(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス,ワイヤハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20231120BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20231120BHJP
H01B 13/012 20060101ALI20231120BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20231120BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/18 D
H01B13/012 Z
H05K9/00 L
H02G3/04 062
(21)【出願番号】P 2020037376
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 諒
(72)【発明者】
【氏名】林 将志
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041563(JP,A)
【文献】特開2017-022898(JP,A)
【文献】特開2015-220006(JP,A)
【文献】特開昭58-103816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H01B 13/012
H05K 9/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線が貫通し、少なくとも一部が湾曲する曲げ部とされたシールドパイプと、
前記シールドパイプの内部に配される複数のスペーサを有するスペーサユニットとを、備え、
前記複数のスペーサは、前記シールドパイプの長さ方向において互いに離隔しており、
前記複数のスペーサの各々は貫通孔を有し、
前記電線は前記貫通孔を貫通し、
前記電線の外周面は前記貫通孔の内周面に密着して
おり、
前記スペーサユニットは、前記複数のスペーサを相互に連結する連結部を有し、
前記シールドパイプは第1端部と第2端部とを有し、
前記スペーサユニットの前記複数のスペーサは、前記第1端部に最も近い第1スペーサと前記第2端部に最も近い第2スペーサとを含み、
前記スペーサユニットは、前記第1スペーサから前記第1端部に向かって延びる第1位置補正部と、前記第2スペーサから前記第2端部に向かって延びる第2位置補正部とを有し、
前記第1スペーサと前記第2スペーサは、何れも四角形断面をもって前記シールドパイプの長さ方向に延びており、
前記第1スペーサの対角部分にそれぞれ前記第1位置補正部が固定され、前記第2スペーサの対角部分にそれぞれ前記第2位置補正部が固定されているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記複数のスペーサと前記シールドパイプとの間に隙間を有する請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記シールドパイプは円形の内周形状を有し、
前記複数のスペーサは前記シールドパイプの内周形状と異なる外周形状を有する請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記複数のスペーサのうち少なくとも1つは、前記シールドパイプの前記曲げ部に配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記複数のスペーサのうち少なくとも1つは、前記シールドパイプの長さ方向において前記シールドパイプの前記曲げ部と隣接する位置に配置されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記複数のスペーサは、前記シールドパイプの長さ方向において前記曲げ部の両側に隣接して配置された2つの前記スペーサを含む請求項5に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記第1位置補正部と前記第2位置補正部は、前記連結部と一体とされている請求項
1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
複数のスペーサが連結部によって相互に連結された構造を有するスペーサユニットを準備し、前記複数のスペーサの各々に形成された貫通孔に電線を挿通して前記スペーサユニットを前記電線に取り付け、
前記スペーサユニットが取り付けられた前記電線を曲げ加工前のシールドパイプの素管に挿入し、
前記複数のスペーサにおいて前記シールドパイプの第1端部に最も近い位置に配置された第1スペーサを前記第1端部側に引き、前記複数のスペーサにおいて前記シールドパイプの第2端部に最も近い位置に配置された第2スペーサを前記第2端部側に引いて、前記複数のスペーサを前記シールドパイプの長さ方向において前記シールドパイプと位置決めし、
