(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】害獣生体捕獲狭域収容システム
(51)【国際特許分類】
A01M 23/08 20060101AFI20231117BHJP
【FI】
A01M23/08
(21)【出願番号】P 2023133507
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-08-24
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502036996
【氏名又は名称】佐藤 隆生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆生
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-024423(JP,A)
【文献】登録実用新案第3232233(JP,U)
【文献】特開2012-249566(JP,A)
【文献】特開2016-187333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0064572(US,A1)
【文献】エゾシカ生体捕獲で都市型「囲いわな」試行,北海道建設新聞社,[online],2020年02月25日,[2023年09月27日検索],<URL:https://e-kensin.net/news/125804.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エゾ鹿(以下、害獣ES)を餌で誘引し確保するための囲い領域(A)と、囲い領域(A)から脱出して逃げ込む生態捕獲狭域通路帯(B)と、生態捕獲狭域通路帯(B)から出た害獣(ES)をコンテナ内で一方向に誘導しオスとメスに仕分けする仕分け領域(C)から構成される、害獣(ES)が逃走出来ると錯覚させて捕獲する害獣生体捕獲狭域収容システムであって、
囲い領域(A)は、害獣(ES)が越えられない高さの柵(A1)と、害獣(ES)が自由に出入りできる複数の害獣出入口(A3)と、害獣出入口(A3)を開閉するための内壁面に
細鋼芯(A21)を設けた電磁開閉扉(A2)と、生態捕獲狭域通路帯(B)との境界に設けた害獣脱出口(A4)から構成され、
囲い領域(A)の外周囲に、囲い領域内の様子を監視して電磁開閉扉(A2)の開閉操作を行うためのモニター(M)を設置したことを特徴とする害獣生体捕獲狭域収容システム。
【請求項2】
生態捕獲狭域通路帯(B)は、害獣(ES)一固体が通過できる程度の幅の狭小通路ブロック体(B1)が複数個連結して成り、
害獣脱出口(A4)との境界の生態捕獲狭域通路帯(B)入口、及び仕分け領域(C)との境界の生態捕獲狭域通路帯(B)出口に、害獣(ES)が脱出方向に身体を押し付けて広がる透明性の不可逆的一方向扉(Ba)を配置するとともに、該一方向扉(Ba)の上部に害獣(ES)の頭部及びツノが脱出の障害とならない程度の隙間空間(Bb)を設け、狭小通路ブロック体(B1)の側面及び天井を半透明緩衝材(D)で被覆して成ることを特徴とする請求項1に記載の害獣生体捕獲狭域収容システム。
【請求項3】
仕分け領域(C)は、害獣(ES)を搭載する害獣運搬コンテナ車輛(G)であって、仕分け領域(C)の入口は、害獣(ES)が脱出方向に身体を押し付けて広がる不可逆的一方向扉(Ba)を有する生態捕獲狭域通路帯(B)出口に接続され、
害獣運搬コンテナ車輛(G)のコンテナ内部は、害獣(ES)のオス、メスを仕分けするためのコンテナ入口雌雄振り分け扉(C1)と、害獣(ES)を一方向に列し、かつ、移動時に害獣(ES)の身体を保護するための半透明緩衝材(D)からなる連結仕切壁(D4)と、で構成されることを特徴とする請求項2に記載の害獣生体捕獲狭域収容システム。
【請求項4】
モニター(M)で害獣(ES)の採餌状況を確認しながら害獣出入口(A3)を閉鎖し、その閉鎖音と電磁開閉扉(A2)の錐状細鋼芯(A21)により害獣(ES)をパニック化させることで、害獣脱出口(A4)から狭小通路ブロック体(B1)へと害獣(ES)を自ら侵入させ、
