(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】細胞膜透過性を増加させるための交流電界の使用
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20231120BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20231120BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61N1/32
C12M1/42
C12N1/00 N
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021011871
(22)【出願日】2021-01-28
(62)【分割の表示】P 2020573558の分割
【原出願日】2019-07-03
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エドウィン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】チラーグ・ビー・パテル
(72)【発明者】
【氏名】サンジブ・エス・ガンビール
(72)【発明者】
【氏名】タリ・ボロシン-セラ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーラ・ポラト
(72)【発明者】
【氏名】モシェ・ギラディ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/066655(WO,A2)
【文献】特表2016-529923(JP,A)
【文献】Roger Stupp et al.,Effect of Tumor-Treating Fields Plus Maintenance Temozolomide vs Maintenance Temozolomide Alone on Survival in Patients With Glioblastoma,JAMA ONCOLOGY,米国,2017年,318,2306-2316
【文献】膠芽腫(グリオブラストーマ)に対するメンテナンス療法としてのTTフィールド+テモダール併用療法、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)ともに有意に改善を示す,オンコロがんと・ひとを・つなぐ,2018年01月15日,https://oncolo.jp/news/180115y02
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12M 1/42
A61N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の体内の腫瘍を処置し、対象の体内の細胞膜を越えた物質の送達を促進するための装置であって、
50~500kHzの
細胞透過性を誘導するための第1の周波数及び50~500kHzの
細胞傷害性を誘導するための第2の周波数で交流電界を発生させることができ、制御入力を有するAC電圧ジェネレーターであって、第2の周波数は第1の周波数と異なり、制御入力が第1の状態にあるとき第1の周波数で交流電界を出力し、制御入力が第2の状態にあるとき第2の周波数で交流電界を出力するように構成されるAC電圧ジェネレーター;及び
(a) AC電圧ジェネレーターが第2の周波数で交流電界を出力するように制御入力を第2の状態に置き、(b)交流電界を第1の周波数に切り替える要求を受け取り、(c)要求を受け取り次第、AC電圧ジェネレーターがある時間区間の間、第1の周波数で交流電界を出力するように、制御入力を第1の状態に置き、及び(d)時間区間が経過した後、AC電圧ジェネレーターが第2の周波数で交流電界を出力するように、制御入力を第2の状態に置くようにプログラムされるコントローラー、
並びに、
対象の体への貼付のために構成された電極のセット;及び
AC電圧ジェネレーターの出力を電極のセットに接続するワイヤリング
を含み、前記時間区間が少なくとも12時間である、装置。
【請求項2】
第1の周波数が250kHz~350kHzであり、第2の周波数が150kHz~250kHzである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1の周波数が125kHz~175kHzであり、第2の周波数が75kHz~125kHzである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第1の周波数が75kHz~175kHzであり、第2の周波数が100kHz~300kHzである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第1の周波数が50~190kHzである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第2の周波数が210~400kHzである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
交流電界が少なくとも1V/cm RMSの電界強度を有する、又は任意選択により交流電界が1~4V/cm RMSの電界強度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
細胞ががん細胞、任意選択により神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞又は乳房腺癌細胞である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
細胞が細菌であり、物質が抗生物質を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
コントローラーが、要求の受け取り後に、制御入力を第1の状態と第2の状態の間を往復させるように更にプログラムされる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
AC電圧ジェネレーターが50~500kHzの間の少なくとも1つの追加の周波数で交流電界を発生させることができ、制御入力が少なくとも1つの追加の状態にあるとき、少なくとも1つの追加の周波数を出力するように構成され、
コントローラーが、制御入力に、要求の受け取り前に第2の状態及び少なくとも1つの追加の状態を周期的に繰り返させるように、並びに、制御入力に、時間区間が経過した後に、第2の状態及び少なくとも1つの追加の状態を周期的に繰り返させるようにプログラムされる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
ユーザーインターフェースを更に含み、要求がユーザーインターフェースを通して受け取られる、又は、要求がRFを介して受け入れられる、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
物質が、少なくとも1.2kDaの分子量を有する、任意選択で少なくとも4kDaの分子量を有する、任意選択で少なくとも20kDaの分子量を有する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許仮出願第62/693,811号(2018年7月3日に出願される)、第62/728,255号(2018年9月7日に出願される)及び第62/795,136号(2019年1月22日に出願される)の権益を主張し、それぞれは参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
交流電界を使用した神経膠芽腫(GBM)の処置は、抗がん処置のための追加のモダリティー(外科化学放射線療法及び化学療法後の)になっている、新規の検証された療法である。中間周波数交流電界(100~500kHz)が、詳細に研究されている。最近、TTフィールドが、維持テモゾロマイド化学療法下の神経膠芽腫患者の中央生存期間を(5カ月)延長することが示されている。腫瘍の処置との関連で、これらの周波数の交流電界は、「腫瘍治療電界」又は「TTフィールド」としばしば呼ばれる。
【0003】
TTフィールドの機構に関して多くの仮説が存在するが、TTフィールドによる抗がん作用の最も広く提案されている(「標準の」)機構は、チューブリンサブユニットが内因性の双極子モーメントを有するという特性に重点を置く。外来性の200kHzのTTフィールドを課すことによって微小管構造を交流電界系に沿って整列させることによって、紡錘体を支える細胞骨格への干渉を通して活発に分裂する細胞の機能を破壊する。そのようなストレスは、障害性の細胞増殖を最終的に促進する。概念実証実験及び関連する技術開発が過去10年にわたって起こり、食品医薬品局(FDA)による再発性の新規診断神経膠芽腫の処置のための市販の臨床用TTフィールド装置(Optune(登録商標)、Novocure社)の承認に至った。
【0004】
過去2、3年にわたって、作用機構についての追加の詳細が報告された。例えば、TTフィールドは、セプチン(細胞分裂の間に紡錘体をアンカーする役割を担う細胞内タンパク質)の局在化を破壊し、それによって有糸分裂を混乱させることが示されている。一部のチームは、TTフィールドと一緒の化学療法又は放射線療法によるDNA傷害の延長を報告しているが、他は、ミトコンドリアマトリックスの腫脹を通したミトコンドリア機能への影響を示している。他のチームは、GBM患者において化学療法(例えば、テモゾロマイド)とTTフィールドの組合せを調査した。組合せ介入のそのような研究は、神経膠芽腫に対する他の有望な効果を暴露した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7,565,205号
【文献】米国特許第6,868,289号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、細胞の細胞膜を越えて物質を送達するための第1の方法に関する。第1の方法は、ある時間期間の間、交流電界を細胞に印加する工程であって、交流電界の印加は細胞膜の透過性を増加させる工程;及び物質を細胞の付近に導入する工程を含み、細胞膜の透過性の増加は物質が細胞膜を通過することを可能にする。
【0007】
第1の方法の一部の場合には、細胞はがん細胞である。第1の方法の一部の場合には、細胞は神経膠芽腫細胞である。第1の方法の一部の場合には、交流電界は、約200kHzの周波数で印加される。第1の方法の一部の場合には、交流電界は、50~190kHzの周波数で印加される。第1の方法の一部の場合には、交流電界は、210~400kHzの周波数で印加される。第1の方法の一部の場合には、交流電界は、少なくとも1V/cmの電界強度を有する。
【0008】
第1の方法の一部の場合には、生きている対象の体に細胞が置かれ、電界を対象の体に印加することによって交流電界が細胞に印加され、導入する工程は対象に物質を投与することを含む。これらの場合では、細胞は、がん細胞であってよい。これらの場合では、細胞は、神経膠芽腫細胞であってよい。これらの場合では、交流電界は、50~190kHzの周波数を有することができる。これらの場合では、交流電界は、210~400kHzの周波数を有することができる。これらの場合では、交流電界は、少なくとも1V/cm RMSの電界強度を有することができる。これらの場合では、交流電界は、1~4V/cm RMSの電界強度を有することができる。これらの場合では、物質を導入する工程は所与の時間に始まることができ、交流電界を印加する工程は所与の時間の少なくとも12時間後に終了する。これらの場合では、交流電界を印加する工程は、所与の時間の少なくとも1時間前に開始することができる。これらの場合では、物質は、少なくとも1.2kDaの分子量を有することができる。これらの場合では、物質は、少なくとも4kDaの分子量を有することができる。これらの場合では、物質は、少なくとも20kDaの分子量を有することができる。これらの場合では、物質は、物質が細胞膜を通過することを通常阻止する、少なくとも1つの特徴を有することができる。これらの場合では、細胞は、物質を使用した処置に生来抵抗性であるがん細胞であってよい。これらの場合では、細胞は細菌を含むことができ、物質は抗生物質を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、がん細胞を攻撃する第2の方法に関する。第2の方法は、第1の時間期間の間、第1の周波数の第1の交流電界をがん細胞に印加する工程であって、第1の時間期間の間の第1の周波数の第1の交流電界のがん細胞への印加はがん細胞の細胞膜の透過性を増加させる工程;物質をがん細胞に導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加は物質が細胞膜を通過することを可能にする工程;及び第2の時間期間の間、第2の周波数の第2の交流電界をがん細胞に印加する工程であって、第2の周波数は第1の周波数と異なり、第2の周波数の第2の交流電界はがん細胞の生存度を低減する工程を含む。
