(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】GLP-1受容体アゴニストおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 235/14 20060101AFI20231117BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20231117BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20231117BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20231117BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20231117BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20231117BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231117BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231117BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231117BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231117BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20231117BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231117BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231117BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231117BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20231117BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20231117BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231117BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20231117BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
C07D235/14
C07D405/14 CSP
A61K31/496
C07D471/04 107E
A61K31/4545
C07D413/14
A61P3/00
A61P3/10
A61P13/12
A61P3/04
A61P7/00
A61P9/00
A61P9/12
A61P25/16
A61P25/28
A61P19/02
A61P7/02
A61P27/12
A61P1/04
A61P19/10
A61P9/10
(21)【出願番号】P 2022527842
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 KR2020016019
(87)【国際公開番号】W WO2021096304
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0146798
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0022485
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518076676
【氏名又は名称】イルドン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ホン・チュル
(72)【発明者】
【氏名】アン,キュン・ミ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ミョン・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジン・ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン-グン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ア-ラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ウ・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジン・アー
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ,ジェホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,チャンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョジン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,テ-イク
(72)【発明者】
【氏名】オー,チャンモク
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ダ・ヘ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,スン・ウク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジェ・ウイ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヨンラン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ミン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウン・ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ,イン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジ・ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】キム,グンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,イェリン
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/103815(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/109607(WO,A1)
【文献】C.G.WERMUTH編,『最新 創薬化学 上巻』,株式会社テクノミック,1998年08月15日,235-271頁,13章 等価置換に基づく分子の変換
【文献】野崎正勝 等,創薬化学,第1版,株式会社化学同人,1995年,p.98-99
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩:
【化1】
前記式中:
R
1は、-C(=O)R
aであり、前記R
aは、-OHまたは-O-(C
1-C
4アルキル)であり;
Yは、-CH-または-N-であり;
R
2は
、非置換の
【化2】
、ハロゲン置換の
【化3】
、または非置換の
【化4】
であり;
R
bは、水素または-(C
1-C
4アルキル)であり;
Jは
、-N-であり;
Xは、-CR
c-または-N-であり、前記R
cは、-
Hであり;
W
1は、-CR
d-であり、前記R
dは、-
Hであり;
W
2は、-CR
e-または-N-であり、前記R
eは、-
Hであり;
W
3は、-CR
f-であり、前記R
fは、-
Hであり;
Aは
【化5】
であり、
前記式中:
Z
1は、-CR
g
-であり、R
gは、-H、ハロゲン、
および-C
Nからなる群から選ばれる1種であり;
Z
2は、-CR
h
-であり、前記R
hは、-H、ハロゲン、
および-C
Nからなる群から選ばれる1種であり;
Z
3は
、-N-であ
り;
Z
4は、-CR
j
-であり、前記R
jは、-H、ハロゲン、
および-C
Nからなる群から選ばれる1種であり;
Z
5は、-CR
k
-であり、前記R
kは、-H、ハロゲン、
および-C
Nからなる群から選ばれる1種で
ある。
【請求項2】
Xが-N-である、請求項1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Yは-CH-である、請求項
1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項4】
W
2
は-CR
e
-である、請求項1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Jは-N-であり;Xは-N-であり;W
2は-CR
e-である、請求項1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
2は
非置換の
【化6】
である、請求項1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
h
は-Hまたはハロゲンであり;
R
k
は-H、ハロゲン、または-CNである、請求項6に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項8】
Jは、-N-であり;
Xは、-N-であり;
W
2は、-CR
e-であり;
Yは、-CH-であり
、
R
2は
、非置換の
【化7】
、
ハロゲン置換の
【化8】
、また
は非置換の
【化9】
であ
る、請求項1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項9】
Jは、-N-であり;
Xは、-N-であり;
Yは、-CH-であり;
Z
3は-N-であり;Z
1は-CR
g-であり;Z
2は-CR
h-であり;Z
4は-CR
j-であり、Z
5は-CR
k-であり;
R
2は
、非置換の
【化10】
、
ハロゲン置換の
【化11】
、また
は非置換の
【化12】
であ
る、請求項1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩。
【請求項10】
式1で表される化合物は、以下からなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩
:
1-(オキサゾール-2-イルメチル)-2-((4-(6-(ピリジン-2-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸
;
(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸
;
(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピラジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(3-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸;
(S)-2-((4-(3-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-クロロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
2-(((S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;及び
2-(((S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩;及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩を含む代謝疾患の治療または予防に使用するための薬学的組成物。
【請求項13】
前記代謝疾患は、以下からなる群から選ばれるいずれかである、請求項
12に記載の薬学的組成物:
糖尿病、特発性T1D、成人における潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、若年発症
T2DM(EOD)、若年発症非定型糖尿病(YOAD)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、栄養失調-関連糖尿病、妊娠性糖尿病、高血糖症、インスリン耐性、肝臓インスリン耐性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患、糖尿病性網膜症、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪蓄積、睡眠時無呼吸症候群、肥満、摂食障害、異常脂質血症、高インスリン血症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢血管疾患、高血圧、うっ血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、外傷性脳損傷、肺高血圧、血管形成術後の再狭窄症、間歇性跛行、食後脂質異常症、 代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、
左室肥大、末梢動脈疾患、視力低下、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、一過性脳虚血発作、血管再狭窄、糖代謝障害、空腹時血糖障害、高尿酸血症、痛風、勃起不全、乾癬、足部潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポ蛋白B脂質血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性大腸症候群、及び多嚢胞性卵巣症候群。
【請求項14】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、脂肪症、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、線維症、肝硬変、および肝細胞癌からなる群から選ばれるいずれかである、請求項
13に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規GLP-1Rアゴニスト化合物およびその化合物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
インスリンは、膵臓β細胞から分泌されるペプチドであって、体内の血糖を調節する上で極めて重要な役割を担う物質である。このようなインスリンの分泌量が不十分であったり、正常に機能しなかったりして血中グルコースの濃度が高くなる代謝疾患を糖尿病という。膵臓からインスリンが分泌されずに血糖が上昇する場合を1型糖尿病という。したがって、1型糖尿病を治療するためにはインスリンの投与が必要である。其の外、インスリンの分泌が十分でなかったり、或いは分泌されたインスリンが正常に機能しなかったりして体内の血糖が調節されずに上昇する場合を2型糖尿病といい、化学物質を基本とする血糖降下剤を用いて治療する。
【0003】
糖尿病の治療における正常な血糖値に向けた厳格な血糖管理が、糖尿病によって引き起こされる様々な合併症を予防するために重要であることは、すでに大規模な臨床研究を通じて広く知られている。
【0004】
インスリンの分泌を強力に刺激して血糖値を下げられる候補化合物としては、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1:glucagon like peptide-1)というホルモンが含まれる。GLP-1は、 回腸と結腸のL細胞から分泌されるインクレチンホルモンとして1985年に初めて発見されました。GLP-1は、GLP-1R(glucagon like peptide-1 Receptor,グルカゴン様ペプチド-1受容体)という受容体に作用することにより、インスリンの分泌を増加させる。GLP-1は、吸収された栄養分または血糖値による刺激によって分泌される。GLP-1を用いた糖尿病治療には、グルコース濃度によってインスリンが分泌されるため、低血糖が起こらないという利点がある。また、このホルモンは、上部消化器官の動きを減らし、食欲を抑制するなどの効果があり、既存の膵臓のβ細胞を増殖させることができることが知られている。
