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  • 特許-光給電システム及び光給電方法 図1
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  • 特許-光給電システム及び光給電方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】光給電システム及び光給電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/30 20160101AFI20231120BHJP
   H02S 40/22 20140101ALI20231120BHJP
【FI】
H02J50/30
H02S40/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022050602
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023143299
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2022-11-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513267338
【氏名又は名称】ファインガラステクノロジーズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522121229
【氏名又は名称】インテグテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】脇田 徹
(72)【発明者】
【氏名】倉本 篤
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541234(JP,A)
【文献】米国特許第07099533(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0022060(US,A1)
【文献】特表2019-504350(JP,A)
【文献】特表2019-508892(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030306(WO,A1)
【文献】特開2019-138927(JP,A)
【文献】特開2002-185403(JP,A)
【文献】米国特許第07941022(US,B1)
【文献】特開2020-173405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/30
H02S 40/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔コアを有するホローコアファイバ、及び、レーザ光を発するとともに前記レーザ光を前記ホローコアファイバの前記空孔コア内に伝搬させるレーザー装置が一体化したエネルギー供給側装置と、
前記レーザ光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子を備え、かつ、前記エネルギー供給側装置とは分離して設けられ自在に動くことが可能なエネルギー受給側装置と、を有する光給電システム。
【請求項2】
前記レーザ光の光軸制御を行うビームステアリング装置と、を有する請求項1記載の光給電システム。
【請求項3】
前記レーザ光の波長は420nm以上540nm以下の範囲にある請求項1記載の光給電システム。
【請求項4】
前記光起電力素子は、InGa(1-x-y)(xは0以上であり、x/yは0.2以下)を含む半導体素子を有する請求項1記載の光給電システム。
【請求項5】
空孔コアを有するホローコアファイバと、
レーザ光を発するとともに、前記レーザ光を前記空孔コア内に伝搬させるレーザー装置と、を有し、レーザー装置と、前記ホローコアファイバの間に、光ロータリージョイントを備える光給電システムであって、
前記光ロータリージョイントから出射される側の光ファイバの実効コア断面積は、前記光ロータリージョイントに入射されるレーザ光のビームの実効断面積の1.5倍以上である光給電システム。
【請求項6】
前記光ロータリージョイントは、石英製プリズムを含む請求項5記載の光給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光給電システム及び光給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において用いる様々な機械装置は、外部からの電気の供給を受けることによって、電気エネルギーをモーター等の力学的エネルギーに変換し、動作することが可能である。
【0003】
電気は一般に、導電性を備えた導体(電線)を機械装置の動力装置に接続することで、供給可能となる。しかしながら、電線は常時電源と駆動する機械本体と接続されていなければならず、機械本体が自在に動く場合、その動きに対する大きな制限となる場合がある。
【0004】
ところで近年、光エネルギーを電気エネルギーに変換しようとする技術が検討されており、例えば下記特許文献1には、フォトニック結晶を用いてハイパワー光伝送を行おうとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6578017公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、石英コアを用いるものであり、より高出力が期待される1000nm未満の短波長のレーザ光には石英のレーリー散乱ロスの問題で適していないといった課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、より高出力なレーザ光にも適用可能な光給電システム及び光給電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題について、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、ホローコアファイバを用い、これに適用した工夫を経ることで、上記課題を解決することを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、上記課題を解決する本発明の一観点に係る光給電システムは、420nm以上980nm以下の波長範囲のレーザ光を発するレーザー装置と、レーザ光を伝搬させるホローコアファイバと、レーザ光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子と、を備えるものである。