生態捕獲狭域通路帯(B)入口の不可逆的一方向扉(Ba)と半透明緩衝材(D)で覆われた狭小通路ブロック体(B1)にて、逆戻り出来ずに列をなして次の不可逆的一方向扉(Ba)を介して害獣運搬コンテナ車輛(G)へと誘導・捕獲し、そのコンテナ内でオス、メスに振り分け、そのまま目的地に輸送することを特徴とする請求項3に記載の害獣(ES)の害獣生体捕獲狭域収容システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害獣を自ら狭域檻に侵入させて拘束する捕獲設備とその捕獲方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ある動物の生きるべき基本的本能は食べることに尽きる。このため、鹿等の害獣(ES)は、餌を求め、人間が幾度追い払っても人の気配が無くなる夕方から夜半にかけて危険を承知で警戒しながら行動が活発化する。その証拠に、鹿と交通機関との衝突事故が頻繁になる時間帯であるとの注意喚起がされている。
【0003】
憂慮すべきは、銃による痛ましい誤射事故が毎年必ず発生しており、こうした悲惨な事故を少しでも無くす環境作りに、寄与したいとする思いも本発明の目的の一つでもある。また、銃にて獲ったエゾ鹿の不必要な部位を山間部等に放置する実態があり、行政はこれを入れる容器を設置しているが、運搬にそもそも難があるため使用される事は少ない。その為、春先の雪解け時にクマや肉食系動物に発見され、食べられてしまうため、生態系に変化がおきている。その根拠の一例として、冬眠すべきクマがスキー場に現れ、スキー場が閉鎖されるというニュースが報道されたり、又、道東の鹿の多い地域において、クマの冬眠開けが早くなり、巨大なクマが目撃され、射殺されている現実がある。こうしたクマの増加傾向により、縄張りを持てない若いクマが東京以北、最大の都市の札幌市住宅街に現れ、人が襲われる映像においては札幌在住の考案者だけでなく、一般市民にとっても驚愕し恐怖さえ感じる事態となっている。又、肉食より草食に特化していたクマが、鹿の拡大生息で肉の味を覚え、春クマの駆除も無くなり食物連鎖が瓦解している現状を戻す意味において餌となる鹿の生息数を減らす必要があり、本発明の主目的と言える。
【0004】
また、道東のエゾ鹿牧場では、牧場内で飼われている鹿より、餌を求めて牧場周りに群れる野生エゾ鹿の方が多い事や牧場内の鹿の数が翌朝になると増えていたという事が事実として報告がされている、これらはエゾ鹿の樹皮食いも含め、いかに冬期間になると採餌できず飢えていることを示すものである。
【0005】
一方、エゾ鹿を資源ととらえ、エゾ鹿の肉の流通拡大やブランド化の取組み、具体的には、野生のエゾ鹿を生きたまま捕らえ、専用の牧場で一時的に飼育し、併設された施設で食肉処理することがすでに実施されており、養鹿する前提として野生のエゾ鹿を生きたまま捕獲(生体捕獲)するための囲い罠が提案されている(非特許文献1、2参照)。
【0006】
非特許文献1に記載の前田一歩園財団による囲い罠は、近隣の山に柵(網)等からなる囲いを設け、この囲いの中に牧草等の餌を点在配置して害獣(ES)を誘引し、主に害獣(ES)の樹皮食い防止を目的とした捕獲システムがある。該捕獲システムでは、柵内に嗜好餌(干草・ビートの搾り滓ブロック・えん麦・家畜の飼料等)を配置して、採餌状況を日々確認しながら、入口の柵を人的に落下させて鹿を柵内に押し止め、5~6人の勢子によりブルーシートや幕や網等を用い、逃走を阻止しながら、最奥の狭い檻に追込んで生体捕獲している。しかしながら、こうした捕獲方法は餌付けから捕獲までに多くの人員を要し、勢子による檻追込み作業に至るまでの待ち時間などを考えると、これらに掛かるトータル人件費は膨大であり、更に、雄鹿が興奮し、反撃されるなど非常に危険を伴うことから、広大な北海道では現実的に実行し難い捕獲方法である。
【0007】
