塞栓保護装置を押し出す。その塞栓保護装置の、カテーテル外への更なる押し送りで以て、遠位成形部が押し出され、フレームの内部領域内へと曲げ戻る。遠位成形部の曲げ戻りにより、その遠位領域内のフレームが、塞栓保護装置が畳まれる前の予応力状態に復帰する。遠位成形部の曲げ戻りは姿勢に対する助力として働くので、塞栓保護装置のフレームの形状を変化させることができ、ひいてはそれを事実上どのようなカテーテル内にも挿入することが可能となる。更に、遠位成形部の曲げ戻りは非侵襲的である。
【0052】
その近位領域にて、フィードユニットに2個のマーキングを具備させうるので、ガイドカテーテルを通じ塞栓保護装置が後刻配置されたときに、遠位成形部がそのカテーテルの出口開口のすぐ面前に所在していることが第1のマーキングで指し示され、フレームが既にそのカテーテルを完全に脱していることが第2のマーキングで指し示されるようにすることができる。
【0053】
更に有利な更なる発展形態では、フレームの方向が1個又は複数個のマーカにより表示される。それらマーカは放射線不透過性なものとすることができる。それらマーカは、とりわけ、フレームの遠位領域内に配置することができる。遠位領域がカテーテルから押し出される際、その遠位領域によりそのフレームの方向が指し示される。こうする利点は、主に、フレームの位置、それが送られていく方向、並びに留置位置を精密に定めうることにある。
【0054】
本開示の更なる詳細を、図面を助けにして後述の諸実施形態例から導出することができる。更に、本開示について上述した子細のいずれも、提示されている諸実施形態例に限られるわけではなく、寧ろ、個別的に、幾つかを選び又はそれらを丸ごと、他の実施形態例の態で体現することができる。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本開示に係る塞栓保護装置を示す図である。
図2図1記載の塞栓保護装置のフレームの上面図である。
図3図2記載のフレームの側面図である。
図4図2記載のフレームの近位領域の斜視図である。
図5A】放射線不透過性マーカ配列を伴うフレームを示す図である。
図5B】別の放射線不透過性マーカ配列を伴うフレームを示す図である。
図6】挿入装置に対する本開示の近位成形部の連結を示す図である。
図7】フレーム、フィルタユニット及びシーリングを含む接着剤トンネルの断面である。
図8】フレーム及びそこに配置されたフィルタユニットの上面図である。
図9図8記載の遠位フィルタユニットを示す図である。
図10】フィルタユニットが配置された近位成形部の上面図である。
図11図10記載の近位成形部の斜視図である。
図12】フィルタユニットが配置された遠位成形部の上面図である。
図13図12記載の遠位成形部の斜視図である。
図14】カテーテル内にあり狭窄されている塞栓保護装置を示す図である。
図15A】狭窄状態から広げられた状態への、本開示の塞栓保護装置のフレームの成形を示す図である。
図15B】狭窄状態から展開状態への、本開示の塞栓保護装置のフレームの成形を示す図である。
図15C】狭窄状態から展開状態への、本開示の塞栓保護装置のフレームの成形を示す図である。
図15D】狭窄状態から展開状態への、本開示の塞栓保護装置のフレームの成形を示す図である。
図15E】狭窄状態から展開状態への、本開示の塞栓保護装置のフレームの成形を示す図である。
図15F】狭窄状態から展開状態への、本開示の塞栓保護装置のフレームの成形を示す図である。
図16】カテーテルから脱した後で展開状態の塞栓保護装置の模式図である。
図17】カテーテルから脱した後の塞栓保護装置を大動脈弓内で展開する手順を示す図である。
図18図17の如くカテーテルから脱した後の塞栓保護装置による大動脈内弓頭血管流出物の被覆を示す図である。
図19】本開示の塞栓保護装置を成形する形成装置を示す図である。
図20図19記載の形成装置の斜視図である。
図21】形成装置により本開示の塞栓保護装置を狭窄する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本開示に係る塞栓保護装置1を図1に示す。本塞栓保護装置1はフレーム5を備えており、そこにはフィルタユニット3が配置されている。フレーム5はフィードユニット7に連結されている。フレーム5の長さは50~100mmにするのが有利である。フレーム5の幅は15~45mmにするのが有利である。本実施形態例では、フレーム5が連続的に折り曲げられた1本のワイヤで構成されている。しかしながら、本塞栓保護装置の諸特性及び諸利点の記載は他の諸実施形態例にも当てはまる。