【0005】
このような特徴から、GLP-1は、2型糖尿病の治療方法に適用されていたが、血中半減期が2分しかないので、薬剤として開発する上で多くの障害があった候補化合物であった。作用時間が短いことによるGLP-1の欠点を克服するために、最近、血中にGLP-1を破壊するジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV:dipeptidyl peptidase-IV)という酵素に対して抵抗性を有するGLP-1類似体と、DPP-IV阻害剤を用いた治療剤が開発された(文献[Oh,SJ「Glucagon-like Peptide-1 Analogue and Dipeptidyl Peptidase-IV Inhibitors」Journal of the Korean Endocrine Society Vol.21(6),pp.437-447,2006];文献[Holst,JJ「Glucagon like peptide 1: a newly discovered gastrointestinal hormone」Gastroenterology Vol.107,pp.1848-1855,1994])。
【0006】
GLP-1以外のインスリン分泌ペプチドの中で、エキセンジン(exendin)は、アリゾナと北メキシコ内生の爬虫類であるメキシコドクトカゲ(Heloderma horridum)およびアメリカドクトカゲ(Heloderma ssuspectum)の唾液分泌物に見られるペプチドである。エキセンジン-3は、メキシコドクトカゲ(Heloderma horridum)の唾液分泌物に存在し、エキセンジン-4は、アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)の唾液分泌物に存在し、いずれもGLP-1配列と高い相同性を示す(文献[Goke et al., J.Biol.Chem. Vo1.268,pp.19650-19655, 1993])。薬理学的研究報告によれば、エキセンジン-4が特定のインスリン分泌細胞、モルモットの膵臓から分散したラセモース腺細胞、および胃壁細胞のGLP-1受容体に作用することができるとされています。このペプチドは、ソマトスタチン放出を刺激し、単離された胃からのガストリン放出を阻害することが報告されている。
【0007】
現在、血中GLP-1を破壊するDPP-4酵素に対して耐性のある様々なGLP-1類似体が開発されており、2型糖尿病の治療剤として使用されている。これらのGLP-1類似体は、GLP-1と比較してかなり長い半減期を持っているため、血糖降下効果を長く維持できるという利点がある。しかしながら、経口投与が不可能であり、注射剤の形態で使用する必要があるという点で、低い服用の利便性の問題が存在する。そのため、最近では、経口投与が可能な低分子GLP-1Rアゴニストを発掘して糖尿病治療剤として開発しようとする研究が進められている。最近、韓国では、ヒトおよびマウスのGLP-1受容体を選択的に刺激することができる新規低分子化合物であるDA-15864が、糖尿病および肥満を治療するために経口投与可能なGLP-1受容体アゴニストとして作用することが報告されている。(Moon,H.-S. et al.,「The development of non-peptide glucagon-like peptide 1 receptor agonist for the treatment of type 2 diabetes」Arch.Pharm.Res.Vol.34(7),pp.1041-1043,2011])。このような経口製剤は、投与の利便性を改善したGLP-1Rアゴニストとして作用するという点で、開発価値が高い。
【0008】
さらに、米国FDAなどの規制当局は、突然死まで引き起こす可能性のある医薬品の心血管系の副作用、特にQT延長および心室再分極の遅延に注目している。新規物質の心血管系安全性薬理研究が強調されている。これに関連して、ヒトエーテル-a-go-go関連遺伝子(hERG:Human Ether-a-go-go Related Gene)は、遅延整流(rectifier)カリウム電流(IKr)を担うヒトカリウムチャネルのサブユニットをコードする遺伝子であり、これは活動電位の持続期間とQT間隔の決定に最も影響力のある役割を果たすものとみられる。薬剤によってhERGチャネルが阻害されると、心臓活動電位の持続期間によって決定される心室再分極が遅延され、これはECGに対するQT間隔延長によって測定できる効果である。これは、トルサード・ド・ポワンツ(TdP:Torsade de pointes)を含む不整脈などの心毒性と関連している。新しい薬剤は、心血管の副作用に関してQT延長に著しい影響を及ぼすhERGチャネル阻害に関して評価されるべきである。この過程で、大多数の薬剤がhERGチャネルの阻害に影響を及ぼすので、開発プロセスが中断する可能性がある。
【0009】
特に、糖尿病治療薬の開発において、QT延長が重要な考慮事項である。糖尿病の場合、虚血性心疾患による死因が2~3倍以上増加した。30歳以前に糖尿病と診断された女性は、心筋梗塞または致命的な冠状動脈疾患のリスク率が大幅に増加することが知られている。したがって、抗糖尿病薬がQT延長を引き起こす場合、たとえそれが優れた効果を持っていたとしても、長期使用という必然的な制限を伴う薬剤自体の開発が困難な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、新しい治療薬が必要であるのが実情である。このような必要性を満たすために、本開示は、様々な候補物質からのGLP-1受容体の活性を有意に増加させることができる新規GLP-1受容体アゴニスト化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態では、本開示は、以下の式Iで表される化合物、化合物の光学異性体、または化合物または光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
【0013】
式中、R1は、-C(=O)Raであり、ここで、Raは、-OHまたは-O-(C1-C4アルキル)であり;
Yは、-CH-または-N-であり;
R2は、置換または非置換のC6~C12アリール、置換または非置換のC5~C12ヘテロアリール、置換または非置換のC3~C8ヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC1~C4アルキル、および置換または非置換のC3~C8シクロアルキルからなる群から選択される1種であり、ここで置換されたアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル、およびシクロアルキルは-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの少なくとも1つの置換を含み;
Rbは、水素または-(C1-C4アルキル)であり;
Jは、-CH-または-N-であり;
Xは、-CRc-または-N-であり、ここで、Rcは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
W1は、-CRd-であり、ここで、Rdは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選ばれる1種であり;
W2は、-CRe-または-N-であり、ここで、Reは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
W3は、-CRf-であり、ここで、Rfは-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Aは、
【0014】
【0015】
であり、前記式中:
Z1は、-CRg-または-N-であり、ここで、Rgは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Z2は、-CRh-または-N-であり、ここで、Rhは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Z3は、-CRi-または-N-であり、ここで、Riは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Z4は、-CRj-または-N-であり、ここで、Rjは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Z5は、-CRk-または-N-であり、ここで、Rkは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1--C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Z1~Z5は、以下の条件のうちの1つを満たす:
i)Z1~Z5の少なくとも1つは-N-であり;
ii)Z1は、-CRg-であり、Z2は、-CRh-であり、Z3は、-CRi-であり、Z4は、-CRj-であり、Z5は、-CRk-であり、
ここで、Z1~Z5が条件ii)を満たすとき、
【0016】
【0017】
は、
【0018】
【0019】
である。
もう一つの実施形態では、本開示は、以下の式Iで表される化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0020】
【0021】
式中、R1は、-C(=O)Raであり、ここで、Raは、-OHまたは-O-(C1-C4アルキル)であり;
Yは、-CH-または-N-であり;
R2は、置換または非置換のC6~C12アリール、置換または非置換のC5~C12ヘテロアリール、置換または非置換のC3~C8ヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC1~C4アルキル、および置換または非置換のC3~C8シクロアルキルからなる群から選択される1種であり、ここで置換されたアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキルおよびシクロアルキルは、-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの少なくとも1つの置換を含み;
Rbは、水素または-(C1-C4アルキル)であり;
Jは、-CH-または-N-であり;
Xは、-CRc-または-N-であり、ここで、Rcは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
W1は、-CRd-であり、ここで、Rdは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選ばれる1種であり;
W2は、-CRe-または-N-であり、ここで、Reは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選ばれる1種であり;
W3は、-CRf-であり、ここでRfは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Aは、
【0022】
【0023】
であり、前記式中:
Z1は、-CRg-または-N-であり、ここで、Rgは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選ばれる1種であり;
Z2は、-CRh-または-N-であり、ここで、Rhは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選ばれる1種であり;
Z3は、-CRi-または-N-であり、Riは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1~C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Z4は、-CRj-または-N-であり、ここで、Rjは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選ばれる1種であり;
Z5は、-CRk-または-N-であり、ここで、Rkは、-H、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1~C4ハロアルキルからなる群から選択される1種であり;
Z1~Z5は、以下の条件のうちの1つを満たす:
i)Z1~Z5のうち少なくとも1つは-N-であり;
ii)Z1は、-CRg-であり、Z2は、-CRh-であり、Z3は、-CRi-であり、Z4は、-CRj-であり、Z5は、-CRk-であり、
前記式において、
【0024】
【0025】
は
【0026】
【0027】
であり;
前記式中:
【0028】
【0029】
が
【0030】
【0031】
であるとき、Rbは、-(C1-C4アルキル)であり;
【0032】
【0033】
が
【0034】
【0035】
であるとき、Jは、-CH-、Yは、-N-であり;
【0036】
【0037】
が
【0038】
【0039】
であるとき、Jは、-N-であり、R2は、置換または非置換のC3~C8シクロアルキルである。
【0040】
一部の実施形態では、式1中、Z1は、-CRg-または-N-であり、Z 2は、-CRh-または-N-であり、Z3は、-CRi-または-N-であり、Z4は、-CRj-または-N-であり、Z5は、-CRk-または-N-であり、Z1~Z5のうち一つだけが-N-である。
【0041】
一部の実施形態では、式1において、Jは、-N-であり、Xは、-N-であり;W2は、-CRe-であり、Z1は、-CRg-または-N-であり、Z2は、-CRh-または-N-であり、Z3は、-CRi-または-N-であり、Z4は、-CRj-または-N-であり、Z5は、-CRk-または-N-であり、Z1~Z5のうち一つだけが-N-である。
【0042】
一部の実施形態では、式1において、R2は、置換または非置換のオキサゾール、キラル中心炭素を含む置換または非置換のオキシシクロブタン、置換または非置換のイミダゾール、置換または非置換のC1-C4アルキル、および置換または非置換のC3-C5シクロアルキルからなる群から選択される1種であり、ここで置換されたオキサゾール、オキシシクロブタン、イミダゾール、アルキル、およびシクロアルキルは、-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの少なくとも1つの置換を表す。含む。
【0043】
一部の実施形態では、式1において、R2は、置換または非置換の
【0044】
【0045】
、置換または非置換の
【0046】
【0047】
、または置換または非置換の
【0048】
【0049】
であり、ここで置換された
【0050】
【0051】
は、-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの少なくとも1種の置換を含む。
【0052】
一部の実施形態では、式1において、Yは、-CH-である。
もう一つの態様において、本開示は、下記式2の化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する:
【0053】
【0054】
前記式中、Z1は、-CRg-または-N-であり-、Z2は、-CRh-または-N-であり、Z3は、-CRi-または-N-であり、Z4は、-CRj-または-N-であり、Z5は、-CRk-または-N-であり、Z1~Z5のうち少なくとも1つは-N-であり、ここで、X、W1、W2、W3、J、Rb、R2、YおよびR1は、式1について定義されたものと同じである。
【0055】
一部の実施形態では、式2において、Z1は、-CRg-または-N-であり、Z2は、-CRh-または-N-であり、Z3は、-CRi-または-N-であり、Z4は、-CRj-または-N-であり、Z5は、-CRk-または-N-であり、Z1~Z5のうち一つだけが-N-である。
【0056】
もう一つの実施形態では、本開示は、前記式3の化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0057】
【0058】
前記式中、
