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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】磁気歯車を備える計時器機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 49/00 20060101AFI20231117BHJP
   F16H 35/00 20060101ALI20231117BHJP
   G04B 13/02 20060101ALI20231117BHJP
   G04B 19/02 20060101ALI20231117BHJP
   G04B 35/00 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
F16H49/00 A
F16H35/00 C
G04B13/02 Z
G04B19/02 Z
G04B35/00 Z
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129537
(22)【出願日】2022-08-16
(65)【公開番号】P2023035901
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】21193817.0
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・インボーデン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ピエール・ミニョー
(72)【発明者】
【氏名】ミラン・キャリッチ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117682(JP,A)
【文献】特開2014-020561(JP,A)
【文献】特開平08-317629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
F16H 35/00
G04B 13/02
G04B 19/02
G04B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車(6A)と第2の車(6B)とを含む磁気歯車(2)を備える機構(1)、特に計時器機構であって、前記第1の車(6A)は、永久磁極体(7)を備え、前記永久磁極体(7)は、交互の極性をもつ第1の磁束がそれぞれ発生する第1の磁気歯部(8)の磁化歯を形成するように配置し、前記第2の車は、第2の磁気歯部(10)を規定する軟強磁性材料から作製される歯を備え、前記第2の磁気歯部(10)の歯数は、前記第1の磁気歯部(8)の歯数よりも多く、前記第2の磁気歯部(10)は、前記第1の磁気歯部(8)と第1の磁気結合を有し、前記第1の磁気結合によって、前記第1の磁気歯部及び前記第2の磁気歯部によって規定される第1の伝達比で、前記第1の車(6A)及び前記第2の車(6B)の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動され、前記第1の磁気結合は、前記第1の磁束からの磁束よって少なくともほとんどの部分で生じ、磁力のために、第1の磁気歯部(8)との磁気結合区域に瞬間的に位置する第2の磁気歯部(10)の歯を瞬間的に分極し、したがって、前記第2の磁気歯部(10)を通じて前記磁束がそれぞれ流れ、前記磁気歯車(2)は、第3の車(6C)を更に備え、前記第3の車(6C)は、第3の磁気歯部(12)を規定する、軟強磁性材料から作製される歯を備え、前記第3の磁気歯部(12)の歯数は、前記第1の磁気歯部(8)の歯数より多く、前記第2の磁気歯部(10)は、前記第2の歯部の歯の間に非磁気区域を有する、非磁気材料から作製される縁上に配置し、前記第3の車(6C)は、前記第2の車(6B)に対して配設し、前記第3の磁気歯部(12)が、前記磁気結合区域内に、前記第2の磁気歯部(10)の瞬間的に磁化された歯と第2の磁気結合を有するようにし、前記第2の磁気結合によって、前記第2の磁気歯部及び前記第3の磁気歯部によって規定される第2の伝達比で、前記第2の車(6B)及び前記第3の車(6C)の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動され、前記第2の磁気結合は、交互の極性をもつ前記第2の磁気歯部(10)の瞬間的に磁化された歯からそれぞれ発生する第2の磁束によって、少なくとも部分的に発生し、前記第2の磁束は、磁力のために、前記磁気結合区域に瞬間的に位置する前記第3の磁気歯部(12)の歯を瞬間的に分極し、したがって、前記第3の磁気歯部(12)を通じて前記磁束がそれぞれ流れ、前記磁気結合区域は、前記第1の車、前記第2の車及び第3の車のための磁気噛合区域を規定することを特徴とする、機構(1)。
【請求項2】
前記第1の磁気歯部(8)は、N1個の歯を備え、前記第2の磁気歯部(10)は、N2個の歯を備え、前記第3の磁気歯部(12)は、N3個の歯を備え、前記数N1は、両端を含む4から10の間の偶数であり、前記数N2と前記数N1との間の比率、及び前記数N3と前記数N1との間の比率は、それぞれ2以上、好ましくは3以上であることを特徴とする、請求項1に記載の機構。
【請求項3】
前記第1の車(6A)は、特に歯車列(18)を介して前記第2の車(6B)に更に機械的に結合されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項4】
前記第1の車(6A)は、前記第1の車(6A)が自由に回転できるように組み付けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項5】
前記第1の車(6A)は、第1の平面(P1)上に突出する際、前記第2の車(6B)の周りの外接円の内側に配設され、前記第1の平面(P1)には、前記第2の車(6B)が延在し、前記第2の車(6B)の回転軸が直交することを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項6】
前記第1の車(6A)は、前記第2の車(6B)内で、前記第1の平面(P1)内に実質的に配設され、前記第2の車(6B)は、前記第1の平面(P1)内で、交差部のない環形状を有し、前記第1の歯部(8)の磁化歯(7)は、前記第1の磁束が前記第1の車(6A)の回転軸に対して主要径方向で前記磁化歯(7)から発生するように配置することを特徴とする、請求項5に記載の機構(1)。
