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特許7387023タイヤ摩耗測定装置、空気入りタイヤおよびタイヤ摩耗測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】タイヤ摩耗測定装置、空気入りタイヤおよびタイヤ摩耗測定方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20231117BHJP
   B60C 11/24 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
B60C19/00 H
B60C11/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022557476
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2021038211
(87)【国際公開番号】W WO2022085583
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020177350
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
(72)【発明者】
【氏名】今井 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 利恵
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸川 広人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 睦樹
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0276044(US,A1)
【文献】国際公開第2020/145012(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107296(WO,A1)
【文献】特開2019-203831(JP,A)
【文献】特開2019-064433(JP,A)
【文献】特開2019-064432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B7/00
G01B7/06
G01M17/02
B60C11/24
B60C19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に埋設され前記トレッド部の摩耗に伴い摩耗する磁性体と、タイヤ内の前記磁性体に対向する位置に配置された磁気センサと、を備え、
前記磁気センサは、前記磁性体により形成される磁界の磁束密度の変化を検知するタイヤ摩耗測定装置において、
前記磁性体の底面が前記トレッド部の接地面に現われ、
前記底面の面積が前記トレッド部の摩耗に伴って小さくなり、
前記磁気センサは、第1センサと第2センサとを有し、
前記タイヤの半径方向から平面視したときに、前記磁性体を挟んで、一方側に前記第1センサが配置され、他方側に前記第2センサが配置され、
前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて前記トレッド部の摩耗を検知する
ことを特徴とするタイヤ摩耗測定装置。
【請求項2】
前記磁性体の形状が錐台である、請求項1に記載のタイヤ摩耗測定装置。
【請求項3】
前記磁性体の形状が円錐台である、請求項1に記載のタイヤ摩耗測定装置。
【請求項4】
前記タイヤの半径方向から平面視したときに、前記磁性体が、前記第1センサと前記第2センサとを結んだ直線上に位置し、
前記磁性体の中心からの前記第1センサまでの距離と、前記磁性体の中心からの前記第2センサまでの距離とが等しい、請求項1に記載のタイヤ摩耗測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ摩耗測定装置を備えており、
前記磁性体は、硬磁性材料の粉粒体が高分子材料中に分散されて形成されるとともに一方向に着磁されて成り、着磁方向とタイヤ半径方向とが一致するように前記トレッド部に埋設されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ摩耗測定装置により前記タイヤの摩耗状態を測定するタイヤ摩耗測定方法であって、
