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特許7386992新規な化合物の筋萎縮性側索硬化症の予防、改善または治療用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】新規な化合物の筋萎縮性側索硬化症の予防、改善または治療用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20231117BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20231117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231117BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231117BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20231117BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231117BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20231117BHJP
【FI】
C07D493/04 CSP
A61K31/37
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P39/06
A23L33/10
C12N9/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022525112
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 KR2020015014
(87)【国際公開番号】W WO2021086101
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0136458
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0154520
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142053
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519379835
【氏名又は名称】ピーアールジー エスアンドテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PRG S&TECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】パク ポムチュン
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0129904(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0039010(US,A1)
【文献】国際公開第2012/167086(WO,A1)
【文献】Kyeong LEE et al.,Synthesis of (S)-(+)-decursin and its analogues as potent inhibitors of melanin formation in B16 murine melanoma cells,European Journal of Medicinal Chemistry,2010年12月,Vol. 45, No. 12,pp.5567-5575,DOI:10.1016/j.ejmech.2010.09.006
【文献】Li LI et al.,Protective Effects of Decursin and Decursinol Angelate against Amyloid β-Protein-Induced Oxidative Stress in the PC12 Cell Line: The Role of Nrf2 and Antioxidant Enzymes,Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry,2011年03月23日,Vol. 75, No. 3,pp. 434-442,DOI:10.1271/bbb.100606
【文献】Linda K. MCLOON et al.,Wnt and Extraocular Muscle Sparing in Amyotrophic Lateral Sclerosis,Investigative Opthalmology & Visual Science,2014年09月02日,Vol. 55, No. 9,pp. 5482-5496,DOI: 10.1167/iovs.14-14886
【文献】Jee-Hyun LEE et al.,Synthesis and evaluation of (+)-decursin derivatives as inhibitors of the Wnt/β-catenin pathway,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2016年08月,Vol. 26, No. 15,pp.3529-3532,DOI: 10.1016/j.bmcl.2016.06.029
【文献】Li YU et al.,Wnt Signaling is Altered by Spinal Cord Neuronal Dysfunction in Amyotrophic Lateral Sclerosis Transgenic Mice,Neurochemical Research,2013年06月20日,Vol. 38, No. 9,pp.1904-1913,DOI: 10.1007/s11064-013-1096-y
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
A23L
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物、その水化物またはその塩:
【化1】
前記化学式1において、
が単一結合である時、Xは、
【化2】
であり、R及びRは、それぞれ異なり、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択され、
が二重結合である時、Xは、
【化3】
であり、R及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択される。
【請求項2】
前記化合物は、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(ピリジン-4-イル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸からなる群から選択されたことを特徴とする、請求項1に記載の化合物、その水化物またはその塩。
【請求項3】
下記化学式2:
【化4】
で表される化合物、その水化物またはその塩を含む、筋萎縮性側索硬化症の予防または治療用薬学組成物であって、
前記化学式2において、
が、単一結合または二重結合であり、
nは、0~1の整数、
Xは、
【化5】
であり、
、R、R、及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択され、
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の凝集及びミスフォールディングを抑制することを特徴とする、筋萎縮性側索硬化症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記化合物は、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート、
(S,E)-7-((3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(ピリジン-4-イル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-ヒドロキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-フルオロフェニル)アクリレート、
