(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-17
(45)【発行日】2023-11-28
(54)【発明の名称】固体培養基質盛込み装置及び固体培養基質盛込み方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/16 20060101AFI20231120BHJP
【FI】
C12M1/16 101
C12M1/16 104
(21)【出願番号】P 2020007047
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000223931
【氏名又は名称】株式会社フジワラテクノアート
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三野 あすみ
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 直純
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-191962(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102004020885(DE,A1)
【文献】特開平11-042079(JP,A)
【文献】特開2012-217414(JP,A)
【文献】特開平05-161489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形培養床に固体培養基質を盛り込む固体培養基質盛込み装置であって、
前記円形培養床の外周と前記円形培養床の中心軸との間に配置され、前記円形培養床に供給された前記固体培養基質を、前記円形培養床の径方向に搬送するスクリューと、
前記円形培養床において、1箇所又は複数箇所における前記固体培養基質の堆積層厚を測定するための層厚測定センサと、
前記スクリューの高さを調整する高さ調整機構と、
前記高さ調整機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記層厚測定センサの測定値を用いて、前記高さ調整機構を制御することにより、前記スクリューの高さを調整して、前記円形培養床における前記固体培養基質を
所定の高さに調整する
ものであって、
前記層厚測定センサによる測定箇所が複数箇所のときは、複数の前記層厚測定センサを前記円形培養床の径方向に配置し、前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサ以外の前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚との差が目標値の範囲内になるように前記スクリューの高さを調整することにより、
前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサ以外の前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚との差が意図した高低差となるようにし、
前記層厚測定センサによる測定箇所が1箇所のときは、前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記スクリューの高さとの差が目標値の範囲内になるように前記スクリューの高さを調整することにより、
前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記スクリューの高さとの差が意図した高低差となるようにすることを特徴とする固体培養基質盛込み装置。
【請求項2】
円形培養床に固体培養基質を盛り込む固体培養基質盛込み方法であって、
前記円形培養床の外周と前記円形培養床の中心軸との間に配置され、前記円形培養床に供給された前記固体培養基質を、前記円形培養床の径方向に搬送するスクリューと、
前記円形培養床において、1箇所又は複数箇所における前記固体培養基質の堆積層厚を測定するための層厚測定センサと、
前記スクリューの高さを調整する高さ調整機構と、前記高さ調整機構を制御する制御手段とを備えた固体培養基質盛込み装置を用い
るものであり、
前記制御手段は、前記層厚測定センサの測定値を用いて、前記高さ調整機構を制御することにより、前記スクリューの高さを調整して、前記円形培養床における前記固体培養基質を
所定の高さに調整する
ものであって、
前記層厚測定センサによる測定箇所が複数箇所のときは、複数の前記層厚測定センサを前記円形培養床の径方向に配置し、前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサ以外の前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚との差が目標値の範囲内になるように前記スクリューの高さを調整することにより、
前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記中心軸に最も近い前記層厚測定センサ以外の前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚との差が意図した高低差となるようにし、
前記層厚測定センサによる測定箇所が1箇所のときは、前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記スクリューの高さとの差が目標値の範囲内になるように前記スクリューの高さを調整することにより、
