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特許7386968高温ガスタービン部品を修復するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】高温ガスタービン部品を修復するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/34 20210101AFI20231117BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20231117BHJP
   B22F 5/04 20060101ALI20231117BHJP
   B22F 10/60 20210101ALI20231117BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231117BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20231117BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20231117BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20231117BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20231117BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20231117BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20231117BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B22F10/34
C22C19/05 C
B22F5/04
B22F10/60
B33Y10/00
B33Y80/00
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F02C7/00 D
F01D5/28
F01D9/02 101
C22C1/04 B
B23K35/30 340L
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022505528
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 US2019061182
(87)【国際公開番号】W WO2021021231
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/880,387
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/880,949
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】クルカルニ,アナンド エー.
(72)【発明者】
【氏名】オズベイサル,カジム
(72)【発明者】
【氏名】カメル,アーメド
(72)【発明者】
【氏名】ストゥット,カイル アイ.
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-215781(JP,A)
【文献】特開平09-286677(JP,A)
【文献】特表2016-519733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00
B22F 5/04
B33Y 10/00
B33Y 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を付加製造又は修復する方法であって、
粉末基材とバインダとを混合して混合物を生成することと、
前記混合物をガスタービン部品の所望の形状に形成することと、
前記所望の形状から前記バインダを除去して骨格を生成することであって、前記骨格の体積の80パーセントから95パーセントまでが前記基材であることと、
最終的な部品を定めるために、前記骨格に融点降下剤を浸透させることであって、前記最終的な部品は、体積当たり1パーセント未満の多孔率を有すること、
を含み、
前記部品の材質は、ニッケル基合金であり、かつ
前記融点降下剤は、ホウ素(B)、ケイ素(Si)及びリン(P)を含まないように構成される
方法。
【請求項2】
記融点降下剤は、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)を含有し、並びに、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の少なくとも一つを含有するように構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望の形状から前記バインダを除去して骨格を生成するステップでは、前記所望の形状を加熱して、前記基材を溶融させることなく、前記バインダを燃焼させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記融点降下剤が、Ni及びCrを含有し、並びに、Ti、Zr及びHfの少なくとも1つを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記融点降下剤は、レニウム(Re)及びルチウム(Ru)の少なくとも1つを含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記融点降下剤が、6.5%のCr、11%のZr、7.5%のTi、及び残りのNiを含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記融点降下剤が、5.0%のCr、10%のHf、10%のZr、及び残りのNiを含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記融点降下剤が、17%のCr、22%のTi、及び残りのNiを含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記部品が4%から6%までの間のチタンを有するように、前記融点降下剤は選択された量のTiを含有する、請求項1、及び3からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所望の形状は、タービン・ブレードの一部又はタービン・ベーンの一部を交換するように選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法に従って付加製造又は修復されるガスタービン部品の部品であって、
