IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

特許7387097排水弁装置、洗浄水タンク装置、及び、水洗大便器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】排水弁装置、洗浄水タンク装置、及び、水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 1/35 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
E03D1/35
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022012164
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110607
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2023-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 悠太
(72)【発明者】
【氏名】松田 春喜
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】下川 雄基
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-134979(JP,A)
【文献】特開2021-055449(JP,A)
【文献】特開平07-011680(JP,A)
【文献】特開2003-239348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗大便器に洗浄水を供給する洗浄水タンク内に設けられた排水弁装置であって、
上記洗浄水タンクの底部に設けられた排水口を開閉する弁体と、
下端部に上記弁体が設けられ、上下動することにより上記弁体を開閉させる作動軸と、
上記作動軸を上下方向に挿通させると共に上記洗浄水タンク内の洗浄水の一部を貯水する貯水筒であって、その内部の洗浄水を外部に流出させる流出穴が形成された上記貯水筒と、
上記貯水筒内に配置され、上記貯水筒内の洗浄水により得られた浮力を上記作動軸に作用させるフロートであって、その一部に洗浄水を貯留するための貯留部を備えた上記フロートと、を有し、
上記作動軸及び上記弁体は、上記フロートが上記貯水筒内の水位の低下に伴って下降すると、このフロートと連動して下降し、上記弁体が上記排水口を閉鎖するように構成され、
上記弁体が開弁してから閉弁するまでの間、上記洗浄水タンク内の洗浄水が上記排水口から上記水洗大便器に第1洗浄水量で供給される大洗浄モード又は上記第1洗浄水量よりも少ない第2洗浄水量で供給される小洗浄モードのいずれかの洗浄モードが選択的に実行可能であり、
上記フロートは、上記小洗浄モード時に上記貯留部に貯留される洗浄水量が上記大洗浄モード時に上記貯留部に貯留される洗浄水量よりも大きくなるように構成されていることにより、上記小洗浄モード時と上記大洗浄モード時に同一の上記フロートを使用したとしても、上記小洗浄モード時に得られる浮力が上記大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるように構成されていることを特徴とする排水弁装置。
【請求項2】
上記貯留部は、上記フロートの上部に設けられており、洗浄水を貯留できるように上記フロートの上部の一部を取り囲む周壁部と、この周壁部の一部に形成された流出口に対して開閉可能に設けられた仕切り部と、を備えており、
上記仕切り部は、上記大洗浄モード時において上記周壁部の流出口を開放することにより上記貯留部内の洗浄水を上記流出口から流出可能にする一方、上記小洗浄モード時において上記周壁部の流出口を閉鎖して上記貯留部内に洗浄水が貯留された状態を維持することにより上記貯留部が水錘となる請求項記載の排水弁装置。
【請求項3】
水洗大便器に洗浄水を供給する洗浄水タンク内に設けられた排水弁装置であって、
上記洗浄水タンクの底部に設けられた排水口を開閉する弁体と、
下端部に上記弁体が設けられ、上下動することにより上記弁体を開閉させる作動軸と、
上記作動軸を上下方向に挿通させると共に上記洗浄水タンク内の洗浄水の一部を貯水する貯水筒であって、その内部の洗浄水を外部に流出させる流出穴が形成された上記貯水筒と、
上記貯水筒内に配置され、上記貯水筒内の洗浄水により得られた浮力を上記作動軸に作用させるフロートと、を有し、
上記作動軸及び上記弁体は、上記フロートが上記貯水筒内の水位の低下に伴って下降すると、このフロートと連動して下降し、上記弁体が上記排水口を閉鎖するように構成され、
上記弁体が開弁してから閉弁するまでの間、上記洗浄水タンク内の洗浄水が上記排水口から上記水洗大便器に第1洗浄水量で供給される大洗浄モード又は上記第1洗浄水量よりも少ない第2洗浄水量で供給される小洗浄モードのいずれかの洗浄モードが選択的に実行可能であり、
上記フロートは、上記小洗浄モード時と上記大洗浄モード時に同一の上記フロートを使用したとしても、上記小洗浄モード時に得られる浮力が上記大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるように構成されており、
上記フロートは、その下部に設けられ且つ洗浄水を貯留できるように上記フロートの下部の一部を取り囲む周壁部と、この周壁部の一部に形成されて上記フロートの内外を連通させる連通口と、この連通口に対して開閉可能に設けられた仕切り部と、を備えており、
上記仕切り部は、上記大洗浄モード時において上記周壁部の上記連通口を閉鎖することにより上記フロートの内外における洗浄水又は空気の連通を規制する一方、上記小洗浄モード時において上記周壁部の上記連通口を開放することにより上記フロートの内外における洗浄水又は空気の連通を可能にし、
上記フロートは、上記周壁部の上方領域を閉鎖する天面部と、上記周壁部の下縁に沿って形成された下方開口部と、を備えていることにより、上記フロートの下方が開放された概ね筒状を形成し、上記連通口は、上記天面部と上記下方開口部との間の高さ位置に設けられていることを特徴とする排水弁装置。
【請求項4】
上記請求項1乃至の何れか1項に記載の排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置。
【請求項5】
上記請求項記載の洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水弁装置、洗浄水タンク装置、及び、水洗大便器に係り、特に、水洗大便器に洗浄水を供給する洗浄水タンク装置に設けられた排水弁装置、この排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水洗大便器に洗浄水を供給する洗浄水タンク内に設けられた排水弁装置として、例えば、特許文献1、2に記載されているように、洗浄水タンクの排水口を開閉する排水弁を備えており、この排水弁の開閉動作において、フロートによる浮力を利用したものが知られている。
まず、上述した特許文献1に記載されている従来の排水弁装置においては、洗浄水タンクの底部に設けられた排水口を開閉する弁体と、上下動することにより弁体を開閉させる作動軸と、この作動軸を上下方向に挿通させると共に洗浄水タンク内の洗浄水の一部を貯水する貯水筒と、この貯水筒内に配置されて作動軸に浮力を作用させるフロートと、を備えている。
また、上述した特許文献1に記載されている従来の排水弁装置においては、フロートが貯水筒内に配置されていることにより、フロートが貯水筒の外部の洗浄水の流れに影響さえることなく、排水弁の開弁時間を一定にすることができるようになっているが、大小洗浄時のそれぞれにおいて、洗浄水タンクの排水口から排出される洗浄水量が互いに異なるようになっている。
【0003】
つぎに、上述した特許文献2に記載されている従来の排水弁装置においては、大洗浄用のフロートと小洗浄用のフロートの2つのフロートを備えた、いわゆる、ボールタップ式の排水弁装置である。
この排水弁装置では、大洗浄時の排水弁の開弁時間を小洗浄時の排水弁の開弁時間よりも長く設定することにより、大洗浄時の洗浄水量を小洗浄時の洗浄水量よりも大きく設定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-185491号公報
【文献】特開2019-157601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の排水弁装置では、大洗浄時と小洗浄時のそれぞれにおいて、排水弁の開弁時間を一定にしている一方、洗浄水タンクの排水口から排出される洗浄水量に差を生じさせている。
これにより、特に、小洗浄時においては、排水弁が開弁した直後において、排水口から排出される洗浄水の単位時間当たりの流量(以下「瞬間流量」)[L/min]が、大洗浄時とほぼ同一の最大値(いわゆる「排水ピーク」)となるものの、その後、排水弁が開弁している間、瞬間流量[L/min]が大洗浄時に比べて大きく減少することになるため、瞬間流量[L/min]を可能な限り高く維持することが、良好な洗浄性能を確保する上で従来から要請されている課題となっている。
また、上述した特許文献2に記載されている従来の排水弁装置においては、大洗浄用のフロートと小洗浄用のフロートの2つのフロートを用いることにより、大小洗浄時のそれぞれにおいて、排水弁の開弁時間を変更しているため、小洗浄時において排水口から排出される洗浄水の瞬間流量[L/min]を比較的高く維持することができようになっている。
しかしながら、排水口から排出される洗浄水の瞬間流量[L/min]を比較的高く維持する程、排水弁が排水口を閉止する際に発生する閉止音も大きくなるという問題があり、大洗浄用のフロートと小洗浄用のフロートの2つのフロートのそれぞれの大きさ等の設計を工夫する必要があるという問題がある。
そこで、本発明者らは、小洗浄時において排水口から排出される洗浄水の瞬間流量[L/min]を比較的高く維持し、かつ、排水弁が排水口を閉止する際に発生する閉止音を低減させるために、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することに着目した。
