(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】冷凍回路装置に対する耐イオウ性塗膜形成の方法
(51)【国際特許分類】
F25B 39/02 20060101AFI20231120BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20231120BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20231120BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231120BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20231120BHJP
C09D 163/02 20060101ALI20231120BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20231120BHJP
F16L 58/10 20060101ALI20231120BHJP
F28F 19/04 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
F25B39/02 V
B05D1/36 Z
B05D7/14 B
B05D7/14 K
C09D5/00 D
C09D163/00
C09D163/02
C09D175/04
F16L58/10
F28F19/04 Z
(21)【出願番号】P 2019240116
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520006997
【氏名又は名称】有限会社待鳥工業
(72)【発明者】
【氏名】待鳥 光宣
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-22207(JP,A)
【文献】特開2009-63281(JP,A)
【文献】特開2015-17745(JP,A)
【文献】特開2007-255850(JP,A)
【文献】特開2019-174088(JP,A)
【文献】特開2009-197106(JP,A)
【文献】特開2005-146179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
F24F 1/00 ~ 13/32
F28F 19/00 ~ 19/06
F16L 58/10
B05D 1/00 ~ 7/26
C09D 163/02
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記二層膜塗料の塗布における乾燥方法は、それぞれの塗布において50~500μmの厚さ膜層に塗布して、ピンホールのない確認上での均一塗布面の状態である装置内の銅パイプ、並びに部品に対して、それぞれ常温~70℃、1~24時間で、迅速硬化させていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の冷凍回路装置に対する耐イオウ性塗膜形成の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオウ成分を持つ雰囲気の暴露における冷凍回路において、前記冷凍回路装置における関連機器と銅パイプとの外表面に溶接部分を含めてエポキシ樹脂とポリウレタン樹脂の二層塗膜を形成した耐イオウ性塗膜形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫に取付けられる冷凍回路は一般に知られているように、蒸発器、圧縮機、凝縮器、減圧器等を銅製配管で接続することで冷媒循環路を形成してなり、蒸発器内で低温の冷媒を蒸発させることで冷媒の気化熱により冷蔵庫内を冷却するようになっている。蒸発器は銅パイプ内を冷媒が流れるようになっており、この銅パイプと銅製配管とは溶接されている。また、蒸発器の銅パイプに接続される銅製配管は、蒸発器内を流れる冷媒の温度を低温に保つために断熱性チューブで被覆されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
