特許 7386989 ボール式文字盤

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-11-16

(45)【発行日】2023-11-27

(54)【発明の名称】ボール式文字盤

(51)【国際特許分類】

   G04B 39/00 20060101AFI20231117BHJP

   G04B 45/00 20060101ALI20231117BHJP

   G04B 19/04 20060101ALI20231117BHJP

【ＦＩ】

G04B39/00 A

G04B45/00 J

G04B19/04 Z

【請求項の数】 7

(21)【出願番号】P 2022524637

(86)(22)【出願日】2020-11-05

(65)【公表番号】

(43)【公表日】2022-12-26

(86)【国際出願番号】 EP2020081092

(87)【国際公開番号】W WO2021089681

(87)【国際公開日】2021-05-14

【審査請求日】2022-04-26

(31)【優先権主張番号】19207240.3

(32)【優先日】2019-11-05

(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP

(73)【特許権者】

【識別番号】506425538

【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド

(74)【代理人】

【識別番号】100098394

【弁理士】

【氏名又は名称】山川 茂樹

(72)【発明者】

【氏名】ゴイエ，ダミアン

【審査官】榮永 雅夫

(56)【参考文献】

【文献】中国特許出願公開第１０６０９４４９３（ＣＮ，Ａ）

【文献】米国特許第５８０５５３１（ＵＳ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２０１２／０２６３０２２（ＵＳ，Ａ１）

【文献】米国特許出願公開第２００２／００６７６６４（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｇ０４Ｂ １／００ － ９９／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

腕時計の風防、具体的には腕時計文字盤（２００）上に配置されるように構成された風防（１００）であって、前記腕時計文字盤（２００）は、少なくとも１つのインデックス（２０１）を備え、前記風防（１００）は、第１可動要素（２１０）を備えるように構成された少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）を備え、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）は、離れるように構成された少なくとも１つの上壁（１０１）と、少なくとも１つの側壁（１０２）とを備え、
前記少なくとも１つの上壁（１０１）と、前記少なくとも１つの側壁（１０２）とは、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）を形成するように構成され、前記風防は、第２可動要素（２２０）を備えるように構成された少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）と、前記少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）を形成するように構成された少なくとも１つの外周壁（１０３）とを備え、前記少なくとも１つの側壁（１０２）は、前記第１可動要素（２１０）の前記外周壁（１０３）に向けた移動のみを制限し、かつ自身に前記第１可動要素（２１０）が衝突したときのエネルギーを放散できるように前記少なくとも１つの上壁（１０１）の厚みよりも厚く構成されていることを特徴とする、風防（１００）。

【請求項2】

前記少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）は、前記少なくとも１つの側壁（１０２）および／または前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）を囲む、請求項１に記載の風防（１００）。

【請求項3】

前記少なくとも１つの外周壁（１０３）は、前記少なくとも１つの側壁（１０２）および／または前記少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）を囲む、請求項１に記載の風防（１００）。

【請求項4】

前記少なくとも１つの側壁（１０２）は、前記少なくとも１つのインデックス（２０１）から拡大画像を得るように構成される、請求項１に記載の風防（１００）。

【請求項5】

腕時計文字盤、具体的には自身の上に配置されるように構成された風防（１００）を備える腕時計文字盤（２００）であって、前記腕時計文字盤（２００）は、少なくとも１つのインデックス（２０１）を備え、前記風防（１００）は、第１可動要素（２１０）を備えるように構成された少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）を備え、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）は、離れるように構成された少なくとも１つの上壁（１０１）と、少なくとも１つの側壁（１０２）とを備え、前記少なくとも１つの上壁（１０１）と、前記少なくとも１つの側壁（１０２）とは、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）を形成するように構成され、前記風防は、第２可動要素（２２０）を備えるように構成された少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）と、前記少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）を形成するように構成された少なくとも１つの外周壁（１０３）とを備える、風防（１００）と、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）内で自由に移動する前記少なくとも１つの第１可動要素（２１０）と、前記少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）内で自由に移動するように構成された少なくとも１つの第２可動要素（２２０）と、を備え、前記少なくとも１つの側壁（１０２）は、前記第１可動要素（２１０）の前記外周壁（１０３）に向けた移動のみを制限し、かつ自身に前記第１可動要素（２１０）が衝突したときのエネルギーを放散できるように前記少なくとも１つの上壁（１０１）の厚みよりも厚く構成されている腕時計文字盤（２００）。