【0010】
第2の方法の一部の場合には、がん細胞は神経膠芽腫細胞を含み、第1の周波数は250kHz~350kHzであり、第2の周波数は150kHz~250kHzである。第2の方法の一部の場合には、がん細胞は子宮肉腫細胞を含み、第1の周波数は125kHz~175kHzであり、第2の周波数は75kHz~125kHzである。第2の方法の一部の場合には、がん細胞は乳房腺癌細胞を含み、第1の周波数は75kHz~175kHzであり、第2の周波数は100kHz~300kHzである。第2の方法の一部の場合には、物質を導入する工程は所与の時間に始まり、第1の交流電界を印加する工程は、所与の時間の少なくとも12時間後に終了する。第2の方法の一部の場合には、第1の交流電界を印加する工程は、所与の時間の少なくとも1時間前に開始する。第2の方法の一部の場合には、第2の時間期間は、第2の周波数の第2の交流電界ががん細胞に印加される複数の不連続の時間区間を含み、ここで、複数の不連続の時間区間は、合計で少なくとも1週間に達する。
【0011】
第2の方法の一部の場合には、がん細胞は生きている対象の体内に置かれ、第1の交流電界は、第1の交流電界を対象の体に印加されることによってがん細胞に印加され、第2の交流電界は、第2の交流電界を対象の体に印加することによってがん細胞に印加され、導入する工程は対象に物質を投与することを含む。第2の方法の一部の場合には、第1の交流電界は、少なくとも1V/cm RMSの電界強度を有する。第2の方法の一部の場合には、物質は、少なくとも1.2kDaの分子量を有する。第2の方法の一部の場合には、物質は、少なくとも4kDaの分子量を有する。第2の方法の一部の場合には、物質は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0012】
本発明の別の態様は、対象の体内の腫瘍を処置し、対象の体内の細胞膜を越えて物質を送達する第3の方法に関する。第3の方法は、第1の時間期間の間、第1の周波数の第1の交流電界を対象の体に印加する工程であって、第1の時間期間の間の第1の周波数の第1の交流電界の対象の体への印加は対象の体の細胞膜の透過性を増加させる工程;対象に物質を投与する工程であって、細胞膜の透過性の増加は物質が細胞膜を通過することを可能にする工程;及び少なくとも1週間の長さである第2の時間期間の間、第2の周波数の第2の交流電界を対象の体に印加する工程であって、第2の周波数は第1の周波数と異なり、第2の周波数の第2の交流電界は腫瘍の増殖を阻害する工程を含む。
【0013】
第3の方法の一部の場合には、腫瘍は、対象の脳における神経膠芽腫を含み、第1の周波数は250kHz~350kHzであり、第2の周波数は150kHz~250kHzである。第3の方法の一部の場合には、第2の時間期間は、第2の周波数の第2の交流電界が対象の体に印加される複数の不連続の時間区間を含み、ここで、複数の不連続の時間区間は、合計で少なくとも1週間に達する。第3の方法の一部の場合には、物質を投与する工程は所与の時間に始まり、第1の交流電界を印加する工程は、所与の時間の少なくとも12時間後に終了する。第3の方法の一部の場合には、第1の交流電界を印加する工程は、所与の時間の少なくとも1時間前に開始する。
【0014】
第3の方法の一部の場合には、物質は、少なくとも1.2kDaの分子量を有する。第3の方法の一部の場合には、物質は、少なくとも4kDaの分子量を有する。第3の方法の一部の場合には、物質は、少なくとも20kDaの分子量を有する。
【0015】
本発明の別の態様は、対象の体内の腫瘍を処置し、対象の体内の細胞膜を越えた物質の送達を促進するための第1の装置に関する。第1の装置は、50~500kHzの第1の周波数及び50~500kHzの第2の周波数で作動できるAC電圧ジェネレーターを含む。ここで、第2の周波数は第1の周波数と異なる。AC電圧ジェネレーターは、制御入力を有し、AC電圧ジェネレーターは、制御入力が第1の状態にあるとき第1の周波数を出力し、制御入力が第2の状態にあるとき第2の周波数を出力するように構成される。第1の装置は、(a) AC電圧ジェネレーターが第2の周波数を出力するように制御入力を第2の状態に置き、(b)第1の周波数に切り替える要求を受け取り、(c)要求を受け取り次第、AC電圧ジェネレーターがある時間区間の間、第1の周波数を出力するように、制御入力を第1の状態に置き、及び(d)時間区間が経過した後、AC電圧ジェネレーターが第2の周波数を出力するように、制御入力を第2の状態に置くようにプログラムされるコントローラーも含む。
【0016】
第1の装置の一部の実施形態は、対象の体への貼付のために構成された電極のセット;及びAC電圧ジェネレーターの出力を電極のセットに接続するワイヤリングを更に含む。
【0017】
第1の装置の一部の実施形態では、第1の周波数は250kHz~350kHzであり、第2の周波数は150kHz~250kHzである。第1の装置の一部の実施形態では、第1の周波数は125kHz~175kHzであり、第2の周波数は75kHz~125kHzである。第1の装置の一部の実施形態では、第1の周波数は75kHz~175kHzであり、第2の周波数は100kHz~300kHzである。第1の装置の一部の実施形態では、時間区間は少なくとも12時間である。第1の装置の一部の実施形態では、時間区間は12~72時間である。第1の装置の一部の実施形態では、コントローラーは、要求の受け取り後に、制御入力を第1の状態と第2の状態の間を往復させるように更にプログラムされる。
【0018】
第1の装置の一部の実施形態では、AC電圧ジェネレーターは50~500kHzの間の少なくとも1つの追加の周波数で作動することができ、AC電圧ジェネレーターは、制御入力が少なくとも1つの追加の状態にあるとき、少なくとも1つの追加の周波数を出力するように構成され、コントローラーは、制御入力に、要求の受け取り前に第2の状態及び少なくとも1つの追加の状態を周期的に繰り返させるように、並びに、制御入力に、時間区間が経過した後に、第2の状態及び少なくとも1つの追加の状態を周期的に繰り返させるようにプログラムされる。
【0019】
第1の装置の一部の実施形態はユーザーインターフェースを更に含み、要求はユーザーインターフェースを通して受け取られる。第1の装置の一部の実施形態では、要求はRFを通して受け取られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】細胞膜の完全性、したがって透過性をモジュレートすることに対するTTフィールドの代替効果を示す略図である。
【
図2A】TTフィールド対無TTフィールド条件における時間の関数としての、生物発光画像化スキャンからのU87-MG/eGFP-fLuc細胞の生物発光に対するTTフィールドの例示的な効果を表す図である。
【
図2B】TTフィールド対無TTフィールド条件における時間の関数としての、U87-MG/eGFP-fLuc細胞のeGFP蛍光に対するTTフィールドの例示的な効果を表す図である。
【
図2C】TTフィールド曝露の長さの関数としての、U87-MG/eGFP-fLuc細胞のための、eGFP蛍光(eGFP-FL)に対するfLuc生物発光(fLuc-BLI)の比に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図2D】TTフィールド曝露時間の関数としての、fLuc-BLI/eGFP-FL比に対するTTフィールド曝露対非曝露の効果を表す図である。
【
図3A】無TTフィールドとTTフィールド(200kHz)の間の、U87-MG/eGFP-fLuc細胞におけるエチジウムDの時間依存的取り込みに対するTTフィールドの例示的な効果を表す図である。
【
図3B】4kDaデキストラン-FITCのための、デキストラン-FITC取り込みの時間経過に及ぼすTTフィールド対無TTフィールド条件の例示的な影響を表す図である。
【
図3C】20kDaデキストラン-FITCのための、デキストラン-FITC取り込みの時間経過に及ぼすTTフィールド対無TTフィールド条件の例示的な影響を表す図である。
【
図3D】50kDaデキストラン-FITCのための、デキストラン-FITC取り込みの時間経過に及ぼすTTフィールド対無TTフィールド条件の例示的な影響を表す図である。
【
図4A】6時間及び24時間後のTTフィールド対無TTフィールド曝露U87-MG細胞のための、代表的プロトポルフィリンIX(PpIX)蛍光で示される、5-アミノレブリン酸(5-ALA)取り込みに対するTTフィールド(200kHz)の例示的な効果を表す図である。
【
図4B】TTフィールドに曝露させた共培養プラットホームにおける神経膠芽腫細胞対線維芽細胞においてPpIX蛍光がどのように経時的に変化したかを表す図である。
【
図5】TTフィールドに3日間曝露させた及び曝露させなかったU87-MG/eGFP-fLuc細胞における、原形質膜の孔のSEM比較からの孔の数及びサイズの定量化を提供する図である。
【
図6】TTフィールドに3日間曝露させた及び曝露させなかった正常なヒトPCS-201細胞における、原形質膜の孔のSEM比較からの孔の数及びサイズの定量化を提供する図である。
【
図7A】U87-MG細胞におけるD-ルシフェリン、5-ALA及びデキストラン-FITC(4kDa)それぞれの取り込みを交流電界がどのように可逆的に増加させるかを示す実験の結果を表す図である。
【
図7B】U87-MG細胞におけるD-ルシフェリン、5-ALA及びデキストラン-FITC(4kDa)それぞれの取り込みを交流電界がどのように可逆的に増加させるかを示す実験の結果を表す図である。
【
図7C】U87-MG細胞におけるD-ルシフェリン、5-ALA及びデキストラン-FITC(4kDa)それぞれの取り込みを交流電界がどのように可逆的に増加させるかを示す実験の結果を表す図である。
【
図7D】U87-MG細胞へのTTフィールドの印加によって誘導される透過性のタイミング特性を示す実験の結果を表す図である。
【
図8A】7-AADに対するMDA-MB-435細胞膜の透過性に交流電界がどのように影響を及ぼすかを示す実験の結果を表す図である。
【
図8B】ドキソルビシンに対するMDA-MB-435及びMDA-MB-435ドキシサイクリン抵抗性細胞膜の透過性に交流電界がどのように影響を及ぼすかを示す実験の結果を表す図である。
【
図8C】ミトキサントロンに対するMCF-7及びMCF-7ミトキサントロン抵抗性細胞膜の透過性に交流電界がどのように影響を及ぼすかを示す実験の結果を表す図である。
【
図9A】物質及び対応する細胞型の7つの異なる組合せへの感受性に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図9B】物質及び対応する細胞型の7つの異なる組合せへの感受性に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図9C】物質及び対応する細胞型の7つの異なる組合せへの感受性に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図9D】物質及び対応する細胞型の7つの異なる組合せへの感受性に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図9E】物質及び対応する細胞型の7つの異なる組合せへの感受性に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図9F】物質及び対応する細胞型の7つの異なる組合せへの感受性に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図9G】物質及び対応する細胞型の7つの異なる組合せへの感受性に対するTTフィールドの効果を表す図である。
【
図10A】交流電界の印加とがん細胞の付近への物質の導入の間の好適なタイミング関係を表す図である。
【
図10B】交流電界の印加とがん細胞の付近への物質の導入の間の好適なタイミング関係を表す図である。
【
