(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】負極の前リチウム化方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1393 20100101AFI20231117BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20231117BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231117BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20231117BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231117BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231117BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20231117BHJP
【FI】
H01M4/1393
H01M4/133
H01M4/36 E
H01M4/48
H01M4/587
H01M10/052
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2022523673
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2021011473
(87)【国際公開番号】W WO2022045809
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0109040
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヘ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】イェ・リ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】オ・ビョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・ジョン
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/088139(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0092643(KR,A)
【文献】国際公開第2019/194100(WO,A1)
【文献】特開2010-160982(JP,A)
【文献】特開2014-017209(JP,A)
【文献】特開2020-027737(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層を形成して負極を製造するステップと、
前記負極およびリチウム金属対極を含む前リチウム化セルを製造し、前記前リチウム化セルを前リチウム化溶液に含浸させるステップと、
前記前リチウム化セルを定電圧で充電して負極を前リチウム化するステップと、を含み、
前記前リチウム化溶液は、ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を3~30体積%含
み、
前記負極を前リチウム化するステップは、前記前リチウム化溶液に含浸させた前記前リチウム化セルに定電圧を印加することにより充電を開始して一定容量まで充電させて行われ、
前記負極活物質は、炭素系活物質およびシリコン系活物質を含む、負極の前リチウム化方法。
【請求項2】
前記ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物は、下記化学式1で表わされる環状カーボネートである、請求項1に記載の負極の前リチウム化方法。
【化1】
R
3、R
4、R
5、およびR
6は、それぞれ独立して水素、または置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基であり、ここで、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちの少なくとも1つはハロゲンで置換される。
【請求項3】
前記ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物はフルオロエチレンカーボネートである、請求項1に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項4】
前記前リチウム化溶液は、ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を5~20体積%含む、請求項1に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項5】
前記負極を前リチウム化するステップにおいて、
前記負極は、0.1~-1V(vs.Li/Li
+)の定電圧で充電される、請求項1に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項6】
前記負極を前リチウム化するステップは、
前記前リチウム化セルを理論充電容量の5~30%になるように充電させて行われる、請求項1に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項7】
前リチウム化された負極をエージングするステップをさらに含む、請求項1に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項8】
エージングされた負極を洗浄および乾燥するステップをさらに含む、請求項
7に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項9】
前リチウム化された負極は、表面にSEI被膜が形成される、請求項1に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項10】
前記SEI被膜は、LiF及びLi
2CO
3を含む、請求項
9に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項11】