【0010】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、レーザ光のビームパラメータ積(BPP)は、8mm・mrad以下であることが好ましい。
【0011】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、レーザ光の出力は、100W以上であることが好ましい。
【0012】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、ホローコアファイバの実効コア断面積は、300μm以上であることが好ましい。
【0013】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、レーザー装置は、マルチモード発振を行うことが好ましい。
【0014】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、レーザー装置及びホローコアファイバはエネルギー供給側装置に設けられており、
光起電力素子は、エネルギー供給側装置とは分離して設けられるエネルギー受給側装置に設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、レーザ光の光軸制御を行うビームステアリング装置と、を有することが好ましい。
【0016】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、レーザ光の波長は420nm以上540nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0017】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、光起電力素子は、InGa(1-x-y)(xは0以上であり、x/yは0.2以下)を含む半導体素子を有することが好ましい。
【0018】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、レーザー装置と、ホローコアファイバの間に、光ロータリージョイントを備えることが好ましい。
【0019】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、光ロータリージョイントは、石英製プリズムを含むことが好ましい。
【0020】
また、本観点においては、限定されるわけでは無いが、光ロータリージョイントから出射される光ファイバの実効コア断面積が該光ロータリージョイントに入射されるレーザ光のビームの実効コア断面積の1.5倍以上であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の他の一観点に係る光給電方法は、420nm以上980nm以下の波長範囲のレーザ光を発するステップ、レーザ光をホローコアファイバによって伝搬させるステップ、光起電力素子によってレーザ光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するステップ、を備えるものである。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によって、より高出力なレーザ光にも適用可能な光給電システム及び光給電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る光給電システムの概略を示す図である。
図2】実施形態に係る光給電システムにおいて用いるホロー光ファイバの断面のイメージ図である。
図3】実施形態に係る光給電システムの他の例の概略を示す図である。
図4】実施形態に係る光給電システムの他の例の概略を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態及び実施例に記載の具体的な例示にのみ限定されるわけでは無い。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る光給電システム(以下「本システム」という。)Sの概略を示す図である。本図で示すように、本システムSは、レーザ光Lを発するレーザー装置1と、レーザ光を伝搬させるホローコアファイバ2と、レーザ光Lの光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子3と、を備えるものである。本システムSの効果については後述の記載からも明らかとなるがレーザー装置1が発するレーザ光Lの光エネルギーを光起電力素子3によって電気エネルギーに変換することで、電気エネルギーをこの光起電力素子3が接続される機械装置の動力装置Mに対して供給することが可能となる。
【0026】
また、本システムSは、陸上の大気中において用いてもよいが、水中において用いることがより好ましい。水中への給電は通常銅線による供給を行うが銅線は太く重いため供給用のケーブルが受ける潮流の応力の影響が大きく、そのため機械装置には大きい動力装置Mが必要になるが、本システムSを用いた場合光ファイバを介して給電を行うためケーブルを細径化でき電力消費量を大幅に削減できるといった利点がある。
【0027】
本システムSにおいて、レーザー装置1は、上記の通り、レーザ光Lを発することができるものであり、その波長範囲は、420nm以上980nm以下である。レーザ光Lの範囲として420nm以上とすることで水中における光伝搬が可能となり、980nm以下とすることで給電するエネルギーを大きくすることができるといった利点がある。
【0028】
また本システムSのレーザー装置1は、上記レーザ光Lを発することができる限りにおいて限定されるわけではなく、市販されているレーザー装置を用いることができる。発振媒体が固体である固体レーザー装置であっても、発振媒体が液体である液体レーザー装置であってもよくこれに限定されない。