【0057】
フレーム5は二次元及び三次元領域を有している。その二次元領域、即ちそのフレームが広がる平面は卵形の形状であり、その遠位及び近位領域2,9にて近位成形部11及び遠位成形部4へと変態している。それら近位成形部11及び遠位成形部4がフレーム5の三次元領域であり、そのフレーム5の残りの領域が二次元領域即ち卵形の形状を形成している。図示の塞栓保護装置1は基本状態である。
【0058】
図2に、図1記載の塞栓保護装置1のフレーム5の上面の外観を示す。フレーム5の近位領域9は、そのフレーム5の開放端17,19、本実施形態例ではワイヤの端へとつながっている。その近位領域9は、従って近位成形部11も、使用フレーム5又はそれに対応する使用ワイヤの2個の開放端17,19によって形が定まっている。近位成形部11は第1部分13及び第2部分15を有しており、本実施形態ではそれらが平行端17,19により形成されている。遠位領域2ではフレーム5が遠位成形部4へと変態している。その遠位成形部4はワイヤからなるくびれ12を有しており、これは約1~3cmに亘りフレーム5の内側、言い換えれば卵形二次元領域内に入り込んでいる。
【0059】
本実施形態例におけるくびれ12は約1~1.8mmの頭部直径を有するループであり、それ以外のところではワイヤが自身に対し平行に配置されている。このループと、自身に対し平行配置されたワイヤは、フレーム5の同じ二次元平面内に所在している。
【0060】
図3に、図2記載のフレーム5の側面外観を示す。フレームの端17,19を伴う近位成形部11が、遠位成形部4の中のフレームと同様、フレーム5の内側へと互いに平行に延びている。この場合、近位成形部の第1部分13は、フレーム5の二次元平面に対し好ましくは下向きに25~50°なる第1角度W1、但しそのフレームの平面を基準として第1部分13から測った角度をなしている。好ましくは0.5~2.5cmなる長さの第1部分13を経て、第1部分13の端上には、フレーム5の二次元平面から上向きに好ましくは110~145°なる第2角度W2、但しそのフレームの平面を基準として第2部分15から測った角度で、第2部分15が配置されている。第2部分15の長さは1~5cmである。第1及び第2部分13,15の長さ、並びにフレーム5の平面に対するそれらの角度を、本塞栓保護装置に課される条件に相応しより大きめ又は小さめに選定してもよい。
【0061】
第1及び第2部分13,15は近位成形部11を形成し、その近位成形部がフレーム5の内部領域内に配置されるものであり、その近位成形部11は、フレーム5の平面の上方及び下方に延びている。近位成形部11がこうした幾何形状であるため、フレーム5は、予緊張されると同時に、長手方向及び横方向に沿い安定化されている。
【0062】
第1部分13をフレーム5の平面内に延ばすこと、即ち角度W1を0°に等しくし第2部分15のみをフレーム5の平面に対し第2角度W2に亘り傾斜させることも、可能である。
【0063】
遠位成形部4及びそれに備わるくびれ12は、フレーム5の二次元平面内に存している。
【0064】
図4に、図2記載のフレームの近位領域9の斜視外観を示す。近位成形部11は、フレーム5の平面に対し第1角度W1だけ曲げられた第1部分13と、フレーム5の平面に対し第2角度W2だけ曲げられた第2部分15と、フレーム5の2個の端17,19とで構成されている。近位成形部11の第1部分13及び第2部分15は、共に、各2本のフレームワイヤを有している。
【0065】
図5A及び図5Bに、放射線不透過性マーカ20の配列を伴うフレーム5を示す。放射線不透過性マーカ20は、放射線不透過的可視性をフレーム5上にもたらすべく、目立つ場所に付されている。例えば、放射線不透過性マーカ20を、くびれ12の付近、並びに遠位領域2の中のフレーム上に付すことで、フレーム5の先端の精密位置を判別可能となる。更に、放射線不透過性マーカ20は、遠位又は近位領域2,9の外のフレーム5上にも付されている。マーカ20同士の距離により、本塞栓保護装置1が狭窄状態及び展開状態のいずれであるかを判別することができる。また、本塞栓保護装置1の大動脈弓内精密位置を放射線不透過性マーカ20により判別することができる。
【0066】
放射線不透過性マーカをプラチナ/イリジウム製のスリーブとし、それらをフレーム上に配置すること又はそれに付すことができる。スリーブの最小内径はフレーム5よりも大きく、壁厚は約50~100μmであり、その取付は接着剤により行われる。
【0067】
図5A図5Bには放射線不透過性マーカ配置可能個所が一部しか示されていない。更に、放射線不透過性マーカ20の付け方は多々あり、これは所望の成果に左右される。