前記複数のスペーサを前記シールドパイプに対して位置決めした状態で前記シールドパイプに湾曲した曲げ部を形成するワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネス,ワイヤハーネスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車などにおけるインバータ装置やモータなどの機器間を接続する場合、電線の保護機能と電気的なシールド機能とを得るために、シールドパイプを備えたワイヤハーネスが用いられる。ワイヤハーネスは、例えば特許文献1に示されたシールド導電路のように、複数の電線が導電性のシールドパイプに挿通された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤハーネスは、車両における配索経路に応じた形状とされていることが必要であるが、シールドパイプを備えるワイヤハーネスでは、シールドパイプの曲げ加工が必要になる。即ち、まっすぐなシールドパイプの素管に電線が挿通された後、素管がパイプベンダーによって必要な形状に曲げられることにより、シールドパイプを備えるワイヤハーネスが車両における配索経路に応じた形状とされる。
【0005】
しかしながら、電線はシールドパイプに対して隙間をもって挿通されているにすぎないことから、例えばシールドパイプを曲げ加工する際には、電線がシールドパイプ内で移動し得る。電線がシールドパイプ内で移動すると、例えば、シールドパイプの曲げ加工によってシールドパイプ内における電線の配索経路が変化し、その結果、シールドパイプから両側へ突出する電線の突出長さが変化してしまうことが考えられた。
【0006】
そこで、シールドパイプ内において電線の移動を抑制して、シールドパイプから両側へ突出する電線の突出長さのばらつきを抑えることができる、新規な構造のワイヤハーネス,ワイヤハーネスの製造方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線が貫通して少なくとも一部が湾曲する曲げ部とされたシールドパイプと、前記シールドパイプの内部に配される複数のスペーサを有するスペーサユニットとを備え、前記複数のスペーサは前記シールドパイプの長さ方向において互いに離隔しており、前記複数のスペーサの各々は貫通孔を有し、前記電線は前記貫通孔を貫通し、前記電線の外周面は前記貫通孔の内周面に密着しており、前記スペーサユニットは、前記複数のスペーサを相互に連結する連結部を有し、前記シールドパイプは第1端部と第2端部とを有し、前記スペーサユニットの前記複数のスペーサは、前記第1端部に最も近い第1スペーサと前記第2端部に最も近い第2スペーサとを含み、前記スペーサユニットは、前記第1スペーサから前記第1端部に向かって延びる第1位置補正部と、前記第2スペーサから前記第2端部に向かって延びる第2位置補正部とを有し、前記第1スペーサと前記第2スペーサは、何れも四角形断面をもって前記シールドパイプの長さ方向に延びており、前記第1スペーサの対角部分にそれぞれ前記第1位置補正部が固定され、前記第2スペーサの対角部分にそれぞれ前記第2位置補正部が固定されているものである。
本開示のワイヤハーネスの製造方法は、複数のスペーサが連結部によって相互に連結された構造を有するスペーサユニットを準備し、前記複数のスペーサの各々に形成された貫通孔に電線を挿通して前記スペーサユニットを前記電線に取り付け、前記スペーサユニットが取り付けられた前記電線を曲げ加工前のシールドパイプの素管に挿入し、前記複数のスペーサにおいて前記シールドパイプの第1端部に最も近い位置に配置された第1スペーサを前記第1端部側に引き、前記複数のスペーサにおいて前記シールドパイプの第2端部に最も近い位置に配置された第2スペーサを前記第2端部側に引いて、前記複数のスペーサを前記シールドパイプの長さ方向において前記シールドパイプと位置決めし、前記複数のスペーサを前記シールドパイプに対して位置決めした状態で前記シールドパイプに湾曲した曲げ部を形成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワイヤハーネスにおいて、シールドパイプ内において電線の移動を抑制して、シールドパイプから両側へ突出する電線の突出長さのばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のワイヤハーネスをシールドパイプが取り除かれた状態で示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示されたワイヤハーネスを構成するスペーサの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示されたワイヤハーネスを構成するスペーサユニットの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示されたワイヤハーネスを構成する電線ユニットの斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示された電線ユニットをシールドパイプの素管に挿通した状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係るワイヤハーネスの一部を、シールドパイプを切断した状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスは、