前記層厚測定センサの下部における前記堆積層厚と前記スクリューの高さとの差が意図した高低差となるようにすることを特徴とする固体培養基質盛込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形培養床に固体培養基質を盛り込む固体培養基質盛込み装置及び固体培養基質盛込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円形培養床を備える固体培養装置は、固体培養基質の盛込み装置を備えており、固体培養基質は、盛込み装置により回転する円形培養床上に盛り込まれる。多くの場合、円形培養床上における固体培養基質の堆積層厚は均一であることが求められる。堆積層厚に高低差があると通風の抵抗が異なることになり、必要風量が確保できず品温が異なる部分が生じ、平均品質が低下するからである。一方、固体培養基質の全体体積は、含水量の変動等により毎回一定ではなく、正確に把握することが難しいため、毎回同じ高さで盛込むことは困難であった。
【0003】
このため、これまでに円形培養床上に固体培養基質を均一に堆積する各種技術が提案されている。特許文献1に記載の固体培養装置における自動盛込装置は、均し装置に麹基質(固体培養基質)を感知するセンサを取り付けることにより、麹基質量が所定量より多い場合には、自動的に均し装置が上昇し、麹基質量が所定量より少ない場合には、自動的に均し装置が下降して、均一な層厚に堆積することが可能となるようにしたものである。
【0004】
特許文献1に記載の技術が、センサの感知の有無に応じて、均し装置の上昇と下降とを切り換える技術であるのに対し、特許文献2及び3に開示の技術は、センサの感知の有無に応じて、均し装置の回転速度を調整して堆積層厚の均一化を図るようにしたものである。また、特許文献4に記載の技術は、センサの感知の有無に応じて、麹基質を培養床の回転中心近傍又は外周近傍まで搬送しながら培養床が回転と停止を繰り返えすことで、堆積層厚の均一化を図るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-170966号公報
【文献】特開平8-80184号公報
【文献】特開平8-56647号公報
【文献】特開平10-191962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~4の技術は、センサの感知の有無に応じて、均し装置の上昇と下降との切り換え等を制御して、結果として麹基質の堆積層厚の均一化を図るようにしたものであり、麹基質の堆積層厚を直接的に数値化し調整するものではなかった。このため、これらの技術では、麹基質の堆積層厚の均一化の精度を高めたり、精度の安定化を図るには一定の限界があった。また、培養の状態によっては径方向の堆積層厚に適度な高低差をつけた方が好ましい場合がある。例えば、円形培養床上において中央部で固体培養基質の品温が高い傾向にあるとき、中央部の堆積層厚を低くすることで品温を下げることができる。しかしながら、上記技術では、そのような高低差をつけることは困難であった。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、円形培養床における固体培養基質(麹基質)の高さを調整し、固体培養基質の堆積層厚の均一化の精度向上と精度の安定化を実現することや、意図的に堆積層厚に差をつけることができる固体培養基質盛込み装置及び固体培養基質盛込み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の固体培養基質盛込み装置は、円形培養床に固体培養基質を盛り込む固体培養基質盛込み装置であって、前記円形培養床の外周と前記円形培養床の中心軸との間に配置され、前記円形培養床に供給された前記固体培養基質を、前記円形培養床の径方向に搬送するスクリューと、前記円形培養床において、1箇所又は複数箇所における前記固体培養基質の堆積層厚を測定するための層厚測定センサと、前記スクリューの高さを調整する高さ調整機構と、前記高さ調整機構を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記層厚測定センサの測定値を用いて、前記高さ調整機構を制御することにより、前記スクリューの高さを調整して、前記円形培養床における前記固体培養基質を任意の高さに調整することを特徴とする。
【0009】
本発明の固体培養基質盛込み方法は、円形培養床に固体培養基質を盛り込む固体培養基質盛込み方法であって、前記円形培養床の外周と前記円形培養床の中心軸との間に配置され、前記円形培養床に供給された前記固体培養基質を、前記円形培養床の径方向に搬送するスクリューと、前記円形培養床において、1箇所又は複数箇所における前記固体培養基質の堆積層厚を測定するための層厚測定センサと、前記スクリューの高さを調整する高さ調整機構と、前記高さ調整機構を制御する制御手段とを備えた固体培養基質盛込み装置を用い、前記制御手段は、前記層厚測定センサの測定値を用いて、前記高さ調整機構を制御することにより、前記スクリューの高さを調整して、前記円形培養床における前記固体培養基質を任意の高さに調整することを特徴とする。
【0010】
前記本発明の固体培養基質盛込み装置及び前記本発明の固体培養基質盛込み方法によれば、円形培養床における層厚測定センサにより実測した堆積層厚の測定値に基づいて、スクリュー高さの調整を行うことができるので、固体培養基質の堆積層厚の均一化の精度向上と精度の安定化を実現することや、意図的に堆積層厚に差をつけることができる。
【0011】