【0068】
図6は本開示のフィード装置7への本開示の近位成形部11の連結を示す図であり、この図には近位成形部11の中のフレーム5の端17,19が示されている。同時に、それらの端17,19が近位成形部11の第2部分15の端にもなっている。
【0069】
本実施形態例のフィードユニット7はステンレス鋼コイルを備えており、そのエンベロープ(外被)が封止されている。本実施形態例におけるフィードユニット7の外径は1.5mmであり、その開口通路の直径は0.8mmである。フィードユニット7の全長は150cmである。フィードユニット7を他の寸法にすることもできる。
【0070】
フレーム5の近位成形部11は接着剤ユニット8、例えばポリウレタン接着剤により、フィードユニット7に接合されている。近位成形部11のワイヤ端17,19がそのフィードユニット7の内部開口通路内へと押し込まれ、糊付けされている。見やすさを高めるため、この図では接着剤ユニット8に綾目ハッチングを施してある。
【0071】
安定性を高めるため、ワイヤ端17,19、即ち近位成形部11の第2部分15が、外包ステンレス鋼ワイヤ6によってしっかり保持されている。この場合、外包ステンレス鋼ワイヤ6のワイヤ端10がフレーム5の端17,19に対し平行配置され、フィードユニット7内に糊付けされている。フィードユニット7に対する近位成形部11の継ぎ目、並びに外包ステンレス鋼ワイヤ6もまた、滑らかな表面及び均一な継ぎ目を実現すべくポリウレタンで以て被覆されている。
【0072】
図7に、フレーム5及びフィルタユニット3の連結部の拡大外観を断面で示す。その連結は、フレーム5周囲の包絡ポリマ成形として実行されている。そのポリマ成形により、その内部にてフレーム5がフィルタユニット3上に配置される接着剤トンネル41が形成される。この図では、そのフィルタユニット3の外縁にシーリング42が示されている。
【0073】
図8に、フレーム5及びその上に配置されたフィルタユニット3の上面の外観を示す。フレーム5の長さは50~100mmとするのが有利である。フレーム5の幅は15~45mmとするのが有利である。本実施形態例のフィルタユニット3は、接着剤により、或いはポリウレタンをベースとする接着剤により、フレーム5にしっかり固定されている。この糊付けはフレーム5の外側部分上で途切れなく実行される。フレーム5の近位及び遠位領域内部分、即ち基本状態では内側に曲がっている部分は、フィルタユニット3に糊付けされていない。フィルタユニット3は、その大動脈弓内留置位置にフレーム5を位置決めしたときフィルタユニット3の表面が中心血流と完全に面するよう、フレーム5に下側から糊付けされている。
【0074】
フレーム5、本実施形態例ではニチノール製のそれは、予応力状態でフィルタユニット3に糊付けされており、それによりフレーム5上でより良好な伸長力を実現している。その実行によりフレーム5の幅が35~45mmから25~35mmへと縮小される。
【0075】
フィルタユニット3は、その上側のフレーム5を越え約1mmの張り出し14で以て張り出しており、フレーム5の遠位及び近位領域2,9ではその下側からフレーム5を越え上側へと裏返され又は反転している。フレーム5の外縁を越える取付済フィルタユニット3の張り出し14には付加的な機能、即ち本塞栓保護装置1が大動脈弓内留置位置に存するときに可撓シーリングリップとなり大動脈壁に抗する機能がある。
【0076】
フィルタユニット3の反転領域は近位フィルタユニット21及び遠位フィルタユニット22を構成している。近位及び遠位フィルタユニット21,22はフレームに糊付けされていないので、フレームがカテーテル内で押されているときはいつでも、所望の変形をなすことができる。近位フィルタユニット21は、近位成形部11の第2部分15と共に、外包ステンレス鋼ワイヤ6でしっかり固定され、また図7にも示す如くその領域内に封止されている。
【0077】
遠位フィルタユニット22は遠位成形部4のくびれ12にしっかり固定されている。遠位フィルタユニット22は、更にそのくびれ12を越え、フレーム5の内側に向かい約2~5mmに亘り延びており、これもまた可撓封止されている。
【0078】
フィルタユニット3の繊維は、その始点から終点まで、フレーム5の中心線に対し45°なる角度で並ぶよう整列されている。これにより、そのフィルタユニット3を長手方向に沿いより良好に伸長させると同時に、横方向に沿い安定性を提供することができる。張り出し14並びに21及び22の外縁もまた封止されている。
【0079】