前記磁性体の摩耗により変化する磁界の磁束密度を前記磁気センサにより測定し、測定された磁束密度の変化に基づいて前記タイヤの前記トレッド部の摩耗状態を測定することを特徴とするタイヤ摩耗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに埋設された磁性体の磁界に基づいてトレッド部の摩耗を検出するタイヤ摩耗測定装置、空気入りタイヤおよびタイヤ摩耗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ(以下、適宜タイヤともいう)のトレッド部の摩耗が進行すると、路面を走行する際におけるグリップ性能や、濡れた路面を走行する際におけるタイヤと路面との間の水を排出する排水性能が低下する。そこで、運転者や車両管理者は、タイヤのトレッドの摩耗状態を目視で点検し、安全性を確保するために使用限度を超える前にタイヤを交換する。目視による点検にはタイヤの溝に設けられているスリップサインなどが用いられる。しかし、点検作業は煩雑であり、また、摩耗状態の評価を誤るおそれもある。ユーザーによっては点検を行わないことも考えられる。評価を誤った場合、性能が低下したタイヤが継続して使用されることになり、安全性の観点から好ましくない。
【0003】
そこで、目視以外の方法によってトレッド部の摩耗の程度を測定するための装置が提案されている。たとえば、特許文献1には、トレッド部のタイヤ半径方向の磁界の磁束密度を検知する磁気センサを有し、磁気センサにより検知された磁束密度によりトレッド部の摩耗を測定するように構成されたタイヤ摩耗測定システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-203831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムは、タイヤのトレッド部に埋設され、トレッド部とともに摩耗する磁性体が発する磁界の変化から、トレッド部の摩耗を検知する。トレッド部の摩耗を精度よく検知するためには、磁性体が発する磁界の磁束密度が磁性体の摩耗に伴って直線的に変化すること、すなわち磁性体の摩耗量と磁束密度の変化量との線形性が良いことが好ましい。
【0006】
本発明は、磁性体の摩耗量と磁束密度の変化量との線形性が良く、トレッド部の摩耗を精度よく検出できるタイヤ摩耗測定装置、空気入りタイヤおよびタイヤ摩耗測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部に埋設され前記トレッド部の摩耗に伴い摩耗する磁性体と、タイヤの前記磁性体に対向する位置に配置された磁気センサと、を備え、前記磁気センサは、前記磁性体により形成される磁界の磁束密度の変化を検知するタイヤ摩耗測定装置において、前記磁性体の底面が前記トレッド部の接地面に現われ、前記底面の面積が前記トレッド部の摩耗に伴って小さくなることを特徴とするタイヤ摩耗測定装置を提供する。
上記の構成により、トレッド部の接地面に現われる底面の面積が一定である従来の磁性体と比較して、磁性体の摩耗量と磁束密度の変化量との間の線形性を向上させることができる。
【0008】
前記磁性体の形状は、錐台が好ましく、円錐台がより好ましい。
磁性体を錘台とすることにより、トレッド部の接地面に現われる底面の面積がトレッド部の摩耗に伴って連続的かつ滑らかに変化する。したがって、磁性体の摩耗量と磁束密度の変化量との間の線形性が良好になる。磁性体における底面とは反対側の端が平面(上面)である錐台とすることで、トレッド部に埋設する際に磁性体の一部に破損が生じることを抑え、容易かつ安定的に磁性体を埋設できる。磁性体の形状を側面が滑らかな円錐台とすれば、タイヤ内部に配置する磁気センサとの位置ずれの影響による検出磁界のばらつきを低減できる。また、より円滑に磁性体をトレッド部に埋設することができる。
【0009】
前記磁気センサは、第1センサと第2センサとを有し、前記タイヤの半径方向から平面視したときに、前記磁性体を挟んで、一方側に前記第1センサが配置され、他方側に前記第2センサが配置され、前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とに基づいて前記トレッド部の摩耗を検知してもよい。
【0010】
タイヤの半径方向からの平面視において、磁性体の一方側と他方側とでは磁界の向きが逆向きである。このため、第1センサの出力と第2センサの出力との差を用いることにより、一つの磁気センサよりも大きな出力を得ることができる。また、外部磁界のようなノイズの影響は第1センサと第2のセンサに等しく及ぶことから、両出力の差を用いることによりノイズを抑制できる。
【0011】
前記磁気センサは、第1センサと第2センサとを有している場合、前記タイヤの半径方向から平面視したときに、前記磁性体が、前記第1センサと前記第2センサとを結んだ直線上に位置し、前記磁性体の中心からの前記第1センサまでの距離と、前記磁性体の中心からの前記第2センサまでの距離とが等しいことが好ましい。
【0012】