前記本発明の固体培養基質盛込み装置及び前記本発明の固体培養基質盛込み方法においては、前記層厚測定センサの測定値に基づく前記固体培養基質の堆積層厚と、前記スクリューの高さとを比較し、前記比較に基づいて、前記高さ調整機構を制御して、前記スクリューの高さを調整することが好ましい。この構成によれば、円形培養床において実測した堆積層厚の測定値に応じて、スクリューの高さを調整できるので、固体培養基質の全体体積が正確に分かっていなくても、堆積層厚の均一化を図ることや、意図的に堆積層厚に差をつけることができる。
【0012】
前記本発明の固体培養基質盛込み装置及び前記本発明の固体培養基質盛込み方法においては、前記層厚測定センサの複数箇所における測定値から、前記円形培養床における前記固体培養基質の堆積層厚の分布を求め、前記分布に基づいて、前記スクリューの高さを調整することが好ましい。この構成によれば、複数の層厚測定センサにより堆積層厚の分布を把握できるので、堆積層厚が意図した分布になるようにスクリューの高さを調整することにより、堆積層厚の均一化を図ることや、意図的に堆積層厚に差をつけることができる。
【0013】
前記本発明の固体培養基質盛込み装置及び前記本発明の固体培養基質盛込み方法においては、前記円形培養床上の領域は、任意の中心角毎に前記円形培養床の半径で区画された複数の仮想領域に分割されており、前記制御手段は、前記堆積層厚の分布を前記仮想領域毎に求めることが好ましい。この構成によれば、制御が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果は前記のとおりであり、円形培養床における層厚測定センサにより、実測した堆積層厚の測定値に基づいて、スクリュー高さの調整を行うことができるので、固体培養基質の堆積層厚の均一化の精度向上と精度の安定化を実現することや、意図的に堆積層厚に差をつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る固体培養装置の縦断面図。
【
図3】本発明の一実施形態において、スクリュー近傍の拡大図。
【
図5】本発明の一実施形態において、固体培養基質盛込み装置と供給装置との関係を示す図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る層厚測定センサの近傍の拡大図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る固体培養基質盛込み装置の制御を示すブロック図。
【
図8】本発明の一実施形態において、円形培養床への固体培養基質の盛込みの開始当初から盛込み完了までの工程を時系列的に示した図。
【
図9】本発明の一実施形態に係る盛り込み時の制御を示すフローチャート。
【
図10】本発明の一実施形態に係る第1センサSE1近傍の拡大図。
【
図11】
図9をより具体的に示したフローチャート。
【
図12】本発明の一実施形態において、意図的に堆積層厚に差をつけた別の盛込み完了時の状態を示した図。
【
図13】本発明の層厚測定箇所を1箇所とした別の実施形態において、円形培養床への固体培養基質の盛込みの開始当初から盛込み完了までの工程を時系列的に示した図。
【
図14】本発明の一実施形態において、堆積層厚の分布の一例を示した図。
【
図15】本発明の一実施形態において、均し前後の堆積層厚の分布を示す図。
【
図16】本発明の一実施形態に係る仮想領域の一部を示した図。
【
図17】本発明の一実施形態に係る均し制御を示すフローチャート。
【
図19】本発明の堆積層厚の分布が異なる別の実施形態において、均し前後の堆積層厚の分布を示す図。
【
図20】本発明のスクリューの回転方向を調整する別の実施形態に係る均し制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、固体培養基質盛込み装置に関するものであるが、固体培養基質盛込み装置は、固体培養装置に含まれる装置である。図示の便宜のため、各図において適宜構造物の図示は省略している。
図2では、スクリュー21の片側は、背板22で覆われているが、
図2及び
図4を除き、背板22の図示は省略している。また、
図5では、円形培養床6に固体培養基質7を供給する供給装置60を図示しているが、
図5以外では供給装置60の図示は省略している。
【0017】
最初に
図1及び
図2を参照しながら、固体培養装置1の概要を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体培養装置1の縦断面図を示しており、
図2は
図1に示した固体培養装置1の要部平面図を示している。
【0018】
図1において、固体培養装置1は断熱箱体2で本体部分を構成している。断熱箱体2の内部は培養室3であり、培養室3は円形培養床6によって床上4と床下5に仕切られている。円形培養床6は多孔板になっており、円形培養床6上に堆積させた固体培養基質7に対して通風が行えるようになっている。
図2に示したように、円形培養床6は平面視で円形であり中心軸(支柱)8を中心として回転する。
【0019】
図1は、円形培養床6上に固体培養基質7が盛り込まれた状態を示している。詳細は後に説明するとおり、固体培養基質7は供給装置60(
図5参照)により円形培養床6上に供給され、供給された固体培養基質7に対して固体培養基質盛込み装置20により搬送や均しが行われる。
【0020】
断熱箱体2には、断熱箱体2の外部から空気を導入する導入経路10と断熱箱体の外部へ空気を排出する排出経路11を備えている。固体培養中は、導入経路10からの空気が、床下5内へ供給され、固体培養基質7を通過して床上4に至り、床上4に至った後の空気は、排出経路11から排気される。
