(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-16
(45)【発行日】2023-11-27
(54)【発明の名称】搬送装置及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/25 20190101AFI20231117BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20231117BHJP
B29C 48/355 20190101ALI20231117BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20231117BHJP
【FI】
B29C48/25
B29C48/08
B29C48/355
B29C48/88
(21)【出願番号】P 2023556714
(86)(22)【出願日】2023-05-02
(86)【国際出願番号】 JP2023017196
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022080445
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勇一
(72)【発明者】
【氏名】水上 雄太
(72)【発明者】
【氏名】萩原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲郎
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-194829(JP,A)
【文献】特開2021-154693(JP,A)
【文献】特開2021-154692(JP,A)
【文献】特開2021-154672(JP,A)
【文献】特開2012-009281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tダイから吐出されるシートを長手方向に搬送する搬送装置であって、
前記シートを搬送するための複数の搬送ロールと、
前記Tダイから吐出された前記シートの先端に接触することで前記シートが接着されるシート状のガイド部と、
前記搬送ロールによって形成される前記シートの搬送経路に沿って前記ガイド部を移動させるガイド駆動機構と、
前記Tダイから吐出される前記シートを前記長手方向の前後に切断する切断機構と、
前記ガイド駆動機構及び前記切断機構の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記切断機構によって切断された後側の前記シートの先端が、前記ガイド駆動機構によって搬送される前記ガイド部に接着されるように、前記ガイド駆動機構及び前記切断機構を制御する、
搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記搬送ロールは、前記Tダイの鉛直方向の下方に位置し、
前記ガイド部は、前記搬送ロールの外周に接触しながら搬送される、
搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一つに記載の搬送装置であって、
前記ガイド部の移動方向における先端部は、前記シートの前記長手方向及び前記シートの厚さ方向に対して垂直な左右方向の一方側から他方側に向かうにつれて前記移動方向の前方に向かうように傾斜して形成される、
搬送装置。
【請求項4】
請求項1又は2いずれか一つに記載の搬送装置であって、
前記ガイド駆動機構は、
前記ガイド部を把持するクリップと、
前記クリップを移動させるクリップ移動機構と、を有し、
前記搬送経路の出口部には、前記ガイド部が前記クリップから分離されるように前記ガイド部を切断する分離機構が設けられる、
搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置であって、
前記ガイド駆動機構では、前記シートの前記長手方向及び前記シートの厚さ方向に対して垂直な左右方向の両側において前記ガイド部を把持するように前記クリップが設けられる、
搬送装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の搬送装置であって、
前記ガイド部は、前記シートと同じ材質である、
搬送装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の搬送装置であって、
前記ガイド部は、無延伸シートである、
搬送装置。
【請求項8】
Tダイから吐出されるシートを長手方向に搬送する搬送方法であって、
前記Tダイから吐出される前記シートを前記長手方向の前後に切断し、
切断された後側の前記シートの先端をシート状のガイド部に接触させることで前記ガイド部に接着させ、
複数の搬送ロールによって形成される前記シートの搬送経路に沿って前記ガイド部を移動させて、前記シートを前記搬送経路に導入する、
搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの搬送装置及び搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムを複数の搬送ロール間に通紙する装置が提案されている(例えば特開2020-1855号公報)。特開2020-1855号公報の通紙装置は、フィルムが搬送される搬送領域に対して搬送ロールの両端側から外側に離れた領域にそれぞれ設けられ、ライン状ガイド部材をフィルムの搬送経路に沿って走行させる複数の誘導部材と、ライン状ガイド部材のそれぞれに設けられ、紐通し用の紐をライン状ガイド部材に連結するための固定部と、を有する。
【発明の概要】
【0003】
特開2020-1855号公報に記載の通紙装置では、複数の搬送ロール間に紐通しされた紐を、搬送対象であるフィルムに連結する作業が必要とされる。また、この通紙装置では、フィルムと紐の連結作業を行った後、装置出口側から紐を牽引して複数のロール間に製品フィルムを通す作業が行われる。このような作業は、通常人手によって行われる。
