IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タツノの特許一覧

<>
  • 特許-ガス充填装置 図1
  • 特許-ガス充填装置 図2
  • 特許-ガス充填装置 図3
  • 特許-ガス充填装置 図4
  • 特許-ガス充填装置 図5
  • 特許-ガス充填装置 図6
  • 特許-ガス充填装置 図7
  • 特許-ガス充填装置 図8
  • 特許-ガス充填装置 図9
  • 特許-ガス充填装置 図10
  • 特許-ガス充填装置 図11
  • 特許-ガス充填装置 図12
  • 特許-ガス充填装置 図13
  • 特許-ガス充填装置 図14
  • 特許-ガス充填装置 図15
  • 特許-ガス充填装置 図16
  • 特許-ガス充填装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20231120BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20231120BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F17C5/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022009044
(22)【出願日】2022-01-25
(65)【公開番号】P2023108085
(43)【公開日】2023-08-04
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野谷 哲平
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133825(JP,A)
【文献】特開2001-173896(JP,A)
【文献】特開2004-022487(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203721(WO,A1)
【文献】特開2020-060283(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111547670(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F17C 5/06
B67D 7/40
B66D 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給源からガスの流量を計測しながらガス管路を介して搬送する充填機構を本体ハウジング内に備え、前記充填機構の前記ガス管路の出口に接続される充填ホースと、該充填ホースの先端に備えられる充填ノズルとを有するガス充填装置において、
充填ノズルにワイヤを取り付け、当該ワイヤをガス充填装置上部のサポート用アーム機構で支持しており、当該サポート用アーム機構にはワイヤに常時引張力を付加しているワイヤ巻き取りユニットが設けられており、当該引張力は充填ノズルに作用する重力に比較して小さく設定されており、
前記ワイヤにはストッパが取り付けられ、
前記サポート用アーム機構の先端部には充填ノズルが落下した際にストッパと当接する係止部材が設けられており、
前記ストッパと前記係止部材の間の領域に緩衝用弾性部材が配置されており、
前記緩衝用弾性部材の端部には緩衝材が取り付けられていることを特徴とするガス充填装置。
【請求項2】
前記緩衝用弾性部材にワイヤが貫通しており、前記緩衝用弾性部材の両端部に緩衝材が取り付けられている請求項のガス充填装置。
【請求項3】
前記緩衝用弾性部材がストッパに取り付けられており、前記緩衝用弾性部材の係止部材側端部のみに緩衝材が取り付けられている請求項のガス充填装置。
【請求項4】
前記緩衝用弾性部材が係止部材に取り付けられており、前記緩衝用弾性部材のストッパ側端部のみに緩衝材が取り付けられている請求項のガス充填装置。
【請求項5】
所定以上の引張力が作用した場合には分離する安全継手が前記ワイヤに取り付けられている請求項1~の何れか1項のガス充填装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素の様な燃料ガスを車両の燃料タンク等に充填するガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、環境に優しく、エネルギー安全保障に役立つ等の種々のメリットを有しており、水素ガスの利用技術は急速に実用化されている。
水素ガスを利用する態様の一つとして、高圧(例えば82MPa以上)に加圧された水素ガスを車両の燃料タンクへ充填している。その様な利用態様においては、高圧に耐えられるように、ガス充填装置の充填ノズルは重量が重く、更に充填ホースも重量が重いものが使用されている。
ここで、充填ホースに高圧が付加されると、更に充填ホースの重量が重くなり、水素ガス充填作業を行う作業員やユーザーに重労働を強いることになってしまう。
そのため、ガス充填装置では、充填ノズルにワイヤを取り付け、当該ワイヤをガス充填装置上部のサポートアームで支持している(特許文献1参照)。それと共に、サポートアーム基部にワイヤ巻き取りユニットを設け、ワイヤを巻き取る方向、すなわち充填ノズルを引っ張る方向に常時付勢して、作業員やユーザーの負荷軽減を図っている。
【0003】
ここで、出願人の検証の結果、巻き取る力が強いと充填ノズルで水素充填する操作がし難いという意見が、作業員やユーザーが持っていることが判明した。そのため、巻き取りユニットによる前記ワイヤの巻き取る力を弱くする方向で改良が進んでいる。
しかし、巻き取りユニットによるワイヤの巻き取る力を弱くすると、作業員或いはユーザーが充填ノズルを手放した際に、ワイヤのストッパがストッパ係止用部材と当接する際に各部材に強い衝撃が加えられて破損する恐れが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-19872号公報