図9に、図8記載のフィルタユニット3の遠位フィルタユニット22の端部領域を示す。この遠位フィルタユニット22は、くびれ12を越え約2mmしか延びないよう、しかしそのくびれ12を過ぎると再び幅広になり旗23なる形状をとるよう、切り詰められている。
【0080】
その旗23は内側に巻かれる。そうすることで、固定用スレッドの端がその旗23の内側に捉えられる。糊によりしっかり固定されるため遠位フィルタユニット23はほどけない。巻かれた遠位フィルタユニット22の直径は1.6mm未満である。遠位フィルタユニット23がしっかり固定されるだけでなく、それによりフレーム5・大動脈壁間に付加的な保護パッドが形成されるため、傷を避けることができる。
【0081】
図10に近位成形部11及び配置済フィルタユニット3に亘る上面の外観を示す。近位フィルタユニット21はフレーム5を越え上側へと反転されている。本実施形態例では、近位成形部11の第1部分13と、近位成形部11の第2部分15とが、共に、ステンレス鋼ワイヤ6で以て外包されている(ステンレス鋼ワイヤのより良好な可視化のため、近位成形部の第1及び第2部分13,15は図示されていない)。第1部分13はフレーム5の平面に対し第1角度W1で曲げられ、第2部分15はフレーム5の平面に対し第2角度W2で曲げられている。
【0082】
図11に、図10記載の近位成形部11の斜視外観を示す。
【0083】
図12に、遠位成形部4及び配置済フィルタユニット3、とりわけ遠位フィルタユニット22に亘る上面の外観を示す。遠位フィルタユニット22は、スレッド43により遠位成形部4のくびれ12にしっかり固定され、フレーム5の内側へと張り出しているが、他の諸実施形態では固定手段がヤーン又はワイヤとされることもある。
【0084】
図13に、近位成形部11及び配置済フィルタユニット3に亘る上面の外観を示す。旗23が巻き込まれており、スレッドを用いそれが固定されていることは、図9に関し述べた通りであるので、ここでは繰り返さないことにする。
【0085】
図14に、カテーテル25内の畳まれた塞栓保護装置1を示す。図示の塞栓保護装置1は狭窄状態である。機械的成形により、基本状態の塞栓保護装置、例えば図1図13に示すそれが、狭窄状態へと変態する。フレーム5を構成する可逆変形素材、例えば超弾性ニチノールワイヤを変形させることができるため、本塞栓保護装置1をカテーテル25内に押し込むことができる。そうすることで、本塞栓保護装置1の姿勢が長さ方向に沿い伸長される。遠位成形部4及び近位成形部11はフレーム5の外部領域に曲げ出される。
【0086】
遠位成形部4及び近位成形部11を曲げ出すことで、フレーム5は直線形状即ち伸長形状へと転換される。それにより持ち込まれる長さ変化はフレーム5の幅の減少分により左右される。狭窄されたフレーム5、即ちそのフレームのうち遠位成形部4及び/又は近位成形部11外の二辺は、この場合、カテーテル25内で互いに平行になる。フィルタユニット3はこの機械的変形に追従することができ、カテーテル25・フレーム5間介在空間に所在している。こうした伸長形状の塞栓保護装置は、その内径が例えば1.7mmのカテーテル内に押し込むことができる。
【0087】
図15A図15Fに、狭窄状態から展開状態への、本開示の塞栓保護装置1のフレーム5の成形を示す。
【0088】
カテーテル25からの塞栓保護装置を例えば大動脈弓内に位置決めする際には、その塞栓保護装置1、とりわけフレーム5及びそこに配置されているフィルタユニット3を、そのカテーテル25から押し出す。これが図15A図15Fに示されている。
【0089】
フレーム5は可逆変形素材で形成されており、その本来の基本状態、例えば図1に示す状態に戻ろうとする。フレーム5上に配置されているフィルタユニット3はこの再成形に追従する。カテーテル25内に所在する曲げ出された遠位成形部4を前方に送ると、約1~2cmの送り分だけカテーテル25から脱するのに応じ、その成形部の半分までが、図15Aに示す如く原状設定の方向に曲げ戻る。その実行時には、遠位成形部4の方向により、本塞栓保護装置1がカテーテル25内のどの位置に所在しているのかが指し示される。放射線不透過性マーカを遠位成形部4に付すことができ、それにより遠位成形部4の位置を判別することが可能となる。この場合、その遠位成形部4の指向方向により本塞栓保護装置1の上側が特定される。カテーテル25を回動させることで、その留置位置例えば大動脈弓内のそれを調整することができる。
【0090】