【0004】
一方、フィルムの製造では、押出機によって溶融混練された樹脂材料がTダイによってシート状に成型され、成型されたシートを搬送して延伸することでフィルムが製造される。Tダイによって成型されたシートは、高温であることから、Tダイによって成型されたシートの搬送には、特許文献1に記載の通紙装置のような人手による作業は、極力避けたいというニーズがある。
【0005】
本発明は、Tダイから吐出されたシートを自動で搬送することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、Tダイから吐出されるシートを長手方向に搬送する搬送装置は、Tダイから吐出されたシートの先端に接触することでシートが接着されるシート状のガイド部と、シートを搬送するための複数の搬送ロールと、搬送ロールによって形成されるシートの搬送経路に沿ってガイド部を移動させるガイド駆動機構と、Tダイから吐出されるシートを長手方向の前後に切断する切断機構と、ガイド駆動機構及び切断機構の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、切断機構によって切断された後側のシートの先端が、ガイド駆動機構によって搬送されるガイド部に接着されるように、ガイド駆動機構及び切断機構を制御する。
【0007】
また、本発明のある態様によれば、Tダイから吐出されるシートを長手方向に搬送する搬送方法は、Tダイから吐出されるシートを長手方向の前後に切断し、切断された後側のシートの先端をシート状のガイド部に接触させることでガイド部に接着させ、複数の搬送ロールによって形成されるシートの搬送経路に沿ってガイド部を移動させて、シートを搬送経路に導入する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るフィルム製造装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る搬送装置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る搬送装置を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る搬送装置のフィーディングシートを示す図であり、シート面に平行な平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る搬送装置の切断機構を示す図であり、
図2の矢印V方向から見た図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る搬送装置及びフィーディングシートの搬送経路の出口部分を示す底面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る搬送装置の分離機構の構成を示す図であり、
図6における矢印VII方向から見た図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る搬送方法を説明するための図であり、フィーディングシートにシートが接着される前の状態を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る搬送方法を説明するための図であり、フィーディングシートにシートが接着した状態を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る搬送方法を説明するための図であり、シートが搬送経路に導入された状態を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る搬送方法を説明するための図であり、フィーディングシート及びシートが回収装置に回収される状態を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態の比較例に係る搬送装置のフィーディングシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る搬送装置100及びこれを備えるフィルム製造装置1000について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、複数の同一の構成については、その一部にのみ符号を付し、その他については符号を省略することがある。
【0010】
フィルム製造装置1000は、例えば、PMMA延伸フィルム製品を製造するための装置である。フィルム製造装置1000は、
図1に示すように、原料供給装置101と、押出機102と、Tダイ103と、キャスト機104と、縦延伸機105と、を備える。原料供給装置101、押出機102、Tダイ103、及び縦延伸機105は、それぞれ公知の構成を採用することができるため、詳細な図示及び説明は省略し、以下に簡潔に説明する。
【0011】
原料供給装置101は、フィルム製品の原材料(例えば樹脂及び可塑材)が供給され、供給された原材料を押出機102に供給する。
【0012】
押出機102は、原料供給装置101から供給された原材料を溶融混練してTダイ103に供給する。押出機102は、例えば、一つのスクリュを有する単軸押出機が利用される。なお、押出機102は、二軸混錬押出機であってもよい。
【0013】
Tダイ103は、押出機102から供給された溶融材料をスリット103a(
図2参照)から吐出することで、シート状(帯状)に成型する。以下、シート状に成型された材料を単に「シートS」と称する。Tダイ103は、シートSを長手方向に連続して吐出する。
【0014】
キャスト機104は、Tダイ103から連続して吐出されるシートSを冷却固化する。キャスト機104の構成については、後に詳細に説明する。キャスト機104によって冷却固化されたシートSは、縦延伸機105に導かれる。
【0015】