【文献】特開2020-60283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、充填ノズルにワイヤを取り付け、当該ワイヤをガス充填装置上部のサポート用アーム機構で支持すると共に、サポート用アーム機構にワイヤ巻き取りユニットでワイヤを常時引っ張る様に付勢しているガス充填装置におけるワイヤの引張力を弱くして、しかも、作業員或いはユーザーが充填ノズルを手放した際にストッパがストッパ係止用部材と当接する際に各部材に強い衝撃が加えられて破損することが防止できるガス充填装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス充填装置(1)は、ガス供給源からガスの流量を計測しながらガス管路を介して搬送する充填機構を本体ハウジング(2)内に備え、前記充填機構の前記ガス管路の出口に接続される充填ホース(3)と、該充填ホース(3)の先端に備えられる充填ノズル(4)とを有するガス充填装置(1)において、
充填ノズル(4)にワイヤ(9)を取り付け、当該ワイヤ(9)をガス充填装置上部のサポート用アーム機構(5)で支持しており、当該サポート用アーム機構(5)にはワイヤ(9)に常時引張力を付加しているワイヤ巻き取りユニットが設けられており、当該引張力は充填ノズル(4)に作用する重力に比較して小さく設定されており、
前記ワイヤ(9)にはストッパ(31)が取り付けられ、
前記サポート用アーム機構(5)の先端部には充填ノズル(4)が落下した際にストッパ(31)と当接する係止部材(33)が設けられており、
前記ストッパ(31)と前記係止部材(33)の間の領域に緩衝用弾性部材(34:スプリング:例えば弦巻バネ)が配置されており、
前記緩衝用弾性部材(34)の端部には緩衝材(35)が取り付けられていることを特徴としている。
【0007】
記緩衝用弾性部材(34)にワイヤ(9)が貫通している場合には、前記緩衝用弾性部材(34)の両端部に緩衝材(35)が取り付けられているのが好ましい。
前記緩衝用弾性部材(34)がストッパ(31)(或いはストッパ31に取り付けられた弾性材料製パッキン32)に取り付けられている場合には、前記緩衝用弾性部材(34)の係止部材側端部のみに緩衝材(35)が取り付けられているのが好ましい。
或いは、前記緩衝用弾性部材(34)が係止部材(33)(或いは係止部材33に取り付けられた弾性材料製緩衝部材)に取り付けられている場合には、前記緩衝用弾性部材(34)のストッパ側端部のみに緩衝材(35)が取り付けられているのが好ましい。
【0008】
本発明において、所定以上の引張力が作用した場合には分離する安全継手(36:カップリング)が前記ワイヤ(9)に取り付けられているのが好ましい。
【0009】
本発明の実施に際して、前記サポート用アーム機構(5)にはサポート用アーム(6)の回転軸(7)の回転(回動)を規制する回転規制手段(8)を備え、前記サポート用アーム機構(5)の先端にワイヤ(9)を介して前記充填ノズル(4)に係止可能なフック(10)を備えているのが好ましい。
【0010】
また、前記回転規制手段(8)はサポート用アーム(6)の回転軸(7)に配設された凸片(11)と、本体ハウジング(2)の上部に配設された回転軸ストッパ(12)を備えているのが好ましい。
そして、サポート用アーム機構(5)の回転軸(7:サポート用アーム6の回転軸)を本体ハウジング(2)に取り付ける取付箇所には回転角度保持手段(13:トルクヒンジ)が設けられているのが好ましい。
さらに、本体ハウジング(2)の上部には、サポート用アーム機構(5)と放爆手段(14)とが配設されているのが好ましい。ここで、放爆手段(14)は、万が一において爆風が生じた場合に、本体ハウジング(2)のパネルが損傷するよりも早いタイミングで放爆パネル(14A)が開放し、爆風を逃がして、ガス充填装置(1)の周囲に被害が及ばない様な構造(放爆構造)を有している。
【0011】
また本発明の実施に際して、サポート用アーム(6)のアーム部(6A)が伸縮自在であるのが好ましい。具体的には、アーム部(6A)自体が公知の伸縮機構(入れ子式機構等)を備えて伸縮可能であっても良いし、或いは、アーム部(6A)の基部がアーム機構ハウジング(6B)に収容される長さ(或いは、アーム機構ハウジング6Bの外部に存在するサポート用アーム6の長さ)が変更可能に構成されていても良い。
また、サポート用アーム(6)のアーム収納部(6B:アーム機構ハウジング)が支持部材(或いはアーム回転軸7)に対して移動可能であるのが好ましい。
さらに、前記サポート用アーム機構(5)の基部(5A)が(或いはサポート用アーム機構5全体が)本体ハウジング(2)に対して移動可能に構成されていることが好ましい。
そして、これ等の構成を組み合わせてサポート用アーム(6)のアーム部(6A)の長さ或いは先端部(6T)の位置を適宜調整することが好ましい。
【0012】
また本発明の実施に際しては、本体ハウジング(2)には、前記フック(10)を係止する取付具(15)が設けられているのが好ましい。
そして、前記回転規制手段(8)における回転軸ストッパ(12)には、緩衝部材(16)が取り付けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する本発明によれば、本体ハウジング(2)に回転自在のサポート用アーム機構(5)を設け、前記サポート用アーム機構(5)の先端にワイヤ(9)を介して前記充填ノズル(4)に係止可能なフック(10)を備えているので、充填ノズル(4)がワイヤ(9)に吊り下げられ、充填ホース(3)及び充填ノズル(4)の重量は、サポート用アーム(6)により負担(支持)される。そのため、重量が重い充填ホース(3)及び充填ノズル(4)を用いてガス充填作業を行うに際して、サポート用アーム機構(5)により充填ホース(3)及び充填ノズル(4)の重量を支持することが出来る。
