(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/28 20060101AFI20231120BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20231120BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231120BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20231120BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20231120BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20231120BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20231120BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20231120BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20231120BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20231120BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20231120BHJP
【FI】
H01L21/28 E
H01L21/28 301B
H01L21/285 301
H01L21/285 Z
H01L29/78 301B
H01L29/78 301P
H01L29/80 H
H01L21/285 P
H01L29/91 F
H01L29/91 B
H01L33/32
H01L29/91 A
(21)【出願番号】P 2019169874
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】519338902
【氏名又は名称】有限会社アルファシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】上田 大助
(72)【発明者】
【氏名】児玉 和樹
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-238866(JP,A)
【文献】特開2012-188294(JP,A)
【文献】特開平09-074246(JP,A)
【文献】特開平10-256181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/285
H01L 21/336
H01L 21/338
H01L 29/861
H01L 21/329
H01L 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物層上に第1の無機膜及び第2の無機膜をこの順に形成する第1の工程と、
前記第2の無機膜をパターニングする第2の工程と、
パターニングされた前記第2の無機膜をマスクに前記第1の無機膜を選択的に等方的にエッチングする第3の工程と、
PLD法によりn型GaNを成膜する第4の工程と、
PLD法又は真空蒸着法により導電性膜を成膜する第5の工程と、
前記第1の無機膜及び第2の無機膜を除去する第6の工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の無機膜が、酸化シリコンから構成され、
前記導電性膜がフッ酸耐性を有し、
前記第6の工程において前記第1の無機膜をフッ酸によりウェットエッチングすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の無機膜が、Si、Ge又はこれらの混合から構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の無機膜が、Ru、Re又はWNから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記導電性膜が、TiN、WN又はTaNから構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記III族窒化物層は、前記n型GaNと接触するp型III族窒化物層を少なくとも含み、
前記n型GaNのキャリア濃度が、前記p型III族窒化物層のアクセプタ活性化エネルギーをE
Aとして、以下の計算式
n
e=2×10
20E
A
0.9 [/cm
3]
で決定されるn
e以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記III族窒化物層が、ダイオードのカソード及びアノードであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記III族窒化物層が、FETのソース及びドレインであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記III族窒化物層が、LEDのn型の導電型を有する第1のクラッド層及びp型の導電型を有する第2のクラッド層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記LEDが紫外光LEDであり、
前記第4の工程で成膜される前記n型GaNの光学的バンドギャップがバースタインモスシフト効果によって増大していることを特徴とする請求項9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第4の工程で成膜される前記n型GaNのキャリア濃度が、
前記LEDが放射する波長をλとして、以下の計算式
n
e=2×10
20(1240/λ-3.4)
0.9 [/cm
3]