縦延伸機105は、シートSを搬送方向である縦方向に延伸して厚さを薄くしてフィルム製品を製造する。フィルム製品は、第1横延伸機106に供給され、第1横延伸機106によって横方向に延伸される。なお、横方向とは、フィルム製品の搬送方向及び厚さ方向の両方に垂直な方向である。つまり、横方向とは、フィルム製品の幅方向に相当する。
【0016】
図示及び詳細な説明は省略するが、縦延伸機105によって縦方向に延伸されたフィルム製品は、例えば、更に横延伸機によって横方向に延伸され、抽出乾燥装置によってフィルム製品に含浸されている液状可塑剤を抽出される。そして、再び横延伸機によって横方向に延伸されてフィルム製品が取得され、巻取機によってフィルム製品がロール状に巻き取られる。
【0017】
以下、キャスト機104の具体的構成について説明する。以下では、シートSが搬送される方向を「搬送方向」、シートSの厚さを規定する方向を「厚さ方向」、搬送方向及び厚さ方向に垂直な方向を「左右方向」とも称する。搬送方向は、シートSの長手方向に相当するものであり、上述の縦方向に相当する。左右方向は、搬送方向と共にシートSのシート面を規定する方向であり、上述のシートSの幅方向、横方向に相当する。
【0018】
キャスト機104は、
図2に示すように、Tダイ103から吐出されるシートSを冷却する冷却ロールRと、冷却ロールRによって冷却されたシートSを搬送する搬送装置100と、を備える。
【0019】
冷却ロールRは、Tダイ103のスリット103aの略直下に位置するようにTダイ103の下方に設けられる。Tダイ103から吐出されるシートSは、自重によって鉛直方向の下方へ向けて移動し、冷却ロールRの外周面に乗せられる。冷却ロールRは、その中心軸が左右方向(
図2中紙面垂直方向)に沿って延びるように設けられ、中心軸周りに所定の速度で回転駆動される。シートSが接触する部分の冷却ロールRの左右方向の幅は、少なくともシートSの幅よりも大きく形成される。冷却ロールRの内部には、冷却用の水(液体)が通過する。シートSは、冷却ロールRの外周面に乗って冷却ロールRの回りを回転することで、冷却固化される。シートSが冷却固化されることで、後述するフィーディングシート20によってシートSを切断せずに牽引することができる。
【0020】
なお、キャスト機104では、冷却ロールRの外周面に乗せられたシートSに対して冷却エアを噴き付ける冷却機構がさらに設けられてもよい。また、キャスト機104によるシートSの冷却固化の方法として、
図2に示す単一の冷却ロールRによる冷却固化に代えて、成形ロールとタッチロールの2つの冷却ロールRを設け、2つの冷却ロールR間にシートSを供給して冷却させる、いわゆるタッチロール方式を採用してもよい。
【0021】
一般に、Tダイ103から吐出が開始された直後のシートSは、溶融樹脂の性質や、温度、圧力等が安定しないことから、性状が安定するまで廃棄される。このため、冷却ロールRの下方には、シートSを廃棄するダスト口(図示省略)が設けられる。Tダイ103からのシートSの性状が安定するまでは、搬送装置100によってシートSは搬送されず、冷却ロールRの回転によって移動し、やがて自重によって冷却ロールRから離脱してダスト口に向けて落下して廃棄される。
【0022】
搬送装置100は、
図2及び
図3に示すように、シートSを搬送するための複数の搬送ロール10と、Tダイ103から吐出されたシートSの先端に接触することでシートSが接着されるシート状のガイド部としてのフィーディングシート20と、搬送ロール10によって形成されるシートSの搬送経路に沿ってフィーディングシート20を移動させるガイド駆動機構30と、Tダイ103から吐出されるシートSを長手方向の前後に切断する切断機構40と、搬送装置100の作動を制御する制御装置80と、を備える。
【0023】
複数の搬送ロール10は、冷却ロールRに対して搬送方向の下流側に設けられ、冷却ロールRによって冷却されたシートSを搬送する。複数の搬送ロール10によって、シートSを下流へ搬送する搬送経路が形成される。シートSが接触する部分の複数の搬送ロール10の幅は、少なくともシートSの幅よりも大きく形成される。複数の搬送ロール10は、電動モータ等の駆動源(図示省略)によって、それぞれ中心軸周りに所定の方向及び速度で回転駆動される。複数の搬送ロール10の中心軸は、それぞれ冷却ロールRの中心軸に対して平行に設けられる。
図2では、搬送ロール10の回転方向を矢印にて示している。
【0024】
また、搬送装置100では、搬送ロール10と共にシートSを挟んでシートSを搬送ロール10に向けて押し付けるニップロール11がさらに設けられる。これにより、シートSには、搬送ロール10からの駆動力が効果的に作用する。また、搬送装置100では、搬送ロール10間には、搬送されるシートSが掛け回される一又は複数(本実施形態では複数)のフリーロール12が設けられる。フリーロール12は、モータ等によって回転駆動されるものではなく、掛け回されたシートSの搬送に伴って従動回転するものである。
【0025】
フィーディングシート20は、樹脂材料、より具体的には、シートSやフィルム製品と同じ材質によって形成されるシート状の部材である。フィーディングシート20をフィルム製品と同じ材質とすることで、製品とする際に生じるフィルム製品の切れ端などの廃棄される部分を利用してフィーディングシート20を製造することができ、省エネ化や低コスト化することができる。
【0026】
また、フィーディングシート20は、無延伸シートである。フィーディングシート20を無延伸シートとすることで、フィーディングシート20が高温のシートSに接触することで温度上昇して残留応力により変形(収縮)するといった事態が抑制される。
【0027】
ガイド駆動機構30は、
図2及び
図4に示すように、フィーディングシート20をクリップする複数のクリップ31と、クリップ31を移動させるクリップ移動機構35と、フィーディングシート20の位置を検出する位置センサ32と、を有する。
【0028】
図2に示すように、クリップ移動機構35は、無端状に形成されて循環経路を構成する一対のチェーン36と、チェーン36に噛み合ってチェーン36を循環駆動するスプロケット37と、スプロケット37を駆動する電動モータ38と、を有する。