【0059】
【0060】
は
【0061】
【0062】
であり、ここで、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk、X、W1、W2、W3、Rc、Rd、Re、Rf、J、Rb、R2、Y、およびR1は、前記式Iについて定義されたものと同じである。
【0063】
一部の実施形態では、式3において、
【0064】
【0065】
が
【0066】
【0067】
であるとき、Rbは、-(C1-C4アルキル)である。
一部の実施形態では、式3において、
【0068】
【0069】
が
【0070】
【0071】
であるとき、Jは、-CH-、Yは、-N-である。
一部の実施形態では、式3において、
【0072】
【0073】
が
【0074】
【0075】
であるとき、Jは、-N-であり、R2は、置換または非置換のC3~C8シクロアルキルである。
【0076】
もう一つの実施形態では、本開示は、下記式3-1の化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0077】
【0078】
前記式中、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk、Rc、Rd、Re、Rf、J、Rb、R2、Y、およびR1は、前記化学式1について定義されたたものと同じです。
【0079】
もう一つの態様では、本開示は、下記式3-2の化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0080】
【0081】
前記式中、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk、Rd、Rf、J、Rb、R2、Y、およびR1は、前記式1について定義されたものと同じである。
【0082】
もう一つの態様では、本開示は、下記式4で表される化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0083】
【0084】
前記式中、Z1は、-CRg-または-N-であり;Z2は、-CRh-または-N-であり;Z3は、-CRi-または-N-であり;Z4は、-CRj-または-N-であり;Z5は、-CRk-または-N-であり;Z1~Z5のうち一つだけが-N-であり、ここで、W1、Re、W3、Rb、R2、Y、およびR1は、前記式1に定義されたものと同じである。
【0085】
さらなる実施形態では、本開示は、下記式5で表される化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する:
【0086】
【0087】
前記式中、A、X、W1、W2、W3、J、Rb、R2、およびR1は、前記式1について定義されたものと同じである。
【0088】
一部の実施形態では、本開示は、以下に列挙される化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩を提供する:
1-(オキサゾール-2-イルメチル)-2-((4-(6-(ピリジン-4-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
1-(オキサゾール-2-イルメチル)-2-((4-(6-(ピリジン-2-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペリジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
1-(オキサゾール-2-イルメチル)-2-((4-(6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(3-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)ピペリジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピラジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(3-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸;
(S)-2-((4-(3-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸;
(S)-2-((4-(6-((5-クロロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
2-(((S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;
2-(((S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-3-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸;
(S)-2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペリジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸;
2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;および
2-(((S)-4-(6-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)ピラジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸;それらの光学異性体またはそれらの薬学的に許容される塩。
【0089】
もう一つの実施形態では、本開示は、式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物のうち少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含む医薬組成物が提供される。
【0090】
さらなる態様において、本開示は、式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物のうち少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体の少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうち少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせ、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0091】
さらなる実施形態では、本開示は、代謝疾患の治療および/または予防で使用するための式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせが提供される。
【0092】
さらなる実施形態では、本開示は、代謝疾患の治療方法を提供し、前記方法は式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物のうち少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうち少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせを対象体に投与する工程を含む。
【0093】
さらなる態様において、本開示は、代謝性疾患の予防または治療のための式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうち少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせの使用を提供する。
【0094】
さらなる実施形態では、本開示は、代謝疾患の予防または治療のための薬剤の製造のための式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせの使用を提供する。
【0095】
さらなる態様において、本開示は、式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物のうち少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうち少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含む代謝性疾患の予防または治療用医薬組成物が提供される。
【0096】
さらなる態様において、本開示は、式1、2、3、3-1、3-2、4または5の化合物のうちの少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうち少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含むGLP-1Rアゴニストが提供される。
【0097】
本開示における化合物、光学異性体、および薬学的に許容される塩は、GLP-1アゴニストとして優れた効果を示す。具体的には、細胞で産生された固有cAMPと染料で標識された外来cAMPとの間の競合的免疫分析を行った結果、本開示の化合物、光学異性体、および薬学的に許容される塩は、GLP-1アゴニストとして優れた効果を示す。さらに、サルを対象とした耐糖能試験において、本開示の化合物、光学異性体、および薬学的に許容される塩は、静脈内投与および経口投与の両方において優れた耐糖能を有し、優れた薬剤動態特性を有することが示されている。
【0098】
また、本開示における化合物、光学異性体、および薬学的に許容される塩は、心血管系において優れた薬理学的安全性を示す。具体的には、hERG分析によって分析した結果、本開示における化合物、光学異性体、および薬学的に許容される塩は、長期間の投与中に、心血管安全性が有意に高く、不整脈などの心毒性リスクが有意に低いことが分かった。したがって、本開示の化合物、光学異性体、および薬学的に許容される塩は、既存の化合物とは異なる、またはより優れている。
【0099】
本明細書で使用される用語「代謝性疾患」は、例えば、糖尿病(T1Dおよび/またはT2DM、例えば前糖尿病)、特発性T1D(1b型)、成人における潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、若年発症T2DM(EOD)、若年発症非定型糖尿病(YOAD)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、栄養失調-関連糖尿病、妊娠性糖尿病、高血糖症、インスリン耐性、肝臓インスリン耐性、耐糖能障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、腎疾患(例えば、急性腎障害、尿細管機能障害、近位尿細管の炎症誘発性変化)、糖尿病性網膜症、脂肪細胞機能障害、内臓脂肪蓄積、睡眠時無呼吸症候群、肥満(例えば、視床下部性肥満および単一遺伝性肥満)および関連する併存疾患(例えば、変形性関節症および尿失禁)、摂食障害(例えば、神経性過食症、神経性食欲不振症、および症候性肥満、例えば、プラダーウィリー症候群およびバルデービードル症候群)、他の薬剤の使用による体重増加(例えば、ステロイドおよび抗精神病薬の使用による)、過剰な糖摂取欲、異常脂質血症(高脂血症、高中性脂肪血症、総コレステロール増加、高LDLコレステロール、および低HDLコレステロールを含む)、高インスリン血症、NAFLD(関連疾患、例えば、脂肪症、NASH、線維症、肝硬変、および肝細胞癌を含む)、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症(冠状動脈疾患を含む)、末梢血管疾患、高血圧、内皮機能障害、血管コンプライアンス障害、うっ血性心不全、心筋梗塞(例えば、ネクローシスおよびアポトーシス)、脳卒中、出血性脳卒中、虚血性脳卒中、外傷性脳損傷、肺高血圧、血管形成術後の再狭窄症、間歇性跛行、食後脂質異常症、 代謝性アシドーシス、ケトン症、関節炎、骨粗鬆症、パーキンソン病、左室肥大、末梢動脈疾患、視力低下、白内障、糸球体硬化症、慢性腎不全、代謝症候群、X症候群、月経前症候群、狭心症、血栓症、アテローム性動脈硬化、一過性脳虚血発作、血管再狭窄、糖代謝障害、空腹時血糖障害、高尿酸血症、痛風、勃起不全、皮膚および結合組織障害、乾癬、足部潰瘍、潰瘍性大腸炎、高アポ蛋白B脂質血症、アルツハイマー病、統合失調症、認知障害、炎症性腸疾患、短腸症候群、クローン病、大腸炎、過敏性大腸症候群、多嚢胞性卵巣症候群、および中毒治療(例えば、アルコールおよび/または薬剤乱用)であってもよい。
【0100】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、構造式-CnH(2n+1)の直鎖または分岐鎖の一価炭化水素基を指す。その非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-メチル-プロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチルおよびヘキシルなどが含まれる。例えば、「C1-C4アルキル」は、アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2-メチル-プロピル、またはイソプロピルを指すことができる。
【0101】
本明細書で使用される「C6~C12アリール」という用語は、6または12個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素を指す。「C6-C12アリール」という用語は、単環式(例えば、フェニル)または二環式(例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル)などの環系を指す。
【0102】
本明細書で使用される「C5~C12ヘテロアリール」という用語は、5~12個の炭素原子を含み、環炭素原子のうち少なくとも1つが酸素、窒素、および硫黄から選択されるヘテロ原子で置き換えられている芳香族炭化水素を指す。ヘテロアリール基は、環炭素原子を介して、または原子価が許容される場合、環窒素原子などを介して結合することができる。ヘテロアリール基は、2~3個の環を有するベンゾ縮合環系を含む。
【0103】
本明細書で使用される「C3-C8シクロアルキル」という用語は、3~8個の炭素原子を含む構造式-CnH(2n-1)の環状一価炭化水素基を指す。その非限定的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが含まれる。
【0104】
本明細書で使用される「C3-C8ヘテロシクロアルキル」という用語は、環メチレン基(-CH2-)のうち少なくとも1つが-O-、-S-および窒素から選択される基で置き換えられた3~8個の炭素原子を含むシクロアルキル基を指す。この場合、窒素は各実施形態に基づいて、付着点を提供することができるか、または置換することができる。
【0105】
本明細書で使用される「非置換」という用語は、水素が任意の置換基で置換されていない状態を意味する。
【0106】
本明細書で使用される「置換されたアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびシクロアルキル」という用語は、少なくとも1つの置換、すなわち、-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの1、2、3、4、5、6またはそれ以上の置換を含み得る。このような置換のそれぞれは独立してなされることができる。
【0107】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物を指す。
【0108】
本明細書で使用される「ハロアルキル」という用語は、水素が1つ以上のハロゲン(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物)で置換されているアルキル基を指す。
【0109】
本開示における以下の略語は、以下の対応する用語を表す。
EA:酢酸エチル
MC:塩化メチル
BINAP:2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル
DCM:ジクロロメタン
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
MPLC:中圧液体クロマトグラフィー