上記の構成により、第1センサと第2センサとが検知する反対向きの磁界の磁束密度の大きさが同程度になる。このため、いずれか一方の出力のみに基づいて磁性体の摩耗量を検知することができるから、磁気センサの冗長性が向上する。
【0013】
本発明は、本発明のタイヤ摩耗測定装置を備えており、前記磁性体は、硬磁性材料の粉粒体が高分子材料中に分散されて形成されるとともに一方向に着磁されて成り、着磁方向とタイヤ半径方向とが一致するように前記トレッド部に埋設されていることを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0014】
本発明は、本発明のタイヤ摩耗測定装置により前記タイヤの摩耗状態を測定するタイヤ摩耗測定方法であって、前記磁性体の摩耗により変化する磁界の磁束密度を前記磁気センサにより測定し、測定された磁束密度の変化に基づいて前記タイヤの前記トレッド部の摩耗状態を測定することを特徴とするタイヤ摩耗測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、トレッド部の接地面に現われる底面の面積がトレッド部の摩耗に伴って小さくなる磁性体をトレッド部に埋設することによって、トレッド部の摩耗に伴い摩耗する磁性体の摩耗量と磁束密度の変化量との間の線形性が向上する。すなわち、トレッド部の摩耗量と磁束密度の変化量との間の線形性が向上すると言える。したがって、検知精度が良好なタイヤ摩耗測定装置、空気入りタイヤおよびタイヤ摩耗測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)本発明の実施形態に係るタイヤ摩耗測定装置を模式的に示す断面図、(b)タイヤ摩耗測定装置における磁性体の形状を模式的に示す断面図
図2図1(a)のタイヤ摩耗測定装置の要部を模式的に示す断面図
図3】(a)本発明のタイヤ摩耗測定装置における磁性体の摩耗に伴う形状、磁界および反磁界の変化を模式的に示す斜視図、(b)従来のタイヤ摩耗測定装置における磁性体の摩耗に伴う形状、磁界および反磁界の変化を模式的に示す斜視図
図4図1(a)のタイヤ摩耗測定装置における、磁性体と磁気センサとの位置関係を模式的に示す説明図
図5】形状の異なる実施例の磁性体について、(a)磁性体の高さと磁界の磁束密度との関係を示すグラフ、(b)磁性体の底面の直径B/磁性体の上面の直径A(B/A比)と直線性(線形性)とを示すグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について、以下、図を参照しつつ説明する。各図において、同一の部材には同じ番号を付して、適宜、説明を省略する。
【0018】
図1(a)は本実施形態に係るタイヤ摩耗測定装置10を模式的に示す断面図であり、図1(b)はタイヤ摩耗測定装置10における磁性体13の形状を模式的に示す断面図である。
図2図1(a)のタイヤ摩耗測定装置10の要部を模式的に示す断面図である。
図1(a)および図2はタイヤ(空気入りタイヤ)20の要部を示す断面図でもある。
これらの図に示すように、タイヤ摩耗測定装置10は、トレッド部23に埋設された磁性体13と、タイヤ20内における磁性体13に対向する位置に配置された磁気センサ12と、を備えている。すなわち、タイヤ20の内側面21に配置された磁気センサ12と、外側面22のトレッド部23に埋設された磁性体13とが、タイヤ20の半径方向(Y軸方向)から平面視したときに重なるように配置されている。
【0019】
磁性体13は、路面とタイヤ20との接地面となる外側面22のトレッド部23に埋設されており、タイヤ20が使用されトレッド部23とともに磁性体13が摩耗することに伴って、図中に一点鎖線で示す磁性体13から生じる磁界Mが変化する。タイヤ20の内側面21に設けられた磁気センサ12は、磁性体13により形成される磁界Mの磁束密度を検知する。以下では、磁界Mの磁束密度を検知することを、適宜、磁界Mを検知するとも記す。タイヤ摩耗測定装置10は、磁気センサ12で磁界Mを検知することにより、トレッド部23の摩耗状態を測定できる。例えば、磁性体13の摩耗に伴う磁界Mの変化をあらかじめ記憶したテーブルと磁界Mの測定値とに基づいて、タイヤ20におけるトレッド部23の摩耗状態を測定することができる。本実施形態において、トレッド部23とは、タイヤ20の地面に接するタイヤ20表面の凸出した部分をいう。
【0020】
磁性体13は、トレッド部23が摩耗するのに伴って摩耗する。また、磁性体13は、摩耗が進むにつれてタイヤ20のトレッド部23の接地面に現われる底面13Bの面積が小さくなる形状に形成されている。磁性体13の底面13Bの面積が摩耗に伴って小さくなる形状とすることで、磁性体13の摩耗に伴って反磁界MRが大きくなることを抑えることができる。