図11A】U-87 MG細胞への最高レベルの細胞傷害性を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す図である。
【
図11B】U-87 MG細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す図である。
【
図12A】MES-SA細胞への最高レベルの細胞傷害性を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す図である。
【
図12B】MES-SA細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す図である。
【
図12C】ドキソルビシンに対するMES-SA細胞の細胞膜の透過性に150kHzの交流電界がどのように影響を及ぼすかを判定するための実験の結果を表す図である。
【
図13A】MCF-7細胞への最高レベルの細胞傷害性を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す図である。
【
図13B】MCF-7細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す図である。
【
図14】GBM39/Luc細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す図である。
【
図15】細胞透過性を誘導するための第1の周波数及び細胞傷害性を誘導するための第2の周波数を生成する二重周波数装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
付随する図面を参照して、様々な実施形態が下で詳細に記載され、ここで、類似の参照数字は類似の構成要素を表す。
【0022】
本明細書で使用される場合、細胞の「生存度を低減する」という用語は、細胞の成長、増殖若しくは生存を低減するか、又は細胞の細胞傷害性を増加させることを指す。
【0023】
本出願は、細胞膜によって通常ブロックされる物質が細胞膜を通過できるように、又は、細胞膜によって通常阻止される物質が細胞膜をより容易に通過できるように、交流電界を使用してがん細胞の形質細胞膜の透過性を一時的に増加させるための新規アプローチを記載する。本明細書に記載される例のいくつかでは、このアプローチは、神経膠芽腫細胞膜によって通常阻止される物質が神経膠芽腫細胞膜をより容易に通過できるように、交流電界を使用して神経膠芽腫形質細胞膜の透過性を一時的に増加させるために使用される。
【0024】
本発明者は、TTフィールド処置が、新規抗がん化合物Withaferin Aと一緒に、ヒト神経膠芽腫細胞の増殖を相乗的に阻害したことを実証した。本発明者は、そのような相乗効果は、
図1に図式的に表されるように、腫瘍細胞膜透過性を一時的に増加させるTTフィールドの能力を通した、神経膠芽腫細胞へのWithaferin Aのアクセス性の増加によるものと仮定した。この図面では、5-ALA=5-アミノレブリン酸;エチジウムD=臭化エチジウム; FITC=フルオレセインイソチオシアネート。
【0025】
この仮説を検証する研究を、次に実行した。詳細には、ルシフェラーゼ(ウミシイタケ及びホタル)を発現するように改変されたヒト神経膠芽腫細胞において、TTフィールド曝露がより大きな生物発光を誘導すること、及びこの誘導が、原形質膜を通過する基質(それぞれ、D-ルシフェリン及びセレンテラジン)の透過の増加によるものであることを示す証拠が見出された。TTフィールド曝露によって引き起こされる膜透過性の増加は、デキストラン-FITC及びエチジウムD等の他の膜貫通性試薬でも実証された。
【0026】
TTフィールドを使用して神経膠芽腫細胞において膜透過性を増加させることは、5-アミノレブリン酸(5-ALA)を使用しても示された。5-ALAは、全ての哺乳動物細胞において蛍光性プロトポルフィリンIX(PpIX)に変換されるヘモグロビン前駆体である。しかし、グレードの高い神経膠腫を含む多くの悪性細胞は上昇したヘモグロビン生合成を有し、それは形質転換細胞及び組織の中の(非がん性細胞と比較した)PpIXの蓄積の増強に反映される。この特性は、腫瘍細胞の蛍光性バイオマーカーとして5-ALA取り込み(結果として、PpIXへのその酵素的変換)を使用するための、多くの医学的調査を促した。しかし、現在の技術レベルでは、腫瘍と非腫瘍組織の間の正確な細胞限界を手術中に識別することは困難かもしれない。本明細書に記載される実験は、TTフィールドがPpIX蛍光(5-ALA曝露及び取り込みによってもたらされる)のための腫瘍対正常細胞比を有意に高め、このように、手術中の状況で腫瘍限界をより正確に示すために使用できることを示す。
【0027】
走査電子顕微鏡法(SEM)データを使用した追実験は、TTフィールド曝露によって引き起こされた神経膠芽腫細胞膜における孔の数及びサイズの増加、並びにTTフィールドが印加されるときに神経膠芽腫細胞膜の形態が不安定化することを実証する。研究した全てのモダリティー(生物発光、蛍光及びSEM)を通して、GBM細胞膜透過性に対するTTフィールドの効果は、TTフィールド曝露の停止の後に可逆的であることが見出された。
【0028】
結果
TTフィールドの誘導は、ルシフェラーゼを発現する神経膠芽腫における生物発光(BLI)を増加させる。
U87-MG/eGFP-fLuc細胞をThermanoxカバーガラスの上に播種し、沈殿及び増殖させ、その後TTフィールド下又は無TTフィールド下に置いた。この実験では、TTフィールド(4V/cm、200kHz、0.5~24時間)の使用は、非曝露条件と比較してU87-MG/eGFP-fLuc細胞の生物発光強度(BLI)を有意に増加させた。BLIのこの増加は、TTフィールドの開始の30分後という早い時期に起こり、24時間のTTフィールド曝露まで継続した。ROI定量化を実行したとき、TTフィールド曝露試料のBLI強度の時間経過は、TTフィールド非曝露試料と比較して有意に上昇した(p<0.0001、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。これらの実験のBLI結果の時間的定量化を表すデータを、
図2Aに要約する。この理論によって縛られるとは限らないが、生物発光の上昇はホタルルシフェラーゼ活性に対するTTフィールドの直接効果によるものではなかったと考えられ、その理由は、200kHzのTTフィールドへの精製ホタルルシフェラーゼの曝露がTTフィールドの開始の60分後に酵素活性の1000倍を超える減少につながったからである。
【0029】
図2Bは、TTフィールド曝露対TTフィールド非曝露U87-MG/eGFP-fLucのための代表的な像(示さず)の時間経過から観察された、U87-MG/eGFP-fLuc細胞におけるeGFP蛍光に対するTTフィールドの効果を表す。TTフィールドの存在は、実験の経過中、eGFP蛍光(eGFP-FL)を有意に増加させなかった。BLIのeGFP-FLに対する比をTTフィールド試料と無TTフィールド試料の間で比較したとき、
図2C、
図2Dに表すように、TTフィールド試料についてTTフィールドインキュベーション時間に関して有意に増加した比があった(p<0.0001、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。より具体的には、
図2Cは、TTフィールド曝露の長さの関数としての、U87-MG/eGFP-fLuc細胞のための、eGFP蛍光(eGFP-FL)に対するfLuc生物発光(fLuc-BLI)の比に対するTTフィールドの効果を表し、
図2Dは、TTフィールド曝露時間(時間)の関数としての、fLuc-BLI/eGFP-FL比に対するTTフィールド曝露対非曝露の効果を表す。TTフィールドは、無TTフィールドと比較して、精製ホタルルシフェラーゼの活性を有意に低下させた(p<0.01、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。
【0030】
別の患者由来の神経膠芽腫細胞系GBM2/GFP-fLucへのTTフィールドの経時的印加も、無TTフィールド対照と比較したとき、TTフィールド曝露GBM2/GFP-fLuc細胞において生物発光の時間依存的増加を誘導した(p<0.0001、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。ウミシイタケルシフェラーゼ-赤色蛍光性タンパク質融合タンパク質を発現するように遺伝子改変されたマウスの星状細胞腫細胞系(KR158B)において、この同じ効果が観察された(p<0.0001、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。ウミシイタケルシフェラーゼ活性は、ATP及びマグネシウムに依存性でない(ホタルルシフェラーゼと対照的に)。したがって、TTフィールドによる生物発光の誘導は、ATPの内在性プールにおける変化によるものでなかったと考えられている。
【0031】
膜結合試薬の取り込みに対するTTフィールドの効果。
TTフィールドの賦課が細胞膜特性に、したがって膜透過性に影響を及ぼすかどうか試験するために、細胞膜に結合する蛍光タグ付きの試薬の挙動に対するTTフィールドの効果を判定した。最初に、アネキシン-V-APCのU87-MG/eGFP-fLuc細胞の膜への結合に及ぼすTTフィールドの影響を測定した。アネキシン-V-APCの結合は、膜の波打ち運動によって特徴付けられる初期アポトーシスのサインである。U87-MG/eGFP-fLuc細胞へのアネキシン-V-APC結合の可視性を調査するために、アポトーシスのための陽性対照(U87-MG/eGFP-fLuc細胞への21μM Withaferin Aの添加)を使用し、そのような結合はTTフィールド非曝露試料での蛍光顕微鏡検査法を通して可視化できることを示した。しかし、TTフィールドをU87-MG/eGFP-fLuc細胞に印加されたとき、アネキシン-V-APC結合はTTフィールドへの曝露のいかなる時点でも観察されなかった。したがって、TTフィールドはU87-MG細胞においていかなる有意な程度のアポトーシスも誘導しなかったようである。
【0032】
注目すべきことに、
図3Aに表すように、エチジウムD取り込みは、U87-MG/eGFP-fLuc細胞を200kHzのTTフィールドに曝露させたときに有意に増加した(p<0.0001、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。エチジウムDは、原形質膜及び核膜を透過してゲノムDNAに割り込む。したがって、これらの知見は、TTフィールドがU87-MG/eGFP-fLuc細胞の原形質膜の透過性に対して効果を有することができることを示唆する。
【0033】
TTフィールドによる膜透過性の増強の別の結果は、細胞膜へのデキストラン-FITC結合の変化である。デキストラン-FITCは、原形質膜に結合して割り込むことが知られている。U87-MG細胞を200kHzのTTフィールドに1時間曝露させたとき、
図3B及び
図3Cに表すように、無TTフィールド曝露と比較して分子量4kDa及び20kDaのデキストラン-FITCのかなりの取り込みがあった。しかし、
図3Dに表すように、50kDa Dextran-FITCに関しては取り込みに有意な差はなかった。より具体的には、デキストラン-FITCの結合は、TTフィールドの存在下で0.5~24時間の曝露の時間枠にわたって調べ、TTフィールド非曝露試料、TTフィールド曝露の下での20kDaデキストラン-FITCの取り込みにおける有意な増加(p<0.01、TTフィールド対無TTフィールド)及びTTフィールド曝露の下での50kDaデキストラン-FITCの取り込みにおける有意な差の欠落(p=0.26、非有意、TTフィールド対無TTフィールド)と比較して、4kDaデキストラン-FITCの取り込みにおける有意な増加が見出された(p<0.0001、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。これらのデータは、この実験においてTTフィールド曝露の下で原形質膜に結合し、入り込んだデキストラン-FITCの最大サイズが約20~50kDaであったことを示唆する。この段落に記載される全ての統計的比較では、各データポイントはn=3実験を代表する。
図3A~
図3Dでは、APC=アロフィコシアニン;エチジウムD=臭化エチジウム;及びFITC=フルオレセインイソチオシアネート。
【0034】
5アミノレブリン(5-ALA)酸取り込みに対するTTフィールドの効果:単一のU87-MG培養。
