(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】微小粒子配列用マスク
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
H01L21/92 604H
(21)【出願番号】P 2022205983
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2019014278の分割
【原出願日】2019-01-30
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 章広
(72)【発明者】
【氏名】西本 正弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 広和
(72)【発明者】
【氏名】土井 克浩
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-327536(JP,A)
【文献】特開2004-104002(JP,A)
【文献】特開2012-19236(JP,A)
【文献】特開2008-288555(JP,A)
【文献】特開2010-258133(JP,A)
【文献】特開2008-108908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/60-21/603
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径50μm以下の微小粒子を基材上に配列するための微小粒子配列用マスクであって、
前記微小粒子配列用マスクは、前記微小粒子が挿入される貫通孔を有し、
前記貫通孔の微小粒子供給側の開口面の面積は、微小粒子排出側の開口面の面積よりも小さく、
前記微小粒子供給側の開口面から微小粒子排出側の開口面に向かう方向をz軸正方向とし、前記貫通孔のz軸に垂直な断面積をAとした場合に、前記貫通孔内のz軸方向の全域においてdA(z)/dz>0が成立し、
かつ、以下の数式(1)が満たされることを特徴とする、微小粒子配列用マスク。
0.4≦t/d≦0.75 (1)
数式(1)において、tは前記微小粒子配列用マスクの厚みであり、dは前記微小粒子の直径である。
【請求項2】
前記微小粒子配列用マスクの厚みが50μm以下である、請求項1に記載の微小粒子配列用マスク。
【請求項3】
前記貫通孔の微小粒子供給側の開口面の直径は100μm未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の微小粒子配列用マスク。
【請求項4】
前記微小粒子の直径は20μm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の微小粒子配列用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小粒子配列用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、微小粒子を基材上に配列するための微小粒子配列用マスクが知られている。微小粒子配列用マスクには、多数の貫通孔が所定の配列パターンで形成されている。微小粒子配列用マスクを用いた微小粒子の配列方法は概ね以下の通りである。まず、基材上に微小粒子配列用マスクを配置し、微小粒子配列用マスク上に多数の微小粒子を載せる。ついで、微小粒子配列用マスク上の微小粒子をスキージ等で掻き取る。これにより、一部の微小粒子が貫通孔に挿入され、残りの微小粒子が微小粒子配列用マスクの外に排出される。その後、微小粒子配列用マスクを除去することで、基材上に微小粒子を配列する。微小粒子の配列パターンは貫通孔の配列パターンに一致する。
【0003】
微小粒子配列用マスクは、例えば粒子充填フィルムの製造工程、またはボールグリッドアレイ基板の製造工程で使用される。粒子充填フィルムの製造工程では、粘着層が形成されたフィルム上に微小粒子を配列するために微小粒子配列用マスクが使用される。一方、ボールグリッドアレイ基板の製造工程では、基板上に半田ボールを配列するために微小粒子配列用マスクが使用される。
【0004】