銅表面の腐食については、銅線などの導体上に、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂などの絶縁塗料の塗布焼付層を設けた通常の巻線の表面に、素線間の滑り性を低減し、コイル加工の際の撚りのくずれを防止した平角リッツ線を提供するために、静摩擦係数0.30以上の材料からなる表面層を設けた断面丸形の絶縁電線素線を多数本撚り合わせ、これを断面平角状に成形する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
また銅表面の処理方法として、銅粉を用いた水性導電塗料を提供するために、平均粒子径が200nm以下のポリウレタン樹脂を分散した水性エマルジョン塗料に、親油性の表面処理した電解銅粉を混合分散した水性導電塗料が提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
含窒素複素環、硫黄原子の少なくともいずれかを含有する有機化合物の銅塩である抗菌防黴剤含有の繊維状物質、有機繊維、吸着性物質を必須成分とする湿式不織布の少なくとも片面に不織布を貼り合わせ、好ましくは不織布の表面にウレタン系高分子化合物主体の組成物を塗布した靴中敷きである。湿式不織布の抗菌防黴剤含有の繊維状物質の代わりに、抗菌防黴剤Aと水不溶性高分子化合物Dを含有し、重量比A/Dが0.05~5である抗菌防黴剤組成物を湿式不織布に塗布又は含浸するか、貼り合わせる不織布に塗布又は含浸した靴中敷きであることが提案されている(特許文献5参照)。
【0006】
銅表面の耐食を防いで、安定にする方法少なく、樹脂によって表面を処理する方法、或いは、樹脂と銅の結合物による特殊効果を持たらす方法は提案されているが、防錆効果を樹脂表面で覆う方法は提案されていない。特にイオウ成分を持つ雰囲気における冷凍回路において、前記蒸発器の外表面には前記銅パイプのうち前記銅製配管との溶接部分を除いてポリウレタン塗膜が形成された耐イオウ性冷凍回路は存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-360069号公報
【文献】特開2007-255850号公報
【文献】特開平8-36922号公報
【文献】特開平6-346006号公報
【文献】特開2000-23711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のものにおいては、蒸発器、圧縮機、凝縮器、減圧器等を銅製配管の外表面には、冷蔵庫内に収容された食品から発生する腐食性ガスによる腐食を防止するために焼付け塗膜が形成されているが、銅パイプのうち銅製配管との溶接部分には焼付け塗膜が形成されておらず、銅パイプが露出している。これは、予め焼付け塗膜を形成した場合には、溶接が不完全になるためである。また、銅製配管の端部は、蒸発器の銅パイプと溶接するために断熱性チューブから突出しており、銅製配管が露出した状態になっている。イオウ成分に弱い銅表面を露出することが多い。そのためにイオウの臭いを感ずる雰囲気地域では、冷凍回路装置の不具合が生じている。
【0009】
一般に各機器を繋ぐ銅パイプ及び銅製配管に、溶接後に焼付け塗膜を形成することも考えられるが、断熱性チューブが焼付け時の溶接での熱により変質するため、この手法は採用できない。このため従来の冷凍回路においては、蒸発器の銅パイプと銅製配管との溶接部分は露出した状態のままであった。この状態では金属成分、銅成分と温泉源に含まれているイオウ成分との化学結合により、腐食現象がもたらされて、パイプ類の破損に繋がって、故障の原因になっている。イオウ成分を含む雰囲気の環境では、銅パイプを使用する機器の故障が頻繁に生じている。
【0010】
このため、温泉地帯のイオウ含有ガスの多い場所での腐食性ガスにより上記の溶接部分が腐食されてしまうため、その点の改良が望まれていた。特にイオウ化合物の二酸化イオウガス、硫化水素のガスなどに対して種々の機器、銅パイプ、配管などにはダメージを受けることが多い。本考案は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、蒸発器の銅パイプと銅製配管との溶接部分の防食性を向上させた耐食性、緻密な膜層を形成するエポキシ樹脂と耐薬品性ポリウレタン塗装の二層塗装を施した冷凍回路を提供する冷凍回路装置における耐イオウ性塗膜形成の方法を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための手段として、本発明の装置は、蒸発器、圧縮機、凝縮器、減圧器、圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器とを銅製配管、銅パイプ内に冷媒を流すようにした機器を備え、その機器を繋ぐ前記銅パイプの両端に銅製配管を溶接して冷媒循環路を構成すると共に、前記銅製配管の外面を断熱性チューブで被覆した冷凍回路において、前記蒸発器の外表面には前記銅パイプのうち前記銅製配管との溶接部分を除いて焼付け塗膜が形成され、前記機器側の銅パイプと前記銅製配管との溶接部分の外表面には常温硬化型の特殊塗料により防食塗膜が形成されている。