神経膠芽腫細胞における5-ALAの取り込みに対するTTフィールドの効果(PpIX蓄積及びその結果として生じた蛍光によって測定した)を判定するために、実験を実行した。本5-ALAバイオアッセイを使用して腫瘍と正常細胞の間の限界を識別することが困難であるので、この問題に対処するためにPpIX蛍光の測定を使用した。細胞膜を通した、及び神経膠芽腫細胞への5-ALAの透過をTTフィールド曝露によって増加させることができるか判定するために、調査を実行した。U87-MG細胞を各々6~24時間TTフィールドに曝露させたか曝露させなかった。
図4Aに要約される結果は、以下の通りだった:TTフィールド曝露は、6時間のTTフィールド曝露という早い時期に5-ALAのU87-MG/eGFP-fLuc細胞への取り込みの有意な増加をもたらし(p=0.047、スチューデントのt検定、TTフィールド対無TTフィールド)、この増加は、24時間の長期TTフィールド曝露によって維持された(p=0.011)。
【0035】
図4Aに表すデータをもたらすために、曝露の6及び24時間の後に、TTフィールド非曝露対TTフィールド曝露U87-MG細胞についてプロトポルフィリンIX(PpIX)蛍光パネルを得た。それらの画像の定量化は、6時間(p=0.047)及び24時間(p=0.01)の両方の時点で、無TTフィールドと比較してTTフィールド曝露細胞におけるPpIXシグナルの有意な増加を示した。各時点でn=3実験のためにスチューデントのt検定によって実行した無TTフィールド対TTフィールド試料の間の全てのモノバリアント統計的比較。
【0036】
5アミノレブリン酸取り込みに対するTTフィールドの効果:U87-MG GBMとPCS -201線維芽細胞の共培養。
患者における神経膠芽腫切除の間、神経外科医が腫瘍と周囲の正常な脳組織の間を正確に示すのを助けるために、5-ALAが使用される。同様に、神経膠芽腫と正常細胞の間の5-ALA取り込みの差を識別するために、U87-MG細胞をPCS -201線維芽細胞の床の中央に播種し、TTフィールドに曝露させるか又はTTフィールドに曝露させない共培養を開発した。共培養セットアップにおいて、蛍光及び明視野顕微鏡写真は、個別の神経膠芽腫対線維芽細胞領域の存在を確認した。共培養をヘマトキシリン-エオジン(H&E)で染色したとき、顕微鏡写真は、TTフィールド曝露試料について線維芽細胞周辺に浸潤するGBM細胞の数の低減を明らかにした。
【0037】
詳細には、TTフィールド曝露無しの場合、GBM細胞は、以前に報告されたような接着性の神経球の多くのポケットを形成した。蛍光像は、TTフィールドに6時間曝露させた共培養プラットホームにおいて、線維芽細胞に対して神経膠芽腫細胞におけるPpIX蛍光の増加を示した。
図4Bに要約される結果は、以下の通りだった: PpIX蛍光は経時的に蓄積したが、蛍光強度の増加速度は、TTフィールド非曝露共培養と比較してTTフィールド曝露共培養で有意に増強された(p<0.001、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。
図4Bに表すデータをもたらすために、無TTフィールド及びTTフィールドのための5-ALA取り込み(及び、以降のPpIX蛍光、Ex=558nm、Em=583nm)の蛍光性パネルを得た。曝露時間は、2、6及び24時間である。TTフィールド曝露対非曝露条件の下の神経膠芽腫-線維芽細胞共培養プラットホームにおける、PpIX蓄積(したがって、光子/sとして表される蛍光フラックスの蓄積)の時間経過の定量化(p<0.001)。統計分析は、無TTフィールド対TTフィールド条件の二元配置ANOVA、及び各時点でn=3実験からなった。
【0038】
別個の実験セットでは、24時間のTTフィールド印加によって、周囲のPCS -201線維芽細胞に対するU87-MG神経膠芽腫細胞におけるPpIX蛍光強度の比は、無TTフィールド条件の下の共培養細胞の蛍光強度比と比較して、有意に増加した(p=0.043、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)。
【0039】
走査電子顕微鏡写真(SEM)は、TTフィールドがU87-MG/eGFP-fLuc細胞の膜形態を変更することを示す。
TTフィールドに3日間曝露させなかったかTTフィールドに曝露させた低密度(5,000細胞/カバーグラス)U87-MG/eGFP-fLuc細胞のSEM画像を、2000×、20,000×及び60,000×の倍率で得た。これらのSEM像を精査することによって得られたデータを、
図5に要約する。TTフィールド非曝露細胞(23.9±11.0)と比較してTTフィールド曝露細胞(53.5±19.1)のROIの中に、サイズが51.8nm
2(60,000×倍率で9ピクセル
2と同等)より大きな孔の有意に増加した数があった(p=0.0002、一変量マン-ホイットニー検定法)。TTフィールド非曝露細胞(129.8±31.9nm
2)と比較してTTフィールド曝露細胞(240.6±91.7nm
2)において、ROIの中の孔の平均サイズも有意により大きかった(p=0.0005(一変量マン-ホイットニー検定法))。
図5に表すデータ得るために、500nm半径の目的の円形領域の範囲内で、TTフィールド非曝露及び曝露細胞の間の、孔の数及びサイズの定量化及び比較を行った。最小の孔サイズカットオフは、20kDa及び50kDaデキストラン-FITCのそれぞれ3.3及び5.0nmストークス半径に基づいた。各条件につき3件の実験からのカバーグラスを使用し、各カバーグラスにつき少なくとも5細胞を、二重盲検方式で孔の数及びサイズについて分析した。
【0040】
高密度で播種したU87-MG細胞の原形質膜に対するTTフィールドへの24時間曝露の効果も、視覚的に観察された。無TTフィールド試料については、細胞表面は、波状膜に類似し、細胞膜に連続している、高密度にマット化され、伸長し、平らになった膜拡張物に包含されているようだった。対照的に、TTフィールドへの24時間の曝露の後、高密度にマット化された伸長構造は、短く、ふくらんでいる気泡様の構造と置き換えられていた。
【0041】
比較のために、正常なヒトPCS-201細胞のSEM像も得て、分析した。低密度(13mmカバーガラスにつき5,000細胞)で、PCS-201細胞を播種した。細胞は、標準の組織培養条件(37℃、95%O
2、5%CO
2)の下で増殖させた。TTフィールド非曝露細胞は、研究期間中、これらの条件の下に置いた。他の細胞は、TTフィールドに72時間曝露させた。72時間後に、SEM像を、2000×、20,000×及び60,000×倍率で得た。TTフィールド非曝露細胞と曝露細胞の間の、500nm半径の目的の円形領域の範囲内の、面積が≧51.8nm
2の孔(4nm半径の円、又は60,000×倍率の像で9ピクセル
2と同等)の数及びサイズの定量化及び比較。最小の孔サイズカットオフは、20kDa及び50kDaデキストラン-FITCのそれぞれ3.3nm及び5.0nmストークス半径に基づいた。
図6に表される結果は、以下の通りだった: TTフィールド非曝露と曝露させた正常なヒトPCS-201細胞の間で、孔の数又はサイズにおける有意な差はなかった(ウィルコクソン順位和分析)。各条件につき3件の実験からのカバーグラスを使用し、各カバーグラスにつき少なくとも5細胞を、二重盲検方式で孔の数及びサイズについて分析した。
【0042】
PCS-201細胞の原形質膜に対するTTフィールドへの24時間曝露の効果も、視覚的に観察された。U87-MG細胞のための上記の状況と異なり、TTフィールドはPCS-201細胞の膜形態を変更しないようであった。
【0043】
膜透過性に対するTTフィールドの効果は可逆的である。
がん細胞に対するTTフィールドの効果の可逆性を調査するために、U87-MG/eGFP-fLuc細胞を3つの条件に付した:(1)無TTフィールド曝露、標準の細胞培養条件(37℃、95%O
2、5%CO
2)、(2) 24時間のTTフィールド曝露及び(3) 24時間のTTフィールド曝露、及び続く24時間の無TTフィールド曝露。BLI、PpIX蛍光(5-ALA生成物)及びデキストラン-FITC(4kDa)蛍光の読み出しを取得した。全ての実験条件は、3反復で実行した。
図7Aは、BLIのデータを要約する:24時間のTTフィールド(中間バー)の存在は、無TTフィールド曝露(左のバー)と比較してBLIフラックスを有意に増加させた(p<0.0005、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)が、この増加は、細胞を無TTフィールド条件に24時間再導入したとき(右のバー)、有意に減弱された(二元配置ANOVA、p<0.005、24時間のTTフィールド対24時間のTTフィールドと続く24時間の無TTフィールド)。
図7Bは、可逆的読み出しの類似パターンがPpIX蛍光で起こったことを示す(p<0.0005、二元配置ANOVA、TTフィールド(中間バー)対無TTフィールド(左のバー)、及びp<0.0004、TTフィールド対TTフィールドと続く無TTフィールド(右のバー))。
図7Cは、可逆的読み出しの類似パターンが4kDaデキストラン-FITC蛍光で起こったことを示す(p<0.05、二元配置ANOVA、TTフィールド(中間バー)対無TTフィールド(左のバー);及びp<0.05、TTフィールド対TTフィールドと続く無TTフィールド(右のバー))。各実験セットで、eGFP蛍光は有意に変化しなかった。SEM調査は、孔数(p=0.007、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)及び孔のサイズ(p=0.0007、二元配置ANOVA、TTフィールド対無TTフィールド)の両方におけるTTフィールドによる有意な増加も、24時間の曝露無しの後に可逆的であることを明らかにした。ここで、NS=非有意;BLI=生物発光画像化;eGFP=増強された緑色蛍光タンパク質;fLuc=ホタルルシフェラーゼ;5-ALA=5アミノレブリン酸;FITC=フルオレセインイソチオシアネート;PpIX=プロトポルフィリンIX;及びFL=蛍光。
【0044】
要約すると、交流電界を印加したとき、関連する化合物の取り込みは増加した(交流電界を印加しなかったときと比較して)。これらの図面の各々は、24時間の交流電界の停止の後に取り込みが実質的に低下したことも示す。このことから、交流電界によって誘導された細胞膜の透過性の増加は恒久的な効果でないと、及び透過性は交流電界の停止の後に元通りに低下すると我々は推測することができる。
【0045】
図7Dは、交流電界の停止の後に、透過性がどのくらい速やかに元通りに低下するか試験するための実験の結果を表す。より具体的には、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)は、DNAへの強力な親和性を有する蛍光性化合物である。7-AADは、無傷の細胞膜を通常容易に通過しない、比較的大きな分子(1270.43g/mol、すなわち、1.27kDa)である。
図7Dは、U87-MG細胞へのTTフィールドの印加によって誘導される7-AADへの透過性のタイミング特性を示す。この実験では、18℃の環境温度で24時間、細胞を1.62V/cm RMSの電界強度を有する300kHzの交流電界で処理した。7-AADは、5つの異なる時間で試料に導入した:交流電界の停止の15分前;交流電界の停止の直後;並びに、交流電界の停止の15、30及び60分後。各場合に、7-AADの導入後の30分間、細胞を7-AADとインキュベートし、続いて、異なるタイミングの各々について、蛍光性7-AADの蓄積が増加した細胞の百分率のフローサイトメトリー分析を行った。
図7Dに見られるように、7-AADの蓄積の有意な増加は、交流電界に曝露させつつ7-AADとインキュベートした試料だけで観察された。
【0046】
異なる薬物及び異なるタイプのがん細胞のための追加の結果。
本明細書に記載される方法は、神経膠芽腫の場面に限定されない。反対に、それらは、他のタイプのがん細胞に適用可能である。より具体的には、(a) ある時間期間の間、交流電界を細胞に印加する工程であって、交流電界の印加は細胞膜の透過性を増加させる工程;及び(b)物質を細胞の付近に導入する工程によって、細胞の細胞膜を越えて物質を送達することができる。細胞膜の透過性の増加は、物質が細胞膜を通過することを可能にする。注目すべきことに、本明細書に記載される方法は、他のタイプのがん細胞(例えば、MDA-MB-435及びMCF-7細胞)を限定されずに含む、異なるタイプの細胞(すなわち、神経膠芽腫以外の細胞)の細胞膜を通して(通常、関連する細胞膜を通過しないだろう)大きな分子を送達するために使用することができる。