上述した様に、充填ノズル(4)を吊り下げているワイヤ(9)を引っ張る力が強いとガス充填作業に支障が生じるが、当該引張力は充填ノズル(4)に作用する重力に比較して小さく設定されており、従来のガス充填装置に比較して小さく設定されているので、ワイヤ(9)に作用する引張力によりガス充填作業に不都合が生じることが防止される。
【0014】
ここで、ワイヤ(9)に作用する引張力が充填ノズル(4)に作用する重力よりも小さいと、作業員やユーザーが充填ノズル(4)を手放してしまうと、ワイヤ(9)のストッパ(31)が係止部材(33)と当接する際に各部材に強い衝撃が加えられて破損する恐れがある。
しかし本発明によれば、前記ストッパ(31)と前記係止部材(33)の間の領域に緩衝用弾性部材(34:スプリング:例えば弦巻バネ)が配置されているので、充填ノズル(4)が落下しようとする際における係止部材(33)とストッパ(31)が当接した時の衝撃が緩和され、当該衝撃によりサポート用アーム機構(5)の各種部材が損傷することが防止できる。
本発明において、前記緩衝用弾性部材(34)の端部に緩衝材(35)が取り付けられていれば、充填ノズル(4)が落下しようとする際における係止部材(33)とストッパ(31)が当接した時の衝撃がさらに緩和される。
【0015】
本発明において、所定以上の引張力が作用した場合には分離する安全継手(36:カップリング)が前記ワイヤ(9)に取り付けられていれば、水素充填時に車両が急発進した場合に、当該カップリング(36)が分離して、ワイヤ(9)によりガス充填装置(1)が引っ張られることが防止される。充填ホースにも安全継手が設けられているので、水素充填時における車両の急発進等が生じても、ガス充填装置が引っ張られて転倒することはなく、ガス充填装置の破損が防止され、水素流出の危険性がない。
【0016】
ここで、充填ノズルを支持するサポート用アームを備えた従来の充填装置では、充填装置のケーシング外部に取り付けた部品(ストッパ)にサポート用アームを当接させることによりサポート用アームの回動(回転角度)を規制しているので、構造が大型化すると当該部品(ストッパ)も大型化させる必要がある。また、充填ノズルで充填できる領域或いは範囲が異なる複数種類のガス充填装置へ設置するためには、ストッパ部材の設置位置を種類毎に調整してサポート用アームの回転角度或いは回動範囲を調整しなければならず、係る調整作業に多大な労力及びコストが費やされてしまう。それに加えて、サポート用アーム本体にストッパが当接するので、サポート用アーム表面に傷や凹みが形成されてしまい、意匠的な面で不利益が生じてしまう。
本発明において、前記サポート用アーム機構(5)にサポート用アーム(6)の回転軸(7)の回転(回動)を規制する回転規制手段(8)を備えていれば、サポート用アーム(6)の回転角度を所定角度に調整(サポート用アーム6の可動範囲を所定範囲に調整)して、ガス充填作業の作業性を向上させることが出来る。さらに、設備全体が大型化してしまうことが防止され、新規の水素ステーションにおける設置は勿論、既存の水素ステーションにおいて設置することが出来る。
それに加えて、前記回転規制手段(8)を備えていれば、充填ノズル(4)で充填できる領域が異なる複数種類のガス充填装置(1)へ設置するに際しても、ガス充填装置(1)の種類に対応して前記サポート用アーム機構(5)の一部の部品を交換することにより、回転角度或いは回動範囲を容易に調整することが出来る。
また、サポート用アーム本体(6)は回転規制手段(8)が当接しないので、サポート用アーム(6)表面に傷や凹みが形成され難い。そのため、意匠的に(いわゆる「見た目」が)良好である。
さらに、前記回転規制手段(8)を備えていれば、アーム自体を規制するためのストッパに比較して回転規制手段(8)は大きくならず、アーム自体を規制するストッパの取り付けに要するスペースに比較して回転規制手段(8)の取付スペースも大きくない。そのため、他の形態の異なるガス充填装置に対しても容易に適用することが出来る。
【0017】
また、前記回転規制手段(8)が、サポート用アーム(6)の回転軸(7)に配設された凸片(11)と、本体ハウジング(2)の上部に配設された回転軸ストッパ(12)を備えていれば、前記凸片(11)が回転軸ストッパ(12)に当接することにより回転軸(7)の回転が規制され、充填ノズル(4)の操作(移動)範囲が規制される。それにより、充填ノズル(4)を吊り下げているワイヤ(9)が本体ハウジング(2)に接触、干渉することが防止される。
そして、サポート用アーム機構(5)の回転軸(7:サポート用アーム6の回転軸)を本体ハウジング(2)に取り付ける取付箇所に回転角度保持手段(13:トルクヒンジ)が設けられていれば、サポート用アーム(6)を移動した際に(サポート用アーム6の)慣性力によりサポート用アーム(6)が所望の位置よりも振られてしまう(回動し過ぎてしまう)事態を防止して、所望の位置で停止することが出来る。そのため、ガス充填作業において充填ノズル(4)の位置を調整し易くなり、作業性が向上する。
【0018】
さらに、本体ハウジング(2)の上部に、サポート用アーム機構(5)と放爆手段(14)とが配設されていれば、ガス充填装置(1)の設置に対する制限(ガス充填装置と道路境界線との所定距離等の制約)を充足して、水素ステーションでの配置に対する自由度が増す。
ここで、サポート用アーム機構(5)の放爆手段(14)に対する位置を選択することにより、放爆手段(14)の作動時にサポート用アーム(6)に干渉することを防止出来る。すなわち、放爆手段(14)が作動しても(扉14Aが開いても)、サポート用アーム機構(5)が扉(14A)と干渉して損傷してしまうことが防止出来る。
【0019】