これにより、洗浄水タンク内又は貯水筒内の水位とフロートとのつり合い位置を変更し、洗浄水タンク内又は貯水筒内の水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができる種々の手段を見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、上述した従来から要請されている課題や従来技術の問題を解決するためになされたものであり、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができ、小洗浄時において排水口から排出される洗浄水の瞬間流量[L/min]を比較的高く維持することができると共に、排水弁が排水口を閉止する際に発生する閉止音を低減させることができる排水弁装置、洗浄水タンク装置、及び、水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、水洗大便器に洗浄水を供給する洗浄水タンク内に設けられた排水弁装置であって、上記洗浄水タンクの底部に設けられた排水口を開閉する弁体と、下端部に上記弁体が設けられ、上下動することにより上記弁体を開閉させる作動軸と、上記作動軸を上下方向に挿通させると共に上記洗浄水タンク内の洗浄水の一部を貯水する貯水筒であって、その内部の洗浄水を外部に流出させる流出穴が形成された上記貯水筒と、上記貯水筒内に配置され、上記貯水筒内の洗浄水により得られた浮力を上記作動軸に作用させるフロートと、を有し、上記作動軸及び上記弁体は、上記フロートが上記貯水筒内の水位の低下に伴って下降すると、このフロートと連動して下降し、上記弁体が上記排水口を閉鎖するように構成され、上記弁体が開弁してから閉弁するまでの間、上記貯水タンク内の洗浄水が上記排水口から上記水洗大便器に第1洗浄水量で供給される大洗浄モード又は上記第1洗浄水量よりも少ない第2洗浄水量で供給される小洗浄モードのいずれかの洗浄モードが選択的に実行可能であり、上記フロートは、上記小洗浄モード時に得られる浮力が上記大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、水洗大便器の洗浄を開始する際には、まず、大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードを選択した上で、排水弁装置の作動軸を上昇させることにより、弁体が上昇(開弁)し、洗浄水タンク内の洗浄水が排水口から水洗大便器に供給される。
そして、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて貯水筒内の水位が低下し、この水位の低下に伴って、貯水筒内のフロートが下降する。
これにより、排水弁装置の作動軸が下降することにより、弁体が下降(閉弁)し、洗浄水タンクから水洗大便器への洗浄水の供給が停止され、水洗大便器の洗浄が終了する。
このとき、フロートにおける小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるため、小洗浄モード時のフロートの下降時間を大洗浄モード時のフロートの下降時間よりも短くすることができる。
これにより、小洗浄モード時のフロートの下降時間や弁体の開弁時間を大洗浄モード時のフロートの下降時間や弁体の開弁時間よりも短くすることができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、貯水筒内の洗浄水を流出穴から洗浄水タンクに流出させる際に、貯水筒内の水位とフロートとのつり合い位置を変更し、貯水筒内の水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができる。
よって、洗浄性能に影響を及ぼす洗浄水の単位時間当たりの流量(以下「瞬間流量」)[L/min]について、大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードであっても、比較的高く維持することができる。また、弁体が排水口を閉止する際に発生する閉止音についても低減させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記フロートは、その一部に洗浄水を貯留するための貯留部を備えており、この貯留部は、上記小洗浄モード時に貯留される洗浄水量が上記大洗浄モード時に貯留される洗浄水量よりも大きくなるように構成されている。
このように構成された本発明においては、フロートが、その一部に洗浄水を貯留するための貯留部を備えているため、この貯留部により、小洗浄モード時に貯留される洗浄水量を大洗浄モード時に貯留される洗浄水量よりも大きくすることができる。
したがって、小洗浄モード時の貯留部の重量についても大洗浄モード時の貯留部の重量よりも大きくなるため、フロートにおける小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなる。
よって、小洗浄モード時のフロートの下降時間を大洗浄モード時のフロートの下降時間よりも短くすることができる。
これにより、小洗浄モード時のフロートの下降時間や弁体の開弁時間を大洗浄モード時のフロートの下降時間や弁体の開弁時間よりも短くすることができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、貯水筒内の洗浄水を流出穴から洗浄水タンクに流出させる際に、貯水筒内の水位とフロートとのつり合い位置を変更し、貯水筒内の水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができる。
よって、洗浄性能に影響を及ぼす洗浄水の瞬間流量[L/min]について、大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードであっても、比較的高く維持することができる。また、弁体が排水口を閉止する際に発生する閉止音についても低減させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記貯留部は、上記フロートの上部に設けられており、洗浄水を貯留できるように上記フロートの上部の一部を取り囲む周壁部と、この周壁部の一部に形成された流出口に対して開閉可能に設けられた仕切り部と、を備えており、
上記仕切り部は、上記大洗浄モード時において上記周壁部の流出口を開放することにより上記貯留部内の洗浄水を上記流出口から流出可能にする一方、上記小洗浄モード時において上記周壁部の流出口を閉鎖して上記貯留部内に洗浄水が貯留された状態を維持することにより上記貯留部が水錘となる。
このように構成された本発明においては、大洗浄モードを実行する際には、仕切り部が、フロートの上部に設けられた貯留部の周壁部の流出口を開放することにより、貯留部内の洗浄水が流出口から流出し、フロートの上部の貯留部内に洗浄水が貯留されないため、フロートの浮力を比較的大きく設定することができる。
一方、小洗浄モードを実行する際には、仕切り部が周壁部の流出口を閉鎖することにより、貯留部内の洗浄水が流出口から流出することができず、フロートの上部の貯留部内に洗浄水が貯留された状態となり、貯留部自体が水錘として機能するようになる。
これにより、小洗浄モード時におけるフロートの浮力について、大洗浄モード時に比べて小さく設定することができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、フロートの下降時間や弁体の開弁時間を確実に切り替えることができる。
また、排水弁装置が適用される洗浄水タンクや水洗大便器の製造誤差により弁体の開弁時間が影響されることがないため、適正な洗浄を実行することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記フロートは、その下部に設けられ且つ洗浄水を貯留できるように上記フロートの下部の一部を取り囲む周壁部と、この周壁部の一部に形成されて上記フロートの内外を連通させる連通口と、この連通口に対して開閉可能に設けられた仕切り部と、を備えており、上記仕切り部は、上記大洗浄モード時において上記周壁部の上記連通口を閉鎖することにより上記フロートの内外における洗浄水又は空気の連通を規制する一方、上記小洗浄モード時において上記周壁部の上記連通口を開放することにより上記フロートの内外における洗浄水又は空気の連通を可能にする。
このように構成された本発明においては、大洗浄モードを実行する際には、仕切り部が、フロートの下部に設けられた周壁部の連通口を閉鎖することにより、フロートの内外における洗浄水又は空気の連通が規制されるため、フロート内に閉じ込められた空気により、フロートの浮力を比較的大きく設定することができる。
一方、小洗浄モードを実行する際には、仕切り部が、周壁部の連通口を開放することにより、フロートの内外における洗浄水又は空気の連通が可能となる。
これにより、フロート内の空気の一部が周壁部の連通口からフロートの外側に排出されると共に、フロート内においては、この排出された空気の容積分だけ、フロートの外側の洗浄水がフロート内の下方領域に部分的に流入可能となる。
したがって、小洗浄モード時にフロート内に占有する空気の容積が、大洗浄モード時にフロート内に占有する空気の容積よりも小さくなるため、小洗浄モード時におけるフロートの浮力について、大洗浄モード時に比べて小さく設定することができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、フロートの下降時間や弁体の開弁時間を確実に切り替えることができる。
また、排水弁装置が適用される洗浄水タンクや水洗大便器の製造誤差により弁体の開弁時間が影響されることがないため、適用される水洗大便器に対しても、適正な洗浄を実行することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記フロートは、上記周壁部の上方領域を閉鎖する天面部と、上記周壁部の下縁に沿って形成された下方開口部と、を備えていることにより、上記フロートの下方が開放された概ね筒状を形成し、上記連通口は、上記天面部と上記下方開口部との間の高さ位置に設けられている。
このように構成された本発明においては、仕切り部が大洗浄モード時においてフロートの周壁部の連通口を閉鎖している状態では、フロート内が空気で満たされることにより、フロートの外部の洗浄水が下方開口部からフロート内に流入することが抑制される。
一方、仕切り部が小洗浄モード時においてフロートの周壁部の連通口を開放している状態では、フロート内の空気の一部が連通口から排出されることにより、フロートの外部の洗浄水が下方開口部及び/又は連通口からフロート内の連通口の高さ付近まで流入することができ、小洗浄モード時にフロートに作用する浮力が大洗浄モード時にフロートに作用する浮力に比べて小さくなる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、フロートの下降時間や弁体の開弁時間を確実に切り替えることができる。
