IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社巴川製紙所の特許一覧

<>
  • 特許-熱交換器 図1
  • 特許-熱交換器 図2
  • 特許-熱交換器 図3
  • 特許-熱交換器 図4
  • 特許-熱交換器 図5
  • 特許-熱交換器 図6
  • 特許-熱交換器 図7
  • 特許-熱交換器 図8
  • 特許-熱交換器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/40 20060101AFI20231117BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
H05B3/40 A
H05B6/10 301
H05B6/10 311
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022501801
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004407
(87)【国際公開番号】W WO2021166697
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020026159
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-085226(JP,A)
【文献】特開2003-123949(JP,A)
【文献】実開昭60-002240(JP,U)
【文献】特開平09-283268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/40
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属繊維から形成される金属繊維構造体と、
前記金属繊維構造体を収容する収容体と、
を備え、
前記収容体に収容されている前記金属繊維構造体と前記収容体の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成され、
前記金属繊維構造体は前記収容体の内部で、前記収容体の内部を流れる流体の流れ方向に沿って移動自在となっており、
前記金属繊維構造体の端部に羽根が取り付けられており、前記収容体の内部を流れる流体が前記羽根に当たることにより前記金属繊維構造体が前記収容体の内部で回転するようになっている、熱交換器。
【請求項2】
前記収容体の両端には流体の入口および出口がそれぞれ形成されており、前記入口から前記収容体の内部に入った流体が前記金属繊維構造体の内部または前記金属繊維構造体と前記収容体の内面との間に形成された隙間を通って前記出口から排出される、請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記収容体は円筒形状である、請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記金属繊維構造体を構成する前記金属繊維の材料と、前記収容体の材料とが互いに異なっている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記金属繊維構造体には貫通穴が形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記貫通穴は、前記収容体の内部を流れる流体の流れ方向に沿って延びている、請求項5記載の熱交換器。
【請求項7】
前記金属繊維構造体を構成する前記金属繊維は互いに結着されたものである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記収容体は、両端の近傍の箇所にそれぞれ曲げ部分が形成された配管を含み、前記金属繊維構造体は前記収容体の内部において各前記曲げ部分の間に配置されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記金属繊維は銅繊維またはアルミニウム繊維を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被伝熱媒体としての流体を配管内で流すことにより流体を加熱したり流体から放熱を行ったりする熱交換器として様々なタイプのものが知られている。例えば、特開2003-123949号公報(JP2003-123949A)には、加熱に電磁誘導加熱を適用し、流体の加熱効率がよく、使用する導電体を製作しやすい電磁誘導加熱装置が開示されている。特開2003-123949号公報(JP2003-123949A)に開示される電磁誘導加熱装置では、金属繊維から形成されたハニカム構造材が金属製パイプの内部に配置されている。また、特開2019-172275号公報(JP2019-172275A)には、金属繊維で構成されている金属繊維シートと、この金属繊維シートを冷却する冷却機構とを有する冷却部材が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
