(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】温度調整システムと温度調整方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20231120BHJP
A61M 21/00 20060101ALI20231120BHJP
A61M 21/02 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
A61B5/01 100
A61M21/00 A
A61M21/02 A
(21)【出願番号】P 2021112431
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2021-05-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518060723
【氏名又は名称】株式会社モノプロダイム
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 亨
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】平城 俊雅
【審判官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-322262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深部温度を検出する深度温度測定部と皮膚温度を検出する皮膚温度測定部とを有するセンサーと、
部屋の温度を調整する温度調整機と、を有し、
前記温度調整機の制御部は、
帰宅後、人が作業している時の前記深度温度と前記皮膚温度との温度差が、
睡眠予定時刻に事前に設定された前記温度差に、一定の割合で近づけ
るように、人の体を、温風、又は、冷風で、温める、または、冷
す前記温度調整機を制御する温度調整システムであり、
前記人の前記皮膚温度と前記深部温度との温度差をモニターし、その結果から、
前記温度調整機を稼働させ、前記皮膚温度を上げる、又は、下
げる前記制御をする温度調整システム。
【請求項2】
深度温度測定部で深部温度を測定し、皮膚温度測定部で皮膚温度を測定する測定工程と、
人が帰宅後、温度調整機により、
前記人が作業している時の前記深度温度と前記皮膚温度との温度差が、
睡眠予定時刻に事前に設定された前記温度差に、一定の割合で近づけ
るように、人の体を、温風、又は、冷風で、温める、または、冷
す調整工程と、
を含む温度調整方法であり、
前記調整工程では、前記人の前記皮膚温度と前記深部温度との温度差をモニターし、
その結果から、
前記温度調整機を稼働させ前記皮膚温度を上げる、又は、下
げる制御する温度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整システムと温度調整方法に関する。特に、深度温度を利用する温度調整システムと温度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、就寝時刻と起床時刻とから、人の生活リズムを想定し、環境温度を制御するものがあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、就寝時刻と起床時刻とから、人の生活リズムを想定するだけであり、人の生活リズムに精度よくは合わない。
【0005】
よって、本願の課題は、人の生活リズムに精度よくあった温度調整システムと温度調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、深部温度を検出する深度温度測定部と皮膚温度を検出する皮膚温度測定部とを有するセンサーと、部屋の温度を調整する温度調整機と、を有し、上記温度調整機の制御部は、人が作業している時の上記深度温度と上記皮膚温度との温度差が、睡眠時に事前に設定された上記温度差に、一定の割合で近づけように、人の体を、温風、又は、冷風で、温める、または、冷すように上記温度調整機を制御する温度調整システムを用いる。
睡眠中、上記深部温度又は上記皮膚温度が、平常時と比較して、差が発生した時に、上記温度差のピークを無くすように上記温度調整機を制御する上記温度調整システムを用いる。