(S,E)-7-((3-(4-フルオロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-アセトキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)アクリレート、及び(S,E)-7-((3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オンからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項に記載の筋萎縮性側索硬化症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
下記化学式2:
【化6】
で表される化合物、その水化物またはその塩を含む、筋萎縮性側索硬化症の予防または改善用健康機能食品組成物であって、
前記化学式2において、
が、単一結合または二重結合であり、
nは、0~1の整数、
Xは、
【化7】
であり、
、R、R、及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択され、
スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の凝集及びミスフォールディングを抑制することを特徴とする、筋萎縮性側索硬化症の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項6】
前記化合物は、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート、
(S,E)-7-((3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(ピリジン-4-イル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-ヒドロキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-フルオロフェニル)アクリレート、
(S,E)-7-((3-(4-フルオロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-アセトキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート、
(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)アクリレート、及び(S,E)-7-((3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オンからなる群から選択されたことを特徴とする、請求項に記載の筋萎縮性側索硬化症の予防または改善用健康機能食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物の筋萎縮性側索硬化症の予防、改善または治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)は、致命的な神経退行性疾患であって、脊髄内の細胞死によって運動ニューロンが選択的に消失される。約10~20%の患者が遺伝的パターン(家族性ALS、familial ALS;fALS)を示し、残りは、孤発性ALS(sporadic ALS;sALS)に分類される。一部の遺伝子が、家族性ALSのALS-関連遺伝子座位で知られ、そのうち、SOD1は、fALSで初めて明らかになった遺伝子である。fALS関連遺伝子が、sALS発病にも作用すると推測されるが、現在までsALSに対する正確な原因は明らかになっていない。また、ALSは、臨床症状によって典型的なALSと痴呆とを伴ったALS及び非典型的なALSに分類される。実際に、SOD1の突然変異は、典型的なALSを誘発し、C9orf72は、痴呆を伴ったALSと関連している。
【0003】
ALSの重要な特徴の1つは、進行性疾患であって、神経細胞死が神経連結を通じて伝播されるという点である。実に、アルツハイマー及びパーキンソン病も類似した表現型を示す。前記特徴と関連して、プリオン類似伝播機転(prion-like propagation)が提起され、これは、ミスフォールディングされた(misfolded)タンパク質が正常タンパク質を異常タンパク質に変形させるということである。実際に、突然変異アミロイドβ(Amyloid beta;Aβ)は、正常Aβを異常Aβに変形させることができる。最近、突然変異またはミスフォールディングされたSOD1も、疾病が進行する過程で分泌され、伝播されると報告された。しかし、ALS疾患治療剤をターゲットとしたSOD1凝集及びミスフォールディング(misfolding)抑制剤については多くの研究が進められていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な化合物の筋萎縮性側索硬化症の予防、改善または治療用途に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を果たすために、本発明は、下記化学式1で表される化合物、その水化物またはその塩を提供する。
【0006】
【化1】
【0007】
前記化学式1において、
が単一結合である時、Xは、CHであり、R及びRは、それぞれ異なり、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択され、
【0008】
が二重結合である時、Xは、Nであり、R及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択される。
【0009】
また、本発明は、下記化学式2で表される化合物、その水化物またはその塩を含む筋萎縮性側索硬化症の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0010】
【化2】
【0011】
前記化学式2において、
【0012】
が、単一結合または二重結合であり、
【0013】
nは、0~1の整数、
【0014】
Xは、CHまたはNであり、
【0015】
及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択される。
【0016】
また、本発明は、前記化学式2で表される化合物、その水化物またはその塩を含む筋萎縮性側索硬化症の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、新規な化合物の筋萎縮性側索硬化症の予防、改善または治療用途に関するものであって、本発明者らは、ALS疾患においてSOD1凝集が重要な原因の1つであるという点を明らかにし、TDP-43または細胞内ストレスの調節抑制によるWT-SOD1の凝集が、sALSの原因になるという可能性を提示した。また、本発明者らは、SOD1凝集及びミスフォールディング抑制剤として、新たな化合物であるPRG-A-01(SLC-B036)を探し出した。前記化合物は、ALSモデルマウスで筋肉弱化及び運動障害に対する保護効果を示した。組織学的分析の結果、PRG-A-01(SLC-B036)処理によって脊髄内神経が保持された。また、本発明者らは、さらに最適化された薬物可能な候補化合物(PRG-A-04)を得た。結論的に、本発明の化合物は、ALS疾患に対する治療剤としての開発に有用に活用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】突然変異SOD1が、WT(wild type;野生型;正常型)-SOD1凝集を促進させるという結果を示す図面である。A.突然変異SOD1sが、WT-SOD1凝集を誘導するという結果を示す。B.生体外試験(in vitro)で突然変異SOD1sは、SOD1凝集を促進させるという結果を示す。C.ER-ストレスは、WT-SOD1凝集を誘導するという結果を示す。D.低酸素条件は、SOD1凝集及びミスフォールディングを促進するという結果を示す。
図2図2のAは突然変異SOD1が、WT-SOD1凝集を促進させるという結果を示す。図2のBは、低酸素条件及びZn/Cuイオン不均衡が、WT-SOD1凝集を誘導するという結果を示す。
図3】ミスフォールディングされたSOD1凝集に対する化合物抑制剤のスクリーニング結果を示す図面である。A.化合物スクリーニングに対する代表グラフを示す。陰性対照群(-;赤色線)は、突然変異SOD1なしに反応させ、陽性対照群(+;青色線)は、化合物なしに突然変異SOD1で反応させた。B.PRG-A-01が、SOD1凝集を抑制させるという結果を示す。C.PRG-A-01は、容量による突然変異SOD1凝集遮断効果を示すという結果を示す。