(1)電線と、前記電線が貫通し、少なくとも一部が湾曲する曲げ部とされたシールドパイプと、前記シールドパイプの内部に配される複数のスペーサを有するスペーサユニットとを、備え、前記複数のスペーサは、前記シールドパイプの長さ方向において互いに離隔しており、前記複数のスペーサの各々は貫通孔を有し、前記電線は前記貫通孔を貫通し、前記電線の外周面は前記貫通孔の内周面に密着しているワイヤハーネスである。
【0011】
本開示に記載されたワイヤハーネスによれば、電線が複数のスペーサによってシールドパイプ内において位置決めされることから、電線のシールドパイプ内での経路が大きく変化しない。それゆえ、スペーサによって位置決めされていない場合と比べて、シールドパイプに曲げ加工を施す際にシールドパイプから突出する電線の長さの変化幅をより小さくでき、例えばワイヤハーネスの機器に対する接続作業性を向上できる。
【0012】
また、電線が挿通されたシールドパイプの素管に曲げ加工を施して曲げ部を形成する際に、電線がスペーサによってシールドパイプと位置決めされていることにより、電線が曲げ部においてシールドパイプに強く押し付けられるのを防ぐことができる。それゆえ、例えば、電線の絶縁被覆がシールドパイプに強く押し付けられて圧縮されるのを防ぐことができて、電線の絶縁破壊を防ぐことができる。したがって、電線の絶縁被覆による電気絶縁性を確保しつつ、電線の絶縁被覆をより薄くすることが可能となる。
【0013】
電線の外周面が貫通孔の内周面においてスペーサに密着していることから、スペーサが電線に対して電線の長さ方向に移動し難く、複数のスペーサを電線に対して長さ方向の適切な位置に配置することができる。
【0014】
(2)前記複数のスペーサと前記シールドパイプとの間に隙間を有することが好ましい。例えば、スペーサをシールドパイプに摺接させながら挿入する場合に、スペーサとシールドパイプの間に作用する摩擦抵抗が低減され、スペーサのシールドパイプへの挿入作業が容易になると共に、スペーサの電線に対する位置ずれが生じ難くなる。また、シールドパイプの曲げ加工による外力がスペーサに及ぼされる場合に、スペーサとシールドパイプの間の隙間が緩衝領域となって、スペーサに及ぼされる力が低減され得る。また、複数のスペーサによって区切られるシールドパイプの内周空間が隙間を通じて連通されることにより、局所的な熱籠りによる温度上昇を抑えることができ、ワイヤハーネスの放熱性の向上が図られる。
【0015】
(3)上記(2)において、前記シールドパイプは円形の内周形状を有し、前記複数のスペーサは前記シールドパイプの内周形状と異なる外周形状を有することが好ましい。スペーサの外周形状をシールドパイプの内周形状である円形とは異なる形状とすることにより、スペーサとシールドパイプの間の隙間を容易に設けることができる。
【0016】
(4)前記複数のスペーサのうち少なくとも1つは、前記シールドパイプの前記曲げ部に配置されていることが好ましい。電線がシールドパイプの曲げ部においてスペーサによって位置決めされることにより、電線が曲げ部において湾曲の内周側に接近することなく、所定の経路で延びるようにすることができる。さらに、電線が曲げ部の湾曲の内周側においてシールドパイプに押し付けられるのを防ぐことができて、電線の絶縁破壊や絶縁被覆の摩耗を防ぐことができる。また、例えば、スペーサを弾性体としたり、スペーサとシールドパイプの間に隙間を設けるなどすれば、シールドパイプを曲げ加工して曲げ部を形成する際に、シールドパイプの変形によって電線に及ぼされる力を低減することができる。
【0017】
(5)前記複数のスペーサのうち少なくとも1つは、前記シールドパイプの長さ方向において前記シールドパイプの前記曲げ部と隣接する位置に配置されていることが好ましい。曲げ部と隣接する位置において電線がスペーサによって位置決めされることにより、電線が曲げ部において湾曲の内周側に接近するのを防ぐことができ、電線の端部をシールドパイプから所定の長さだけ突出させることができる。さらに、電線が曲げ部の湾曲の内周側においてシールドパイプに押し付けられるのを防いで、電線の絶縁破壊や絶縁被覆の摩耗等が防止される。また、スペーサが曲げ部を外れて配置されていることから、シールドパイプの素管を曲げ加工して曲げ部を形成する際に、シールドパイプの変形による力がスペーサに作用し難く、スペーサの破損等が回避される。
【0018】
(6)上記(5)において、前記複数のスペーサは、前記シールドパイプの長さ方向において前記曲げ部の両側に隣接して配置された2つの前記スペーサを含むことが好ましい。電線が曲げ部の両側においてスペーサによって位置決めされることにより、電線がシールドパイプ内において曲げ部の湾曲の内周側に接近するのをより効果的に防ぐことができる。
【0019】
(7)前記スペーサユニットは、前記複数のスペーサを相互に連結する連結部を有することが好ましい。これによれば、少なくとも1つのスペーサをシールドパイプに対して適切な位置に位置決めすることにより、連結部によって連結された全てのスペーサをシールドパイプに対して簡単に位置決めすることができる。
【0020】
(8)上記(7)において、前記シールドパイプは第1端部と第2端部とを有し、前記スペーサユニットの前記複数のスペーサは、前記第1端部に最も近い第1スペーサと前記第2端部に最も近い第2スペーサとを含み、前記スペーサユニットは、前記第1スペーサから前記第1端部に向かって延びる第1位置補正部と、前記第2スペーサから前記第2端部に向かって延びる第2位置補正部とを有することが好ましい。