また、排水弁装置が適用される洗浄水タンクや水洗大便器の製造誤差により弁体の開弁時間が影響されることがないため、適用される水洗大便器に対しても、適正な洗浄を実行することができる。
【0012】
つぎに、本発明は、水洗大便器に洗浄水を供給する洗浄水タンク内に設けられた排水弁装置であって、上記洗浄水タンクの底部に設けられた排水口を開閉する弁体と、下端部に上記弁体が設けられ、上下動することにより上記弁体を開閉させる作動軸と、この作動軸に接続され、上記洗浄水タンク内の洗浄水により得られた浮力を上記作動軸に作用させるフロートと、を有し、上記作動軸及び上記弁体は、上記フロートが上記洗浄水タンク内の水位の低下に伴って下降すると、このフロートと連動して下降し、上記弁体が上記排水口を閉鎖するように構成され、上記弁体が開弁してから閉弁するまでの間、上記貯水タンク内の洗浄水が上記排水口から上記水洗大便器に第1洗浄水量で供給される大洗浄モード又は上記第1洗浄水量よりも少ない第2洗浄水量で供給される小洗浄モードのいずれかの洗浄モードが選択的に実行可能であり、上記フロートは、上記小洗浄モード時に得られる浮力が上記大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、水洗大便器の洗浄を開始する際には、まず、大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードを選択した上で、排水弁装置の作動軸を上昇させることにより、弁体が上昇(開弁)し、洗浄水タンク内の洗浄水が排水口から水洗大便器に供給される。
そして、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて洗浄水タンク内の水位が低下すると、この水位の低下に伴って、フロートが下降する。これにより、排水弁装置の作動軸が下降することにより、弁体が下降(閉弁)し、洗浄水タンクから水洗大便器への洗浄水の供給が停止され、水洗大便器の洗浄が終了する。
このとき、フロートにおける小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるため、小洗浄モード時のフロートの下降時間を大洗浄モード時のフロートの下降時間よりも短くすることができる。
これにより、小洗浄モード時のフロートの下降時間や弁体の開弁時間を大洗浄モード時のフロートの下降時間や弁体の開弁時間よりも短くすることができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、洗浄水タンク内の水位とフロートとのつり合い位置を変更し、洗浄水タンク内の水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができる。
よって、洗浄性能に影響を及ぼす洗浄水の瞬間流量[L/min]について、大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードであっても、比較的高く維持することができる。また、弁体が排水口を閉止する際に発生する閉止音についても低減させることができる。
【0013】
また、本発明は、上記排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置である。
このように構成された本発明においては、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができ、小洗浄時において排水口から排出される洗浄水の瞬間流量[L/min]を比較的高く維持することができると共に、弁体が排水口を閉止する際に発生する閉止音を低減させることができる排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置を提供することができる。
【0014】
さらに、本発明は、上記洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器である。
このように構成された本発明においては、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができ、小洗浄時において排水口から排出される洗浄水の瞬間流量[L/min]を比較的高く維持することができると共に、弁体が排水口を閉止する際に発生する閉止音を低減させることができる排水弁装置を有する洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の排水弁装置、洗浄水タンク装置、及び、水洗大便器によれば、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロートに作用する浮力を変更することにより、水位低下に伴うフロートの下降時間を変更することができ、小洗浄時において排水口から排出される洗浄水の瞬間流量[L/min]を比較的高く維持することができると共に、排水弁が排水口を閉止する際に発生する閉止音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態による排水弁装置が適用される洗浄水タンク装置及び水洗大便器について斜め上方から見た斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置の正面断面図である。
図3A】本発明の第1実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
図3B】本発明の第1実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
図4A】本発明の第2実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
図4B】本発明の第2実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
図5A】本発明の第3実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
図5B】本発明の第3実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
図6A】本発明の第4実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
図6B】本発明の第4実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の排水弁装置、この排水弁装置を備えた洗浄水タンク装置、及び、この洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器に関するいくつかの実施形態について説明する。
まず、図1図3Bにより、本発明の第1実施形態による排水弁装置1、この排水弁装置1を備えた洗浄水タンク装置2、及び、この洗浄水タンク装置2を備えた水洗大便器4について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による排水弁装置1が適用される洗浄水タンク装置2及び水洗大便器4について斜め上方から見た斜視図である。また、図2は、本発明の第1実施形態による排水弁装置1を備えた洗浄水タンク装置2の正面断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態による排水弁装置1が適用される洗浄水タンク装置2を備えた水洗大便器4は、ボウル部6を形成する陶器製の便器本体8を備えている。
この便器本体8の上面の後方側には、詳細は後述する洗浄水タンク装置2が設けられている。この洗浄水タンク装置2に貯水されている洗浄水が、本実施形態の排水弁装置1の作動により水洗大便器4の便器本体8に供給されると、ボウル部6内が洗浄されるようになっている。
ここで、本実施形態の排水弁装置1が適用される洗浄水タンク装置2を備えた水洗大便器4の形態としては、例えば、サイホン作用を利用してボウル部6内の汚物を吸い込んで、下流側の排水トラップ部(図示せず)から一気に外部に排出する、いわゆる、「サイホン式の水洗大便器」の形態が適用されてもよいし、或いは、ボウル部6内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、「洗い落し式の水洗大便器」の形態が適用されてもよい。
【0019】
つぎに、図2により、本実施形態の排水弁装置1が適用される洗浄水タンク装置2の概略構成について説明する。
図2に示すように、洗浄水タンク装置2は、陶器製の外装タンク10と、その内方に配置され、便器洗浄用の洗浄水を貯水する洗浄水タンクである貯水タンク12と、外装タンク10の上方に載置される蓋体14と、を備えている。
まず、貯水タンク12は、その外周を取り囲む断熱体16を介して外装タンク10に取り付けられている。
また、貯水タンク12及び外装タンク10のそれぞれの底部には、便器本体8の導水路8aに連通する排水口18が設けられている。この排水口18は、詳細は後述する本実施形態の排水弁装置1により開閉可能になっている。
なお、本実施形態の洗浄水タンク装置2の蓋体14について、その上面に手洗い用のボウル部(手洗い鉢)や手洗い用のカラン等、手洗い用の手段が設けられていない形態について説明するが、これらの手洗い用の手段が設けられた形態であっても適用可能である。
【0020】
つぎに、図2に示すように、洗浄水タンク装置2は、貯水タンク12内に洗浄水を給水する給水装置20を備えている。
この給水装置20は、給水管22、給水バルブ(図示せず)を含むバルブユニット24、給水用フロート26、及び、吐水管28等を備えている。
まず、給水管22は、外部の水道管等の給水源(図示せず)とバルブユニット24とを接続しており、外部の水道管等の給水源(図示せず)から供給された洗浄水をバルブユニット24に供給することができるようになっている。
つぎに、給水用フロート26は、レバー30を介してバルブユニット24に連結されており、貯水タンク12内の水位に応じて上下動することにより、バルブユニット24の給水バルブ(図示せず)を開閉するようになっている。
また、吐水管28は、バルブユニット24の下流側に接続されており、給水バルブ(図示せず)が開閉することにより、バルブユニット24から貯水タンク12内に洗浄水を吐吐水及び止水(給水及び止水)することができるようになっている。
【0021】
つぎに、図2に示すように、洗浄水タンク装置2は、排水弁装置1を開閉操作する操作装置32を備えている。
この操作装置32は、使用者により手動で回転操作される操作レバー34と、排水弁装置1の弁体36を引き上げる作動部(引き上げ作動部38)と、操作レバー34と引き上げ作動部38とを連結する複数の回転軸(外側回転軸40、内側回転軸42)と、をそれぞれ備えている。