また、本発明において、サポート用アーム(6)のアーム部(6A)が伸縮自在であれば、サポート用アーム(6)の長手方向端部(6T)の位置を調整して、サポート用アーム(6)がガス充填装置(1)周辺の構造物と干渉してしまうことを防止することが出来る。
ここで、サポート用アーム(6)のアーム収納部(6A)が支持部材(7:アーム回転軸)に対して移動可能に構成し、或いは、サポート用アーム機構(5)の基部(5A)が本体ハウジング(2)に対して移動可能に構成されていてもサポート用アーム(6)がガス充填装置(1)周辺の構造物と干渉してしまうことを防止することが出来る。
また、上述の構造を採用することにより、サポート用アーム機構(5)を有していない既存のガス充填装置(1)に対して、別体のサポート用アーム機構(5)を、周辺の構造物と干渉しない様に取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るガス充填装置の斜視図である。
図2】サポート用アーム機構の頂部を除去した斜視図である。
図3図2で示すサポート用アームにおける先端部の拡大図である。
図4】充填ノズルを吊り下げるワイヤに設けたストッパの拡大図である。
図5】ストッパと係止部材とスプリングの配置を示す説明図である。
図6】スプリングをストッパに取り付けた第1変形例の説明図である。
図7】スプリングを係止部材に取り付けた第2変形例の説明図である。
図8】カップリングの説明図である。
図9図8のカップリングをワイヤに取り付けた状態を示す説明図である。
図10図9の状態でカップリングが分離した状態を示す説明図である。
図11】サポート用アーム機構の回転規制手段におけるハウジングを除去した状態を示す斜視図である。
図12図11で示す回転規制手段の詳細を示す部分拡大斜視図である。
図13図12の回転規制手段において、凸片が回転軸ストッパに当接した状態を示す部分拡大斜視図である。
図14】サポート用アーム機構を図11の矢印B方向から見た拡大断面図である。
図15】サポート用アーム機構のアーム先端位置を変更する態様を示す説明図である。
図16】サポート用アーム機構のアーム先端位置を変更する態様であって、図15とは異なる態様を示す説明図である。
図17】放爆構造の作動を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、実施形態に係るガス充填装置1は、ガス供給源からガス流量を計測しつつガス管路を介して搬送する充填機構(図示せず)を本体ハウジング2内に備えており、充填機構におけるガス配管(図示せず)の出口に接続される充填ホース3と、充填ホース3の先端に備えられる充填ノズル4とを有している。図1において、符号18は、ガス充填装置1における表示器を示している。
図示の実施形態では水素ガス充填装置を例示して説明するが、CNGガス、その他のガス充填装置についても、図示の実施形態を適用することが出来る。
図示しない充填機構におけるその他の構成及び作用効果は、公知技術の充填機構と同様である。
【0022】
図1において、充填ホース3、充填ノズル4を備えた本体ハウジング2の上面(頂部面)にはサポート用アーム機構5が設けられている。サポート用アーム機構5はサポート用アーム6(アーム部6A及びアーム機構ハウジング6B:図15図16参照)、サポート用アーム6の回転軸7(図12参照)、回転軸7の回転を規制する(制限する)回転規制手段8を備えている。回転規制手段8の詳細は図11図13を参照して後述する。図1では回転規制手段8におけるハウジングのみが示されている。
サポート用アーム機構5の先端6Tからワイヤ9が垂下しており、ワイヤ9の他端(垂下した先端)はフック10(ワイヤ側フック)を有し、フック10は充填ノズル4の把持部近傍に設けられたフック取付具19に係止可能である。
ワイヤ9側のフック10を充填ノズル4側のフック取付具19に係止することにより充填ノズル4がワイヤ9に吊り下げられ、充填ホース3及び充填ノズル4の重量は、サポート用アーム6により負担(支持)される。そのため、重量が重い充填ホース3及び充填ノズル4を用いて水素充填作業を行うに際して、サポート用アーム機構5が充填ホース3及び充填ノズル4の重量を支持して、ガス充填作業の作業員の負荷を軽減して、軽作業化している。
なお、ワイヤ9側のフック10と充填ノズル4側のフック取付具19とは、係止可能であり且つ自在に解除可能である。
【0023】
図1では明示されていないが、サポート用アーム機構5には、ワイヤ9を巻き取り、巻き出しを行うワイヤリール、リトラクタ等で構成される公知のワイヤ巻取装置が設けられている。ここで、図示しないワイヤ巻取装置は、ワイヤ9の巻取り、巻出しを行うワイヤリールが正回転或いは逆回転する際に、一定の回転力を付与する回転力付与機構を備えている。
さらに図示しないワイヤ巻取装置は、ワイヤ9の巻出し、巻戻しを停止させたときにワイヤ9を(その時の位置に)保持するワイヤ保持機構を備えている。図示しないワイヤ保持機構により、ワイヤ9の巻き上げを一旦停止すればワイヤ9の上昇は停止するので、無負荷状態においてワイヤ9が巻き上げられて高い位置に移動することが防止される。ワイヤ保持機構でワイヤ9が停止(保持)された状態で、作業者がワイヤ9を下向きに引っ張れば、ワイヤ9の保持は解除されワイヤ9は上下方向に昇降する。
水素ガス充填作業の際に作業者が誤って手放して充填ノズル4が落下しようとする場合に、充填ノズル4はワイヤ9に吊り下げられているので、充填ノズル4が地面に衝突する直前で吊り下げられ、地面との衝突により充填ノズル4が破損することが防止される。また、サポート用アーム機構5により充填ホース3及び充填ノズル4の重量が支持されているので、作業者は充填ノズル4を手で確実に保持することが出来、作業者の手から充填ノズル4が脱落する可能性が減少する。ストッパ31が係止部材33と当接すると、各部材に強い衝撃が加えられて破損する恐れが存在するが、後述する様に、図示の実施形態では、ストッパ31が係止部材33と当接する衝撃を緩和する構成を具備しているので、ストッパ31が係止部材33と当接してもサポート用アーム機構5の各種部材が破損することは防止される。