ところで、微小粒子を基材上に正確に配置するという観点から、微小粒子の抜け、重複、ダメージ(以下、これらを「微小粒子の欠陥」と総称する場合がある)を極力少なくする必要がある。ここで、微小粒子の抜けとは、一旦貫通孔に挿入された微小粒子が微小粒子の掻き取り時に貫通孔から抜け出すことを意味する。微小粒子の重複とは、同じ貫通孔に2個以上の微小粒子が挿入されることを意味する。1つの貫通孔には微小粒子が1つだけ挿入されることが多いため、重複の抑制が求められる。なお、1つの貫通孔に2つ以上の微小粒子が挿入されてもよい場合には、重複の抑制は必ずしも求められない。微小粒子のダメージは、貫通孔に挿入された微小粒子が何らかの原因で欠け、割れ等のダメージを受けることを意味する。
【0005】
このため、特許文献1では、貫通孔をテーパ形状とし、かつ、t/dを0.8以上1.4以下としている。ここで、特許文献1では、tを基材の表面から微小粒子配列用マスクの微小粒子供給側の表面までの距離と定義しており、dを微小粒子の直径と定義している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1は、直径100μm以下の微小粒子を対象としている。しかし、本発明者が特許文献1記載の微小粒子配列用マスクを用いて直径50μm以下の微小粒子を基材上に配列してみたところ、上述した微小粒子の欠陥が発生する場合があることが判明した。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、直径50μm以下の微小粒子を基材上に配列する場合に、微小粒子の欠陥の発生を抑制することが可能な、新規かつ改良された微小粒子配列用マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、直径50μm以下の微小粒子を基材上に配列するための微小粒子配列用マスクであって、微小粒子配列用マスクは、微小粒子が挿入される貫通孔を有し、貫通孔の微小粒子供給側の開口面の面積は、微小粒子排出側の開口面の面積よりも小さく、微小粒子供給側の開口面から微小粒子排出側の開口面に向かう方向をz軸正方向とし、貫通孔のz軸に垂直な断面積をAとした場合に、貫通孔内のz軸方向の全域においてdA(z)/dz>0が成立し、かつ、以下の数式(1)が満たされることを特徴とする、微小粒子配列用マスクが提供される。
0.4≦t/d≦1.0 (1)
数式(1)において、tは微小粒子配列用マスクの厚みであり、dは微小粒子の直径である。
【0010】
ここで、貫通孔の微小粒子供給側の開口面の直径は100μm未満であってもよい。
【0011】
また、微小粒子の直径は20μm以下であってもよい。
【0012】
本発明の他の観点によれば、微小粒子を基材上に配列するための微小粒子配列用マスクであって、微小粒子配列用マスクは、微小粒子が挿入される貫通孔を有し、貫通孔の微小粒子供給側の開口面の面積は、微小粒子排出側の開口面の面積よりも小さく、微小粒子供給側の開口面から微小粒子排出側の開口面に向かう方向をz軸正方向とし、貫通孔のz軸に垂直な断面積をAとした場合に、貫通孔内のz軸方向の全域においてdA(z)/dz>0が成立し、かつ、厚みが50μm以下であることを特徴とする、微小粒子配列用マスクが提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、直径50μm以下の微小粒子を基材上に配列する場合に、微小粒子の欠陥の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る微小粒子配列用マスクの概略構成を示す縦断面図である。
【
図2A】貫通孔形状の変形例を示す縦断面図である。
【
図2B】貫通孔形状の変形例を示す縦断面図である。
【
図2C】貫通孔形状の変形例を示す縦断面図である。
【
図3】貫通孔形状の一例を示す縦断面SEM画像である。
【
図4】微小粒子配列用マスクを用いた微小粒子配列方法を説明するための縦断面図である。
【
図5】微小粒子配列用マスクを用いた微小粒子配列方法を説明するための縦断面図である。
【
図6】比較例に係る微小粒子配列用マスクの概略構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.微小粒子配列用マスクの構成>
まず、
図1~