【0012】
エアコン冷凍回路において銅パイプ内に冷媒を流すようにした圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器とを備え、それらの機器を繋ぐ前記銅パイプの両端に銅製配管を溶接して冷媒循環路を構成すると共に、前記銅製配管の外面を、イオウ成分を持つ雰囲気の暴露における冷凍装置において、前記圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器の機器の外表面と各機器を繋ぐ銅パイプと前記銅パイプのうち前記銅製配管との溶接部分とを、常温硬化型の塗料である下塗塗装のエポキシ樹脂塗料で外面を均一に塗布して、前記エポキシ樹脂の塗膜上にポリウレタン塗料によって上塗塗装のポリウレタン樹脂塗料の積層塗膜が形成され、前記機器の表面とそれらを繋ぐ銅パイプと前記銅パイプの銅製配管との溶接部分の外表面にはエポキシ成分―ポリウレタン成分の300~600μmの厚さの二層構造積層膜の防食塗膜を形成されている耐イオウ性塗膜形成の冷凍回路装置にするための冷凍回路装置に対する耐イオウ性塗膜形成の方法である。
【0013】
下塗塗装でのエポキシ樹脂塗料として、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンからなる変性エポキシ樹脂塗料で、常温硬化型で分子中に複数個のエポキシ基を有する樹脂層を形成する二液型塗料として、銅パイプを主体にして機器の外面に250~500μm膜厚層にして、配管と電気・電子部品の防錆性、防食性、耐薬品性の用途のもので、緻密性、付着性に優れている成分である。刷毛塗り、またはスプレーガン塗布で行うことができるが、均一性を保つには両方法で行うのが好ましい。
【0014】
耐薬品性をもたらす上塗塗装でのポリウレタン樹脂塗料として硬化中にアクリルポリオールの主剤ベース材とウレタンのイソシアネート結合(-NH-CO-O-)を生成するイソシアネート結合を持っている塗料の硬化剤で、主剤と硬化剤を混ぜる2液型と油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート硬化型ポリウレタン樹脂、ラッカー型ポリウレタン樹脂をビヒクルとする1液型、これらから選ばれたものを液状で銅パイプに50~100μmの膜厚層でエポキシ樹脂塗膜上に塗布する。主剤と硬化剤を混ぜる2液型と油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート硬化型ポリウレタン樹脂、ラッカー型ポリウレタン樹脂をビヒクルとする1液型、これらから選ばれたものを液状で銅パイプに塗布する。
【0015】
前記二層膜塗料の塗布における乾燥方法は、それぞれの塗布において50~500μmの厚さ膜層に塗布して、ピンホールのない確認上での均一塗布面の状態である装置内の銅パイプ、並びに部品に対して、それぞれ常温~70℃、1~24時間で、迅速硬化させている。
【発明の効果】
【0016】
圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器とそれを繋ぐ銅パイプと銅製配管との溶接部分には防食塗膜が形成されているから、この溶接部分の防食性が向上させる。上記の300~600μmのエポキシ樹脂ーウレタン樹脂の塗膜の防食塗膜は常温硬化型塗料により形成されているから、焼付け工程が不要となり、熱による断熱性チューブの変質を防止できる。また、エポキシ樹脂ーウレタン樹脂の塗装による塗膜でイオウ含有の成分の腐食性ガスに耐錆効果と耐久効果をもたらされ、エアコンなど冷凍回路装置に対して長時間の運転が可能になった。
【0017】
緻密で、均一なエポキシ樹脂ーウレタン樹脂の300~600μm厚膜層の塗装膜をなしていることにより、蒸発器の銅パイプと銅製配管との溶接部分の外表面に塗料が全体的に均一に塗布されているので、塗膜のムラもなく、ピンホールも存在しなく、銅配管、機器表面でイオウ成分の防御をもたらして、配管の腐食がなく、長期間故障を起こさない状態である。また各配管、装置の接続部である溶接部分の外表面に塗膜の厚さ方向に重なるように積層されており、これによりエポキシ樹脂ーウレタン樹脂塗装の効果をもたらした。とくに溶接部分の外表面を効率的に防錆性、耐衝撃性、対候性、耐久性の膜で覆うことができた。耐久性のある冷凍回路装置になった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】冷凍回路装置における概略構成図 A:室内機 B:室外機