【0022】
まず、操作レバー34は、外装タンク10の左右一方の外側(図2に示す洗浄水タンク装置2の外装タンク10を前方側から見て右側)に設けられており、使用者の手動により、左右方向に延びる回転中心軸線A1回りに回転操作が可能になっている。
つぎに、外側回転軸40は、外装タンク10内に設けられて左右方向に延びており、その一端側(操作レバー34側)が操作レバー34に連結されている。
また、外側回転軸40の他端側(内端側)は、その内側に配置された内側回転軸42の一端側(外端側)に連結されている。
【0023】
つぎに、引き上げ作動部38は、その上端部が貯水タンク12の上端かつ中央側に固定されている。
この引き上げ作動部38は、内側回転軸42の他端側(内端側)に連結される回転主軸部44と、この回転主軸部44の外周側に設けられた筒状回動部46と、を備えている。この筒状回動部46は、回転主軸部44が回転中心軸線A2回りに回転すると、この回転主軸部44と一体的に回転中心軸線A2回りに回動することができるようになっている。
また、筒状回動部46は、便器洗浄を開始するために、排水弁装置1の弁体36を開弁させる際に、弁体36の引き上げに関与する第1揺動レバー48と、便器の洗浄モードを大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれか一方に切り替える際に関与する第2揺動レバー50と、を備えている。
さらに、第1揺動レバー48は、第1玉鎖52の上方側が接続されており、この第1玉鎖52の下方側は、詳細は後述する排水弁装置1の弁体36を作動(直動)させる作動軸54の上端部に接続されている。
一方、第2揺動レバー50は、第2玉鎖56の上方側が接続されている。また、第2玉鎖56の下方側は、詳細は後述する排水弁装置1の大小洗浄切替用の切替弁58の一部に接続されている。
【0024】
例えば、大洗浄モードによる便器洗浄を開始する際には、図2に示す操作レバー34を回転中心軸線A1回りに一方側(図2の手前側)に所定角度(例えば、90度)回動させると、操作レバー34に連結されている外側回転軸40及び内側回転軸42が一方側に回転し、引き上げ作動部38の回転主軸部44が、回転中心軸線A2回りに一方側に回転するようになっている。
これにより、引き上げ作動部38の筒状回動部46についても、回転主軸部44と一体的に回転中心軸線A2回りに一方側(図2の手前側)に回動し、第1揺動レバー48が第1玉鎖52を引き上げるように一方側(図2の手前側)に揺動(回動)する一方、第2揺動レバー50については揺動することなく、第2玉鎖56のそれぞれは引き上げられないようになっている。
一方、小洗浄モードによる便器洗浄を開始する際には、図2に示す操作レバー34を回転中心軸線A1回りに他方側(図2の奥側)に所定角度(例えば、90度)回動させると、操作レバー34に連結されている外側回転軸40及び内側回転軸42が他方側に回転し、引き上げ作動部38の回転主軸部44が、回転中心軸線A2回りに他方側に回転するようになっている。
これにより、引き上げ作動部38の筒状回動部46についても、回転主軸部44と一体的に回転中心軸線A2回りに他方側(図2の奥側)に回動し、第1揺動レバー48が第1玉鎖52を引き上げるように他方側(図2の奥側)に揺動(回動)すると共に、第2揺動レバー50が第2玉鎖56のそれぞれを引き上げるように他方側(図2の奥側)に揺動(回動)するようになっている。
【0025】
なお、本実施形態では、排水弁装置1を操作する操作装置32として、使用者が操作レバー34を手動で操作する形態について説明するが、このような形態に限られず、他の形態についても適用可能である。
例えば、操作装置の他の形態として、コントローラが、使用者から操作ボタン等により入力された信号に基づいて、引き上げ作動部の駆動部(モータ等)の作動を電気的に制御することにより、第1揺動レバー48による排水弁装置1の弁体36の引き上げ操作や、第2揺動レバー50による大小洗浄モードの切替操作を自動で行うようにしてもよい。
また、本実勢形態の排水弁装置1の各玉鎖52,56については、線状のワイヤー部材であってもよい。
【0026】
つぎに、図2図3Bにより、本実施形態の排水弁装置1の詳細について説明する。
図3Aは、本発明の第1実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
また、図3Bは、本発明の第1実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
ここで、図3Aに示す大洗浄モードにおける排水弁装置1の各状態(I)~(VI)においては、弁体36の開弁を開始する前の状態(待機状態)を状態(I)とし、以後、時系列で弁体36の開弁状態を状態(II)~(V)とし、弁体36の閉弁状態を状態(VI)とする。
また、図3Bに示す小洗浄モードにおける排水弁装置1の各状態(I)~(IV)においては、弁体36の開弁を開始する前の状態(待機状態)を状態(I)とし、以後、時系列で弁体36の開弁状態を状態(II)、(III)とし、弁体36の閉弁状態を状態(IV)とする。
【0027】
まず、図2に示すように、本実施形態の排水弁装置1は、貯水タンク12の底面に取り付けられて排水口18を形成する排水口形成部60と、この排水口形成部60の上方に設けられた貯水筒62とを備えている。また、排水口形成部60の一部には、排水口18と連通するオーバーフロー管60aが取り付けられている。
つぎに、図2に示すように、排水弁装置1は、排水口18の上縁に形成された弁座66と、この弁座66に対して閉止可能かつ上方に直動可能に設けられた弁体36と、この弁体36が下端部に設けられて上下方向に直動(上下動)することにより弁体36を開閉する作動軸54と、を備えている。この作動軸54は、貯水筒62に対して上下方向に挿通するように設けられている。
【0028】
また、貯水筒62は、貯水タンク12内の洗浄水の一部を貯水することができるようになっている。
さらに、貯水筒62の左右の一方側の側壁部62a(貯水筒62を前方側から見て左側の側壁部62a)には、貯水筒62内の洗浄水を外部に流出させる流出穴68が設けられている。
また、貯水筒62内には、フロート72が配置されている。このフロート72は、作動軸54の外周側に同心状に設けられており、貯水筒62内の水位に連動(上下動)し、貯水筒62内の洗浄水により得られた浮力を作動軸54に作用することができるようになっている。
【0029】
つぎに、図2に示すように、貯水筒62の流出穴68は、大小洗浄モードに関わらず常時開放されており、フロート72の上部には、洗浄水を貯留するための貯留部74が設けられている。この貯留部74は、その周囲を取り囲む周壁部76と、この周壁部76の一部に形成された流出口78と、この流出口78に対して開閉可能に設けられた仕切り部(大小洗浄切替用の切替弁58とを備えている。
さらに切替弁58は、大洗浄モード時において、フロート72の貯留部74における周壁部76の流出口78を開放することにより、貯留部74内の洗浄水を流出口78から流出させることができるようになっている。
【0030】
一方、切替弁58は、小洗浄モード時において、フロート72の貯留部74における周壁部76の流出口78を閉鎖して、貯留部74内に洗浄水が貯留された状態を維持することにより貯留部74が水錘として機能するようになっている。
これらにより、小洗浄モード時に貯留部74内に貯留される洗浄水量が、大洗浄モード時に貯留部74内に貯留される洗浄水量よりも大きくなるため、小洗浄モード時の貯留部74の重量についても、大洗浄モード時の貯留部74の重量よりも大きくなり、フロート72における小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるようになっている。
【0031】
ちなみに、図3Aに示すように、大洗浄モードによる便器洗浄が実行される際には、切替弁58は、第2玉鎖56が第2揺動レバー50により引き上げられずに弛むようになっている。
また、図3Aに示すように、切替弁58は、第2玉鎖56に引き上げられることなく、フロート72の貯留部74の流出口78を開放するようになっている。
これにより、フロート72の貯留部74内には、洗浄水が貯留されないようになっている。
【0032】
一方、図3Bに示すように、小洗浄モードによる便器洗浄が実行される際には、切替弁58は、第2玉鎖56が第2揺動レバー50により引き上げられるようになっている。 また、切替弁58は、第2玉鎖56によって引き上げられ、フロート72の貯留部74の流出口78を閉鎖するようになっている。
これにより、フロート72の貯留部74内には、洗浄水が貯留されるようになっている。
これらにより、フロート72は、小洗浄モード時において貯留部74が水錘として機能する一方、大洗浄モード時において貯留部74が水錘として機能しにくいため、小洗浄モード時に得られる浮力が、大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるようになっている。
よって、大小洗浄モードのそれぞれの洗浄モードにおいて、貯水筒62内の水位W2とフロート72とのつり合い位置が、選択された洗浄モードに応じて変更されることになるため、小洗浄モード時のフロート72の下降時間T2が、大洗浄モード時のフロート72の下降時間T1よりも短くなるようになっている(T2<T1)。
【0033】
つぎに、図2図3Bにより、本発明の第1実施形態による排水弁装置1の動作について説明する。
まず、図2及び図3Aにより、本発明の第1実施形態による排水弁装置1により実行される大洗浄モードについて説明する。
図2及び図3Aの待機状態(I)から、大洗浄モードを開始する際、例えば、使用者が図2に示す操作レバー34を手前側に90度回転させると、図2に示す初期位置の状態(待機状態)の第1揺動レバー48のみが揺動され、第1玉鎖52のみが引き上げられる。
これにより、第1玉鎖52を介して排水弁装置1の作動軸54及び弁体36が引き上げられて上方に直動することにより、この作動軸54を介してフロート72についても一体的に引き上げられる(図3Aの状態(II)参照)。
このとき、第2玉鎖56は、第2揺動レバー50により引き上げられていないため、切替弁58は、第2玉鎖56により引き上げられることなく、フロート72の貯留部74の流出口78を開放するように回動した状態となる(図3Aの状態(II)参照)。
なお、この切替弁58がフロート72の貯留部74の流出口78を開放している状態は、以後、大洗浄モードが終了するまで維持される(図3Aの状態(II)~(VI)参照)。
【0034】