前記SEI被膜に含まれるLiFの含有量は10~20重量%であり、Li
2CO
3の含有量は20~40重量%である、請求項
10に記載の負極の前リチウム化方法。
【請求項12】
請求項1から
11の何れか一項記載の負極の前リチウム化方法を含む、二次電池の製造方法。
【請求項13】
負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層が形成された負極であって、
前記負極活物質は、炭素系活物質およびシリコン系活物質を含み、
表面にSEI被膜が形成されており、
前記SEI被膜がLiF及びLi
2
CO
3
を含み、
前記SEI被膜に含まれるLiFの含量は、10~20重量%であり、Li
2CO
3の含量は20~40重量%である、負極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年08月28日付の韓国特許出願第10-2020-0109040号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、負極の前リチウム化方法に関するものである。また、本発明は、負極の前リチウム化方法によって前リチウム化された負極に関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、充放電が可能な二次電池は、ワイヤレスモバイル機器のエネルギー源として広く使用されている。また、二次電池は、化石燃料を使用する既存のガソリン車、ディーゼル車などに起因する大気汚染などを解決するための方案として提示されている電気自動車、ハイブリッド電気自動車などのエネルギー源としても注目されている。したがって、二次電池を使用するアプリケーションの種類は、二次電池の利点に起因して非常に多様化しており、今後は今よりも多くの分野や製品に二次電池が適用されると予想される。
【0004】
このような二次電池は、電極と電解液の構成によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウムポリマー電池などに分類されることもあり、その中で電解液の漏液の可能性が少なく、製造が容易なリチウムイオンポリマー電池の使用量が増えている。一般的に、二次電池は、電池ケースの形状に応じて、電極組立体が円筒形または角形の金属缶に内蔵されている円筒形電池および角形電池と、電極組立体がアルミニウムラミネートシートのパウチ型ケースに内蔵されているパウチ型電池に分類され、電池ケースに内蔵される電極組立体は、正極、負極、及び上記正極と上記負極との間に介在された分離膜構造からなる充放電が可能な発電素子であって、活物質が塗布された長いシート状の正極と負極との間に分離膜を介在して巻き取ったゼリーロール型と、所定のサイズの多数の正極と負極を分離膜に介在された状態で順次に積層したスタック型に分類される。
【0005】
上記正極及び負極はそれぞれ、正極集電体及び負極集電体に正極活物質を含む正極スラリー及び負極活物質を含む負極スラリーを塗布して正極活物質層及び負極活物質層を形成した後、それを乾燥及び圧延して形成される。
【0006】
このような負極の場合、初期充填時に負極表面に固体電解質界面層(solid electrolyte interface layer、SEI layer)のような不動態被膜が形成される。上記不動態被膜は有機溶媒が負極内に挿入されることを防止し、有機溶媒の分解反応を抑制するので、負極構造の安定化、負極の可逆性を向上させながら、負極としての使用を可能とする。しかし、不動態被膜の形成反応は、非可逆反応であるので、リチウムイオンの消耗を招き、電池の容量を減少させるという問題がある。また、電池のサイクルが繰り返されるにつれてリチウムイオンの消耗が発生して容量の減少、サイクル寿命の低下が発生するという問題がある。
【0007】
そこで、上記負極にリチウムを予め挿入させる方法等によって前リチウム化(pre-lithiation)することにより、負極表面に予め不動態被膜を形成させ、容量低下の防止、サイクル寿命の向上を図る方法が開発されている。このような前リチウム化方法には、リチウム金属を負極表面に直接接触させる物理的な方法と、リチウム金属と負極とを連結した後、電気化学的に充電する方法がある。
【0008】
このように前リチウム化された負極の場合、還元された状態であるので、空気中の酸化剤として酸素または二酸化炭素と接触すると、熱力学的に自発的な酸化還元反応が発生することになるが、この場合、前リチウム化を通じて導入された電子とリチウムイオンを消耗することになる。すなわち、前リチウム化により予め導入されたリチウムイオンと電子の一部を酸素または二酸化炭素との酸化還元反応で消耗した電極の場合、目標とした容量およびクーロン効率を達成できず、電池の寿命特性も期待したほど改善されない。
【0009】
したがって、前リチウム化過程において耐酸化性が増大された電極を生産し得る技術の開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するために案出されたものであって、前リチウム化過程で負極の耐酸化性を増大させることにより、負極と酸素または二酸化炭素が反応してクーロン効率が低下することを防止し、サイクル性能が減少することを防止し得る負極の前リチウム化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る負極の前リチウム化方法は、負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層を形成して負極を製造するステップと、上記負極及びリチウム金属対極を含む前リチウム化セルを製造し、上記前リチウム化セルを前リチウム化溶液に含浸させるステップと、上記前リチウム化セルを定電圧で充電して負極を前リチウム化するステップとを含み、上記前リチウム化溶液は、ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を3~30体積%含む。
【0012】
具体的な例において、上記負極活物質は、炭素系活物質およびシリコン系活物質を含む。
【0013】
具体例的な例において、上記ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物は、下記化学式1で表現される環状カーボネートである。
【0014】
【化1】
R
3、R
4、R
5、およびR