従来の熱交換器では、概して被伝熱媒体としての流体が流れる配管の内面に金属繊維から形成される金属繊維構造体が接着されていた。しかしながら、このような熱交換器では、配管内を流れる流体に乱流が生じにくく、この場合には配管内を流れる流体の滞留時間が短くなるため熱伝導性が小さくなるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、金属繊維構造体を収容する収容体の内部を流れる流体に対する熱伝導性を高めることができる熱交換器を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の熱交換器は、金属繊維から形成される金属繊維構造体と、前記金属繊維構造体を収容する収容体と、を備え、前記収容体に収容されている前記金属繊維構造体と前記収容体の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施の形態による熱交換器の構成の一例を示す断面図である。
図2図1に示す熱交換器のA-A矢視による断面図である。
図3】本発明の実施の形態による熱交換器の構成の他の例を示す断面図である。
図4図3に示す熱交換器のB-B矢視による断面図である。
図5】本発明の実施の形態による熱交換器の構成の更に他の例を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態による熱交換器の構成の更に他の例を示す断面図である。
図7】本発明の実施の形態による熱交換器の構成の更に他の例を示す断面図である。
図8図7に示す熱交換器のC-C矢視による断面図である。
図9図7に示す熱交換器のD-D矢視による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図9は、本実施の形態による熱交換器の様々な例を示す断面図である。本実施の形態による熱交換器は、被伝熱媒体としての流体を配管内で流すことにより流体を加熱したり流体から放熱を行ったりするものである。
【0008】
まず、図1および図2に示す熱交換器について説明する。図1および図2に示す熱交換器は、断面が円形である円筒形状の配管10と、配管10の内部に配置された略円柱形状の金属繊維構造体20とを備えている。この配管10の内部に形成される流路12を被伝熱媒体としての流体(具体的には、液体または気体)が流れるようになっている。より詳細には、配管10の両端には流体の入口10aおよび出口10bがそれぞれ形成されており、入口10aから配管10の内部に入った流体が流路12を通って出口10bから排出される。
【0009】
配管10は、金属繊維構造体20を収容する収容体として機能する。配管10は例えばステンレス、鉄、銅、アルミニウム、青銅、黄銅、ニッケルおよびクロム等からなる群から選択された金属から構成されている。
【0010】
金属繊維構造体20は金属繊維から形成されたものである。このような金属繊維として、金属被覆繊維が用いられてもよい。また、金属繊維構造体20は、湿式または乾式製法を用いて不織布、織布およびメッシュ等に形成した後に、金属繊維構造体に加工したものであってもよい。好ましくは、金属繊維構造体20として、金属繊維間が結着された金属繊維不織布が用いられる。金属繊維が結着されているとは、金属繊維同士が物理的に固定され、結着部を形成していることを意味する。金属繊維構造体20は、金属繊維同士が結着部で直接的に固定されていてもよいし、金属繊維の一部同士が、金属成分以外の成分を介して間接的に固定されていてもよい。
【0011】
金属繊維構造体20が金属繊維から形成されているため、金属繊維構造体20の内部には空隙が存在する。このことにより、配管10において流路12を流れる流体は、金属繊維構造体20の内部を通ることができるようになる。また、金属繊維構造体20において、金属繊維が結着されている場合には、金属繊維構造体20を構成している金属繊維の間に空隙がより一層形成されやすくなる。このような空隙は、例えば金属繊維が交絡することにより形成されてもよい。金属繊維構造体20がこのような空隙を備えることにより、配管10の流路12を流れる流体が金属繊維構造体20の内部に導入されるため、流体に対する熱交換性を高めやすくなる。また、金属繊維構造体20は、結着部で金属繊維が焼結されていることが好ましい。金属繊維が焼結されていることにより、金属繊維構造体20の熱伝導性および均質性が安定しやすくなる。
【0012】