本塞栓保護装置1の遠位領域内くびれ12、即ちカテーテル25を脱した直後の遠位成形部4が図15A図15Bに示す如く曲げ戻るので、本塞栓保護装置1を更に送ることによる対血管壁潜在損傷のリスクが低減される。加えて、約1~2mm張り出す非侵襲性素材で以て、遠位成形部4ではフレーム5が外包されていることも、結果として、あらゆる潜在的受傷に対する対処となっている。
【0091】
大動脈弓内への前方送りを続けていくと、フレーム5が更に展開されやがては完全に展開する。このことを、例えば図15C図15F中に見ることができる。ここに、図15Dに示されているのは図15C中のそれと同じ展開状態を側方から見たものであり、図15Cに示されているのは展開状態を上方から見たものである。今やほとんど完全に展開された遠位成形部4、展開されたフレーム5並びに展開されたフィルタユニット3が示されている。
【0092】
この完全展開状態では、フレーム5が展開され、フィルタユニット3がそのフレーム5により伸展される。図15Eに、完全に展開されたフレーム又は展開された塞栓保護装置1を横から見たものを示し、図15Fには側方から見たものを示す。近位成形部11によるバネ機構の効果は、図15Cから図15Eへ、或いは図15Dから図15Fへの遷移から明らかである。
【0093】
図16に、カテーテル25から脱した後の、展開状態の塞栓保護装置1を模式的に示す。フィードユニット3との継ぎ目に至るまで近位成形部11が特殊な幾何形状であるため、予め曲げられている近位成形部11を真っ直ぐにする際と同じ量に達する予応力が、フレーム5上に発生している。この図には、相異なる二条件の展開状態が示されている。フィルタユニットの位置はどちらの描写でも同じである。フィードユニット(図示せず)に連結されている第1及び第2部分13,15の位置が、無応力状態並びに応力下状態の双方について示されている。その結果としてもたらされるバネ機能について、以下、より細かく説明する。
【0094】
本塞栓保護装置1が例えば大動脈弓内に正しく位置決めされた直後に、近位成形部11から伝わる張力により遠位成形部4が大動脈壁の方に押され、それにより血流に対する安定な抑制手段が提供される。図16ではこのことが遠位成形部4上の太く短い矢印により模式的に示されている。近位成形部11は、細い曲線矢印により示されている方向に動く。大動脈壁の抵抗がなければ、例えば図15E図15Fに示すように、フレーム5は指し示されている曲がり方向、図16では細い曲線矢印を辿るであろう。図16に示すように、近位成形部11は変化し、その第1部分13がフレームの平面を過ぎて25~50°なる第1角度W1、但し平面から第1部分13へと測った角度をなし、その第2部分15がフレームの平面を過ぎて30~110°なす角度W2、但し第2部分15からその平面へと測った角度をなす形状になる。角度に関し与えた数値は、その大動脈の幾何形状によるものであり、且つ専ら例示のためのものである。
【0095】
図17に、大動脈弓内でカテーテル25を脱した後の塞栓保護装置1の模式的展開手順を示す。分図(a)には左鎖骨下動脈を介したカテーテル25の導入が示されており、図中、本塞栓保護装置1の遠位成形部4が少なくとも部分的に曲げ戻っている。分図(b)~(d)には本塞栓保護装置1の更なる前方送り及び展開が示されており、分図(d)では近位成形部11もカテーテルを脱している。分図(e)には、留置状態にある完全に展開された塞栓保護装置1が示されている。このプロセスでは、フレーム5の近位領域9が左鎖骨下動脈の管口付近を越え張り出すことで、本塞栓保護装置1による進入路上の被覆も達成されている。同時に、この張り出しにより、本塞栓保護装置を位置決めする際の触覚フィードバックが可能になる。フィードユニット7を引っ張り続けることで、本塞栓保護装置1の、或いは寧ろそのフレーム5の張り出しが管口27の面前に正しく定位されたら直ちに、僅かな抵抗が感ぜられることになる。想定位置が左鎖骨下動脈を介し大動脈弓内で達成され、フレーム5の遠位領域2が心臓弁の方を向くこととなる。
【0096】
これに代わる進入路として、右鎖骨下動脈を用いることもできる。その手順は、図16に示したそれに似ているが、鏡像的な形態にて実行されるものである。この場合、フレーム5の遠位領域2は下行大動脈の方を指す(下側を向く)ことになる。
【0097】
図18に、図17の如くカテーテル25から脱した後の塞栓保護装置1による大動脈内弓頭血管流出物29の被覆を示す。フレーム5が特殊な幾何形状であるため、本塞栓保護装置1はその進入路に関わらず大動脈弓内解剖学的条件に対し柔軟に適合し、全ての弓頭血管29に亘る完全な被覆が可能となる。
【0098】