【請求項7】
前記第1の車(6A)は、前記第1の平面(P1)の外側に配設され、前記第1の車(6A)の回転軸は、前記前記第1の平面(P1)に直交して配置し、前記第1の歯部(8)の磁化歯(7)は、前記第1の磁束が前記第1の車(6A)の回転軸に対して斜め又は平行である主要方向で前記磁化歯(7)から発生するように配置することを特徴とする、請求項5に記載の機構(1)。
【請求項8】
前記第1の車(6A)は、前記第1の平面(P1)の外側に配設され、前記第1の車(6A)の回転軸は、前記第1の平面(P1)に対して斜めに配置し、前記第1の歯部(8)の磁化歯(7)は、前記第1の磁束が前記第1の車(6A)の回転軸に対して主要径方向で前記磁化歯(7)から発生するように配置することを特徴とする、請求項5に記載の機構(1)。
【請求項9】
前記第1の車は、強磁性材料から作製される中心部(9)を有し、前記中心部(9)の外周部上に、前記永久磁極体(7)が対で同数の相補的な磁極体と共にそれぞれ配置され、したがって、二極磁石を形成し、前記二極磁石は、それぞれ、前記第1の磁気歯部の前記磁化歯を規定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項10】
前記第2の磁気歯部(10)及び前記第3の磁気歯部(12)は、異なるピッチを有し、歯部のピッチは、前記歯部と噛合する歯車と接触する円上で、前記歯部の2つの隣接する歯の円弧の長さとして規定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項11】
前記機構(1)は、前記第3の車(6C)に機械的に結合される戻止めデバイス(20)を更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項12】
前記第3の車(6C)は、前記第3の磁気歯部(12)のための連続円形基部を形成する縁を備え、前記縁は、前記第2の磁束の磁気経路を閉鎖する閉鎖部を形成するように、軟強磁性材料から作製されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項13】
前記磁気歯車(2)は、永久磁極体(15)を備える第4の車(6D)を更に備え、前記永久磁極体(15)は、第4の磁気歯部(16)の磁化歯を形成するように配置され、前記第4の磁気歯部(16)から、交互の極性をもつ第3の磁束がそれぞれ発生し、前記第3の磁気歯部(12)は、前記第3の歯部(12)の歯の間に非磁気区域を有する、非磁気材料から作製される縁上に配置され、前記第4の車(6D)は、第2の平面上に突出する際、前記第3の車(6C)の周りの外接円の内側に配設され、前記第2の平面には、前記第3の車(6C)が延在し、前記第3の車(6C)の回転軸が直交し、前記第2の歯部(10)及び前記第3の歯部(12)はそれぞれ、前記第4の磁気歯部(16)の歯数よりも多い歯数を有し、前記第4の磁気歯部(16)と第3の磁気結合を更に有し、前記第3の磁気結合によって、前記第3の磁気歯部(12)及び前記第4の磁気歯部(16)によって規定される第3の伝達比で、前記第3の車(6C)及び前記第4の車(6D)の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動され、前記第3の磁気結合は、前記第3の磁束からの磁束によって少なくともほとんどの部分で生じ、磁力のために、第4の磁気歯部(16)との磁気結合区域に瞬間的に位置する前記第3の磁気歯部(12)の歯を瞬間的に分極し、したがって、前記第3の磁気歯部(12)を通じて前記磁束がそれぞれ流れ、前記第4の車(6D)は、前記第1の車(6A)との前記磁気結合区域及び前記第4の車(6D)との磁気結合区域が少なくともほとんどの部分で重なるように配置し、前記第1の車(6A)及び前記第4の車(6D)に共通である磁気結合区域内に位置する前記第3の歯部(12)の歯を通過する前記第2の磁束及び前記第3の磁束は、前記歯のそれぞれにおいて同じ極性を有し、前記第2の磁気歯部(10)と前記第3の磁気歯部(12)との間の前記第2の磁気結合は、部分的に第4の磁束によって更に生じ、前記第4の磁束はそれぞれ、前記第4の磁気歯部(16)によって瞬間的に磁化された前記第3の磁気歯部(12)の歯から発生し、前記第4の磁束は、磁力のために、前記第4の車(6D)との前記磁気結合区域内に瞬間的に位置する前記第2の磁気歯部(10)のそれぞれの歯を瞬間的に分極することを特徴とする、請求項5に記載の機構(1)。
【請求項14】
前記第4の車(6D)は、強磁性材料から作製される中心部(17)を有し、前記中心部(17)の外周部上に、前記永久磁極体(15)が対で同数の相補的な磁極体と共にそれぞれ配置され、したがって、二極磁石を形成し、前記二極磁石は、それぞれ、前記第4の磁気歯部の前記磁化歯を規定し、前記第4の車は、前記第4の車が自由に回転できるように組み付けることを特徴とする、請求項13に記載の機構(1)。
【請求項15】
前記第2の車(6B)及び前記第3の車(6C)は、同一平面上にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項16】
前記第2の車及び前記第3の車は、個別の平面内に延在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の機構(1)。
【請求項17】
前記個別の平面は、平行ではないことを特徴とする、請求項16に記載の機構(1)。
【請求項18】
前記個別の平面は、平行であり、前記第2の磁気歯部(10)及び第3の磁気歯部(12)は、前記第1の磁気歯部(10)との前記磁気結合区域内で少なくとも部分的に重なることを特徴とする、請求項16に記載の機構(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに磁気的に噛合する第1の車及び第2の車によって形成される磁気歯車の分野に関し、第1の車は、第1の永久磁極体を備え、第1の永久磁極体は、円状に配置され、第1の磁気歯部の磁化歯を規定する。
【0002】
詳細には、本発明は、そのような磁気歯車を組み込む機構、特に計時器機構に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気歯車は、2つの部品の間を直接接触させず、したがって、これらの間に摩耗又は摩擦をもたらさずに、2つの部品の間で機械的トルクを伝達するのに使用し得る公知のデバイスである。そのような歯車は、以下の利益をもたらす:
-部品の歯上に機械的な摩耗がないため、油又は潤滑剤を必要としない、
-歯付き部品は、これらの部品が密閉分離されている場合でさえ、相互作用し、トルク及び機械動力を伝達し得る、並びに
-歯付き部品は、最大トルクを制限するように使用でき、したがって、例えば機械的衝撃の際に損傷を回避するのに役立ち得る。
【0004】
そのような磁気歯車は、典型的には、互いに磁気的に噛合する2つの車を含む。第1の車は、第1の永久磁極体を備え、第1の永久磁極体は、典型的には、交互の極性であり、円状に配置され、第1の磁気歯部を規定する。これらの第1の磁極体は、例えば、径方向で交互に磁化される二極磁石によって規定される。第2の車は、強磁性材料から作製される歯又は第2の永久磁極体を備え、これらの歯又は第2の磁極体は、円状に配置され、第2の磁気歯部を規定する。第1の車及び第2の車は、典型的には、同じ全体平面内に位置する。第1の車の歯部と第2の車の歯部との間の磁気結合は、第1の車及び第2の車の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動されることを意味する。
【0005】
しかし、この種類の磁気歯車の1つの欠点は、第1の歯部の直径及び歯数とは無関係に、(永久磁化によって)典型的には交互の極性で、第1の車の少なくともそれぞれの歯を磁化させる必要があることである。このことは、特に、2つの重要な結果を有する:まず、そのような磁気歯車は、製造が高額であること、次に、所与の時間の瞬間で、2つの車の磁気相互作用に寄与する第1の歯部の歯数は比較的少ない一方で、第1の円形歯部の他の磁石は、磁気歯車を含むシステム(典型的には計時器機構)に伝播する磁界線を生成することである。しかし、これらの磁界線によって誘起される影響、特に磁力から他の構成要素を保護するようにそのような磁界線を含めることはかなり困難であり、磁力は、機構の特定の可動要素に対して不要な機械的応力をもたらすことがある。そのような影響は、特にシステムが磁気材料製の車セットを含む測時器ムーブメントである場合、システムの正確な動作にとって好ましくない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、磁気歯車を備える機構、特に計時器機構をもたらすことによって従来技術の欠点を克服することを目的とし、磁気歯車は、製造が簡単で安価であり、磁気歯車に必要な永久磁極体の数を低減可能にする一方で、機構を収容するシステムの様々な他の構成要素を保護するように磁界線を含めることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的で、本発明は、第1の車と第2の車とを含む磁気歯車を備える機構、特に計時器機構に関し、第1の車は、第1の磁気歯部の磁化歯を形成するように配置された永久磁極体を備え、第1の磁気歯部から、交互の極性をもつ第1の磁束がそれぞれ発生する。第2の車は、第2の磁気歯部を規定する、軟強磁性材料から作製される歯を備え、この第2の磁気歯部の歯数は、第1の磁気歯部の歯数よりも多く、第2の磁気歯部は、第1の磁気歯部と第1の磁気結合を有し、前記第1の磁気結合によって、第1の磁気歯部及び第2の磁気歯部によって規定される第1の伝達比で第1の車及び第2の車の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動されるようにし、第1の磁気結合は、前記第1の磁束からの磁束によって少なくともほとんどの部分で生じ、これにより、磁力のために、第1の磁気歯部との磁気結合区域内に瞬間的に位置する第2の磁気歯部の歯を瞬間的に分極し、したがって、第2の磁気歯部を通じてこれらの磁束がそれぞれ流れる。本発明によれば、磁気歯車は、第3の車を更に備え、第3の車は、第3の磁気歯部を規定する、軟強磁性材料から作製される歯を備え、第3の車の歯数も、第1の磁気歯部の歯数より多く、第2の磁気歯部は、この第2の歯部の歯の間に非磁気区域を伴う、非磁気材料から作製される縁上に配置され、第3の車は、第3の磁気歯部が、瞬間的に磁化された第2の磁気歯部の歯と第2の磁気結合を前記磁気結合区域内に有するように、第2の車に対して配設され、前記第2の磁気結合によって、第2の磁気歯部及び第3の磁気歯部によって規定される第2の伝達比で、第2の車及び第3の車の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動され、前記第2の磁気結合は、交互の極性をもつ前記第2の磁気歯部の瞬間的に磁化された歯からそれぞれ発生する第2の磁束によって少なくとも部分的に生じ、これらの第2の磁束は、磁力のために、前記磁気結合区域内に瞬間的に位置する第3の磁気歯部の歯を瞬間的に分極し、したがって、第3の磁気歯部を通じて第2の磁束がそれぞれ流れ、この磁気結合区域は、第1の車、第2の車及び第3の車のための磁気噛合区域を規定する。軟強磁性材料は、好ましくは、高透磁率、したがって、低磁気抵抗を有する材料である。
【0008】
このように構成されるそのような磁気歯車機構は、磁気結合区域に位置し所与の時間の瞬間で活性である第2の歯部及び第3の歯部の軟強磁性材料から作製された歯にのみ、局所的で一次的な磁化をもたらす。したがって、そのような局所的な磁化を生成するのに必要な第1の車の永久磁極体の数は、実質的に低減される。このことにより、費用を低減し、機構の製造を単純化することを可能にし、第2の車と第3の車との間でトルク伝達が生じる場所の近傍に磁界線を局所的に含めることを可能にする。第2の車及び第3の車上に軟強磁性材料から作製される歯が存在し、第2の歯部の特定の構成が、互いに分離し非磁気支持体上に配置される歯によって形成されることにより、第2の磁気歯部及び第3の磁気歯部を通過する第1の磁気歯部の永久磁極体によって生成される磁界線の閉鎖を可能にし、これにより、第2の車と第3の車との間の磁気結合、したがって、これらの車の磁気噛合をもたらす。
【0009】
特に、例えば計時器の機械式ムーブメント等の機構を収容するシステムの様々な構成要素を、永久磁石の磁界からより良好に保護でき、永久磁石は、より数が少なく、したがって制限でき、適切な場合、より容易に磁気遮蔽部を備えることができる。更に、本発明によるそのような機構は、第2の車と第3の車との間で伝達される最大トルクを本質的に制限し、したがって、歯車を機械的衝撃によって生じる損傷から保護する。