【0024】
ここで、図示しないワイヤ巻取装置は、従来技術と同様に、ワイヤを巻き取る(充填ノズルを上昇する)方向に常時付勢されており、ワイヤに対して常に引張力を付加している。しかし、図示の実施形態に係るガス充填装置1においては、ワイヤ巻取装置におけるワイヤを巻き取る力(ワイヤに作用する引張力)は、従来技術に比較して小さく設定されている。
当該ワイヤを巻き取る力(ワイヤに作用する引張力)は、充填ノズルに作用する重力よりも小さく設定されている。
【0025】
図1において、本体ハウジング2の上部には、サポート用アーム機構5に加えて、放爆手段14が配設されている。
放爆手段14は、万が一、本体ハウジング2の内部で爆風が生じた場合に、爆風を逃がして、本体ハウジング2やガス充填装置1の構成機器に被害が及ばない様に構成されており、本体ハウジング2の上面に形成した開口14B(図17参照)と扉14A(図14図17参照)を有している。扉14Aは、定常時は開口14Bを閉鎖しており、図1では扉14Aが放爆手段14を示す部材として表示されている。放爆手段14については図17を参照して後述する。
図1において、符号20は本体ハウジング2内の換気用のスリットを示す。
【0026】
次に、図2図10を参照して、サポート用アーム機構5について説明する。
図2で示すサポート用アームは、図1図11図17で示すのと形状が異なっている。換言すれば、図示の実施形態では、サポート用アームの形状については特に限定しない。
上述した様に、図示の実施形態のサポート用アーム機構5では、ワイヤを巻き取る力(ワイヤに作用する引張力)が従来技術に比較して小さく(充填ノズル4に作用する重力よりも小さく)設定されている。そのため、作業員或いはユーザーが充填ノズル4(図1)を手放した際に、充填ノズル4が落下して地面に激突して、充填ノズル4に深刻な損傷が生じる恐れがある。係る事態を防止するため、ワイヤ9にストッパ31を設け(図2図4)、サポートアーム機構5の先端近傍にストッパ31と当接する係止部材33を設けている(図2図3)。
図2において、ワイヤ9はサポート用アーム機構5の本体部からサポート用アーム6の先端6Tを経由してワイヤ側のフック10まで延在されている。ワイヤ側のフック10はフック取付具19(図1)を介して充填ノズル4を係止する様に構成されている。ワイヤ9はサポート用アーム機構5の本体部から延在しており、サポート用アーム6の先端6Tにおいてはサポート用アーム6の内部空間内に延在しており、そのため、図2では、先端6Tの領域ではワイヤ9は図示されていない。なお、図2において、サポート用アーム6の上方は開放された状態で示されている。
【0027】
図2においてワイヤ9におけるサポート用アーム機構5の本体部側(図2では左側)の領域にはストッパ31が取り付けられている。ストッパ31はワイヤ9に固定されており、ワイヤ9と一体的に移動する。
図2及び図3において、サポート用アーム6の先端部6Tには係止部材33が設けられている。プレートで構成された係止部材33は、その両側部33Aをサポート用アーム6の内側面に固定されている。係止部材33はワイヤ9を貫通、通過させるが、ワイヤ9に固定されたストッパ31の通過は阻止する。そのため、充填ノズル4が落下してワイヤ9が引き出されると、ストッパ31は係止部材33と当接し、ワイヤ9はそれ以上は充填ノズル4側に移動することが防止される。そのため、充填ノズル4も、ストッパ31は係止部材33と当接すると、それ以上は落下しない。ここで、ストッパ31が係止部材33と当接すると、各部材に強い衝撃が加えられて破損する恐れが存在するが、図示の実施形態では、後述する様に、ストッパ31が係止部材33と当接する衝撃を緩和する構成を具備している。
図2において、ワイヤ9におけるサポート用アーム6の先端部6Tよりも充填ノズル4側(図2の下方)の領域には、ワイヤ9に所定以上の引張力が作用した場合に分離するカップリング(安全継手)36を収容するケーシングが取り付けられている。カップリングについては、図8図10を参照して後述する。
【0028】
ストッパ31の詳細を示す図4において、ストッパ31は二つ割部材31Aをボルト・ナット31Bで結合して構成されており、当該二つ割にした部材31Aの間にワイヤ9を挟み込むことによりストッパ31はワイヤ9に固定されている。そのため、ストッパ31はワイヤ9と一体的にワイヤ延在方向に移動する。
充填作業中のユーザーが充填ノズル4を手放した場合に(充填ノズル4が落下した場合に)、ワイヤ9がサポート用アーム機構5から引き出されるが、ストッパ31がワイヤ9に固定されている位置を適正に設定すれば、ワイヤ9がサポート用アーム機構5から引き出された際に、ストッパ31がサポート用アーム6の先端6Tに固定された係止部材33に当接するので、ワイヤ9はそれ以上引き出されない。そのため、ワイヤ9先端のフック10に接続される充填ノズル4は地面に衝突せず、ワイヤ9で宙づりになった状態で留まり、地面に激突することなく、地面との衝突による深刻な損傷を予防できる。
【0029】
ストッパ31が係止部材33と当接すると、各部材に強い衝撃が加えられて破損する恐れが存在する。その様な衝撃に対して、図示の実施形態では、例えば図4で示す様に、ストッパ31には弾性材料製緩衝部材であるゴムパッキン32が付いている。ゴムパッキン32はストッパ31における係止部材33側の側面に配置され、ワイヤ9が貫通する貫通孔32Aが形成されている。ストッパ31の係止部材33側(図4では右側)の側面にゴムパッキン32を付けることにより、ストッパ31が係止部材33と当接(衝突)する際の衝撃を緩和することが出来る。