【0029】
図4に示すように、一対のチェーン36は、シートSの左右方向に間隔を空けて設けられており、互いにシートSの左右方向に対称に設けられる。具体的には、左側のチェーン36は、搬送するシートSの左側端部よりも左側に位置し、右側のチェーン36は、シートSの右側端部よりも右側に位置している。つまり、一対のチェーン36は、シートSの左右方向の両端部よりも左右方向の外側に設けられる。
【0030】
一対のチェーン36は、シートSの搬送経路に沿った経路を含む循環経路を構成する。具体的には、シートSが供給される冷却ロールRの外周、搬送ロールによって形成される搬送経路、後述する回収装置70を経て、再び冷却ロールRの外周に導かれるような循環経路が構成される。一対のチェーン36には、それぞれスプロケット37が噛み合っており、スプロケット37が、電動モータ38によって回転駆動されることで、スプロケット37に噛み合うチェーン36を循環させる駆動力が発揮される。スプロケット37は、チェーン36が所定の循環経路によって移動するように複数設けられる。言い換えると、チェーン36が複数のスプロケット37に掛け回されることにより、シートSの搬送経路に沿った経路を含む所定の循環経路が形成される。よって、図示は省略するが、チェーン36の循環経路の一部が搬送ロール10によるシートSの搬送経路に沿うように、搬送ロール10に対応する位置にはスプロケット37が設けられる。
【0031】
複数のスプロケット37では、電動モータ38による駆動力がすべてに伝達されてもよいし、電動モータ38の駆動力が一部に伝達され残りはチェーン36の駆動に伴って従動回転するものでもよい。なお、
図2では、説明の便宜上、単一のスプロケット37のみを図示している。また、
図2では、一対のチェーン36の駆動方向を破線矢印にて示している。
【0032】
複数のクリップ31は、チェーン36が構成する循環経路に沿って所定の間隔を空けてチェーン36に設けられる。
図4に示すように、左右のクリップ31は、互いに左右方向に対称となるように、言い換えると、搬送方向における位置が互いに対応するようにチェーン36に設けられる。
【0033】
クリップ31は、フィーディングシート20を把持可能であれば、公知の構成を採用できるため、詳細な説明は省略するが、例えば、フィーディングシート20が挿入される凹溝を有する本体部と、本体部の凹溝に挿入されたフィーディングシート20を凹溝の内周面に押し付ける押し付けボルトと、を有して構成される。また、クリップ31は、例えば、本体部の凹溝内に設けられる一対の磁石によってシートSを挟む構成でもよい。
【0034】
フィーディングシート20は、
図4に示すように、左右方向の両端部(両縁部)が、左右のクリップ31によって把持される。フィーディングシート20の先端部は、左右方向の一方側(図では右側)から他方側(左側)に向かうにつれて、搬送方向の前方に向かうように傾斜して形成される。つまり、フィーディングシート20の搬送方向の先端部は、左右方向及び搬送方向に対して傾斜している。フィーディングシート20の後端部は、左右方向に平行に形成される。このように、本実施形態では、フィーディングシート20は、搬送方向の前方(先端側)に90°よりも小さい角が位置する直角台形(垂直台形)に形成されている。
【0035】
フィーディングシート20の先端部の傾斜は、Tダイ103からのシートSの吐出速度(シートSの搬送速度)、シートSの幅、切断機構40による後述のカッタ41の移動速度などに基づいて設定される。
【0036】
フィーディングシート20は、直角台形の形状に形成されるため、左側端部が右側端部よりも多くのクリップ31によって把持される。フィーディングシート20の後方は、左右方向に互いに対向する一対のクリップ31が組み合わさって左右均等に把持されるのに対し、前方は、左右方向の左側のみがクリップ31によって把持される。言い換えると、フィーディングシート20の先端部の左側は、クリップ31によって把持されるのに対し、この先端部の左側を把持するクリップ31と搬送方向における位置が同じ位置にある右側のクリップ31は、フィーディングシート20を把持していない。
【0037】
クリップ31は、チェーン36がクリップ移動機構35によって循環駆動されることにより、シートSの左右方向の外側において、シートSの搬送経路に沿って移動される。このため、クリップ31によって把持されるフィーディングシート20は、冷却ロールR及び搬送ロール10に接触しながらシートSの搬送経路に沿って搬送される。つまり、フィーディングシート20の移動方向は、シートSの搬送方向に対応する。
【0038】
位置センサ32は、クリップ31によって把持されてクリップ移動機構35によって搬送されるフィーディングシート20を検出する。位置センサ32は、チェーン36によって形成される循環経路上であって予め把握される複数の位置に設けられる。
【0039】
位置センサ32がフィーディングシート20を検出することで、フィーディングシート20の位置が把握される。また、位置センサ32は、シートSの搬送経路の入口、すなわち、Tダイ103から冷却ロールRにシートSが吐出される位置よりも循環経路に沿って所定距離だけ上流側に離れた位置に少なくとも一つ設けられる。以下、シートSの搬送経路の入口の上流側に設けられる位置センサ32を開始位置検出センサ32aとも称する。
【0040】
位置センサ32は、当該位置センサ32が設けられる位置をシートSが通過したことが可能なものであれば任意のセンサを利用することができる。例えば、位置センサ32は、リミットスイッチや、赤外線センサなどの光学センサを利用できる。位置センサ32の検出結果は、制御装置80に送信される。位置センサ32は、フィーディングシート20の通過を直接検出するものでもよいし、フィーディングシート20を把持するクリップ31の通過を検出することでフィーディングシート20の通過を間接的に検出するものでもよい。
【0041】