6はそれぞれ、独立に水素、または置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、このとき、R
3、R
4、R
5、およびR
6のうちの少なくとも1つはハロゲンで置換される。
【0015】
より具体的に、上記ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物は、フルオロエチレンカーボネートである。
【0016】
また、具体的な例において、上記前リチウム化溶液は、ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を5~20体積%含み得る。
【0017】
具体的な例において、上記負極を前リチウム化するステップで、上記負極は0.1~-1V(vs.Li/Li+)に充電される。
【0018】
一方、上記負極を前リチウム化するステップは、上記前リチウム化セルを理論充電容量の5~30%となるように充電して行われる。
【0019】
また、本発明に係る負極の前リチウム化方法は、前リチウム化された負極をエージングするステップをさらに含む。
【0020】
また、本発明に係る負極の前リチウム化方法は、エージングされた負極を洗浄および乾燥するステップをさらに含む。
【0021】
このとき、前リチウム化された負極は、表面にSEI被膜が形成される。
【0022】
ここで、上記SEI被膜は、LiF及びLi2CO3を含む。
【0023】
具体的に、上記SEI被膜に含まれるLiFの含有量は、10~20重量%であり、Li2CO3の含有量は20~40重量%である。
【0024】
また、本発明は、上述したような負極の前リチウム化方法を含む二次電池の製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、上述した前リチウム化方法によって前リチウム化され、表面にSEI膜が形成されており、上記SEI被膜に含まれるLiFの含有量は10~20重量%であり、Li2CO3の含有量は20~40重量%の負極を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、前リチウム化溶液にハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を添加して、前リチウム化時に電極に電子伝達ができないSEIを形成させることができる。すなわち、電子伝達能力のない無機被膜を形成することにより、耐酸化性が増大された負極を製造することができる。また、前リチウム化過程で負極を定電圧で一定容量まで充電することにより、電子伝達能力のないSEI形成を極大化することができる。
【0027】
これにより、負極が酸素または二酸化炭素と電子をやり取りする酸化還元反応を防止することができ、電池の初期クーロン効率およびサイクル特性が減少することを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る前リチウム化方法の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲で使用される用語または単語は、通常または辞書の意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は彼自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されるべきである。
【0030】
本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたは複数の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものの存在または追加の可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとする場合、これは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明に係る負極の前リチウム化方法の手順を示したフローチャートである。
図1を参照すると、本発明に係る負極の前リチウム化方法は、負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層を形成して負極を製造するステップ(S10)と、上記負極およびリチウム金属対極を含む前リチウム化セルを製造し、上記前リチウム化セルを前リチウム化溶液に含浸させるステップ(S20)と、上記前リチウム化セルを定電圧で充電して負極を前リチウム化するステップ(S30)とを含み、上記前リチウム化溶液は置換された有機カーボネート化合物を3~30体積%含む。
【0033】
上述したように、前リチウム化された負極の場合、還元された状態であるので、空気中の酸化剤として酸素または二酸化炭素と接触すると、熱力学的に自発的な酸化還元反応が発生するが、これにより、前リチウム化を通じて導入された電子とリチウムイオンを消耗することになる。この場合、目標とした容量及びクーロン効率を達成することができず、電池の寿命特性も改善されない。
【0034】
本発明は、前リチウム化溶液にハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を添加して、前リチウム化時に電極に電子伝達ができないSEIを形成させることができる。すなわち、電子伝達能力のないLiF及びLi2CO3を含む無機被膜を形成することにより、耐酸化性が増大された負極を製造し得る。また、前リチウム化過程で負極を定電圧で一定容量まで充電することにより、電子伝達能力のないSEI形成を極大化することができる。
【0035】
これにより、負極の表面で酸素または二酸化炭素との酸化還元反応が進行することを防止することができ、電池の初期クーロン効率およびサイクル特性が減少することを防止し得る。
【0036】
以下、本発明に係る負極の前リチウム化方法の各ステップについて詳細に説明する。
【0037】
<負極の製造>
本発明に係る負極の前リチウム化方法において、負極は、負極集電体上に負極活物質を含む負極スラリーを塗布して負極活物質層を形成することによって製造され得る。このとき、負極スラリーは導電材およびバインダーなどをさらに含み得る。このとき、負極活物質層は、負極集電体の両面に形成され得る。
【0038】