【0021】
第1位置補正部を第1端部に向かって引き、第2位置補正部を第2端部に向かって引くことにより、連結部によって相互に連結された複数のスペーサをシールドパイプ内において適切な位置に移動させることができる。なお、スペーサをシールドパイプに対して位置決めする際には、複数のスペーサのシールドパイプに対する位置ずれの態様によって、第1位置補正部と第2位置補正部の両方を引いてもよいし、第1位置補正部と第2位置補正部のいずれか一方だけを引いてもよい。
【0022】
(9)上記(8)において、前記第1位置補正部と前記第2位置補正部は、前記連結部と一体とされていることが好ましい。第1位置補正部と第2位置補正部が連結部と一体であることによって、部品点数の削減が図られるからである。
【0023】
(10)上記(8)または(9)において、前記第1スペーサと前記第2スペーサは、何れも四角形断面をもって前記シールドパイプの長さ方向に延びており、前記第1スペーサの対角部分にそれぞれ前記第1位置補正部が固定され、前記第2スペーサの対角部分にそれぞれ前記第2位置補正部が固定されていることが好ましい。
【0024】
シールドパイプ内のスペーサが傾いたとしても、第1スペーサの対角部分にそれぞれ固定された第1位置補正部を適宜に引くことによってスペーサの傾きを補正することができる。同様に、シールドパイプ内のスペーサが傾いたとしても、第2スペーサの対角部分にそれぞれ固定された第2位置補正部を適宜に引くことによってスペーサの傾きを補正することができる。
【0025】
第1スペーサの対角部分にそれぞれ固定された第1位置補正部を同時に引くことによって、第1スペーサに及ぼされるモーメントが低減されて、第1スペーサの傾動等が抑制される。同様に、第2スペーサの対角部分にそれぞれ固定された第2位置補正部を同時に引くことによって、第2スペーサに及ぼされるモーメントが低減されて、第2スペーサの傾動等が抑制される。
【0026】
本開示のワイヤハーネスの製造方法は、
(11)複数のスペーサが連結部によって相互に連結された構造を有するスペーサユニットを準備し、前記複数のスペーサの各々に形成された貫通孔に電線を挿通して前記スペーサユニットを前記電線に取り付け、前記スペーサユニットが取り付けられた前記電線を曲げ加工前のシールドパイプの素管に挿入し、前記複数のスペーサにおいて前記シールドパイプの第1端部に最も近い位置に配置された第1スペーサを前記第1端部側に引き、前記複数のスペーサにおいて前記シールドパイプの第2端部に最も近い位置に配置された第2スペーサを前記第2端部側に引いて、前記複数のスペーサを前記シールドパイプの長さ方向において前記シールドパイプと位置決めし、前記複数のスペーサを前記シールドパイプに対して位置決めした状態で前記シールドパイプに湾曲した曲げ部を形成するワイヤハーネスの製造方法である。
【0027】
シールドパイプの素管に曲げ部を形成する曲げ加工に際して、シールドパイプ内における電線の経路の変化がスペーサによって抑制されることから、シールドパイプの両側において必要な電線の突出量を確保することができる。また、電線をシールドパイプの素管に挿入してからシールドパイプに曲げ部を形成しても、電線がシールドパイプ内においてスペーサによって位置決めされていることにより、電線がシールドパイプに押し当てられることによる電線の絶縁破壊等が防止される。シールドパイプの素管にスペーサユニットを挿入した状態において、両端の第1スペーサと第2スペーサを適宜に引くことにより、連結部によって連結された複数のスペーサを素管の長さ方向に移動させて、複数のスペーサを素管に対して位置決めすることができる。
【0028】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のワイヤハーネス,ワイヤハーネスの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、
図1から
図7を参照しつつ説明する。ワイヤハーネス10は、
図1から
図3に示すように、2本の電線12がシールドパイプ14に挿通された構造を有している。以下の説明において、上方向とは
図1中のZ方向、前方向とは
図1中のX方向、右方向とは
図1中のY方向として説明する。なお、ここで言う上方向、前方向、右方向は、ワイヤハーネス10が取り付けられる車両の上方向、前方向、右方向とは、必ずしも一致しない。また、以下の説明において、長さ方向とは、原則として、シールドパイプ14の長さ方向を言う。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0030】
<電線12>
電線12は、
図2に示すように、導電体の単線または撚り線で構成された芯線16の外側に、合成樹脂などによって形成された絶縁被覆18が設けられた絶縁電線とされている。電線12の芯線16および絶縁被覆18は、公知の一般的な材料によって形成される。電線12は、シールドパイプ14よりも長さが長くされており、両端部には図示しないコネクタが芯線16に導通された状態で取り付けられている。電線12は、輸送,管理,製造工程等において、撓みが生じ難い程度に変形剛性が大きくてもよいし、撓みが比較的容易に生じる程度に変形剛性が小さくてもよい。