【0010】
好ましくは、第1の車は、少なくとも4つの磁化歯を含む。概して、第1の磁気歯部は、N1個の歯を備え、第2の磁気歯部は、N2個の歯を備え、第3の磁気歯部は、N3個の歯を備える。有利には、数N1は、両端を含む4から10の間の偶数であり、数N2と数N1との間の比率、及び数N3と数N1との間の比率はそれぞれ、2以上、好ましくは、3以上である。このことにより、限られた数の磁石で第1の車と第2の車と第3の車との間の磁気結合の効率を改善する。
【0011】
一般的な代替実施形態では、第2の車及び第3の車のそれぞれは、関係する車の回転軸に対して径方向に延在する少なくとも6個の歯を含む。各歯は、車の環状外周部から突出する突起の形態をとる。特に、第2の車及び第3の車のそれぞれは、車の回転軸に対して径方向に延在する少なくとも6から30の間の歯を含む。
【0012】
特定の代替実施形態によれば、第1の車は、特に機械的歯車により、第2の車に更に機械的に結合される。この代替実施形態は、第1の車の永久磁極体と、第2の車の軟強磁性材料から作製される歯との間に永続的で最適な整合を保証し、したがって、第2の車は、第1の車の回転運動に強制的に正確に追従し、第1の車は、第2の車の回転運動に強制的に正確に追従する。
【0013】
特定の代替実施形態によれば、第1の車は、第1の車が自由に回転できるように組み付けられる。この他の代替実施形態は、第1の車と第2の車との間に摩擦を伴わずに第1の磁気結合を生成することを可能にする。
【0014】
好ましい実施形態によれば、第1の車は、第1の平面上に突出する際、この第2の車の周りの外接円の内側に配設される。第1の平面には、第2の車が延在し、この第2の車の回転軸が直交する。
【0015】
好ましい実施形態に対する第1の代替形態によれば、第1の車は、第2の車内で、前記第1の平面内に実質的に配設され、第2の車は、この第1の平面内で、交差部のない環形状を有し、第1の歯部の磁化歯は、第1の磁束が第1の車の回転軸に対して主要径方向でこれらの磁化歯から発生するように配置される。
【0016】
好ましい実施形態に対する第2の代替形態によれば、第1の車は、第1の平面の外側に配設され、第1の車の回転軸は、この第1の平面に直交して配置され、第1の歯部の磁化歯は、第1の磁束が第1の車の回転軸に対して斜め又は平行である主要方向でこれらの磁化歯から発生するように配置する(軸方向の分極)。
【0017】
有利には、第1の車は、強磁性材料から作製される中心部を有し、中心部の外周部上に、前記永久磁極体が対で同数の相補的な磁極体と共にそれぞれ配置され、したがって、二極磁石を形成し、二極磁石は、径方向の分極を有し、それぞれ、第1の磁気歯部の磁化歯を規定する。このことにより、第1の車の中心部を介して、隣接する二極磁石の間の磁界線を効果的に閉鎖することを可能にする。
【0018】
有利な代替実施形態では、第2の磁気歯部及び第3の磁気歯部は、異なるピッチを有する。一方の歯部のピッチは、この歯部と噛合する歯車と接触する円上の、この歯部の2つの隣接する歯の円弧の長さとして規定されることに留意されたい。このことにより、第2の車と第3の車との間の回転のずれを効果的に補償し、これにより、磁気歯車の効率を改善する。好ましくは、第2の車及び第3の車の歯を最適に離間させることによって、これらの車の間に最適なトルク伝達が得られる。したがって、第2の車及び第3の車が同じ直径を有する場合、第2の車は、N2個の歯を含み、第3の車は、N3個の歯を含むことができ、第3の車の歯数N3は、第2の車の歯数N2よりも多い。
【0019】
特定の代替実施形態では、機構は、第3の車に機械的に結合される戻止めデバイスを更に含む。このことにより、車が逆方向に滑らないようにする。この逆方向への滑りは、特に高い復元トルクの場合、例えば、駆動ばねを巻き上げる際等に生じ得る。そのような滑りは、第3の車を所望のトルク伝達方向とは反対の方向で自由に回転させるという、機構にとって好ましくない、制御できない影響を生じさせることがある。そのような制御できない影響は、例えば、当該機構内の振動、衝撃、又はあらゆる他の機械的な乱れ(例えば、ばねの巻上げ)によって開始され得る。
【0020】
有利には、第3の車は、軟強磁性材料から作製される、第3の磁気歯部のための連続円形基部を形成する縁を備え、第2の車と第3の車との間に磁気結合を生成する第2の磁束の磁気経路のための閉鎖部を形成するようにする。
【0021】
本発明の有利な実施形態によれば、磁気歯車は、永久磁極体を備える第4の車を更に備え、これらの永久磁極体は、第4の磁気歯部の磁化歯を形成するように配置され、第4の磁気歯部から、交互の極性をもつ第3の磁束がそれぞれ発生する。この有利な実施形態では、第3の磁気歯部は、第2の歯部のように、この第3の歯部の歯の間に非磁気区域を伴う、非磁気材料から作製される縁上に配置される。次に、第4の車は、第2の平面上に突出する際、この第3の車の周りの外接円の内側に配設される。第2の平面には、第3の車が延在し、この第3の車の回転軸が直交する。第2の磁気歯部及び第3の磁気歯部はそれぞれ、第4の磁気歯部の歯数よりも多く、第3の磁気歯部は、第4の磁気歯部と第3の磁気結合を更に有し、第3の磁気結合によって、第3の磁気歯部及び第4の磁気歯部によって規定される第3の伝達比で、第3の車及び第4の車の一方が回転するように駆動されると、もう一方の車も回転するように駆動されるようにし、第3の磁気結合は、前記第3の磁束からの磁束によってほとんどの部分で生じ、これにより、磁力のために、第4の磁気歯部との磁気結合区域内に瞬間的に位置する第3の磁気歯部の歯を瞬間的に分極し、したがって、第3の磁気歯部を通じてこれらの磁束がそれぞれ流れる。第4の車は、第1の車との前記磁気結合区域及び第4の車との前記磁気結合区域が少なくともほとんどの部分で重なるように配置され、第3の車及び第4の車に共通である磁気結合区域に位置する第3の歯部の歯を通過する第2の磁束及び第3の磁束が、これらの歯のそれぞれで同じ極性を有するように配置される。最後に、第2の磁気歯部と第3の磁気歯部との間の前記第2の磁気結合は、第4の磁気歯部によって瞬間的に磁化された前記第3の磁気歯部の歯からそれぞれ発生する第4の磁束によって部分的に更に生成され、これらの第4の磁束は、磁力のために、第4の車との前記磁気結合区域内に瞬間的に位置する第2の磁気歯部のそれぞれの歯を更に瞬間的に分極する。