負極集電体用シートの場合、一般的に3~500μmの厚さで作られる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されることはない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、多様な形態で使用され得る。
【0039】
負極活物質は、炭素系活物質およびシリコン系活物質からなる群から選択された少なくとも1種を含むことができる。
【0040】
上記シリコン系活物質は、本発明の負極または二次電池に優れた容量特性を付与することができ、SiOx(0≦x<2)で表示される化合物を含むことができる。SiO2の場合、リチウムイオンと反応しなくてリチウムを貯蔵し得ないため、xは上記範囲内であることが好ましく、より好ましくはシリコン系酸化物はSiOであり得る。上記シリコン系酸化物の平均粒径(D50)は、充放電時の構造的安定性を期しながら電解液との副反応を減少させる側面から1~30μm、好ましくは3~15μmであり得る。上記平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定し得る。
【0041】
上記炭素系活物質は、本発明の二次電池用負極または二次電池に優れたサイクル特性または電池寿命性能を付与することができる。具体的に、上記炭素系活物質は人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、スーパーP、グラフェン及び繊維状炭素からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。好ましくは、人造黒鉛および天然黒鉛からなる群から選択された少なくとも1種を含み得る。上記炭素系酸化物の平均粒径(D50)は、充放電時に構造的安定性を期し、電解液との副反応を減らすという側面から10~30μm、好ましくは15~25μmであり得る。
【0042】
具体的に、上記負極活物質は、容量特性およびサイクル特性を同時に改善する観点から、上記シリコン系活物質と上記炭素系活物質をいずれも用いることができる。具体的に、上記負極活物質は、上記炭素系活物質及び上記シリコン系活物質を50:50~95:5の重量比、好ましくは60:40~90:10の重量比で含み得る。
【0043】
上記導電材としては、通常、正極活物質を含んだ混合物全体の重量を基準として、1~30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、フッ化炭素、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0044】
上記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準にして、1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0045】
上記負極は、負極集電体上に負極活物質、バインダー及び導電材を溶媒に分散させて製造された負極スラリーをコーティングして製造することができる。上記負極スラリー形成用溶媒は、成分の分散を容易にするという側面から、蒸留水、エタノール、メタノールおよびイソプロピルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種、好ましくは蒸留水を含み得る。
【0046】
一方、上記負極活物質層の厚さは10μm~250μm、好ましくは80μm~200μmであり得る。
【0047】
<前リチウム化>
負極が製造されると、それを前リチウム化する。具体的には、負極およびリチウム金属対極を含む前リチウム化セルを製造し、上記前リチウム化セルを前リチウム化溶液に含浸させた後に、上記前リチウム化セルを電気化学充填して負極を前リチウム化する。このとき、前リチウム化セルとは、負極とリチウム金属対極が一対となって電池セル機能をする一つの単位を意味する。
【0048】
一方、上記前リチウム化セルは、電気化学充電が可能であればその形態に大きな関りはない。例えば、負極とリチウム金属との間に分離膜を介在した状態でコインセルなどの実際の電池セル形状と同じく製造されることもあり得る。この場合、製造された前リチウム化セル内に前リチウム化溶液が注液される。また、前リチウム化溶液が収容された前リチウム化反応槽に負極をリチウム金属と離隔された状態で収容して製造することもできる。このとき、上記負極は、ロール状で巻き取られた負極ロールが巻き出されて前リチウム化溶液内に収容される形状であるか、又は移送コンベア上に搭載された負極が移送コンベアの移動によって前リチウム化反応槽に投入され、リチウム金属対極と離隔された状態で固定され得る。
【0049】
前リチウム化溶液はリチウム塩および有機溶媒を含むことができる。
【0050】
具体的に、上記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(FSO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、またはそれらのうちの1つ以上を含み得る。
【0051】
上記有機溶媒は、当業界で通常的に使用される有機溶媒であれば、特に制限なく使用され得るが、前リチウム化中の蒸発による前リチウム化用電解液の消耗が最小限に抑えられるように高沸点有機溶媒が好ましく使用され得る。
【0052】
例えば、上記有機溶媒は、カーボネート系溶媒、エステル系溶媒、またはそれらのうちの2以上を含み得る。上記非水系溶媒の例としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(g-ブチロラクトン)、エチルプロピオネート、メチルプロピオネート等を単独または2以上を混合して使用することができるが、これに限定されない。
【0053】
一方、上記前リチウム化溶液は、ハロゲン原子で置換されたカーボネート化合物を含むことができる。上記ハロゲン原子で置換されたカーボネート化合物は、前リチウム化時に負極の表面にLiF及びLi2CO3が豊富なSEIを形成させ、負極を電子絶縁(electronic insulation)させることができる。すなわち、負極の耐酸化性を増大させることができる。
【0054】
具体的に、ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物は、下記化学式(1)で表現される環状カーボネートである。
【化2】