【0021】
磁気センサ12は、反磁界MRの影響を受けた磁界Mを検知する。このため、摩耗の進行に伴って反磁界MRの影響が大きくなることを抑えることにより、磁性体13の摩耗量と磁界Mの磁束密度の変化量との間の線形性が向上する。本発明において線形性が良いとは、グラフ化した場合にグラフが直線に近くなる関係をいう。磁性体13の形状と、反磁界MRと、線形性との関係について、図3(a)および図3(b)を参照して以下に説明する。
【0022】
図3(a)は本実施形態のタイヤ摩耗測定装置10における磁性体13を底面13B側から見た斜視図であり、磁性体13の摩耗に伴う形状、磁界Mおよび反磁界MRの変化を模式的に示している。同図では摩耗前における初期状態の磁性体13を向かって左側に示し、摩耗が進行した時点における摩耗状態の磁性体13を向かって右側に示している。
【0023】
図3(b)は従来のタイヤ摩耗測定装置における磁性体53の摩耗に伴う形状、磁界Mおよび反磁界MRの変化を模式的に示す斜視図である。同図では摩耗前の時点における初期状態の磁性体53を向かって左側に示し、摩耗が進行した時点における摩耗状態の磁性体53を向かって右側に示している。
【0024】
図3(b)に示すように、従来のタイヤ摩耗測定装置の磁性体53の形状は、伸長方向に切断した断面形状が等しい円柱形である。このため、タイヤ20の外側面22におけるトレッド部23の接地面に現われる底面53Bの直径LBnは、磁性体53の摩耗によって変化しない。このように、底面53Bの直径LBnおよび面積は、摩耗が進行しても変化せず、初期状態と摩耗状態とで同じである。また、上面53Aの直径LAnおよび面積も摩耗の進行に伴って変化しない。
【0025】
円柱状の磁性体53の場合、高さ/断面積の比が小さいほど反磁界MRが大きくなる。断面積は摩耗の進行に伴って変わらないため、摩耗状態では、高さHnが初期状態の高さHsよりも小さくなった分だけ、高さ/断面積の比が小さくなる。したがって、摩耗状態における反磁界MRnは、初期状態における反磁界MRsよりも大きくなる(MRs<MRn)。対して、摩耗状態における磁性体53の外側の磁界Mnは、磁性体53の摩耗に伴ってその高さが初期状態のHsよりも小さい摩耗状態のHnになることで(Hs>Hn)、初期状態における磁界Msよりも小さくなる(Ms>Mn)。このため、磁性体53の場合、その内部に生じる反磁界MRが磁界Mへ及ぼす影響は、摩耗に伴って大きくなる(MRs/Ms<MRn/Mn)。磁気センサは、反磁界MRnの影響を受けた磁界Mnを検知する。このため、磁気センサにより検知される磁界Mの変化量は、磁性体53の摩耗量よりも大きくなる。
【0026】
反磁界とは、N極からS極への磁界(磁束)の流れのうち、磁性体の外部に出る磁界とは別の磁性体の内部における磁界をいう。この反磁界は、磁性体の一端において外部から戻ってくる磁界の向きとは逆向きとなるから、磁性体の磁界の磁束密度を弱める減磁力として作用する。棒状の磁性体(磁石)の場合、寸法比(高さ/断面積)が小さいほど、反磁界が磁性体の磁界を弱める影響が大きくなる。
【0027】
上述のとおり、磁性体53の内部の反磁界MRは外側の磁界Mを弱める。従来の磁性体53は、摩耗の進行に伴って、磁性体53外部の磁界Mが小さくなるのに対し、反磁界MRが大きくなる。このため、摩耗状態では、初期状態よりも、外部の磁界Mに対する反磁界MRの相対的な大きさ(割合)が大きくなる。したがって、磁性体53の磁界Mは、摩耗の進行に伴って、反磁界MRの影響を強く受けることとなる。このことが、磁性体53の摩耗量と磁界Mの磁束密度との線形性を低下させる一因であることを見出した。
【0028】
すなわち、従来のタイヤ摩耗測定装置の磁性体53は、摩耗が進むにつれて、上面53Aおよび底面53Bの断面形状が一定であるのに対して、高さHが変化する。このため、磁性体53の摩耗の進行に伴って、寸法比(高さHn/直径LBn)の変化が大きくなり、磁性体53外部の磁界Mnに対する内部の反磁界MRnの影響が強くなる。したがって、磁界Mnの磁束密度の変化量が磁性体53の摩耗に伴う高さHnの変化量よりも小さくなり、両者の線形性が低下する。
【0029】
以上のように、摩耗量と磁束密度の変化量との線形性が良くないという従来のタイヤ摩耗測定装置の問題の一因は、トレッド部に埋設された磁性体53の形状にある。
そこで、本発明のタイヤ摩耗測定装置10では、磁性体13の形状を円錐台としている。これにより、トレッド部23の表面に現われる磁性体13の底面13Bの面積がトレッド部23の摩耗に伴い摩耗する磁性体13の摩耗に伴って小さくなるため、寸法比(高さH/断面積)が磁性体13の摩耗に伴って小さくなることを抑えられる。したがって、磁界Mnに対する反磁界MRnの影響が摩耗の進行とともに大きくなることを抑えて、磁性体13の摩耗量と磁界Mnの磁束密度の変化量との間の線形性を向上させることができる。なお、磁性体13の断面積とは、磁性体13の上面13Aと底面13Bとの面積の平均をいう。