また、非特許文献3の「囲い罠によるエゾシカ捕獲の手引」においては、囲い罠の推奨すべき捕獲構造として、開放式と湾曲式を上げており、開放式の具体例として、進行方向に明かり(外が見える)透過性を有する構成であること、また、湾曲式の具体例として、その先に行くと逃げられると思い、追い込みしやすい構造である事、などが実証データーに基づき記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】新井田利光ら:囲いワナを用いたエゾシカの捕獲、「北方林業」Vol59 No.5(2007)
【文献】安井雄祐:エゾシカ囲いワナの開発、「コンサルタンツ北海道」No.136(2015.5)
【文献】地方独立行政法人北海道立総合研究機構ら:「囲い罠によるエゾシカ捕獲の手引」令和3年2月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記非特許文献1、2の課題に鑑みなされたもので、非特許文献3に記載の推奨すべき囲いワナの構造を参考に、さらに、下記に示すエゾ鹿の習性、いわゆる「生きる為に食べ、生きる為に逃げる。」と言った二つの本能、を利用してエゾ鹿(害獣)との共存と適正数のコントロールを第一に考えた、人里近辺に出没する害獣(ES)のみを人件費を極力掛けずに無傷にて大量に捕獲しようとする捕獲設備とその捕獲方法を提供することにある。
【0010】
エゾ鹿(ES)はオスを中心に通常五~八頭前後のグループを構成しており、繁殖期以外他のオス鹿と争うことも無く、食べ終わると元の安全を担保される害獣生活圏に戻り、反芻するのが常である。エゾ鹿(ES)の居なくなった採場餌には、別のグループが採餌のために現れて採餌する。この事は北海道の池田町で山二つを、木柱の電信柱にて囲って、エゾ鹿牧場を作った佐藤健二氏(故人)にその実態を見学させて頂き、争うこと無く準じて採餌する実態を考案者は確認している。この他、柵を乗り越えられないメス鹿が、行く手を遮るフェンスに頭を入れ、後ろの股間の足が抜けずにいる映像があり、頭が入れば出られると錯覚する習性。また、くくり罠にかかった周りの木々や地面が掘られたり、草木が倒されたりして、何とか逃げたいとする鹿の行動。さらに、出口を閉鎖して強制的に追い込もうとすると、オス鹿は恐怖から人間への敵対心をむき出しにして、逃げる事より攻撃行動をとる事等も報告されている。
【0011】
かかる害獣(ES)の習性から、拘束に至るまで人はなるべく介在しない方がよく、むしろ、威嚇するような行動は控えるべきであり、以下の3つのポイントを本発明の解決すべき課題とした。
第一のポイントとして、食べて生きるという基本的本能を満たした上で安心・安全を学習させる事であり、大量に生体捕獲する基本的解決要素でもある。
第二のポイントとして、自分たちの生活圏にいつでも自由に往来出来る安全を学習させる事である。
第三のポイントとして、害獣(ES)の生存本能を利用し、瞬時のパニック化と逃走出来ると錯覚させる事である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の害獣(ES)が逃走出来ると錯覚させて捕獲する害獣生体捕獲狭域収容システムは、エゾ鹿(以下、害獣ES)を餌で誘引し確保するための囲い領域(A)と、囲い領域(A)から脱出して逃げ込む生態捕獲狭域通路帯(B)と、生態捕獲狭域通路帯(B)から脱出した害獣(ES)をコンテナ車両内で一方向に誘導し、オスとメスに仕分けして目的地まで輸送するための仕分け領域(C)から構成されている。
【0013】
囲い領域(A)は、害獣(ES)が越えられない高さの柵(A1)と、害獣(ES)が自由に出入りできる複数の害獣出入口(A3)と、害獣出入口(A3)を開閉するための内壁面に細鋼芯(A21)を設けた電磁開閉扉(A2)と、生態捕獲狭域通路帯(B)との境界に設けた害獣脱出口(A4)から構成され、囲い領域(A)の外周囲に、囲い領域内の様子を監視して電磁開閉扉(A2)の開閉操作を行うためのモニター(M)を設置されている。
【0014】