【0055】
R3、R4、R5、およびR6はそれぞれ、独立に水素、または置換もしくは非置換された炭素数1~10のアルキル基であり、このとき、R3、R4、R5、およびR6のうちの少なくとも1つは、ハロゲンに置換される。
【0056】
より具体的に、上記ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物は、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate、FEC)であり得る。フルオロエチレンカーボネートを用いた場合、前リチウム化のための電気化学充填時にリチウムと反応して負極の表面にLiFを含むSEI被膜を容易に形成させることができる。上記有機カーボネート化合物は、電気化学充填時に他の前リチウム化溶液成分より先に消耗されて、安定的なSEI被膜を形成する。
【0057】
このとき、上記前リチウム化溶液は、ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を3~30体積%含むことができ、詳細には、ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物を5~20体積%含むことができ、さらに詳細には、10~20体積%含むことができる。ハロゲン原子で置換された有機カーボネート化合物の含有量が上記範囲にあるとき、SEI被膜内でLiFおよびLi2CO3化合物が安定的に形成され得る。
【0058】
また、上記前リチウム化溶液は、他の添加剤をさらに含んでいてもよく、上記添加剤としては、ビニレンカーボネート(vinylethylene carbonate)、ビニルエチレンカーボネート(vinylethylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)、サリチル酸(salicylic acid)、LiBF4、LITFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、LiBOB(Lithium bis(oxalato)borate)、LiODFB(Lithium difluoro(oxalato)borate)またはこれらのうちの1以上を含み得る。
【0059】
また、上記前リチウム化溶液の温度は10~80℃、詳細には20~60℃、さらに詳しくは25~40℃であり得る。上記温度範囲での前リチウム化時にリチウムの拡散が円滑に行われ得る。
【0060】
上記負極は、上記リチウム金属対極に連結された後、充放電部によって充放電されることにより、前リチウム化され得る。
【0061】
本発明は、リチウムイオンを負極内に伝達するリチウム供給源としてリチウム金属対極を含む。リチウム金属対極は、上記前リチウム化溶液に投入される少なくとも1つの負極と所定の間隔が離隔された状態で対向するように配置されることにより、前リチウム化のための電気化学充填時の負極に対する対極として機能し得る。上記リチウム金属対極は、上記負極と対向するように配置されたシートの形態であり得る。
【0062】
上記リチウム金属対極の厚さは、前リチウム化の程度を考慮して好適に設定され得る。具体的には10μm~500μm、好ましくは40μm~200μmであり得る。
【0063】
上記リチウム金属対極は、負極と離隔することにより、電気化学充電時の負極とリチウム金属対極が直接に接触されることによって発生し得るショート現象を防止し得る。
【0064】
このとき、上記リチウム金属対極と負極の間の離隔距離は1~20mmであり得る。詳細には、上記リチウム金属対極と負極の間の離隔距離が3~15mmであり、より詳細には6~12mmであり得る。リチウム金属対極と負極の間の離隔距離が上記範囲にある場合、上記負極とリチウム金属対極が直接接触されることにより発生し得る電極ショート現象を十分に防止しながら、前リチウム化時にリチウムが負極内に円滑に挿入され得る。
【0065】
一方、負極とリチウム金属が1つの電池セルの形態で製造される場合、上記負極とリチウム金属との間には分離膜を介在され得る。上記分離膜は、上記負極の電気化学的充填時に上記負極とリチウム金属が直接接触されることによって発生し得る電極ショート現象を防止し、上記負極とリチウム金属が直接接触されるとき、負極へのリチウム挿入速度が調整されないという問題を防ぐことができる。
【0066】
上記分離膜は、リチウムイオンの移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れたものが好ましく、具体的にはエチレンポリマー、プロピレンポリマー、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/メタクリレート共重合体及びポリオレフィン系ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種を含む多孔性高分子フィルム、高融点のガラス繊維およびポリエチレンテレフタレート繊維からなる群から選択された少なくとも1種を含む多孔質不織布、またはそれらの2以上の組み合わせを含み得る。上記分離膜層は、好ましくは機械的安定性および化学的安定性の側面から多孔性高分子フィルム、より好ましくはポリオレフィン系ポリマーを含む多孔性高分子フィルムを含み得る。
【0067】
上記分離膜の厚さは、負極へのリチウムの円滑な挿入/拡散および均一な前リチウム化という側面から3~50μm、好ましくは8~20μmであり得る。
【0068】
一方、前リチウム化セルが準備されると、前リチウム化セルを前リチウム化溶液に含浸させることができる。上述したように、前リチウム化溶液を収容された前リチウム化反応槽が別途に用意される場合、負極が前リチウム化溶液内で所定の時間の間に放置され得る。また、リチウム金属対極と負極を1つのセルで製造する場合、上記セルに前リチウム化溶液を注入した後、所定の時間の間を保管し得る。
【0069】
このとき、含浸時間は、前リチウム化条件に応じて好適に設定され得る。例えば、5分~12時間、詳細には10~180分、さらに詳しくは15分~40分であり得る。これにより、負極が前リチウム化溶液に十分にウェティングされ、前リチウム化が負極で均一に行われ得る。含浸時間が上記範囲を超えると、負極の耐久性が弱くなり、活物質が集電体から容易に脱離され得る。そして、含浸時間が上記範囲未満であると、前リチウム化溶液が負極の内部まで十分に浸透し難くなるので、前リチウム化が均一に行われるのが難しくなり得る。