金属繊維構造体20に含まれる金属繊維を構成する金属の具体例としては、特に限定されないが、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、青銅、黄銅、ニッケルおよびクロム等からなる群から選択されたもの、あるいは、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムおよびオスミウム等からなる群から選択された貴金属であってもよい。この中でも、銅繊維およびアルミニウム繊維は、熱伝導性がすぐれており、また剛直性と塑性変形性とのバランスが適度であるため好ましい。
【0013】
なお、金属繊維構造体20を構成する金属繊維の材料と、配管10の材料とが互いに異なっていることが好ましい。具体的には、金属繊維構造体20を構成する金属繊維が銅繊維であるのに対し、配管10の材料がアルミニウムであってもよい。
【0014】
図1および図2に示すように、配管10に収容されている金属繊維構造体20と配管10の内面との間の少なくとも一部には隙間が形成されている。すなわち、金属繊維構造体20は、配管10の内部でこの配管10の内面に結着されない状態で存在している。このため、配管10の内部で金属繊維構造体20は流体の流れ方向に沿って移動自在となっている。本実施の形態では、配管10において流路12を流れる流体は、金属繊維構造体20と配管10の内面との間に形成された隙間を通ることができるようになる。また、配管10の内部で金属繊維構造体20が移動した場合でも、金属繊維構造体20は金属繊維から構成されておりクッション性を有するため、配管10の内面が金属繊維構造体20により傷つけられてしまうことを抑制することができる。とりわけ、配管10の材料の硬度が金属繊維構造体20の材料の硬度よりも大きいことが好ましい。この場合には、配管10の内部で金属繊維構造体20が移動した場合でも、配管10の内面が金属繊維構造体20により傷つけられてしまうことをより一層抑制することができる。
【0015】
配管10に収容されている金属繊維構造体20と配管10の内面との間の隙間の大きさは10μm~500μmの範囲内の大きさであり、好ましくは30μm~300μmの範囲内の大きさであり、更に好ましくは50μm~200μmの範囲内の大きさである。配管10に収容されている金属繊維構造体20と配管10の内面との間の隙間の大きさは、配管10の内面に直交する方向における配管10と金属繊維構造体20との間の距離のことをいう。この隙間の大きさを10μm以上とすることにより、圧損が大きくなることを防止することができ、よって流体がこの隙間を通りにくくなることを防止することができる。一方、この隙間の大きさを500μm以下とすることにより、流体が抵抗なくこの隙間を流れることを防止することができ、よって熱交換性能を高めることができる。
【0016】
以上のような構成からなる本実施の形態の熱交換器によれば、収容体としての配管10に収容されている金属繊維構造体20と、配管10の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている。このため、配管10を流れる流体が接触する金属繊維構造体20の表面積が大きくなり、金属繊維構造体20による熱伝導率を高めることができる。また、金属繊維構造体20がランダムに配置された金属短繊維から構成される場合には、配管10を流れる流体に乱流を生じやすくなる。この場合には、配管10を流れる流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、配管10を流れる流体の温度の均一化(例えば、配管10の中心部と、内壁近傍の温度の均一化)を図ることができるようになる。以上のように、金属繊維構造体20と、配管10の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、金属繊維構造体20による熱伝導率を高めることができるとともに、配管10を流れる流体の滞留時間を長くすることにより伝熱効果を高めることができるため、流体に対する熱伝導性を高めることができる。また、金属繊維構造体20が配管10から完全に分離している場合には、急加熱や急冷却を繰り返し行うような熱交換器に適用した場合でも、配管10の膨張や収縮に金属繊維構造体20が追随しないため、金属繊維構造体20が破損してしまうことを抑制することができる。また、金属繊維構造体20と、配管10の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、配管10を流れる流体による内圧を逃しやすくなる。
【0017】