生態捕獲狭域通路帯(B)は、害獣(ES)一固体が通過できる程度の幅の狭小通路ブロック体(B1)が複数個連結して成り、害獣脱出口(A4)との境界の生態捕獲狭域通路帯(B)入口、及び仕分け領域(C)との境界の生態捕獲狭域通路帯(B)出口に、害獣(ES)が脱出方向に身体を押し付けて広がる透明性を有する不可逆的一方向扉(Ba)を配置するとともに、該一方向扉(Ba)の上部に害獣(ES)の頭部及びツノが脱出の障害とならない程度の隙間空間(Bb)を設け、狭小通路ブロック体(B1)の側面及び天井を半透明緩衝材(D)を用いて被覆している。
【0015】
仕分け領域(C)は、害獣(ES)を搭載する害獣運搬コンテナ車輛(G)であって、仕分け領域(C)の入口は、害獣(ES)が脱出方向に身体を押し付けて広がる不可逆的一方向扉(Ba)を有する生態捕獲狭域通路帯(B)出口に接続され、害獣運搬コンテナ車輛(G)のコンテナ内部は、害獣(ES)のオス、メスを仕分けするための雌雄振り分け扉(C1)と、害獣(ES)を一方向に列し、かつ、移動時に害獣(ES)の身体を保護するための半透明緩衝材(D)からなる連結仕切壁(C4)とで構成されている。
【0016】
(捕獲方法)
モニター(M)で害獣(ES)の採餌状況を確認しながら害獣出入口(A3)を閉鎖し、その閉鎖音と電磁開閉扉(A2)の細鋼芯(A21)により害獣(ES)をパニック化させることで、害獣脱出口(A4)から生態捕獲狭域通路帯(B)へと害獣(ES)を自ら侵入させ、生態捕獲狭域通路帯(B)入口の不可逆的一方向扉(Ba)と半透明緩衝材(D)で覆われた狭小通路ブロック体(B1)にて、逆戻り出来ずに列をなして次の不可逆的一方向扉(Ba)を介して害獣運搬コンテナ車輛(G)へと誘導・捕獲し、該コンテナ車両内でオス、メスに振り分けてそのまま目的地に輸送する。
【発明の効果】
【0017】
上記の捕獲設備と害獣(ES)の習性を利用した生体捕獲方法により、採餌には長い時間を要するが、捕獲作業は短時間で済み、人件費を極力掛けずに無傷にて大量に捕獲する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態を示す囲い領域(A)の外観図
【
図2】本発明の一実施形態を示す害獣生体捕獲狭域収容システムの平面図
【
図3】本発明の一実施形態を示す電磁閉鎖扉(A2)の詳細図
【
図4】本発明の一実施形態を示す害獣脱出口(A4)と生体捕獲境域通路体(B)入口付近の参考図
【
図5】本発明の一実施形態を示す不可逆的一方向扉(Ba)の詳細図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を、
図1~
図5を用いて、以下に説明する。
図1は囲い領域(A)の採餌場内部の外観図、
図2は害獣(ES)生体捕獲狭域通路収容システムの全景、
図3は電磁閉鎖扉の詳細図、
図4は害獣脱出口周辺の参考図、
図5は不可逆一方向扉の詳細展開図である。
【0020】
図1に示すように、囲い領域(A)は、害獣(ES)が越えられない高さの柵(A1)で構成し、害獣(ES)の採食本能を満たす趣向餌(F)を囲い領域内(Aa)に配置する。その際、長期間、雨や雪等にて劣化しない様に屋根(Y)を設ける。人の気配を長時間絶ち、
図2に示すように、囲い領域(A)と害獣生活圏(GS)との往来の自由を反復学習させた後、害獣(ES)の採餌状況をモニター(M)にて潜在頭数を確認後、害獣出入口(A3)を遠隔操作し、音がわずかに鳴る様に電磁開閉扉(A2)を閉鎖させる。すると、害獣(ES)は、その封鎖音と閉じられた電磁開閉扉(A2)の内壁面に取り付けられた細鋼芯(A21)に驚き、この場より出ようとして、害獣脱出口(A4)を探し、結果、生態捕獲狭域通路帯(B)の狭域通路ブロック体(B1)へと侵入する。
【0021】
100頭のエゾ鹿が1週間に食べる餌の量は、通常の圧縮された牧草ロール2個分である。この量に関しては、新ひだか町で鹿牧場をされている大川氏より伺っており、屋根(Y)と5本の柱のみのオープン施設に、ロール牧草の両サイドのみをカットしてビニールをはぎ取り、エゾ鹿が長期間採餌(2~3ケ月間以上)採餌できる量を配置するのが望ましい。