基材から形成され、部品の最終的な形状を画定する骨格であって、5パーセントから20パーセントまでの間の多孔率と孔の量とを有する前記骨格と、
前記骨格中に含められる融点降下剤であって、前記融点降下剤によって前記骨格内の孔が充填されて、体積当たり1パーセント未満の多孔率を有する最終的な部品を画定する前記融点降下剤と、
を含、部品。
【請求項12】
記融点降下剤は、ニッケル(Ni)及びクロム(Cr)を含有し、並びに、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)の少なくとも一つを含有するように構成される、請求項11に記載の部品。
【請求項13】
前記融点降下剤が、Ni及びCrを含有し、並びに、Ti、Zr及びHfの少なくとも1つを含有する、請求項11に記載の部品。
【請求項14】
前記融点降下剤が、6.5%のCr、11%のZr、7.5%のTi、及び残りのNiを含有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の部品。
【請求項15】
前記融点降下剤が、5.0%のCr、10%のHf、10%のZr、及び残りのNiを含有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の部品。
【請求項16】
前記融点降下剤が、17%のCr、22%のTi、及び残りのNiを含有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高温のガスタービン部品を修復するためのシステム及び方法に関し、より具体的には、ガスタービンのブレード及びベーンを修復するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガンマプライムの含有量の高いニッケル基のガスタービン部品の付加製造(AM:additive manufacture)では、それに関連する問題のため、その工程を大規模な製造又は修復に適用することが適当でなかった。特に、合金(CM)247を用いて部品を付加製造又は修復する場合、しばしば、粒界の溶融や亀裂の発生がもたらされていた。また、これに替えて、亀裂を発生させにくい別のより劣ったニッケル基合金を用いて部品を修復する場合、部品の性能の劣化がもたらされていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
従って、部品を形成する方法を提供するが、これは、粉末基材とバインダとを混合して混合物を生成することと;上記基材を溶融させることなく上記混合物を所定の形状に形成することと;上記所定の形状から上記バインダを除去して骨格を生成することであって、上記骨格の体積の80パーセントから95パーセントまでが上記基材であることと;かつ、最終的な部品を定めるために、上記骨格に融点降下剤を浸透させることであって、上記最終的な部品は、体積当たり1パーセント未満の多孔率を有すること、とを含む。
【0004】
また、別の構成として、部品を提供するが、これは、基材から形成され、部品の最終的な形状を画定する骨格であって、5パーセントから20パーセントまでの間の多孔率と孔の量とを有する上記骨格と;上記骨格中に含められる融点降下剤であって、上記融点降下剤によって上記骨格内の孔が充填されて、体積当たり1パーセント未満の多孔率を有する最終的な部品を画定する上記融点降下剤と、を含む。
【0005】
以上の説明は、当業者が以下に記載の詳細な説明を良好に理解できるようにするため、本開示内容の技術的特徴について比較的広く概説したものである。特許請求の範囲の主題を形成する、本開示内容のさらなる特徴及び利点については、後述されている。当業者は、本開示内容の同一の目的を成し遂げる上で、構成を修正したり、他の構成を設計するための基礎として、本明細書で開示される技術思想と特定の実施形態とを利用可能なことを理解できるであろう。当業者は、そのような同等又は均等の構成は、その最も広い形態で、本開示内容の技術思想及び範囲から逸脱しないことを理解できるであろう。
【0006】
後述の「発明を実施するための形態」の理解のため、本明細書では、所定の単語及び語句について様々な定義がなされているが、当業者であれば、そのような定義は、多くの場合で(ほとんどではないとしても)、従前の使用に適用可能なだけでなく、係る定義された単語及び語句の将来的な使用にも適用可能なことを理解できるであろう。これらの用語のうちの一部は、多種多様な実施形態を含むことができるが、添付の特許請求の範囲では、これらの用語を特定の実施形態について明示的に限定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】図lは、ガスタービン・エンジンの長手方向の断面図である。
図2図2は、図1に例示したガスタービン・エンジンに含まれるベーンの斜視図である。
図3図3は、図2に例示したタービン・ベーンの修復に用いられるインサート片の斜視図である。
図4図4は、図2に例示したベーンに対して図3に例示したインサート片を取り付けたときの斜視図である。
図5図5は、ニア・ネット・シェイプへと3D印刷された部品の斜視図である。
図6図6は、バインダを除去し、焼結した後の部品の骨格の斜視図である。
図7図7は、融点降下剤を浸透中の部品の骨格の斜視図である。
図8図8は、浸透後の完成したニア・ネット・シェイプ部品の斜視図である。
図9図9は、ニア・ネット・シェイプへと3D印刷された他の部品の斜視図である。
図10図10は、図9に例示した部品の骨格の、バインダを除去し、焼結した後の斜視図である。
図11図11は、融点降下剤を浸透中の図9に例示した部品の骨格の斜視図である。
図12図12は、浸透後、ゲート除去中の完成したニア・ネット・シェイプ部品の斜視図である。
図13図13は、前縁の修復プロセスで使用される取付け部PSPの斜視図である。
図14図14は、図13に例示した取付け部PSPに取り付けられた前縁の交換用部品の斜視図である。