なお、配管10の内部に単に金属構造体を収容させた場合には、この金属構造体と配管10の内面との間に隙間を形成した場合に、金属構造体が配管10の内部で移動したときに配管10の内面が金属構造体により傷つけられてしまう場合がある。これに対し、上述したように、金属繊維構造体20は金属繊維から構成されておりクッション性を有するため、配管10の内面が金属繊維構造体20により傷つけられてしまうことを抑制することができる。
【0018】
また、図1および図2に示す熱交換器では、金属繊維構造体20は配管10の内部で移動自在となっている。このため、配管10の流路12を流体が流れる際に乱流がより一層生じやすくなる。このことにより、配管10を流れる流体の滞留時間が更に長くなるため、伝熱効果をより一層高めることができる。
【0019】
また、図1および図2に示す熱交換器において、配管10の流路12を流体が流れる際に乱流をより一層生じやすくさせるために、金属繊維構造体20の端部に羽根(図示せず)を取り付けてもよい。このような羽根を取り付けた場合には、配管10の流路12を流れる流体が金属繊維構造体20の羽根に当たることにより金属繊維構造体20が配管10の内部で回転する。このことにより、配管10の流路12を流体が流れる際に乱流がより一層生じやすくなる。
【0020】
また、図1および図2に示す熱交換器において、金属繊維構造体20が配管10の内面から完全に分離するのではなく、金属繊維構造体20の外周面の一部のみが配管10の内面に取り付けられていてもよい。この場合でも、金属繊維構造体20における配管10の内面に取り付けられていない部分と、配管10の内面との間に隙間が形成されているときには、金属繊維構造体20による熱伝導率を高めることができるとともに、配管10を流れる流体の滞留時間を長くすることにより伝熱効果を高めることができるため、流体に対する熱伝導性を高めることができる。
【0021】
なお、本実施の形態による熱交換器は図1および図2に示すものに限定されることはない。本実施の形態による熱交換器の他の例について図3および図4を用いて説明する。
【0022】
図3および図4に示す熱交換器は、断面が略正方形である配管30と、配管30の内部に配置された略直方体形状(具体的には、例えば板状)の複数(図3および図4に示す例では3つ)の金属繊維構造体40とを備えている。この配管30の内部に形成される流路32を被伝熱媒体としての流体(具体的には、液体または気体)が流れるようになっている。より詳細には、配管30の両端には流体の入口30aおよび出口30bがそれぞれ形成されており、入口30aから配管30の内部に入った流体が流路32を通って出口30bから排出される。配管30は、各金属繊維構造体40を収容する収容体として機能する。配管30を構成する金属は、図1および図2に示す配管10を構成する金属と同じ種類のものが用いられる。また、各金属繊維構造体40を構成する金属繊維は、図1および図2に示す金属繊維構造体20を構成する金属繊維と同じ種類のものが用いられる。このように、金属繊維構造体40が金属繊維から形成されているため、金属繊維構造体40の内部には空隙が存在する。このことにより、配管30において流路32を流れる流体は、金属繊維構造体40の内部を通ることができるようになる。
【0023】
図3および図4に示す熱交換器では、各金属繊維構造体40を所定の位置に維持するための維持部材34が設けられている。このような維持部材34は例えば配管30の内面に形成された突起である。このような維持部材34が設けられていることにより、図1および図2に示す熱交換器と比較して各金属繊維構造体40が配管30の内部で流体の流れ方向に沿って大きく移動することはない。
【0024】
また、図3および図4に示すように、配管30に収容されている各金属繊維構造体40と配管30の内面との間の少なくとも一部には隙間が形成されている。すなわち、各金属繊維構造体40は、配管30の内部でこの配管30の内面に結着されない状態で存在している。このことにより、配管30において流路32を流れる流体は、金属繊維構造体40と配管30の内面との間に形成された隙間を通ることができるようになる。また、配管30の内部で金属繊維構造体40は維持部材34により所定の位置に維持されているが、それでも各金属繊維構造体40と配管30の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されているため、各金属繊維構造体40がわずかに移動する場合がある。しかしながら、金属繊維構造体40は金属繊維から構成されておりクッション性を有するため、配管30の内面が金属繊維構造体40により傷つけられてしまうことを抑制することができる。
【0025】