図4】ミスフォールディングされたSOD1凝集に対する化合物抑制剤のスクリーニング結果を示す図面である。A.化合物をスクリーニングするELISAシステムに対する模式図を示す。B.SOD1発現に対する化合物の効果を示す。C.未変性ゲル分析(native gel analysis)を用いて、SOD1凝集に対する化合物の効果を試験した結果を示す。D.PRG-A-01の化学構造を示す。E.PRG-A-01は、細胞毒性がないという結果を示す。
図5】PRG-A-01が、SOD1凝集及びミスフォールディングを遮断するという結果を示す図面である。A.TDP-43過発現によって誘導されたSOD1凝集が、PRG-A-01処理で抑制される結果を示す。B.TDP-43過発現を通じて誘導されたSOD1凝集が、PRG-A-01によって減少する結果を示す。C.PRG-A-01が、SOD1の多量体形成を遮断するという結果を示す。D.PRG-A-01は、SOD1のミスフォールディングの形成を減少させるという結果を示す。E.PRG-A-01の容量によるミスフォールディングSOD1抑制効果を示す。F.PRG-A-01は、突然変異SOD1のミスフォールディングを抑制するという結果を示す。
図6】PRG-A-01が、SOD1凝集及びミスフォールディングを遮断するという結果を示す図面である。A.TDP-43過発現は、WT-SOD1凝集を誘導するという結果を示す。B.突然変異SOD1は、TDP43の細胞内分布(localization)に影響を与えるという結果を示す。C.PRG-A-01は、低酸素ストレスによって誘導されたSOD1の凝集を遮断するという結果を示す。
図7】ALSマウスモデルでPRG-A-01の生体内(in vivo)効果を確認した結果である。A.PRG-A-01投与実験に対する模式図を示す。B.ALSマウスモデルで握力(grip strength)の測定結果を示す(12週齢からPRG-A-01投与)。C.ビデオファイル内マウスのスナップショットを示す。D.SOD1G93A-Tgマウス脊髄の組織学的分析の結果を示す。E.PRG-A-01の作用機転に対する簡単な模式図を示す。
図8】PRG-A-01の生体内効果を示す図面である。A及びB.雄(A)及び雌(B)SOD1G93A-Tg ALSモデルマウスで前足の握力の測定結果を示す。C.行動実験の模式図を示す。D.SOD1G93A-Tg ALSモデルマウスのKaplan-Meier生存曲線を示す。E.PRG-A-01の薬物動態学的(pharmacokinetics;PK)分析の結果を示す。
図9】PRG-A-01の最適化結果を示す図面である。A及びB.MTT分析を通じた細胞毒性の測定結果を示す。C.SOD1凝集に対する未変性ゲル分析の結果を示す。D.SODのIF染色結果を示す。E.ALS治療候補化合物であるPRG-A-04の化学構造を示す。
図10】PRG-A-02(A)、PRG-A-03(B)及びPRG-A-04(C)の薬物動態学的分析の結果を示す図面である。
図11】ALSモデルマウスでPRG-A化合物の効果を示す図面である。A.マウスのスナップショットを示す。B.PRG-A-04の優れた効果を示す。C.PRG-A-01、PRG-A-02及びPRG-A-03のKaplan-Meier生存曲線の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
これにより、本発明者らは、SOD1タンパク質の伝播(propagation)またはWT-SOD1と突然変異/ミスフォールディングされたSOD1との相互作用を遮断することが、ALS疾患をターゲットとする治療剤になると判断し、本発明を完成した。
【0020】
本発明は、下記化学式1で表される化合物、その水化物またはその塩を提供する。
【0021】
【化1】
【0022】
前記化学式1において、
が単一結合である時、Xは、CHであり、R及びRは、それぞれ異なり、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択され、
【0023】
が二重結合である時、Xは、Nであり、R及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択される。
【0024】
望ましくは、前記化合物は、
が単一結合である時、Xは、CHであり、R及びRは、それぞれ異なり、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択され、
が二重結合である時、Xは、Nであり、R及びRは、それぞれ水素であるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
より望ましくは、前記化合物は、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)propanoate;SNU-C4]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(ピリジン-4-イル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(pyridin-4-yl)acrylate;SNU-C9]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(4-acetoxy-3-methoxyphenyl)propanoate;SNU-C15]からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、本発明は、下記化学式2で表される化合物、その水化物またはその塩を含む筋萎縮性側索硬化症の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0027】
【化2】
【0028】
前記化学式2において、
が、単一結合または二重結合であり、
nは、0~1の整数、
Xは、CHまたはNであり、
及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択される。
【0029】
望ましくは、前記化合物は、
が単一結合である時、nは、1であり、Xは、CHであり、R及びRは、それぞれ同一または異なり、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
望ましくは、前記化合物は、
が二重結合である時、nは、0~1の整数、Xは、CHまたはNであり、R及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
より望ましくは、前記化合物は、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)acrylate;PRG-A-01;SLC-B036]、(S,E)-7-((3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[(S,E)-7-((3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one;PRG-A-02]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)propanoate;SNU-C4]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3,4-dimethoxyphenyl)acrylate;SNU-C5]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(3,4-dimethoxyphenyl)propanoate;SNU-C7]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(ピリジン-4-イル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(pyridin-4-yl)acrylate;SNU-C9]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-ヒドロキシフェニル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3-hydroxyphenyl)acrylate;SNU-C10]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-フルオロフェニル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(4-fluorophenyl)acrylate;SNU-C11;PRG-A-03]、(S,E)-7-((3-(4-フルオロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[(S,E)-7-((3-(4-fluorophenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one;SNU-C13]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-アセトキシフェニル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3-acetoxyphenyl)acrylate;SNU-C14]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(4-acetoxy-3-methoxyphenyl)propanoate;SNU-C15]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(4-acetoxy-3-methoxyphenyl)acrylate;SNU-C17]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)アクリレート[(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3,4-difluorophenyl)acrylate;SNU-C18]、及び(S,E)-7-((3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[(S,E)-7-((3-(3-methoxy-4-nitrophenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one;PRG-A-04]からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
より望ましくは、前記薬学組成物は、スーパーオキシドジスムターゼ1(Superoxide dismutase 1;SOD1)の凝集及びミスフォールディングを抑制することができる。
【0033】
本発明の薬学組成物は、有効成分の以外に薬剤学的に適し、生理学的に許容される補助剤を使用して製造可能であり、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などの可溶化剤を使用することができる。本発明の薬学組成物は、投与のために、有効成分の以外にさらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで薬学組成物として望ましく製剤化することができる。液状溶液で製剤化される組成物において、許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適したものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち、1成分以上を混合して使用し、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液のような注射用剤型、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤で製剤化することができる。
【0034】
本発明の薬学組成物の薬剤の製剤形態は、顆粒剤、散剤、被覆錠、錠剤、カプセル剤、坐剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤または注射可能な液剤及び活性化合物の徐放性製剤などになりうる。本発明の薬学組成物は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、鼻側内、吸入、局所、直腸、経口、眼球内または皮内経路を通じて通常の方式で投与することができる。本発明の薬学組成物の有効成分の有効量は、疾患の予防または治療時に要求される量を意味する。したがって、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有された有効成分及び他の成分の種類及び含量、剤型の種類及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時使われる薬物を含めた多様な因子によって調節される。これに制限されるものではないが、例えば、大人の場合、1日1回ないし数回投与時に、本発明の組成物は、1日1回ないし数回投与時に、0.01ng/kg~10g/kgの容量で投与することができる。
【0035】
また、本発明は、下記化学式2で表される化合物、その水化物またはその塩を含む筋萎縮性側索硬化症の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0036】
【化2】
【0037】
前記化学式2において、
が、単一結合または二重結合であり、
nは、0~1の整数、
Xは、CHまたはNであり、
及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択される。
【0038】
望ましくは、前記化合物は、
が単一結合である時、nは、1であり、Xは、CHであり、R及びRは、それぞれ同一または異なり、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
望ましくは、前記化合物は、
が二重結合である時、nは、0~1の整数、Xは、CHまたはNであり、R及びRは、それぞれ同一または異なり、水素、(C~C)アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロまたは(C~C)アルキルカルボキシから選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
より望ましくは、前記化合物は、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート[PRG-A-01;SLC-B036]、(S,E)-7-((3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[PRG-A-02]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸[SNU-C4]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)アクリレート[SNU-C5]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロパン酸[SNU-C7]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(ピリジン-4-イル)アクリレート[SNU-C9]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-ヒドロキシフェニル)アクリレート[SNU-C10]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-フルオロフェニル)アクリレート[SNU-C11;PRG-A-03]、(S,E)-7-((3-(4-フルオロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[SNU-C13]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3-アセトキシフェニル)アクリレート[SNU-C14]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)プロパン酸[SNU-C15]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(4-アセトキシ-3-メトキシフェニル)アクリレート[SNU-C17]、(S)-8,8-ジメチル-2-オキソ-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-7-イル(E)-3-(3,4-ジフルオロフェニル)アクリレート[SNU-C18]、及び(S,E)-7-((3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[PRG-A-04]からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の健康機能食品組成物は、有機酸、リン酸塩、抗酸化剤、乳糖カゼイン、デキストリン、ブドウ糖、砂糖及びソルビトールからなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含みうる。有機酸は、これに制限されるものではないが、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸またはリンゴ酸であり、リン酸塩は、これに制限されるものではないが、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩またはポリリン酸塩(重合リン酸塩)であり、抗酸化剤は、これに制限されるものではないが、ポリフェノール、カテキン、α‐トコフェロール、ローズマリー抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸またはフィチン酸などの天然抗酸化剤である。