で決定されるn
e以上であることを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
p型III族窒化物層上にEpi-n型GaN層と導電性膜との積層膜からなるパターンが形成された電極構造を具備する半導体装置であって、前記積層膜の界面の断面において、前記Epi-n型GaN層の上面に対して前記導電性膜の下面が左右対称であることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
前記導電性膜はフッ酸耐性を有する金属又は金属化合物であることを特徴とする請求項12記載の半導体装置。
【請求項14】
前記Epi-n型GaN
層のキャリア濃度が、前記p型III族窒化物
層のアクセプタ活性化エネルギーをE
Aとして、以下の計算式
n
e=2×10
20E
A
0.9 [/cm
3]
で決定されるn
e以上であることを特徴とする請求項12又は13記載の半導体装置。
【請求項15】
前記Epi-n型GaN層は、バースタインモスシフト効果によって光学的バンドギャップが増大していることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法、特に半導体エピ層と導電層との自己整合積層電極を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNに代表されるIII族窒化物ワイドギャップ半導体は、高耐圧で、高電子移動度を有するという特長により、高出力、高電圧動作を必要とするパワーデバイスへの応用が進められている。このようなIII族窒化物半導体はバンドギャップが大きいため、III族窒化物半導体上でオーミック接触するコンタクト電極の開発は重要な課題の1つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-75452号公報
【文献】特開2018-206867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
III族窒化物と接するコンタクト電極の形成方法としては、リフトオフ法による形成方法が知られている。特許文献1にはトランジスタのソース、ドレインにリフトオフ法を用いてアロイコンタクトを形成する方法が開示されている。コンタクト電極に用いられる金属膜は、オーミック接触を実現するため、下地の導電型に合わせたワークファンクションを有する材料が用いられる。しかし、コンタクト抵抗低減については、さらなる改良が必要である。また、n型半導体及びp型半導体上で異なる電極材料を使用するため、コンタクト電極形成工程が複雑になるという課題もある。
また最近では、高濃度n型層を積層することでトンネル効果を用いるコンタクト形成法が開発されている。この場合には、コンタクト電極として同じ金属を用いることができるが、金属層をマスク合わせによってパターニングする必要があるため、マスク合わせのマージン部が抵抗削減の障害になるばかりでなく、工程が複雑化する問題が生じる。
【0005】
上記課題を鑑み、III族窒化物との接触抵抗を低減できるコンタクト電極を有する半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、
III族窒化物層上に第1の無機膜及び第2の無機膜をこの順に形成する第1の工程と、
前記第2の無機膜をパターニングする第2の工程と、
パターニングされた前記第2の無機膜をマスクに前記第1の無機膜を選択的に等方的にエッチングする第3の工程と、
PLD(Pulse Laser Deposition)法によりn型GaNを成膜する第4の工程と、
PLD法又は真空蒸着法により導電性膜を成膜する第5の工程と、
前記第1の無機膜及び第2の無機膜を除去する第6の工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記第1の無機膜が、酸化シリコンから構成され、
前記導電性膜がフッ酸耐性を有し、
前記第6の工程において前記第1の無機膜をフッ酸によりウェットエッチングすることを特徴とする。
【0008】
このような半導体装置の製造方法とすることで、III族窒化物層上にn型GaNと導電性膜との自己整合的に積層された電極を形成することができ、良好なコンタクト抵抗を実現することができる。
【0009】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記第2の無機膜が、Si、Ge又はこれらの混合から構成されていることを特徴とする。
【0010】
このような半導体装置の製造方法とすることで、第4の工程において、III族窒化物層を加熱した際におけるSiやGeの蒸気圧でn型GaNへn型不純物の導入(オートドーピング)がなされ、n型GaNの不純物濃度をさらに高濃度化することができる。
【0011】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記第2の無機膜が、Ru、Re又はWN(窒化タングステン)から構成されていることを特徴とする。
【0012】
このような半導体装置の製造方法とすることで、n型GaNがRu、Re又はWN膜上に成膜しない選択成長が可能になり、量産性の向上効果を得られる。
【0013】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記導電性膜が、TiN、WN又はTaNから構成されていることを特徴とする。
【0014】
このような半導体装置の製造方法とすることで、n型GaN上で密着性のよい導電性膜を形成することができる。
【0015】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記III族窒化物層は、前記n型GaNと接触するp型III族窒化物層を少なくとも含み、
前記n型GaNのキャリア濃度が、前記p型III族窒化物層のアクセプタ活性化エネルギーをEAとして、以下の計算式