【0022】
この有利な実施形態は、第2の車と第3の車との間の磁気結合の効率を改善する。したがって、磁気歯車は、対称とし得る。
【0023】
好ましくは、第4の車は、少なくとも4つの磁化歯を含む。第4の磁気歯部は、N4個の歯を備え、第3の磁気歯部は、N3個の歯を備える。有利には、数N4は、両端を含む4から10の間の偶数であり、数N3と数N4との間の比率は、2以上、好ましくは、3以上である。
【0024】
第1の代替実施形態によれば、第4の車は、第3の車内で、前記第2の平面内に実質的に配設され、第3の車は、この第2の平面内で、交差部のない環形状を有し、第4の歯部の磁化歯は、第3の磁束が第4の車の回転軸に対して主要径方向でこれらの磁化歯から発生するように配置される。
【0025】
第2の代替形態によれば、第4の車は、前記第2の平面の外側に配設され、第4の車の回転軸は、この第2の平面に直交して配置され、第4の歯部の磁化歯は、第3の磁束が第4の車の回転軸に対して斜め又は平行である主要方向でこれらの磁化歯から発生するように配置される(軸方向の分極)。
【0026】
第1の車の場合と同様に、第4の車が、径方向に分極する複数の二極磁石を備えるケースでは、第4の車は、有利には、強磁性材料から作製される中心部を有し、中心部の外周部には、それぞれ同数の相補的な磁極体と共に永久磁極体が対で配置され、したがって、第4の磁気歯部の磁化歯を規定する複数の二極磁石を形成する。好ましくは、第4の車は、自由に回転できるように組み付けられる。
【0027】
本発明の一例示的実施形態によれば、第2の車及び第3の車は、同一平面上にある。
【0028】
本発明の別の例示的実施形態によれば、第2の車及び第3の車は、個別の平面に延在する。第1の代替形態によれば、これらの個別の平面は、平行ではない。別の代替実施形態によれば、これらの個別の平面は、平行であり、第2の磁気歯部及び第3の磁気歯部は、有利には、第1の磁気歯部との前記磁気結合区域内で互いに少なくとも部分的に重なる。
【0029】
本発明による機構の目的、利点及び特徴は、図示される様々な非限定的実施形態の以下の説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の特定の代替実施形態による、磁気歯車を組み込む機構の上面図である。
図2】本発明の機構の第1の好ましい実施形態の第1の例による、図1と同様の上面図である。
図3】本発明の機構の第1の実施形態の第2の例による、図2と同様の図である。
図4】本発明の機構の第2の有利な実施形態の第1の例による、図2と同様の図である。
図5】本発明の機構の第2の実施形態の第2の例による、図4と同様の図である。
図6】本発明の機構の第1の実施形態の第3の例による、図3と同様の図であり、本発明の機構は、磁気歯車の車に機械的に結合される戻止めデバイスを含む。
図7】本発明の機構の第3の特定の実施形態の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による特に計時器型の機構1の特定の代替実施形態を示し、機構1は、本発明の主題である磁気歯車2を備える。本発明は、磁気歯車2内に2つの車6B、6Cを設けることからなる一般的な発明概念から得られ、各車6B、6Cは、好ましくは比較的高い透磁率を有する軟強磁性材料から作製される歯を備え、これら2つの車6B、6Cの少なくとも1つは、特に小歯車のような、ここからより小さな直径の寸法を有する別の車に磁気的に結合され、この別の車は、車の回転軸回りに円状に配置された永久磁極体7を備える。図1において、この他方の車は、永久磁化された単一回転要素5によって形成され、単一回転要素5は、円板形状の回転二極磁石5であり、単一回転要素5の中心回転軸は、この二極磁石の磁気軸に直交する。回転二極磁石5は、2つの車6B、6Cとの間の磁気結合区域に位置する車6B、6Cの2つのそれぞれの部分に結合される磁界を生成し、磁気結合区域は、これら2つの車6B、6Cの磁気噛合区域に対応する。
【0032】
回転二極磁石5によって生成される磁界は、2つの車6B、6Cのそれぞれに対して、より詳細には、これらの車6B、6Cの軟強磁性材料製の歯に局所的で一時的な磁化をもたらし、これらの歯は、所与の時間の瞬間、即ち、磁気噛合区域に瞬間的に位置する時間で、活性である。磁気噛合区域は、定義上、これら2つの車6B、6Cの間に設けられた磁気結合区域に対応する。したがって、そのような局所的な磁化を生成するのに必要な回転要素5によって示される車の永久磁極体の数は、二極磁石を形成する少なくとも2つの磁極体に低減される。2つの車6B、6Cは、車6Bの歯及び車6Cの歯が、隣接する歯の群において、部分的、連続的に互いに対して直接的な磁気結合を磁気噛合区域内で有するように配置され、この直接的な磁気結合は、車6Bの歯を介して、小型車5の永久磁石極7によって誘発され、車6Bの歯は、これらの永久磁石極7によって磁化される。したがって、2つの車6B、6Cのうち一方又は小型車5が回転するように駆動されると、他の2つの車も、磁力のために、これらの3つの車5、6B、6Cのために設けた磁気噛合区域内のこれら3つの車5、6B、6Cの歯の間の磁気結合の結果として回転するように駆動される。図1に示さない磁界線に沿って磁界が漏洩するのを防ぐため、車6Bの2つの隣接する歯の間の距離は、有利には、2つの車6B、6Cのそれぞれの歯の間の最短距離の2倍を超えるように設計される。したがって、3つの車5、6B、6Cの間の磁気結合によって生成される磁界線11は、トルク伝達が車6Bと6Cとの間で生じる場所の近傍に局所的に含められる。
【0033】
以下の説明では、同じ参照番号によって示される要素は、類似要素である。本発明の範囲を限定するものではないが、機構1は、好ましくは計時器機構である。
【0034】
図2から図7に示すように、磁気歯車2は、少なくとも3つの車6A、6B、6Cを含む。概して、他の2つの車6B、6Cよりも直径が小さい第1の車6Aは、N1個の永久磁極体を備え、永久磁極体は、円状に配置され、第1の磁気歯部8を規定する。N1個の永久磁極体7は、第1の磁気歯部8の磁化歯を形成し、第1の磁気歯部8から、交互の極性をもつ第1の磁束が発生する。磁極体7が交互に分極して円形状に配置される場合、偶数の磁極体7がある。好ましくは、数N1は、両端を含む4から10の間の偶数である。したがって、図2から図6において、同数の内側磁極体と関連付けられた第1の車6Aの外側磁極体7は、径方向に分極する二極磁石を形成し、それぞれ、第1の磁気歯部8の磁化歯を規定する。