【0031】
<スペーサ20>
電線12は、
図3に示すように、複数のスペーサ20が取り付けられている。スペーサ20は、
図4に示すように、略直方体とされており、略一定の四角形断面で長さ方向に延びている。スペーサ20は、ゴムや樹脂エラストマ等で形成されており、ゴム状弾性を有して弾性的に変形可能とされていることが望ましい。スペーサ20は、長さ方向に貫通する2つの貫通孔22を備えている。貫通孔22は、電線12の外周形状に対応する孔断面形状を有しており、好適には、電線12の外径よりも小さい内径で形成されている。また、スペーサ20は、長さ方向に貫通する2つの挿通孔24を備えている。挿通孔24は、貫通孔22よりもスペーサ20の外側に設けられており、本実施形態では、スペーサ20の対角部分にそれぞれ配されている。
【0032】
複数のスペーサ20は、後述する第1端部38側の端に位置する第1スペーサ20aと、後述する第2端部40側の端に位置する第2スペーサ20bと、それら第1スペーサ20aと第2スペーサ20bの間に配される複数の第3スペーサ20cとを含む。複数のスペーサ20は、長さ方向において相互に離隔して配されている。なお、第1スペーサ20aと第2スペーサ20bと第3スペーサ20cは、本実施形態において同一の部材とされて部品の共通化が図られているが、外形,サイズ,形成材料等が互いに異なっていてもよい。
【0033】
<スペーサユニット34>
複数のスペーサ20は、スペーサ20の挿通孔24に挿通された線条体26によって相互に連結されている。線条体26は、可撓性を有する紐やワイヤなどで形成されている。線条体26は、複数のスペーサ20の間に位置して複数のスペーサ20を相互に連結する連結部28を備えている。線条体26は、第1スペーサ20aから後述する第1端部38に向けて長さ方向の更に外側へ延び出す第1位置補正部30と、第2スペーサ20bから後述する第2端部40に向けて長さ方向の更に外側へ延び出す第2位置補正部32とを備えている。本実施形態では、連結部28と第1位置補正部30と第2位置補正部32が、長さ方向に連続する線条体26として一体形成されていることから、部品点数の削減が図られている。もっとも、連結部28と第1位置補正部30と第2位置補正部32は、互いに独立してそれぞれ設けられていてもよい。
【0034】
複数のスペーサ20は、挿通孔24に線条体26が挿通されて、線条体26が各スペーサ20に固定されることにより、相互に所定の距離を隔てて連結されている。そして、複数のスペーサ20を含んで、
図5に示すスペーサユニット34が構成されている。スペーサユニット34は、複数のスペーサ20と、連結部28と第1位置補正部30と第2位置補正部32とを含む線条体26とを、含んで構成されている。複数のスペーサ20が連結部28によって連結されてスペーサユニット34を構成することにより、複数のスペーサ20を一体的に取り扱うことが可能となり、輸送,保管,電線12の挿通作業などが容易になり得る。なお、スペーサユニット34において、複数のスペーサ20は、線条体26の連結部28によって長さ方向の離隔距離の上限が設定されている。
【0035】
本実施形態では、2本の第1位置補正部30が設けられて、それら第1位置補正部30が第1スペーサ20aの対角部分にそれぞれ固定されている。これにより、2本の第1位置補正部30の張力が第1スペーサ20aに作用する場合に、各第1位置補正部30の張力に基づいて第1スペーサ20aに及ぼされるモーメントが低減される。このように、好適には、複数の第1位置補正部30は、各第1位置補正部30の張力に基づいて第1スペーサ20aに及ぼされるモーメントが互いに低減し合うように、第1スペーサ20aに対する接続位置が設定される。このことは、2本の第2位置補正部32が第2スペーサ20bの対角部分にそれぞれ固定されていることによっても同様である。即ち、複数の第2位置補正部32の第2スペーサ20bに対する接続位置は、各第2位置補正部32の張力に基づいて第2スペーサ20bに及ぼされるモーメントが互いに低減し合うように設定されることが好ましい。
【0036】
<電線ユニット35>
図6に示すように、スペーサユニット34を構成する各スペーサ20の貫通孔22には、電線12が挿通されており、電線12とスペーサユニット34によって電線ユニット35が構成されている。電線ユニット35において、電線12の外周面は、貫通孔22の内周面においてスペーサ20に密着している。本実施形態では、電線12が貫通孔22を弾性的に押し広げており、スペーサ20の弾性によってスペーサ20が電線12の外周面に押し付けられている。このように、スペーサ20が電線12に密着して装着されることにより、スペーサ20が電線12に対して長さ方向において位置決めされている。電線12は、スペーサ20に対して長さ方向の位置が固定されていてもよいが、スペーサ20に対して長さ方向に移動可能な状態で位置決めされていてもよい。
【0037】
<シールドパイプ14>
電線ユニット35は、
図3に示すように、シールドパイプ14に挿通されている。シールドパイプ14は、導電性材料で形成されており、例えばアルミニウム合金などの金属によって形成されている。シールドパイプ14は、略円形断面で延びる筒状とされて、長さ方向に貫通する内孔36を有している。シールドパイプ14は、前端である長さ方向の一端部が第1端部38とされていると共に、後端である他端部が第2端部40とされている。なお、シールドパイプ14は、