【
図2】冷凍回路装置における実装置の一例状態図 A:平面図 B:正面図
【
図3】冷凍回路装置の概略塗装における冷凍回路装置に対する耐イオウ性塗膜形成の方法の工程図
【
図4】冷凍回路装置の銅パイプの塗装した状態図 A:パイプの塗膜状態図 B:塗膜パイプの断面図
【
図5】冷凍回路装置の塗膜の状態を示す銅パイプーエポキシ樹脂層―ウレタン樹脂層での電子線マイクロアナライザー(EPMA)の測定による断面の状態拡大の写真図
【
図6】冷凍回路装置の塗膜の状態を示すエポキシ樹脂層とウレタン樹脂層の樹脂間でのEPMA測定拡大の写真図
【
図7】冷凍回路装置の塗膜の状態を示すエポキシ樹脂層でのEPMA測定の拡大の写真図
【
図8】冷凍回路装置の塗膜の状態を示すウレタン樹脂層でのEPMA測定拡大の写真図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る冷凍回路を冷蔵庫に適用した実施形態の図を参照して説明する。本実施形態に係る冷凍回路は、冷蔵庫に配設されて、庫内の空気を冷却するようになっている。冷凍回路は、
図1に示すように、冷媒を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、この凝縮器で凝縮した冷媒を減圧又は膨張させる減圧器と、減圧器で減圧された冷媒を蒸発させて周囲の温度を下げる蒸発器とを、銅製配管で接続することで冷媒の循環経路が形成されてなる。
【0020】
エアコンなどの冷凍回路装置の耐イオウ性塗膜形成の操作において、
図3に示すように、受け入れ検査として装置内の形状の変形、傷、錆がないかの目視を行い、その後塗装前の準備として、外板パネル、各部品を取り外しする。次に装置から取り外しが難しい部品についてはマスキングを行う。まず下地塗りとして、下塗塗装として、二液のエポキシ樹脂塗料によって吹付け塗装で、膜厚150~400μm程度にした。二液のエポキシ樹脂塗料を塗装した装置は、20~70℃で2~24時間乾燥する。その後乾燥したエポキシ樹脂塗料を被膜した装置は、アクリルウレタン樹脂塗料によって吹付け塗装を行い、30~100μmの厚さに塗装した。この二層膜塗装装置をさらに20~70℃で2~24時間乾燥する。乾燥後部品、配管を目視して塗膜の均一性を確認して、装置全体のマスキングと各部品、配管などを取り付け、さらに外板パネルを嵌め込み、さらに形状の変形、傷、錆がないかの目視の完了検査を行って、装置完成とする。方法は表1に示す。
【表1】
【実施例1】
【0021】
図1、
図2に示すようなエアコン冷凍回路において銅パイプ内に冷媒を流すようにした圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器とを備え、それらの機器を繋ぐ前記銅パイプの両端に銅製配管を溶接して冷媒循環路を構成すると共に、前記銅製配管の外面を、イオウ成分を持つ雰囲気の暴露における冷凍装置において、上記塗装工程で示すように、また
図3の工程表に沿って、前記圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器の機器の外表面と各機器を繋ぐ銅パイプと前記銅パイプのうち前記銅製配管との溶接部分とを、常温硬化型の塗料である下塗塗装のエポキシ樹脂塗料で外面を均一に塗布して、前記エポキシ樹脂の塗膜上にポリウレタン塗料によって上塗塗装のポリウレタン樹脂塗料の積層塗膜が形成され、前記機器の表面とそれらを繋ぐ銅パイプと前記銅パイプの銅製配管との溶接部分の外表面にはエポキシ成分―ポリウレタン成分の300μmの厚さの二層構造積層膜の防食塗膜を形成されて、耐イオウ性塗膜形成の冷凍回路装置の防錆対策を行った。
【0022】
図3に示す下塗塗装では、エポキシ樹脂塗料として、配管と電気・電子部品の防錆性、防食性、耐薬品性の用途のもので、緻密性、付着性に優れている成分であるビスフェノールAとエピクロルヒドリンからなる二液変性エポキシ樹脂塗料の吹付け塗装で製膜した。この塗膜では常温硬化型で分子中に複数個のエポキシ基を有する樹脂層を形成する二液型塗料として、銅パイプを主体にして機器の外面に約250μm膜厚層にした。乾燥は30℃で1時間で行った。