図15図15は、チップ腐食及びチップ割れの形態で作動上の損傷を有するガスタービン・ブレードの部分斜視図である。
図16図16は、ブレードの損傷部を取り除いた、図15に例示したブレードの斜視図である。
図17図17は、図16に例示した破損したブレードの修復用の交換用チップの斜視図である。
図18図18は、図16に例示したブレード・チップの修復に用いられる取付け部PSPの斜視図である。
図19図19は、図16に例示した破損したブレード、図18に例示した取付け部PSP、及び図17に例示した交換用チップの斜視図である。
図20図20は、製造プロセス中の「グリーン・フォーム」の、交換用チップの斜視図である。
図21図21は、製造支持部材から焼結除去した後の図20に例示した交換用チップの斜視図である。
図22図22は、図16に例示したブレードに取り付けられた、図21に例示した交換用チップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について詳細に説明するにあたり、本明細書に係る発明は、以下に記載の説明又は添付された図面に記された構造の詳細及び部品の配置に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態でも適用可能であり、かつ様々な仕方で実装又は実施することができる。本明細書で使用される語法及び用語は、説明の目的上のものであり、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係るシステム及び方法の様々な技術思想について記載する。なお、同様の構成要素については、同様の参照番号が、一貫的に用いられるものとする。添付された図面と、本開示内容の要点を説明するための様々な実施形態とは、説明上のものであり、本発明を限定するものではないことを理解されたい。当業者であれば、本開示内容の要点は、任意の適当に配置された装置を用いて実装可能なことを理解できるであろう。なお、所定のシステムの構成要素を用いて実施されるものとして説明される機能は、複数の構成要素を用いても実施できることを理解されたい。同様に、例えば、ある機能を実行するために構成された構成要素は、複数の構成要素からも実行可能である。以下、例示的で、非限定的な実施形態を参照して、本開示内容の複数の新規な技術思想について説明する。
【0010】
本明細書で使用される単語又は語句は、広義に解釈可能なことを理解されたい。ただし、幾つかの実施例において明示的に限定されている場合は除くものとする。例えば、「含む(including)」、「有する(having)」、及び「備える(comprising)」等の語句とそれらの派生語は、非限定的で、包含的に意味するものとする。(英文の冠詞の)「a」、「an」及び「the」の単数形は、複数形を包含することが想定されている。ただし、文脈から明示的に限定されている場合は除くものとする。さらに、本明細書で使用される「及び/又は」の語句は、関連して列挙された項目のうちの1つ又は複数の、任意で、かつすべての可能な組合せを包含的に指すものとする。「又は」の語句は、包括的であり、「及び/又は」を意味することができる。ただし、文脈から明示的に限定されている場合は除くものとする。また、「関連する」、「それに関する」、及びそれらの派生語とは、「含む」、「の中に含まれる」、「と相互接続される」、「を含有する」、「の中に収容される」、「と接続される」、「と結合される」、を意味することができ;又は、「と連通可能であり」、「と協働し」、「をとじ込む」、「と並置される」、「と近接する」、「とつなげられる」、を意味することができ;又は、「と関連する」、「を有する」、「の特性を有する」等を意味することができる。さらに、本明細書では、ある実施形態に関して記載された、任意の特徴、方法、ステップ、部品等は、他の実施形態においても等しく適用可能である。ただし、それに反する特定の記述がある場合はその限りではない。
【0011】
さらに、本明細書中で用いられる「第一の」、「第二の」、「第三の」等の用語は、様々な要素、情報、機能又は動作を指すために使用され得るが、これらの要素、情報、機能又は動作は、これらの用語によって限定されないことを理解されたい。これらの序数に関する形容詞は、異なる要素、情報、機能又は動作を互いに区別するために用いられている。例えば、本開示内容の範囲から逸脱することなく、第一の要素、情報、機能又は動作は、第二の要素、情報、機能又は動作として呼ぶことができ、同様に、第二の要素、情報、機能又は動作は、第一の要素、情報、機能又は動作と呼ぶことができるものとする。
【0012】
加えて、「と隣接する」等の用語は、ある要素が、他の要素とは接触していないが、近くにあること;又は、ある要素が、他の要素と接触していることを意味し得る。ただし、文脈から明示的に限定されている場合は除くものとする。さらに、「に基づく」等の用語は、「少なくとも部分的に、・・・に基づく」ことを意味し得る。ただし、そうでないことが明示的に記載されている場合は除くものとする。また、「約」、「主な(実質的に)」、又は同様の用語は、その大きさについて、通常の産業の製造公差内での値の変動を意味し得る。ただし、適用可能な業界の標準がない場合、その用語は、値の20パーセントの変動を意味し得る。ただし、そうでないことが説明されている場合は除くものとする。
【0013】
図1を参照すると、圧縮部15、燃焼部20及びタービン部25を含む、ガスタービン・エンジン又は燃焼タービン・エンジン10が例示されている。その動作中、大気の空気が圧縮部15内に吸入されて、圧縮される。圧縮された空気の一部は、燃焼部20内で、燃料と混合されて、燃焼されて、高温の燃焼生成物を生成する。その燃焼生成物は、残りの圧縮空気と混合されて排気ガスを形成した後、タービン部25を通過する。排気ガスは、タービン部25内で膨張されて、圧縮部15及びエンジン10と関連付けられた任意の補助装置、例えば電気発電機(ジェネレータ)に動力を供給するためのトルクを発生させる。排気ガスは、高温(1000度F以上又は538度C以上)でタービン部25内に流入するため、タービン・ブレード30及びベーンは高温に曝される。そのため、タービン・ブレード30及びベーンは、係る温度と適合可能な材料から製造される必要がある。なお、「ブレード」及び「ベーン」という用語は、交換可能に解釈できることを理解されたい。典型的には、「ブレード」という用語は、回転型のエア・フォイル(翼)を指し、「ベーン」は、静止型のエア・フォイル(翼)を指す。ただし、本発明は、それらの定義に限定されない。何故なら、ブレード及びベーンの両方に対して、ほとんどの修復又は処理が等しく適用可能なためである。