【0047】
図8Aは、MDA-MB-435ヒト黒色腫細胞系細胞の細胞膜の透過性に交流電界がどのように影響を及ぼすかを判定するために実行した実験の結果を表す。この実験では、18℃の環境温度及び37℃のシャーレ温度で24時間、MDA-MB-435細胞を1.62V/cmの電界強度を有する150kHzの交流電界で処理した。(交流電界によって引き起こされる加熱のために、この例及び他の例におけるシャーレ温度は環境温度より高い)。最初の23.75時間後に、7-AADを培養に加え、15分間インキュベートし、その間交流電界を継続した(24時間を完了するために)。この15分の後に、交流電界の印加を終了し、追加の15分間、細胞を室温でインキュベートした。蛍光性7-AADの蓄積が増加した細胞の百分率を、フローサイトメトリー分析で判定した。交流電界を印加しなかったこと以外は同じ条件に付した対照(バー1)における細胞の5%未満と比較して、細胞の約66%は7-AAD蓄積の増加を示した(
図8Aのバー2)。これらの結果は、交流電界が細胞膜の透過性の非常に有意な増加を引き起こすことを示す。
【0048】
この実験の変形形態では、18℃の環境温度及び37℃のシャーレ温度で24時間、MDA-MB-435ヒト黒色腫細胞系細胞を1.62V/cmの電界強度を有する150kHzの交流電界で処理した。この24時間の後に、交流電界を15分の間オフにし、その後7-AADを加えた。追加の15分間待った後に、蛍光性7-AADの蓄積が増加した細胞の百分率を、フローサイトメトリーで判定した。今回は、細胞のわずか約20%が7-AADの蓄積の増加を示した(
図8Aのバー3)。これらの結果は、交流電界によって誘導される細胞膜の透過性の増加が比較的短寿命であること、並びに交流電界の停止の後に透過性が急速に及び劇的に低下することを示す。
【0049】
図8Bは、ドキソルビシン(543.52g/mol)に対するMDA-MB-435ヒト黒色腫細胞系細胞の細胞膜の透過性に交流電界がどのように影響を及ぼすかを判定するために実行した、別の実験の結果を表す。この実験では、MDA-MB-435細胞の野生型及びドキソルビシン抵抗性バリアントを、1.62V/cmの電界強度を有する150kHzの交流電界で23時間処理した。この23時間の後に、10μMの濃度のドキソルビシンを加えて1時間インキュベートし、その間、交流電界を継続した。ドキソルビシンの細胞内蓄積を次に測定した。ドキソルビシンの細胞内蓄積は、野生型細胞(バー1をバー3と比較する)及びドキソルビシン抵抗性細胞(バー2をバー4と比較する)の両方で増加した。
【0050】
図8Cは、MCF-7ヒト乳房腺癌細胞系細胞及びミトキサントロン(444.481g/mol)を使用した同様の実験の結果を表す。この実験では、MCF-7細胞の野生型及びミトキサントロン抵抗性バリアントを、1.62V/cmの電界強度を有する150kHzの交流電界で23時間処理した。この23時間の後に、2μMの濃度のミトキサントロンを加えて1時間インキュベートし、その間、交流電界を継続した。ミトキサントロンの細胞内蓄積を次に測定した。ミトキサントロンの細胞内蓄積は、野生型細胞(バー1をバー3と比較する)及びミトキサントロン抵抗性細胞(バー2をバー4と比較する)の両方で増加した。
【0051】
図8B及び
図8Cに関連した上記の結果は、交流電界が野生型及び薬剤抵抗性細胞の両方における化学療法分子の細胞内蓄積を向上させること、並びにそれらの細胞がそれらの化学物質に対して多重薬物抵抗性を発達させた後、交流電界はがん細胞における化学療法化学物質の細胞内蓄積を好都合にも回復させることができることを示す。
【0052】
TTフィールドと様々ながん細胞系のための様々な薬物の間に相乗作用が存在するかどうか判定するために、追加の実験を実行し、
図9A~
図9Gは、これらの実験の一部の結果を表す。より具体的には、
図9Aは、TTフィールドを3日間印加することがロムスチンの様々な濃度へのU87-MG/GFP-Luc細胞の感受性をどのように向上させるかを示す(TTフィールドが印加されなかった対照と比較して)。
図9Bは、TTフィールドを3日間印加することがロムスチンの様々な濃度へのpcGBM2/GFPLuc細胞の感受性をどのように向上させるかを示す(TTフィールドが印加されなかった対照と比較して)。
図9Cは、TTフィールドを3日間印加することがロムスチンの様々な濃度へのGBM39細胞の感受性をどのように向上させるかを示す(TTフィールドが印加されなかった対照と比較して)。
図9Dは、TTフィールドを3日間印加することがテモゾロマイドの様々な濃度へのGBM39細胞の感受性をどのように向上させるかを示す(TTフィールドが印加されなかった対照と比較して)。
図9Eは、TTフィールドを3日間印加することがイリノテカンの様々な濃度へのGBM39/Luc細胞の感受性をどのように向上させるかを示す(TTフィールドが印加されなかった対照と比較して)。
図9Fは、TTフィールドを3日間印加することがドキソルビシンの様々な濃度へのMDA-MB-235細胞の感受性をどのように向上させるかを示す(TTフィールドが印加されなかった対照と比較して)。
図9Gは、TTフィールドを4日間印加することがマンノースの様々な濃度へのU87-MG/eGFP-Luc細胞の感受性をどのように向上させるかを示す(TTフィールドが印加されなかった対照と比較して)。
【0053】
今日まで、GBM39/Luc、U87-MG/GFP-Luc及びpcGBM2/GFP-LucのためにTTフィールドとWithaferin Aの組合せで相乗作用が見出された; GBM39/Luc、U87-MG/GFP-Luc及びpcGBM2/GFP-LucのためにTTフィールドとロムスチンの組合せで相乗作用が見出された; GBM39/LucのためにTTフィールドとイリノテカンの組合せで相乗作用が見出された;及び、U87-MG/GFP-LucのためにTTフィールドとマンノースの組合せで相乗作用が見出された。相乗作用の証拠は、MDA-MB-235に関してTTフィールドとドキソルビシンの組合せでも見出された。
【0054】
考察
以前の研究は、核(例えば、微小管)、セプチン、ミトコンドリア及び自己貪食に対するTTフィールドの効果に重点を置いた。しかし、本明細書に記載される実験は、がん細胞膜の完全性に対するTTフィールドの効果を報告する最初であると考えられ、様々な評価技術(例えば、生物発光画像化、蛍光画像化及び走査電子顕微鏡法)を使用して、TTフィールドの存在下でがん細胞(例えば、複数のヒトGBM細胞系)のための増加した細胞膜透過性を実証する。
【0055】
観察結果は、複数のヒトGBM細胞系にわたって、TTフィールドの存在下での神経膠芽腫のための細胞膜透過性の増加を明らかにした。仮説を検証するために用いられたアプローチには、生物発光画像化、蛍光画像化及び走査電子顕微鏡法が含まれた。観察結果は、TTフィールドの存在下での他のタイプのがん細胞のための細胞膜透過性の増加も明らかにした。化学療法と組み合わせたTTフィールドの研究は、治療上の相加性及び相乗作用の両方を示した。この研究のために、我々は、TTフィールドががん細胞へのアクセス性の向上を媒介すると断定した。いくつかの実験は、膜に対するTTフィールドの効果の可逆性を示し、したがって、TTフィールドと膜透過性の増加の間の因果関係を実証した。そのような観察結果は、がん細胞への薬物アクセス性を調整するためにTTフィールドを使用できる可能性も示唆する。
【0056】
TTフィールドによるルシフェラーゼ発現GBM細胞における生物発光の増加の観察結果のために、TTフィールド作用の細胞透過性仮説の調査は、部分的に開始された。この理論によって縛られることなしに、TTフィールドがGBM細胞の細胞膜において透過性の増加を誘導したと考えられている。BLIによって測定されたD-ルシフェリンへのGBM細胞透過性の増加は、ルシフェラーゼ自体に対するTTフィールドの効果のためでなく、むしろ、ホタルルシフェラーゼを発現するように工学操作された細胞の中へのその基質D-ルシフェリンの流入増によるものと考えられている。更に、この知見は、ATP依存性(FLuc)及びATP非依存性ルシフェラーゼ(RLuc)の両方に通用した。したがって、TTフィールドに曝露させたCT26結腸直腸癌細胞において細胞内ATPが増加したことを示唆した予備的報告書にもかかわらず、TTフィールド曝露の状況下での神経膠芽腫細胞膜透過性の増加の観察結果は、独立した現象を示唆する。これらの細胞では、ルシフェラーゼ酵素はeGFPと同じプロモーターによって制御され、蛍光シグナルの増加は同じ細胞において観察されなかったことから、TTフィールド曝露によるルシフェラーゼの発現又は活性化の増加は、BLIシグナルの増加を説明していないかもしれない。しかし、TTフィールドへの曝露は、ATPレベルの変化、膜形態の変化及び酸素消費のシフトによって明らかにされるだろう細胞代謝に影響を及ぼすことができる。
【0057】
透過性仮説を裏付ける一部の重要な知見が、
図3B~
図3Dに関連して上に記載されるデキストラン-FITC検証実験からもたらされた。TTフィールドの状況下における小さいプローブに対する細胞膜のアクセス性をFITC標識デキストランで試験し、それは、4kDa(ストークスの半径約1.4nm) 及び20kDa(ストークスの半径約3.3nm)の流入増をもたらしたが、50kDaデキストラン(ストークスの半径約5nm)では増加をもたらさなかった。これは、TTフィールドはGBM細胞を20kDa位であるが50kDa以下の大きさの物質に対してより透過性にさせることを示唆する。参考のために、ルシフェリン及びセレンテラジン基質は、TTフィールド曝露によって膜を通してアクセス可能になるのに十分小さい分子量である。D-ルシフェリン(ホタルルシフェラーゼの基質)は280.3g/mol(約280Da)の分子量を有し、セレンテラジンH(ウミシイタケルシフェラーゼの基質)は407.5g/mol(約408Da)の分子量を有し、5-ALAは167.6g/mol(169Da)の分子量を有し、デキストラン-FITCの知見と一貫する。
【0058】
図5に関連して上に記載されるように、本明細書に記載されるSEM知見は、低い播種密度で、3日間のTTフィールド曝露が、無TTフィールド条件と比較して、面積が51.8nm
2より大きな孔の数及びサイズの有意な増加を引き起こしたことを明らかにする。この孔サイズカットオフは半径4.1nmの円を表し、それは、20~40kDaのサイズのFITC-デキストラン分子のストークスの半径である。したがって、SEMによって可視化された細胞膜破壊における差は、本明細書に記載されるFITC-デキストラン研究からの間接的な観察結果を確認する。
【0059】
興味深いことに、TTフィールドへの正常ヒト線維芽細胞(PCS-201)の曝露は、細胞膜孔の数又はサイズの有意な増加を引き起こさず、したがって、透過性への効果はがん細胞に対する多少の特異性を有する可能性を示唆した。定性的には、U87-MG細胞では、高い播種密度の下のTTフィールドへの24時間曝露のために、ふくらんだ気泡様の構造の明確な発生があった。これらの構造の外観は、外膜透過性の増加及びアポトーシスの誘導と一貫し、24時間のTTフィールド曝露によるアポトーシス表現型の証拠はほとんどないようである。更に、高密度PCS-201細胞は、TTフィールド曝露によるそのような変化を示さず(データ示さず)、したがって、がん細胞へのTTフィールドの効果の特異性を再び示唆した。
【0060】
細胞周期は実験のために同期されなかったが、U87-MG細胞の倍加時間は約48時間であり、及びTTフィールドが分裂細胞に対してそれらの最大の抗増殖効果を発揮することを考えると、これは24時間のTTフィールド曝露の後に観察される豊富なアポトーシスの欠如を説明するかもしれない。代替の解釈は、細胞の気泡形成が細胞溶解への抵抗性を付与することができるという報告書にあるかもしれない。非同期神経膠芽腫細胞の以前の報告書は、72時間のTTフィールド曝露が細胞死を誘導し、アネキシンV陽性細胞が顕著な割合になったことを実証した。透過電子顕微鏡法を使用して、これらの報告書は、オートファゴソーム、腫脹したミトコンドリア及び拡張した小胞体を含む、自己貪食の徴候を記載した。対照的に、本明細書における結果は、特に形質細胞膜に対するTTフィールドの効果をより良く可視化するために、SEMを使用する。
【0061】