これらにより、図3Aの状態(II)では、フロート72及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放された状態となる。そして、貯水タンク12内の洗浄水は、排水口18に排水される。
その後、図3Aの状態(III)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が、貯水筒62の上端付近まで低下した後、さらに、貯水筒62の上端よりも低い水位になると、貯水筒62内の水位W2による水圧が、貯水タンク12内の水位W1による水圧を上回っているため、貯水筒62内の洗浄水が、流出穴68から流出する。
そして、図3Aの状態(IV)及び(V)に示すように、貯水筒62内の水位W2は、貯水タンク12内の水位W1よりも高くなっており、貯水筒62内の洗浄水が流出穴68から流出し続けている。このため、貯水筒62内の水位W2が徐々に低下することにより、フロート72についても、水位W2の下降に連動して下降する。
【0035】
つぎに、図3Aの状態(VI)に示すように、貯水筒62及び貯水タンク12内の水位W1が、貯水筒62の流出穴68の上端よりも下降すると、貯水筒62の流出穴68の外側が大気開放される。
これにより、貯水筒62内の洗浄水が流出穴68から流出する速度が速められ、貯水筒62内の水位W2の水位下降がさらに進むため、フロート72も下降し、作動軸54及び弁体36についても一体的に下降する。
そして、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、大洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
【0036】
つぎに、図2及び図3Bにより、本発明の第1実施形態による排水弁装置1により実行される小洗浄モードについて説明する。
図2及び図3Bの待機状態(I)から、小洗浄モードを開始する際、例えば、使用者が図2に示す操作レバー34を奥側に90度回転させると、図2に示す初期位置の状態(待機状態)の第1揺動レバー48及び第2揺動レバー50のそれぞれが揺動され、第1玉鎖52、第2玉鎖56のそれぞれが引き上げられる。
これにより、第1玉鎖52を介して排水弁装置1の作動軸54及び弁体36が引き上げられて上方に直動することにより、この作動軸54を介してフロート72についても一体的に引き上げられる(図3Bの状態(II)参照)。
さらに、第2玉鎖56を介して切替弁58が引き上げられ、フロート72の貯留部74の流出口78が切替弁58により開放される。
また、フロート72の貯留部74の流出口78が、切替弁58により閉鎖された状態は、以後、小洗浄モードが終了するまで維持される(図3Bの状態(II)~(IV)参照)。
【0037】
また、図3Bの状態(II)に示すように、フロート72及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が開始される。
その後、図3Bの状態(III)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が、貯水筒62の上端付近まで低下した後、さらに、貯水筒62の上端よりも低い水位になると、貯水筒62内の水位W2による水圧が、貯水タンク12内の水位W1による水圧を上回っているため、貯水筒62内の洗浄水が流出穴68から流出する。
【0038】
このとき、洗浄水が貯留されているフロート72の貯留部74については、その流出口78が切替弁58により閉鎖されている状態が維持されている。
これにより、小洗浄モード時の貯留部74の重量(並びに貯留部74内に貯留される洗浄水量)が、大洗浄モード時の貯留部74の重量(並びに貯留部74内に貯留される洗浄水量)よりも大きくなる。
したがって、小洗浄モード時においては、フロート72の貯留部74が水錘として作用するため、小洗浄モード時にフロート72に対して作用する浮力が大洗浄モード時の浮力に比べて小さくなる。
よって、小洗浄モード時のフロート72の下降時間T2が、大洗浄モード時のフロート72の下降時間T1よりも短くなる(T2<T1)。
また、小洗浄モード時の貯水筒62内の水位W2とフロート72との貯水筒62を基準としたつり合い位置についても、大洗浄モード時のつり合い位置よりも低くなる。
【0039】
そして、図3Bの状態(IV)に示すように、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、小洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
このとき、図3Bの状態(VI)における小洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL2(いわゆる、「デッドウォーターライン」と呼ばれる排水停止水位)は、図3Aの状態(VI)における大洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL1よりも上方に位置している。
すなわち、小洗浄モード時の最低水位DWL2が、大洗浄モード時の最低水位DWL1よりも上回る分だけ、小洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水される洗浄水量が、大洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水された洗浄水量を下回ることになる。
【0040】
上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置1によれば、水洗大便器4の洗浄を開始する際には、まず、大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードを選択した上で、排水弁装置1の作動軸54を上昇させることにより、弁体36が上昇(開弁)し、貯水タンク12内の洗浄水が排水口18から水洗大便器4の便器本体8に供給される。
そして、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて貯水筒62の水位W2が低下し、この水位W2の低下に伴って、貯水筒62内のフロート72が下降する。 これにより、排水弁装置1の作動軸54が下降することにより、弁体36が下降(閉弁)し、貯水タンク12内の洗浄水が排水口18から水洗大便器4の便器本体8に供給される。
そして、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて貯水筒62の水位W2が低下し、この水位W2から水洗大便器4の便器本体8への洗浄水の供給が停止され、水洗大便器4の洗浄が終了する。
このとき、フロート72における小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるため、小洗浄モード時のフロート72の下降時間T2を大洗浄モード時のフロート72の下降時間T1よりも短くすることができる(T2<T1)。
これにより、小洗浄モード時のフロート72の下降時間や弁体36の開弁時間を大洗浄モード時のフロート72の下降時間や弁体36の開弁時間よりも短くすることができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロート72に作用する浮力を変更することにより、貯水筒62内の洗浄水を流出穴68から流出させる際に、貯水筒62内の水位W2とフロート72とのつり合い位置を変更し、貯水筒62内の水位W2の低下に伴うフロート72の下降時間T1,T2を変更することができる。
よって、洗浄性能に影響を及ぼす洗浄水の単位時間当たりの流量(以下「瞬間流量」)[L/min]について、大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードであっても、比較的高く維持することができる。また、弁体36が排水口を閉止する際に発生する閉止音についても低減させることができる。
【0041】
また、本実施形態による排水弁装置1によれば、フロート72が、その一部に洗浄水を貯留するための貯留部74を備えているため、この貯留部74により、小洗浄モード時に貯留される洗浄水量を大洗浄モード時に貯留される洗浄水量よりも大きくすることができる。
したがって、小洗浄モード時の貯留部74の重量についても大洗浄モード時の貯留部74の重量よりも大きくなるため、フロート72における小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなる。
よって、小洗浄モード時のフロート72の下降時間T2を大洗浄モード時のフロート72の下降時間T1よりも短くすることができる(T2<T1)。
これにより、小洗浄モード時のフロート72の下降時間や弁体36の開弁時間を大洗浄モード時のフロート72の下降時間や弁体36の開弁時間よりも短くすることができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロート72に作用する浮力を変更することにより、貯水筒62内の洗浄水を流出穴68から貯水タンク12に流出させる際に、貯水筒62内の水位W2とフロート72とのつり合い位置を洗浄モードに応じて変更し、貯水筒62内の水位低下に伴うフロート72の下降時間T1,Tv2を変更することができる。
よって、洗浄性能に影響を及ぼす洗浄水の瞬間流量[L/min]について、大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードであっても、比較的高く維持することができる。また、弁体36が排水口18を閉止する際に発生する閉止音についても低減させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態による排水弁装置1によれば、大洗浄モードを実行する際には、切替弁58が、フロート72の上部に設けられた貯留部74の周壁部76の流出口78を開放することができる。
これにより、貯留部74内の洗浄水が流出口78から流出し、フロート72の上部の貯留部74内に洗浄水が貯留されないため、フロート72の浮力を比較的大きく設定することができる。
一方、小洗浄モードを実行する際には、切替弁58が貯留部74の周壁部76の流出口78を閉鎖することにより、貯留部74内の洗浄水が流出口78から流出することができず、フロート72の上部の貯留部74内に洗浄水が貯留された状態となり、貯留部74自体が水錘として機能するようになる。
これにより、小洗浄モード時におけるフロート72の浮力について、大洗浄モード時に比べて小さく設定することができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロート72に作用する浮力を変更することにより、フロート72の下降時間や弁体36の開弁時間を確実に切り替えることができる。