【0014】
構造の一例を挙げると、ベーン30は、ニッケル基超合金を用いて製造され、例えば、合金(CM)247を用いて製造される。図2を参照すると、図1に例示したエンジン10のタービン部25にある静止型のベーン30の一部が例示されている。各ベーン30は、前縁35と、後縁40と、吸入側45と、圧力側50とを有する。隣接するベーン30は、互いに協働して、互いの間に流路を画定する。排気ガスは、その流路を通過し、所望に応じて方向付け及び加速されて、排気ガスの効率的な膨張を提供し、そしてロータ53にトルクを提供して、さらに補助装置を駆動する。
【0015】
ベーン30は、動作中、損傷することがある。係る損傷は、異物の衝撃、高温での動作、疲労、クリープ、酸化等によって引き起こされることがある。損傷を受けやすい領域の一つとして、ベーン30の前縁35がある。図2を参照すると、前縁35の一部分55が欠けたベーン30の一例が示されている。その望ましい修復には、除去された部分55を、基材(母材)とぴったりと嵌合(適合)する材料で交換することが含まれる。しかし、ベーン30の製造に用いられるニッケル基超合金は、溶接又は典型的な付加製造の修復プロセスには不適合である。
【0016】
図3及び図4を参照すると、図2に例示したベーン30の前縁35に適用可能な修復について例示されている。図3では、前縁インサート60の形態で、挿入片(インサート片)が例示されており、図4では、その挿入片60が、ベーン30内の前縁に位置決めされて、取り付けられることが例示されている。挿入片60は、適合する基材の主な(実質的な)部分を有し、そして、典型的には、ろう付けプロセス(又はろう接工程)を用いて取り付けられる。
【0017】
図5乃至図12を参照すると、図3に例示した挿入片60を製造するためのプロセス又は所望の任意の他の修復部品を製造するためのプロセスが例示されている。図5乃至図8では、一般的な立方体形状の物体65についてのプロセスが例示されている。一方、図9乃至図12では、図3に例示した前縁の挿入片60についての同様のプロセスが例示されている。
【0018】
上記プロセスは、ガンマプライム含有量の高いニッケル粉末66(基材)をバインダ(結合剤)67と混合させて、3D印刷することで開始されるか、又は所望の部品70、75のグリーン・フォーム(未熟な形態)をニア・ネット・シェイプ(最終形状に近いもの)へと付加製造することで開始される。次に、そのグリーン・フォーム部品70、75を乾燥させる。図5及び図9では、このステップが例示されている。印刷又は付加製造のプロセス中、その基材は溶融されない。本明細書で用いられる「ニア・ネット・シェイプ」という用語は、部品が、さらなる機械加工を行うことなく、製造プロセスの特定の段階で、部品の所望の製造パラメータ及び許容範囲内におさまることを意味する。しかし、最終的な部品について所望の表面仕上げ又はテクスチャを得るために、何らかの表面研削又は研磨が必要とされてもよい。さらに、部品に対して追加の層又はコーティング(被覆)を適用して、部品を完成させて、使用に供せられるようにしてもよい。さらに、図9乃至図12に例示されているように、グリーン・フォーム部品75は、ゲート80、又は支持構造の特徴を含むことができ、その特徴は、製造プロセス中に使用された後、除去されてもよい。これらの特徴を含むグリーン・フォーム部品75は、追加の製造ステップが実行される前に、追加の機械加工又は処理が必要とされないニア・ネット・シェイプとみなすことができ、不要な特徴(ゲート80)の除去だけが必要とされる。
【0019】
次のステップでは、炉又は他の加熱装置内にグリーン・フォーム部品70、75を配置する。グリーン・フォーム部品70、75は、バインダ67を燃焼又は除去するために加熱される。残りの材料によって骨格85、90が画定されるが、それは、基材66と、バインダ材料67によって占められていた隙間又は空の領域68とから構成される。図6では、骨格85は立方体形状を有する。図10では、骨格90は中間部品を画定しているが、それは、最終的には前縁インサート60となり、さらにゲート80を含む。好適な配置では、加熱又は焼結工程によって基材66は溶融されず、骨格85、90の体積の少なくとも80パーセントを基材66として残存させて、空の空間68として骨格85、90の20パーセント以下を残存させる。このことは、本明細書では、20パーセント以下の多孔度として参照される。使用されるバインダ67の量及び焼結温度は、20パーセント未満の多孔度、好ましくは5パーセントから20パーセントまでの多孔度が得られるように選ばれる。
【0020】
図7及び図11に示すように、骨格85、90及びゲート80には、融点降下剤(又は融点抑制剤)100(これは、ろう付け材料と呼ばれることもある)が浸透される。融点降下剤100の好ましい組成は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)のうちの少なくとも1つを含有し、残りはクロム(Cr)及びニッケル(Ni)を含有する。融点降下剤100として、ホウ素(B)、ケイ素(Si)又はリン(P)を部分的に又は全体的に使用することは回避されているが、その理由は、これらの材料によって完成部品60、65の材料特性に悪影響が及ぼされることを防ぐためである。
【0021】
所望の浸透を得るために、液体の融点降下剤100が骨格85、90と接触することを確保するように、融点降下剤100が溶融される。骨格85、90内の多孔性によって生じる毛管作用によって、液体融点降下剤100が骨格85、90の孔(細孔又は小孔)68内に引っ張られて、99パーセントが材料で充填された(つまり、1パーセントの多孔性で)完成部品60、65を得ることができる。
【0022】
融点降下剤100の具体的な組成は、少なくとも部分的には、基材中に含まれるチタンの量に基づいて選択される。例えば、基材中に3.5重量%以上のチタンを含む構造では、所望の融点降下剤100は、Hf及びZrの少なくとも一方を含有し、残りはNi及びCrを含有する。基材中のTiが1.0%以下の構造では、好適な組成は、Tiを含有し、残りはNi及びCrを含有する。基材中でTiの量が1.0パーセントから3.5パーセントまでの間の場合には、所望の組成は、Zr及びTiの少なくとも1つを含有し、残りはNi及びCrを含有する。Ti、Zr又はHfの量は、完成したニッケル基の部品が6.0パーセント未満のTiを含むように選ばれる(他の組成は5.0パーセント未満であり、さらに他のものは4.0パーセント未満である)。