図1では、空気の経路を簡素化した例を示しているが、固体培養基質7を通過した空気を再度床下5へ戻す中間経路を設ける場合もある。この場合であっても、空気が固体培養基質7を通過することには変わりはない。
【0021】
多くの場合、円形培養床6上における固体培養基質7の堆積層厚は均一であることが求められる。固体培養基質7の堆積層厚に高低差があると通風の抵抗が異なることになり、必要風量が確保できず品温が異なる部分が生じ、平均品質が低下するからである。一方、培養の状態によっては径方向の堆積層厚に適度な高低差をつけた方が好ましい場合がある。例えば、円形培養床6上において中央部で固体培養基質7の品温が高い傾向にあるとき、中央部の堆積層厚を低くすることで品温を下げることができる。本実施形態に係る固体培養基質盛込み装置20は、固体培養基質7の堆積層厚の均一化の精度向上と精度の安定化を実現することや、意図的に堆積層厚に差をつけることができるようにしたものである。
【0022】
図1及び
図2において、固体培養基質盛込み装置20はスクリュー21を備えている。
図2に示したように、スクリュー21は円形培養床6の外周と円形培養床の中心軸8との間に配置されている。スクリュー21の回転により、円形培養床6に供給された固体培養基質7を、円形培養床6の径方向に搬送することができる。
【0023】
図3はスクリュー21近傍の拡大図であり、
図4は
図3のAA線における断面図である。
図3は
図4に示した背板22の図示は省略し、背板22に取り付けられた層厚測定センサ50の図示に留めている。
図4に示したように、スクリュー21の片側は、背板22で覆われており、
図2に示したように背板22はスクリュー21の軸方向に沿ってスクリュー21の片側を覆っている。
【0024】
図3において、スクリュー21は軸受け(図示せず)を介して回転可能に取り付けられている。
図1において、高さ調整機構30は、モータ31及びねじ機構32を備えている。モータ31でねじ機構32が駆動されることにより、支持体25が昇降可能になっており、これと一体にスクリュー21が昇降する。従って、高さ調整機構30を制御することでスクリュー21の高さを調整することができる。また、
図1において、回転駆動機構40は、モータ41及び回転伝達軸42を備えており、モータ41の回転により回転伝達軸42を介してスクリュー21が回転駆動される。モータ41の回転方向を変えることでスクリュー21の回転方向が変わる。従って、回転駆動機構40を制御することでスクリュー21の回転方向を調整することができる。
【0025】
図5は、固体培養基質盛込み装置20と供給装置60との関係を示す図である。前記のとおり、固体培養基質7は供給装置60により円形培養床6上に供給される。図示の便宜のため、供給口63の近傍は要部のみに留めている。原料タンク61には、供給筒62が接続されており、空気輸送された固体培養基質7は原料タンク61に供給され、供給筒62を経て、供給口63から円形培養床6上に向けて投入される。円形培養床6上の固体培養基質7は、スクリュー21の回転により、中心軸8方向に搬送される。供給装置60は図示したものに限らず、ベルトコンベア、スクリューコンベア等の固体培養基質7が安定的に供給できるものであればどのような構造のものであってもよい。また、
図5では円形培養床6の外周側から固体培養基質7を供給しているが、中央部から供給しても構わない。
【0026】
図3に示したように、固体培養基質盛込み装置20は、層厚測定センサ50を備えている。
図3及び
図4を参照しながら、層厚測定センサ50について説明する。層厚測定センサ50は、円形培養床6の径方向に配置された4個のセンサSE1~センサSE4で構成されており、4個のセンサを総称して層厚測定センサ50という。センサの個数は4個に限るものではなく、1個以上であればよい。センサは1個で1箇所を測定できるものでもよいし、1個で複数箇所を測定できるものでもよい。すなわち、測定箇所は1箇所以上であればよい。
【0027】
図4に示したように、層厚測定センサ50は、背板22に取り付けたボックス23内に固定されている。層厚測定センサ50の固定方法は、
図4のものに限るものではなく、適宜決定すればよい。層厚測定センサ50はスクリューの昇降と一体に移動しなくてもよく、このため層厚測定センサ50の固定位置は背板22に限るものではなく、例えば固体培養装置1の天面に固定してもよい。また、層厚測定センサ50は、対象物(固体培養基質7)までの距離が測定できるものであればよく、例えばレーザ距離センサ等の光学式センサである。
【0028】
図6は、層厚測定センサ50の近傍の拡大図である。以下、第4センサSE4を例に説明するが、この説明は第1センサSE1~第3センサSE3についても同様である。センサ測定値SEM4は、第4センサSE4の下端から、固体培養基質7までの距離である。SEHはセンサ設置高さであり、スクリュー21の下端から第4センサSE4までの高さである。SCHはスクリュー高さであり、円形培養床6の上面からスクリュー21の下端までの高さである(あわせて
図4参照)。本実施形態では、センサ測定値SEM4は、第4センサSE4の下端を基準としているが、基準はセンサの種類に応じて適宜決定すればよく、上端であってもよい。
【0029】
図6において、センサ設置高さSEHは固定された寸法であるが、スクリュー高さSCHは、スクリュー21の昇降に伴い変化する。前記のとおり、スクリュー21はねじ機構32により昇降するので、スクリュー高さSCHは、例えばねじの回転量から算出することができ、別途センサを設けて直接測定してもよい。したがって、センサ測定値SEM4が得られると、スクリュー高さSCHとセンサ設置高さSEHとの和から、センサ測定値SEM4を減ずると、第4センサSE4の位置における固体培養基質7の堆積層厚IH4が求まる。