図4に基づいて、本実施形態に係る微小粒子配列用マスク1の構成について説明する。微小粒子配列用マスク1は、直径50μm以下の微小粒子30を基材100上に配列するためのマスクである。微小粒子30の直径は、いわゆる球相当径である。微小粒子30の形状は基本的には球形であるが、他の形状であってもよい。微小粒子30の直径にばらつきがある場合、いくつかの微小粒子30で測定された直径の算術平均値を微小粒子30の直径としてもよい。
【0017】
微小粒子配列用マスク1は、多数の貫通孔20を有する。貫通孔20は、微小粒子配列用マスク1を厚み方向(z軸方向)に貫通する孔であり、
図4に示す微小粒子30が挿入される(振り込まれる)。すなわち、貫通孔20は、微小粒子配列用マスクの微小粒子供給側の表面1a、微小粒子排出側の表面1bの両方に開口している。ここで、微小粒子供給側の表面1aは、微小粒子配列用マスク1を用いて基材100上に微小粒子30を配列する際に微小粒子30が載せられる表面である。微小粒子排出側の表面1bは、微小粒子配列用マスク1を用いて基材100上に微小粒子30を配列する際に基材100に対向する表面である。
【0018】
貫通孔20の微小粒子供給側の開口面20aの面積は、微小粒子排出側の開口面20bの面積よりも小さい。ただし、開口面20aの面積は、少なくとも微小粒子30が挿入できる程度の大きさとなる。例えば、開口面20aが円形となり、微小粒子30が球形となる場合、開口面20aの直径は微小粒子30の直径の1.0倍以上となる。1つの貫通孔20に1つの微小粒子30を挿入する場合、開口面20aの直径の上限値は微小粒子30の直径の2.0倍未満となる。一例として、開口面20aの直径は100μm未満であってもよい。1つの貫通孔20に複数の微小粒子30を挿入してもよい場合には、開口面20aの直径の上限値は微小粒子30の直径の2.0倍以上であってもよい。この場合、上限値は1つの貫通孔20に挿入されうる微小粒子30の数等に応じて調整されればよい。
【0019】
さらに、開口面20aから開口面20bに向かう方向をz軸方向の正方向とし、貫通孔20のz軸に垂直な断面積をAとした場合に、貫通孔20内のz軸方向の全域においてdA(z)/dz>0が成立する。ここで、A(0)は開口面20aの面積に相当し、A(t)は開口面20bの面積に相当する。したがって、貫通孔20は、いわゆる末広がりの形状(言い換えれば、開口面20bに向かって広がるテーパ形状)を有する。これにより、微小粒子配列用マスク1上から余剰の微小粒子30を掻き取る際に、微小粒子30の抜け、重複、ダメージ等を抑制することができる。
【0020】
ここで、dA(z)/dz>0が成立する限り、貫通孔20の縦断面形状(壁面の縦断面形状)の種類は問われない。例えば、
図1に示す例では、貫通孔20の縦断面形状が下に凸の曲線となっているが、
図2Aに示すように直線形状であってもよく、
図2Bに示すように上に凸の曲線となっていてもよい。さらに、
図1に示す例では貫通孔20の縦断面形状が貫通孔20の中心軸(断面の中心を連結する軸)に関して対称な形状となっているが、
図2Cに示すように中心軸に関して非対称な形状となっていても良い。また、貫通孔20の縦断面形状は折れ線形状(z軸方向の途中で傾きが変わる)形状であってもよい。
【0021】
さらに、dA(z)/dz>0が成立する限り、貫通孔20のz軸に垂直な断面形状(いわゆる平断面形状)も特に問われない。平断面形状は円形であることが多いが、矩形であってもよく、ランダム形状であってもよい。
【0022】
さらに、本実施形態では、以下の数式(1)が満たされる。
0.4≦t/d≦1.0 (1)
数式(1)において、tは微小粒子配列用マスク1の厚みであり、dは微小粒子30の直径である。ここで、微小粒子配列用マスク1の厚みにばらつきがある場合、いくつかの測定点で測定された厚みの算術平均値を微小粒子配列用マスク1の厚みとしてもよい。
【0023】
詳細は実施例で説明するが、上記の要件を満たす微小粒子配列用マスク1を用いることで、微小粒子30の欠陥をほとんど生じさせることなく微小粒子30を基材100上に配列することができる。ここで、微小粒子30の直径は20μm以下であってもよい。この場合であっても、微小粒子30の欠陥をほとんど生じさせることなく微小粒子30を配列することができる。t/dが上記範囲外の値となる場合、微小粒子30の欠陥が多数発生しうる。詳細は後述するが、掻き取り器具200で微小粒子配列用マスク1上の微小粒子30を掻き取ることで、貫通孔20内に微小粒子30を挿入する。t/dが上記範囲外の値、例えば0.4未満となる場合、掻き取りの際に微小粒子30と貫通孔20の壁面との間に生じるせん断力が大きくなり、微小粒子30にダメージを与える可能性がある。