【0023】
浸透が完了すると、部品60、65を完成させるために、図9乃至図12に例示したゲート80又は支持構造等の製造上必要なために追加された特徴部が除去される。図4に例示したように、部品60、65の設置前に、任意の追加的な研削、研磨、又は層の追加等を行うことができる。好適な構造では、浸透の後、部品60、65は1パーセント未満の多孔度を有する。
【0024】
本明細書に記載の処理は、基材粉末66を溶融しない。むしろ、粉末66はバインダ67と混合されて、レーザー源又は他のエネルギー源を用いて3D印刷されて、乾燥される。バインダ67は、低温(例えば、500度Cより下の温度)で燃焼される。残りの基材66は、焼結された材料中に最大で20パーセントの多孔度が残存することを保証する焼結温度まで加熱される。
【0025】
ニッケル基合金では、好適には、用いられるチタンの量は、機械的性質の低下等を減少させるため、凡そ6パーセント(即ち、4パーセントから8パーセントまでの間)に制限される。この制限のため、骨格85、90の多孔度のレベルは、少なくとも部分的には、基材及びろう付け材料100(融点降下剤として呼ばれることもある)中のチタンの量によって決定されるが、目標として、最終的な部品60、65中のチタンが約6パーセントとする。例えば、1つの構造中で、基材又は骨格85、90はチタンを含まなくてもよい。22%のチタンを含有するろう付け材料が用いられる場合には、骨格85、90の全多孔度は約30%に制限され、これにより、最終的な部品60、65は約6.6%のチタンを含有する。
【0026】
別の例では、骨格85、90は、1%のチタンを含む。この場合、22%のチタンを含む同じろう付け材料を用いると、骨格85、90は20%未満の多孔度に制限されるため、最終的な部品60、65は、約5.2%のチタンを含有する。
【0027】
さらに別の例では、骨格85、90は、2%のチタンを含む。この場合、22%のチタンを含む同じろう付け材料を用いると、骨格85、90は15%未満の多孔度に制限されるため、最終的な部品60、65は、約6.0%のチタンを含有する。
【0028】
上記のように、ニッケル基のガスタービン部品、具体的には合金(CM)247の部品は、部品の融解を含む方法では修復又は構築が困難であるが、その理由は、粒界融解(初期融解)温度が溶接温度に対して低いため、しばしば修復プロセス中に溶接修復によって亀裂(クラック)が生じるためである。
【0029】
図2乃至図12を参照して上述したように、溶接修復の替わりの一つでは、まず、ベーン30の損傷部用の交換用部品60、65(予め焼結したプリフォーム又は予備成形品(PSP:pre-sintered preform))を構築し、次に、この新しい交換用部品60、65を修復対象の部品(例えばベーン30)に接合させるが、その際、最高温度が粒界融解温度以下で抑えられることを保証するプロセスを用いる。この修復をさらに改善するために、修復対象の部品の損傷部を交換する際、修復対象の部品の基材と比べてより高い耐酸化性を提供可能な機能材料を含む交換用部品60、65を用いてもよい。
【0030】
損傷部55は除去されると、ぴたりと嵌合する(密着型)交換用部品105と交換されるが、これは、同様又はより良好な酸化特性及び破断特性を提供する、付加製造(AM)材料または予め焼結されたプリフォーム(PSP)を用いて製造される。交換用部品105が、図2乃至図4、又は図9乃至図12で例示したような前縁35の交換の場合には、付加製造された交換用部品105は、相当な破断能力を有する柱状粒子を含むことができる。
【0031】
高い耐酸化性材料を用いて前縁35の修復を行うためには、まず、ベーン30の前縁35の損傷部55を除去する。除去された損傷部55は、取り付けられる交換用部品105の大きさ及び構成を決定するために測定される。次に、交換用部品105は、付加製造プロセスを用いて製造され又はPSPとして製造されるが、例えば、図2乃至図12を参照して説明したプロセスを用いて形成されたPSPとして製造される。交換用部品105の耐酸化性を高めるために、その製造に用いられる材料は、付加製造プロセスを用いる場合には、8パーセント(8%)までのアルミニウムを含有する。さらに、交換用部品105と修復対象のベーン30又は他の部品との間の結合を向上又は生成可能な交換用部品105の一部として、ピン、突起、ノッチ、開口部等の取り付け構造110を形成してもよい。
【0032】
交換用部品105をPSPとして製造する場合、好適な材料は、上述したように、最大で80パーセント(80%)までの超合金(好適には、修復対象のベーン30に適合するもの)、最大で8パーセント(8%)までのアルミニウム、及び最大で30パーセント(30%)までのTi、Zr及びHfを含むろう付け材料を含有する。付加製造された交換用部品105と同様に、PSP交換用部品105は、上述の取り付け構造110を含むことができる。図9及び図10には、整合用ピン111の形態での取付け構造110が例示されている。ピン111は、交換用部品105が取り付けられるブレード30内に形成された開口部と整列されて、係合される。見やすさのため、ピン111は、図9及び図10にのみ例示されているが、好適な構成では、ピン111は、交換用部品105の一部として形成されて、製造プロセスの各ステップに存在する。他の構成では、ピン111は別個の部品であって、その製造中の任意の時点で交換用部品105に取り付けられる。取り付けは、任意の適当な取り付け手段を用いて行うことができ、例えば、接着剤、溶接、ろう付けなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0033】
PSP交換用部品105を製造するために用いられる材料は、ろう付け材料の大部分を基材の粉末と反応させるため、1時間以上、ろう付け溶融温度と比べて少なくとも50度C高い温度で維持される。これによって、交換用部品105をベーン30に対して取り付けるろう付け作業中の再溶融を防ぐことができる。
【0034】