TEA:トリエチルアミン
DMF:ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
p-TSA:パラトルエンスルホン酸
TBD:トリアザビシクロデセン
PTLC:調製された薄層クロマトグラフィー
DMSO:ジメチルスルホキシド
Pd2(dba)3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
MeOH:メタノール
KOtBu:カリウムtert-ブトキシド
ADDP:1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン
本明細書における波線「
【0110】
【0111】
」は、他の基に対する置換基の付着点を意味する。
一部の実施形態では、式1において、R1は、-C(=O)Raであり、Raは、-OHまたは-O-(C1-C4アルキル)である。好ましくは、R1は、-C(=O)OHであってもよい。
【0112】
式1において、R2は、置換または非置換のC6-C12アリール、置換または非置換のC5-C12ヘテロアリール、置換または非置換のC3-C8ヘテロシクロアルキル、置換または非置換のC1~C4アルキル、および置換または非置換のC3~C8シクロアルキルからなる群から選択される1種であり、ここで置換されたアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキル、およびシクロアルキルは-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの少なくとも1つの置換を含む。好ましくは、R2は、置換または非置換のオキサゾール、キラル中心炭素を含む置換または非置換のオキシシクロブタン、置換または非置換のイミダゾール、置換または非置換のC1-C4アルキル、置換または非置換のC3-C5シクロアルキルからなる群から選択される1種であってもよく、ここで置換されたオキサゾール、オキシシクロブタン、イミダゾール、アルキル、およびシクロアルキルは、-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの少なくとも1つの置換を含む。
【0113】
より具体的には、R2は、置換または非置換の
【0114】
【0115】
、置換または非置換の
【0116】
【0117】
、または置換または非置換の
【0118】
【0119】
であってもよく、ここで置換された
【0120】
【0121】
は、-OH、-(C1-C4アルキル)、ハロゲン、または-CNへの少なくとも1つの置換を含む。
【0122】
一部の実施形態では、Yは、-CH-であってもよい。
一部の実施形態では、式1において、Aが置換または非置換のピリジンであるとき、
【0123】
【0124】
は、以下の化合物からなる群から選択される1種であってもよい:
【0125】
【0126】
一部の実施形態では、Aは、置換または非置換のフェニルまたは置換または非置換のピリジンであり、ここで、置換は、ハロゲン、-CN、-OH、-O-(C1-C4アルキル)、-NH2、-NO2、および-C1-C4ハロアルキルからなる群から選択される1種への少なくとも1つの置換を含んでもよい。
【0127】
一部の実施形態では、Aがフェニルであるとき、Aは置換されたフェニルであってもよく、ここで置換はハロゲンおよび/または-CNへの1つ以上の置換である。
【0128】
一部の実施形態では、Aがピリジンであるとき、Aは置換または非置換のピリジンであってもよく、ここで置換はハロゲンおよび/または-CNへの1つ以上の置換である。
【0129】
一部の実施形態では、Aは、以下の化合物からなる群から選択される1つであってもよい:
【0130】
【0131】
一部の実施形態では、Aが置換または非置換のピリジンであるとき、
【0132】
【0133】
は、以下の化合物からなる群から選択される1つであってもよい。
【0134】
【0135】
下記の化合物および中間体は、ChemBioDraw Ultraから提供される命名規則を用いて命名された。その命名規則は、一般に、有機化学の命名法に関する国際ユニオン・フォー・アンド・アプライド・ケミストリー(IUPAC)勧奨事項およびCASインデックス規則と一致する。化学名には括弧のみを有することができ、括弧および大括弧を有することができることは明らかであろう。立体化学的記述は、命名規則に応じて、名前自体内のさまざまな位置に配置することもできる。当業者は、そのようなフォーマットのバリエーションを認識し、それらが同じ化学構造を提供することを理解するであろう。
【0136】
本開示における化合物、化合物の光学異性体、または化合物または光学異性体の薬学的に許容される塩は、酸付加塩および塩基付加塩を含み得る。
【0137】
適切な酸付加塩は、無毒性の塩を形成する酸から形成される。その例としては、酢酸塩、アジペート、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、クラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物塩、臭化水素酸塩/臭化物塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸及びキシノホ酸塩(xinofoate)を含むことができる。
【0138】
適切な塩基付加塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。その例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン(ジオールアミン)、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、2-アミノエタノール(オルアミン)、カリウム、ナトリウム、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(トリスまたはトリメタミン)および亜鉛塩を含むことができる。
【0139】
また、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩などの酸および塩基のヘミ塩を形成することができる。
【0140】
本開示における化合物、化合物の光学異性体、または化合物または光学異性体の薬学的に許容される塩は、非溶媒和形態および溶媒和形態で存在することができる。本明細書における用語「溶媒和物」は、式1の化合物、化合物の光学異性体、または化合物または光学異性体の薬学的に許容される塩、および1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子(例えば、エタノール)を含む分子複合体を指す。「水和物」という用語は、溶媒が水である場合の溶媒和物を指す。
【0141】
多成分複合体(塩および溶媒和物に加えて)もまた、本開示の範囲内に含まれる。これに関して、薬剤および1つ以上の他の成分は、化学量論的または非化学量論的量で存在する。このタイプの複合体には、包接化合物(薬剤-宿主包接錯体)および共結晶が含まれる。共結晶は、通常、非共有相互作用を介して互いに結合しているが、中性分子と塩との複合体であり得る中性分子成分の結晶性複合体として定義される。共結晶は、溶融結晶化、溶媒からの再結晶化、または成分を一緒に物理的に粉砕することによって調製することができる。
【0142】
本開示における化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩は、完全な非晶質から完全な結晶までの範囲の固体状態の連続体として存在することができる。「非晶質」という用語は、物質が分子レベルで長距離秩序を失い、温度に応じて固体または液体の物理的特性を示すことができる状態を指す。通常、前記物質は特異なX線回折パターンを提供せず、固体の特徴を示し、かつより正式には液体として説明される。それを加熱すると、その固体から液体特性への変化が起こる。この物質は状態変化(通常は二次)(「ガラス転移」)を特徴とする。「結晶性」という用語は、物質が分子レベルで規則的に配列された内部構造を有し、定義されたピークを有するX線回折パターンを提供する固相を指す。また、この物質は十分に加熱すると液体の特徴を示すが、固体から液体への変化は相変化(通常は一次)(「融点」)によって特徴付けられる。
【0143】
1つ以上の不斉炭素原子を含有する本開示における化合物は、2つ以上の立体異性体として存在し得る。構造異性体が低エネルギー障壁を介して相互に変換可能であるとき、互変異性異性または互変異性が起こり得る。これは、例えば、イミノ、ケト、またはオキシム基を含む式1の化合物におけるプロトン互変異性、または芳香族残基を含有する化合物では、いわゆる価数互変異性の形態をとることができる。結果として、単一の化合物は、少なくとも2種の異性を示し得る。
【0144】
本開示における化合物の薬学的に許容される塩は、光学活性またはラセミである対イオンを含み得る。
【0145】
個々の鏡像異性体の調整/単離のための従来の技術には、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたラセミ体(または塩または誘導体のラセミ体)の分離を含む。あるいは、ラセミ体(またはラセミ前駆体)は、適切な光学活性化合物、例えば、アルコール、または式1の化合物が酸性または塩基性残基を含む場合、塩基または酸(例えば、1-フェニルエチル)アミンまたは酒石酸)と反応することができる。得られたジアステレオマー混合物をクロマトグラフィーおよび/または分別結晶化によって分離することができ、ジアステレオマーの一方または両方を当業者に周知の手段によって対応する純粋な鏡像異性体に変換することができる。式1のキラル化合物(およびそのキラル前駆体)は、0~50体積%、通常2%~20%のイソプロパノール、および0~5体積%のアルキルアミン、通常、0.1体積%のジエチルアミンを含有する炭化水素、通常ヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を使用する非対称樹脂上のクロマトグラフィー、通常、HPLCを使用して、鏡像異性体に富む形態で得ることができる。溶離液の濃縮は、豊富な混合物を提供する。亜臨界および超臨界流体を使用するキラルクロマトグラフィーを使用することができる。本開示の一部の実施形態において、有用なキラルクロマトグラフィー法は当技術分野で知られている。
【0146】
任意のラセミ体が結晶化されると、2つの異なる種類の結晶が可能である。第1のタイプは、鏡像異性体の両方を等モル量で含有する1つの均質な形態の結晶が生成される前記のラセミ化合物(固有のラセミ体)である。第2のタイプは、それぞれ単一の鏡像異性体を含む2つの形態の結晶が等モル量で生成されるラセミ混合物または集合体である。ラセミ混合物中に存在する結晶形態の両方は同じ物理的特性を有するが、それらは真性ラセミ体と比較して異なる物理的特性を有し得る。ラセミ混合物は、当業者に公知の従来の技術によって分離することができる。
【0147】
本開示における化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩は、それらのプロドラッグとして存在し得る。
【0148】
投与と投与量
通常、本開示における化合物、前記化合物の光学異性体、または前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩は、本明細書に記載の症状を治療するのに有効な量で投与することができる。投与および投与量の目的において、本開示における化合物、前記化合物の光学異性体、または薬学的に許容される塩は、便宜上、化合物または本開示における化合物と呼ぶことができる。
【0149】
本開示における化合物は、任意の適切な経路を介してその経路に適した医薬組成物の形態で、意図された治療に有効な投与量で投与される。本開示における化合物は、経口、または直腸、膣内、非経口、または局所的に投与することができる。
【0150】
本開示における化合物は、好ましくは経口投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように飲み込むことを伴うことができ、または化合物が口から血流に直接入る頬側もしくは舌下投与を含み得る。
【0151】
一部の実施形態では、本開示における化合物は、血流、筋肉、または内臓に直接投与することができる。非経口投与に適した手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内および皮下投与を含む。非経口投与に適した装置としては、針(マイクロ針を含む)注射器、無針注射器、および注入技術が含まれる。
【0152】
もう一つの実施形態において、本開示における化合物は、皮膚または粘膜に局所に(すなわち、表皮または経皮的に)投与することができる。もう一つの実施形態では、本開示における化合物は、鼻腔内または吸入によって投与することができる。もう一つの実施形態では、本開示における化合物は直腸または膣内投与することができる。もう一つの実施形態では、本開示における化合物は、眼または耳に直接投与することができる。
【0153】
本開示における化合物および/または前記化合物を含有する組成物は、患者の種類、年齢、体重、性別および医学的症状;症状の重症度;投与経路;および使用される特定の化合物の活性を含む様々な因子に基づいて投与することができる。したがって、投与計画は大きく異なる可能性がある。一部の実施形態では、本開示における化合物の総1日投与量は、通常、本明細書で論じられる症状の治療のために約0.001~約100mg/kg(すなわち、体重1kg当たりの本開示における化合物mg)である場合もある。もう一つの実施形態では、本開示における化合物の総1日投与量は、約0.01~約30mg/kg、約0.03~約10mg/kg、または約0.1~約3mg/kgであり得る。本開示における化合物の投与が1日に数回(通常1日に4回以下)繰り返されることは珍しいことではない。通常、複数回投与の使用は、通常、必要に応じて、総1日当たりの投与量を増加させることができる。
【0154】
経口投与の場合、前記組成物は、患者に対する投与量の症状に関連した制御のために、錠剤、液体などの形態で提供され得る。この薬剤は、通常約0.01mg~約500mgの活性成分を含有する。
【0155】
本開示による適切な対象は、哺乳動物を含む。一部の実施形態では、ヒトが適切な対象である。ヒト対象は、男性でも女性でもよく、成長のどの段階でも構わない。
【0156】
医薬組成物
一実施態様では、本開示は医薬組成物を提供する。より具体的には、本開示における一部の実施形態では、代謝性疾患を予防および治療するための医薬組成物を提供し、組成物のそれぞれは、式(1)で表される化合物のうちの少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体のうちの少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。 医薬組成物のそれぞれは、薬学的に許容される担体のうちの少なくとも1つをさらに含み得る。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、生理学的に混和性である任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールのうちの1種以上、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。糖、塩化ナトリウム等の等張化剤、またはマンニトールまたはソルビトールなどのポリアルコールを組成物に含めることができる。
【0157】
医薬組成物のそれぞれは、薬学的に活性な成分のうちの少なくとも1つをさらに含み得る。例えば、薬学的に許容される成分(例えば、湿潤剤)または抗体またはその一部の貯蔵寿命または有効性を向上させることができる少量の補助成分(例えば、湿潤剤、乳化剤、保存剤、または緩衝剤)を前記組成物に含めることができる。
【0158】
本開示による組成物は、様々な形態であり得る。これは、例えば、液体、半固体および固体の投与形態、液体溶液(例えば、注射可能および注射可能溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソームおよび坐剤の形態であり得る。この形態は、意図された投与経路および治療目的に依存する。
【0159】