切断機構40は、シートSを切断するカッタ41と、カッタ41を駆動するカッタ駆動機構45と、を有する。
【0042】
カッタ41は、基台42に取り付けられ、シートSの搬送方向に沿って延びる円形断面を有する棒状部材である。カッタ41は、金属、樹脂、木材、竹材など、Tダイ103から吐出されるシートSの温度によって破損せずに耐えられるものであれば、任意の材質とすることができる。
【0043】
カッタ駆動機構45は、
図5に示すように、シートSの右側端部よりも右側の第1位置(
図5中実線)と、シートSの左側端部よりも左側の第2位置(
図5中破線)と、の間でカッタ41及び基台42を矢印で示すように移動させる。つまり、カッタ駆動機構45は、シートSの左右方向にわたってカッタ41を横断させる。これにより、Tダイ103から吐出されたシートSは、長手方向の前後に切断される。Tダイ103から吐出されるシートSは、高温で軟化した状態であるため、棒状部材であるカッタ41を左右方向に横断させるだけで容易に切断することができる。なお、
図5中矢印は、冷却ロールRの回転方向を示している。
【0044】
カッタ駆動機構45は、カッタ41をシートSの左右方向にわたって横断させるように移動させるものであれば、公知の構成を採用できるため詳細な図示及び説明は省略するが、例えば、電動モータ(サーボモータ)とボールねじ機構とを組み合わせた直動機構等を利用することができる。その他にも、カッタ駆動機構45は、例えば、電動モータ及びベルト機構を有する構成、又は、エアシリンダを有する構成とすることもできる。また、カッタ駆動機構45は、カッタ41を鉛直方向に移動させるように構成されてもよい。これによれば、搬送装置100の非稼働時、段取り時などにおいて、カッタ41を作業の邪魔にならない位置に退避させておくことができる。また、カッタ41の位置は、サーボモータによる位置制御や速度制御が行われてもよいし、各種センサによってセンシングされてもよい。
【0045】
シートSの搬送経路の出口部(搬送経路の終端部)には、
図6に示すように、フィーディングシート20をクリップ31から分離させる分離機構60と、搬送経路の出口に設けられシートSを回収する回収装置70と、が設けられる。
【0046】
分離機構60は、複数の搬送ロール10のうち最も下流側の搬送ロール10及び当該搬送ロール10に対向するニップロール11よりも下流側に設けられる。分離機構60は、左右方向にそれぞれ一つずつ設けられ、左右のクリップ31とフィーディングシート20とを分離させる。左右の分離機構60は、
図7に示すように、円板状の回転刃61と、回転刃61を受容する凹部62aを有する断面U字状の固定刃62と、回転刃61を回転駆動する電動モータ63と、をそれぞれ有する。また、分離機構60には、フィーディングシート20の通過を検知する位置センサ32(以下、「分離検知センサ32b」とも称する。)が回転刃61及び固定刃62の下流側に設けられる。分離検知センサ32bは、65がフィーディングシート20の通過を検知することで、クリップ31からのフィーディングシート20の分離を検知することができる。
【0047】
回転刃61及び固定刃62は、ガイド駆動機構30のクリップ31よりも左右方向の内側に設けられる。回転刃61の刃先(外周縁部)は、固定刃62の凹部62aに進入する。回転刃61は、回転軸がシートSの左右方向に沿うように設けられる。なお、本実施形態では、回転刃61及び固定刃62は、左右方向へは移動しないように構成されているが、これに限定されず、左右方向に移動可能な構成でもよい。
【0048】
シートSと共にフィーディングシート20が搬送経路の出口まで搬送されると、フィーディングシート20においてクリップ31で把持される部分の左右方向の内側部分が、回転刃61と固定刃62との間に導入される。これにより、フィーディングシート20は、回転する回転刃61と固定刃62とによって挟まれ、切断される。よって、
図6中二点鎖線で表す切断線によって、フィーディングシート20は、左右方向の外側においてクリップ31によって把持される部分と、その左右方向の内側部分とが、分離される。回転刃61の回転速度(外周縁の周速)は、フィーディングシート20の搬送速度以上であることが望ましい。
【0049】
クリップ31から分離されたフィーディングシート20は、シートSと共に回収装置70によって回収される。回収装置70は、例えば、ボビンにシートSを巻き取る巻取機、シートSを粉砕する粉砕機(クラッシャー)等を利用することができる。本実施形態では、回収装置70として巻取機が用いられる。回収装置70がシートSは、出口まで搬送されたシートSは、その性状が安定すると、他の搬送装置(図示省略)によって縦延伸機105(
図1参照)まで搬送されて供給される。
【0050】
制御装置80は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。制御装置80は、少なくとも、本実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能にプログラムされている。なお、制御装置80は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0051】
制御装置80は、以下に説明するシートSの搬送方法を実行可能となるように、搬送装置100の各構成の作動を制御する。なお、制御装置80は、搬送装置100に対して専用で設けられるものに限定されず、フィルム製造装置1000の他の装置と共通に利用されるものでもよい。
【0052】
次に、キャスト機104におけるシートSの搬送方法について説明する。
【0053】
まず、冷却ロールR及び搬送ロール10を所定の方向に所定の速度によって回転させる。冷却ロールR及び搬送ロール10は、シートSが一定速度で搬送されるように、回転速度が同期するように制御される。Tダイ103からシートSが吐出され始めた直後は、搬送装置100は駆動せず、シートSは、性状が安定するまで冷却ロールRを通じてダスト口に廃棄される(
図2参照)。
【0054】