【0029】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、レーザ光Lの出力は、100W以上であることが好ましい。水中での動力装置Mの例としてROV(遠隔操作型無人潜水艇)は小型のものでも常時数十Wの消費電力があり、中型から大型のものになると常時数百Wの消費電力となるため、100W以上とすることによって、上記ROV等に対しても適用が可能となる。
【0030】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、レーザー装置1は、マルチモード発振を行うことが好ましい。マルチモード発振を行わせることで、シングルモード発振のレーザー装置に比べて電力から光への変換効率が高くなるためシステム全体の効率が大きくなるといった利点がある。
【0031】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、光起電力素子3が電力供給装置とは分離されている場合で水中を介して電力を供給する場合は、レーザ光Lの波長は水中での減衰が少ない波長範囲である420nm以上540nm以下の範囲にあることが好ましい。この範囲とすることで上記の通り、水中においてより効率的に電力供給が可能となる。
【0032】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、レーザ光Lのビームパラメータ積(BPP)は、8mm・mrad以下であることが好ましく、より好ましくは5mm・mrad以下である。8mm・mradとすることでレーザ光Lを効率よくホローコアファイバ2に入射しファイバ内を伝搬させ、ホローコアファイバ2への結合効率を大きくできるといった効果があり、5mm・mrad以下とすることでこの効果がより顕著となる。
【0033】
また、本システムSは、上記の通り、レーザ光Lを伝搬させるホローコアファイバ2を備えている。ここで「光ファイバ」とは、光を伝搬させるための光導波路で光を伝搬するコアとその周囲のクラッドから成り立つものであり、このコアとクラッド間の屈折率の違いを利用することで光をコア内に閉じ込め光ファイバの先端まで光を導くことができるものである。
【0034】
また、本システムSでは、光ファイバとしてホローコアファイバ2を用いている。ここで「ホローコアファイバ」とは、光ファイバのコアが空孔となっており、ブラッグ反射によりコアに光を閉じ込めて伝搬させる光ファイバをいう。この断面のイメージについて図2に示しておく。本システムSでは、ホローコアファイバ2を用いている。ホローコアファイバ2は中空の気体内を伝搬するため980nm以下の波長であっても、石英コアや他の材料に比べて低損失な状態でレーザ光Lを伝送することができるため、短波長での光の伝搬、パワー伝送に適している。また、水中でのレーザ光Lの伝送を考えた場合、その吸収を考慮してその波長は420nm以上540nm以下の範囲であることが好ましい。特に、通常の石英コアを用いる光ファイバの場合、50dB/km以上の大きい損失があると考えられるが、この波長範囲においてホローコアファイバ2を用いると1dB/km以下とすることも可能である。
【0035】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、ホローコアファイバ2の実効コア断面積は、300μm以上であることが好ましく、より好ましくは600μm以上である。300μm以上とすることでレーザーとホローコアファイバ2の結合効率を高くするといった利点があり、600μm以下とすることでレーザーと光ファイバの結合効率を高くするとともにレーザーとホローコアファイバ2の結合箇所における結合ロスが原因となる熱の発生を抑えるといった利点がある。
【0036】
また、本システムSにおけるホローコアファイバ2の長さは適宜調整可能であるが、長距離となるほど他のファイバに比べて効果的であり、例えば100m以上、好ましくは200m以上であっても可能である。一方で長すぎることも好ましくないため、その長さとしては5000m以下であることが好ましく、より好ましくは2000m以下である。
【0037】
また、本システムSにおいて、ホローコアファイバ2からの出力は、レンズ等の光学系4を経て光起電力素子3に照射することが好ましい。またこの場合、レーザー装置1とホローコアファイバ2の間に光学系4を設けておくことも好ましい。光学系4を設けることで光を適切に収束及び拡散させ、効率の良い光伝達を可能とする。
【0038】
また、本システムSでは、レーザ光Lの光エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電力素子3を有する。ここで「光起電力素子」としては、受光したレーザ光Lを電気に変換する素子をいい、具体的には窒化インジウムガリウムからなる素子、ペロブスカイト構造をもつ素子等を例示することができるがこれに限定されない。
【0039】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、光起電力素子3は、バンドギャップエネルギーが1.65eV以上であることが好ましく、より好ましくは2.29eV以上である。バンドギャップエネルギーは波長に反比例し、小さいほうが高エネルギーとなり、1.65eV以上の光起電力素子3を用いることで、例えば980nm以下で光電変換効率が高くなるといった利点があり、さらに2.29eV以上のものを用いることで、たとえば540nm以下で光電変換効率が高いといった利点がある。
【0040】
また、光起電力素子3の具体的な構造に関しては、限定されるわけでは無いが、例えば、上記バンドギャップエネルギーを得るためには、組成がガリウム及び窒素を含む半導体、好ましくはインジウム、ガリウム及び窒素を含む半導体、具体的には、InGa(1-x-y)(xは0以上である)の半導体であることが好ましく、また、この場合において、インジウム/ガリウムのモル比が0%以上20%以下である(x/yが0以上0.1以下)ことが好ましい。このような組成にすることで540nm以下で光電変換効率が高い光起電力素子3を実現できる。
【0041】
また、光起電力素子3の面積としては、広い有効面積を採用することでその受光効率を高めることができ、例えば100mm×100mmの有効面積を備える面状となっていることが好ましい。
【0042】
また、この光起電力素子3は、電池に接続され、必要な電力を蓄積しておくことが好ましい。
【0043】