ne=2×1020EA
0.9 [/cm3]
で決定されるne以上であることを特徴とする。
【0016】
このような半導体装置の製造方法とすることで、p型のIII族窒化物層とn型GaNとの間においてもオーミック接触を実現することができる。
【0017】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記III族窒化物層が、ダイオードのカソード及びアノードであることを特徴とする。
【0018】
このような半導体装置の製造方法とすることで、ダイオードの特性を向上することができる。
【0019】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記III族窒化物層が、FETのソース及びドレインであることを特徴とする。
【0020】
このような半導体装置の製造方法とすることで、FETのソース・ドレイン電極の間隔が短縮され、オン抵抗を低減できる。
【0021】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記III族窒化物層が、LEDのn型の導電型を有する第1のクラッド層及びp型の導電型を有する第2のクラッド層であることを特徴とする。
【0022】
このような半導体装置の製造方法とすることで、LEDの製造工程の簡略化が可能となる。
【0023】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記LEDが紫外光LEDであり、
前記第4の工程で成膜される前記n型GaNの光学的バンドギャップがバースタインモスシフト効果によって増大していることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、
前記第4の工程で成膜される前記n型GaNのキャリア濃度が、
前記LEDが放射する波長をλとして、以下の計算式
ne=2×1020(1240/λ-3.4)0.9 [/cm3]
で決定されるne以上であることを特徴とする。
【0025】
このような半導体装置の製造方法とすることで、紫外光LEDの発光効率を向上させることができる。
【0026】
本発明に係る半導体装置は、
p型III族窒化物層上にEpi-n型GaN層と導電性膜との積層膜からなるパターンが形成された電極構造を具備する半導体装置であって、
前記積層膜の界面の断面において、前記Epi-n型GaN層の上面に対して前記導電性膜の下面が左右対称であることを特徴とする。
【0027】
このような構成とすることで、コンタクト面積の低下を防止でき、幾何学的原因によるコンタクト抵抗の増大を防止できる。
【0028】
また、本発明に係る半導体装置は、
前記導電性膜はフッ酸耐性を有する金属又は金属化合物であることを特徴とする。
【0029】
このような構成とすることで、容易にコンタクト抵抗の増大を防止できるコンタクト電極の形成が可能となる。
【0030】
また、本発明に係る半導体装置は、
前記Epi-n型GaNのキャリア濃度が、前記p型III族窒化物のアクセプタ活性化エネルギーをEAとして、以下の計算式
ne=2×1020EA
0.9 [/cm3]
で決定されるne以上であることを特徴とする。
【0031】
このような構成とすることで、p型GaN層とEpi-n型GaNとの間でトンネル接合を実現できる。
【0032】
また、本発明に係る半導体装置は、
前記Epi-n型GaN層は、バースタインモスシフト効果によって光学的バンドギャップが増大していることを特徴とする。
【0033】
このような構成とすることで、Epi-n型GaN層による紫外光の吸収を低減し、LED(発光ダイオード)のクラッド層のコンタクト電極としても好適に適用できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、III族窒化物との接触抵抗を低減できるコンタクト電極を有する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施形態1による半導体エピ層と導電層との自己整合コンタクト電極形成のための主要工程を示す断面図である。
【
図2】実施形態1による半導体エピ層と導電層との自己整合コンタクト電極形成のための主要工程を示す断面図である。
【
図3】実施形態2による半導体エピ層と導電層との自己整合コンタクト電極形成のための主要工程を示す断面図である
【
図4】実施形態3による半導体エピ層と導電層との自己整合コンタクト電極を有するダイオードの断面図である。
【
図5】実施形態4による半導体エピ層と導電層との自己整合コンタクト電極を有するFETの断面図である。
【
図6】実施形態5による半導体エピ層と導電層との自己整合コンタクト電極を有するLEDを製造するための主要工程の一部を示す断面図である。
【
図7】GaN及びAlGaNのエネルギーバンドの不純物濃度依存性を示す模式図。
【
図9】キャリア濃度(n
e)とエネルギーシフトΔE
gとの関係を示すグラフ。
【
図10】MgドープAlGaN層の混晶比とアクセプタイオン化エネルギーとの関係を示す実験図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0037】
(実施形態1)
図1は、自己整合コンタクト電極の主要な製造工程を示す断面図である。
図1(a)に示すように、基板100(例えば、GaNのエピ層1上にp
+GaN層2を形成したエピ基板)を準備する。
【0038】
次に
図1(b)に示すように、例えばCVD法(例えばTEOSを用いたPECVD又はオゾンと組合わせた熱CVD等)により、第1の無機膜3(例えば、酸化シリコン(SiO
2)、膜厚50-200[nm])及び、CVD法(SiH
4やGeH
4を用いたCVD)又はPVD法(蒸着又はスパッタ)により、第2の無機膜4(例えば、Si、Ge又はSiとGeの混合から構成され、膜厚200-500[nm])を成膜する。