大動脈弓内留置位置では、本塞栓保護装置1のフレーム5の幾何形状が大動脈壁に対し柔軟に適合し、図17(e)にも示されているように、弓頭血管流出物の面前で大動脈の曲がりに倣い僅かな弧状となる。カテーテル25を脱する際、遠位成形部4及び近位成形部11は共に、それらの原形に曲げ戻り、ひいてはフレーム5の内部領域の方に戻るので、大動脈壁上でフレーム5の非侵襲的位置決めをなすことができる。この折れにより、鋭い縁又は隅部を伴う継ぎ目が回避される。血流によっても本塞栓保護装置1のフレーム5がその留置位置へと押し込まれるので、大動脈内生理学的条件によりそのフレーム5の更なる安定化が達成される。
【0099】
図19に、本開示の塞栓保護装置1を成形する形成装置31の諸方外観を示す。基本状態における展開状態から伸長された状態へと、塞栓保護装置の成形を行うに当たっては、その塞栓保護装置が本形成装置31の遠位小部分33内に引き込まれる。本形成装置31の遠位小部分33は平漏斗を有しており、それには約25~40mm幅でその開口高が約3~10mmである平開口35が設けられている。本形成装置31の遠位小部分33は長手方向に沿い約60~80mmに亘っており、その前面の開口領域には、約1.7mmの直径を有する円形狭断面部39に至るテーパが付けられている。本形成装置31の近位小部分40は、その狭断面部39から、20~40mmの長さを経て、約1.8~5mm径の直径を有する丸開口37へと、径拡張している。従って、本形成装置31の全長は80~120mmとなる。
【0100】
図20に、図19記載の形成装置31の斜視外観を示す。
【0101】
図21は形成装置31により本開示の塞栓保護装置を畳む方法の個別ステップを示す図であり、狭窄された塞栓保護装置1が概ね円形のチューブ38内、例えば(1.8~2.5mmなる内径を有する)市販のイントロデューサシース又は市販のカテーテル38内へと押し込まれていっている。ステップS1では、塞栓保護装置1のフレーム5及びそれを導くフィードユニット7が、形成装置31の平開口35の面前にて動かされている。このプロセスでは、フィードユニット7の近位端が形成装置31の遠位端経由で案内されている。概ね円形のチューブ38の遠位端がフィードユニット7の方へと押され、形成装置31の丸開口37の面前のすぐ手前に達しており、フィードユニット7はそのチューブ38の外にはみ出している。
【0102】
ステップS2では、チューブ38及び形成装置31が、その形成装置31の幅広な又は円錐状の丸開口37にて、例えばプラグ連結により一体連結されている。フィードユニット7に対する引っ張りにより、塞栓保護装置1が真っ直ぐにされていく。
【0103】
ステップS3では、フィードユニット7に対する更なる引っ張りにより、形成装置31の遠位小部分33の外縁上で近位成形部11が曲げ返され、形成装置31により引っ張られ続けるにつれそれが伸長されていく。
【0104】
ステップS4では、フィードユニット7に対する更なる引っ張りにより、遠位成形部4が形成装置31の遠位小部分33の外縁上に押しつけられており、その遠位成形部4がその縁上に引っかかって外側に曲げられている。このことが同図中の側面外観中にも強調図示されている。
【0105】
ステップS5では、形成装置31内に引き込み続けることで塞栓保護装置1が完全に伸長されている。フィードユニット7に対する更なる引っ張りにより、フレーム5の側部が内方へと押されていき、やがてはフレーム全体が細長くなってチューブ38内に押し込められる。塞栓保護装置1はそのチューブ38内に留まる。今や、その形成装置31をチューブ38から取り除くことができる。
【0106】
要するに、主張されている通り、本願記載の方法によれば、大動脈弓内に挿入される本開示の塞栓保護装置(1)であって、フィルタユニット(3)、フレーム(5)及びフィードユニット(7)を備え、そのフィルタユニット(3)がそのフレーム(5)上に配置されており、そのフレーム(5)が近位領域(9)を有し、その近位領域が、フレーム(5)の内部領域内に配置され且つフィードユニット(7)に連結される近位成形部(11)を備え、その近位成形部(11)が第1部分(13)及び第2部分(15)を備え、その第2部分が第1部分(13)の一端に形成されたものが、特定される。
【0107】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、近位成形部(11)の第1部分(13)がフレーム(5)の平面に対し第1角度(W1)をなし、第2部分(15)が近位成形部(11)の第1部分(13)に対し第2角度(W2)をなす。
【0108】