配管30に収容されている金属繊維構造体40と配管30の内面との間の隙間の大きさは10μm~500μmの範囲内の大きさであり、好ましくは30μm~300μmの範囲内の大きさであり、更に好ましくは50μm~200μmの範囲内の大きさである。配管30に収容されている金属繊維構造体40と配管30の内面との間の隙間の大きさは、配管30の内面に直交する方向における配管30と金属繊維構造体40との間の距離のことをいう。この隙間の大きさを10μm以上とすることにより、圧損が大きくなることを防止することができ、よって流体がこの隙間を通りにくくなることを防止することができる。一方、この隙間の大きさを500μm以下とすることにより、流体が抵抗なくこの隙間を流れることを防止することができ、よって熱交換性能を高めることができる。
【0026】
図3および図4に示すような本実施の形態の熱交換器でも、図1および図2に示す熱交換器と同様に、収容体としての配管30に収容されている金属繊維構造体40と、配管30の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている。このため、配管30を流れる流体が接触する金属繊維構造体40の表面積が大きくなり、金属繊維構造体40による熱伝導率を高めることができる。また、配管30を流れる流体の温度の均一化を図ることができるようになる。また、金属繊維構造体40と、配管30の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、配管30を流れる流体に乱流が生じやすくなる。この場合には、配管30を流れる流体の滞留時間が長くなるため、伝熱効果を高めることができる。以上のように、金属繊維構造体40と、配管30の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、金属繊維構造体40による熱伝導率を高めることができるとともに、配管30を流れる流体の滞留時間を長くすることにより伝熱効果を高めることができるため、流体に対する熱伝導性を高めることができる。
【0027】
次に、本実施の形態による熱交換器の更に他の例について図5を用いて説明する。
【0028】
図5に示す熱交換器は、断面が略正方形である配管50と、配管50の内部に配置された略直方体形状(具体的には、例えば板状)の複数(図5に示す例では2つ)の金属繊維構造体60とを備えている。この配管50の内部に形成される流路52を被伝熱媒体としての流体(具体的には、液体または気体)が流れるようになっている。より詳細には、配管50の両端には流体の入口50aおよび出口50bがそれぞれ形成されており、入口50aから配管50の内部に入った流体が流路52を通って出口50bから排出される。配管50は、各金属繊維構造体60を収容する収容体として機能する。配管50を構成する金属は、図1および図2に示す配管10を構成する金属と同じ種類のものが用いられる。また、各金属繊維構造体60を構成する金属繊維は、図1および図2に示す金属繊維構造体20を構成する金属繊維と同じ種類のものが用いられる。このように、金属繊維構造体60が金属繊維から形成されているため、金属繊維構造体60の内部には空隙が存在する。このことにより、配管50において流路52を流れる流体は、金属繊維構造体60の内部を通ることができるようになる。
【0029】
図5に示す熱交換器では、各金属繊維構造体60を所定の位置に維持するために、配管50の一部の断面積が大きくなるような山部分54が配管50に設けられており、この山部分54により各金属繊維構造体60の端縁が保持されるようになっている。より詳細には、配管50における山部分54以外の箇所の断面は、各金属繊維構造体60の断面よりも小さくなっている。一方、配管50における山部分54が設けられた箇所の断面は、各金属繊維構造体60の断面よりも大きくなっている。このような山部分54が配管50に設けられていることにより、図1および図2に示す熱交換器と比較して各金属繊維構造体60が配管50の内部で大きく移動することはない。
【0030】
また、図5に示すように、配管50に収容されている各金属繊維構造体60と配管50の内面との間の少なくとも一部には隙間が形成されている。すなわち、各金属繊維構造体60は、配管50の内部でこの配管50の内面に結着されない状態で存在している。このことにより、配管50において流路52を流れる流体は、金属繊維構造体60と配管50の内面との間に形成された隙間を通ることができるようになる。また、配管50の内部で金属繊維構造体60は配管50の山部分54により所定の位置に維持されているが、それでも各金属繊維構造体60と配管50の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されているため、各金属繊維構造体60がわずかに移動する場合がある。しかしながら、金属繊維構造体60は金属繊維から構成されておりクッション性を有するため、配管50の内面が金属繊維構造体60により傷つけられてしまうことを抑制することができる。
【0031】