【0070】
前リチウム化セルが電解液に含浸されると、充放電時に前リチウム化セルは定電圧に充電される。前リチウム化セルを定電圧で一定容量まで充電することにより、酸化還元反応が起こる負極の表面付近で電子を多く受けられる雰囲気を形成させることができ、これにより、LiF及びLi2CO3が豊富なSEI被膜を形成することができる。すなわち、前リチウム化セルを定電圧で充電することによって、電子の伝達を遮断し得る被膜形成を極大化し得る。
【0071】
このとき、上記負極を前リチウム化するステップにおいて、上記負極は0.1~-1V(vs.Li/Li+)の定電圧で充電され、詳細には0.1~-0.5V(vs.Li/Li+)の定電圧に充電され得る。上記範囲で負極を充填するとき、上記効果を極大化し得る。充電電圧が上記範囲未満の場合、充電電圧が小さくて目的とした効果を達成し難く、充電電圧が上記範囲を超えると望まない副反応が発生し得る。
【0072】
また、上記負極を前リチウム化するステップは、上記前リチウム化セルを理論充電容量の5~30%になるように充電させて行われる。詳細には、理論充電容量の10~25%になるように充電させて行われ得る。上述した範囲で電気化学充電して上記前リチウム化セルに前リチウム化を行う場合、負極にSEI膜が均一かつ安定的に形成され得るので、電池可逆容量が向上され得る。そして、これにより、電池のサイクル特性が改善され得る。
【0073】
また、上記負極を充放電して前リチウム化反応が完了されると、エージングステップがさらに行われる。ここで、エージングとは、負極を前リチウム化溶液内で所定の時間を放置する過程である。
【0074】
この過程において、前リチウム化によって挿入されたリチウムイオンが負極活物質の表面および内部に。より均一に拡散され得る。万一、リチウム化の後にエージングステップを行わないと、前リチウム化によるとしても、リチウムイオンが負極活物質に均一に拡散されないので、非可逆容量の十分な除去が難しくなり、負極製作後に均一な充放電が起こらないおそれがあるので、好ましくない。エージング時間は、前リチウム化時間に応じて好適に設計され得る。
【0075】
また、本発明に係る負極の前リチウム化方法は、上記負極を洗浄および乾燥するステップをさらに含む。このとき、上記負極は前リチウム化後にエージングされたものであり得る。
【0076】
これにより、負極に残留する不純物が除去され得る。上記洗浄ステップは、別途に設けられた洗浄槽で行われ得る。前リチウム化およびエージングが完了された負極を有機溶媒が収容された洗浄槽に担持して行われ得る。上記有機溶媒はリチウム塩を含まないものであって、上述した前リチウム化溶液に使用される有機溶媒と同一のものを用いることができる。具体的に、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate、EMC)およびエチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)からなる群から選択された少なくとも1種を使用し得る。洗浄槽の長さは、前リチウム化反応槽に投入される負極の個数、前リチウム化時間及び前リチウム化反応槽の大きさに応じて好適に設計され得る。
【0077】
また、乾燥ステップは、洗浄ステップが完了された電極を洗浄槽から取り出し、乾燥部に投入して行われ得る。上記乾燥ステップは、空気または非活性気体によって行われ得る。具体的に、上記非活性気体はAr、N2およびHeからなる群から選択された少なくとも1種であり得る。
【0078】
上記乾燥ステップにおいて、負極の乾燥温度は10~80℃、詳細には20~60℃、より詳細には25~50℃であり得る。上記範囲にあるとき、負極の酸化を防止して前リチウム化状態を維持し得るという側面から、好ましい。また、乾燥時間は、前リチウム化時間、エージング時間および洗浄時間に応じて好適に設計され得る。
【0079】
洗浄および乾燥が完了された負極は、回収されて二次電池の製造に使用され得る。
【0080】
このように前リチウム化が完了された負極は、表面にSEI被膜が形成される。上記SEI被膜は、負極に対して外部との電子伝達を遮断し得る特性を有するものであって、LiF及びLi2CO3を多量含有する。具体的には、上記SEI被膜に含まれるLiFの含有量は10~20重量%であり、Li2CO3の含有量は20~40重量%であり得る。詳細には、SEI被膜に含まれるLiFの含有量は12~18重量%であり、Li2CO3の含有量は25~35重量%であり得る。LiFおよびLi2CO3の含有量が上記範囲内にあるとき、目的とする電子伝達遮断の効果を達成することができる。
【0081】
<二次電池>
また、本発明は、上述した負極の前リチウム化方法を含む二次電池の製造方法を提供する。
【0082】
上記二次電池は、正極と負極との間に分離膜が介在された形態の電極組立体が電池ケースに収容された形態である。上記正極は、正極集電体上に正極活物質を含む正極スラリーが塗布されて正極活物質層が形成された構造であり、負極は上述した通りである。
【0083】
本発明において、正極集電体の場合、一般的に3~500μmの厚さで作られる。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、高い導電性を有するものであれば特に制限されない。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0084】