【0042】
本発明のさらに他の具体例において、前記健康機能食品は、前記有効成分の以外にもさまざまな栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有することができる。また、本発明の一実施例による食品組成物は、天然果汁、果汁飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。
【0043】
本発明の一実施例によれば、健康機能食品の剤型は、これに制限されるものではないが、固形、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、液相または飲料の形態である。
【0044】
また、前記健康機能食品は、これに制限されるものではないが、お菓子類、糖類、アイスクリーム製品類、乳加工品、食肉製品、魚肉製品、豆腐類またはコンニャク類、食用油脂類、麺類、茶類、飲料類、特殊栄養食品、健康補助食品、調味食品、氷、人参剤品類、キムチ漬け食品、乾布類、フルーツ、野菜、フルーツまたは野菜の乾燥製品、切断製品、果汁、野菜ジュース、これらの混合ジュース、チップ類、麺類、畜産加工食品、水産加工食品、乳加工食品、発酵乳食品、豆類食品、穀類食品、微生物発酵食品、製菓製パン、味付け類、肉加工類、酸性飲料水、甘草類、ハーブ類などの食品の製造に使われる。
【0045】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものであり、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。
【0046】
下記の実験例は、本発明によるそれぞれの実施例に共通して適用される実験例を提供するためである。
【0047】
<実験例>
【0048】
1.マウス
実験は、大韓民国の釜山大学校で承認した動物政策によって実験室動物管理評価及び認証協会承認施設で行った。B6SJL-Tg(SOD1G93A)マウスは、Jackson Laboratory(Stock No:002726)から購入した。あらゆるマウスは、温度及び光調節条件下で保持させ(20~23℃、明暗周期12hr-12hr)、滅菌された食べ物及び水を提供した。
【0049】
2.生体内薬物処理及び組織学的分析
SOD1G93Aマウスは、12週齢または14週齢のマウスにビヒクル(DMSO)、SLC-B036(10mg/kg、20mg/kg)を6週間毎週2回腹腔注射を通じて投与した。対照群マウスは、同じ条件で処理した。組織学的分析のために、マウスは、18週に犠牲させた。マウス切開後、基本的な組織加工手続きによって4%パラホルムアルデヒドを使用して脊髄を48時間固定させ、パラフィンブロックに包埋させた。Leica microtomeで包埋された組織(脊髄の頚椎部位)を5μmに切断し、接着コーティングスライド(Marienfeld laboratory glassware、Germany)に移した。脱パラフィン化及び再水和後に、脊髄神経の数を確認するために、スライドをヘマトキシリン及びエオシンで染色させた。
【0050】
3.運動遂行測定
行動実験のために、握力測定器(grip strength meter)を用いて2週ごとに握力を確認した。マウスは、前足でテンションバー(tension bar)を握らせた後、バーを放すまでしっぽを徐々に引っ張った。マウスの運動性、呼吸及び四肢麻痺を確認するために、投与終了時点に映像分析を行った(18~20週)。
【0051】
4.細胞培養及び試薬
HEK293細胞は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンが含まれたDMEM液体培地で37℃、5% COで保持させた。SK-N-SH細胞は、Korean Cell Line Bank(KCLB、Seoul、South Korea)から購入し、10%ウシ胎児血清、1%抗生剤、25mM HEPES、300mg/L L-Gluが含まれたMEM培地で保持させた。ヒト線維芽細胞(9歳女性)は、Coriell Cell Repositories(New Jersey、USA)から購入し、15% FBS、2mM Glutamine、抗生剤が除外された26mM HEPESが含まれたEMEMで保持させた。タプシガルギン(Thapsigargin)(ER calcium scavenger:CAS 67526-95-8)は、Calbiochem(Darmstadt、Germany)から購入した。CoCl(hypoxia-inducer:C8661)は、Sigma Aldrich(St、Louis、Mo、USA)から購入した。
【0052】
5.化合物スクリーニング
化合物スクリーニングのために、本発明者らは、ELISA分析システムを適用した。WT-SOD1と突然変異SOD1との結合抑制剤を選別するために、本発明者らは、0.5%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde;PFA)を使用して、WT-SOD1組換えタンパク質を96ウェルプレート上に固定させた。プレートを乾燥させ、リン酸緩衝食塩水(phosphate-buffered saline;PBS)で洗浄した後、最終濃度50μmの化合物を反応させた後、突然変異SOD1-GST(A4V、G37R、G85R、G93A)タンパク質を添加した。2時間反応後、96ウェルプレートをPBSで洗浄し、非特異的反応(non specific reaction)の防止のために、3%スキムミルクで遮断させた。プレートは、anti-GST antibody(1:10,000で希釈)で1時間反応させた後、anti-mouse IgG-HRP(1:50,000で希釈)で1時間反応させた。2回洗浄した後、プレートは、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(tetramethylbenzidine;TMB)溶液(Calbiochem)で30分間、停止液(1N HSO)で30分間反応させた。最終的に、本発明者らは、ELISA reader(450nmの吸光度)を使用して数値を分析した。陰性対照群(-;赤色線)は、突然変異SOD1なしに反応させ、陽性対照群(+;青色線)は、化合物なしに突然変異SOD1で反応させた。
【0053】
6.組換えタンパク質
組換えタンパク質を製造するために、pGEX-4T1(Invitrogen)にTEVプロテアーゼ切断サイトを追加して作った改良ベクターである、pGEX-TEV vectorのEcoRI及びHindIIIサイトにヒトSOD1(WT、A4V、G37R、G85R、G93A)を結合させた。組換えタンパク質は、大腸菌(Escherichia coli;E.coli)strain BL21(DE3)でGST-融合タンパク質で発現させた。前記タンパク質は、グルタチオン-親和クロマトグラフィーで精製した。
【0054】
7.ウェスタンブロット分析
SDS-PAGEのために、RIPA buffer(50mM Tris-Cl、pH7.5、150mM NaCl、1% NP-40、0.1% SDS及び10% sodium deoxycholate)と、Native-PAGEのために、lysis buffer(50mM Tris-Cl、pH7.5、150mM NaCl、0.3% NP-40)を使用して細胞からタンパク質を抽出した。SDS-PAGEまたはNative-PAGEによってサンプルを分離し、PVDFメンブレンに移した。ブロットされたメンブレンは、3%スキムミルクが含まれたTBST bufferで1時間遮断させ、特定抗体と反応させた。反応した抗体は、ECL及びX-rayフィルム露出によって検出した。本発明に使われた抗体は、次の通りである:pan-SOD1(GTX100554)は、Genetex(California、USA)から購入した。ミスフォールディングされたSOD1特異抗体(B8H10)は、MediMabs(Montreal、Canada)から購入した。Actin(sc-1616)、GST(sc-138)、GFP(Green fluorescent protein;sc-8036)は、Santa Cruz biotechnology(Santa Cruz、CA、USA)から購入した。TDP-43 antibody(10782-2-AP)は、Proteintech(Rosemont、IL、USA)から購入した。Anti-FLAG(Sigma;F3165)は、Sigma Aldrich(St、Louis、Mo、USA)から購入し、HRP-conjugated goat anti-mouse、goat anti-rabbit及びmouse anti-goat antibodies(Pierce、Thermo Fisher Scientific,Inc.,Rockford,IL,USA)は、2次抗体として使われた。