なお、上記のように無機膜を使用することで、以後のPLD法や真空蒸着法による成膜工程で、有機成分が不要に蒸発することを防止できる。
【0039】
次に
図1(c)に示すように、リソグラフィー法によりフォトレジスト膜のパターンを形成し、フォトレジスト膜のパターンをマスクに第2の無機膜4を、例えば好適には異方性ドライエッチング等によりエッチングすることによってパターニングし、パターニングされた第2の無機4a(以下、単に第2の無機4aと称することがある。)を得る。その後フォトレジスト膜はアッシング等により除去する。
【0040】
次に
図1(d)に示すように、第2の無機膜4aをマスクに、等方性エッチング(例えばフッ酸を用いたウェットエッチング等)により、第1の無機膜3を選択的に等方性エッチングし、パターニングされた第1の無機膜3a(以下、単に第1の無機3aと称することがある。)を得る。
従って、第2の無機4aと第1の無機膜3aとは、上面から見て、同一のパターン形状を有することとなる。
なお、ウェットエッチングはバッチ方式でも枚葉方式でもよい。
また、GaN系半導体及び第2の無機膜4(Si、Ge)は、フッ酸耐性を有するため本工程においてエッチングされない。
【0041】
なお、等方性エッチングにより、第1の無機膜3aの側面が後退し、第2の無機膜4aの断面は、第1の無機膜3の側面に対して庇状に突出したオーバーハング形状となる。また、第1の無機膜3aで覆われていない領域には、p+GaN層(p型GaN層)2が露出する。
なお、等方エッチングであればよく、等方性ドライエッチングを用いてもよい。
【0042】
次に、
図2(a)に示すように、窒素ラジカル照射装置を備えたPLD装置、例えば特許文献2に開示されるようなPLD装置を用い、n型のGaN膜(n
++GaN膜)(例えば膜厚10[nm]以上、n型不純物濃度5×10
20[/cm
3]以上)を基板100上に形成する。このとき、露出したGaN層(図中p
+GaN層2)上ではエピタキシャル成長し、単結晶のEpi-n
++GaN層(Epi-n型GaN層)51が形成されるが、第2の無機膜4a上では多結晶のpoly-n
++GaN層(poly-n型GaN層)52が形成される。
【0043】
なお、後述するように、p+GaN層2上でEpi-n++GaN層51はpn接合となるが、トンネル接合によってオーミック接触となる。
【0044】
この場合、ターゲットとしてn型のドーパントであるSiやGeを含有するGa又はGaNを用い、窒素ラジカルを供給しながら、パルスレーザー(例えばピコ秒レーザー)によりターゲットを蒸発させることで、n型のGaNを成膜できる。
また、基板100上に形成された第2の無機膜4aがSi又はGeにより構成されているため、PLD法によりn型GaNを形成する際に、第2の無機膜4aから蒸発したSi又はGeがn型GaNにドーピングされる。その結果、GaN中のn型不純物濃度を増大させることができる。
なお、GeはSiと比較して低い温度での蒸気圧が高いため、n型のGaN成膜時のドーピング材としては、より好適に使用できる。
【0045】
PLD法は、パルスレーザーが照射された箇所においてターゲット材料が瞬時に蒸発し、被成膜対象である基板に成膜を行うものであり、他の蒸着法と比べて成膜粒子の指向性が高い。そのため、オーバーハング形状の第2の無機膜4によって、Epi-n++GaN層51とpoly-n++GaN層52とが接することはない。
【0046】
次に
図2(b)に示すように、
図2(a)の工程後、連続してPLD法により電極用導電性膜6(例えばNi、W、TiN、WN、TaN等のフッ酸耐性のある金属、合金若しくは金属化合物又はこれらの積層膜)を成膜する。PLD装置内にGa(GaN)ターゲット及び金属ターゲットを準備しておき、PLD装置内でターゲットを入れ替えれば、真空を保持したまま連続的にn
++GaN層(Epi-n
++GaN層51、poly-n
++GaN層52)と導電性膜6とを形成できる。
なお、TiN、WN、TaNのような金属窒化物は、窒素ラジカルを照射しながらPLD法により金属(Ti、W、Ta)を蒸発させ、窒素ラジカルと金属(Ti、W、Ta)とを反応させることで成膜することができる。TiN、WN、TaNは窒素ラジカルを中断することなく成膜が可能であるため、GaN層からの窒素抜けが防止できる。さらに、フッ酸耐性のある金属は、一般にEpi-n
++GaN層51との付着力が弱い傾向があるが、TiN、WN、TaNのような金属窒化物は、付着強度が極めて高いという特長を有し、Epi-n
++GaN層51直上に好適に形成することができる。
【0047】
導電性膜6は、Epi-n++GaN層51及びpoly-n++GaN層52上に形成されるが、上記のようにPLD法による成膜は、他のPVD法と比較して指向性が高いため、これらの膜上に形成された導電性膜6が互いに接する(繋がる)ことはない。
なお、指向性が高いとは、ターゲット表面から放出される粒子の角度分布が急峻であり、成膜対象物の表面に対して垂直に入射する粒子成分が多い(入射角が垂直に近い)ことを意味する。
なお、導電性膜6は真空蒸着法により形成してもよいが、PLD法による形成は、Epi-n++GaN層51との界面を清浄に維持でき、また指向性が高く、製造工程において特に好適に使用できる。
【0048】
次に
図2(c)に示すように、フッ酸によるウェットエッチングにより、第1の無機膜3aを除去し、リフトオフ法により、基板100上にEpi-n
++GaN層51及び導電性膜6の積層を残置する。
以下、Epi-n
++GaN層51及び導電性膜6の積層は、下層の半導体層との間で電気的接続を行うために使用されるため、積層電極と称することがある。
【0049】
以上の工程により、自己整合的に導電性膜6をEpi-n++GaN層51に形成することができる。この場合、Epi-n++GaN層51と導電性膜6とがこの順に自己整合的積層であるため、Epi-n++GaN層51と導電性膜6との界面の断面において、Epi-n++GaN層51の上面に対して導電性膜6の下面が左右対称に配置される。