本開示によれば、大動脈弓内に挿入される塞栓保護装置(1)であって、フィルタユニット(3)、フレーム(5)及びフィードユニット(7)を備え、そのフィルタユニット(3)がそのフレーム(5)上に配置されており、そのフレーム(5)が近位領域(9)を有し、その近位領域が、フレーム(5)の内部領域内に配置され且つフィードユニット(7)に連結される近位成形部(11)を備え、その近位成形部(11)が第1部分(13)及び第2部分(15)を備え、それらによりバネ機構が形成されるよう第1及び第2部分(13,15)が相互配置されたものが、提供される。
【0109】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、近位成形部(11)を、フィードユニット(7)による張力下にセットすることができる。
【0110】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、近位成形部(11)がフレーム(5)の2個の端(17,19)を備え、それらがそのフレーム(5)の内部領域内で互いに平行に延設される。
【0111】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、近位成形部(11)がフィードユニット(7)に連結され、フレーム(5)の2個の端(17,19)がワイヤ(6)により外包され、その端(10)がフレーム(5)の端(17,19)に対し平行に配置される。
【0112】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フレーム(5)が、そのフレーム(5)の内部領域内に配置される遠位成形部(4)を備える遠位領域(2)を有する。
【0113】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、遠位成形部(4)が、フレーム(5)の内側を向いたくびれ(12)を有する。
【0114】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フレーム(5)及びフィルタユニット(3)の連結が、接着剤トンネル又は接着剤トンネル連結により実行される。
【0115】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フィルタユニット(3)が、近位及び/又は遠位領域(9,2)外でフレーム(5)に連結される。
【0116】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、遠位成形部(4)の始点の概ね直近まで、フィルタユニット(3)が遠位領域(2)内のフレーム(5)に連結される。
【0117】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、近位成形部(11)の第1部分(13)の概ね直近まで、フィルタユニット(3)が近位領域(2)内のフレーム(5)に連結される。
【0118】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フィルタユニット(3)が、遠位及び近位領域(2,9)内のフレーム(5)に可撓連結される。
【0119】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フレーム(5)が、横方向沿い予応力を伴いフィルタユニット(3)に連結される。
【0120】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フィルタユニット(3)がフレーム(5)を越えた張り出し(14)を有する。
【0121】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態ではその張り出し(14)が封止される。
【0122】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、その張り出し(14)がシーリングリップとして形成される。
【0123】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フレーム(5)の近位及び/又は遠位領域(9,2)内にて、フィルタユニット(3)が下側から上側へとフレーム(5)を越え反転される。
【0124】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フィルタユニット(3)がスレッド、ワイヤ又はヤーンにより遠位成形部(4)にしっかり固定される。