図3において、収容された電線ユニット35を把握し易いように、二点鎖線によって仮想的に図示されている。
【0038】
シールドパイプ14は、
図1に示すように、長さ方向の複数箇所に曲げ部42を有しており、それら複数の曲げ部42の間が直線的に延びるストレート部44とされている。複数の曲げ部42は、上下方向に湾曲していてもよいし、左右方向に湾曲していてもよく、互いに異なる方向に湾曲し得る。したがって、シールドパイプ14は、平面的に延びる形状に限定されず、立体的に延びる形状とされ得る。
【0039】
電線ユニット35を構成するスペーサ20は、シールドパイプ14内に配されている。本実施形態のスペーサ20は、いずれもシールドパイプ14のストレート部44に配置されている。また、少なくとも1つのスペーサ20は、シールドパイプ14の複数の曲げ部42に対して、長さ方向に隣接する位置に配置されている。本実施形態では、シールドパイプ14の各曲げ部42に対して長さ方向に隣接する両側には、それぞれスペーサ20が配置されている。なお、曲げ部42に対して長さ方向に隣接する位置とは、ストレート部44において曲げ部42につながる部分をいうものであり、厳密に曲げ部42の両端と接する位置だけには限定されない。したがって、スペーサ20が曲げ部42から多少の距離を隔てたストレート部44に配される場合にも、実質的に曲げ部42と隣接して位置するとみなすことができる。
【0040】
<隙間46>
図2に示すように、電線ユニット35を構成するスペーサ20は、シールドパイプ14内に配されて、シールドパイプ14の内周面に押し付けられている。これにより、スペーサ20は、シールドパイプ14に対して、長さ方向において位置決めされている。スペーサ20は、外周面がシールドパイプ14の内周面に対して部分的に押し付けられており、外周面においてシールドパイプ14の内周面から離れた部分が設けられている。このように、シールドパイプ14の内周面の断面形状と、スペーサ20の外周面の断面形状が相互に異なっていることにより、スペーサ20の外周面とシールドパイプ14の内周面との間には、長さ方向に貫通する隙間46が形成されている。隙間46は、長さ方向と交差する方向におけるスペーサ20とシールドパイプ14の重ね合わせ面間に形成されている。本実施形態では、シールドパイプ14の内周面が円形の断面形状を有していると共に、スペーサ20の外周面が、シールドパイプ14の内周面とは異なる長方形の断面形状を有しており、スペーサ20に対する上下方向の両側にそれぞれ隙間46が設けられている。したがって、本実施形態では、スペーサ20をシールドパイプ14へ挿入するだけで、断面形状の違いにより隙間46が容易に形成される。
【0041】
<ワイヤハーネス10の製造方法>
上記のような構成を有するワイヤハーネス10は、例えば以下のようにして製造される。先ず、複数のスペーサ20と2本の線条体26を準備し、線条体26を各スペーサ20の挿通孔24に挿通固定して、
図5に示すスペーサユニット34を形成する。このように、複数のスペーサ20が線条体26によって相互に連結されてスペーサユニット34を構成することにより、複数のスペーサ20を一体の部品として取り扱うことが可能となる。
【0042】
次に、2本の電線12を準備し、電線12をスペーサユニット34を構成する各スペーサ20の貫通孔22に挿通して、
図6に示す電線ユニット35を形成する。電線ユニット35において、スペーサユニット34の各スペーサ20が、電線12に対して密着して位置決めされることから、電線12をスペーサユニット34と一体の部品として取り扱うことができる。
【0043】
次に、曲げ部42が形成されていないシールドパイプ14の素管48を準備し、
図7に示すように、電線ユニット35を素管48に挿通する。素管48は、曲げ部42を備えていないことからも分かるように、全体が直線的に延びる直管とされていることから、電線ユニット35の挿通作業が容易である。素管48は、全体が略一定の円形断面を有している。
【0044】
次に、素管48に挿通された電線ユニット35において、線条体26の第1位置補正部30を素管48の第1端部38側へ引くと共に、線条体26の第2位置補正部32を素管48の第2端部40側へ引く。これにより、第1スペーサ20aと第2スペーサ20bを、素管48に対して所定の位置まで引いて移動させ、素管48に対して適切な長さ方向の位置に位置決めする。また、第1スペーサ20aと第2スペーサ20bは、複数の第3スペーサ20cに対して線条体26の連結部28によって連結されている。それゆえ、線条体26の第1位置補正部30と第2位置補正部32を両側へ引くことによって、複数のスペーサ20を連結部28の長さによって規定される相互に最も離隔した位置に移動させることができる。したがって、第1位置補正部30と第2位置補正部32を引く簡単な操作によって、電線12に対するスペーサ20の位置ずれ,電線12および線条体26の撓み等を解消し、複数のスペーサ20を素管48に対して長さ方向の適切な位置に配置することができる。例えば、第1位置補正部30と第2位置補正部32に目印を設けて、目印が所定の位置となるように第1位置補正部30と第2位置補正部32を引くことにより、素管48内のスペーサ20を目視することなく位置決めすることができる。