【0055】
8.ドットブロット分析
ミスフォールディングされたSOD1発現を検出するために、SOD1ベクターで形質注入された細胞を化合物で24時間処理した。反応後、細胞を界面活性剤無溶解緩衝液で溶解させた後、Bio-Dot SF Microfiltration apparatus(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を用いて細胞融解物をニトロセルロースメンブレン上に固定させた。ペプチド反応の場合、SOD1組換えタンパク質を化合物で1時間反応させた後、サンプルをメンブレン上にローディングした。各メンブレンは、TBSで洗浄し、非特異的反応の防止のために、3%スキムミルクで遮断させた。遮断後、メンブレンは、ミスフォールディングされたSOD1またはActin antibody(1%スキムミルクを含むTBST内1:8,000)で30分間反応させ、以後、2次抗体(goat anti-mouse IgG-horseradish peroxidase、1%スキムミルク遮断緩衝液内1:50,000)で30分間反応させた。タンパク質に反応した抗体は、ECL及びX-rayフィルム露出によって検出した。Actinは、ローディング対照群として使われた。
【0056】
9.免疫蛍光染色
カバースリップ状細胞は、PBSで洗浄し、4% PFAで30分間常温で固定させた後、0.1% Triton X-100/PBSで10分間浸透させた。細胞を遮断溶液(PBS内anti-Human Antibody 1:500希釈)で1時間処理した後、細胞をanti-pan SOD1(1:400希釈)、ミスフォールディングされたSOD1(B8H10;遮断溶液内1:200希釈)で一晩中4℃で反応させた。最終的に、細胞をFITC及びローダミン結合2次抗体で4℃で6時間反応させた。核は、4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(4,6-diamidino-2-phenylindole;DAPI)で染色し、小胞体(endoplasmic reticulum;ER)は、ER-Tracker Red dyeを使用して10分間染色した。細胞は、PBSで3回洗浄し、以後、カバースリップをマウンティング溶液[H-5501;Vector Laboratories(Burlingame、CA、USA)]でマウンティングし、蛍光顕微鏡(Zeiss)で分析した。
【0057】
10.ベクターの形質注入
GFP-SOD1(WT、G85R、G93A)、non-tagged SOD1(WT、A4V、G37R、G85R、G93A)、tdTomato-TDP43発現ベクターは、Addgene(Cambridge、MA、USA)から購入した。形質注入は、Jet-PEI reagent(JetPEI;Polyplus transfection、New York、NY、USA)を使用して製造者のプロトコルによって行った。簡単に説明すれば、ベクターは、150mM NaCl緩衝液内JetPEI reagentで混合した後、混合物を15分間反応させた。混合物を無血清培地内細胞に添加して4時間反応させた。反応後、細胞を10% FBSが添加された培養培地に取り替えた。
【0058】
11.細胞生存率の測定
細胞生存率を確認するために、細胞を0.5mg/mlのMTT solution(475989;Merck、Darmstadt、Germany)溶液で37℃で4時間反応させた。残余溶液を除去し、PBSで洗浄した後、沈殿物を200μl DMSOに溶かし、540nmで吸光度を測定して定量化した。
【0059】
<実施例>
本発明者らは、GFP-WT-SOD1が発現された細胞内に突然変異SOD1を形質注入(transfection)させた。細胞質内WT-SOD1は、突然変異タイプに関係なく突然変異SOD1によって凝集された(図1のA及び図2)。また、WT-SOD1タンパク質と突然変異組換えSOD1タンパク質との相互作用をNative-PAGEを通じて確認した結果、突然変異SOD1の処理によってWT-SOD1が凝集されると表われた(図1のB;G93A-反応は、過度に大きな凝集によってゲル内に移動していない)。次いで、本発明者らは、細胞ストレスによるWT-SOD1の凝集を確認した。ALSは、運動ニューロンに特異的な疾患であり、Ca2+は、ニューロン機能だけではなく、筋肉収縮においても重要なので、本発明者らは、SOD1凝集に対するThapsigargin(ERカルシウム除去剤)の効果を試験した。Thapsigariginの処理は、確実に突然変異SOD1sだけではなく、WT-SOD1の凝集も促進させた(図1のC)。また、本発明者らは、CoCl(低酸素-誘導剤)によるSOD1の凝集及びミスフォールディングされたSOD1の増加を確認した(図1のD;CoCl-処理細胞では、赤色信号が増加した)。一方、SOD1は、酵素活性のために、Cu/Znイオンを使用することでも知られている。これにより、本発明者らは、SOD1凝集においてCu/Znイオンが欠乏した条件がSOD1凝集に及ぼす効果を確認した。図2で示すように、TPEN(Zn2+chelator)及びATN-224(Cu2+chelator)は、WT-SOD1の凝集を誘導した。前記結果は、SOD1が遺伝的突然変異なしに細胞ストレス条件によって凝集されるか、ミスフォールディングされた形態に転換され、また、SOD1のミスフォールディングが孤発性ALSの原因になりうるということを裏付ける。
【0060】
もし、SOD1凝集がALS疾患の原因であれば、SOD1凝集遮断は、薬物開発において可能性がある戦略の1つである。実に、ミスフォールディングされたSOD1に対する中和抗体は、SOD1動物モデルで優れた効果を示した。それを証明するために、本発明者らは、ELISAに基づいた化合物スクリーニングシステムを構築した。本発明者らは、ミスフォールディングされたSOD1とWT-SOD1との結合に対する選択的結合抑制剤を探し出すために、ELISAプレートにWT-SOD1を固定させ、GSTタギングになった突然変異SOD1s(A4V、G37R、G85R、G93A)と反応させた(図4のA)。以前に本発明者らは、類似したスクリーニングを行い、化合物ライブラリーを確保した。前記化合物ライブラリーを使用して、本発明者らは、各化合物の抑制効果を測定した(図3のA)。SOD1は、二量体形成後、スーパーオキシドを除去するので、本発明者らは、過度に強い結合抑制剤(SLC-B035など)は除去し、突然変異に特異的な化合物(SLC-B040またはB036など)を選択した(図3のA)。前記化合物は、SOD1発現には影響を及ぼしていない(図4のB)。次いで、本発明者らは、未変性ゲル分析を通じて、選択された化合物のSOD1凝集に対する効果を確認し(図4のC)、最初のヒット化合物としてSLC-B036を選択した(図4のD)。実際に、前記化合物は、容量依存的方式で突然変異SOD1の凝集を遮断することができた(図3のB及び図3のC)。その上に、前記化合物は、正常ヒト線維芽細胞で細胞毒性効果を示していない(図4のE)。以後、SLC-B036は、PRG-A-01と再名付けた。
【0061】