【0035】
第2の車6Bは、軟強磁性材料から作製されるN2個の歯を備え、歯は、第2の磁気歯部10を規定する。第2の磁気歯部10は、第2の歯部10の歯の間に非磁気区域を伴う、非磁気材料から作製される縁14上に配置される。第2の車6Bの歯数N2は、第1の車6Aの磁極体7の数N1よりも多い。第2の車6Bの歯数N2と第1の車6Aの磁極体7の数N1との間の比率は、有利には、2以上、好ましくは3以上である。第2の磁気歯部10は、第1の磁気歯部8と第1の直接磁気結合を有し、第1の歯部8と第2の歯部10との間の第1の直接磁気結合によって、第1の歯部8及び第2の歯部10によって規定される伝達比で、第1の車6A及び第2の車6Bの一方が回転するように駆動されると、もう一方の車6A、6Bも回転するように駆動される。この第1の直接磁気結合は、第1の歯部8から発生する第1の磁束からの磁束によって少なくともほとんどの部分で生じ、これにより、磁力のために、第1の磁気歯部との磁気結合区域に瞬間的に位置する第2の磁気歯部10の歯を瞬間的に分極し、したがって、第2の磁気歯部10を通じて、これらの磁束がそれぞれ流れる。
【0036】
第3の車6Cは、軟強磁性材料から作製されるN3個の歯を備え、歯は、第3の磁気歯部12を規定する。本発明の範囲を限定するものではないが、第2の車6B及び第3の車6Cの直径は同一である。第3の車6Cの歯数N3は、第1の車6Aの磁極体7の数N1よりも多い。第3の車6Cの歯数N3と第1の車6Aの磁極体7の数N1との間の比率は、有利には、2以上、好ましくは3以上である。第3の車6Cは、第3の磁気歯部12が、第1の歯部8と第2の歯部10との間の連続磁気結合区域において、第2の直接磁気結合を有し、これにより第2の歯部10の歯を瞬間的に磁化するように、第2の車6Bに対して配設される。このようにして、第2の歯部10と第3の歯部12との間の第2の直接磁気結合によって、第2の歯部10及び第3の歯部12によって規定される伝達比で、第2の車6B及び第3の車6Cの一方が回転するように駆動されると、もう一方の車6B、6Cも回転するように駆動される。この第2の直接磁気結合は、交互の極性をもつ第2の磁気歯部10の瞬間的に磁化される歯からそれぞれ発生する第2の磁束によって、少なくとも部分的に生じ、これらの歯は、それ自体、第1の直接磁気結合を介して第1の車6Aの永久磁極体7によって瞬間的に磁化されている。したがって、これら第2の磁束は、磁力のために、第1の車と第2の車と第3の車との間の磁気結合区域に瞬間的に位置する第3の磁気歯部12の歯を瞬間的に分極し、第3の磁気歯部12を通じて、第2の磁束がそれぞれ流れる。
【0037】
第2の車6B及び第3の車6Cの歯は、例えばミューメタル等、好ましくは高透磁率を有する軟強磁性材料から作製される。
【0038】
好ましくは、図2から図7に示すように、第1の車6Aは、第1の平面P1上に突出する際、この第2の車6Bの周りの外接円の内側に配設される。第1の平面P1には、第2の車6Bが延在し、この第2の車6Bの回転軸が直交する。第2の車6B及び第3の車6Cは、1つの平面及び同じ全体平面内に延在し得るか、又は互いに平行であっても平行でなくてもよい個別の平面内に延在し得る。第2の車6B及び第3の車6Cが、互いに実質的に平行である個別の平面内に延在する場合、第2の磁気歯部10及び第3の磁気歯部12は、好ましくは、第1の磁気歯部10との磁気結合区域内で少なくとも部分的に重なる。第1の車6A、第2の車6B及び第3の車6Cは、これらの磁気歯部8、10、12が互いに接触しないように配置される。
【0039】
以下、図2図3及び図6を参照しながら、本発明による磁気歯車2を備える機構1の第1の好ましい実施形態を説明する。機構1のこの好ましい実施形態によれば、磁気歯車2は、3つの車6A、6B、6Cを含む。第1の歯部8の磁化歯7は、第1の磁束がこれらの磁化歯7から、第1の車6Aの回転軸に対して径方向である主要方向で発生するように配置され、したがって、磁化歯を規定する二極磁石は、径方向の分極/磁化を有する。第1の磁気結合及び第2の磁気結合は、第1の車6Aの外側永久磁極体7から発生する第1の磁束によって全体的に生じる。永久磁極体7は、典型的には、第1の車6Aの軸を形成する中心部9の周り、又はそのような軸が通過する開口内に、同数の相補的な磁極体と対でそれぞれ配置され、中心部9は、有利には、強磁性材料又はミューメタル材料から作製される。好ましくは、図2図3及び図6に示すように、第1の車6Aは、第1の車6Aがその軸上で自由に回転できるように組み付けられる。
【0040】
図2に示す機構1の第1の好ましい実施形態の第1の例では、第1の車6Aは、第2の車6Bの中で、第1の平面P1内に実質的に配設される。したがって、第2の車6Bは、第1の車6Aのための一種の障壁を形成する。第2の車6Bは、第1の平面P1内に交差部がない環形状を有する。第1の車6Aは、径方向に磁化された6つの二極磁石を備え、それぞれの二極磁石は、第1の磁気歯部8の磁化歯を形成する。第2の車6Bは、軟強磁性材料から作製される18個の歯を備え、歯は、第2の磁気歯部10を形成する。第3の車6Cは、非磁気材料、典型的には軟強磁性材料から作製される環状縁を備え、環状縁は、その外周部に、軟強磁性材料から作製される24個の歯を規定し、第3の磁気歯部12を形成する。この環状縁は、第3の磁気歯部12のための連続円形基部を形成する。この代替実施形態は、第2の車6Bと第3の車6Cとの間の回転のずれを効果的に補償し、これにより、磁気歯車2の効率を改善する。というのは、第3の車6Cの歯数N3は、第2の車6Bの歯数N2よりも多いためである。より一般的には、第1の好ましい実施形態のこの第1の例では、第2の磁気歯部10及び第3の磁気歯部12は、異なる歯部のピッチを有する。歯部10、12のピッチは、この歯部10、12と噛合する歯車と接触する円上の、この歯部10、12の2つの隣接する歯の円弧の長さとして規定される。好ましくは、第2の車6B及び第3の車6Cの歯を最適に離間させることによって、これらの車6Bと6Cとの間に最適なトルク伝達が得られる。
【0041】