図示はされていないが、ストッパ31の係止部材33側の側面にゴムパッキン32を付けることに代えて、或いはストッパ31の係止部材33側の側面にゴムパッキン32を付けることに加えて、係止部材33のストッパ31側の側面に弾性材料製緩衝部材(例えばゴムパッキン)を設けることが出来る。
【0030】
ストッパ31(ゴムパッキン32)が係止部材33に衝突する際の衝撃をさらに緩和するため、図5で示す様に、ストッパ31と係止部材33の間の領域にスプリング34(緩衝用弾性部材:例えば弦巻バネ)が設けられている。
図5において、スプリング34は、ストッパ31(及びゴムパッキン32)と係止部材33の間の領域にあって、ワイヤ9がスプリング34を貫通している。換言すれば、スプリング34を貫通する様にワイヤ9が延在している。スプリング34を設けることにより、充填ノズル4が落下した際に係止部材33とストッパ31(ゴムパッキン32)はスプリング34を介して当接することになり、係止部材33とストッパ31の当接時における衝撃が緩和され、当該衝撃によりサポート用アーム機構5の各種部材が損傷することが防止出来る。
そして図示の実施形態では、ストッパ31が係止部材33と当接する際における強い衝撃をさらに緩和するため、スプリング34の両端であってストッパ31(ゴムパッキン32)或いは係止部材33に当接する部位には、弾性材料製の緩衝材35が取り付けられている。緩衝材35を設けることにより、充填ノズル4が落下し係止部材33とストッパ31(ゴムパッキン32)が当接した時の衝撃がさらに緩和され、各種部材の損傷を防止することが出来る。
【0031】
図6には、スプリング34(緩衝用弾性部材)の配置について、図5で示すのとは別の態様(第1変形例)が示されている。図6において、ストッパ31のゴムパッキン32にはスプリング34の一端が取り付けられており、スプリング34の他端部(係止部材33側、図6で右側)のみに緩衝材35を設けている。
スプリング34の配置に関するさらに別の態様(第2変形例)である図7においては、係止部材33にスプリング34の一端が取り付けられており、スプリング34の他端部(ストッパ31側、図7で左側)のみに緩衝材35が設けられている。
図6図7の態様(第1及び第2変形例)においても図5と同様の作用効果を奏する。図6図7の第1及び第2変形例においては、スプリング34がストッパ31(ゴムパッキン32)或いは係止部材33に固定されるので、スプリング34がワイヤ9の延在方向に不要な移動(がたつき)をすることが防止される。
【0032】
ここで、水素充填時に車両が急発進した場合には、ガス充填装置1が引っ張られて転倒し、ガス充填装置1が破損して、水素ガスが流出する可能性がある。
係る可能性を排除するため、図示の実施形態では、給油ホース3側に安全継手(カップリング)を設け、予期しない車輌の急発進があっても、カップリングが分離することにより、ガス充填装置1の転倒を防止している。
【0033】
カップリング36を示す図8において、概略円柱形状のカップリング36は本体部36A、36Aと、本体部を接続する接続部36Bを有している。本体部36A、36A、接続部36Bは樹脂製であるが、図8で明示されている通り、接続部36B断面積は本体部36Aの断面積に比較して小さく、ワイヤ9を介して引張力(図8で上下方向に作用する引張力)がカップリング36に作用した場合には、接続部36Bで応力集中を生じて切断する。本体部36Aには貫通孔36Cが形成されており、カップリング36をワイヤ9に取り付けた際に、貫通孔36Cには取り付け用の金属ピン36Pが挿入され、ワイヤ9端部の取付用金具に取り付けられる(図9図10)。
【0034】
図9はカップリング36をワイヤ9に取り付けた状態を示している。
ワイヤ9におけるサポート用アーム機構5側(矢印A5方向)の端部と充填ノズル4側(矢印A4方向)の端部は、それぞれU字状取付部材37、37に接続され、一対のU字状取付部材37の各々は金属ピン36Pによりカップリング36の本体部36Aが取り付けられている。
図9で示す様に、ワイヤ9のサポート用アーム機構5側の部分と充填ノズル4側の部分がカップリング36を介して接続された状態で、例えば水素充填時に車両の予期しない発進が起こった際には、ワイヤ9に想定以上の引張力が作用し、カップリング36の接続部36Bが破断して、図10で示す様に、ワイヤ9は、サポート用アーム機構5側の部分(図10では上側の部分)と充填ノズル4側の部分(図10では下側の部分)に分離する。
ワイヤ9がサポート用アーム機構5側の部分と充填ノズル4側の部分に分離するため、水素充填時に車両が急発進しても、ワイヤ9によりガス充填装置1が引っ張られることが防止され、ガス充填装置1は転倒せず、破損することはない。
【0035】
図11図17を参照して、サポート用アーム機構5の回転規制手段8を説明する。
図11において、本体ハウジング2の上面に配置されたサポート用アーム機構5から、回転規制手段8のハウジングを除去した状態が示されている。図11では、回転規制手段8の要部が、二点鎖線及び符号Aで示されている。
図12は、図11における要部Aを拡大して示している。図12において、サポート用アーム6の回転軸7を回転(回動)することにより、サポート用アーム機構5のサポート用アーム6を適切な回転角度位置まで移動して、ワイヤ9(図1図11)を介して充填ノズル4(図1)を支持することが出来る。その際、前記サポート用アーム6が回動する範囲が広過ぎると、ガス充填装置1周辺の構築物(図示せず)とアーム6或いは充填ノズル4が干渉する恐れがあり、充填作業の作業性が低下する恐れがある。
ここで、前記回転軸7に対して、公知の駆動装置により回転(回動)駆動力を付与することが可能である。
図示の実施形態においては、サポート用アーム6の回転(回動)を規制する回転規制手段8を設けて、サポート用アーム6の回転角度を所定角度内に調整(サポート用アーム6の可動範囲を所定範囲に調整)し、周辺構造物との干渉を防止して、充填作業の作業性を向上させている。