配管50に収容されている金属繊維構造体60と配管50の内面との間の隙間の大きさは10μm~500μmの範囲内の大きさであり、好ましくは30μm~300μmの範囲内の大きさであり、更に好ましくは50μm~200μmの範囲内の大きさである。配管50に収容されている金属繊維構造体60と配管50の内面との間の隙間の大きさは、配管50の内面に直交する方向における配管50と金属繊維構造体60との間の距離のことをいう。この隙間の大きさを10μm以上とすることにより、圧損が大きくなることを防止することができ、よって流体がこの隙間を通りにくくなることを防止することができる。一方、この隙間の大きさを500μm以下とすることにより、流体が抵抗なくこの隙間を流れることを防止することができ、よって熱交換性能を高めることができる。
【0032】
図5に示すような本実施の形態の熱交換器でも、図1および図2に示す熱交換器と同様に、収容体としての配管50に収容されている金属繊維構造体60と、配管50の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている。このため、配管50を流れる流体が接触する金属繊維構造体60の表面積が大きくなり、金属繊維構造体60による熱伝導率を高めることができる。また、配管50を流れる流体の温度の均一化を図ることができるようになる。また、金属繊維構造体60と、配管50の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、配管50を流れる流体に乱流が生じやすくなる。この場合には、配管50を流れる流体の滞留時間が長くなるため、伝熱効果を高めることができる。以上のように、金属繊維構造体60と、配管50の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、金属繊維構造体60による熱伝導率を高めることができるとともに、配管50を流れる流体の滞留時間を長くすることにより伝熱効果を高めることができるため、流体に対する熱伝導性を高めることができる。
【0033】
次に、本実施の形態による熱交換器の更に他の例について図6を用いて説明する。
【0034】
図6に示す熱交換器は、断面が円形であり両端の近傍の箇所がそれぞれ約90°曲がっている配管70と、配管70の内部に配置された略円柱形状の金属繊維構造体80とを備えている。この配管70の内部に形成される流路72を被伝熱媒体としての流体(具体的には、液体または気体)が流れるようになっている。より詳細には、配管70の両端には流体の入口70aおよび出口70bがそれぞれ形成されており、入口70aから配管10の内部に入った流体は曲げ部分74で向きが変えられた後に金属繊維構造体80を通過し、その後に曲げ部分76で向きが変えられた後に出口70bから排出される。配管70は、金属繊維構造体80を収容する収容体として機能する。配管70を構成する金属は、図1および図2に示す配管10を構成する金属と同じ種類のものが用いられる。また、金属繊維構造体80を構成する金属繊維は、図1および図2に示す金属繊維構造体20を構成する金属繊維と同じ種類のものが用いられる。このように、金属繊維構造体80が金属繊維から形成されているため、金属繊維構造体80の内部には空隙が存在する。このことにより、配管70において流路72を流れる流体は、金属繊維構造体80の内部を通ることができるようになる。
【0035】
図6に示す熱交換器では、配管70の一対の曲げ部分74、76により金属繊維構造体80が所定の位置に維持されるようになっている。より詳細には、配管70に曲げ部分74が設けられていることにより、金属繊維構造体80は図6に示す位置から大きく右に移動することはない。また、配管70に曲げ部分76が設けられていることにより、金属繊維構造体80は図6に示す位置から大きく左に移動することはない。このように、曲げ部分74、76が配管70に設けられていることにより、図1および図2に示す熱交換器と比較して金属繊維構造体80が配管70の内部で大きく移動することはない。
【0036】
また、図6に示すように、配管70に収容されている金属繊維構造体80と配管70の内面との間の少なくとも一部には隙間が形成されている。すなわち、金属繊維構造体80は、配管70の内部でこの配管70の内面に結着されない状態で存在している。このことにより、配管70において流路72を流れる流体は、金属繊維構造体80と配管70の内面との間に形成された隙間を通ることができるようになる。また、配管70の内部で金属繊維構造体80は配管70の各曲げ部分74、76により所定の位置に維持されているが、それでも金属繊維構造体80と配管70の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されているため、金属繊維構造体80がわずかに移動する場合がある。しかしながら、金属繊維構造体80は金属繊維から構成されておりクッション性を有するため、配管70の内面が金属繊維構造体80により傷つけられてしまうことを抑制することができる。