また、シートSの性状が安定するまでの間に、停止状態の搬送装置100のクリップ31にフィーディングシート20をたわみが生じないように把持させる。フィーディングシート20は、搬送方向前方に向かうにつれて幅が細くなり、左右方向に一方側から他方側に向けて一様に傾斜するように、クリップ31に取り付けられる(
図4参照)。フィーディングシート20を取り付ける位置(段取り位置)は、開始位置検出センサ32aよりも循環経路の上流側に向けて所定距離だけ離れた位置である。
【0055】
次に、Tダイ103から吐出されるシートSの性状が安定すると、例えば、作業者によって搬送開始ボタン等が操作され、これにより、ガイド駆動機構30のチェーン36が回転駆動して、クリップ31及びフィーディングシート20が循環経路に沿って移動する。フィーディングシート20の移動速度(チェーン36の循環駆動速度)は、冷却ロールRの回転速度に同期される。そして、フィーディングシート20の先端にTダイ103から吐出されたシートSの先端を接着させる。
【0056】
ガイド駆動機構30の作動の開始に伴って、分離機構60の回転刃61も回転される。なお、分離機構60の回転刃61は、ガイド駆動機構30の作動開始後、クリップ31及びフィーディングシート20が、分離機構60付近まで移動したことが位置センサ32によって検知されたら、回転が開始されるものでもよい。
【0057】
以下、フィーディングシート20の先端にシートSの先端を接着させる工程について、説明する。
【0058】
チェーン36の循環経路に沿って移動するフィーディングシート20が、Tダイ103に近づくと、開始位置検出センサ32aによってフィーディングシート20の通過が検知される。開始位置検出センサ32aがよってフィーディングシート20を検知した後の所定のタイミングでカッタ駆動機構45がカッタ41を左右方向に移動させて、シートSを長手方向(搬送方向)の前後に切断する(
図8参照)。具体的には、開始位置検出センサ32aからTダイ103までの搬送経路上での距離と、フィーディングシート20の移動速度と、に基づいて、フィーディングシート20が開始位置検出センサ32aからTダイ103まで移動する移動時間が求められる。開始位置検出センサ32aがフィーディングシート20の通過を検知後、上述の移動時間が経過するタイミングで、カッタ41が移動してシートSが切断される。
【0059】
長手方向の前後に切断されたシートSの間には、長手方向に所定の間隔が形成される。切断された前側のシートSは、フィーディングシート20に接触することなく、冷却ロールRによって搬送されてダスト口に廃棄される。
【0060】
切断された後側のシートSは、開始位置検出センサ32aを通過してTダイ103の下方まで移動したフィーディングシート20に接触し、フィーディングシート20と共に冷却ロールRによって搬送され、冷却固化する過程でフィーディングシート20に接着される(
図9参照)。このように、切断された後側のシートSのみがフィーディングシート20に接着されて、フィーディングシート20によって搬送される。
【0061】
言い換えれば、カッタ41は、切断された後側のシートSの先端のみがフィーディングシート20に接触するように、フィーディングシート20の移動速度に応じて、適切なタイミングでシートSを切断するように駆動される。カッタ41による切断のタイミングは、シートSの搬送速度、Tダイ103と冷却ロールRとの距離、カッタ41の移動速度などに応じて、後側のシートSのみがフィーディングシート20に接触するように定められる。
【0062】
フィーディングシート20に対するシートSの接着をより詳細に説明すると、Tダイ103から吐出されたシートSは、室温以上の比較的高温の状態でフィーディングシート20に接触する。シートSの熱によりフィーディングシート20の表面の一部が溶融し、冷却ロールRによって搬送されて冷却されることで、溶融したフィーディングシート20がシートSに接着される。ここで、フィーディングシート20は、フィルム製品、つまり、シートSと同じ材質である。よって、溶融したフィーディングシート20は、同じ材質であるシートSに対して安定して接着することができる。
【0063】
フィーディングシート20に接着されたシートSは、ガイド駆動機構30によって移動されるフィーディングシート20に牽引されて、搬送ロール10によって形成される搬送経路に導入される(
図10参照)。その後は、搬送ロール10によって回転駆動されることで、シートSは、搬送経路の下流まで搬送される。この際、ニップロール11は、搬送経路(言い換えると搬送ロール10の外周)からは離間している。なお、フィーディングシート20は、搬送ロール10の回転速度に同期して移動するため、フィーディングシート20の移動が搬送ロール10によるシートSの搬送を阻害することは防止される。
【0064】
シートSの先端が搬送経路の出口まで移動すると、フィーディングシート20とクリップ31とが分離機構60によって分離される。クリップ31から分離されたフィーディングシート20及びシートSは、回収装置70によって回収される(
図11参照)。
【0065】
分離検知センサ32bによってクリップ31からのフィーディングシート20の分離が検出されると、ニップロール11は、搬送ロール10に向けて移動し、搬送ロール10との間でシートSを挟持する。搬送ロール10とニップロール11とによりシートSが挟持されることで、クリップ31からのフィーディングシート20の分離により、シートSが上流側に向けて引き戻されることが防止される。また、分離検知センサ32bによりクリップ31からのフィーディングシート20の分離が検出されると、回転刃61の回転も停止される。なお、分離検知センサ32bがフィーディングシート20を検知する前に、ニップロール11が搬送ロール10と共にシートSを挟持するようにしてもよい。また、分離機構60と回収装置70との間の搬送距離が比較的短い場合等では、ニップロール11を設けなくてもよい。
【0066】