【0030】
本発明においては、層厚測定センサは、堆積層厚を測定するためのセンサであればよく、堆積層厚を直接的又は間接的に測定するものであればよい。例えば、本実施形態の層厚測定センサ50は堆積層厚を間接的に測定するものであるが、層厚測定センサ50を固体培養装置1の天面に固定した場合は、既知の固定値であるセンサ設置高さからセンサ測定値を減ずれば、他の測定値を用いることなく堆積層厚が求まるので、実質的に堆積層厚を直接的に測定することが可能になる。
【0031】
以下、固体培養基質盛込み装置20の制御について説明する。
図7は、固体培養基質盛込み装置20の制御を示すブロック図である。制御手段70には、層厚測定センサ50からの信号が入力される。詳細は後に説明するとおり、この信号を用いて、制御手段70は最適なスクリュー21の高さ又は高さ及び回転方向を算出する。この算出のためには、少なくとも層厚測定センサ50からの信号が必要であるが、同信号の用い方には特に限定はない。例えば、本実施形態のように、堆積層厚を間接的に測定する場合は、同信号に加えてスクリュー高さSCH及びセンサ設置高さSEHを用いて演算処理を行なう。
【0032】
高さ調整機構30は、スクリュー21の高さを調整する機構である。回転駆動機構40はスクリュー21の回転方向を調整する機構である。制御手段70は、スクリュー21の高さ又は高さ及び回転方向が算出結果となるように、スクリュー21の高さを調整するときは、高さ調整機構30を制御し、スクリュー21の回転方向を調整するときは、回転駆動機構40を制御し、円形培養床6における固体培養基質7の高さを調整する。
【0033】
本実施形態に係る制御には、円形培養床6へ固体培養基質7を供給している際に特に有効な制御と、固体培養基質7を供給後に特に有効な制御とがある。以下、盛込み制御、均し制御と称して順に説明するが、盛込み制御を具体的に説明する前に、
図8を参照しながら盛込み制御の概要を説明する。
【0034】
図8は、円形培養床6への固体培養基質7の盛込みの開始当初から盛込み完了までの工程を時系列的に示したものである。スクリュー21の高さを一定値に固定しておけば、固体培養基質7の堆積層厚はスクリュー21の下端で規制され均一になる。しかし、スクリュー21の高さが高く、スクリュー21が固体培養基質7に接しなければ、固体培養基質7の搬送ができなくなる。このため、盛込み工程中、スクリュー21が固体培養基質7に接していなければ、円形培養床6へ固体培養基質7を万遍なく盛込むことができなくなる。
【0035】
一方、固体培養基質7の全体体積が正確に分かっていなければ、適正なスクリュー21の高さの設定は困難になる。本実施形態においては、円形培養床6の径方向において、第1センサSE1~第4センサSE4を備えており、堆積層厚の測定値に応じて、スクリュー21の高さを調整できるので、固体培養基質7の全体体積が正確に分かっていなくても、堆積層厚の均一化を図ることができ、意図的に堆積層厚に差をつけることもできる。
【0036】
図8(a)の工程では、第4センサSE4の下部においてスクリュー21が固体培養基質7に接しており、固体培養基質7の搬送が可能である。しかし、固体培養基質7が供給され続けても、第3センサSE3の下部においてスクリュー21が固体培養基質7に接しなければ、固体培養基質7を内周側に向けて搬送することができない。この場合、スクリュー21を下降させることにより、第3センサSE3の下部においても固体培養基質7の搬送が可能になる。
【0037】
図8(b)は、スクリュー21を下降させ、第3センサSE3の下部においても固体培養基質7が搬送されている様子を示している。
図8(c)は、
図8(b)の状態からさらにスクリュー21を下降させ、第2センサSE2の下部においても固体培養基質7が搬送されている様子を示している。
図8(c)の状態から、第1センサSE1の下部における堆積層厚と第4~2センサ(SE4~SE2)の下部における堆積層厚との差が意図した値になるまでスクリュー21を下降させて、スクリュー21の回転を継続する。
図8(d)は、盛込み完了時の状態を示している。堆積層厚の測定値に応じて、スクリュー21の高さを調整したことにより、円形培養床6の中央部付近まで、固体培養基質7が搬送され、かつ堆積層厚が均一になっている。また、中央部の堆積層厚は意図した高低差となっている。この高低差を0にすることで、中央部まで堆積層厚を均一にすることも可能である。
【0038】
以下、盛込み制御について具体的に説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る盛り込み時の制御を示すフローチャートである。
図9において、盛込み工程の開始(ステップ100)により、円形培養床6への固体培養基質7の盛り込みが開始する。
図8(a)は、盛込みがある程度進んだ状態を示している。盛込み工程では、円形培養床6は中心軸8回りに回転し、スクリュー21は固体培養基質7を円形培養床6の外側から内側へ搬送する方向に回転する。
【0039】
盛込み開始直後は、スクリュー高さを初期値に設定する(
図9のステップ101)。以後、制御手段70(
図6参照)は第4センサSE4~第2センサSE2の位置におけるスクリュー21の高さSCH(
図6)と堆積層厚IH(
図6)とを比較しながらスクリュー21を下降させて、第4センサSE4~第2センサSE2の位置において、スクリュー21が堆積層と接するようにする(
図9のステップ102)。
【0040】