【0023】
図3に示す上塗塗装では、耐薬品性をもたらす上塗塗装でのポリウレタン樹脂塗料として硬化中にアクリルポリオールの主剤ベース材とウレタンのイソシアネート結合(-NH-CO-O-)を生成するイソシアネート結合を持っている塗料の硬化剤で、主剤と硬化剤を混ぜる2液型と油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート硬化型ポリウレタン樹脂、ラッカー型ポリウレタン樹脂をビヒクルとする1液型、これらから選ばれたものを液状で銅パイプに50μmの膜厚層でエポキシ樹脂塗膜上に塗布した。塗膜はスプレーガンによる吹付け塗布で行った。塗膜の乾燥は30℃で4時間で行った。
【0024】
前記二層膜塗料の塗布における乾燥方法は、それぞれの塗布において350μmの厚さ膜層に塗布して、ピンホールのない確認上での均一塗布面の状態である装置内の銅パイプ、並びに部品に対して、それぞれ30℃、1~4時間で、迅速硬化させている。エポキシ樹脂塗料として、分子中に複数個のエポキシ基を有する樹脂で、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンからなる変性エポキシ樹脂塗料であり、常温硬化型で二液型塗料としてパイプ内外面、電気、電子部品の防食性、耐薬品性の用途のもので、耐水性、耐薬品性、付着性に優れている成分である。スプレーガン塗布で行うことができるが、均一性を保った。
【0025】
ポリウレタン樹脂塗料として硬化中にウレタン結合を生成するウレタン結合を持っている塗料で、主剤と硬化剤を混ぜる2液型と油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート硬化型ポリウレタン樹脂、ラッカー型ポリウレタン樹脂をビヒクルとする1液型、これらから選ばれたものを液状で銅パイプに塗布する。前記塗料の塗布は乾燥方法として銅パイプに30℃、1時間以上で、350μmの厚さに塗布して、ピンホールを存在しないように多重塗布によって、この状態で硬化する。常温硬化型塗料の塗装方法については、
図4に示すようになっており、さらに電子線マイクロアナライザー(EPMA)の測定による断面、表面の状態を観察したところ、
図5,6,7,8のようになって均一に被覆していた。
温泉地域でイオウ成分雰囲気を持つ場所にあるエアコン冷凍回路の外表面にはエポキシ成分―ポリウレタン成分の二層構造積層膜の防食塗膜を施していないものは、半年で銅配管にピンホールによる稼働が難しくなり、使用不能になったが、上記の二層構造積層膜の防食塗膜を施した装置では、2年以上でも問題が生じなかった。
【実施例2】
【0026】
実施例1と同様にエアコン冷凍回路において銅パイプ内に冷媒を流すようにした圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器とを備え、それらの機器を繋ぐ前記銅パイプの両端に銅製配管を溶接して冷媒循環路を構成すると共に、前記銅製配管の外面を、イオウ成分を持つ雰囲気の暴露における冷凍装置において、上記塗装工程で示すように、また
図3の工程表に沿って、前記圧縮機と四方弁と蒸発器と熱交換器の機器の外表面と各機器を繋ぐ銅パイプと前記銅パイプのうち前記銅製配管との溶接部分とを、常温硬化型の塗料である下塗塗装のエポキシ樹脂塗料で外面を均一に塗布して、前記エポキシ樹脂の塗膜上にポリウレタン塗料によって上塗塗装のポリウレタン樹脂塗料の積層塗膜が形成され、前記機器の表面とそれらを繋ぐ銅パイプと前記銅パイプの銅製配管との溶接部分の外表面にはエポキシ成分―ポリウレタン成分の約290μmの厚さの二層構造積層膜の防食塗膜を形成されて、耐イオウ性塗膜形成の冷凍回路装置の防錆対策を行った。
【0027】
図3に示す下塗塗装では、エポキシ樹脂塗料として、配管と電気・電子部品の防錆性、防食性、耐薬品性の用途のもので、緻密性、付着性に優れている成分であるビスフェノールAとエピクロルヒドリンからなる二液変性エポキシ樹脂塗料の吹付け塗装で製膜した。この塗膜では常温硬化型で分子中に複数個のエポキシ基を有する樹脂層を形成する二液型塗料として、銅パイプを主体にして機器の外面に約200μm膜厚層にした。乾燥は常温で2時間で行った。
【0028】