フィーディングシート20が接着されたシートSの先端が回収装置70に回収されたことがセンシングされると、ガイド駆動機構30の駆動が停止される。以降は、Tダイ103から冷却ロールRに吐出されるシートSは、搬送ロール10によって付与される駆動力によって回収装置70まで搬送される。
【0067】
以上のようにして、Tダイ103から吐出されカッタ41によって切断されたシートSは、フィーディングシート20及びガイド駆動機構30によって搬送経路に導入され、搬送ロール10によって下流側に搬送される。そして、シートSは、分離機構60によってガイド駆動機構30から分離されて回収装置70に回収される。このように、本実施形態では、自動でシートSを搬送経路に導入し、下流へと搬送することができる。なお、本実施形態では、搬送経路とは、Tダイ103からシートSが吐出される冷却ロールRから搬送ロールを経て回収装置70までの間の経路である。
【0068】
また、ロープを使用する従来技術では、搬送経路の全体にわたる長さのロープが必要であり、落下や設備への干渉によってその一部でも汚れてしまうと、搬送ロール、ひいてはシートを汚すおそれがある。シートの汚れが生じると、装置を止めて清掃作業を行う必要があり、生産性・作業効率の低下を招く。
【0069】
これに対し、本実施形態では、フィーディングシート20とフィーディングシート20を移動させるガイド駆動機構30によってシートSを搬送経路に導入できるため、搬送経路の全体にわたる長さのフィルムは必要がない。したがって、本実施形態によれば、シートSの汚れを抑制でき、これによる装置の停止を招くおそれも低減できる。
【0070】
ここで、切断機構40では、カッタ41は、カッタ駆動機構45によって左右方向にのみ移動される。シートSは、Tダイ103から略鉛直方向下方に垂直落下しているため、シートSの切断面は、カッタ41の移動速度に応じて左右方向の一方側から他方側に向けて直線状(テーパ状)に傾斜した形状となる。
【0071】
このため、
図12に示す比較例のフィーディングシート120のように、先端が左右方向に略平行(シートSの搬送方向及び厚さ方向のいずれに対しても垂直)であると、切断前後のシートSの両方をフィーディングシート120に接触させてしまう。反対に、切断した前側のシートSをフィーディングシート20に対して接触させないようにすると、後側のシートSは、先端がフィーディングシート120に接触せず、先端よりも搬送方向の後方がフィーディングシート120に接触することになる。
【0072】
切断前後のシートSの両方をフィーディングシート120に接触させてしまうと、切断の前側の不要なシートSも搬送することになるため、適切ではない。また、後側のシートSの先端をフィーディングシート120に接触させることができないと、先端が自由になるため、シートSの先端のバタつき等によって、冷却ロールRから搬送ロール10へとうまくシートSを搬送できないおそれがある。
【0073】
これに対し、本実施形態では、フィーディングシート20の先端は、シートSの切断面に対応するように、テーパ状に形成されている。このため、適切なタイミングでフィーディングシート20をTダイ103の下方へ供給すると、切断の後側のシートSのみをその先端部においてフィーディングシート20に接着させることができる。これにより、シートSを適切に搬送することができる。
【0074】
また、フィーディングシートの先端が搬送方向に垂直に形成される場合、フィーディングシートの先端は、幅方向の全体が略同時に搬送ロールへ導入される。この場合、フィーディングシートの先端の幅方向の一部にたるみや搬送ロールからの浮き上がりが生じると、フィーディングシートの全体が搬送ロール間にスムースに導入できなくなる。これに対し、本実施形態では、フィーディングシート20は、先端がテーパ状に形成されることで、左右方向の幅が狭い先端が先行して搬送ロール10に接触し、搬送ロール10の表面に沿って牽引される。先端部の幅が狭いことで、先端部ではたるみや浮き上がりが生じにくい。幅の狭い先端部が先行して搬送ロール10の表面に接触し、フィーディングシート20の移動に伴い徐々に搬送ロール10の表面に接触するフィーディングシート20の幅が広がっていくことで、先行しているフィーディングシート20が搬送ロール10の表面に沿った移動の案内として機能する。このため、フィーディングシート20の全幅が搬送ロール10に沿って搬送ロール10の表面をスムースに通過することができる。
【0075】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0076】
Tダイ103から吐出されるシートSを長手方向に搬送する搬送装置100は、シートSを搬送するための複数の搬送ロール10と、Tダイ103から吐出されたシートSの先端に接触することでシートSが接着されるシート状のフィーディングシート20と、搬送ロール10によって形成されるシートSの搬送経路に沿ってフィーディングシート20を移動させるガイド駆動機構30と、を備える。
【0077】
また、Tダイ103から吐出されるシートSを長手方向に搬送する本実施形態の搬送方法は、Tダイ103から吐出されたシートSの先端をシート状のフィーディングシート20に接触させることでフィーディングシート20に接着させ、複数の搬送ロール10によって形成されるシートSの搬送経路に沿ってフィーディングシート20を移動させて、シートSを搬送経路に導入する。
【0078】
これらの構成によれば、フィーディングシート20がシートSとの接触によって当該シートSに接着されるため、シートSが接着されたフィーディングシート20をシートSの搬送経路に沿って移動させることで、シートSは、フィーディングシート20に牽引されて搬送経路に導入される。このように、Tダイ103から吐出されたシートSを自動で搬送することができる。これにより、Tダイ103から吐出されるシートの搬送を、省人化かつ安全に行うことができる。また、自動でシートSを搬送できるため、搬送を失敗することが抑制されると共に、搬送ロール10にキズ等が生じることも防止することができる。
【0079】