典型的な組成物は注射可能および注入可能溶液の形態である。投与の1つの方式は、非経口方式(例えば、静脈、皮下、腹腔内、筋肉内)である。一部の実施形態では、薬剤は静脈内注入または注射によって投与することができる。いくつかのもう一つの実施形態では、薬剤は筋肉内または皮下注射を介して投与することができる。
【0160】
固体製剤の経口投与は、例えば、本開示による1つ以上の化合物の予め決定された量をそれぞれ含む、硬質または軟質のカプセル、錠剤、カシェ、ロゼンジまたは錠剤に基づいて達成することができる。一部の実施形態では、経口投与は、粉末または顆粒形態で達成することができる。いくつかのもう一つの実施形態では、経口剤形は舌下形態、例えば、ロゼンジであってもよい。前記固体剤形では、式1の化合物は、通常1種以上の賦形剤と組み合わされる。カプセルまたは錠剤は、放出制御製剤を含み得る。カプセル、錠剤および丸薬はまた、緩衝剤を含むことができる、または腸溶性コーティングに調製することができる。
【0161】
もう一つの実施形態では、経口投与は液体剤形で達成することができる。経口投与用の液体剤形には、例えば、当分野で一般に使用されている不活性希釈剤(例えば、水)を含む薬学的に許容される乳化液、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルを含む。また、前記組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、香味剤(例えば、甘味剤)、および/または芳香剤などの賦形剤を含み得る。
【0162】
一部の実施形態では、本開示は非経口剤形の組成物を提供する。本明細書で使用される「非経口投与」という用語は、例えば、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、および注入を含む。注射可能な製剤(すなわち、滅菌注射可能な水性または油性懸濁液)は、適切な分散剤、湿潤剤および/または懸濁剤を使用して既知の技術に従って製剤化することができる。
【0163】
医薬技術分野で知られている他の担体物質および投与様式を使用することができる。本開示による医薬組成物は、効果的な製剤化および投与手順などの任意の周知の医薬技術によって調製することができる。効果的な製剤化および投与手順に関する前記の考慮事項は、当技術分野においてよく知られており、標準的な教科書に記載されている。
【0164】
キット
もう一つの実施形態では、本開示は、本開示における化合物のうち少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうち少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせをそれぞれ含むキットを提供する。一部の実施形態では、本開示は、化合物のうち少なくとも1つ、前記化合物の光学異性体のうち少なくとも1つ、前記化合物または前記光学異性体の薬学的に許容される塩のうち少なくとも1つ、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物をそれぞれ含むキットを提供する。
【0165】
例示的なキットは、前記化合物、前記光学異性体、薬学的に許容される塩、または組成物に加えて診断薬または治療薬を含み得る。キットは、診断または治療方法で使用するための指針を含む。一部の実施形態では、キットは、式1、2、3、3-1、3-2、4、または5の化合物、前記化合物を含む医薬組成物、および診断薬を含む。一部のもう一つの実施形態では、キットは、式1、2、3、3-1、3-2、4、または5の化合物、または前記化合物を含む 医薬組成物を含む。
【0166】
もう一つの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の治療方法を実施する際に使用するのにそれぞれ適切なキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、本開示による1つ以上の化合物を含む第1の投与量製剤を、本開示による方法を実施するのに十分な量で含有する。一部のもう一つの実施形態では、キットは、本開示による1つ以上の化合物を、本開示による方法を実施するのに十分な量で含み、その投与のための容器を含む。
【0167】
製造
以下に記載する反応式は、本開示における化合物、光学異性体、または薬学的に許容される塩の調製に使用される方法論の一般的な説明を提供するためのものである。本開示によるいくつかの化合物は、立体化学的配置(R)または(S)を有する単一または複数のキラル中心を含み得る。物質が鏡像異性体に富んでいるか、もしくはラセミ体であるかどうかにかかわらず、すべての合成変換を同様の方法で実施することができることは当業者には明らかであろう。また、所望の光学活性物質への分離は、任意の所望の点で本明細書および化学文献に記載されているような周知の方法を使用した順序で行うことができる。
【0168】
以下の反応式において、変数X、Y、W1、W2、W3、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、J、R1、R2、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri、Rj、およびRkは、特に断りのない限り、式1、2、3、3-1、3-2、4、または5の化合物について本明細書に記載の通りである。
【0169】
本開示による式1、2、3、3-1、3-2、4、または5の化合物は、以下の製造例の化合物を含む。前記実施形態の化合物は、以下の中間体の化合物の中から選択される2以上に基づいて文献に記載された様々な方法、および当該分野における通常の技術者に公知の技術常識に基づいて調製または提供することができる。前記中間体の化合物は、以下の記載に加えて、文献に記載されている様々な方法および当分野における技術者に知られている技術常識に基づいて調製または提供することができる。
【0170】
式1、2、3、3-1、3-2、4、または5の化合物を調製するために使用される中間体の調製方法は、後述する調製方法1~6に記載されている。
【発明の効果】
【0171】
本開示による新規化合物は、GLP-1受容体アゴニストとして優れた活性を示す。特に、GLP-1受容体アゴニストとして本開示における化合物は、優れた耐糖能を示すので、代謝疾患のための治療剤として顕著な効果を示す。さらに、本開示による新規化合物は、心血管系に対する優れた薬理学的安全性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0172】
以下、本開示の理解を助けるために好ましい実施形態を提示する。ただし、以下の実施形態は、本開示をより理解し易くするために提供されるものであり、実施形態によって本開示を限定するものではない。
【0173】
以下に述べる試薬および溶媒は、特に断りのない限り、Sigma-Aldrich、TCIなどから購入した。ウォーターズの高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用した。カラムクロマトグラフィー用シリカゲルは、バイオタージのフラッシュ精製システムを使用した。1H NMRスペクトルは、Bruker 400 MHz AscendTMシステムを使用して記録した。Waters Masslynx質量スペクトルシステムを使用した。
【0174】
1H核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、全て本発明における実施形態の化合物の化学構造と一致した。
【0175】
特徴的な化学シフト(d)は、重水素化溶媒中の残留プロトンシグナルに対する百万分の1(ppm:part-per-million)(CDCl3:7.27ppm;CD3OD:3.31ppm;DMSO-d6:2.50ppm)として提示され、主要ピークを指定するために従来の略語をもって報告される。例えば、s:単一項;d:二重項;t:三重項;q:四重項;m:多重項;およびbr:広い。
【0176】
合成例
合成例1:中間体1~19の合成
中間体1~19の調製方法の例を以下に具体的に記載した。以下の調製方法1~6によって当業者は市販する、または当技術分野で公知の方法によって調製することができる適切な出発物質から中間体1~19に列挙した化合物を調製することができる。
【0177】
1.調製方法1
【0178】
【0179】
(1)中間体1の合成:(S)-6-(((6-(3-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ニコチノニトリル)
1)6-(((6-クロロピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ニコチノニトリルの合成
6-ブロモメチル-ニコチノニトリル(1.52g)および6-クロロ-2-ヒドロキシピリジン(1.0g)を丸底フラスコに入れ、トルエン(50mL)中で撹拌した。Ag2CO3(4.26g)を加え、混合物を100℃に加熱し、1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、酢酸エチル(EA)で混合物を希釈し、セライトパッドで濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体の標的化合物(1.55g、82%)を得た。LC-MS(ES+):246(M+H)+
2)tert-ブチル(S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-カルボキシレートの合成
前記工程1)で合成された化合物(600mg)、tert-ブチル(S)-2-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(539mg)、Pd2(dba)3(112mg)、Cs2CO3(1.6g)、およびBINAP(152mg)を丸底フラスコに入れ、トルエン(20mL)中で撹拌した。混合物をN2下で120℃に加熱し、1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、EAで混合物を希釈し、セライトパッドで濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をヘキサン/酢酸エチル溶離液系としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりシロップの目的化合物(603mg、60%)を得た。LC-MS(ES+):410(M+H)+
3)(S)-6-(((6-(3-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ニコチノニトリルの合成
前記工程2)で合成した化合物(603mg)を丸底フラスコに入れた後、DCM(10mL)に溶解し、攪拌した。混合物を撹拌しながら0℃でTFA(1.5mL)を滴下した。次いで得られた混合物を室温で6時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、NaHCO3飽和水溶液で溶液を中和し、DCM/MeOH10%溶液を用いて抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下でろ過し、減圧下で濃縮し、茶色固体の標的化合物(512mg)を得た。LC-MS(ES+):310(M+H)+
【0180】
【0181】
(2)中間体2の合成:(S)-3-フルオロ-4-(((6-(3-メチルピペラジン-1-イル)ピラジン-2-イル)オキシ)メチル)ベンゾニトリルトリフルオロ酢酸塩
中間体2は、調製方法1に従って合成された。
【0182】
1)4-(((6-クロロピラジン-2-イル)オキシ)メチル)-3-フルオロベンゾニトリルの合成
6-クロロピラジン-2-オール(1当量)および4-(ブロモメチル)-3-フルオロベンゾニトリル(1当量)を丸底フラスコに入れ、CH3CN(0.1M)中で撹拌した。K2CO3(3当量)を加えた後、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を水で希釈し、EAを用いて抽出した。得られた有機層をブライン溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過して濾液を得た。減圧下で濾液を濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体の標的化合物(80%)を得た。LC-MS(ES+):264(M+H)+
2)tert-ブチル(S)-4-(6-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)ピラジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-カルボキシレートの合成
前記工程1)で合成された化合物(1当量)、tert-ブチル(S)-2-メチルピペラジン-1-カルボキシレート(1.1当量)、Cs2CO3(2当量)、BINAP(0.1当量)およびPd2(dba)3(0.05当量)を丸底フラスコに入れ、トルエン(0.2M)中で撹拌した。混合物を窒素下で120℃に加熱し、16時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、反応混合物をEAで希釈し、セライトパッドを通して濾過した。濾液に水を加え、濾液をEAを用いて抽出した。得られた有機層をブライン溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過して濾液を得た。濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体の標的化合物(73%)を得た。LC-MS(ES+):428(M+H)+
3)(S)-3-フルオロ-4-(((6-(3-メチルピペラジン-1-イル)ピラジン-2-イル)オキシ)メチル)ベンゾニトリルの合成
前記工程2)で合成した化合物(710mg)を丸底フラスコに入れた後、DCM(2mL)中で攪拌した。混合物を撹拌しながら、室温でTFA(1.68mL)を滴下した。次いで混合物を室温で1時間撹拌した。TLCで反応が終了したことを確認した後、混合物を減圧下で濃縮し、淡黄色油状物の標的化合物を得た。LC-MS(ES+):328(M+H)+
【0183】
【0184】
(3)中間体3の合成:6-(((6-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ニコチノニトリル
中間体3は、調製方法1に従って合成した。
【0185】
1)4-((3-ブロモフェノキシ)メチル)-3-フルオロベンゾニトリルの合成
4-(ブロモメチル)-3-フルオロベンゾニトリル(10g)、3-ブロモフェノール(5.46mL)および炭酸カリウム(9.68g)、ならびにCH3CN(100mL)を使用して、標的化合物(11.88g,83%)を得た。LC-MS(ES+):307(M+H)+
2)tert-ブチル4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペラジン-1-カルボキシレートの合成
前記工程1)で合成した化合物(2.45g)、1-Boc-ピペラジン(1.79g)、Pd2(dba)3(367mg)、BINAP(498mg)、およびトルエン(40mL)中のCs2CO3(5.21g)を14時間反応させて標的化合物(668mg)を20%収率で得た。LC-MS(ES+):412(M+H)+
3)3-フルオロ-4-((3-(ピペラジン-1-イル)フェノキシ)メチル)ベンゾニトリルの合成
前記工程2)で合成した化合物(411mg)をDCM(5mL)に溶解した。TFA(5mL)を加えた。得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を減圧下で濃縮した。ジエチルエーテルを加えた。得られた残留物を摩砕して標的化合物(410mg,81%)を得た。LC-MS(ES+):312(M+H)+
【0186】
【0187】
(4)中間体4の合成:6-(((6-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ニコチノニトリル
中間体4は、調製方法1に従って合成された。
【0188】
1)6-(((6-クロロピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ニコチノニトリルの合成