図13に例示する取付け部(アタッチメント)PSP115は、PSP交換用部品105に関して上述したものと同様の材料の組合せを用いて形成されているが、ただし、最大で30パーセント(30%)までのろう付け材料ではなく、少なくとも30パーセント(30%)のろう付け材料を含有する。取付け部PSP115は、好適には、250ミクロン以下の厚さを有し、上述のPSP交換用部品105と同様の温度で製造されるが、ただし、より短い時間(15分未満)でその温度で保持される。従って、取付け部PSP115は、図14に例示した交換用部品105を修復対象のベーン30に対して接合するために、それがどのように製造されたのか(PSP又は付加製造)にかかわらず、十分な未反応のろう付け材料を含む。
【0035】
交換用部品105は、十分な機械的性質及び耐酸化性を有するが、それは、調整された組成及びNi-Cr-(Ti、Zr、Hf)ろう付け組成に基づく。加えて、付加製造された交換部品105を用いる場合には、柱状の結晶粒により、等軸の結晶粒の構造の母材と比べてより顕著な破断能力を提供できる。
【0036】
以下に説明するように、これら処理及び手順は、ベーン30又はブレードのチップ120等の他の部品に適用することができる。
【0037】
例えば、図15乃至図19には上述したものと同様のプロセスが例示されているが、ただし、ニッケル基のガスタービン・ベーン30又はブレード、特に、合金247又は同様の材料から形成されたベーン30又はブレードのチップ120の修復に関する。
【0038】
図15にはブレード30が概略的に例示されているが、これは、ブレード30内で下方に延びるチップ部亀裂125を有している。また、ブレードのチップ120は酸化損傷部130を含むが、これはタービン・ブレード30の動作に続いて現れる一般的なものでもよい。ブレード30を修復するために、まず、チップ120の損傷部が除去される。図15の例では、損傷部135の除去では、酸化損傷部130が除去されているが、亀裂125は完全に除去されていない。幾つかの例では、除去されるチップ120の量を最小にすることが望ましいため、除去後に亀裂125(単数又は複数)の一部が残存し得る。図16を参照すると、損傷部135の除去後に残存する亀裂125は、機械加工プロセス、研削、又は他の適切な材料の除去プロセスを用いて除去され得る。
【0039】
損傷部135の除去によって生じた空間を埋めるため、ぴったりと嵌合するように交換用チップ140が形成される。交換用チップ140は、任意の亀裂(クラック)125の除去中に生じた任意の空間を充填してもよい。あるいは、クラック125の除去中に開口された空間は、交換用チップ140の取り付けプロセス中に粉末ろう付け材料を用いて充填されてもよい。交換用チップ140は、付加製造(AM)プロセスを用いて形成することができ、又は予め焼結されたプリフォーム(PSP)を用いて形成することができ、その際、除去された部分135と比べて同様又はより良好な酸化特性及び破壊特性を提供することができる。
【0040】
交換用チップ140は、AMプロセスを用いて製造される場合には、好ましくは、ブレード30の基材と同様の材料から構成され、8パーセント(8%)までのアルミニウムが追加されて、優れた耐酸化性を提供可能にする。加えて、図17に例示したピン145等の取り付け構造110を用いて、交換用チップ140と、修復対象のブレード30の残部との間の機械的接続を向上することができる。勿論、取り付け構造110として、突出部、開口部、ボス等の他の特徴を使用することができる。図17のピン145は、修復対象のブレード30の残部に存在するか、又は対応して形成された開口内に受け入れられる。
【0041】
AM交換用チップ140の場所にPSPが用いられる構成では、好適には、材料は、上述のように、80パーセント(80%)までの超合金(修復対象のブレード30の基材と適合するもの)、8パーセント(8%)までのアルミニウム、及び30パーセント(30%)までのTi、Zr及びHfを含むろう付け材料を用いて構成される。
【0042】
PSP交換用チップ140を製造するために用いられる材料は、ろう付け材料の大部分を基材粉末と反応させるため、ろう付け材料の溶融温度より少なくとも50度C高い温度で1時間以上維持される。これによって、交換用チップ140を修復対象のブレード30に対して取り付けるろう付け作業中の再溶融が防がれる。
【0043】
図18に例示したチップ取付け部PSP150は、PSP交換用チップ140に関して上述したものと同様の材料の組み合わせから形成されるが、ただし、30パーセント(30%)までのろう付け材料ではなく、少なくとも30パーセント(30%)のろう付け材料を含有する。チップ取付け部PSP150は、好適には、250ミクロン以下の厚さを有し、上述のPSP交換用チップ140と同様の温度で製造されるが、ただし、より短い時間(15分未満)の間でその温度で維持される。従って、チップ取付け部PSP150は、図19に例示したように、修復対象のブレード30に対して交換用チップ140を接合可能にするために十分な未反応のろう付け材料を含むが、そのことは、交換用チップ140がどのように製造されるか(PSP又は付加製造)にかかわらない。
【0044】
交換用チップ140は、調整された組成及びNi-Cr-(Ti、Zr、Hf)のろう付け組成のため、十分な機械的性質及び耐酸化性を有する。
【0045】
上述のように、ガスタービン部品は様々な局所的な条件下で動作されるので、局所的な損傷が生じ得る。このことは、様々な部品の条件(例えば、温度、圧力、流体特性等)及びエンジン条件に起因し得る。
【0046】
局所的な動作条件の例の一つは、ある列で一つのタービン・ブレード155で起こり得るが、そこでは、ブレード155上の局所的な問題によって、ブレード155の前縁160及びブレード155のチップ(先端)165を含む複数の領域に損傷を生じさせることがある。図22では、ブレード155の前縁160及びチップ165が例示されているが、ブレード・チップ165での亀裂及び/又は酸化による損傷を修復するために設けられた交換用チップ170も例示されている。
【0047】
損傷の一例では、第一段のブレード155の前縁160で生じるとともに、一連の冷却用開口175に隣接してセラミック被覆(コーティング)が接着する他のブレードでも生じる。被覆が剥落する場合、しばしば前縁の焼損又は損失が観察され得る。損傷が発生可能な他の領域には、ブレード155のチップ165があるが、そこでは、ブレード155は、リング部又はブレード155の半径方向外側の他の部品と摩擦する(擦れ)ことが起こり得る。また、ブレード155のチップ165では重度の酸化が生じ得るが、冷却用開口175、又は擦れ又は酸化等の他の要因によって生じた損傷から亀裂又はチップ亀裂が形成されて、広がることがある。