【0045】
第1位置補正部30は、第1スペーサ20aの対角方向の両側にそれぞれ設けられており、2本の第1位置補正部30に作用する第1端部38側への引張力に基づいて、第1スペーサ20aには、相互に低減し合う向きのモーメントが作用する。それゆえ、第1位置補正部30を引っ張ることによる第1スペーサ20aの傾動が抑えられて、第1スペーサ20aが適切な向きに保たれ易くなる。同様に、第2位置補正部32は、第2スペーサ20bの対角方向の両側にそれぞれ設けられており、2本の第2位置補正部32に作用する第2端部40側への引張力に基づいて、第2スペーサ20bには、相互に低減し合う向きのモーメントが作用する。それゆえ、第2位置補正部32を引っ張ることによる第2スペーサ20bの傾動が抑えられて、第2スペーサ20bが適切な向きに保たれ易くなる。
【0046】
しかも、第1スペーサ20aが傾いた場合には、例えば第1位置補正部30のいずれか一方だけを引くことにより、第1スペーサ20aの傾きを補正することもできる。同様に、第2スペーサ20bが傾いた場合には、例えば第2位置補正部32のいずれか一方だけを引くことにより、第2スペーサ20bの傾きを補正することもできる。
【0047】
線条体26は、後述する素管48の曲げ加工前に複数のスペーサ20を素管48に対して位置決めするものであり、素管48の曲げ加工の途中や完了後に破断しても問題ない。また、線条体26は、素管48の曲げ加工時等に大きな力が加わる場合に、伸長するように弾性変形或いは塑性変形するようになっていてもよい。
【0048】
本実施形態では、素管48の内径は、スペーサ20の対角方向の外寸よりも小さくされており、スペーサ20が少なくとも角部において素管48の内周面に接しながら挿入される。それゆえ、スペーサ20と素管48の間に摩擦力が作用して、スペーサ20が電線12に対して長さ方向に移動したり、電線12および連結部28に撓みが生じる場合がある。しかしながら、電線12は、スペーサ20の貫通孔22を押し広げるように貫通孔22へ挿通されており、電線12の外周面が貫通孔22の内周面においてスペーサ20に密着している。これにより、スペーサ20と素管48の間に摩擦力が作用したとしても、スペーサ20は電線12に対して長さ方向に移動し難い。また、スペーサ20と素管48の間には、上下両側に隙間46が設けられていることから、スペーサ20を素管48に挿入する際にスペーサ20と素管48の間に作用する摩擦力が、隙間46がない場合に比して小さくなっている。それゆえ、スペーサ20の素管48への挿入が容易であり、電線12や素管48に対するスペーサ20の位置ずれが抑えられる。もっとも、素管48の内径は、スペーサ20の対角方向の外寸よりも大きくされていてもよく、例えば素管48がスペーサ20の配置部分において縮径加工されることによって、スペーサ20の外周面が素管48の内周面に押し付けられるようにしてもよい。
【0049】
次に、電線ユニット35が挿通された素管48を図示しないパイプベンダーによって曲げ加工し、車両におけるワイヤハーネス10の配索経路に応じた複数の曲げ部42を形成する。素管48の曲げ加工前に、第1位置補正部30と第2位置補正部32に対する引張力の入力は解除されていることが好ましい。素管48を加工して所定の曲げ部42を形成することによって、シールドパイプ14が構成され、
図1に示すようなシールドパイプ14を備えるワイヤハーネス10を得ることができる。曲げ部42の形成前にスペーサ20が素管48に対して位置決めされていることから、曲げ部42が形成されたシールドパイプ14において、スペーサ20が曲げ部42に隣接する両側等の所定位置に配されている。シールドパイプ14において、曲げ部42の形成数,位置,曲率,湾曲方向などは、いずれも図示しない車両におけるワイヤハーネス10の配索経路に応じて適宜に設定される。
【0050】
このようなワイヤハーネス10によれば、シールドパイプ14内において電線12の経路変化が制限されていることにより、シールドパイプ14の両端に対する電線12の突出長さがばらつきを抑制されて安定する。それゆえ、例えば、電線12の端部が車両の機器(図示せず)に対して届かなくなることがなく、電線12と機器の接続作業性の向上が図られる。
【0051】
電線12が複数のスペーサ20によってシールドパイプ14に対して位置決めされていることから、電線12のシールドパイプ14内での移動が制限されている。それゆえ、シールドパイプ14内において電線12の配索経路が大きく変化することなく保持され、電線12が曲げ部42においてシールドパイプ14に押し付けられることがない。その結果、電線12の絶縁被覆18が圧縮されることによる電線12とシールドパイプ14の短絡が防止されると共に、絶縁被覆18の耐久性の向上が図られる。また、絶縁被覆18がシールドパイプ14への押し付けによって薄くなることを想定する必要がないことから、より薄い絶縁被覆18を採用することも可能になる。
【0052】