【0050】
Epi-n++GaN層51上でリソグラフィープロセスを実行して導電性膜6をパターニングする必要がないため、アライメントエラーを考慮したマージンを導電性膜6のパターンに設ける必要がない。
その結果、実質的なコンタクト面積の低下を防止でき、幾何学的原因によるコンタクト抵抗の増大を防止できる。さらに、リソグラフィー工程を削減できるため、工期の短縮も可能である。
【0051】
さらに、Epi-n++GaN層51上でフォトレジストの形成、及び除去を行う必要がなく、Epi-n++GaN層51上に連続的に導電性膜6を成膜するため、導電性膜6とEpi-n++GaN層51との界面は清浄であり、Epi-n++GaN層51表面の結晶性に対する損傷が抑制され、汚染等によるコンタクト抵抗の増大を抑制することができ、良好なオーミックコンタクトを実現できる。
【0052】
なお、Epi-n++GaN層51が形成される下地層としてp+GaN層2を例として説明したが、これに限定するものではなく、下地層はIII族窒化物であってもよい。
このように本発明によれば、III族窒化物、又はN(窒素)極性面又はIII族(例えばGa)極性面または非極性面であるm面、即ち(11-20)面とa面、即ち(11-0-0)面などや半極性面である(10-11)面と(10-12)面、(11-22)面を表面に有するIII族窒化物との接触抵抗を低減するという効果を提供することができる。
【0053】
(実施形態2)
本実施形態では、第1の無機膜3上に形成する膜として、Ru等の触媒作用のある金属膜を使用するものである。
以下、詳細に説明する。
【0054】
図3(a)に示すように、
図1(b)の工程において、第2の無機膜4に代えて、基板100上に、蒸着法、スパッタ等のPVD法等により、Ru、Re又はWN等の触媒作用のある金属からなる第3の無機膜7(例えば、膜厚200-500[nm])を成膜する。
なお、PLD法により第3の無機膜7を形成してもよい。
【0055】
次に
図3(b)に示すように、まずは
図1(c)の工程と同様に、リソグラフィー法によりフォトレジスト膜のパターンを形成し、フォトレジスト膜のパターンをマスクに第3の無機膜7を、例えば好適には異方性ドライエッチング等によりエッチングし、パターニングされた第3の無機膜7a(以下、単に第3の無機7aと称することがある。)を得、その後フォトレジスト膜はアッシング等により除去する。
その後、
図1(d)の工程と同様に、第3の無機膜7aをマスクに、等方性エッチング(例えばフッ酸を用いたウェットエッチング等)により、第1の無機膜3を等方性エッチングし、パターニングされた第1の無機膜3aを得る。その結果、第3の無機膜7aの断面は、第1の無機膜3aの側面に対して庇状に突出したオーバーハング形状となる。
【0056】
次に
図3(c)に示すように、
図2(a)の工程と同様に、PLD法により、n型のGaN膜(n
++GaN膜)を基板100上に形成する。このとき、第3の無機膜7aに到達したGaNは、第3の無機膜7aの表面の触媒作用によって分解再蒸発する。そのため、
図2(a)の工程とは異なり、露出したGaN層(図中p
+GaN層2)上のみに、Epi-n
++GaN層51が選択的にエピタキシャル成長するが、第3の無機膜7a上にはn
++GaNの膜は形成されない。
【0057】
次に
図3(d)に示すように、
図2(b)の工程と同様に、
図3(c)の工程後、連続してPLD法により電極用導電性膜6、例えばNi、W、TiN、WN、TaN等のフッ酸耐性のある金属、合金又は金属化合物を成膜する。
導電性膜6は、Epi-n
++GaN層51及び第3の無機膜7a上に形成されるが、指向性の高いPLD法により成膜を行うため、これらの膜上に形成された導電性膜6が互いに接することはない。
【0058】
次に
図2(c)に示す工程と同様に、フッ酸によるウェットエッチングにより、第1の無機膜3aを除去し、リフトオフ法により、基板100上にEpi-n
++GaN層51及び導電性膜6の積層を残置する。
特に厚膜のGaNを形成する場合、
図2(c)に示す工程と異なり、poly-GaNが無いため、ウェットエッチング工程において、poly-GaNの再付着による歩留まり低下リスクを防止できる。
【0059】
なお、
図3(d)の工程後、第3の無機膜7aを構成する材料(例えばRu)を選択的に除去する薬液により、選択的に第3の無機膜7aを除去してもよい。この場合、第1の無機膜3aを残置し、層間絶縁膜又は保護膜として利用することができる。
【0060】
(実施形態3)
本発明により形成できる自己整合的なGaN半導体膜と導電性膜の積層は、PNダイオードに対して、好適に適用可能である。
従来、p型GaNにはNi/Au積層膜、n型GaNにはTi/Au積層膜がオーミック電極として使用されてきた。しかし、本発明の自己整合型のEpi-n++GaN層と導電性膜6との積層の電極を使用することで、両導電型のGaN層に対して同時にオーミックコンタクトを実現できる。ダイオード特性が改善(例えば、順方向の電流値の増大)される。
【0061】
図4にGaN系半導体を用いたダーオードの例を示す。Si、サファイヤ、SiC、GaN等の基板21上に、例えばAlN等のバッファ層22を有し、さらに、バッファ層22上にi-GaN層231とi-AlGaN層232との周期積層24が形成されている。さらに周期積層24上にp
+AlGaN層25が形成されている。また、p
+AlGaN層25は周期積層24をエッチングされた側面に形成された形状であっても良い。
周期積層24の一部はエッチング除去され、最下層のi-GaN層23が露出している。
【0062】
なお、周期積層24の側壁断面をテーパー形状としてもよい。この場合、周期積層24をフォトレジストをエッチングマスクとしてウェットエッチングするか、又はエッチングマスクであるフォトレジストの側面が後退するエッチング条件でドライエッチングすればよい。