6-(ブロモメチル)ニコチノニトリル(1.52g)および6-クロロ-2-ヒドロキシピリジン(1.0g)を丸底フラスコに入れ、トルエン(50mL)中で撹拌した。混合物にAg2CO3(4.26g)を加えた。得られた混合物を100℃に加熱し、1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物をEAで希釈し、セライトパッドに通して濾過して濾液を得た。濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、標的化合物(1.55g,82%)を得た。LC-MS(ES+): 246(M+H)+
2)tert-ブチル4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボキシレートの合成
前記工程1)で合成した化合物(600mg)、1-Boc-ピペラジン(500mg)、Pd2(dba)3(112mg)、Cs2CO3(1.6g)、およびBINAP(152mg)を丸底フラスコに入れ、トルエン(20mL)中で撹拌した。混合物を窒素下で120℃に加熱し、1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物をEAで希釈し、セライトパッドで濾過して濾液を得た。濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、透明なシロップの標的化合物(751mg,78%)を得た。C-MS(ES+):396(M+H)+
3)6-(((6-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ニコチノニトリルの合成
前記工程2)で合成した化合物(751mg)を丸底フラスコに入れ、DCM(10mL)に溶解し、攪拌した。0℃で混合物を撹拌しながらTFA(1mL)を混合物に滴下した。次いで得られた混合物を室温で6時間撹拌した。TLCにより反応が終結したことを確認した後、NaHCO3飽和水溶液で溶液を中和し、DCM/MeOH10%溶液で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮して、褐色固体の標的化合物(600mg)を得た。LC-MS(ES+):296(M+H)+
2.調製方法2
【0189】
【0190】
(1)中間体5の合成:1-(6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン
1)2-クロロ-6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジンの合成
3-ピリジンメタノール(885mg)を丸底フラスコに入れ、THF(17mL)中で撹拌した。混合物にKOtBu(1.37g)を分けて加えた。得られた混合物を30分間撹拌した。続いて、混合物に2,6-クロロピリジン(1000mg)を加え、得られた混合物を室温で1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物にNH4Cl飽和水溶液とEAの混合物を加えた。次いで得られた混合物を15分間撹拌した。得られた混合物をセライトパッドで濾過し、EAで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体の標的化合物(1.20g,86%)を得た。LC-MS(ES+):221(M+H)+
2)tert-ブチル4-(6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボキシレートの合成
前記工程1)で合成した化合物(441mg)、1-Boc-ピペラジン(559mg)、Pd2(dba)3(92mg)、BINAP(125mg)、およびCs2CO3(1.30g)を丸底フラスコに入れ、トルエン(6mL)中で撹拌した。窒素下で混合物を90℃に加熱し、1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物をセライトパッドで濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、標的化合物(225mg、31%)を得た。LC-MS(ES+):371(M+H)+
3)1-(6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジンの合成
エタノール(0.4mL)とEA(3mL)混合溶媒に塩化アセチル(0.3mL)をゆっくり滴下し、混合物を40℃で1時間撹拌した。混合物に前記工程2)で合成した化合物(225mg)を加え、得られた混合物を40℃で2時間撹拌した。混合物にEAを加え、得られた混合物を室温で1時間激しく撹拌し、濾過して固体を得た。対応する固体を5%MC/MeOH溶液に溶解した。Na2CO3飽和水溶液を加え、得られた混合物を30分間撹拌した。層分離で得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮して標的化合物(135mg、86%)を得た。LC-MS(ES+):271(M+H)+
3.調製方法3
【0191】
【0192】
(1)中間体6の合成:1-(6-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジントリフルオロ酢酸塩
1)5-クロロ-2-(クロロメチル)-3-フルオロピリジンの合成
(5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メタノール(324mg)をDCM(20mL)に溶解し、混合物を0℃に冷却した。SOCl2(0.3mL)を混合物にゆっくりと加え、混合物を室温で3時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、得られた混合物を減圧下で濃縮して、標的化合物を得た。標的化合物をさらに精製することなく次の工程に使用した。LC-MS(ES+):181(M+H)+
2)tert-ブチル4-(6-ヒドロキシピリジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボキシレートの合成
6-クロロピリジン-2(1H)-オン(2g)およびN-Boc-ピペラジン(7.2g)をn-ブタノール(16mL)に溶解した。混合物を140℃で3日間撹拌した。NH4Cl水溶液と食塩水を混合物に添加した。得られた混合物をEAで2回抽出した。得られた有機層を無水Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をCH3CN(40mL)およびH2O(200mL)で希釈し、室温で2時間撹拌した。次いで得られた混合物を濾過して固体の標的化合物(1.49g、35%)を得た。LC-MS(ES+):280(M+H)+
3)tert-ブチル4-(6-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボキシレートの合成
tert-ブチル4-(6-ヒドロキシピリジン-2-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(559mg)をCH3CN(5mL)に溶解した。5-クロロ-2-(クロロメチル)-3-フルオロピリジン(2mmol)および炭酸カリウム(553mg)を混合物に添加し、次いで混合物を40℃で14時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を蒸留H2Oで希釈し、EAで2回抽出した。得られた有機層を無水Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチルによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色液体の標的化合物(249mg,29%)を得た。LC-MS(ES+):423(M+H)+
4)1-(6-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジントリフルオロ酢酸塩の合成
前記工程3)で合成した化合物(220mg)をDCM(10mL)に溶解した。混合物にTFA(10mL)を加え、混合物を室温で1.5時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を減圧下で濃縮して、標的化合物を得て、さらに精製することなく使用した。LC-MS(ES+):323(M+H)+
4.調製方法4
【0193】
【0194】
(1)中間体7の合成:3-フルオロ-4-(((6-(ピペリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ベンゾニトリル塩化水素塩
1)tert-ブチル4-(3-ヒドロキシフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレートの合成
3-(ピペリジン-4-イル)フェノール(1mmol)および(Boc)2O (1mmol)を丸底フラスコに入れ、DCM(2mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を水で希釈し、DCMで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。標的化合物を得て、それをさらに精製することなく使用した。LC-MS(ES+):278(M+H)+
2)tert-ブチル4-(6-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)ピリジン-2-イル)ピペリジン-1-カルボキシレートの合成
前記工程1)で合成した化合物(1当量)および4-(ブロモメチル)-3-フルオロ-ベンゾニトリル(1当量)を丸底フラスコに入れ、CH3CN(0.1M)中で攪拌した。炭酸カリウム(1.5当量)を加えた後、混合物を50℃で2時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を適量の水に加え、EAで抽出した。得られた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより無色液体の標的化合物(70%)を得た。LC-MS(ES+):412(M+H)+
3)3-フルオロ-4-(((6-(ピペリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ベンゾニトリル塩化水素塩の合成
前記工程2)で合成した化合物(560mg)を1,4-ジオキサン(4mL)に溶解した。4N HCl 1,4-ジオキサン溶液(2.6mL)を室温で添加した。混合物を4時間撹拌した。次いで混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣をMTBEで処理して固体を得た。固体をMTBEで2時間摩砕した。粉砕した固体を濾過させ、乾燥して白色固体の標的化合物(85%)を得た。LC-MS(ES+):312(M+H)+
5.調製方法5
【0195】
【0196】
(1)中間体8の合成:5-クロロ-3-フルオロ-2-(((6-(ピペリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ピリジン塩酸塩
1)tert-ブチル4-(3-ヒドロキシフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレートの合成
tert-ブチル4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロレーン-2-イル)-3,6-ジヒドロキシピリジン-1(2H)-カルボキシレート、クロロヒドロキシピリジン、Pd(PPh3)4、およびNa2CO3を還流コンデンサーを備えた反応容器に入れた。1,4-ジオキサン(7mL)、エタノール(3mL)および水(1mL)を加えた。得られた混合物を窒素下で120℃に加熱した。一晩撹拌した後、混合物を室温に冷却し、EA(50mL)を使用してセライトパッドを通して濾過した。混合物を水(20mL)で希釈し、水層をEA(3×50mL)で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過し、カラムクロマトグラフィー(5%MeOH/DCM)で精製して、白色固体のtert-ブチル6-ヒドロキシ-3’,6’-ジヒドロ-[2,4’-ビピリジン]-1’(2’H)-カルボキシレートを得た。
【0197】
tert-ブチル6-ヒドロキシ-3’,6’-ジヒドロ-[2,4’-ビピリジン]-1’(2’H)-カルボキシレートをMeOHに溶解した。10%Pd/Cを添加した。混合物を室温で水素雰囲気(バルーン圧)にさらした。2時間後、反応が終了しいないことを確認し、さらに10%Pd/Cを混合物に添加した。3時間後、反応が終了したことを確認し、混合物をセライトパッドで濾過し、MeOHで洗浄し、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(33%酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、白色固体の標的化合物(45%)を得た。LC-MS(ES+):278(M+H)+
2)tert-ブチル4-(6-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペリジン-1-カルボキシレートの合成
(5-クロロ-3-フルオロ-2-ピリジル)メタノールの溶液に、前記工程1)で合成した化合物、およびトルエン(Bu)3Pを室温で添加した。混合物を15分間撹拌した。ADDPは室温で添加した。混合物を室温で16時間撹拌した。混合物をヘキサン(30mL)に注ぎ、フィルターガラスを通して濾過した。得られた有機抽出物を減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製して、無色油状の標的化合物(30%)を得た。LC-MS(ES+):422(M+H)+
3)5-クロロ-3-フルオロ-2-(((6-(ピペリジン-4-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)メチル)ピリジン塩酸塩の合成
工程2)で合成した化合物を丸底フラスコに入れ、1,4-ジオキサン(4mL)中で撹拌した。混合物に4N HCl 1,4-ジオキサン溶液(1mL)を加え、室温で1時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮して、白色固体の標的化合物を得て、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。LC-MS(ES+):322(M+H)+
6.調製方法6
【0198】
【0199】
(1)中間体9の合成:メチル(S)-2-(クロロメチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボキシレート
1)メチル(S)-5-ニトロ-6-((オキセタン-2-イルメチル)アミノ)ピコリネートの合成
メチル6-クロロ-5-ニトロピコリネート(1.0g)、TEA(1.93mL)、および(S)-オキセタン-2-イルメタンアミン(402mg)をDMF(10mL)中に溶解し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を濃縮してTHFを除去し、EAで希釈し、ブライン溶液で洗浄した(×2)。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して黄色固体の標的化合物(1.1g、89%)を得た。LC-MS(ES+):268(M+H)+
2)メチル(S)-5-アミノ-6-((オキセタン-2-イルメチル)アミノ)ピコリネートの合成
前記工程1)で合成した化合物(1.1g)とPd/C(110mg)をMeOH(3.8mL)に加え、混合物を室温で3時間撹拌した。混合物をセライトパッドに濾過して金属触媒を除去し、得られた濾液を濃縮して、白色固体の標的化合物(1.0g,100%)を得た。LC-MS(ES+):238(M+H)+
3)メチル(S)-2-(クロロメチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボキシレートの合成
前記工程2)で合成した化合物(1.0g)とクロロ酢酸無水物(754mg)をTHF(21mL)に加え、混合物を60℃で1.5時間攪拌した。THFを除去するために混合物を濃縮し、EAとNaHCO3飽和水溶液を加えた。得られた混合物をEAで抽出した(×2)。得られた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体の標的化合物(760mg、61%)を得た。LC-MS(ES+):296(M+H)+