また、排水弁装置1が適用される洗浄水タンク装置2や水洗大便器4の製造誤差により弁体36の開弁時間が影響されることがないため、適用される水洗大便器4に対しても、適正な洗浄を実行することができる。
【0043】
つぎに、図4A及び図4Bを参照して、本発明の第2実施形態による排水弁装置100について説明する。
図4Aは、本発明の第2実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。また、図4Bは、本発明の第2実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
ここで、図4A及び図4Bに示す本発明の第2実施形態による排水弁装置100において、上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置1と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
【0044】
まず、図4A及び図4Bに示すように、本発明の第2実施形態による排水弁装置100においては、フロート172は、その下部に設けられ、かつ、洗浄水を貯留できるようにフロート172の下部の一部を取り囲む周壁部176を備えている。また、フロート172は、周壁部176の一部に形成され、かつ、フロート172の内外を連通させる連通口178を備えている。さらに、フロート172は、連通口178に対して上下方向にスライドすることにより開閉可能に設けられた仕切り部(大小洗浄切替用の切替弁158)を備えている。
また、切替弁158は、大洗浄モード時において、フロート172の周壁部176の連通口178を閉鎖することにより、フロート172の内外における洗浄水又は空気の連通を規制することができるようになっている。
一方、切替弁158は、小洗浄モード時において、フロート172の周壁部176の連通口178を開放することにより、フロート172の内外における洗浄水又は空気の連通を可能にするようになっている。
【0045】
つぎに、図4A及び図4Bに示すように、フロート172は、その周壁部176の上方領域を閉鎖する天面部180と、周壁部176の下縁に沿って形成された下方開口部182とを備えている。
これにより、フロート172は、その下方が開放された概ね筒状を形成しており、連通口178は、天面部180と下方開口部182との間の高さ位置に設けられている。
上述した本実施形態の排水弁装置100のこれらの構造が、上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置1の構造とは異なっている。
【0046】
つぎに、図4A及び図4Bにより、本発明の第2実施形態による排水弁装置100の動作について説明する。
まず、図4A及び図4Bの状態(I)に示す待機状態では、切替弁158が連通口178を閉鎖している状態となっている。
そして、この図4Aの状態(I)に示す待機状態から、大洗浄モードが開始された場合には、図4Aの状態(II)において、作動軸54及び弁体36が第1玉鎖52により上方に引き上げられる。
一方、切替弁158については、第2玉鎖56により上方に引き上げられることなく、フロート172の連通口178を閉鎖している(図4Aの状態(II)参照)。
なお、フロート172の連通口178が切替弁158により閉鎖された状態は、以後の図4Aの状態(III)から、弁体36が閉弁して大洗浄モードが終了する図4Aの状態(VI)まで維持される。
【0047】
これらにより、図4Aの状態(II)では、フロート72及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放された状態となる。そして、貯水タンク12内の洗浄水は、排水口18に排水される。
その後、図4Aの状態(III)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が、貯水筒62の上端付近まで低下した後、さらに、貯水筒62の上端よりも低い水位になると、貯水筒62内の水位W2による水圧が、貯水タンク12内の水位W1による水圧を上回っているため、貯水筒62内の洗浄水が、流出穴68から流出する。
そして、図4Aの状態(IV)及び(V)に示すように、貯水筒62内の水位W2は、貯水タンク12内の水位W1よりも高くなっており、貯水筒62内の洗浄水が流出穴68から流出し続けている。このため、貯水筒62内の水位W2が徐々に低下することにより、フロート72についても、水位W2の下降に連動して下降する。
【0048】
つぎに、図4Aの状態(VI)に示すように、貯水筒62の外側の貯水タンク12内の水位W1が、貯水筒62の流出穴68の上端よりも下降すると、貯水筒62の流出穴68の外側が大気開放される。
これにより、貯水筒62内の洗浄水が流出穴68から流出する速度が速められ、貯水筒62内の水位W2の下降がさらに進むため、フロート72も下降し、作動軸54及び弁体36についても一体的に下降する。
そして、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、大洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
【0049】
一方、図4Bの状態(I)に示す待機状態から小洗浄モードが開始された場合には、図4Bの状態(II)において、作動軸54及び弁体36が第1玉鎖52により上方に引き上げられる。
さらに、第2玉鎖56を介して切替弁158が引き上げられることにより、切替弁158が上方にスライドし、フロート172の連通口178を開放する。
なお、フロート72の連通口178が、切替弁158により開放された状態は、以後、小洗浄モードが終了するまで維持される(図4Bの状態(II)~(IV)参照)。
【0050】
また、図4Bの状態(II)に示すように、フロート172及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が開始される。
その後、図4Bの状態(III)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が、貯水筒62の上端付近まで低下した後、さらに、貯水筒62の上端よりも低い水位になると、貯水筒62内の水位W2による水圧が、その外側の貯水タンク12内の水位W1による水圧を上回っているため、貯水筒62内の洗浄水が流出穴68から流出する。
【0051】
ここで、フロート172については、連通口178が切替弁158により開放されている状態が維持されている。
これにより、フロート172内の空気Aの一部が、周壁部176の連通口178からフロート172の外側に排出されると共に、フロート172内においては、この排出された空気の容積分だけ、フロート172の外側の洗浄水がフロート172内の下方領域に部分的に流入する。
したがって、小洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積Q2が、大洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積Q1よりも小さくなる(Q2<Q1)。
これにより、小洗浄モード時におけるフロート172の浮力が、大洗浄モード時に比べて小さくなる。
よって、小洗浄モード時のフロート172の下降時間T2が、大洗浄モード時のフロート172の下降時間T1よりも短くなる(T2<T1)。
また、小洗浄モード時の貯水筒62内の水位W2とフロート72とのつり合い位置についても、大洗浄モード時のつり合い位置よりも低くなる。
【0052】
そして、図4Bの状態(IV)に示すように、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、小洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
このとき、図4Bの状態(IV)における小洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL2(いわゆる、「デッドウォーターライン」と呼ばれる排水停止水位)は、図4Aの状態(VI)における大洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL1よりも上方に位置している。
すなわち、小洗浄モード時の最低水位DWL2が、大洗浄モード時の最低水位DWL1よりも上回る分だけ、小洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水される洗浄水量が、大洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水された洗浄水量を下回ることになる。
【0053】
上述した本発明の第2実施形態による排水弁装置100によれば、図4Aに示すように、大洗浄モードを実行する際には、大小洗浄切替用の切替弁158が、フロート172の下部に設けられた周壁部176の連通口178を閉鎖する。
これにより、フロート172の内外における洗浄水又は空気の連通が規制されるため、フロート172内に閉じ込められた空気Aにより、フロート172の浮力を比較的大きく設定することができる。
一方、図4Bに示すように、小洗浄モードを実行する際には、切替弁158が、周壁部176の連通口178を開放することにより、フロート172の内外における洗浄水又は空気の連通が可能となる。
これにより、小洗浄モード時においては、フロート172内の空気Aの一部が、周壁部176の連通口178からフロート172の外側に排出されると共に、フロート172内においては、この排出された空気の容積分だけ、フロート172の外側の洗浄水がフロート172内の下方領域に部分的に流入可能となる。
したがって、小洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積Q2が、大洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積Q1よりも小さくなる(Q2<Q1)。
これにより、小洗浄モード時におけるフロート172の浮力について、大洗浄モード時に比べて小さく設定することができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロート172に作用する浮力を変更することにより、フロート172の下降時間や弁体36の開弁時間を確実に切り替えることができる。
また、本実施形態の排水弁装置100が適用される洗浄水タンク装置2や水洗大便器4の製造誤差により弁体36の開弁時間が影響されることがないため、適用される水洗大便器4に対しても、適正な洗浄を実行することができる。