図3に示す機構1の第1の好ましい実施形態の第2の例によれば、第1の車6Aは、6個の二極磁石を備え、二極磁石は、径方向に磁化され、それぞれ、第1の磁気歯部8の磁化歯を形成する。第2の車6Bは、軟強磁性材料から作製される18個の歯を備え、歯は、第2の磁気歯部10を形成する。第3の車6Cは、非磁気材料、典型的には軟強磁性材料から作製される環状縁を備え、環状縁も、その外周部に、軟強磁性材料から作製される18個の歯を規定し、歯は、第3の磁気歯部12を形成する。
【0042】
図6に示す機構1の第1の好ましい実施形態の第3の例によれば、機構1は、第3の車6Cに機械的に結合される戻止めデバイス20を含む。図6に示す特定の実施形態によれば、戻止めデバイス20は、典型的には、爪車22と爪24とを含む。爪車22は、第3の車6Cと回転するように第3の車6Cに固定され、車22の回転軸に対して径方向に延在する歯を備える。爪24は、第3の車6Cが、所望のトルク伝達に対応する方向、この例では図6の例示的実施形態の矢印F1によって示される方向と反対の方向で回転しないように、爪車22の歯と協働する。このことにより、計時器の機械的完全性に悪影響を及ぼすおそれがある計時器機構内の振動、衝撃又はあらゆる他の機械的な乱れ(例えば、ばねの巻上げ)の際、第3の車6Cがこの矢印F1の方向で自由に回転しないようにする。この特徴の存在は、機構1の第1の好ましい実施形態を参照して示すが、本発明による機構1のあらゆる他の実施形態も同様に想定し得る。
【0043】
以下、図4及び図5を参照しながら、本発明による磁気歯車2を備える機構1の第2の有利な実施形態を説明する。機構1のこの第2の実施形態によれば、磁気歯車2は、3つの車6A、6B、6Cに加えて、第4の車6Dを含む。第4の車6Dは、第2の車6B及び第3の車6Cよりも直径が小さく、N4個の永久磁極体15を備え、永久磁極体15は、円状に配置され、第4の磁気歯部16を規定する。N4個の永久磁極体15は、第4の磁気歯部16の磁化歯を形成し、第4の磁気歯部16から、交互の極性をもつ第3の磁束が発生する。磁極体15が交互の極性で円形状に配置される場合、偶数の磁極体7がある。好ましくは、第1の車6Aと同様に、数N4は、両端を含む4から10の間の偶数である。特に、第1の車及び第4の車は、同一又は同様であり、N1=N4である。
【0044】
外側磁極体15は、典型的には、それぞれ、同数の内側磁極体(相補的な磁極体)と対で配置され、したがって、複数の二極磁石を形成し、複数の二極磁石は、径方向の分極を有し、第4の車6Dの軸を形成する中心部17の周り、又は軸が通過する開口内に配置される。中心部17は、有利には、強磁性材料又はミューメタル材料から作製される。第2の車6Bの歯数N2及び第3の車6Cの歯数N3は、第4の車6Dの磁極体15の数N4よりも多い。第2の実施形態では、第3の磁気歯部12は、第2の歯部のように、この第3の歯部の歯の間に非磁気区域を伴う、非磁気材料から作製される縁14上に配置される。第4の歯部16の磁化歯15は、第3の磁束がこれらの磁化歯から、第4の車6Dの回転軸に対して径方向である主要方向で発生するように配置され、二極磁石は、したがって、径方向の分極/磁化を有する。第4の車と第3の車との間の第3の磁気結合は、磁化歯15から発生する第3の磁束によってほとんどの部分で生じる。
【0045】
第3の磁気歯部12は、第4の磁気歯部16と第3の磁気結合を有し、第3の磁気結合によって、第3の歯部及び第4の歯部によって規定される伝達比で、第3の車6C及び第4の車6Dの一方が回転するように駆動されると、もう一方の車6C、6Dも回転するように駆動される。この第3の磁気結合は、第4の歯部16によって生じる第3の磁束からの磁束によってほとんどの部分で生じ、これにより、磁力のために、第4の磁気歯部16との磁気結合区域に瞬間的に位置する第3の磁気歯部12の歯を瞬間的に分極し、したがって、第3の磁気歯部12を通じて、これらの第3の磁束がそれぞれ流れる。図4及び図5に示すように、第4の車6Dは、第1の車6Aとの磁気結合区域及び第4の車6Dとの磁気結合区域が少なくともほとんどの部分で重なり、磁気結合区域6A、6Dに共通である磁気結合区域に位置する第3の歯部12の同じ歯を通過する第2の磁束及び第3の磁束が、これらの歯のそれぞれで同じ極性を有するように配置される。したがって、第2の磁気歯部10と第3の磁気歯部12との間の第2の磁気結合は、第3の磁気歯部12の歯のそれぞれから発生する第4の磁束によって部分的に更に生成され、第3の磁気歯部12の歯は、第4の磁気歯部16から発生する第3の磁束によって瞬間的に磁化される。より詳細には、第2の磁気結合は、システムの対称性のために、(第1の永久磁石歯部によりもたらされる第1の磁束によって生じる)第2の磁束、及び(第4の永久磁石歯部によりもたらされる第3の磁束によって生じる)第4の磁束によって実質的に等量で生じる。これら第4の磁束は、部分的に、磁力のために、それぞれ、第4の車6Dとの磁気結合区域に瞬間的に位置する第2の磁気歯部10の歯を瞬間的に分極する。
【0046】
好ましくは、第4の車6Dは、第2の平面上に突出する際、この第3の車6Cの周りの外接円の内側に配設され、第2の平面上には、第3の車6Cが延在し、この第3の車6Cの回転軸が直交する。好ましくは、第4の車6Dは、第4の車6Dがその軸上で自由に回転できるように組み付けられる。なお一層好ましくは、第1の車6A及び第4の車6Dの直径は、同一である。
【0047】
図4に示す機構1の第2の実施形態の第1の例では、第4の車6Dは、第3の車6Cの中で、第3の車6Cが延在する第2の平面内に実質的に配設される。したがって、第3の車6Cは、第4の車6Dのための一種の障壁を形成する。この例示的実施形態によれば、第3の車6Cは、第2の平面内に交差部を有さない環形状を有する。第1の車6A及び第4の車6Dのそれぞれは、径方向の磁化を有する6個の二極磁石を備える。第1の車6Aの6個の二極磁石は、第1の磁気歯部8を形成し、第4の車6Dの6個の二極磁石は、第4の磁気歯部16を形成する。第1の車6A及び第4の車6Dは、有利には、第1の車6A及び第4の車6Dがそれぞれそれらの軸上で自由に回転できるように組み付けられる。第4の歯部16の磁化歯15は、第3の磁束がこれらの磁化歯15から、第4の車6Dの回転軸に対して径方向である主要方向で発生するように配置され、二極磁石は、したがって、径方向の分極又は磁化を有する。第2の車6B及び第3の車6Cはそれぞれ、軟強磁性材料から作製される18個の歯を備える。
【0048】