次いで、本発明者らは、WT-SOD1の凝集に対する化合物の効果を確認した。最近、TDP-43の過発現または欠乏が、SOD1ミスフォールディングを誘導することができると報告されている。本発明者らも、免疫蛍光法分析を通じてTDP-43過発現によるWT-SOD1の凝集を確認することができた(図5のA及び図6のA)。また、SOD1突然変異は、細胞質(F2 fraction)及び不溶性(F4 fraction)TDP43タンパク質を増加させたが、これは、TDP-43とSOD1とがALSの発病と関連しているということを意味する(図6のB)。PRG-A-01の処理は、TDP-43だけではなく、SOD1の凝集を減少させることができた(図5のA)。また、未変性ゲル分析の結果から、PRG-A-01の処理によるSOD1及びTDP43凝集の減少を確認した(図5のB)。グルタルアルデヒドを使用した交差結合実験(crooss-linking experiment)の結果、PRG-A-01の抑制効果は、さらに明らかに表われた。交差結合を通じて形成されたSOD1及びTDP-43の多量体サイズに該当するバンドは、PRG-A-01処理によって弱くなった(図5のC)。PRG-A-01が、SOD1のミスフォールディングの形成を遮断できるか否かを調べるために、本発明者らは、ドットブロット分析を行った。WT-または突然変異SOD1で形質注入された細胞融解物を吸入器に移してミスフォールディングSOD1に特異的な抗体と反応させた。化合物が処理された細胞で、バンド強度は、明らかに減少した(図5のD)。また、本発明者らは、G93A形質注入された細胞融解物で、PRG-A-01処理によってミスフォールディングされたSOD1の容量依存的減少を確認することができた(図5のE)。PRG-A-01とSOD1-G93Aとを反応すれば、ミスフォールディングに特異的な抗体が突然変異SOD1を認知することができなかったが(図5のF)、これは、PRG-A-01がタンパク質構造を変えてミスフォールディングされたSOD1をWT-SOD1形態に正すことができるということを示唆する。また、本発明者らは、低酸素ストレスがSOD1ミスフォールディングを誘導することができるということを明らかにしたので、低酸素条件でPRG-A-01の効果を確認した。CoClで誘導されたミスフォールディングSOD1の信号伝達は、PRG-A-01処理によって減少したが(図6のC)、これは、PRG-A-01がSOD1ミスフォールディングによる病気の誘発を抑制するということを示す。
【0062】
化合物の生体内効果を確認するために、本発明者らは、SOD1G93A-TgマウスモデルにPRG-A-01をi.pで週2回投与した(図7のA)。PRG-A-01の処理は、筋肉強度の減少を遅らせることができた。野生型マウスと比較して、PRG-A-01の処理されたマウスは、約70%の筋肉強度を保持した(図7のB)。逆に、ビヒクル処理されたマウスは、40%以下の筋肉強度を示した(図7のB)。また、PRG-A-01の遅い処理(14週齢に開始)にも拘らず、筋肉機能に優れた効果を示した(図8のA及び図8のB)。しかも、PRG-A-01は、容量依存的効果を示したが、10mg/kg投与よりも20mg/kg投与がさらに効果的であった(図8のA及び図8のB)。行動観測は、非常に印象的な結果を示したが、14週齢投与にも拘らず(表現型は、14週齢に開始)、PRG-A-01処理されたマウスは、17週齢でも依然として運動能力を有していた(図7のC及び図8のC)。前記効果は、性別と無関係に観測することができた。逆に、ビヒクル処理されたマウスは、立ち上がることができず、自己呼吸に問題を示した。組織学的分析の結果、頚椎の脊髄神経生存率は、PRG-A-01処理されたマウスに高かった(図7のD)。逆に、ビヒクル処理されたマウス脊髄では、ほとんどの神経が消えた(図7のD)。但し、PRG-A-01は、寿命を単に10日延長させた(図8のD)。これと関連して、本発明者らは、生体内システムにおいてPRG-A-01の半減期が非常に短いと予測している。実際に、PRG-A-01は、身体内で30分内に迅速に消えたが、血液内で過度に迅速に消えて薬物動態学(pharmacokinetic;PK)データが得られなかった(図8のE)。
【0063】
速い分解を克服するために、本発明者らは、PRG-A-01関連誘導体を製作し、これらの化合物の効果を確認した(表1)。新たに合成された化合物のうちから、PRG-A-02、PRG-A-03及びPRG-A-04は、PRG-A-01と類似しているか、さらに優れた効果を示した。実際に、前記化合物は、神経(図9のA)及び正常線維芽細胞(図9のB)で細胞毒性は表わさながった。また、本発明者らは、non-SDS-PAGE gel(図9のC)及びIF分析(図9のD)を通じてSOD1凝集に対する前記化合物の効果を確認した。本発明の細胞基盤分析及び試験管内分析によって、3個の化合物(PRG-A-02、PRG-A-03及びPRG-A-04)を選択し、PKを分析した。ただPRG-A-04のみが適切なPKプロファイルを示したので(図10)、本発明者らは、ALS治療候補化合物としてPRG-A-04を選択した。
【0064】
生体内分析で、本発明者らは、PRG-A-04処理群だけではなく、PRG-A-02及びPRG-A-03投与群から優れた効果を確認することができた(図11のA及び図11のB)。より面白い結果は、ALSモデルマウスの寿命がPKプロファイルによって増えたという点である(図11のC及び図11のD)。たとえ本発明者らは、PRG-A-04の寿命データが得られなかったとしても、他の化合物に比べて明らかに寿命が延長されるということを予測することができる。
【0065】
【表1】
【0066】
本発明で使用した化合物の化学構造及びNMRデータは、次の通りである。
【0067】
(S,E)-7-((3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one(PRG-A-02)
【0068】
【0069】
H NMR:EW15731-164-P1D4(400MHz、CDCl
δ7.58(d、J=12Hz、1H)、7.16(s、1H)、6.90-6.86(m、3H)、6.78(s、1H)、6.51(d、J=16Hz、1H)、6.22(d、J=8.0Hz、1H)、6.14-6.10(m、1H)、5.65(s、1H)、4.32-4.30(m、1H)、4.22-4.20(m、1H)、3.91(s、3H)、3.61-3.58(m、1H)、3.11-3.05(m、1H)、3.89-3.87(m、1H)、1.43(s、3H)、1.36(s、3H)。
【0070】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(4-hydroxy-3-methoxyphenyl)propanoate(Compound 4;SNU-C4)
【0071】
【0072】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.59(d、1H)、7.06(s、1H)、6.82-6.73(m、2H)、6.64-6.57(m、2H)、6.24(d、J=9.5Hz、1H)、5.44(br.s、1H)、5.01(t、J=4.6Hz、1H)、3.79(s、3H)、3.09(ddd、J=17.2、4.7、1.2Hz、1H)、2.85(app.t、J=7.2Hz、2H)、2.70-2.59(m、3H)、1.31(s、3H)、1.29(s、3H)。
HRMS:Calcd for C24H25O7+[M+H]+425.1595、found 286.1652。
【0073】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3,4-dimethoxyphenyl)acrylate(Compound 5;SNU-C5)
【0074】
【0075】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.67-7.55(m、2H)、7.18(s、1H)、7.08(d、J=8.2Hz、1H)、7.02(s、1H)、6.88-6.81(m、2H)、6.28(d、J=16.0Hz、1H)、6.24(d、J=9.4Hz、1H)、5.20(app.t、J=4.6Hz、1H)、3.91(s、3H)、3.89(s、3H)、3.25(dd、J=17.3、4.8Hz、1H)、2.94(dd、J=17.3、4.5Hz、1H)、1.45(s、3H)、1.39(s、3H)。
【0076】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(3,4-dimethoxyphenyl)propanoate(Compound 7;SNU-C7)
【0077】
【0078】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.59(d、J=9.6Hz、1H)、7.07(s、1H)、6.83-6.63(m、4H)、6.24(d、J=9.6Hz、1H)、5.03(app.t、J=4.8Hz、1H)、3.84(s、3H)、3.80(s、3H)、3.11(dd、J=17.3、4.6Hz、1H)、2.87(t、J=7.3Hz、2H)、2.69(dd、J=17.2、4.6Hz、1H)、2.63(app.td、J=7.3、1.9Hz、2H)、1.31(s、3H)、1.30(s、3H)。