【0054】
また、本実施形態による排水弁装置100によれば、図4Aに示すように、大小洗浄切替用の切替弁158が、大洗浄モード時において、フロート172の周壁部176の連通口178を閉鎖している状態では、フロート172内が空気Aで満たされることにより、フロート172の外部の洗浄水が下方開口部182からフロート172内に流入することが抑制される。
一方、図4Bに示すように、切替弁158が、小洗浄モード時において、フロート172の周壁部176の連通口178を開放している状態では、フロート172内の空気の一部が連通口178から排出されることにより、フロート172の外部の洗浄水が下方開口部182及び/又は連通口178からフロート172内の連通口178の高さ付近まで流入することができる。
これにより、小洗浄モード時にフロート172に作用する浮力が、大洗浄モード時にフロート172に作用する浮力に比べて小さくなる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロート172に作用する浮力を変更することにより、フロート172の下降時間や弁体36の開弁時間を確実に切り替えることができる。
また、本実施形態の排水弁装置100が適用される洗浄水タンク装置2や水洗大便器4の製造誤差により弁体36の開弁時間が影響されることがないため、適用される水洗大便器4に対しても、適正な洗浄を実行することができる。
【0055】
つぎに、図5A及び図5Bを参照して、本発明の第3実施形態による排水弁装置200について説明する。
図5Aは、本発明の第3実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。また、図5Bは、本発明の第3実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
ここで、図5A及び図5Bに示す本発明の第3実施形態による排水弁装置200において、上述した本発明の第1及び第2実施形態による排水弁装置1,100と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
【0056】
図5A及び図5Bに示すように、本発明の第3実施形態による排水弁装置200においては、上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置1の貯留部74及び周壁部76の流出口78を備えたフロート72と同一のフロートを備えている点で、上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置1の構造と共通している。
しかしながら、本実施形態の排水弁装置200は、上述した本発明の第1実施形態による排水弁装置1の貯水筒62に相当する貯水筒を備えていない点で、第1実施形態による排水弁装置1とは異なった構造になっている。
【0057】
つぎに、図5Aにより、本発明の第3実施形態による排水弁装置200により実行される大洗浄モードについて説明する。
図5Aの待機状態(I)から、大洗浄モードを開始すると、第1玉鎖52のみが引き上げられる。
これにより、第1玉鎖52を介して排水弁装置1の作動軸54及び弁体36が引き上げられて上方に直動することにより、この作動軸54を介してフロート72についても一体的に引き上げられる(図5Aの状態(II)参照)。
このとき、第2玉鎖56は、引き上げられていないため、切替弁58は、第2玉鎖56により引き上げられることなく、フロート72の貯留部74の流出口78を開放するように回動した状態となる(図5Aの状態(II)参照)。
なお、この切替弁58がフロート72の貯留部74の流出口78を開放している状態は、以後、大洗浄モードが終了するまで維持される(図5Aの状態(II)~(V)参照)。
【0058】
これらにより、図5Aの状態(II)では、フロート72及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放された状態となり、貯水タンク12内の洗浄水が、排水口18から便器本体8の導水路8aに排水される。
その後、図5Aの状態(III)及び(IV)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が下降すると、この水位W1の降下に連動して、フロート72が下降する。
このとき、フロート72の貯留部74においては、流出口78が切替弁58により開放されており、洗浄水が貯留されていない状態であるため、水錘として作用することはない。
そして、作動軸54及び弁体36が、フロート72と一体的に下降し、図5Aの状態(V)に示すように、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、大洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
【0059】
つぎに、図5Bにより、本発明の第3実施形態による排水弁装置200により実行される小洗浄モードについて説明する。
図5Bの待機状態(I)から、小洗浄モードを開始すると、例えば、第1玉鎖52及び第2玉鎖56のそれぞれが引き上げられる。
これにより、第1玉鎖52を介して排水弁装置1の作動軸54及び弁体36が引き上げられて上方に直動することにより、この作動軸54を介してフロート72についても一体的に引き上げられる(図5Bの状態(II)参照)。
また、第2玉鎖56を介して切替弁58が引き上げられ、フロート72の貯留部74の流出口78が切替弁58により閉鎖される。
なお、フロート72の貯留部74の流出口78が、切替弁58により閉鎖された状態は、以後、小洗浄モードが終了するまで維持される(図5Bの状態(II)~(V)参照)。
【0060】
また、図5Bの状態(II)に示すように、フロート72及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が開始される。
その後、図5Bの状態(III)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が、フロート72の上端よりも低い水位まで下降すると、フロート72は、この貯水タンク12内の水位W1の下降に連動して下降する。
【0061】
このとき、洗浄水が貯留されているフロート72の貯留部74については、その流出口78が切替弁58により閉鎖されている状態が維持されている。
これにより、小洗浄モード時の貯留部74の重量(並びに貯留部74内に貯留される洗浄水量)が、大洗浄モード時の貯留部74の重量(並びに貯留部74内に貯留される洗浄水量)よりも大きくなる。
したがって、小洗浄モード時においては、フロート72の貯留部74が水錘として作用するため、小洗浄モード時にフロート72に対して作用する浮力が大洗浄モード時の浮力に比べて小さくなる。
よって、小洗浄モード時のフロート72の下降時間T2が、大洗浄モード時のフロート72の下降時間T1よりも短くなる(T2<T1)。
また、小洗浄モード時の貯水タンク12内の水位W1とフロート72とのつり合い位置についても、大洗浄モード時のつり合い位置よりも低くなる。
【0062】
そして、作動軸54及び弁体36が、フロート72と一体的に下降し、図5Bの状態(V)に示すように、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、小洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
このとき、図5Bの状態(V)における小洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL2(いわゆる、「デッドウォーターライン」と呼ばれる排水停止水位)は、図5Aの状態(V)における大洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL1よりも上方に位置している。
すなわち、小洗浄モード時の最低水位DWL2が、大洗浄モード時の最低水位DWL1よりも上回る分だけ、小洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水される洗浄水量が、大洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水された洗浄水量を下回ることになる。
【0063】
上述した本発明の第3実施形態による排水弁装置200によれば、水洗大便器4の洗浄を開始する際には、まず、大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードを選択した上で、排水弁装置1の作動軸54を上昇させることにより、弁体36が上昇(開弁)し、貯水タンク12内の洗浄水が排水口18から水洗大便器4の便器本体8に供給される。
そして、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて貯水タンク12内の水位W1が低下すると、この水位W1の低下に伴って、フロート72が下降する。
これにより、排水弁装置1の作動軸54が下降することにより、弁体36が下降(閉弁)し、貯水タンク12内の洗浄水が排水口18から水洗大便器4の便器本体8に供給される。
このとき、フロート72における小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるため、小洗浄モード時のフロート72の下降時間T2を大洗浄モード時のフロート72の下降時間T1よりも短くすることができる(T2<T1)。
これにより、小洗浄モード時のフロート72の下降時間や弁体36の開弁時間を大洗浄モード時のフロート72の下降時間や弁体36の開弁時間よりも短くすることができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロート72に作用する浮力を変更することにより、貯水タンク12内の水位W1とフロート72とのつり合い位置を変更し、貯水タンク12内の水位W1の低下に伴うフロート72の下降時間T1,T2を変更することができる。
よって、洗浄性能に影響を及ぼす洗浄水の単位時間当たりの流量(以下「瞬間流量」)[L/min]について、大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードであっても、比較的高く維持することができる。また、弁体36が排水口を閉止する際に発生する閉止音についても低減させることができる。
【0064】
つぎに、図6A及び図6Bを参照して、本発明の第4実施形態による排水弁装置300について説明する。