昼間、上記深部温度又は上記皮膚温度が、平常時と比較して、差が発生した時に、上記温度差を無くすように上記温度調整機を制御する温度調整システムを用いる。
深度温度測定部で深部温度を測定し、皮膚温度測定部で皮膚温度を測定する測定工程と、温度調整機により、人が作業している時の上記深度温度と上記皮膚温度との温度差が、睡眠時に事前に設定された上記温度差に、一定の割合で近づけように、人の体を、温風、又は、冷風で、温める、または、冷すように調整工程と、を含む温度調整方法を用いる。
上記調整工程では、睡眠中、上記深部温度又は上記皮膚温度が、平常時と比較して、差が発生した時に、上記温度差のピークを無くすように上記温度調整機を制御する上記温度調整方法を用いる。
上記調整工程では、昼間も、上記深部温度又は上記皮膚温度が、平常時と比較して、差が発生した時に、上記温度差を無くすように上記温度調整機を制御する上記温度調整方法を用いる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の体調検出器と睡眠制御方法によれば、人の睡眠状態を簡易的に、正確に測定でき、睡眠を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の深部温度と皮膚温度の時刻での変化の1例を示す図
【
図2】
図1で深部温度と皮膚温度との温度差を徐々に小さくすることを示す図
【
図3】実施の形態1の温度調整システムを説明する側面図
【
図4】実施の形態1の温度調整システムでのセンサーと温度調整機とのやり取りを示す図
【
図5】実施の形態1の深部温度と皮膚温度の時刻での変化の別例を示す図
【
図6】
図5で深部温度と皮膚温度との温度差を徐々に小さくすることを示す図
【
図7】(a)実施の形態2のセンサーの平面図、(b)実施の形態2のセンサーを人に付けた時の正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で実施の形態を説明するが、発明の1つの例示であり、これに発明は限定されない。
(実施の形態1)
人は、深部温度と皮膚温度に関して、生活リズムを有する。
図1に、その変化の1例を示す。深部温度とは、体の内部の温度である。皮膚温度とは、体の表面の温度である。
この例では、深部温度は、夕方18時ごろ最大となる。一方、皮膚温度は、夕方18時ごろ最小となる。この深部温度と皮膚温度との差が小さくなれば、眠たくなる。
この深部温度は、従来、外科手術中など医学処置をしている間の生体観測のために直腸や鼻腔からの食道温度などで特殊な体温計によって測定されてきた。このために、医師の指導が必要であり、睡眠という日々の活動をモニターするのは困難であった。
【0010】
しかし、最近、アフォードセンス社のVitalGramとよぶ活動量計によって、皮膚温度と深部温度とが同時に測定できるようになった。このセンサーは、深部温度を検出する深度温度測定部と皮膚温度を検出する皮膚温度測定部を有する。
この実施の形態では、対象の人の皮膚温度と深部温度との温度差をモニターし、その結果から、環境装置を稼働させ、その人が、自然に睡眠へはいれるようにする。特に、夕方、温度差を測定し、測定時より温度差が小さくなる方向へ環境温度を制御する。
人ごとに理想の生活リズム(
図1)は異なる。
図1がその人の理想であれば、皮膚温度と深部温度との温度差をモニターし、
図1の温度差に従うように環境装置を稼働させる。ただし、たとえば、夕方、飲み会や運動などで、生活のリズムが狂う時がある。なお、理想のデータは、日常の生活を送っている時のデータである。つまり、過去の平常時の平均のデータでもある。以下で、温度差とは、皮膚温度と深部温度との温度差を意味する。
【0011】
<大きくずれた場合>
図2で、その方法を説明する。
図2は、
図1の例の生活リズム(点線)からずれた場合である。
例えば、18時から、懇親会があり、
図2の実線ように理想の点線から生活リズムが大きくずれた。深部温度は、あまり変化しないが、皮膚温度は、いろいろな活動で変化しやすい。冬の日で皮膚温度が下がった。21時に帰宅する。このままであると、深部温度と皮膚温度との温度差が、通常のように小さくならず、眠りにくい。この実施の形態では、皮膚温度と深部温度とを測定し、環境温度を変化させ、点線と実線とを繋ぐ点線のようにする。睡眠予定時刻の24時の温度差(平常時の24時での温度差)になるように温度調整機でする。この場合、皮膚温度を上げるため、温風などで部屋の温度を上げる。なお、逆に、夏場などで、皮膚温度が高くなった場合は、冷風で下げる。