TTフィールドによる膜透過性の増加は、かなりの臨床上の含みを有する。正常なヒト線維芽細胞の上に重ねたヒトGBM細胞の共培養プラットホームを使用して、5-アミノレブリン酸(5-ALA)のGBM細胞への取り込みに及ぼすTTフィールドの影響を研究した。TTフィールド曝露は、線維芽細胞と比較してGBM細胞における5-ALA取り込みの有意な増加をもたらした。2017年6月、神経膠腫切除の間、神経外科医が腫瘍-正常脳縁を正確に示すことを助けるために、5-ALAが米国における臨床使用のために食品医薬品局に承認された。したがって、5-ALA投与の前にTTフィールドによって神経膠腫患者を前処置することは、腫瘍切除の間の浸潤性腫瘍限界の線引きを強化するのに有益である。
【0062】
がん細胞に対するTTフィールドの効果の検出及び測定に関して、今日までの大半の細胞培養ベースの研究は、一次読み出しとしての細胞数/生存度に重点を置いた。これは、TTフィールドが急速に分裂する腫瘍細胞の有糸分裂に干渉し、それはがん細胞死をもたらすとの支配的な理解に基づく。更に、細胞培養におけるTTフィールドのコンピュータモデル化研究は、モデルの一次結果としての細胞数によって現在推進されている。
【0063】
GBMの再発は回避不能であり、標準の療法にもかかわらず最初の再発までの時間の中央値は概ね7カ月である。GBM患者へのTTフィールドの臨床適用では、データは、コンプライアンスの増加及びTTフィールド使用期間が生存の向上と相関することを示唆する。TTフィールドコンプライアンス(≧75%対<75%)は、完全なEF-14治験データセットの後向き分析における全体的生存の独立した予測因子であって、TTフィールドの使用期間が、全体的生存に影響を及ぼすことも見出された。まとめると、これらのデータは、細胞培養ベースのTTフィールド実験場面において、観察された効果の臨床上の相関物の役割をすることができる。すなわち、TTフィールド曝露の長さとTTフィールドの停止後の細胞膜透過性に対するその効果の持続期間の間の相関が観察された。0.5~3時間のTTフィールド曝露の長さで、BLI増加(無TTフィールド条件と比較して)の期間は、約5分間持続した。しかし、12~25時間のTTフィールド曝露では、TTフィールドと無TTフィールド条件の間のBLIにおけるこの差は、20分間より長く持続した。同様に、Ramらによって報告されたデータの再分析は、(TTフィールドプラステモゾロマイド対テモゾロマイド単独で処置した患者における)全体的生存における増加パーセントが、1年間のTTフィールド曝露の後の32%から5年間のTTフィールド曝露の後の551%にそれぞれ急上昇したことを示す。
【0064】
本明細書に記載される結果、すなわち、交流電界が細胞膜透過性を増加させることは、以前に報告されたTTフィールドの効果と異なっている。これは、神経膠芽腫並びに他のタイプのがんの処置における現在の外科的及び臨床診療に、かなりの影響を及ぼすはずである。
【0065】
上記のin vitro実験では、交流電界の周波数は200kHzであった。しかし、代替の実施形態では、交流電界の周波数は、別の周波数、例えば、約200kHz、50~500kHz、25kHz~1MHz、50~190kHz、25~190kHz又は210~400kHzであってもよい。
【0066】
上記のin vitro実験では、交流電界の電界強度は1~4V/cm RMSであった。しかし、代替の実施形態では、異なる電界強度を使用することができる(例えば、0.1~10V/cm)。
【0067】
上記のin vitro実験では、交流電界は0.5時間から72時間の範囲内の様々な異なる区間、印加された。しかし、代替の実施形態では、異なる期間を使用することができる(例えば、0.5時間~14日間)。一部の実施形態では、交流電界の印加は、周期的に繰り返すことができる。例えば、交流電界は、毎日2時間印加することができる。
【0068】
本明細書に記載されるInovitro(商標)システムを使用したin vitro実験では、交流電界の方向は、2つの直角方向の間で1秒間隔で切り替えられた。しかし、代替の実施形態では、交流電界の方向は、より速い速度で(例えば、1~1000ミリ秒の間隔で)、又はより遅い速度で(例えば、1~100秒の間隔で)切り替えることができる。
【0069】
本明細書に記載されるInovitro(商標)システムを使用したin vitro実験では、交互に2D空間に互いから90°離れて置かれた2対の電極にAC電圧を印加することによって、交流電界の方向は2つの直角方向の間で切り替えられた。しかし、代替の実施形態では、交流電界の方向は、1対の電極を再配置することによって直角をなさない2つの方向の間で、又は3つ以上の方向の間で(追加の対の電極が提供されると仮定した場合)切り替えることができる。例えば、交流電界の方向は、それぞれはそれ自身の対の電極の配置によって決定される、3つの方向の間で切り替えることができる。必要に応じて、これらの3対の電極は、結果として生じる電界が3D空間において互いに90°離れて置かれるように配置することができる。他の代替の実施形態では、電極は対にして配置する必要はない。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,565,205号に記載される電極配置を参照する。他の代替の実施形態では、電界の方向は一定である。
【0070】
本明細書に記載されるInovitro(商標)システムを使用したin vitro実験では、Inovitro (商標)システムはシャーレ側壁の外部表面に置かれる導電電極を使用し、側壁のセラミック材は誘電体として作用するので、電界は培養の中に容量結合された。しかし、代替の実施形態では、電界は容量結合無しで細胞に直接的に印加することができた(例えば、導電電極が側壁の外部表面の代わりに側壁の内部表面に置かれるようにInovitro(商標)システム構成を改変することによって)。
【0071】
本明細書に記載される方法は、神経膠芽腫細胞及び他のタイプのがん細胞のために、生きている対象の体の標的領域に交流電界を印加することによって、in vivoの状況に適用することもできる。標的領域に電界を負荷させることは、標的領域の細胞膜の透過性を増加させ、そのことは、細胞膜によって通常ブロック又は阻止される分子が細胞膜を通過することを可能にする。これは、例えば、それらの電極の選択されたサブセットの間のAC電圧の印加が対象の体の標的領域に交流電界を負荷させるように、対象の皮膚の上又は下に電極を配置することによって達成することができる。
【0072】
例えば、関連する細胞が対象の肺に位置する状況では、1対の電極を対象の胸部の前及び後ろに配置することができ、第2の対の電極を対象の胸部の右側と左側に配置することができる。一部の実施形態では、電極は対象の体に容量結合される(例えば、導電プレートを含み、導電プレートと対象の体の間に置かれる誘電層も有する電極を使用することによって)。しかし、代替の実施形態では、誘電層を省略することができ、その場合には、導電プレートは対象の体と直接的に接触するだろう。別の実施形態では、電極は患者の皮下に挿入されるかもしれない。AC電圧ジェネレーターは、右及び左の電極の間に、選択された周波数(例えば、100~200kHz)のAC電圧を第1の期間(例えば、1秒)印加し、それは交流電界を誘導するが、電界系で最も重要な構成成分は対象の体の横断軸に平行である。次に、AC電圧ジェネレーターは、前後の電極の間に同じ周波数(又は、異なる周波数)のAC電圧を第2の期間(例えば、1秒)印加し、それは交流電界を誘導するが、電界系で最も重要な構成成分は対象の体の矢状軸に平行である。この2工程の手順は、その後処置の間繰り返される。必要に応じて、熱センサーが電極に含まれてもよく、AC電圧ジェネレーターは、電極部で感知した温度が高くなり過ぎる場合、電極に印加されるAC電圧の振幅を低下させるように構成することができる。一部の実施形態では、電極の1つ又は複数の追加の対を手順に加え、含ませることができる。代替の実施形態では、単一の対の電極だけが使用され、その場合には、電界系の方向は切り替えられない。in vitro実施形態に関連して上に記載されるように、このin vivo実施形態のパラメーター(例えば、電極の周波数、電界強度、期間、方向切り替え速度及び配置)のいずれも変更可能であることに留意する。しかし、in vivoの状況では、電界が対象にとって常に安全であることを確実にするように注意しなければならない。
【0073】
細胞膜の透過性を増加させるための多種多様の適用をin vivoの状況において容易に想定することができる。一例では、化学療法又は他の抗新生物薬剤の投与の前及びその間に、関連する体の部分に交流電界をある時間期間の間(例えば、12又は24時間)印加することによって、腫瘍細胞による薬物取り込みの局所的増強を誘導することができる。別の例では、化学療法又は他の抗新生物薬剤の投与の前及びその間に、関連する体の部分に交流電界をある時間期間の間(例えば、12又は24時間)印加することによって、多剤抵抗性腫瘍細胞による薬物取り込みを回復することができる。別の例では、適切な薬物の投与の前及びその間に、転移を起こしやすい領域に交流電界をある時間期間の間(例えば、12又は24時間)加えることによって、多剤抵抗性転移の発達を予防することができる(対象が交流電界で処置されている原発腫瘍を有するかどうかにかかわらず)。
【0074】
図10Aは、in vitroの状況における、交流電界の印加とがん細胞の付近への物質の導入の間の;又は、交流電界の印加と生きている患者への物質の投与の間の、第1の好適なタイミング関係を表す。
図7A~
図7D及び
図8Aに関連して上に記載されるデータに基づき、及び物質が所与の時間t=0に導入又は投与されると仮定して、交流電界は所与の時間の後に始まり、物質が細胞の近くでなお利用できる間に、一定時間(例えば、12時間)続くことができる。この状況で、交流電界が始まってから透過性は増加し始め、透過性のこの増加は、物質が関連する細胞に入り込むことを可能にする。化学療法との関連で、これは患者に化学療法剤を投与し、続いて一定時間(例えば、12時間)交流電界を印加することに相当するだろう。
【0075】
この代わりに、
図10Bに表すように、交流電界は所与の時間の前に(例えば、t=0の1時間前)始まり、物質が細胞の近くでなお利用できる間の一定時間(例えば、t=0から12時間後まで)続くことができる。この状況で、関連する細胞の透過性は、物質が細胞の近くに到達する前に(又は、物質が生きている患者に投与される前に)増加し始める。これは、物質が細胞の近くに到達する直後に細胞膜を通過することを可能にする。化学療法との関連で、これは、交流電界の印加を開始し、続いて交流電界がなお印加されている間に化学療法剤を投与すること、続いて交流電界を追加の一定時間(例えば、化学療法剤が投与された時間の12時間後まで)連続して印加することに相当するだろう。
【0076】
図10A及び
図10Bに関連して上で議論される時間は、中断されないか、又は好ましくは短い中断を含むことができることに留意すべきである。例えば、時間が12時間であると仮定して、それは12時間の単一の中断されないブロックによって満たされるかもしれない。この代わりに、12時間の時間は、交流電界を6時間印加し、続いて1時間の中断を設け、続いて交流電界を追加の6時間(物質が細胞の近くでなお利用可能である間)印加することによって満たされるかもしれない。
図10A及び
図10Bとの関連で、物質が生きている患者に投与される場合、物質の投与は、静脈内、経口、皮下、クモ膜下、脳室内及び腹腔内を限定されずに含む、様々なアプローチのいずれかを使用して実行することができることにも注目する。
【0077】
最適な周波数、電界強度及び切り替え特性は、所与のタイプの宿主細胞及び細胞膜を通して送達される所与のタイプの物質の各組合せについて、実験的に決定することができる。一部の好ましい実施形態では、周波数は190kHz未満である(例えば、50~190kHz又は25~190kHz)。他の好ましい実施形態では、周波数は210~400kHzである。
【0078】
腫瘍(例えば、神経膠芽腫)を処置するための1つの既存のアプローチは、50~500kHz、好ましくは100~300kHzの周波数の交流電界を腫瘍に印加することによる。神経膠芽腫のために、200kHzが最も好ましい周波数である。これらの周波数の交流電界はTTフィールドと呼ばれ、米国特許第6,868,289号及び第7,565,205号に記載され、それぞれは参照により本明細書に完全に組み込まれる。簡潔には、それらの2つの出願は、有糸分裂の間の分裂細胞を破壊することを記載する。TTフィールドの効果は、電界の方向が周期的に切り替えられるとき、腫瘍の少なくとも一部における電界強度が少なくとも1V/cmであるとき、及びできるだけ少ない中断で電界が長期間(例えば、数週間又は数カ月)印加されるとき向上する。