図3に示す上塗塗装では、耐薬品性をもたらす上塗塗装でのポリウレタン樹脂塗料として硬化中にアクリルポリオールの主剤ベース材とウレタンのイソシアネート結合(-NH-CO-O-)を生成するイソシアネート結合を持っている塗料の硬化剤で、主剤と硬化剤を混ぜる2液型と油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート硬化型ポリウレタン樹脂、ラッカー型ポリウレタン樹脂をビヒクルとする1液型、これらから選ばれたものを液状で銅パイプに40μmの膜厚層でエポキシ樹脂塗膜上に塗布した。塗膜はスプレーガンによる吹付け塗布で行った。塗膜の乾燥は常温で5時間で行った。
【0029】
前記二層膜塗料の塗布における乾燥方法は、それぞれの塗布において350μmの厚さ膜層に塗布して、ピンホールのない確認上での均一塗布面の状態である装置内の銅パイプ、並びに部品に対して、それぞれ30℃、1~4時間で、迅速硬化させている。エポキシ樹脂塗料として、分子中に複数個のエポキシ基を有する樹脂で、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンからなる変性エポキシ樹脂塗料であり、常温硬化型で二液型塗料としてパイプ内外面、電気、電子部品の防食性、耐薬品性の用途のもので、耐水性、耐薬品性、付着性に優れている成分である。スプレーガン塗布で行うことができるが、均一性を保った。
【0030】
ポリウレタン樹脂塗料として硬化中にウレタン結合を生成するウレタン結合を持っている塗料で、主剤と硬化剤を混ぜる2液型と油変性ポリウレタン樹脂、湿気硬化型ポリウレタン樹脂、ブロックイソシアネート硬化型ポリウレタン樹脂、ラッカー型ポリウレタン樹脂をビヒクルとする1液型、これらから選ばれたものを液状で銅パイプに塗布する。前記塗料の塗布は乾燥方法として銅パイプに常温で、1~5時間で、240μmの厚さに塗布して、ピンホールを存在しないように多重塗布によって、この状態で硬化する。常温硬化型塗料の塗装方法については、
図4に示すようになっており、さらに電子線マイクロアナライザー(EPMA)の測定による表面、断面の状態変化を観察したところ、
図5,6,7,8のようになって均一に被覆していた。
温泉地域でイオウ成分雰囲気を持つ場所にあるエアコン冷凍回路の外表面にはエポキシ成分―ポリウレタン成分の二層構造積層膜の防食塗膜を施していないものは、半年で銅配管にピンホールによる稼働が難しくなり、使用不能になったが、上記の二層構造積層膜の防食塗膜を施した装置では、2年以上でも問題が生じなかった。
【実施例3】
【0031】
腐食性ガスによるガス漏れ試験
まず、腐食性ガスである硫化水素ガスの発生源を調製した。硫化水素ガスの発生源は、容量500mlのビーカーに水100gを注ぎ、この水に硫化ナトリウム24gを溶解し、硫化ナトリウムが完全に溶解した状態の水溶液にリン酸二水素カリウム5.44gを溶解することにより調製した。
上記の状態で、冷凍回路装置を冷却運転し、蒸発器の銅製パイプと銅製配管との溶接部分がイオウ含有腐食性ガスにより腐食して孔が開き、ガスが漏れ始めるまでの期間を調べた。なお、両腐食性ガスの発生源であるビーカーは、約200時間の運転毎に、新しく調製したものと交換した。また、冷凍回路装置内の腐食性ガスの濃度は、冷却運転中、硫化水素濃度約5ppmであった。
蒸発器のガス漏れについては、ガス漏れ用のチェック液を塗布した蒸発器及び銅製配管の内部にガス圧1MPaの窒素ガスを充填し、目視により確認した。なお、冷蔵庫の冷却運転は、蒸発器にガス漏れが確認された時点で中止するものとした。
【0032】
腐食性ガスによる試験結果
本願の方法で処理した蒸発器冷凍回路装置の銅パイプと銅製配管との溶接部分からガス漏れが認められず、冷却運転開始後90日目以降でも安定であった。これに対し、一般の処理なしの冷凍回路装置では冷却運転開始後30日目にガス漏れが認められた。このように、冷凍回路の銅パイプと銅製配管との溶接部分に防食塗膜を形成することで、溶接部分の防食性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1…耐イオウ性冷凍回路 20 アキュムレータ
2…二層塗膜 21 油分離器
3…配管 22 電子膨張弁
4…銅パイプ 23 閉鎖弁
5…ウレタン塗膜 24 冷媒調整器
6…エポキシ塗膜 25 フィン
7…下塗塗装 26 受液器
8…上塗塗装 27 四路切換弁
9・冷媒循環路 28 逆止弁
10 圧縮機、 29 ストレーナ
11 凝縮器、 30 サービスポート
12 減圧器、
13 二方弁
14 四方弁
15 蒸発器
16 熱交換器
17 ファン
18 電磁弁
19 モーター