図8(a)では、第4センサSE4の位置において、スクリュー21が固体培養基質7に接するまで、スクリュー21が下降している。固体培養基質7の投入量が増えていくと、第3センサSE3、第2センサSE2の位置においても固体培養基質7が堆積する。制御手段70は、スクリュー21を順次下降させ(矢印a~c)、
図8(c)の状態では、第4センサSE4~第2センサSE2の各位置において、スクリュー21が固体培養基質7に接している。
【0041】
図10に、第1センサSE1近傍の拡大図を示している。本図は投入対象の固体培養基質7の全てを円形培養床6へ投入し終えた状態を示している。固体培養基質7の投入完了状態における第1センサSE1の下部における堆積層厚と第4~2センサ(SE4~SE2)の下部における堆積層厚との差は予め目標値を定めておく。第1センサSE1の位置における堆積層厚と第4~2センサ(SE4~SE2)の下部における堆積層厚との差が目標値になるまでスクリュー21の高さを調整しながら、盛込みを継続することにより(
図9のステップ103)、盛り込みが完了する(
図9のステップ104)。
【0042】
図8(d)は盛込み完了時の状態を示しており、第4センサSE4~第2センサSE2の各位置において、スクリュー21が固体培養基質7に接しているとともに、第1センサSE1の位置においては、
図10に示したように固体培養基質7は第4センサSE4~第2センサSE2における堆積層厚IH4~2より目標値分低い堆積層厚IH1になっている。
【0043】
以下、
図11を参照しながら、盛込み制御について、より具体的に説明する。
図11は
図9をより具体的に示したフローチャートである。盛込み開始後は、外側から内側に向けて、第4センサSE4、第3センサSE3、第2センサSE2、第1センサSE1の順に、各センサー位置における層厚測定を行う。第4センサSE4による測定の結果、堆積層厚がスクリュー高さよりも小さければ(
図11のステップ110)、スクリュー21を下降させる(
図11のステップ111)。第4センサSE4の位置において、堆積層厚がスクリュー高さに一致したところでスクリューを停止する(
図11のステップ112)。第4センサSE4の位置において、堆積層厚がスクリュー高さに一致すると、
図8(a)に示したように、第4センサSE4の位置において、スクリュー21が固体培養基質7に接することになり、スクリュー21により、固体培養基質7が内周側に搬送される。
【0044】
以後、第3センサSE3の位置において、層厚測定を行い、第3センサSE3の位置において、スクリュー21が固体培養基質7に接するまでスクリュー21を下降させる。このことにより、
図8(b)に示したように、第3センサSE3の位置においても、スクリュー21が固体培養基質7に接することになり、スクリュー21により、固体培養基質7が内周側に搬送される。
【0045】
続いて、第2センサSE2の位置において、層厚測定を行い、第2センサSE2の位置において、スクリュー21が固体培養基質7に接するまでスクリュー21を下降させる。このことにより、
図8(c)に示したように、第2センサSE2の位置においても、スクリュー21が固体培養基質7に接することになり、スクリュー21により、固体培養基質7が内周側に搬送される。
【0046】
第1センサSE1の位置においては、同位置における堆積層厚と第4~2センサ(SE4~SE2)の下部における堆積層厚との差が目標値の範囲内か否かを判断する(
図11のステップ113)。堆積層厚の差が目標値の範囲内でなければ、スクリュー21の昇降により(
図11のステップ114)、スクリュー高さを調整する。スクリュー21の降下距離は固体培養基質7を十分搬送できる距離であり、また上昇距離は第2センサSE2の位置においてスクリュー21が固体培養基質7に接した状態を保持できる距離である。その後、堆積層厚の差が目標値の範囲内になっていれば、運転を継続し(
図11のステップ115)、固体培養基質7の供給終了により、盛込み工程も終了する。1度堆積層厚の差が目標値の範囲内に入ってからは、供給量が安定している場合はスクリュー高さを固定してもよいし、不安定な場合は引き続きスクリュー高さを調整してもよい。
【0047】
上記は固体培養基質7の供給が終了するまでに円形培養床6を1周させる場合であるが、円形培養床6を2周以上させることで
図12のように高低差をつけることも可能である。円形培養床6の回転が1周目の際には、第1センサSE1における堆積層厚と第4~2センサ(SE4~SE2)の下部における堆積層厚との差が目標値の範囲内になるようスクリュー高さを調整し、円形培養床6の回転が2周目の際には、第2センサSE2における堆積層厚と第4~3センサ(SE4~SE3)の下部における堆積層厚との差が別に定めた目標値の範囲内になるようスクリュー高さを調整することで
図12の状態となる。
【0048】
これまで、センサの個数が4個、測定箇所が4箇所での実施例を挙げたが、センサの個数を1個、測定箇所を1箇所としても同様にスクリュー高さの調整が可能である。
図13は、センサの個数を1個、測定箇所を1箇所とし、固体培養基質7の供給が終了するまでに円形培養床6を1周させる場合の盛込みの開始当初から盛込み完了までの工程を時系列的に示したものである。
図13(a)はスクリュー高さを初期値に設定した状態である。第1センサSE1の位置における堆積層厚とスクリュー高さとの差が目標値の範囲内になるようにスクリュー21を調整することで
図13(b)の状態となる。
【0049】
以上、盛込み制御について説明したが、