【0079】
TTフィールドによって腫瘍を処置すること、更に腫瘍細胞の細胞膜を越えて物質を送達することが望ましい状況が起こることがある(例えば、腫瘍への攻撃の追加の隊列を提供するために化学療法薬の治療的有効量が細胞膜を越えるのを助けるために)。一部の状況では、腫瘍を処置し、細胞膜の透過性を増加させるために、交流電界の単一の周波数を使用することが可能かもしれない。他の状況では、交流電界を異なる周波数で使用することが望ましいかもしれない:細胞膜の透過性を増加させるための向上した結果を提供するように選択される第1の周波数、及びTTフィールドの抗腫瘍作用のための向上した結果を提供するように選択される第2の周波数。
【0080】
図11A及び
図11Bは、U-87 MG神経膠芽腫細胞の2つのin vitro実験の結果を表す。
より具体的には、
図11Aは、U-87 MG細胞に最高レベルの細胞傷害性を提供する周波数を判定するための第1の実験の結果を表し;
図11Bは、U-87 MG細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための第2の実験の結果を表す。
【0081】
第1の実験では、18℃の環境温度で72時間、異なる周波数の1.62V/cm RMSの電界強度を有する交流電界にU-87 MG細胞を付した。この72時間の後、異なる周波数の各々のために試料中に存在した細胞の数を、フローサイトメトリーによって測定した。
図11Aに見られるように、最低細胞数(それは、最も高いレベルの細胞傷害性を示す)は、200kHzの交流電界に付された試料で観察された。
【0082】
第2の実験では、7-AAD(無傷の細胞膜を通常容易に通過しない1270.43g/molの分子量の蛍光性化学物質)への透過性を測定した。この実験では、18℃の環境温度及び37℃のシャーレ温度で合計24時間、細胞を1.62V/cm RMSの電界強度を有する異なる周波数の交流電界で処理した。最初の23.75時間後に、7-AADを培養に加え、15分間インキュベートし、その間交流電界を継続した(24時間を完了するために)。この15分の後に、交流電界の印加を終了し、追加の15分間、細胞を室温でインキュベートし、続いて、異なる周波数の各々について、蛍光性7-AADの蓄積が増加した細胞の百分率のフローサイトメトリー分析を行った。
図11Bに見られるように、7-AADの蓄積が増加した細胞の最高の百分率(それは、最も高いレベルの透過性を示す)は、300kHzの交流電界に付された試料で観察された。
【0083】
図12A及び
図12Bは、MES-SA子宮肉腫細胞が使用されたこと以外は、
図11A/
図11Bに関連して上に記載されるものと類似している、2つのin vitro実験の結果を表す。より具体的には、
図12Aは、MES-SA細胞への最高レベルの細胞傷害性を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す。最低のMES-SA細胞数(それは、最も高いレベルの細胞傷害性を示す)は、100kHzの交流電界に付された試料で観察された。
図12Bは、MES-SA細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す。7-AADの蓄積が増加したMES-SA細胞の最高の百分率(それは、最も高いレベルの透過性を示す)は、150kHzの交流電界に付された試料で観察された。
【0084】
図12Cは、ドキソルビシン(543.52g/mol)に対するMES-SA細胞の細胞膜の透過性に150kHzの交流電界がどのように影響を及ぼすかを判定するために実行した別の実験の結果を表す。この実験では、MES-SA細胞を1.62V/cm RMSの電界強度を有する150kHzの交流電界で24時間処理した。最初の23時間の後に、10μMの濃度のドキソルビシンを加えて1時間インキュベートし、その間、交流電界を継続した(24時間の期間を完了するために)。ドキソルビシンの細胞内蓄積を次に測定した。ドキソルビシンの細胞内蓄積は、150kHzの交流電界で処理した試料で2×より大きく増加した。
【0085】
図13A及び
図13Bは、MCF-7乳房腺癌細胞が使用されたこと以外は、
図11A/
図11Bに関連して上に記載されるものと類似している、2つのin vitro実験の結果を表す。より具体的には、
図13Aは、MCF-7細胞に最高レベルの細胞傷害性を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す。最低のMCF-7細胞数(それは、最も高いレベルの細胞傷害性を示す)は、200kHzの交流電界に付された試料で観察された。
図13Bは、MCF-7細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための実験の結果を表す。7-AADの蓄積が増加したMCF-7細胞の最高の百分率(それは、最も高いレベルの透過性を示す)は、150kHzの交流電界に付された試料で観察された。
【0086】
図11~
図13に関連して上に記載される実験は、細胞透過性を誘導するための最適な周波数が、細胞傷害性を誘導するための最適な周波数と異なることを明らかにする。より具体的には、神経膠芽腫の場合、最適な第1の周波数(細胞透過性を誘導するための)は、250kHz~350kHzであり;最適な第2の周波数(細胞傷害性を誘導するための)は、150kHz~250kHzである。子宮肉腫の場合、最適な第1の周波数(細胞透過性を誘導するための)は、125kHz~175kHzであり;最適な第2の周波数(細胞傷害性を誘導するための)は、75kHz~125kHzである。乳房腺癌の場合、最適な第1の周波数(細胞透過性を誘導するための)は、75kHz~175kHzであり;最適な第2の周波数(細胞傷害性を誘導するための)は、100kHz~300kHzである。他のタイプのがんのための周波数範囲の組は、実験的に判定することができる。
【0087】
細胞透過性を誘導するために、及び細胞傷害性を誘導するために異なる周波数が使用される場合、細胞傷害性周波数は、好ましくは、患者が不自由なく耐えることができる最大時間印加される。好ましくは、細胞傷害性周波数は、少なくとも1週間印加される。より好ましくは、細胞傷害性周波数は、何カ月も印加される。必要に応じて、細胞傷害性周波数が印加される時間は、中断によって分離される複数の不連続の時間に分けることができ、ここで、複数の不連続の時間は合計で少なくとも1週間に達する。対照的に、透過性を誘導するための周波数は、好ましくは、関連する物質が標的細胞の近くに位置するときに透過性が高いように印加される(例えば、
図10A~
図10Bに関連して上に記載されるように)。これらの2つの異なる周波数の印加は、ある特定の時間に細胞透過性を誘導するための第1の周波数を、及び他の時間に細胞傷害性を誘導するための第2の周波数を出力するように制御可能である、単一のAC電圧ジェネレーターを使用して達成することができる。交流電界をこれらの2つの周波数で(どの周波数がAC電圧ジェネレーターによって印加されるかによって)印加するために、同じセットの変換器アレイ(すなわち、電極)を使用することができる。
【0088】
図15は、細胞透過性を誘導するための第1の周波数及び細胞傷害性を誘導するための第2の周波数を生成する装置のブロック図である。本装置は、従来のOptune(登録商標)電界ジェネレーターユニットと類似しているが、2つの異なる周波数で作動する能力を有する、AC電圧ジェネレーター44を含む。それらの周波数の各々は、50~500kHzである。この能力は、例えば、第1のセットの構成成分又は第2のセットの構成成分を、AC電圧を生成する従来の回路に切り替えるリレーを使用し、オシレータの作動周波数を調整して実行することができる。AC電圧ジェネレーター44は、制御入力の状態によって第1の周波数又は第2の周波数を出力するように構成される。制御入力が第1の状態にあるとき、AC電圧ジェネレーター44は第1の周波数を出力し、制御入力が第2の状態にあるとき、AC電圧ジェネレーター44は第2の周波数を出力する。コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44が第2の周波数を出力するように、制御入力を第2の状態に置くようにプログラムされる。更に、コントローラー42は、第1の周波数に切り替える要求を受け取るようにプログラムされている。
図15に表される実施形態では、プッシュボタン、タッチスクリーン等を限定されずに含む、様々な従来のアプローチのいずれかを使用して実行することができる、ユーザーインターフェース40を通して要求は届く。代替の実施形態では、要求は、タブレット、スマートフォン等からRF(例えば、Bluetooth、WiFi等)を通して届けることができる。
【0089】
要求を受け取り次第、コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44がある時間の間(例えば、少なくとも1時間、少なくとも12時間又は少なくとも24時間)、第1の周波数を出力するように制御入力を第1の状態に置く。この時間が経過した後、コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44が第2の周波数を出力することに戻るように、制御入力を第2の状態に置く。
【0090】
必要に応じて、制御入力の状態によっては、AC電圧ジェネレーター44は、1つ又は複数の追加の周波数(例えば、第3の周波数、第4周波数等)を出力するように構成することができる。好ましくは、これらの追加の周波数の各々は、細胞傷害性を誘導するように選択される。これらの実施形態では、コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44に、要求が届く前に第2の周波数及び1つ又は複数の追加の周波数を出力させる状態を制御入力に周期的に繰り返させさせるようにプログラムされる。更に、コントローラー42は、第1の周波数に切り替える要求を受け取るようにプログラムされている。要求を受け取り次第、コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44がある時間の間(例えば、少なくとも1時間、少なくとも12時間又は少なくとも24時間)、第1の周波数を出力するように制御入力を第1の状態に置く。この時間が経過した後、コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44に、第2の周波数及び1つ又は複数の追加の周波数を出力させる状態を制御入力に周期的に繰り返させることに復帰する。
【0091】
図15に表されるシステムは、個人がTTフィールド及び化学療法を含む併用療法によって処置されている腫瘍を有する場合に特に有益である。この状況で、本システムは、最大の細胞傷害性効果を提供するために、ほとんどの時間第2の周波数で作動する。しかし、個人が化学療法の投与のために化学療法クリニックを訪問する場合、透過性を促進する第1の周波数にシステムを切り替えるために、健康管理者(又は、ユーザー)はユーザーインターフェース40を作動させる。この状況で、ユーザーインターフェースの作動は、例えば、化学療法の予想される開始の1時間前に、又は化学療法の実際の開始から短時間後に実行されるかもしれない。
【0092】
代わりに、要求(例えば、ユーザーインターフェース40からの)を受け取り次第、コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44が第1の周波数をある時間(例えば、1時間)出力し、その後、第2の周波数と第1の周波数の間を往復する(例えば、毎時間切り替える)ように、制御入力を制御することができる。最終的に(例えば、関連する物質が患者の血流から消耗されたとき)、コントローラー42は、AC電圧ジェネレーター44が第2の周波数を出力することに復帰するように制御入力を制御する。
【0093】
Optune(登録商標)と使用される従来の電極に類似している電極セット(示さず)は、AC電圧ジェネレーター44の出力に接続される。
【0094】
図14は、GBM39/Luc細胞の細胞膜の透過性の最大の増加を提供する周波数を判定するための更に別の実験の結果を表す。この実験では、4kDaデキストランFITC(それは、無傷の細胞膜を通常容易に通過しない)の存在下で、細胞を異なる周波数の交流電界で2日間処理した。