【0030】
線形性を良好にする観点から、磁性体13の形状を円錐とすることが好ましい。しかし、磁性体13を円錐とすると、トレッド部23に磁性体13を埋設する際に頂部に破損が生じるおそれがある。そこで、タイヤ摩耗測定装置10は、破損を防止しながら線形性を良好にするために、磁性体13の形状を上面13Aのある円錐台としている。
【0031】
トレッド部23への安定な埋設と線形性とを両立させる観点から、タイヤ20を使用する前の時点(初期状態、新品の状態)における、磁性体13の底面13Bの直径LBsと上面13Aの直径LAsとの比(LBs/LAs)は、1.0以上2.5以下が好ましく、1.2以上2.3以下がより好ましく、1.5以上2.0以下がさらに好ましい。磁性体13の底面13Bと上面13Aとの面積比(底面13B/上面13A)は、1.0以上6.3以下が好ましく、1.4以上5.3以下がより好ましく、2.3以上4以下がさらに好ましい。なお、タイヤ20を使用する前の時点における磁性体13の高さHsは、トレッド部23の形状によるが、例えば15mm~20mm程度である。
【0032】
タイヤ20内部に配置する磁気センサ12との位置ずれの影響による検出磁界のばらつきを低減でき、トレッド部23への埋設が容易であるから、磁性体13の形状は円錐台が好ましい。ただし、磁性体13の形状は円錐台に限られず、摩耗に伴ってトレッド部23の接地面に現れる面積が小さくなる形状であれば良い。このような形状として、三角錐台、四角錐台などの錐台等が挙げられる。
【0033】
磁性体13は、図1(a)および図2に示すように、タイヤ20の半径方向(Y軸方向)の一端である底面13Bがトレッド部23の接地面に露出し、他端である上面13Aが安全上の摩耗限度(例えば、乗用車タイヤでは、溝の深さ1.6mmとなる位置)よりも内側面21側に位置するようにトレッド部23に埋設される。
【0034】
図1(a)および図2は、初期状態の一例であり、磁性体13はこれ以外の状態で埋設されてもよい。例えば、初期状態では、底面13Bがトレッド部23の接地面に露出せず、トレッド部23の内部に位置してもよい。この場合、トレッド部23の接地面が底面13Bの位置まで摩耗することによって、底面13Bがタイヤ20の外側面22におけるトレッド部23の接地面に露出し、それ以降、トレッド部23ともに磁性体13が摩耗し、磁界Mが変化する。また、上面13Aは、安全上の摩耗限度の位置と略一致、または摩耗限度の位置よりも外側面22側に位置するように埋設されてもよい。この場合、トレッド部23が安全上の摩耗限度に達したとき、または、それよりも前に磁性体13の磁界Mが0になる。
【0035】
トレッド部23に磁性体13を埋設する方法は特に限定されないが、例えば、タイヤ20の製造後において、磁性体13をトレッド部23に打ち込むことにより埋設することができる。タイヤ20の成形時に磁性体13をトレッド部23に埋設する場合に比べて、成形金型内で磁性体13を保持する必要がなくなるため、タイヤ20を従来の実績ある製造方法とほぼ同一の方法で製造することができるなどのメリットがある。なお、磁性体13の打ち込みは、スパイクタイヤ(studded tire)の滑り止めの鋲を打ち込むのと同様の技術を用いて行うことができる。トレッド部23に磁性体13を埋設する際、磁性体13は、その着磁方向とタイヤ20の半径方向とが一致するように、タイヤ20に埋設する。
【0036】
磁気センサ12は、タイヤ20に埋設された磁性体13の磁界を検知してタイヤ20の摩耗を測定する。磁気センサ12は、磁気センサ(第1センサ)12Aと磁気センサ(第2センサ)12Bとを有している。
【0037】
磁気センサ12A・12Bは、磁性体13からの放出された磁界Mを測定するものであり、磁界Mの方向、強さによって抵抗が変化する磁気抵抗効果素子が用いられる。磁気抵抗効果素子としては、GMR素子、TMR素子等が挙げられる。磁気センサ12A・12Bによる測定は、リアルタイムで連続的に行われる必要はなく、一定の時間毎に断続的に行われてもよい。あるいは、図示しない無線通信手段を介して受信した外部からの指示に応じて測定してもよい。一定の時間毎、あるいは指示に応じて測定を行うことにより、連続的に測定するよりも電力消費を抑制できる。磁気センサ12A・12Bである磁気抵抗効果素子の代わりにホール素子を使用し、磁束の強さの変化を計測してもよい。また磁気インピーダンス効果素子を磁気センサ12A・12Bとして用いて、磁界の変化によるインピーダンスの変化を計測してもよい。