【0063】
図4に示すように、p
+AlGaN層25上に実施形態1又は2により、Epi-n
++GaN層51と導電性膜6との積層からなる電極が形成されており、さらに周期積層24と露出したi-GaN層23に接するようにEpi-n
++GaN層51と導電性膜6(例えばTiN又はNi/Au)との積層からなる電極が形成されている。
【0064】
p
+AlGaN層25上に形成されたEpi-n
++GaN層51と導電性膜6との積層は、pn接合を形成する。
GaNやAlGaNのドーパントとしてMgが用いられた場合のアクセプタイオン化エネルギーはGaN層の場合150[meV]であるが、Al
0.4Ga
0.6Nの場合450[meV]と、Al混晶比が高くなるほど大きくなる(
図10参照)。この結果、Al混晶比が高いものほど、電気的なコンタクトを取ることが困難になる。
しかし、p
+AlGaN層25とEpi-n
++GaN層51との間においては、以下に説明するようにトンネル接合により、オーミック接触が可能となる。
【0065】
GaN層のn型不純物濃度を増大させた際にGaN材料固有の状態密度を越えると、フェルミレベルは伝導帯の中に入り、伝導体の底から電子が埋められて行く。この様子は解析的に求めることは難しいため、フルバンド数値計算を行った(
図8参照)。
図9は、フェルミレベルが伝導帯の底からどの位高くなるかを上記計算で求めた結果に、カーブフィッティングされた経験式を重畳したものである。
図9において、フルバンド計算により求めたキャリア濃度の理論値は図中◎で示し、その理論値をフィッティングした経験式を図中実線で示す。
経験式(フィッティング曲線)は、キャリア濃度をn
eとし、エネルギーシフトをΔE
gとすると以下の式1で表せる。
n
e=2×10
20(ΔE
g)
0.9 [/cm
3] ・・・(式1)
【0066】
図7はp
+AlGaN上にn
++GaNを成長した際の接合部のバンド図を示す。n
++GaN層の濃度を高くして行くことで、フェルミレベルが伝導帯の底から上がる。トンネル接合によるオーミック接触は、電子のエネルギーとホールのエネルギーが一致することが必要条件である(
図7(b))。この必要条件を言い換えると、p
+AlGaNのアクセプタイオン化エネルギー(E
A)とn
++GaNの伝導帯とフェルミレベルの差ΔE
gが等しくなることである。実際には電子とホール分布が重なることで電流を流すことができる。そのため、ΔE
gとE
Aとの関係は、以下のようになる。
ΔE
g≧E
A ・・・(式2)
従って、p
+AlGaNとn
++GaNとがトンネル接合となるため、Epi-n
++GaN層51のキャリア(不純物)濃度は式3で定まるn
e以上となる。
n
e=2×10
20(E
A)
0.9 [/cm
3] ・・・(式3)
なお、キャリア濃度は固溶限以下であることは言うまでもない。
【0067】
従って、本実施形態においては、pn接合を有するダイオードのカソード及びアノード領域に、Epi-n++GaN層51と導電性膜6との積層からなる電極を使用できる。
従来は、それぞれの導電型に合わせて異なる材料からなる電極を、それぞれ別々の工程により形成する必要があった。
しかし、本実施形態によれば、異なる導電型のGaN半導体上に、同時にEpi-n++GaN層51と導電性膜6との積層からなるコンタクト電極を形成できる。
そのため、リソグラフィー工程数を削減でき、製造工程の簡略化に寄与することができる。
【0068】
なお、上記トンネル接合を得るための条件は、本実施形態に限定されず、他の実施形態においても適用されることは言うまでもない。式2、3のEAとしてEpi-n++GaN層51が形成されている(接触している)下地層のアクセプタ活性化エネルギーを用いればよい。
【0069】
(実施形態4)
GaN半導体を用いたFET(電界効果トランジスタ)のソース、ドレイン電極として使用可能である。
図5(a)に示すように、例えば基板であるi-GaN31上に、チャネル領域を構成するi-AlGaN32が形成され、ゲート絶縁膜33(例えばSiN、Al酸化物、Al窒化物、Al窒化酸化物等)を介して、ゲート電極34(例えばRu、WN、Ni/Au等)が形成されている。
【0070】
図5(b)に示されるように、ゲート電極34をマスクにしてi-AlGaN32をエッチングしたものに、実施形態1又は実施形態2に記載されたプロセスにより、ソース、ドレイン領域にEpi-n
++GaN層51と導電性膜6との積層からなるコンタクト電極を形成することができる。
例えば、ゲート電極34を形成(パターニング)後に、
図1(b)、(c)、(d)に示される工程と同様に、第1の無機膜3及び第2の無機膜7をパターニングした後、
図2(a)、(b)、(c)に示される工程と同様に、n
++GaN層51と導電性膜6を成膜することで、ソース、ドレイン電極を形成する。なお、Ru等のゲート材料はフッ酸に対する耐性があるので、上記工程時に溶解することはない。
この場合、
図5(c)に示されるように、第1の無機膜3aは、ゲート絶縁膜33及びゲート電極34を露出させるように形成すればよい。続いて、
図5(d)及び
図5(e)に示されるように、実施形態1又は実施形態2に記載されたプロセスにより、ゲート電極とソース、ドレイン領域が自己整合的に形成されるFETを製造することができる。
特に、ゲート電極34として、少なくとも最上層にRu、Re又はWN等の触媒作用のある金属(又は金属窒化膜)を用いることで、ゲート電極34上にpoly-GaNが形成されることなく導電性膜6が形成される。そのため、ゲート電極34の抵抗の増大を防止できる。
なお、フッ酸によるリフトオフ法によりEpi-n
++GaN層51と導電性膜6との積層を形成するため、ゲート絶縁膜33及びゲート電極34は、上記のようにフッ酸耐性のある材料を選択する。
【0071】
ゲート電極下のチャネル領域を間に挟むソース、ドレイン領域とEpi-n++GaN層51とi-AlGaN32とがオーミック接触するため、低抵抗なコンタクトを実現することができる。そのため、FETの特性が改善(例えば駆動電流が増大)する。