【0024】
t/dの好ましい上限値は0.9以下であり、さらに好ましくは0.8以下である。t/dの好ましい下限値は0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上である。この場合、微小粒子30の欠陥の発生をより確実に抑制することができる。
【0025】
微小粒子配列用マスク1の厚みは50μm以下であることが好ましい。本実施形態で使用される微小粒子30の直径は50μm以下なので、微小粒子配列用マスク1の厚みが50μm以下であればt/dは必然的に1.0以下となる。厚みの下限値は数式(1)が満たされるように設定されればよいが、微小粒子配列用マスク1を安定して製造する等の観点から、厚みの下限値は10μm以上であることが好ましい。
【0026】
貫通孔20の配列パターンは一定であってもよく、ランダムであってもよい。例えば、貫通孔20の配列パターンは六方細密配列、または矩形配列(正方格子配列等)等であってもよい。また、貫通孔20のピッチ(貫通孔20の中心軸間の距離)は特に制限されない。ただし、微小粒子排出側の開口面20b同士が干渉しない方が、微小粒子30挿入のプロセスが安定するため好ましい。このような観点から、貫通孔20のピッチは、開口面20bの直径よりも大きいことが好ましい。貫通孔20の具体的な配列パターン及びピッチは、微小粒子30が配列される基材100の用途等に応じて適宜決定されればよい。
【0027】
微小粒子配列用マスク1の材料は特に制限されず、従来の微小粒子配列用マスクと同様の材料であってもよく、例えば各種の金属材料、樹脂材料等であってもよい。ただし、微小粒子配列用マスク1の材料は、耐久性や孔加工性を考慮すると、SUS、Niなどの金属材料、またはポリイミドなどの樹脂材料を用いることが好ましい。
【0028】
さらに、微小粒子配列用マスク1の表面には、耐久性・摺動性・撥水性・離型性などを向上させるための表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、例えば、シリコーン系またはフッ素系のコーティング、またはガラスコーティングなどが挙げられる。コーティング膜厚みによっては貫通孔20の開口形状に影響を与えるため、コーティング後に所望の形状となるよう予め貫通孔20を大きく形成しておくことが好ましい。
【0029】
<2.微小粒子配列用マスクの製造方法>
微小粒子配列用マスク1の製造方法は特に制限されず、上記の特徴を有する微小粒子配列用マスク1を製造できる方法であればどのような方法であってもよい。製造方法としては、例えばレーザアブレーション、エッチング、アディティブめっき等が挙げられる。
【0030】
レーザアブレーションでは、マスク基材に対してレンズで絞ったレーザ光を照射し、高エネルギーを与えることで照射位置の基材を選択的に分解・溶融・蒸発させる。これにより、マスク基材に貫通孔20を形成する。特に、対物レンズでの絞り方及びレーザ光の照射角度によって、形成される貫通孔20の縦断面形状及び平断面形状を制御することができる。レーザアブレーションの具体的な方法は例えば特開2003-170286号公報に記載されており、本実施形態でもこの方法を特に制限なく採用することができる。
【0031】
この方法では、マスク基材の材料は金属材料及び樹脂材料のいずれであってもよく、材料に適するレーザ光源(具体的には、レーザ光源の波長及びパルス幅)を選定すればよい。例えば、マスク基材がNiまたはSUSなどの金属材料であればYAGレーザ、ポリイミドであればエキシマレーザなどを使用すれば良い。特に微細な貫通孔20を形成する場合は、パルス幅がナノ秒以下のレーザを使用して熱影響による孔形状崩れを防ぐことが好ましい。
【0032】