また、搬送装置100は、Tダイ103から吐出されるシートSを長手方向の前後に切断する切断機構40をさらに備える。
【0080】
また、搬送装置100は、ガイド駆動機構30及び切断機構40の動作を制御する制御装置80をさらに備え、制御装置80は、切断機構によって切断された後側のシートSの先端部が、ガイド駆動機構30によって搬送されるガイド部に接着されるように、ガイド駆動機構30及び切断機構40を制御する。
【0081】
これらの構成によれば、Tダイ103から吐出されるシートSを自動で切断し、切断された後のシートSを自動で搬送させることができる。
【0082】
また、搬送装置100では、フィーディングシート20の先端部は、左右方向の一方側から他方側に向かうにつれて搬送方向の前方に向かうように傾斜している。
【0083】
この構成によれば、Tダイ103から吐出されて切断された後側のシートSのみを適切にフィーディングシート20に接着させることができる。
【0084】
また、搬送装置100では、ガイド駆動機構30は、フィーディングシート20を把持するクリップ31と、クリップ31を移動させるクリップ移動機構35と、を有し、搬送経路の出口部には、フィーディングシート20がクリップ31から分離されるようにフィーディングシート20を切断する分離機構60が設けられる。
【0085】
この構成によれば、クリップ31からのフィーディングシート20の分離を自動で行うことができる。
【0086】
また、搬送装置100では、フィーディングシート20は、シートSと同じ材質である。
【0087】
この構成によれば、シートSとフィーディングシート20との接着を安定させることができると共に、廃棄されるシートSやフィルム製品を再利用できるため、コストを低減することができる。
【0088】
また、搬送装置100では、フィーディングシート20は、無延伸シートである。
【0089】
この構成によれば、シートSとの接触による温度上昇によって変形するおそれが抑制される。
【0090】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0091】
上記実施形態では、切断機構40は、カッタ41を左右方向に移動させることで、シートSを長手方向の前後に切断する。これに対し、切断機構40は、シートSを長手方向の前後に切断できるものであればよく、上記実施形態の構成に限定されない。
【0092】
例えば、切断機構40は、上記実施形態と同様の棒状のカッタ41が、長手方向の一端側を支点として他端側がその周りを回転(スイング)されることで、シートSを左右方向に横断して、シートSを切断するものでもよい。また、カッタ41は、上記実施形態のような円形断面を有する棒状部材に限定されず、例えば、鋭利な刃状、矩形断面を有する棒状部材、平板状部材、又は、断面がU字状の部材であってもよい。
【0093】
また、切断機構40は、シートS面に略垂直に設けられる一対の板状の切断刃を有し、一対の切断刃によってシートSを厚さ方向に挟んでせん断することで、シートSを切断するものでもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、分離機構60は、固定刃62と回転刃61とを有する。これに対し、分離機構60は、フィーディングシート20をクリップ31から分離できるものであればよく、上記実施形態の構成に限定されない。
【0095】
例えば、分離機構60は、フィーディングシート20を切断する切断刃として、円形の回転刃61ではなく、先端が略三角形状の切断刃(いわゆるレザーカッタ)を有し、当該切断刃によってフィーディングシート20を切断してもよい。この切断刃を使用する場合には、一対の切断刃により鋏構造を構成してフィーディングシート20を切断するようにしてもよい。また、分離機構60は、上記実施形態のような凹部62aを有する固定刃62に代えて、更にもう一つ回転刃61を備える構成でもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、フィーディングシート20の材質は、シートS(フィルム製品)と同じ材質であって、無延伸シートである。これに対し、フィーディングシート20の材質は、シートSが接着されるものであればよく、上記実施形態の構成に限定されない。例えば、フィーディングシート20は、シートSとは異なる樹脂材料であってもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、フィーディングシート20は、左右方向の両側において、ガイド駆動機構30のクリップ31によって把持される。これに対し、フィーディングシート20は、左右方向のどちらか一方のみがクリップ31によって把持されるものでもよい。左右方向の両側においてフィーディングシート20を把持することで、フィーディングシート20を安定した姿勢で搬送できる。一方、左右方向の片側のみにおいてフィーディングシート20を把持する構成とすることで、左右方向の片側にのみチェーン36やクリップ31の構成を設ければよいため、装置構成が簡略化され、コスト低減や省スペース化を図ることができる。
【0098】
また、上記実施形態では、フィーディングシート20は、先端部が左右方向の一方側から他方側に向かうにつれて、搬送方向の前方に向かうように傾斜し、後端部は、搬送方向に垂直に形成される、直角台形形状である。これに対し、フィーディングシート20は、先端部に加えて、搬送方向の後端部が先端部の傾斜と平行に傾斜して形成される、平行四辺形に形成されてもよい。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【要約】
搬送装置(100)は、シート(S)を搬送するための複数の搬送ロール(10)と、Tダイ(103)から吐出されたシート(S)の先端に接触することでシート(S)が接着されるシート状のフィーディングシート(20)と、搬送ロール(10)によって形成されるシート(S)の搬送経路に沿ってフィーディングシート(20)を移動させるガイド駆動機構(30)と、を備える。