ここで、急激に温度差を理想に近づけるのでなく、一定の割合で近づけ、自然と睡眠へ導く。この場合、理想の生活リズムの深部温度、皮膚温度(
図1)を事前に記録しておく必要がある。例えば、(1)例えば、最近1~2週間で、異常な場合を除いた日の平均を計算することで得ることができる。異常な場合とは、通常と違う行動(運動、外出など)をした場合、通常と異なる状態の場合(風邪など)である。または、(2)例えば、最近1~2週間で、自然に睡眠できた日のデータを使用することもできる。人が日を選択し、理想の生活リズムを決定してもよい。なお、温度差を制御することが重要である。深部温度の季節変化や年齢変化などよくわかっていないので、近日中のデータを使用して、理想の生活リズムを決定するのが好ましい。
【0012】
<配置>
図3と
図4で、温度調整システム100を説明する。人19は、椅子に座って作業をしている。人19には、センサー11aを付けている。センサー11aは、皮膚温度測定部10cと深部温度測定部10aとを有し、皮膚温度と深部温度とを定期的に測定する。無線通信で、温度調整機20へ、深部温度と皮膚温度、又は、深部温度と皮膚温度の温度差を送る。
温度調整機10は、上記温度差が徐々に小さくなるように、制御部22で、部屋21の環境と整える。温風、または、冷風の出力などを調整する。温風、または、冷風で、皮膚温度を制御する。皮膚温度を上下させて、温度差を制御する。目標とする温度差となるように、温風、または、冷風で、皮膚温度を上げる、又は、下げる。
人19は、センサー11aを身に着け、作業や生活をする。
温度調整機20は、エアコン、空調設備などである。または、身体に取り付ける冷温機器でもよい。センサー11aからの情報で、部屋21を温めたり、冷したり、または、人19の体を温めたり、冷したりする。
【0013】
<別の例>小さくずれる場合
図5は、
図2の変形例である。実線は、理想の生活リズムの深部温度、皮膚温度である。
図5では、事件23が起こる。事件23は、例えば、外食、小運動などである。これらの事件23では、一時的に皮膚温度が上昇する。なお、事件23により、深部温度は、ほとんど変化しない。本願の深部温度は、脳の深部温度が対象である。脳自身の温度を上げ下げするのは、概日性リズムという周期性ある制御機能でしか変動しない。一方、事件23による皮膚温度は、自分の体温や体調を維持するために働く機能により、変化する。この場合、事件23により皮膚温度が上昇したので、皮膚温度をもどすために毛細管が開き、元に戻そうとする。
この時の実施の形態の制御を
図6で説明する。皮膚温度の降下を制御する。つまり、温度差を、急激に平常(理想)に戻すのでなく、一定割合(細い点線)で下げる制御をする。この場合、皮膚温度を急に下げすぎないように、温風で制御する。つまり、何もしないと急激に皮膚温度が下がる(太い点線)。この実施の形態では、細い点線で皮膚温度を下げる。睡眠予定時刻の24時の温度差(平常時の24時での温度差)になるように温度調整機で一定割合づつ下げる。温度差を急激に変化させても、自然な睡眠にはつながらない。
【0014】
<睡眠中>
なお、24時の後、睡眠中も、理想の生活リズムになるように、温度調整システム100は稼働できる。つまり、睡眠後、朝に起きるまでも同様である。
図6で示しているように、24時に寝て、7時に起きる場合、午前3時30分~4時30分ころには深部温度がもっとも低下した時間帯を迎え、そののち明け方に向けて深部温度は上昇に転じる。この間、深部温度の低下に向けて皮膚温度を、ある程度の温かさを維持して、放熱の妨げにならないように、温度調整システム100は、室温を制御する。実際には、冷え過ぎないように、温度調整システム100は、それまでの温度維持をする。
つまり、温度差は、午前3時30分~4時30分に向かって最小になり、その後、ほぼ一定で、朝となる。そのように、温温度調整機20は、皮膚温度を制御する。
体内の24時間周期と食餌のための覚醒機能が準備を始めて、例えば7時に温度差を上昇させる。
なお、午前3時30分~午前4時30分というのは、24時間で診た一日のリズム(概日性リズム)でいえば覚醒に向けての切り替えタイミングである。概日性リズムで朝方の日昇に向けて体内を睡眠から覚醒に向けての準備を開始している。