エッチングでは、マスク基材に対してレジストをコーティングし、レジストを露光現像したうえで化学的エッチングをする。これにより、マスク基材に貫通孔20を形成することができる。露光の際にレジスト膜内での感光度合いを制御することで、貫通孔20の縦断面形状及び平断面形状を制御することができる。エッチングの具体的な方法は特に制限されず、公知の方法を任意に適用することができる。
【0033】
アディティブめっきでは、足場材料の上にレジストをコーティングし、レジストを露光現像する。そのうえで、レジストが除去された箇所に、マスク基材となる鍍金材料を成長させ、足場材料とレジストを化学的・物理的に剥離除去する。これにより、マスク基材に貫通孔20を形成することができる。エッチングと同様に露光の際にレジスト膜内での感光度合いを制御することで、貫通孔20の縦断面形状及び平断面形状を制御することができる。アディティブめっきの具体的な方法は例えば特開2012-19236号公報に記載されており、本実施形態でもこの方法を特に制限なく採用することができる。
【0034】
図3は、実際に作製された微小粒子配列用マスク1の縦断面SEM画像を示す。この画像が示すように、貫通孔20は末広がりの形状を有している。
【0035】
<3.微小粒子の配列方法>
つぎに、
図4及び
図5に基づいて、微小粒子配列用マスク1を用いた微小粒子30の配列方法について説明する。
【0036】
まず、基材100を準備する。基材100の表面に微小粒子30が配列される。基材100の具体的な構成は問われず、基材100に求められる特性等に応じて調整されればよい。例えば粒子充填フィルムを作製する場合、基材100は、表面に粘着層が形成されたフィルムであり、ボールグリッドアレイ基板を作製する場合、基材100は各種基板となる。基板の表面のうち、微小粒子30を配列したい箇所に仮固定膜であるフラックスが印刷等により形成される。なお、本実施形態における粒子充填フィルムの用途は特に制限されず、本実施形態に係る粒子充填フィルムが適用可能な用途であればどのような用途であってもよい。例えば、粒子充填フィルムは、各種の導電性フィルムであってもよく、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用のフィルムとしても使用可能である。
【0037】
ついで、基材100上に微小粒子配列用マスク1を配置する。ここで、微小粒子排出側の表面1bを基材100に対向させる。ついで、微小粒子配列用マスク1上に多数の微小粒子30を載せる。ここで、微小粒子30の具体的な構成は問われず、微小粒子30に求められる特性等に応じて異なる。例えば粒子充填フィルムを作製する場合、微小粒子30は導電性粒子であっても、絶縁性粒子(例えば樹脂粒子等)であってもよい。粒子充填フィルムの用途等に応じて微小粒子30の特性が決定される。例えば、粒子充填フィルムに導電性が求められる場合、微小粒子30は導電性粒子となる。ボールグリッドアレイ基板を作製する場合、微小粒子30は半田ボールである。微小粒子30の直径は上述した通り50μm以下である。微小粒子30の直径は20μm以下であってもよい。微小粒子30の直径の下限値は特に制限されないが、例えば3μm以上であってもよい。
【0038】
ついで、微小粒子配列用マスク1上の微小粒子30をスキージ、ドクターブレード等の掻き取り器具200で掻き取る。これにより、一部の微小粒子30が貫通孔20に挿入され、残りの微小粒子(余剰な微小粒子)30が微小粒子配列用マスク1の外に排出される。ここで、基材100の表面に粘着層を形成した場合、微小粒子配列用マスク1の下方には粘着層が配置されることになる。したがって、掻き取りの際に粘着層(=弾性層)に微小粒子30が沈みこみ、微小粒子30へのダメージを低減できる。したがって、微小粒子30の欠陥がより発生しにくくなる。その後、微小粒子配列用マスク1を除去することで、基材100上に微小粒子30を配列する。微小粒子30の配列パターンは貫通孔20の配列パターンに一致する。
【0039】
ここで、微小粒子配列用マスク1は上述した特性を有するので、微小粒子30を配列する際に微小粒子30の欠陥を抑制することができる。
【実施例】
【0040】
<1.実施例1>
(1-1.微小粒子配列用マスクの準備)