【0022】
電磁開閉扉(A2)の内壁面は、瞬時にパニックを増幅し、突然出られなくなった恐怖心を増幅させる事が、無傷にて次の生体捕獲狭域通路帯(B)に誘導させるポイントであり、
図3に示すように、閉鎖された害獣出入口(A3)の電磁開閉扉(A2)の内壁面に、例えば、錐状の細鋼芯(A21)を無数に突出して配置することで、恐怖心を増幅させ、パニック化をより促進させることができる。また、電磁開閉扉(A2)は害獣(ES)を拘束するまで常に開放し、閉鎖時にばね等のロックが外れて閉鎖音が突然発生することで、害獣(ES)は瞬時に異常を感じ、パニックを増長させる効果がある。この他、害獣(ES)が往来する複数の害獣出入口(A3)は、体形幅の倍以上の余裕ある扉幅であって、囲い領域(A)内の採餌場(Aa)が見渡せて安全が視認できる形態が望ましい。
【0023】
囲い領域(A)の害獣脱出口(A4)から生態捕獲狭域通路帯(B)の狭域通路ブロック体(B1)に侵入した害獣(ES)は、不可逆的一方向扉(Ba)と後続の害獣(ES)に追い立てられ、逆戻りすること無く生態捕獲狭域通路帯(B)に列して進み拘束される。本実施例では、害獣脱出口(A4)に当たる生態捕獲狭域通路帯(B)の入口、及び仕分け領域(C)の入口に当たる生態捕獲狭域通路帯(B)の出口に、
図4に示すような不可逆的一方向扉(Ba)を配置し、これら両扉の間に狭小通路ブロック体を(B1)を複数個並べ、その周囲(側面・天井)を半透明の独立発泡体シート緩衝材(D)で覆うことで、光を取り入れ不安感や違和感等、外の害獣からも視認出来ないようにし、害獣の害獣脱出口(A4)から生態捕獲狭域通路帯(B)への侵入、狭域通路ブロック体(B1)内での移動、さらに次の害獣運搬コンテナ(G)への侵入を容易にさせている。また、不可逆的一方向扉(Ba)の形態は、害獣(ES)の脱出本能をより助長させるため、
図5に示すように、扉上部(Bb)に頭やツノ幅が侵入できる空間を配置し、扉本体は前方が見通せるように自然樹木を用いた格子状や透過性の高い金網とするのが望ましい。
【0024】
害獣(ES)捕獲対象は、1グループの捕獲ではなく、採餌する複数のグループ全てを対象とするため、上記捕獲作業を繰り返す必要がある。このため、害獣(ES)の捕獲後、センサー(M)で囲い領域(A)内に害獣(ES)がいないことを感知し、遠隔操作で電磁開閉扉(A2)を開けることになるが、これを繰り返えす事で短期間に人件費を極力かけずに、これまで長期間、採餌してきた害獣グルーフ全体を無傷に生体捕獲し、牧場飼育を可能にする事が出来る。また、生態捕獲狭域通路帯(B)に収容されて、囲い領域(A)の採餌場(Aa)に仲間がいない事を近くの生活圏(GS)にて待機している別グループのエゾ鹿が確認すると、採餌に際し争う相手がいないため、これまでの長期間(2~3ケ月)の学習に従い、疑うことなく採餌場(Aa)に侵入する。
【0025】
なお、エゾ鹿(ES)の追跡データーとして、冬季間のエゾ鹿の行動半径は時として100キロメートル以上、餌を求め行動する事が確認報告されている。餌が雪の下になる冬季間はエゾ鹿自らが見つけ、採餌出来る餌がある内はその場に留まり離れる事はない。しかも、捕獲するまで、自分たちの生活圏に常に安全に戻っていることを、長期間にわたって学習しているという報告もある。
【0026】
最後の仕分け領域(C)は、
図2に示すように、害獣運搬コンテナ車輛(G)に搭載され、その入口は生体捕捉狭域通路帯(B)最後列の狭域通路ブロック体(B1)の出口に連結し、不可逆的一方向扉(Ga)となっている。コンテナ内部は、仕切保護材(C3)を用いて害獣(ES)が一方向に列する保護通路(C2)を構成し、オス、メスに仕分けする雄雌振り分け扉(C1)を各々具備している。害獣コンテナア車両(G)内でオス、メスに仕分けされた害獣(ES)は、保護通路(C2)の左右両壁に具備した仕切保護材(C3)により、身体を守られながら目的地まで安全に輸送される。なお、保護通路(C2)は、連結部の前後に仕切板(C4)を差し込み遮断とする事で、簡単に釣り上げ・下げができるように狭小通路ブロック体(B1)の単体檻仕様にするのが望ましい。