【請求項6】

前記少なくとも１つの第１可動要素（２１０）および／または前記少なくとも１つの第２可動要素（２２０）は強磁性材料製である、請求項５に記載の腕時計文字盤（２００）。

【請求項7】

腕時計、具体的には風防（１００）とこの風防（１００）が上面に配置されるように構成された腕時計文字盤（２００）とを備える腕時計（３００）であって、前記腕時計文字盤（２００）は、少なくとも１つのインデックス（２０１）を備え、前記風防（１００）は、第１可動要素（２１０）を備えるように構成された少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）を備え、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）は、離れるように構成された少なくとも１つの上壁（１０１）と、少なくとも１つの側壁（１０２）とを備え、前記少なくとも１つの上壁（１０１）と、前記少なくとも１つの側壁（１０２）とは、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）を形成するように構成され、前記風防は、第２可動要素（２２０）を備えるように構成された少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）と、前記少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）を形成するように構成された少なくとも１つの外周壁（１０３）とを備える、腕時計文字盤（２００）と、前記少なくとも１つの第１チャンバ（１１０）内で自由に移動するように構成された少なくとも１つの第１可動要素（２１０）と、前記少なくとも１つの第２チャンバ（１２０）内で自由に移動するように構成された少なくとも１つの第２可動要素（２２０）と、前記腕時計文字盤（２００）の下に配置され、前記腕時計文字盤（２００）を挟んで前記少なくとも１つの第１可動要素（２１０）を移動させるように構成された少なくとも１つの第１磁性針（３１０）と、前記腕時計文字盤（２００）の下に配置され、前記腕時計文字盤（２００）を挟んで前記少なくとも１つの第２可動要素（２２０）を移動させるように構成された少なくとも１つの第２磁性針（３２０）と、を備え、前記少なくとも１つの側壁（１０２）は、前記第１可動要素（２１０）の前記外周壁（１０３）に向けた移動のみを制限し、かつ自身に前記第１可動要素（２１０）が衝突したときのエネルギーを放散できるように前記少なくとも１つの上壁（１０１）の厚みよりも厚く構成されている腕時計（３００）。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、風防、より正確には拡大鏡を備え、耐衝撃性の風防の分野に関する。

【背景技術】

【0002】

ボールを備える文字盤が従来技術から公知である。しかし、これらボールは文字盤上を自由に移動するもので、生憎、スポーツの最中、これらボールの衝突により、風防が傷ついてしまい得る。そうすると、第一に腕時計の外観に悪影響が生じ、さらには文字盤のインデックスの見やすさも損なわれる。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0003】

本発明は、腕時計、具体的には腕時計文字盤上に配置されるように構成された風防により、これら欠点を完全にまたは一部解決することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0004】

前記腕時計文字盤は、少なくとも１つのインデックスを備え、前記風防は、第１可動要素を備えるように構成された少なくとも１つの第１チャンバを備え、前記少なくとも１つの第１チャンバは、離れるように構成された少なくとも１つの上壁と、前記少なくとも１つの上壁よりも厚い少なくとも１つの側壁とを備え、
前記少なくとも１つの上壁と、前記少なくとも１つの側壁とは、前記少なくとも１つの第１チャンバを形成するように構成されることを特徴とする。

【0005】

この構成により、前記少なくとも１つの第１可動要素は制限された空間に閉じ込められる。これにより、第一に前記少なくとも１つの第１可動要素は移動が制限され、第二に前記風防の位置に衝突することが防止され、さらに、前記少なくとも１つの第１可動要素により前記風防にかかる衝撃が過大になることが防止される。したがって、前記少なくとも１つの第１可動要素は、前記腕時計の外観に悪影響を及ぼすことなく、したがって前記文字盤の前記インデックスの見やすさを損なうことないよう、傷つけることなく前記風防に衝突可能である。

【0006】

一実施形態によると、前記風防は、少なくとも１つの第２可動要素を備えるように構成された少なくとも１つの第２チャンバと、前記少なくとも１つの第２チャンバを形成するように構成された少なくとも１つの外周壁とを備える。