【0048】
上述のように、ブレード又はベーンのチップ165の修復は、ブレード・チップ165の一部の除去と、その後の交換用チップ170の交換とを含むことができる。同様の修復をブレード又はベーンの前縁160に対して行うことができる。
【0049】
付加製造は、交換用部品又は交換用チップ170の製造に基づくことができるが、その際、ろう付け処理及び特別なろう付け材料によって、修復されたベーン又はブレード155の動作を向上することができる。
【0050】
交換用部品又は交換用チップ170の製造に良好に適合する付加製造プロセスの好適な例の一つでは、原子拡散が用いられる。図20乃至図22では、交換用チップ170を形成するために原子拡散を用いてブレードのチップ165を修復するプロセスが例示されている。当業者であれば、同様のプロセスが、ブレード155又はベーンの前縁160の修復に適用できるとともに、本明細書では論じられていない他の部品に対しても適用できることを理解できるであろう。
【0051】
図20を参照すると、原子拡散は、迅速な3D形状の構築のために、結合剤(binding agents)及び金属粉末を用いる。金属粉末は、概して、修復対象の部品(即ち、ブレード155)に用いられる材料(例えば、合金(CM)247)とぴったりと嵌合するように選択される。金属粉末及びポリマー結合剤は混合されて、次いで所望の形状に形成されて、最終的に交換用部品又はチップ170となる。この準備部品185は、「グリーン・フォーム」として参照され得る。次いで、「グリーン・フォーム」部品185は加熱されて、高温の焼結操作で焼結されて結合剤を除去して、粉末粒子を機械的/冶金学的に結合させる。この焼結温度は、粉末金属粒子を完全に溶融させることなく、粉末金属の所望の機械的/冶金学的な結合を提供しながら、結合剤を完全に除去するように選択される。
【0052】
グリーン・フォームの部品185を形成する方法の一つとして、3D印刷技術がある。所望の粉末金属及びバインダを含むワイヤ供給原料を用意する。最終的な交換用チップ170又は交換部が所望の材料特性を得るように、ユーザは、必要に応じて、材料の化学的性質を組み合わせたり、あるいは、化学的性質を調整することができる。さらに、交換用チップ170内の異なる位置で異なる特性を得るために、交換用チップ170の形成中に異なる時間で異なる組成を用いることができる。例えば、一つの構造では、第一の層又は界面層を想定した組成では、所望の基材とともにろう付け材料を、ワイヤ供給原料中に一体化させて含むことができる。
【0053】
交換用チップ170又は他の部品を製造するため、第一の層又は界面層は、支持構造190上に堆積されてもよく、あるいは支持構造190とは独立して形成されてもよい。図20で例示した第一の表面は、修復対象のブレード155に対して交換用チップ170を取り付けるため、修復対象の部品(即ち、ブレード155)に対して当接する又はろう付けされる表面であることが意図されている。追加の層が、同じ材料を用いて第一の層の上に形成されてもよく、又は、特定の交換用部品用に必要に応じて別の材料が用いられてもよい。
【0054】
例えば、供給原料は、第二の材料に変更できるが、それは、ろう付け材料を含まず、むしろブレード155又は修復対象の他の部品の基材とより密接に適合することができるものでもよい。上述のように、基材の性能よりも交換用チップ170又は他の部品の性能を向上させるため、任意の材料を用いることができる。このプロセスでは、これらの材料のいずれも同様に用いることができる。例えば、耐酸化性を高めるため、8%までのアルミニウムを用いることができる。上述のように、粉末材料を溶融させないように、焼結プロセスが構成される。このプロセスは非溶融プロセスであるため、化学的性質の変動は想定されていない。
【0055】
引き続き図20を参照すると、金属粉末は、バインダ(例えば、ポリマー)と共に押し出されて、ワイヤ供給原料を生成し、次いで、これは支持構造190上に堆積される。セラミック中間層195は、堆積された材料と支持構造190との間に配置されて、完成された交換用チップ170を支持構造190から除去することを助けてもよい。グリーン構造の洗浄工程によりポリマー結合剤が除去されて、焼結によって高密度化が行われる。典型的には、96パーセントを超える密度を達成できるが、このことは、固体段階の拡散によって高密度化が達成されるため、部品の大きさ及び対応する壁厚に依存する。図21には、このプロセスを用いて形成されて、焼結されて、支持構造から除去された後の交換用チップ170が例示されている。
【0056】
この方法は、層ベースのAM技法の等方性を用いず、グリーン・フォーム部品185の製造の速度と、及び非常に低い粉末廃棄物のため、他のAM技法と比べてコストを顕著に低減できる。加えて、上述のように、この付加製造プロセスは、前縁交換又は他の部品を含む、交換用チップ170以外の部品を形成するために用いることができ、また取付け構造110等の高度の特徴を含むことができる。
【0057】
このアプローチのさらなる利点として、より良好な強度、耐酸化性、及び被覆接着性を有する他の耐高温性材料(例えば、酸化物分散強化(ODS)又は高度単結晶(CMSX8/ReneN5/PWA1484))を用いて、部品を製造することができる。
【0058】
まとめると、図20乃至図22では、原子拡散処理を用いた、様々な製造段階での交換用チップ170が例示されている。修復対象のブレード155のチップ165の損傷部を除去した後、交換用チップ170を製造用の大きさに合わせる。多くの場合、支持構造190が必要とされるが、それは交換用チップ170をその上に形成するために支持の基部を画定するためである。必須ではないが、支持構造190が用いられる状況では、セラミック中間層195を最初に適用して、完成した交換用チップ170を支持構造190から容易に分離することを助けてもよい。
【0059】