また、自己整合的にコンタクト電極を形成するため、従来のようにアライメントエラーを考慮した距離だけ導電性膜6をEpi-n++GaN層51より小さく設計する必要がない。その結果、従来よりソース・ドレイン電極の間隔が短縮され、オン抵抗を低減できる。
【0072】
また、ゲート電極34の側面に、SiのCMOS製造で標準的に用いられているサイドウォールを形成することで、ゲート電極とソース、ドレイン電極間隔を調整することもできる。
なお、この場合、ゲート絶縁膜33がエッチング液に晒されることがなく、ゲート絶縁膜33にフッ酸耐性がない材料を用いることを許容し、使用できる材料の選択肢を拡げることもできる。例えば、ゲート絶縁膜33としてシリコン酸化膜を用いることも可能となる。
【0073】
なお、
図5に示すFETはリセスエッチングを用いたFETの例を示したが、これに限定するものではない。イオン注入等によりn型、p型の不純物を導入し、ソース、ドレイン領域を形成したFETに対しても、本発明の自己整合的積層電極を適用し、Epi-n
++GaN層51と導電性膜6との積層をソース、ドレイン電極として用いることができる。
【0074】
この場合、n型のソース、ドレイン領域上でEpi-n++GaN層51と導電性膜6との積層がオーミック接触することは言うまでもない。
p型のソース、ドレイン領域上においては、Epi-n++GaN層51とp型のGaN系半導体との間は、トンネル接合によってオーミックコンタクトを実現することができる。
従って、1つの基板上にp型FET及びn型FETを形成する場合においても、Epi-n++GaN層51と導電性膜6との積層を、両導電型のFETのソース、ドレイン電極として同時に形成することができ、製造工程の簡略化が可能となる。
【0075】
また、同一の基板にp型FET及びn型FETを形成しない場合でも、量産工場において、p型FET及びn型FETを生産する場合には、異なるコンタクトプロセスの管理が不要となるため、材料の在庫管理及び製造設備の管理等、製造管理の負担が軽減できる。
【0076】
(実施形態5)
本実施形態によれば、自己整合的なGaN半導体膜と導電性膜の積層は、LEDデバイスにも好適に使用できる。
図6(a)に示すように、LEDデバイスは、発光層である活性層41(例えばAlGaN及びInGaNの多重量子井戸)を、n型GaN層からなる第1のクラッド層42及びp型GaN層からなる第2のクラッド層43で挟み込む構成を用いている。
第1のクラッド層42は、サファイヤ等の基板44上に、GaNのバッファー層45を介して形成されている。
【0077】
これらのクラッド層上にはオーミック電極を形成する必要がある。従来は、それぞれの導電型に対応させて、ワークファンクションが異なる金属を形成する必要がある。そのため、オーミック電極の成膜工程、リソグラフィー工程及びエッチング工程を、それぞれの導電型のクラッド層に対して行う必要がある。
しかし、本発明のGaN半導体と導電性膜の積層により、それぞれのクラッド層に同一工程でオーミック電極を形成することができ、製造コストの削減又は工期の短縮に寄与できる。
【0078】
具体的には、サファイヤ等の基板44上に、GaN等のバッファー層45、第1のクラッド層42、活性層41、第2のクラッド層43を順に形成する。その後、リソグラフィー及びドライエッチングの組合わせにより、一部の第1のクラッド層42表面を露出させる(
図6(a))。
その後、実施形態1又は実施形態2に説明したように、第1の無機膜3及び第2の無機膜4を形成し、
図1(c)以降の工程又は
図3(b)以降の工程により、第1のクラッド層42及び第2のクラッド層43上に、Epi-n
++GaN層51及び導電性膜6の積層を形成する(
図6(b))。
【0079】
この場合、第1のクラッド層42と第2のクラッド層43との間には、少なくとも活性層41に相当する段差が存在する。
しかし、指向性の高いPLD法によりEpi-n++GaN層51及び導電性膜6を形成するため、第1のクラッド層42及び第2のクラッド層43上でのEpi-n++GaN層51及び導電性膜6の成膜特性の違いは、他のPVD法と比較し小さくなる。そのため、第1のクラッド層42及び第2のクラッド層43上に形成されたEpi-n++GaN層51及び導電性膜6の構成は、実質的に(形状、結晶性及び電気特性的に)差異はない。
【0080】
なお、第2の無機膜4のパターニングに使用するフォトレジスト膜の膜厚は、活性層41の厚みと両クラッド層の厚みより厚く設定するか、又はレジスト塗布条件(例えば、レジストコーターの回転数)を最適化し、等方性の高い(コンフォーマルな塗布)条件とすればよい。また、スプレーコートによりフォトレジスト膜を塗布してもよい。
また、第1の無機膜3及び第2の無機膜4は、上記成膜方法以外に、第1のクラッド層42、活性層41及び第2のクラッド層43の露出した側壁面を覆うことが出来れば他の成膜方法で形成してもよい。
【0081】
第2のクラッド層43とEpi-n++GaN層51との間においては、上記のようにトンネル接合により、オーミック接触が可能となる。従って、第2のクラッド層43とEpi-n++GaN層51及び導電性膜6に対してオーミック接触が可能である。
なお、第1のクラッド層42上のEpi-n++GaN層51及び導電性膜6に対してオーミック接触が可能であることは言うまでもない。
【0082】
このように、異なる導電型である第1のクラッド層42及び第2のクラッド層43上で、同一工程によってオーミック接触を両立できるコンタクト電極を形成することができる。その結果、LEDの製造工程の簡略化が可能であり、またLEDの発光効率が向上する。
【0083】
(実施形態6)
実施形態5のLEDデバイスの適用においては、さらに、紫外線LEDに対して本発明の自己整合型コンタクトは特別の効果を奏する。