以下の工程により微小粒子配列用マスクを作製した。まず、マスク基材として厚み15μmのSUS304板を準備した。ついで、レーザアブレーションによりマスク基材に多数の貫通孔を形成した。ここで、貫通孔の配列は60μmピッチの六方最密充填とした。貫通孔の平断面形状は円形とした。さらに、微小粒子配列用マスクの離型性を高めるためにフッ素系のコーティング材を微小粒子配列用マスクに塗布し、乾燥した。乾燥後の微小粒子供給側の開口面の直径は30μm、微小粒子排出側の開口面の直径は35μmであった。貫通孔の縦断面形状は直線形状とした。つまり、dA/dzは0より大きい定数となる。以上の工程により、微小粒子配列用マスクを作製した。微小粒子配列用マスクの特性を表1に示す。
【0041】
(1-2.微小粒子配列用マスクを用いた微小粒子の配列)
厚み100μmのPETフィルム上に厚み20μmの粘着層を形成することで、基材を作製した。さらに、微小粒子として、アクリル樹脂製のコアに金メッキがなされた直径20μmの導電性粒子を準備した。微小粒子の特性(直径)を表1に示す。
【0042】
ついで、基材上(粘着層上)に上記で作製した微小粒子配列用マスクを配置した。ここで、微小粒子排出側の表面を基材に対向させた。
【0043】
ついで、微小粒子配列用マスク上に多数の微小粒子(導電性粒子)を載せ、これらの微小粒子をスキージで掻き取った。これにより、一部の微小粒子を貫通孔に挿入し、残りの微小粒子(余剰な微小粒子)を微小粒子配列用マスクの外に排出した。その後、微小粒子配列用マスクを除去することで、基材上に微小粒子を配列した。つまり、粘着層上に導電性粒子が配列された粒子充填フィルムを作製した。
【0044】
ついで、Olympus製工業顕微鏡MX61を用いて対物レンズ5倍および20倍の条件下で粒子充填フィルムを観察し、配列された微小粒子の状態を観察した。具体的には、貫通孔の配置100箇所に対し、微小粒子がそれぞれ1つずつ配置しているかどうか観察した。微小粒子が2つ以上同じ箇所に配置されている場合を「重複」欠陥とした。つまり、実施例1及び後述する各例では、1つの貫通孔に1つの微小粒子を挿入する配列を形成することとした。微小粒子が無い場合を「抜け」欠陥、微小粒子に欠けや割れがある場合を「粒子ダメージ」欠陥と判別した。そして、100箇所のうち2箇所以上存在する種類の欠陥については、評価結果を「×」とした。それ以外を「○」とした。結果を表1にまとめて示す。
【0045】
<2.実施例2~5、比較例1~5>
微小粒子配列用マスク及び微小粒子の特性を表1に示すものに変更したほかは実施例1と同様の試験を行った。結果を表1にまとめて示す。なお、比較例3では貫通穴の内壁面に突起を形成した。貫通穴に突起を形成する技術は特許文献1に開示されている。
図6は、突起の例を示す。
図6に示す微小粒子配列用マスク300では、貫通穴310に突起320が形成されている。このような突起が形成されている場合、突起よりも上側(微小粒子供給側)でdA/dzが0未満となる。
【0046】
【0047】
<3.評価>
実施例1~5は本実施形態の要件を満たすので微小粒子の欠陥がほとんど発生せず、いずれの種類の欠陥でも評価が「○」となった。一方、比較例1~5では、本実施形態の要件のいずれかが満たされないので、いずれかの種類の欠陥で評価が「×」となった。具体的には、比較例1、2では微小粒子供給側の開口面の直径、微小粒子排出側の開口面の直径が同じ値となっており、z軸方向の全域でdA/dz=0となっている。すなわち、貫通孔がストレート形状となっている。このため、「重複」欠陥または「抜け」の評価が「×」となった。比較例3では、突起が形成されているため、突起よりも上側でdA/dzが0未満となっている。このため、「粒子ダメージ」欠陥の評価が「×」となった。なお、比較例3では、突起が微小粒子30にダメージを与えた可能性もある。比較例4ではt/dが1.0を超えている。このため、「重複」欠陥の評価が「×」となった。比較例5ではt/dが0.4未満となっている。このため、「粒子ダメージ」欠陥及び「抜け」欠陥の評価が「×」となった。したがって、微小粒子の欠陥をほとんど発生させずに微小粒子を基材上に配列するためには、本実施形態の要件を満たす必要があることが明らかとなった。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1 微小粒子配列用マスク
20 貫通孔
20a 微小粒子供給側の開口面
20b 微小粒子排出側の開口面
30 微小粒子
100 基材