例えば、シールドパイプ14が、複数の曲げ部42によって、上下方向に延びる部分と左右方向に延びる部分の両方を有する立体的に延びる形状とされている場合には、素管48に複数の曲げ部42を形成する工程において、鉛直方向に対する素管48の向きが各曲げ部42の曲げ方向に応じて変えられる。その結果、素管48に挿通された電線12は、重力や遠心力等の作用によって素管48内で移動しようとする。このような場合にも、電線12が複数のスペーサ20によってシールドパイプ14に対して位置決めされていることから、シールドパイプ14内において電線12の配索経路が大きく変化することなく保持される。
【0053】
ワイヤハーネス10において、スペーサ20は、シールドパイプ14の曲げ部42を外れた位置に配されており、特に曲げ部42と長さ方向において隣接する位置に配されている。これにより、曲げ部42を形成する際の外力がスペーサ20に直接的に及ぼされるのを防いで、スペーサ20の耐久性を確保しつつ、電線12が曲げ部42において湾曲の内側に接近して延びるのを防いで、電線12が曲げ部42に押し付けられるのを防止できる。スペーサ20が曲げ部42と隣接する両側にそれぞれ配されていることによって、曲げ部42において電線12をより効果的に位置決めすることができて、電線12が曲げ部42の湾曲の内側においてシールドパイプ14に押し付けられるのを防止できる。
【0054】
本実施形態では、スペーサ20が曲げ部42と隣接する位置に配されていることから、素管48の断面形状が曲げ部42において変形する際に、素管48からスペーサ20へ外力が及ぼされることも考えられる。その場合に、スペーサ20と素管48の間に隙間46が設けられていることから、スペーサ20の外周面の全体が素管48によって拘束される場合に比して、スペーサ20に作用する応力が低減され、スペーサ20の耐久性の向上が図られ得る。
【0055】
シールドパイプ14の内孔36において、スペーサ20に対する長さ方向の両側が隙間46を通じて相互に連通されており、内孔36がスペーサ20による密封領域を持つことなく外部空間に開放されている。それゆえ、内孔36において局所的な温度上昇が防止されて、ワイヤハーネス10の放熱性能の向上が図られる。
【0056】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)前記実施形態1では、スペーサ20がシールドパイプ14の曲げ部42に隣接する両側においてシールドパイプ14のストレート部44に配されていたが、スペーサ20は、
図8に示す実施形態2に係るワイヤハーネス50のように、少なくとも1つが曲げ部42に配置されていてもよい。このように、スペーサ20をシールドパイプ14の曲げ部42に配すれば、電線12とシールドパイプ14の接触が生じ易い曲げ部42において、電線12をシールドパイプ14内の所定位置により強固に位置決めすることができる。その結果、電線12がシールドパイプ14に押し付けられることによる電線12の絶縁破壊や絶縁被覆18の摩耗等を、より効果的に防ぐことができる。
【0058】
スペーサ20を曲げ部42に配すると、シールドパイプ14の素管48に曲げ部42を形成する際に、素管48の変形に伴う外力がスペーサ20へ入力され易くなる。そこで、前記実施形態1のように、スペーサ20とシールドパイプ14の間に隙間46を設けることにより、隙間46が緩衝領域として機能して、スペーサ20に作用する力が低減され得る。また、スペーサ20の外周面に自由表面が設けられることにより、スペーサ20の応力が低減されて、スペーサ20から電線12に伝達される力が小さくなり得る。
【0059】
(2)スペーサ20の外周形状(外周面の断面形状)は、シールドパイプ14の内周形状(内周面の断面形状)である円形と異なる形状であれば、前記実施形態1のような矩形以外の形状であったとしても、隙間46を容易に形成することが可能になる。具体的には、スペーサ20の外周形状は、例えば、矩形以外の多角形,楕円形,異形等であってもよい。
【0060】
(3)複数のスペーサ20は、シールドパイプ14の周方向において前記実施形態1のようにすべてが同じ向きとされていてもよいし、少なくとも1つが異なる向きで配されていてもよい。
【0061】
(4)シールドパイプ14に挿通される電線12の数は、3本以上であってもよく、その場合には、少なくとも2本の電線12がスペーサ20の貫通孔22に挿通されていればよい。なお、シールドパイプ14に挿通される電線12の数は、1本でも良い。
【0062】
(5)第1位置補正部30と第2位置補正部32は、部品点数やスペーサ20の傾き等を考慮すると、実施形態1のように2本であることが望ましいが、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。連結部28も1本或いは3本以上であってもよい。なお、第1位置補正部30と第2位置補正部32と連結部28は、形成数,配置,長さ,断面形状などが相互に異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 ワイヤハーネス(実施形態1)
12 電線
14 シールドパイプ
16 芯線
18 絶縁被覆
20 スペーサ
20a 第1スペーサ
20b 第2スペーサ
20c 第3スペーサ
22 貫通孔
24 挿通孔
26 線条体
28 連結部
30 第1位置補正部
32 第2位置補正部
34 スペーサユニット
35 電線ユニット
36 内孔
38 第1端部
40 第2端部
42 曲げ部
44 ストレート部
46 隙間
48 素管
50 ワイヤハーネス(実施形態2)