【0037】
配管70に収容されている金属繊維構造体80と配管70の内面との間の隙間の大きさは10μm~500μmの範囲内の大きさであり、好ましくは30μm~300μmの範囲内の大きさであり、更に好ましくは50μm~200μmの範囲内の大きさである。配管70に収容されている金属繊維構造体80と配管70の内面との間の隙間の大きさは、配管70の内面に直交する方向における配管70と金属繊維構造体80との間の距離のことをいう。この隙間の大きさを10μm以上とすることにより、圧損が大きくなることを防止することができ、よって流体がこの隙間を通りにくくなることを防止することができる。一方、この隙間の大きさを500μm以下とすることにより、流体が抵抗なくこの隙間を流れることを防止することができ、よって熱交換性能を高めることができる。
【0038】
図6に示すような本実施の形態の熱交換器でも、図1および図2に示す熱交換器と同様に、収容体としての配管70に収容されている金属繊維構造体80と、配管70の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている。このため、配管70を流れる流体が接触する金属繊維構造体80の表面積が大きくなり、金属繊維構造体80による熱伝導率を高めることができる。また、配管70を流れる流体の温度の均一化を図ることができるようになる。また、金属繊維構造体80と、配管70の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、配管70を流れる流体に乱流が生じやすくなる。この場合には、配管70を流れる流体の滞留時間が長くなるため、伝熱効果を高めることができる。以上のように、金属繊維構造体80と、配管70の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、金属繊維構造体80による熱伝導率を高めることができるとともに、配管70を流れる流体の滞留時間を長くすることにより伝熱効果を高めることができるため、流体に対する熱伝導性を高めることができる。
【0039】
次に、本実施の形態による熱交換器の更に他の例について図7乃至図9を用いて説明する。
【0040】
図7乃至図9に示す熱交換器は、断面が円形である円筒形状の配管90と、配管90の内部に配置された略円盤形状の複数(図7等に示す例では5つ)の金属繊維構造体102、104と、各金属繊維構造体102、104を連結させる棒状の連結部材100とを備えている。この配管90の内部に形成される流路92を被伝熱媒体としての流体(具体的には、液体または気体)が流れるようになっている。より詳細には、配管90の両端には流体の入口90aおよび出口90bがそれぞれ形成されており、入口90aから配管90の内部に入った流体が流路92を通って出口90bから排出される。配管90は、各金属繊維構造体102、104を収容する収容体として機能する。配管90を構成する金属は、図1および図2に示す配管10を構成する金属と同じ種類のものが用いられる。
【0041】
棒状の連結部材100は、略円盤形状の各金属繊維構造体102、104の中心に形成された貫通穴(図示せず)を通るようになっており、各金属繊維構造体102、104は連結部材100に固定されている。具体的には、連結部材100は例えばステンレス、鉄、銅、アルミニウム、青銅、黄銅、ニッケルおよびクロム等からなる群から選択された金属から構成されている。そして、各金属繊維構造体102、104は連結部材100に結着されている。また、図8および図9に示すように、各金属繊維構造体102、104には複数(例えば、8つ)の貫通穴102a、104aが形成されており、配管90の流路92を流れる流体は各貫通穴102a、104aを通過することができるようになっている。また、連結部材100に固定される金属繊維構造体102、104に設けられている各貫通穴102a、104aの位相が異なっている。さらに、図7に示すようにこれらの金属繊維構造体102、104は交互に配置されている。このため、各金属繊維構造体102、104の各貫通穴102a、104aを流れる流体に乱流が生じやすくなる。各金属繊維構造体102、104を構成する金属繊維は、図1および図2に示す金属繊維構造体20を構成する金属繊維と同じ種類のものが用いられる。このように、各金属繊維構造体102、104が金属繊維から形成されているため、各金属繊維構造体102、104の内部には空隙が存在する。このことにより、配管90において流路92を流れる流体は、貫通穴102a、104aに加えて各金属繊維構造体102、104の内部を通ることができるようになる。