【0200】
【0201】
(2)中間体10の合成:メチル2-(クロロメチル)-1-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキシレート
1)1-フルオロシクロプロパン-1-カルボキサミドの合成
1-フルオロシクロプロパン-1-カルボン酸(38,4.0g)を塩化チオニル(1.8mL)に加え、還流下で30分間撹拌した。混合物を減圧濃縮して液体状態の1-フルオロプロパン-1-カルボニルクロリドを得て、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。別の反応フラスコにおいて、28%アンモニア水溶液(10mL)とTHF(2mL)を混合した。次いで、1-フルオロプロパン-1-カルボニルクロリド(38.4mmol)溶液を0℃で混合物に滴下してゆっくり加えた。得られた混合物を蓋が開いたフラスコの状態で一晩撹拌した。得られた白色固体を濾過し、氷水で洗浄し、乾燥して淡黄色固体の標的化合物(500mg)を得た。LC-MS(ES+):104(M+H)+
2)(1-フルオロシクロプロピル)メタンアミン塩酸塩の合成
前記工程1)で合成した化合物(270mg)をTHF(5mL)に溶解し、1M BH3 THF溶液(10.4mL)を0℃で添加した。混合物を70℃で一晩撹拌した。0℃で10%HCl溶液(2mL)をゆっくり加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、Et2Oで洗浄し、10%NaOH水溶液を用いてpH 10に中和し、Et2Oで抽出した(×3)。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。Et2O溶液中の2N HCl 1.5mLを0℃で滴下した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、濾過して、緑色固体の標的化合物(102mg,31%)をさらに精製することなく得た。LC-MS(ES+):90(M+H)+
3)3-(((1-フルオロシクロプロピル)メチル)アミノ)-4-ニトロ安息香酸メチルの合成
前記工程2)で合成した化合物(100mg)とメチル3-フルオロ-4-ニトロ安息香酸(158mg)をCH3CN(2.5mL)中に溶解し、TEA(0.33mL)を滴下した。混合物を85℃で一晩撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、分離し、カラムクロマトグラフィー(12g SiO2,20% EA->50%EA)で精製して、白色固体の標的化合物(119mg、56%)を得た。LC-MS(ES+):269(M+H)+
4)4-アミノ-3-(((1-フルオロシクロプロピル)メチル)アミノ)安息香酸メチルの合成
前記工程3)で合成した化合物(100mg)をTHF(5mL)に溶解し、Pd/C(118mg)を加えた。混合物を水素ガス下で室温で3時間撹拌した。混合物を濾過し、減圧下で濃縮して、白色固体の標的化合物(71mg,80%)を得た。LC-MS(ES+):239(M+H)+
5)2-(クロロメチル)-1-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸メチルの合成
前記工程4)で合成した化合物(70mg)と2-クロロ-1,1,1-トリメトキシエタン(0.04mL)をCH3CN(3mL)中に溶解し、p-TSA(3mg)を加えた。混合物を85℃で3時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(12g SiO2,20% EA→50%EA)で精製して、白色固体の標的化合物(89mg,52%)を得た。LC-MS(ES+):297(M+H)+
中間体11~19の合成
以下の表1に中間体11~19で列挙される化合物は市販されているか、または当業者に公知の調製方法を使用して調製することができる適切な出発物質から、調製方法1~6と同一または類似の手順を使用して調製した。これらの化合物は当業者に公知の方法を用いて精製され、これはシリカゲルクロマトグラフィー、HPLC、または再結晶を含み得る。最終化合物を中性塩または酸付加塩または塩基付加塩として単離することができた。前記で調製した中間体化合物名とLC-MSデータを下記表1に記載した。
【0202】
【0203】
実施形態
前記中間体を用いた実施形態1~18の化合物の合成を以下に具体的に記載した。以下の製造例A、B、およびCは、前記中間体を用いて実施形態1~18の化合物の合成方法の例示を示す。製造例A、B、およびCを用いて、通常の技術者は、本開示の実施形態1~18の化合物を製造することができる。
【0204】
1.製造例A
【0205】
【0206】
(1)実施形態1の合成:2-(((S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸
1)メチル2-(((S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキシレートの合成
中間体1(194mg)、中間体18(185mg)、および炭酸カリウム(350mg)を丸底フラスコでCH3CN(10mL)に溶解し、混合物を60℃で1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物をEAで希釈し、得られた有機層をNaHCO3飽和水溶液、NH4Cl飽和水溶液、および食塩水の順序で連続して洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過し、濾液を得た。当該濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/エチルシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、透明なシロップのメチル2-(((S)-4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-))2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキシレート(241mg,67%)を得た。LC-MS(ES+):568(M+H)+
2)最終化合物の合成
前記工程1)で得られた化合物(241mg)を丸底フラスコ中のCH3CN(10mL)に溶解し、混合物を撹拌した。混合物を撹拌しながら、1.0M TBD水溶液(0.85mL)を滴下した。混合物に精製水(1mL)を加え、混合物を60℃で1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、1N HCl水溶液で混合物をpH7に中和した。得られた混合物をDCM/MeOH 10%溶液を用いて抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過して、濾液を得た。濾液を減圧下で濃縮した。残渣をDCM/MeOHを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡緑色固体の最終化合物(55mg,24%)を得た。1H NMR(DMSO-d6):d 8.97(s,1H)、8.27(d,J=2.0 Hz,1H)、8.26(s,1H)、7.81(d,J=8.4 Hz,1H)、7.64(d,J=8.4 Hz,1H)、7.53(d,J=8.4 Hz,1H)、7.47(t,J=8.0 Hz,1H)、6.31(d,J=8.4 Hz,1H)、6.16(d,J=7.6 Hz,1H)、5.40(s,2H)、5.14(m,1H)、4.73(m,2H)、4.47-4.46(m,1H)、4.34-4.25(m,2H)、3.70-3.59(m、4H)、2.90(t,J=10.0 Hz,1H)、2.72-2.61(m,3H)、2.38-2.33(m,1H)、2.26-2.21(m,1H)、1.03(d,J=6.0 Hz,3H);LC-MS(ES+):554[M+H]+。
【0207】
【0208】
(2)実施形態2の合成:(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸
1)メチル(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキシレートの合成
中間体4(233mg)、中間体18(232mg)、炭酸カリウム(436mg)を丸底フラスコ中のCH3CN(10mL)に溶解し、混合物を60℃で1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物をEAで希釈し、得られた有機層をNaHCO3飽和水溶液、NH4Cl飽和水溶液、およびブラインで連続的に洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濾過して濾液を得た。濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/エチルシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、透明なシロップのメチル(S)-2-((4-(6-((5-シアノピリジン-2-イル)メトキシ)ピリジン-))2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-(オキセタン-2-イルメチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキシレート(390mg,89%)を得た。LC-MS(ES+):554(M+H)+
2)最終化合物の合成
前記工程1)で得えられた化合物(387mg)を丸底フラスコ中のCH3CN(10mL)に溶解し、混合物を撹拌した。混合物を攪拌しながら、1.0M TBD水溶液(1.4mL)を滴下した。混合物に精製水(0.6mL)を加え、混合物を60℃で1日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、1N HCl水溶液で混合物をpH7に中和し、DCM/MeOH10%溶液で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下でろ過して濾液を得た。濾液を減圧下で濃縮した。残渣をDCM/MeOHを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して淡緑色固体の最終化合物(225mg,60%)を得た。1H NMR(dMSO-d6):d 8.97(s,1H)、8.28(d,J=8.2 Hz,1H)、8.24(s,1H)、7.80(d,J=2.8 Hz,1H)、7.62(d,J=8.4 Hz,1H)、7.56(d,J=7.6 Hz,1H)、7.49(t,J=8.0 Hz,1H)、6.32(d,J=8.0 Hz,1H)、6.18(d,J=8.0 Hz,1H)、5.41(s,2H)、5.11-5.05(m,1H)、4.79(d,J=7.2 Hz,1H)、4.75(d,J=7.2 Hz,1H)、4.65-4.60(m,1H)、4.50-4.45(m,1H)、4.39-4.34(m,1H)、3.94(d,J=13.2 Hz,1H)、3.76(d,J=13.2 Hz,1H)、3.34-3.29(m,3H,想定値;水ピークによって部分的に隠れている)、2.66(m,1H)、2.50-2.42(m,6H,推定値;溶媒ピークによって部分的に隠されている);LC-MS(ES+):540(M+H)+
【0209】
【0210】
(3)実施形態3の合成:(S)-2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペリジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボン酸
1)メチル(S)-2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペリジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボキシレートの合成
中間体7(1.0当量)、中間体9(1.0当量)、および炭酸カリウム(3.0当量)を丸底フラスコ中のCH3CN(0.1M)に溶解し、混合物を室温で3日間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物に精製水を加えた。混合物をEAで抽出し、得られた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、メチル(S)-2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペリジン-1-イル)メチル)-3-(オキセタン-2-イルメチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-カルボキシレート(91%)を得た。LC-MS(ES+):570(M+H)+
2)最終化合物の合成
前記工程1)で得られた化合物を丸底フラスコ中のCH3CN(0.1M)中に溶解し、混合物を撹拌した。1M TBD水溶液を加えた後、混合物を50℃で4時間撹拌した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を2Mクエン酸水溶液(7.0mL)でpH6に酸性化し、精製水で希釈した。得られた水層を5%DCM/MeOH溶液で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をMeOH/DCMにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色固体の最終化合物(55%)を得た。1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)d 13.08-12.98(m,1H)、8.16-8.13(m,1H)、8.01-7.90(m,2H)、7.77-7.75(m,2H)、7(t,J=7.9 Hz,1H)、6.94-6.84(m,3H)、5.23-5.21(m,3H)、4.87(dd,J=14.6,6.3 Hz,1H)、4.74(dd,J=14.6,4.2 Hz,1H)、4.53-4.46(m,1H)、4.41-4.34(m,1H)、4.03-3.91(m,2H)、2.95(dd,J=15.1,12.8 Hz,2H)、2.75-2.65(m,1H)、2.30-2.18(m,2H)、1.80-1.63(m,4H);LC-MS(ES+):556(M+H)+
【0211】
【0212】
(4)実施形態4の合成:2-(((S)-4-(6-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)ピラジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸
1)メチル2-(((S)-4-(6-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)ピラジン-2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸塩の合成
中間体2(1.0当量)、中間体18(1.0当量)、および炭酸カリウム(5.0当量)を丸底フラスコ中のCH3CN(0.1M)中に溶解し、混合物を室温で2日間撹拌した。反応が終了されず、中間体2が残っていることを確認した。したがって、混合物に中間体18を0.5当量加え、混合物を60℃に加熱した。TLCにより反応が終了したことを確認した後、混合物を室温に冷却し、精製水を加えた。混合物をEAを用いて抽出し、得られた有機層をブラインで洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/エチルシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色液体のメチル2-(((S)-4-(6-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)ピラジン-)2-イル)-2-メチルピペラジン-1-イル)メチル)-1-(((S)-オキセタン-2-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸塩(70%)を得た。LC-MS(ES+):586(M+H)+