【0038】
本実施形態の磁気センサ12A・12Bは、例えば、X軸方向の磁束密度を検知可能に構成されている。ただし、X軸方向のみでなく、それぞれ、互いに直交する3軸方向(X軸、Y軸およびZ軸)の磁界を検知可能に構成されていてもよい、この場合、磁気センサ12A・12Bは、1軸検出のセンサ3つを用いて構成されてもよい。なお、本実施形態においては、磁気センサ12A・12BはモールドパッケージにGMR素子が内蔵されたGMRセンサを用いている。
【0039】
タイヤ摩耗測定装置10は、磁気センサ12A・12Bによる磁界の測定に基づいたタイヤ20の摩耗に関する情報を、無線通信手段などを介して車両側装置、携帯端末装置、外部サーバなどに出力してもよい。無線通信手段を介して、車両側装置に磁気センサ12A・12Bによる測定結果の情報を送信したり、外部の車両側装置等からの情報を受信したりすることができる。タイヤ摩耗測定装置10と外部の装置との通信による情報の送受は図示しない演算装置(CPU)によって制御される。
【0040】
図4は、図1のタイヤ摩耗測定装置10における、磁性体13と、磁気センサ12Aおよび磁気センサ12Bとの位置関係を模式的に示す説明図である。同図はタイヤ20の半径方向(Y軸方向)から平面視した場合における位置関係を模式的に示している。すなわち同図では、図面奥側が底面13B側であり、図面手前側が上面13A側である。タイヤ摩耗測定装置10の磁気センサ12は、磁気センサ12Aと磁気センサ12Bとを有し、タイヤ20の半径方向から平面視したときに、磁性体13を挟んで、一方側に磁気センサ12Aが配置され、他方側に磁気センサ12Bが配置されている。そして、磁気センサ12は、磁気センサ12Aの出力と磁気センサ12Bの出力とに基づいてトレッド部23の摩耗を検知する。
【0041】
図4に示すように、タイヤ20の半径方向から平面視したときに、磁性体13が、磁気センサ12Aと磁気センサ12Bとを結んだ直線L上に位置し、磁性体13の中心Oからの磁気センサ12Aのまでの距離DAと、磁性体13の中心Oからの磁気センサ12Bまでの距離DBとが等しい。このように、磁気センサ12Aと磁気センサ12Bとは、磁性体13の中心Oに対して対称に配置されている。磁性体13の中心Oとは、円錐台の中心軸の位置をいう。
【0042】
図4に示す構成により、磁気センサ12Aにより検知される磁界Maと、磁気センサ12Bにより検知される磁界Mbとは、磁束密度が同じで磁界の向きが逆になる。このため、タイヤ摩耗測定装置10は、磁気センサ12Aまたは磁気センサ12Bの一方に問題が生じた場合でも他方の出力に基づいて、タイヤ20の摩耗量を検知することが可能である。したがって、タイヤ摩耗測定装置10の冗長性が向上する。
【0043】
そして、磁性体13の磁界Mを測定する際にノイズとなる外部磁界は、磁気センサ12Aと磁気センサ12Bとに同様に影響を及ぼす。このため、これらの二つのセンサからの出力の差を用いて、外部磁界の影響を取り除くことまたは抑制することができる。また、二つのセンサからの出力は磁界の向きが逆であるため、両出力の差を用いることによりノイズの影響を取り除きながら、一つのセンサからの出力の二倍の大きさの出力が得られる。したがって、外部磁界のようなノイズの影響を取り除くとともに出力を大きくして、タイヤ20の摩耗を精度よく測定することが可能になる。
【0044】
図4に示す態様では、タイヤ摩耗測定装置10における磁気センサ12Aおよび磁気センサ12Bがそれぞれ、磁性体13と重ならない位置に配置されている。しかし、これは一例であり、Y軸方向から平面視した場合に、磁気センサ12Aおよび磁気センサ12Bの一部または全部が、磁性体13と重なるように配置されてもよい。また、磁気センサ12が備えるセンサは二つに限らず、一つまたは三つ以上でもよい。
【0045】
タイヤ20の磁性体13に対向する位置に磁気センサ12を取り付ける態様としては、例えば、内側面21に設けられたソケットへの装着、内側面21への直接接着、タイヤ20の内側面21への埋め込み等が挙げられる。取り付け、交換が容易であることから、ソケットへの装着が好ましい。なお、ソケットとは、交換可能な状態で磁気センサ12を保持するものであり、タイヤ20の内側面21に接着などにより固定され、磁気センサ12を保持可能な保持部を備えている。ソケットは、ゴム材などの収縮性のある材質からなり、走行時のタイヤの変形に追従できるとともに、保持部はその収縮性を利用して磁気センサ12を保持する。
【0046】