【0007】

この構成により、
一実施形態によると、前記少なくとも１つの第２チャンバは、前記少なくとも１つの側壁および／または前記少なくとも１つの第１チャンバを囲む。

【0008】

一実施形態によると、前記少なくとも１つの外周壁は、前記少なくとも１つの側壁および／または前記少なくとも１つの第２チャンバを囲む。

【0009】

上述の構成のいずれかにより、前記少なくとも１つの第２可動要素は、前記少なくとも１つの側壁と、前記少なくとも１つの外周壁との間に設けられた空間に閉じ込められる。

【0010】

一実施形態によると、前記少なくとも１つの側壁は、前記少なくとも１つのインデックスから拡大画像を得るように構成される。

【0011】

この構成により、前記少なくとも１つの分離壁は拡大鏡効果を有する。

【0012】

本発明はさらに、上記請求項のいずれか一項に記載の風防と、前記少なくとも１つの第１チャンバ内で自由に移動するように構成された少なくとも１つの第１可動要素と、前記少なくとも１つの第２チャンバ内で自由に移動するように構成された少なくとも１つの第２可動要素と、を備える腕時計文字盤に関する。

【0013】

この構成により、ボールは制限された空間に閉じ込められる。これにより、第一にこれらボールは移動が制限され、第二に前記風防の位置に同時に衝突することが防止され、さらに、ボールのうちの１つにより前記風防にかかる衝撃が過大になることが防止される。したがって、これらボールは、前記腕時計の外観に悪影響を及ぼすことなく、したがって前記文字盤の前記インデックスの見やすさを損なうことないよう、傷つけることなく前記風防に衝突可能である。

【0014】

一実施形態によると、前記少なくとも１つの第１可動要素および／または前記少なくとも１つの第２可動要素は強磁性材料製である。

【0015】

この構成により、前記少なくとも１つの第１可動要素および／または前記少なくとも１つの第２可動要素は磁化され得る。

【0016】

本発明はさらに、上記請求項に記載の腕時計文字盤と、前記腕時計文字盤の下に配置され、前記腕時計文字盤を挟んで前記少なくとも１つの第１可動要素を移動させるように構成された少なくとも１つの第１磁性針と、前記腕時計文字盤の下に配置され、前記腕時計文字盤を挟んで前記少なくとも１つの第２可動要素を移動させるように構成された少なくとも１つの第２磁性針と、を備える腕時計に関する。

【0017】

この構成により、ボールは、１つの情報を示すように、制限された空間において、磁性針により移動させられる。これにより、第一にそれらボールは移動が制限され、第二に前記風防の位置に同時に衝突することが防止され、さらに、ボールのうちの１つにより前記風防にかかる衝撃が過大になることが防止される。したがって、これらボールは、前記腕時計の外観に悪影響を及ぼすことなく、したがって前記文字盤の前記インデックスの見やすさを損なうことないよう、傷つけることなく前記風防に衝突可能である。

【0018】

上述の実施形態および代替の構成は、単独でも、技術的に可能な任意の組み合わせでも用いられ得る。

【0019】

単に非限定的な例として、添付の図面を参照する以下の説明に照らして本発明はよく理解され、その効果も明らかとなろう。同一の参照符号は構造的および／または機能的に同一または類似の要素に対応する。

【0020】

何ら限定しない例として、添付の図面を用いて本発明をより詳細に説明する。

【図面の簡単な説明】

【0021】

【図1】一実施形態による文字盤および風防を備える腕時計を示す。

【発明を実施するための形態】

【0022】

図１は、腕時計３００上、より具体的には例えば何時または何分などの少なくとも１つのインデックス２０１を備える腕時計文字盤２００上に配置された風防１００の形態の、本発明の実施形態を示す。

【0023】

本発明の前記風防１００は、典型的にはボールであり、好ましくは強磁性材料製の少なくとも１つの第１可動要素２１０が自由に移動可能な、少なくとも１つの第１チャンバ１１０を備える。

【0024】

「自由に移動」とは、前記少なくとも１つの第１可動要素２１０の移動に一切の障害が存在しないことと理解されよう。実際、前記少なくとも１つの第１チャンバ１１０は、少なくとも１つのインデックス２０１を有する前記腕時計文字盤２００と、前記腕時計文字盤２００から離れている、即ち間に空間を開けた少なくとも１つの上壁１０１と、少なくとも１つの側壁との間に設けられる。

【0025】

第一に前記少なくとも１つの側壁１０２は、前記少なくとも１つの上壁１０１と、前記腕時計文字盤２００との間に設けられ、第二に前記少なくとも１つの側壁１０２は、図１に示すように前記少なくとも１つの第１チャンバ１１０を囲む。これにより、前記少なくとも１つの上壁１０１と、前記少なくとも１つの側壁１０２とが、前記少なくとも１つの第１チャンバ１１０を形成する。