【0125】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、スレッド、ワイヤ又はヤーンによるフィルタユニット(3)の遠位成形部(4)へのしっかりとした固定が封止される。
【0126】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フィルタユニット(3)が遠位成形部(4)への糊付けによりしっかり固定される。
【0127】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フィルタユニット(3)が近位領域(9)内のコイルによりしっかり固定される。
【0128】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フィルタユニット(3)が繊維素材を有し、それらの繊維が、フレーム(5)の長軸に対し概ね45°なる角度をなすよう整列される。
【0129】
本塞栓保護装置(1)の更なる発展形態では、フレーム(5)の基本状態が卵形の形態とされる。
【0130】
本開示によれば、塞栓保護装置(1)をチューブ内への挿入のため再成形する形成装置(31)であって、その塞栓保護装置(1)のフレーム(5)及びその上に配置されているフィルタユニット(3)を拡張状態から伸長状態へと変形させる装置であり、その片側に位置する平又は丸開口(35)、最狭断面部(39)並びにその逆の端に位置する丸開口(37)を有するものが、特定される。
【0131】
本形成装置の更なる発展形態では、その形成装置(31)の平又は丸開口(35)が、塞栓保護装置のフレーム(5)の近位成形部(11)及び/又は遠位成形部(4)が外向きに曲がるよう形成される。
【0132】
本開示によれば、形成装置により塞栓保護装置を狭窄する方法であり、その形成装置(31)の平又は丸開口(35)の面前にてその塞栓保護装置のフレーム(5)を押し(S1)、フィードユニット(7)をその形成装置(31)内で送るステップと、近位成形部(11)をその形成装置(31)内に引き込み(S3)、その近位成形部(11)を外向きに曲げるステップと、遠位成形部(4)をその形成装置(31)の外縁上に引っかけ(S4)、引っ張りにより更にその遠位成形部(4)を外向きに曲げることで、それをその形成装置(31)内に引き込むステップと、を有するものが、特定される。
【0133】
本方法の更なる発展形態では、フレーム(5)を形成装置(31)内に引き込むことでそのフレーム(5)が長さ方向に伸長される。
【0134】
本方法の更なる発展形態では、曲がった近位成形部(11)を真っ直ぐにすることで起きる張力と実質的に等しい予応力を、曲がった近位形成部(11)がフレーム(5)に伝える。
【0135】
本開示によれば、塞栓保護装置を、その収容元カテーテルからその塞栓保護装置が脱する際に展開する方法であり、
塞栓保護装置をカテーテル外に押し出すステップと、
塞栓保護装置のフレームの遠位領域(2)がカテーテルから脱する際に、遠位成形部(4)をそのフレーム(5)の内部領域内へと曲げ戻すステップと、
を有するものが特定される。
【0136】
本方法の更なる発展形態は、遠位領域(2)がカテーテルから脱する際に、フレーム(5)の方向を1個又は複数個のマーカにより指し示すステップを有し、その遠位領域(2)によりそのフレーム(5)の姿勢が特定されるものである。
【0137】
本方法の更なる発展形態では、遠位成形部及び近位成形部の予備曲げによって、フレーム(5)のワイヤにて捩れが生じ、上記カテーテルから脱する際のその好適方向が、遠位成形部の湾曲端に向かう方向となる。
【符号の説明】
【0138】
1 塞栓保護装置、2 遠位領域、3 フィルタユニット、4 遠位成形部、5 フレーム、6 ステンレス鋼ワイヤ、7 フィードユニット、8 接着剤ユニット、9 近位領域、10 ワイヤの端、11 近位成形部、12 くびれ、13 第1部分、14 張り出し、15 第2部分、17,19 フレームの端、20 マーカ、21 近位フィルタユニット、22 遠位フィルタユニット、23 旗、25 カテーテル、27 管口、29 弓頭血管流出物、31 形成装置、33 遠位小部分、35 平開口、37 丸開口、38 チューブ、39 極狭断面部、40 近位小部分、41 接着剤トンネル、42 シーリング、43 スレッド、S1~S5 方法ステップ、W1 第1角度、W2 第2角度。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16
図17
図18
図19
図20
図21