図6Aは、本発明の第4実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から大洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。また、図6Bは、本発明の第4実施形態による排水弁装置の構成、並びに、待機状態から小洗浄モードにより開弁が開始されて閉弁するまでの一連の動作を示す概略図である。
ここで、図6A及び図6Bに示す本発明の第4実施形態による排水弁装置300において、上述した本発明の第1~第3実施形態による排水弁装置1,100,200と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
【0065】
図6A及び図6Bに示すように、本発明の第4実施形態による排水弁装置300においては、上述した本発明の第2実施形態による排水弁装置100の連通口178を備えたフロート172と同一のフロートを備えている点で、上述した本発明の第2実施形態による排水弁装置100の構造と共通している。
しかしながら、本実施形態の排水弁装置300は、上述した本発明の第2実施形態による排水弁装置100の貯水筒62に相当する貯水筒を備えていない点で、第2実施形態による排水弁装置100とは異なった構造になっている。
【0066】
つぎに、図6Aにより、本発明の第4実施形態による排水弁装置300により実行される大洗浄モードについて説明する。
図6Aの待機状態(I)から、大洗浄モードを開始すると、第1玉鎖52のみが引き上げられる。
これにより、第1玉鎖52を介して排水弁装置1の作動軸54及び弁体36が引き上げられて上方に直動することにより、この作動軸54を介してフロート72についても一体的に引き上げられる(図6Aの状態(II)参照)。
このとき、第2玉鎖56は、引き上げられていないため、切替弁158は、第2玉鎖56により引き上げられることなく、フロート172の連通口178を閉鎖している(図6Aの状態(II)参照)。
なお、この切替弁158がフロート172の連通口178を閉鎖している状態は、以後、大洗浄モードが終了するまで維持される(図6Aの状態(II)~(V)参照)。
【0067】
これらにより、図6Aの状態(II)では、フロート172及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放された状態となり、貯水タンク12内の洗浄水が、排水口18から便器本体8の導水路8aに排水される。
その後、図6Aの状態(III)及び(IV)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が下降すると、この水位W1の降下に連動して、フロート72が下降する。
このとき、フロート172の連通口178が切替弁158により閉鎖されており、フロート172内の圧力が、フロート172の外側の貯水タンク12内の水圧よりも高くなっているため、フロート172の外部の洗浄水が、フロート172の連通口178や下方開口部182からフロート172内に流入することができない状態となっている。
そして、作動軸54及び弁体36が、フロート72と一体的に下降し、図5Aの状態(V)に示すように、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、大洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
【0068】
一方、図6Bの状態(I)に示す待機状態から小洗浄モードが開始された場合には、図6Bの状態(II)において、作動軸54及び弁体36が第1玉鎖52により上方に引き上げられる。
また、第2玉鎖56を介して切替弁158が引き上げられることにより、切替弁158が上方にスライドし、フロート172の連通口178を開放する。
なお、フロート72の連通口178が、切替弁158により開放された状態は、以後、小洗浄モードが終了するまで維持される(図6Bの状態(II)~(V)参照)。
【0069】
さらに、図6Bの状態(II)に示すように、フロート172及び弁体36が、最高位置まで上昇した状態となり、貯水タンク12の排水口18が、上昇した弁体36により開放され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が開始される。
その後、図6Bの状態(III)に示すように、貯水タンク12内の水位W1が、フロート172の上端よりも低い水位まで下降すると、フロート172は、この貯水タンク12内の水位W1の下降に連動して下降する。
【0070】
ここで、フロート172については、連通口178が切替弁158により開放されている状態が維持されている。
これにより、フロート172内の空気Aの一部が、周壁部176の連通口178からフロート172の外側に排出されると共に、フロート172内においては、この排出された空気や洗浄水の容積分だけ、フロート172の外側の洗浄水がフロート172内の下方領域に部分的に流入する。
したがって、小洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積Q2が、大洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積Q1よりも小さくなる(Q2<Q1)。
これにより、小洗浄モード時におけるフロート172の浮力が、大洗浄モード時に比べて小さくなる。
よって、小洗浄モード時のフロート172の下降時間T2が、大洗浄モード時のフロート72の下降時間T1よりも短くなる(T2<T1)。
また、小洗浄モード時の貯水タンク12内の水位W1とフロート172とのつり合い位置についても、大洗浄モード時のつり合い位置よりも低くなる。
【0071】
そして、図6Bの状態(V)に示すように、弁体36が弁座66に接触すると、排水口18が閉弁され、貯水タンク12内から排水口18への洗浄水の排水が停止される。
これにより、小洗浄モードによる洗浄水タンク装置2から便器本体8への洗浄水の供給が終了される。
このとき、図6Bの状態(V)における小洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL2(いわゆる、「デッドウォーターライン」と呼ばれる排水停止水位)は、図6Aの状態(V)における大洗浄モード時の貯水タンク12内の最低水位DWL1よりも上方に位置している。
すなわち、小洗浄モード時の最低水位DWL2が、大洗浄モード時の最低水位DWL1よりも上回る分だけ、小洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水される洗浄水量が、大洗浄モード時に貯水タンク12から排水口18に排水された洗浄水量を下回ることになる。
【0072】
上述した本発明の第4実施形態による排水弁装置300によれば、水洗大便器4の洗浄を開始する際には、まず、大洗浄モード又は小洗浄モードのいずれかの洗浄モードを選択した上で、排水弁装置1の作動軸54を上昇させることにより、弁体36が上昇(開弁)し、貯水タンク12内の洗浄水が排水口18から水洗大便器4の便器本体8に供給される。
そして、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて貯水タンク12内の水位W1が低下すると、この水位W1の低下に伴って、フロート172が下降する。
これにより、排水弁装置1の作動軸54が下降することにより、弁体36が下降(閉弁)し、貯水タンク12内の洗浄水が排水口18から水洗大便器4の便器本体8に供給される。
このとき、フロート172における小洗浄モード時に得られる浮力が大洗浄モード時に得られる浮力に比べて小さくなるため、小洗浄モード時のフロート172の下降時間T2を大洗浄モード時のフロート172の下降時間T1よりも短くすることができる(T2<T1)。
これにより、小洗浄モード時のフロート172の下降時間や弁体36の開弁時間を大洗浄モード時のフロート172の下降時間や弁体36の開弁時間よりも短くすることができる。
これらの結果、選択された大洗浄モード又は小洗浄モードに応じて、フロート172に作用する浮力を変更することにより、貯水タンク12内の水位W1とフロート172とのつり合い位置を変更し、貯水タンク12内の水位W1の低下に伴うフロート172の下降時間T1,T2を変更することができる。
よって、洗浄性能に影響を及ぼす洗浄水の単位時間当たりの流量(以下「瞬間流量」)[L/min]について、大洗浄モードよりも洗浄水量が少ない小洗浄モードであっても、比較的高く維持することができる。また、弁体36が排水口を閉止する際に発生する閉止音についても低減させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 本発明の第1実施形態による排水弁装置
2 洗浄水タンク装置
4 水洗大便器
6 ボウル部
8 便器本体
8a 導水路
10 外装タンク
12 貯水タンク(洗浄水タンク)
14 蓋体
16 断熱体
18 排水口
20 給水装置
22 給水管
24 バルブユニット
26 給水用フロート
28 吐水管
30 レバー
32 操作装置
34 操作レバー
36 弁体
38 引き上げ作動部
40 外側回転軸
42 内側回転軸
44 回転主軸部
46 筒状回動部
48 第1揺動レバー
50 第2揺動レバー
52 第1玉鎖
54 作動軸
56 第2玉鎖
58 大小洗浄切替用の切替弁(仕切り部)
60 排水口形成部
60a オーバーフロー管
62 貯水筒
62a 側壁部
66 弁座
68 流出穴
72 フロート
74 貯留部
76 周壁部
78 流出口
100 本発明の第2実施形態による排水弁装置
158 大小洗浄切替用の切替弁(仕切り部)
172 フロート
176 周壁部
178 連通口
180 天面部
182 下方開口部
200 本発明の第3実施形態による排水弁装置
300 本発明の第4実施形態による排水弁装置
358 大小洗浄切替用の切替弁(仕切り部)
362 貯水筒
362a 側壁部
368 第1流出穴
370 第2流出穴
A フロート内の空気
A1 回転中心軸線
A2 回転中心軸線
DWL1 大洗浄モード時の貯水タンクの最低水位
DWL2 小洗浄モード時の貯水タンクの最低水位
Q1 大洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積
Q2 小洗浄モード時にフロート172内に占有する空気の容積
T1 大洗浄モードにおける貯水筒内の水位及びフロートの下降時間
T2 小洗浄モードにおける貯水筒内の水位及びフロートの下降時間
W1 貯水タンク内の水位
W2 内側貯水筒内の水位
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B