なお、7時に起床する時に、温度差が大きくなっているので、それに合わせて、温度調整機20を制御する。睡眠中は、急激な皮膚温度の変化はないので、平常の温度差になるように、温度調整機20は、稼働する。
【0015】
<昼間の例>昼間も、同様である。センサー11は、一定時間ごとに、深部温度と皮膚温度の温度差を温度調整機20へ送る。温度調整機20は、理想の生活リズムに対して差があると、差をなくすために、制御する。昼間は、睡眠へ自然に入るようにする必要はないので、温度差が、平常(理想)になるように、温度調整機20は、稼働する。
なお、昼間、睡眠中に温度差を平常(理想)にすることで、体調をよい状態に維持できる。
【0016】
<効果>深度温度と皮膚温度の温度差を、睡眠時刻の温度差に対して、一定の割合で近づける。このことで、自然に睡眠に入ることができる。
事件23、イベントなどで、理想の生活リズム(通常の生活リズム)から、ずれても、それに一定割合で、徐々に合わせるようにできる。
睡眠中、昼間も、深度温度と皮膚温度の温度差が理想の生活リズムになるように、温度調整すれば、快適に生活できる。
【0017】
(実施の形態2):センサーの別例
実施の形態2は、実施の形態1で使用するセンサーの別例である。
図7(a)に実施の形態2のセンサー11bの平面図を示す。
図7(b)に、実施の形態2のセンサー11bを人に付けた時の正面図を示す。
【0018】
<全体構成>センサー11bは、聴診器のような形状をしている。センサー11bは、調整部17と、調整部17の両端に第1接続部12aと第2接続部12bとがある。第1接続部12aの先端には、深度温度測定部10a、第2接続部12bの先端には、深度温度測定部10bがある。調整部17は、制御部13、通信部14、電源15、皮膚温度測定部10cを有する。
【0019】
調整部17は、第1接続部12aまたは第2接続部12bの長さを調整し、深度温度測定部10a、深度温度測定部10bが、鎖骨の凹部16(欠盆)に位置するようにすることができる。調整部17は、ベルトなどの長さ調整する機構を有する。調整部17は、マッジテープ(商標)や粘着性などを備えてもよい。または、調整部17を強めに締め、首に固定してもよい。
【0020】
深度温度測定部10aと深度温度測定部10bとを特定しない場合、深度温度測定部10として説明する。深度温度測定部10は、温度センサーである。鎖骨の凹部16の温度を測定することで深部温度を測定できる。凹部16の部分の温度は、人の深度温度に比例しやすい。
深度温度測定部10が左右2つあることで、左右の温度データの内、高い方を採用できる。その結果、確実にデータを得ることができる。このことで、人と深度温度測定部10との接触具合に影響を受けにくい。
深度温度測定部10aと深度温度測定部10bとは、少なくとも1つは必要である。
【0021】
調整部17にある制御部13は、深度温度測定部10の制御、深度温度測定部10からのデータの取得をする。データを分析もしてもよい。
調整部17にある通信部14は、制御部13のデータを外部へ無線で転送できる。
調整部17にある電源18は、電力を制御部13、深度温度測定部10などへ提供する。電源18は、2次電池である。無線で給電できるとさらによい。使用しない時は、充電される。
【0022】
第1接続部12aと第2接続部12bは、それぞれ、深度温度測定部10と調整部17とを接続する。データ転送や電気を供給する線を有する。
このセンサー11bは、実施の形態1のセンサーとして利用できる。首に掛ける形状で使用しやすい。度温度測定部10aと深度温度測定部10bの部分が他の部分より重たくすることで体にフィットしやすい。
(全体として)
実施の形態1~2は組み合わせができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
発明の体調検出器とそれを利用した睡眠制御方法は、個人だけでなく、病院、宿舎、会社などの施設でも使用できる。
【符号の説明】
【0024】
10a、10b 深度温度測定部、10c 皮膚温度測定部、11a、11b センサー、12a 第1接続部、12b 第2接続部、13 制御部、14 通信部、15 電源、17 調整部、18 電源、19 人、20 温度調整機、21 部屋、22 制御部、23 事件