また、本システムSにおいては、省略も可能ではあるが、レーザ光Lの光軸制御を行うビームステアリング装置5と、を有することが好ましい。ビームステアリング装置5を用いることで、レーザ光Lの光軸制御を行い、光起電力素子3に確実にレーザ光Lを当て、高効率な給電を行うことが可能となる。ビームステアリング装置5を設けた場合の本システムSのイメージを図3に示しておく。
【0044】
ここで「ビームステアリング装置」とは、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけでは無いが、送電側において光軸調整用光源51、受光側に位置検出用光電変換素子アレイ52を備え、受光側の位置検出情報の光信号を送電側に送信することによって位置決めするものとすることが好ましい。ここで光軸調整用光源51は、給電用光ファイバと同一のものにカップリングすることも可能であるが、給電用光ファイバとは異なる光ファイバを使用してもよい。受光側の位置検出情報の光信号は給電用光ファイバと同一のもの、または異なる光ファイバにて伝送してもよい。
【0045】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、レーザー装置1及びホローコアファイバ2はエネルギー供給側装置Aに設けられており、光起電力素子3は、エネルギー供給側装置Aとは分離して設けられるエネルギー受給側装置Bに設けられていることが好ましい。このようにすることで、エネルギー供給側装置Aとエネルギー受給側装置Bを物理的に分離することが可能となり、エネルギー受給側装置Bは電線等による制限を受けることなく自在に動くことが可能となる。また、特に本システムSを水中で用いる場合、水中で伝送をすることにより、エネルギー供給側装置Aによる抵抗及び制限を受けることなくエネルギー受給側装置Bは移動することが可能となり、電力消費量の削減が効果的である。特に、光ファイバケーブルの場合、一般的な電力供給用のケーブルよりも細径に形成することが可能であり、エネルギー供給側装置Aとエネルギー受給側装置Bを分離することにより、さらに電力消費量を削減できる。
【0046】
ここで、上記の記載から本システムSの動作は明らかであるが、本システムSを用いることで、新たな光給電方法を提供することができる。具体的に、本実施形態に係る光給電方法(以下「本方法」という。)は、(1)420nm以上980nm以下の波長範囲のレーザ光を発するステップ、(2)レーザ光をホローコアファイバによって伝搬させるステップ、(3)光起電力素子によってレーザ光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するステップ、を備えるものである。
【0047】
すなわち本方法では、420nm以上980nm以下の範囲の波長範囲のレーザ光を供給することで効率の良いエネルギー供給、具体的には上記の通り水中でも用いることができるといった効果があり、特に540nm以下の光を採用すると水中においても減衰の少ない高効率な光給電が可能となる。また、本方法では、ホローコアファイバを用いることで、上記の範囲における光の損失を少なくすることができる。そして、光起電力素子によりこの光エネルギーを電気エネルギーに変換することで電力として返還させることが可能となる。
【0048】
ところで、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、レーザー装置1と、ホローコアファイバ2の間に、光ロータリージョイントを備えることが好ましい。この場合のイメージ図を図4に示す。ここで「光ロータリージョイント」とは、固定された1個または複数の入射側の光導波路から回転可能な同数の出射側の光導波路にプリズムを介して接続する装置をいい、本システムSで光ロータリージョイントを備えることで固定されたレーザー装置1からドラムに巻いた光ファイバに光ファイバを繰り出しながら接続し続けることができるといった効果がある。
【0049】
また、本システムSにおいては、限定されるわけでは無いが、光ロータリージョイントを構成するプリズムは石英製であることが好ましい。プリズムを石英製にすることで100W以上の高出力レーザ光Lに耐えられるといった効果がある。
【0050】
また、本システムSにおいては、光ロータリージョイントから出射される光ファイバの実効コア断面積が、光ロータリージョイントに入射されるレーザ光Lのビームの実効コア断面積の1.5倍以上であることが好ましい。入射側のビームが出射側のビーム(ビームを受けるファイバのコア断面積)より小さいほうが高効率となる。このことにより、光ロータリージョイントが回転した際に生じる出射ファイバとの結合損失の変動を抑え結合効率を高く維持できる効果がある。
【0051】
以上、本システムSによって、より高出力なレーザ光Lにも適用可能な光給電システム及び光給電方法を提供することができる。改めて、具体的に本システムSの効果について言及すると下記のとおりである。
【0052】
従前、100W以上のハイパワーなレーザ光Lを長い距離伝搬するためには光ファイバのコアとして主に石英が用いられており、例えば通信用途では850nm等における伝送が主に100m程度の短い距離の通信に用いられてきたこともあるが、それらは主に1000nm以上の発振波長のものであった。公知の技術として、フォトニック結晶ファイバを用いてコア径を拡大した設計のファイバ内を伝搬させることで、よりハイパワーの伝送を実現しようとしているが、コアが石英であることにより、980nm以下の波長を小さい損失で長距離伝送することは困難である。
【0053】
近年、980nm以下の波長で高出力のレーザーが開発されてきており、これらの波長の光をハイパワーで長距離伝送することが求められている。石英コアの場合、980nm以下の波長ではレーリー散乱による伝送損失が大きく、長距離のパワー伝送には向いていない。
【0054】
これに対し、本システムSによると、レーザ-装置1、ホローコアファイバ2、光起電力素子3を備えており、レーザ-装置1は980nm以下の発振波長で100W以上の出力を持つことで、上記の課題を解決し、より高出力なレーザ光Lにも適用可能な光給電システム及び光給電方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は光給電システム及び光給電方法として産業上の利用可能性がある。


図1
図2
図3
図4