図5に示す機構1の第2の実施形態の第2の例は、それぞれ、機構1のそれぞれの機械式歯車18を介して、第1の車6Aが第2の車6Bに機械的に結合され、第4の車6Dが第3の車6Cに機械的に結合されるという点で第1の例とは異なる。この特徴の存在は、機構1の第2の実施形態を参照して示すが、本発明による機構1のあらゆる他の実施形態も同様に想定し得る。第2の磁気歯部及び第3の磁気歯部のそれぞれの歯数は、異なってよく、第1の実施形態と同様に、第2の磁気歯部のピッチ及び第3の磁気歯部の歯のピッチは、有利には、いくぶん異なってよいことに留意されたい。
【0049】
図示しない機構1の第2の実施形態の別の例によれば、第4の車6Dは、第2の平面の外側に配設され、第4の車6Dの回転軸は、この第2の平面に直交して配置される。したがって、第3の車6C及び第4の車6Dは、互いに平行な異なる平面内に延在する。したがって、第4の歯部16の磁化歯15は、第3の磁束がこれらの磁化歯15から、第4の車6Dの回転軸に対して斜め又は平行である主要方向で発生するように配置される。第4の車6Dは、典型的には、2つのそれぞれの歯部12、16が、平面上に突出する際、(一方が他方の内側にある状態で互いに接している)接触点を有する外接円、又は任意でわずかな凹部を有する外接円を有するように、第3の車6Cの上又は下に配置し得る。
【0050】
図示しない機構1の第2の実施形態の別の例によれば、第4の車6Dは、第2の平面の外側に配設され、第4の車6Dの回転軸は、この第2の平面に対して斜めに配置される。したがって、第4の歯部16の磁化歯15は、第3の磁束がこれらの磁化歯15から、第4の車6Dの回転軸に対して径方向である主要方向で発生するように配置される。
【0051】
以下、図7を参照しながら、本発明による磁気歯車2を備える機構1の第3の特定の実施形態を説明する。機構1のこの第3の実施形態によれば、磁気歯車2は、3つの車6A、6B、6Cを含む。第1の車6Aは、第2の車6Bが延在する第1の平面P1の外側に配設され、第2の車6Bの回転軸は、この第1の平面P1に直交して配置される。したがって、第1の車6A及び第2の車6Bは、互いに平行な異なる平面内に延在する。第1の歯部8の磁化歯7は、第1の磁束がこれらの磁化歯7から、主要軸方向、即ち、第1の車6Aの回転軸に対して平行な方向で発生するように配置され、二極磁石7は、したがって、軸方向の分極又は磁化を有する。より詳細には、第1の車6Aは、2つのそれぞれの歯部8、10が部分的に重なるように、第2の車6Bの上に配置され、第1の磁気結合及び第2の磁気結合を瞬間的に生成する二極磁石7は、第2の歯部上に重ねられ、この第2の歯部から比較的わずかな距離で位置する。第1の磁気結合及び第2の磁気結合は、第1の車6Aの外側永久磁極体7から発生する第1の磁束によって全体的に生じる。第1の車の2つの隣接する磁石によって生成され、3つの車6A、6B、6Cの間の磁気結合を実質的に生成する磁界線11の1つを図7に示す。好ましくは、第1の車6Aは、第1の車6Aがその軸上で自由に回転できるように組み付けられる。
【0052】
下側磁極体7は、典型的には、それぞれ、同数の上側磁極体(相補的な磁極体)と対で、第1の車6A上に組み付けられる上側円板26の下に配置され、上側円板26は、有利には、強磁性材料又はミューメタル材料から作製される。したがって、第1の車6Aの上側円板26は、第2の磁気歯部とは反対の側で磁石の磁束を閉鎖させることを可能にする。
【0053】
第1の車6A及び第2の車6Bを互いに平行な異なる平面で配置することに関し、様々な可能性が存在する。例えば、第1の可能性は、円形凹部が中に作製される板を使用することにある。したがって、板は、2つの段、即ち、2つの車6A、6Bの一方、好ましくは第2の車6Bを配設し得る上段、及びもう一方の車6A、6B、好ましくは第1の車6Aを配設し得る凹部の底部内の下段を規定する。代替的に、凹部の底部は、この凹部の内側に第1の車6Aを保持するデバイスを備え得る。後者の場合、第2の車6Bは、心棒に接続される平面P1内に交差部を有し得る。別の可能性は、日付リング型のリングを使用することであり、リングは、溝内に置かれ、リングが回転するようにこの溝によって駆動される。
【0054】
図示しない機構1の別の実施形態によれば、磁気歯車2は、3つの車6A、6B、6Cを含む。第1の車6Aは、第1の平面P1の外側に配設され、第1の車6Aの回転軸は、この第1の平面P1に直交して配置される。したがって、第1の車6A及び第2の車6Bは、互いに平行な異なる平面内で延在する。第1の歯部8の磁化歯7は、第1の磁束がこれらの磁化歯7から、第1の車6Aの回転軸に対して斜めである主要方向で発生するように配置される。したがって、後者の場合、第1の車6Aは、例えば、2つのそれぞれの歯部8、10が、平面P1上に突出する際、それぞれ、一点で実質的に接触する外接円及び内接円を有するように、第2の車6Bの第2の歯部のわずかに裏側に配置される。
【0055】
図示しない機構1の別の実施形態によれば、磁気歯車2は、3つの車6A、6B、6Cを含む。第1の車6Aは、第1の平面P1の外側に配設され、第1の車6Aの回転軸は、この第1の平面P1に対して斜めに配置される。したがって、第1の車6A及び第2の車6Bは、異なる平面内に延在し、ある角度が第1の車6Aと第2の車6Bとの間に形成される。したがって、第1の車6Aの磁化歯7は、有利には、第1の磁束がこれらの磁化歯7から、第1の車6Aの回転軸に対して径方向である主要方向で発生するように配置される。第1の磁気結合及び第2の磁気結合は、第1の車6Aの外側永久磁極体7から発生する第1の磁束によって全体的に生じる。
【0056】
一般的な代替実施形態は、第2の車及び第3の車の一方が、駆動デバイスによって回転するように駆動され、したがって磁気歯車内で駆動し、これら2つの車のもう一方が、機構の機能を実行するか又はこの機構内でトルクを伝達するように駆動されることを提供する。第1の車、及び適切な場合第4の車は、第1の車及び第4の車が自由に回転できるように組み付けられるか、又はこれらが第2の車及び第3の車のそれぞれにのみ機械的に結合されるように組み付けられる。
【符号の説明】
【0057】
1 機構
2 磁気歯車
6A 第1の車
6B 第2の車
6C 第3の車
7 永久磁極体
8 第1の磁気歯部
10 第2の磁気歯部
12 第3の磁気歯部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7