【0027】
本発明の害獣生体捕獲狭域収容システムの形態と特徴を整理すると下記のようになる。
・戻ろうとする鹿が突然複数の出入り扉(A3)が閉鎖し、危機的焦りを最大に増幅する事で、一時的パニック状態を作り出す事である。
・さらに逃げたいと思う時に、人の声や足音を柵外よりスピーカー等で聞かせたりして、恐怖心を更に掻き立てパニックを増長させる事もできる。
・一匹のエゾ鹿が、逃げ道の害獣脱出口(A4)を見つけ侵入すると、他のエゾ鹿は、先行する鹿に躊躇なく追従する。
・エゾ鹿は、いち早く逃げる事に集中し、害獣(ES)が自ら進んで狭い連結不可逆狭域逃走通路(B)に次々突き進み、更に、後続の鹿に押され、戻ること無く、害獣運搬コンテナ車輛(G)に搭載の狭域檻に拘束し捕獲する事ができる。
【0028】
その他、下記のような効果が期待できる。
1.自然界の害獣(ES)を樹皮食いの少なかった適性頭数まで捕獲する事で樹皮食いを防止し、林業・農業被害及び車輌及び、電車等の接触事故等を少なくすると共に、近年、増えるひぐまの抑制にも寄与する効果が期待出来る。
2.銃に依存しない大量の害獣(ES)の生体捕獲が出来、ハンター不足、誤射事故防止の一助として期待できる。
3.人件費を掛けずに、捕獲時の人間の安全を担保して、安価で高品質のジビエ肉の提供が可能となる為、農協組合員の日頃の作業に支障なく、捕獲罠として採用されやすい。また、家畜獣と同等の衛生管理と安心が担保されるので、新しいジビエ食文化産業の要件を満たす事ができ、エゾ鹿としてのブランド化が期待出来る。
4.捕獲した害獣(ES)を牧場家畜化することで、市場の肉部位ごとの需要に無駄なく答える事が出来、害獣の生肉安定供給体制が可能となる。
5.これまで需要に答えれなかった夏季のエゾ鹿の袋角を漢方薬として東南アジアや中国に輸出できる。昔、洞爺湖のエゾ鹿が増えすぎ絶滅に瀕した事実から、牧場化し適正頭数を生態コントロールできる。エゾ鹿が増えたことにより熊の肉食化が促進され、食物連鎖が偏り弊害化して増えたヒグマの抑制に対して餌となっているエゾ鹿を適正数に減らすことで、ヒグマの生息数を減ずる効果がある。
6.現在飼料の高騰から、離農する酪農家が増えてきているが、本来エゾシカの食べるのは草であり、乳牛に求められる高品位の飼料は必要なく、必要な事は広大な土地であって、人件費や牛舎等の育成コストが、乳牛や食肉事業より安価であり、これまでの搾乳等で回避できない時間的拘束にも縛られず、離農する農業事業者の一助とする事が期待できる。
【符号の説明】
【0029】
A 囲い領域
A1 柵
A2 電磁開閉扉
A21 細鋼芯
A3 害獣出入口
A4 害獣脱出口
Aa 採餌場
B 生体捕獲狭域通路帯
B1 狭小通路ブロック体
B2 連結仕切壁
Ba 不可逆的一方向扉
Bb 扉の上部空間
C 仕分け領域
C1 雄雌振り分け扉
C2 保護通路
C3 仕切保護材
C4 仕切板
D 半透明緩衝材
ES 害獣
F 餌
G 害獣運搬コンテナ車輛
GS 害獣生活圏
M モニター
Y 屋根
【要約】
【課題】エゾ鹿(以下、害獣ES)の生存本能を利用し、瞬時のパニック化と逃走出来ると錯覚させることで、人件費を極力掛けずに無傷にて大量に捕獲する捕獲設備とその捕獲方法を提供する。
【解決手段】害獣を餌で誘引し確保するための囲い領域と、囲い領域から脱出して逃げ込む生態捕獲狭域通路帯と、該通路帯から脱出した害獣を目的地まで輸送するための仕分け領域から構成される。内壁面に細鋼芯を設けた電磁開閉扉で囲い領域の出入口を瞬時に閉じることで害獣をパニック化させ、驚いた害獣を、逃げられると錯覚する見通しの良い透過性のある不可逆的一方向扉の脱出口へと追いやり、該脱出口に連結する周囲を半透明緩衝材で覆った狭小通路ブロック体からなる生態捕獲狭域通路帯を一方向に誘導し、最後に、移動時の害獣の身体を保護するための緩衝材からなる仕切壁で構成される害獣運搬コンテナ車輛へと誘導し、オス・メスに仕分けして捕獲する。
【選択図】
図2