【0036】
図12において、回転規制手段8は、サポート用アーム6の回転軸7に配設された凸片11と、本体ハウジング2の上部に配設された回転軸ストッパ12を備えている。
詳細には、サポート用アーム6(サポート用アーム機構5)の回転軸7は接続部材21を介して下部円板22に接続されており、下部円板22の上面に、端部を半径方向外方に突出させた断面コ字状の凸片11が固定されている。一方、本体ハウジング2の上面においてはストッパ取付板23が設けられ、ストッパ取付板23の上面の2箇所に断面L字状の回転軸ストッパ12が固定されている。そして、回転軸7に配設された凸片11が回転軸ストッパ12に当接することにより、サポート用アーム6の回転が規制される。
回転軸7に対して凸片11と2箇所の回転軸ストッパ12がなす角度の領域が、サポート用アーム6の回転角度すなわち可動範囲であり、サポート用アーム6は、凸片11が一方の回転軸ストッパ12に当接した回転(回動)角度の位置から、凸片11が他方の回転軸ストッパ12に当接した回転(回動)角度の位置の間の範囲で回転(回動)することが出来る。
図12において、凸片11は2箇所の回転軸ストッパ12の概略中間の角度に位置している。
回転規制手段8の回転軸ストッパ12には、緩衝部材16が取り付けられている。
【0037】
図13は、凸片11が一方の回転軸ストッパ12に当接した状態を示している。図13に示す状態から回転軸7がさらに時計方向に回転(回動)することはなく、サポート用アーム6の時計方向の回転は図13において凸片11と当接している回転軸ストッパ12によって規制されている。図13では示されていないが、サポート用アーム6の反時計方向の回転は図13において凸片11と当接していない回転軸ストッパ12によって規制されている。図12図13では、サポート用アーム機構5(サポート用アーム6)の回転(回転)角度は概略90°である。
図12図13において、凸片11が回転軸ストッパ12に当接することにより回転軸7の回転が規制され、充填ノズル4の操作(移動)範囲が規制されるので、サポート用アーム6が無制限に回転することが抑制される。そのため、充填ノズル4を吊り下げているワイヤ9が本体ハウジング2に接触、干渉することが防止される。
そして、回転軸7の回転を規制するに際して、サポート用アーム6には回転軸ストッパ12は当接しないので、サポート用アーム6表面に傷や凹みが形成され難くなり、「見た目」が良好となり、意匠的な効果を発揮する。
また設備全体が大型化してしまうことが防止され、新規の製造ステーションにおける設置は勿論、既存の水素ステーションに設置することが出来る。加えて、充填ノズル4で充填できる領域が異なる複数種類のガス充填装置1へ設置するに際しても、ガス充填装置1の種類に対応してサポート用アーム機構5(回転規制手段8)の一部の部品を交換することにより、サポート用アーム6の回動範囲を容易に調整することが出来る。
【0038】
図14を参照して回転角度保持手段13(トルクヒンジ)について説明する。
回転角度保持手段13(トルクヒンジ)は、サポート用アーム機構5の回転軸7を本体ハウジング2に取り付ける箇所であって、回転規制手段8が設けられる箇所に設けられている。
図14において、下部円板22の下面には回転軸側円板24が(例えば締結部材により)固定され、ストッパ取付板23の上面には回転軸側円板24と概略同寸法の本体ハウジング側円板25が(例えば溶接により)固定されている。回転軸側円板24と本体ハウジング側円板25の間には皿ばね26が介在しており、回転軸側円板24と本体ハウジング側円板25により皿ばね26を挟み込むような構造となっている。そして、下部円板22とストッパ取付板23に挟持され、回転軸側円板24と本体ハウジング側円板25により皿ばね26を挟み込む構造により、回転角度保持手段13(トルクヒンジ)が構成されている。
【0039】
ここで、回転角度保持手段13は、サポート用アーム6を移動(回動)した際に、サポート用アーム6の慣性力によりサポート用アーム6が所望の位置よりも振られてしまう(回動し過ぎてしまう)事態を防止して、サポート用アーム6を所望の位置で停止させる機能を有している。そのため、水素ガス充填作業において充填ノズル4の位置を調整し易くなり、作業性が向上する。ここで、トルクヒンジ自体の構成は公知である。
図14において、サポート用アーム機構5及び回転角度保持手段13が配置される位置の左側(図14で)には、放爆手段14の扉14Aが配置されている。
【0040】
再び図1において、水素ステーションの営業終了後等、充填作業を行わない際には、充填ノズル4に対する悪戯等を防止するため、収納扉27により、本体ハウジング2内のノズル掛けに充填ノズル4を出し入れする開口部分を閉鎖する。収納扉27を閉鎖する際に、充填ノズル4のフック取付具19からワイヤ9のフック10を外して、ワイヤ9が収納扉27と干渉して、充填ノズル4を出し入れする本体ハウジング2の開口部分が閉鎖できなくなることを防止している。
本体ハウジング2にはフック10を係止する取付具15が設けられており、充填ノズル4のフック取付具19から外されたワイヤ9のフック10は、本体ハウジング2の取付具15に係止される。充填ノズル4から外されたワイヤ9のフック10が、ガス充填装置1周辺の人や車両に引っ掛かる事態を防止するためである。
【0041】
ここで、車両とガス充填装置1の相対位置や、ガス充填装置と周辺構造物の相対位置によっては、車両或いは周辺構造物とサポート用アーム6とが干渉することを防止するため、サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整するべき場合が存在する。
そのような場合について、図15図16を参照して説明する。