図5において、供給口63から円形培養床6上に向けて投入される固体培養基質7の供給流量が大きく変動するような不安定な状態では、スクリュー高さの調整も不安定となり、盛込み制御が困難となる。例えば、固体培養基質7の供給が一時的に停止すると、スクリューが著しく下降することになり、盛込み制御が機能しなくなる。このため、
図5において、供給装置60が備える供給筒62に設けた流量測定センサ64の測定値に基づいて、固体培養基質7の供給流量が不安定になったと判断した場合は、円形培養床6の回転を調整して、盛込みの進行を遅らせることが望ましい。例えば供給が停止した場合は、円形培養床6の回転を停止するとよい。
【0050】
次に、
図14を参照しながら、固体培養基質7の均し制御について説明する。均し制御は、特に固体培養基質7の円形培養床6への供給終了後において、堆積層厚を均して堆積層厚の均一化を図る制御である。上記の盛込み制御後に実施してもよいし、盛込み制御を行わずに実施してもよい。固体培養基質盛込み装置20は、円形培養床6の径方向において、第1センサSE1~第4センサSE4を備えているので、各層厚測定センサ50の測定値から、円形培養床6の径方向における固体培養基質7の堆積層厚の分布を求めることができる。
図14は堆積層厚の分布の一例を示している。円形培養床6の径方向の領域を第1センサSE1~第4センサSE4の位置に対応させて分割領域A1~A4の4領域に分割している。分割領域A1~A4における固体培養基質7の各表面が平坦面であるとみなし、分割領域A1~A4の堆積層厚を、各領域に対応した第1センサSE1~第4センサSE4の測定値としている。この場合、堆積層厚の分布は、波形12のように表わされる。
【0051】
以下、
図15を参照しながら、スクリュー21による均しの概要について説明する。
図15は、均し前後の堆積層厚の分布を示す図である。本図は、4個の層厚測定センサ50での測定結果を波形13で示したものである。
図15(a)において、波形13は均し前の堆積層厚の分布を示している。線14はスクリュー21の高さを示しており、
図6のスクリュー高さSCHに相当する。この状態からスクリュー21を、固体培養基質7が円形培養床6の外側から内側に搬送される方向(矢印d)に回転させると、固体培養基質7のうち線14よりも上側の部分は内側に移動する。
【0052】
図15(b)は、スクリュー21による搬送が完了した状態を示している。
図15(a)において、線14よりも上側の固体培養基質7(e部、f部)は、
図15(b)では搬送されて無くなっている。搬送された固体培養基質7はg部、h部に移動しており、g部、h部の層厚が高くなっている。すなわち、スクリュー21を回転させると、スクリュー高さSCHよりも上の固体培養基質7は搬送方向に移動し、移動した固体培養基質7は、スクリュー高さSCHよりも低い層厚部分に落下することになる。
【0053】
本実施形態においては、層厚測定センサ50により、堆積層厚の分布を把握でできるので、堆積層厚の分布の平坦化を図るように、スクリュー21の高さを調整することにより、固体培養基質7の堆積層厚を均して堆積層厚の均一化を図ることができる。このため、順次スクリュー21の高さを調整しながら、スクリュー21及び円形培養床6の回転を継続すれば、円形培養床6の全体に亘り、固体培養基質7の堆積層厚を均すことができる。
【0054】
円形培養床6の固体培養基質7の分布は一様ではないため、分布に応じてスクリュー21の高さを調整する必要がある。この点、円形培養床6上を所定の仮想領域に分割し、仮想領域毎にスクリュー21の高さを設定するようにすれば制御が容易になる。
図16に仮想領域の一例を示している。円形培養床6上の領域は、中心角α毎に円形培養床6の半径rで区画された複数の仮想領域に分割されている。
図16は仮想領域の一部である仮想領域B1~B4を示している。中心角αは任意であり、中心角αの値に応じて仮想領域の数を設定することができる。
【0055】
以下、
図17及び
図18を参照しながら、固体培養基質7の均し制御について具体的に説明する。
図17は、本発明の一実施形態に係る均し制御を示すフローチャートであり、
図18は
図17をより具体的に示したフローチャートである。これらのフローチャートの前提は、層厚測定センサ50が
図14に示したように、第1センサSE1~第4センサSE4の4つであり、
図16のように固体培養基質7上は、径方向において分割領域A1~A4に分割されており、全周に亘り、仮想領域B1~B4を含む多数の仮想領域に分割されている。
【0056】
スクリュー21を回転させて実際に固体培養基質7の均し作業を開始する前に、計算工程を実行し最適なスクリュー高さを決定する(
図17のステップ120~122)。また、この計算工程は、仮想領域B1等の1つ分の仮想領域毎に行い、全ての仮想領域について、最適なスクリュー高さを決定した後に、均し作業を開始する(
図17のステップ123)。
【0057】
図17において、最適なスクリュー高さの計算が開始すると(ステップ120)、層厚測定センサ50により、堆積層厚の現在値を測定する(ステップ121)。この場合、層厚測定センサ50の測定データが円形培養床6の中でどの位置のものであるかは、円形培養床6の初期状態からの円形培養床6の回転角度により認識可能である。このため、層厚測定センサ50の測定データがどの仮想領域のものであるかは認識可能である。本実施形態では、スクリュー21の下部を仮想領域B1が通過したときの第1センサSE1~第4センサSE4の各値の平均値を、仮想領域B1における分割領域A1~A4の各堆積層厚とする。他の仮想領域についても同様である。
【0058】
以下、
図18を参照しながら、固体培養基質7の均し制御について、より具体的に説明する。前記のとおり、実際に均し作業を行う前に、計算により、最適なスクリュー高さを決定する。