紫外線LEDの場合、例えば活性層41はAlGaNの量子井戸(例えばAl0.6Ga0.4NとAl0.5Ga0.5Nとの5層量子井戸)により構成され、第1のクラッド層42はn型のAlGaN(例えばn+-Al0.6Ga0.4N)により構成され、第2のクラッド層43はp型のAlGaN(例えばp+-Al0.6Ga0.4N)により構成されている。
なお、基板44は、例えばサファイヤ又はAl基板から構成でき、バッファー層45例えばAlN層から構成できる。
【0084】
紫外線LEDに使用するAlGaNは、バンドギャップがGaNより広い。そのため、特に第2のクラッド層43(p型AlGaN)と電極との間でオーミック接触を得ることが、さらに難しくなる。例えば、上述のようにMgドープのp型AlGaN層とGaN層について、アクセプタイオン化(活性化)エネルギーは、GaN層の場合150[meV]であるのに対して、Al
0.6Ga
0.4N層の場合450[meV]であることが知られている(
図10参照)。
そのため、従来、第1のクラッド層42及び第2のクラッド層43上には、それぞれの導電型に対応した電極を形成するが、p型半導体である第2のクラッド層43上で低抵抗なオーミック接触を実現することが特に困難となる。
コンタクト抵抗の増大によりオン電圧が大きくなることで発熱し、発光が低下するという問題が生じることになる。
【0085】
さらに、コンタクトを低減するために第2のクラッド層43上にバンドギャップが相対的に狭いp++GaN層を形成すると、p++GaN層が紫外光を吸収し、発光効率が低下してしまうという問題がある。特に364[nm]以下の紫外光は、GaN材料の光吸収により、発光効率が低くなる。
【0086】
しかし、本実施形態のコンタクト電極によれば、これらの課題を解決し、紫外線LEDの発光効率を向上させることができる。さらに、第1のクラッド層42及び第2のクラッド層43上に同一構成のコンタクト電極を形成できるため、製造工程の簡略化が可能である。
【0087】
まず、コンタクト抵抗を低減するため、第2のクラッド層43(p型AlGaN)上に直接Epi-n++GaN層51をPLD法で形成し、上記のように異種の導電型の半導体において、トンネル接合によってオーミック接触が可能となる。
さらに、導電性膜6は、Epi-n++GaN層51とノンアロイコンタクトを実現し、p型領域である第2のクラッド層43とのコンタクト抵抗を従来より低減できる。
なお、ノンアロイコンタクトを実現できるため、合金化処理のための熱処理が不要、又は熱負荷の低減が可能となる。
【0088】
さらに、GaN材料の紫外光吸収の問題については、不純物を導入したn++GaN層のバースタインモスシフト効果(Burstein-Moss Shift)による光学的バンドギャップの増大効果を利用して、光吸収を低減することができる。
【0089】
図7は、GaN層のn型不純物濃度を増大させたときの、GaN及びAlGaNのエネルギーバンドの変化を示す。
上述のように不純物濃度を増大させることにより、フェルミレベルが伝導帯側へと移動し、
図7(a)に示す状態から
図7(b)に示す状態へと変化し、トンネル電流が流れ始める。このようにn
++GaN領域の伝導帯の電子とp
+AlGaN(クラッド)層の価電子帯のホールが同じエネルギーを持つことがトンネル効果を生じる必要条件である。
【0090】
さらに不純物濃度を増大させると、
図7(c)に示すように、フェルミレベルがさらに上昇し、コンダクションバンド内において、電子がより高いエネルギー準位まで占有することになる。そうするとパウリ原理によって、光学的に検出されるGaNのバンドギャップ(光学的バンドギャップ)が、禁制帯幅と比較して増大する(バースタインモスシフト効果)。
すなわち、GaNの紫外光吸収特性を、バースタインモスシフト効果を利用して制御し、紫外光吸収を低減することが可能となる。
【0091】
上記式1について、紫外光の波長をλとすると、GaNのエネルギーギャップが3.4[eV]であるため、光学吸収の生じないキャリア濃度は、以下の式4で求められるne以上であればよい。
ne=2×1020(1240/λ-3.4)0.9 ・・・(式4)
例えば、
UV-A(350[nm])では、キャリア濃度3.5×1019[cm-3]
UV-B(300[nm])では、キャリア濃度1.5×1020[cm-3]
UV-C(250[nm])では、キャリア濃度3.0×1020[cm-3]
となる。
【0092】
以上のようにEpi-n++GaN層51及び導電性膜6の積層を形成し、式3、4により定まるキャリア濃度以上に設定することで、Epi-n++GaN層51の紫外光吸収を抑制しつつ、トンネル接合により第1のクラッド層42及び第2のクラッド層43とオーミック接触が可能となる。その結果、従来の課題が解決でき、発光効率の良い紫外線LEDを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、Epi-n++GaN層と導電性膜との自己整合的積層により、GaN系半導体に対して、良好なコンタクト抵抗を実現することができる。本発明による自己整合的積層は、上記のように種々の半導体装置に適用することができ、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0094】
100 基板
1 GaNのエピ層
2 p+GaN層
3 第1の無機膜
4 第2の無機膜
3a パターニングされた第1の無機膜
4a パターニングされた第2の無機膜
51 Epi-n++GaN層
52 poly-n++GaN層
6 導電性膜
7 第3の無機膜
7a パターニングされた第3の無機膜
21 基板
22 バッファ層
231 i-GaN層
232 i-AlGaN層
24 周期積層
25 p+AlGaN層
31 i-GaN
32 i-AlGaN
33 ゲート絶縁膜
34 ゲート電極
41 活性層
42 第1のクラッド層
43 第2のクラッド層
44 基板
45 バッファー層