なお、タイヤ20の摩耗を精度よく測定するためには、トレッド部23に埋設された磁性体13に対して、磁気センサ12をタイヤ20内の所定の位置(例えば、センサを二つ有する場合、図4に示すような位置関係となる位置)に取り付ける必要がある。しかしながら、磁性体13はタイヤ20の外側面22に配置されているのに対して、磁気センサ12はタイヤ20の内側面21に配置されるため、磁気センサ12を所定の位置に配置することは困難である。そこで、タイヤ20内の所定の位置に磁気センサ12を取り付ける方法としては、例えば、磁界分布を観測可能な磁界分布観測装置(マグネットビューア)を用いて、磁気センサ12をタイヤ20の内側面21に取り付ける方法が挙げられる。
【0047】
磁界分布観測装置を用いることで、タイヤ20の外側面22に配置されている磁性体13が発生する磁界分布を内側面21側から観測することができる。よって、タイヤ20の内側から磁性体13が埋設されている場所を特定し、磁気センサ12をタイヤ20の内面に取り付けることができる。磁界分布観測装置を用いることにより、Y軸方向から平面視した場合に、磁性体13との相対的な位置が所定の関係となるように磁気センサ12を取り付けることが容易になる。また、磁性体13の配置位置に対して、適切な位置に磁気センサ12を配置できるから、測定精度の良好なタイヤ摩耗測定装置10となる。なお、上述の方法で前述したソケットを所定の位置に配置し、そのソケットに磁気センサ12を取り付けても同様の効果が得られる。
【0048】
磁性体13は、硬磁性材料の粉粒体(磁性粉)が、高分子材料中に分散されて形成され、一方向に着磁されて構成され、その着磁方向がタイヤ半径方向と一致するような姿勢でトレッド部に埋設される。磁性体13は着磁によって、永久磁石となるため、その周囲に所定の磁束密度の磁界を形成し、着磁後は容易に消磁することがない。
【0049】
着磁後の保磁力が大きく容易に減磁しないという観点から、好ましい粉粒体として、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄を主成分とするアルニコ系磁石、酸化鉄を主成分とするフェライト系磁石、サマリウム、鉄を主成分とするサマリウム系磁石、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とするネオジム系磁石作製用の磁性粉などが挙げられる。また、高分子材料としては、トレッド部23に用いられるトレッドゴム組成物と同じ配合のゴム材料などが好ましい。
【0050】
磁性体13は、磁性体表面において1mT以上の磁束密度を有するように構成されていることが好ましい。また、地磁気に影響されず確実に磁性体13の磁束密度の測定ができるという観点から磁気センサ12A・12Bが配置されている測定位置において、0.05mT以上の磁束密度を有するように構成されていることが好ましく、0.5mT以上の磁束密度を有するように構成されていることがより好ましい。
【0051】
磁性体13は、トレッド部23が摩耗する前の新品状態(初期状態、未摩耗状態)で、磁気センサ12によって検知される磁界M(磁束密度)と、トレッド部23が摩耗限度まで摩耗したときの状態で、磁気センサ12A・12Bによって検知される磁界Mとの差が1mT以上となるようにトレッド部23内に埋設されていることが好ましい。
【0052】
磁性体13は、一つのトレッド部23にのみ設けられてもよく、複数のトレッド部23に設けられてもよい。さらに、磁性体13は、トレッド部23における、タイヤ20の周方向に1つのみ設けられてもよく、例えば等間隔に、複数設けられてもよい。
【0053】
磁性体13への着磁は、公知の着磁装置、例えば、コンデンサー式着磁電源装置、着磁コイル、着磁ヨークなどを用いて行うことができる。なお、着磁を行うタイミングとしては、トレッド部23に埋設される前に実施してもよく、トレッド部23に埋設した後に実施してもよい。
【0054】
一方、磁性体13の磁力によって、他の車載される電子機器などに悪影響を与えないようにするという観点から、磁性体13の表面磁束密度は600mT以下であることが好ましい。道路走行時に路面に落ちている釘などの金属片を吸着しないようにするという観点から、磁性体13の表面磁束密度は60mT以下であるとより好ましい。なお、磁性体の表面磁束密度は、着磁された磁性体13の表面にテスラメーターを直接接触させることにより測定される値である。
【0055】
次に、本実施形態に係るタイヤ摩耗測定方法について説明する。
本実施形態のタイヤ摩耗測定装置10は、本発明のタイヤ摩耗測定装置10を備えたタイヤ20に対して、以下の手順にしたがってその摩耗状態を測定する。
1.事前のデータ取得
測定に先立って、予め、測定対象と同じ種類のタイヤについて、磁性体の摩耗により変化する磁場の磁束密度を内腔部表面に設けられている磁気センサにより測定し、データを取得する。
【0056】