【0079】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(pyridin-4-yl)acrylate(Compound 9;SNU-C9)
【0080】
【0081】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 8.72-8.59(m、2H)、7.60(d、1H)、7.57(d、1H)、7.36-7.30(m、2H)、7.18(s、1H)、6.83(s、1H)、6.58(d、J=16.0Hz、1H)、6.24(d、J=9.4Hz、1H)、5.21(app.t、J=4.6Hz、1H)、3.26(ddd、J=17.2、4.8、1.2Hz、1H)、3.00-2.89(m、1H)、1.44(s、3H)、1.39(s、3H)。
【0082】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3-hydroxyphenyl)acrylate(Compound 10;SNU-C10)
【0083】
【0084】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.64-7.55(m、2H)、7.25(app.t、J=7.9Hz、1H)、7.21(s、1H)、7.13-7.06(m、1H)、7.00-6.95(m、1H)、6.86(ddd、J=8.1、2.6、1.0Hz、1H)、6.78(s、1H)、6.40(d、J=15.9Hz、1H)、6.18(d、J=9.5Hz、1H)、5.18(app.t、J=4.8Hz、1H)、3.25(ddd、J=17.3、4.9、1.2Hz、1H)、2.94(dd、J=17.3、4.7Hz、1H)、1.42(s、3H)、1.38(s、3H)、1.25(brs、1H)。
【0085】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(4-fluorophenyl)acrylate(Compound 11;SNU-C11;PRG-A-03)
【0086】
【0087】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.66-7.55(m、2H)、7.55-7.46(m、2H)、7.18(s、1H)、7.11-7.01(m、2H)、6.76(s、1H)、6.35(d、J=16.0Hz、1H)、6.16(d、J=9.5Hz、1H)、5.17(app.t、J=4.7Hz、1H)、3.23(ddd、J=17.3、4.8、1.2Hz、1H)、2.92(dd、J=17.3、4.7Hz、1H)、1.40(s、3H)、1.36(s、3H)。
【0088】
(S,E)-7-((3-(4-fluorophenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one(Compound 13;SNU-C13)
【0089】
【0090】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.57(d、J=9.5Hz、1H)、7.38-7.29(m、2H)、7.16(s、1H)、7.06-6.93(m、2H)、6.77(s、1H)、6.55(d、J=15.8Hz、1H)、6.25-6.13(m、2H)、4.33(ddd、J=12.8、5.8、1.5Hz、1H)、4.19(ddd、J=12.8、6.3、1.4Hz、1H)、3.58(dd、J=7.4、5.0Hz、1H)、3.08(dd、J=16.4、5.0Hz、1H)、2.85(ddd、J=16.4、7.4、1.1Hz、1H)、1.42(s、3H)、1.35(s、3H)。
【0091】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3-acetoxyphenyl)acrylate(Compound 14;SNU-C14)
【0092】
【0093】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.63(d、J=16.0Hz、1H)、7.59(d、J=9.5Hz、1H)、7.42-7.33(m、2H)、7.25-7.22(m、1H)、7.17(s、1H)、7.11(app.dt、J=7.4、2.1Hz、1H)、6.83(s、1H)、6.40(d、J=16.0Hz、1H)、6.24(d、J=9.5Hz、1H)、5.19(app.t、J=4.7Hz、1H)、3.24(ddd、J=17.2、4.7、1.2Hz、1H)、2.93(dd、J=17.2、4.5Hz、1H)、2.30(s、3H)、1.43(s、3H)、1.39(s、3H)。
【0094】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl3-(4-acetoxy-3-methoxyphenyl)propanoate(Compound 15;SNU-C15)
【0095】
【0096】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.58(d、J=9.5、0.8Hz、1H)、7.10(s、1H)、6.87(dd、J=7.9、1.1Hz、1H)、6.77(d、1H)、6.74-6.65(m、2H)、6.23(dd、J=9.5、2.2Hz、1H)、5.02(app.t、J=4.7Hz、1H)、3.74(d、J=1.2Hz、3H)、3.10(ddd、J=17.2、4.8、1.1Hz、1H)、2.90(t、J=7.5Hz、2H)、2.72-2.60(m、3H)、2.30(d、J=1.3Hz、3H)、1.31(s、3H)、1.30(s、3H)。
【0097】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(4-acetoxy-3-methoxyphenyl)acrylate(Compound 17;SNU-C17)
【0098】
【0099】
H NMR(CDCl、600MHz):δ ppm 7.67-7.56(m、2H)、7.21(s、1H)、7.14-7.09(m、2H)、7.03(d、J=8.0Hz、1H)、6.78(s、1H)、6.41(d、J=16.0Hz、1H)、6.19(d、J=9.5Hz、1H)、5.20(app.t、J=4.7Hz、1H)、3.82(s、3H)、3.26(ddd、J=17.3、4.8、1.2Hz、1H)、2.95(dd、J=17.3、4.5Hz、1H)、2.27(s、3H)、1.43(s、3H)、1.38(s、3H)。
【0100】
(S)-8,8-dimethyl-2-oxo-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-7-yl(E)-3-(3,4-difluorophenyl)acrylate(Compound 18;SNU-C18)
【0101】
【0102】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.62-7.53(m、2H)、7.32(ddd、J=11.1、7.6、2.2Hz、1H)、7.24-7.11(m、3H)、6.83(s、1H)、6.33(d、J=16.0、1H)、6.24(d、J=9.4Hz、1H)、5.19(app.t、J=4.7Hz、1H)、3.25(ddd、J=17.4、4.8、1.1Hz、1H)、2.93(dd、J=17.4、4.5Hz、1H)、1.43(s、3H)、1.39(s、3H)。
【0103】
(S,E)-7-((3-(3-methoxy-4-nitrophenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one(Compound 19;PRG-A-04)
【0104】
【0105】
H NMR(CDCl、400MHz):δ ppm 7.85(d、J=8.4Hz、1H)、7.57(d、J=9.5Hz、1H)、7.16(s、1H)、7.05-6.97(m、2H)、6.78(s、1H)、6.60(app.dt、J=15.9、1.7Hz、1H)、6.40(app.dt、J=15.9、5.5Hz、1H)、6.22(d、J=9.4Hz、1H)、4.39(ddd、J=13.6、5.4、1.7Hz、1H)、4.24(ddd、J=13.4、5.5、1.6Hz、1H)、3.97(s、3H)、3.59(dd、J=7.1、4.9Hz、1H)、3.11(dd、J=16.7、4.9Hz、1H)、2.87(dd、J=16.7、7.2Hz、1H)、1.43(s、3H)、1.38(s、3H)。
【0106】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11