【0042】
図7乃至図9に示すように、配管90に収容されている各金属繊維構造体102、104と配管90の内面との間の少なくとも一部には隙間が形成されている。すなわち、各金属繊維構造体102、104は、配管90の内部でこの配管90の内面に結着されない状態で存在している。このため、各金属繊維構造体102、104および連結部材100の組合せ体は配管90の内部で移動自在となっている。このことにより、配管90において流路92を流れる流体は、各金属繊維構造体102、104と配管90の内面との間に形成された隙間を通ることができるようになる。また、各金属繊維構造体102、104および連結部材100の組合せ体は配管90の内部で移動した場合でも、各金属繊維構造体102、104は金属繊維から構成されておりクッション性を有するため、配管90の内面が各金属繊維構造体102、104により傷つけられてしまうことを抑制することができる。
【0043】
配管90に収容されている各金属繊維構造体102、104と配管90の内面との間の隙間の大きさは10μm~500μmの範囲内の大きさであり、好ましくは30μm~300μmの範囲内の大きさであり、更に好ましくは50μm~200μmの範囲内の大きさである。配管90に収容されている各金属繊維構造体102、104と配管90の内面との間の隙間の大きさは、配管90の内面に直交する方向における配管90と各金属繊維構造体102、104との間の距離のことをいう。この隙間の大きさを10μm以上とすることにより、圧損が大きくなることを防止することができ、よって流体がこの隙間を通りにくくなることを防止することができる。一方、この隙間の大きさを500μm以下とすることにより、流体が抵抗なくこの隙間を流れることを防止することができ、よって熱交換性能を高めることができる。
【0044】
図7乃至図9に示すような本実施の形態の熱交換器でも、図1および図2に示す熱交換器と同様に、収容体としての配管90に収容されている各金属繊維構造体102、104と、配管90の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている。このため、配管90を流れる流体が接触する各金属繊維構造体102、104の表面積が大きくなり、各金属繊維構造体102、104による熱伝導率を高めることができる。また、配管90を流れる流体の温度の均一化を図ることができるようになる。また、各金属繊維構造体102、104と、配管90の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、配管90を流れる流体に乱流が生じやすくなる。この場合には、配管90を流れる流体の滞留時間が長くなるため、伝熱効果を高めることができる。以上のように、各金属繊維構造体102、104と、配管90の内面との間の少なくとも一部に隙間が形成されている場合には、各金属繊維構造体102、104による熱伝導率を高めることができるとともに、配管90を流れる流体の滞留時間を長くすることにより伝熱効果を高めることができるため、流体に対する熱伝導性を高めることができる。
【0045】
また、図7乃至図9に示す熱交換器では、各金属繊維構造体102、104および連結部材100の組合せ体は配管90の内部で移動自在となっている。このため、配管90の流路92を流体が流れる際に乱流がより一層生じやすくなる。このことにより、配管90を流れる流体の滞留時間が更に長くなるため、伝熱効果をより一層高めることができる。
【0046】
また、図7乃至図9に示す熱交換器において、図示しない駆動手段によって棒状の連結部材100が回転させられるようになっていてもよい。このことにより、各金属繊維構造体102、104も連結部材100を中心として回転するようになるため、配管90の流路92を流れる流体に乱流がより一層生じやすくなる。また、配管90の流路92を流れる流体がポリマー液の場合は、各金属繊維構造体102、104を回転させることによりポリマー液の拡散を行うことができる。
【0047】
また、図7乃至図9に示す熱交換器において、各金属繊維構造体102、104が連結部材100に固定されるのではなく、連結部材100に対して各金属繊維構造体102、104が図7の左右方向にスライド自在となるよう各金属繊維構造体102、104が連結部材100により支持されるようになっていてもよい。また、この場合、連結部材100が配管90の内部で位置固定で設けられるようになっていてもよい。このような場合でも、連結部材100に対して各金属繊維構造体102、104がスライド自在となるため、配管90の流路92を流れる流体に乱流がより一層生じやすくなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9