【0026】

図１に見られるように、前記少なくとも１つの側壁１０２は、前記少なくとも１つの上壁１０１よりも厚い。実際、前記少なくとも１つの上壁の厚さ１０６は、前記少なくとも１つの側壁の厚さ１０７よりも小さい。

【0027】

したがって、１つまたは複数のボール２１０は閉じ込められる。言い換えると、前記少なくとも１つの第１可動要素２１０は、制限された空間、即ち、前記少なくとも１つの第１チャンバ１１０の空間に閉じ込められる。これにより、第一に前記少なくとも１つの第１可動要素２１０は移動が制限され、第二に風防１００の位置に衝突することが防止され、さらに、前記少なくとも１つの第１可動要素２１０により風防１００にかかる衝撃が過大になることが防止される。

【0028】

したがって、前記少なくとも１つの側壁の厚さ１０７が、前記少なくとも１つの第１可動要素２１０による衝撃のエネルギーを放散するのに十分であるため、これらボールは、傷つけることなく風防１００に衝突可能であり、これによって、腕時計の外観に悪影響を及ぼすことはなく、したがって文字盤のインデックス２０１の見やすさを損なうこともない。

【0029】

前記腕時計文字盤に別のインデックスを設けることも可能である。このために、前記風防１００は、典型的にはボールであり、好ましくは強磁性材料製である少なくとも１つの第２可動要素２２０を備えるように構成された少なくとも１つの第２チャンバ１２０と、前記少なくとも１つの第２チャンバ１２０を形成するように構成された少なくとも１つの外周壁１０３とを備え得る。

【0030】

前記少なくとも１つの外周壁１０３にも厚みはあるが、前記少なくとも１つの外周壁１０３は前記少なくとも１つの第２チャンバ１２０を形成し、それ、即ち前記少なくとも１つの第２チャンバ１２０が前記少なくとも１つの側壁１０２および／または前記少なくとも１つの第１チャンバ１１０を囲み、結果的に前記少なくとも１つの外周壁１０３は前記少なくとも１つの側壁１０２および／または前記少なくとも１つの第２チャンバ１２０を囲むことにより、前記少なくとも１つの第２可動要素２２０は、前記少なくとも１つの側壁１０２と、前記少なくとも１つの外周壁１０３との間に設けられた空間に閉じ込められるため、前記少なくとも１つの第１可動要素２１０と比較して相対的に移動が制限される。

【0031】

当然、前記腕時計文字盤２００が有し得る形状によると、前記少なくとも１つの外周壁１０３の最も一般的な形状は、前記少なくとも１つの第２可動要素２２０の軌道を容易にずらすことができるよう、円形となる。しかし前記腕時計文字盤２００が直線を含む場合、前記少なくとも１つの第１可動要素２１０がその軌道の長さにより、風防２００に過剰な衝撃を与えることを防止するために、前記少なくとも１つの側壁１０２を前記腕時計３００の外側に配置することが順当である。

【0032】

前記少なくとも１つの側壁の厚さ１０７により得られる別の利点として、拡大鏡効果が挙げられる。前記少なくとも１つの側壁の厚さ１０７が、前記少なくとも１つの上壁１０１を上回るため、前記少なくとも１つのインデックス２０１から拡大画像が得られる。言い換えると、前記少なくとも１つの分離壁１０２は拡大鏡効果を有する。

【0033】

上述のように、これら各種実施形態は、腕時計文字盤２００を備える腕時計３００において実現可能である。

【0034】

前記腕時計３００は、腕時計文字盤２００を挟んで強磁性材料製の前記少なくとも１つの第１可動要素２１０を移動させるように、前記腕時計文字盤２００の下に配置された少なくとも１つの第１磁性針３１０と、同じく腕時計文字盤２００の下に配置され、同じく前記腕時計文字盤２００を挟んで強磁性材料製の前記少なくとも１つの第２可動要素２２０を移動可能な少なくとも１つの第２磁性針３２０とを備える。したがって、ボールは、例えば何時または何分などの１つの情報を示すように、制限された空間において、磁性針により移動させられる。これにより、第一にそれらボールは移動が制限され、第二に風防１００の位置に同時に衝突することが防止され、さらに、ボールのうちの１つにより風防１００にかかる衝撃が過大になることが防止される。したがって、これらボールは、腕時計の外観に悪影響を及ぼすことなく、したがって文字盤のインデックス２０１の見やすさを損なうことないよう、傷つけることなく風防１００に衝突可能である。

【図1】