図14に見られるように、最高レベルのデキストラン-FITC蛍光(それは、透過性の最も高いレベルを示す)は、100kHzの交流電界に付した試料で観察された。
【0095】
図11~
図14に関連して議論される実験データは、二次効果として起こっているかもしれない、いかなる細胞傷害性にも関係なく、細胞透過性を(関連する物質のより多くが細胞膜を通過することを可能にするために)可能な限り最高の程度まで誘導するために有益である情報を含む。これらの状況では、交流電界は、好ましくは、最高レベルの細胞透過性を誘導するために選択される単一の周波数だけで印加される。一部の状況(例えば、GBM39/Luc、子宮肉腫及び乳房腺癌)では、この周波数は、50~190kHzになり;他の状況(例えば、U-87 MG神経膠芽腫)では、この周波数は、210~400kHzになる。
【0096】
細胞膜を通常かなりの程度横断することができる物質の場合、細胞膜透過性を増加させるための本明細書に記載される技術は、細胞に入る物質の量を増加させるために使用することができる。これは、それらの物質によって提供される治療結果を向上させることができる。上で議論されるこのクラスの物質の例には、臭化エチジウム(サイズ=394Da)、ドキソルビシン(サイズ=544Da)、ミトキサントロン(サイズ=445Da)等が含まれる。
【0097】
注目すべきことに、本明細書に記載される技術は、通常かなりの程度細胞膜を横断することができない物質が細胞に入ることを可能にするために、使用することもできる。上で議論されるこのクラスの物質の例には、(a)少なくとも1.2kDaである化合物(例えば、7-AAD、サイズは1.27kDa)、(b)少なくとも4kDaである化合物(例えば、4kDaデキストラン-FITC)、及び(c)少なくとも20kDaである化合物(例えば、20kDa デキストランFITC)、(d)スーパーコイルプラスミドDNA、siRNA及びshRNA構築物を限定されずに含む遺伝物質、(e)メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化規則的散在性の短いパリンドローム反復配列(CRISPR/Cas9)を限定されずに含むゲノム編集システム、(f)IgG、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、二scFv、sdAbを限定されずに含む抗体の任意の形態が含まれる。そのような抗体は、細胞傷害剤、毒素、蛍光団、量子ドット及び酵素にコンジュゲートしてなくてもコンジュゲートしてもよい、(g)荷電分子、及び(h)一般的に細胞膜を透過しないか又はエンドサイトーシスの間に破壊される、小分子、治療的実体、ペプチド及びタンパク質。これらの物質に細胞膜を通過させる能力を提供することは、化合物スクリーニング過程において(細胞膜を横断する能力がないために)無効であるとして以前に拒絶されたかもしれない化合物が、細胞透過性を強化する交流電界と併用される場合、治療目的のために突然使用可能になるかもしれないことを意味する。
【0098】
本明細書に記載される方法は、がん細胞の状況を越えて有益である可能性もある。より具体的には、本明細書に記載される方法は、ある特定の他の非がん性細胞(例えば、腎臓細胞、肺細胞、肝臓細胞、心臓細胞、脳細胞、筋細胞、骨髄細胞等)の細胞膜を通して(通常、関連する細胞膜を通過しないだろう)大きな分子を送達するのに役立つ可能性がある。そのような薬物の送達は、それらの薬物の投与の前及びその間に、関連する体の部分に交流電界をある時間期間の間(例えば、24時間)印加することによって増強することができる。そのような薬物の候補には、限定されずに、抗てんかん薬及び向精神薬(例えば、オランザピン、9-OHリスペリドン及びリスペリドンの他の変形体)が含まれる。
【0099】
更に別の例では、好適な抗生物質の投与の前及びその間に、関連する体の部分に交流電界をある時間期間の間(例えば、24時間)印加することによって、細菌における薬物取り込みの局所的増強を達成することが可能かもしれない。特定の細菌が薬剤耐性又は多剤耐性になった(例えば、細胞膜が関与する作用機構に基づき)状況では、交流電界の印加は、細菌細胞膜の透過性を、耐性を克服することができる所まで増加させることができる。髄膜炎、肺炎、感染性心内膜炎等と闘うために薬物取り込みを増強するために、類似のアプローチを使用することができる。in vivoの状況では、交流電界は、腫瘍のない標的領域(例えば、肺)に印加することができることに留意する。代わりに、腫瘍を含む標的領域(例えば、神経膠芽腫を含む脳)に、交流電界を印加することができる。
【0100】
本発明はある特定の実施形態を参照して開示されているが、添付の請求項に規定されている本発明の領域及び範囲を逸脱しない範囲で、記載される実施形態への多数の修正、改変及び変更が可能である。したがって、本発明は、記載される実施形態に限定されるものではないが、それは、下記の請求項の言葉及びその同等物によって規定される完全な範囲を有するものである。
【0101】
材料及び方法
細胞培養研究:2名の患者由来のGBM系(GBM2、GBM39)、市販のヒトGBM細胞系(ATCC、Manassas、VA、USAからのU87-MG)、並びにマウス星状細胞腫細胞系(KR158B;University of Florida School of MedicineのDepartment of NeurosurgeryのDuane Mitchell博士からの寄贈)を使用した。ヒトU87-MG、ヒトPCS-201及びマウスKR158B神経膠芽腫細胞系は、DMEM(Invitrogen/Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)/10% FBS/及び1×抗生物質-抗真菌剤(Invitrogen/Life Technologies、Carlsbad、CA)で増殖させた。GBM2及びGBM39は、その組成物は以前に記載されている、規定の無血清培地で増殖させた。
【0102】
TTフィールド実験のためのカバーガラスの上への細胞の播種:簡潔には、標準のプロトコールにより培養の細胞をトリプシン処理し、10,000~50,000の単一の細胞を200又は75μLのDMEM/10% FBS/1×抗生物質-抗真菌剤に懸濁させ、次に、22mm又は12mmの直径のガラス製のThermanox(商標)カバーガラス(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)の中央にそれぞれ播種した。37℃に設定した、加湿された95%空気/5% CO2インキュベーターの中で、細胞を一晩インキュベートした。細胞がカバーグラスに付着したならば、2mL又は1mLのDMEM/10% FBS/1×抗生物質-抗真菌剤を6ウェル又は12ウェルプレートの各ウェルにそれぞれ加えた。結果のセクションで特記されない限り、inovitro(商標)in vitro TTフィールド装置(Novocure社、Haifa、Israel)のセラミックシャーレに移す前に、(細胞が確実に増殖相にあるように)細胞を2~3日間カバーグラスの上で増殖させた。増殖条件(すなわち、TTフィールド曝露対非曝露条件の下で細胞を増殖させた時間)は、結果のセクション又は対応する図面の説明文に明記されている。
【0103】
in vitro腫瘍処置電界装置:カバーグラスをinovitro(商標)システムのセラミックシャーレに移し、それを今度はinovitro(商標)ベースプレート(Novocure社、Haifa、Israel)の上にマウントした。200kHz(1~4V/cm)の腫瘍処置電界を、inovitro(商標)発電機を通して印加した。インキュベーター環境温度は20~27℃であり、TTフィールドの印加の後のセラミックシャーレにおける標的温度は37℃であった。TTフィールド曝露の時間はだいたい0.5~72時間持続し、その後カバーグラスを取り出し、適切なバイオアッセイ(下を参照する)のために処理した。可逆性実験のために、適切なバイオアッセイのための処理の前に、TTフィールド曝露カバーグラスをTTフィールド曝露無しの通常のインキュベーターへ24時間移した(細胞膜透過性に対するTTフィールド効果の可逆性について調査するためのオフTTフィールド期間)。蒸発を考慮するために、実験全体を通して24時間おきに培地を手動で交換した。6ウェル又は12ウェルプレート内の同等のカバーグラスを従来の加湿された組織培養インキュベーター(37℃、95%空気/5% CO2)に置き、TTフィールド曝露カバーグラスと並行して細胞を増殖させることによって、対応する対照実験(TTフィールド無し)を実行した。指摘されない限り、全ての実験は、条件及び時点ごとに少なくとも3反復の試料で実行した。
【0104】
血球計数器による細胞計数分析:計数のための細胞の調製は、確立されたプロトコールを通して達成され、Zeiss Primo Vertベンチトップ顕微鏡(Dublin、CA、USA)で可視化された。特記しない限り、細胞計数はトリプシン処理単一細胞懸濁液で血球計数器によって実行し、4つの細胞数測定値の平均を計算し、整数に四捨五入した。
【0105】
生物発光画像化:全ての生物発光研究のために、我々は遺伝子改変GBM2、GBM39及びU87-MGを使用し、それにより、ホタルルシフェラーゼ( GBM39のためのfLuc)又はGFP及びホタルルシフェラーゼの融合タンパク質(GBM2のためのGFP/fLuc及びU87-MGのためのeGFP-fLuc)、又はウミシイタケルシフェラーゼ-赤色蛍光タンパク質融合(KR158BのためのRLuc-RL8)を発現したレンチウイルスベクターで、神経膠芽腫細胞をトランスフェクトした。ウイルス上清を使用して細胞を形質導入させ、fLucのためにはD-ルシフェリン(0.3mg/mLの最終濃度)及びrLucのためにはセレンテラジン(1mg/mL)の存在下で細胞ルシフェラーゼ活性を測定することによって(IVIS Spectrum;Perkin Elmer、Waltman、MA)、ルシフェラーゼの発現を確認した。
【0106】
走査電子顕微鏡法(SEM):5,000(低播種条件)から50,000(高い播種条件)のU87-MG/eGFP-fLuc細胞又はPCS-201線維芽細胞を13mmのカバーガラスに載せ、次にTTフィールド実験のために準備した。細胞は、標準の組織培養インキュベーター条件(37℃、95%O2、5%CO2)の下で増殖させた。TTフィールド曝露及びTTフィールド非曝露実験(高播種条件のために1日及び低播種条件のために3日)の終わりに、カバーグラスをSEMのために処理した。全てのROI分析は盲検方式で実行し、ここでは、SEM像取得を担う個人もデータ分析を実行する者も、試料のための実験条件のことを知らなかった。第三者が、試料の識別情報を有していた。
【0107】
化学試薬:特記しない限り、全ての化学物質は、Selleckchem社(Houston、TX、USA)、Thermo-Fisher Scientific(Waltham、MA、USA)又はSigma-Aldrich(St. Louis、MO、USA)から購入した。精製されたホタルルシフェリン又はホタルルシフェラーゼ(SRE0045-2MG)並びにエチジウムDアポトーシスキット(11835246001)は、Sigma Aldrich社(St. Louis、MO)から購入した。分子量4、20及び50kDaのデキストラン-FITC(FD4、FD20及びFD50)も、Sigma Aldrich社から購入した。5-アミノレブリン酸(5-ALA、AAA16942ME)及びアネキシンV-APCキット(50712549)は、Thermo-Fisher Scientific社(Waltham、MA)から購入した。
【0108】
統計分析:データが正規分布しているかどうか判定するのに、PRISM 7.0ソフトウェア(Graph Pad Software社、La Jolla、CA、USA)を使用した。正規分布データは、二元配置スチューデントのt検定又は平均の分散分析(ANOVA)比較で分析し、非正規分布データは、ノンパラメトリック分析(例えば、中央値のマン-ホイットニーU検定比較)で分析した。統計的有意性のレベルは、アルファ=0.05に設定した。多重比較のためにアルファを調整するために、ボンフェローニ又はダネットの事後修正が用いられた。全てのデータは、範囲、平均±標準偏差、中央値(四分位範囲)又はパーセントで提示される。全ての図面で、統計的有意差のレベルは、以下によって表される:*p<0.05、**p<0.01及び***p<0.001。
【符号の説明】
【0109】
40 ユーザーインターフェース
42 コントローラー
44 AC電圧ジェネレーター