本発明において正極活物質は、電気化学的反応を起こし得る物質であって、リチウム遷移金属酸化物として、2以上の遷移金属を含む。例えば、1又はそれ以上の遷移金属で置換されたリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物、1またはそれ以上の遷移金属で置換されたリチウムマンガン酸化物、化学式LiNi1-yMyO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、ZnまたはGaであり、上記元素のうちの少なくとも1つ以上の元素を含み、0.01≦y≦0.7である)で表現されるリチウムニッケル系酸化物、Li1+zNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li1+zNi0.4Mn0.4Co0.2O2などのように、Li1+zNibMncCo1-(b+c+d)MdO(2-e)Ae (ここで、-0.5≦z≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0≦d≦0.2、0≦e≦0.2、b+c+d<1であり、M=Al、Mg、Cr、Ti、SiまたはYであり、A=F、PまたはClである)で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、化学式Li1+xM1-yM'yPO4-zXz(ここで、M=遷移金属、好ましくはFe、Mn、CoまたはNi、M'=Al、MgまたはTi、X=F、SまたはNであり、0.5≦x≦+0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である)で表されるオリビン系リチウム金属ホスフェート等 が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0085】
また、上記正極スラリーは、正極活物質の外に導電材及びバインダーをさらに含み、これについては上述した通りである。
【0086】
上記分離膜は正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い膜が用いられる。分離膜の気孔の直径は一般的に0.01~10μmであり、厚さは一般的に5~300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー、ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが用いられる。電解質としてポリマー等の固体電解質が用いられる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもあり得る。
【0087】
一方、上記電池ケースは、電池を包装するための外装材として使用されるものであれば、特に限定されず、円筒形、角形またはパウチ型を使用され得る。詳細には、パウチ型の電池ケースが使用され得る。パウチ型電池ケースは、通常、アルミニウムラミネートシートからなっており、密封のための内部シーラント層、物質の浸透を防止する金属層、およびケースの最外郭を成す外部樹脂層で構成され得る。以下、電池ケースに対する具体的な内容は、通常の技術者に公知された事項であるので、詳細な説明を省略する。
【0088】
電池ケース内に電極組立体が収容されると、電解液注入後に密封され、その後に活性化工程を通じて最終的な二次電池として製造される。電解液に関する内容も通常の技術者に公知された事項であるので、詳細な説明を省略する。
【0089】
<負極>
また、本発明は、上述したような負極の前リチウム化方法に従って前リチウム化された負極を提供する。
【0090】
本発明に係る負極は、表面にSEI被膜が形成された構造である。上記SEI被膜は、負極に対して外部との電子伝達を遮断し得る特性を有するものであって、LiF及びLi2CO3を多量含有する。具体的に、上記SEI被膜に含まれるLiFの含有量は10~20重量%であり、Li2CO3の含有量は20~40重量%であり得る。具体的に、SEI被膜に含まれるLiFの含有量は12~18重量%であり、Li2CO3の含有量は25~35重量%であり得る。LiFおよびLi2CO3の含有量が上記範囲内にあると、目的とする電子伝達遮断効果を達成し得る。
【0091】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は多様な異なる形態に変更され得る。そして、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0092】
実施例1
<前リチウム化溶液の製造>
前リチウム化溶液をエチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を1:2:7の体積比で混合した有機溶媒にリチウム塩としてのLiPF6を1M濃度で添加した後、24時間攪拌して溶解させて製造した。
【0093】
<負極の製造>
負極活物質として黒鉛85重量%及びSiO9.5重量%、導電材としてDenka Black1.4重量%、バインダーとしてSBR3.0重量%、増粘剤としてCMC1.1重量%を水に添加して負極スラリーを製造した。
【0094】
銅集電体(厚さ:8μm)の両面に上記負極スラリーをコーティングし、圧延(roll press)して120℃の真空オーブンで真空乾燥して圧延することによって、銅負極集電体上に負極活物質層を形成して負極を製造した。
【0095】
<コイン型ハーフセルの製造>
上記で準備した電解液および負極を用いてコイン型ハーフセルを製造した。具体的に、負極およびリチウム金属対極の間に分離膜を介在してコイン型ハーフセルを製造し、上記コイン型ハーフセルより先立って説明したとおりの前リチウム化溶液を注入した。
【0096】
<前リチウム化>
上記コイン型ハーフセルを電気化学充電して前リチウム化を行った。具体的に、-0.2Vの定電圧(constant voltage、CV)をハーフセルに印加して充電しながら、全体理論充電容量の10%に該当する容量の程度が充電されるようにした。前リチウム化が完了されると、負極をハーフセルから分離した後、洗浄および乾燥した。このとき、負極をハーフセルから分離する前にエージングを行うことができる。
【0097】
実施例2
エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を2:1:7の体積比で混合した有機溶媒にリチウム塩としてLiPF6を1M濃度で添加した後、24時間を攪拌して製造した前リチウム化溶液を用いたことを除いては、実施例1と同じく負極を前リチウム化した。
【0098】
実施例3
エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を2.5:0.5:7の体積比で混合した有機溶媒にリチウム塩としてLiPF6を1M濃度で添加した後、24時間を攪拌して製造した前リチウム化溶液を用いたことを除いては、実施例1と同じく負極を前リチウム化した。
【0099】
比較例1
前リチウム化の過程において、コイン型ハーフセルを1.32Aの定電流で充電したことを除いては、実施例2と同じく負極を前リチウム化した。
【0100】
比較例2
エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7の体積比で混合した有機溶媒にリチウム塩としてLiPF6を1M濃度で添加し、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)を有機溶媒の総重量に対してそれぞれ1.5重量%および2.0重量%添加したことを除いては、比較例1と同じく(定電流充填)負極を前リチウム化した。
【0101】
比較例3
負極活物質として黒鉛85重量%及びSiO9.5重量%、導電材としてDenka Black1.4重量%、バインダーとしてSBR3.0重量%、増粘剤としてCMC1.1重量%を水に添加して負極スラリーを製造した。
【0102】
銅集電体(厚さ:8μm)の両面に上記負極スラリーをコーティングし、圧延(roll press)して120℃の真空オーブンで真空乾燥して圧延することによって、銅負極集電体上に負極活物質層を形成して負極を製造した。上記負極は前リチウム化プロセスを行わなかった。
【0103】
実験例
<クーロン効率のテスト>
リチウム金属対極と負極との間にポリオレフィン分離膜を介在した後、電解液を注入してコイン形態のハーフセルを準備した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7の体積比で混合した有機溶媒にリチウム塩として1M LiPF6が溶解され、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)が添加されたものを使用した。
【0104】
上記コイン形態のハーフセルを所定の期間を保管した後、電気化学充放電器を用いて充電してクーロン効率を測定した。具体的には、上記ハーフセルを0.1Cの電流密度で5mV(vsLi/Li+)まで充電し、同じ電流密度で1.5V(vsLi/Li+)まで放電した。これを3サイクル繰り返し、3サイクルのときの電池セルの充電容量および放電容量を測定した。次に、下記式1のように充電容量対比放電容量の比で初期効率を確認し、その結果を表1に図示した。表1において、初期クーロン効率とは、保管期間なしで直ちにハーフセルを充放電して測定したクーロン効率を意味する。
【0105】
[式1]
クーロン効率(%)={(放電容量)/(充電容量)}×100
【0106】
<サイクル特性のテスト>
正極及び上記実施例及び比較例で製造された負極を準備し、正極と負極との間にポリオレフィン分離膜を介在した後、電解液を注入してコイン形態の電池セルを準備した。ここで正極は、アルミニウム素材の正極集電体上に正極活物質としてLiCoO2を含む正極スラリーを塗布して製造した。また、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7の体積比で混合した有機溶媒にリチウム塩として1M LiPF6が溶解され、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)及びフルオロエチレン カーボネート(FEC)が添加されたものを使用した。
【0107】
上記コイン型の電池セルを100回充放電し、下記式2によって容量維持率を評価した。
【0108】
[式2]
容量維持率(%)={(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)}×100
【0109】
具体的に、上記電池セルを3番目のサイクルまでは0.1Cの電流密度で4.2V(vsLi/Li+)に充電し、同じ電流密度で2.5 V(vsLi/Li+)に放電した。4番目のサイクルからは、同じ電圧条件で0.5Cの電流密度で充放電を行った。
【0110】
<負極表面の成分評価>
上記で前リチウム化された電極をDMCに1分以下洗浄し、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)実験を行った。該当実験において、LiF成分はF1sで685.2eV領域でのピーク強度(peak intensity)を通じて含有量値を得た。Li2CO3成分の含有量は、O1sでCO3のピークが現れる領域である531.7eVでのピーク強度を通じて得た。全体元素のピーク強度で当該ピーク強度が占める割合を通じてSEI内の特定成分の含有量値を求めた。
【0111】
【0112】
表1を参照すると、FECを含んだ前リチウム化溶液を用いて前リチウム化時に定電圧充電を行って前リチウム化された実施例1~3の場合、定電流充電が行われた比較例1及び比較例2よりもクーロン効率と容量維持率に優れていた。特に、実施例1~3は、負極を長期間保管した後にもクーロン効率が維持されることが分かる。これは、FECを添加し、定電圧で充電することによって、表面に耐酸化性に優れている被膜が形成されたことが分かる。これは、実施例1~実施例3で測定された前リチウム化された電極表面におけるLiF及びLi2CO3の含有量が比較例より多いことから分かる。すなわち、実施例1~実施例3の場合、耐酸化性が増大されることによって、長期間の保管にも前リチウム化を通じて入れたリチウム及び電子を消費することなく、これにより容量維持率が比較例に比べて高いことがわかる。
【0113】
特に、比較例2の場合、FECが添加された前リチウム化溶液を用いた比較例1に比べてクーロン効率および容量維持率が落ちることが示されたが、長期間保存されることによって、クーロン効率の減少量が比較例1に比べてより大きかった。これは、FECを添加剤レベルで使用すると、負極表面の酸化還元反応を遮断し得る程度の耐酸化性を有する被膜(LiF及びLi2CO3の含有量が多い被膜)が形成されないことを意味する。
【0114】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に開示された図面は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されることではない。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【0115】
一方、本明細書において、上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が用いられたが、これらの用語は説明の便宜のためのものであるのみであり、対象となる物の位置や観測者の位置などによって変わり得ることは自明である。