【0059】
計算工程においては、スクリュー高さが十分高い位置にある状態から、仮想的に徐々にスクリュー高さを下げながら計算を行う。本実施形態では1mmずつスクリュー高さを下げる例で説明するが、1mmに限るものではない。
図18では説明の便宜のため、ある程度スクリュー高さを下げた状態からの工程を示している。nは1以上の整数である。
【0060】
図18において、新たなスクリュー高さH
n+1が設定されると(ステップ130)、搬送後の分割領域A1~A4における堆積層の体積を算出する(ステップ131)。第1センサSE1~第4センサSE4の各値により、分割領域A1~A4の各堆積層厚を取得できるので、既知の分割領域A1~A4の面積を乗ずることで、搬送前の分割領域A1~A4における堆積層の体積が算出できる。搬送後はスクリュー高さH
n+1より上の固体培養基質7は、隣接する分割領域へ搬送される。このことに基づいて、搬送後の分割領域A1~A4における堆積層の体積が算出できる。
【0061】
図18のステップ132においては、搬送後の分割領域A1~A4における堆積層厚と平均堆積層厚との差の絶対値(DH1
n+1~DH4
n+1)を算出する。分割領域A1~A4における堆積層厚は、ステップ131で求めた搬送後の分割領域A1~A4における堆積層の体積を、既知の分割領域A1~A4の面積で除することで算出可能である。また、平均堆積層厚は、搬送前の分割領域A1~A4における堆積層の体積の合計を、既知の分割領域A1~A4の面積の合計で除することで算出できる。
【0062】
図18のステップ133においては、ステップ132で求めたDH1
n+1~DH4
n+1のうち最大値をEDH
n+1とする。ステップ134においては、前回求めた最大値EDH
nと今回求めた最大値EDH
n+1とを比較する。今回求めた最大値EDH
n+1が前回求めた最大値EDH
nより小さければ、そのときのスクリュー高さH
n+1を暫定的に最適高さとする。次いで1mm下げたスクリュー高さHを新たに設定して(ステップ130)、ステップ131~ステップ134を実行する。これらの演算をスクリュー高さHが十分小さくなるまで繰り返し、最適高さを決定する。
【0063】
以上の
図18について説明した計算工程が、スクリュー21を内向きに動かした場合であるとすると、スクリュー21を外向きに動かした方がより堆積層厚を均一にできる場合がある。スクリューを内向きに動かすとは、固体培養基質7を円形培養床6の外側から内側に搬送する方向にスクリュー21を回転させるという意味であり、外向きに動かすとは、固体培養基質7を円形培養床6の内側から外側に搬送する方向にスクリュー21を回転させるという意味である。
【0064】
スクリュー21を外向きに動かした方がより堆積層厚を均一にできる場合の一例として、
図19を参照して説明する。
図19は、
図15と同様に、均し前後の堆積層厚の分布を示す図である。
図19の波形15が
図15の波形13に、
図19の線16が
図15の線14に相当する。固体培養基質7が円形培養床6の内側から外側に搬送される方向(矢印i)に回転させると、j部においては、固体培養基質7のうち線16よりも上側の部分は外側に移動する。スクリュー21による搬送が完了したときには、
図19(b)に示す状態となる。すなわち、固体培養基質7の高低の態様によっては、スクリュー21の回転方向の違いにより、搬送の態様が異なる場合がある。この場合は搬送後の固体培養基質7の態様にも差が生じ、固体培養基質7の堆積層厚の均一化の程度にも差が生じることになる。
【0065】
よって、スクリュー高さに加えて回転方向も調整した方がより好ましい。回転方向も調整した場合のフローチャートが
図20である。
図18について説明した計算工程が、スクリュー21を内向きに動かした場合であるとすると、
図18のステップ135は、
図20のステップ122に相当する。スクリュー21を外向きに動かした場合については、搬送方向を変えて前記の計算工程を繰り返し、スクリュー高さHから最適高さを決定する。この場合、
図18のステップ135は、
図20のステップ123に相当する。スクリュー21を内向きに動かした場合と外向きに動かした場合についての最適なスクリュー高さの決定後は、それぞれのスクリュー高さにおける最大値EDHを比較し、より小さい値をとる高さ及び回転方向を最適なスクリュー高さ及び回転方向に決定し(
図20のステップ124)、均し作業を開始する(
図20のステップ125)。
【0066】
以上、均し制御について固体培養基質7の円形培養床6への供給終了後の実施例を示したが、供給が安定しており供給体積が予測できる場合は、原料供給中に実施することも可能である。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明に係る固体培養基質盛込み装置20は、層厚測定センサ50を備えていて、円形培養床6において実測した固体培養基質7の堆積層厚の測定値に基づいて、スクリュー高さの調整を行うことができるので、固体培養基質7の堆積層厚の均一化の精度向上と精度の安定化を実現することや、意図的に堆積層厚に差をつけることができる。盛込み制御のフローチャートである
図9、
図11や、均し制御のフローチャートである
図17~
図20は一例であり、実測した堆積層厚を活用して、適宜変更すればよい。
【符号の説明】
【0068】
1 固体培養装置
6 円形培養床
7 固体培養基質
12 波形(堆積層厚の分布)
20 固体培養基質盛込み装置
21 スクリュー
30 高さ調整機構
40 回転駆動機構
50 層厚測定センサ
70 制御手段