図15(A)、(B)において、サポート用アーム6のアーム部6Aの基部(図15では左方の領域)は、アーム機構ハウジング6Bに収納可能であり、アーム機構ハウジング6B内に収納される長さは可変である。図15で示す例では、アーム機構ハウジング6Bと回転軸7(支持部材)との相対位置(図15で左右方向位置)は固定されている。図15において、符号8は回転規制手段を示している。
図15(A)と図15(B)を比較すると明らかな様に、アーム部6Aがアーム機構ハウジング6Bに収容される長さを可変とする(アーム機構ハウジング6B外部におけるアーム部6Aの長さを調整する)ことにより、サポート用アーム6の先端6Tの位置を種々選択することが出来る。
図15には明示されていないが、サポート用アーム6のアーム部6A自体を伸縮可能に構成する(例えば入れ子式に構成する)ことが出来る。サポート用アーム6を伸縮可能にしても、先端6Tの位置を調整出来る。
【0042】
また図16で示す様に、アーム機構ハウジング6Bと回転軸7(支持部材)との相対位置(図16における左右方向の位置)を調整して、アーム部6Aの先端6Tの位置を調整することが出来る。
図16(A)と図16(B)を比較すると明らかな様に、アーム部6Aの長さは図16(A)と図16(B)で同一であるが、サポート用アーム6の先端6Tの位置は、図16(B)の方が図中右方に延在しており、アーム6が伸長している。図16(A)ではアーム機構ハウジング6Bの概略右端の位置に回転軸7が位置されているのに対して、図16(B)ではアーム機構ハウジング6Bの左右方向中央の位置に回転軸7が位置しているため、アーム機構ハウジング6Bの概略右端の位置から中央の位置に至る長さの分だけ、アーム先端6Tの位置が図16において右側に延伸されている。
アーム機構ハウジング6Bと回転軸7の相対位置は、公知技術を適用して調整することが出来る。
アーム機構ハウジング6Bと回転軸7との相対位置を調整することにより、サポート用アーム6の先端6Tの位置を、複数通りの位置から選択することが出来る。
【0043】
サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整する態様であって、上述した以外の態様について、図16(B)を参照して説明する。
図16(B)において、回転軸7が、サポートアーム機構5の下方部分である基部5Aを貫通することなく、基部5Aで軸支すれば、基部5Aの位置を本体ハウジング2に対して(図16(B)において左右方向に)移動することにより、サポート用アーム機構5全体の本体ハウジング2に対する取付位置を移動して、アーム部6Aを伸縮した場合と同様に、サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整することが出来る。
サポートアーム機構5の基部5Aが本体ハウジング2に対して移動可能であれば、例えば既存のガス充填装置1にサポートアーム機構5を後付けする場合に、サポートアーム6の位置を適宜調整して、ガス充填装置周囲の構造物と干渉することを防止できる。
サポート用アーム6の先端6Tの位置を調整する際は、上述した複数の態様のうち1つを選択して実施することも出来るし、或いは複数の態様を組合せて実施することも可能である。
【0044】
図17において、本体ハウジング2の上面に放爆手段14が設けられている。
図1を参照して上述した様に、放爆手段14は開口14B及び扉14A(パネル)を備え、扉14Aは通常は開口14Bを閉鎖している。万が一、本体ハウジング2の内部で爆風が生じた場合には、本体ハウジング2のパネルが損傷するよりも早いタイミングで扉14Aが開放し、本体ハウジング2内で生じた爆風を逃がして、当該爆風によりガス充填装置1の内外が損傷することを防止している。扉14Aは、本体ハウジング2内が所定値以上の圧力、例えば50N(5kg)の爆風に相当する圧力、になった場合に開放される様に設定されている。
図17では、万が一の非常時において、本体ハウジング2内部の爆風により、扉14Aが開放された状態を示している。上述した様に、万が一の非常時以外には、扉14Aにより開口14Bは閉鎖されている。
明確には図示されていないが、サポート用アーム機構5と放爆手段14との相対位置は、例えば、図1図17で示す様に、放爆手段14が作動して扉14Aが開放する際に、サポート用アーム6に干渉しない位置に設定されている。換言すれば、放爆手段14が作動して扉14Aが開いても、サポート用アーム機構5は損傷しない様に、サポート用アーム機構5と放爆手段14との相対位置が設定されている。
図示の実施形態では、本体ハウジング2の上部にサポート用アーム機構5と共に放爆手段14とが配設されているため、ガス充填装置1の設置に対する各種制限(ガス充填装置と道路境界線との所定距離等の制約)を充足することが出来、水素ステーションにおけるレイアウトの自由度が増加する。
【0045】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0046】
1・・・ガス充填装置(水素ガス充填装置)
2・・・本体ハウジング
3・・・充填ホース
4・・・充填ノズル
5・・・サポート用アーム機構
5A・・・基部(サポート用アーム機構の基部)
6・・・サポート用アーム
6A・・・アーム部
6B・・・アーム機構ハウジング
7・・・回転軸(サポート用アームの回転軸)
8・・・回転規制手段
9・・・ワイヤ
10・・・フック
11・・・凸片
12・・・回転軸ストッパ
13・・・回転角度保持手段(トルクヒンジ)
14・・・放爆手段
14A・・・扉(放爆パネル)
15・・・フック取付具
16・・・緩衝部材
31・・・ストッパ
32・・・ゴムパッキン(弾性材料製パッキン)
33・・・係止部材・・・
34・・・スプリング(緩衝用弾性部材)
35・・・緩衝材
36・・・カップリング(安全継手)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17