具体的には、まず、製造直後の新品タイヤ(測定対象と同じ種類のタイヤ)における磁束密度を測定し、その後、このタイヤに対して、タイヤ摩耗ドラム試験機を用いて、摩耗限度を超えるまで、タイヤを摩耗させていく。そして、途中、所定時間毎に装置を停止させて、その時点での摩耗量と磁束密度とを測定する。もしくは、いくつかの摩耗量を設定し、設定した摩耗量に達する毎に装置を停止させて、設定した摩耗量の時の磁束密度を測定してもよい。
【0057】
その後、測定された各時点での摩耗量と磁束密度とに基づいて摩耗量と磁束密度との関係を示す照合用のデータを作成し、作成されたデータを車両本体に設けられた摩耗状態の判定に用いる装置に記憶させる。
【0058】
2.測定対象タイヤの実車への装着と走行
次に、測定対象のタイヤを実車に装着して走行する。走行することにより、トレッド部とともに磁性体が摩耗していくため、磁気センサにより検知される磁束密度が変化する。
そして、磁気センサにより測定されたこの磁束密度の変化を、磁気センサから受信した摩耗状態の判定に用いる装置において、予め記憶されている照合用のデータと照合することにより、測定対象のタイヤにおいて、どの程度まで摩耗が進行しているかを判定することができる。なお、タイヤ摩耗測定装置が摩耗状態を判定する機能を備えていてもよい。この場合、タイヤ摩耗測定装置の有する記憶手段が照合用のデータを記憶し、摩耗が進行に関する判定結果を車両本体に設けられた装置などに出力する。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0060】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
1.シミュレーションの構成
トラックバス用タイヤ(重荷重空気入りタイヤ)のトレッド標準配合ゴム材料に、平均粒径約175μmのネオジム粉末を混練した後、加硫成形することにより得られる、異なる形状を備えた磁性体について、摩耗の進行に伴う磁束密度の変化をシミュレーションにより評価した。
磁性体中に占めるネオジム粉末の配合量は、65重量%とした。なお、着磁は、加硫成形後のタイミングで、高さ方向に2.5Tの磁場を掛けて飽和磁化させることにより行う設定とした。シミュレーションによる評価の対象とした磁性体の形状を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
2.摩耗状態における直線性(線形性)の検証
4種類の磁性体について、摩耗に伴って高さHが段階的(18mm→15mm→12mm→9mm→6mm→3mm)に変化した各状態における磁束密度のシミュレーションを実施した。
初期状態からの変化をみるため、磁性体の高さ毎の磁束密度のシミュレーション結果としての磁気センサの出力値を表2および図5(a)に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
図5(a)は、形状の異なる実施例の磁性体について、トレッド部の摩耗と磁束密度との直線性(線形性)を示すグラフであり、図5(b)は、底面の直径/上面の直径(B/A比)と直線性(線形性)とを示すグラフである。図5(b)における直線性誤差(%)は、図5(a)の各実施例の測定結果について、最小二乗法を用いて求めた近似直線と実測値との誤差(近似直線の計算値に対する誤差の絶対値の割合(%))のうち、最も大きかった値である。
【0065】
図5(a)および図5(b)に示すように、磁性体の形状を円錐台とした実施例はいずれも、磁性体の形状を円柱した比較例よりもトレッド部の摩耗量に対応する磁性体の高さと、磁性体の磁界Mの磁束密度に対応するセンサ出力とのグラフの直線性(線形性)が向上した。グラフの直線性は、円錐台の磁性体の上面の直径に対する底面の直径の比(B/A比)を大きくすることにより向上した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、タイヤの摩耗状態を目視によらず測定可能なタイヤ摩耗測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 :タイヤ摩耗測定装置
12 :磁気センサ
12A :磁気センサ(第1センサ)
12B :磁気センサ(第2センサ)
13 :磁性体
13A :上面
13B :底面
20 :タイヤ
21 :内側面
22 :外側面(接地面)
23 :トレッド部
53 :磁性体
53A :上面
53B :底面
DA、DB:距離
H :高さ
Hs :高さ(初期状態)
Hn :高さ(摩耗状態)
LAs、LBs:直径(初期状態)
LAn、LBn:直径(摩耗状態)
M、Ma、Mb:磁界
Ms :磁界(初期状態)
Mn :磁界(摩耗状態)
MR :反磁界
MRs :反磁界(初期状態)
MRn :反磁界(摩耗状態)
O :中心
L :直線
図1
図2
図3
図4
図5