2)最終化合物の合成
前記工程1)で得られた化合物を丸底フラスコに入れ、CH3CN(0.1M)中で攪拌した。1M TBD水溶液を加えた後、混合物を60℃で3時間撹拌した。 TLCにより反応が終了したことを確認した後、2Mクエン酸水溶液(7.0mL)を使用して混合物をpH6に酸性化し、精製水で希釈した。混合物を5%DCM/MeOH溶液で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をDCM/MeOHによるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して最終化合物を得た。MPLCでは純度が不十分であった。したがって、PTLC(7%DCM/MeOH)を使用してさらに分離を行い、黄色の泡沫の最終化合物(26%)を得た。1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)d 12.83(brs,1H)、8.28(d,J=0.8 Hz,1H)、7.89(dd,J=9.2,1.2 Hz,1H)、7.84(s,1H)、7.82(dd,J=8.4,1.6 Hz,1H)、7.73-7.65(m,3H)、7.53(s,1H)、5.43(s,2H)、5.18-5.15(m,1H)、4.76(d,J=4.4 Hz,2H)、4.49-4.45(m,1H)、4.36(d,J=14.0 Hz,1H)、4.31-4.26(m,1H)、3.88(d,J=10.8 Hz,1H)、3.80(d,J=13.2 Hz,1H)、3.68(d,J=14.0 Hz,1H)、3.15-3.09(m,1H)、2.94(dd,J=12.8,8.6 Hz,1H)、2.73-2.62(m,3H)、2.42-2.31(m,2H)、1.11(d,J=6.2 Hz、3H);LC-MS(ES+):572(M+H)+
(5)実施形態5~10の合成
実施形態1、2、3および4の化合物を調製するための手順と同一または類似の手順によって以下の表2-1、2-2の実施形態5~10の化合物を市販するか、または当業者に周知の調製方法によって製造することができる適切な出発物質から調製した。これらの化合物は、当業者に周知の方法により精製され、これはシリカゲルクロマトグラフィー、HPLC、または再結晶を含み得る。最終化合物は、中性塩または酸付加塩または塩基付加塩として単離することができた。実施形態5~10の化合物の名称、NMRデータ、およびLC-MSデータを下記表2-1、2-2に記載した。
【0213】
【0214】
【0215】
2.製造例B
【0216】
【0217】
(1)実施形態11の合成:2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸
1)メチル2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸塩の合成
中間体3(0.3mmol)、中間体10(89mg)、および炭酸カリウム(124mg、0.9mmol)を丸底フラスコ中のCH3CN(3.0mL)に溶解し、混合物を80℃で4時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、セライトパッドを通して濾過して濾液を得た。濾液を減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/エチルロシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、メチル2-((4-(3-((4-シアノ-2-フルオロベンジル)オキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1-((1-フルオロシクロプロピル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸塩(93mg、57%)を 白色固体として得た。LC-MS(ES+):572(M+H)+
2)最終化合物の合成
前記工程1)で得られた化合物(60mg)を1,4-ジオキサン/水(4:1、2.5mL)に溶解した。1N NaOH水溶液(0.2mL)を滴下した後、混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を1N HCl水溶液で中和した。その後、混合物を5%DCM/MeOH溶液で抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりDCM/MeOH(12g SiO2、DCM中5%メタノール→DCM中の10%メタノール)で精製して、白色固体の最終化合物(25mg、46%)を得た。1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)d 12.82(m,1H)、8.29(s,1H)、7.91(d,J=10.4 Hz,1H)、7.83-7.80(m,1H)、7.77-7.73(m,2H)、7.70-7.64(m,1H)、7.14-7.09(m,1H)、6.57-6.55(m,2H)、6.47-6.45(m,1H)、5.20(s,2H)、4.99(d,J=22.0 Hz,2H),3.87(s,2H)、3.13(m,4H)、2.60(s,4H)、1.07-1.02(m,4H);LC-MS(ES+):556(M+H)+
(2)実施形態12~17の合成
実施形態11の化合物を製造するための手順と同一または類似の手順により以下の表3-1、3-2の実施形態12~17の化合物を市販するか、または当業者に周知の調製方法によって製造することができる適切な出発物質から調製した。これらの化合物は、当業者に周知の方法を使って精製され、これはシリカゲルクロマトグラフィー、HPLC、または再結晶を含み得る。最終化合物を中性塩または酸付加塩または塩基付加塩として単離することができた。実施形態12~17の化合物の名称、NMRデータおよびLC-MSデータを下記表3-1、3-2に記載した。
【0218】
【0219】
【0220】
3.製造例C
【0221】
【0222】
(1)実施形態18の合成:1-(オキサゾール-2-イルメチル)-2-((4-(6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル))メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸
1)メチル1-(オキサゾール-2-イルメチル)-2-((4-(6-(ピリジン-3-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸塩の合成
中間体5(130mg)、中間体19(147mg)、および炭酸カリウム(332mg)を丸底フラスコ中のCH3CN(1.5mL)に溶解し、混合物を50℃で4時間撹拌した。精製水を加えた後、混合物を室温に冷却し、同じ温度で2時間撹拌した。得られた固体を濾過し、精製水:CH3CN(2:1)で洗浄し、乾燥し、メチル1-(オキサゾール-2-イルメチル)-2-((4-(6-(ピリジン-3))-イルメトキシ)ピリジン-2-イル)ピペラジン-1-イル)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボン酸塩(52mg,20%)を得た。LC-MS(ES+):540(M+H)+
2)最終化合物の合成
前記工程1)で得られた化合物(45mg)を1,2-ジクロロエタン(3.0mL)に溶解した。Me3SnOH(49mg)を添加した後、混合物を80℃で6日間撹拌した。混合物を濃縮し、EAで抽出した。得られた有機層を塩酸水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残渣をDCM/MeOH/AcOHを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、褐色固体の最終化合物(8mg,18%)を得た。1H NMR(400 MH,MeOD):d 8.60(d,J=1.8 Hz,1H)、8.46(dd,J=4.8,0.8 Hz,1H)、8.27(s,1H)、8.03(d,J=8.8 Hz,1H)、7.91-7.89(m,2H)、7.72(d,J=8.4 Hz,1H)、7.46-7.42(m,2H)、7.14(s,1H)、6.25(d,J=8.0 Hz,1H)、6.14(d,J=7.6 Hz,1H)、5.38(s,2H)、3.98(s,2H)、3.37-3.34(m,4H)、2.55(t,J=4.8 Hz、4H);LC-MS(ES+):526(M+H)+
前記製造例A、B、およびCを用いて製造される実施形態1~18の化合物の化学構造と名称を下記表4-1、4-2、4-3に記載した。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
実験例
1.実験例1:cAMPアッセイ
cAMPアッセイキットは、cAMPアッセイキットメーカー(CISBIO)が提供するプロトコルに基づいて最適化した方法に従って行った。cAMP測定用96ウェルプレート(少量、白色)に、GLP-1受容体CHO-K1細胞を6×103細胞/ウェル/5mLで分注した。対照物質として、プレートの1つのウェルの各々にエキセンジン-4 5mLを0、1、10、100、1000、および10000pMの濃度で処理した。そして、他のプレートにあるウェルそれぞれに実施形態1、2、3、4、5、10、11、13、14、16および17による化合物5mLを0、1、10、100、1000、10000nMの濃度でそれぞれ処理した。細胞を室温で7分間インキュベートした。cAMPコンジュゲートと溶出バッファーを1:4の比率で混合してcAMP-d2コンジュゲート試薬を調製した。cGMPコンジュゲートと溶出バッファーを1:4の比率で混合して抗cAMPクリプテートコンジュゲート試薬を調製した。次いで、cAMP-d2コンジュゲート試薬5mLを各ウェルに添加した。次いで、抗cAMPクリプテートコンジュゲート試薬5mLを各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、FlexStaton 3(Molecular Devices)機器を用いて培養物の665nmおよび620nmの波長でのHTRFシグナルを測定した。665/620の比は、エキセンジン-4および実施形態化合物について、それぞれ665nmおよび620nmで測定した値から計算した。エキセンジン-4に対する割合を100%に換算することにより、実施形態化合物のEmax値を化合物のcAMP刺激比として計算した。その結果を下記表5に示す。表中、++はEC50値が50nΜ未満であることを意味し、+はEC50値が50~100nΜであることを意味する。
【0227】
【0228】
2.実験例2:静脈内投与による静脈内耐糖能分析
(1)サンプル作製
静脈内耐糖能試験(ivGTT:Intravenous Glucose Tolerance Test)を実施する前に、試験に使用されるサルを16時間絶食させた。絶食後、試験当日の空腹時血糖値を測定し、血糖値の偏差を最小限に抑えるためにサルを群に分けた。各サルを矯正椅子に固定し、麻酔した。ブドウ糖投与直前に(0分)サルの伏在静脈チューブカテーテルを挿入し、試験物質(1mg/mL/kg)を静脈内投与した。薬剤投与後、静脈内に挿入されたチューブカテーテルを通してブドウ糖(0.25g/kg、50%デキストロース溶液0.5mL/kg)を静脈内に投与した。ブドウ糖投与直前(0分)と、ブドウ糖投与後15、30、40、50、60、および120分後に大腿静脈で採血し、採血後30分以内に遠心分離により血漿を分離した。単離した血漿サンプルは、インスリン分析まで冷凍保存された。
【0229】
(2)インスリン分析方法
凍結した血漿試料を氷上でゆっくり解凍した。サルインスリンELISAキット(LSBio,Cat No.LS-F10306)に提供されたプロトコルに従ってELISA試験を行った。インスリン濃度は、インスリン標準の吸光度を用いて標準曲線を、測定した各試料の吸光度を適用することによって計算した。いくつかの実施形態の化合物の分析結果を以下の表6に示す。表中、++は最大インスリン濃度が250IU/mLを超えることを意味し、+は最大インスリン濃度が200~250IU/mLであることを意味する。
【0230】
【0231】
静脈内糖度分析の結果、本開示における化合物はインスリン分泌の有効性を示した。
3.実験例3:経口投与による静脈内糖能分析
(1)実験の準備
ivGTTを実施する前に、試験に使用するサルを16時間絶食させた。絶食後、試験当日の空腹時血糖値を測定し、血糖値の偏差が最小限に抑えるためにサルを群に分けた。ブドウ糖投与の60分前(-60分)、サルを矯正椅子に固定し、経口投与用カテーテルを用いて試験物質(50mg/5mL/kg)を経口投与した。矯正椅子に固定したサルに麻酔をかけ、静脈内に挿入されたチューブカテーテルを通してブドウ糖(0.25g/kg、50%デキストロース溶液0.5mL/kg)を静脈内投与した。ブドウ糖投与直前(0分)とブドウ糖投与15、30、40、50、60、および120分後に大腿静脈で採血し、採血後30分以内に遠心分離により血漿を分離した。単離した血漿サンプルは、インスリン分析まで冷凍状態で保存した。
【0232】
(2)インスリン分析方法
凍結した血漿試料を氷上でゆっくり解凍した。サルインスリンELISAキット(LSBio、Cat No.LS-F10306)に提供されるプロトコルに従ってELISA試験を行った。インスリン濃度は、インスリン標準の吸光度を用いて標準曲線を、測定した各試料の吸光度を適用することによって計算した。一部の実施形態の化合物に関する分析結果を下記表7に示す。表中、++は最大インスリン濃度が100IU/mLを超えることを意味し、+は最大インスリン濃度が50~100IU/mLであることを意味する。
【0233】
【0234】
経口投与方式においても、本開示における化合物は優れたインスリン分泌効力を示した。
【0235】
4.実験例4:hERG分析
化合物によるhERG(ヒether-a-go-go関連遺伝子)カリウムチャネルの活性阻害を細胞からカリウムチャネルを通るイオンの流れを直接測定できる自動全細胞パッチクランプシステム(QPatch 48 HT,Sophion Bioscience)を用いて評価した。ヒトhERG cDNA(Kv11.1、KCNH2)を安定して発現するCHO-K1細胞株を使用した。分析に使用した細胞内溶液(mM)の組成は、70KF、60KCl、15NaCl、5HEPES、5EGTA、5MgATP、KOHによるpH7.3である。分析に使用した細胞外溶液(mM)の組成は、137 NaCl、4 KCl、1 MgCl2、1.8 CaCl2、10 HEPES、10グルコース、NaOHによるpH7.35である。
【0236】
hERG発現CHO-K1細胞株を5つの濃度(1、3、10、30および100μM)の各化合物で処理し、各試験濃度で2回ずつ5分間インキュベートした。全ての実験は室温で行った。hERGチャンネルを通る電流振幅の変化は8秒ごとに記録された。
【0237】
各化合物の貯蔵溶液は、DMSO中で300×最終分析濃度で調製し、分析日まで-20℃で保存した。実験当日、貯蔵液を細胞外溶液に希釈して最終処理濃度にした。試験系の適合性を確認するために、試験ごとに陽性対照物質E-4031(0.003~0.3μM)を用いた。0.33%のDMSOの最終濃度を分析化合物および対照の各濃度について維持した。
【0238】
自動全細胞パッチクランプを用いて試験物質で処理前後hERG電流の変化を記録し、対照群に基づいてhERG阻害率(%)を計算した。
【0239】
IC50(チャネル阻害50%が観察された化合物の濃度)は、各物質の濃度に基づくhERG阻害率(%)の平均値に基づいて、GraphPad Prismを用いて計算された。この計算では、4パラメータのロジスティック用量反応方程式を用いたカーブフィッティングプログラムを用いて分析した阻害剤の用量反応曲線を使用された。したがって、各物質の用量に応じたQT延長の潜在的なリスクが予測された。一部の実施形態の化合物の分析結果を以下の表8に示す。Pfizerの国際公開WO2018109607の実施形態4A-01を対照物質として使用した。
【0240】
【0241】
本開示における化合物のhERG阻害率が対照物質よりも低いという実験結果は、本開示における化合物の安全性が改善されることを示す。