グリーン・フォーム部品185は、次に、適切な構成の供給原料を使用して印刷(3D印刷)される。第一の層、又は最初の幾つかの層に用いられる供給原料は、一部が基材、一部がバインダ、及び一部がろう付け材料であって、最終的に交換用チップ170をブレード155に取り付ける際に用いられる。これら初期層が印刷された後、その供給原料は、他の供給原料に切り替えることができるが、それは、所望のベース金属化学物質(即ち、ブレード155にぴったりと適合する化学物質)と、しばしばポリマーの形態であるバインダとを含む。上述のように、後続の供給原料の化学的性質は、耐酸化性等の優れた材料特性を提供するため、改善された化学的構成を提供できる。
【0060】
3D印刷プロセスが完了すると、グリーン・フォーム部品185は洗浄されて、焼結されてバインダを除去し、機械的又は冶金学的に残りの粒子を所望の形状に結合させる。図21に例示するように、この焼結された交換用チップ170は、支持構造190から取り外される。
【0061】
図22に例示するように、交換用チップ170は、ブレード155上の所定の位置に配置されて、それらの間にろう付け結合部200が形成される。ろう付け処理の間、交換用チップ170の初期層又は複数の層のろう付け材料により、ろう付け結合部の完成及び交換用チップ170の取り付けが容易になる。
【0062】
高温環境(例えば、1000度F又は538度C)下で動作されるニッケル基超合金の材料と共に用いるため、予め焼結されたプリフォーム(PSP)及びろう付け材料に用いられる現在の材料は、典型的には、ニッケル(Ni)クロム(Cr)基である。
【0063】
PSP及び/又はろう付け材料に適用される本明細書に記載の組成物は、好適には、ホウ素を含まない。ホウ素を含まないPSP及びろう付け材料のクリープ破断寿命を改善するため、ほとんどのニッケル基のろう付け合金に対してレニウム(Re)又はルチウム(Ru)を添加してもよい。これらの2つの要素は、クリープ破断寿命の改善のため、基材の組成に添加される強力なクリープ抵抗の向上剤である。それらはニッケル基合金のクリープ抵抗を10倍まで増加させ得る。それらの高い融点と大きな原子直径は、低めの原子拡散率をもたらし、Ni基材のクリープ抵抗の増加を可能にする。
【0064】
従前では、耐クリープ性ろう付け材料の必要性が知られていなかったため、ホウ素を含まないろう付け材料に対してレニウム(Re)及びルチウム(Ru)を添加していなかった。
【0065】
Re又はRuを添加するため、材料は粉末化されて、ろう付けの前に、基材粉末混合物と混合される。Re及びRuは、PSP製造の前に、ホウ素を含まないNi-Cr-Xろう付け/基材粉末混合物に添加される。好適には、Re及びRuは、粉末用にできる限り最小の粒径を有する。好適には、ろう付け後に均一な混合及び均質な元素分布を確実にするために、Re及びRu粉末の直径は、基材金属及びろう付け金属粉末と比べて少なくとも50%以下である。Re及びRu粉末は、ろう付けプロセス中には溶融しない。むしろ、それらは、ろう付け中に周囲の液体ろう付け材料中に拡散する。拡散速度は液体中では高いため、それら元素はろう付け材料内で均一に移動する。
【0066】
Re及びRuは、ろう付け又はPSPの全組成の3パーセントから6パーセントまでを構成するように添加されるが、そのことは、ろう付け中のろう付け粉末に対する基材金属の割合にかかわらない。
【0067】
例えば、合金247を用いて製造された部品の修復には、粉末から製造されるPSPを用いることができるが、それは74パーセントから77パーセントまでが合金247の組成と合致し、20パーセントが所望のろう付け材料(融点降下剤と呼ばれることもある)と合致し、3パーセントから6パーセントまでがRe又はRuの一方又は両方である。
【0068】
適当なろう付け材料は、典型的にはニッケル基であって、ニッケル、クロムを含有し、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つを含有する。いくつかの特定のろう付け組成物は、6.5%のCr、11%のZr、7.5%のTi、及び残りのNiを含有する。別の組成物は、5.0%のCr、10%のHf、10%のZr、及び残りのNiを含有する。さらに別の組成物は、17%のCr、22%のTi、及び残りのNiを含有する。
【0069】
基材(74~77パーセント)、ろう付け材料(20パーセント)、及びRe又はRu(3~6パーセント)の3つの成分の各々は、粉末化されて、焼結用に共に混合される。溶融ステップ(即ち、ろう付け処理)中、Re及びRuは溶融されない。むしろ、それらは、溶融プロセスの間に溶融プールを介して分散する。
【0070】
なお、図3では、上述の材料を用いて製造できるPSPインサート60の可能な一例が示されている。このPSPインサート60は、基材、ろう付け材料、及び所望の量のRe又はRuを含むように予め形成されて、焼結される。図4では、図3に例示したPSPインサート60を用いたタービン・ベーン30の修復が示されている。上述のように、ベーン30の損傷部が除去された後、必要とされるPSPインサート60は、大きさが決められて、製造される。次に、PSPインサート60は、ベーン30の空の空間55内に配置されて、所定の位置でろう付けされる。このろう付けプロセス中に、Re及びRuの一部は、液体ろう付け中を移動する。このRe及びRuは、プール内では溶融せず、むしろ、凝固中にろう付け材料内に埋め込まれる。
【0071】
以上、本開示内容の例示的な実施形態について詳細に説明したが、当業者であれば、本開示内容の技術思想及び範囲から逸脱することなく、その最も広い形態で、本開示内容の様々な変更、置換、変形、及び改善を行うことができることを理解するであろう。
【0072】
本開示内容の説明では、任意の特定の要素、ステップ、動作、又は機能は、特許請求の範囲に必須とされる本質的な要素を示唆するものとして解釈されるべきではない。つまり、特許の発明主題の範囲は、許可される特許請求の範囲によってのみ定められるべきである。さらに、特許請求の範囲の請求項は、いずれも、その(英文の)構成中で分詞と関連して「means for」の正確な単語が用いられていない限り、ミーンズ・プラス・ファンクション(MPF)の適用を意図していないものとする。
【符号の説明】
【0073】
30 ベーン
35 前縁
55 損傷部
60 インサート(挿入片)
66 基材
67 バインダ(結合剤)
68 隙間又は空の領域
80 ゲート
85 骨格
90 骨格
100 融点降下剤(融点抑制剤)
110 取り付け構造
111 ピン
120 チップ(先端)
125 亀裂(クラック)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22